JP2012046448A - 紫外線ダメージ回復作用剤 - Google Patents

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圭悟 鳥家
Toshiyuki Murakami
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Abstract

【課題】安全性の高い天然物の中から紫外線ダメージ回復作用を有するものを見出し、それを有効成分とする紫外線ダメージ回復作用剤を提供する。
【解決手段】本発明の紫外線ダメージ回復作用剤の有効成分として、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール(piceatannol)若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(piceatannol 4'-O-β-D-glucopyranoside)を含有させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線ダメージ回復作用剤に関するものである。
地表に届く紫外線(UV)にはUVB(290−320nm)とUVA(320−400nm)があり、UVBは皮膚の表皮から真皮上層まで、UVAは真皮深くまで到達するとされる。太陽光に含まれるUVBの線量はわずかであるが、皮膚に対する影響は大きい。すなわち、UVBの刺激により皮膚の細胞が活性酸素やサイトカイン等を産生し、細胞自身や周りの細胞に働きかけ、日焼け等の急性炎症反応、すなわち、皮膚に水疱等の炎症が形成され、ひいては色素沈着を生じる等の悪影響をもたらす。
このような現象が起こる原因として、UVBが直接DNAに吸収され、DNAの損傷を引き起こすことが知られている。DNAに損傷が生じた細胞では、細胞内にp53と呼ばれる癌抑制遺伝子タンパク質が発現し、このタンパク質がDNA損傷の度合いにより、DNAの修復、細胞周期の停止、アポトーシスを誘導することが知られている。皮膚中におけるアポトーシスの増加は、組織再生能の低下につながり、皮膚の老化を促進する原因となり得る(非特許文献1参照)。したがって、紫外線照射によって生じる障害を予防・改善することができれば、皮膚の保湿能力、弾力性、バリア機能等の皮膚機能を維持することにもつながると考えられる。
また、紫外線の慢性的な暴露は、皮膚の老化(光老化)を促進し、シミ、しわのみならず、皮膚癌の一因であることが知られている。その結果として、皮膚の老化やしわの形成等が生じ、皮膚機能が低下すると考えられている。したがって、紫外線によって誘発される皮膚の炎症反応や、その後に生じる皮膚機能の障害を予防・改善することは、皮膚の老化や癌を予防・改善することにもつながると考えられる。
さらには、色素性乾皮症、コケイン症候群、及びブルーム症候群等、DNA損傷の修復機構の機能不全に起因する遺伝病の患者は、紫外線に対する感受性が高いため、皮膚癌の発生率が健常者よりも高いことが知られている。したがって、紫外線照射によって生じる障害を予防・改善することは、これらの紫外線感受性が高い遺伝病の治療にも貢献すると考えられる。
従来、紫外線照射による障害を予防する方法として、ベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機紫外線散乱剤を配合したサンスクリーン製品が用いられている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらのサンスクリーン製品は、高い紫外線防御効果が得られるものの、使用感の問題や、耐摩擦性、耐汗性等の物理的耐久性の限界から、継続的な予防効果として満足することができるものではなく、紫外線吸収剤で炎症を起こしてしまう等、安全性の点でも問題となっている。また、紫外線に暴露された後に生じる炎症やその後に引き起こされる障害等を予防・改善することのできる製剤の開発が望まれている。このような紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用を有するものとして、例えば、カンゾウの根からの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
なお、従来、テンニンカからの抽出物は、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用及びスリミング作用を有し、各種炎症性疾患、皮膚色素沈着症やシミ、皮膚の老化及び肥満症の予防、治療又は改善に有効であることが知られているが(特許文献5参照)、テンニンカからの抽出物が紫外線ダメージ回復作用を有することは知られていなかった。
特開平6−305949号公報 特開平7−145029号公報 特開平8−259419号公報 特開2004−250368号公報 特開2006−199678号公報
「フレグランスジャーナル」,2002年,Vol.7,p.57-61
本発明は、安全性の高い天然物の中から紫外線ダメージ回復作用を有するものを見出し、それを有効成分とする紫外線ダメージ回復作用剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の紫外線ダメージ回復作用剤は、テンニンカからの抽出物、ピセアタンノール(piceatannol)、又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(piceatannol 4'-O-β-D-glucopyranoside)を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明によれば、優れた紫外線ダメージ回復作用を有し、かつ安全性の高い紫外線ダメージ回復作用剤を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、テンニンカからの抽出物、下記式で表される(1)ピセアタンノール(piceatannol)(式中,RはH)、又は(2)ピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(piceatannol 4'-O-β-D-glucopyranoside)(式中,Rはグルコース)を有効成分として含有する。
Figure 2012046448

ここで、本実施形態において「テンニンカからの抽出物」には、テンニンカを抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
ピセアタンノール又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、ピセアタンノール又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドを含有する植物抽出物から単離・精製することにより製造することもできるし、合成により製造することもできる。合成により製造する場合、公知の方法により合成することができる。
ピセアタンノール又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドを含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。ピセアタンノール又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドを含有する植物としては、例えば、テンニンカ(学名:Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.)等が挙げられる。
テンニンカ(Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.)は、東南アジアの熱帯から亜熱帯域等の地域に分布しているフトモモ科に属する常緑低木であり、日本では沖縄等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。テンニンカの果実は、生食される他、ジュースやジャムの原料にも使用されている。また中国では桃金娘と呼ばれ、果実は民間的に妊婦の貧血、止血剤として、また、葉や根も民間的に頭痛、腹痛等の治療等に使用されている。
抽出原料として使用し得るテンニンカの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
テンニンカからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、テンニンカの極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
なお、上述のようにして得られた抽出液はそのままでも紫外線ダメージ回復作用剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
また、テンニンカからの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からピセアタンノール又はピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドを単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコール、アセトンの順で溶出させ、アルコールで溶出される画分として得ることができる。カラムクロマトグラフィーにて溶出液として用いられるアルコールは、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られた画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
以上のようにして得られるテンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、優れた紫外線ダメージ回復作用を有しているため、紫外線ダメージ回復作用剤の有効成分として用いることができる。
テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、その紫外線ダメージ回復作用を通じて、紫外線(UVB)の慢性的な暴露によるシミ、しわ等の皮膚老化の予防・改善剤の有効成分として用いることができるとともに、紫外線によって誘発される皮膚の炎症反応や、その後に生じる皮膚機能の障害の予防・改善剤の有効成分としても用いることができる。ただし、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、これらの用途以外にも紫外線ダメージ回復作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができ、例えば、紫外線(UVB)照射に起因する疾患(皮膚癌等)の予防又は治療剤の有効成分として用いることができる。さらに、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、紫外線ダメージ回復作用においてDNA修復機構の活性化を必要としないことから、これらの機構の機能不全に起因する及び紫外線(UVB)感受性の高い疾患(色素性乾皮症、コケイン症候群、及びブルーム症候群等)の治療剤の有効成分として用いることもできる。
なお、本実施形態においては、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドのうちのいずれか一つを上記有効成分として用いてもよいし、これらを混合して上記有効成分として用いてもよい。テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドを混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドが有する紫外線ダメージ回復作用の程度等により適宜調整すればよい。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド及びこれらの混合物のみからなるものでもよいし、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド及びこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。紫外線ダメージ回復作用剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤を製剤化した場合、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド及びこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、必要に応じて、紫外線ダメージ回復作用を有する他の天然抽出物等を、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド及びこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
また、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドが有する紫外線ダメージ回復作用を通じて、紫外線(UVB)の慢性的な暴露によるシミ、しわ等の皮膚の老化を予防・改善することができるとともに、紫外線によって誘発される皮膚の炎症反応や、その後に生じる皮膚機能の障害をも予防・改善することができる。また、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、テンニンカからの抽出物、又はピセアタンノール若しくはピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドが有する紫外線ダメージ回復作用を通じて、紫外線からのダメージに起因する疾患(皮膚癌等)を予防・治療することができる。さらに、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤、DNA修復機構の活性化を必要としないことから、これらの機構の機能不全に起因する紫外線(UVB)感受性の高い疾患(色素性乾皮症、コケイン症候群、及びブルーム症候群等)を治療することもできる。ただし、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、これらの用途以外にも紫外線ダメージ回復作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
なお、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)に対して適用することもできる。
本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、優れた紫外線ダメージ回復作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
また、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、優れた紫外線ダメージ回復作用を有するとともに、経口的に摂取した場合の安全性にも優れているため、例えば、美容用飲食品に配合するのに好適である。ここで、美容用飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
さらに、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、優れた紫外線ダメージ回復作用を有するので、紫外線によるダメージに関連する疾患の研究のための試薬としても好適に利用することができる。
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
〔製造例1〕テンニンカ果実部抽出物の製造
粉砕したテンニンカの果実部の乾燥物100gに80質量%エタノール(水とエタノールとの質量比=1:4)1000mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、乾燥してテンニンカ果実部抽出物6.6gを得た(試料1)。
〔製造例2〕ピセアタンノール及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドの製造
製造例1で得られたテンニンカ果実部抽出物6.5gを水500mLに懸濁し、当該懸濁液を多孔性吸着樹脂(製品名:ダイヤイオンHP−20,三菱化学社製)に付し、水3000mL、メタノール1000mL、アセトン1000mLの順で溶出させた。得られたメタノール溶出部(固形分:2.6g)を、シリカゲルカラム(富士シリシア社製,移動相;クロロホルム:メタノール:水=10:5:1(質量比))を用いて分画し、画分1(固形分:360mg)、画分2(固形分:390mg)、画分3(固形分:110mg)、画分4(固形分:320mg)、画分5を得た。
得られた画分2をODSカラム(移動相:30質量%メタノール)に付し、さらにリサイクルHPLC(製品名:LC−908型リサイクル分取HPLC,日本分析工業社製,移動相:メタノール)に付して分離・精製し、精製物Aを得た(14mg)。
また、画分4をODSカラム(移動相:30質量%メタノール)に付し、さらにリサイクルHPLC(製品名:LC−908型リサイクル分取HPLC,日本分析工業社製,移動相:メタノール)に付して分離・精製し、精製物Bを得た(42mg)。
上述のようにして得られた精製物A及び精製物Bを13C−NMRにより分析した結果を以下に示す。
13C−NMRケミカルシフトδ(帰属炭素)>
102.6 (4-C), 105.6 (2,6-C), 113.6 (2’-C), 116.3 (5’-C), 120.0 (6’-C), 126.6 (α-C), 129.7 (β-C), 130.6 (1’-C), 141.2 (1-C), 146.8 (3’-C), 147.1 (4’-C), 149.6 (3,5-C)
<精製物Bの13C−NMRケミカルシフトδ(帰属炭素)>
62.4 (Glc-6-C), 71.2 (Glc-4-C), 74.8 (Glc-2-C), 77.5 (Glc-5-C), 78.2 (Glc-3-C), 103.0 (4-C), 104.1 (Glc-1-C), 105.9 (2,6-C), 114.8 (2’-C), 118.5 (5’-C), 119.1 (6’-C), 128.6 (α-C), 129.0 (β-C), 134.5 (1’-C), 140.8 (1-C), 146.7 (4’-C), 149.2 (3’-C), 159.6 (3,5-C)
以上の結果から、得られた精製物A及び精製物Bが、それぞれ下記式で表される(1)ピセアタンノール(試料2)及び(2)ピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)であることが確認された。
Figure 2012046448

〔試験例1〕紫外線(UVB)照射によるダメージからの回復作用試験(表皮角化細胞)
製造例1及び2により得られたテンニンカ果実部抽出物(試料1)、ピセアタンノール(試料2)、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)について、以下のようにして紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用を試験した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/mLの濃度になるようにKGM培地を用いて希釈した後、コラーゲンコートした48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。培養後、培地を10μLのPBS緩衝液へ交換し、50mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、直ちにPBS緩衝液を抜き、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表1を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに400μL添加し、24時間培養した。
紫外線(UVB)照射によるダメージからの回復作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各ウェルに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出し、抽出液の波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞を播種した後、UVBを照射しない細胞及びUVBを照射し試料無添加の細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群及び照射群とした。得られた結果から、下記式により紫外線(UVB)照射によるダメージ回復率(%)を算出した。
UVBダメージ回復率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
式中、Ntは「UVB非照射の細胞での吸光度」を表し、Cは「UVB照射・試料無添加の細胞での吸光度」を表し、Saは「UVB照射・被験試料添加の細胞での吸光度」を表す。
結果を表1に示す。
Figure 2012046448

表1に示すように、試料1〜試料3はいずれもUVB照射24時間後における細胞死を抑制したことから、テンニンカ果実部抽出物、ピセアタンノール、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドがUVB照射によるダメージからの回復作用を有すると認められた。
〔試験例2〕シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)を指標にした紫外線(UVB)誘導DNAダメージ抑制作用試験
UVBはDNAに対して直接的に傷害を起こすことが知られている。具体的にはピリミジン塩基に分解反応をもたらし、隣り合う2つのピリミジン塩基がある部位では二量化反応が起こり、シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)や6−4光産物(6−4PP)などの数種の光産物が生成される。DNAに蓄積される光産物の量はUVB照射量に依存し、DNA修復酵素の影響を受ける。このうちCPDはDNAに蓄積されやすく、突然変異の最も大きな要因とみなされている。細胞機能における重要な遺伝子で突然変異が起こると、細胞のガン化や老化、アポトーシスの引き金となることがある。
このような知見に基づき、上記テンニンカ果実部抽出物(試料1)、ピセアタンノール(試料2)、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)について、CPD生成量をDNAダメージの指標として、以下のようにDNAダメージ抑制作用を試験した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの濃度になるようにKGM培地で希釈した後、60mmシャーレに2mLずつ播種し、2日間培養した。培養終了後、培地を抜き、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表2を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに2mL分注し、24時間培養した。培養終了後、培地を1mLのHank’s液へ交換し、80mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、Hank’s液を抜き、被験試料を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに2mL添加し、6時間培養した。培養終了後、細胞をセルスクレーパーにより回収した。回収した細胞よりDNAをQIAamp Blood Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出、精製した。その後、DNA濃度を測定し同濃度になるよう希釈した。DNA中の生成CPD量を以下のELISA法を用いて測定した。
0.003%プロタミン硫酸溶液でプレコートした96ウェルビニルプレートに、煮沸により変性させたDNA溶液を添加し、乾燥定着させた。まず、0.05%Tween−20含有PBS緩衝液(PBS−T)で洗浄し、1%BSA含有PBS−Tにて30分間ブロッキングした。その後PBS−Tで洗浄し、1次抗体であるマウス由来抗CPDモノクローナル抗体(クローン:TDM−2,コスモ・バイオ社製)を添加し、45分間反応させた。反応後、1次抗体液を捨て、PBS−Tで洗浄し、ビオチン化抗マウスIgG抗体を処理し、30分間反応させた。さらにPBS−Tにて洗浄し、HRP結合ストレプトアビジンを処理した。その後ABTS溶液により発色させ、反応後、波長405nmにおける吸光度を測定し、下記式によりDNAダメージ抑制作用を算出した。
UVB誘導DNAダメージ抑制率(%)=(1−A/B)×100
式中、Aは「被験試料添加のサンプルでの波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加のサンプルでの波長405nmにおける吸光度」を表す。
結果を表2に示す。
Figure 2012046448

表2に示すように、試料1〜試料3はいずれもUVB照射6時間後におけるCPD生成を抑制したことから、テンニンカ果実部抽出物、ピセアタンノール、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドがUVB照射によるDNAダメージ抑制作用を有すると認められた。
〔試験例3〕ヌクレオチド除去修復(NER)関連遺伝子の発現調節作用試験
ヌクレオチド除去修復(Nucleotide excision repair,NER)は、生体に備わっているDNA修復機構の一つで、紫外線により生じるチミンダイマー(CPD)をはじめ、種々の化学物質によりDNA中に生じた損傷を認識し、除去・修復することが知られている。紫外線により導入されるDNA損傷(CPD、6−4光産物)の大多数がNERにより除去・修復され、細胞に突然変異が導入されるのを防いでいることから、NERは非常に重要な修復機構であると考えられる。上で述べたように、テンニンカ果実部抽出物、ピセアタンノール、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドがUVB誘導CPD形成抑制作用を有することから、その作用メカニズムを明らかにする目的で、リアルタイムRT−PCR法によりNER関連遺伝子の発現調節作用を検討した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2×10cells/mLの濃度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表3を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに2mL分注し、24時間培養した。培養終了後、培地を1mLのHank’s液へ交換し、50mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、Hank’s液を抜き、被験試料を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに2mL添加し、さらに24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製,カタログ番号311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、NER関連タンパク質であるXPC(Xeroderma Pigmentosum complementation group C)、RPA3(replication protein A3)、POLD1(DNA polymerase delta 1)、及び内部標準であるGAPDHの、それぞれのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(R)(Cepheid社製)を用いて、SYBR(R) PrimeScript(TM) RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,製品コードRR063A)によるリアルタイム2StepRT−PCR反応により行った。各NER関連タンパク質のmRNAの発現量は、紫外線非照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・被験試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値により標準化した。下記式により、UVB誘導mRNA発現率を評価した。
UVB誘導mRNA発現率(%)=A/B×100
式中、Aは「UVB照射・被験試料添加又は無添加の細胞でのmRNA発現量」を表し、Bは「UVB非照射・試料無添加の細胞でのmRNA発現量」を表す。
結果を表3に示す。
Figure 2012046448

表3に示される結果より、テンニンカ果実部抽出物(試料1)には、紫外線照射によって上昇する3種のNER関連酵素のmRNAを濃度依存的に抑制する作用が認められた。以上の結果は、紫外線UVBによって引き起こされるDNA損傷のために誘導されるNERがテンニンカ果実部抽出物の前後処理により誘導されない、つまりDNA損傷がテンニンカ果実部抽出物により抑制されたためNER機構を誘導する必要性が低下したためであると考えられた。また、ピセアタンノール(試料2)にも、RPA3及びPOLD1に関してはエキスと同様に濃度依存の抑制傾向を示したが、XPCに関しては有意に促進する作用を示した。ピセアタンノールは同濃度でCPD形成抑制作用を有することから、この結果はDNA損傷を誘導したためではないと考えられた。
〔試験例4〕p53を指標にした紫外線(UVB)誘導DNAダメージ抑制作用試験
紫外線によって自己修復できないほどのダメージを受けた細胞は、自己防衛の手段としてアポトーシスを引き起こす。このアポトーシスを起こすシグナルの一つに、p53タンパク質がある。紫外線照射によって核内のp53量が増加することから、紫外線によるダメージを抑えることが出来れば、p53量の増加が抑制され。アポトーシスを防ぐことができると考えられる。
このような知見に基づき、上記テンニンカ果実部抽出物(試料1)、ピセアタンノール(試料2)、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)について、p53量を指標に、ケラチノサイトに対する紫外線UVB照射によるDNAダメージ抑制作用を検討した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの濃度になるようにKGM培地で希釈した後、60mmシャーレに2mLずつ播種し、4日間培養した。培養終了後、培地を抜き、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表4を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに3mL分注し、72時間培養した。培養終了後、培地を1mLのHank’s液へ交換し、50mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、培地を抜き、被験試料を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各シャーレに3mL分注し、24時間培養した。培養終了後、NE−PER(PIERCE社製)を用いて、核内タンパク質を抽出し、電気泳動用の試料を調製した。この時、紫外線を照射しないもの、及び紫外線を照射し被験試料を添加しないものについても同様に試料を調製した。調製した試料のタンパク質量を1レーンあたり10μgに揃え、SDS−PAGEを行った後、抗p53抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)を用いてウエスタンブロッティングを行った。得られたp53のバンド強度値を指標に、UVB誘導DNAダメージ抑制作用を評価した。すなわち画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus(Bio-Rad Laboratories社製)を用いて検出したバンドをImage Lab Software version 2.0(Bio-Rad Laboratories社製)にて定量的に測定し評価した。UVB誘導p53増加抑制作用を下記式により算出した。
UVB誘導p53増加抑制率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中、Aは「UVB照射・被験試料添加の細胞でのp53定量値」を表し、Bは「UVB照射・試料無添加の細胞でのp53定量値」を表し、Cは「UVB非照射・試料無添加の細胞でのp53定量値」を表す。
結果を表4に示す。
Figure 2012046448

表4に示すように、試料1〜試料3はいずれもUVB照射によって増加するp53の増加を抑制する作用が認められた。したがって、テンニンカ果実部抽出物、ピセアタンノール、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドはUVBによるアポトーシスを抑制する作用が期待でき、そのメカニズムとしてp53シグナルを介して抑制していると考えられた。
〔試験例5〕ケラチノサイトにおけるPGE産生抑制作用試験
紫外線による肌への影響の一つに紅斑形成がある。紅斑は炎症反応の一種であり、紅斑を起こす原因となる重要な炎症性メディエーターとしてプロスタグランジンE(PGE)が知られている。紫外線によって刺激を受けたケラチノサイトではシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現誘導が起こり、COX−2の働きによってPGEが生成・放出される。これが皮膚の血管を拡張させるなどした結果、症状として紅斑が現れる。従ってPGEの産生を抑制することで紅斑のような炎症症状を抑えることができると考えられる。
このような知見に基づき、上記テンニンカ果実部抽出物(試料1)、ピセアタンノール(試料2)、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)について、以下のようにしてPGE産生抑制作用を試験した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を12.5×10cells/mLの濃度にKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種(2.5×10cells/ウェル)し、一晩培養した。細胞が定着したことを確認した後、ハイドロコルチゾンを抜いたKGM培地200μLにて、24時間培養した。培養終了後、既に存在するCOX−1及び少量発現しているCOX−2をアセチル化し失活させるため、500μmol/Lアスピリン含有KGM培地(ハイドロコルチゾン抜き)を200μL加え、4時間培養した。培養終了後、細胞をPBS緩衝液で3回洗浄し、100μLのPBS緩衝液を加え、50mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表5を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに400μLずつ分注し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養終了後、各ウェルの培養上清中のPGE量をPGE2 EIA Kit(Cayman Chemical社製)を用いて定量した。下記式によりPGE産生抑制作用を算出した。
UVB誘導PGE産生抑制率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中、Aは「UVB照射・被験試料添加の細胞でのPGE量」を表し、Bは「UVB照射・試料無添加の細胞でのPGE量」を表し、Cは「UVB非照射・試料無添加の細胞でのPGE量」を表す。
結果を表5に示す。
Figure 2012046448

表5に示すように、試料1〜試料3はいずれもUVB照射24時間後におけるPGEの産生を抑制する作用が認められた。したがって、テンニンカ果実部抽出物、ピセアタンノール、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシドは、UVB照射によるPGEの産生を抑制することにより紅斑のような炎症症状を抑制する作用が期待できると考えられた。
〔試験例6〕紫外線(UVB)誘導IL−1β遊離抑制作用試験
日焼け(サンバーン)は、紫外線UVBによって引き起こされる炎症症状である。主な炎症症状の一つである紅斑はPGEなどの炎症性メディエーターによる血管拡張の結果である。これらメディエーターの産生を促すサイトカインとして、IL−1α、IL−1β、IL−6及びTNF−αといった前炎症性サイトカインとよばれる物質が知られている。これら炎症性メディエーターや各種サイトカインは、免疫担当細胞だけでなく、肌の細胞であるケラチノサイトやファイブロブラストからも放出される。従って、日焼けによる炎症には、これら肌細胞から放出される因子が深く関わっていると考えられる。
上記のIL−1βは前炎症性サイトカインとして広く知られる一方、その特徴的な放出様式からインフラマソームと呼ばれる集団にも属している。インフラマソームは、ヒスタミンリリースの様な脱顆粒やアラキドンカスケードによるプロスタグランジン類の産生、受容体シグナルによる単なるサイトカインの転写・複製による産生ではない様式で管理されている。大まかには、様々な危険因子によって活性化されるNLR(Nod-like receptor)とそれによって活性化されるcaspase-1、及び前駆体で産生されcaspase-1によって活性化、細胞外へ遊離されるIL−1βよりなる。
このインフラマソームが最近、ケラチノサイトにも存在し紫外線照射によって活性化することが報告されている。紫外線照射によってどのようにNLRが活性化するか詳しいところはまだ分かっていないが、これらいずれかの系を抑制することによって、前炎症性サイトカインであるIL−1βの放出が抑制されるのであれば、結果として紫外線UVBによって引き起こされる炎症に対する作用が期待できる。
このような知見に基づき、上記テンニンカ果実部抽出物(試料1)、ピセアタンノール(試料2)、及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(試料3)について、以下のようにしてインターロイキン−1β(IL−1β)遊離抑制作用を試験した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞増殖用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を3×10cells/mLの濃度になるようにハイドロコルチゾンを抜いたKGM培地(KGM−Hyd)で希釈した後、コラーゲンコートした24ウェルプレートへ0.5mLずつ播種し、1日間培養した。培養終了後、培地を抜き、被験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表6を参照)を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに0.5mL分注し、24時間培養した。培養終了後、培地を0.25mLのHank’s液へ交換し、100mJ/cmのUVB(東芝医療用品社製,F1312(UV−B))を照射した。照射後、培地を抜き、被験試料を添加したKGM培地又は試料無添加のKGM培地を各ウェルに0.5mL添加、24時間培養した。培養終了後、上清を回収し、IL−1βELISAキット(R&D社製)を用いて遊離されたIL−1β量を測定した。下記式により、UVB誘導IL−1β遊離抑制作用を算出した。
UVB誘導IL−1β遊離抑制率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中、Aは「UVB照射・被験試料添加の細胞での細胞外IL−1β量」を表し、Bは「UVB照射・試料無添加の細胞での細胞外IL−1β量」を表し、Cは「UVB非照射・試料無添加の細胞での細胞外IL−1β量」を表す。
結果を表6に示す。
Figure 2012046448

表6に示すように、試料1にのみUVBによって遊離されるIL−1βを抑制する作用が認められた。従ってテンニンカ果実部抽出物にはUVBによる炎症を抑制する作用が認められた。また、試料2及び3はIL−1βの遊離を抑制しないことから、テンニンカ果実部抽出物が有するIL−1β遊離抑制作用にはピセアタンノール及びピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド以外の成分が関与している可能性が考えられた。
本発明の紫外線ダメージ回復作用剤は、皮膚の老化の予防又は改善、皮膚の炎症反応又は機能障害の予防又は改善、紫外線からのダメージに起因する疾患の予防又は治療、及び紫外線感受性の高い疾患の治療に大きく貢献できる。

Claims (3)

  1. テンニンカからの抽出物を有効成分として含有する紫外線ダメージ回復作用剤。
  2. ピセアタンノール(piceatannol)を有効成分として含有する紫外線ダメージ回復作用剤。
  3. ピセアタンノール4’−O−β−D−グルコピラノシド(piceatannol 4'-O-β-D-glucopyranoside)を有効成分として含有する紫外線ダメージ回復作用剤。
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