JP2012027316A - 光ドロップケーブル - Google Patents

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【課題】耐蝉害性を有する光ドロップケーブルにおいて、テープ状光ファイバ心線の心線取り出し性を飛躍的に向上させる。
【解決手段】光ファイバテープ心線11と、この光ファイバテープ心線11の両側に間隔をおいて並行配置された抗張力体12と、これらを一括被覆する外被13とを備えた光ドロップケーブル101において、外被11を、55以上63以下のショアD硬度(JIS K 7215)を有するポリオレフィン樹脂で形成し、その表面に1対の先端が光ファイバテープ心線11近傍に達する半融着状態のスリット状ノッチ15を設けるとともに、外被13が光ファイバテープ心線11の長径方向に平行な側面と接する面にのみ、外被13と光ファイバテープ心線13とを非密着とする空隙部16を設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、配線系ケーブルからビルや一般住宅などの加入者宅内へ引き込み配線するために使用される光ドロップケーブルに係り、特に、耐蝉害特性に優れた被覆を備えた光ドロップケーブルに関する。
インターネットなどの通信サービスの普及に伴い、通信事業者から加入者宅までの全区間を光ファイバで結ぶFTTH(Fiber To The Home)が急速に拡大してきている。このようなFTTHにおいて、加入者宅近傍の光配線網は、電柱を用いた架空配線が一般的であり、電柱に架渉した配線ケーブルから光ドロップケーブルを用いて加入者宅に引き落とす方式が主に採用されている。
この光ドロップケーブルは、一般に、光ファイバ心線を挟んでその上下に抗張力体を配置し、さらにその上に支持線を配置し、これらの外周にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を一括押出被覆して外被を設けた構造を有する。このケーブルの支持線と抗張力体の間には、ケーブル部の支持線部からの分離を容易にするため、連結部(首部)が設けられ、また、ケーブル部の外被の両側面には、光ファイバ心線の取り出しを容易にするため、引き裂き用ノッチが設けられている。
ところで、近時、上記光ドロップケーブルにおいては、セミによる被害が数多く報告されるようになり、その対策が緊急の課題となっている。被害は、主としてクマゼミによるもので、クマゼミが光ドロップケーブルに産卵管を突き刺して光ファイバを損傷させる結果、情報伝達に支障を生じさせているというものである。
そこで、クマゼミの産卵管による光ファイバの被害を防止するため、例えば、外被内に光ファイバ心線を保護する保護部材を埋設したり、引き裂き用ノッチの先端を光ファイバ心線の位置からずらし、万一、ノッチにクマゼミの産卵管が突き刺さっても光ファイバ心線を損傷させないようにするなど、ケーブル構造自体に様々な対策を施したものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、外被を、例えば特定の反発弾性率および耐摩耗性を有する樹脂で形成するなど、構造自体は変えず、外被材料を変えることにより耐蝉害性を付与したものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、保護部材を埋設したものでは、光ファイバ心線の取り出し性が低下するうえ、部品数が多くなるため製造コストが高くなる。また、ノッチの先端の位置をずらしたものは、クマゼミの産卵管による被害を防止する効果が必ずしも十分ではない。一方、外被材料に特定の樹脂を用いたものも、光ファイバ心線の取り出し性が十分ではなかった。
このような状況の中、本発明者らは、耐蝉害性と心線取り出し性とを両立させるべく、外被材料に特定の物性を有するポリオレフィン樹脂を用いるとともに、外被表面に半融着状態のスリット状ノッチを設けた光ドロップケーブルを開発した。
しかしながら、このような光ドロップケーブルにより、従来に比べ、耐蝉害性と心線取り出し性の両立が図られたものの、心線取り出し性の点でなお改善すべき余地があり、特に、光ファイバ心線としてテープ状の光ファイバ心線(光ファイバテープ心線)を用いた場合に、心線取り出し性が不十分であった。
特開2007−72380号公報 特開2008−203797号公報 特開2009−271538号公報
本発明は上記従来技術の課題に対処してなされたもので、テープ状光ファイバ心線の心線取り出し性を飛躍的に向上させることができ、かつ極めて高い耐蝉害性を有する光ドロップケーブルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明の光ドロップケーブルは、光ファイバテープ心線と、この光ファイバテープ心線の両側に間隔をおいて並行配置された抗張力体と、これらを一括被覆する外被とを備えた光ドロップケーブルであって、前記外被を、55以上63以下のショアD硬度(JIS K 7215)を有するポリオレフィン樹脂で形成し、その表面に1対の先端が前記光ファイバテープ心線近傍に達する半融着状態のスリット状ノッチを設けるとともに、前記外被が前記光ファイバテープ心線の長径方向に平行な側面と接する面にのみ、前記外被と前記光ファイバテープ心線とを非密着とする空隙部を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の光ドロップケーブルは、光ファイバテープ心線と、この光ファイバテープ心線の両側に間隔をおいて並行配置された抗張力体と、これらを一括被覆する外被とを備えたケーブル部と、前記ケーブル部を支持する支持線を備えた支持線部とを有する光ドロップケーブルであって、前記外被を、55以上63以下のショアD硬度(JIS K 7215)を有するポリオレフィン樹脂で形成し、その表面に1対の先端が前記光ファイバテープ心線近傍に達する半融着状態のスリット状ノッチを設けるとともに、前記外被が前記光ファイバテープ心線の長径方向に平行な側面と接する面にのみ、前記外被と前記光ファイバテープ心線とを非密着とする空隙部を設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の光ドロップケーブルにおいて、前記空隙部の、前記光ファイバテープ心線の長径方向の幅aと、前記光ファイバテープ心線の長径bとの比a/bが、1/4以上3/4以下であることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の光ドロップケーブルにおいて、前記光ファイバテープ心線の前記外被に対する密着力が10N以上78N以下であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の光ドロップケーブルにおいて、前記各スリット状ノッチを起点とした引き裂き力が15N以下であることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の光ドロップケーブルにおいて、前記光ファイバテープ心線は、その長径方向がケーブル幅方向に略直交するように配置されていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の光ドロップケーブルにおいて、前記各スリット状ノッチは、半溶融状態にある外被に切り込みを入れることによって形成されたノッチであることを特徴とするものである。
本発明の光ドロップケーブルによれば、テープ状光ファイバ心線の心線取り出し性を飛躍的に向上させることができるとともに、極めて高い耐蝉害性を具備することができる。
本発明の一実施形態に係る光ドロップケーブルを示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る光ドロップケーブルの製造に使用される製造装置の一例を示す模式図である。 スリット状ノッチの反発力の測定方法を説明する図である。 本発明の光ドロップケーブルの一変形例を示す断面図である。 本発明の光ドロップケーブルの他の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の光ドロップケーブルの一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の光ドロップケーブル101は、電柱間に架設した配線ケーブルからビルや一般住宅などの加入者宅内へ引き込み配線するために使用されるケーブルである。この光ドロップケーブル101は、ケーブル部10と、支持線部20と、これらを連結する連結部30とから構成されている。
ケーブル部10は、1枚の光ファイバテープ心線11と、この光ファイバテープ心線11の上方および下方にこれらの各中心がほぼ同一平面上に位置するように間隔をおいて並行に配置された鋼線、FRP(繊維強化プラスチック)などからなる抗張力体12、12と、これらの外側に一括して押出被覆された外被13とを備えている。光ファイバテープ心線11は、その長径方向がケーブル幅方向に略直交するように配置されている。
外被13は断面が略矩形状に形成され、その両側面の光ファイバテープ心線と対応する位置には、光ドロップケーブル101の長手方向に断面U字状、断面台形状、あるいは断面V字状(図面の例では、断面台形状)の溝14、14が形成され、さらに、溝14、14の底部を起点に半融着状態のスリット状ノッチ15、15が、それぞれの先端が光ファイバテープ心線11を挟んで対向するように設けられている。スリット状ノッチ15、15の各先端は、光ファイバテープ心線11の近傍に達している。これらの半融着状態のスリット状ノッチ15、15は、外被13を形成する際、外被13が半溶融状態にあるときに表面に切り込み(スリット)を入れ、そのまま冷却硬化させたものである。このようなスリット状ノッチ15、15は、見かけ上はスリットは観察されず、外被13の表面はノッチが形成されていない外被の表面と略同じ外観を呈している。
また、外被13は、光ファイバテープ心線11の外周面のうち、長径方向に平行な側面でのみ部分的に外被13と非密着状態となるように形成されている。つまり、外被13と光ファイバテープ心線11の長径方向に平行な側面との間に、外被13と光ファイバテープ心線11とを非密着とする空隙部16、16が形成されるように被覆されている。
各空隙部16は、幅(図1中、aで示す)が、光ファイバテープ心線11の長径(図1中、bで示す)の1/4以上3/4以下(つまり、空隙部16の幅aと、光ファイバテープ心線11の長径bとの比(a/b)が1/4以上3/4以下)であることが好ましい。比(a/b)が1/4未満では、光ファイバテープ心線11全体としての外被13に対する密着力が過大となり、心線取り出し性が低下する。また、比(a/b)が3/4を超えると、光ファイバテープ心線11と外被13の密着が長手方向に不安定となり、マイクロべンドが生じ、伝送特性などが低下する。比(a/b)は、1/2以上3/4以下であることがより好ましい。なお、空隙部16の形状は、ケーブルに要求される機械的特性や伝送特性などの特性を低下させることがなければいかなる形状であってもよく、例えば、本実施形態のように矩形状であってもよく、また、長円状や半円形状などであってもよい。
一方、支持線部20は、鋼線などからなる支持線21と、その外周にケーブル部10の外被13および連結部30と一体に押出被覆された被覆22とから構成されている。被覆22は断面が円形状に形成されている。
ケーブル部10の外被13、支持線部20の被覆22および連結部30は、JIS K 7215に基づいて測定されるショアD硬度(以下、単にショアD硬度という)が55以上63以下のポリオレフィン樹脂の一括押出により形成されている。ショアD硬度が前記範囲のものであれば、ポリオレフィン樹脂の種類は特に限定されるものではない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン、エチレンにプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレンなどが使用される。これらは単独または混合して使用される。これらの樹脂には、難燃剤や着色剤などが配合されていてもよい。ポリオレフィン樹脂のショアD硬度が55未満であると、クマゼミなどの産卵管による被害を防止する効果が低下し、また、ショアD硬度が63を超えると、光ファイバ心線の取り出し性が低下する。ポリオレフィン樹脂のショアD硬度は、55以上61以下であることがより好ましい。
また、上記光ファイバテープ心線11は、特に限定されるものではなく、光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂などを被覆した光ファイバ素線を、例えば4本並列させ、その外周にさらに紫外線硬化型樹脂などを一括被覆したものなどが使用される。
さらに、抗張力体12を構成する材料としては、鋼線やFRPの他、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維などのアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル系繊維、ナイロン繊維、これらの繊維をポリエステル−アクリレート樹脂などで収束し結着させた複合材などが挙げられる。
次に、上記光ドロップケーブル101の製造方法について記載する。
図2は、上記光ドロップケーブル101の製造に使用される装置の模式図である。図2に示すように、この製造装置は、光ファイバテープ心線11を送り出す光ファイバテープ心線送出装置41と、抗張力体12、12を送り出す抗張力体送出装置42、42と、支持線21を送り出す支持線送出装置43と、送り出された光ファイバテープ心線11を予備加熱する予備加熱装置44と、予備加熱された光ファイバテープ心線11、抗張力体12、12および支持線21をそれぞれ所定の位置に集合させつつ、その外周に外被13、被覆22用の樹脂を被覆する押出機45と、樹脂を半溶融状態まで冷却する補助冷却水槽46と、半溶融状態とされた樹脂の所定の位置に切り込みを入れるスリット加工装置47と、樹脂をさらに冷却して硬化させる主冷却水槽48と、光ドロップケーブル101を巻き取る巻取装置49とを備えている。なお、押出機45には、外被13、被覆22を被覆する際、前述したような空隙部16が形成されるように、先端に凹部が形成されたニップルが装着されている。
光ファイバテープ心線送出装置41から送り出され、予備加熱装置44で予備加熱された光ファイバテープ心線11、抗張力体送出装置42および支持線送出装置43からそれぞれ送り出された抗張力体12、12および支持線21は、押出機45に導入され、所定の位置に集合されつつその周囲に加熱溶融された樹脂が押し出される。光ファイバ心線11に予備加熱を施しておくことによって、樹脂被覆時に光ファイバテープ心線11と樹脂との界面に気泡が生ずるのを防止することができる。なお、気泡は光ファイバテープ心線11表面の揮発成分に起因するもので、気泡が生ずることによって冷却後の光ファイバテープ心線11と樹脂との界面に微小なボイドが生ずる。予備加熱を行うことによって、かかる微小ボイドの発生を防止することができる。
このように樹脂が被覆された各線材(光ファイバテープ心線11、抗張力体12および支持線21)は補助冷却水槽46で、樹脂が半溶融状態になるまで、具体的には、樹脂の表面温度が樹脂の融点近傍(上記ポリオレフィン樹脂の場合には、通常100〜150℃、好ましくは100〜130℃)になるまで冷却された後、スリット加工装置47に送られ、半溶融状態にある樹脂にスリット状ノッチ15となる切り込みが入れられる。スリット状ノッチ15となる切り込みを入れる際の温度が、樹脂の融点より低過ぎても高過ぎても半融着状態のスリット状ノッチ15を形成することができない。すなわち、切り込みを入れる際の温度が、樹脂の融点より低過ぎると、切り込みの切断面が全く融着しないかもしくは不十分になり、クマゼミなどの産卵管が挿入されやすくなる。その結果、クマゼミなどの産卵管に対する防護効果が低下する。逆に、切り込みを入れる際の温度が、樹脂の融点より高過ぎると、切り込みの切断面が融着してしまい、スリット状ノッチ15がノッチとして機能しなくなる。つまり、スリット状ノッチ15を起点に引き裂くことができなくなる。その結果、心線の取出し性が不良となる。
このようにして樹脂表面にスリット状ノッチ15が形成された後、主冷却水槽48で樹脂がさらに冷却され硬化されて光ドロップケーブル101が得られる。得られた光ドロップケーブル101は巻取装置49に巻き取られる。
本実施形態の光ドロップケーブル101においては、見かけ上、引き裂き用ノッチが形成されていないため、従来のようにクマゼミなどの産卵管が光ファイバ心線11に誘導されることはない。しかも、万一、クマゼミなどの産卵管が外被13に突き刺されることがあっても、外被13は、ショアD硬度(JIS K 7215)55以上63以下という、従来の外被材料より硬い材料で形成されているので、その先端が外被13内部に深く突き刺さることはない。したがって、クマゼミなどの産卵管による光ファイバの断線を略確実に防止することができる。
一方、単心光ファイバ心線11を取り出す際には、スリット状ノッチ15はその切断面が完全に融着しておらず半融着状態であるため、手で容易に分離することができ、この分離したスリット状ノッチ15を起点にケーブル部10を幅方向に引き裂くようにすれば、引き裂き方向の先に、空隙部16の形成によって外被13と光ファイバテープ心線11とを非密着とされた光ファイバテープ心線11が存在するため、光ファイバテープ心線11を容易に取り出すことができる。
なお、クマゼミなどから光ファイバテープ心線11を保護し、かつ、光ファイバテープ心線11の取り出し性を向上させる観点からは、スリット状ノッチ15を起点とした引き裂き力が15N以下であることが好ましく、また、図3に示すように、スリット状ノッチ15表面を直径1.0mmの針51で0.5mm押圧した際の反発力(ロードセル52により測定される)が3N以上であることが好ましい。引き裂き力が10N以下であることがより好ましく、反発力は3.5N以上であることがより好ましい。
また、光ファイバテープ心線11の取り出し性をさらに向上させる観点からは、前記光ファイバテープ心線11全体としての外被13に対する密着力が10N以上78N以下であることが好ましく、10N以上60N以下であることがより好ましい。
ここで、本発明の効果を調べるために行った実験およびその結果について記載する。
図2に示す製造装置により、図1に示す構造の光ドロップケーブルを製造した。
すなわち、1枚の光ファイバテープ心線11と2本の抗張力体12と1本の支持線21とを図1に示すように平行に並べた状態で押出機45に導入し、その外周に、下記に示すショアD硬度が55以上63以下の範囲にあるポリオレフィン樹脂を一括押出被覆した後、補助冷却水槽46、スリット加工装置47、主冷却水槽48を順に通過させて、全体の幅が約2.0mm、同高さが約5.9mmで、深さ(全長)約0.4mmのスリット状ノッチ15を有し、かつ光ファイバテープ心線11の長径方向の側面に比(a/b)が1/6、1/4、1/2、3/4、または1となるような矩形状断面を有する空隙部16を設けた図1に示す光ドロップケーブルを製造した。光ファイバテープ心線11には、4本の光ファイバ素線を並列させ、その外周に紫外線硬化型樹脂からなる一括被覆を施した長径1.1mm、短径0.3mmの4心光ファイバテープ心線を用い、ケーブル部10の抗張力体12には、外径0.5mmのアラミドFRPを用い、支持線21には、外径1.2mmの亜鉛めっき鋼線を用いた。また、光ファイバテープ心線11の予備加熱温度は、200℃とし、さらに、スリット加工装置47を通過させる際の樹脂の表面温度(スリット加工温度)は、120℃とした。
また、比較のために、ショアD硬度が55以上63以下の範囲にあるポリオレフィン樹脂に代えて、下記に示すショアD硬度が55未満または63を超えるポリオレフィン樹脂を用いた以外は、上記光ドロップケーブルと同様にして光ドロップケーブルを製造した。
さらに、空隙部16を形成せず光ファイバテープ心線11の外周面がすべて外被13に密着するようにした以外は上記各光ドロップケーブルと同様にして光ドロップケーブルを製造した。
[外被材料]
ポリオレフィン樹脂A:ショアD硬度50
ポリオレフィン樹脂B:ショアD硬度56
ポリオレフィン樹脂C:ショアD硬度60
ポリオレフィン樹脂E:ショアD硬度61
ポリオレフィン樹脂E:ショアD硬度62
ポリオレフィン樹脂F:ショアD硬度67
上記各光ドロップケーブルについて、光ファイバテープ心線全体としての外被に対する密着力、スリット状ノッチを起点とした引き裂き力、およびスリット状ノッチ表面を直径1.0mmの針で0.5mm押圧した際の反発力を測定するとともに、下記に示す方法で、伝送特性、心線取り出し性、およびクマゼミの産卵管の侵入に対する防止効果(耐蝉害性)を評価した。評価結果を、外被材料の種類、その物性などとともに、表1および表2に示す。
[密着力]
長さ10mmを残して光ファイバテープ心線を外被から露出させ、その一端を引張速度20mm/分で引張り、その引き抜きに要した力を測定した。
[引き裂き力]
長さ20cmに切り出したケーブル試料に対し、引き裂き速度100mm/分、初期固定間距離30mm、引き裂き長さ100mmの条件で測定した。
[伝送特性]
OTDRを用い、波長1.55μmにて光損失を測定し、0.30dB/km以下を合格とした。
[心線取り出し性]
長さ50cmに切り出したケーブル試料に対し、ノッチを用いて手で外被を引裂いた際の光ファイバテープ心線の取り出し性を下記の基準で評価した。
◎:極めて容易に取り出し可能
○:容易に取り出し可能
△:取り出し困難(実用上、支障あり)
×:取り出し不可能(光ファイバテープ心線が破壊してしまう
[耐蝉害性]
クマゼミが出現する期間に光ドロップケーブルを屋外に30日間に亘って布設し、クマゼミの産卵管の侵入により、光ファイバが断線した試料数(n=5)を調べた。
Figure 2012027316
Figure 2012027316
表1および表2に示すように、本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の心線取り出し性を飛躍的に向上させることができるとともに、極めて高い耐蝉害性を具備している。
なお、本発明は以上説明した実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、図4に示すように、上記実施形態において、ケーブル部10内に収容する光ファイバテープ心線11の数を2枚もしくはそれ以上としてもよい。図4に示す光ドロップケーブル102は、図1に示す実施形態において、光ファイバテープ心線11を2枚短径方向に重ねて配置したものである。
また、図示は省略したが、支持線部20を持たない構造とすることも可能であり、また、ケーブル部10を複数状、図1に示す光ドロップケーブル101のそれより大径の支持線部20の周囲に、支持線部と一体化することなく撚り合わせた構造としてもよい。後者の光ドロップケーブルは、図1に示したような光ドロップケーブルを用いて光ファイバを加入者宅内に引き込む直前の電柱間に架設するいわゆる架空集合光ドロップケーブルとして使用されるものである。
さらに、以上説明した例では、いずれも、スリット状ノッチ15がその先端をケーブル幅方向に延長した直線が光ファイバテープ心線11の略中心を通るように設けられているが、例えば、図5に示すように、スリット状ノッチ15の一方が、光ファイバテープ心線11の位置より上方に、他方が、光ファイバテープ心線11の位置より下方に位置するようにしてもよく、また、スリット状ノッチ15の一方のみを光ファイバテープ心線11の位置より上方または下方に位置するようにしてもよい。さらに、この場合、両スリット状ノッチ15の先端は、光ファイバテープ心線11の近傍に達していれば、光ファイバテープ心線11を挟んで必ずしも対向している必要はない。図5に示した光ドロップケーブル103は、図1に示す実施形態において、スリット状ノッチ15の一方を、光ファイバテープ心線11の位置より上方に、他方を、光ファイバテープ心線11の位置より下方に位置させるとともに、両スリット状ノッチ15の先端が光ファイバテープ心線11を挟んで対向するようにしたものである。
これらの光ドロップケーブルにおいても、図1で説明した光ドロップケーブル101と同様、クマゼミなどの産卵管による光ファイバの断線を略確実に防止することができるとともに、スリット状ノッチ15と空隙部16を形成したことによって、光ファイバテープ心線11を極めて容易に取り出すことができる。
10…ケーブル部、11…光ファイバテープ心線、12…抗張力体、13…外被、14…溝、15…半融着状態のスリット状ノッチ、16…空隙部、20…支持線部、21…支持線、22…被覆、45…押出機、46…補助冷却水槽、47…スリット加工装置、48…主冷却水槽、101〜103…光ドロップケーブル。

Claims (7)

  1. 光ファイバテープ心線と、この光ファイバテープ心線の両側に間隔をおいて並行配置された抗張力体と、これらを一括被覆する外被とを備えた光ドロップケーブルであって、
    前記外被を、55以上63以下のショアD硬度(JIS K 7215)を有するポリオレフィン樹脂で形成し、その表面に1対の先端が前記光ファイバテープ心線近傍に達する半融着状態のスリット状ノッチを設けるとともに、前記外被が前記光ファイバテープ心線の長径方向に平行な側面と接する面にのみ、前記外被と前記光ファイバテープ心線とを非密着とする空隙部を設けたことを特徴とする光ドロップケーブル。
  2. 光ファイバテープ心線と、この光ファイバテープ心線の両側に間隔をおいて並行配置された抗張力体と、これらを一括被覆する外被とを備えたケーブル部と、前記ケーブル部を支持する支持線を備えた支持線部とを有する光ドロップケーブルであって、
    前記外被を、55以上63以下のショアD硬度(JIS K 7215)を有するポリオレフィン樹脂で形成し、その表面に1対の先端が前記光ファイバテープ心線近傍に達する半融着状態のスリット状ノッチを設けるとともに、前記外被が前記光ファイバテープ心線の長径方向に平行な側面と接する面にのみ、前記外被と前記光ファイバテープ心線とを非密着とする空隙部を設けたことを特徴とする光ドロップケーブル。
  3. 前記空隙部の、前記光ファイバテープ心線の長径方向の幅aと、前記光ファイバテープ心線の長径bとの比a/bが、1/4以上3/4以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光ドロップケーブル。
  4. 前記光ファイバテープ心線の前記外被に対する密着力が10N以上78N以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光ドロップケーブル。
  5. 前記各スリット状ノッチを起点とした引き裂き力が15N以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光ドロップケーブル。
  6. 前記光ファイバテープ心線は、その長径方向がケーブル幅方向に略直交するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の光ドロップケーブル。
  7. 前記各スリット状ノッチは、半溶融状態にある外被に切り込みを入れることによって形成されたノッチであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の光ドロップケーブル。
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