JP2012036133A - 刺激応答性化合物、アクチュエータおよび刺激応答性化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の刺激応答性化合物は、ビチオフェンと、前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、前記2つの液晶性官能基の前記β位に結合する結合部位は一重結合であることを特徴とする。液晶性官能基は、複数の環構造を有しているのが好ましい。また、当該複数の環構造うちの1つ環構造にハロゲン原子が1つ以上結合しているのが好ましい。ビチオフェンと液晶性官能基とは、アルキレン基を介して結合しているのが好ましい。
【選択図】なし
Description
従来のアクチュエータは、イオン交換膜を用いたものが主流であり(例えば、特許文献1参照)、これは、イオンの移動により材料が収縮・膨潤するもので、イオンの拡散速度により動作が支配されるため、高速応答化には課題が多い。また、アクチュエータの動作に方向性を持たせる方法が無く、高効率で動作させるためにも異方的な動きを実現できるものが求められている。
本発明の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、
前記第3の結合部位に結合する第1のユニットCの結合部位および前記第4の結合部位に結合する第2のユニットCの結合部位は、いずれも一重結合であることを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは1,3−ベンゾジチオーリル基を含み、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性官能基を含むことが好ましい。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、
前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、
前記2つの液晶性官能基の前記β位に結合する結合部位は一重結合であることを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
これにより、刺激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
本発明の刺激応答性化合物では、前記複数の環構造うちの1つ環構造にハロゲン原子が1つ以上結合していることが好ましい。
これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
これにより、液晶性官能基の運動性(配向性)を向上させることができ、刺激応答性化合物の変形(駆動)の方向性をより一定なものとすることができる。
本発明のアクチュエータは、本発明の刺激応答性化合物を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能なアクチュエータを提供することができる。
液晶性を有する第1のユニットCおよび第2のユニットCを合成する工程と、
前記ユニットAの第3の結合部位に前記第1のユニットCの一重結合である結合部位を結合させ、前記ユニットAの第4の結合部位に前記第2のユニットCの一重結合である結合部位を結合させる工程と、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応により結合することを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
《刺激応答性化合物》
まず、本発明の刺激応答性化合物の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の刺激応答性化合物は、ビチオフェン(ユニットA)と、当該ビチオフェンの2つのα位(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基(第1のユニットBおよび第2のユニットB)と、ビチオフェンの2つのβ位(ユニットAの第3の結合部位および第4の結合部位)に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基(第1のユニットCおよび第2のユニットC)とを有しており、具体的には、下記式(1)で表すことができる。式中、Rは、液晶性官能基を示す。
ビチオフェンは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基である。ビチオフェンを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
また、ビチオフェンの2つのβ位には、液晶性を有する液晶性官能基(式中、Rで表される官能基)が結合している。液晶性を有することにより、液晶性官能基は、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。これにより、刺激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
液晶性官能基は、ビチオフェンと、アルキレン基を介して結合しているのが好ましい。これにより、液晶性官能基の運動性(配向性)を向上させることができ、刺激応答性化合物の変形(駆動)の方向性をより一定なものとすることができる。
このような液晶性官能基の具体例としては、以下のようなものが挙げることができる。
また、刺激応答性化合物は重合性官能基を有しているので、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物重合体を容易に形成することができる。
次に、上述した刺激応答性化合物を用いたアクチュエータについて詳細に説明する。
図1は、本発明の刺激応答性化合物を用いたアクチュエータの一例を模式的に示す断面図、図2は、電圧印加により変形したアクチュエータの一例を示す断面図である。
図1に示すように、アクチュエータ100は、本発明の刺激応答性化合物で構成された変形層10と、当該変形層10の両面に設けられた電極11とを有している。すなわち、アクチュエータ100は、変形層10を電極11で挟持した構造となっている。
電極11は、変形層10に電圧を印加する機能を有している。
また、電極11は、変形層10の変形に追従するために、屈曲性を備えている。
また、電極11の、変形層10と接する面には、ラビング処理等の配向処理が施されている。これにより、刺激応答性化合物の液晶性官能基を好適に配向させることができる。また、これにより、変形層10の変形(膨張・収縮)に異方性を発現させることができる。
このような構造のアクチュエータ100において、電極11に電圧を印加すると、変形層10の一方の電極11と接している側では、酸化反応が進み膨張し、変形層10の他方の電極11と接している側では、還元反応が進み収縮する。その結果、図2に示すように、還元反応が生じた方向に屈曲する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例)
刺激応答性化合物を用いて、図1に示すようなアクチュエータを作成した。
アクチュエータは、刺激応答性化合物を溶媒に溶解させ、それをシャーレ上に塗布・乾燥し、乾燥物(変形層)を3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、変形層の両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
なお、刺激応答性化合物は以下のようにして合成したものを用いた。
ブロモチオフェンを原料として亜鉛、ニッケルの触媒を用いた2量化、臭素化を行い、DMFによるアルデヒド基の導入(ホルミル化)を行った。
次に、アルデヒド基の保護を行い、臭素をヨウ素に変換した。
[液晶性官能基(1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸)の合成]
まず、2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸を得た。
上記で合成されたビチオフェン誘導体のヨウ素体と、1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸とを、パラジウム触媒存在下カップリング反応を行った。
次に、反応によって得られた化合物を、脱保護し酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、刺激応答性化合物を得た。
単層カーボンナノチューブ(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製「HiPco」、含有Fe量14重量%)(以下、SWNTともいう)25mg、5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製、低分子量直鎖アルコールと水(10%)混合溶媒)25ml、および試薬特級メタノール25mlを、ビーカーに秤量して混合した後、超音波洗浄器中で、超音波照射を10時間以上行い、SWNTとナフィオンの混合分散液を調製した。この分散液をガラス製のシャーレにキャストし、ドラフト中で一昼夜以上放置して溶媒を除去した。溶媒を除去した後、150℃で4時間、熱処理を行った。形成されたSWNTとナフィオンの複合体フィルムをシャーレから剥がした後、3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、複合体フィルムの両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
評価は、実施例および比較例のアクチュエータを1mm×15mmの短冊状に切り取った試験片の端3mmの部分を電極付きホルダーでつかんで、空気中で電圧5Vを加え、レーザー変位計を用いて、固定端から10mmの位置の変位を観測した。
その結果、本発明の刺激応答性化合物を用いたアクチュエータでは、大きく変位したが、比較例のアクチュエータは、変位の度合いが小さかった。
Claims (8)
- 回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、
前記第3の結合部位に結合する第1のユニットCの結合部位および前記第4の結合部位に結合する第2のユニットCの結合部位は、いずれも一重結合であることを特徴とする刺激応答性化合物。 - 前記ユニットAはビチオフェンを含み、
前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは1,3−ベンゾジチオーリル基を含み、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性官能基を含む請求項1に記載の刺激応答性化合物。 - ビチオフェンと、
前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、
前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、
前記2つの液晶性官能基の前記β位に結合する結合部位は一重結合であることを特徴とする刺激応答性化合物。 - 前記液晶性官能基は、複数の環構造を有している請求項2または3に記載の刺激応答性化合物。
- 前記複数の環構造うちの1つ環構造にハロゲン原子が1つ以上結合している請求項4に記載の刺激応答性化合物。
- 前記ビチオフェンと前記液晶性官能基とは、アルキレン基を介して結合している請求項2ないし5のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の刺激応答性化合物を用いて製造されたことを特徴とするアクチュエータ。
- 回転軸として機能する結合を有するユニットAの第1の結合部位に第1のユニットBが配置され、前記ユニットAの第2の結合部位に第2のユニットBが配置された化合物を合成する工程と、
液晶性を有する第1のユニットCおよび第2のユニットCを合成する工程と、
前記ユニットAの第3の結合部位に前記第1のユニットCの一重結合である結合部位を結合させ、前記ユニットAの第4の結合部位に前記第2のユニットCの一重結合である結合部位を結合させる工程と、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応により結合することを特徴とする刺激応答性化合物の製造方法。
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