以下、抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、抵抗測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す抵抗測定装置1は、クランプ部2、およびクランプ部2とケーブル3を介して接続された装置本体部4を備え、測定対象回路5の抵抗(ループ抵抗)の抵抗値Rxを測定可能に構成されている。なお、本例では,発明の理解を容易にするため、測定対象回路5は、インダクタンス成分やキャパシタンス成分を含まない純抵抗成分のみで構成される回路であるものとする。また、クランプ部2および装置本体部4を構成する後述の各構成要素での信号の遅延はゼロであるものとする。
クランプ部2は、図1に示すように、注入クランプ部11、検出クランプ部21およびハウジング31を備えて構成されている。一例として、本例では、注入クランプ部11は、2つに分割された第1環状コア12、および第1環状コア12に巻回された注入コイルとしての第1巻線13(既知のターン数:N1)を有している。また、検出クランプ部21は、2つに分割された第2環状コア22、および第2環状コア22に巻回された第2巻線23(検出コイル(既知のターン数:N2))を有している。また、注入クランプ部11および検出クランプ部21は、先端が開閉自在なクランプ型の樹脂製のハウジング31に共に収容されて、このハウジング31の開閉動作に伴い、それぞれの第1環状コア12および第2環状コア22が同時に開閉するように構成されている。この構成により、ハウジング31を開状態としてその内側に測定対象回路5の一部を構成する配線5aを導入することで、開状態となった第1環状コア12および第2環状コア22のそれぞれの内側にも配線5aが導入され、この状態においてハウジング31を閉状態とすることで、閉状態となった第1環状コア12および第2環状コア22によって配線5aが同時にクランプされた状態、すなわちクランプ部2によって配線5aがクランプされた状態となる。この場合、配線5aは、第1環状コア12および第2環状コア22において1ターンの巻線として機能する。
装置本体部4は、図1に示すように、電圧注入部41、電流検出部42、ノイズ検出部43、処理部44および出力部45を備えている。電圧注入部41は、D/A変換部51、電力増幅部52および注入クランプ部11を備えて構成されている。この場合、D/A変換部51は、処理部44から出力された交流波形データ(本例では一定の周期Tで値が一巡する正弦波波形データ)Dvに基づいて、図5に示すように周期Tの交流電圧Va(周波数f(=1/T))を生成して出力する。電力増幅部52は、この交流電圧Vaを所定の増幅率で増幅して予め規定された電圧値(本例では電圧実効値)の交流電圧V1を生成すると共に、生成した交流電圧V1を注入クランプ部11の第1巻線13に印加する。これにより、注入クランプ部11を介して測定対象回路5に所定の電流値(本例では電流実効値)の検査用交流信号Vxが注入される。この場合、上記したように配線5aが第1環状コア12において1ターンの巻線として機能するため、測定対象回路5に注入される検査用交流信号Vxは、その電圧値が交流電圧V1をターン数N1で除算して得られる電圧値(Vx=V1/N1)となる。また、検査用交流信号Vxは交流電圧Vaに基づいて生成されるため、交流電圧Vaと同期した信号、つまり後述する基準信号Srに同期した信号となる。検出クランプ部21は、第2環状コア22において配線5aが1ターンの巻線として機能するため、測定対象回路5に流れる交流電流Ixを検出して、その第2巻線23に交流電流Ixの振幅に応じて振幅が変化する検出電流(検出コイルに流れる電流)I1(=Ix/N2)を出力する。
電流検出部42は、検出クランプ部21、第1増幅部61、第1バンドパスフィルタ(以下、「第1BPF」ともいう)62、第1切替部63、第2増幅部64、第2バンドパスフィルタ(以下、「第2BPF」ともいう)65、第2切替部66、第3増幅部67およびA/D変換部68を備えている。
第1増幅部61は、図1に示すように、第2巻線23の一端に接続されて、この一端に発生する検出電流I1を第1電圧信号Vb1(第2巻線23から第1増幅部61を介して出力される電流検出信号)に変換して出力する。また、第1増幅部61は、一例として、図2に示すように、第1演算増幅器61a、抵抗61b,61c,61dおよび第1コンデンサ61eを備えて構成されている。この場合、第1演算増幅器61aは、その反転入力端子が第2巻線23の一端に直接接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗61bが帰還抵抗として接続され、非反転入力端子が抵抗61cを介して接地されて(基準電圧(グランド電圧:ゼロボルト)が入力される一例)、入力した検出電流I1を電圧信号Vb(振幅が検出電流I1の電流値に比例して変化する信号)に変換して出力する。第1コンデンサ61eは、第1容量性素子の一例であって、第1演算増幅器61aの後段に配設されて(本例では、その一端が第1演算増幅器61aの出力端子に直接接続されて)、電圧信号Vbに含まれる直流成分を除去する。また、第1コンデンサ61eは、その他端が抵抗61dを介して接地されている。これにより、第1コンデンサ61eにおいて直流成分が除去された電圧信号Vbは、その直流レベルが接地電位(ゼロボルト)に規定されて、ゼロボルトを中心として変化する交流信号である第1電圧信号Vb1として第1増幅部61から出力される。
第1BPF62は、第1フィルタ部であって、一例としてバンドパスフィルタに構成されて、入力した第1電圧信号Vb1に含まれている交流電圧Vaの高調波成分を除去して(フィルタリング処理して)、第1電圧信号Vb2として出力する。具体的には、第1BPF62は、第1電圧信号Vb1に含まれている交流電圧Vaの基本周波数成分(周波数fの成分。検査用交流信号Vxの基本周波数成分でもある)を選択的に(主として)通過させることで、第1電圧信号Vb2を出力する。この場合、第1BPF62は、その通過帯域を交流電圧Vaの基本周波数成分のみを通過させ得るように構成されるのが好ましいが、実際問題として、このような理想的な通過帯域に構成することは困難である。このため、第1BPF62の通過帯域は、交流電圧Vaの基本周波数成分を含むある程度の幅を持つ狭帯域の通過帯域(周波数帯域)に規定される。したがって、周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分は、第1BPF62では除去されずに、第1電圧信号Vb2に含まれた状態で出力される。
第1切替部63は、第1抽出部の一例であって、第1電圧信号Vb2の正側波形および第2BPF65から出力される後述の第2電圧信号Vc2の正側波形で構成される脈流信号である片極性信号としての正極性信号Vdを抽出して出力する。具体的には、第1切替部63は、例えば図2に示すようにアナログスイッチで構成されて、処理部44から出力される基準信号Sr(図5に示すように交流電圧Vaに同期し、かつデューティ比が0.5のクロック信号)に同期して、同図に示すように、第1電圧信号Vb2と第2電圧信号Vc2とを半周期ずつ切り替えて出力する(同期検波動作する)ことにより、正極性信号Vdを出力する。この場合、第1電圧信号Vb1および第1電圧信号Vb2、並びに後述する第2電圧信号Vc1および第2電圧信号Vc2は、交流電流Ixの振幅に応じて振幅が変化する検出電流I1に基づいて生成された信号であるため、この第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2に基づいて生成される正極性信号Vdは、交流電流Ixの振幅に応じて振幅が変化する。
第2増幅部64は、図1に示すように、第2巻線23の他端に接続されて、この他端に発生する検出電流I1を第2電圧信号(第2巻線23から第2増幅部64を介して出力される電流検出信号)Vc1に変換して出力する。また、第2増幅部64は、一例として、図2に示すように、第2演算増幅器64a、抵抗64b,64c,64dおよび第2コンデンサ64eを備えて、第1増幅部61と同一に構成されている。この場合、第2演算増幅器64aは、その反転入力端子が第2巻線23の他端に直接接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗64bが帰還抵抗として接続され、非反転入力端子が抵抗64cを介して接地されて(基準電圧(グランド)が入力される一例)、入力した検出電流I1を電圧信号Vc(振幅が検出電流I1の電流値に比例して変化し、かつ電圧信号Vbと逆極性の信号)に変換して出力する。第2コンデンサ64eは、第2容量性素子の一例であって、第2演算増幅器64aの後段に配設されて(本例では、その一端が第2演算増幅器64aの出力端子に直接接続されて)、電圧信号Vcに含まれる直流成分を除去する。また、第2コンデンサ64eは、その他端が抵抗64dを介して接地されている。これにより、第2コンデンサ64eにおいて直流成分が除去された電圧信号Vcは、その直流レベルが接地電位(ゼロボルト)に規定されて、ゼロボルトを中心として変化する交流信号である第2電圧信号Vc1として第2増幅部64から出力される。ここで、第2巻線23の他端に発生する検出電流I1は、一端に発生する検出電流I1と位相が反転したものとなる。このため、第2演算増幅器64aは、入力した検出電流I1を電圧信号Vbと位相が反転した電圧信号Vcに変換して出力する。これにより、第2増幅部64は、ゼロボルトを中心として変化し、かつ第1電圧信号Vb1と位相が反転した交流信号である第2電圧信号Vc1を生成して出力する。
第2BPF65は、第2フィルタ部であって、一例として第1BPF62と同様のバンドパスフィルタに構成されて、入力した第2電圧信号Vc1に含まれている交流電圧Vaの高調波成分を除去して(フィルタリング処理して)、第2電圧信号Vc2として出力する。この場合、第2BPF65もまた、第1BPF62と同様にして、その通過帯域を交流電圧Vaの基本周波数成分のみを通過させ得るように構成されるのが好ましいが、実際問題として、このような理想的な通過帯域に構成することは困難である。このため、第2BPF65の通過帯域も、交流電圧Vaの基本周波数成分を含むある程度の幅を持つ狭帯域の通過帯域(周波数帯域)に規定される。したがって、周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分は、第2BPF65では除去されずに、第2電圧信号Vc2に含まれた状態で出力される。
第2切替部66は、第2抽出部の一例であって、第1切替部63と同一の構成を備えて、第1電圧信号Vb2の負側波形および第2電圧信号Vc2の負側波形で構成される脈流信号である片極性信号としての負極性信号Veを抽出して出力する。具体的には、第2切替部66は、例えばアナログスイッチで構成されて、基準信号Srに同期して、図3に示すように、第1電圧信号Vb2と第2電圧信号Vc2とを半周期ずつ切り替えて出力する(同期検波動作する)ことにより、負極性信号Veを出力する。この場合、負極性信号Veも正極性信号Vdと同様にして、交流電流Ixの振幅に応じて振幅が変化する。
第3増幅部67は、正極性信号Vdおよび負極性信号Veを入力して、これらの信号Vd,Veの差分(差分信号)である検出信号としての差分信号Vfを出力する。本例では、第3増幅部67は、一例として、図2に示すように、演算増幅器67a、第1切替部63と演算増幅器67aの非反転入力端子との間に接続された抵抗67b、第2切替部66と演算増幅器67aの反転入力端子との間に接続された抵抗67c、演算増幅器67aの反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗67d、および演算増幅器67aの非反転入力端子と基準電圧(この例ではグランド)との間に接続された抵抗67eとを備えて、差動増幅部として構成されている。この構成により、第3増幅部67は、図5に示すように、正極性信号Vdおよび負極性信号Veに同期する脈流信号(本例では一例として正側波形で構成される脈流信号(Vd−Ve)であるが、負側波形で構成される脈流信号(Ve−Vd)でもよい)である差分信号Vfを、信号Vd,Veの上記差分として演算して出力する。この差分信号Vfは、振幅が検出電流I1の電流値にそれぞれ比例する電圧信号Vb,Vcに基づいて上記のように生成されるため、差分信号Vfの振幅も検出電流I1の電流値に比例したものとなっている。A/D変換部68は、この差分信号Vfをデジタルデータに変換して電流データDiとして出力する。したがって、A/D変換部68から出力される電流データDiは、検出電流I1を表すデータとなる。
ノイズ検出部43は、図1に示すように、しきい値電圧生成部71、検出部72および平滑部73を備え、検出電流I1に含まれているノイズ成分の量に応じて電圧レベルが変化するノイズ検出信号(直流電圧信号)Vaveを出力する。しきい値電圧生成部71は、例えばツェナーダイオードを用いて構成されて、しきい値電圧(直流定電圧)Vthを生成して出力する。このしきい値電圧Vthは、一例として、第1切替部63から出力される正極性信号Vdの信号波形の主たる部分が含まれる極性領域とは逆の極性領域に規定されている。具体的には、正極性信号Vdの信号波形の主たる部分が図5に示すように正極性領域に含まれるため、しきい値電圧Vthは、逆の極性領域である負極性領域に規定されている。
検出部72は、正極性信号Vdの信号波形としきい値電圧Vthとを比較して、正極性信号Vdの信号波形がしきい値電圧Vthを超えているとき(本例では、しきい値電圧Vthに達して、さらに下回っているとき)にパルス信号Spを出力する。本例では一例として、検出部72は、図3に示すように、しきい値電圧Vthが非反転入力端子に入力され、正極性信号Vdが反転入力端子に入力されたコンパレータ72aで構成されている。この構成により、検出部72は、正極性信号Vdの信号波形がしきい値電圧Vthに達するまではLowレベル(本例では一例として基準電圧(グランド電圧))となり、正極性信号Vdの信号波形がしきい値電圧Vthを超えているときにHighレベル(一例としてコンパレータ72aの正側の電源電圧に近い電圧)となるパルス信号Spを出力する。なお、図示はしないが、正極性信号Vdをコンパレータ72aの非反転入力端子に入力し、しきい値電圧Vthをコンパレータ72aの反転入力端子に入力する構成を採用し、検出部72が、正極性信号Vdの信号波形がしきい値電圧Vthに達するまではHighレベル(一例としてコンパレータ72aの正側の電源電圧に近い電圧)となり、正極性信号Vdの信号波形がしきい値電圧Vthを超えているときにLowレベル(本例では一例として基準電圧(グランド電圧)となるパルス信号Spを出力する構成とすることもできる。
平滑部73は、パルス信号Spを平滑(積分)することにより、パルス信号Spの平均電圧(直流電圧)をノイズ検出信号Vaveとして生成して処理部44に出力する(以下、平均電圧Vaveともいう)。本例では一例として、平滑部73は、図3に示すように、コンパレータ72aの出力端子に一端が接続された抵抗73aと、抵抗73aの他端と基準電圧(グランド電圧)との間に接続されたコンデンサ73bとを備えて、低域通過型フィルタに構成されている。なお、平滑部73については、抵抗73aに代えてインダクタを使用する構成を採用できる等、様々な平滑回路を採用することができる。
処理部44は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、図4に示す抵抗測定処理を実行する。また、処理部44は、信号生成部として機能して、基準信号Srを生成して出力する。出力部45は、一例としてモニタ装置などで構成されて、抵抗測定処理の結果やノイズ判別処理の結果を表示する。なお、ノイズ判別処理の結果については、ノイズ成分が許容範囲を超えている旨を出力(報知)できればよいため、出力部45としてモニタ装置以外の構成、例えばスピーカやLEDなどを採用することができる。
次に、抵抗測定装置1による抵抗測定処理100について、図4,5,6を参照して説明する。
この抵抗測定処理100では、処理部44は、まず、所定の周波数fの検査用交流信号Vxを測定対象回路5に注入する注入処理を実行する(ステップ101)。具体的には、この注入処理において、処理部44は、周波数fの交流電圧Vaを生成させるための交流波形データDvの電圧注入部41への出力を開始する。これにより、電圧注入部41では、D/A変換部51が、この交流波形データDvを交流電圧(アナログ信号)Vaに変換して出力し、電力増幅部52が、この交流電圧Vaを交流電圧V1に増幅して注入クランプ部11の第1巻線13に印加する。これにより、注入クランプ部11から測定対象回路5に検査用交流信号Vx(周波数f)が注入される。このため、測定対象回路5には、検査用交流信号Vxの注入に起因して、周波数fの交流電流Ixが流れる。また、処理部44は、交流波形データDvの出力開始と同時に、交流波形データDvの一巡するタイミングに同期し、かつ周波数がfに規定された基準信号Srの各切替部63,66への出力も開始する。
この周波数fの検査用交流信号Vxが測定対象回路5へ注入されている状態において、電流検出部42は、交流電流Ixを検出して電流データDiを生成する処理を実行している。また、ノイズ検出部43は、正極性信号Vdに基づいて、検出電流I1に含まれているノイズ成分の量に応じて電圧レベルが変化する平均電圧Vaveを生成(出力)する処理を実行している。
まず、電流検出部42による電流データDiの生成処理について、具体的に説明する。この電流検出部42では、検出クランプ部21が、測定対象回路5に流れる交流電流Ixを検出して、その第2巻線23から検出電流I1を出力し、第1および第2増幅部61,64が、この検出電流I1を第1および第2電圧信号Vb1,Vc1に変換して出力する。この場合、この電流検出部42では、従来の構成(検出コイルとしての第2巻線23をシングルエンドで使用し、電流検出のための抵抗を直列に接続する構成)とは異なり、第2巻線23の各端部を演算増幅器61a,64aの反転入力端子に接続する構成としたことにより、ゲインの低下や周波数特性の劣化を招くおそれのある電流検出用の抵抗(シャント抵抗)を不要とすることができ、十分な検出ゲインを維持しつつ良好な周波数特性が確保されている。
次いで、第1および第2BPF62,65が、対応する電圧信号Vb1,Vc1に含まれている高調波成分を除去して、第1および第2電圧信号Vb2,Vc2として出力し、各切替部63,66が、この第1および第2電圧信号Vb2,Vc2を基準信号Srに同期して切り替えることにより、正極性信号Vdおよび負極性信号Veを生成して出力する。この場合、ノーマルモードノイズが検出電流I1に含まれていたとしても、各切替部63,66による基準信号Srに同期した各信号Vb2,Vc2に対する上記の切替動作により、このノーマルモードノイズが除去される。
続いて、第3増幅部67が、この正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfを生成し、A/D変換部68が、この差分信号Vfをデジタルデータに変換して電流データDiとして処理部44に出力する。この場合、電流検出部42では、第2巻線23の各端部に接続された第1増幅部61と第2増幅部64とが、それぞれが接続された第2巻線23の端部に発生する検出電流I1に基づいて、互いの位相が反転する第1電圧信号Vb1と第2電圧信号Vc1とを出力し、第3増幅部67が、これらの信号Vb1,Vc1に基づいて各切替部63,66で生成される正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfを生成する。このため、検出電流I1にコモンモードノイズが重畳していたとしても、第3増幅部67が差分演算を行うことにより、このノイズがキャンセルされる。
次に、ノイズ検出部43による平均電圧Vaveの生成処理について、具体的に説明する。ノイズ検出部43では、しきい値電圧生成部71がしきい値電圧Vthを出力し、検出部72が正極性信号Vdとしきい値電圧Vthとを比較して、平均電圧Vaveを出力している。
この場合、検出電流I1にノイズ成分(周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分)が重畳していない場合には、測定対象回路5が純抵抗成分のみで構成されて、検出電流I1の位相が交流電圧Vaの位相と一致しており、また装置本体部4を構成する各構成要素での信号の遅延がゼロであることから、第1増幅部61がこの検出電流I1を変換して出力する第1電圧信号Vb1の位相、および第1BPF62がこの第1電圧信号Vb1に含まれている高調波成分を除去して出力する第1電圧信号Vb2の位相(図5参照)は、交流電圧Vaの位相と一致している。なお、各BPF62,65により、周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍領域以外の周波数のノイズ成分は除去されるため、抵抗測定装置1の動作説明においては、周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分の影響のみを考慮するものとする。
また、第1増幅部61が接続されている第2巻線23の一端とは逆側の他端に接続されている第2増幅部64での検出電流I1の位相は、第1増幅部61側での位相と反転しているため、第2増幅部64がこの検出電流I1を変換して出力する第2電圧信号Vc1の位相、および第2BPF65がこの電圧信号Vc1に含まれている高調波成分を除去して出力する第2電圧信号Vc2の位相(図5参照)は、交流電圧Vaの位相に対して反転した状態(180°ずれた状態)となっている。
これにより、第1切替部63および第2切替部66が第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2を入力すると共に、各信号Vb2,Vc2を基準信号Sr(交流電圧Vaと同位相の信号)に同期して半周期ずつ切り替えて出力する正極性信号Vdは、図5に示すように、信号波形の主たる部分が(本例では波形全体が)正極性領域に含まれた状態となっており、また負極性信号Veは、同図に示すように、信号波形の主たる部分が(本例では波形全体が)が負極性領域に含まれた状態となっている。このため、正極性信号Vdは、負極性領域に規定されたしきい値電圧Vthを超えていない状態(しきい値電圧Vthに達していない状態)となっている。したがって、同図に示すように、検出部72はパルス信号Spを出力していないことから、平滑部73はほぼゼロボルトの平均電圧Vaveを生成する。よって、検出電流I1にノイズ成分(周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分)が重畳していない場合には、ノイズ検出部43は、ほぼゼロボルトの平均電圧Vaveを処理部44に出力する。
一方、検出電流I1にノイズ成分(周波数が交流電圧Vaの基本周波数の近傍のノイズ成分)が重畳している場合には、このノイズ成分のレベル(振幅)および周波数に応じて、検出電流I1の位相が交流電圧Vaの位相に対してずれた状態となる。このため、第1増幅部61がこの検出電流I1を変換して出力する第1電圧信号Vb1の位相も交流電圧Vaの位相に対してずれた状態となり、また第1BPF62がこの第1電圧信号Vb1に含まれている高調波成分を除去して出力する第1電圧信号Vb2もまた、図6において実線で示すように、その位相が交流電圧Vaの位相からずれた状態となる。なお、同図において、第1電圧信号Vb2の波形と共に記載されている他の2つの波形のうちの一点鎖線で記載されている波形は、検出電流I1のうちの交流電圧Vaの基本周波数の電流信号に基づく電圧信号(交流電圧Vaと同位相の信号)の波形であり、破線で記載されている波形は、ノイズ成分に基づく電圧信号(交流電圧Vaと位相の異なる信号)の波形であり、この2種類の信号の合成波形が第1電圧信号Vb1となる。
また、第1増幅部61が接続されている第2巻線23の一端とは逆側の他端に接続されている第2増幅部64での検出電流I1の位相およびノイズ成分の位相は、第1増幅部61側での位相とそれぞれ反転しているため、第2増幅部64がこの検出電流I1を変換して出力する第2電圧信号Vc1の位相、および第2BPF65がこの電圧信号Vc1に含まれている高調波成分を除去して出力する第2電圧信号Vc2の位相(図6参照)は、位相を反転させた交流電圧Vaに対して位相がずれた状態となっている。
これにより、第1切替部63および第2切替部66が第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2を入力すると共に、各信号Vb2,Vc2を基準信号Sr(交流電圧Vaと同位相の信号)に同期して半周期ずつ切り替えて出力する正極性信号Vdは、信号波形の多くの部分が正極性領域に含まれた状態ではあるものの、その一部が負極性領域に含まれるようになり、また負極性信号Veも同様にして、信号波形の多くの部分が負極性領域に含まれた状態ではあるものの、その一部が正極性領域に含まれるようになる。
そして、正極性信号Vdの負極性領域に含まれる信号波形の振幅、および負極性信号Veの正極性領域に含まれる信号波形の振幅は、主として、第1電圧信号Vb2と交流電圧Vaとの間の位相差(第2電圧信号Vc2と交流電圧Vaとの間の位相差でもある)が大きくなるに従って、つまり検出電流I1へのノイズ成分の影響が大きくなるに従って大きくなり、第1電圧信号Vb2と交流電圧Vaとの間の位相差(第2電圧信号Vc2と交流電圧Vaとの間の位相差)がある程度大きくなったときに、つまり検出電流I1へのノイズ成分の影響が許容範囲以上に大きくなったときに、図6に示すように、正極性信号Vdの信号波形(具体的には、正極性信号Vdの負極性領域に含まれる信号波形)がしきい値電圧Vthを超える状態(信号波形がしきい値電圧Vthに達してさらに下回る状態)が発生する。したがって、この状態のときには、検出部72はパルス信号Spを出力する。このため、平滑部73はパルス信号Spのデューティー比に応じたレベルの直流電圧を平均電圧Vaveとして生成して、処理部44に出力する。
以上のようにして、ノイズ検出部43が平均電圧Vaveの生成処理を実行している状態において、処理部44は、ノイズ判別処理を実行する(ステップ102)。このノイズ検出処理では、処理部44は、ノイズ検出部43から出力される平均電圧Vaveと予め規定された基準値Vrefとを比較して、平均電圧Vaveが基準値Vref未満のときには、検出電流I1に重畳しているノイズ成分が許容範囲内であると判別し、一方、平均電圧Vaveが基準値Vref以上のときには、検出電流I1に重畳しているノイズ成分が許容範囲を超えていると判別する。この場合、基準値Vrefは、許容範囲ぎりぎりのノイズ成分が検出電流I1に重畳しているときにノイズ検出部43から出力される平均電圧Vaveと一致するように予め実験等によって決定されている。
処理部44は、ステップ102において、検出電流I1に重畳しているノイズ成分が許容範囲内であると判別したときには、抵抗値Rxの算出処理を実行する(ステップ103)。この算出処理では、処理部44は、まず、入力した電流データDiに基づいて検出電流I1の電流値(本例では電流実効値)を算出し、また、交流電圧V1の電圧実効値および第1巻線13のターン数(N1)に基づいて検査用交流信号Vxの電圧実効値を算出する。次いで、処理部44は、算出した検出電流I1の電流実効値および第2巻線23のターン数(N2)に基づいて交流電流Ixの電流値(本例では電流実効値)を算出する。続いて、処理部44は、算出した検査用交流信号Vxおよび交流電流Ixの各実効値に基づいて、交流電圧V1の周波数がfのときの測定対象回路5の抵抗値Rxを算出すると共に、算出した抵抗値Rxを周波数fに対応させてメモリに記憶する。本例では一例として、処理部44は、この抵抗値Rxの算出に際して、抵抗値Rxを複数回算出すると共に、これらの平均(一例として移動平均)を算出して、最終的な抵抗値Rxとする。これにより、抵抗値Rxの算出処理が完了する。最後に、処理部44は、算出した抵抗値Rxを出力部45に出力させる(ステップ104)。これにより、抵抗測定処理が完了する。
一方、処理部44は、ステップ102において、検出電流I1に重畳しているノイズ成分が許容範囲外であると判別したときには、抵抗値Rxの算出処理を実行することなく、ステップ104の出力処理に移行して、ノイズ成分が許容範囲外である旨を出力部45に出力させ(ステップ104)、抵抗測定処理を完了させる。
このように、この抵抗測定装置1では、第2巻線23の一端が反転入力端子に接続された第1演算増幅器61aを有して第2巻線23に流れる電流I1を第1電圧信号Vb1に変換して出力する第1増幅部61と、第2巻線23の他端が反転入力端子に接続された第2演算増幅器64aを有して第2巻線23に流れる電流I1を第1電圧信号Vb1と位相が反転した(第1電圧信号Vb1と逆位相の)第2電圧信号Vc1に変換して出力する第2増幅部64と、基準信号Srに同期して第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2を同期検波して(半周期ずつ切り替えて)第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2の正側波形のみで構成される正極性信号Vdを出力する第1切替部63と、基準信号Srに同期して第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2を同期検波して(半周期ずつ切り替えて)第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2の負側波形のみで構成される負極性信号Veを出力する第2切替部66と、正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfとして出力する第3増幅部67とを備えて電流検出部42が構成されている。
したがって、この抵抗測定装置1によれば、シングルエンドでの第2巻線23の使用や、シャント抵抗の使用が回避できるため、十分な検出ゲインを維持しつつ良好な周波数特性を確保することができる。また、第2巻線23の各端部に接続された第1増幅部61と第2増幅部64とが、第2巻線23に発生する検出電流I1に基づいて、互いの位相が反転する第1電圧信号Vb1と第2電圧信号Vc1とを出力し、第3増幅部67が、これらの信号Vb1,Vc1に基づいて各切替部63,66で生成される正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfを生成する構成のため、検出電流I1にコモンモードノイズが重畳していたとしても、第3増幅部67での差分演算において、コモンモードノイズをキャンセルすることができる。また、各切替部63,66が、第1および第2電圧信号Vb2,Vc2を基準信号Srに同期して切り替えて(同期検波して)、正極性信号Vdおよび負極性信号Veを生成して出力する構成のため、ノーマルモードノイズが検出電流I1に含まれている場合でも、このノーマルモードノイズを除去することができる。
また、この抵抗測定装置1では、正極性信号Vdの信号波形と、この信号波形の主たる部分が含まれる極性領域とは逆の極性領域(負極性領域)に規定されたしきい値電圧Vthとを比較して、この信号波形がしきい値電圧Vthを超えているとき(具体的には、達してさらに下回っているとき)にパルス信号Spを出力するノイズ検出部43の検出部72を備え、処理部44は、第2巻線23で検出される交流電流Ix、ひいては第2巻線23から出力される検出電流I1にノイズ成分が含まれているか否かを、パルス信号Spの出力状態に基づいて、具体的には、パルス信号Spの平均電圧Vaveが基準値Vref以上になるか否かに基づいて判別し、交流電流Ixに含まれている(重畳している)ノイズ成分が許容範囲を超えているとき(許容範囲外のとき)には、その旨を出力部45に出力(報知)させる。
したがって、この抵抗測定装置1によれば、使用者は、交流電流Ixに含まれている(重畳している)ノイズ成分が許容範囲を超えているとき(許容範囲外のとき)には、その旨を認識することができるため、ノイズ成分に起因した大きな算出誤差を含む抵抗値を測定対象回路5の真の抵抗値であると誤って認識する事態を確実に回避することができる。
加えて、正極性信号Vdの信号波形と比較するしきい値電圧Vthを、交流電流Ixにノイズ成分が含まれていない(重畳していない)状態においては、正極性信号Vdの信号波形の主たる部分が含まれず、ノイズ成分が含まれる状態において初めてこの信号波形の主たる部分が含まれるようになる逆の極性領域(正極性信号Vdの信号波形の主たる部分が含まれている極性領域とは逆の極性領域)に規定しているため、ノイズ検出部43において、正極性信号Vdの信号波形の主たる部分がしきい値電圧Vthを超えたか否か(達してさらに下回ったか否か)を確実に検出することができる。したがって、このこの抵抗測定装置1によれば、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを正確に検出することができる。
なお、上記の構成に限定されない。上記の負極性信号Veは、交流電流Ixにノイズ成分が含まれていない(重畳していない)状態においては、その信号波形の主たる部分が負極性領域に含まれ、ノイズ成分が含まれる状態となって初めてこの信号波形の一部が逆の極性領域(正極性領域)に含まれる状態に移行する。つまり、負極性信号Veは、正極性信号Vdとは逆の極性の片極性信号である。このため、正極性信号Vdに代えて負極性信号Veを比較の対象とすると共に、負極性信号Veの信号波形の主たる部分が含まれている負極性領域とは逆の正極性領域にしきい値電圧Vthを規定して、検出部72が、負極性信号Veの信号波形とこのようにして規定したしきい値電圧Vthとを比較して、負極性信号Veがしきい値電圧Vthを超えたときに、つまり、負極性信号Veの一部が正極性領域に進入してしきい値電圧Vthに達し、さらに上回る状態となったときにパルス信号Spを出力する構成とすることもできる。この構成においても、処理部44は、ノイズ検出部43の平滑部73から出力される平均電圧Vaveに基づいて、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを正確に判別することができる。
また、第3増幅部67が正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分に基づいて生成する差分信号Vfもまた、交流電流Ixにノイズ成分が含まれていない(重畳していない)状態においては、その信号波形の主たる部分が一方の極性領域(本例では正極性領域)に含まれ、ノイズ成分が含まれる状態となって初めてこの信号波形の一部が逆の極性領域(本例では負極性領域)に含まれる状態に移行する。このため、差分信号Vfも、片極性信号である。このため、検出部72が、この差分信号Vfと、この差分信号Vfに対して規定されたしきい値電圧Vth(逆の極性領域に予め規定された電圧)とを比較する構成とすることもできる。この構成においても、処理部44は、ノイズ検出部43の平滑部73から出力される平均電圧Vaveに基づいて、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを正確に判別することができる。
また、上記の抵抗測定装置1では、ノイズ検出部43の平滑部73が、検出部72から出力されるパルス信号Spの平均電圧Vaveを生成し、処理部44がこの平均電圧Vaveと基準値Vrefとを比較して、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを判別する構成を採用している。したがって、この抵抗測定装置1によれば、平均処理によってノイズなどがノイズ検出部43の動作に与える影響を軽減することができ、処理部44における判別動作の安定性を高めることができる。なお、この平均電圧Vaveを算出する構成に代えて、処理部44が、検出部72から出力されるパルス信号Spの一定時間内での出力数をカウントし、このカウント値が予め規定したしきい値(カウント値に対する基準値)を超えたか否かに基づいて、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを判別する構成を採用することもできる。
また、上記の抵抗測定装置1では、電流検出部42を2つの切替部63,66を有する構成としたが、図7に示す抵抗測定装置1Aの電流検出部42Aのように、1つの切替部69を有する構成を採用することもできる。以下、抵抗測定装置1Aについて、図7,8を参照して説明する。なお、抵抗測定装置1Aは、電流検出部42Aの第3増幅部67および切替部69以外の構成については抵抗測定装置1と同一に構成されている。このため、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違する電流検出部42Aの構成についてのみ説明する。
電流検出部42Aは、検出クランプ部21、第1増幅部61、第1BPF62、第2増幅部64、第2BPF65、第3増幅部67、切替部69およびA/D変換部68を備えている。第3増幅部67は、第1BPF62から出力される第1電圧信号Vb2と第2BPF65から出力される第2電圧信号Vc2とを入力して、これらの信号Vb2,Vc2の差分信号Vgを出力する。本例では、第3増幅部67は、一例として、図8に示すように、抵抗測定装置1と同じ差動増幅部として構成されている。この構成により、第3増幅部67は、図8に示すように、第1電圧信号Vb2と第2電圧信号Vc2の差分を検出して、差分信号Vgとして出力する。この差分信号Vgは、その振幅が検出電流I1の電流値に比例する交流信号となる。
切替部69は、抽出部の一例であって、基準信号Srに同期して差分信号Vgを同期検波して、差分信号Vgの正側波形のみまたは負側波形のみ(本例では、一例として正側波形のみ)で構成される片極性信号Vhを抽出して検出信号として出力する。具体的には、切替部69は、例えばアナログスイッチで構成されて、処理部44から出力される基準信号Srに同期して、差分信号Vgと基準電圧(グランド電位)とを半周期ずつ切り替えて出力する(同期検波動作する)ことにより、正極性信号である片極性信号Vh(上記の抵抗測定装置1における正極性信号Vd、負極性信号Veおよび差分信号Vfのような全波整流波形に近い波形とは異なり、図8に示すように半波整流に近い波形の信号)を出力する。A/D変換部68は、この片極性信号Vhをデジタルデータに変換して電流データDiとして出力する。この場合、この電流データDiは、検出電流I1を表すデータとなる。
この抵抗測定装置1Aにおいては、図示はしないが、片極性信号Vhが、交流電流Ixにノイズ成分が含まれていない(重畳していない)状態においては、その信号波形の主たる部分が正極性領域に含まれ、ノイズ成分が含まれる状態となって初めてこの信号波形の一部が逆の極性領域(負極性領域)に含まれる状態に移行する。このため、片極性信号Vhを検出部72での比較の対象とすると共に、片極性信号Vhの信号波形の主たる部分が含まれている正極性領域とは逆の負極性領域にしきい値電圧Vthを規定して、検出部72が、片極性信号Vhの信号波形とこのしきい値電圧Vthとを比較して、片極性信号Vhがしきい値電圧Vthを超えたとき(しきい値電圧Vthに達してさらに下回ったとき)にパルス信号Spを出力する構成とする。
したがって、この抵抗測定装置1Aにおいても、処理部44が、平滑部73から出力される平均電圧Vaveに基づいて、交流電流Ixにノイズ成分が含まれているか否かを正確に判別することができるため、この判別結果に基づいて、交流電流Ixに含まれている(重畳している)ノイズ成分が許容範囲を超えているとき(許容範囲外のとき)には、その旨を表示(報知)することができる。よって、この抵抗測定装置1Aにおいても、ノイズ成分に起因した大きな算出誤差を含む抵抗値を測定対象回路5の真の抵抗値であると使用者が誤って認識する事態を確実に回避することができる。
また、上記した各電流検出部42,42Aは、第2巻線23の各端部に接続されて、第2巻線23に流れる検出電流I1を第1電圧信号Vb1および第2電圧信号Vc1に変換して出力する第1増幅部61および第2増幅部64を第2巻線23の後段に配設して構成しているが、図9に示すように、第2巻線23の一端を接地して、その他端に第1増幅部61を1つ配設する構成(シングルエンドの構成)を採用して、電流検出部42Bを構成することもできる。この構成においては、電流検出部42Aと同様にして、切替部69から正極性信号である片極性信号Vhが出力される。このため、片極性信号Vhを検出部72での比較の対象とすると共に、片極性信号Vhの信号波形の主たる部分が含まれている正極性領域とは逆の負極性領域にしきい値電圧Vthを規定して、検出部72が、片極性信号Vhの信号波形とこのしきい値電圧Vthとを比較して、片極性信号Vhがしきい値電圧Vthを超えたとき(しきい値電圧Vthに達してさらに下回ったとき)にパルス信号Spを出力する構成とする。
したがって、この電流検出部42Bを採用した抵抗測定装置においても、抵抗測定装置1Aと同様にして、処理部が、平滑部から出力される平均電圧に基づいて、交流電流にノイズ成分が含まれているか否かを正確に判別することができるため、この判別結果に基づいて、交流電流に含まれている(重畳している)ノイズ成分が許容範囲を超えているとき(許容範囲外のとき)には、その旨を表示(報知)することができる。よって、この抵抗測定装置においても、ノイズ成分に起因した大きな算出誤差を含む抵抗値を測定対象回路5の真の抵抗値であると使用者が誤って認識する事態を確実に回避することができる。
以上のように電流検出部としては、種々の公知の回路構成を採用することができるが、上記した各実施の形態のように演算増幅器を用いて構成した電流電圧変換回路を使用して、第2巻線23に流れる検出電流I1を電圧に変換する構成に代えて、図示はしないが、第2巻線23の両端間にシャント抵抗を接続し、このシャント抵抗において検出電流を電圧に変換して、この電圧を演算増幅器などで増幅して、切替部に出力する構成を採用することもできる。