JP2012028499A - エピタキシャルウェハの製造方法 - Google Patents

エピタキシャルウェハの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エピタキシャル膜の成長速度を高めることが可能な技術を提供する。
【解決手段】エピタキシャルウェハの製造方法は、ウェハ20表面に液体原料21を塗布する塗布工程を備える。また、塗布工程後に、ウェハ20表面を加熱する加熱工程を備える。塗布工程と加熱工程とは、塗布された液体原料21が加熱されることで形成されるエピタキシャル膜が、予め定められた所定厚さに成長するまで、繰り返し実行される。
【選択図】図1

Description

本願は、エピタキシャルウェハの製造方法に関する。ここで、エピタキシャルウェハとは、シリコンウェハなどの単結晶表面に、単結晶層をエピタキシャル成長させたウェハをいう。
気相エピタキシー法によるエピタキシャルウェハの製造方法では、原料をガス化して連続的に反応室へ送り込む。反応室内にはウェハが配置され、ウェハはヒータによって加熱されている。加熱されたウェハ表面に原料ガスを連続的に供給することで、ウェハ表面において原料ガスの熱分解等が行われ、エピタキシャル膜がウェハ表面に成長する。
特開2010−74000号公報
エピタキシャル膜がエピタキシャル成長する際には、原料ガスが熱分解すること等によりHClなどの副生成物ガスが発生する。特許文献1の技術では、ウェハが常に加熱されている状態でウェハ表面に原料ガスが供給される。このため、加熱されたウェハ表面に副生成物ガスが存在することとなり、発生した副生成物ガスによるエピタキシャル膜のエッチング反応が生じやすく、エピタキシャル膜の成長が抑制される。
本願の技術は、上記の問題を解決するために創案された。すなわち本願は、成長速度が高いエピタキシャル成長を可能とする技術を提供する。
本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、ウェハ表面に液体原料を塗布する塗布工程と、塗布工程後に、ウェハ表面を加熱する加熱工程と、を備える。また、塗布された液体原料が加熱されることで形成されるエピタキシャル膜が、予め定められた所定厚さに成長するまで、塗布工程と加熱工程とが繰り返し行われる。
本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法は、塗布工程と加熱工程を繰り返し実行することで、ウェハ表面に、ウェハと結晶軸の揃ったエピタキシャル膜を成長させる。塗布工程では、液体原料がウェハ表面に供給される。液体原料の例としては、液状のシラン化合物が挙げられる。ウェハ表面に供給された液体原料は、加熱工程によってウェハ表面温度が上昇することによって、化学反応が発生し、ウェハ表面にエピタキシャル膜が成長するとともに、HClなどの副生成物ガスが発生する。
本願の製造方法では、塗布工程ではウェハが加熱されておらず、加熱工程においてウェハが加熱される。このため、ウェハ表面が常に加熱されている場合に比して、ウェハ表面が高温状態とされている期間を短くすることができる。すなわち、ウェハ表面に供給された液体原料を化学反応させる間だけウェハ表面を高温とし、液体原料の化学反応が終了すると、ウェハ表面の温度を速やかに低下させることができる。ここで、副生成物ガスとエピタキシャル膜とのエッチング反応は、ウェハ表面温度が低くなるほど抑制される。よって本願の製造方法では、ウェハ表面が常に加熱されている場合に比して、副生成物ガスによるエッチング反応を抑制することが可能となり、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。
また、塗布工程と加熱工程は繰り返し行われる。よって、加熱工程後のウェハ表面に、液体原料が塗布される。このとき、ウェハ表面に吸着している副生成物などを、液体原料の塗布により除去することができる。また、液体原料の塗布後にはウェハ表面が液体原料で覆われるため、副生成物等がエピタキシャル膜に影響を及ぼすことを防止することができる。これにより、副生成物によってエピタキシャル膜がエッチングされることが防止できるため、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。
また、本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、液体原料は、シリコン原子が1つまたは2つ含まれている低次シラン化合物であることが好ましい。これにより、シリコン原子が4つ以上含まれているような高次シラン化合物を液体原料に用いる場合に比して、単結晶が成長し易くなり、エピタキシャル膜を効率的に成長させることができる。
また、本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、加熱工程後に実行される塗布工程は、ウェハ表面温度が液体原料の沸点以下まで低下した時点以降において実行されることが好ましい。これにより、液体原料をウェハ表面に塗布した際に、液体原料がウェハによって熱せられることで蒸発してしまう事態を防止することができる。
また、本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、シラン化合物は、トリクロロシランまたはテトラクロロシランであることが好ましい。トリクロロシラン(SiHCl)の沸点は、31.8(℃)である。また、テトラクロロシラン(SiCl)の沸点は、57(℃)である。よって、これらの化合物は、沸点が一般的な室温(約25℃)よりも高いため、塗布工程で蒸発しにくい。これにより、取り扱いを容易にすることが可能となる。
また、本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、加熱工程は、フラッシュランプヒータユニットで行われるとしてもよい。フラッシュランプヒータユニットは、キセノンランプなどを光源として用いることで、高温高速熱処理プロセスを実施可能な装置である。フラッシュランプヒータユニットは、数十万度毎秒というスピードで、ウェハ表面を昇降温する。よって、加熱工程に必要な時間を短時間とすることができる。また、ウェハ表面温度が、短時間で室温近辺へ低下するため、次の塗布工程を実行するまでの待ち時間を短くすることが可能となる。
また、本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法では、塗布工程および加熱工程を、反応室内にウェハを格納した状態で実行してもよい。また、塗布工程および加熱工程を実行する期間中においては、ウェハを格納する反応室に、補助ガスを所定濃度で供給してもよい。この場合に、加熱工程では、補助ガスを用いた液体原料の還元反応によりエピタキシャル膜を成長させてもよい。例えば、液体原料としてトリクロロシランやテトラクロロシランを用いる場合には、補助ガスとして水素(H2)を用いればよい。補助ガスを供給することで、液体原料の還元反応を促進することができるため、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。また、ウェハの酸化を防止することができる。
本願に開示されるエピタキシャルウェハの製造方法によれば、エピタキシャル膜の成長速度を高めることが可能となる。
成膜装置1の模式図である。 ウェハ上面の温度と経過時間とのグラフである。 エピタキシャル成長速度を示すグラフである。 HClによるシリコンエッチング速度を示すグラフである。
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。
(特徴1)液体原料としてトリクロロシランまたはテトラクロロシランを用いる。補助ガスとして水素(H2)ガスを用いる。
(特徴2)水素ガスによる圧送により、ウェハ上面へ、トリクロロシランまたはテトラクロロシランを滴下する。
本願の第1実施例について図面を参照しながら説明する。図1に、第1実施例の成膜装置1を示す。成膜装置1は、ウェハと結晶軸の揃ったエピタキシャル膜をウェハ表面に成長させる装置である。
成膜装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10内には、ステージ13、原料供給ライン14、補助ガス供給ライン15、排気ライン16が備えられている。ステージ13上には、ウェハ20が載置される。ステージ13は、吸着等によりウェハ20を保持する。またステージ13は、ウェハ20を保持したまま回転することが可能とされている。ウェハ20には、例えば単結晶シリコンが用いられる。原料供給ライン14は、液体原料21をウェハ20上に滴下するラインである。原料供給ライン14の排出口は、ステージ13の上方に設置されている。補助ガス供給ライン15は、チャンバ10内に水素ガスを供給するラインである。排気ライン16は、チャンバ10内の雰囲気を排出するためのラインである。ステージ13と原料供給ライン14は、スピンコータとして動作する。スピンコータとは、ウェハ20表面に液体原料21を均一に塗布するための、回転式塗布装置である。また、チャンバ10の側面には、ウェハ20の搬入および搬出を行うためのゲート部17が形成されている。ゲート部17は開閉可能となっている。
チャンバ10の上方には、フラッシュランプ12が備えられている。フラッシュランプ12は、長尺の円筒形状を有する棒状のキセノンフラッシュランプを、平行に平面状に多数配列した構成を有している。複数のキセノンフラッシュランプは、発光させる本数や発光時間を制御することができる。これにより、ウェハ20の表面温度の微調整を行うことが可能である。チャンバ10の上部にはチャンバ窓11が形成されている。チャンバ窓11は、赤外線透過性を有する材料(例えば石英)にて構成されている。チャンバ窓11は、フラッシュランプ12から出射された光を透過してチャンバ10内に導く。これにより、数十万度毎秒というスピードで、ウェハ20上面の表層のみを昇温することができ、加熱工程に必要な時間を短縮化することができる。
液体原料21は、エピタキシャル膜の原料である。液体原料21としては、ハロゲン化シラン(一般式SinHlYm、Yはハロゲンで、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかである)を用いることが好ましい。また、化学式中にシリコン原子が1つまたは2つ含まれているハロゲン化シラン(上記の一般式において、nが1または2、l+m=2n+2)を用いることがより好ましい。このような低次シラン化合物を用いることで、単結晶であるエピタキシャル膜を効率的に成長させることができる。
すなわち、化学式中にシリコン原子が4つ以上含まれているような、高次シラン化合物を液体原料に用いる場合、高次シラン化合物は、シリコン原子が複雑に絡み合った分子構造を有している。このため、高次シラン化合物を用いたエピタキシャル成長では、ウェハの結晶軸と揃った結晶軸を有する単結晶が成長しにくい事態や、シリコン原子の終端に位置する塩素原子や炭素原子が抜けにくい事態が発生し、多結晶膜が形成されやすい。
一方、化学式中にシリコン原子が1つまたは2つ含まれている低次シラン化合物を液体原料に用いる場合には、シラン化合物に含まれているシリコン原子が少ないため、単純な分子構造を有している。よって、ウェハの結晶軸と結晶軸の揃った単結晶が成長しやすくなる。また、シリコン原子の終端に位置する塩素原子や炭素原子が抜けやすくなる。これにより、エピタキシャル膜を効率的に形成することが可能となる。また、液体原料21に用いるシラン化合物としては、トリクロロシラン(SiHCl)またはテトラクロロシラン(SiCl)を用いることがより好ましい。トリクロロシランの沸点は、31.8(℃)である。また、テトラクロロシランの沸点は、57(℃)である。よって、これらの化合物は、沸点が一般的な室温(約25℃)よりも高いため、塗布工程で蒸発しにくい。これにより、取り扱いを容易にすることが可能となる。本実施形態では、例として、液体原料21としてトリクロロシランを用いる場合を以下に説明する。
本実施例に係る成膜装置1を用いた、エピタキシャル膜の成長方法を説明する。まず、チャンバ10のゲート部17が開放される。そして、図示しない搬送ロボットによりウェハ20がチャンバ10内に搬入され、ステージ13上に載置される。ウェハ20は、吸着によってステージ13に固定される。その後、ゲート部17が閉鎖されることにより、チャンバ10は外部雰囲気と遮断された密閉チャンバとなる。
補助ガス供給ライン15から補助ガスである水素ガス22をチャンバ10内に供給し、チャンバ10内を水素ガス22で満たしておく。なお、後述する成膜サイクルC1を繰り返し実行する期間中において、チャンバ10内の水素ガス22の濃度が所定濃度となるように、水素ガス22を供給する。チャンバ10内を水素ガス22で満たしておくことにより、ウェハ20の酸化を防止することができる。また、窒素や酸素等の他のガスと液体原料21とが反応してしまうことを防止することができる。
次に、成膜サイクルC1が繰り返し行われる。1回の成膜サイクルC1で、薄いエピタキシャル膜が形成される。そして、成膜サイクルC1を繰り返し行うことで、エピタキシャル膜を積層していく。成膜サイクルC1は、積層されたエピタキシャル膜が所定厚さになるまで、繰り返し実行される。図2に、1回の成膜サイクルC1における、ウェハ20上面の温度と経過時間とのグラフを示す。図2のグラフにおいて、横軸が経過時間(ms)、縦軸が温度(℃)である。図2に示すように、成膜サイクルC1は、塗布工程期間T1と、加熱工程期間T2とを備えている。
塗布工程期間T1で行われる、塗布工程の内容を説明する。塗布工程は、液体原料21(トリクロロシラン)をウェハ20上面に塗布する工程である。まず、補助ガスである水素ガス22による圧送により、原料供給ライン14の排出口からウェハ20上面へ、液体原料21を滴下する。塗布工程期間T1では、ウェハ20上面の表面温度は、常温(約25℃)とされている。よって、ウェハ20の表面温度が液体原料21であるトリクロロシランの沸点(31.8(℃))以下とされているため、液体原料21が沸騰して蒸発してしまうことを防止できる。
次に、ステージ13を回転させることによってウェハ20を回転させ、滴下した液体原料21を、ウェハ20上面に膜状に塗り広げる。液体原料21の塗布膜の厚さは、ステージ13の回転数が高いほど薄くなる。また、塗布工程期間T1に必要な時間は、100(ms)であった。
なお、液体原料21にトリクロロシランを用いる場合には、液体原料21の圧送には、水素ガス22を用いることが好ましい。水素ガス22はトリクロロシランの還元剤である。そして、水素ガス22を用いて圧送することで、トリクロロシランに水素ガス22が溶け込むため、より還元反応が発生しやすくすることができる。よって、エピタキシャル膜の成長速度を高めることが可能となる。
次に、加熱工程期間T2で行なわれる、加熱工程の内容を説明する。加熱工程期間T2は、昇温期間T21、反応期間T22、降温期間T23の3つの期間を備えている。本実施例では、加熱工程期間T2は、合計で24(ms)とされている。
昇温期間T21では、フラッシュランプ12を用いて、ウェハ20上面を加熱する。具体的には、フラッシュランプ12に備えられているキセノンフラッシュランプの全てを、1(ms)の間発光させる。そして、フラッシュランプ12から出された閃光を、チャンバ窓11を介してウェハ20の上面に放射する。これにより、ウェハ20上面の表面温度が、1(ms)の時間で1400(℃)(1673(K))まで上昇する。また、フラッシュランプ12を用いて加熱することで、ウェハ20上面の表層のみを加熱することができる。
反応期間T22では、ウェハ20上面の表面温度を、20(ms)の間、1400(℃)で維持する。具体的には、フラッシュランプ12に備えられるキセノンフラッシュランプの一部のみを、20(ms)の間発光させ、温度を維持する。これにより、液体原料21(トリクロロシラン)の塗布膜を原料として、化学反応によって、エピタキシャル膜が成長する。反応期間T22で行われる、シリコンエピタキシャル成長のための化学反応を説明する。シリコンエピタキシャル成長は、主にウェハ表面に存在している分子の反応によって形成される。よって、ウェハ20上面の表面が、エピタキシャル成長の基点となる。トリクロロシラン(SiHCl)は、ウェハ20のシリコン単結晶表面に吸着する。そして、式(1)に示すように、中間体*SiClを生成する。ここで、*の記号は、シリコン結晶表面に化学結合している状態を示す。
SiHCl→*SiCl+HCl↑ (化学吸着)・・・式(1)
そして、中間体に残った塩素原子が水素により取り去られることで、式(2)に示すように、シリコンエピタキシャル膜がウェハ20の表面に成長する。
*SiCl+H→*Si+2HCl↑ (シリコン生成)・・・式(2)
また、副生成物として、HCl(塩化水素)ガスが発生する。
反応期間T22での、フラッシュランプ12の制御方法を説明する。反応期間T22では、液体原料21が気化し、気化熱が奪われるため、ウェハ20表面を冷却する作用が働く。また、エピタキシャル膜を成長させる式(2)の化学反応は吸熱反応であるため、ウェハ20表面を冷却する作用が働く。よって、上記の冷却作用によってウェハ20上面の表面温度が1400(℃)から低下しないように、キセノンフラッシュランプの発光本数等を制御する必要がある。
降温期間T23では、フラッシュランプ12の全てのキセノンフラッシュランプをOFF状態に切替え、ウェハ20上面の表面温度を1400(℃)から室温(25(℃))まで3(ms)で低下させる。フラッシュランプ12はウェハ20上面の表層のみを加熱しているため、ウェハ20全体を加熱する場合に比して、急速にウェハ20上面温度を低下させることができる。また、反応期間T22が終了した時点でウェハ20上面に残存している液体原料21が、降温期間T23において気化し、気化熱が奪われるため、ウェハ20表面を冷却する作用が働く。よって、降温期間T23を短縮化することができるため、次の塗布工程を実行するまでの待ち時間を短くすることが可能となると共に、副生成ガス(HCl)のエッチング作用を抑制することができる。なお、ウェハ20上面に液体原料21の塗布膜を形成しない場合に、フラッシュランプ12を用いてウェハ20を1400(℃)まで加熱し、降温時間を3(ms)取ると、800(℃)程度までしかウェハ表面温度が低下しないことが分かっている。
1回分の成膜サイクルC1が終了すると、次の成膜サイクルC1が開始される。次の成膜サイクルC1において、塗布工程を実行する際には、ウェハ20上面の表面温度が、液体原料21の沸点以下まで低下した時点以降において実行される。これにより、液体原料21をウェハ20表面に塗布した際に、液体原料21がウェハ20によって熱せられることで蒸発してしまう事態を防止することができる。また、ウェハ20の表面と裏面との温度差が存在する時点で液体原料21を塗布することによって、ウェハ表面が急激に冷却されることでウェハ20にストレスがかかり、ウェハ20が割れてしまうという事態を防止することができる。
以後、成膜サイクルC1を繰り返すことで、エピタキシャル膜を積層していく。そして、エピタキシャル膜の積層膜が予め定められた所定厚さに到達すると、成膜サイクルC1の繰り返し処理が終了される。繰り返し処理が終了すると、排気ライン16から水素ガス22が排出される。その後、ゲート部17が開放され、図示しない搬送ロボットにより、ウェハ20がチャンバ10から取り出される。以上より、エピタキシャル膜の成膜処理が終了する。
成膜サイクルC1の繰り返し回数の決め方について説明する。1400(℃)でのエピタキシャル膜の成長速度は、約130(μm/min)程度である。また、反応期間T22の長さは、20(ms)である。よって、成膜サイクルC1の1回あたりのエピタキシャル膜の成長厚さの理論値は、0.043(μm)となる。すると、エピタキシャル膜の所定厚さを、成膜サイクルC1の1回あたりの成長厚さで除算することで、繰り返し回数を求めることができる。
また、1回の成膜サイクルC1に必要な時間は、図2に示したとおり、塗布工程期間T1と加熱工程期間T2との合計であり、124(ms)である。よって、1分間当たり、最大で483回の成膜サイクルC1を繰り返すことができる。すると、1分間当たりのエピタキシャル膜の成長速度は、最大で21(μm/min)となる。これは、前述した従来の気相エピタキシー法での成長速度(0.1〜数(μm/min)程度)に比して10倍以上の値である。以上より、本願のエピタキシャルウェハの製造方法を用いることで、従来の気相エピタキシー法に比して大幅に成長速度を高めることができることが分かる。
本実施例に係るエピタキシャルウェハの製造方法の効果を説明する。図3は、SiHCl−H系における、エピタキシャル成長速度を示す図である。縦軸は、エピタキシャル膜の成長速度である。横軸は、成長装置入口における混合ガスの平均分子量である。また、3種類の反応温度(1073(K)、1223(K)、1398(K))についての成長速度が示されている。図3に示すように、エピタキシャル膜の成長速度は、反応温度が高くなるほど高くなることが分かる。気相エピタキシー法や液相エピタキシー法を用いた、従来のエピタキシャルウェハの製造方法では、常にウェハが加熱されている状態である。すると、ウェハの軟化等の影響を無視できないため、ウェハ材料の融点近傍までウェハ温度を上昇させることが困難である。よってシリコンウェハ(融点1412(℃))では、1300(℃)程度が上限値であった。このため、従来法でのエピタキシャル膜の成長速度は、0.1〜数(μm/min)程度の低い値となっていた。一方、本願のエピタキシャルウェハの製造方法では、フラッシュランプ12を用いた急速温度上昇により、ウェハ20上面の表層のみを高温に加熱できるため、ウェハ20の軟化等の影響を無視することができる。よって、シリコン融点近傍の1400(℃)までウェハ温度を上昇させることが可能である。よって、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。
また、反応過程で発生しウェハ20表面から離脱したHClガスが、シリコンエピタキシャル膜に吸着すると、成長したエピタキシャル膜をエッチングしてしまう。すなわち、HClガスによって、成長したエピタキシャル膜が溶解してしまう。そして、HClガスによるシリコンのエッチングレートが高くなるほど、エピタキシャル膜の成長速度は遅くなる。よって、エピタキシャル膜の成長速度は、エピタキシャル膜を生成する化学反応の速度と、エピタキシャル膜を溶解するエッチング反応の速度とのバランスによって決定される。また、図4に、HClによるシリコンエッチング速度を示す。縦軸は、エッチング速度である。横軸は、反応室入口における塩化水素ガス濃度である。図4に示すように、エッチング速度は、ウェハ表面温度が高くなるほど高くなることが分かる。
気相エピタキシー法や液相エピタキシー法を用いた、従来のエピタキシャルウェハの製造方法では、常にウェハが加熱されている状態である。このため、反応過程で生成したHClは、ウェハ表面温度が高い状態でエピタキシャル膜へ再付着するため、エッチング反応の速度が高くなってしまう。また、エピタキシャル膜を生成する化学反応の速度を高めるためにウェハ表面温度を上昇させると、エッチング反応の速度も上昇してしまう。これらの原因により、従来のエピタキシャルウェハの製造方法では、エピタキシャル膜の成長速度を高めることが困難であった。一方、本願のエピタキシャルウェハの製造方法では、加熱工程期間T2においてのみウェハ20が加熱されることで、HClが生成される。また塗布工程期間T1では、ウェハ20が常温で維持される。このため、加熱工程期間T2において生成されたHClは、ウェハ表面温度が低下した塗布工程期間T1においてエピタキシャル膜へ再付着するため、エッチング反応を抑制することが可能となる。すなわち、エピタキシャル膜およびHClを生成する期間と、エピタキシャル膜がエッチングされる期間とを時分割し、エピタキシャル膜がエッチングされる期間におけるウェハ温度を低下させる。これにより、エピタキシャル膜の成長速度を高めることと、エッチング反応を抑制することの両立が可能となる。よって本願のエピタキシャルウェハの製造方法では、ウェハ20表面が常に加熱されている場合に比して、エピタキシャル膜の成長速度を高めることが可能となる。
また、本願のエピタキシャルウェハの製造方法では、降温期間T23において、余剰の液体原料21の気化熱によってウェハ20表面を冷却することができる。よって、ウェハ20上面に液体原料21の塗布膜を形成しない場合に比して、より高速にウェハ20表面の温度を低下させることができる。このため、ウェハ表面が高温状態とされている期間を、より短くすることができる。このため、反応過程で生成したHClがエピタキシャル膜へ再付着する際のウェハ表面温度を、より低下した状態とすることができるため、エッチング反応をより効果的に抑えることができる。
また、本願のエピタキシャルウェハの製造方法では、成膜サイクルC1が繰り返されることで、塗布工程と加熱工程とが交互に実行される。よって、加熱工程後のウェハ20表面に、液体原料21が塗布される。このとき、ウェハ20表面に吸着しているHClは、塗布工程で塗布される液体原料21によってウェハ20外へ押し出される。よって、塗布工程により、ウェハ20表面に付着したHClを除去することができる。また、液体原料21の塗布後には、ウェハ20上面全体が液体原料21で覆われる。よって、チャンバ10内の気中に残存したHClが、エピタキシャル膜に吸着してしまうことを防止できる。これにより、加熱工程が実行されウェハが加熱された際に、HClによってエピタキシャル膜がエッチングされてしまうことを防止できる。以上より、塗布工程によって、ウェハ20表面に吸着したHClの除去、および、HCl除去後にHClが再吸着することの防止を行うことができる。よって、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。
また、従来の気相エピタキシー法では、反応過程で発生しウェハ表面から離脱したHClがエピタキシャル膜に吸着する確率を下げるために、大量の水素希釈で原料ガスの分圧を下げる等の対策を採用していた。すると、ウェハ表面への原料ガスの供給量を高めることができず、エピタキシャル膜の成長速度を高めることが困難であった。一方、本願では、液体原料21の塗布膜によって、ウェハ20表面に吸着したHClの除去、および、HCl除去後にHClが再吸着することの防止を行うことができる。よって、液体原料21の濃度を薄める等の対策が不要であるため、ウェハ20表面への液体原料の供給量を高めることが可能となる。また、エピタキシャル膜の原料をガスとして供給する場合に比して、液体として供給する場合の方が、原料の密度を高めることができるため、供給効率を高めることができる。以上より、エピタキシャル膜の成長速度を高めることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず特許請求の範囲を限定するものではない。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
なお、ウェハ20表面に液体原料21を塗布する方法は、スピン塗布法に限られない。液体原料をまんべんなくウェハ20表面に吹き付ける、スプレー塗布法をもちいてもよい。また、液体原料21の供給は、補助ガスによる圧送に限られず、ポンプ等を用いて行ってもよい。また、水素ガス22は、補助ガス供給ライン15から供給する形態に限られず、原料供給ライン14を用いて供給する形態としてもよい。
1:成膜装置、10:チャンバ、12:フラッシュランプ、13:ステージ、14:原料供給ライン、15:補助ガス供給ライン、20:ウェハ、21:液体原料、22:水素ガス

Claims (6)

  1. エピタキシャルウェハの製造方法において、
    ウェハ表面に液体原料を塗布する塗布工程と、
    塗布工程後に、ウェハ表面を加熱する加熱工程と、
    を備え、
    塗布された液体原料が加熱されることで形成されるエピタキシャル膜が予め定められた所定厚さに成長するまで、塗布工程と加熱工程とを繰り返し行うことを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。
  2. 液体原料は、シリコン原子が1つまたは2つ含まれているシラン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェハの製造方法。
  3. 加熱工程後に実行される塗布工程は、ウェハ表面温度が液体原料の沸点以下まで低下した時点以降において実行されることを特徴とする請求項1または2に記載のエピタキシャルウェハの製造方法。
  4. シラン化合物はトリクロロシランまたはテトラクロロシランであることを特徴とする請求項2または3に記載のエピタキシャルウェハの製造方法。
  5. 加熱工程は、フラッシュランプヒータユニットで行われることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のエピタキシャルウェハの製造方法。
  6. 塗布工程および加熱工程は、反応室内にウェハを格納した状態で実行され、
    塗布工程および加熱工程を実行する期間中において、ウェハを格納する反応室に、補助ガスを所定濃度で供給し、
    加熱工程では、補助ガスを用いた液体原料の還元反応によりエピタキシャル膜が成長することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のエピタキシャルウェハの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014135393A (ja) * 2013-01-10 2014-07-24 Denso Corp 有機材料塗布装置およびその装置を用いた有機材料塗布方法

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