JP5958162B2 - アクチュエーター - Google Patents

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Description

本発明は、アクチュエーターに関する。
近年、医療分野やマイクロマシン分野等において、小型のアクチュエーターの必要性が高まっている。
このような小型のアクチュエーターは、小型であるとともに、低電圧で駆動することが求められている。このような低電圧化を実現するために種々の試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来のアクチュエーターでは、駆動電圧を十分に低くすることができておらず、変形をさせるのに高い電圧が必要であった。また、従来のアクチュエーターでは、変形量(変位量)を十分に大きなものとすることが困難であった。
特開2005−224027号公報
本発明の目的は、低電圧で大きく変位することが可能なアクチュエーターを提供すること等にある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエーターは、第1の変形材料層と、
第2の変形材料層と、
前記第1の変形材料層と前記第2の変形材料層との間に設けられた中間層とを備え、
前記第1の変形材料層は、酸化還元反応により分子の構造が変わるとともに色調が変化する第1の刺激応答性化合物と、第1の高分子材料と、光透過性を有する第1の電子導電性物質と、第1の電解質と、を含む第1の変形材料を含み、
前記第2の変形材料層は、酸化還元反応により分子の構造が変わるとともに色調が変化する第2の刺激応答性化合物と、第2の高分子材料と、光透過性を有する第2の電子導電性物質と、第2の電解質と、を含む第2の変形材料を含み、
前記中間層は、前記第1の変形材料層と前記第2の変形材料層の間の電子の移動を妨げることを特徴とする。
これにより、低電圧で大きく変位することが可能なアクチュエーターを提供することができる。また、刺激応答性化合物の酸化還元反応による分子構造の変化に伴う、変形材料層の変形量や、変形材料層が変形のためにため込んだエネルギー量等を、変形材料層の色調で容易に判断することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質は、ITO、IZO、GZO、ZnO、CdO、AZO、および、IGZOよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、電子の輸送機能が向上し、比較的低い電圧で変形材料層(アクチュエーター)を大きく変位させることができる。また、これらの材料は、各種電子導電性物質の中でも、特に長期間にわたって安定的に優れた透明性を保持することができる。このため、より長期間にわたって、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質は、粒子であることが好ましい。
これにより、変形材料層全体に均一に電子導電性物質を分散させることができ、変形材料層中での電子の輸送を好適に行うことができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質の平均粒径は5nm以上10μm以下であることが好ましい。
これにより、変形材料層中での電子の輸送を好適に行うことができ、刺激応答性化合物への電子供給効率を特に優れたものとすることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBとを含むものであり、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが還元反応によって結合するものであることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物(変形材料、アクチュエーター)の応答速度、変位量を特に優れたものとすることができる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記ユニットAは、下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)よりなる群から選択される1種であることが好ましい。
Figure 0005958162
これにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、アクチュエーターはより低電圧で駆動するものとなる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
Figure 0005958162
これにより、反応条件を調整することで、ユニットB同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつより容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつより低電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の高分子材料および/または前記第2の高分子材料は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、変形材料全体を最適な硬さに調整できる。また、変形材料(アクチュエーター)を、より柔軟に変形し、より円滑に作動するものとすることができる。また、ゲル状態の変形材料において、溶媒(液体成分)の保持力を特に優れたものとすることができるため、不本意な経時的な変形材料の体積減少をより効果的に防止することができる。また、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーは、特に透明性の高い材料であるため、刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の高分子材料および/または前記第2の高分子材料は、液晶ポリマーを含むものであることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、アクチュエーター全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、液晶ポリマーは、一般に、特に透明性の高い材料であるため、刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記液晶ポリマーは、架橋剤により架橋されたものであることが好ましい。
これにより、変形材料を好適に固体化(ゲル化)することができ、変形材料全体としての形状の安定性、取り扱い性が特に優れたものとなる。また、これにより、変形材料(アクチュエーター)は、異方的な伸縮をより好適に行うことができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、液晶性を有する官能基を備えるものであり、
前記液晶ポリマーは、前記官能基と同じ官能基を有していることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度をより効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をさらに好適に増幅することができ、アクチュエーター全体としての変位量をさらに大きいものとすることができる。また、アクチュエーターは、より低い電圧での変形が可能となる。また、変形材料の透明性を特に優れたものとすることができるとともに、刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなるため、結果として、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、液晶性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、アクチュエーター全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、アクチュエーターは、より低い電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記液晶性を有する官能基は、複数の環構造を有し、
前記複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合していることが好ましい。
これにより、液晶性を有する官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより速くなる。その結果、アクチュエーターは、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料層の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
本発明のアクチュエーターでは、前記中間層は、ゲルであることが好ましい。
これにより、アクチュエーター全体を、より柔軟に変形し、円滑に作動をするものとすることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記中間層は、陰イオンを交換するイオン交換体を含むものであることが好ましい。
これにより、アクチュエーター全体としての変形量をより大きいものとすることができる。
本発明のアクチュエーターの好適な実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のアクチュエーターの好適な実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のアクチュエーターを構成する刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。 本発明のアクチュエーターを構成する刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。 本発明のアクチュエーターを構成する刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。 本発明のアクチュエーターを構成する刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。 本発明のアクチュエーターを構成する陰イオンおよび溶媒の挙動を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1、図2は、本発明のアクチュエーターの好適な実施形態を模式的に示す断面図である。図3、図4、図5、図6は、本発明のアクチュエーターを構成する刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図3、図4は、後に詳述するユニットDを有さない刺激応答性化合物を示すものであり、図5、図6は、後に詳述するユニットDを有する刺激応答性化合物を示すものであり、図5は図3に対応するものであり、図6は図4に対応するものである。図3、図4、図5、図6中、○は官能基(原子団)を意味し、線は結合を意味する。また、図7は、本発明のアクチュエーターを構成する中間層中の陰イオンおよび溶媒の挙動を模式的に示す断面図である。図7(a)は、アクチュエーター100に一度も通電がなされていない状態を示す。図7(b)、図7(c)は、アクチュエーター100に通電した状態を示し、図7(b)は、図1に対応するものであり、図7(c)は図2に対応するものである。
図1、図2に示すように、本実施形態のアクチュエーター100は、第1の変形材料層11と、第2の変形材料層12と、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間に設けられた中間層13とを備えている。そして、駆動装置200は、アクチュエーター100と、直流の電源10と、アクチュエーター100への通電・切電を選択するスイッチ14とで構成されており、アクチュエーター100は、スイッチ14を介して、電源10に接続されている。
図1に示す構成では、スイッチ14を介して、第1の変形材料層11が、電源10の正極に接続されており、第2の変形材料層12が、電源10の負極に接続されている。他方、図2に示す構成では、スイッチ14を介して、第1の変形材料層11が、電源10の負極に接続されており、第2の変形材料層12が、電源10の正極に接続されている。
第1の変形材料層11および第2の変形材料層12は、いずれも、酸化還元反応により、分子構造が変わる刺激応答性化合物と、電解質とを含む変形材料で構成されたものである。
中間層13は、前記電解質によるイオンを透過する機能を有するものである。また、中間層13は、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12の間の電子の移動を妨げる機能を有するものである。
以下、アクチュエーター100の構成について詳細に説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態のアクチュエーター100は、第1の変形材料層11と、第2の変形材料層12と、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間に設けられ、これらと接触して設けられた中間層13とを備えている。
≪第1の変形材料層≫
まず、第1の変形材料層について説明する。
第1の変形材料層11は、刺激応答性化合物(第1の刺激応答性化合物)と、高分子材料(第1の高分子材料)と、電子導電性物質(第1の電子導電性物質)と、電解質(第1の電解質)とを含む変形材料(第1の変形材料)で構成されている。さらに、第1の変形材料層11は、溶媒等が含まれていてもよい。
また、第1の変形材料層11は、例えば、固体状、ゲル状(半固体状)、液体状等、その形態はいかなるものであってもよいが、ゲル状(半固体状)をなすものが好ましい。これにより、変形材料の取り扱い性(取り扱いのし易さ)に優れるとともに、変形材料の適用範囲を広げることができる。また、柔軟に変形し、円滑に作動をするアクチュエーター100を提供することができる。
以下、第1の変形材料を構成する各成分について詳細に説明する。
<刺激応答性化合物>
まず、刺激応答性化合物について説明する。
刺激応答性化合物は、刺激(酸化還元反応)によって、分子の立体構造を変形(変位)させる機能、言い換えると、分子鎖が伸縮する機能を有するとともに、色調が変化する化合物である。
本発明において、刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、分子の立体構造が変わるものである。このものは、比較的低い電圧で変形材料全体を大きく変位させることができる。その結果、例えば、アクチュエーターは、低電圧で、十分に大きな変位力、変位量を得ることができる。また、アクチュエーターの応答速度を優れたものとすることができ、変形の再現性にも優れている。また、アクチュエーターの軽量化を図ることができる。
また、本発明において、刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、色調も変化するものである。このように、刺激応答性化合物が酸化還元反応で色調も変化するものであることにより、刺激応答性化合物(変形材料)の色調によって、刺激応答性化合物の酸化還元状態を判断することができる。
本発明において、刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、分子構造が変わるとともに色調が変化するものであればいかなるものであってもよいが、液晶性を有する官能基を備えるものであるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、アクチュエーター100全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、アクチュエーター100は、より低い電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、第1の変形材料層11の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。ここで、液晶性とは、電場や磁場の付与により、分子の配向方向を変えることができるものをいう。
刺激応答性化合物が液晶性を有する官能基を備えるものである場合、当該液晶性を有する官能基は、複数の環構造を有し、当該複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合しているのが好ましい。これにより、液晶性を有する官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより速くなる。その結果、アクチュエーター100は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、第1の変形材料層11の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
図3(a)等に示す刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、ユニットAの両末端(第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つのユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)と、2つのユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)とを有しており、第1のユニットBと第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合するものであり、第1のユニットCおよび第2のユニットCが液晶性を有する官能基である。
このように、所定の位置関係を満足するユニットAとユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)とを有することにより、刺激応答性化合物(変形材料、アクチュエーター100)の応答速度、変位量を特に優れたものとすることができる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、第1の変形材料層11の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
また、ユニットAおよびユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)に加え、ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)を有することにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、変形材料全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、変形材料は、より低い電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
以下、図3に示すような刺激応答性化合物について、中心的に説明する。
刺激応答性化合物を構成するユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基(ユニット)である。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)よりなる群から選択される1種の基であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、アクチュエーター100はより低電圧で駆動するものとなる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、第1の変形材料層11の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
Figure 0005958162
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、図3(a)に示すように、ユニットAの回転軸方向の両末端(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合している基である。すなわち、第1のユニットBがユニットAの第1の結合部位に、第2のユニットBがユニットAの第2の結合部位に結合している。
また、ユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図3(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。このような酸化還元反応は、例えば、電圧を印加することにより、進行させることができる。また、電圧の印加を止めることで、酸化還元反応を止めることができ、結果として、変形材料の形状を保持することが可能となる。
特に、図3に示すように、刺激応答性化合物が、酸化反応により、伸長(膨張)し、かつ、正に帯電するものである場合、以下のような効果が得られる。
すなわち、刺激応答性化合物自体が伸長(膨張)することにより、第1の変形材料層11全体の体積が大きくなり、伸長(膨張)する効果が得られるとともに、正に帯電した刺激応答性化合物の分子同士が静電的に反発することにより、第1の変形材料層11全体の体積は、刺激応答性化合物の分子の体積の増加率よりも大きい割合で増大するという効果が得られる。さらに、酸化反応をする際には、第1の変形材料層11に、後に詳述する電解質由来のアニオン(陰イオン)が流入することになるため、第1の変形材料層11の体積は、当該アニオン(例えば、BF 等)の体積に対応する分だけ増大することとなる。これらの効果が相乗的に作用し合うことにより、酸化反応が起こる第1の変形材料層11の体積を特に効率よく増大させることができる。これに対し、還元反応が進行する際には、刺激応答性化合物自体が収縮し、さらに上記のような静電的な反発、および、イオンの流入が生じないため、第1の変形材料層11の伸縮率を高いものとすることができる。以上のようなことから、図3に示すように、刺激応答性化合物が、酸化反応により、伸長(膨張)し、かつ、正に帯電するものである場合には、第1の変形材料層11全体としての変形量を大きなものとすることができる。その結果、アクチュエーター100全体としての変形量をより大きなものとすることができるとともに、より低い電圧での駆動が可能となる。
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)としては、ユニットB同士(第1のユニットBと第2のユニットBと)で酸化還元反応によって結合を形成する基であれば、特に限定されないが、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、下記式(4)で表される基であるのが好ましい。これにより、反応条件を調整することで、ユニットB同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつより容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつより低電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、第1の変形材料層11の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
Figure 0005958162
また、ユニットAが、上記式(1)、上記式(2)および上記式(3)よりなる群から選択される1種の基であり、かつ、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)が、上記式(4)で表される基である場合、酸化還元反応による色調の変化がさらに顕著なものとなり、外観上、変形材料の変形の度合い等をさらに容易かつ確実に認識することが可能となる。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)は、液晶性を有する基である。液晶性を有することにより、ユニットCに電場や磁場を付与したとき、ユニットCは所定の方向に配列する。その結果、刺激応答性化合物は、その駆動に所定の方向性を示す。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数の芳香環(例えば、フェニル基)をエステル基で連結したもの、芳香環(例えば、ベンゼン環)若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。また、特に、複数の環構造を有する基は、2以上の芳香環を含むものが好ましい。これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、変形材料全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、変形材料は、より低い電圧での変形が可能となる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
ユニットCとしては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、ユニットCの配向時における運動性能をより高いものとすることができ、運動速度がより速くなる。その結果、変形材料は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
また、ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)は、重合性官能基を有していてもよい。この重合性官能基によって、刺激応答性化合物が重合することで、より分子鎖の長い刺激応答性化合物を形成することができる。また、このように分子鎖を長くすることにより、後に詳述するように、分子の変形(変位)の度合いを大きくすることができ、より強い力(応力)で駆動させることが可能となる。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)の具体例としては、以下のようなものが挙げることができる。
Figure 0005958162
ユニットCは、刺激応答性化合物の分子内において、いかなる部位に結合するものであってもよく、例えば、ユニットBに結合するものであってもよいが、ユニットAに結合するものであるのが好ましい。特に、分子内に2つのユニットC(第1のユニットCおよび第2のユニットC)を含むものである場合、第1のユニットCは、ユニットAの第3の結合部位(第1の結合部位、第2の結合部位とは異なる部位)に配置されたものであり、第2のユニットCは、ユニットAの第4の結合部位(第1の結合部位、第2の結合部位、第3の結合部位とは異なる部位)に配置されたものであるのが好ましい。これにより、さらに低い電圧で好適に変形することができる。また、その結果、変形材料の柔軟性をさらに優れたものとすることができる。また、酸化還元反応による色調の変化がより顕著なものとなり、外観上、変形材料の変形の度合い等をより容易かつ確実に認識することが可能となる。
以上説明したように、刺激応答性化合物が、軸回転可能なユニットAと、ユニットAの両末端(第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つのユニットであって、酸化還元反応によりユニット同士で結合を形成することが可能なユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)と、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)に結合した2つのユニットであって、液晶性を有するユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)とを有しているものである場合、より低い電力で変形(変位)させることができるとともに、変位の度合いを比較的大きくすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、液晶性を有するユニットCによって複数の刺激応答性化合物分子が配向した(並んだ)状態で存在することができ、その揃った状態で電圧等を印加して1分子内のユニットB同士が酸化還元反応により結合する(架橋する)。このように、ユニットCの配向性(液晶性)とユニットBの刺激による結合性とを利用することで、図3(a)に示す状態から、図3(b)に示す状態へと確実に変形(変位)することができる。特に、ユニットCの配向とユニットB同士の結合は、低い電圧で進行するので、低電圧で、大きな変形(変位)が可能となる。
なお、ユニットCの重合性官能基を利用して重合した刺激応答性化合物を用いた場合、前述したように、低電圧で、さらに大きな変形が可能となる。
すなわち、ユニットCの重合性官能基を利用して、構成単位が重合してなる重合体である刺激応答性化合物は、図4に示される構造のように構成単位が順次連なった状態となる。そして、刺激応答性化合物が酸化された状態では、図4(a)に示すように、構成単位が長手方向に連なって伸びた状態で存在している。これにより、分子の立体構造は、伸長(膨張)した状態をなる。そして、刺激応答性化合物が還元された状態では、図4(b)に示すように、ユニットAを軸に回転し、隣接するユニットB同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性のユニットCが配向することにより、ユニットBを基点として折りたたまれた状態となる。これにより、分子の立体構造は、収縮した状態となる。このように、刺激応答性化合物全体として、分子の立体構造が大きく変化する。ここで、ユニットBを有する構成単位を重合してなる刺激応答性材料は、折れ曲がりの基点となるユニットBを複数有する。このため、刺激応答性材料全体として、変位の度合いを大きなものとすることができる。
さらに、刺激応答性化合物に電圧を印加することで、液晶性を有する官能基を有するユニットCは所定の方向に配列する。このため、前述したような折れ曲がりの基点となるユニットBが複数あることと、各構成単位のユニットCが配向することとの相乗効果により、刺激応答性材料全体として、変位の度合いをより大きなものとすることができる。
また、刺激応答性化合物は、前述したユニットA、ユニットB(第1のユニットB、第2のユニットB)、ユニットC(第1のユニットC、第2のユニットC)に加え、さらに分子内に、炭素数が2および/または3のアルキレンオキシドが重合してなるポリアルキレンオキシド構造を含むユニットDを含むものであってもよい(図5、図6参照)。これにより、より低い電圧で好適に変形することができる。また、第1の変形材料層11(アクチュエーター100)の柔軟性をさらに優れたものとすることができる。また、低温でも、刺激応答性化合物(変形材料)の結晶化を確実に防止することができ、低温領域(例えば、−10℃以下)での作動性を特に優れたものとすることができる。また、刺激応答性化合物がユニットDを含むものであることにより、刺激応答性化合物全体として、塩(電解質)との親和性・相溶性を優れたものとすることができ、酸化還元反応において電荷の移動がより速やかなものとなる。その結果、刺激応答性化合物を含むアクチュエーター100の応答速度はより速いものとなる。
また、刺激応答性化合物がユニットDを含むものであることにより、刺激応答性化合物全体として、溶媒を保持する能力(保液性)を特に優れたものとすることができる。このため、第1の変形材料層11を最適な硬さに調整できる。また、アクチュエーター100を、より柔軟に変形し、円滑に作動をするものとすることができる。
刺激応答性化合物は、分子内に、1つのユニットDを含むものであってもよいが、図5に示す構成では、ユニットDとして、第1のユニットDおよび第2のユニットDを備えている。これにより、さらに低い電圧で好適に変形することができる。また、アクチュエーター100の柔軟性、低温領域での作動性をさらに優れたものとすることができる。
ユニットDは、刺激応答性化合物の分子内において、いかなる部位に結合するものであってもよく、例えば、ユニットBに結合するものであってもよいが、ユニットAに結合するものであるのが好ましい。特に、分子内に2つのユニットD(第1のユニットDおよび第2のユニットD)を含むものである場合、第1のユニットDは、ユニットAの第3の結合部位(第1の結合部位、第2の結合部位とは異なる部位)に配置されたものであり、第2のユニットDは、ユニットAの第4の結合部位(第1の結合部位、第2の結合部位、第3の結合部位とは異なる部位)に配置されたものであるのが好ましい。これにより、さらに低い電圧で好適に変形することができる。また、アクチュエーター100の柔軟性、低温領域での作動性をさらに優れたものとすることができる。
また、第1のユニットDは、第1のユニットCに結合したものであり、第2のユニットDは、第2のユニットCに結合したものであるのが好ましい。これにより、さらに低い電圧で好適に変形することができる。また、アクチュエーター100の柔軟性、低温領域での作動性をさらに優れたものとすることができる。
また、ユニットDが、ユニットAとユニットCとの両方に結合するもの、すなわち、ユニットAとユニットCとの間に介在するものであることにより、液晶性を有するユニットCの配向状態の変化がより速やかに進行することとなり、アクチュエーター100は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
前述したように、ユニットD(第1のユニットDおよび第2のユニットD)は、炭素数が2および/または3のアルキレンオキシドが重合してなるポリアルキレンオキシド構造を含むものである。
ユニットDが、炭素数2のアルキレンオキシド(エチレンオキシド)が重合してなる構造を有するものである場合、アクチュエーター100の柔軟性、低温領域での作動性等を特に優れたものとすることができる。また、アクチュエーター100の応答速度を特に速いものとすることができる。
また、ユニットDが、炭素数3のアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)が重合してなる構造を有するものである場合、変形材料・アクチュエーター100の耐久性を特に優れたものとすることができる。
ユニットD(第1のユニットD、第2のユニットD)におけるアルキレンオキシドの重合数(原料となるアルキレンオキシドの分子数)は、4以上20以下であるのが好ましく、5以上10以下であるのがより好ましい。これにより、変形材料・アクチュエーター100の耐久性をさらに優れたものとしつつ、アクチュエーター100の柔軟性、低温領域での作動性等を特に優れたものとすることができ、アクチュエーター100の応答速度を特に速いものとすることができる。
上記のように、本発明において、刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、分子の立体構造が変わるものである。このものは、電圧の印加により容易に変形(変位)するものであり、その結果、変形材料全体を大きく変位させることができる。その結果、アクチュエーター100において、低電圧で、十分に大きな変位量を得ることができる。また、変形材料の応答速度を優れたものとすることができ、変形の再現性にも優れている。また、アクチュエーター100の軽量化を図ることができる。
また、酸化還元反応による刺激応答性化合物の立体構造の変化には、可逆性があり、収縮した状態から伸長(膨張)した状態への変位、伸長(膨張)した状態から収縮した状態への変位を、繰り返すことができ、再現性にも優れている。
以上のように刺激応答性化合物は、分子の立体構造の変化と、その可逆性や再現性を備えている。このため、刺激応答性化合物を含む変形材料も、同様の効果を備えている。その結果、変形材料全体は、変形の度合い(変形率)を大きなものとすることができるとともに、その変形に方向性を持たせることができる。そして、電圧の印加を止めることで、変形材料の形状を保持することができる。
また、刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、色調も変化するものである。これは、主に、酸化還元反応により、刺激応答性化合物の電子状態(特に、π電子の共役系)が変化することによるものであると考えられる。このように、刺激応答性化合物が酸化還元反応で色調も変化するものであることにより、刺激応答性化合物(変形材料)の色調によって、刺激応答性化合物の酸化還元状態を判断することができる。
特に、刺激応答性化合物が、酸化還元反応に伴い、分子の立体構造が変化するとともに、色調も変化するものであることにより、刺激応答性化合物を含む変形材料の色調によって、変形材料の変形量を知ることができ、さらには、現実には変形材料が変形していない場合であっても、変形材料が、変形のために内部にため込んだエネルギーを外部から認識することができる。
より具体的には、以下のような例が挙げられる。すなわち、例えば、ミクロ的には、酸化還元反応により刺激応答性化合物が変形しているにもかかわらず、変形材料に比較的大きな負荷がかかった状態では、変形材料全体としては、マクロ的な変形を生じることができなかったり、その変形量が酸化還元反応の進行の程度に比して小さくなったりすることがある。このような場合でも、負荷が解除または軽減された場合には、変形材料は、刺激応答性化合物の酸化還元反応の進行の程度に応じた変形をすることができる。言い換えると、変形材料は、現実に変形を生じていない場合では、その内部に変形のためのエネルギーをため込んだ状態(高エネルギー状態)を取ることがある。従来の変形材料では、このような変形を生じるためのエネルギーをため込んだ状態か否かを、外観上(顕微鏡等の光学装置を用いた測定等を含む)判断することが困難であったが、本発明では、変形を生じるためのエネルギーをため込んだ状態か否か、また、変形を生じるためのエネルギーをどの程度ため込んだ状態にあるのかを、外観上容易に判断することができる。
刺激応答性化合物の具体例としては、例えば、下記式(17)、(19)〜(21)で示すようなものが挙げられる。
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
式(17)で示される刺激応答性化合物は、酸化状態で443nmに吸収ピークを有する吸収スペクトルを示すものであり、式(19)で示される刺激応答性化合物は、酸化状態で457nmに吸収ピークを有する吸収スペクトルを示すものであり、式(20)で示される刺激応答性化合物は、酸化状態で447nmに吸収ピークを有する吸収スペクトルを示すものであり、式(21)で示される刺激応答性化合物は、酸化状態で420nmに吸収ピークを有する吸収スペクトルを示すものである。
変形材料中における刺激応答性化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような刺激応答性化合物とともに、後に詳述するような高分子材料および電子導線性物質を含むことによる本発明の効果が、より顕著に発揮される。
<電子導電性物質>
第1の変形材料層11を構成する変形材料は、上述したような刺激応答性化合物に加えて、変形材料中において電子を輸送する機能を有し、光透過性を有する電子導電性物質を含む。
本発明において、光透過性とは、入射した光(可視光)の少なくとも一部を透過する性質のことを言う。より具体的には、対象とする物質を厚さ0.1mmの膜としたときの、当該膜についての可視光の透過率が20%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのがさらに好ましい。このような条件を電子導電性物質が満足することにより、電子導電性物質の含有率が比較的高い場合であっても、変形材料全体としての透過率を優れたものとすることができ、変形材料において、上述したような刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化を好適に認識することが可能となる。なお、可視光の透過率の測定には、例えば、波長:633nmの光源を用いることができる。
電子導電性物質としては、例えば、In、ZnO、CdO、Ga、SnO等の金属酸化物や、これらに錫(Sn)、アンチモン(Sb)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)等をドープしたもの(例えば、ITO(Sn−doped In)、AZO(Al−doped ZnO)、GZO(Ga−doped ZnO)等)、これらから選択される2以上を含むもの(例えば、IZO(In−ZnO)、IGZO(In−Ga−ZnO)等)(以下、これらを総称して、「金属酸化物」という)、CuIn、各種金属ナノ粒子、各種金属ナノワイヤー、Si系やGa系等の半導体材料、ポリアニリン、ポリチオール、ポリピロール、PEDOT:PSS(3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォン酸)等の導電性高分子等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、電子導電性物質は、ITO、IZO、GZO、ZnO、CdO、AZO、および、IGZOよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、変形材料全体により高い電子導電性を付与することができる。また、これらの材料は、各種電子導電性物質の中でも、特に長期間にわたって安定的に優れた透明性を保持することができる。このため、より長期間にわたって、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
電子導電性物質は、変形材料中において、他の成分に溶解するものであってもよいが、変形材料中に不溶成分として存在しているものであるのが好ましく、特に、固体状で存在しているものが好ましい。
電子導電性物質の形状は、例えば、粒子状、平板状、繊維状(例えば、チューブ状)等の様々な形状をなすものであるのが挙げられるが、特に、粒子状をなすものであることが好ましい。なお、粒子の形状は、球体、非球体(例えば、鱗片状、紡錘状、回転楕円体)のいずれのものでもよい。これにより、第1の変形材料層11全体に均一に電子導電性物質を分散させることができ、比較的低い電圧で変形材料全体を均一に大きく変位させることができ、アクチュエーター100全体を均一に大きく変位させることができる。
電子導電性物質が粒子状の場合、その平均粒径は、5nm以上10μm以下であるのが好ましく、10nm以上1μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1の変形材料層11全体に、必要な濃度の電子導電性材料を付与することにより、確実に第1の変形材料層11中での電子の供給ができる。また、刺激応答性化合物への電子供給効率を特に優れたものとすることができ、アクチュエーター100は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となる。これに対して、平均粒径が前記下限値未満であると、電子導電性材料が凝集してしまい、凝集を防止するための処理が加えて必要となる。一方、平均粒径が前記上限値を超えると、電子導電性材料の含有率を高める必要が生じ、前述したような効果のさらなる向上がみられない。
なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径(体積平均粒径(D50))のことを指すものとする。測定装置としては、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分析計 マイクロトラックMT−3000(日機装社製)等が挙げられる。なお、後述の実施例における体積平均粒径(D50)は、前記のマイクロトラックMT−3000で測定した値である。
また、電子導電性物質は、緻密質、多孔質、中空等いずれの形態であってもよい。
前述したような電子導電性材料を含むことにより、比較的低い電圧で第1の変形材料層11全体を大きく変位させることができる。特に、第1の変形材料層11の厚さが比較的大きい場合であっても、第1の変形材料層11全体を効率よく変形させることができる。その結果、低電圧で、より大きな変位力、変位量を得ることができる。また、電源10から引き出した配線を、変形材料(第1の変形材料層11)の広い面積において接触させなくても、変形材料(第1の変形材料層11)をより大きく変位させることができる。その結果、アクチュエーター100は、より柔軟に変形し、円滑に作動をすることができる。また、変形材料の厚さが比較的大きいものであっても、その表面付近と、中心部付近とでの変形量の差が小さくなるため、変形量の制御が容易となる。また、電子導電性材料が光透過性を有するものであることにより、第1の変形材料層11において、上述したような刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化を好適に認識することが可能となる。
変形材料中における電子導電性物質の含有率は、10質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、30質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、変形材料中における電子の輸送を好適に行うことができ、アクチュエーター100は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となる。また、電子導電性物質の光透過性が比較的低いものであっても、変形材料において、上述したような刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化を好適に認識することが可能となる。これに対して、電子導電性物質の含有率が前記下限値未満であると、変形材料中における電子の移動を補助する機能が減少する。一方、電子導電性物質の含有率が前記上限値を超えると、前述したような効果のさらなる向上がみられない。
また、変形材料中の電子導電性物質の分散状態は、均一なものがよいが、変形材料中での電子導電性材料の濃度が、連続的、断続的(間欠的)に、変化するような部分があってもよい。変形材料中の電子導電性物質の分散状態が均一な場合、比較的低い電圧で変形材料全体を均一により大きく変位させることができる。特に、変形材料の厚みが比較的大きい場合であっても、効率よく変形させることができる。
<高分子材料>
第1の変形材料層11を構成する変形材料は、上述したような刺激応答性化合物、電子導電性物質に加えて、高分子材料を含む。これにより、刺激応答性化合物の酸化還元反応による変形に伴い、高分子材料も変位することとなり、結果として、酸化還元反応による変形の度合いが増幅され、第1の変形材料層11全体としての変形を、その度合いが大きいものとすることができる。その結果、アクチュエーター100全体としての変形を、その度合いが大きいものとすることができる。
高分子材料についての可視光の透過率(高分子材料を厚さ0.1mmの膜としたときの、当該膜についての可視光の透過率)は、5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましく、20%以上であるのがさらに好ましい。
変形材料を構成する高分子材料としては、各種樹脂材料を用いることができるが、第1の変形材料層11を構成する変形材料は、高分子材料として、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、変形材料全体を最適な硬さに調整できる。また、変形材料(アクチュエーター100)を、より柔軟に変形し、より円滑に作動するものとすることができる。また、ゲル状態の変形材料において、溶媒(液体成分)の保持力を特に優れたものとすることができるため、不本意な経時的な変形材料(アクチュエーター100)の体積減少をより効果的に防止することができる。また、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーは、特に透明性の高い材料であるため、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
特に、第1の変形材料層11を構成する変形材料が、高分子材料として、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体を含むものである場合、変形材料をより柔軟なものとすることができる。また、水分濃度の変動の影響を受けにくくすることができる。その結果、変形材料の不本意な吸湿等をより効果的に防止することができ、アクチュエーター100の変形量をより確実に調整することができる。
フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上1,000,000以下であるのが好ましく、100,000以上500,000以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体の化学構造は、下記式(9)で表すことができる。
Figure 0005958162
式(9)中、aは、0<a<1の条件を満たすものであればよいが、0.60以上0.98以下であるのが好ましく、0.75以上0.95以下であるのがより好ましい。これにより、変形材料をより変形に適した柔軟性を有するものとすることができる。
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料が、高分子材料として、ポリ(メタ)アクリル酸メチルを含むものである場合、変形材料が変形する際に割れ等が生じることをより確実に防止することができる。
ポリ(メタ)アクリル酸メチルの重量平均分子量(Mw)は、10,000以上100,000以下であるのが好ましく、10,000以上50,000以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸メチルの化学構造は、例えば、下記式(10)で表すことができる。
Figure 0005958162
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料が、高分子材料として、有機電解質オリゴマーを含むものである場合、当該有機電解質オリゴマーが後に述べる電解質の機能も兼ねることができる。
なお、有機電解質オリゴマーとしては、例えば、下記式(11)で表されるものを用いることができる。
Figure 0005958162
(式(11)中、Xは、ハロゲン、(CFSO)N、PF、BF、SCN、または、CFSO、nは、3以上30以下の数である。)
変形材料が、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、変形材料中におけるこれらの化合物の含有率の和は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物や電子導電性物質の機能を十分に発揮させつつ、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料は、高分子材料として、液晶ポリマーを含むものであってもよい。これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、アクチュエーター100全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。また、液晶ポリマーは、一般に、特に透明性の高い材料であるため、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
特に、液晶ポリマーが、上述したような刺激応答性化合物の立体構造による、分子の変形に有利なように、補助する機能を有するものが好ましい。特に、第1の変形材料層11を構成する変形材料が刺激応答性化合物として液晶性を有する官能基を備えたとものを含む場合において、高分子材料として液晶ポリマーを含むことにより、刺激応答性化合物の酸化還元反応による、液晶性を有する官能基(ユニットC)の配向の変化に伴い、液晶ポリマーの配向も、上述したような刺激応答性化合物の立体構造による、分子の変形に有利なように変化することとなり、変形材料(アクチュエーター100)全体としての変形を、その度合いがより大きく、かつ、応答速度がより速いものとすることができる。すなわち、変形材料(アクチュエーター100)は、特に優れた高速応答性を有し、異方的な伸縮の程度がより大きいものとなる。
液晶ポリマーは、液晶性を有する官能基を備えたモノマーを重合させることにより得ることができる。
液晶性を有する官能基としては、複数の環構造を有する基、例えば、複数の芳香環(例えば、フェニル基)をエステル基で連結したもの、芳香環(例えば、ベンゼン環)若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。
モノマーとしては、例えば、液晶性を有する官能基とアクリル基とを備えたモノマー、液晶性を有する官能基と(メタ)アクリル基とを備えたモノマー等を挙げることができる。
このようなモノマーとしては、例えば、下記式(6)または(7)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0005958162
(式(6)、(7)中、nは6以上の整数、Rは炭素数が1以上のアルキル基を示す。)
このようなモノマーを用いることにより、変形材料は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。また、液晶ポリマーの透明性を特に高いものとすることができ、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
変形材料が高分子材料として液晶ポリマーを含むものである場合、当該液晶ポリマーは、架橋剤により架橋されたものであるのが好ましい。これにより、変形材料を好適に固体化(ゲル化)することができる。すなわち、架橋構造を備えた液晶ポリマーを含むことにより、その分子内に刺激応答性化合物を取り込み、変形材料を固体化(ゲル化)することができる。その結果、変形材料全体としての形状の安定性、取り扱い性が特に優れたものとなる。また、これにより、変形材料(アクチュエーター100)は、異方的な伸縮をより好適に行うことができる。また、架橋構造を有することにより、変形材料はより好適な弾性を有するものとなる。
架橋剤としては、上記モノマーで形成されるポリマーを架橋し得るものであれば、特に限定されず、いかなるものを用いてもよいが、下記式(8)で示す架橋剤を用いることにより、液晶ポリマーの分子中に刺激応答性化合物をより容易に取り込むことができ、より確実に変形材料を固体化(ゲル化)することができる。
Figure 0005958162
(式(8)中、mは4以上の整数を示す。)
架橋剤としては、具体的には、例えば、ビスアクリロイルオキシヘキサン、N,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
液晶ポリマーは、液晶性官能基を有するモノマー100molに対して、架橋剤を1mol以上10mol以下添加して架橋したものであるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料(アクチュエーター100)全体の変位を効率よく増幅することができる。
また、変形材料が刺激応答性化合物として、液晶性を有する官能基を備えるものである場合、前記液晶ポリマーは、その分子内に、刺激応答性化合物の液晶性を有する官能基と同じ官能基を有しているものであるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物(変形材料)の応答速度をより効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなうアクチュエーター100全体の変位をさらに好適に増幅することができ、アクチュエーター100全体としての変位量をさらに大きいものとすることができる。また、アクチュエーター100は、より低い電圧での変形が可能となる。また、刺激応答性化合物と液晶ポリマーとの親和性(相溶性)を特に優れたものとすることができるため、変形材料の透明性を特に優れたものとすることができる。その結果、上述した刺激応答性化合物の色調の変化(変色)をより好適に判断することができる。
液晶ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000以上100,000以下であるのが好ましく、10,000以上50,000以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
上述したような液晶ポリマーを用いることにより、変形材料の応答速度を効果的に向上させることができる。また、刺激応答性化合物の伸縮にともなう変形材料全体の変位をより好適に増幅することができ、変形材料全体としての変位量を特に大きいものとすることができる。
変形材料中における液晶ポリマーの含有率は、3質量%以上40質量%以下であるのが好ましい。これにより、上述したような刺激応答性化合物や電子導電性物質の機能を十分に発揮させつつ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料が、高分子材料として、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上とともに、液晶ポリマーを含むものである場合、前述したような効果が得られるとともに、これらが相乗的に作用し合い、変形材料の強度をさらに優れたものとすることができるとともに、変位量をより大きいものとすることができる。
変形材料中における高分子材料の含有率は、5質量%以上80質量%以下であるのが好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
<電解質>
第1の変形材料層11を構成する変形材料は、電解質を含むものである。
電解質としては、各種酸、塩基、塩を用いることができるが、塩を用いるのが好ましい。これにより、変形材料の耐久性を特に優れたものとすることができる。電解質の塩としては、例えば、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム等の無機塩;テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(BMPTFSI)、メチル−トリオクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(MTOATFSI)、トリエチルスルフォニウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TESTFSI)、1−エチルー3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート(EMICFSO)等の有機塩等を用いることができる。BMPTFSI、MTOATFSI、TESTFSI、および、EMICFSOの構造式は、それぞれ、下記式(12)、下記式(13)、下記式(14)、および、下記式(15)で表される。
Figure 0005958162
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変形材料は、中でも、電解質として、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、および、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物(変形材料、アクチュエーター100)の応答速度をさらに効果的に向上させることができるとともに、刺激応答性化合物の伸縮にともなうアクチュエーター100全体の変位をさらに増幅することができる。
前述したような電解質を含むことにより、電源10による安定的な通電が可能となる。また、刺激応答性化合物への電荷の受け渡しをより速やかに進行させることができ、第1の変形材料層11の高速応答性を特に優れたものとすることができる。また、第1の変形材料層11全体(特に、第1の変形材料層11の厚さ方向全体)にわたって、第1の変形材料層11を構成する刺激応答性化合物を効率よく伸縮させることができる。その結果、アクチュエーター100全体としての伸縮率を特に大きいものとすることができる。また、電解質は、一般に光透過性(透明性)の高い材料であるため、変形材料において、上述したような刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化の認識に悪影響が及ぶことが確実に防止される。
電解質についての可視光の透過率(電解質を厚さ0.1mmの溶媒についての可視光の透過率)は、80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
変形材料中における電解質の含有率は、3質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
<溶媒>
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料は、溶媒を含むものであってもよい。溶媒が上記高分子材料の分子内に取り込まれると、変形材料が好適にゲル化するため、容易に固形化することができるとともに、変形材料の取り扱い性を向上させることができ、さらには、第1の変形材料層11を最適な硬さに調整でき、アクチュエーター100の柔軟性を特に優れたものとすることができる。また、単体で固体状をなす電解質を含む場合において、当該電解質を変形材料中において溶解することができ、好適に電離した状態にすることができる。また、溶媒は、一般に光透過性(透明性)の高い材料であるため、変形材料において、上述したような刺激応答性化合物の酸化還元反応による色調の変化の認識に悪影響が及ぶことが確実に防止される。
溶媒についての可視光の透過率(厚さ0.1mmの溶媒についての可視光の透過率)は、80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトン、プロピレンカーボネイト、メチルペンタノン、エチルペンタノン、アセトニトリル等の有機溶媒を挙げることができる。
変形材料中における溶媒の含有率は、20質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、30質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。これにより、変形材料の取り扱い性をより高いものとすることができる。
また、第1の変形材料層11を構成する変形材料は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
また、本発明にかかる変形材料は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
第1の変形材料層11の導電率は、0.1S/cm以上であるのが好ましく、1S/cm以上であるのがより好ましい。これにより、アクチュエーター100の応答速度を特に優れたものとし、また、アクチュエーター100の小型化を図ることができる。
第1の変形材料層11の厚さは、特に限定されないが、5mm以下であるのが好ましい。これにより、駆動電圧を比較的低いものとしつつ、より大きな変位力を得ることができる。
また、第1の変形材料層11に電子導電性物質を含む場合、0.01mm以上10mm以下であるのが好ましく、0.03mm以上1mm以下であるのがより好ましい。これにより、第1の変形材料層11の厚さが比較的大きい場合であっても、アクチュエーターをより好適に駆動させることができる。
≪第2の変形材料層≫
次に、第2の変形材料層について説明する。
第2の変形材料層12は、前述した第1の変形材料層11と同様に、刺激応答性化合物と、高分子材料と、電子導電性物質と、電解質とを含む材料で構成されており、さらに、溶媒等が含まれていてもよい。
第2の変形材料層12の構成材料としては、第1の変形材料層11で述べた材料を用いることができる。なお、第2の変形材料層12は、第1の変形材料層11と、同一または同種の材料で構成されたものであってもよいし、異なる材料で構成されたものであってもよい。例えば、第2の変形材料層12を構成する刺激応答性化合物(第2の刺激応答性化合物)として、第1の変形材料層11を構成する刺激応答性化合物(第1の刺激応答性化合物)とは、光の吸収スペクトルの異なるもの(吸収ピーク波長の異なるもの)を用いてもよい。これにより、第1の変形材料層11、第2の変形材料層12のうちのどちら側に、変形(膨張)を生じているのか、変形(膨張)のためのエネルギーがたまっているのか等を、好適に判断することができる。
第2の変形材料層12は、導電率や厚さ等の条件についても、前記第1の変形材料層11で述べたのと同様の条件を満足するのが好ましい。これにより、第1の変形材料層11で述べたのと同様の効果が得られる。なお、アクチュエーター100において、第2の変形材料層12は、第1の変形材料層11と、同一の条件であってもよいし、異なる条件であってもよい。
≪中間層≫
次に、中間層について説明する。
中間層13は、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間に位置し、セパレーターとして機能するものである。中間層13は、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12中に含まれる電解質によるイオン(前記電解質が電離したもの)を透過する機能を有する。また、中間層13は電子を移動させない機能を有し、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12の間の中間層13を通じての電子の移動を妨げる。このため第1の変形材料層11及び第2の変形材料層12への電子の出入りに関して、外部の電極や配線を通じて可能となるため、アクチュエーターを変形させたり変形の向きを制御したりすることができる。
中間層13は、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12に追従して変形するような柔軟性を有するものが好ましい。これにより、アクチュエーター100全体が、柔軟に変形し、円滑に作動をするものとすることができる。
また、中間層13は、例えば、固体状、液体状等、その形態はいかなるものであってもよいが、ゲル状をなすものであるのが好ましい。これにより、アクチュエーター100全体は、より柔軟に変形し、円滑に作動をすることができる。
また、中間層13は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、ゲル状の中間層13に含まれている溶媒(液体成分)の保持力を優れたものとすることができる。その結果、中間層13は、経時的安定性を向上させることができる。さらに、不本意な経時的なアクチュエーター100の体積減少をより効果的に防止することができる。
中間層13が、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、中間層13中におけるこれらの化合物の含有率の和は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましい。これにより、中間層13は、適度な柔軟性を得ることができ、アクチュエーター100の信頼性、耐久性が向上する。
また、中間層13は、電解質を含むものであるのが好ましい。これにより、電子の移動が円滑となり、その結果、中間層13を介して第1の変形材料層11および第2の変形材料層12の間での電解質によるイオンの移動をより円滑に移動させることができる。さらに、アクチュエーター100の高速応答性を特に優れたものとすることができる。
電解質としては、前述した第1の変形材料層11の構成成分として例示したものを用いることができる。これにより、変形材料の耐久性を特に優れたものとすることができる。
また、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12の構成成分としての電解質と、中間層13の構成成分としての電解質とは異なるものであってもよいが、同一または同種の成分を含むものであるのが好ましい。これにより、中間層13と、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12との密着性を特に優れたものとすることができる。また、中間層13を介して、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間でイオンの移動をより円滑に行うことができる。その結果、アクチュエーター100の信頼性、耐久性が向上する。
中間層13中における電解質の含有率は、3質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。これにより、中間層13は、適度な柔軟性と、導電性との均衡を保つことができる。
また、中間層13は、溶媒を含むものが好ましい。これにより、中間層13を最適な硬さに調整とすることができ、アクチュエーター100全体としての柔軟性を特に優れたものとすることができる。また、単体で固体状をなす電解質を含む場合において、当該電解質を中間層13中において好適に溶解・電離した状態とすることができる。
溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトン、プロピレンカーボネイト、メチルペンタノン、エチルペンタノン、アセトニトリル等の有機溶媒を挙げることができる。これにより、単体で固体状をなす電解質を含む場合において、当該電解質を中間層13中において好適に溶解・電離した状態とすることができる。
また、中間層13が溶媒を含むものである場合、当該溶媒は、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12の構成成分としての溶媒とは異なるものであってもよいし、同一または同種のものであってもよい。これにより、中間層13と、隣接する第1の変形材料層11および第2の変形材料層12との間の界面の相溶性がよくなる。結果として、これらの層の密着性が向上し、アクチュエーター100の耐久性が向上する。
中間層13中における溶媒の含有率は、20質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、30質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。これにより、アクチュエーター100は、必要かつ十分な柔軟性や強度が得られる。
また、中間層13は、陰イオンを交換する機能を有するイオン交換体を含む材料で構成されたものであってもよい。イオン交換体は、陰イオンを交換する機能を有する陰イオン交換基を含むものである。なお、イオンとは、正または負に帯電した原子、または原子団を言い、陰イオンとはそのイオンのうち負に帯電した原子、または原子団を言う。
中間層13が、イオン交換体を含む材料で構成されたものであることにより、中間層13自体をも変形することとすることができ、アクチュエーター100全体としての変形量をより大きいものとすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。図7(a)のように、一度も通電がなされていない状態のアクチュエーター100を構成する中間層13では、陰イオンおよび溶媒は、中間層13中に均一な状態で存在している。この中間層13に通電がなされると、図7(b)に示すように中間層13に含まれる陰イオン12aが正極側に移動し、かつ、この陰イオン12aに伴われて溶媒分子12bが中間層13内で移動する。このため、中間層13の正極側と負極側との間に溶媒量の差が生じる。その結果、溶媒分子12bを含む率の高い正極側が膨潤し、溶媒分子12bを含む率の低い負極側が収縮することによって、中間層13が正極側を凸に湾曲変形する。そして、電圧の印加を止めても、中間層13の形状が保持される。また、図7(c)に示すように、中間層13は、正極と負極との接続を変えることで、湾曲する方向を変えることができる。つまり、図7(b)、図7(c)に示すように、中間層13の動作には可逆性がある。また、中間層13に印加する電流の特性を、連続的または断続的に反転させることにより、湾曲方向を交互に繰り返し変えることができ、反復継続させることができる。また、その再現性にも優れている。さらに、アクチュエーター100に通電した場合、中間層13の変形と、前述した第1の変形材料層11および第2の変形材料層12の変形との方向が同じ方向となるので、両作用が相まってアクチュエーター100全体の変位量をより大きなものとすることができる。
イオン交換体の陰イオン交換基の対イオン(陰イオン)が、他の陰イオン(例えば、水酸化物イオン等)に置換されることにより、対イオン(陰イオン)の移動が起こる。その結果、中間層13に含まれる陰イオンが正極側に移動し、前述したような原理により中間層13自体は変形することができる。
このような機能を有するイオン交換体としては、例えば、陰イオン交換樹脂、両イオン(陰イオンと陽イオン)交換樹脂等のイオン交換樹脂、脂肪酸アミン等の有機イオン交換体や、水酸化ジルコニウム、含水酸化ビスマス、ハイドロタルサイド等の無機イオン交換体等が挙げられるが、特に、陰イオン交換樹脂、両イオン交換樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましく、陰イオン交換樹脂用いることがより好ましい。これにより、中間層13中での陰イオンを効率よく移動させることができるとともに、中間層13を介して第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間でイオンの移動をより円滑に行うことができる。また、アクチュエーター100を、低電圧であっても応答速度を特に優れたものとすることができる。
このような機能を有するイオン交換体としての、陰イオン交換樹脂、両イオン(陰イオンと陽イオン)交換樹脂としては、例えば、3,4−アイオネン、8,8−アイオネン等の脂肪族アイオネン、ポリ(エチレンイミン塩酸塩)、ポリ(塩化−ビニルピリジニウム)、ポリ(塩化ビニルトリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化アリルトリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化オキシエチル−1−メチレントリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化−N−メチルビニルピリジニウム)、ポリ(塩化オキシエチル−1−メチレンピリジニウム)、ポリ(塩化−2−ヒドロキシ−3−メタクロイロキシプロピルトリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化−N−アクリルアミドプロピル−3−トリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化−N,N−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)ポリ(塩化−2−アクリロキシエチルジメチルスルホニウム)、ポリ(塩化グリシジルジメチルスルホニウム)、ポリ(塩化グリシジルトリブチルホスホニウム)、ポリスルホンなどを主骨格とする各種のイオン交換樹脂が挙げられる。
また、中間層13が、陰イオン交換樹脂または両イオン交換樹脂を含む場合、炭素含む樹脂材料を骨格とし、陰イオン交換基を導入したものであってよい。
中間層13が、陰イオン交換樹脂または両イオン交換樹脂を含む場合、骨格となる樹脂材料としては、各種樹脂材料を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の等の塩化ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフロオロエチレン−ペルフロオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、パーフルオロスルホン酸系樹脂等のフッ素系樹脂や、上記の樹脂材料を構成する水素原子の少なくとも一部がフッ素、塩素、臭素、酸素、窒素、珪素、硫黄、ホウ素、リン等の他の原子で置換したもの、または、これらの共重合体、ポリマーアロイ、ブレンド体等が挙げられる。特に、スチレン系樹脂を用いるのが好ましく、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を用いるのがより好ましい。これにより、中間層13を柔軟なものとすることができ、アクチュエーター100全体を柔軟なものとすることができる。
また、陰イオン交換基としては、アミノ基、置換アミノ基、第4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等の窒素系官能基や、第4級ホスホニウム基等のリン系官能基等の陽イオン基が挙げられ、特に、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基の少なくとも一方を用いることが好ましく、第4級アンモニウム基がより好ましい。これにより、中間層13に含まれる陰イオンが正極側に確実に移動することで、中間層13自体の変形をより確実に行うことができる。
また、第4級アンモニウム基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリオクチルアンモニウム基、ジエチルメチルアンモニウム基、ジプロピルメチルアンモニウム基、ジブチルメチルアンモニウム基、ジメチルエチルアンモニウム基、メチルジ(ヒドロキシエチル)アンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、中間層13中での陰イオンを効率よく移動させることができるとともに、中間層13を介して第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間でイオンの移動をより円滑に行うことができる。その結果、アクチュエーター100の応答性がより向上する。
また、陰イオン交換樹脂や、両イオン交換樹脂を用いる場合、対イオン(陰イオン)としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等、過塩素酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、六フッ化リン酸(PF )、テトラフルオロほう素イオン(BF )、トリフルオロメチルスルホニルアミドイオン(TFSI)等が挙げられる。特に、塩化物イオンを含む電解質を用いるのが好ましく、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化セシウムを用いることがより好ましい。これにより、中間層13の応答速度をより速くできるとともに、中間層13の変位をさらに向上させることができる。
なお、中間層13中において、これらの対イオンは、全部が同じものであってもよいし、または一部が異なって置換されていてもよい。
中間層13を構成するイオン交換体の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状、平板状、繊維状、棒状、円盤形状等の様々な形状をなすものであるのが挙げられるが、特に、粒子状をなすものであることが好ましい。これにより、イオン交換体を、図1、図2、図7に示すようなシート状に成形加工しやすくなる。また、イオン交換体として粒子状のものを用いる場合、その粒子の形状は、球体、非球体(例えば、鱗片状、紡錘状、回転楕円体)のいずれのものを用いることができる。また、粒子の形態も特に限定されず、緻密質、多孔質、中空等いずれの形態であってもよい。
また、シート状のイオン交換体(イオン交換樹脂膜)を用いることにより、中間層13の厚さを均一にすることができ、中間層13の厚さを比較的薄く設定した場合には、アクチュエーター100を軽量なものとすることができる。その結果、低電力であっても、中間層13の駆動速度および応答速度をより速くすることができる。
また、シート状の陰イオン交換樹脂としては、具体的には、株式会社旭化成工業製アシプレックスA172、旭硝子(株)製セレミオン ASV、および、(株)トクヤマ製ネオセプタ ACS等が挙げられる。
中間層13中におけるイオン交換体の含有率は、30質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、陰イオンの移動を効率よく行うことができ、アクチュエーター100の変形量を大きなものとすることできる。これに対して、イオン交換体の陰イオン交換容量が前記下限値未満であると、中間層13中におけるイオンの移動が減少し、中間層13自体の十分な変形の向上がみられない。一方、イオン交換体の陰イオン交換容量が前記上限値を超えると、前述したような効果のさらなる向上がみられない。
イオン交換体の陰イオン交換容量は、0.5meq/g以上3.0meq/g以下であることが好ましく、0.8meq/g以上2.2meq/g以下であることが特に好ましい。これにより、必要な濃度のイオン交換体を付与することにより、中間層13中での陰イオンの移動を向上させることができる。また、中間層13を介して第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間でイオンの移動をより円滑に行うことができる。これに対して、イオン交換体の陰イオン交換容量が前記下限値未満であると、中間層13中における陰イオンの移動が減少するため、中間層13中のイオン交換体の含有率を高める必要がある。一方、イオン交換体の陰イオン交換容量が前記上限値を超えると、アクチュエーター100を劣化させるおそれがある。
また、中間層13は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、着色剤等が挙げられる。中でも、中間層13は、着色剤を含むものであってもよい。これにより、中間層13に遮光性(隠蔽性)を持たせることができ、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12とのうち、どちらの色調が変化しているのかをより容易に認識することができる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、グロスホワイト等が挙げられるが、白色を呈するもの(例えば、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、グロスホワイト等)を用いるのが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
中間層13の厚さは、特に限定されないが、前述したような条件の中間層13の場合、0.01mm以上10mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上1mm以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。また、中間層13としての機能を確実に発揮させつつ、アクチュエーター100をより薄型のものとすることができる。
また、中間層13は、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間に設けられ、これらと接触または密着している。
図1、図2では、中間層13と、第1の変形材料層11との界面は明確に示されているが、これらの明確な界面が存在していなくてもよく、界面付近においては、第1の変形材料層11と中間層13との材料(成分)が混在した状態で存在していてもよい。すなわち、第1の変形材料層11と中間層13との界面付近で、これらの一部の含有成分が、厚さ方向に順次変化するもの(いわゆる、傾斜材料)であってもよい。また、これらの界面には、一方の層の材料が他方の層の材料に入り込むような凹凸が設けられていてもよい。これにより、第1の変形材料層と中間層13との間の密着性を特に優れたものとすることができる。また、第1の変形材料層11、中間層13との間でのイオンの移動が円滑となる。なお、これらは、第2の変形材料層12と中間層13との界面についても同様である。
アクチュエーター100の形状は、特に限定されず、繊維状、シート状、板状、棒状等の様々なものが挙げられ、変形材料の厚さが比較的大きいものであってもよい。
また、第1の変形材料層11、第2の変形材料層12、中間層13は、各々、均一な厚さであってもよいし、部分的に厚さが異なっていてもよい。
本実施形態のように、中間層13を備えた構造では、中間層13を介しての、第1の変形材料層11と第2の変形材料層12との間でイオンの移動が可能となり、よって、円滑かつ安定的な通電が可能となる。また、中間層13と、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12との密着性が向上する。
特に、前述したような中間層13が存在することにより、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12の厚さ、アクチュエーター100の厚さが比較的大きい場合であっても、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12を構成する変形材料全体を効率よく変形させることができる。また、低電圧で、十分に大きな変位量を得ることができ、また、変形材料の応答速度を優れたものとすることができる。
また、3層構造としたこと、すなわち、中間層13を介して第1の変形材料層11および第2の変形材料層12を設けたことで、単なる変形材料層の一方向の伸長・収縮ではなく、湾曲・屈曲の反転を行うことができる。
次に、図1、図2に基づいて、アクチュエーター100(駆動装置200)の作動について説明する。
第1の変形材料層11および第2の変形材料層12を構成する刺激応答性化合物が酸化されることにより伸長(膨張)し、還元されることにより収縮するものである場合(例えば、前述したような、図3〜図6に示すような構造を有するものである場合)、アクチュエーター100(駆動装置200)全体としては、以下のような挙動を示す。
すなわち、図1に示す構成では、スイッチ14をオンすると、第1の変形材料層11が、電源10の正極に接続されており、第1の変形材料層11と中間層13と第2の変形材料層12との間に通電がなされる。第1の変形材料層11を構成する刺激応答性化合物は、酸化反応により、分子鎖が伸長(膨張)し、その結果、第1の変形材料層11全体は、伸長(膨張)する。一方、第2の変形材料層12を構成する刺激応答性化合物は、還元反応により、分子鎖が収縮し、その結果、第2の変形材料層12全体は、収縮する。このようなことから、アクチュエーター100全体は、第1の変形材料層11側(図中の上側)に、凸となるように湾曲する。
図2に示す構成では、スイッチ14をオンにすると、図1とは極性が反転しており、第1の変形材料層11が、電源10の負極に接続されており、第1の変形材料層11と中間層13と第2の変形材料層12との間に通電がなされる。第1の変形材料層11を構成する刺激応答性化合物は、還元反応により、分子鎖が収縮し、その結果、第1の変形材料層11全体は、収縮する。一方、第2の変形材料層12を構成する刺激応答性化合物は、酸化反応により、分子鎖が伸長(膨張)し、その結果、第2の変形材料層12全体は、伸長(膨張)する。このようなことから、アクチュエーター100全体は、第2の変形材料層12側(図中の左側)に、凸となるように湾曲する。
このように、アクチュエーター100は、正極と負極との接続を変えることで、湾曲する方向を変えることができる。このような動作は可逆性がある。また、アクチュエーター100に印加する電流の特性を、連続的または断続的に反転させることにより、湾曲方向を交互に繰り返し変えることができ、反復継続させることができる。また、その再現性にも優れている。
このように、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12と中間層13とを備えているアクチュエーター100は、一方の変形材料層では分子鎖が伸長(膨張)する状態となるとともに、他方の変形材料層では収縮する状態となる。このように、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12がそれぞれ反対の状態をとることで、アクチュエーター100の変形率を大きなものとすることができる。しかも、第1の変形材料層11および第2の変形材料層12は、前述したような材料を用いているため、それぞれの変形材料の伸縮率を大きなものとすることができる。したがって、これらの相乗効果により、アクチュエーター100の変形率をさらに大きなものとすることができる。
また、上記のような酸化還元反応による刺激応答性化合物の変形に伴い、刺激応答性化合物の色調が変化し、これにより、変形材料層全体としての色調も変化する。
アクチュエーター100に印加する電圧値は、例えば、0.1V以上10V以下であることが好ましく、1V以上5V以下であるのがより好ましい。これにより、必要かつ十分なアクチュエーター100の変形量が得られる。
また、アクチュエーター100への通電は、前述したような直流電流を用いたものだけに限らず、交番電流等を用いたものも可能である。ここで、交番電流とは、例えば、正弦波交流や、パルス状の矩形電流等の、時間とともに周期的に大きさや向きが変化する電流を言う。
交番電流の周波数は、特に限定されず、アクチュエーター100の応答性を考慮して決定すればよく、例えば、0.01Hz以上100Hz以下とすることができる。これにより、アクチュエーター100の応答性に適合した通電が可能となり、円滑な連続的な反転運動が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、刺激応答性化合物が、ユニットAと、第1のユニットBと第2のユニットBと第1のユニットCと第2のユニットCとを含むものである場合について中心的に説明したが、本発明において刺激応答性化合物は、酸化還元反応により、分子構造が変わるものであればよく、上記の各ユニットを全て備えたものに限定されない。
また、前述した実施形態では、電源10から引き出された配線が、変形材料層(第1の変形材料層、第2の変形材料層)に接触するものとして説明したが、例えば、変形材料層の中間層に対向する面とは反対側の面に導電膜(例えば、金属膜等)を設けてもよい。これにより、アクチュエーターの応答速度の更なる向上を図ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
[1]刺激応答性化合物の製造
[1.1]ユニットAの合成
ブロモチオフェンを原料として亜鉛、ニッケルの触媒を用いた2量化、臭素化を行い、DMFによるアルデヒド基の導入(ホルミル化)を行った。
次に、エチレングリコールによるアルデヒド基のアセタール保護を行い、臭素をさらにホルミル基に変換した。続いてNaBFによる還元反応でビチオフェン骨格に水酸基を2つ持つジオールを得た。
[1.2]ユニットCおよびユニットDの合成
まず、2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた2,3−ジフルオロボロン酸に4−アルコキシ1−ブロモベンゼンをパラジウム触媒存在下反応させることにより、4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロベンゼンを得た。
次に、得られた4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロボロン酸に4−ブロモフェノールをパラジウム存在下で反応させ、1−ヒドロキシ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ベンゼンを得た。
次に、得られた1−ヒドロキシ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ベンゼンと末端が臭素のオリゴエチレングリコールと反応させ、末端にオリゴエチレン鎖を持った液晶性化合物を得た。さらに塩化パラトルエンスルホニルと反応させることにより、末端にパラトルエンスルホニル基を持った液晶性化合物を得た。
[1.3]刺激応答性化合物の製造
上記[1.1]で合成したジオールと上記[1.2]で合成した液晶性化合物とを水素化ナトリウム存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)中で反応させ、液晶性分子を導入したビチオフェン誘導体を得た。
その後、上記ビチオフェン誘導体を酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、ユニットA、ユニットB(第1のユニットB、第2のユニットB)、ユニットC(第1のユニットC、第2のユニットC)、ユニットD(第1のユニットD、第2のユニットD)を有する下記式(17)で表される刺激応答性化合物(ビチオフェン誘導体)を得た。
なお、式(17)中、nは4である。
Figure 0005958162
[2]高分子材料の調製
[2.1]モノマーの合成
1−(8−ヒドロキシオクチル−1−オキシ)−4−[2,3−ジフルオロ−4−(4−ブトキシフェニル)フェニル]ベンゼン(下記式(18))とトリエチルアミンをTHFに溶解し、0℃に冷却し、アクリロイルクロリドを滴下した。4時間撹拌後、水を加え、ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過して濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製し、目的化合物を得た。
なお、式(18)中、RはCである。
Figure 0005958162
以上のようにして、上記式(6)(n=8、R=C)で表されるモノマーを得た。
[2.2]液晶ポリマーの製造
上記モノマー:100質量部と、架橋剤としてのビスアクリロイルオキシヘキサン:10質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル:1質量部とをシュレンク管に入れ、トルエンに溶解させ、凍結脱気を3回行い、溶媒中の溶存酸素を除去する。窒素雰囲気下で95℃で26時間撹拌した。溶液を冷却後、溶媒を留去したあと、最少量のテトラヒドロフランに溶解させ、アセトン中に滴下し、析出した沈殿をろ過して真空乾燥させることにより、液晶ポリマー(重量平均分子量:30,000)を得た。
[2.3]液晶ポリマーとフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体との混合
その後、上記のようにして得られた液晶ポリマー:1重量部と、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(重量平均分子量:150,000):2重量部とを混合した。
[3]変形材料の製造
上記のようにして得られた刺激応答性化合物と、液晶性ポリマーおよびフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体と、平均粒径:100nmのITO粒子と、溶媒としてのプロピレンカーボネイトと、電解質としてのTBAPF(テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)とを混合した。その後、この混合物を、所定の形状の型を用いて成形し、ゲル状の変形材料を得た。
[4]中間層形成用材料の製造
他方、変形材料の調製に用いたのと同じフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(重量平均分子量:150,000)を用意し、これを溶媒としてのプロピレンカーボネイト、および、電解質としてのTBAPF(テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)と混合した。その後、この混合物を、所定の形状の型を用いて成形し、ゲル状の材料(中間層形成用材料)を得た。
[5]アクチュエーターの製造
上記のようにして得られた変形材料、中間層形成用材料を用いて、図1、図2に示すようなアクチュエーター、駆動装置を製造した。
上記のようにして得られた中間層形成用材料を、長さ:2.2cm×幅:0.4cm×厚さ:0.02mmの大きさに切り取り、この両面に、それぞれ、上記のようにして得られた変形材料を、長さ:2.2cm×幅:0.2cm×厚さ:0.05mmの大きさに切り取ったものを接合することにより、図1、図2に示すようなアクチュエーターを製造した。
(実施例2〜9)
第1の変形材料層、第2の変形材料層および中間層の構成を表1〜表4に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてアクチュエーターを製造した。
(実施例10)
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に4級アンモニウム基を導入してなる陰イオン交換樹脂としての株式会社旭化成製アシプレックスA172(陰イオン交換容量:0.18〜0.19meq/g、長さ:2.2cm×幅:0.4cm×厚さ:0.14mm)を用意し、この両面に、それぞれ、前記実施例1で説明したようにして得られた変形材料を、2.2cm×幅:0.2cm×厚さ:0.05mmの大きさに切り取ったものを接合することにより、第1の変形材料層と第2の変形材料層を形成した。
その後、電解質としてのLiClを極性溶媒としてのイオン交換水に溶解し、0.1MのLiCl水溶液を得た。このLiCl水溶液中に24時間浸漬し、陰イオン交換樹脂の対イオン(陰イオン)をClイオンに置換し、図1、図2に示すようなアクチュエーターを製造した。
(実施例11〜14)
第1の変形材料層、第2の変形材料層および中間層の構成を表1、表3、表4に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にしてアクチュエーターを製造した。
(比較例1)
中間層を介することなく、第1の変形材料層と、第2の変形材料層とを接合した以外は前記実施例1と同様にして、アクチュエーターを製造した。
表1、表2に、前記各実施例および比較例のアクチュエーターを構成する変形材料層(第1の変形材料層、第2の変形材料層)の組成、導電率を示し、表3に、前記各実施例および比較例のアクチュエーターを構成する中間層の組成を示し、表4に、前記各実施例および比較例のアクチュエーターを構成する各部の厚さを示した。表中、上記式(17)で表される化合物(刺激応答性化合物)を「A1」、下記式(19)で表される化合物(刺激応答性化合物)を「A2」、下記式(20)で表される化合物(刺激応答性化合物)を「A3」、下記式(21)で表される化合物(刺激応答性化合物)を「A4」、上記式(6)で表されるモノマーを「M1」、上記式(7)で表されるモノマーを「M2」、架橋剤としてのビスアクリロイルオキシヘキサンを「B1」、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(重量平均分子量:150,000)を「PVdF」、イオン交換体を構成する樹脂材料としてのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(陰イオン交換基としての4級アンモニウム基を有するもの)を「J1」、電子導電性物質としての平均粒径:100nmのITO粒子を「C1」、電子導電性物質としての平均粒径:20nmのITO粒子を「C2」、電子導電性物質としての平均粒径:1000nmのITO粒子を「C3」、電子導電性物質としての平均粒径:100nmのZnO粒子を「C4」、電子導電性物質としての平均粒径:100nmのAZO粒子を「C5」、溶媒としてのプロピレンカーボネイトを「S1」、電解質としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF)を「E1」、着色剤としての酸化チタンを「TiO」で示した。また、表中の可視光の透過率の欄には、電子導電性物質を厚さ0.1mmの膜としたときの、当該膜についての可視光の透過率(波長:633nm)を示した。また、前記各実施例および比較例のアクチュエーターを構成する変形材料層は、いずれもゲル状をなすものであり、前記各実施例のアクチュエーターを構成する中間層は、いずれもゲル状をなすものであった。また、前記各実施例および比較例の変形材料を構成する高分子材料、溶媒および電解質についての可視光(波長:633nm)の透過率(厚さ0.1mmでの可視光の透過率)は、いずれも、40%以上であった。
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
Figure 0005958162
[6]アクチュエーターの評価
[6.1]変形量
25℃の環境下で、図1に示す状態から図2に示すように通電方向を逆転し、レーザー変位計を用いて、アクチュエーターと外部電極との接点から10mmの箇所(図1、図2中のXで示す箇所)の湾曲方向(図1、図2中の上下方向)の変位を観測し、以下の基準に従い評価した。なお、印加電圧は3Vとした。
A:変位量が8mm以上。
B:変位量が6mm以上8mm未満。
C:変位量が4mm以上6mm未満。
D:変位量が2mm以上4mm未満。
E:変位量が2mm未満。
[6.2]変形材料層の変色
25℃の環境下で、図1に示す状態から図2に示すように通電方向を逆転した際の色調の変化を目視により観察し、以下の基準に従い評価した。なお、印加電圧は3Vとした。
A:顕著な色調変化が認められる。
B:色調変化がはっきりと認められる。
C:色調変化がわずかに認められる。
D:色調変化がほとんど認められない。
E:色調変化が全く認められない。
これらの結果を表5にまとめて示す。
Figure 0005958162
表5から明らかなように、本発明では、比較的低い電圧でアクチュエーターを大きく変位させることができるとともに、変形材料層の厚さが比較的大きい場合であっても、変形材料層全体を効率よく変形させることができ、低電圧で、十分に大きな変位力、変位量を得ることができた。また、本発明では、アクチュエーターの応答速度にも優れていた。また、本発明では、低温領域での作動性、耐久性にも優れていた。また、本発明では、刺激応答性化合物の酸化還元状態の変化に伴い、変形材料全体の色調が変化し、刺激応答性化合物の酸化還元状態を外部から容易かつ確実に認識することが可能なものであった。特に、第1の変形材料層と第2の変形材料層とで、刺激応答性化合物の組成を異なるものとした実施例14では、アクチュエーターの色調により、変形方向を好適に判断することができた。また、中間層が着色剤を含む材料で構成され、隠蔽性を有するものである実施例8、9では、変形方向を好適に判断することができた。
これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。すなわち、比較例では、変形を生じなかった。これは、第1の変形材料層と第2の変形材料層との間に中間層がないため、第1の変形材料層と第2の変形材料層との間に大きな電流が流れ、酸化還元反応を制御することができないためであると考えられる。
A…ユニットA B…ユニットB C…ユニットC D…ユニットD 200…駆動装置 100…アクチュエーター 10…電源 11…第1の変形材料層 12…第2の変形材料層 12a…陰イオン 12b…溶媒分子 13…中間層 14…スイッチ

Claims (15)

  1. 第1の変形材料層と、
    第2の変形材料層と、
    前記第1の変形材料層と前記第2の変形材料層との間に設けられた中間層とを備え、
    前記第1の変形材料層は、酸化還元反応により分子の構造が変わるとともに色調が変化する第1の刺激応答性化合物と、第1の高分子材料と、光透過性を有する第1の電子導電性物質と、第1の電解質とを含む第1の変形材料を含み、
    前記第2の変形材料層は、酸化還元反応により分子の構造が変わるとともに色調が変化する第2の刺激応答性化合物と、第2の高分子材料と、光透過性を有する第2の電子導電性物質と、第2の電解質とを含む第2の変形材料を含み、
    前記中間層は、前記第1の変形材料層と前記第2の変形材料層の間の電子の移動を妨げることを特徴とするアクチュエーター。
  2. 前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質は、ITO、IZO、GZO、ZnO、CdO、AZO、および、IGZOよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1に記載のアクチュエーター。
  3. 前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質は、粒子である請求項1または2に記載のアクチュエーター。
  4. 前記第1の電子導電性物質および/または前記第2の電子導電性物質の平均粒径は、5nm以上10μm以下である請求項3に記載のアクチュエーター。
  5. 前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
    前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
    前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBとを含むものであり、
    前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが還元反応によって結合するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
  6. 前記ユニットAは、下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)よりなる群から選択される1種である請求項5に記載のアクチュエーター。
    Figure 0005958162
  7. 前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは、下記式(4)で表される基である請求項5または6に記載のアクチュエーター。
    Figure 0005958162
  8. 前記第1の高分子材料および/または前記第2の高分子材料は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、および、有機電解質オリゴマーよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
  9. 前記第1の高分子材料および/または前記第2の高分子材料は、液晶ポリマーを含むものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
  10. 前記液晶ポリマーは、架橋剤により架橋されたものである請求項9に記載のアクチュエーター。
  11. 前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、液晶性を有する官能基を備えるものであり、
    前記液晶ポリマーは、前記官能基と同じ官能基を有している請求項9または10に記載のアクチュエーター。
  12. 前記第1の刺激応答性化合物および/または前記第2の刺激応答性化合物は、液晶性を有する官能基を備えるものである請求項1ないし11のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
  13. 前記液晶性を有する官能基は、複数の環構造を有し、
    前記複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合している請求項12に記載のアクチュエーター。
  14. 前記中間層は、ゲルである請求項1ないし13のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
  15. 前記中間層は、陰イオンを交換するイオン交換体を含むものである請求項1ないし14のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
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