JP5853756B2 - エレクトロクロミック材料および光学素子 - Google Patents
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Description
このようなエレクトロクロミック材料は、カラーフィルター、位相差フィルムや光量のスイッチングフィルム等の光学素子への利用が期待されている。
しかしながら、従来のエレクトロクロミック材料では、応答性が低く、光学素子に利用するのが困難で、実用化には十分でなかった。また、フィルムなどに加工するのが困難で、加工性が十分ではなかった。
本発明のエレクトロクロミック材料は、液晶性を有する官能基を有し、酸化還元反応により、分子構造が変わる刺激応答性化合物と、
架橋剤により架橋された液晶ポリマーと、を含み、
前記酸化還元反応よって色調が変化することを特徴とする。
本発明のエレクトロクロミック材料では、酸化反応により発色し、還元反応により当該色が退色することが好ましい。
これにより、色調の変化をより顕著なものとすることができる。
これにより、エレクトロクロミック材料の成膜性をより効率よく向上させることができる。
これにより、色調の変化を全体としてより均一なものとすることができるとともに、応答性をさらに向上させることができる。
本発明のエレクトロクロミック材料では、溶媒と電解質とを含むことが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物(エレクトロクロミック材料)の応答速度をより効果的に向上させることができるとともに、刺激応答性化合物の伸縮にともなうエレクトロクロミック材料全体の変位をさらに増幅することができる。
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
第1のユニットCと、
第2のユニットCと、を含むものであり、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCが前記液晶性を有する官能基であることが好ましい。
これにより、エレクトロクロミック材料の応答速度をより効果的に向上させることができる。
前記複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合していることが好ましい。
これにより、液晶性を有する官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、エレクトロクロミック材料は、より速くかつより円滑な色調の変化を行うことが可能となり、さらに低電圧で応答するものとなる。
本発明の光学素子は、本発明のエレクトロクロミック材料を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、高速応答性に優れた光学素子を提供することができる。
まず、本発明のエレクトロクロミック材料の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明のエレクトロクロミック材料は、液晶性を有する官能基を有し、酸化還元反応により、分子構造が変わる刺激応答性化合物と、架橋剤により架橋された液晶ポリマーとを含むものである。
まず、刺激応答性化合物の好適な実施形態について説明する。
図1、図2は、本実施形態の刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図1、図2中、○は官能基を意味し、線は結合を意味する。
図1(a)に示すように、刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、ユニットAの両末端に結合した2つのユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)と、それぞれのユニットBに結合した2つのユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)とを有している。
刺激応答性化合物を構成するユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基(ユニット)である。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、下記式(1)から(3)なる群から選択される1種の基であるのが好ましい。このような基をユニットAとして用いることにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、より低電圧で応答するものとなる。
また、ユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図1(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
ユニットCとしては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、ユニットCの配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で応答するものとなる。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)の具体例としては、以下のようなものが挙げることができる。
なお、ユニットCの重合性官能基を利用して重合した刺激応答性化合物を用いた場合、上述したように、低電圧で、さらに大きな変形が可能となる。
エレクトロクロミック材料中における刺激応答性化合物の含有率は、10質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
本発明のエレクトロクロミック材料は、上述したような液晶性を有する官能基を備えた刺激応答性化合物に加えて、架橋剤により架橋された液晶ポリマーを含むものである。すなわち、架橋構造を有する液晶ポリマーを含んでいる。
液晶性を有する官能基を備えた刺激応答性化合物とともに、液晶ポリマーを含むことにより、刺激応答性化合物の酸化還元反応による、液晶性を有する官能基(ユニットC)の配向の変化に伴い、液晶ポリマーの配向も変化することとなり、エレクトロクロミック材料全体としての変形を、その度合いが大きく、かつ、応答速度の速いものとすることができる。すなわち、エレクトロクロミック材料は、高速応答性に優れ、色調の変化の度合いが大きいものとなる。また、架橋剤により架橋した液晶ポリマーを含むことにより、エレクトロクロミック材料を固体化することができる。すなわち、架橋構造を備えた液晶ポリマーを含むことにより、その分子内に刺激応答性化合物を取り込み、エレクトロクロミック材料を固体化することができる。また、架橋構造を有することにより、エレクトロクロミック材料は適度な弾性を有するものとなる。
液晶性を有する官能基としては、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。
モノマーとしては、例えば、液晶性を有する官能基とアクリル基とを備えたモノマー、液晶性を有する官能基とメタクリル基とを備えたモノマー等を挙げることができる。
このようなモノマーとしては、例えば、下記式(6)または(7)で表される化合物を挙げることができる。
また、架橋剤としては、上記モノマーで形成されるポリマーを架橋し得るものであれば、特に限定されず、いかなるものを用いてもよいが、下記式(8)で示す架橋剤を用いることにより、液晶ポリマーの分子中に刺激応答性化合物をより容易に取り込むことができ、より確実にエレクトロクロミック材料を固体化することができる。
液晶ポリマーは、液晶性官能基を有するモノマー100molに対して、架橋剤を1mol以上10mol以下添加して架橋したものであるのが好ましい。これにより、エレクトロクロミック材料の成膜性をより効率よく向上させることができる。
エレクトロクロミック材料中における液晶ポリマーの含有率は、90質量%以上95質量%以下であるのが好ましい。これにより、上述したような刺激応答性化合物と液晶ポリマーとを含むことによる本発明の効果が、より顕著に発揮される。
また、本発明のエレクトロクロミック材料は、電解質を含むものであってもよい。これにより、刺激応答性化合物への電荷の受け渡しをより速やかに進行させることができ、エレクトロクロミック材料の高速応答性を特に優れたものとすることができる。
電解質としては、各種酸、塩基、塩を用いることができるが、塩を用いるのが好ましい。これにより、エレクトロクロミック材料の耐久性を特に優れたものとすることができる。電解質の塩としては、例えば、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の無機塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ素等の有機塩等を用いることができる。
エレクトロクロミック材料中における電解質の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上2質量%以下であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本発明のエレクトロクロミック材料は、溶媒を含むものであってもよい。溶媒が上記液晶ポリマーの分子内に取り込まれると、エレクトロクロミック材料がゲル化するため、容易に固形化することができるとともに、エレクトロクロミック材料の取り扱い性を向上させることができる。
エレクトロクロミック材料中における溶媒の含有率は、1質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。これにより、エレクトロクロミック材料の取り扱い性をより高いものとすることができる。
また、本発明のエレクトロクロミック材料は、上述した以外の成分を含むものであってもよい。
また、上記のようなエレクトロクロミック材料をカラーフィルター(光学素子)の色相に添加した場合、電圧の印加によって色調の変化させることが可能なカラーフィルター(光学素子)を提供することができる。
また、露光機器のフォトマスク(光学素子)としてエレクトロクロミック材料を利用した場合、露光の光量を容易に調整することが可能となる。
例えば、前述した実施形態では、刺激応答性化合物が、ユニットAと、第1のユニットBと第2のユニットBと第1のユニットCと第2のユニットCとを含むものである場合について中心的に説明したが、本発明において刺激応答性化合物は、液晶性を有する官能基を有し、酸化還元反応により、分子構造が変わるものであればよく、上記の各ユニットを全て備えたものに限定されない。
また、例えば、高速応答性を要求されない用途へも本発明の技術は適用が可能である。刺激応答性化合物は、酸化還元反応によりマクロな変形をすることが知られているが、その変形の状態を色調の変化によりモニタリングする等の実施形態も、本願の好適な実施形態である。
(実施例1)
[1]刺激応答性化合物の製造
[ユニットAおよびBの合成]
ブロモチオフェンを原料として亜鉛、ニッケルの触媒を用いた2量化、臭素化を行い、DMFによるアルデヒド基の導入(ホルミル化)を行った。
次に、脱保護を行い、酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、ユニットAとユニットBが結合した化合物(下記式(9))を得た。
まず、ヒドロキシ安息香酸とアルキレンハライドとを反応させた。
その後、ジヒドロキシビフェニルと、上記ヒドロキシ安息香酸と、ヒドロキノンとのエステル化を行い、ユニットCとなる化合物を得た。
[刺激応答性化合物の製造]
ユニットAとユニットBが結合した化合物と、ユニットCとなる化合物とを、塩基存在下でのエーテル化することにより刺激応答性化合物を得た。
[モノマーの合成]
1−(8−ヒドロキシオクチル−1−オキシ)−4−[2,3−ジフルオロ-4-(4−ブトキシフェニル)フェニル]ベンゼン(下記式(10))とトリエチルアミンをTHFに溶解し、0℃に冷却し、アクリロイルクロリドを滴下した。4時間撹拌後、水を加え、ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過して濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製し、目的化合物を得た。
上記モノマー:100質量部と、架橋剤としてのビスアクリロイルオキシヘキサン:10質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル:1質量部とをシュレンク管に入れ、トルエンに溶解させ、凍結脱気を3回行い、溶媒中の溶存酸素を除去する。窒素雰囲気下で95℃で26時間撹拌した。溶液を冷却後、溶媒を留去したあと、最少量のテトラヒドロフランに溶解させ、アセトン中に滴下し、析出した沈殿をろ過して真空乾燥させた。
これを100μmのポリイミドテープをスペーサーとした基板上にのせ、160℃で圧着して液晶ポリマーを得た。
上記のようにして得られた刺激応答性化合物と、液晶ポリマーと、電解質としてのテトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ素と、溶媒としてのトルエンとを混合し、ゲル化させることによりエレクトロクロミック材料を得た。
モノマーとして、上記式(7)(n=8)で表されるモノマーを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてエレクトロクロミック材料を製造した。
(実施例3)
架橋剤として、ビスアクリロイルオキシヘキサンの代わりにN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてエレクトロクロミック材料を製造した。
(実施例4)
架橋剤として、ビスアクリロイルオキシヘキサンの代わりにエチレングリコールジメタクリレートを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてエレクトロクロミック材料を製造した。
エレクトロクロミック材料として、アントラキノン系色素を用いた。
(比較例2)
架橋剤を添加せず合成した液晶ポリマーを用いた以外は前記実施例1と同様にして、エレクトロクロミック材料を製造した。
評価は、各実施例および比較例のエレクトロクロミック材料に電圧5Vを加え、色調の変化を目視にて観測した。
その結果、本発明のエレクトロクロミック材料は、比較例のものに比べて、色調の変化が生じるのが速かった。
Claims (10)
- 液晶性を有する官能基を有し、酸化還元反応により、分子構造が変わる刺激応答性化合物と、
架橋剤により架橋された液晶ポリマーと、を含み、
前記酸化還元反応よって色調が変化することを特徴とするエレクトロクロミック材料。 - 酸化反応により発色し、還元反応により当該色が退色する請求項1に記載のエレクトロクロミック材料。
- 前記液晶ポリマーは、液晶性官能基を有するモノマー100molに対して、架橋剤を1mol以上10mol以下添加して架橋したものである請求項1または2に記載のエレクトロクロミック材料。
- 前記液晶ポリマーは、その分子内に、前記刺激応答性化合物の前記液晶性を有する官能基と同じ官能基を有している請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック材料。
- 溶媒と電解質とを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック材料。
- 前記刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
第1のユニットCと、
第2のユニットCと、を含むものであり、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCが前記液晶性を有する官能基である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック材料。 - 前記液晶性を有する官能基は、複数の環構造を有し、
前記複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合している請求項1ないし8のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック材料。 - 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック材料を用いて製造されたことを特徴とする光学素子。
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