JP2012028234A - 走査透過電子顕微鏡及びその軸調整方法 - Google Patents

走査透過電子顕微鏡及びその軸調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡において、操作者の技量や経験に依存せず光軸中心への収束絞りの位置合せを自動で行うことができる走査透過電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、電子源と、電子源より放出された電子線を収束する収束レンズと、前記電子線を試料上で走査する偏向器と、前記電子線の収差を補正する収差補正装置と、電子線の収束角度を決定する収束絞りと、前記試料を透過又は回折した電子を検出する検出器を備えた走査透過電子顕微鏡において、試料を透過した電子線が形成するロンチグラムのコントラストの情報を取得し、当該情報に基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子顕微鏡及びその軸調整方法に関し、特に走査透過電子顕微鏡の軸調整方法に関する。
従来の走査透過電子顕微鏡装置における照射角度を規定する収束絞りの位置調整方法は、対物レンズの電流を周期的に可変し、走査透過像の逃げ量が最小になるように機械的に収束絞りを位置調整するか、あるいは電磁偏向器により電子線の光軸を絞り位置と一致するように行われている。また、別の方法としては収束絞りを大きな穴径のものを用いるあるいは収束絞りを開放した状態で電子線を試料の1点に停止させ、試料を透過した画像に表れる図形を用いて行われている。後者の方法で用いられる画像はロンチグラムと呼ばれている。
収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡で得られるロンチグラムは、図2に示すように、中心部におけるコントラスト平坦領域1と、コントラスト平坦領域1の周辺における多角形の形状のコントラストが強い領域2とが伴って観察される。コントラストが強い領域2は、補正不可能あるいは残留する高次収差に由来する。光軸の中心はこのコントラスト平坦領域1に存在し、操作者はロンチグラムを観察しながら光軸の中心と収束絞りの中心とが一致するように調整する。
収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡では精密な収束絞りの位置合せが必要である。その理由は収束絞り位置が正確でない場合には電子線の収束状態が収差補正状態から外れ、コマ収差などの高次収差が導入されることにより走査透過像の解像度が劣化する場合があるからである。
特開2003−331773号公報
Journal of Electron Microscopy 54巻3号 p.251- p.278 2005年
収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡装置における光軸中心への収束絞りの位置合せ方法では、ロンチグラムのコントラストが平坦な部分の概略中心に光軸が存在すると仮定して収束絞りの位置合せを行う。光軸の捜索方法の補助として対物レンズの電流を手動あるいは自動で変化させてロンチグラムのパターンが変化する中心を定めて行うことも行われる。
しかしながら、いずれの手法においても光軸位置を目視で定めているため、収束絞りの位置が精密に光軸に一致しているかどうかは操作者の技量や経験に依存してしまい、装置から引き出せる性能にばらつきを発生させることになる。
また、収差が補正されている部分を最大限にプローブとして取り入れて使用するような条件では、コントラストの平坦な部分の全域を選択する方法が用いられるが、ロンチグラムのコントラストが平坦な部分と収差によりロンチグラムが歪んでコントラストが強い部分との境界を目視で判断しているために、最も収差を含まない収束絞り位置の判断が不可能である。
さらに、走査透過像のコントラストを向上させる、あるいは電子線による試料ダメージを低減させる目的でロンチグラムのコントラストが平坦な部分より十分に小さい径の収束絞りを使用する場合があるが、絞りを挿入するべきいずれの近傍でコントラストが平坦な領域であるため光軸の位置の決定が困難である。
本発明の目的は、収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡において、操作者の技量や経験に依存せず光軸中心への収束絞りの位置合せを自動で行うことができる走査透過電子顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明では、電子源と、電子源より放出された電子線を収束する収束レンズと、前記電子線を試料上で走査する偏向器と、前記電子線の収差を補正する収差補正装置と、電子線の収束角度を決定する収束絞りと、前記試料を透過又は回折した電子を検出する検出器を備えた走査透過電子顕微鏡において、試料を透過した電子線が形成するロンチグラムのコントラストの情報を取得し、当該情報に基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置を提供する。
収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡における光軸中心への収束絞りの位置合せ方法において、光軸の位置が操作者の技量や経験に依存なく決定できる。
その結果、装置から引き出せる性能に操作者によるばらつきを発生させない、収差が補正されている部分を最大限にプローブとして取り入れて使用できる、収差補正されている角度範囲より十分に小さい径の収束絞りを使用する場合でも光軸位置に収束絞りを一致させることが可能となる。
収束絞り位置が適切でない場合及び適切である場合のロンチグラム並びにそのヒストグラムを表わす図。 収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡によって観察されるロンチグラムの例を表わす図。 ロンチグラムにおけるコントラストが平坦な部分から光軸を探索して収束絞りの位置合せを行うための走査透過電子顕微鏡の構成を表わす図。 収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡によって観察されるロンチグラムにおいて焦点外しを実施した場合の例を表わす図。 照射角度を小さく設定するための穴径が小さな収束絞り位置が適切でない場合及び適切である場合のロンチグラム並びにそのヒストグラムを表わす図。 電子線傾斜により収束絞りにロンチグラムの一部のパターンを取り込んでコントラストが平坦な部分から光軸を決定する方法を表わす図。
図3は走査透過電子顕微鏡の電子光学系を説明する図である。光源11から発生した電子線は1段目収束レンズ13、2段目収束レンズ14及び対物レンズ20により収束されて試料22上に電子線プローブを形成する。収差補正器16は対物レンズ20の上流に設置されており、電子光学系で発生する球面収差や色収差などを補正する。これらの各レンズは磁場型あるいは静電型の回転対称レンズや多重極レンズが使用される。
ここで、光源とは電子源,静電型あるいは磁界型の電子線の引出電極,静電方加速電極等から構成される電子銃によって形成された実際の電子線スポット、あるいは虚像の電子線スポットとして定義される仮想光源を意味しており、電子銃としては電子源を加熱しないで電子線を電界放出させる冷陰極型電界放出電子銃、あるいは電子源を加熱して電子線を放出させるショットキー型電子銃などの方式が考えられる。
電子銃絞り17は大きな角度から光軸12に入射する電子線の遮蔽を行う役目を持ち、電子銃の超高真空を保護するための作動排気絞りとしても用いられる場合がある。収束絞り15は機械的な駆動機構を有しており、光軸12に対して挿入や退避が可能であり、3次元的な詳細位置決め機構を有している。収束絞り15の使用目的は試料22上での電子線プローブの照射角度21を調整することであり、複数の穴径、例えば500ミクロンから10ミクロン程度の貫通穴を具備する板が使用される。また、図3において収束絞り15の位置は2段目収束レンズ14と収差補正器16との間に設置されているが、1段目収束レンズ13と2段目収束レンズ14との間あるいは光源11と1段目収束レンズ13との間などの位置に設置してもよい。
1段目走査コイル18及び2段目走査コイル19は電子線を光軸12から偏向離軸させることにより、試料22上での電子線プローブの位置を制御する機能を有する。1段目走査コイル18及び2段目走査コイル19のそれぞれと同一面内で90度方向回転した位置に同一機能を持つ走査コイルが配置されており(図示せず)、これらのコイルによる電子線プローブの位置制御を組み合わせて試料22上で電子線プローブを2次元的に走査することができる。
走査透過像の形成は電子線の走査に同期して試料22から発生した2次電子や試料22を透過した電子線を検出器(図中省略)により検出して16ビット程度のダイナミックレンジを持った画像として表示することによって実施される。
各レンズと走査コイルの制御は電子顕微鏡制御部23により実施される。この光学系の電子顕微鏡制御部23はCPUにより制御される駆動電源回路,ソフトウエア,操作者が入出力を制御できるキーボード,マウス,つまみ等のインターフェースから構成されている。
CCDカメラ25は試料22を透過した電子線が形成するロンチグラムを撮影する機能を持ち、CCDカメラ制御部24によって制御されている。
次に、収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡における収束絞りの精密位置合せの方法について説明する。図1は図2に示したロンチグラムに対して絞りを挿入した場合のロンチグラムとそのヒストグラムとを示したものである。絞り位置は光軸位置と一致するように挿入されるべきであるが、光軸はロンチグラムのコントラストが平坦な位置に存在しており、最も適切な挿入位置の目視での判別は困難である。図1(a)は絞り位置が適切でない場合のロンチグラムで、一部に異なるコントラストが混入していることがわかる。一方、図1(b)は絞り位置が適切である場合のロンチグラムで、絞り内部のコントラストが一様であることがわかる。このコントラストの一様性を判断するためにそれぞれの画像のヒストグラムを使用すればピークの位置や高さにより光軸からのずれを判断できる。
光軸を探索するための具体的なフローは以下のとおりである。
(1)収束絞りが入っていない状態のロンチグラムを観察しながら操作者がロンチグラムの中心付近、すなわち光軸と推定される近傍を指定する。
(2)CCDカメラによりそのエリア近傍、例えば指定点の周辺50×50画素における画像の諧調を求め、コントラストの基準として記憶する。
(3)収束絞りが自動で挿入された後、微動機能により収束絞りが平面内を走査する。この走査と同期してCCDカメラは画像を撮影し、ヒストグラムを算出する。
(4)収束絞りが走査を完了したら全ヒストグラムを解析し、基準諧調以外が混入する位置を排除し、絞り内全体のコントラストが最も平坦な位置を算出し、光軸と判定する。
(5)決定された光軸位置と絞りの中心とが一致するように微動機構により収束絞りが自動で設定される。
上記絞り位置の決定方法では絞りが挿入されたロンチグラムのヒストグラムを用いて光軸位置を判定しているが、コントラストの差が中心と収差残留部とで小さい場合もある。この場合には撮影したロンチグラムを微分した画像に変換してコントラスト変化を強調した後に、ヒストグラムから微分値の小さい領域を選択することによって光軸の決定が可能となる。絞り導入から光軸決定,絞りの自動位置合せまでのフローとしては同様な方法が適用できる。
次にロンチグラムのコントラスト平坦部分と比較して小さい角度範囲を選択する場合の光軸決定方法について説明する。ロンチグラムは電子線の角度による収差の分布を表わした画像であり、小さい角度の選択においては穴径の小さな絞りを選択する。この場合、絞りをロンチグラムの中心近傍に挿入すると、近接のどの位置においてもコントラストが平坦であり、ヒストグラムの諧調基準位置からのずれを判別しても正確な光軸が決定できない。ここでは焦点外しを行った場合にロンチグラムのコントラストが変化することを用いる。図4は焦点外しを行った場合のロンチグラムである。その特徴として焦点外れによる収差が光軸を中心にコントラストを形成することである。最終残留収差に対して適切な焦点外れ量を選択することによって中心位置をロンチグラムのコントラスト変化として判定可能となる。図5は図4に示したロンチグラムに対して絞りを挿入した場合のロンチグラムとそのヒストグラムとを示したものである。収束絞りの位置が適切である場合のロンチグラムのヒストグラムでは諧調が広い範囲に分布するのに対して、収束絞りの位置が適切でない場合のヒストグラムでは特異なピークが検出される。これを用いれば小さな穴径を光軸に一致させることが可能となる。自動での収束絞り位置設定のフローとしては図1で用いたものと同様に行うことが可能で、光軸の判定においてヒストグラムの特異点を最も排除できる位置として実行する。
絞りの位置を機械的に変更して光軸位置を決定する方法と同様な機能を電子線の傾斜によっても実現できる。図6は電子線を光軸に対して傾斜させ、ロンチグラムの複数の位置を画像として取り込んだ場合の図である。電子線の傾斜条件を多方向に設定し、それぞれの画像のヒストグラムを解析すると、ヒストグラムで最もコントラストが一様である傾斜条件が決定できる。その傾斜条件を偏向コイルを用いて設定すれば光軸と収束絞りの中心とが一致できるようになる。
1 コントラスト平坦領域
2 コントラストが強い領域
3 焦点外しを実施したロンチグラムの中央付近でコントラストが強い領域
11 光源
12 光軸
13 1段目収束レンズ
14 2段目収束レンズ
15 収束絞り
16 収差補正器
17 電子銃絞り
18 1段目走査コイル
19 2段目走査コイル
20 対物レンズ
21 照射角度
22 試料
23 電子顕微鏡制御部
24 CCDカメラ制御部
25 CCDカメラ

Claims (6)

  1. 電子源と、電子源より放出された電子線を収束する収束レンズと、
    前記電子線を試料上で走査する偏向器と、
    前記電子線の収差を補正する収差補正装置と、電子線の収束角度を決定する収束絞りと、前記試料を透過又は回折した電子を検出する検出器を備えた走査透過電子顕微鏡において、
    試料を透過した電子線が形成するロンチグラムのコントラストの情報を取得し、当該情報に基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
  2. 請求項1記載の走査透過電子顕微鏡装置において、
    前記ロンチグラムのヒストグラムを作成する演算部と、当該ヒストグラムに基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
  3. 請求項1記載の走査透過電子顕微鏡装置において、
    前記ロンチグラムを微分した画像のヒストグラムを作成する演算部と、当該ヒストグラムに基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
  4. 請求項1記載の走査透過電子顕微鏡装置において、
    収束絞りを二次元的に駆動する駆動機構と、当該収束絞りの駆動と同期してロンチグラムを撮影し、当該ロンチグラムのコントラストの情報を取得し、当該情報に基づいて前記収束絞りの位置を決定することを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
  5. 請求項1記載の走査透過電子顕微鏡装置において、電子線の傾斜と同期してロンチグラムを撮影し、そのヒストグラムを使用して光軸の決定を行うことを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
  6. 請求項5記載の光軸の決定に関して、光軸位置と収束絞りとが一致するように電子線の傾斜が自動で設定されることを特徴とする走査透過電子顕微鏡装置。
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