JP2012033287A - 二次電池負極形成用バインダー、二次電池負極形成用電極合剤、電極構造体および二次電池 - Google Patents

二次電池負極形成用バインダー、二次電池負極形成用電極合剤、電極構造体および二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、酸化雰囲気下および還元雰囲気下においても、変質および劣化することなく長期の耐久性があり、電池特性向上に寄与する二次電池負極形成用バインダーを提供することにある。
【解決手段】本発明の二次電池負極形成用バインダーは、下記式(1)で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、該フッ素系高分子電解質中の特定部位の少なくとも一部が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。
−[CF2 CX1 2 a −[CF2 −CF(−O−(CF2 −CF(CF2 3 ))b −Oc −(CFR1 d −(CFR2 e −(CF2 f −X4 )]g − ・・・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、非水系二次電池、水系二次電池、特に好ましくは非水系リチウムイオン二次電池において、電池特性の向上に寄与し得るフッ素系高分子電解質を含む二次電池負極形成用バインダー、該バインダーと粉末電極材料とを含む二次電池負極形成用電極合剤、さらに該電極合剤を用いて形成される電極構造体に関するものである。
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯電子機器の小型軽量化や高機能化の要求に伴い、高性能電池の開発が積極的に進められている。そして、充電により繰り返し使用が可能な二次電池の需要が大きく伸びている。特に、リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコンなどの用途に加え、電気自動車用途への展開も進められ、その利用範囲は非常に拡大している。
リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間にセパレータを介して作製された電極を電解液(リチウムイオンポリマー電池の場合は、液状の代わりにゲル状)と共に容器内に収納した構造を有するものである。
リチウムイオン二次電池の電極は、活物質と、必要に応じて主に炭素材料からなる導電材とが、バインダーを用いてアルミニウム箔や銅箔などの金属集電体上に層形成されたものである。正極用活物質としては、コバルト酸リチウムなどの遷移金属を含むリチウム複合酸化物などが用いられ、負極用活物質としては、炭素材料などが用いられる。通常、このようなリチウムイオン二次電池の電極は、活物質に導電材およびバインダーを添加し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒の存在下で混練・調製したペーストを、金属集電体上にドクターブレードなどによりに塗布し、乾燥することによって得られる。ここでバインダーは、活物質および導電材、さらに活物質および導電材の混合物と、金属集電体とを接着するために用いられる。
また、リチウムイオン二次電池の電解液には、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。
リチウムイオン二次電池は上記のような構成であるため、電極形成のためのバインダーには、(1)活物質間の接着性および活物質と必要に応じて添加する導電材との接着性、ならびに活物質および導電材と、金属集電体との接着性がいずれも高いこと、(2)電解液に対する耐食性に優れること、(3)電池内で電圧を受ける過酷な環境下で安定であること、(4)電極とした際に内部抵抗が小さく高い導電性を維持できることなどが要求される。
従来、電極形成用のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂などが多く使用されている。特許文献1には、フッ化ビニリデン重合単位中の水素がスルホン酸基に置換されたポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる非水系電池電極形成用バインダーが開示されている。
特許第3784494号
しかしながら、従来、電極形成用のバインダーとして用いられているPVDF樹脂などはイオン伝導性がない。ここで、イオン伝導性とは、電圧を印加した状態で、電荷を持った粒子であるイオンの移動により電荷が運ばれ、電流が流れる現象を指す。実用に耐え得るだけの耐久性を得るためにはバインダーの含有量を多くする必要があり、その結果、イオン伝導性がない物質、すなわちイオン絶縁性物質であるバインダーの含有量が増加するために電池特性の向上に限界を生じている。
また、PVDFなどのフッ素系樹脂以外に、負極用バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)などのジエン系合成ゴムが使用されることもある。SBRは、活物質と導電材との接着性、さらには活物質および導電材と集電体との接着性を比較的良好とするが、耐電解液膨潤性に劣るため電解液中で膨潤しやすく、また二重結合を分子内に有するため、不安定で酸化雰囲気および還元雰囲気下で、変質および劣化しやすく、電池特性の劣化の一因となっている。
さらにまた、特許文献1に開示された非水系電池電極形成用バインダーは、少ない使用量で粉末電極材料および集電体に対する接着力を示し、電池特性の向上に寄与し得るが、サイクル特性が不充分という問題点がある。
本発明の主たる目的は、酸化雰囲気下および還元雰囲気下においても、変質および劣化することなく長期の耐久性があり、電池特性向上に寄与する二次電池負極形成用バインダーを提供することにある。本発明の更なる目的は、上記バインダーと粉末電極材料との混合物を含む電極合剤、該電極合剤を用いて形成される電極構造体および水系/非水系二次電池を提供することにある。
本発明者らの研究によれば、上述の目的の達成のためには、特定の式で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、該フッ素系高分子電解質中の特定部位の少なくとも一部が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質を含む二次電池負極形成用バインダーを用いることが極めて有効であることが見出された。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、
該フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である、二次電池負極形成用バインダー。
−[CF2 CX1 2 a −[CF2 −CF(−O−(CF2 −CF(CF2 3 ))b −Oc −(CFR1 d −(CFR2 e −(CF2 f −X4 )]g − ・・・・・(1)
(式(1)中、
1、X2およびX3は、それぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1であり、
bは0以上8以下の整数であり、
cは0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数であり、0<d+e+fであり、
1およびR2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
4はCOOZ、SO3Z、PO32またはPO3HZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。)である。)
[2]
前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部がアルカリ金属原子である、[1]に記載の二次電池負極形成用バインダー。
[3]
前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部がリチウムである、[1]に記載の二次電池負極形成用バインダー。
[4]
さらに、非イオン伝導性バインダーを含み、
該非イオン伝導性バインダーの含有量が、90質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の二次電池負極形成用バインダー。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載の二次電池負極形成用バインダーと粉末電極材料とを含む、二次電池負極用電極合剤。
[6]
二次電池負極形成用バインダーの含有量が0.5〜15質量%である、[5]に記載の二次電池負極用電極合剤。
[7]
集電体と、[5]または[6]に記載の二次電池負極用電極合剤とを含み、
前記集電体の少なくとも一面に、前記二次電池負極用電極合剤が形成されている、電極構造体。
[8]
正極、負極、セパレータおよび水系電解液を含む水系二次電池であって、
前記負極が[7]に記載の電極構造体である、水系二次電池。
[9]
正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系二次電池であって、
前記負極が[7]に記載の電極構造体である、非水系二次電池。
[10]
正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系リチウムイオン二次電池であって、
前記負極が[7]に記載の電極構造体である、非水系リチウムイオン二次電池。
本発明のフッ素系高分子電解質を含む二次電池負極形成用バインダーを用いることにより、耐久性に優れ、該バインダーのイオン伝導効果を通じて電池特性の向上に寄与する電極が形成され、全体として二次電池の性能向上が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」と言う。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[二次電池負極形成用バインダー]
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーは、下記式(1)で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、該フッ素系高分子電解質中の、Zの少なくとも一部が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、アルカリ金属原子であることが好ましく、リチウムであることがより好ましい。なお、本実施の形態において、「フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部」とは、フッ素系高分子電解質中のZの10%以上であること意味し、50%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X4)]g- (1)
式(1)中、X1、X2およびX3は、それぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、ハロゲン原子であることが好ましい。
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1であり、
bは0以上8以下の整数であり、
cは0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数であり、ただし、0<d+e+fである。
1およびR2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
4はCOOZ、SO3Z、PO32またはPO3HZであり、ここでZは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、アルカリ金属原子で
あることが好ましい。前記アンモニウム基は、NH4、NH31、NH212、NHR123、NR1234(R1、R2、R3およびR4は、アルキル基またはアレーン基)である。
また、高イオン交換基含有樹脂等を使用することにより、自由にフッ素系高分子電解質の少なくとも一部を架橋構造として溶解成分や膨潤成分等を制御してもよい。
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーにおいて、上記フッ素系高分子電解質の含有量は、10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である。上記フッ素系高分子電解質は、イオン伝導性を有するので、上記フッ素系高分子電解質の含有量を前記範囲とすることで、得られる電極構造体内におけるイオン伝導性が向上し、電池特性の向上につながる。
本実施の形態において用いられるフッ素系高分子電解質は、例えば、下記式(2)に示される前駆体ポリマーを、アルカリ加水分解や酸処理等を行うことにより製造することができる。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X5)]g- (2)
(式(2)中、X1、X2およびX3は、それぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、0<d+e+fである。)である。R1およびR2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基である。X5はCOOR3、COR4またはSO24である。ここで、R3は炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基である。R4はハロゲン原子である。)
上記前駆体ポリマーは、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造し得る。
ここで、フッ化オレフィン化合物としては、例えば、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CCl2等が挙げられる。
また、フッ化ビニル化合物としては、例えば、CF2=CFO(CF2m−SO2F、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2m−SO2F、CF2=CF(CF2m−SO2F、CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−(CF2m-1−SO2F、CF2=CFO(CF2m−CO2R、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2m−CO2R、CF2=CF(CF2m−CO2R、CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−(CF22−CO2R等が挙げられる。上記式中、mは1〜8の整数を表し、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基を表す。
そして、上記のような前駆体ポリマーは、公知の手段により合成することができる。このような合成方法としては、特に限定されるものではないが、以下のような方法を挙げることができる。
(i)含フッ素炭化水素などの重合溶媒を使用し、この重合溶媒にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィン化合物のガスとを、充填溶解した状態で反応させて重合を行う方法(溶液重合)。上記含フッ素炭化水素としては、例えば、トリクロロトリフルオロエタン、1、1、1、2、3、4、4、5、5、5−デカフロロペンタンなど、「フロン」と総称される化合物群を好適に使用することができる。
(ii)含フッ素炭化水素などの溶媒を使用せず、フッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として用いて、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物との重合を行う方法(塊状重合)。
(iii)界面活性剤の水溶液を重合溶媒として用い、この重合溶媒にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィン化合物のガスとを、充填溶解した状態で反応させて重合を行う方法(乳化重合)。
(iv)界面活性剤およびアルコールなどの助乳化剤の水溶液を用い、この水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィン化合物のガスとを、充填乳化した状態で反応させて重合を行う方法(ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合)。
(v)懸濁安定剤の水溶液を用い、この水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィン化合物のガスとを、充填懸濁した状態で反応させて重合を行う方法(懸濁重合)。
本実施の形態においては、前駆体ポリマーの重合度の指標としてメルトマスフローレート(測定はJIS K 7210に準じて、2160gの荷重をかけ、270℃で実施した。以下「MFR」と略称する)を使用することができる。本実施の形態において、前駆体ポリマーのMFRは、0.01g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以上がより好ましく、0.3g/10分以上が更に好ましい。MFRの上限は限定されないが、100g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下が更に好ましい。
以下、フッ素系高分子電解質中のZ(以下「官能基」または「末端官能基」とも記す。)の少なくとも一部を、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウム基とする方法について説明する。
上述のようにして作製された前駆体ポリマーを、塩基性溶液中で加水分解処理することにより末端官能基が置換されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。例えば、前駆体ポリマーを水酸化リチウム水溶液中で加水分解処理することにより、リチウム塩化されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。
また、前駆体ポリマーを、塩基性液体により加水分解後、水洗、酸処理することによって前駆体ポリマーの末端官能基をプロトン化した後、再度塩基性溶液中で浸漬、撹拌する方法でも末端官能基が塩置換されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。例えば、前駆体ポリマーを、水酸化カリウム水溶液とメチルアルコールとを含んだ塩基性溶液で加水分解後、水洗し、塩酸を用いて酸処理することで末端官能基がプロトン化されたフッ素系高分子電解質を得て、プロトン化されたフッ素系高分子電解質を、水酸化リチウム水溶液中で浸漬、撹拌することで、末端官能基がリチウム塩化されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。
前駆体ポリマーではなく既に末端官能基がプロトン化されたフッ素系高分子電解質が存在している場合は、同様に、例えば、プロトン化されたフッ素系高分子電解質を、水酸化リチウム水溶液中で浸漬、撹拌することで、末端官能基がリチウム塩化されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。
また、フッ素系高分子電解質が液体の場合には、イオン交換樹脂を用いた方法でも末端官能基を置換することが可能である。例えば、SO3H型のイオン交換樹脂を樹脂塔に充填後、飽和LiCl水溶液を樹脂塔に流すことでSO3Li型とし、その後、末端官能基がプロトン化されたフッ素系高分子電解質溶液を樹脂塔に流すことで、末端官能基がリチウム塩化されたフッ素系高分子電解質を得ることができる。
末端官能基の置換方法としていくつか例を挙げたが、これに限定されるものではない。
末端官能基は、主にリチウムイオン電池に適用するという観点から、アルカリ金属原子で置換されていることが好ましく、特にリチウムに置換されていることが好ましい。
このようにして得られたフッ素系高分子電解質は、イオン導電性を有し、二次電池負極形成用バインダーとして好適に用いられる。
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーは、さらに、非イオン伝導性バインダーを含んでいてもよい。特に、電解液への過大な膨潤、または溶解性の増大等が見られる場合は、非イオン伝導性バインダーを含有させることが好ましく、また、フッ素系高分子電解質の少なくとも一部を架橋してもよい。
非イオン伝導性バインダーとしては、ポリフッ化ヒニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、その他公知のものから自由に少なくとも1種選ばれる。
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーにおいて、フッ素系高分子電解質と非イオン伝導性バインダーとの混合比率は、フッ素系高分子電解質の含有量が10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%であり、非イオン伝導性バインダーの含有量が90〜0質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜0質量%、さらに好ましくは50〜0質量%である。本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーにおいて、フッ素系高分子電解質比率、すなわちイオン伝導性バインダー比率を高くすることで、得られる電極構造体内におけるイオン伝導性が向上し、電池特性の向上につながる。
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーを溶解して、バインダー溶液を得ることができる。当該バインダー溶液を得るために有機溶媒を用いる場合は、好ましくは極性溶媒であり、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、などが挙げられる。これら有機溶媒は単独でまたは二種以上混合して用いられる。
また環境衛生等を考慮した場合、有機溶媒ではなく、水、ないし水とアルコール類との混合溶媒等の水性溶媒が好ましい。本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーを溶解する溶媒としては、有機溶媒、水性溶媒のいずれも使用可能である。
本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーの優れたバインダー効果は、後述の実施例において確認されている。また、本実施の形態に係る二次電池負極形成用バインダーを用いた場合、電池特性が向上する理由は、該バインダーが、不飽和結合を含まないフッ素系高分子電解質を含有するため、酸化雰囲気下だけでなく還元雰囲気下においても変質および劣化することなく長期の耐酸化性および耐還元性があり、また従来のバインダーのようなほぼ完全なイオン絶縁体とは異なり、キャリアイオン伝導に寄与するバインダーであるためと解される。
[二次電池負極用電極合剤]
本実施の形態に係る二次電池負極用電極合剤は、上述の二次電池負極形成用バインダーと粉末電極材料とを含む。
前記粉末電極材料は、電極活物質および必要に応じて加えられる導電助剤である。前記電極活物質としては、後述の炭素質材料などが挙げられる。導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等が挙げられる。
本実施の形態に係る二次電池負極用電極合剤において、二次電池負極形成用バインダーの含有量は、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.7〜10質量%、さらに好ましくは1.0〜8.0質量%である。二次電池負極形成用バインダーの含有量は、活物質と導電材との間や集電体との接触抵抗の観点から15質量%以下が好ましく、活物質と、導電材および集電体との接着性の観点から、0.5質量%以上が好ましい。
[電極構造体]
本実施の形態に係る電極構造体は、集電体と、上述の二次電池負極用電極合剤とを含み、前記集電体の少なくとも一面に、前記二次電池負極用電極合剤の層が形成されている。
前記集電体としては、銅、ニッケル、ステンレススチール等の金属箔を用いることができ、銅箔を用いることが好ましい。
本実施の形態に係る電極構造体は、二次電池の負極として用いることができる。
負極に含まれる活物質としては、炭素質材料が好適に用いられる。より具体的には、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド等が好適に用いられる。炭素質材料は、単独で用いてもよく、複数の炭素質材料を混合して用いてもよい。
また、負極の作製方法としては、例えば、前記炭素質材料からなる負極活物質に、上述の二次電池負極形成用バインダーや導電助剤等を加えて混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製し、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて加圧して厚み調整を行って作製する方法が挙げられる。
負極作製において、二次電池負極形成用バインダーを構成するフッ素系高分子電解質をリチウム塩化する前に負極を作製し、負極作製後にフッ素系高分子電解質をリチウム塩化した方が溶解性や分散性から好ましい場合もある。
一方、正極に含まれる活物質としては、金属酸化物系活物質を用いることができる。金属酸化物系活物質としては、例えばLiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiFePO4等が挙げられる。金属酸化物系活物質は、単独で用いてもよく、複数の金属酸化物系活物質を混合して用いてもよい。
正極の作製方法としては、例えば、上記活物質にPVDFバインダーや導電助剤等を加えて混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製し、この正極合剤ペーストをアルミニウム箔等からなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて加圧して厚み調整を行って作製する方法が挙げられる。
正極や負極の作製にあたって使用する導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等が挙げられる。
[二次電池]
本実施の形態に係る水系二次電池は、正極、負極、セパレータおよび水系電解液を含む水系二次電池であって、前記負極が上述の電極構造体である。
また、本実施の形態に係る非水系二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系二次電池であって、前記負極が上述の電極構造体である。
さらに、本実施の形態に係る非水系リチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系リチウムイオン二次電池であって、前記負極が上述の電極構造体である。
前記二次電池は、例えば、前記正極と前記負極との間にセパレータを介在させて巻回して巻回構造の積層体にしたり、折り曲げや複数層の積層などによって積層体にしたりして、製造することができる。
また、前記正極と前記負極との間のイオン伝導媒体として主に電解液が用いられる。電解液としては、水系電解液および非水系電解液がある。水系電解液としては、空気電池で利用可能な、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液が挙げられる。非水系電解液としては、例えばリチウム塩などの電解質を非水系溶媒(有機溶媒)に溶解したものを用いることができる。
ここで電解質としては、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(CF3OSO22、LiCl、LiBr、LiC(CF3OSO23、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23等が挙げられる。また、電解質を溶解する非水系溶媒(有機溶媒)としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、およびこれらの混合溶媒などが用いられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
本実施の形態の非水系リチウムイオン二次電池の電池形態は、特定のものに限ることなく、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形、ラミネート形などが好適に用いられる。
また、上述の電極構造体を適用する二次電池について、主に非水系二次電池で説明したが、これに限定されるものではなく、水系二次電池にも適用可能である。また、空気金属電池や全固体電池等にも適用可能である。
以下、本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(フッ素系高分子電解質溶液の調製)
1リットルのステンレス製オートクレーブに、CF2ClCFCl2(以下「CFC113」とも記す。) 580g、およびCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22−SO2F(以下「Sモノマー)とも記す。) 280gを仕込んだ。その後、前記オートクレーブ内を、窒素でパージし、続いてテトラフルオロエチレン(CF2=CF2、以下「TFE」とも記す。)でパージした。次に、前記オートクレーブ内に、(n−C37COO−)2を5重量%含むCFC113溶液を0.58g添加し、約3時間半、重合を実施した。当該重合条件は、温度を35℃とし、TFEの圧力を0.160MPaGとした。なお、重合中、前記オートクレーブ内のTFE圧力が一定となるように、系外からTFEをフィードした。
前記重合終了後、前記オートクレーブ内をTFEでパージし、得られた重合液から、90℃、常圧でCFC113を留去し、続いて、90℃、減圧下に残存するSモノマーを留去した。更に、前記留去後の液体を、150℃で2日間、減圧乾燥し、11.0gのパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体を得た。
得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体を、水酸化カリウム(15質量%)およびメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。加水分解処理後の樹脂を、60℃の水中に5時間浸漬した。さらに60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。塩酸水溶液で浸漬処理を行った後の樹脂を、イオン交換水で水洗し、乾燥して、フッ素系高分子電解質を得た。
このフッ素系高分子電解質を、エタノール水溶液(水:エタノール=50.0:50.0(質量比))とともに5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、固形分濃度5質量%の均一なフッ素系高分子電解質溶液を調製した。
(フッ素系高分子電解質膜の作製)
上記で得られたフッ素系高分子電解質溶液を、80℃にて減圧濃縮して、固形分濃度20質量%のキャスト溶液を得た。このキャスト溶液を、テトラフルオロエチレンフィルム上にドクターブレードを用いてキャストした。次に、当該テトラフルオロエチレンフィルムを、オーブンに入れて60℃で30分予備乾燥した。予備乾燥後、さらに80℃で30分乾燥して溶媒を除去し、またさらに160℃で1時間熱処理を行い、膜厚約50μmのフッ素系高分子電解質膜を得た。
(フッ素系高分子電解質末端官能基のリチウム塩化)
上記で得られた膜厚約50μmのフッ素系高分子電解質膜20cm2を、25℃、飽和塩化リチウム水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置して、末端官能基をリチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜を得た。
(当量重量EW測定)
上記で得られたフッ素系高分子電解質膜の当量重量EWを以下のとおり測定した。
上記リチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜を含む飽和塩化リチウム水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化リチウム水溶液を用いて中和滴定した。
中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがリチウムイオンの状態となっているフッ素系高分子電解質膜を、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化リチウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがリチウムイオンの状態となっているフッ素系高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、リチウムの原子量と水素の原子量との差分を考慮し、下記式より当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−6
さらに、得られた当量重量EW値の逆数をとって1000倍することにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出した。この方法により求めたリチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜の当量重量EWは965g/eq(イオン交換容量:1.04ミリ当量/g)であった。
(PFG−NMR測定)
上記で得られたリチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜(以下「EW965膜」とも記す。)を、1M LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)/PC(プロピレンカーボネート)電解液に室温下で15時間以上浸漬した。その後、EW965膜を、細かく裁断して試料高さが約5mmとなるように(試料面積は約13cm2)NMR対称型ミクロ試料管に充填した。
EW965膜のPFG−NMR測定を、日本電子社製ECA400を用い、表1の条件で行った。
当該PFG−NMR測定において、拡散係数(D)は下記式(i)により算出した。
ln(E/E0)=−Dγ2δ22(Δ−δ/3) ・・・(i)
E:観測されるNMRピーク強度、
0:PFGを印加しない場合のNMRピーク強度、
γ:核スピンの磁気回転比、
δ:PFGパルス幅、
△:拡散待ち時間、
g:磁場勾配強度。
実際のPFG−NMR測定では、NMR緩和によるNMRピーク強度の変化の影響をなくすため、△およびδを固定値とし、gを変化させて多点測定を行った。gの値を変化させて得られるNMRピーク強度を算出し、縦軸をln(E/E0)、横軸をγ2δ22(Δ−δ/3)としてプロットした拡散プロットの傾きから拡散係数を算出した。当該結果を表2に示す。
[実施例2]
パーフルオロスルホン酸樹脂前駆体を得る際の重合条件について、温度を30℃、TFEの圧力を0.170MPaGとした以外は実施例1と同じ方法でフッ素系高分子電解質膜を作製し、リチウム塩化、EW測定、PFG−NMR測定を行った。その結果、リチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜のEWは1046g/eq(イオン交換容量:0.96ミリ当量/g)であり、拡散係数は1.24×10-132/sであった。実施例2で得られたリチウム塩化したフッ素系高分子電解質膜を、以下「EW1046膜」とも記す。
[比較例1]
12質量%ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/N−メチル−2−ピロリドン(NMP溶液)((株)クレハ製 KFバインダー#1120)をシャーレに流し込み、最終的に160℃で乾燥して、厚み50μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)のキャスト膜(以下「PVDF膜」とも記す。)を作製した。PVDF膜のPFG−NMR測定を行った結果、PVDF膜内部でのリチウム拡散プロットは得られなかった。このことから、PVDF膜内ではリチウムイオン伝導性がないことが確認された。
上記実施例1および2と、比較例1との結果から、本実施の形態のフッ素系高分子電解質を含むバインダーが、単なるイオン絶縁性のバインダーとして作用するのでなくイオン伝導に寄与するバインダーとして作用し、電池性能の向上にも寄与するバインダーであることがわかった。
次に、下記の方法にて電池評価を行った。
[実施例3]
(イオン交換および溶媒置換−1)
実施例1で得られたフッ素系高分子電解質溶液をナスフラスコに入れ、蒸留操作を行った。その後、前記ナスフラスコに蒸留水を入れ、溶媒を水のみとしたフッ素系高分子電解質水溶液を得た。
次にイオン交換樹脂(SO3H型、三菱化学製ダイヤイオン)を樹脂塔に充填し、飽和塩化リチウム水溶液を樹脂塔に流してSO3Li型とした後に、上述のフッ素系高分子電解質水溶液を樹脂塔に流し、ポリマー末端がリチウム化されたフッ素系高分子電解質を含む溶液を得た。この溶液をナスフラスコに入れ、蒸留操作を行った。その後、前記ナスフラスコに、N−メチル−2−ピロリドンを入れ、溶媒を置換した(EW965品)。
(負極の作製−1)
負極活物質として、平均粒径5μmのメソカーボンマイクロビーズ、導電助剤として平均粒径3μmの炭素粉末、バインダーとして上述のフッ素系高分子電解質バインダーを、順に85:10:5の質量比となるようにN−メチル−2−ピロリドン中で混合し、固形分60質量%になるようにスラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液を、厚み10μmの銅片面に塗布し、乾燥することにより溶剤を除去した。その後、ロールプレスで圧延し、直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極とした。
(正極の作製)
正極活物質として平均粒径5μmのリチウムコバルト酸(LiCoO2)、導電助剤としては平均粒径3μmの炭素粉末、バインダーとしてPVDFを、順に85:10:5の質量比となるようにN−メチル−2−ピロリドン中で混合し、固形分60質量%になるようにスラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム片面に塗布し、乾燥することにより溶剤を除去した。その後、ロールプレスで圧延し、直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極とした。
(電池の作製)
上述の方法で作製した正極と負極とを、ポリエチレンからなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)を介して重ね合わせた後、SUS製の円盤型電池に挿入し、電解液を1ml注入し、密閉して電池を作製した。電解液としては、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを質量比で1:2になるように調整した後、電解質としてLiPF6を1モル/Lに調整した溶液を用いた。
(初充電効率の測定および充放電サイクル試験)
上記作製した電池の初充電効率の測定および充放電サイクル試験は、北斗電工(株)製充放電装置HJ−201Bを用いて行った。
電池の初充電効率を算出するために、0.67mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計8時間充電を行った。その後0.67mAの定電流で電圧が3.0Vに到達するまで放電させた。電池の初充電効率は、初回の放電時の容量を初回の充電時の容量で除した値とした。なお、電池の周囲温度は20℃とした。
電池の充放電サイクル試験として、まず、2mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後、2mAの定電流で放電し、3.0Vに到達した時点で再び、充電を繰り返した。1サイクルは、充電と放電とを各々1回行なうことを意味する。電池の周囲温度は20℃とした。
300サイクル目における容量維持率を以下のとおり算出して、電池のサイクル特性を評価した。結果を表3に示す。
300サイクル目における容量維持率=(300サイクル目の放電容量)/(2サイクル目の放電容量)×100(%)。
[実施例4]
(イオン交換および溶媒置換−1)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例3と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例5]
(負極の作製−1)において、バインダーとして、フッ素系高分子電解質バインダーを2.5、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を2.5の質量比とした混合バインダーを用いた以外は実施例3と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
なお、前記混合バインダーを構成するポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、12質量%ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液((株)クレハ製 KFバインダー#1120)を用いて調製した。
[実施例6]
(イオン交換および溶媒置換−1)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例5と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例7]
(負極の作製−1)において、バインダーとして、フッ素系高分子電解質バインダーを0.5、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を4.5の質量比とした以外は実施例3と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
なお、前記混合バインダーを構成するポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、12質量%ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液((株)クレハ製 KFバインダー#1120)を用いて調製した。
[実施例8]
(イオン交換および溶媒置換−1)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例7と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例2]
(負極の作製−1)において、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた以外は実施例3と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例9]
(イオン交換および溶媒置換―2)
実施例1で得られたフッ素系高分子電解質溶液をナスフラスコに入れ、蒸留操作を行った。その後、前記ナスフラスコに蒸留水を入れ、溶媒を水のみとしたフッ素系高分子電解質水溶液を得た。
次にイオン交換樹脂(SO3H型、三菱化学製ダイヤイオン)を樹脂塔に充填し、飽和塩化リチウム水溶液を樹脂塔に流してSO3Li型とした後に、上述のフッ素系高分子電解質水溶液を樹脂塔に流し、ポリマー末端がリチウム化された溶液を得た(EW965品)。
(負極の作製―2)
負極活物質として、平均粒径5μmのメソカーボンマイクロビーズ、導電助剤として平均粒径3μmの炭素粉末、バインダーとして上述のフッ素系高分子電解質を、順に85:10:5の質量比となるように蒸留水中で混合し、固形分60質量%としたスラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液を、厚み10μmの銅片面に塗布し、乾燥することにより溶剤を除去した。その後、ロールプレスで圧延し、直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極とした。
(正極の作製)
実施例3と同様にして正極を作製した。
(電池の作製)
上述の方法で作製した負極を用いた以外は実施例3と同様にして電池を作製した。
(初充電効率の測定および充放電サイクル試験)
上記作製した電池を用いた以外は実施例3と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例10]
(イオン交換および溶媒置換―2)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例9と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例11]
(負極の作製―2)において、バインダーとして、フッ素系高分子電解質バインダーを2.5、スチレン-ジエン系ランダム共重合体からなるバインダー(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の粒径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40%)を2.5の質量比とした混合バインダーを用いた以外は実施例9と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例12]
(イオン交換および溶媒置換―2)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例11と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例13]
(負極の作製―2)において、バインダーとして、フッ素系高分子電解質バインダーを0.5、スチレン-ジエン系ランダム共重合体からなるバインダー(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の粒径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40%)を4.5の質量比とした混合バインダーを用いた以外は実施例9と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例14]
(イオン交換および溶媒置換―2)において、実施例2で得られたフッ素系高分子電解質溶液を用いた以外は実施例13と同様にして初充電効率の測定および充放電サイクルの試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例3]
(負極の作製―2)において、バインダーとして、スチレン-ジエン系ランダム共重合体からなるバインダー(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の粒径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40%)を用いた以外は実施例3にして初充電効率の測定および充放電サイクルと同様の試験を行った。結果を表3に示す。
表3の結果から、本実施の形態の非水系リチウムイオン二次電池は、300サイクル経過後も容量低下が抑制され、サイクル特性が良好であることがわかった。
また、本実施の形態の二次電池負極形成用バインダーは、不飽和結合を含まないフッ素系高分子電解質を含有するため、酸化雰囲気下だけでなく還元雰囲気下においても変質および劣化することなく長期の耐酸化性および耐還元性があり、また単なるイオン絶縁性のバインダーとして作用するのでなくイオン伝導に寄与するバインダーとして作用することで、電池性能の向上に寄与することが明瞭に示された。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、
    該フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である、二次電池負極形成用バインダー。
    −[CF2 CX1 2 a −[CF2 −CF(−O−(CF2 −CF(CF2 3 ))b −Oc −(CFR1 d −(CFR2 e −(CF2 f −X4 )]g − ・・・・・(1)
    (式(1)中、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
    aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1であり、
    bは0以上8以下の整数であり、
    cは0または1であり、
    d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数であり、0<d+e+fであり、
    1およびR2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
    4はCOOZ、SO3Z、PO32またはPO3HZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。)である。)
  2. 前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部がアルカリ金属原子である、請求項1に記載の二次電池負極形成用バインダー。
  3. 前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部がリチウムである、請求項1に記載の二次電池負極形成用バインダー。
  4. さらに、非イオン伝導性バインダーを含み、
    該非イオン伝導性バインダーの含有量が、90質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池負極形成用バインダー。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の二次電池負極形成用バインダーと粉末電極材料とを含む、二次電池負極用電極合剤。
  6. 二次電池負極形成用バインダーの含有量が0.5〜15質量%である、請求項5に記載の二次電池負極用電極合剤。
  7. 集電体と、請求項5または6に記載の二次電池負極用電極合剤とを含み、
    前記集電体の少なくとも一面に、前記二次電池負極用電極合剤が形成されている、電極構造体。
  8. 正極、負極、セパレータおよび水系電解液を含む水系二次電池であって、
    前記負極が請求項7に記載の電極構造体である、水系二次電池。
  9. 正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系二次電池であって、
    前記負極が請求項7に記載の電極構造体である、非水系二次電池。
  10. 正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を含む非水系リチウムイオン二次電池であって、
    前記負極が請求項7に記載の電極構造体である、非水系リチウムイオン二次電池。
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