[第1実施形態]
まず、第1実施形態として、ハレーションを防止し、かつ、治療時間を短縮可能な電子内視鏡システム11について説明する。図1に示すように、電子内視鏡システム11は、電子内視鏡12、プロセッサ装置13、及び光源装置14からなる。電子内視鏡12は、被検者の体内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に連接された操作部17と、プロセッサ装置13及び光源装置14に接続されるコネクタ18と、操作部17‐コネクタ18間を繋ぐユニバーサルコード19とを有する。挿入部16の先端(以下、先端部という)20には被検体内撮影用のCCD型イメージセンサ(図2参照。以下、CCDという)21が設けられている。
操作部17には、先端部20を上下左右に湾曲させるためのアングルノブや挿入部16の先端からエアーや水を噴出させるための送気/送水ボタン、観察画像を静止画像記録するためのレリーズボタン、モニタ22に表示された観察画像の拡大/縮小を指示するズームボタン、通常光による観察とPDDの切り替えを行う切り替えボタンといった操作部材が設けられている。また、操作部17の先端側には、電気メスやPDTの治療光を導光する治療プローブ等の処置具が挿通される鉗子口74が設けられている。鉗子口74は、挿入部16内の鉗子チャネル75(図2参照)を介して、先端部20に設けられた鉗子出口76に連通している。
プロセッサ装置13は、光源装置14と電気的に接続され、電子内視鏡システム11の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置13は、ユニバーサルコード19や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡12に給電を行い、CCD21の駆動を制御する。また、プロセッサ装置13は、伝送ケーブルを介してCCD21から出力された撮像信号を取得し、各種画像処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置13で生成された画像データは、プロセッサ装置13にケーブル接続されたモニタ22に観察画像として表示される。
図2に示すように、先端部20には、観察窓23、照明窓24が設けられている。タイミングジェネレータ(以下、TGという)26、アナログ信号処理回路(以下、AFEという)27、VRAM28、CPU29は、操作部17やユニバーサルコード19のコネクタ18等に設けられている。観察窓23の奥には、レンズ群及びプリズムからなる対物光学系31によって被検体内の像が撮像面に結像されるようにCCD21が配置されている。照明窓24からは照明光が被検体内に照射される。照明光は、光源装置14から電子内視鏡12に供給され、ユニバーサルコード19及び挿入部16に挿通されたライトガイド32によって導光され、出射端に配置された照明レンズ33によって照明窓24を介して被検体内に照明される。
CCD21は、対物光学系31によって撮像面に結像された被検体内の像を光電変換する。CCD21は複数の画素を有し、各画素は入射光量に応じた画素値である撮像信号を出力する。撮像面は、中央の受光部と、受光部を囲むように設けられたオプティカルブラックとからなる。受光部は開口された画素が配列された領域であり、各画素に複数の色セグメントからなるカラーフィルタが形成されている。カラーフィルタは、例えばベイヤー配列の原色(RGB)あるいは補色(CMYまたはCMYG)カラーフィルタである。オプティカルブラックは、遮光膜によって遮光された画素からなる領域であり、暗電流ノイズに応じた撮像信号を出力する。したがって、CCD21が出力する撮像信号には、受光部の画素から出力される撮像信号とともに、オプティカルブラックの画素から出力される撮像信号が含まれる。受光部の画素から出力される撮像信号は、観察画像の生成に用いられ、オプティカルブラックの画素から出力される撮像信号は、受光部の画素から出力される撮像信号の暗電流補正に用いられる。
CCD21から出力される撮像信号はアナログ信号であり、AFE27によってノイズ除去処理やゲイン補正処理が施され、A/D変換された後に、ユニバーサルコード19及びコネクタ18を介してプロセッサ装置13のDSP42(後述)に入力される。
TG26は、CCD21にクロック信号を与える。CCD21は、TG26から入力されるクロック信号に応じて撮像動作を行ない、撮像信号を出力する。CPU29は、電子内視鏡12とプロセッサ装置13とが接続された後、プロセッサ装置13のCPU41からの動作信号に基づいてTG26を駆動させる。
AFE27は、相関二重サンプリング(CDS)回路、自動ゲイン調節(AGC)回路、A/D変換器からなる。CDSは、CCD21が出力する撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD21を駆動することによって生じるノイズを除去する。AGCは、CDSによってノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/D変換器は、AGCで撮像信号を、所定のビット数のデジタルな撮像信号に変換する。AFE27の駆動は、CPU29によって制御される。例えば、CPU29は、プロセッサ装置13のCPU41から入力される動作信号に基づいて、AGC回路による撮像信号の増幅率(ゲイン)を調節する。
プロセッサ装置13は、CPU41、デジタル信号処理回路(DSP)42、デジタル画像処理回路(DIP)43、表示制御回路44、操作部51等を有する。
CPU41は、図示しないデータバスやアドレスバス、制御線を介して各部と接続されており、プロセッサ装置13全体の動作を統括的に制御する。ROM52には、プロセッサ装置13の動作を制御するための各種プログラム(OS,アプリケーションプログラム等)や各種データ(グラフィックデータ等)が記憶されている。CPU41は、ROM52から必要なプログラムやデータを読み出して、作業メモリであるRAM53に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、CPU41は、検査日時、被検体や術者の情報等の文字情報といった検査毎に変わる情報を、操作部51やLAN等のネットワークより取得し、RAM53に記憶する。
DSP42は、CCD21から入力される撮像信号に対して、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等の各種信号処理を施し、画像データを生成する。DSP42で生成された画像データは、DIP43の作業メモリに入力される。また、DSP42は、例えば生成した画像データの各画素の輝度を平均した平均輝度値等、照明光量の自動制御(ALC制御)に必要なALC制御用データを生成し、CPU41に入力する。
DIP43は、DSP42で生成された画像データに対して、電子変倍、色強調処理、エッジ強調処理等の各種画像処理を施す。DIP43で各種画像処理が施された画像データは、観察画像としてVRAM28に一時的に記憶された後、表示制御回路44に入力される。
また、DIP43は、観察画像のハレーションの有無を検出するハレーション検出部55を有する。ハレーション検出部55は、観察画像の各々の画素値を所定の閾値と比較し、閾値よりも画素値が大きい画素を計数する。画素値が閾値よりも大きい画素の個数が所定個数よりも大きい場合、ハレーション検出部55は、観察画像にハレーションが生じていると判別する。一方、画素値が閾値よりも大きい画素の個数が所定個数以下の場合、ハレーション検出部55は、観察画像にハレーションが生じていないと判別する。これにより、ハレーション検出部55は、観察画像が撮影される毎にハレーションの有無を検出する。
以下では、ハレーション検出部55によってハレーションが検出された観察画像をハレーション有り画像といい、ハレーションが検出されなかった観察画像をハレーション無し画像という。
ハレーション検出部55によるハレーションの有無についての判別結果は、CPU41に入力される。CPU41は、ハレーション検出部55から入力された判別結果に基づいて、VRAM28に複数記憶された観察画像の中からモニタ22上に表示させる観察画像を決定し、モニタ22上に表示することが決定された観察画像を選択的に取得するように画像選択信号を表示制御回路44に入力する。
VRAM28は、DIP43から入力される観察画像を一時的に記憶するメモリであり、複数フレーム分(例えば5フレーム分)の観察画像を同時に記憶する。また、DIP43は、VRAM28に記憶容量の上限分(5フレーム分)の観察画像が既に記憶されている状態で新たな観察画像を入力する際に、上書き更新等により、最も古い観察画像を破棄して新たな観察画像をVRAM28に記憶させる。したがって、VRAM28には、最新の観察画像から記憶容量の上限分の観察画像が記憶される。VRAM28に記憶された複数フレーム分の観察画像のうち1フレーム分の観察画像が表示制御回路44によって選択して取得され、モニタ22に表示される。
表示制御回路44は、VRAM28から観察画像を選択して取得し、モニタ22上に表示する。このとき、表示制御回路44は、CPU41から入力される画像選択信号に基づいて、VRAM28に記憶された複数の観察画像のなかから、1フレーム分の観察画像を取得し、これをモニタ22上に表示する。特に、PDTによる治療を行っている場合、VRAM28に記憶された観察画像の中から、最新のハレーション無し画像を取得し、これをモニタ22に表示する。また、表示制御回路44は、CPU41からROM52及びRAM53に記憶されたグラフィックデータ等を受け取る。グラフィックデータ等には、観察画像のうち被写体が写された有効画素領域のみを表示させる表示マスク、検査日時,被検体や術者の情報等の文字情報、GUIといったものがある。表示制御回路44は、VRAM28から取得した観察画像に対してグラフィックデータ等の重畳処理を行うとともに、モニタ22の表示形式に応じたビデオ信号(コンポーネント信号、コンポジット信号等)に変換してモニタ22に出力する。これにより、モニタ22に観察画像が表示される。
操作部51は、プロセッサ装置13の筐体に設けられる操作パネル、マウスやキーボード等の周知の入力デバイスであり、PDTにおける治療光の照射及び停止を指示するペダルスイッチを含む。CPU41は、操作部51や電子内視鏡12の操作部17からの操作信号に応じて、電子内視鏡システム11の各部を動作させる。
プロセッサ装置13には、上記の他にも、画像データに所定の圧縮形式(例えばJPEG形式)で画像圧縮処理を施す圧縮処理回路や、レリーズボタンの操作に連動して、圧縮された画像をリムーバブルメディアに記録するメディアI/F、LAN等のネットワークとの間で各種データの伝送制御を行うネットワークI/F等が設けられている。これらは、データバス等を介してCPU41と接続されている。
光源装置14は、照明光ユニット61と治療光ユニット62を備える。照明光ユニット61は、被検体内に照射する撮影用の照明光を発生するユニットであり、光源63、絞り機構64、波長選択フィルタ65等から構成される。
光源63は、赤色から青色までのブロードな波長の光(例えば、主に400nm以上800nm以下の波長帯の光、以下、通常光という)を発生する。光源63は、例えばキセノンランプからなり、一定の光量の通常光を発光する。光源63で発生した通常光の光量は、絞り機構64によって調節される。また、光源63で発生した通常光は、波長選択フィルタ65によって、PDD及びPDTのために予め被検体に投与される光感受性物質から蛍光光を発生させる波長帯の光(以下、励起光という)に制限されて被検体内に照射される場合がある。こうして光源63から発せられた照明光(通常光または励起光)は、集光レンズ67で集光されてライトガイド32の入射端に導光される。
ライトガイド32は、例えば、複数の石英製光ファイバーを巻回テープ等でバンドル化したものである。ライトガイド32の出射端に導かれた照明光は、照明レンズ33によって拡散されて被検体内に照射される。
絞り機構64は、後述するように絞り開口91(図3参照)や絞り開口91を開閉する絞り羽根92(図3参照)等からなり、照明光の光量を調節する。絞り機構64は、CPU66によって自動的に制御される。
波長選択フィルタ65は、光源63から発せられた通常光を励起光に制限するフィルタである。波長選択フィルタ65は、例えば円板の半分が切り欠かれた半円状の形状を有し、光源63と集光レンズ67の間を横切るようにモータの駆動によって回転される。また、波長選択フィルタ65には、その回転位置を検出するセンサが設けられている。波長選択フィルタ65が光源63と集光レンズ67の間を横切っている間は励起光が照明光として被検体内に照射され、波長選択フィルタ65の切り欠き部分が光源63と集光レンズ67の間を横切っている間は通常光が照明光として被検体内に照射される。CPU31は、操作部17によって観察方法の切り替えを指示された場合等に、波長選択フィルタ65を制御することにより、照明光を通常光と励起光とで切り替える。
治療光ユニット62は、PDTのために光感受性物質が蓄積された腫瘍組織に照射される治療光を発生するユニットであり、光源71と絞り機構72とを有する。
光源71は、630nm〜680nmの赤色光を発生する。光源71が発生する赤色光は、光感受性物質が蓄積された腫瘍組織に照射されることで治療光として機能する。以下では、光源71で発生する赤色光を治療光という。光源71は例えばLDからなり、通常光やPDD用の励起光と比較して高光量のレーザー光をパルス発振する。光源71で発生する治療光の光量は、絞り機構72によって調節され、集光レンズ77で集光されて、治療プローブ73に導光される。
絞り機構72は、照明光ユニット61の絞り機構64と同様に構成され、絞り開口91を絞り羽根92で開閉する。これにより、光源71から治療プローブ73に入射される治療光の光量が調節される。絞り機構72の動作は、CPU66によって自動的に制御される。
治療プローブ73は、PDTに用いられる処置具であり、光源装置14から治療光を導光し、先端から光感受性物質が予め蓄積された腫瘍組織に向けて治療光を照射する。治療プローブ73の基端部分は、光源装置14に接続され、治療光ユニット62から治療光が入射される。治療プローブ73の他端(先端)は、鉗子口74から電子内視鏡12内に挿入され、挿入部16に沿って設けられた鉗子チャネル75内を挿通され、先端部20に設けられた鉗子出口76から突出される。鉗子出口76は、鉗子チャネル75の終端である。鉗子出口76からの治療プローブ73の突出量は、鉗子口74で治療プローブ73を進退させる向きに移動させることによって自在に調節できる。
CPU66は、プロセッサ装置13のCPU41と通信し、絞り機構64,72及び波長選択フィルタ65の動作制御を行う。CPU66による絞り機構64,72の制御は、撮影の様態に応じて自動的に照明光の光量を調節するALC(Auto Light Control)制御である。CPU66の行うALC制御は、DSP42で生成されたALC制御用データに基づいて行われる。
フード81は、PDD及びPDTを行う場合に先端部20に取り付けられるアタッチメントである。フード81には、先端部20の観察窓23,照明窓24,鉗子出口76の位置にそれぞれ対応して、観察窓82,照明窓83,鉗子出口84が設けられている。
観察窓82には減光フィルタ85が設けられている。減光フィルタ85は、PDD用の励起光とPDT用の治療光を減光するフィルタ(いわゆるノッチフィルタ)であり、励起光及び治療光以外の波長帯の光はほぼ100%透過する。このため、PDD時には、光感受性物質から発生する蛍光光と励起光の反射光が観察窓82に入射するが、励起光だけが減光される。これにより、光量が小さい蛍光光による被検体内の像を撮影することができる。
また、PDT時には、治療時間を短縮するために高光量の治療光が用いられるが、その反射光は減光フィルタ85によって減光されるので、CCD21に到達する治療光の光量が低減される。
なお、通常光は広帯域光であり、PDD用の励起光やPDT用の治療光を含むので、フード81を取り付けた状態で通常光によって照明しながら被検体内を撮影(以下、通常光撮影という)すると、減光フィルタ85によって励起光及び治療光と同一の波長帯の情報が低減されてしまうが、その他の大部分の波長帯の光は減光フィルタ85を透過する。このため、通常光の照明によって撮影される観察画像(以下、通常光画像という)は、フード81の有無によらず、ほぼ同様の通常光画像となる。
照明窓83には、少なくとも通常光と励起光を透過する透明な部材(例えばガラス板)が嵌め込まれている。このため、先端部20にフード81を取り付けた場合も、フード81を取り付けない場合と同様に通常光や励起光が被検体内に照射される。
鉗子出口84は開口であり、先端部20にフード81を取り付けた場合には、鉗子出口84は、先端部20の鉗子出口76の全体を露呈する。このため、先端部20にフード81を取り付けた状態であっても、治療プローブ73等の処置具を先端部20から突出させることができる。
図3に示すように、照明光ユニット61の絞り機構64は、絞り開口91を開閉する絞り羽根92と、絞り開口91を閉じる位置に絞り羽根92を付勢するスプリング93とを備えている。絞り羽根92は、モータ94から与えられるトルクによって、スプリング93の付勢力に抗して絞り開口91の開口量が大きくなる方向(時計方向)に回転し、トルクの大きさとスプリング93の付勢力が釣り合う位置で停止する。トルクが大きいとスプリング93の付勢力抗する力も大きくなるので、絞り開口91の開口量も大きくなる。トルクが小さいと、スプリング93の付勢力に抗する力が小さくなるので絞り開口91の開口量が小さくなる。モータ94のトルクはPWM値(後述)の増加とともに大きくなり、PWM値が下がると減少する。
光源装置14のCPU66は、DSP42によって算出されたALC制御用データに基づいて、絞り羽根92とスプリング93からなる絞り調節機構95を制御する。CPU66は、ALC制御用データに応じて、モータ94のトルクを決定するPWM(パルス幅変調)値を算出し、モータドライバ(図示しない)によってPWM値に応じた駆動パルスを発生させてモータ94を駆動する。PWM値は、モータ94の駆動パルスのデューティ比(パルス幅をパルス周期で割った値)を決定する。CPU66は、ALC制御用データが増加を要求する信号である場合には、増加分に応じてPWM値を挙げ、減少を要求する信号である場合には、減少分に応じてPWM値を下げることにより、ALC制御を行う。
治療光ユニット62の絞り機構72は、照明光ユニット61の絞り機構64と同様に構成され、CPU66によって制御される。但し、CPU66は、プロセッサ装置13のCPU41から、治療光の照射中断を指示する中断信号が入力された場合に、1フレームの期間、絞り開口91を閉じて治療光の照射を中断し、これ以外の期間は絞り開口91を全開させる。
中断信号は、VRAM28に記憶された5枚の観察画像のうち、新しい方から4枚の観察画像が連続してハレーション有り画像となったときに、CPU41からCPU66に出力される。CPU41は、ハレーションを検出したことを示す判別信号がハレーション検出部55から連続して入力された回数を計数することにより、これに応じて中断信号をCPU66に入力するか否かを決定する。
したがって、VRAM28に記憶された観察画像のうち、新しい方から4枚の観察画像がハレーション有り画像であった場合、次のフレームでは治療光の照射が一時中断され、ハレーション無し画像が撮影される。これにより、PDTによる治療中であっても、VRAM28には少なくとも1枚のハレーション無し画像が必ず記憶される。
図4に示すように、減光フィルタ85は、励起光の波長λ1の近傍と治療光の波長λ2の近傍で透過率が低く、その他の波長の光はほぼ100%透過する。減光フィルタ85は、励起光の波長λ1の近傍で透過率が低い第1のノッチフィルタと、治療光の波長λ2の近傍で透過率が低い第2のノッチフィルタを重ねて作製される。このため、励起光の波長λ1の透過率は、PDD時に用いる励起光の光量と発生する蛍光光とに応じて、治療光λ2の透過率はPDT時に用いる治療光の光量に応じて、各々定められる。なお、ここでは2種のノッチフィルタを組み合わせる例を説明したが、減光フィルタ85は、励起光と治療光を減光させることができれば良いので、光学薄膜等の具体的な構成は任意に定めることができる。
上述のように構成される電子内視鏡システム11の作用を説明する。電子内視鏡システム11によってPDD及びPDTを行う場合、術者は、前もって被検者に光感受性物質を投与する。光感受性物質の投与後、一定の時間が経過し、光感受性物質が腫瘍組織に十分に蓄積し、検査及び治療を開始する際には、術者は電子内視鏡12とプロセッサ装置13及び光源装置14を接続し、プロセッサ装置13及び光源装置14の電源をオンにする。また、治療プローブ73の基端部分を光源装置14に接続するとともに、治療プローブ73の先端を鉗子口74から電子内視鏡12に挿通する。そして、操作部51を操作して、被検体に関する情報等を入力するとともに、先端部20にフード81を取り付け、挿入部16を被検体内に挿入し、検査及び治療を開始する。挿入部16の挿入は、通常光を照明して被検体内を観察(以下、通常光観察という)しながら行われる。
図5に示すように、先端部20が腫瘍組織近傍に到達したら、操作部17を操作して、観察方法を通常光観察からPDDに切り替える。操作部17によって通常光観察からPDDへの切り替え指示が入力されると、CPU41は、波長選択フィルタ65を回転させ、PDD用の励起光を被検体内に入射させる。これにより、モニタ22にはPDDによる観察画像(以下、PDD画像という)が表示される。励起光の照射によって光感受性物質から蛍光光が発生するため、PDD画像には光感受性物質が蓄積した腫瘍組織が写し出される。術者は、PDD画像を観察しながら、腫瘍組織の位置や大きさ、形状等を把握する(ステップS11)。
その後、腫瘍組織の位置や大きさ,形状等に応じて、挿入部16を進退させ、また挿入部16を回転させすることにより、腫瘍組織に対する先端部20の位置や、鉗子出口76,84の位置を調節する。そして、治療プローブ73を鉗子出口76,84から突出させ、治療光の照射範囲内に腫瘍組織が収まるように、腫瘍組織に対する治療プローブ73の距離や向きを調節する(ステップS12)。
治療光プローブ73の位置等の調節が完了すると、術者は操作部51のペダルスイッチを踏むことにより、治療プローブ73の先端から治療光を照射させ、PDTによる腫瘍組織の治療を開始する。このとき、プロセッサ装置13のCPU41は、操作部51のペダルスイッチから治療光の照射開始信号を受けると、光源装置14のCPU66にこれを入力する。光源装置14のCPU66は、治療光ユニット62の光源71から治療光を発生させるとともに、絞り開口91が全開するように絞り機構72を制御し、最大光量の治療光を照射させる。同時に、光源装置14のCPU66は、波長選択フィルタ65を回転させ、照明光ユニット61から通常光をライトガイド32に入射させ、被検体内に通常光を照射させる。したがって、術者が操作部51のペダルスイッチを踏み、PDTを開始すると、腫瘍組織に向けて治療光が照射されるとともに、撮影用の照明光としては通常光が被検体内に照射され、通常光撮影が行われる(ステップS13)。
治療光の反射光は減光フィルタ85によって減光されるが、治療光は高光量であるため、減光フィルタ85を透過する僅かな光量によってもハレーションが生じてしまうことがある。このため、PDT時に通常光の照明下で撮影された通常光画像(以下、PDT画像という)に、腫瘍組織の周りにハレーションが生じることがある。このため、ハレーション検出部55は、DSP42から入力されるPDT画像について、各画素の画素値を所定の閾値と比較し、所定の閾値よりも画素値が大きい画素数を計数する。そして、計数した画素数が所定数以下であるか否かによって、入力されたPDT画像にハレーションが生じているかな否かを判別し、判別結果をCPU41に入力する(ステップS14)。
PDT画像がハレーション無し画像であった場合、このPDT画像を含め全5フレーム分のPDT画像がVRAM28に保持されるなか、CPU41は、表示制御回路44に今撮影した最も新しいPDT画像を選択取得してモニタ22に表示するように、画像選択信号を入力する。表示制御回路44は、CPU41から入力される画像選択信号にしたがって、今撮影された最も新しいPDT画像をモニタ22に表示する(ステップS15)。
一方、PDT画像がハレーション有り画像であった場合、このPDT画像はVRAM28に一時的に記憶されるものの、CPU41は、VRAM28に記憶される全5フレーム分の画像の中から、以前のフレームで撮影されたハレーション無し画像のうち最も新しいハレーション無し画像を選択取得するように、表示制御回路44に画像選択信号を入力する。表示制御回路44は、CPU41から入力される画像選択信号にしたがって、ハレーション無し画像のうち最も新しいものをモニタ22に表示する(ステップS16)。
このように、電子内視鏡システム11は、PDTによる治療を行っている間、治療光の照射を中断すること無くPDT画像を撮影し続けるとともに、モニタ22上には常にハレーション無し画像を表示させる(ステップS17)。
図6(A)に示すように、挿入部16の挿入時等、通常光だけを照射して撮影される通常光画像101は、被検体内の様子が鮮明に観察できる。但し、励起光以外の波長帯の光の光量と比較して腫瘍組織から発生する蛍光光の光量は小さいので、通常光画像101では腫瘍組織の位置や大きさ,形状等を明確に把握することは難しい。
一方、図6(B)に示すように、ステップS12でモニタ22に表示されるPDD画像102は、腫瘍組織103から発生した蛍光光と、これと同程度かそれ以下の光量に減光された励起光の反射光によって撮影されるので、腫瘍組織103が鮮明に観察される。PDD画像102を観察しながら治療プローブ73を先端部20から突出させると、PDD画像102に治療プローブ73の先端が写り込むので、治療光の照射範囲104に腫瘍組織103が収まるように、治療プローブ73の先端と腫瘍組織103の位置や距離を調節することができる。
ステップS13〜S16で治療光ととともに通常光で被検体内を照明して撮影されるPDT画像は、図6(C)に示すPDT画像105のように、被検体内壁と治療プローブ73の位置や向きによっては、通常光画像101とほぼ同様のハレーション無し画像が撮影される。しかし、図6(D)に示すPDT画像106のように、ほとんどのPDT画像は、治療光の照射範囲104とその周りにハレーション107が生じて、腫瘍組織周辺の主要部分が白飛びし、性状観察やPDTによる治療効果の確認等には不向きなハレーション有り画像となる。
ステップS13〜S16で撮影されたPDT画像(撮影画像)とモニタ22に表示される画像(表示画像)との関係を模式的に図7に示す。
時刻T01のフレームでPDT画像P06が撮影されたとする。PDT画像P06は、ハレーション有り画像である。このとき、VRAM28には、時刻T01以前の5フレームで撮影されたPDT画像P01〜P05が撮影順に記憶されている。PDT画像P01〜03とPDT画像P05はハレーション有り画像であり、PDT画像P04はハレーション無し画像である。
時刻T01のフレームでPDT画像P06が撮影されると、DIP43は、ハレーション検出部55によってPDT画像P06にハレーションが生じているか否かを判別すると同時に、VRAM28に記憶されたPDT画像P01〜P05のうち最も古いPDT画像P01を破棄させ、時刻T01のフレームで撮影されたPDT画像P06を新たにVRAM28に記憶させる。したがって、PDT画像P06が撮影されると、VRAM28にはPDT画像P02〜P06が記憶される。
このとき、CPU41は、VRAM28に記憶された各PDT画像P02〜P06が各々撮影された時点でハレーション検出部55から入力された判別結果に基づいて、VRAM28に記憶されたPDT画像P02〜P06のうち、ハレーション無し画像であるPDT画像P04を選択するように、表示制御回路44に画像選択信号を入力する。このため、時刻T01において撮影されたPDT画像P06はハレーション有り画像であるが、モニタ22には以前に撮影されたハレーション無し画像であるPDT画像P04が表示される。
また、続く時刻T02のフレームでPDT画像P07が撮影されると、VRAM28から最も古いPDT画像P02が破棄され、PDT画像P07が新たにVRAM28に記憶される。時刻T02で撮影されたPDT画像P07がハレーション有り画像であるとすると、CPU41は、VRAM28に記憶されたPDT画像P03〜P07のなかから、ハレーション無し画像であるPDT画像P04が再び選択されるように表示制御回路44に画像選択信号を入力する。これにより、時刻T01に続いて、時刻T02のフレームにおいてもハレーション無し画像であるPDT画像P04が表示画像として使用される。
さらに、時刻T03のフレームでPDT画像P08が撮影されると、VRAM28から最も古いPDT画像P03が破棄され、PDT画像P08が新たにVRAM28に記憶される。時刻T03のフレームで撮影されたPDT画像P08がハレーション無し画像であったとすると、VRAM28には、PDT画像P04とPDT画像P08の2枚のハレーション無し画像が同時に記憶される。このとき、CPU41は、VRAM28に記憶されたPDT画像のうち、ハレーション無し画像の中で最も新しいものを選択するように、表示制御回路44に画像選択信号を入力する。このため、表示制御回路44は、PDT画像P04とPDT画像P08の2枚のハレーション無し画像のうち、最新のハレーション無し画像であるPDT画像P08をモニタ22に表示させる。したがって、時刻T01,時刻T02と続いてハレーション無し画像であるPDT画像P04が表示されていたが、時刻T03のフレームでは表示画像がPDT画像P08に更新される。
続く時刻T04のフレームでPDT画像P09が撮影されると、VRAM28から最も古いPDT画像P04が破棄され、PDT画像P09が新たにVRAM28に記憶される。したがって、PDT画像P09がハレーション有り画像であるとすると、時刻T04では、前フレームで撮影されたPDT画像P08がモニタ22に表示される。
図8に示すように、時刻T21のフレームでPDT画像P25が撮影されると、時刻T21前の4フレーム分のPDT画像P21〜P24とともに、PDT画像P25がVRAM28に記憶される。PDT画像P21はハレーション無し画像であるとし、PDT画像P22〜P25はハレーション有り画像であるとする。この場合、時刻T21のフレームでは、ハレーション無し画像であるPDT画像P21がモニタ22に表示されるので、少なくとも時刻T21においては術者はハレーション無し画像を観察可能である。
しかし、時刻T21の次のフレームでハレーション有り画像が撮影されると、時刻T21の時点でVRAM28に記憶された唯一のハレーション無し画像であるPDT画像P21はVRAM28から破棄され、新たに撮影したハレーション有り画像がVRAM28に記憶されることになる。この場合、VRAM28にはハレーション無し画像が1枚も記憶されていないので、ハレーション有り画像を表示画像として用いなければならなくなる。
このため、CPU41は、ハレーションを検出したことを示す判別信号がハレーション検出部55から連続して入力された回数を計数する。そして、時刻T21のように、4連続でハレーション無し画像が撮影された場合、CPU41は光源装置14のCPU66に中断信号を入力し、次のフレームは治療光の照射を中断させる(ステップS21)。
これにより、時刻T21の次の時刻T22のフレームでは、治療光の照射しない状態で通常光の照明のもとPDT画像P26が撮影される。PDT画像P2は、治療光が照射されないのでハレーションは生じず、通常光画像と同様のハレーション無し画像となる。PDT画像P26がVRAM28に記憶されると、VRAM28に記憶されたPDT画像P22〜P26のなかで、ハレーション無し画像であるPDT画像P26がモニタ22に表示される。
電子内視鏡システム11は、上述のように4連続でハレーション有り画像が撮影された段階で、次のフレームにおいて治療光の照射を中断し、強制的にハレーション無し画像を撮影するので、VRAM28に記憶されるPDT画像が全てハレーション有り画像となってしまうことはなく、常にハレーション無し画像をモニタ22に表示させる。
図9(A)に示すように、電子内視鏡システム11は、PDTによる治療を行うときに、全てのフレームで腫瘍組織に治療光を照射しながら被検体内に通常光を照射してPDT画像を撮影する。そして、これらのPDT画像を5フレーム分、VRAM28に記憶しておき、VRAM28に記憶されたPDT画像の中から、最も新しいハレーション無し画像をモニタ22に表示する。したがって、電子内視鏡システム11によれば、PDTによる治療を行っている間、見かけ上、ハレーションの発生を防止して、PDT中の被検体内の通常光観察を可能とする。
一方、撮影画像の全てを撮影された順に全てモニタ22に表示する比較例の場合、図9(B)に示すように、ハレーションを防止するためには、治療光を照射して腫瘍組織の治療を行うフレームと、治療光を照射せずに通常光撮影を行うフレームとに分けて、治療とハレーションが生じない撮影を交互に繰り返すことになる。
図9(A)と図9(B)を比較すると、電子内視鏡システム11では、PDTによる治療中の全フレームで治療光を照射するのに対し、比較例では、1フレームおきにしか治療光を照射することができない。したがって、電子内視鏡システム11と比較例はともにハレーション有り画像がモニタ22に表示されることを防止するが、電子内視鏡システム11は、単位時間あたり比較例の2倍の治療光を照射することができるので、治療時間は半分に抑えられる。
また、電子内視鏡システム11は、4連続でハレーション有り画像が撮影された場合に、次の1フレームで治療光の照射を中断させ、ハレーション無し画像を強制的に撮影することによって、常にモニタ22上にハレーション無し画像が表示されることを保障する。このため、ハレーション有り画像ばかりが撮影されてしまう場合、電子内視鏡システム11では、ハレーション有り画像が最も撮影されにくいケースで、5フレームに1回、治療光が照射されないフレームがある。この場合であっても、電子内視鏡システム11は、単位時間あたりに比較例の8/5倍の治療光を照射することができ、治療時間は5/8に抑えることができる。PDTによる治療は概ね10分程度と長時間に及ぶため、治療時間を半分程度に抑えることによって、被検者への負荷は大きく低減される。
なお、上述の第1実施形態では、PDTによる治療を行う際に、PDT画像を撮影する例を説明したが、ハレーションが生じていないPDT画像は通常光画像とほぼ同様であり、腫瘍組織を蛍光観察することはできない。このため、PDTによる治療中には、PDD観察が行えることが好ましい。但し、励起光を照射することによって光感受性物質(腫瘍組織)から発生する蛍光光の波長と、治療光の波長は近く、治療光は蛍光光よりも極めて大きいので、PDTとPDDを同時に行うことができない。したがって、PDT画像の撮影とPDD画像の撮影を両立するためには、例えば、図10に示すように、PDT画像を撮影するフレームと、通常光及び治療光をオフにし、励起光を照射してPDD画像を撮影するフレームとを交互に行えば良い。こうしてPDT画像の撮影とPDD画像の撮影を交互に行う場合であっても、通常光撮影、PDT画像の撮影、PDD画像の撮影をそれぞれ別個のフレームに分けて順に行う場合よりも、治療時間を抑えることができる。PDT画像の撮影とPDD画像の撮影を両立させるときには、PDT画像とPDD画像をモニタ22上に並べて表示することが好ましい。
また、第1実施形態で説明したとおり、VRAM28はハレーション有り画像がモニタ22に表示されることを防止するために複数フレーム分のPDT画像を保持しなければならないが、これとPDD画像の撮影を両立させるためには、例えば、VRAM28を6フレーム分の記憶容量とする等、VRAM28に1フレーム分の予備領域を確保し、この予備領域を介してPDD画像をモニタ22に表示させれば良い。PDD画像を保持するフレームメモリを設け、これを予備領域としても良い。
なお、上述の第1実施形態では、治療光の照射を中断して強制的にハレーション無し画像を撮影する例を説明したが、治療光の照射を中断して強制的にハレーション無し画像を撮影したフレーム後の4フレームは、強制的に取得したハレーション無し画像が必ずVRAM28に記憶されているので、これらの4フレームのうちいずれかで、光源71の出力を増大させる等して治療光の光量を通常の治療光の光量よりも増大させることが好ましい。このように、強制的にハレーション無し画像を撮影したフレームにおいて、治療光の光量を増大させると、治療光の照射が中断されても短い治療時間を維持することができる。
なお、上述の第1実施形態では、常にハレーション無し画像がモニタ22に表示されるので、治療光が出射されているか否か、治療光が腫瘍組織に正しく照射されているか否か等、治療光自体を観察することが難しく、PDT画像に写し出される腫瘍組織の変化から推測する必要がある。このため、以下、第2実施形態として説明する電子内視鏡システム121のように、治療光の照射位置等、治療光の情報を表示することが好ましい。
[第2実施形態]
図11に示すように、電子内視鏡システム121は、DIP43にハレーション検出部122を有する。ハレーション検出部122は、観察画像のハレーションを検出する点は第1実施形態のハレーション検出部55と同様である。但し、ハレーション検出部122は、観察画像のハレーションを検出するときに、画素値が所定の閾値よりも大きい画素群の輪郭等の特徴データを抽出する。ハレーション検出部122が抽出した輪郭等の特徴データは、表示制御回路123に入力される。また、ハレーション検出部122は、観察画像にハレーションが検出されなかった場合には、以前の観察画像から抽出した特徴データのなかで最新のものを表示制御回路123に入力する。表示制御回路123は、CPU41から入力される画像選択信号に基づいて、VRAM28に記憶されたPDT画像の中から最新のハレーション無し画像を取得し、モニタ22に表示する。このとき、表示制御回路123は、ハレーション検出部122から入力される特徴データをハレーション無し画像に重畳してモニタ22に表示する。
例えば、図12(A)に示すように、ハレーションがあるPDT画像131が撮影された場合、ハレーション検出部122は、図12(B)に示すように、ハレーションの有無を検出するために用いる所定の閾値よりも画素値が大きい画素群をハレーション132として検出するとともに、その輪郭133を抽出する。表示制御回路123は、CPU41からの画像選択信号に基づいてハレーションが生じていない最新のPDT画像をVRAM28から取得すると、ハレーション検出部122から特徴データとして入力される輪郭133を重畳した輪郭合成画像134をモニタ22に表示する。輪郭合成画像134は、治療プローブ73の先端や腫瘍組織を観察可能であるとともに、ハレーション132の輪郭133が表示されていることによって、治療光の照射位置や範囲を推察しやすくなっている。
また、PDT画像131から抽出する特徴データは、図12(C)に示すように、治療光の照射スポット135の輪郭を抽出しても良い。照射スポット135の輪郭の抽出は、例えば、ハレーションの検出に用いる所定の閾値よりも大きい照射スポット抽出用の第2の閾値を用意しておき、ハレーション検出部122がハレーション132を検出する際に、第2の閾値を超える画素値を持つ画素群を同時に検出し、その輪郭を抽出することによって行う。
そして、図12(D)に示すように、表示制御回路123は、VRAM28から取得したハレーション無し画像に、抽出した照射スポット135の輪郭を重畳した照射スポット合成画像136をモニタ22に表示する。照射スポット合成画像136によれば、ハレーション132の輪郭133を重畳する場合よりも、治療光の照射位置や照射範囲をより明確に把握することができる。
上述の電子内視鏡システム121のように、PDT時にモニタ22に表示するハレーション無し画像にハレーション132の輪郭133や治療光の照射スポット135を重畳表示することで、治療プローブ73から治療光が出射されているか否か、腫瘍組織に治療光が正確に当たっているか否か、治療光の照射範囲に腫瘍組織の全体が収まっているか否か等、ハレーション無し画像からは直接的には把握することが難しい、治療光そのものに付随した情報を容易に確認することができるようになる。
なお、ここでは、撮影したPDT画像131からハレーション132の輪郭133や照射スポット135の輪郭を特徴データとして抽出し、これをモニタ22に表示する画像に重畳する例を説明したがこれに限らない。例えば、図13に示すように、VRAM28から表示制御回路123が取得したPDT画像141に、最新のPDT画像142の全体を一定の比率で混合した混合画像143を生成し、これをモニタ22に表示させても良い。この場合にも、モニタ22に表示される混合画像143から、被検体内や腫瘍組織と、治療光そのものに付随した情報を同時に把握することができる。
混合画像143は、例えば、PDT画像141の全画素値を90%にし、PDT画像142の全画素値を10%にして、各々対応する画素の画素値を加算した値を各画素の画素値とした画像である。混合画像42の生成は、ハレーション検出部122から表示制御回路123に最新のPDT画像142を入力させ、表示制御回路123で行うようにしても良いし、混合画像142を生成する回路をDIP43等に別途設けても良い。また、混合画像142は、最新のPDT画像142の全体ではなく、画像中央の一部分等、治療光の照射スポットの全体を含むPDT画像142の一部分を、VRAM28から表示制御回路123が取得したPDT画像141に混合させて生成しても良い。
なお、上述の第2実施形態では、PDT画像にハレーションの輪郭や治療光の照射スポットを重畳する例を説明したが、比較例(図9(B))のように、いわゆる通常光画像を撮影する場合には、通常光画像にハレーションの輪郭や治療光の照射スポットを重畳して表示しても良い。また、PDTによる治療中にPDD画像を撮影する場合(図10参照)には、PDD画像にハレーションの輪郭や治療光の照射スポットを重畳させても良い。
なお、上述の第1実施形態では、PDD画像を確認して腫瘍組織の位置や大きさ,形状等を把握する。また、第2実施形態では、ハレーションや照射スポットの輪郭をPDT画像に重畳することで治療光の照射位置や照射範囲を報知する例を説明した。しかし、腫瘍組織に治療光が効率良く照射されるか否かは術者の手技によって決まるので、術者の技量によっては、治療光の照射不足が生じたり、治療光の照射不足を防ぐために過剰に治療光を照射しておく必要がある。このため、PDTを行う電子内視鏡システムでは、腫瘍組織に効率良く治療光が照射されているか否かを客観的に判断できるように表示し、術者をサポートできることが好ましい。この例を以下に第3実施形態として説明する。
[第3実施形態]
図14に示すように、電子内視鏡システム301は、第1実施形態の電子内視鏡システム11と同様に、PDT中にハレーション有り画像が撮影された場合に、モニタ22への表示画像をハレーション無し画像に差し替えて表示する電子内視鏡システムであるが、照射光量推定部303と表示制御回路304を備え、動作モードとしてPDT準備モードを備える点が電子内視鏡システム11と異なる。
PDT準備モードは、PDTによる治療の開始に先立って、腫瘍組織に対する先端部20及び治療プローブ73の位置や向きを調節するための動作モードであり、操作部51からの入力により開始される。PDT準備モードが開始されると、CPU41は、CPU66にPDT準備モード開始信号を入力する。CPU66は、PDT準備モード開始信号が入力されると、絞り機構72を制御して、ハレーションが生じない程度に低光量の治療光を被検体内に照射させる。この低光量治療光の反射光によって、PDT準備モード下で撮影される通常光画像に、現在の先端部20及び治療プローブ73の位置や向きに応じた治療光の照射スポットが表示される。また、PDT準備モードでは、関心領域(以下、ROIという)を指定する。ROIは、PDD画像によって把握された腫瘍組織を含むように、例えば長方形の範囲で指定される。
照射光量推定部303は、PDT準備モード下で動作する。照射光量推定部30は、指定されたROIの中央の画素座標を算出し、これを通る横方向(x方向)及び縦方向(y方向)の2方向に沿って、撮影された通常光画像の赤色画素の画素値を抽出する。照射光量推定部30は、抽出した赤色画素の画素値のデータ列を、治療光の推定照射光量として、表示制御回路304に入力する。表示制御回路304は、照射光量推定部303から入力された治療光の推定照射光量をヒストグラム化して、通常光画像とともに並べてモニタ22に表示させる。また、表示制御回路304は、指定されたROI内の画素についての柱を着色して表示する。
図15に示すように、電子内視鏡システム301をPDT準備モードで動作させ、操作部51を用いてROI313を指定すると、モニタ22には、通常光画像310とともに、ヒストグラム311、ヒストグラム312が表示される。ヒストグラム311は、ROI313の中心を通る通常光画像310の横方向についての治療光の推定照射光量であり、ヒストグラム312は、ROI313の中心を通る通徐行画像310の縦方向についての治療光の推定照射光量である。また、通常光画像310には低光量の治療光が当たっている位置が照射スポット314として識別できる。術者は、ヒストグラム311,312のピーク位置やピークの値、照射スポット314の位置を観察しながら、腫瘍組織に対する治療光の照射位置や向き、治療光の照射範囲等を調節する。
例えば、図16(A)に示すように、先端部20が寝ている状態(被検体内壁321に対して平行に近い状態)の場合、照射スポット314内に腫瘍組織322が収まっていても、低光量治療光323の反射光はCCD21に入射しにくいので、ヒストグラム311,312は全体的に低い値を示す。これは、治療光の照射効率が悪いことを示す。また、先端部20に対して垂直に近い手前の腫瘍組織322の隆起の手前側(先端部20に近い側)からの反射光が多く、腫瘍組織322の隆起の奥側(先端部20から遠い側)からの反射光は少ないので、ヒストグラム311,312のピーク位置はROI313の中心位置からずれる。こうしたことを観察しながら、図16(B)に示すように、術者が操作部17のアングルノブを操作して先端部20の向きを、被検体内壁312に垂直に近い向きに変更すると、腫瘍組織322からの低光量治療光323の反射光量が大きくなり、ヒストグラム311,312は全体的に高い値を示すようになる。ヒストグラム311,312が全体として高い値を示すようになることは、腫瘍組織322に効率良く治療光が照射されることを示す。また、治療光の照射範囲は、照射スポット314の位置を観察しながら、挿入部16や治療プローブ73を進退する方向に移動することによって調節される。なお、実際には、被検体内壁321は動くので、被検体内壁312の動きがあっても、できるだけヒストグラム311,312が高い値を示し、ピーク位置がROI313の中央に位置するように先端部20及び治療プローブ73の位置や向きが調節される。
電子内視鏡システム301は、PDT準備モードにおいて、腫瘍組織への治療光照射効率をヒストグラム311,312として客観的に判断できるように表示する。このため、治療光が効率良く腫瘍組織に照射されるように先端部20や治療プローブ73の位置や向きを容易に調節することができる。これにより、PDTによる治療をより効率良く行うことができる。また、治療光の照射不足も起こりにくい。
なお、上述の第3実施形態では、PDT準備モードにおいて術者がPDD画像で確認した腫瘍組織の位置や大きさ等に基づいてROI313を指定する例を説明したが、これに限らない。例えば、PDD画像を撮影したときに、PDD画像から腫瘍組織322の位置や大きさ、形状等を表す特徴点を抽出し、抽出した特徴点に基づいて、腫瘍組織322を囲むように通常光画像310にROI313を自動的に設定するようにしても良い。この場合、PDD画像からの腫瘍組織の特徴量の抽出は、専用の回路等を設けても良いし、DIP43やDSP42を特徴点抽出手段として機能させても良い。また、このようにROI313を自動設定する場合、被検体内壁321の動きや、先端部20の移動等に応じて、ROI313の位置を追従させることが好ましい。
なお、上述の第3実施形態では、治療光が赤色であることに応じて赤色画素の画素値を抽出することによりヒストグラム311,312を表示するが、他の色の治療光が必要な光感受性物質を用いる場合には、対応する色の画素値を抽出したり、複数の色の画素値の和を算出して、照射光量を示すヒストグラムを生成すれば良い。
なお、上述の第3実施形態では、PDT時にハレーション有り画像が撮影されたときに過去に撮影されたハレーション無し画像を表示すること(第1実施形態)を前提に説明したが、比較例(図9(B))のように、PDTと通常光撮影を交互に行う場合にもPDT準備モードを設けることによってPDTによる治療効率を向上させることができる。
なお、上述の第3実施形態では、PDTによる治療の前にPDT準備モードを行うことでPDTによる治療効率を向上させる例を説明したが、PDTによる治療中に、その治療効果を確認したいという要望もある。このため、PDTを行うことができる電子内視鏡システムでは、PDTによる治療の最中に、その治療効果を客観的に示すことができると好ましい。以下、PDT時に、その治療効果を示す例を実施形態4として説明する。
[第4実施形態]
図17に示すように、電子内視鏡システム401は、PDT中にハレーション有り画像が撮影された場合に、モニタ22への表示画像をハレーション無し画像に差し替えて表示する電子内視鏡システムであるとともに、上述の第3実施形態の電子内視鏡システム301と同様に、PDT準備モードにおいてROIの治療光の推定照射光量を推定する機能する照射光量推定部403と、表示制御回路404を備える。但し、電子内視鏡システム401の照射光量推定部403は、PDT準備モード中だけでなく、PDTによる治療を行っている間においても動作し、順次撮影されるPDT画像を用いて治療光の総照射光量を算出する。照射光量推定部403は、順次撮影されるPDT画像について、同位置の画素の画素値を順次加算することにより、画素毎に累積画素値を算出する。通常、通常光と比較して治療光の光量は極めて大きいので、各画素の累積画素値は、概ね治療光の総照射光量を表す。このため、以下、照射光量推定部403が算出する累積画素値を、治療光の総照射光量という。
照射光量推定部403による治療光の総照射光量の算出は、動作準備モードにおいて指定されたROIに含まれる各画素について行われるとともに、撮影されたPDT画像がハレーション有り画像か、ハレーション無し画像かによらず、全てのPDT画像の画素値を加算することによって算出される。また、照射光量推定部403による治療光の総照射光量は、PDTによる治療を開始すると、治療光が照射される限り継続される。したがって、術者がPDTによる治療中にペダルスイッチを放して治療光の照射を一時中断した場合には、照射光量推定部403は各画素値の加算を中断するが、術者が再びペダルスイッチを踏み、治療光の照射が再開されたときには、治療光の照射を中断する前に算出された値にさらに各画素値を加算する。さらに、照射光量推定部403は、ROIについて、治療光の総照射光量を所定のカラーマップにしたがってマッピングした治療効果画像を順次生成する。なお、カラーマップはグレースケールでも良い。治療効果画像は、表示制御回路404に入力される。
表示制御回路404は、PDT準備モードにおいてヒストグラム311,312を表示する。また、PDTによる治療中においては、表示制御回路404は、VRAM28から選択取得したハレーション無し画像に、照射光量推定部403から順次入力される治療効果画像を重畳して表示する。このとき、治療効果画像は、ROIに重畳される。
図18に示すように、電子内視鏡システム401は、動作準備モードにおいて指定したROI313に治療効果画像を重畳したPDT画像410をモニタ22に表示する。PDT画像410は、治療効果画像が重畳されたことによって、治療光の総照射光量、すなわち治療の進捗状況を把握することができる。例えば、ROI313内が全て所定色(図18では最も色が濃い部分)になることが、腫瘍組織411に十分な治療光が照射されたことを示す判断基準となる。また、PDT画像410に治療の進捗状況が示されているので、PDT画像410を観察しながら、腫瘍組織411が早期に所定色で埋まるように、先端部20及び治療プローブ73の位置や向きを微調節することもできる。なお、図18は、治療効果画像が重畳されたPDT画像410の例(上段)と、このPDT画像410のROI313の拡大図(下段)を例示したが、ROI313の拡大図を実際に生成し、ROI313の拡大図PDT画像410に並べてモニタ22に表示させたり、あるいはROI313の拡大図だけをモニタ22の全面に表示させる拡大表示モードを設けても良い。
上述のように、電子内視鏡システム401は、順次撮影されるPDT画像の画素値を加算した累積画素値に基づいた値を画素値とする治療効果画像を作成し、これを表示画像に重畳して表示する。このため、電子内視鏡システム401は、PDTによる治療中に、その進捗状況を把握することができる。
また、上述の第4実施形態では、治療効果画像を治療光の総照射光量を所定のカラーマップにしたがってマッピングして作成するが、治療光の総照射光量に基づいた治療の進捗状況の表示方法はこの例に限らない。例えば、図19に示すように、平面状の治療効果画像のかわりに、治療光の総照射光量に基づいて立体的なヒストグラム画像420を作成しても良い。この場合、モニタ22に表示するときには、PDT画像410と立体的なヒストグラム画像420を並べて表示することが好ましい。また、PDT画像410への治療効果画像の重畳表示と立体的なヒストグラム画像420を併用しても良い。
なお、上述の第4実施形態では、ROIについて治療効果画像を作成して、ROI内の治療の進捗状況をモニタ22に表示する例を説明したが、PDT画像の全面について治療効果画像を作成し、モニタ22に表示するハレーション無し画像の全面について治療の進捗状況を示しても良い。
なお、上述の第4実施形態では、PDT時にハレーション有り画像が撮影されたときに過去に撮影されたハレーション無し画像を表示することを前提に説明したが、典型例(図9(B))のように、PDTと通常光撮影を交互に行う場合にも、PDT画像を撮影するようにすれば、上述の第4実施形態を好適に適用できる。また、PDT準備モードは、省略しても良い。
なお、上述の第4実施形態では、PDTによる治療効果をモニタ22に表示する様態を説明したが、モニタ22に表示させるPDT画像410には、さらに、第2実施形態で説明した電子内視鏡システム121と同様にして、ハレーションや治療光の照射スポットの輪郭を表示させることが好ましい。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、DIP43をハレーション検出部として機能させる例を説明したが、これに限らない。例えば、DSP42をハレーション検出部として機能させても良い。また、DIP43やDSP42とは別にハレーション検出部55として機能する専用の回路等を設けても良い。こうした場合には、各々のケースに応じて、画素値と比較する閾値の具体的な値や、ハレーションの有無を判別する基準(閾値より画素値が大きい画素の個数)等は各々のケースに応じて定める。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、4連続でハレーション有り画像が撮影された場合に、次のフレームでは絞り開口91を閉じ、治療光の照射を一時中断することによって強制的にハレーション無し画像を撮影する例を説明したが、ハレーション無し画像を強制的に撮影する様態はこの例に限らない。例えば、PDTによる治療中に強制的にハレーション無し画像を撮影する場合、絞り開口91の開口量を減らして治療光を減光させても良い。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、VRAM28を5フレーム分の記憶容量とする例を説明したが、VRAM28は複数フレーム分のPDT画像を記憶することができれば、その記憶容量は任意である。但し、VRAM28を2フレーム分の記憶容量とする等、VRAM28の記憶容量が小さい場合には、治療光の照射を中断するケースが多くなり、治療時間の短縮効果は小さくなる。また、VRAM28の記憶容量を大きくし、これを全てPDT画像の保持のために利用する場合、強制的にハレーション無し画像を撮影するケースが過度に抑制され、古いハレーション無し画像がモニタ22に表示され続け、腫瘍組織や被検体内の実際の変化を観察しにくくなる場合がある。このため、PDTによる治療中の被検体内及び腫瘍組織を自然に観察するためには、VRAM28の記憶容量を5〜15フレーム程度の記憶容量とすることが好ましい。
なお、上述の第1〜第4実施形態では撮像素子としてCCD21を用いる例を説明したが、CMOS型のイメージセンサを用いても良い。また、電子内視鏡システム11,121に用いる撮像素子としては、照明光の色をRGBに順に切り替えてフレーム毎に各色の撮像信号を得る方式(いわゆる面順次式)のものを採用してもよいが、治療時間をより短縮するためには、各画素にRGB等のカラーフィルタ設けられ、カラーの撮像信号を得る方式(いわゆる同時式)のものを用いることが好ましい。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、治療光が照射されるパルス周期と、CCD21の駆動周期(撮影の周期)が合致し、各フレームの中央で治療光が照射される例(図9参照)を説明したが、CCD21の駆動周期と治療光のパルス周期は合致していなくても良い。CCD21の駆動周期と治療光のパルス周期が合致していない場合には、治療光が照射されないフレームが一定の間隔で生じるので、自然にハレーション無し画像を取得することができる。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、治療光がパルス照射される例を説明したが、PDTによる治療を行っている間、継続的に治療光を照射するようにしても良い。
なお、PDD及びPDTに用いる光感受性物質は、治療対象となる部位(腫瘍組織等)に蓄積し、励起光の照射により蛍光光を発し、治療光を照射することによって治療対象となる部位を治療可能であれば、任意のものを用いることができる。PDD用の励起光の波長やPDT用の治療光の波長は、使用する光感受性物質に応じて定めれば良い。また、励起光や治療光の波長が異なる複数種類の光感受性物質を用いることがある場合には、各々に応じて光源等を設けておけば良い。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、波長選択フィルタ65によって照明光ユニット61から、通常光またはPDD用の励起光が照射される例を説明したがこれに限らない。例えば、波長選択フィルタ65は、通常光と、PDD用の励起光と、光源63から発せられた通常光を特定の短い波長帯の光(以下、特殊光という)に制限する機能を持ったフィルタとしても良い。この場合、例えば、扇形の複数エリアに区切り、各エリアが通常光,PDD用の励起光,特殊光を透過するようにした円板を上述の実施形態のように回転制御すれば良い。特殊光としては、例えば、450nm、500nm、550nm、600nm、780nm近傍の波長の光が挙げられる。
450nm近傍の特殊光による撮影は、表層の血管やピットパターン等の被観察部位表面の異微細構造の観察に適している。500nm近傍の照明光では、被観察部位の陥凹や隆起等のマクロな凹凸構造を観察することができる。550nm近傍の照明光は、ヘモグロビンによる吸収率が高く、微細血管や発赤の観察に適し、650nm近傍の照明光は、肥厚の観察に適している。深層血管の観察には、インドシアニングリーン(ICG)等の蛍光物質を静脈注射し、780nm近傍の照明光を用いることで明瞭に観察することができる。
なお、上述の第1及び第2実施形態では、波長選択フィルタ65を用いて通常光をPDD用の励起光とする例を説明したが、通常光を発光する光源63とは別個にPDD用の励起光を発光する光源を設け、ミラー等の光学系によってライトガイド32に入射させる照明光を、通常光と励起光とで切り替えるようにしても良い。
なお、上述の第1〜第4実施形態では、光源63としてハロゲンランプを用いる例を説明したが、LEDやLDを光源63として用いても良い。この場合、波長帯の異なる光を発するLEDやLD等を複数備えておき、これらの点灯と消灯を制御することによって通常光と励起光を切り替えても良い。また、青色レーザ光源と、青色レーザ光を照射されることにより緑色〜赤色の蛍光光を発する蛍光体を用いて通常光を発生させても良い。さらに、他の用途に用いる光源を併用しても良い。以下、全ての光源にLDを用いる場合の例を説明する。
例えば、図20に示すように、電子内視鏡システム500の光源装置501は互いに中心波長が異なるレーザ光源LD1〜LD12を備える。各レーザ光源LD1〜LD12は、CPU66によりそれぞれ個別に調光制御されており、各レーザ光を個別に又は同時に発生することができる。また、各レーザ光源の発光のタイミングや光量比は任意に変更可能となっており、各レーザ光が出射される照明窓からの光のスペクトルを、それぞれ個別に変更できる。
LD1は、中心波長405nmのレーザ光を出射する狭帯域光観察用の光源である。LD2は中心波長445nmのレーザ光を出射して後述する波長変換部材である蛍光体を用いて白色光(通常光)を生成するための光源である。LD3及びLD4は、波長405nmのレーザ光を出射する光源であり、PDD等の蛍光観察時に用いられる。LD5及びLD6は、中心波長472nmのレーザ光を出射する光源であり、血中の酸素飽和度と血管深さの情報を抽出するために用いられる。LD7及びLD8は、中心波長665nmのレーザ光を出射する光源であり、PDTに用いられる。LD9及びLD10は、中心波長785nmのレーザ光を出射する光源であり、血管に注入したIGCの赤外光観察に用いられる。LD11及びLD12は、中心波長375nmのレーザ光を出射する光源であり、ルシフェラーゼを用いた蛍光観察を行うための光源である。なお、各レーザ光源は、上記中心発光波長の±10nmの範囲に入っていれば良い。
各レーザ光源LD1〜LD12から出射されるレーザ光は、それぞれ集光レンズ(図示しない)により光ファイバ502A〜502Dに導入される。LD1,LD2からのレーザ光は、光ファイバ502B,502Cを通じて先端部20に配置された蛍光体503に伝送され、LD3〜LD12からのレーザ光は、光ファイバ502A,502Dを通じて光拡散部材504に伝送され、照明光や励起光、治療光として被検体内に向けて出射される。
なお、LD1とLD2からのレーザ光は、コンバイナ506により合波して1系統の光路とされた後、カプラ507により分波して2系統の光路とし、それぞれコネクタ18に伝送される。これにより、LD1とLD2からのレーザ光が、各レーザ光源の個体差による発光波長のばらつきやスペックルが軽減されて光ファイバ502B,502Cに均等に伝送される。ここでは、コンバイナ506及びカプラ503を用いるが、これらを用いずに各レーザ光源LD1,LD2からのレーザ光をコネクタ18に送出する簡略化した構成としても良い。
光ファイバ502Bと蛍光体503は投光ユニット511Bを構成し、光ファイバ502Cと光拡散部材504は投光ユニット511Cを構成する。また、光ファイバ502Aと蛍光体503は投光ユニット511Aを構成し、光ファイバ502Dと蛍光体503は投光ユニット511Dを構成する。
図21(A)に示すように、投光ユニット511B,511Cは、それぞれ同一の構成であって、蛍光体503と、蛍光体503の外周を覆う筒状のスリーブ部材513と、スリーブ部材513の一端側を封止する保護ガラス(照明窓)514と、スリーブ部材513に挿入された光ファイバ502B(,502C)を中心軸に保持するフェルール515とを備えている。また、フェルール515の後端側から外皮に覆われて演出される光ファイバ502B(,502C)には、その外皮の外側を覆うフレキシブルスリーブ516との間に挿入されている。
投光ユニット511B,511Cの蛍光体503は、レーザ光源LD2からの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する蛍光物質(例えばYAG蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl10O17)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起発光光と、蛍光体503により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて白色(擬似白色)の通常光が生成される。
また、図21(B)に示すように、投光ユニット511A,511Dも同一構成であり、投光ユニット511B,511Cの蛍光体503に代えて光拡散部材504が配設され、光ファイバ502B,502Dから導光される点以外は、投光ユニット511B,511Cと同様の構成となっている。
図22に示すように、投光ユニット511A,511Dの対と、投光ユニット511B,511Cの対は、先端部20の先端面のける対物光学系31を挟んだ両脇側に対として配置される。そして、例えば、投光ユニット511B,511Cに対してLD2から青色レーザ光を導入することにより、白色光(通常光)が生成され、投光ユニット511B,511Cから被検体内に照射される。また、投光ユニット511A,511Dに対してLD3,LD4から中心波長が405nmのレーザ光(PDD用の励起光)と、LD7,LD8から中心波長が665nmのレーザ光(治療光)とを選択的に導入することにより、投光ユニット511A,511Dから励起光と治療光のいずれかが被検体内に照射される。
なお、PDD用の励起光、励起光の照射によって生じる蛍光光(PDD蛍光)、PDT用の治療光の波長を薬剤毎に図23に示す。PDDの励起光としては、フォトフリン、レザフィリン、ビスダイン、5−ALA(アミノレブリン酸)のいずれの蛍光薬剤を使用した場合でも中心波長350〜450nmのレーザ光が利用可能であり、中心波長が405nmのレーザ光が好適に用いられる。5−ALAはプロトポルフィリンIXの蓄積によるもので、病巣の進行によって蛍光の波長比が変化する。