JP2012036134A - 刺激応答性化合物、およびアクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、第1のユニットBに第1の連結基を介して結合した液晶性を有する第1のユニットCと、第2のユニットBに第2の連結基を介して結合した液晶性を有する第2のユニットCとを有し、第1のユニットBと第2のユニットBとは、酸化還元反応によって結合するものであり、第1のユニットCおよび第2のユニットCは、複数のベンゼン環を備え、複数のベンゼン環の少なくとも1つのベンゼン環は、互いにメタ位となる位置に結合した、ベンゼン環を含む官能基を有していることを特徴とする
【選択図】図1
Description
従来のアクチュエータは、イオン交換膜を用いたものが主流であり(例えば、特許文献1参照)、これは、イオンの移動により材料が収縮・膨潤するもので、イオンの拡散速度により動作が支配されるため、高速応答化には課題が多い。また、アクチュエータの動作に方向性を持たせる方法が無く、高効率で動作させるためにも異方的な動きを実現できるものが求められている。
本発明の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記第1のユニットBに第1の連結基を介して結合した液晶性を有する第1のユニットCと、
前記第2のユニットBに第2の連結基を介して結合した液晶性を有する第2のユニットCと、を有し、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは、酸化還元反応によって結合するものであり、
前記第1のユニットCおよび第2のユニットCは、複数のベンゼン環を備え、
前記複数のベンゼン環の少なくとも1つのベンゼン環は、互いにメタ位となる位置に結合した、ベンゼン環を含む官能基を有していることを特徴とする。
これにより、低い電圧で変形することが可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
前記第1の連結基および第2の連結基は、それぞれ、オルト位の位置に結合していることが好ましい。
これにより、変形の度合いをより大きくすることができるとともに、各ユニットCの配向時における運動性能をより高いものとすることができる。
本発明の刺激応答性化合物では、前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは、重合性官能基を有していることが好ましい。
これにより、より分子鎖の長い刺激応答性化合物を形成することができる。
これにより、分子の変形(変位)の度合いを大きくすることができ、より、強い力で駆動させることが可能となる。
本発明のアクチュエータは、本発明の刺激応答性化合物を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、低い電圧で変形することが可能なアクチュエータを提供することができる。
《刺激応答性化合物》
まず、本発明の刺激応答性化合物の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図1中、○等は官能基を意味し、線は結合を意味する。
刺激応答性化合物を構成するユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基(ユニット)である。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、下記式(1)から(3)なる群から選択される1種の基であるのが好ましい。このような基をユニットAとして用いることにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、より低電圧で駆動するものとなる。
また、ユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図1(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
図1に示すように、第1のユニットC1は、第1の連結基X1を介して第1のユニットB1に結合しており、第2のユニットCは、第2の連結基X2を介して第2のユニットB1に結合している。ユニットCが液晶性を有することにより、ユニットCは、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。これにより、激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。また、連結基Xを介して結合していることにより、変位時における運動性能を高いものとすることができ、低電圧で変形することができる。
このような構成とすることで、ユニットCの分子構造は、図1に示すように、屈曲した構造となる。これにより、屈曲していない場合と比較して、変位の幅(度合い)を大きくすることができる。
また、第1の連結基X1および第2の連結基X2としては、特に限定されないが、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選択される1種であるのが好ましい。これにより、変形の度合いをより大きくすることができるとともに、各ユニットCの配向時における運動性能をより高いものとすることができる。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)の具体例としては、以下のようなものが挙げることができるが、これに限定されず、例えば、複数のベンゼン環がエステル基、エーテル基、アミド基等によって結合されたものであってもよい。
すなわち、電圧を印加する前(酸化還元反応が進行する前)は、図2(a)に示すように、長い分子が伸びた状態で存在している。そこへ電圧を印加すると、図2(b)に示すように、ユニットAを軸に回転し、隣接するユニットB同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性のユニットCが配向することにより、長い分子が折りたたまれた状態となる。このため、変位の度合いを大きなものとすることができる。
次に、上述した刺激応答性化合物を用いたアクチュエータについて詳細に説明する。
図2は、本発明の刺激応答性化合物を用いたアクチュエータの一例を模式的に示す断面図、図3は、電圧印加により変形したアクチュエータの一例を示す断面図である。
図1に示すように、アクチュエータ100は、本発明の刺激応答性化合物で構成された変形層10と、当該変形層10の両面に設けられた電極11とを有している。すなわち、アクチュエータ100は、変形層10を電極11で挟持した構造となっている。
電極11は、変形層10に電圧を印加する機能を有している。
また、電極11は、変形層10の変形に追従するために、屈曲性を備えている。
また、電極11の、変形層10と接する面には、ラビング処理等の配向処理が施されている。これにより、刺激応答性化合物の液晶性官能基を好適に配向させることができる。また、これにより、変形層10の変形(膨張・収縮)に異方性を発現させることができる。
このような構造のアクチュエータ100において、電極11に電圧を印加すると、変形層10の一方の電極11と接している側では、酸化反応が進み膨張し、変形層10の他方の電極11と接している側では、還元反応が進み収縮する。その結果、図3に示すように、還元反応が生じた方向に屈曲する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例)
刺激応答性化合物を用いて、図2に示すようなアクチュエータを作成した。
アクチュエータは、刺激応答性化合物を溶媒に溶解させ、それをシャーレ上に塗布・乾燥し、乾燥物(変形層)を3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、変形層の両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
なお、刺激応答性化合物は以下のようにして合成したものを用いた。
ブロモチオフェンを原料として亜鉛、ニッケルの触媒を用いた2量化、臭素化を行い、DMFによるアルデヒド基の導入(ホルミル化)を行った。
次に、アルデヒド基の保護を行い、ブチルリチウムと水により臭素を水素に変換した。
次に、脱保護を行い、酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、ユニットAとユニットBが結合した化合物を得た。
次に、得られた化合物のベンゼンジチオールのベンゼン環のオルト位の水素をブチルリチウムを用いて引き抜き、オルト位を陰イオン化し、二酸化炭素と接触させた後、酸で処理することにより、下記式(6)で表される化合物を得た。
まず、ヒドロキシ安息香酸のカルボキシル基をエチル化しエチルエーテルとした。次にアルキレンハライドと塩基存在下で反応させた。加水分解によりカルボン酸にした後、塩化チオニルで処理することにより酸クロリドに変換した。
その後、ジヒドロキシビフェニルと、上記ヒドロキシ安息香酸と、ヒドロキノンとのエステル化を行い、ユニットCとなる化合物を得た。
上記式(6)で表される化合物と、ユニットCとなる化合物とを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)といった縮合剤を用いてエステル化することにより刺激応答性化合物を得た。
(比較例)
単層カーボンナノチューブ(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製「HiPco」、含有Fe量14重量%)(以下、SWNTともいう)25mg、5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製、低分子量直鎖アルコールと水(10%)混合溶媒)25ml、および試薬特級メタノール25mlを、ビーカーに秤量して混合した後、超音波洗浄器中で、超音波照射を10時間以上行い、SWNTとナフィオンの混合分散液を調製した。この分散液をガラス製のシャーレにキャストし、ドラフト中で一昼夜以上放置して溶媒を除去した。溶媒を除去した後、150℃で4時間、熱処理を行った。形成されたSWNTとナフィオンの複合体フィルムをシャーレから剥がした後、3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、複合体フィルムの両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
評価は、実施例および比較例のアクチュエータを1mm×15mmの短冊状に切り取った試験片の端3mmの部分を電極付きホルダーでつかんで、空気中で電圧5Vを加え、レーザー変位計を用いて、固定端から10mmの位置の変位を観測した。
その結果、本発明の刺激応答性化合物を用いたアクチュエータでは、大きく変位したが、比較例のアクチュエータは、変位の度合いが小さかった。
Claims (7)
- 回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記第1のユニットBに第1の連結基を介して結合した液晶性を有する第1のユニットCと、
前記第2のユニットBに第2の連結基を介して結合した液晶性を有する第2のユニットCと、を有し、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは、酸化還元反応によって結合するものであり、
前記第1のユニットCおよび第2のユニットCは、複数のベンゼン環を備え、
前記複数のベンゼン環の少なくとも1つのベンゼン環は、互いにメタ位となる位置に結合した、ベンゼン環を含む官能基を有していることを特徴とする刺激応答性化合物。 - 前記第1の連結基および前記第2の連結基は、エステル基、エーテル基、アミド基からなる群から選択される1種である請求項1ないし3のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
- 前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは、重合性官能基を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
- 前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCの前記重合性官能基によって重合している請求項5に記載の刺激応答性化合物。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の刺激応答性化合物を用いて製造されたことを特徴とするアクチュエータ。
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