JP2012031441A - Fe/Co−Pt系焼結合金の製造方法 - Google Patents

Fe/Co−Pt系焼結合金の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 密度が高く且つ空隙等の欠陥の少ないFe/Co−Pt系合金を焼結法により製造する方法を提供する。
【解決手段】 Fe及び/又はCo、Pt及びPの合計量を基準にして、原子比で29.9〜69.9at %のFe及び/又はCoと30〜70at %のPt粉末と0.1〜13at %のP源粉末を混合し、その混合物を加熱下に加圧焼結する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、磁気記録媒体用の磁性膜又は垂直磁化膜を形成するために有用なFe/Co−Pt系合金の製造方法及び該Fe/Co−Pt系合金のスパッタリングターゲット材又は蒸着材としての用途に関する。
近年、情報記録分野で用いられるハードディスク装置等の磁気記録装置、MRAMに代表される不揮発性メモリに対しては記録の高密度化が要求されており、記録の高密度化には、記録箇所の磁性体の体積を小さくする必要がある。
磁気記録には磁化の向きが利用されているが、磁性体の体積が小さくなるにつれ、室温でも熱揺らぎエネルギーにより磁化の向きが反転し、記録が消える現象が起こる。これは、磁気異方性エネルギー(磁気異方性定数Ku×磁性体の体積V)が熱揺らぎエネルギーよりも小さくなり、磁化の向きが保持できなくなることによりものである。
熱揺らぎエネルギーの影響を抑え、記録の高密度化を実現するためには、磁気異方性定数Kuを大きくする必要がある。そのため、磁気異方性定数が大きいFe50Pt30合金、Co50Fe30合金が注目されており、これらの合金は、L1構造の規則相を形成させることにより、高い磁気異方性定数が得られることが知られている。
また、Fe−Pt合金に特定元素を特定割合で混合することにより、従来のFe−Pt合金よりも高性能のL1構造を有するFe−Pt系磁石を得ることが提案されている(特許文献1)。
Fe−Pt系合金及びCo−Pt系合金は、熱間鍛造、熱間圧延や焼結法等で製造されるが、得られるFe−Pt合金及びCo−Pt合金はL1構造を有しているため、非常に脆く、塑性加工が困難である。このためスパッタリングタ−ゲット材や蒸着材を作製するには、鋳造材や焼結材をそのまま切削加工により所定の形状に仕上げる方法がとられている。
スパッタリングターゲット材や蒸着材を鋳造法で作製すると、インゴット中に鬆等の欠陥が生じやすく、その欠陥を減らすために、押し湯部を大きくとる、鋳造体の形状に注意する、鋳造後さらに熱間等方圧プレス(HIP)処理等を加える等の対策がとられているが、歩留りの低下や工程数の増加という問題がある。
これに対し、焼結法では、原材料の仕込量に対する歩留りが高く、使用寸法に近い形状のインゴットの製作が可能である等のメリットがあるが、緻密な焼結体にすることが難しく、鋳造材と比較して密度が低い、表面や内部に空隙が存在する等の問題がある。密度の低い焼結ターゲットは、スパッタレートが安定しない、異常放電が起こりやすく、成膜した膜面上にパーティクル等の欠陥が生じやすくなり実用性に劣るという問題がある。
特開2002−327254公報
本発明の目的は、焼結法がもつ上記の如きメリットを生しつつ、密度が高く且つ表面や内部に空隙の少ないFe/Co−Pt系合金を焼結法により製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、特定量のFe及び/又はCo(以下、「Fe/Co」と記載することがある)粉末及びPt粉末に、P源粉末を特定量で添加して加熱下に加圧焼結すると、密度が高く且つ表面や内部に空隙等の欠陥の少ない焼結体が容易に得られることを見い出し本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、Fe及び/又はCo、Pt及びPの合計量を基準にして、原子比で、29.9〜69.9at %のFe及び/又はCo粉末と30〜70at %のPt粉末と0.1〜13at %のP源粉末を混合し、その混合物を加熱下に加圧焼結することを特徴とする、原子比(at %)における組成式:
(Fe1−aCo)xPt(100−x−y)Py
式中、0≦a≦1、29.9≦x≦69.9、0.1≦y≦13、30≦x+y≦70、
で示されるFe/Co−Pt−P焼結合金の製造方法を提供するものである。
本発明は、また、Fe及び/又はCo、Pt、PならびにCu、Au、Ag、Ni及びCrから選ばれる少なくとも1種の金属(M)の合計量を基準にして、原子比で、29.8〜69.8at %のFe及び/又はCo粉末と30〜70at %のPtと0.1〜30at %の金属(M)粉末及び0.1〜13at %のP源粉末を混合し、その混合物を加熱下に加圧焼結することを特徴とする、原子比(at %)における組成式
(Fe1−aCo)xPt(100−x−y−z)PyMz
式中、0≦a≦1、29.8≦x≦69.8、0.1≦y≦13、0.1≦z≦30、
30≦x+y+z≦70、
で示されるFe/Co−Pt−P−M焼結合金の製造方法を提供するものである。
本発明に従いFe/Co粉末及びPt粉末に特定少量のP源粉末を添加し、加熱下に加圧焼結すると、焼結の初期段階でPtとPが反応し、一部にPtのような低融点相が生成し、粉末と溶融部が混在する半溶融状態で焼結が進行し、高密度で、空隙等の欠陥箇所の少ない焼結体を得ることが可能となる。Ptの融点は588℃であり、焼結の初期段階でPtとPの反応部は溶融状態となり、その後、焼結が進行するに従い、Pが拡散し、PtからFeとPの金属間化合物等の形成や添加元素への固溶が進み、最終的に低融点相は減少もしくは確認できなくなる。
かくして、本発明によれば、L1構造を有し、脆く塑性加工が困難なFe/Co−Pt系合金を、焼結法により、高密度で且つ空隙等の欠陥の少ない状態でしかも所望とするサイズ及び形状で容易に製造することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の第一の態様によれば、Fe/Co粉末、Pt粉末及びP源粉末を所定の割合で混合し、その混合物を適当な焼結装置のモールドに充填し、減圧下に又は不活性雰囲気中、例えばアルゴンガス、キセノンガスや窒素ガス雰囲気中で、加圧しながら加熱して焼結させることにより、Fe/Co−Pt−P合金を取得することができる。
また、本発明の第二の態様によれば、Fe/Co粉末、Pt粉末及びP源粉末に、さらに、Cu、Au、Ag、Ni及びCrから選ばれる少なくとも1種の追加の金属(以下、この金属をMと総称する)の粉末を加えて所定の割合で混合し、その混合物を適当な焼結装置のモールドに充填し、減圧下に又は不活性雰囲気中、例えばアルゴンガス、キセノンガスや窒素ガス雰囲気中で、加圧しながら加熱して焼結させることにより、Fe/Co−Pt−P−M合金を取得することができる。
本発明の第一及び第二の態様において、原料として使用されるFe粉末、Co粉末、Cu粉末、Au粉末、Ag粉末、Ni粉末及びCr粉末としては、通常、純度が95%以上、特に98%以上のものを使用することが好ましい。また、粒径はできるだけ小さい方が好ましく、粒径が一般に200μm以下、特に150μm以下、さらに特に100μm以下であるものが好適である。なお、ここで、粉末の粒径は標準フルイの網目の大きさにより測定されたものである。
P源には、焼結中に熱分解してPを遊離するP化合物が包含され、例えば、赤リン、Cu−P(85/15mass %)合金等が挙げられる。
Fe/Co粉末、Pt粉末及びP源粉末の混合又はFe/Co粉末、Pt粉末、P源粉末及びM粉末の混合は、通常大気中で、例えばV型混合機、ボールミル、ダブルコーンブレンダなどの混合機を用いて、十分に混合されるまで乾式で行うことができる。
その際の原料粉末の混合割合は、得られる合金をスパッタリング又は蒸着により成膜した後、膜を熱処理等の処理したときに、膜の少なくとも一部がL1構造となるような割合であることが重要である。
そのため、本発明の第一の態様においては、Fe/Co、Pt及びPの合計量を基準にして、原子比で、Fe/Co粉末は29.9〜69.9at %、好ましくは35〜65at %、Pt粉末は30〜70at %、好ましくは35〜64.5at %、及びP源粉末は0.1〜13at %、好ましくは0.5〜10at %の割合で混合することができる。Fe/Co粉末の割合が29.9at %未満又は69.9at %を超え、或いはPt粉末の割合が30at %未満又は70at %を超えると、得られる合金をスパッタリングした場合に形成される膜が、熱処理等の処理を施したとしても、規則相であるL1構造とならない。また、P源粉末の割合が0.1未満では、焼結体の密度の向上及び空隙等の欠陥の低減効果が得られず、また、13at %を超えると、逆に、焼結体の密度が低下し空隙等の欠陥が増加する可能性がある。
Fe粉末及びCo粉末はそれぞれ単独で使用することができ、或いは両者を組み合わせて使用することもできる。両者を併用する場合のFe粉末対Co粉末の混合割合は特に制限されないが、通常、FeとCoの合計量を基準にして、Fe粉末を15at %まで又は85at %以上の割合で使用することが好ましい。
また、本発明の第二の態様においては、Fe/Co、Pt、PならびにCu、Au、Ag、Ni及びCrから選ばれる少なくとも1種の金属(M)の合計量を基準にして、原子比で、Fe/Co粉末は29.8〜69.8at %、好ましくは35〜65at %、Pt粉末は30〜70at %、好ましくは35〜64.5at %、M粉末は0.1〜30at %、好ましくは0.5〜20at %、及びP源粉末は0.1〜13at %、好ましくは0.5〜10at
%の割合で混合することができる。Fe/Co粉末の割合が29.8at %未満又は69.8at %を超え、或いはPt粉末の割合が30at %未満又は70at %を超えると、得られる合金をスパッタリングした場合に形成される膜が、熱処理等の処理を施したとしても、規則相であるL1構造とならない。また、P源粉末の割合が0.1未満では、焼結体
の密度の向上及び空隙等の欠陥の低減効果が得られず、また、13at %を超えると、逆に、焼結体の密度が低下し空隙等の欠陥が増加する可能性がある。
本発明の第二の態様においても、Fe粉末及びCo粉末はそれぞれ単独で使用することができ、或いは両者を組み合わせて使用することもできる。両者を併用する場合のFe粉末対Co粉末の混合割合は特に制限されないが、通常、FeとCoの合計量を基準にして、Fe粉末を15at %まで又は85at %以上の割合で使用することが好ましい。
また、金属Mとしては、Ca、Au、Ag、Ni及びCrをそれぞれ単独で使用することができ、或いは2種以上組み合わせて使用することができる。2種以上組み合わせて使用する場合のそれらの配合割合は特に制限されず、任意とすることができる。
本発明の第二の態様において、Fe/Co粉末、Pt粉末及びP源粉末に加えて、M粉末を使用すると、P源粉末を単独で使用する場合に比べて、結焼体の密度をさらに向上させることができる。しかして、M粉末の添加量が0.1at %未満では、焼結体の十分な密度向上効果が得られず、30at %を超えると、相対的にPtの比率が低下し、低融点相の形成が不十分となり、焼結体の密度が低下する可能性がある。
Fe/Co粉末、Pt粉末及びP源粉末の混合物又はFe/Co粉末、Pt粉末、P源粉末及びM粉末の混合物は、次いで、焼結装置のモールドに充填され、焼結が行われる。使用し得る焼結装置としては、例えば、プラズマ放電焼結機、ホットプレス機,HIP装置等が挙げられ、モールドの材質としてはカーボンや窒化ボロンが好適である。焼結は減圧下に又はアルゴンガス、キセノンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で、加圧下に加熱することにより行うことができ、圧力としては、一般に5〜50MPa、特に10〜40MPaの範囲内が好適であり、また、加熱温度としては、一般に900〜1550℃、特に900〜1500℃の範囲内の温度が好ましい。
本発明においては、混合物を加圧焼結する前に、仮焼結を行うことが好ましい。この仮焼結は、混合物をモールドに充填し、予め加圧した後又は加圧しながら、減圧下に又はアルゴンガス、キセノンガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中で、加熱することにより行うことがでる。圧力としては、一般に5〜50MPa、特に10〜45MPaの範囲内が好適であり、また、加熱温度としては、一般に450〜700℃、特に500〜650℃の範囲内の温度が好適であり、加熱時間は、例えば、プラズマ放電焼結機を用いた場合には0.5〜20分間、ホットプレス機を用いた場合には10〜180分間とすることができる。
この仮焼結により、混合物中のPt粉末とP源粉末から遊離したPとが反応して、例えばPtのような低融点相が生成し、これがバインダー代りとなって、部分的に溶融した状態(半溶融状態)で焼結が進行し、それをさらに焼結することにより、P単体が実質的に存在しない焼結合金を取得することができる。
なお、仮焼結を行わずに直接前記条件下に焼結を行うと、生成するPtのような低融点相がモールドから溶け出し、目標とする組成をもつ焼結合金が得られないことがあるが、仮焼結を行うと、焼結時に固液反応が起りモールドからの溶け出しを防ぐことができる。
かくして、本発明の第一の態様によれば、原子比(at %)における組成式
(Fe1−aCo)xPt(100−x−y)Py
式中、
0≦a≦1、好ましくは0≦a≦0.15又は0.85≦a≦1、
29.9≦x≦69.9、好ましくは35≦x≦65、
0.1≦y≦13、好ましくは0.5≦y≦10、
で示されるFe/Co−Pt−P合金(不可避不純物を含有し得る)を取得することができ、また、本発明の第二の態様によれば、原子比(at %)における組成式
(Fe1−aCo)xPt(100−x−y−z)PyMz
式中、
0≦a≦1、好ましくは0≦a≦0.15又は0.85≦a≦1、
29.8≦x≦69.8、好ましくは35≦x≦64.5、
0.1≦y≦13、好ましくは0.5≦y≦10、
0.1≦z≦30、好ましくは0.5≦z≦20
で示されるFe/Co−Pt−P−M焼結合金(不可避不純物を含有し得る)を取得することができる。
以上の如くして製造される本発明に従うFe/Co−Pt−P焼結合金及びFe/Co−Pt−P−M焼結合金は、密度が高く且つ空隙等の欠陥が少なく、スパッタリングタ−ゲット材又は蒸着材として用いて、基板上に磁性体薄膜を形成せしめるのに有利に使用することができる。
例えば、RFスパッタリング装置、DCスパッタリング等の一般的なスパッタリング装置を用い、本発明の焼結合金を陰極とし且つ基板を陽極として、アルゴンガスやキセノンガス等の不活性ガス雰囲気中で減圧下(数Pa以下)でグロー放電を行うことにより、基板上に本発明の焼結合金からなる磁性体薄膜を形成せしめることができる。
また、例えば、電子ビーム蒸着法等の蒸着法に従い、電子ビームを本発明の焼結合金に衝突させて蒸発させ、気化した合金を基板上に堆積させることによって、基板上に本発明の焼結合金からなる磁性体薄膜を形成せしめることができる。
かくして形成される薄膜は、通常、保磁力をもたないA1結晶構造を呈した不規則状態にあるので、これを約500〜約700℃の温度で熱処理することにより、高い保磁力をもつL1結晶構造である規則状態に変換する(規則化する)ことが望ましい。
本発明の焼結合金を用いて形成される磁性体薄膜は、保磁力が大きい、磁気異方性エネルギーが高い等の優れた磁気特性を有しており、例えば、磁気記録媒体用の磁性膜、特に高い磁気記録密度が要求される垂直磁気記録媒体用の垂直磁化膜として利用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜26及び比較例1〜19
Fe粉末、Co粉末、Pt粉末、赤リン粉末、Cu粉末、Au粉末、Ag粉末、Ni粉末及びCr粉末を、下記表1に示す組成割合(at %)となるように秤量し、V型混合機に仕込み、大気中で1時間乾式混合した。
なお、赤リン粉末としては98%の純度のものを用い、Fe粉末、Co粉末、Cu粉末、Ni粉末及びCr粉末としては99.5%以上の純度のものを用い、そしてPt粉末、Au粉末及びAg粉末としては99.9%以上の純度のものを用いた。また、各粉末の粒径はいずれも150μm以下であった。
Figure 2012031441
上記で得た粉末混合物各30gを、プラズマ放電焼結機(住友石炭鉱業(株)製)のカーボンモールド(内径φ30mm)に充填し、アルゴンガス雰囲気下に、下記の条件:
圧力:40MPa
加熱条件:
仮焼結 500〜600℃、1分間保持、
焼 結 1300〜1400℃、1分30秒間保持、
で焼結を行い、焼結合金を得た。
得られた焼結合金の相対密度及び空隙率を以下の方法で評価した。
相対密度はアルキメデス法により密度を測定し、理論密度に対する実測密度の比を算出した。
理論密度は、下記式1により算出し、相対密度は式2により算出した。
式1:ρ=W/V=(WFe+WCe+WPt+W+WCu+WAu+WAg+WNi+WCr)/[(WFe/ρFe)+(WCo/ρCo)+(WPt/ρPt)+(W/ρ)+(WCu/ρCu)+(WAu/ρAu)+(WAg/ρAg)+(WNi/ρNi)+(WCr/ρCr)]
ρ:理論密度、W:全重量、V全体積、
Fe:Feの重量、WCo:Coの重量、WPt:Ptの重量、W:Pの重量、
Cu:Cuの重量、WAu:Auの重量、WAg:Agの重量、WNi:Niの重
量、WCr:Crの重量、
ρFe:Feの密度、ρCo:Coの密度、ρ:Ptの密度、ρ:Pの密度、ρ
Cu:Cuの密度、ρAu:Auの密度、ρAg:Agの密度、ρNi:Niの密度
、ρCr:Crの密度。
式2:相対密度(%)=(ρ/ρ)×100
ρ:実測密度。
相対密度の場合、空隙等への水の浸入等による密度の測定誤差も考えられることから、空隙率も同時に測定した。
空隙率は、試料断面を鏡面研磨した後、表面を顕微鏡で観察し(倍率:×100)、空隙の面積を測定し、下記式3に従い、観察面面積に対する空隙の面積の比から算出した。
式3:空隙率(%)=(a/A)×100
a:観察面中に存在する空隙の全面積,A:観察面面積。
結果を下記表2に示す。
Figure 2012031441
上記表2に示すとおり、本発明に従う実施例1〜26の焼結合金は、いずれも相対密度
が97%以上であり、空隙率も0.5%以下であって良好な焼結密度を有している。これに対し、比較例1〜19の焼結合金の相対密度は97%に満たず、空隙率も0.8%以上であった。
なお、一部焼結密度が100%を超えているものがあるが、X線回折(XRD)による解析の結果、PtやFeP等の金属間化合物のピークが見られ、各元素の密度から算出した理論密度と実際に作製した化合物相を有した理論密度との差が生じたため、100%を超えたと考えられる。
Pの添加は、0.1%の少量添加でも焼結密度は向上しており効果が確認できた。また、Pを多量に添加した比較例9〜14の焼結合金では、逆に焼結密度が低下することがわかった。比較例8及び9の焼結合金をXRDにより解析した結果、P単体のピークが確認され、未反応の余剰Pが焼結時に蒸発し、空隙率を増加させたと考えられる。
また、その他元素としてのCu、Au、Ag、Ni、Crの多量添加(比較例15〜19)は、P添加効果が打ち消され、無添加焼結体とほぼ同等の焼結密度となることがわかった。
なお、実施例1〜26及び比較例1〜14において、仮焼結を省略した場合、Pを2at
%以上添加した混合物において、焼結時にカーボンモールトの隙間から溶融金属の一部漏れ出しが見られた。
比較例15〜19では、Pが2at %添加されているにもかかわらず、仮焼結を省略しても、焼結中の溶融金属の漏れ出しは観察されなかったが、これは他元素(Cu、Au、Ag、Ni、Cr)の多量添加によって、仮融点相の十分な形成が妨げられたためであると考えられる。
さらに、X線回折(XRD)により、得られた焼結合金中に存在する相の同定を行った。その結果を下記表3に示す。
Figure 2012031441
上記表3に示すとおり、実施例1〜26の焼結合金では、いずれも、P単体のピークは確認されなかった。しかしながら、Pが多量添加された比較例8〜14の焼結合金では、P単体のピークが確認され、P単体が存在することがわかる。
実施例27
上記実施例で製造した焼結合金をスパッタリングターゲット材として使用し、スパッタリングにより成膜した場合に、形成される膜が熱処理により規則化する(L1結晶構造となる)かどうかを確認するため、実施例14の焼結合金を代表例として用い、スパッタリング実験を行った。
実施例14と同様にして得られた焼結合金インゴット4枚を貼り合わせφ4インチターゲットとなるように切削加工し、バッキングプレート上に貼り合わせて4インチターゲッ
トを作製した。
この4インチターゲットをRFマグネトロンスパッタ装置((株)昭和真空製)にセットし、膜厚が約70nmとなるようにスライドガラス上に成膜し、次いでその薄膜付ガラス基板を0.2l/分水素気流中で500℃において1時間熱処理した。
得られた膜の組成をICP発光分光分析により分析し、配合組成と比較した。その結果を下記表4に示す。
Figure 2012031441
この結果から、各元素とも、配合組成と分析結果とが±1.0%の範囲内に収まっており、焼結合金の組成と原材料の配合組成とはほぼ一致していることがわかる。
さらに、得られた薄膜をX線回折(XRD)により解析した。その結果、規則状態であるL1構造の特徴である面指数(001)、(110)、(200)、(002)のピークが確認された。
熱揺らぎエネルギーの影響を抑え、記録の高密度化を実現するためには、磁気異方性定数Kuを大きくする必要がある。そのため、磁気異方性定数が大きいFe50Pt 50 合金、Co50Fe 50 合金が注目されており、これらの合金は、L10構造の規則相を形成させることにより、高い磁気異方性定数が得られることが知られている。

Claims (6)

  1. Fe及び/又はCo、Pt及びPの合計量を基準にして、原子比で、29.9〜69.9at %のFe及び/又はCoと30〜70at %のPt粉末と0.1〜13at %のP源粉末を混合し、その混合物を加熱下に加圧焼結することを特徴とする、原子比(at %)における組成式:
    (Fe1−aCo)xPt(100−x−y)Py
    式中、0≦a≦1、29.9≦x≦69.9、0.1≦y≦13、30≦x+y≦70、
    で示されるFe/Co−Pt−P焼結合金の製造方法。
  2. Fe及び/又はCo、Pt、PならびにCu、Au、Ag、Ni及びCrから選ばれる少なくとも1種の金属(M)の合計量を基準にして、原子比で、29.8〜69.8at %のFe及び/又はCo粉末と30〜70at %のPtと0.1〜30at %の金属(M)粉末及び0.1〜13at %のP源粉末を混合し、その混合物を加熱下に加圧焼結することを特徴とする、原子比(at %)における組成式
    (Fe1−aCo)xPt(100−x−y−z)PyMz
    式中、0≦a≦1、29.8≦x≦69.8、0.1≦y≦13、0.1≦z≦30、
    30≦x+y+z≦70、
    で示されるFe/Co−Pt−P−M焼結合金の製造方法。
  3. 加圧後又は加圧しながら、減圧下又は不活性ガス雰囲気中で、450〜700℃の温度で仮焼結した後、900℃以上の温度で加圧焼結する請求項1又は2に記載の方法。
  4. P単体が実質的に存在しない、原子比(at %)における組成式
    (Fe1−aCo)xPt(100−x−y)Py
    式中、0≦a≦1、29.9≦x≦69.9、0.1≦y≦13、30≦x+y≦70、で示されるFe/Co−Po−P焼結合金。
  5. P単体が実質的に存在しない、原子比(at %)における組成式
    (Fe1−aCo)xPt(100−x−y−z)PyMz
    式中、MはCu、Au、Ag、Ni及びCrから選ばれる少なくとも1種の金属であ
    り、0≦a≦1、29.8≦x≦69,8、0.1≦y≦13、0.1≦z≦30、
    30≦x+y+z≦70、
    で示されるFe/Co−Pt−P−M焼結合金。
  6. 請求項4又は5に記載の焼結合金よりなるスパッタリングターゲット材又は蒸着材。
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