医療機器、産業用ロボット、マイクロマシン等の分野において、小型、軽量で柔軟性に優れたアクチュエータが要求されており、静電力、圧電性、超音波、形状記憶合金、高分子の伸縮等を利用するアクチュエータが提案されている。
例えば、「人体装着に適したSMA人工筋肉」と題する後記の非特許文献1には、以下の記載がある。
人工筋肉に関しての厳密な定義は存在しないが、「人間の筋肉のように柔らかく伸縮するアクチュエータ」の総称として使われることが多い。人工筋肉と呼称されているアクチュエータの分類としては、高分子材料を用いたアクチュエータ(ポリマクチュエータ)、形状記憶材料を用いたアクチュエータ(形状記憶アクチュエータ)、静電力を利用したアクチュエータ(静電アクチュエータ)、空気圧を用いたアクチュエータ(エアアクチュエータ)等が挙げられ、研究開発が盛んである。
ポリマクチュエータとは、外界刺激により変形を起こす高分子の総称である。その刺激は、化学的刺激(pHの変化や含浸水分量の変化等)や電気的刺激、熱刺激、光刺激、磁気刺激等多岐にわたる。その中でも近年は、電気的刺激によりポリマを制御するアクチュエータに関する研究が盛んである。
電圧印加によりポリマ中のイオンが移動してポリマが変形するICPF(Ionic Conductive Polymer Film)アクチュエータ、電圧印加により電界溶液中のイオンをポリマ電極が吸収して変形する導電性ポリマクチュエータ、ポリマそのものが誘電分極されて逆圧電効果により変形する圧電ポリマクチュエータ、ポリマ間の電極に生じるクーロン力で中間層のポリマが変形する電歪ポリマクチュエータ等が電気的刺激を用いる主な例である。
ポリマクチュエータは、エネルギー効率が高い、低コストで作製できる等魅力的な点が多いが、研究段階の技術が多く、耐久性等の不安点もある。また、発生力が単体では小さいので、アシスト・リハビリテーション等へ応用するには、出力増大のための技術開発が併せて必要になる。以上が非特許文献1の記載内容である。
上記のICPFアクチュエータはIPMC(Ionic Polymer Metal Composite)アクチュエータとも呼ばれ、イオン導電性高分子(高分子電解質ゲル)の両面に電極を接合した接合体の電極間に電圧をかけると、陽イオンが移動し、それに伴い水分子も移動して、片面が膨張、他面が収縮して、この結果、屈曲する。柔軟、軽量、無音、小型化が容易等の特徴がある。このアクチュエータは、電極の材料やその構造によって変形量や発生力等の特性が大きく変化する。
また、「圧電アクチュエータ−精密位置決めへの応用」と題する後記の非特許文献2には、アクチュエータ全体が曲げ変形を起こすバイモルフ型圧アクチュエータに関する記載がある。
IPMC又はICPFアクチュエータの動作原理に関して、例えば、以下の従来技術が知られている。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献1には、以下の記載がある。
アクチュエータ素子は、イオン交換膜と、このイオン交換膜の両面に接合した電極とから成り、前記イオン交換膜の含水状態において、前記イオン交換膜に電位差をかけて前記イオン交換膜に湾曲及び変形を生ぜしめることを特徴とする。以下、アクチュエータ素子を図面にもとづき説明する。
図13は、特許文献1に記載の図1、図2であり、図13(A)はアクチュエータ素子の電圧無印加状態の概要断面図、図13(B)はアクチュエータ素子の電圧印加状態の概要断面図である。
図13(A)に示すとおり、のアクチュエータ素子201はイオン交換膜202と、このイオン交換膜202の両面に接した電極203、203’とから成る。イオン交換膜202としては、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜の何れも使用することができ、例えば、陽イオン交換膜としてポリスチレンスルホン酸膜やスルホン基やカルボキシル基を持つフッ素樹脂系イオン交換膜を挙げることができる。かかるイオン交換膜の両面に接合する電極203、203’には白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム等の貴金属が好ましいが、そのほか導電性高分子や黒鉛等の導電性と耐食性を合わせ持つ物質が利用できる。接合方法には化学メッキ、電気メッキ、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着等の電極材料を高分子膜に付着させるための既知の方法が全て利用できる。
そして、電極203、203’をリード線を介して直流電源205に連結するとアクチュエータ素子が得られる。アクチュエータ素子の作動時には、イオン交換膜が含水状態である必要がある。ここで含水状態とは、アクチュエータが水中で、又は高湿度の大気中でも作動することを意味する。水中においては、周囲の水中に含まれるイオンは動作に影響する場合があるが、種々のイオンや溶質を含んだ液中でも作動できる。
アクチュエータ素子の作動機構あるいは原理は明確ではないが、膜の表裏に電位差がかかることで、図13(B)に示すようにイオン交換膜202中の正イオン204が陰極203’側に移動し、このイオンに伴われて水分子が膜内で移動するために陽極側と陰極側で水分量に差ができると推定される。従って含水率が高まれば膨潤し、含水率が低下すれば収縮するので、膜の表裏で水分量に差が付けば膜は湾曲すると考えられる。ただし、イオンの分布に差が付いても、その状態でイオンの動きが止まれば、膜の外部からの水の拡散によって次第に水分分布は元の均一状態に近づくと推定される。
即ち、一定電圧をかけていても膜内の電流が減少すれば、一端生じた含水率の分布は徐々に平均化されて行くために、湾曲は元に戻ると考えられる。陽イオン交換膜を純水中で用いた場合、移動するイオンはH+イオンであり、食塩水中で用いた場合はNa+であると考えられるため、電圧をかけるとそれらのイオンは水分子と共に陰極側へ移動する。このように考察すれば、陰極側の高分子膜の含水率が上がり、陽極側の含水率は下がるので、陰極側が伸びて陽極側が縮むため、膜は陽極側へ湾曲することになり、この傾向は実施例の結果と一致する。
特許文献1に記載の発明によれば、下記特長を有するアクチュエータ素子が得られる。
1)単純な構造であり、超小型化できる。
2)超小型化しても水の粘性抵抗や表面の摩擦力に打ち勝つだけの大きな力が発生できる。
3)生体内等の液中で作動する。
4)1V程度の低電圧で作動する。
5)超小型であれば微少な電流でも作動する。
6)比較的応答が速い。
7)電圧によってアクチュエータの動作が制御できる。
8)比較的大きな力を発生する反面、素子自体は柔軟である。
即ち、電極間に0.1〜3Vの直流電圧をかけることにより、1秒以内に素子長の1/10もの変位が得られ、かつ水中で作動する柔軟な素子を作製できる。素子を細長い棒状にすれば、大きく湾曲させることができ、大きな変位を得ることができる。従って、従来のアクチュエータでは不可能であった水中での超小型動力発生機構が可能になるので、特に水中で作動する超小型ロボット用の人工筋肉として利用でき、また生体内で使用される医療用器具の動力にも応用できる。
IPMC又はICPFアクチュエータの駆動によって生じる変位の測定に関して、例えば、以下の従来技術が知られている。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献2には、以下の記載がある。
図14は特許文献2に記載の図2であり、アクチュエータ素子の変位測定装置の概略を示す図である。応答性の評価は、1mm×15mmの短冊状に切り取った接合体試料片の端3mmの部分を電極付きホルダーでつかんで、空気中で電圧を加え、レーザ変位計を用いて、固定端から10mmの位置の変位を測定して行った。
「高分子アクチュエータの製造方法」と題する後記の特許文献3には、以下の記載がある。
得られた金電極が形成されたイオン樹脂成形品を、1.0mm×20mmの大きさに切断したものを試験片として、表面抵抗を測定した。また、試験片の表・裏の両電極を介して電圧を印加(0.1Hz、2.0Vの方形波)て、変位量を測定した。なお、曲げ変位量は、試験片の一方から8mmの位置を白金板で挟んで、水中に保持し、かつ白金板からリード線をのばし、ポテンショスタットを介して試験片の両端の金電極に印加することで行った。変位量は固定端から10mmの位置の変位をレーザ変位計を用いて測定した。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献4には、以下の記載がある。
(実験)下記の変位測定法に従い、アクチュエータ素子の両電極間に方形波電圧1Vを印加すると、陽極方向に約1.6mm変形して、その場において変形状態を保持した。また、24時間、1Vを印加し続けても、変形状態を保持していた。印加電圧を0Vにすると、元の位置に戻った。同操作を数回〜数十回繰り返しても、同様の変形状態を保持しており、形状保持性の再現性も確認された。
(アクチュエータ素子の変位測定法)幅1mm、長さ15mmの短冊形状のアクチュエータ素子の片端3mmを給電体である白金ブロックで挟み、37℃の純水中に吊り下げて保持し、ポテンシオスタット2000(東方技研社製)とファンクション・ジェネレータ(任意関数発生装置)FG−02(東方技研社製)とを用い、方形波電圧を印加してアクチュエータ素子を湾曲変形させ、アクチュエータ素子の固定端から10mmの位置の陽極方向への変位をレーザ反射式変位計LC2100(キーエンス社製)で測定し、印加電圧、電流と変位とをデジタルオシロスコープDL2240(横河電機社製)で同時にモニターした。
IPMC又はICPFアクチュエータの駆動によって発生する応力の測定に関して、例えば、以下の従来技術が知られている。
「アクチュエータ及びガイドワイヤ」と題する後記の特許文献5には、以下の記載がある。
アクチュエータの発生応力の測定方法は次のとおりである。アクチュエータを電子天秤METTLERAE240(日本シイベルヘグナー社製)の皿上に設置し、アクチュエータへ1.5Vの矩形電圧を印加した時の最大荷重を読み取り、それをアクチュエータの発生応力とした。
特開平4−275078号公報(第2頁左欄第45行〜同頁右欄第42行、第3頁右欄第1行〜同頁同欄第22行、図1、図2)
特開2005−224027号公報(段落0026、図2)
特許第2961125号公報(段落0058、図7)
特開平9−79129号公報(段落0052〜0053)
特開平8−280187号公報(段落0030〜0031)
松下電工技報、Aug.(2003)、p.59〜p.63(2.1「人工筋肉とは」、2.2.1「ポリマクチュエータ」)
精密工学会誌、Vol.72、No.4、p.449〜p.452(2006)(2.「圧電アクチュエータの種類」)
本発明のアクチュエータでは、前記アクチュエータ本体がイオン導電性高分子層によって構成されることが好ましい。前記アクチュエータ本体は、単純な構造をもち小型化が可能であり、駆動を電圧によって制御することができ、小さな電圧による駆動によって大きな変形を生じるので、アクチュエータ本体の自重に比して大きな駆動力を発生させることができる。即ち、軽量なアクチュエータ本体によって大きな駆動力を発生させることができる。
また、前記検出手段は、第1、第2、第3の電極板を含み、前記イオン導電性高分子の一部が、対向して固定された前記第1及び第2の電極板の間に配置され、前記イオン導電性高分子の変形に際して、前記第1及び第2の電極板に平行に移動可能なように、前記第3の電極板が前記イオン導電性高分子に保持されており、前記第3の電極板と前記第1の電極板と間の静電容量、及び/又は、前記第3の電極板と前記第2の電極板と間の静電容量に基づいて、前記イオン導電性高分子の変形量を検出する構成とするのがよい。前記第3の電極板が前記イオン導電性高分子の変形とともに、前記第1及び第2の電極板に平行に移動するので、前記第3の電極板と前記第1の電極板とによって構成される平行平板電極によるキャパシタの静電容量、及び/又は、前記第3の電極板と前記第2の電極板とによって構成される平行平板電極によるキャパシタの静電容量を測定することによって、前記イオン導電性高分子の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記検出手段は、前記イオン導電性高分子に固定された光ファイバと、この光ファイバの一端から入射させるレーザ光を発生する光源と、前記光ファイバの他端から出射する前記レーザ光を検出する受光素子アレイとを含み、前記光ファイバの前記他端が前記イオン導電性高分子の長手方向の端部近傍に配置され、前記他端から出射した前記レーザ光が検出された前記受光素子アレイの受光素子の位置情報に基づいて、前記イオン導電性高分子の変形量を検出する構成とするのがよい。前記光ファイバは前記イオン導電性高分子に固定されており、前記イオン導電性高分子の変形にともなって、前記光ファイバの他端から出射するレーザ光の方位が変化するので、この方位の変化を、前記レーザ光が検出される前記受光素子アレイの受光素子の位置によって検出することができ、前記イオン導電性高分子の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記光ファイバの一部が前記イオン導電性高分子の内部に配置された構成とするのがよい。また、前記光ファイバの一部が、一方の前記対向電極の面に前記イオン導電性高分子に平行に配置された構成とするのがよい。前記光ファイバの一部を、前記イオン導電性高分子に配置することによって、前記光ファイバの他端から出射するレーザ光の方位を、前記イオン導電性高分子の変形とともに変化させることができる。
また、前記アクチュエータ本体を第1のアクチュエータ本体として、前記検出手段は、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有する第2のアクチュエータ本体と、この第2のアクチュエータ本体の対向する面に形成された第2の対向電極とを含み、前記第2の対向電極の間に生じる起電力に基づいて、前記第1のアクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。前記第1のアクチュエータ本体の変形量と前記第2の対向電極の間に生じる起電力との関係を、予め、計測して対応関係を求めておくことによって、この対応関係を用いて、前記第2の対向電極の間で計測された起電力から前記第1のアクチュエータ本体の変形量を検出することができる。従って、前記イオン導電性高分子の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記アクチュエータ本体を第1のアクチュエータ本体として、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有し、対向する面に形成された第2の対向電極を具備する第2のアクチュエータ本体を備え、この第2のアクチュエータは、前記検出手段によって検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に基づいて、前記第1のアクチュエータ本体の変形を制御する構成とするのがよい。前記検出手段によって検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に応じて、前記第1のアクチュエータ本体の変形を適切に制御することによって、前記第1のアクチュエータ本体による駆動量を所望の目標とする値にすることができる。
また、前記検出手段は、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有し、対向する面に形成された第3の対向電極を具備する第3のアクチュエータ本体によって構成され、前記第1のアクチュエータ本体の変形によって生じた前記第3のアクチュエータ本体の変形量に基づいて、前記第1のアクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。前記第3のアクチュエータ本体によって、前記第1のアクチュエータ本体の変形量を常時正確に検出することができる。
また、検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に基づいて、前記第2のアクチュエータ本体の変形が制御され、前記第2のアクチュエータ本体の変形によって、前記第1のアクチュエータ本体の変形が制御される構成とするのがよい。検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に応じて、前記第2のアクチュエータ本体の変形を適切に制御することによって、前記第1のアクチュエータ本体による駆動量を所望の目標とする値にすることができる。
本発明のアクチュエータの駆動方法では、前記第2の工程は、前記アクチュエータ本体の一部が間に配置される対向して固定された第1及び第2の電極の少なくとも一方の電極と、前記アクチュエータ本体が保持する第3の電極との間の静電容量を検出する工程を含み、検出された前記静電容量に基づいて前記アクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。第1及び第2の電極の少なくとも一方の電極と、前記第3の電極とによるキャパシタの静電容量を測定することによって、前記アクチュエータ本体の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記第2の工程は、前記アクチュエータ本体に固定された光ファイバの一端からレーザ光を入射させ、前記光ファイバの他端から出射する前記レーザ光を受光素子アレイによって検出する工程を含み、前記他端から出射した前記レーザ光が検出された前記受光素子アレイの受光素子の位置情報に基づいて、前記アクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。前記光ファイバは前記イオン導電性高分子に固定されており、前記アクチュエータ本体の変形にともなって、前記光ファイバの他端から出射するレーザ光の方位が変化するので、この方位の変化を、前記レーザ光が検出される前記受光素子アレイの受光素子の位置によって検出することができ、前記アクチュエータ本体の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記第2の工程は、前記アクチュエータ本体を第1のアクチュエータ本体として、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有する第2のアクチュエータ本体の対向する面に形成された第2の対向電極の間に生じる起電力を検出する工程を含み、検出された前記起電力に基づいて前記アクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。前記アクチュエータ本体は、例えば、前記イオン導電性高分子から構成されており、前記第1のアクチュエータ本体の変形量と前記第2の対向電極の間に生じる起電力との関係を、予め、計測して対応関係を求めておくことによって、この対応関係を用いて、前記第2の対向電極の間で計測された起電力から前記第1のアクチュエータ本体の変形量を検出することができる。従って、前記第1のアクチュエータ本体の変形を常時正確に検出することができる。
また、前記第3の工程は、前記起電力が所望の値以上になった場合に、前記第2の対向電極の間に電圧を印加する工程を含む構成とするのがよい。前記アクチュエータ本体による過剰な変形を防止して、前記アクチュエータ本体による駆動を適切な範囲とすることができる。
また、前記第3の工程において、前記第1のアクチュエータ本体の変形の方向と逆の方向に、前記第2のアクチュエータ本体を変形させて、前記第1のアクチュエータ本体の変形が制御される構成とするのがよい。前記第2のアクチュエータ本体の変形によって、前記アクチュエータ本体によって生じた過剰な変形を抑制し、前記アクチュエータ本体による駆動を低下させて、駆動を適切な範囲とすることができる。
また、前記第3の工程において、前記アクチュエータ本体を第1のアクチュエータ本体として、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有し、対向する面に形成された第2の対向電極を具備する第2のアクチュエータ本体の変形によって、前記第1のアクチュエータ本体の変形が制御される構成とするのがよい。前記第2の工程において検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に応じて、前記第1のアクチュエータ本体の変形を適切に制御することによって、前記第1のアクチュエータ本体による駆動量を所望の目標とする値にすることができる。
また、前記第2の工程において、前記第1のアクチュエータ本体の長手方向の端部に接続された端部を有し、対向する面に形成された第3の対向電極を具備する第3のアクチュエータ本体を用いて、前記第1のアクチュエータ本体の変形によって生じた前記第3のアクチュエータ本体の変形量に基づいて、前記第1のアクチュエータ本体の変形量を検出する構成とするのがよい。前記第3のアクチュエータ本体によって、前記第1のアクチュエータ本体の変形量を常時正確に検出することができる。
また、前記第3の工程において、検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に基づいて、前記第2のアクチュエータ本体の変形が制御され、前記第2のアクチュエータ本体の変形によって、前記第1のアクチュエータ本体の変形が制御される構成とするのがよい。検出された前記第1のアクチュエータ本体の変形量に応じて、前記第2のアクチュエータ本体の変形を適切に制御することによって、前記第1のアクチュエータ本体による駆動量を所望の目標とする値にすることができる。
以下、イオンを含むアクチュエータの代表例として、電圧の印加によって可動なイオンを含んでいるイオン導電性高分子を用いるIPMC又はICPFアクチュエータと呼ばれるタイプの高分子アクチュエータを例にとって、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
先ず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る高分子アクチュエータについて説明する。
図1に示す高分子アクチュエータの断面図において、図1(A)に示すように、変形前の高分子アクチュエータ10aは、陽イオン物質が含浸されたイオン導電性高分子層(イオン導電性高分子フィルム)15と、このイオン導電性高分子層15の両面それぞれに設けられる電極層16a、16bと、この電極層16a、16bのそれぞれに電気的に接続された導電線(リード線)とを備えている。
1対の導電線によって電極層16a、16bの間に電圧が印加され、イオン導電性高分子層15が湾曲又は変形し、後述するように変形前の高分子アクチュエータ10aは変形する。
イオン導電性高分子層15は、フッ素樹脂、炭化水素系等を骨格としたイオン交換樹脂からなり、表裏2つの主面をもつ形状を呈している。例えば、短冊形状、円盤形状、円柱形状、円筒形状等が挙げられる。また、イオン交換樹脂としては、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、両イオン交換樹脂何れでもよいが、このうち陽イオン交換樹脂が好適である。
陽イオン交換樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂等にスルホン酸基、カルボキシル基等の官能基が導入されたものが挙げられ、特にフッ素樹脂にスルホン酸基、カルボキシル基等の官能基が導入された陽イオン交換樹脂が好ましい。
電極層16a、16bは、例えば、イオン導電性高分子層15に金属錯体(例えば、金錯体、白金錯体)を水溶液中で吸着させ、吸着した金属錯体を還元剤により還元して、イオン導電性高分子層15表面に金属を析出させることによって、形成する。
また、電極層16a、16bは、カーボンブラックの微細粉末とイオン導電性樹脂(イオン導電性高分子層15を構成する材料と同じものでよい。)を溶媒に分散させた塗料を、イオン導電性高分子層15に塗布し乾燥させて、所望の厚さでカーボン電極層として形成することもできる。
なお、少なくともイオン導電性高分子層15に陽イオン物質が含浸されているが、この陽イオン物質とは、水及び金属イオン、水及び有機イオン、イオン液体の何れかであることが好ましい。ここで、金属イオンとは、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
また、有機イオンとは、例えば、アルキルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのイオンはイオン導電性高分子層15中において水和物として存在している。イオン導電性高分子層15が水及び金属イオン、又は水及び有機イオンを含み、含水状態となっている場合には、高分子アクチュエータは中からこの水が揮発しないように、電極層16a、16b、及び、イオン導電性高分子層15を封止しておくことが好ましい。
また、イオン液体とは、常温溶融塩とも言われる不燃性、不揮発性のイオンのみからなる溶媒であり、例えば、イミダゾリウム環系化合物、ピリジニウム環系化合物、脂肪族系化合物のものを使用することができる。イオン導電性高分子層15にイオン液体を含浸させている場合には、揮発する心配なく高温あるいは真空中でも高分子アクチュエータを使用することができる。
図1を参照して、高分子アクチュエータの動作原理を説明する。なお、図1(B)、図1(C)では、変形前の高分子アクチュエータは点線で示している(以下、各図では、変形前の高分子アクチュエータは点線で示される。)。ここでは、イオン導電性高分子層15中にナトリウムイオンが含浸されているものとして説明する。
図1(A)では、SW1がオフとされた変形前の高分子アクチュエータ10aが示されている。同図に示すように、電源からの電圧印加はなく、2つの電極層16a、16bに電位差がないことから、イオン導電性高分子層15の2つの電極層16a、16b近傍領域の間に体積差はなく、イオン導電性高分子層15は湾曲変形することなく真っ直ぐな状態である。
SW1がオンとされ電源より導電線を通じて、図1(B)中の上側の高分子アクチュエータの電極層16aにプラスの電位、同図中の下側の電極層16bにマイナスの電位を印加している。この電位差により、高分子アクチュエータのイオン導電性高分子層15中では、マイナスの電位が印加された側(同図中の下側)の電極層16bにナトリウムイオン水和物が引き寄せられて移動しこの電極層16bの近傍に集中しこの領域は体積膨張する。
一方、プラスの電位が印加された側(同図中の上側)の電極層16aの近傍におけるナトリウム水和物濃度は減少し、この領域は体積収縮する。その結果、イオン導電性高分子層15の2つの電極層16a、16b近傍領域の間に体積差が生じることとなり、変形後の高分子アクチュエータ10bでは、イオン導電性高分子層15は同図中の上側に凹状に湾曲する。
図1(C)では、電源より導電線を通じて、同図中の上側の高分子アクチュエータの電極層16aにマイナスの電位、同図中の下側の電極層16bにプラスの電位を印加しており、電圧印加方法が図1(B)の場合とは逆である。この電位差により、高分子アクチュエータのイオン導電性高分子層15中では、マイナスの電位が印加された側(同図中の上側)の電極層16aの近傍領域は体積膨張して、プラスの電位が印加された側(同図中の下側)の電極層16b近傍領域は体積収縮する。その結果、変形後の高分子アクチュエータ10cでは、イオン導電性高分子層15は同図中の下側に凹状に湾曲する。
第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態における、駆動による変形量を、静電容量の変化を測定することによって検出可能とする駆動用高分子アクチュエータを説明する断面図である。
図1に示すように、駆動力を発生させる駆動用高分子アクチュエータ10aに、駆動用高分子アクチュエータの駆動によって生じた変形を検出する検出手段として、駆動によって生じた変形による静電容量の変化を検出するための静電容量の測定用の電極31、32、33が設けられている。
図1(A)は、SW1がオフ状態で、電極層16a、16bに電圧が印加されていない静止状態を示し、変形前の駆動用高分子アクチュエータ10aに略平行に固定電極板31、32が配置され、可動電極板33が固定電極板31、32の略中央に位置するように配置されている。固定電極板31、32、可動電極板33の面積Aは略同じである。
可動電極板33と固定電極板31との間の距離D1、可動電極板33と固定電極板32との間の距離D2、可動電極板33と固定電極板31との間の静電容量C1、可動電極板33と固定電極板32との間の静電容量C2とする時、電圧無印加状態(駆動用高分子アクチュエータが駆動していない状態)では、D1=D2、C1=C2である。また、駆動用高分子アクチュエータの中心と、固定電極板31、32の中心との間の距離は、d1=d2である。
可動電極板33は、常に、固定電極板31、32に対して略平行な状態で、駆動用高分子アクチュエータの駆動に伴って移動可能な構成としておく。
図1(B)、図1(C)に示すように、SW1がオン状態で、電圧印加状態であり、駆動用高分子アクチュエータが駆動して変形を生じた場合には、変位後の駆動用アクチュエータの先端部中心位置は上記の静止状態からdだけ変位し、D1≠D2、C1≠C2となる。
面積A、電極板間距離Dのキャパシタの静電容量はC=ε×A/D(εは電極板間の媒質の比誘電率である。)であり、電極板間距離がD1、D2の場合、静電容量C1、C2との間には、C1:C2=1/D1:1/D2なる関係が成立する。
従って、変形後の駆動用検出用高分子アクチュエータ10b、10cにおける、可動電極板33と固定電極板31との間の静電容量C1、可動電極板33と固定電極板32との間の静電容量C2を、静電容量計で測定することによって、D1とD2の比が分かり、固定電極板31、32の間の距離が既知の一定値であるので、駆動用高分子アクチュエータの駆動によって生じた変形による、上記の静止状態からの駆動用高分子アクチュエータの先端部中心位置の変位量dを求めることができる。
予め、駆動量と変位量d(例えば、レーザ変位計を用いて測定する。)の関係を求めておけば、駆動量を検出することができる。また、予め、変位量d(例えば、レーザ変位計を用いて測定する。)とC1又は/及びC2(静電容量計を用いて測定する。)との関係を用いて、求めておけば、駆動用高分子アクチュエータの駆動による変位を、C1又は/及びC2の変化として静電容量計で測定することによって、変位量d、駆動量を検出することができる。
なお、駆動用高分子アクチュエータの使用用途や駆動量に応じて、ギヤ(軽量の歯車)等を介して、駆動用高分子アクチュエータの駆動量よりも可動電極板33の移動量を大きくしたり小さくしたりすることもできる。
以上のようにして、駆動用高分子アクチュエータの駆動により生じる変形を変位量として、任意の時点で電気的に検出することができ、駆動用高分子アクチュエータの変形の時間変化も正確に検出することができる。
なお、本実施の形態における駆動用高分子アクチュエータ10aを使用する駆動系に付いては、第4の実施の形態において後述する。
第2の実施の形態
図2、図3は、本発明の第2の実施の形態における、駆動による変形量を、光学手段によって検出可能とする高分子アクチュエータを説明する断面図である。
図2、図3に示すように、駆動力を発生させる駆動用高分子アクチュエータ10aに、駆動用高分子アクチュエータに生じた変形を検出する検出手段として、駆動によって生じた変形を光学的に検出するための光ファイバ38が設けられ、駆動による変形量を受光素子アレイ39によって検出可能とする高分子アクチュエータを説明する断面図である。
図2(A)に示すように、イオン導電性高分子層15の内部、又は、図示しない絶縁層を介して電極層16a、16bの何れかの面に、光ファイバ38を設け、駆動用高分子アクチュエータに光ファイバ38を保持させておき、光ファイバ38の一端からレーザ光を照射して、他端から出射するレーザ光を平板状の受光素子アレイ(受光ダイオードアレイ)39によって検出する。光ファイバ38を電極層16a、16bの何れかの面に設ける構成は、イオン導電性高分子層15の内部に設ける構成よりも単純にすることができる。
受光素子アレイ39としては、例えば、PNフォトダイオードアレイ、PINフォトダイオードアレイ、APD(アバランシェフォトダイオード)アレイを使用することができる。受光素子アレイ39は、受光素子の1次元アレイ又は2次元アレイである。
図2(B)、図2(C)に示すように、SW1がオンとされ、駆動用高分子アクチュエータが駆動し変形を生じた場合には、駆動用高分子アクチュエータの駆動に伴いレーザ光の方向が変化して、検出されるレーザ光の受光素子アレイ39における素子位置は変化する。従って、駆動用高分子アクチュエータの駆動によってレーザ光の検出位置が変化するため駆動状態を検知することができる。
なお、図2(A)に示す例では、駆動用高分子アクチュエータ10aと受光素子アレイ39とが直交するように構成されているが、後述する図3(A)に示すように、駆動用高分子アクチュエータ10aと受光素子アレイ39とが直交しない構成としてもよい。
図2(A)に示す例では、駆動用高分子アクチュエータに略平行に光ファイバ38を設け、駆動用高分子アクチュエータに略垂直に受光素子アレイ39を設けているが、図2において、図3に示すように、駆動用高分子アクチュエータと交差するように光ファイバ38を設け、駆動用高分子アクチュエータと交差するように受光素子アレイ39を設ける構成としても、図2に示す例と同様にして、駆動用高分子アクチュエータの駆動によってレーザ光の検出位置が変化するため駆動状態を検知することができる。
なお、予め、駆動用高分子アクチュエータの駆動によって生じる変位量(例えば、レーザ変位計を用いて測定する。)と、その駆動において検出されるレーザ光の受光素子アレイ39における検出素子の位置との関係を求めておけば、駆動によって生じる変位量が容易に検出されることになる。
第1の実施の形態と同様に、駆動用高分子アクチュエータの駆動により生じる変形を変位量として、任意の時点で光学的及び電気的に検出することができ、駆動用高分子アクチュエータの変形の時間変化も正確に検出することができる。
なお、本実施の形態における駆動用高分子アクチュエータ10aを使用する駆動系に付いては、第4の実施の形態において後述する。
第3の実施の形態
図4は、本発明の第3の実施の形態における、駆動による変形量を、起電力によって検出し、駆動量を制御可能とする高分子アクチュエータを説明する断面図である。
図4に示すように、駆動力を発生させる駆動用高分子アクチュエータ10aに、駆動用高分子アクチュエータに生じた変形を検出する検出手段として、駆動による変形によって生じた起電力を測定するための検出用高分子アクチュエータ30aが接続されている。高分子アクチュエータは、駆動用高分子アクチュエータ、検出用高分子アクチュエータから構成されている。
図5、図6は、本発明の第3の実施の形態における、高分子アクチュエータの特性を説明する図であり、図5は、変形量と起電力との関係を示す測定結果の例、図6は、図4に示す高分子アクチュエータの動作状態と印加電圧と起電力の関係を示す測定結果の例である。
高分子アクチュエータが外力による変形を受けた場合に、この変形を受けた高分子アクチュエータに起電力が発生していれば、この高分子アクチュエータは、変形量を検出するセンサとしての用途をもつことになる。以下、高分子アクチュエータが外力による変形を受けた場合に、発生する起電力の測定とその結果について説明する。
測定に使用した試験用高分子アクチュエータを次の手順(1)〜(7)によって作製した。
(1)イオン導電性高分子層(膜)として、厚さ127μmのフッ素樹脂系イオン導電性高分子膜(デュポン社製、Nafion(N−115))を使用した。
(2)イオン導電性樹脂として上記Nafion、カーボン粉末としてケッチェンブラック(KB−EC300(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の型番))をそれぞれ使用し、重量比1:2でカーボン粉末とイオン導電性樹脂とを、有機溶媒(純水50%、エタノール50%)に溶解し分散させて、固形分重量濃度を5wt%とした塗料を作製した。
(3)上記の塗料中にイオン導電性高分子膜をディッピングし塗料を塗布して塗膜を形成し、次に、この塗膜を大気中で乾燥させた。この操作、即ち、塗膜の形成と乾燥を行う操作を24回繰り返して、電極層を厚さ30μmのカーボン電極層として、イオン導電性高分子膜の両面に形成した後、洗浄処理を行った。このようにして、カーボン電極層とイオン導電性高分子膜(層)とからなる積層体が得られる。
(4)上記の積層体を、65℃、0.1MのLiOH溶液中に2時間浸漬して、陽イオンをLi+に置換した後、洗浄処理を行った。
(5)積層体の端部を切り落とし後、積層体から幅2mm、長さ30mmの短冊を切り出す。
(6)上記の短冊形状をもった積層体の両面のカーボン電極層面に、Au(金)をスパッタリングして、金薄膜を形成した。次に、この両面の金薄膜上にリード線を短冊の一端近傍で接続した。
(7)リード線が形成された積層体の外面を、可撓性のある樹脂を用いて被覆して、封止された試験用高分子アクチュエータを作成した。ここでは、可撓性のある樹脂として、デュラシール(ディバーシファイド・バイオテック社製)フィルムを用いて、厚さ30μmの被覆層を形成した。
以上のようにして作製された試験用高分子アクチュエータを用いて、これに外力を付与し変形を生じさせ、変位量と起電力(試験用高分子アクチュエータの両面に形成された電極層の間の電位)とを同時に測定した。
試験用高分子アクチュエータを、リード線が接続された一端近傍(固定端)で固定用冶具によって挟みつつけた状態で、固定冶具を除振台上に固定した。両面に接続されたリード線を、起電力を検出するためのディジタルマルチメータ(ADVANTEST社製R6552)に接続した。試験用高分子アクチュエータの変位量を検出するためのレーザ変位計も同様に上記の除振台上に固定した。固定された部位を除いた試験用高分子アクチュエータの長手方向の中点位置における変位量を、レーザ変位計によって検出する配置とした。
図4(B)に示す例では、高分子アクチュエータ10bがその駆動によって変形して、この変形に伴う力が外力として検出用高分子アクチュエータ30bに印加されるが、この検出用高分子アクチュエータ30bに印加される外力に相当する力を、外力として試験用高分子アクチュエータの固定端と反対側の自由端に印加して、これによって生じる試験用高分子アクチュエータにおける、変位量、及び、起電力を同時に測定する。印加する外力は任意の方法で、時間的に変化させて印加することができる。上記の変位量、起電力はそれぞれ、レーザ変位計の出力端、ディジタルマルチメータの出力端から、サンプリング間隔1msで収集して、コンピュータのメモリに記憶させた。
図5に示した測定結果の例では、横軸を、外力を印加して約15msの間保持した後、この外力を取り除いてから約30msの時点を時間0とする時間軸(ms)とし、左縦軸に変形(位)量(mm)、右縦軸に起電力(mV)を示している。図5から明らかなように、点線で示した起電力は小さな値であるが、実線で示した変形量の大きさに非常に良く1対1で対応した大きさをもった起電力が発生していることが分かる。即ち、変形量と起電力の間には、1対1の関係が成立している。
以上説明した試験用高分子アクチュエータの測定結果から、この高分子アクチュエータは、外力を受けて変形すると変形の大きさに対応した起電力を発生するので、変形量を検出するセンサとして使用することができることが、明らかとなった。
なお、図5に示すような結果は、図1から図3に示す何れかの構成において、SW1をオフ状態として、外力によって変位を駆動用高分子アクチュエータに与え、外力によって与えた変位の大きさを、第1の実施の形態又は第2の実施の形態による方法によって検出し、電極層16a、16b間の起電力を測定することによっても、得ることができる。
以上説明した、高分子アクチュエータにおける変形量と起電力の間の1対1の関係を利用し、図4(A)に示すように、駆動用高分子アクチュエータ10aに接続部材34を介して、検出用高分子アクチュエータ30aを接続し連結して、図4(B)に示すように、SW1をオン状態、SW3をオフ状態として、駆動用高分子アクチュエータ10aを駆動させると、この駆動に伴って変形後の検出用高分子アクチュエータ30bは変形を受けて起電力Vを生じる。この起電力Vを電圧計で測定する。
なお、検出用高分子アクチュエータ30aにおいて、イオン導電性高分子層35は、イオン導電性高分子層15と同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよく、電極層36a、36bは、電極層16a、16bと同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。即ち、検出用高分子アクチュエータ30aを、駆動用高分子アクチュエータ10aと同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
外力によって変位を与えて生じた検出用高分子アクチュエータ30bの変形量(例えば、レーザ変位計を用いて測定する。)と起電力(電圧計を用いて測定する。)の関係を、予め、測定しておけば、検出用高分子アクチュエータ30bに発生する起電力から変形量を容易に知ることができ、この変形量を発生させる駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動量を検出することができる。
図4(B)において、検出用高分子アクチュエータ30bに発生する起電力が所望の値、即ち、駆動用高分子アクチュエータ10bによる駆動量が所望の値に達した時に、図4(C)に示すように、SW3をオンの状態として、検出用高分子アクチュエータ30bに電圧を印加する。矢印で示すように検出用高分子アクチュエータ30bは駆動用高分子アクチュエータ10bと反対方向に変形を生じて、駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動力と、検出用高分子アクチュエータ30bの駆動力とが相殺することができる。
この時、検出用高分子アクチュエータ30bに印加した電圧を相殺するような起電力が検出用高分子アクチュエータ30bに生じないように、即ち、駆動用高分子アクチュエータ10bによって生じる検出用高分子アクチュエータ30bの変形がないように、検出用高分子アクチュエータ30bに印加する電圧を調整すれば、所望の駆動量を保持した状態で、駆動用高分子アクチュエータ10b及び検出用高分子アクチュエータ30bの全体を停止させることができる。
検出用高分子アクチュエータ30aは、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形を検出する検出手段であるとともに、駆動用高分子アクチュエータの駆動量を調整制御するための手段である調整用高分子アクチュエータとしての作用を有している。
即ち、検出用高分子アクチュエータ30aは、調整用高分子アクチュエータを兼ね、第4の実施の形態において後述するように、駆動用高分子アクチュエータ10aとともに高分子アクチュエータの駆動制御系を構成している。
図6は、図4(A)、図4(B)、図4(C)に示す高分子アクチュエータの動作状態と印加電圧と起電力の関係を示す測定結果の例である。
アクチュエータ−1、−2はそれぞれ、駆動用高分子アクチュエータ、検出用高分子アクチュエータである。図6に示す、A、B、Cで示す領域はそれぞれ、図4(A)、図4(B)、図4(C)に示す高分子アクチュエータの動作状態に対応している。但し、Cで示す領域におけるアクチュエータ−2(検出用高分子アクチュエータ)の起電力は、SW3をオフとした状態で検出されたものである。
なお、第4の実施の形態において後述するように、駆動用高分子アクチュエータ、検出用高分子アクチュエータに加え、駆動用高分子アクチュエータの駆動量を調整制御するための調整用高分子アクチュエータを連結して高分子アクチュエータの駆動制御系を構成することも可能である。また、必要に応じて、これら3つの高分子アクチュエータに接続される駆動力伝達部材を設置してもよい。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、駆動用高分子アクチュエータの駆動により生じる変形を変位量として、任意の時点で検出用高分子アクチュエータに生じる起電力の検出によって、検出することができ、駆動用高分子アクチュエータの変形の時間変化も正確に検出することができる。
第4の実施の形態
図7、図8、図9、図10は、本発明の第4の実施の形態における、高分子アクチュエータの駆動制御系を説明する、断面図を含むブロック図であり、図7は、駆動部に電圧が印加されていない状態、図8は、駆動部に電圧が印加された状態を示す図であり、図9は、高分子アクチュエータの駆動の制御を説明する図であり、図10は、高分子アクチュエータの駆動制御方法を説明する図である。
本実施の形態の高分子アクチュエータの駆動制御系は、駆動力を発生させる駆動用高分子アクチュエータ10a、駆動用高分子アクチュエータ10aに生じた変形を検出する検出手段、調整用高分子アクチュエータ20a、検出手段によって検出された変形量データの取得を行う変位検出部52、調整用高分子アクチュエータ20aの制御を行う駆動調整制御部53、変位検出部52及び駆動調整制御部53の制御を行う主制御部51から構成されている。
駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形量は検出手段によって検出され、この検出された変形量に基づいて、調整用高分子アクチュエータ20aは、駆動用高分子アクチュエータ10aの変形とは逆方向に変形を生じさせるように駆動され、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形量が調整制御される。
また、第3の実施の形態で説明したように、検出用高分子アクチュエータ30aが調整用高分子アクチュエータを兼用し、駆動用高分子アクチュエータ10aとともに高分子アクチュエータの駆動制御系を構成することもできる。即ち、駆動用高分子アクチュエータ10a、調整用高分子アクチュエータ20aによって、高分子アクチュエータの駆動制御系を構成することもできる(高分子アクチュエータは、駆動用高分子アクチュエータ、調整用高分子アクチュエータから構成されている。)。
検出手段は、例えば、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形による静電容量の変化を検出するための静電容量の測定用の電極を保持させた検出用高分子アクチュエータ30a(第1の実施の形態、図1、図7(B))、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形を光学的に検出するための光ファイバ38を保持させた検出用高分子アクチュエータ30a(第2の実施の形態、図2、図3、図7(C))、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動による変形によって生じた起電力を測定するための検出用高分子アクチュエータ30a(第3の実施の形態、図4、図5、図7(C))である。
なお、調整用高分子アクチュエータ20aにおいて、イオン導電性高分子層25は、イオン導電性高分子層35、イオン導電性高分子層15と同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよく、電極層26a、26bは、電極層36a、36b、電極層16a、16bと同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。即ち、調整用高分子アクチュエータ20aを、検出用高分子アクチュエータ30a、駆動用高分子アクチュエータ10aと同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
図7は、SW1、SW2、SW3をオフの状態とし、駆動用高分子アクチュエータ10aが駆動していない、静止状態を示している。
駆動用高分子アクチュエータ10a、調整用高分子アクチュエータ20a、検出用高分子アクチュエータ30aはそれぞれ、接続部材34を介して駆動力伝達部材50(駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって変形し発生する駆動力を、駆動力伝達部材50の先端部又はその近傍に保持されている被駆動体(図7、図8、図9では図示せず。)である部品又は装置へと伝達する。)に接続されている。この部品又は装置は、図7に示す例では、y方向に駆動される。
駆動用高分子アクチュエータ10aによる駆動力は、接続部材34を介して駆動力伝達部材50に伝達される。検出用高分子アクチュエータ30aは、上記の駆動力を受けた駆動力伝達部材50の駆動を接続部材34を介して受ける結果、変形を生じ変位を生じる。調整用高分子アクチュエータ20aによる駆動力は、接続部材34、駆動力伝達部材50、接続部材34を介して、駆動用高分子アクチュエータ10aに伝達される。
図7(A)において、点線で囲む変形検出部の部分は、図7(B)の構成(第1の実施の形態の構成と同じである。)、図7(C)の構成(第2の実施の形態の構成と同じである。)、図7(D)の構成(第3の実施の形態の構成における検出用高分子アクチュエータと同じである。)を示しており、変位検出部52は、検出手段である検出用高分子アクチュエータ30aを含み、検出手段によって検出された変形量データの取得を行う。
変位検出部52の検出用高分子アクチュエータ30aは、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動によって生じた変形量を、変位量として検出し、検出された変位量は、点線で囲む駆動調整部の駆動調整制御部53に伝送され、駆動調整制御部53は検出された変位量に基づいて、調整用高分子アクチュエータ20aの駆動(SW2のオンオフ及び印加電圧の制御)を制御する。
高分子アクチュエータは、主制御部51によって制御され、主制御部51は、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動(SW1のオンオフ及び印加電圧の制御)の制御を行うとともに、点線で囲む駆動部、変形検出、駆動調整部との間での信号のやりとりを行う。
主制御部51の駆動開始制御信号によって駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動が開始すると、主制御部51は、駆動調整制御部53に対して、SW2をオフ状態とするための制御信号を伝送し、また、変位検出部52に対して、SW3をオフ状態とするための制御信号、変位検出開始信号等を伝送する。
主制御部51からの変位検出開始信号によって、変位検出部52は、主制御部51によって指定された所定の時間間隔で、検出手段によって検出された変形量データの取得を開始し、取得された変位量を主制御部51によって指定されたタイミングで駆動調整制御部53に伝送する。変位量の伝送を変位検出部52から受けた駆動調整制御部53は、この変位量を主制御部51に伝送する。変位量の伝送を駆動調整制御部53から受けた主制御部51は、予め指定されている所定の判定条件に従って、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動の制御、及び、調整用高分子アクチュエータ20aの駆動の制御を行う。
図8は、図7において、主制御部51の制御によって、SW1をオンとした状態、SW2、SW3をオフとした状態を示し、高分子アクチュエータの駆動の状態を示す。
駆動用高分子アクチュエータ10a、10bの駆動による変形によって生じる駆動力は、接続部材34を介して駆動力伝達部材50に伝達され、駆動力伝達部材50は矢印の方向に駆動される。
駆動用高分子アクチュエータ10a、10bの駆動による変形によって生じる変形(変位)量は、図8(B)、図8(C)、図8(D)の少なくとも何れか1つによって、検出される。
図9(A)は、図7において、主制御部51の制御によって、SW1をオンの状態を保持続行し、SW2をオンとした状態、SW3をオフに保持続行した状態を示し、変位量の検出を続行した状態で、調整用高分子アクチュエータ20aを駆動させ、駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動を調整する状態を示している。
即ち、変位量を変位検出部52によって検出し続けながら、これに平行して駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動を調整する状態を示している。
検出された変位量が所望の必要とする値に達した場合、即ち、駆動用高分子アクチュエータ10bによる駆動量が必要とする値に達した場合、駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動により生じる変形と逆方向の変形を生じるように、図9(A)に示すように電圧を印加して調整用高分子アクチュエータ20aを駆動させ、駆動用高分子アクチュエータ10bの駆動力と逆方向に駆動力を発生させることによって、駆動力伝達部材50を矢印の方向に駆動させ、駆動用高分子アクチュエータ10bによって駆動位置を制御することができる。
図9(B)は、高分子アクチュエータによる駆動系を説明する図であり、駆動用高分子アクチュエータ、調整用高分子アクチュエータ、検出用高分子アクチュエータと駆動力伝達部材50との、接続部材34による接続部分を説明する斜視図である。
以下、本発明の各実施の形態における、駆動用高分子アクチュエータ、調整用高分子アクチュエータ、検出用高分子アクチュエータと駆動力伝達部材50との、接続部材34による接続部分の例について説明する。
先述した第1の実施の形態(図1)、第2の実施の形態(図2、図3)、第3の実施の形態(図4)、第4の実施の形態(図7、図8、図9(A))、及び、後述する第5の実施の形態(図11)では、簡略のために、図9(B)に示す接続部材34を簡略化して図示し、図9(B)に示す駆動力伝達部材50の図示も省略している。
第1及び第2の実施の形態では、例えば、図9(B3)に示す検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cに代えて、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの自由端は、駆動力伝達部材50に接続され凹部を備えた接続部材34の凹部内部に挿入されている。駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの変形によって生じた駆動力は、接続部材34を介して、駆動力伝達部材50によって、部品又は装置等の被駆動体(図示せず。駆動力伝達部材50の先端部又はその近傍に保持されている。)に伝達され、被駆動体が駆動される。
また、第3の実施の形態、第4及び第5の実施の形態では、図9(B2)に示すように、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10c、及び、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cの自由端は、駆動力伝達部材50に接続され凹部を備えた接続部材34の凹部内部に挿入されている。
なお、第3の実施の形態では、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cが調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cを兼用し、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cとともに高分子アクチュエータの駆動制御系を構成している。
駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの変形によって生じた駆動力は、接続部材34を介して、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cの自由端に伝達されるとともに、接続部材34を介して駆動力伝達部材50によって、部品又は装置等の被駆動体に伝達され、被駆動体が駆動される。
このようにして、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10c、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cの自由端を接続部材34の凹部内部に挿入することによって、それらの曲げ変形が可能なように、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10c、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cを、接続部材34を介して、駆動力伝達部材50に緩やかに接続している。
また、実施の形態4において、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cの自由端は、例えば、図9(B3)に示すように、駆動力伝達部材50に接続され凹部を備えた接続部材34の凹部内部に挿入されている。駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの変形によって生じた駆動力は、接続部材34を介して駆動力伝達部材50によって、部品又は装置等の被駆動体に伝達され、被駆動体が駆動されるとともに、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cの自由端に伝達される。検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cは、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの駆動によって受けた変形を変位量として検出する。
このようにして、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cの自由端を接続部材34の凹部内部に挿入することによって、曲げ変形が可能なように緩やかに、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cを、接続部材34を介して、駆動力伝達部材50に緩やかに接続している。
なお、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの変形によって生じた駆動力の、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20c、及び、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cへの伝達の方法は、図9(B)に示した、接続部材34、駆動力伝達部材50を使用する方法に限定されるものではなく、例えば、ギヤを介した伝達でもよく、駆動力を効率よく伝達できるものであれば、任意の伝達機構を使用することができる。
なお、高分子アクチュエータの上記の自由端に対向する側を固定端というが、本発明の各実施の形態では、この固定端は、所定の部位に固定されており、高分子アクチュエータの曲げ変形の際には固定点となっている。
図7、図8、図9を参照しながら、以下、図10により高分子アクチュエータの駆動制御方法の例を詳細に説明する。高分子アクチュエータの駆動制御は、駆動部の主制御部51によって行われ、主制御部51は、駆動調整制御部53、駆動によって生じる変形(変位)量の検出を行う変形検出部52の制御を行う。
S1:高分子アクチュエータの初期状態の設定。
駆動用高分子アクチュエータの駆動用スイッチSW1、調整用高分子アクチュエータの駆動用スイッチSW2、検出用高分子アクチュエータの駆動用スイッチSW3をそれぞれ、オフ状態として、変形前の駆動用高分子アクチュエータ10a、変形前の調整用高分子アクチュエータ20a、変形前の検出用高分子アクチュエータ30aとする。
ここでは、図7、図8、図9に示すy方向において、高分子アクチュエータによって被駆動体を駆動させる駆動量(目標駆動量)を(L±ε)とする。εは、駆動量の許容誤差を示し、高分子アクチュエータによる実際の駆動量が(L±ε)であれば許容する。Lは、主制御部51に予め入力されている。
S2:駆動用高分子アクチュエータの駆動。
駆動用高分子アクチュエータの駆動用スイッチSW1をオン状態として、直流電圧(駆動電圧)Edを印加して駆動用高分子アクチュエータを駆動させる。
S3:検出用高分子アクチュエータによる変形(変位)量の検出。
駆動用高分子アクチュエータの駆動によって生じた変形(変位)量Δを、所定の時間間隔で検出用高分子アクチュエータによって検出する。検出された変形(変位)量Δは、指定されたタイミングで駆動調整制御部53へ伝送される。この所定の時間間隔及び指定されたタイミングは、主制御部51に予め入力されている。
S4:変形(変位)量の判定。
Δ≧(L+ε)が成立する場合、即ち、Δが(L+ε)を超えている場合は、S5へ移る。Δ≧(L+ε)が成立しない場合、即ち、Δが(L+ε)に達していない場合は、駆動用高分子アクチュエータによる駆動を大きくするために、駆動電圧Edを電圧(Ed+α)に変更して、S2へ移る。Edは、主制御部51に予め入力されている。
S5:調整用高分子アクチュエータ20aの駆動。
調整用高分子アクチュエータの駆動用スイッチSW2をオン状態として、直流電圧(駆動電圧)Eaを印加して調整用高分子アクチュエータを駆動させる。Δは(L+ε)を超えているので、調整用高分子アクチュエータによる駆動方向は、駆動用高分子アクチュエータによる駆動方向とは逆方向である。Eaは、主制御部51に予め入力されている。
S6:検出用高分子アクチュエータによる変形(変位)量の検出。
駆動用高分子アクチュエータの駆動によって生じた変形(変位)量Δを、所定の時間間隔で検出用高分子アクチュエータによって検出する。
S7:変形(変位)量の判定。
Δ≦(L+ε)が成立する場合、即ち、調整用高分子アクチュエータによる駆動によって、Δが(L+ε)に達していない場合は、S8へ移る。Δ≦(L+ε)が成立しない場合、即ち、調整用高分子アクチュエータによる駆動によって、Δがまだ(L+ε)を超えているので、調整用高分子アクチュエータによる逆方向への駆動を大きくするために、駆動電圧Eaを電圧(Ea+β)に変更して、S5へ移る。
S8:変形(変位)量の判定。
Δ≧(L−ε)が成立する場合、即ち、Δが(L+ε)以下(L−ε)以上であり、許容誤差内で駆動量がLに保持されている場合は、S9へ移る。Δ≧(L−ε)が成立しない場合、即ち、Δが(L−ε)であり目標駆動量よりも小さい場合は、駆動用高分子アクチュエータによる駆動を大きくするために、駆動電圧Edを電圧(Ed+γ)に変更して、S2へ移る。
S9:駆動量の設定変更。
目標駆動量をLから変更するタイミングである場合には、Lを変更して、S1又はS2へ移る。目標駆動量を変更するタイミングでなく駆動量を現在のLの状態に保持持続する場合には、所定の時間だけ目標駆動量を保持した状態を続行するために、S10に移る。
S10:駆動操作の終了。
駆動操作の終了時点(主制御部51に予め入力されている。)までは、S6に移る。
なお、以上の説明で、ε、α、β、γは、予め、主制御部51に予め入力されている正の値とする。
以上説明したように、目標駆動量を所定の時間だけ保持持続して、必要に応じて、目標駆動量を次の値に変更して、次々と被駆動体を駆動させることができる。なお、被駆動物体を初期の状態に戻すには、上記のS1を実行すればよいことは言うまでもない。
また、含水状態として動作させる必要がある高分子アクチュエータでは、その駆動は高分子アクチュエータの含水(吸水)状態、高分子アクチュエータに含まれるイオンの種類等の影響を受ける。高分子アクチュエータが駆動され所定の変形量を生じた後に、上記の含水(吸水)状態が変化すると、この変化の影響のために、一度生じた変形量が変化して、異なる変形量をもった状態の高分子アクチュエータとなってしまうことがある。
このような場合でも、高分子アクチュエータの上記で説明した駆動制御方法の例では、駆動量を略一定とするように制御することができ、目標駆動量を保持した状態を所定の時間だけ続行させることができる。
なお、図10に示す高分子アクチュエータの駆動制御方法と異なる手順による駆動制御方法が、可能であることは言うまでもない。
以上説明したように、本実施の形態では、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cを含む駆動部、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cを含む駆動構成部、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cを含む変形検出部は、電気的に接続されており、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cの駆動によって生じた変形は、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cに伝達され、検出用高分子アクチュエータ30a、30b、30cに生じた変形(変位)量として検出され、検出された変形(変位)量に基づいて、調整用高分子アクチュエータ20a、20b、20cの駆動が制御され、これによって、駆動用高分子アクチュエータ10a、10b、10cによる駆動が調整制御される。
この結果、被駆動体のy方向における駆動を正確に制御して実行することができる。
第5の実施の形態
図11は、本発明の第5の実施の形態における、高分子アクチュエータの応用例を説明する図である。
図11に示す構成は、図7、図8、図9において、変位検出部52として、駆動用高分子アクチュエータ10aの駆動による変形によって生じた起電力を測定する検出用高分子アクチュエータ30a(第3の実施の形態、図4、図5)を使用する高分子アクチュエータの駆動制御系を示しており、この駆動制御系によって、駆動力伝達部材50を矢印の方向に駆動させて、駆動力伝達部材50の先端部又はその近傍に保持されている被駆動体である各種の部品や装置(例えば、カメラレンズ駆動系等の光学レンズ位置調整装置、流体制御装置、ブレーキ装置、医療用カテーテルをはじめとする医用装置、ロボット部品等)が、y方向に駆動を受ける。
第6の実施の形態
図12は、本発明の第6の実施の形態における、高分子アクチュエータの形状例を説明する斜視図及び断面図である。
以上の説明では、図12(A)に示すように、イオン導電性高分子層45が平板(短冊)状をなし、高分子アクチュエータの長手方向(z方向)に垂直な断面(xy面に平行な面)が薄型の矩形(短冊)である高分子アクチュエータを示したが、図12(B)に示すように、イオン導電性高分子層45が角柱型をなし、高分子アクチュエータの長手方向に垂直な断面が矩形又は正方形である高分子アクチュエータも製造可能であり、イオン導電性高分子層4の対向する側面に、カーボン電極層46a、46b、及び、カーボン電極層46c、46dがそれぞれ形成される。これらの電極層は、カーボン電極層に限定されるものではなく、公知の手法によって形成してもよい。
また、図12(B)に示すように、角柱型のイオン導電性高分子層45を、円柱型に置き換えて、高分子アクチュエータの長手方向に垂直な断面が円形である高分子アクチュエータも製造可能であることは言うまでもない。
図12(A)に示す高分子アクチュエータはy方向に変形し駆動力を発生させることができるが、図12(B)に示す高分子アクチュエータは、x方向及びy方向にそれぞれ、変形し駆動力を発生させることができる。x方向及びy方向における駆動力を同時に発生させることも、x方向及びy方向における駆動力をそれぞれ、異なるタイミングで発生させることもできる。従って、x方向及びy方向での駆動を、同時に、或いは、異なるタイミングで実行することができる。更に、これらのx方向及びy方向の駆動系に、x方向及びy方向に垂直なz方向における駆動系を組み合わせることによって、3次元方向の駆動を可能とすることもできる。
以上の実施の形態の説明では、アクチュエータ本体として、電圧印加によりイオンが移動して変形するイオン導電性高分子を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような高分子フィルム、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電セラミックスも使用可能であり、バイモルフ型圧電アクチュエータを使用することもでき、曲げ変形を生じるアクチュエータを構成することができる。
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、高分子アクチュエータを構成する各部の材質、厚さ、大きさ寸法等は、高分子アクチュエータの使用用途に合致するように、その性能を満たすように必要に応じて任意に適切に設定することができる。