以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
第1制御弁4は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路の開度を調整する。第1制御弁4は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を第1制御弁4の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス18が設けられている。オリフィス18の開口面積は、第1制御弁4の開弁時の開口面積よりも十分に小さいが、このように第1制御弁4と並列にオリフィス18が設けられることで、第1制御弁4の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
第2制御弁6は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ主通路の開度を調整する。第2制御弁6は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。第2制御弁6は、その前後差圧(第2制御弁6の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が供給電流値に応じた一定の値となるように動作する定差圧弁として構成されている。すなわち、第2制御弁6の弁部は、前後差圧がソレノイドへの供給電流値に対応づけられた値となるよう自律的に動作する。また、主通路を第2制御弁6の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス20が設けられている。オリフィス20の開口面積は、第2制御弁6の全開時の開口面積よりも十分に小さいが、このように第2制御弁6と並列にオリフィス20が設けられることで、第2制御弁6の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁6の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。図示の例では、制御部100は、第1制御弁4の開閉制御、第2制御弁6の開閉制御(開度調整制御)のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
制御部100は、第2制御弁6の駆動回路に設定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定差圧を決定し、第2制御弁6の前後差圧(上流側と下流側との差圧)がその設定差圧となるよう通電制御を行う。言い換えれば、第2制御弁6の弁部が供給電流値に対応した前後差圧が得られるよう自律的に動作し、その開度を調整する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示している。なお、ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態である。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜fはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6は閉弁される。このとき、エアミックスドア14は全閉状態またはそれに近い状態とされる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、オリフィス20、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室内凝縮器3から導出された冷媒の一部は、オリフィス18を通過するが、その流量は第1制御弁4を通過する流量に比べて相当少ない。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、オリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。このとき、エアミックスドア14の開度が適度に調整され、その空気の温度調整が行われる。蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。このとき、エアミックスドア14は温度設定に応じた適切な開度となるよう駆動される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、オリフィス18、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室外熱交換器5から導出された冷媒の一部は、オリフィス20を通過するが、その流量は第2制御弁6を通過する流量に比べて相当少ない。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、オリフィス18にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6およびオリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。このとき、エアミックスドア14の開度は基本的に冷房運転時よりも大きくなるよう調整され、その空気の温度調整が行われる。すなわち、蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
図2(B)の上段に示すように、このとき室外熱交換器5および第2制御弁6の両蒸発器にて蒸発される比率が第2制御弁6の前後差圧ΔPにより制御される。図示のように、前後差圧ΔPが比較的大きく設定されると、実線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、前後差圧ΔPが比較的小さく設定されると、点線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
なお、この前後差圧ΔPについては、冷暖房の状況に応じて比較的広い範囲を取り得る。このため、制御部100は、その差圧制御(通電制御)における分解能を確保するために、状況に応じて供給電流のデューティ値を周期的に変化させる制御を行う。すなわち、特に高い分解能を要する制御範囲においては、デューティ比として近い値を周期的に設定することで、その中間値が得られるような制御を行う。例えば、ある期間、デューティ比が50%の出力と51%の出力とを交互に繰り返すことで、その期間は平均的に50.5%のデューティ制御を実現するといった具合である。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が若干異なる以外は第1実施形態とほぼ同様の構成を有する。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図3は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置201は、第1実施形態と同様に、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクルを備える。一方、第1実施形態とは異なり、第1制御弁204および第2制御弁6のそれぞれに並列なオリフィスは設けられていない。
室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ第1通路221と、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ第2通路222とを接続するバイパス通路216が設けられ、そのバイパス通路216を開閉する第3制御弁218が設けられている。さらに、蒸発器7とアキュムレータ8とをつなぐ第3通路223と第2通路222とを接続するバイパス通路212が設けられている。第2通路222とバイパス通路212との接続部には第4制御弁220が設けられている。各制御弁は、制御部100により開閉制御される。
第1制御弁204は、第1実施形態の第1制御弁4とは異なり、第1通路221を開閉させるだけでなくその開度を調整する。第1制御弁204は、その第1通路221を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。
また、第2制御弁6と並列に膨張弁210が設けられている。すなわち、第2通路222には第2制御弁6と第4制御弁220との間で分岐する分岐通路224が設けられ、その分岐通路224が膨張弁210の弁部を経由して蒸発器7の入口に接続されている。第3通路223は、膨張弁210の感圧部を経由してアキュムレータ8に接続されている。また、第2通路222における室外熱交換器5の出口側には逆止弁214が設けられ、室外熱交換器5から蒸発器7への冷媒の流れのみを許容している。
第3制御弁218は、バイパス通路216を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。第3制御弁218は、その開弁により室内凝縮器3から蒸発器7への冷媒の流れを許容する。
第4制御弁220は、いわゆる三方弁(切替弁)からなり、上流側から導入される冷媒の通路を切り替えるための複数の弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって各弁部を開閉する。すなわち、第4制御弁220は、導入される冷媒の流れを第2通路222の下流側またはバイパス通路212のいずれかに切り替える。なお、このような三方弁としては公知のものを使用することができるため、その詳細な説明については省略する。
膨張弁210は、いわゆる温度式膨張弁として構成されており、蒸発器7の出口側の冷媒温度をフィードバックしてその弁開度を調整し、熱負荷に応じた液冷媒を蒸発器7へ供給する。このような温度式膨張弁そのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図4は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。ここでいう「特定暖房運転」は、蒸発器7を機能させない暖房運転(実質的に冷房機能なし)である。また、「特殊冷暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない冷房運転および暖房運転である。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。
図4(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁204が全開状態とされる一方、第3制御弁218および第2制御弁6は閉弁される。第4制御弁220は、上流側からの冷媒を膨張弁210を介して蒸発器7へ導くよう通路を切り替える。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第4制御弁220、膨張弁210、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。なお、蒸発器7からの戻り冷媒は、膨張弁210の感圧部を経由してアキュムレータ8に導かれる。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、膨張弁210にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図4(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁204の開度が微少開度に調整される一方、第2制御弁6が開弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第2制御弁6および膨張弁210、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1制御弁204にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6および膨張弁210にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が第2制御弁6の前後差圧ΔPにより制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
また、図4(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁204の開度が微少開度に調整される一方、第4制御弁220により冷媒通路がバイパス通路212に切り替えられる。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第4制御弁220、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1制御弁204にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。
また、図4(D)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁204および第2制御弁6が閉弁される一方、第3制御弁218が開弁される。また、第4制御弁220により冷媒通路が第2通路222の下流側につながるよう切り替えられる。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。つまり、蒸発器7のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第3制御弁218、第4制御弁220、膨張弁210、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、膨張弁210にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が若干異なる以外は第2実施形態とほぼ同様の構成を有する。このため、第2実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5は、第3施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置301は、第2実施形態と同様に、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクルを備える。一方、第2実施形態のような三方弁(第4制御弁220)や膨張弁210は設けられておらず、バイパス通路212に第4制御弁320が設けられている。各制御弁は、制御部100により開閉制御される。
第4制御弁320は、いわゆる二方弁(切替弁)からなり、バイパス通路212の開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。第4制御弁320は、バイパス通路212における冷媒の通過を許容する場合にのみ開弁される。なお、このような二方弁としては公知のものを使用することができるため、その詳細な説明については省略する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図6は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。
図6(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁204が全開状態とされる一方、第3制御弁218および第4制御弁320は閉弁される。第2制御弁6は、設定差圧を実現するようその開度が調整される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、第2制御弁6にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図6(B)に示すように、暖房運転時においては、第3制御弁218および第4制御弁320が閉弁され、第1制御弁204の開度が微少開度に調整される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1制御弁204にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が第2制御弁6の前後差圧により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
また、図6(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁204の開度が微少開度に調整される一方、第3制御弁218および第2制御弁6が閉弁され、第4制御弁320が開弁される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁204、室外熱交換器5、第4制御弁320、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1制御弁204にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。
また、図6(D)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁204、第3制御弁218および第4制御弁320が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。つまり、蒸発器7のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第3制御弁218、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第2制御弁6にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が異なる以外は第1実施形態とほぼ同様の構成を有する。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7は、第4実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置401は、第1実施形態と同様に、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクルを備える。ただし、第1実施形態とは異なり、室内凝縮器3と室外熱交換器5とは圧縮機2に対して直列ではなく並列に接続されている。
圧縮機2と室内凝縮器3とをつなぐ高圧側の第1通路421と、圧縮機2と室外熱交換器5とをつなぐ高圧側の第2通路422とは、圧縮機2の下流側にて分岐しており、第2通路422を開閉するように第1制御弁4が設けられている。一方、室内凝縮器3と室外熱交換器5と蒸発器7とを接続するアクチュエータブロック410が設けられている。アクチュエータブロック410のハウジング内には、冷媒を通過させる内部通路が形成されており、後述するバランスオリフィス412と差圧オリフィス414とが配設されている。室内凝縮器3の下流側の第3通路423、蒸発器7の上流側の第4通路424、および室外熱交換器5から延びる第5通路425が、それぞれアクチュエータブロック410に接続されている。
また、第2通路422の中間部においてバイパス通路426が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。第2制御弁6は、そのバイパス通路426を開閉するように設けられている。一方、蒸発器7の下流側の戻り通路427が、バイパス通路426と第2制御弁6の下流側にて接続され、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
バランスオリフィス412は、一対のオリフィスとそれらの開度を調整する一対の弁部を有する。一対の弁部は対応するオリフィスがそれぞれ前後差圧に応じた開度となるよう自律的に動作する。その一方のオリフィス(第1オリフィス431)がアクチュエータブロック410において第4通路424につながる内部通路に連通し、他方のオリフィス(第2オリフィス432)が第5通路425につながる内部通路に連通する。
差圧オリフィス414は、前後差圧が設定値以上となったときに開弁する差圧弁435と、所定の開口面積を有するオリフィス436とを直列に配置して構成されている。差圧オリフィス414は、その上流側が第5通路425につながる内部通路に連通し、下流側が第4通路424につながる内部通路に連通する。すなわち、差圧オリフィス414は、その上流側(差圧弁435側)にて第2オリフィス432に連通し、下流側(オリフィス436側)にて第1オリフィス431に連通する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図8は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示され、各図の下段には冷凍サイクルの動作状態が示されている。符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。
図8(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6は閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、バランスオリフィス412、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で第1制御弁4、室外熱交換器5、差圧オリフィス414、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が第2オリフィス432にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。一方、室外熱交換器5を経由した冷媒が差圧オリフィス414にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、冷媒が蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図8(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、バランスオリフィス412、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、バランスオリフィス412、室外熱交換器5、第2制御弁6、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、バランスオリフィス412にて断熱膨張される。このとき、第1オリフィス431を経由した冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。一方、第2オリフィス432を経由した冷温・低圧の液冷媒が室外熱交換器5にて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第2制御弁6の前後差圧ΔPにより制御される。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が若干異なる以外は第4実施形態とほぼ同様の構成を有する。このため、第4実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図9は、第5実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置501は、第4実施形態と同様に、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクルを備える。そして、さらに第1通路421を開閉する第3制御弁504が設けられている。アクチュエータブロック510には、第4実施形態のバランスオリフィス412に代わり、一対の制御弁(第1調整弁531および第2調整弁532)と逆止弁512が設けられている。
第1調整弁531は、第4通路424につながる内部通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。第2調整弁532は、第5通路425につながる内部通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。これら一対の調整弁は、制御部100により開閉制御される。逆止弁512は、これらの一対の調整弁の上流側に設けられ、室内凝縮器3から蒸発器7または室外熱交換器5への冷媒の流れのみを許容する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図10は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は特定冷房運転時の状態を示し、(B)は冷房運転時の状態を示し、(C)は暖房運転時の状態を示し、(D)は特定暖房運転時の状態を示し、(E)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。ここでいう「特定冷房運転」は、室内凝縮器3を機能させない冷房運転(実質的に暖房機能なし)である。「特定暖房運転」は、蒸発器7を機能させない暖房運転(実質的に冷房機能なし)である。また、「特殊冷暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない冷房運転および暖房運転である。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。
図10(A)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6および第3制御弁504が閉弁される。このため、冷媒は室内凝縮器3を通過せず、室内凝縮器3は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、第1制御弁4、室外熱交換器5、差圧オリフィス414、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経て凝縮され、差圧オリフィス414にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、車室内に導入された空気は室内凝縮器3にて加熱されることなく車内に供給される。
また、図10(B)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4および第3制御弁504の双方が開弁される。また、第2制御弁6および第2調整弁532は閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で第3制御弁504、室内凝縮器3、第1調整弁531、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で第1制御弁4、室外熱交換器5、差圧オリフィス414、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が第1調整弁531にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。また、室外熱交換器5を経由した冷媒が差圧オリフィス414にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図10(C)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6,第3制御弁504,第1調整弁531および第2調整弁532が開弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、第1調整弁531、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、第2調整弁532、室外熱交換器5、第2制御弁6、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、第1調整弁531にて断熱膨張された冷温・低圧の液冷媒が、蒸発器7にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。一方、第2調整弁532にて断熱膨張された冷温・低圧の液冷媒は、室外熱交換器5にて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第2制御弁6の前後差圧により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
また、図10(D)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4および第1調整弁531が閉弁される一方、第2制御弁6,第3制御弁504および第2調整弁532が開弁される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、第3制御弁504、室内凝縮器3、第2調整弁532、室外熱交換器5、第2制御弁6、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第2調整弁532にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。
また、図10(E)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4,第2制御弁6および第2調整弁532が閉弁される一方、第3制御弁504および第1調整弁531が開弁される。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。つまり、蒸発器7のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、第3制御弁504、室内凝縮器3、第1調整弁531、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1調整弁531にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が若干異なる以外は第5実施形態とほぼ同様の構成を有する。このため、第5実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図11は、第6実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置601は、第5実施形態における第1制御弁4と第3制御弁504とを制御弁604に置き換え、第1調整弁531と第2調整弁532とを調整弁630に置き換えたものである。制御弁604は複数の弁部を有する三方弁であるが、第1通路421と第2通路422とを同時に開くことが可能な電磁弁として構成されている。調整弁630も複数の弁部を有する三方弁であるが、第4通路424につながる内部通路と、第5通路425につながる内部通路とを同時に開くことが可能な電磁弁として構成されている。調整弁630の上流側には逆止弁512が配設されている。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図12は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は特定冷房運転時の状態を示し、(B)は冷房運転時の状態を示し、(C)は暖房運転時の状態を示し、(D)は特定暖房運転時の状態を示し、(E)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。
図12(A)に示すように、特定冷房運転時においては、制御弁604が第2通路422を開く弁部のみを開弁させ、調整弁630は閉弁されている。このため、冷媒は室内凝縮器3を通過せず、室内凝縮器3は実質的に機能しなくなる。圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経て凝縮され、差圧オリフィス414にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。すなわち、車室内に導入された空気は室内凝縮器3にて加熱されることなく車内に供給される。
また、図12(B)に示すように、冷房運転時においては、制御弁604が、第1通路421を開く弁部および第2通路422を開く弁部の双方を開弁させ、調整弁630は、第4通路424につながる内部通路を開く弁部のみを開弁させる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が調整弁630にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。また、室外熱交換器5を経由した冷媒が差圧オリフィス414にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
一方、図12(C)に示すように、暖房運転時においては、制御弁604が第1通路421を開く弁部のみを開弁させ、調整弁630は、第4通路424につながる内部通路を開く弁部および第5通路425につながる内部通路を開く弁部の双方を開弁させる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、調整弁630にて断熱膨張された冷温・低圧の液冷媒が、一方で蒸発器7に導かれて蒸発し、他方で室外熱交換器5に導かれて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第2制御弁6の前後差圧により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、その除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
また、図12(D)に示すように、特定暖房運転時においては、制御弁604が第1通路421を開く弁部のみを開弁させ、調整弁630は、第5通路425につながる内部通路を開く弁部のみを開弁させる。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、調整弁630にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。すなわち、冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。
また、図12(E)に示すように、特殊暖房運転時においては、制御弁604が第1通路421を開く弁部のみを開弁させ、調整弁630は、第4通路424につながる内部通路を開く弁部のみを開弁させる。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、調整弁630にて断熱膨張されて冷温・低圧の液冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、冷凍サイクルを構成する室内凝縮器3をダクト10内に配置して熱交換を行う例を示した。変形例においては、エンジンの冷却水を利用して熱交換を行う構成としてもよい。図13は、変形例に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本変形例は、第1実施形態の車両用冷暖房装置を変形したものに該当する。
車両用冷暖房装置701においては、圧縮機2と室外熱交換器5との間に第1実施形態のような室内凝縮器3は設けられておらず、その代わりに熱交換装置710が設けられている。熱交換装置710は、冷却水を汲み上げるポンプ712、放熱器714および熱交換器716を備え、これらの装置を冷却水の循環回路が接続している。
放熱器714は、第1実施形態の室内凝縮器3に代わってダクト10内に配置され、その上流側にエアミックスドア14が配設されている。熱交換器716は、圧縮機2から室外熱交換器5へ向かう高温の冷媒と、ポンプ712から放熱器714へ向かう冷却水との間で熱交換を行う。そして、熱交換器716で温められた冷却水(温水)が放熱器714を通過する過程で、上流側から流れてきた空気を加熱する。すなわち、蒸発器7にて冷却・除湿された空気は、その放熱器714を通過することで温度調整される。このような構成においても、暖房運転時に第2制御弁6の前後差圧を調整することで、循環する冷媒を室外熱交換器5および蒸発器7にて適度な割合で蒸発させることができる。なお、本変形例は、第1実施形態の車両用冷暖房装置を変形したものに該当するが、本構成は第2〜第6実施形態のいずれにも置き換えることができる。
また、上記実施形態では、第2制御弁6を定差圧弁として構成したが、前後差圧を調整可能な他の電磁弁として構成してもよい。例えば、供給電流に応じた一定の流量となるよう冷媒の流れを制御し、その結果、前後差圧を変化させることが可能な流量制御弁であってもよい。あるいは、供給電流に応じた弁開度となり、その結果、前後差圧を変化させることが可能な比例弁であってもよい。ただし、蒸発比率について安定した制御を行う観点からは、上記実施形態のように前後差圧を直接制御できる定差圧弁のほうが好ましい。
なお、上記実施形態においては、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。