JP2012031601A - 防煙テープ - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間で火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させて確実に煙の漏洩を防止することが可能な防煙シートを提供する。
【解決手段】建物の開口部に設置された戸枠と、前記開口部を開閉自在に前記戸枠に支持された扉と、の隙間に設けられ、火災時に発生した煙が前記隙間を通じて拡散することを防止するための防煙テープ10であって、火災初期段階の低温の熱により膨張する低温膨張部11と、火災盛期段階の高温の熱により膨張する高温膨張部12と、が積層形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、防煙テープに関するものである。
従来、火災時に熱や煙の拡散を抑えるために、自閉式の不燃扉や防火扉が建物に設置されている。また、この種の扉においては、例えば図11に示すように、平常時の扉1の開閉を円滑にして使い勝手を確保するために、扉閉鎖時においても戸枠2と扉1との間に(扉1の周囲に)若干の隙間Hを設けるようにして設置されている。
このため、この種の扉1は、火災時に火災の延焼を防止する大きな効果を発揮できるものの、戸枠2と扉1との隙間Hから煙が漏洩(拡散)してしまう。そして、例えば火災時に主要な避難経路となる階段室に設けられた階段室扉と戸枠との隙間から煙が侵入した場合には、特に高齢者の避難には長時間を要することを考えると、僅かな煙の侵入でも重大な事態を招くおそれがある。また、意匠上、階段室扉が天井高と同レベルで設置された建物が多くなっており、このような場合には、階段室扉が大面積になるとともに、戸枠と扉との隙間が大きくなるため、火災時の煙の侵入量が増大し、危険性がさらに高くなる。
一方、高齢者用にエレベータを避難用に利用することも考えられているが、通常のエレベータ扉は、閉鎖していても階段室扉以上に煙がエレベータシャフトやエレベータ室内に侵入しやすく、現状ではエレベータの利用も十分に有効とはいえない。また、エレベータシャフトに給気を行い、エレベータシャフトの圧力を周囲よりも正圧にし、シャフト内への煙の侵入を防止する対策も考えられるが、この対策では、建物が高層になるほど、ドラフトの影響などにより設備容量が著しく増大し、高コストになってしまう。
このような問題を解消するために、例えば特許文献1には、平常時の扉の開閉に支障をきたすことなく、火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させて確実に煙の漏出(拡散)を防止することが可能な防煙シートが開示されている。
特開2009−209607号公報
ところで、特許文献1の防煙シートは、火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させることができるものの、発泡性防煙層が発泡膨張して戸枠と扉との隙間を閉塞するまでに多少時間がかかるという課題がある。
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、短時間で火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させて確実に煙の漏洩を防止することが可能な防煙シートを提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明の防煙テープは、建物の開口部に設置された戸枠と、前記開口部を開閉自在に前記戸枠に支持された扉と、の隙間に設けられ、火災時に発生した煙が前記隙間を通じて拡散することを防止するための防煙テープであって、火災初期段階の低温の熱により膨張する低温膨張部と、火災盛期段階の高温の熱により膨張する高温膨張部と、が積層形成されていることを特徴としている。
このように構成した防煙テープを戸枠と扉との隙間に配することにより、火災初期段階においては、低温膨張部が膨張することで防煙テープの厚さが増大して隙間を閉塞させることができる。また、火災盛期段階においては、低温膨張部に代わって高温膨張部が膨張することで防煙テープの厚さが増大して隙間を閉塞させることができる。つまり、低温膨張部には低温でも短時間で膨張して隙間を閉塞させることができる材料を採用することにより、短時間で火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させて確実に煙の漏洩を防止することができる。さらに、高温膨張部には高温でも膨張状態を保持させることができる材料を採用することにより、火災時に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを長時間に亘って確実に防止できる。一方、平常時には、低温膨張部および高温膨張部はともに膨張していないため、戸枠と扉との隙間が確保され、円滑に扉の開閉動作を行うことが可能であり、扉の開閉に支障をきたすようなことがない。
また、本発明の防煙テープは、前記低温膨張部は、前記低温の熱により不燃ガスを放出する低温膨張層と、該低温膨張層を覆い、前記不燃ガスにより膨張する第1保護フィルムと、を備え、前記高温膨張部は、前記高温の熱により発泡膨張する高温発泡層と、該高温発泡層を覆う第2保護フィルムと、を備え、前記低温膨張部と前記高温膨張部とは接着部材により一体化されていることを特徴としている。
このように構成することで、低温膨張層は火災初期段階の低温の熱でも短時間で確実に不燃ガスを放出するため、該不燃ガスにより低温膨張層を覆うように配された第1保護フィルムを膨張させ、低温膨張部の厚さを増大させることが可能である。これにより、短時間で確実に火災初期段階に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを防止できる。
また、高温発泡層は火災盛期段階の高温の熱により確実に発泡膨張するため、高温発泡層の厚さを増大させることが可能である。これにより、長時間に亘って確実に火災盛期段階に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを防止できる。
さらに、本発明の防煙テープは、前記低温膨張層は炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したもので構成され、前記高温発泡層は珪酸ソーダまたは耐火塗料で構成されていることを特徴としている。
このように構成することで、低温膨張層に炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものを用いることにより、火災初期段階の低温の熱でも短時間で確実に不燃ガスを排出させることができ、該不燃ガスにより第1保護フィルムを膨張させ、低温膨張部の厚さを増大させることが可能である。これにより、短時間で確実に火災初期段階に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを防止できる。
また、高温発泡層に珪酸ソーダまたは耐火塗料を用いることにより、火災盛期段階の高温の熱により確実に珪酸ソーダまたは耐火塗料を発泡膨張させ、高温発泡層の厚さを増大させることが可能である。また、珪酸ソーダまたは耐火塗料は耐火材料であり、高温環境においても増大した体積が大きく減少することがない。これにより、長時間に亘って確実に火災盛期段階に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを防止できる。
本発明の防煙テープによれば、火災初期段階においては、低温膨張部が膨張することで防煙テープの厚さが増大して隙間を閉塞させることができる。また、火災盛期段階においては、低温膨張部に代わって高温膨張部が膨張することで防煙テープの厚さが増大して隙間を閉塞させることができる。つまり、低温膨張部には低温でも短時間で膨張して隙間を閉塞させることができる材料を採用することにより、短時間で火災時に戸枠と扉との隙間を閉塞させて確実に煙の漏洩を防止することができる。さらに、高温膨張部には高温でも膨張状態を保持させることができる材料を採用することにより、火災時に発生した煙が戸枠と扉との隙間を通じて拡散することを長時間に亘って確実に防止できる。
本発明の実施形態における防煙テープの断面図である。 本発明の実施形態における防煙テープを戸枠と扉との隙間に取り付けた状態(平常時)を示す正面図である。 図2のA−A線に沿う断面図であり、平常時の状態を示す図である。 図2のA−A線に沿う断面図に相当する図であり、火災初期段階の状態を示す図である。 図4のB部拡大図である。 図2のA−A線に沿う断面図に相当する図であり、火災盛期段階の状態を示す図である。 図6のC部拡大図である。 本発明の実施形態における防煙テープを戸枠と扉との隙間に取り付けた状態(平常時)の別の態様を示す図(図3に相当)である。 本発明の実施形態における低温膨張部の別の態様を示す断面図(図1および図5に相当)である。 本発明の実施形態における低温膨張部のさらに別の態様を示す断面図(図1および図5に相当)である。 従来の戸枠と扉を示す正面図である。
次に、本発明の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。本実施形態は、建物の開口部に設置された戸枠と、建物の開口部を開閉自在に戸枠に支持された例えば階段室扉やエレベータ扉などの扉との隙間に防煙テープを設けた場合の説明をする。なお、防煙テープは、火災時に発生した煙が戸枠と扉との隙間から漏洩(拡散)することを防止するためのものである。
図1に示すように、本実施形態の防煙テープ10は、火災初期段階の低温の熱により膨張する低温膨張部11と、火災盛期段階の高温の熱により膨張する高温膨張部12と、が積層形成されている。低温膨張部11と高温膨張部12とは接着部材13により一体化されている。また、防煙テープ10は、その幅が数mm程度、低温膨張部11および高温膨張部12を合わせた厚さが2mm程度で形成されている。なお、防煙テープ10の幅や厚さは、扉1と戸枠2との隙間Hの大きさに応じて適宜決定すればよい(図2参照)。また、接着部材13は、通常の接着剤で構わないが、第1保護フィルム16および第2保護フィルム18(後に詳述する。)より耐熱温度が高いものを用いる。
低温膨張部11は、幅広の断面略矩形状に形成されており、低温の熱により不燃ガス21を放出する低温膨張層15と、低温膨張層15を覆い不燃ガス21により膨張する第1保護フィルム16と、を備えている。低温膨張層15は、例えば炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したもので構成されており、平常時は透明である。
また、第1保護フィルム16は、例えば耐熱温度が180℃程度の透明フィルム材料で構成されている。第1保護フィルム16は、例えばポリエステルで形成されている。なお、第1保護フィルム16は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどを用いて形成してもよい。また、第1保護フィルム16は、低温膨張層15を包み、不燃ガス21を中に閉じ込める機能を有するとともに、熱気流などからの熱が低温膨張層15に伝わりやすいように、厚さは薄くなっている。さらに、第1保護フィルム16は、防煙テープ10の扉1への貼り付け時の作業性が悪くならない程度の厚さ、すなわち防煙テープ10に適度な弾力性を付与しつつ、その柔軟性を損なうことがないように例えば数十〜数百μm程度の厚さで形成されている。本実施形態の第1保護フィルム16の耐熱温度は、約180℃である。つまり、第1保護フィルム16は火災の途中で溶融してしまう。ただし、第1保護フィルム16が溶融して不燃ガス21が抜けても、その段階では、高温発泡層17がすでに発泡しており、煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散するのを防止している。そして、第1保護フィルム16の幅は数mmでよい。状況により、幅が広くなり、容積が増しても、低温膨張層15の量を調整できるため、性能に支障をきたすことはない。なお、第1保護フィルム16は、透明を基本とするが、扉1に合わせて色を付けてもよい。
そして、上述のように構成された低温膨張部11は、低温膨張層15を構成する炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものへの入射熱によって不燃ガス21が発生する。この不燃ガス21は、低温膨張層15を覆っている第1保護フィルム16内に充満することにより、第1保護フィルム16が膨張し、防煙テープ10の厚さが増大して扉1と戸枠2との隙間Hが塞がれるように構成されている。また、この不燃ガス21は、扉1と戸枠2との隙間Hを通過する熱気流温度が約50℃になると発生し始め、約60℃〜80℃で急増する。不燃ガス21による第1保護フィルム16の膨張は、このように比較的低温で反応を開始し、しかも、完了するまでの時間が約1分と極めて短い。つまり、低温の熱気流が扉1と戸枠2との隙間Hを通過するのを防止することができる。なお、第1保護フィルム16の膨張量(高さや幅)は、炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものなどの量によって調整できるため、種々の隙間の大きさに対応可能である。また、第1保護フィルム16は、防煙テープ10を扉1へ取り付ける際には、弾力性を有しており、破損しにくくなっている。
続いて、高温膨張部12は、低温膨張部11と同様に幅広の断面略矩形状に形成されており、高温の熱により発泡膨張する高温発泡層17と、高温発泡層17を覆う第2保護フィルム18と、を備えている。
高温発泡層17は、例えば珪酸ソーダに発泡開始温度を調整するための発泡促進剤などを混入したもので構成されており、第2保護フィルム18内に配されている。高温発泡層17に珪酸ソーダを用いた場合には、安価に製造することができるとともに、平常時に該高温発泡層17を略透明に形成することが可能になり、扉1や戸枠2に防煙テープ10を貼り付けても意匠を損なうことがない。また、高温発泡層17は、含水率が約50〜60%に保持されるように第2保護フィルム18に覆われている。高温発泡層17の厚さは1mm以下で、幅が数mmのテープ状にしたものが採用されている。なお、高温発泡層17の厚さの調整は可能である。
また、高温発泡層17は、火災箇所の温度が上昇し、熱気流温度も上昇すると、発泡する部分が熱を受け、ほぼ白色で発泡する。この発泡により、火災盛期に近い段階でも扉1と戸枠2との隙間Hを塞ぎ、煙が拡散するのを防止することができる。さらに、高温発泡層17は、略透明から白色に近い有色に変化するため、放射熱を遮断する効果が得られる。また、高温発泡層17は、熱気流温度が概ね110℃を超えたあたりから発泡開始し、熱を受け続けることにより発泡が急激に進むように構成されている。高温発泡層17が発泡した際の厚さは、約700℃を超えるようになるまで、大きく減少することがない。また、高温発泡層17の発泡時の厚さは、該高温発泡層17の使用前の厚さによって調整することができるため、扉1と戸枠2との隙間Hの大きさに左右されない。高温発泡層17は、防煙テープ10を扉1へ取り付ける際には、弾力性を有しており、破損しにくくなっている。
第2保護フィルム18は、例えば耐熱温度が180℃程度の透明フィルム材料で構成されている。また、第2保護フィルム18は、第1保護フィルム16と同様に例えばポリエステルで形成されている。なお、第2保護フィルム18は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどを用いて形成してもよい。また、第2保護フィルム18は、防煙テープ10の扉1への貼り付け時の作業性が悪くならない程度の厚さ、すなわち防煙テープ10に適度な弾力性を付与しつつ、その柔軟性を損なうことがないように例えば数十〜数百μm程度の厚さで形成されている。本実施形態の第2保護フィルム18の耐熱温度は、約180℃である。つまり、第2保護フィルム18は火災の途中で溶融してしまう。ただし、第2保護フィルム18が溶融した段階では、高温発泡層17がすでに発泡しており、煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散するのを防止している。そして、第2保護フィルム18の幅は数mmでよい。状況により、幅が広くなり、容積が増しても、高温発泡層17の量を調整できるため、性能に支障をきたすことはない。なお、第2保護フィルム18は、透明を基本とするが、扉1に合わせて色を付けてもよい。
また、本実施形態においては、高温膨張部12における低温膨張部11が接着された側の反対側の面に配された第2保護フィルム18aが、他の第2保護フィルム18および高温発泡層17から剥離可能に構成されており、この第2保護フィルム18aを剥離して扉1または戸枠2に貼り付けることができるようになっている。つまり、高温発泡層17における第2保護フィルム18aが剥離された面17aには接着剤19が塗布されており、面17aが扉1または戸枠2との接着面として機能するように構成されている。このように構成することで、貼り付け前(使用前)の防煙シート10の高温発泡層17が第2保護フィルム18により保護され、かつ、その含水率が保持される。なお、接着剤19は、第2保護フィルム18aを剥離し、高温発泡層17を直接扉1または戸枠2に接着できるように塗布されている。
そして、高温発泡層17は、発泡促進剤の添加により例えば110℃程度の温度で加熱されると珪酸ソーダが発泡し始め、加熱温度が高くなるほどに珪酸ソーダの発泡が進行して、漸次その厚さが増大していく。このとき、高温発泡層17は、略透明の状態から珪酸ソーダの発泡によって白色に近い有色に変化する。また、この高温発泡層17は、700℃程度の高温で加熱された場合においても増大した厚さが大きく減少するようなことがない。なお、発泡促進剤としては、メタノール、エタノール、グリセリンなどのアルコール類の他、エーテル、エステルなどの有機化合物も考えられる。
図2、図3に示すように、防煙テープ10は、第2保護フィルム18aを剥がし、高温発泡層17の接着剤19が塗布された面17aを扉1の外周面1aに貼り付けるという簡便な作業で、扉1と戸枠2との隙間(扉1の周囲の隙間)Hに介装して設けられる。防煙テープ10は扉1の外周面1aの全周に亘って貼り付けられている。そして、このように貼り付けた防煙テープ10は、厚さや幅が極めて小さく形成されているため、扉1の意匠を損なうことがなく、平常時に扉1を開閉する際においても扉1と戸枠2との隙間Hが十分に確保され、扉1の開閉動作に支障をきたすことなく貼り付けられている。
また、このように貼り付けた防煙テープ10は、第2保護フィルム18によって高温発泡層17が保護され、高温発泡層17が好適な保水状態で保持されている。これにより、高温発泡層17は、珪酸ソーダによる発泡性能が長期にわたって確実に維持される。すなわち、第2保護フィルム18によって高温発泡層17が機能劣化しないように保護されている。
図4、図5に示すように、建物に火災が発生した直後の火災初期段階において、扉1と戸枠2との隙間Hを通過する熱気流温度が約50℃になると、低温膨張層15の炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものから不燃ガス21が発生し始め、第1保護フィルム16を膨らませる。このとき、第1保護フィルム16は薄膜で形成されているため、低温膨張部15は確実に周囲の熱を受熱して不燃ガス21を発生させることができる。低温膨張層15から発生する不燃ガス21は、温度約60℃〜80℃で急増する。不燃ガス21による第1保護フィルム16の膨張は、このように比較的低温で反応を開始し、しかも、完了するまでの時間が約1分と極めて短い。つまり、低温の熱気流が扉1と戸枠2との隙間Hを通過するのを防止することができる。
火災初期段階で消火されずに火災が継続すると、熱気流の温度が徐々に高くなり、火災盛期段階へと移行する。図6、図7に示すように、火災盛期段階において、扉1と戸枠2との隙間Hを通過する熱気流温度が約110℃になると、高温発泡層17が発泡し始める。つまり、低温膨張部11(第1保護フィルム16)を押し潰すように高温発泡層17が発泡する。温度が180℃を超えると第1保護フィルム16が溶解し始めることにより、不燃ガス21が一気に第1保護フィルム16内から排出される。その時、高温発泡層17は継続して発泡し続けているため、高温発泡層17の厚さが急激に増大する。すると、高温発泡層17が低温膨張層15に代わり隙間Hを継続して塞ぎ、煙の拡散を確実に防止することができる。なお、第1保護フィルム16と略同時に第2保護フィルム18も溶解する。
また、この防煙テープ10は、受熱時間が長くなるほどに、また加熱温度が高くなるほどに高温発泡層17の発泡膨張が進行していき、扉1と戸枠2との隙間Hをさらに強固で確実に閉塞させ、確実に煙の漏洩が阻止される。さらに、この防煙テープ10は、700℃近い高温で加熱された場合においても、高温発泡層17の増大した厚さが大きく減少するようなことがないため、扉1と戸枠2との隙間Hが火災時に継続的に閉塞される。このため、扉1が例えば避難経路となる階段室扉やエレベータ扉である場合に、確実に避難経路に煙が侵入することが防止される。
また、このように防煙テープ10の高温発泡層17が加熱によって発泡膨張するとともに、略透明から白色に近い有色に変化することで、煙とともに火災の放射熱も遮断されることになる。このため、非火災側に延焼が生じることも防止される。
本実施形態によれば、防煙テープ10を扉1と戸枠2との隙間Hに配することにより、火災初期段階においては、低温膨張部11が膨張することで防煙テープ10の厚さが増大して隙間Hを閉塞させることができる。また、火災盛期段階においては、低温膨張部11に代わって高温膨張部12が膨張することで防煙テープ10の厚さが増大して隙間Hを閉塞させることができる。つまり、低温膨張部11には低温でも短時間で膨張して隙間Hを閉塞させることができる材料を採用することにより、短時間で火災時に扉1と戸枠2との隙間Hを閉塞させて確実に煙の漏洩を防止することができる。さらに、高温膨張部12には高温でも膨張状態を保持させることができる材料を採用することにより、火災時に発生した煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散することを長時間に亘って確実に防止できる。一方、平常時には、低温膨張部11および高温膨張部12はともに膨張していないため、扉1と戸枠2との隙間Hが確保され、円滑に扉1の開閉動作を行うことが可能であり、扉1の開閉に支障をきたすようなことがない。
また、低温膨張部11は、低温の熱により不燃ガスを放出する低温膨張層15と、低温膨張層を15覆い、不燃ガス21により膨張する第1保護フィルム16と、を備えるように構成したため、低温膨張層15は火災初期段階の低温の熱でも短時間で確実に不燃ガス21を放出するため、不燃ガス21により低温膨張層15を覆うように配された第1保護フィルム16を膨張させ、低温膨張部11の厚さを増大させることが可能である。これにより、短時間で確実に火災初期段階に発生した煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散することを防止できる。
また、高温膨張部12は、高温の熱により発泡膨張する高温発泡層17と、高温発泡層17を覆う第2保護フィルム18と、を備えるように構成したため、高温発泡層17は火災盛期段階の高温の熱により確実に発泡膨張するため、高温発泡層17の厚さを増大させることが可能である。これにより、長時間に亘って確実に火災盛期段階に発生した煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散することを防止できる。
さらに、低温膨張層15に炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものを用いることにより、火災初期段階の低温の熱でも短時間で確実に不燃ガス21を排出させることができ、不燃ガス21により第1保護フィルム16を膨張させ、低温膨張部11の厚さを増大させることが可能である。これにより、短時間で確実に火災初期段階に発生した煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散することを防止できる。
そして、高温発泡層17に珪酸ソーダを用いることにより、火災盛期段階の高温の熱により確実に珪酸ソーダを発泡膨張させ、高温発泡層17の厚さを増大させることが可能である。また、珪酸ソーダは耐火材料であり、高温環境においても増大した体積が大きく減少することがない。これにより、長時間に亘って確実に火災盛期段階に発生した煙が扉1と戸枠2との隙間Hを通じて拡散することを防止できる。
なお、防煙テープ10は、煙の拡散を防止させたい扉の外周面に貼るだけでよいため、新築はもちろん改修現場への適用も容易である。また、低温膨張層15に、食品としても利用される炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したものを用いたため、安全でしかも低コストで防煙テープ10を製造することができる。また、低温時に扉1と戸枠2との隙間Hを塞ぐ方式と、高温時に扉1と戸枠2との隙間Hを塞ぐ方式を分けているため、低温時および高温時の発泡開始や発泡厚の調整が容易となり、適用範囲が広くなる。また、高温発泡層17に、有機剤を含まず、水より安いと言われる珪酸ソーダを用いているため、安全であり、低コストですむ。
また、防煙テープ10の厚さや幅を極めて小さく形成することができ、扉1または戸枠2に取り付けても目立たないため、意匠上の心配がない。さらに、上述のように構成した防煙テープ10は、弾力があり、持ち運びや貼り付け作業が便利である。
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、防煙テープ10を階段室扉やエレベータ扉などの扉1と戸枠2との隙間Hに設けて遮煙性能を付与するものとしたが、火災時の煙の拡散を防止することを要する扉であれば、あらゆる扉に適用可能である。
また、本実施形態では、防煙テープ10を扉1の外周面1aに貼り付けるものとしたが、戸枠2の内周面に防煙テープ10を貼り付けて、隙間Hからの煙の拡散を防止するようにしてもよい。この場合においても、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、高温発泡層17の一方の面17a側に剥離可能な第2保護フィルム18aを設けた場合の説明をしたが、この部分の第2保護フィルム18aは初めから備えていなくてもよい。
また、本実施形態では、高温発泡層17の発泡材が珪酸ソーダであるものとして説明を行ったが、火災時の熱により発泡膨張し、高温発泡層17の厚さを増大させて扉1と戸枠2との隙間Hを閉塞させることが可能であれば、耐火塗料など他の発泡材を用いてもよい。高温発泡層17に耐火塗料を用いる場合、火災の熱によって発泡し、火災盛期に近い段階でも隙間Hを閉塞することができるものを選択すればよい。耐火塗料として、例えば、菊水化学工業社製のウエスタを用いることが可能である。この耐火塗料を幅が数mmで、厚さが1mm程度のテープ状にして使用すればよい。なお、耐火塗料による高温発泡層としては、例えば、有機質結合材、合成樹脂、炭化層形成剤、加熱により分解発泡する成分を含有するものがある。
さらに、本実施形態では、図3に示すように、防煙テープ10を扉1の外周面1aに1列で貼り付けた場合の説明をしたが、例えば図8に示すように、防煙テープ10を並列に複数列で貼り付けてもよい。この場合には、さらに信頼性の高い防煙性能を得ることが可能となる。
そして、本実施形態では、防煙テープ10の低温膨張部11の断面形状が矩形状の場合の説明をしたが、図9に示すように低温膨張部11Aの形状を断面楕円形にした防煙テープ10Aを用いたり、図10に示すように低温膨張部11Bの形状を断面菱形にした防煙テープ10Bを用いたりしてもよい。また、低温膨張部11の第1保護フィルム16は図1に示すように断面略矩形状の両側を蛇腹状に形成して不燃ガス21によって膨張しやすい形状にしてもよいし、両側を直線状にしてもよい。
1…扉 2…戸枠 10…防煙テープ 11…低温膨張部 12…高温膨張部 13…接着部材 15…低温膨張層 16…第1保護フィルム 17…高温発泡層 18…第2保護フィルム 21…不燃ガス H…隙間

Claims (3)

  1. 建物の開口部に設置された戸枠と、前記開口部を開閉自在に前記戸枠に支持された扉と、の隙間に設けられ、火災時に発生した煙が前記隙間を通じて拡散することを防止するための防煙テープにおいて、
    火災初期段階の低温の熱により膨張する低温膨張部と、
    火災盛期段階の高温の熱により膨張する高温膨張部と、が積層形成されていることを特徴とする防煙テープ。
  2. 前記低温膨張部は、前記低温の熱により不燃ガスを放出する低温膨張層と、該低温膨張層を覆い、前記不燃ガスにより膨張する第1保護フィルムと、を備え、
    前記高温膨張部は、前記高温の熱により発泡膨張する高温発泡層と、該高温発泡層を覆う第2保護フィルムと、を備え、
    前記低温膨張部と前記高温膨張部とは接着部材により一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の防煙テープ。
  3. 前記低温膨張層は炭酸塩と高級脂肪酸と水とを混合したもので構成され、
    前記高温発泡層は珪酸ソーダまたは耐火塗料で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の防煙テープ。
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