JP2007296593A - フラーレンナノワイヤ、その製造方法、および、それを用いた素子 - Google Patents

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【課題】 特定のフラーレン誘導体を用いた分子レベルの一次元フラーレンナノワイヤ、その容易な製造方法、および、それを用いた素子を提供すること。
【解決手段】 本発明のフラーレンナノワイヤは、複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含む。フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、結合部位(R)の少なくとも1つのベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、フラーレン構造体は、フラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、アルキル鎖部位(B)が、隣接したフラーレン部位(A)を中心として相反する外側を向くように配列した複数のフラーレン誘導体を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フラーレンナノワイヤ、その製造方法、および、それを用いた素子に関する。より詳細には、本発明は、分子レベルにおいて一次元であるフラーレンナノワイヤ、その製造方法、および、それを用いた素子に関する。
フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンに代表されるナノカーボンは、電子材料、電極材料、触媒、生体材料への応用が期待され、注目されている。中でも、フラーレンは、光感応性、強磁性、超伝導性、生物活性等の特異な物理的、化学的、生物学的特性を有しおり、フラーレンを用いた研究の発展は目覚しい。
近年、発明者らは、種々の次元のナノ・メゾスコピック材料を任意に製造可能なフラーレン誘導体を開発した(例えば、特許文献1を参照。)。このフラーレン誘導体は、フラーレン部位と、アルキル鎖部位と、フラーレン部位とアルキル鎖部位とを結合する結合部位とを含み、球状のフラーレン部位に対して、結合部位を介してアルキル鎖部位が平面性を保持する。sp炭素からなるフラーレン部位のπ−π相互作用による集合力と、sp炭素からなるアルキル鎖部位の疎水性相互作用による集合力との差を利用した、分子の組織化に成功している。
一方、フラーレンは、強い疎水性相互作用を有しているため、ランダムに凝集しやすく、ナノレベル(分子レベル)での組織化および加工は困難とされている。近年、蒸着および真空熱処理を用いて、フラーレンを一次元に配列させる技術が開発された(例えば、非特許文献1を参照。)。
上記非特許文献1は、次に述べる技術を開示している。サファイア基板を熱処理し、基板上にステップ(結晶表面に形成された原子層の段差)を形成する。次いで、ステップが形成された基板上に金を蒸着、拡散させる。これにより、10nm程度の金ナノドットが、基板のステップに一次元に配列する。その後、分子線エピタキシー(MBE)を用いてフラーレン(C60)を蒸着させる。次いで、熱処理することによって、金ナノドット上に蒸着したフラーレンのみが、単一層で残留する。このような選択的なフラーレンの除去は、フラーレンの金ナノドットへの吸着力が、他の部位への吸着力よりも大きいためである。このようにして、一次元フラーレンが分子レベルで得られる。
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、金およびフラーレンの蒸着を必要とするため、製造プロセスが大掛かりになるばかりでなく、MBE等の高価な装置を必要とする。このため、製造コストを上昇させ得る。また、上述したように、フラーレンを一次元に配列させるためには、基板に形成されるステップの位置が極めて重要である。したがって、得られる一次元フラーレン生成物の状態が、基板のステップの状態に依存するのは、不利であり、歩留まりを低下させる原因にもなる。
また、上記特許文献1に記載のフラーレン誘導体を利用した、分子レベルでの一次元の組織化を確立するにはいたっていない。このようなフラーレン誘導体を分子レベルで組織化可能な技術の開発が望まれる。
特願2005−332390 岩田 展幸、"日大、電子デバイスのボトムアップによる作製法の候補目指し、単一層C60ナノ構造を作る技術を開発"、平成17年8月1日、日経BP社、[平成18年3月22日検索]、インターネット<URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20050801/60894>
したがって、本発明の目的は、特定のフラーレン誘導体を用いた分子レベルの一次元フラーレンナノワイヤ、その容易な製造方法、および、それを用いた素子を提供することである。
本発明による複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含むフラーレンナノワイヤは、前記複数のフラーレン誘導体のそれぞれは、式(1)で示され、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、前記フラーレン構造体は、前記フラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、前記アルキル鎖部位(B)が、前記隣接したフラーレン部位(A)を中心として相反する外側を向くように配列した前記複数のフラーレン誘導体を含むことを特徴とし、これにより上記目的を達成する。
前記フラーレンナノワイヤは、2以上の前記フラーレン構造体を含み、前記2以上のフラーレン構造体のそれぞれは、前記アルキル鎖部位(B)が互いに対向するように配列していることを特徴とする構成を採用した。
前記フラーレンナノワイヤはHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に位置することを特徴とする構成を採用した。
前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする構成を採用した。
前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基のそれぞれは、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記複数のフラーレン誘導体の前記フラーレン部位(A)のそれぞれは、ジグザグに配列することを特徴とする構成を採用した。
本発明によるフラーレンナノワイヤを製造する方法は、式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製するステップであって、前記フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である、ステップと、前記溶液をHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に付与するステップとを包含することを特徴とし、これにより上記目的を達成する。
前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする構成を採用した。
前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基のそれぞれは、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記溶液を調製するステップは、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mより大きく0.02mM以下の濃度に調製することを特徴とする構成を採用した。
前記付与するステップは、前記溶液をスピンコート法、ディップコート法、および、滴下法からなる群から選択される方法で付与することを特徴とする構成を採用した。
本発明による複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含むフラーレンナノワイヤは、前記複数のフラーレン誘導体のそれぞれは、式(1)で示され、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の4位に結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、前記フラーレン構造体は、前記フラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、前記アルキル鎖部位(B)が、前記隣接したフラーレン部位(A)を中心として相反する外側を向くように配列した前記複数のフラーレン誘導体を含むことを特徴とし、これにより上記目的を達成する。
前記フラーレンナノワイヤは、2以上の前記フラーレン構造体を含み、前記2以上のフラーレン構造体のそれぞれは、前記アルキル鎖部位(B)が互い違いに入れ子状に対向するように配列していることを特徴とする構成を採用した。
前記フラーレンナノワイヤはHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に位置することを特徴とする構成を採用した。
前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする構成を採用した。
前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記複数のフラーレン誘導体の前記フラーレン部位(A)のそれぞれは、ジグザグに配列することを特徴とする構成を採用した。
本発明によるフラーレンナノワイヤを製造する方法は、式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製するステップであって、前記フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の4位に結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である、ステップと、前記溶液をHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に付与するステップとを包含し、これにより上記目的を達成する。
前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする構成を採用した。
前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記アルキル置換基は、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする構成を採用した。
前記溶液を調製するステップは、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mより大きく0.02mM以下の濃度に調製することを特徴とする構成を採用した。
前記付与するステップは、前記溶液をスピンコート法、ディップコート法、および、滴下法からなる群から選択される方法で付与することを特徴とする構成を採用した。
本発明による素子は、上述のフラーレンナノワイヤを含む構成を採用した。
本発明によるフラーレンナノワイヤは、フラーレン部位が互いに隣接し、かつ、アルキル鎖部位がそれら隣接したフラーレン部位を中心として相反する外側を向くように配列した複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含む。フラーレン部位の集合力とアルキル鎖部位の高配向焼結グラファイト基板への吸着力を利用することによって、分子レベルにて一次元のフラーレンナノワイヤが形成され得る。このようなフラーレン構造体を複数個並べることによって、二次元構造のフラーレンナノワイヤも可能である。また、選択されるフラーレン誘導体のアルキル鎖部位によっても、フラーレン構造体間の距離を調節できるので、分子設計をナノレベルにて行うことができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるフラーレンナノワイヤ(A)、フラーレン誘導体(B)、および、さらなるフラーレン誘導体(C)の模式図である。
図1(A)では、本発明によるフラーレンナノワイヤ100が、HOPG(高配向焼結グラファイト)基板110上に位置した状態を示す。フラーレンナノワイヤ100は、フラーレン構造体120を含む。フラーレン構造体120は、紙面上、上下に連続しているが、図ではその一部のみを示している。
フラーレン構造体120は、複数のフラーレン誘導体130からなる。フラーレン誘導
体130は、式(1)で示される。
フラーレン誘導体130は、フラーレン部位(A)と、フラーレン部位(A)に結合した少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、結合部位(R)の少なくとも1つのベンゼン環に結合されたアルキル鎖部位(B)とを含む。式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である。
フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76およびC84からなる群から選択されるフラーレンを含む。好ましくは、フラーレン部位(A)は、極めて高いIh対象性を有するC60である。C60はまた、安定かつ安価であるため、取り扱いが便利であり、化学修飾も容易である。
結合部位(R)は、式(2)に示されるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択される。これらの結合部位(R)は、アルキル鎖部位(B)をHOPG基板110に対して平面に維持し得るので、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力を効果的に利用することができる。
さらなる置換基Yは、例えば、水素、メチル、アルコールおよびアミンである。
図1(B)に示されるように、フラーレン誘導体130のアルキル鎖部位(B)は、結合部位(R)のベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合されたアルキル置換基を有する。
3つのアルキル置換基は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択される。3つのアルキル置換基は、製造上好ましくは、同一であるが、鎖長が同じであれば、異なっていてもよい。ここで、nは、好ましくは16以上である。nが16以上であれば、アルキル置換基とHOPG基板110との格子は良好なマッチングを示し、かつ、アルキル鎖部位(B)がHOPG基板110へ確実に吸着することができる。一方、nが16未満の場合、アルキル置換基とHOPG基板110とのマッチングは良好であっても、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力が低下する場合がある。また、nが大きすぎる(例えば、nが30以上)場合も、アルキル置換基とHOPG基板110とのミスマッチが大きくなり製造上好ましくない。
3つのアルキル置換基が、図1(C)に示されるように、嵩高さの小さい置換基140をアルキル置換基の中間部位に有してもよい。嵩高い置換基は、アルキル鎖部位(B)そのものの組織化構造を崩壊し得る場合がある。具体的には、置換基140は、式(3)に示される、ジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択される。
ジアセチレンは、重合によってジアセチレンポリマーを形成するので、アルキル鎖部位(B)に導電性を持たせることができる。アゾベンゼンまたはスチルベンゼンは、それぞれ、光異性化可能であるため、フラーレンナノワイヤ100のモルフォロジーを光によって変化させることができる。
また、3つのアルキル置換基が、図1(C)に示されるように、置換基150を、アルキル置換基の末端部位に有してもよい。このような置換基150には、例えば、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸がある。これらは、それ自身の分子認識能によって、または、アルキル置換基の末端部位と水素結合することによって、フラーレンナノワイヤ100にホストゲスト反応を起こさせることができる。
なお、3つのアルキル置換基すべてが、上述の置換基140、150を有していてもよいし、いずれかが有していてもよいが、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力を低下してはならない。
再度図1(A)を参照する。
フラーレン構造体120は、隣接したフラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、アルキル鎖部位(B)が、隣接したフラーレン部位(A)を中心として(すなわち、線L−Lを中心として)相反する外側を向くように配列した複数のフラーレン誘導体130を含む。隣接したフラーレン部位(A)に注目すると、フラーレン部位(A)は、ジグザグに一方向に配列する。なお、本明細書において、「相反する外側」とは、フラーレン誘導体130が上記線L−Lを中心として鏡像の関係にはないが、アルキル鎖部位(B)が線L−Lを中心として、同一平面上にて同方向に離れて位置することを意図する。
フラーレンナノワイヤ100は、フラーレン構造体120を複数有していてもよい。この場合、複数のフラーレン構造体120のそれぞれのアルキル鎖部位(B)が互いに対向するように配列し得る。フラーレン誘導体130のアルキル鎖部位(B)の長さ(すなわち、アルキル置換基が有する炭素数n)を変化させることによって、フラーレン構造体120間の距離D1を調節できる。より詳細には、炭素数が大きくなれば、距離D1を大きくでき、炭素数が小さくなれば、距離D1を小さくできる。このような距離の設定範囲は、ナノメートルレベルである。これにより、フラーレン構造体120の配列を予め設計することができるので、有利である。なお、距離D1は、アルキル鎖部位(B)のアルキル置換基長の長さの2倍にほぼ等しい。
このような1つまたは複数のフラーレン構造体120を含むフラーレンナノワイヤ100は、アルキル鎖部位(B)の3つのアルキル置換基の位置、および、アルキル鎖部位(B)の製造に用いるHOPG(高配向焼結グラファイト)基板110への吸着力の強さと、フラーレン部位(A)同士の集合力の強さのバランスとによって、構築され得ることを発明者らは見出した。
次に、本発明のフラーレンナノワイヤ100の製造手順を説明する。
図2は、本発明によるフラーレンナノワイヤの製造ステップを示す図である。
ステップS210:式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製する。
ここで、フラーレン誘導体は図1を参照して説明したフラーレン誘導体と同一であるため、重複して説明するのを避ける。なお、このようなフラーレン誘導体は、上記特許文献1に記載の技術を用いて製造され得る。重要なことには、アルキル鎖部位(B)は、結合部位(R)が有するベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合されたアルキル置換基を有することである。
好ましくは、溶液は、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mよりも大きく0.02mM以下の濃度になるよう調製される。0.02mMを超えると、得られるフラーレンナノワイヤが単一層(すなわち、分子レベル)ではなく多層になる場合があり得る。
ここで、フラーレン誘導体130(図1)のアルキル鎖部位(B)の炭素数nを適宜設定することによって、フラーレン構造体120(図1)間の距離D1(図1)が調節されたフラーレンナノワイヤ100(図1)を得ることができる。
また、フラーレンナノワイヤ100が単一のフラーレン構造体120を含むためには、例えば、溶液中のフラーレン誘導体130の濃度を極めて低くすればよい。
ステップS220:調製された溶液をHOPG基板110(図1)に付与する。詳細には、溶液は、スピンコート法、ディップコート法および滴下法からなる群から選択される方法で付与される。その後、必要に応じて、室温(例えば、25℃)にて自然乾燥させればよい。
このようにフラーレン誘導体130(図1)を含む溶液をHOPG基板110に付与するだけで、フラーレン誘導体130が自己組織化することによって容易に1つ以上のフラーレン構造体120を含むフラーレンナノワイヤ100(図1)が得られる。このようにフラーレン誘導体130を用いてフラーレンナノワイヤ100が製造される理由は以下のとおりである。
HOPG基板110のグラファイト格子構造と、結合部位(R)が有するベンゼン環の
3,4,5位それぞれに結合したアルキル鎖部位(B)の3つのアルキル置換基の構造とは良好なマッチングを示すため、アルキル鎖部位(B)はHOPG基板110に容易に吸着することができる。また、それぞれのアルキル置換基の有する炭素数nが16以上であれば、アルキル鎖部位(B)は、必ずHOPG基板110へ吸着することができる。一方、アルキル置換基の有する炭素数nが16未満である場合、HOPG基板110への吸着力が小さいため、フラーレン誘導体130がランダムに配列してしまう場合があり得る。また、アルキル置換基が有する炭素数が多すぎると、アルキル置換基の構造とHOPG基板110のグラファイト格子構造とのミスマッチが大きくなるため(すなわち、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力が小さくなるため)、好ましくない。また、フラーレン部位(B)は、互いの集合力によって、フラーレン部位(B)同士が集合する傾向を有し得る。これらアルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力と、フラーレン部位(B)の集合力とのバランスによって、フラーレン誘導体120が分子レベルで組織化され得る。
また、フラーレンナノワイヤ100が複数のフラーレン構造体120を有する場合、各フラーレン構造体120におけるアルキル鎖部位(B)の相互作用が小さいので、アルキル鎖部位(B)が入れ子状になることなく対向して配列するように、フラーレン構造体120それぞれが自己組織化し得る。
発明者らは、これら、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力と、フラーレン部位(B)の集合力とのバランスが、上述の特定のフラーレン誘導体130の場合に好適に満たされ、フラーレン誘導体130のフラーレン部位(B)が互いにジグザグ状に配列したフラーレンナノワイヤ100が得られることを創意工夫によって見出した。
なお、ステップS220に続いて、得られたフラーレンナノワイヤ100を例えば、粘着性を有する(ナノ)シートを用いて、HOPG基板110から除去して、1つのフラーレン構造体120を有するフラーレンナノワイヤ100、または、複数のフラーレン構造体120を有するフラーレンナノワイヤ100を単独で用いてもよい。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2によるフラーレンナノワイヤ(A)、フラーレン誘導体(B)、および、さらなるフラーレン誘導体(C)の模式図である。
図3(A)では、本発明によるフラーレンナノワイヤ300が、HOPG基板110上に位置した状態を示す。フラーレンナノワイヤ300は、フラーレン構造体310を含む。フラーレン構造体310は、紙面上、上下に連続しているが、図ではその一部のみを示している。
フラーレン構造体310は、複数のフラーレン誘導体320からなる。フラーレン誘導体320は、式(1)で示される。
フラーレン誘導体320は、フラーレン部位(A)と、フラーレン部位(A)に結合した少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、結合部位(R)の少なくとも1つのベンゼン環に結合されたアルキル鎖部位(B)とを含む。
フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76およびC84からなる群から選択されるフラーレンを含む。好ましくは、フラーレン部位(A)は、極めて高いIh対象性を有するC60である。C60はまた、安定かつ安価であるため、取り扱いが便利であり、化学修飾も容易である。式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である。
結合部位(R)は、式(2)に示されるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択される。これらの結合部位(R)は、アルキル鎖部位(B)をHOPG基板110に対して平面に維持し得るので、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力を効果的に利用することができる。
さらなる置換基Yは、例えば、水素、メチル、アルコールおよびアミンである。
図3(B)に示されるように、フラーレン誘導体320のアルキル鎖部位(B)は、結合部位(R)のベンゼン環の4位に結合された1つのアルキル置換基を有する。
アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択される。ここで、nは、好ましくは16以上である。nが16以上であれば、アルキル置換基とHOPG基板110との格子は良好なマッチングを示し、かつ、アルキル鎖部位(B)がHOPG基板110へ確実に吸着することができる。一方、nが16未満の場合、アルキル置換基とHOPG基板110とのマッチングは良好であっても、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力が低下する場合がある。また、nが大きすぎる(例えば、nが30以上)場合も、アルキル置換基とHOPG基板110とのミスマッチが大きくなり製造上好ましくない。
アルキル置換基が、図3(C)に示されるように、嵩高さの小さい置換基140をアルキル置換基の中間部位に有してもよい。嵩高い置換基は、アルキル鎖部位(B)そのものの組織化構造を崩壊し得る場合がある。具体的には、置換基140は、式(3)に示される、ジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択される。
ジアセチレンは、重合によってジアセチレンポリマーを形成するので、アルキル鎖部位(B)に導電性を持たせることができる。アゾベンゼンまたはスチルベンゼンは、それぞれ、光異性化可能であるため、フラーレンナノワイヤ300のモルフォロジーを光によって変化させることができる。
また、アルキル置換基が、図3(D)に示されるように、置換基150を、アルキル置換基の末端部位に有してもよい。このような置換基150には、例えば、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸がある。これらは、それ自身の分子認識能によって、または、アルキル置換基の末端部位と水素結合することによって、フラーレンナノワイヤ300にホストゲスト反応を起こさせることができる。
再度図3(A)を参照する。
フラーレン構造体310は、隣接したフラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、アルキル鎖部位(B)が、隣接したフラーレン部位(A)を中心として(すなわち、線L−Lを中心として)相反する外側を向くように配列した複数のフラーレン誘導体330を含む。すなわち、隣接したフラーレン部位(A)に注目すると、フラーレン部位(A)は、ジグザグに一方向に配列する。
フラーレンナノワイヤ300は、フラーレン構造体310を複数有していてもよい。この場合、複数のフラーレン構造体310のそれぞれのアルキル鎖部位(B)が互い違い(入れ子状)に対向するように配列し得る。実施の形態1と同様に、フラーレン誘導体320のアルキル鎖部位(B)の長さ(すなわち、アルキル置換基が有する炭素数n)を変化させることによって、フラーレン構造体310間の距離D2を調節できる。
しかしながら、フラーレン構造体310におけるアルキル鎖部位(B)の配列が、互い違いになっているため、実施の形態1のフラーレンナノワイヤ100(図1)におけるフラーレン構造体120間の距離D1に比べて、フラーレンナノワイヤ300におけるフラーレン構造体310間の距離D2は、短くなり得る。より具体的には、距離D2は、アルキル鎖部位(B)のアルキル置換基の長さより長く、アルキル置換基の長さの2倍より短い。したがって、実施の形態2のフラーレンナノワイヤ300は、フラーレン構造体310が互いに分子レベルで近接した設計に有利である。
このような1つまたは複数のフラーレン構造体310を含むフラーレンナノワイヤ300は、アルキル鎖部位(B)のアルキル置換基の位置、および、アルキル鎖部位(B)の製造に用いるHOPG(高配向焼結グラファイト)基板110への吸着力の強さと、フラーレン部位(A)同士互いの集合力の強さのバランスとによって、構築され得ることを発明者らは見出した。
次に、本発明のフラーレンナノワイヤ300の製造手順を説明する。
再度、図2を参照する。
ステップS210:式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製する。
ここで、フラーレン誘導体は図3を参照して説明したフラーレン誘導体と同一であるため、重複して説明するのを避ける。なお、このようなフラーレン誘導体は、上記特許文献1に記載の技術を用いて製造され得る。重要なことには、アルキル鎖部位(B)は、結合部位(R)が有するベンゼン環の4位に結合された1つのアルキル置換基を有することである。
好ましくは、溶液は、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mよりも大きく0.02mM以下の濃度になるよう調製される。0.02mMを超えると、得られるフラーレンナノワイヤが単一層(すなわち、分子レベル)ではなく多層になる場合があり得る。
また、フラーレンナノワイヤ300(図3)が単一のフラーレン構造体310(図3)を含むためには、例えば、溶液中のフラーレン誘導体320(図3)の濃度を極めて低くすればよい。
ここで、フラーレン誘導体320のアルキル鎖部位(B)の炭素数nを適宜設定することによって、フラーレン構造体310(図3)間の距離D2(図3)が調節されたフラーレンナノワイヤ300を得ることができるが、その距離D2は、実施の形態1で説明した距離D1(図1)に比べて短い。
ステップS220:調製された溶液をHOPG基板110(図3)に付与する。詳細には、溶液は、スピンコート法、ディップコート法および滴下法からなる群から選択される方法で付与される。その後、必要に応じて、室温(例えば、25℃)にて自然乾燥させればよい。
このようにフラーレン誘導体320を含む溶液をHOPG基板110に付与するだけで、フラーレン誘導体320が自己組織化することによって容易にフラーレンナノワイヤ300が得られる。このようにフラーレン誘導体320を用いてフラーレンナノワイヤ300が製造される理由は以下のとおりである。
HOPG基板110のグラファイト格子構造と、結合部位(R)が有するベンゼン環の4位に結合したアルキル鎖部位(B)の1つのアルキル置換基の構造とは良好なマッチングを示すため、アルキル鎖部位(B)はHOPG基板110に容易に吸着することができる。。また、そのアルキル置換基の有する炭素数nが16以上であれば、アルキル鎖部位(B)は、必ずHOPG基板110へ吸着することができる。一方、アルキル置換基の有する炭素数nが16未満である場合、HOPG基板110への吸着力が小さいため、フラーレン誘導体320がランダムに配列してしまう場合があり得る。また、アルキル置換基が有する炭素数が多すぎると、アルキル置換基の構造とHOPG基板110のグラファイト格子構造とのミスマッチが大きくなる(すなわち、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力が小さくなるため)、好ましくない。また、フラーレン部位(B)は、互いの集合力によって、フラーレン部位(B)同士が集合する傾向を有する。これらア
ルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力と、フラーレン部位(B)の集合力とのバランスによって、フラーレン誘導体320が分子レベルで組織化され得る。
また、フラーレンナノワイヤ300が複数のフラーレン構造体310を有する場合、フラーレン構造体310のアルキル鎖部位(B)は、互い違い(入れ子状)、かつ、対向するように、フラーレン構造体310それぞれが自己組織化し得る。これは、フラーレン構造体310におけるアルキル鎖部位(B)のサイズが、実施の形態1のフラーレン構造体120(図1)のアルキル鎖部位(B)のサイズに比べて小さいため、HOPG基板110への吸着力に加えて、アルキル鎖部位(B)同士の相互作用の影響(ファンデルワールス力)を受けるためである。この結果、フラーレン構造体310のフラーレン部位(A)をナノメートルレベルにおいてより近接して配列させることができる。
発明者らは、これら、アルキル鎖部位(B)のHOPG基板110への吸着力と、フラーレン部位(B)の集合力とのバランスが、上述の特定のフラーレン誘導体320の場合に好適に満たされ、フラーレン誘導体320のフラーレン部位(B)が互いにジグザグ状に配列したフラーレンナノワイヤ300が得られることを創意工夫によって見出した。
なお、ステップS220に続いて、得られたフラーレンナノワイヤ300を例えば、粘着性を有する(ナノ)シートを用いて、HOPG基板110から除去して、1つのフラーレン構造体310を有するフラーレンナノワイヤ300、または、複数のフラーレン構造体310を有するフラーレンナノワイヤ300を単独で用いてもよい。
以上説明してきたように、発明者らによれば、特定のフラーレン誘導体130、320を用いることによって、分子レベルで一次元に配列したフラーレンナノワイヤ100、300が製造され得ることが分かった。このようなフラーレンナノワイヤ100、300が、例えば、1つのフラーレン構造体120、310を含む場合には、単一のナノワイヤ(すなわち、単一の導電線)として利用され得る。また、フラーレンナノワイヤ100、300が、例えば、複数のフラーレン構造体120、310を含む場合には、予め分子組織化されたナノワイヤ(すなわち、複数の導電線が組織化された配線部材)であるので、素子の製造プロセスを簡略化できるとともに、設計に有利であり得る。
フラーレンナノワイヤ100、300のアルキル鎖部位に特定の置換基140、150を設けることによって、さらなる機能を付与することができる。このようなフラーレンナノワイヤ100、300を用いたデバイスの開発が期待される。
フラーレンナノワイヤ100、300は、フラーレン部位とアルキル鎖部位との間に段差を有する。詳細には、フラーレンナノワイヤ100、300が、複数のフラーレン構造体120、310を含む場合、アルキル鎖部位は、凹となり、フラーレン部位は凸となり、これらが繰り返される。凹部のアルキル鎖部位には、ナノ粒子、タンパク、DNA等のナノメートルレベルの物質を配置させることができるので、フラーレンナノワイヤ100、300を物質を所望に配置させるテンプレートとして利用できる。このように本発明のフラーレンナノワイヤ100、300は、上述した種々の素子に適用可能である。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(430mg、2.5mmol)と、臭化ヘキサデシル(4.58g、15mmol)と、KCO(1.04g、7.5mmol)と、KI(25mg)とをジメチルホルムアミド(DMF)15mL中で混合し、
70℃で14時間攪拌した。得られた反応物を室温まで冷却し、水と混合させた。得られた水溶層をCHClで抽出した。有機層を化合して、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させた。減圧下にて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離剤としてCHCl/n−ヘキサン=2/3)を用いて精製した。次いで、CHCl/MeOHから再結晶化し、白色の3,4,5−トリヘキサデシルオキシベンズアルデヒド(2.05g、2.48mmol、99.1%)を得た。
次いで、3,4,5−トリヘキサデシルオキシベンズアルデヒド(827mg、1.0mmol)と、C60(720mg、1.0mmol)と、N−メチルグリシン(445mg、5.0mmol)とを乾燥トルエン(800mL)中で混合し、21時間還流させた。室温まで冷却した後、反応物を、溶離剤としてトルエン次いでトルエン/n−ヘキサン(1/1)を用いて、シリカゲルにてクロマトグラフ処理をした。クロロホルム溶媒(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)によって精製した後、1,4−ジオキサンから再結晶させて、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O16(468mg、0.297mmol、29.7%)を得た。Hおよび13Cの核磁気共鳴NMR(AL300、JEOL、日本)、高速原子衝撃マススペクトロメトリ(FABMS)(JMS−700、JEOL、東京)、および、レーザイオン飛行時間型質量分析計MALDI TOF−MS(Voyager−DE STR、Applied Biosystem、USA)によって所望のフラーレン誘導体C60Ph3,4,5O16が得られたことを確認した。
次に、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O16を含むクロロホルム溶液を調製した。クロロホルム溶液の濃度は、0.02mMであった。クロロホルム溶液をHOPG基板上に滴下し、スピンコートした。この際、基板の回転速度は、2400rpmであった。その後、HOPG基板を自然乾燥させ、試料Ex.1を得た。
原子間力顕微鏡AFM(Nanoscope IIIa、Veeco、日本)を用いて試料Ex.1の表面観察を行った。測定は、空気中タッピングモードで行った。ばね定数25〜42Nm−1を有する、長さ122μmおよび幅25μmのSiカンチレバーを用いた。
冷却システムを備えた超高真空走査型プローブ顕微鏡STM(JSPM−4500/4610、JEOL、日本)を用いて試料Ex.1の表面観察を行った。測定は、超高真空下にて100Kで行った。AFM観察およびSTM観察の結果を図4および図5に示し後述する。
3つの電極セルを有する電気化学アナライザ(612B、BAS、日本)を用いて、試料Ex.1にサイクリックボルタンメトリ測定(CV測定)を行った。測定には、試料Ex.1のHOPG基板の導電性を利用し、HOPG基板それ自身を作用電極(0.636cm)として、Ptをカウンタ電極として、Ag/Ag/アセトニトリル/テトラ(n−ブチル)アンモニウムパークロレート(TBAP)を参照電極として用いた。結果を図8(A)に示し後述する。
臭化ヘキサデシルの代わりに臭化イコシルを用いて、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O20を得た以外は、実施例1と同様である。実施例1と同様にして、HOPG基板にフラーレン誘導体C60Ph3,4,5O20をスピンコートし、試料Ex.2を得た。
得られた試料Ex.2の表面観察を、AFMを用いて実施例1と同様の条件で行った。
結果を図6および図7に示し後述する。
実施例1と同様に、試料Ex.2にサイクリックボルタンメトリ測定(CV測定)を行った。結果を図8(B)に示し後述する。
3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、4−ヒロドキシベンズアルデヒドを用いて、フラーレン誘導体C60Ph4OC16を得た以外は、実施例1と同様である。実施例1と同様にして、HOPG基板にフラーレン誘導体C60Ph4OC16をスピンコートし、試料Ex.3を得た。得られた試料Ex.3の表面観察を、AFMを用いて実施例1と同様の条件で行った。結果を図9および図10に示し後述する。
塩基性配位子(bis−4,4’−(4,4’−ジチオブチルベンジル)−N,N,N’,N’−テトラエチルアミン:TBA)で保護された金ナノ粒子(粒径4〜5nm)水溶液を作製した。次いで、金ナノ粒子水溶液を実施例1で得られた試料Ex.1に回転速度1200rpmでスピンコートした。得られた試料の表面観察を、AFMを用いて行った。結果を図12に示し後述する。
比較例1;
臭化ヘキサデシルの代わりに臭化ドデシルを用いて、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O12を得た以外は、実施例1と同様である。実施例1と同様にして、HOPG基板にフラーレン誘導体C60Ph3,4,5O12をスピンコートし、試料Re.1を得た。得られた試料Re.1の表面観察を、AFMを用いて実施例1と同様の条件で行った。結果を図11(A)に示し後述する。
比較例2;
3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、3,5−ジヒロドキシベンズアルデヒドを用いて、フラーレン誘導体C60Ph3,5O16を得た以外は、実施例1と同様である。実施例1と同様にして、HOPG基板にフラーレン誘導体C60Ph3,5O16をスピンコートし、試料Re.2を得た。得られた試料Re.2の表面観察を、AFMを用いて実施例1と同様の条件で行った。結果を図11(B)に示し後述する。
図4は、実施例1によるEx.1の表面観察の結果を示す図である。
図4(A)および(B)は、AFMによる表面観察結果を示し、図4(C)は、STMによる表面観察の結果を示す。図4(A)〜(C)により、コントラストの明るい層(領域)とコントラストの暗い層(領域)とが周期的に繰り返されている様子が示される。それぞれの層は、一次元方向に伸びており、全体として層状(ストライプ状またはラメラ状)である。層の長さは、100nm〜400nmであった。
コントラストの明るさによるEx.1の高低差は、0.5〜0.6nmであった。通常、フラーレン誘導体のアルキル置換基は、(アルキル鎖が伸びた状態の場合)0.25nmの高さを有し、フラーレン部位は0.7nmの高さを有する。このことから、コントラストの明るい層はフラーレン部位に相当し、コントラストの暗い層はアルキル鎖部位に相当すると理解され得る。各層間の周期は、6.3nmであった。
図4(C)は、Ex.1における各フラーレン誘導体の状態をより明瞭に示している。図4(C)によれば、フラーレン誘導体は、フラーレン部位(コントラストの明るい部分
)が互いに隣接し、アルキル鎖部位(コントラストの暗い部分)が隣接したフラーレン部位を中心として相反する外側を向くように、配列していることが分かる。図4(C)から、フラーレン誘導体は、最密充填となるように配列するのではなく、フラーレン部位がジグザグに配列するように配列していることが分かった。
図5は、実施例1によるフラーレン誘導体(A)およびEx.1(B)の模式図を示す図である。
図5(A)は、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O16の模式図である。フラーレン部位の大きさは0.7nmであり、アルキル鎖部位の長さは2.13nmであり、フラーレン部位とアルキル鎖部位との水平方向の合計長Lは、3.09nmであり、フラーレン誘導体の長手方向の長さは3.13nmであることが知られている。このことと、図4から得られた結果とに基づいて、Ex.1は、図5(B)に示されるように分子レベルで配列したフラーレンナノワイヤであり、フラーレン部位間の距離(図1の距離D1に相当)6.3nmは、Lの2倍にほぼ等しいことが分かった。
図6は、実施例2によるEx.2の表面観察の結果を示す図である。
図6(A)および(B)は、いずれもAFMによる表面観察結果を示す。実施例1と同様に、コントラストの明るい層(領域)とコントラストの暗い層(領域)とが周期的に繰り返されている様子が示される。それぞれの層は、一次元方向に伸びており、全体として層状(ストライプ状またはラメラ状)である。層の長さは、100nm〜600nmであった。
コントラストの明るさによるEx.2の高低差は、0.4〜0.5nmであり、ほぼ実施例1と同様でった。このことから、やはり、コントラストの明るい層はフラーレン部位に相当し、コントラストの暗い層はアルキル鎖部位に相当すると理解され得る。各層間の周期は、7.2nmであった。
図7は、実施例2によるフラーレン誘導体(A)およびEx.2(B)の模式図を示す図である。
図7(A)は、フラーレン誘導体C60Ph3,4,5O20の模式図である。フラーレン部位の大きさは0.7nmであり、アルキル鎖部位の長さは2.66nmであり、フラーレン部位とアルキル鎖部位との水平方向の合計長Lは、3.62nmであり、フラーレン誘導体の長手方向の長さは3.67nmであることが知られている。以上より、実施例1と同様に、Ex.2のフラーレン誘導体は、図7(B)に示されるように、フラーレン部位(コントラストの明るい部分)が互いに隣接し、アルキル鎖部位(コントラストの暗い部分)が隣接したフラーレン部位を中心として相反する外側を向くように、配列していることが分かる。また、フラーレン部位間の距離(図1の距離D1に相当)7.2nmは、Lの2倍にほぼ等しいことが分かった。Ex.2もまた、フラーレン誘導体が分子レベルで一次元に配列したフラーレンナノワイヤであることが示された。
図8は、実施例1のEx.1(A)および実施例2のEx.2(B)のサイクリックボルタンメトリの結果を示す図である。
いずれの図も酸化還元を示す電流ピークが観察された。−1.7Vから−0.7へ挿引した場合に見られるピークが酸化を示し、−0.7Vから−1.7Vへ挿引した場合に見られるピークが還元を示す。このことは、Ex.1およびEx.2のフラーレンナノワイヤが、フラーレンの電気化学特性を依然として有していることを示す。Ex.1およびE
x.2の酸化還元電位は、それぞれ、−1.29Vおよび−1.30Vであった。これらの値は、フラーレン単分子がアニオンとなる場合の酸化還元電位に相当する。このことは、Ex.1およびEx.2は、ともに、分子レベルで単層であることを示す。以上から、Ex.1およびEx.2のフラーレンナノワイヤが、分子レベルの導電線としての機能性を有していることが示唆される。
図9は、実施例3によるEx.3の表面観察の結果を示す図である。
図9(A)および(B)は、いずれもAFMによる表面観察結果を示す。実施例1と同様に、コントラストの明るい層(領域)とコントラストの暗い層(領域)とが周期的に繰り返されている様子が示される。それぞれの層は、一次元方向に伸びており、全体として層状(ストライプ状またはラメラ状)である。層の長さは、30nm〜150nmであり、Ex.1およびEx.2に比べて短いことが分かった。
コントラストの明るさによるEx.3の高低差は、実施例2と同様に0.4〜0.5nmであった。このことから、やはり、コントラストの明るい層はフラーレン部位に相当し、コントラストの暗い層はアルキル鎖部位に相当すると理解され得る。各層間の周期は、4.3nmであった。
図10は、実施例3によるフラーレン誘導体(A)およびEx.3(B)の模式図を示す図である。
図10(A)は、フラーレン誘導体C60Ph4O16の模式図である。フラーレン部位の大きさは0.7nmであり、アルキル鎖部位の長さは2.13nmであり、フラーレン部位とアルキル鎖部位との水平方向の合計長Lは、3.09nmであり、フラーレン誘導体の長手方向の長さは3.10nmであることが知られている。以上より、実施例1、2とは異なり、Ex.3のフラーレン誘導体は、図10(B)に示されるように、フラーレン部位(コントラストの明るい部分)が互いに隣接し、アルキル鎖部位(コントラストの暗い部分)が隣接したフラーレン部位を中心として外側を向き、かつ、互い違い(入れ子)に対向するように、配列していることが分かる。また、フラーレン部位間の距離(図3の距離D2に相当)4.2nmは、Lの2倍より小さいことが分かった。Ex.3もまた、フラーレン誘導体が分子レベルで一次元に配列したフラーレンナノワイヤであることが示された。
図11は、比較例1および比較例2によるRe.1およびRe.2の表面観察の結果を示す図である。
実施例1〜3とは異なり、いずれの図も層状のコントラストが示されておらず、分子レベルのナノワイヤは生成されなかった。このことから、ナノワイヤを得るためには、上述の特定のフラーレン誘導体を用いることが必須であり、好ましくは、フラーレン誘導体のアルキル置換基が有する炭素数は、16以上であることが示唆される。
以上の結果を表1に示す。
図12は、実施例4による金ナノ粒子水溶液をEx.1に付与した結果を示す図である。
図中、例えば、丸で囲むコントラストの最も明るい部分1200は、金ナノ粒子に相当する。金ナノ粒子が、Ex.1の凹部(すなわち、図4のコントラストの暗い層で示されるアルキル鎖部位)に位置するのが分かる。このことから、本発明によるフラーレンナノワイヤは、金ナノ粒子等のナノ物質を適宜配置させるテンプレートとして利用可能であることが示唆された。
以上説明してきたように、本発明によれば、特定のフラーレン誘導体を用いて、HOPG基板に付与するだけで、分子レベルのフラーレンナノワイヤが得られ得る。このようなフラーレンナノワイヤは、単一の導電線として利用可能であるとともに、予め組織化された配線部材としても好ましい。フラーレンナノワイヤの組織化された凹凸構造を利用したテンプレートとしても利用可能である。また、フラーレンナノワイヤの凹部(すなわちアルキル鎖部位)にさらなる機能(光応答性、導電性、ホストゲスト反応)を設けることができるので、新規な素子が期待される。
本発明の実施の形態1によるフラーレンナノワイヤ(A)、フラーレン誘導体(B)、および、さらなるフラーレン誘導体(C)の模式図 本発明によるフラーレンナノワイヤの製造ステップを示す図 本発明の実施の形態2によるフラーレンナノワイヤ(A)、フラーレン誘導体(B)、および、さらなるフラーレン誘導体(C)の模式図 実施例1によるEx.1の表面観察の結果を示す図 実施例1によるフラーレン誘導体(A)およびEx.1(B)の模式図を示す図 実施例2によるEx.2の表面観察の結果を示す図 実施例2によるフラーレン誘導体(A)およびEx.2(B)の模式図を示す図 実施例1のEx.1(A)および実施例2のEx.2(B)のサイクリックボルタンメトリの結果を示す図 実施例3によるEx.3の表面観察の結果を示す図 実施例3によるフラーレン誘導体(A)およびEx.3(B)の模式図を示す図 比較例1および比較例2によるRe.1およびRe.2の表面観察の結果を示す図 実施例4による金ナノ粒子水溶液をEx.1に付与した結果を示す図
符号の説明
100、300 フラーレンナノワイヤ
110 HOPG基板
120、310 フラーレン構造体
130、320 フラーレン誘導体
140、150 置換基

Claims (31)

  1. 複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含むフラーレンナノワイヤであって、
    前記複数のフラーレン誘導体のそれぞれは、式(1)で示され、
    フラーレン部位(A)と、
    前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、
    前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)と
    を含み、
    ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、
    前記フラーレン構造体は、前記フラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、前記アルキル鎖部位(B)が、前記隣接したフラーレン部位(A)を中心として相反する外側を向くように配列した前記複数のフラーレン誘導体を含むことを特徴とする、フラーレンナノワイヤ。
  2. 前記フラーレンナノワイヤは、2以上の前記フラーレン構造体を含み、
    前記2以上のフラーレン構造体のそれぞれは、前記アルキル鎖部位(B)が互いに対向するように配列していることを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  3. 前記フラーレンナノワイヤはHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に位置することを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  4. 前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  5. 前記アルキル置換基は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  6. 前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
    前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  7. 前記アルキル置換基のそれぞれは、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、
    前記置換基が前記アルキル置換基の中間に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
    前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  8. 前記複数のフラーレン誘導体の前記フラーレン部位(A)のそれぞれは、ジグザグに配列することを特徴とする、請求項1に記載のフラーレンナノワイヤ。
  9. フラーレンナノワイヤを製造する方法であって、
    式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製するステップであって、前記フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
    ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である、ステップと、
    前記溶液をHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に付与するステップと
    を包含することを特徴とする、方法。
  10. 前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群か
    ら選択されるフラーレンを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 前記アルキル置換基は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  12. 前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
    前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  13. 前記アルキル置換基のそれぞれは、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、
    前記置換基が前記アルキル置換基の中間に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
    前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  14. 前記溶液を調製するステップは、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mより大きく0.02mM以下の濃度に調製することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  15. 前記付与するステップは、前記溶液をスピンコート法、ディップコート法、および、滴下法からなる群から選択される方法で付与することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  16. 複数のフラーレン誘導体からなるフラーレン構造体を含むフラーレンナノワイヤであって、
    前記複数のフラーレン誘導体のそれぞれは、式(1)で示され、
    フラーレン部位(A)と、
    前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、
    前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の4位に結合されたアルキル置
    換基を有するアルキル鎖部位(B)と
    を含み、
    ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、
    前記フラーレン構造体は、前記フラーレン部位(A)が互いに隣接し、かつ、前記アルキル鎖部位(B)が、前記隣接したフラーレン部位(A)を中心として相反する外側を向くように配列した前記複数のフラーレン誘導体を含むことを特徴とする、フラーレンナノワイヤ。
  17. 前記フラーレンナノワイヤは、2以上の前記フラーレン構造体を含み、
    前記2以上のフラーレン構造体のそれぞれは、前記アルキル鎖部位(B)が互い違いに入れ子状に対向するように配列していることを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  18. 前記フラーレンナノワイヤはHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に位置することを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  19. 前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  20. 前記アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  21. 前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
    前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  22. 前記アルキル置換基は、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、
    前記置換基が前記アルキル置換基の中間に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示
    されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
    前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  23. 前記複数のフラーレン誘導体の前記フラーレン部位(A)のそれぞれは、ジグザグに配列することを特徴とする、請求項16に記載のフラーレンナノワイヤ。
  24. フラーレンナノワイヤを製造する方法であって、
    式(1)で示されるフラーレン誘導体を含む溶液を調製するステップであって、前記フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合した、少なくとも1つのベンゼン環を有する結合部位(R)と、前記結合部位(R)の前記少なくとも1つのベンゼン環の4位に結合されたアルキル置換基を有するアルキル鎖部位(B)とを含み、
    ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基である、ステップと、
    前記溶液をHOPG(高配向焼結グラファイト)基板上に付与するステップと
    を包含する、方法。
  25. 前記フラーレン部位(A)は、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されるフラーレンを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  26. 前記アルキル置換基は、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、16以上の整数であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  27. 前記結合部位(R)は、式(2)で示される、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、および、ピレンからなる群から選択され、
    前記式(2)において、Yは、水素、メチル、アルコール、および、アミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  28. 前記アルキル置換基は、前記アルキル置換基の中間、または、末端に置換基を有し、
    前記置換基が前記アルキル置換基の中間に位置する場合、前記置換基は、式(3)で示されるジアセチレン、アゾベンゼン、および、スチルベンゼンからなる群から選択され、
    前記置換基が前記アルキル置換基の末端に位置する場合、前記置換基は、カルボン酸、アミン、アミノ酸、アルコール、および、ボロン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  29. 前記溶液を調製するステップは、溶媒としてクロロホルムまたはテトラヒドロフランを用いて、0Mより大きく0.02mM以下の濃度に調製することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  30. 前記付与するステップは、前記溶液をスピンコート法、ディップコート法、および、滴下法からなる群から選択される方法で付与することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  31. 請求項1〜8および請求項16〜23のいずれかに記載のフラーレンナノワイヤを含む、素子。
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