JP2012031891A - 樹脂製歯車 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属製ブッシュ2と、この周囲に配置される樹脂成形部とを備え、樹脂成形部が、径方向において軸芯を共通する複数層により構成され、最外層30と、それよりも内側の層31とで、樹脂成形体の樹脂及び充填物の構成比又は構成物を異ならせている。
【選択図】 図5
Description
この流れは歯車においても同様で、近年では、高強度で高耐熱性の樹脂が開発され、エンジン内部及び周辺にて、樹脂製歯車が、金属製歯車と噛み合う相手歯車として、軽量化と、歯の噛み合い時の騒音抑制とを目的として使用されている(特許文献1参照)。
(1)金属製ブッシュと、この周囲に配置される樹脂成形部とを備え、前記樹脂成形部が、径方向において軸芯を共通する複数層により構成され、最外層と、それよりも内側の層とで、樹脂成形体の樹脂及び充填物の構成比又は構成物を異ならせた樹脂製歯車。
(2)項(1)において、樹脂成形部が、樹脂と補強繊維とを含み、補強繊維の含有率を、最外層にて、それよりも内側の層よりも大となす、樹脂製歯車。
(3)項(1)又は(2)において、最外層と、最外層より内側の層とが、互いの凹凸により係合する、樹脂製歯車。
更に、層の境界を互いの凹凸により係合させる場合は、層間の界面剥離が起こりにくく、歯車強度の保持性を高くすることができる。
本発明にて述べる金属製のブッシュは、その周囲に樹脂成形部を設けるものであり、その中央部に回転軸を締結する。
金属製ブッシュは、金属粉末を所定形状に成形して焼結したものを好ましく用いることができるが、金属塊を切削加工したもの、鍛造加工したもの等を用いることもできる。
複数の突出部4Aの軸線方向に測った厚み寸法L2は、金属製ブッシュ2の軸線方向に測った厚み寸法L1よりも小さい。そして周り止め部を構成する突出部4Aは、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状とすることで、樹脂成形部6の抜けをより一層防止し易くなる。
尚、隣り合う二つの突出部間(4Aと4Aの間)に形成される凹部内(4B部分)に樹脂成形部の一部が入ることによっても、前述の機械的強度は当然にして増加する。
本発明にて述べる樹脂成形部6は、先に述べた金属製ブッシュ2の周囲に配置されるものであり、樹脂により成形されたものである。
先に述べた樹脂成形部は、径方向において複数層により構成される。
本発明にて述べる複数層は、全ての層の軸芯が共通(同じに)したものであり、歯を形成する最外層と、この最外層よりも内側となる層(以下、「内層」とも言う。)との、最低限2層を有する。
また、最外層と内層とは、その各々が複数層を有するように、配置することもできる。
尚、最外層と内層では、最外層に歯が設けられることから、最外層の強度を内層の強度に比較し、高くなるようにする。
本発明にて述べる最外層は、径方向において最も外側に設置され歯車の歯が設けられる層である。
最外層に用いる補強繊維は、融点又は分解温度が、250℃以上の繊維から選択されることが好ましい。このような補強繊維を用いることで、成形時の成形温度や加工温度、実使用時の雰囲気温度において、補強繊維が熱劣化を起こすことなく、耐熱性に優れた樹脂製歯車とすることができる。
中でも、パラ系アラミド繊維と、メタ系アラミド繊維と、フィブリル化処理した微細繊維とを、混合して用いることが、特に好ましく、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維とフィブリル化処理した微細繊維を混合して用いることで、高い強度、耐熱性を得ることができる。
最外層に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れでも良く、エポキシ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から選ばれた1以上の樹脂と、この樹脂の種類に応じて硬化剤を組み合わせたものが使用できる。
尚、この触媒は、5質量部を超えて添加すると、硬化時間が短くなって繊維基材に樹脂が充分含浸される前に樹脂が硬化してしまうため、樹脂含浸不良の問題が発生し易くなる。
本発明にて述べる最外層よりも内側の層は、最も外側に設置された層の内側に設置され、歯車の歯が設けられない層である。
最外層よりも内側に用いる補強繊維は、最外層と同様に、融点又は分解温度が、250℃以上の繊維から選択されることが好ましい。具体的には、先に述べた最外層に用いることができる補強繊維を、任意に使用することができ、最外層に使用した補強繊維と、内層に使用した補強繊維とで、同一のものを用いても、異種繊維を用いても良い。
具体的には、最外層と内層の2層にする場合は、内層の補強繊維含有率を、最外層の補強繊維含有率の95〜10%とすることで、樹脂製歯車全体での補強繊維使用量を減らし、コストを低減することができる。
また、内層は、金属製の相手歯車に接触することがないため、金属に対する攻撃性の高い繊維であっても使用することができ、高強度の有機繊維に比較し、強度が同等以上であるが安価な無機繊維を用いることができる。
内層に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れでも良く、エポキシ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から選ばれた1以上の樹脂と、この樹脂の種類に応じて硬化剤を組み合わせたものが使用できる。
尚、この触媒は、5質量部を超えて添加すると、硬化時間が短くなって繊維基材に樹脂が充分含浸される前に樹脂が硬化してしまうため、樹脂含浸不良の問題が発生し易くなる。
本発明の樹脂製歯車は、最外層と内層とで、樹脂成形体の樹脂及び充填物の構成比又は構成物を異ならせているため、界面が発生する。そこで、最外層と内層との界面にて、界面破壊を起こしにくくするため、境界部分を互いの凹凸により係合させることが好ましい。
より具体的には、最外層と内層とが、同時に見えるように側面から見た際、境界部分が、波線、山谷線、凹凸線等となるようにすることができる。尚、前記各線は、局所的な応力が発生しにくいように、波、山谷、凹凸等を、等間隔にて発生させることが好ましい。
(補強繊維の異なる複数層の作製)
補強繊維の異なる複数層は、例えば、分散液中に、補強繊維及び必要に応じて分散剤を投入し、充分に攪拌した抄造スラリーを用いて作製される。
尚、分散液は、特に制限されるものではないが、環境負荷が少ないことから、水を用いることが好ましい。
尚、メッシュサイズは、「JIS G 3555」に規定されるものを用いる。
尚、この例では、下側のブッシュ支持用金型12、上側のブッシュ支持用金型11、下側の圧縮用金型14、上側の圧縮用金型13、及び筒状金型10はそれぞれ単独で上下に移動可能に構成されている。
そして金属製ブッシュ2を、下側のブッシュ支持用金型12の上に位置決めした後に、図3(B)に示すように、上側のブッシュ支持用金型11を下方向に移動して、一対のブッシュ支持用金型11及び12の間に金属製ブッシュ2を挟持する。
このように、一対のブッシュ支持用金型11及び12を用いると、金属製ブッシュ2の位置決めと支持を簡単に行うことができる。
尚、抄造スラリーの供給は、前記開口部の複数の場所から行ってもよい。
前述の抄造圧縮装置7で用いる金型であれば、一対の圧縮用金型13及び14で補強繊維集積体8を圧縮した場合に、金属製ブッシュ2の径方向の内側及び外側の両方向に補強繊維が膨出するのを確実に阻止することができる。
下側の圧縮用金型14に設けた複数の貫通孔15から水分を排出した後、図3(C)に示すように、金属製ブッシュ2が一対の圧縮用金型13と14の間の中央に位置する状態となる位置まで、上側の圧縮用金型13を下降させる。
尚、圧縮を行う時間及び温度は、使用する補強繊維の種類によって任意であるが、前記圧縮の際、上側の圧縮用金型13にヒータを取り付け、加熱した状態で圧縮することにより、抄造後の補強繊維に含まれる水分を取り除く時間を、短縮することができるとともに、圧縮後の補強繊維層5の厚みの経時変化を抑えることができる。
また、前記圧縮の際、下側の圧縮用金型14の貫通孔15から真空吸引した状態で圧縮することにより、抄造後の補強繊維層5に含まれる水分を取り除く時間を短縮することができる。
具体的には、まず、内層の外径寸法に合わせた内径寸法の筒状金型10の抄造圧縮装置で金属製ブッシュと一体となった補強繊維層を作製し、次に最外層の外径寸法に合わせた内径寸法の筒状金型10の抄造装置で、内層の外側に内層と異なる繊維により補強繊維層(最外層)を作製する。
尚、前述した方法では、径の異なる筒状金型を交換することで、1つの抄造圧縮装置により各層を作製しているが、各々の層を製造する専用の抄造圧縮装置を、層の数だけ準備し、内側となる層より順次作製することもできる。
樹脂の含浸硬化について、以下に述べる。
図4に示すように、補強繊維層5を備えた樹脂製歯車成形用素材21を、金型23内に配置した後に、金型23に樹脂を注入して補強繊維層5に樹脂を含浸させ、その後硬化させて、樹脂成形体を備えた樹脂製回転体を成形する。
上金型29の押圧部29Aが、固定金型25内に挿入されて、金属製ブッシュ2を押圧すると、移動金型27は、上金型29の挿入量に応じて下方に変位する。
上金型29で、固定金型25の開口部を完全に塞いだ後に、固定金型25内に樹脂が注入される。この際、樹脂は、固定金型25内を真空にすることで、素早く注入することができる。
このようにして成形した樹脂製回転体の樹脂成形体の外周部に、機械加工を施して歯を形成すれば樹脂製歯車を得ることができる。
最外層と内層とで、樹脂が異なる場合は、まず、内層の外径寸法に合わせた内径寸法の筒状金型10(図3参照)の抄造圧縮装置で、金属製ブッシュと一体となった補強繊維層を作製し、これに図4を用いて説明した方法で液状樹脂を含浸・硬化させ、内層を作製する。
次に、金属製ブッシュと一体になった内層を、最外層の外径寸法に合わせた内径寸法の筒状金型10の抄造圧縮装置で補強繊維層(最外層)を作製し、図4を用いて説明した方法で内層と異なる樹脂を含浸・硬化させ樹脂製回転体を製造する。
<実施例1>
(最外層に用いる抄造スラリーの作製)
先ず、抄造スラリーを製造するために、補強繊維の投入時濃度が、4g/リットルとなる量の水を満たしたタンクを用意する。
次に、このタンク内に、樹脂成形体中の補強繊維総量が、40体積%となる量のパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維とフィブリル化処理した微細繊維とを、投入する。
更に、攪拌機でタンク内の水を攪拌し、補強繊維を分散させる。
最外層に用いるスラリーと同様の方法で、アスペクト比200で単繊維繊度:1.7detx、繊維長:3mm長のパラ系アラミド繊維“帝人テクノプロダクツ製「テクノーラ(登録商標)」”を40質量%、アスペクト比200で単繊維繊度:2.2detx、繊維長:3mm長のメタ系アラミド繊維“帝人テクノプロダクツ製「コーネックス(登録商標)」”を35質量%、そしてフリーネス値300mlまでフィブリル化処理した微細繊維“デュポン株式会社製「ケブラー(登録商標)」”を25質量%となる量を混合している。なお、この抄造スラリーは、樹脂成形体中の補強繊維総量が、40体積%となるようにしている。
更に、攪拌機でタンク内の水を攪拌し、補強繊維を分散させる。
図3(A)に示す抄造圧縮装置7(第1の抄造装置)を用いて、下側のブッシュ支持用金型12上に金属製ブッシュ2(炭素鋼の焼結合金製)を位置決めする。使用する金属製ブッシュ2は、突出部4A及び4Bの形状は、h1=2mm、h2=0.5mmであり、アンダーカット形状であり、金属製ブッシュ2の仮想中心横断面と側面との間の角度θが20°である(図2参照)。
尚、ここで使用する筒状金型10の内径は60mmとした。
加熱した状態で2分間圧縮することにより、金属製ブッシュ2と一体化した補強繊維層5を得た。尚、前記圧縮の際、下側の圧縮用金型14の貫通孔15から真空吸引した状態で圧縮している。
最外層より内側の層の作製と同様の抄造圧縮装置7に、内径:60mmの筒状金型に換えて、内径:80mmの筒状金型を使用する。
作製した最外層より内側の層と一体化した金属製ブッシュを、内径:80mmの筒状金型を設置した抄造圧縮装置に載置し、最外層より内側の層と同様の方法で、先に述べた最外層に用いる抄造スラリーを充填し、最外層を作製し、金属製ブッシュ2と一体化した補強繊維層5を得た。
次に、図4に示すように、上記の工程で得られた金属製ブッシュ2と一体化した補強繊維層5を、200℃に加熱した移動金型27に配置して型締めする。そして、固定金型25内部を、圧力90kPa以下に減圧した後、2,2’−(1,3フェニレン)ビス2−オキサゾリン:69質量部、4,4’−ジアミノジフェニルメタン:31質量部を混合した樹脂を温度140℃で溶解し、更にオクチルブロマイド:1質量部を加えて撹拌した樹脂を金型内部に注入して、補強繊維層5に含浸させ、金型23内で加熱硬化し樹脂製回転体を得る。
樹脂製回転体は、図5に示すように、金属製ブッシュ2、その周囲に複数層が配置される。そして、この樹脂製回転体を切削加工により歯を形成し、以下の表1に示す寸法の樹脂製歯車を得た。
<実施例2>
最外層と最外層より内側の層に用いる抄造スラリーの補強繊維の配合は、「テクノーラ(登録商標)」”を50質量%、「コーネックス(登録商標)」”を45質量%、「ケブラー(登録商標)」”を5質量%とした。そして、最外層に用いる抄造スラリーは、樹脂成形体中の補強繊維総量が、40体積%となるようにした。また、最外層より内側の層に用いる抄造スラリーは、樹脂成形体中の補強繊維総量が、30体積%となるようにした。その他については、実施例1と同様の方法で樹脂製歯車を得た。
最外層より内側の層にアラミド短繊維の代替としてガラス短繊維を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂製歯車を得た。
本実施例にて用いたガラス短繊維は、繊維径11μmのモノフィラメント(組成:Eガラス)を集束したストランドを1.5mmに切断したものである。
実施例1において最外層と最外層より内側の層の境界を凹凸により係合するような形状とした。それ以外は実施例1と同様の方法で樹脂製歯車を得た。
境界の凹凸は、山径(凸の外側の径)を65mm、谷径(凹の内側の径)を55mmとし、30度刻みで12箇所とした。形状は、図6に示すように直線で山と谷をつないだ形状とした。
本実施例においては、3種類の抄造装置を使用して作製する。第1の抄造装置は、筒状金型10の内径が60mm(実施例1で最外層作製に用いるものと同じ)で、第2の抄造装置は、筒状金型10の内径が70mmで、第3の抄造装置は、筒状金型10の内径が80mmとした。
次に、この外径60mmの補強繊維層と一体化した金属製ブッシュを、第2の抄造装置にセットし、外径70mmの補強繊維層を作製する。なお、このときの抄造スラリーは、実施例2で最外層より内側の層に用いたものと同様の樹脂成形体中の補強繊維総量が、30体積%となるようにしたものを使用した。
次に、この外径70mmの補強繊維層と一体化した金属製ブッシュを、第3の抄造装置にセットし、外径80mmの補強繊維層を作製する。なお、このときの抄造スラリーは、実施例1で最外層に用いたものと同様の樹脂成形体中の補強繊維総量が、40体積%となるようにしたものを使用した。
その後の工程(樹脂含浸〜硬化〜歯部加工)は実施例1と同様の方法で樹脂製歯車を得た(図7)。
最外層より内側の層を設けない以外は、実施例1と同様の方法で樹脂製歯車を得た。
実施例1、4では、補強繊維の配合比率を、最外層より内側の層と最外層とで異ならせている。これにより、補強繊維の中で最も高価なパラ系アラミド繊維“帝人テクノプロダクツ製「テクノーラ(登録商標)」の使用量を減らすことができる。
実施例2、3、5では、最外層より内側の層にガラス短繊維を使用している。これにより、使用するアラミド短繊維の全体量をかなり減らすことが可能である。具体的は、比較例と比べ、実施例2で12%、実施例3で15%、実施例5で20%使用量を減らすことができる。
図8に示すとおり、実施例1〜3及び5の耐久性は、比較例と比較してほぼ同等であり、歯車強度の低下は見られない。
また、実施例4は、同じ入力トルクでの耐久寿命が、他の実施例と比較して若干長い(若干耐久性が高い)。これは、最外層と最外層より内側の層の境界を凹凸により係合するような形状としているため、層間の界面剥離が起こりにくく、歯車強度の保持性を高くすることができるためと考えられる。
Claims (3)
- 金属製ブッシュと、この周囲に配置される樹脂成形部とを備え、前記樹脂成形部が、径方向において軸芯を共通する複数層により構成され、最外層と、それよりも内側の層とで、樹脂成形体の樹脂及び充填物の構成比又は構成物を異ならせた樹脂製歯車。
- 請求項1において、樹脂成形部が、樹脂と補強繊維とを含み、補強繊維の含有率を、最外層にて、それよりも内側の層よりも大となす、樹脂製歯車。
- 請求項1又は2において、最外層と、最外層より内側の層とが、互いの凹凸により係合する、樹脂製歯車。
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