JP2012031140A - 骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法 - Google Patents

骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

【課題】骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法の提供。
【解決手段】事前にレナリドマイドに曝露された患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩を含む組成物。または、エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドを含む組成物。エザチオスタットまたはその塩が少なくとも2週間毎日投与される。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法に関する。
技術の現状
骨髄異形性症候群(MDS)は、1つ以上の細胞系統(赤血球、白血球または血小板)を含む無効造血(血球生成)および急性骨髄性白血病(AML)に変換する可変性のリスクによって特徴付けられるクローン性造血幹細胞疾患の不均質なグループを指す。この症候群は、年齢と共に多く見られるようになる。世界中でおよそ300,000人がMDSを発症していると推定されている。米国癌協会によると、米国単独で毎年10,000〜20,000件のMDSの新たな症例が診断されている。現在の治療法を使用する場合の生存率は6ヶ月〜6年に及び、患者は疾患の管理にしばしば輸血を要する。
現在、MDSを治療するための3つの薬物が米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている。レナリドマイドは5q欠失(del(5q))を有し、疾患のリスクがより少ない輸血依存患者のMDS治療に適応され、一方、アザシチジンおよびデシタビンは全てのカテゴリーについて認可されている。5q欠失(del(5q))患者を除いて、奏効率はおよそ50%であるが、これは新たな薬剤の臨床試験の必要性を強調するものである。
エザチオスタット(Ezatiostat)およびその塩は、米国特許第5,763,570号に開示されている。エザチオスタットは、IUPAC化学名、エチル(2S)−2−アミノ−5−[[(2R)−3−ベンジルスルファニル−1−[[(1R)−2−エトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル]アミノ]−1−オキソプロパン−2−イル]アミノ]−5−オキソペンタノエートを有する。
エザチオスタットの塩の1つの例は塩酸塩、すなわちエザチオスタット塩酸塩(米国一般名)であり、分子量566.1、登録商標テリントラ(Telintra(登録商標))、およびCAS登録番号286942−97−0を有する。2011年3月4日に出願された米国特許出願第13/041,136号は、エザチオスタット塩酸塩の非溶媒和物(ansolvate)および多形を記載している。
米国血液学会の2005年年会(要約#2250)およびRaza et al. in Journal of Hematology & Oncology, 2:20(2009年5月13日にオンライン上で公開)で報告されているように、エザチオスタット塩酸塩は、リポソーム製剤を使用する第I〜IIa相研究にてMDSの治療について評価されており(米国特許第7,029,695号);米国血液学会の2007年年会(要約#1454)およびRaza et al. in Blood, 113:6533-6540(2009年4月27日にオンライン上で事前公開)で報告されているように、錠剤製剤を使用する第I相研究にて評価されており、単独の患者症例の場合はQuddus et al. in Journal of Hematology & Oncology, 3:16(2010年4月23日にオンライン上で公開)によって報告されている。
本出願中で言及している特許、特許出願、および出版物のそれぞれの全開示は、参照することによって本出願に援用される。
発明の概略
1つの実施態様では、本発明は患者が事前にレナリドマイドに曝露されている場合に患者のMDSを治療する方法であって、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩によって該患者を治療することを含む方法である。
1つの実施態様では、本発明はエザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドの投与によってMDSを治療する方法である。
別の実施態様では、本発明はエザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドを投与し、次いでエザチオスタットまたはその塩を単独で投与することによってMDSを治療する方法である。
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は少なくとも2週間毎日投与される。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は少なくとも3週間毎日投与される。
本発明の方法では、エザチオスタットまたはその塩は、2011年5月16日に出願された米国特許出願第13/108,752号、表題「骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法」に記載されている投与計画によって投与されてよい(その全体において参照することによって援用され、2010年6月7日に出願された米国仮出願第61/352,371号に対する優先権を主張する)。例えば、エザチオスタットまたはその塩は2グラム/日にて3週間経口投与し/1週間中断する周期、または3グラム/日にて2週間経口投与し/1週間中断する周期にて投与されてよい。エザチオスタット自体もしくは他のエザチオスタット塩について等価なエザチオスタット用量、または他の投与経路について等価なエザチオスタット用量も使用されてよい。
別の態様では、本発明は事前にレナリドマイドに曝露された患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩を含む組成物であって、エザチオスタットまたはその塩が少なくとも2週間毎日投与される組成物を提供する。
別の態様では、本発明は患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドを含む組成物を提供する。
別の態様では、本発明は患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩を含む組成物であって、レナリドマイドと共に使用される組成物を提供する。
別の態様では、本発明はレナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその塩を含む組成物を提供する。該組成物は好ましくは投与を促進するための医薬的に許容される賦形剤を含有する。
さらに別の態様では、本発明はレナリドマイドを含む第1組成物およびエザチオスタットまたはその塩を含む第2組成物を含むMDSの治療用キットを提供する。
本発明のこれらおよび他の実施態様は、以下の文章にさらに記載されている。
発明の詳細な記載
本発明をさらに詳細に記載する前に、最初に以下の用語を定義する。
本発明は記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、もちろんそれ自体変化してよいと理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用されている専門用語は特定の実施態様を記載する目的のみを有するのであって、限定することを意図するのではないことも理解されたい。
文脈において別段の明確な指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」、および「the」は複数の指示対象を含むことに留意されたい。それゆえ、例えば、「医薬的に許容される賦形剤(a pharmaceutically acceptable excipient)」への言及は、複数の医薬的に許容される賦形剤を含む。
1. 定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書で使用されている下記の用語は下記の意味を有する。
用語「を含む(comprising)」または「を含む(comprises)」は、組成物および方法が示された要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味する。組成物および方法を定義するために「〜から本質的になる」が使用されている場合、示された目的のための組み合わせに対するいずれかの本質的な意義を有する他の要素を排除することを意味すべきである。それゆえ、本明細書で定義する要素から本質的になる組成物は、請求項に係る発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない他の物質またはステップを排除しないであろう。「〜からなる」は、微量要素を超える他の成分および実質的な方法ステップを排除することを意味する。これらの移行用語(transition terms)のそれぞれによって定義される実施態様は、本発明の範囲内に含まれる。
用語「約」が数字表示、例えば、温度、時間、量、および濃度(これらの範囲を含む)の前に使用される場合、(+)または(−)15%、10%、5%または1%の範囲で変動してよい近似値を示す。
「レナリドマイド」(レブリミド(Revlimid(登録商標))、英国ではレバミド(Revamid)としても知られている)は、抗血管新生および抗悪性腫瘍特性を有する免疫調節薬である。それは、化学名3−(4−アミノ−1−オキソイソインドリン−2−イル)ピペリジン−2,6−ジオン、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンまたは3−(7−アミノ−3−オキソ−1H−イソインドール−2−イル)ピペリジン−2,6−ジオン、およびCAS登録番号191732−72−6を有する。レナリドマイドは、5q欠失の染色体異常と関連する低リスクまたは中等度−1リスクのMDSによる輸血依存患者の治療に適応される。レナリドマイドは、5ミリグラム(mg)、10mg、15mgおよび25mgの経口投与用カプセル剤にて入手可能である。
用語「治療的有効量」は、治療を必要としている対象に投与された場合に、本明細書で定義される該治療を達成するのに十分な量である、レナリドマイドもしくはエザチオスタットもしくはその塩、または組み合わせ(「合わせて、一緒に、共に(together)」)の量を指す。1つの実施態様では、治療的有効量は最大3.5グラム(g)のエザチオスタットまたはその塩の1日投与量であろう。好ましくは、エザチオスタットまたはその塩は2グラム/日の量にて投与され、より好ましくは、等しい1グラム用量にて1日2回投与される。治療計画が3週間のエザチオスタットまたはその塩の投与と、続く1週間の該薬物の非投与である場合に、そのような治療的有効量は特に関連がある。別の実施態様では、治療的有効量は単回投与にて、または1.5グラムずつの2回の等しい1日用量にて投与される3グラムのエザチオスタットまたはその塩であろう。そのような治療的有効量は、治療計画が2週間のエザチオスタットまたはその塩の投与と、続く1週間の該薬物の非投与である場合に特に関連がある。好ましくは、投与計画では、2グラムのエザチオスタットまたはその塩を、継続投与(continuous administration)または同時投与(with administration)によって1日2回の1グラム用量の量にて3週間投与し、次いで該薬物を1週間投与しない。
1つの実施態様では、治療的有効量は、治療される集団の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%に効果的な結果を提供するであろう。
本明細書で使用されている用語「治療」または「治療すること」は、下記の1つ以上を生じる患者のMDSのいずれかの治療を意味する:
・MDSを阻害すること、すなわち、臨床症状(例えば、輸血の必要性、および血球数の異常など)の発症を停止または抑制すること;および/または
・MDSを軽減すること、すなわち、症状の退行をもたらすこと。
本明細書で使用されている用語「患者」は哺乳類を指し、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む。
2. 方法
その方法的態様の1つにおいて、本発明は事前にレナリドマイドに曝露された治療を必要としている患者の骨髄異形性症候群(MDS)を治療する方法であって、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩によって該患者を治療することを含む方法に向けられている。
エザチオスタット塩酸塩で治療する前にレナリドマイドで治療された患者は、レナリドマイドで前治療されなかった患者と比較すると、より高い奏効率および/または持続期間を示すことが、予想外に発見された。例えば、第2表に示すように、レナリドマイドで前治療されなかった患者の奏効率は約22%であるのに対し、レナリドマイドで前治療された患者の奏効率は約46%であり、100%以上の奏効率の増加を示した。
事前にレナリドマイドに曝露することは、エザチオスタットまたはその塩の投与より前のいずれかの時に患者へレナリドマイドを投与することであってよい。典型的なレナリドマイド治療スケジュールは28日周期を含み、その間レナリドマイドが1日1回、毎日、21日間(3週間)投与され、次いでレナリドマイドが投与されない7日間(1週間)の中断がある。この28日周期は最大6ヶ月の間継続して繰り返されてよい。レナリドマイドカプセル剤は4つの異なる用量を有する:5mg、10mg、15mg、および25mgである。
本発明のいくつかの実施態様では、患者は少なくとも1投与量のレナリドマイドで治療されている。いくつかの実施態様では、患者は少なくとも2日間、3日間、4日間、5日間、または6日間レナリドマイドで治療されている。いくつかの実施態様では、患者は少なくとも1週間、2週間または3週間レナリドマイドで治療されている。いくつかの実施態様では、患者は1、2、3、4、5、または6回のレナリドマイド治療周期を終了している。いくつかの実施態様では、患者は全体で6ヶ月間のレナリドマイド治療計画を終了している。
本発明のいくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩の投与より前にレナリドマイドで治療された患者はレナリドマイドに対する不耐性を発症しており、エザチオスタットまたはその塩の投与を開始する前にレナリドマイドによる治療を中止し、またはより低用量のレナリドマイドに切り替えている。患者は周期の終了後または周期の間、レナリドマイドに対する患者の耐性に依存してレナリドマイドを使用することを中止し、またはより低用量のレナリドマイドに切り替えてよいことを理解されたい。
サリドマイドの誘導体として、レナリドマイドは多くの副作用、例えば先天異常および他の有害事象を引き起こしうる。報告された有害事象は、限定されるものではないが、下記に関連するものを含む:
・血液およびリンパ系疾患、例えば血小板減少症、好中球減少症、例えば、発熱性好中球減少症、白血球減少症、貧血、溶血性貧血、例えば、温式溶血性貧血、脾臓梗塞、骨髄抑制、凝固障害、溶血、および不応性貧血;
・皮膚および皮下組織疾患、例えば発疹、乾燥皮膚、挫傷、寝汗、発汗の増加、斑状出血、および紅斑;
・胃腸疾患、例えば下痢、便秘、悪心、腹痛、嘔吐、上腹部痛、口渇、軟便、胃腸出血、虚血性大腸炎、腸穿孔、直腸出血、結腸ポリープ、憩室炎、嚥下障害、胃炎、胃腸炎、胃食道逆流症、閉塞性鼡径ヘルニア、過敏性腸症候群、下血、胆管閉塞による膵炎、膵炎、直腸周囲膿瘍、小腸閉塞、および上部消化管出血;
・呼吸器、胸郭および縦隔疾患、例えば上咽頭炎、咳、呼吸困難、咽頭炎、鼻血、労作性呼吸困難、鼻炎、および気管支炎;
・筋骨格および結合組織疾患、例えば関節痛、背痛、筋痙攣、四肢の痛み、筋肉痛および末梢腫脹(peripheral swelling)、関節炎、関節炎増悪(arthritis aggravated)、痛風性関節炎、頚部痛、およびピロリン酸カルシウム結晶性軟骨石灰化症(chondrocalcinosis pyrophosphate);
・良性または悪性新生物、例えば急性白血病、急性骨髄性白血病、気管支肺胞癌、肺癌、リンパ腫、および前立腺癌;
・神経系疾患、例えばめまい、頭痛、知覚鈍麻、味覚異常、および末梢神経障害;
・感染および寄生、例えば肺炎、尿路感染、副鼻腔炎、蜂窩織炎、感染、菌血症、中心線感染、クロストリジウム感染、耳感染、エンテロバクター性敗血症、真菌感染、ヘルペスウイルス感染、インフルエンザ、腎臓感染、クレブシエラ敗血症、大葉性肺炎、限局性感染、経口感染、シュードモナス感染、敗血症ショック、急性副鼻腔炎、副鼻腔炎、ブドウ球菌感染、および尿路性敗血症;
・代謝および栄養疾患、例えば低カリウム血症、食欲不振、低マグネシウム血症、脱水症、痛風、高ナトリウム血症、および低血糖;
・精神疾患、例えば不眠症、錯乱状態およびうつ病;
・腎臓および尿路疾患、例えば排尿障害、腎不全、血尿、急性腎不全、高窒素血症、尿管結石、および腎腫瘤;
・生殖器系および乳房疾患、例えば骨盤痛;
・血管および心臓疾患、例えば高血圧症、動悸、鬱血性心不全、心房細動、狭心症、心停止、心不全、心肺停止、心筋症、心筋梗塞、心筋虚血、心房細動悪化(atrial fibrillation aggravated)、徐脈、心原性ショック、肺浮腫、上室性不整脈、頻脈性不整脈、および心室機能障害;
・内分泌疾患、例えば後天性甲状腺機能低下症;
・耳および迷路疾患、例えばめまい;
・肝胆道疾患、例えば高ビリルビン血症、急性胆嚢炎、胆嚢炎、および肝不全;
・内分泌疾患、例えばバセドウ病;
・免疫系疾患、例えば過敏症;
・全身性障害(general disorders)、例えば疾患進行、低下(fall)、歩行障害、間欠熱、小結節(nodule)、悪寒、および突然死;
・投与部位の状態(administrative site conditions)、例えば大腿骨骨折、輸血反応、頚椎骨折、大腿骨頚部骨折、骨盤骨折、股関節骨折、過剰投与、処置後出血、肋骨骨折、交通事故、および脊椎圧迫骨折;ならびに
・他の所見、例えば血中クレアチニン増加、ヘモグロビン減少、肝機能検査異常、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、およびトロポニンIの増加。
最も一般的および/または重篤な有害事象は、好中球減少症、血小板減少症、肺炎、発疹、貧血、白血球減少症、疲労、呼吸困難、背痛、発熱性好中球減少症、悪心、下痢、発熱、敗血症、めまい、顆粒球減少症、胸痛、肺塞栓症、呼吸窮迫、掻痒、汎血球減少症、筋痙攣、気道感染、上気道感染、無力症、多臓器不全、鼻血、低酸素症、胸水、間質性肺炎、肺高血圧症、嘔吐、発汗増加、関節痛、四肢の痛み、頭痛、および失神を含む。
特定の患者集団では、有害事象の1つ以上が非常に重篤であるため、レナリドマイドをもはや患者へ投与することができず、または投与量を減少させてレナリドマイドを投与しなければならなくなる。こうした状況では、レナリドマイドからエザチオスタットもしくはその塩への切り替えまたはエザチオスタットもしくはその塩の付加は、有害作用を回避するのみならず、エザチオスタットまたはその塩についてのより良い治療効果を提供しうる。
本発明のいくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩の投与より前にレナリドマイドで治療された患者はレナリドマイドに応答しないか、または継続的なレナリドマイド治療ではレナリドマイドに対する応答が続かない。レナリドマイドを投与された患者の約50%が臨床的に認識できる応答を示すと報告されている。こうした状況では、レナリドマイドに応答しなかったか、または応答しなくなった患者をエザチオスタット塩酸塩で治療することは、予想外に優れた治療効果および臨床症状の減少をもたらす。この場合、エザチオスタットまたはその塩の投与と共にレナリドマイドによる治療を同一の投与量もしくは減少した投与量で続けてよく、またはレナリドマイドによる治療を完全に中止してよい。
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩は、少なくとも2週間毎日投与される。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩は、少なくとも3週間毎日投与される。
別の方法的態様では、本発明は患者の骨髄異形性症候群(MDS)を治療する方法であって、レナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩を該患者に同時投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩は、少なくとも2週間毎日投与される。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩は、少なくとも3週間毎日投与される。これらの場合、患者はエザチオスタット塩酸塩の投与より前にレナリドマイドで治療されていてよく、またはされていなくてもよい。前者は上記の状況を含む。
同時投与される場合、レナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその塩は、両薬剤の薬理効果が患者に同時に現れるいずれかの様式にて投与されてよい。それゆえ、レナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩の同時投与は、単一の医薬組成物、同一の剤形、同一の投与経路が2つの薬剤に使用され、2つの薬剤が同時に投与され、または2つの薬剤が同じような時間の長さで投与されることを要しない。実質的に同時に同一の剤形および同一の投与経路によって投与される場合、本発明の単一の新規医薬組成物にて同時に両有効成分を送達することによって進行してよい。上記に加えて、本発明は同時投与がそれぞれレナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩を含む第1および第2医薬組成物の投与であってよいことを考慮することが理解されるであろう。用語「同時」は、同時送達のみならず、両薬物の血清レベルを患者に同時に提供する様式にて各薬物が別々に投与される連続的な送達の両方を含む。
上記のように、MDSを治療するために患者にレナリドマイドを単独で利用している臨床医は、その治療計画のある時点で、該患者を治療するための付加的成分としてエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩を加えてよい。レナリドマイドと組み合わせたエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩のそのような後発的付加は、両薬物の効果が患者に同時に現れるであろうため、本発明の目的の同時投与を構成する。
別の実施態様では、本発明はエザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドを投与し、次いでエザチオスタットまたはその塩を単独で投与することによってMDSを治療する方法に関する。
本発明のいくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩と同時投与される場合、レナリドマイドは上記の典型的な28日周期にて投与され、いずれかの投与量にて投与されてよい。いくつかの実施態様では、レナリドマイドは投与量および/または頻度を減少させて投与され、例えば、レナリドマイドは2日、3日、4日、5日、または6日に1回投与されてよい。あるいは、エザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩による治療が継続する間、レナリドマイドは1週間に1回投与されてよく、または投与が中断されてよい。
典型的には、エザチオスタットまたはその塩は治療的有効量にて投与される。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は2011年5月16日に出願された米国特許出願第13/108,752号、表題「骨髄異形性症候群を治療するための組成物および方法」(その全体において参照することによって援用される)に記載されている投与計画によって投与される。
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は最大約3.5グラム/日のエザチオスタット塩酸塩、または等価な量(エザチオスタット含有量において)のエザチオスタット自体もしくは別のエザチオスタット塩にて投与される。好ましい実施態様では、エザチオスタットまたはその塩の投薬は、最大約1.5グラムの治療的有効量が1日2回(b.i.d.)投与される。
本発明の実施態様において、エザチオスタットまたはその塩は1グラム投与量が1日2回3週間投与され、次いでエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断がある。中断後、必要に応じて該投与計画は繰り返されてよい。この投与計画は、「3週間投与計画」と呼ばれてもよい。
本発明の実施態様において、エザチオスタットまたはその塩は1.5グラム投与量が1日2回2週間投与され、次いでエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断がある。中断後、必要に応じて該投与計画は繰り返されてよい。この投与計画は、「2週間投与計画」と呼ばれてもよい。
本発明の別の実施態様では、患者は最大3グラム/日、好ましくは最大1.5グラム投与量が1日2回投与されるエザチオスタットまたはその塩の治療的有効量で継続的に治療される。この実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、患者が必要とし、かつ該治療に耐えることができる限り投与されてよい。この実施態様では、治療計画に中断がある場合、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量はそれより少なくても多くてもよいことが考慮されている。この投与計画は、「継続的投与計画」と呼ばれてもよい。
1日2回投与が好ましい一方、1日1回投与または1日3回投与が利用されてもよいことが考慮されている。前者の場合、1日1回投与は患者の服薬遵守を補助するであろう;一方後者の場合、より大きな錠剤を嚥下することが困難な患者のためにより小さな錠剤が使用されてよい。投与される薬物の量は、1日当たり投与される薬物の総量が治療的有効量となるように調整されるであろう。
エザチオスタットまたはその塩による治療は、本明細書で記載した1つの投与計画または2つ以上の投与計画の組み合わせを含んでよい。下記にエザチオスタット塩酸塩の投薬スケジュールを例証する:
・1.5グラムのエザチオスタット塩酸塩を1日2回2週間、総投薬量42グラムを投与し、次いで1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・1グラムのエザチオスタット塩酸塩を1日2回3週間、総投薬量42グラムを投与し、次いで1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・投与を中止することが患者のために適切であると主治医が見なすまで、1グラムのエザチオスタット塩酸塩を1日2回継続的に投与する;
・1日当たり最大3グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を1回、2回、または3回の分割用量にて2週間投与し、次いで1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・1日当たり最大2グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を1回、2回、または3回の分割用量にて3週間投与し、次いで1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;および/または
・投与を中止することが患者のために適切であると主治医が見なすまで、1日当たり最大2グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を1回、2回、または3回の分割用量にて継続的に投与する。
上記投薬におけるエザチオスタット塩酸塩は、等価な量のエザチオスタット自体またはエザチオスタットの別の塩(エザチオスタット含有量において)に置き換えられてもよい。
エザチオスタットまたはその塩の投与が1日2回である場合、初回投与と2回目の投与の間の間隔は約6〜14時間、好ましくは約8〜14時間であることが好ましい。
1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩、例えば、エザチオスタット塩酸塩は、米国特許第7,029,695号(その全体において参照することによって援用される)に記載されているような脂質製剤として静脈内投与されてよい。
別の実施態様では、エザチオスタットまたはその塩、例えば、エザチオスタット塩酸塩は、経口投与されてよい。1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩、例えば、エザチオスタット塩酸塩は、錠剤製剤として投与されてよい。そのような錠剤製剤は、2011年3月29日に出願された米国特許出願第13/075,116号、表題「エザチオスタットの錠剤製剤」(その全体において参照することによって援用される)に開示されている。
3. 組成物
別の態様では、本発明はレナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその医薬的に許容される塩を含む組成物を提供する。
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドは合わせて(together)治療的有効量にて存在する。
いくつかの実施態様では、レナリドマイドおよび/またはエザチオスタットもしくはその塩は治療的有効量にて存在する。いくつかの実施態様では、組成物は約5mg、10mg、15mgまたは25mgのレナリドマイドおよび約200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgのエザチオスタットまたはその塩を含む。
1つの実施態様では、レナリドマイドは米国特許第7,029,695号に記載されているエザチオスタットまたはその塩の脂質製剤に加えられてよい。
別の実施態様では、レナリドマイドはエザチオスタットまたはその塩の錠剤製剤に加えられてよい。そのような錠剤製剤は、2011年3月29日に出願された米国特許出願第13/075,116号、表題「エザチオスタットの錠剤製剤」(その全体において参照することによって援用される)に開示されている。
4. キット
さらに別の態様では、本発明は本明細書で記載されたものを含む、レナリドマイドを含む第1組成物およびエザチオスタットまたはその塩を含む第2組成物を含むMDSの治療用キットを提供する。
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドは合わせて(together)治療的有効量にて存在する。
いくつかの実施態様では、キットはエザチオスタットまたはその塩の初回投与の前にレナリドマイドの初回用量を1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、または6日間投与するための説明書を有するラベルをさらに含む。いくつかの実施態様では、キットはエザチオスタットまたはその塩の投与前にレナリドマイドを1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間投与するための説明書を有するラベルをさらに含む。いくつかの実施態様では、キットはレナリドマイドをエザチオスタットまたはその塩と同時に投与するための説明書を有するラベルをさらに含む。いくつかの実施態様では、キットは本明細書で記載された投薬スケジュールのいずれかに従ってレナリドマイドおよびエザチオスタットまたはその塩を投与するための説明書を有するラベルをさらに含む。
本発明は下記の実施例を参照することによってさらに定義される。本発明の範囲から逸脱することなく物質および方法の両方について多くの修飾が行われてよいことは、当業者には明らかであろう。
国際予後システムスコア(International Prognostic System Score(IPSS))で低リスクから中等度−1リスクの骨髄異形性症候群を有する患者におけるエザチオスタット塩酸塩錠剤
87人の患者をランダム化し、23箇所の治験施設(investigational sites)で治療させた。14人の患者への初回量の投与後、さらなる研究のために2つの用量レベルを選択した。次いで、37人の患者について1日3グラムで2週間治療し、次いで休薬期間を1週間とり、36人の患者について1日2グラムで3週間治療し、次いで休薬期間を1週間とった。これら73人の患者のデータをこの予備的分析用にプールした。
年齢の中央値は72歳であり、IPSSの患者集団分布は低リスク(23人の患者、32%)および中等度−1リスク(50人の患者、68%)であった。患者は中央値で3つの事前のMDS治療を受けており、事前にレブリミド(Revlimid(登録商標))(レナリドマイド)を摂取した34人の患者(47%)および事前にDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DMTI)[アザシチジン、デシタビン]を摂取した28人の患者(38%)を含む。
予備的分析の時点で、8人の患者は臨床的有用性を継続するために治療を継続していた。全体の血液学的改善−赤血球(HI−E)率は22%であり、60人の評価可能患者のうち13人であった(95%CI、12.1〜34.2)。HI−E応答の持続期間の中央値は46週間であった(2〜51の範囲)。応答者においてヘモグロビンレベルの中央値は2.0グラム/dL増加した。38人の赤血球(RBC)輸血依存患者のうち11人(29%)が臨床的に有意なRBC輸血減少(4U/8週間の減少、IWG2006)を示し、4人の患者(11%)がRBC輸血非依存を達成し、3人の患者が治療を継続した。1人の患者は治療の中止後12ヶ月を超えて完全寛解を継続した(Quddus et. al., J. Hem. and Onc. Apr. 2010, 3:15)。
テリントラ(Telintra(登録商標))は多系列の血液学的改善を示し続ける。20人の患者のうち3人、すなわち15%の血液学的改善−好中球(HI−N)率が観察され(95%CI、3.2〜37.9)、二系列(bilineage)HI率(HI−EおよびHI−N)は11%で、19人の患者のうち2人であった(95%CI、1.3〜33.1)。
3つの細胞遺伝学的完全寛解があったが、その1つは45X、−Y[4]、46、XY[16]細胞遺伝学的異常を有していた患者におけるもので、4周期の治療後に正常に変化した。5qマイナス欠失(del 5q minus)を対象にした研究に登録された4人の患者のうち、以前にレブリミド(Revlimid(登録商標))治療が失敗した1人を含む2人は完全な細胞遺伝学的応答を示した。
テリントラ(Telintra(登録商標))に対するHI−E応答の可能性が増加した患者を定義するために、全ての既知の予後特性(prognostic characteristics)を評価するための計画的なロジスティック回帰分析(planned logistic regression analysis)を使用した。事前のDMTI治療によって、テリントラ(Telintra(登録商標))に対するHI−E応答の可能性の5倍減少が予想される(p=0.023)。事前のレブリミド(Revlimid(登録商標))治療によって、テリントラ(Telintra(登録商標))に対するHI−E応答が増加することが観測された。
・事前にレブリミド(Revlimid(登録商標))治療を受けたが事前にDMTI治療を受けなかった患者において、40%のHI−E率(15人の患者のうち6人、95%CI、16.3%〜67.7%)があった。この患者群において、11人の患者のうち5人(45%)は有意なRBC輸血減少を達成し、これらの患者のうち3人(27%)は輸血非依存を達成した。
・事前にレブリミド(Revlimid(登録商標))治療を受けず、かつ事前にDMTI治療を受けなかった患者において、26%のHI−E率(23人の患者のうち6人、95%CI、10.2%〜48.4%)があった。この群において、11人の患者のうち5人(45%)が有意なRBC輸血減少を達成した。
・事前にレブリミド(Revlimid(登録商標))治療を受けなかったが事前にDMTI治療を受けた患者において、0%のHI−E率(17人の患者のうち0人、95%CI、0%〜19.5%)があった。
403周期を超えるテリントラ(Telintra(登録商標))治療を行った。安全性データは治療された全ての患者に基づいている。最も一般的な非血液学的有害事象(AEs)は、それぞれグレード1および2の胃腸(GI)有害事象であり、悪心(45%、16%)、下痢(25%、7%)および嘔吐(30%、12%)であった。グレード3の事象はまれであった:悪心(1%)、下痢(3%)および嘔吐(2%)。事前のDMTI治療は、GI AEsの発生率の増加と関連があった。
テリントラ(Telintra(登録商標))治療はMDSを患う患者に臨床的に有意な血液学的改善をもたらし得、RBC輸血の代替手段を提供しうる。これらの結果は、テリントラ(Telintra(登録商標))、すなわちMDS患者に検査された最初のGST P1−1酵素阻害剤を対象にした以前の研究において観察された有効性のレベルと一致している。
第1表および第2表は、この臨床研究の結果を要約したものである。
第2表に示すように、テリントラ(Telintra(登録商標))に対する奏効率は、事前にレブリミド(Revlimid(登録商標))で治療しなかった患者についての約22.2%から、テリントラ(Telintra(登録商標))の投与より前にレブリミド(Revlimid(登録商標))で治療した患者についての約46.2%に増加した。
Figure 2012031140
Figure 2012031140

Claims (14)

  1. 事前にレナリドマイドに曝露された患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩を含む組成物であって、エザチオスタットまたはその塩が少なくとも2週間毎日投与される組成物。
  2. 患者がレナリドマイドに対する不耐性を発症している、請求項1記載の組成物。
  3. 患者が継続的なレナリドマイド治療による治療効果の減少または欠如を経験している、請求項1記載の組成物。
  4. エザチオスタットまたはその塩が治療的有効量にて投与される、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
  5. 患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するための、エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドを含む組成物。
  6. 患者の骨髄異形性症候群の治療に使用するためのエザチオスタットまたはその塩を含む組成物であって、レナリドマイドと共に使用される組成物。
  7. エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドが治療的有効量にて一緒に投与される、請求項5または6記載の組成物。
  8. エザチオスタットまたはその塩が経口投与される、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
  9. エザチオスタットまたはその塩が、2グラムの1日投与量の投与を3週間行い、次いでエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断を含む治療スケジュールに従って投与される、請求項8記載の組成物。
  10. エザチオスタットまたはその塩が、3グラムの1日投与量の投与を2週間行い、次いでエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断を含む治療スケジュールに従って投与される、請求項8記載の組成物。
  11. エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイド、ならびに任意に医薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
  12. エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドが合わせて治療的有効量にて存在する、請求項11記載の組成物。
  13. レナリドマイドを含む第1組成物およびエザチオスタットまたはその塩を含む第2組成物を含む、骨髄異形性症候群の治療用キット。
  14. エザチオスタットまたはその塩およびレナリドマイドが合わせて治療的有効量にて存在する、請求項13記載のキット。
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