JP2012047168A - 消音器及び車両用吸気ダクト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の消音器20は、吸気ダクト10に形成した1対の円形貫通孔13,13に膜部材15を張って1対の送受波膜21A,21Bを形成し、それら1対の送受波膜21A,21Bの中心部の間をシーソー部材22で連絡した構造になっている。この構造により、一方の送受波膜21Aが騒音の音波を受けて所定周期で振動すると、それに従動して他方の送受波膜21Bが半周期分ずれた状態で振動し、一方の送受波膜21Aが受けた騒音の音波とは逆位相のキャンセル波が他方の送受波膜21Aから送波され、騒音を低減させることができる。しかも、キャンセル波生成用の電気回路を有しないので、従来の防塵、防水及び配線処理を必要とせず、低コストで設置することが可能になる。
【選択図】図1
Description
請求項1及び10の消音器によれば、後述する実験結果の通り消音効果を得ることができる。その消音メカニズムは、以下の通りであると推測される。即ち、本発明の消音器は、音波を受波して振動する1対の送受波膜を備えている。ここで、音波は所定周期で圧力が変化する波であるから、送受波膜が騒音の音波を受波すると、その騒音の周波数で送受波膜が内側に膨出した状態と外側に膨出した状態とを交互に繰り返すように振動する。そして、本発明では、1対の送受波膜の間をシーソー部材又は振動伝達部材で連絡したことで、一方の送受波膜が騒音の音波を受けて所定周期で振動すると、それに従動して他方の送受波膜も同じ所定周期で振動しかつ、一方の送受波膜の膨出方向と他方の送受波膜の膨出方向は常に互いに逆向きになる。これにより、一方の送受波膜が受けた騒音の音波とは逆位相のキャンセル波が他方の送受波膜から送波されて、騒音を低減させることができる。しかも、キャンセル波生成用の電気回路を有しないので、従来の防塵、防水及び配線処理を必要とせず、低コストで設置することが可能になる
請求項2の消音器では、1対の送受波膜を音波伝達方向に沿って並べたので、騒音が低周波の場合に1対の送受波膜の間で音波の受波による差圧が生じ易く、送受波膜が振動し易くなり、消音効果が向上する。なお、後述する実験によれば、1対の送受波膜を音波伝達方向と直交する方向に並べた場合でも消音効果は得られたが、騒音が低周波の場合には1対の送受波膜を音波伝達方向に並べた場合の方が、より高い消音効果が得られることが確認できた。
請求項3の消音器では、1対の送受波膜とシーソー部材の回動中心とを略同一平面内に配置したので、シーソー部材と送受波膜との間に作用する力のうち送受波膜と平行な方向の力成分が小さく抑えられ、その分、送受波膜と直交する方向の力成分が大きくなる。即ち、シーソー部材の回動中心を1対の送受波膜を含む面から離すと、その離した距離が大きいほどシーソー部材と送受波膜との間に作用する力のうち送受波膜と平行な方向の力成分が増加する一方、送受波膜と直交する方向の力成分が減少する。これに対し、請求項3の消音器は、上記した構成を有するので送受波膜と平行な方向の力成分が最も小さくなり、送受波膜と直交する方向の力成分が最も大きくなる。これにより、送受波膜の振動が安定すると共に、送受波膜の一方で受けた振動を他方に効率良く伝達することができる。
請求項4の構成によれば、シーソー部材の中央脚部との干渉を回避するためにダクト壁に陥没形成された干渉回避凹部内に粉塵等の異物が侵入しても、異物排除孔からダクト内へと排出されるので、異物が干渉回避凹部内に溜まることが防がれる。これにより、シーソー部材がスムーズに回動できる状態が維持される。
請求項5の構成によれば、回動中心シャフトをその軸方向と直交する方向からシャフト支持溝に組み付けることができ、組付作業が容易になる。
請求項6の消音器では、異物排除孔が、干渉回避凹部の底面と中央脚部の先端面との間の隙間より大きな直径の円形孔になっているので、ダクト内が負圧状態になっている場合に、異物排除孔を通してダクト内に異物を排出することができる。
請求項7の消音器によれば、回動規制ストッパによってシーソー部材の回動範囲を規制して、送受波膜の過度の変形を防止することができる。
請求項8の消音器によれば、1対ずつの円形貫通孔を有した1対のベース板部材の間に共通の膜部材を挟んで1対の送受波膜を構成したので、各送受波膜を別々の膜部材で構成した場合に比べて部品点数の削減が図られる。
請求項9の消音器によれば、シーソー部材は、ダクトの外面側に配置されているので、ダクト内を通過する空気の流体抵抗の影響を受けずに済む。また、シーソー部材は外面カバーで覆われているので、シーソー部材と他の部品との当接が防がれ、消音器及び消音器を備えたダクトの取り扱いが容易になる。
請求項11の車両用吸気ダクトは、請求項1乃至10の何れか1の請求項に記載の消音器を備えているので、車両に設置する際に、従来の防塵、防水及び配線処理を必要とせず、低コストで設置することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、本発明に係る消音器20を備えた車両用吸気ダクト10(以下、単に「ダクト10」という)の一部が示されている。このダクト10は、一端部が車両のエンジン90側に接続され、他端部から取り込んだ空気をエンジン90へと案内する。ここで、ダクト10は、エンジン90からの騒音を伝達する伝達管路にもなるので、その騒音を低減させるための消音器20が備えられている。
以下、本発明の第2実施形態に係る消音器20Vのうち第1実施形態の消音器20と異なる構成について、図6〜図14を参照しつつ説明する。
本発明の第3実施形態に係る消音器20Zを備えたダクト10Zは、図15に示されている。このダクト10Zには、1対の角筒状膨出部40,40がダクト10Zの軸方向に並べて設けられ、それら1対の角筒状膨出部40,40の対向面に1対の円形貫通孔41,41を同軸上に並ぶように貫通形成されている。そして、それら1対の円形貫通孔41,41を塞ぐように膜部材が張られて1対の送受波膜42A,42Bが形成され、それら1対の送受波膜42A,42Bの中心部の間を振動伝達部材49で連絡して消音器20Zが構成されている。本実施形態の消音器20Zによって、第1実施形態の消音器20と同様に、ダクト10Z内を伝達する騒音の音波に対してキャンセル波を送波して、騒音低減を図ることができる。
以下、本発明の実施品1,2,3と、本発明の発明特定事項の一部を欠いた比較品1,2とを製作して行った消音効果の比較実験結果について述べる。実施品1は、図16に示すように、全長L1が400[mm]で、内径D3がφ56[mm]のダクト10における長手方向の終端寄り位置に、第1実施形態と同様の消音器20を備えた構造になっている。その消音器20における送受波膜21A,21Bの直径(即ち、円形貫通孔13,13の直径)D1,D2は共にφ50[mm]で、それら送受波膜21A,21Bの中心点間の距離L3は60[mm]、ダクト10の終端から送受波膜21A,21Bの中心点間の中央位置までの距離L2が100[mm]になっている。また、送受波膜21A,21Bは、共に膜厚が0.3[mm]のEPDM(エチレンプロピレンゴム)で構成されている。
(1)実験方法は、以下の通りである。即ち、図16に示すように、実施品1におけるダクト10の始端部の開口にスピーカー92を対向配置すると共に、ダクト10の始端部と終端部に始端マイク91Aと終端マイク91Bを配置する。そして、スピーカー92から出力する音の周波数を50〜800[Hz]の範囲で変更しなら、始端マイク91A及び終端マイク91Bにて拾音する。そして、周波数毎に終端マイク91Bによる拾音量から始端マイク91Aによる拾音量を差し引いた差分音量を求めて図17及び図19に示したグラフg1を作成する。また、同様の手順で、実施品1に代わりに実施品2を用いて図18のグラフg2を作成し、実施品3を用いて図19のグラフg3を作成し、比較品1を用いて図17〜図19のグラフh1を作成し、さらに、比較品2を用いて図17のグラフh2を作成する。
図17に示されているように、ダクト10に消音器20を備えたものでは(実施品1:グラフg1)、消音器20を備えないもの(比較品1:グラフh1)に比べて、130〜400[Hz]の周波数帯で消音効果を得られることが確認できた。このように130〜400[Hz]という広範囲の周波数帯で消音効果を確認することができたので、一般に吸気ダクトで使用されているヘルムホルツの共鳴室を備えた消音器に比べて広範囲の周波数帯での消音が求められている場合に本発明は有効である。また、ヘルムホルツの共鳴室では、略130[Hz]の騒音と共鳴させて消音効果を得るには、2000〜3000[cc]程度の容量が必要であるが、本発明に係る消音器20を備えた実施品1であれば、φ50[mm]の送受波膜21A,21Bを並べてシーソー部材22を設けた程度の大きさであるから、200[mm]×100[mm]×30[mm]の程度の容積に収まり、600[cc]の容量の空間に収まり、省スペース化が図られる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
10W ダクト壁
13,41 円形貫通孔
15 膜部材
17 係止片
17S シャフト支持突部
18 シャフト支持溝
18S,23C 回動中心シャフト
19,31A 干渉回避凹部
19C 異物排除孔
20,20V,20Z 消音器
21A,21B,42A,42B 送受波膜
22,22V シーソー部材
23 中央脚部
23B 大径シャフト
23H 脚部本体
27,27V 外面カバー
29 振動伝達部材
31,31V 第1ベース板部材
32,32V 第2ベース板部材
51 回動規制ストッパ
Claims (11)
- ダクト内を伝達する騒音を低減させるための消音器であって、
前記ダクトのダクト壁を貫通し、横並びに配置された1対の円形貫通孔と、
前記1対の円形貫通孔を塞いだ状態に張られ、音波を受波して振動する1対の送受波膜と、
前記1対の送受波膜の中心部の間を連絡すると共に、それら1対の送受波膜の中心部の間で前記ダクトに対して回転可能に支持されて、前記1対の送受波膜の相互間で振動を伝達可能なシーソー部材とを備えたことを特徴とする消音器。 - 前記1対の送受波膜は、前記ダクト内の音波伝達方向に沿って並べられたことを特徴とする請求項1に記載の消音器。
- 前記1対の送受波膜と前記シーソー部材の回動中心とが略同一平面内に配置され、前記シーソー部材は、前記回動中心と一方の前記送受波膜の中心部との間を連絡するように湾曲した第1湾曲部と、前記回動中心と他方の前記送受波膜の中心部との間を連絡するように湾曲した第2湾曲部とを有する略E字形状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消音器。
- 前記シーソー部材は、前記ダクト壁の外側に配置されると共に、前記ダクト壁に向かって延びかつ先端部が前記ダクト壁に回動可能に支持された中央脚部を有し、
前記ダクト壁には、前記中央脚部の先端部との干渉を回避するための干渉回避凹部が陥没形成されると共に、その干渉回避凹部の内面には、異物を前記ダクト内に排出するための異物排除孔が貫通形成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の消音器。 - 前記中央脚部の先端部の両側面から相反する方向に回動中心シャフトをそれぞれ突出させ、
前記ダクト壁の外面のうち前記干渉回避凹部の両側には、前記中央脚部の先端部が前記干渉回避凹部に受容された状態で前記回動中心シャフトを受容して回動可能に支持する1対のシャフト支持溝が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の消音器。 - 前記異物排除孔は、前記干渉回避凹部の底面と前記中央脚部の先端面との間の隙間より大きな直径の円形孔であることを特徴とする請求項4又は5に記載の消音器。
- 前記シーソー部材の回動範囲を規制して、前記送受波膜の過度の変形を防止するための回動規制ストッパを備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の消音器。
- 前記ダクト壁の少なくとも一部は、それぞれ1対ずつの前記円形貫通孔が形成された平板状の1対のベース板部材を重ねて構成され、それら1対のベース板部材の間に挟まれた共通の膜部材により前記1対の送受波膜が構成されたことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の消音器。
- 前記シーソー部材は、前記ダクト壁の外側に配置され、そのダクト壁の外面を前記シーソー部材と共に覆う外面カバーを備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載の消音器。
- 空間を区画しかつ音波を遮る空間区画壁に形成された1対の円形貫通孔と、
前記1対の円形貫通孔を塞いだ状態に張られ、音波を受波して振動する1対の送受波膜と、
前記1対の送受波膜の中心部の間を連絡し、一方の前記送受波膜が前記空間区画壁の内外の一方側に膨出したときに他方の前記送受波膜を前記空間区画壁の内外の他方側に膨出させるように、前記1対の送受波膜の相互間で振動を伝達可能な振動伝達部材を備えたことを特徴とする消音器。 - 車両のエンジンの吸気経路に配置され、請求項1乃至10の何れか1の請求項に記載の消音器を備えたことを特徴とする車両用吸気ダクト。
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