JP2012025981A - マグネシウム合金コイル材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度なマグネシウム合金部材の素材に適したマグネシウム合金板、マグネシウム合金コイル材、及びマグネシウム合金コイル材の製造方法を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金コイル材は、長尺なマグネシウム合金材が巻き取られたものであり、Mgに対して固溶現象及び析出現象が生じる固溶・析出元素を添加元素に含有するマグネシウム合金から構成されている。このマグネシウム合金からなるマトリクスの結晶粒内に、当該マトリクスよりも固溶・析出元素の濃度が質量割合で10%以上20%以下高い濃化部を有する。濃化部の面積率は0.5%以上25%以下である。上記コイル材は、保持時間を比較的短めにしたり、加熱温度を比較的低めにした熱処理を施すことで製造される。上記濃化部や未固溶β相を存在させることで、高強度なマグネシウム合金板や、このマグネシウム合金板にプレス加工を施したマグネシウム合金部材が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種の部材、特にプレス加工といった塑性加工部材の素材に適したマグネシウム合金板、このマグネシウム合金板の素材に適したマグネシウム合金コイル材及びその製造方法に関するものである。特に、高強度なマグネシウム合金板が得られるマグネシウム合金コイル材に関するものである。
軽量で比強度、比剛性に優れるマグネシウム合金が、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータといった携帯用電気・電子機器類の筐体や自動車部品などの各種の部材の構成材料に利用されてきている。
マグネシウム合金からなる部材は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材(ASTM規格のAZ91合金)が主流である。近年、ASTM規格のAZ31合金に代表される展伸用マグネシウム合金からなる板にプレス加工を施した部材が使用されつつある。特許文献1は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の合金からなり、プレス加工性に優れるマグネシウム合金板を提案している。
特開2007-098470号公報
上記各種の部材には、強度に優れることが望まれる。そのため、その素材となる1次加工材、例えば、圧延板や伸線材などに対して、更なる強度の向上が望まれている。
従来、マグネシウム合金では、添加元素として、マグネシウム(Mg)に対して固溶現象が生じる元素を利用し、固溶強化による強度の向上が図られている。固溶強化のために、溶体化処理が施される(特許文献1)。
溶体化処理は、素材中に存在する偏析や析出物(β相)をマトリクスに完全に固溶させて過飽和固溶体を形成させたり、均質化(マクロにみて添加元素の濃度を均一化すること)させたりすることを目的としており、この目的から、比較的高めの温度で、かつ長時間に及ぶ条件としている。しかし、本発明者らが調べたところ、このような溶体化処理を鋳造材といった素材に施して、当該素材中の析出物をマトリクスに完全に固溶させ、得られた固溶材に、例えば圧延を施して圧延板を形成しても、当該圧延板の強度の向上に限界がある、との知見を得た。
そこで、本発明の目的の一つは、高強度なマグネシウム合金板といった1次加工材が得られるマグネシウム合金コイル材、及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、高強度なマグネシウム合金板を提供することにある。
本発明者らは、鋳造材といった素材に、加熱温度を低めにしたり、保持時間を低めにした熱処理を施して、析出物が完全に固溶されていない組織や完全に均質化されていない組織を積極的に形成し、この特定の組織を有するマグネシウム合金からなる素材からマグネシウム合金板といった1次加工材を形成したところ、この1次加工材は、強度に優れる、との知見を得た。また、上記特定の組織を有するマグネシウム合金からなる長尺材を作製し、この長尺材を巻き取ったコイル材とすることで、上記マグネシウム合金板といった1次加工材を生産性よく製造できる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明のマグネシウム合金コイル材は、長尺なマグネシウム合金材が巻き取られてなるものであり、圧延材といった1次加工材の素材に利用される。上記マグネシウム合金は、Mgに対して固溶現象及び析出現象が生じる固溶・析出元素を添加元素に含有する。上記マグネシウム合金からなるマトリクスの結晶粒内に、当該マトリクスよりも上記固溶・析出元素の濃度が質量割合で10%以上20%以下高い濃化部を有する。上記濃化部の面積率は0.5%以上25%以下である。
本発明のマグネシウム合金板は、上記本発明マグネシウム合金コイル材に圧延を施して得られたものであり、以下の機械的特性を満たす。
ビッカース硬度:90以上110以下
室温での引張強さ:380MPa以上400MPa以下
室温での0.2%耐力:330MPa以上380MPa以下
室温での伸び:3%以上12%以下
上記本発明マグネシウム合金コイル材は、例えば、以下の本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法は、長尺なマグネシウム合金材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材を製造する方法に係るものであり、以下の鋳造工程と、熱処理工程とを具える。
鋳造工程:Mgに対して固溶現象及び析出現象が生じる固溶・析出元素を添加元素に含有するマグネシウム合金からなる鋳造材を連続鋳造法により製造する工程。
熱処理工程:上記鋳造材に熱処理を施す工程。
上記熱処理は、加熱温度:350℃以上420℃以下、保持時間:12時間以下とする。そして、この熱処理により、上記マグネシウム合金からなるマトリクスの結晶粒内に、当該マトリクスよりも上記固溶・析出元素の濃度が質量割合で10%以上20%以下高い濃化部を有し、上記濃化部の面積率が0.5%以上25%以下である組織を形成する。
上記本発明マグネシウム合金板は、上述のように高強度、高硬度、高靭性であり、各種の部材、代表的にはプレス加工といった塑性加工が施される塑性加工部材(2次加工材)の素材に利用することで、高強度な部材を得ることができる。従って、本発明マグネシウム合金板は、各種の部材の強度の向上に寄与することができる。
上記本発明マグネシウム合金コイル材は、マトリクスの結晶粒内に、過飽和固溶体が存在したり、完全な状態の析出物(β相)が存在する組織ではなく、固溶・析出元素の濃度がマトリクスよりもある程度高い部分が均一的に分散して存在する組織である。このような特定の組織を有することで、本発明マグネシウム合金コイル材は、言わば固溶強化と分散強化との双方の効果を合わせ持つことができると考えられる。また、マトリクスの結晶粒内に上記濃化部が存在するものの、この濃化部は塑性加工時に割れなどの起点になり難いことから、マトリクスの結晶粒界に析出物が存在する場合と比較して、本発明マグネシウム合金コイル材は、塑性加工性にも優れる。そのため、本発明マグネシウム合金コイル材に圧延や押出、伸線といった塑性加工(1次加工)を十分に施すことができる。また、上記塑性加工を施すことで、過飽和固溶体が形成された組織やマトリクスの結晶粒界に析出物が存在する組織を有する素材を用いた場合と比較して、上述のような高強度な本発明マグネシウム合金板や、マグネシウム合金ワイヤなどの1次加工材を製造することができる。従って、本発明マグネシウム合金コイル材は、本発明マグネシウム合金板などの1次加工材の強度の向上に寄与することができる。
そして、均質な過飽和固溶体を形成するために、保持時間を長めにしたり(20時間〜25時間程度)、加熱温度を高めにしたり(420℃〜450℃)した所謂溶体化処理と比較して、本発明製造方法によれば、保持時間を短めにしたり、加熱温度を低めにしたりすることで、上記特定の組織を有する本発明マグネシウム合金コイル材を容易に製造できる。また、熱処理時間の短縮や温度の低下により、マグネシウム合金コイル材の生産性の向上や省エネ化にも寄与することができ、上記本発明製造方法は、工業的意義も高い。
本発明マグネシウム合金板は、高強度である。本発明マグネシウム合金コイル材は、高強度な本発明マグネシウム合金板を生産性よく得られる。本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法は、本発明マグネシウム合金コイル材を製造することができる。
図1は、マグネシウム合金材の断面の顕微鏡写真(200倍)であり、図1(I)は試料No.1-1、図1(II)は試料No.1-3を示す。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[マグネシウム合金コイル材、マグネシウム合金板]
本発明マグネシウム合金コイル材やマグネシウム合金板を構成するマグネシウム合金において固溶・析出元素は、例えば、Al,Mn,Ca,Y,Zr,希土類元素(Yを除く)といった金属元素が挙げられる。上記濃化部、及び後述する未固溶β相は、代表的には、上記金属元素のうち、少なくとも1種の元素を含有する。1種でも2種以上の元素を組み合せて含有していてもよい。
本発明マグネシウム合金コイル材において上記濃化部は、上述のようにマトリクスよりも固溶・析出元素の濃度が10質量%〜20質量%だけ高い領域、より具体的には、固溶・析出元素がマトリクスの結晶粒内に広範に拡散・均質化することなく局所的に留まり、上記結晶粒内の他の部分に比べて固溶・析出元素の濃度が10質量%〜20質量%だけ高い領域を言う。固溶・析出元素の濃度がマトリクスに対して10%未満の領域は、マトリクスの結晶粒内に固溶・析出元素が均一的に存在する組成に近くなり、マトリクスの結晶粒内に濃化部が局所的に分散して存在することによる強度の向上効果が望めず、20%超では、完全な析出物が存在する組成に近くなって加工性が悪化し、塑性加工時に割れが発生し易くなる。濃化部の濃度は、固溶・析出元素の種類及び含有量に応じて、熱処理条件を適宜変化させることで調整することができる。濃度の測定方法は後述する。
上記濃化部の面積率が0.5%未満では、マトリクスの結晶粒内に固溶・析出元素が均一的に存在する組成に近くなり、マトリクスの結晶粒内に濃化部が局所的に分散して存在することによる強度の向上効果が望めない。面積率が高いほど、上記濃化部の分散強化による強度の向上を図ることができるが、25%超では、加工性が悪化し、塑性加工時に割れが発生し易くなる。面積率の測定方法は後述する。
上記濃化部の具体的な形態は、(1)β相が完全に固溶したものの、この固溶した元素がマトリクスの結晶粒内に広範に拡散することなく局所的に留まり、上記結晶粒内の他の部分に比べて、β相を構成していたと考えられる固溶・析出元素の濃度が高い領域から構成される形態、(2)完全に均質化されていない偏析から構成される形態が挙げられる。即ち、濃化部が存在する組織とは、β相が存在しないものの、固溶・析出元素の濃度が10質量%〜20質量%だけ高い領域がマトリクスの結晶粒内に点在する形態であり、完全なβ相が存在せず、かつ均質な過飽和固溶体を形成した場合のようにマトリクスの結晶粒内の組成が均一的になっていない。このような組織を具えるマグネシウム合金コイル材を利用すると、強度・加工性に優れるマグネシウム合金板などの1次加工材が得られる傾向にある。
なお、鋳造材に溶体化処理を施すと、鋳造材を構成するデンドライト状組織を粒状組織に変化させることができる。しかし、上述の本発明製造方法のように、鋳造材に施す熱処理の保持時間を短めにすると、粒状組織に変化させることができても、鋳造時に形成された偏析が完全に均質化されず、残存することがある。濃化部は、このような均質化されずに残存した偏析から構成される形態を含む。
本発明コイル材の一形態として、上記マトリクスの結晶粒内に、上記濃化部に加えて未固溶β相を有し、上記濃化部と未固溶β相との合計面積が0.5%以上25%以下である形態が挙げられる。
本発明においてβ相とは、体心立方構造を有する相であって、固溶・析出元素を含有する金属間化合物を言い、代表的には析出物として存在する。β相の具体的な組成は、Mg17Al12が挙げられる。本発明において未固溶β相とは、鋳造材といった素材に存在する上記β相が、固溶せずに残存する相、又は完全に固溶せずに部分的に溶けた相を言い、固溶・析出元素の濃度が濃化部よりも高い。そして、未固溶β相を含む形態とは、(1)固溶しなかったβ相がそのまま存在する形態、(2)β相の一部が固溶し、この固溶した元素がマトリクスの結晶粒内に広範に拡散せず、上記β相の近傍に当該β相と共に存在する形態が挙げられる。この形態は、β相が存在するものの、その存在量が上記濃化部との合計で0.5面積%〜25面積%と比較的少ない。そのため、この形態は、濃化部が存在せず、かつ完全なβ相のみが存在する組織である場合と比較して、割れなどの起点となる部分が少なく、塑性加工性に優れる。また、このような組織を具えるマグネシウム合金材を利用すると、強度により優れるマグネシウム合金板などの1次加工材が得られる傾向にある。
未固溶β相は、例えば、走査電子顕微鏡:SEMの反射電子像を利用したり、エネルギー分散型X線分光法:EDXや電子線マイクロアナライザ:EPMAなどの組成マッピングを行える装置を利用することで検出することができる。より具体的には、例えば、Mg17Al12といった金属間化合物の組成が存在する領域を未固溶β相として判別することができる。その他、上記反射電子像においてコントラスト差が生じている領域、組成マッピングにおいて面分析やカラー分析により固溶・析出元素の濃度が濃化部よりも高い領域を未固溶β相として判別することができる。
上記マグネシウム合金は、添加元素として、Al,Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Ce,Sn,Li,Zr,Be及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択される少なくとも1種の元素を合計7.3質量%以上含有し、残部がMg及び不純物からなる合金が挙げられる。
本発明マグネシウム合金コイル材や本発明マグネシウム合金板は、添加元素として、実質的に固溶・析出元素のみを含む形態(固溶・析出元素と残部がMg及び不純物からなる形態)の他、固溶・析出元素以外の元素も含む形態とすることができる。
特に、Alを含有するMg-Al系合金は、耐食性に優れる上に、強度、耐塑性変形性といった機械的特性にも優れ、Alの含有量が多いほど、これらの効果が高い傾向にある。従って、Alの含有量は、4.5質量%以上、更に7質量%以上が好ましい。但し、Alの含有量が12質量%を超えると塑性加工性の低下を招くことから、上限は12質量%、更に11質量%が好ましい。添加元素にAlを含有する場合、Alは、固溶・析出元素に該当することから、濃化部はAlを含有する形態となる。また、上記列挙した元素のうち、Al以外の元素を含む場合、その含有量は、合計で0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。不純物は、例えば、Fe,Niなどが挙げられる。
Mg-Al系合金のより具体的な組成は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2質量%〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15質量%〜0.5質量%)、AS系合金(Mg-Al-Si系合金、Si:0.3質量%〜4質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg-Al-Ca系合金、Ca:0.2質量%〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg-Al-Sr系合金、Sr:0.2質量%〜7.0質量%)などが挙げられる。特に、Alを7.3質量%以上12質量%以下含有する形態、より具体的にはAlを8.3質量%〜9.5質量%、Znを0.5質量%〜1.5質量%含有するMg-Al-Zn系合金、代表的にはAZ91合金は、強度に優れる上に耐食性にも優れて好ましい。希土類元素を含有する場合、その含有量は0.1質量%以上が好ましい。特に、Yの含有量は0.5質量%以上が好ましい。
本発明マグネシウム合金材の一形態として、上記マトリクスの結晶粒の平均粒径が20μm以上80μm以下である形態が挙げられる。
上記マトリクスの結晶粒の平均粒径が20μm〜80μmを満たすと、圧延などの塑性加工性を高められる。上記平均粒径は、熱処理条件により変化させることができ、例えば、加熱温度が低く、かつ保持時間が短いと、微細になる傾向にある。
本発明マグネシウム合金コイル材を構成する長尺なマグネシウム合金材の代表的な形態としては、鋳造材に上記特定の熱処理が施された熱処理材が挙げられる。鋳造材に上記特定の熱処理を施すことで、鋳造時に生成された析出物(β相)や偏析を上記濃化部や未固溶β相に効率よく変成できる上に、中央偏析などの欠陥を小さくしたり、鋳造組織(代表的にはデンドライト組織)を熱処理組織(代表的には粒状結晶組織)に変成して、圧延などの塑性加工性を高められる。その他、本発明マグネシウム合金コイル材を構成する長尺なマグネシウム合金材の具体的な形態としては、鋳造材に圧延や押出、伸線などの塑性加工を施した1次加工材に上記特定の熱処理が施された形態、上記1次加工材に更に研磨などの表面加工、矯正加工などを施した加工材に上記特定の熱処理が施された形態などが挙げられる。
また、本発明マグネシウム合金コイル材を構成する長尺なマグネシウム合金材の代表的な形状としては、板材又は線状材が挙げられる。上記板材や線状材の仕様(厚さ、幅、長さ、直径、横断面形状など)は適宜選択することができる。例えば、本発明マグネシウム合金コイル材が板材から構成される場合、長さ:30m以上、更に50m以上、幅:200mm以上、更に400mm以上のものが挙げられる。また、コイル材の内径及び外径は、板材の厚さや長さに応じて適宜選択することができる。特に、上記マグネシウム合金材を板材とし、この板材を本発明マグネシウム合金板の素材として圧延などを施す場合、当該板材の厚さは、10mm以下、特に5mm以下であると、厚さが薄い圧延板などを容易に製造することができ、利用し易いと期待される。
ここで、例えば、鋳造材などの素材を適宜な長さに切断した短尺なシート材や棒材に上記熱処理を施した短尺な熱処理材も、本発明コイル材と同様の組織、即ち固溶・析出元素の濃度が局所的に高い濃化部が均一的に分散した組織を有することで、固溶強化と分散強化との双方の効果を合わせ持つことができると考えられる。従って、上記短尺な熱処理材も、圧延や押出、伸線といった塑性加工が施される素材に好適に利用できる。しかし、上述のように鋳造材などの素材を連続的に製造して長尺材とし、この長尺材をコイル状に巻き取ってコイル材とし、このコイル材に上記特定の熱処理を施したコイル材は、本発明マグネシウム合金板といった1次加工材の製造にあたり、圧延装置といった塑性加工装置に連続的に素材を供給することができ、1次加工材を生産性よく製造できる。従って、本発明コイル材は、種々のマグネシウム合金部材の大量生産に寄与することができる。また、本発明マグネシウム合金板も圧延後、コイル状に巻き取って圧延コイル材とすることで、プレス加工部材といった2次加工材(マグネシウム合金部材)の製造にあたり、プレス装置といった塑性加工装置に連続的に素材を供給することができ、マグネシウム合金部材の生産性にも優れる。
本発明マグネシウム合金板の一形態として、当該板の少なくとも一面に化成処理などの防食処理が施された形態、更に、当該板の少なくとも一面に塗装層を具える形態とすることができる。この形態によれば、防食層や塗装層を具えることで、本発明マグネシウム合金板の耐食性を補強できる上に、着色や模様の付与などが可能となるため、商品価値をも高められる。
[製造方法]
(鋳造工程)
上記本発明製造方法において鋳造材は、急冷凝固が可能な連続鋳造法、例えば、板材を形成する場合、双ロール鋳造法、双ベルト鋳造法、棒材を形成する場合、ベルトアンドホイール法により製造されたものを利用することが好ましい。特に、双ロール鋳造法は、剛性及び熱伝導性に優れ、熱容量が大きい鋳型を用いることで、急冷凝固が可能であることから、偏析が少ない鋳造板材を形成できて好ましい。鋳造時の冷却速度は、100℃/秒以上とすると、柱状晶の界面に生成される析出物を20μm以下といった微細にすることができて好ましい。鋳造材の厚さは、厚過ぎると偏析が生じ易いため、10mm以下、更に7mm以下、特に5mm以下が好ましい。また、得られた鋳造板材を巻き取るにあたり、鋳造板材において巻き取り直前の箇所を150℃以上に加熱した状態で巻き取ることで、コイルの内径(巻き取り径)が小さい場合などでも、割れなどを生じることなく巻き取れる。
(熱処理工程)
上記鋳造材に、加熱温度:350℃〜420℃、保持時間:12時間以下の熱処理を施す。加熱温度は低く、保持時間も短い方が上記特定の組織を有する本発明マグネシウム合金コイル材を形成し易く、加熱温度は405℃以下、保持時間は10時間以下がより好ましい。上記範囲において、加熱温度が低く、保持時間が短いほど、未固溶β相を形成し易く、加熱温度が高く、保持時間が長いほど、上述した濃化部が形成され易くなる。但し、保持時間がある程度長くなると、拡散されて濃化部が低減される。例えば、加熱温度が350℃〜370℃程度の場合、5時間程度、400℃〜420℃程度の場合、1時間程度で濃化部と未固溶β相とを有する形態を形成することができ、加熱温度が350℃〜370℃程度の場合、10時間程度、400℃〜420℃程度の場合、5時間程度で未固溶β相が存在せず、濃化部のみが実質的に存在する形態を形成することができる。上記保持時間からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却を行って冷却速度を速める、特に30℃/min以上、更に50℃/min以上とすると、結晶粒界に析出物が析出されることを抑制できて好ましい。
上記熱処理は、バッチ処理又は連続処理のいずれも利用することができる。バッチ処理では、長尺材が巻き取られたコイル材の状態で加熱炉に装入して加熱した後、そのまま冷却し、連続処理では、コイル材を巻き戻した状態の板材や棒材に加熱、冷却を順に施した後、再度巻き取る。
(圧延工程)
上述のようにして得られた本発明マグネシウム合金コイル材を巻き戻した板材に圧延を施す圧延工程を具える製造方法により、本発明マグネシウム合金板を製造できる。上記圧延は、上記本発明マグネシウム合金コイル材を構成する板材を含む素材板を150℃以上400℃以下に加熱して行うと、1パスあたりの圧下率を高めても(例えば、10%〜50%程度)、圧延中に割れなどが生じ難い上に、表面の焼付きなどによる劣化や、圧延ロールの熱劣化を抑制できて好ましい。特に板材の加熱温度は、350℃以下、更に300℃以下、とりわけ280℃以下が好ましい。圧延は、公知の条件、例えば、素材だけでなく圧延ロールも加熱したり、特許文献1に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。板材の加熱には、巻き取った状態の本発明コイル材を加熱可能な雰囲気炉(ヒートボックス)などを利用することが挙げられる。
上記圧延は、1パスでも複数パス行ってもよい。複数パスの圧延を行うことで、厚さが薄い圧延板が得られる上に、圧延板を構成する組織の平均結晶粒径を小さくしたり(例えば、10μm以下、好ましくは5μm以下)、プレス加工といった塑性加工性を高められる。複数パスの圧延を行う場合、リバース圧延(一対のリールの間に圧延ロールを挟み、これらのリールに対して繰り出しと巻き取りとを交互に切り替えて、コイル材の回転方向を反転制御することで、素材板を往復走行させて圧延を施す方法)を利用することができる。所望の厚さの圧延板が得られるように、パス数、各パスの圧下率、及び総圧下率を適宜選択することができる。
複数パスの圧延を行う場合、パス間に中間熱処理を行って、この中間熱処理までの塑性加工(主として圧延)により素材板に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減すると、その後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止して、より円滑に圧延を行える。中間熱処理は、例えば、加熱温度:150℃〜350℃、保持時間:0.5時間〜3時間が挙げられる。この中間熱処理にも上記雰囲気炉を利用することができる。
(その他の工程)
上記圧延工程により得られた圧延板に、最終熱処理(最終焼鈍)を施したり、この最終熱処理を施さず、或いは最終熱処理後に温間矯正を施すと、プレス加工といった塑性加工性に優れて好ましい。矯正は、ロールレベラなどを用い、圧延板を100℃〜300℃、好ましくは150℃以上280℃以下に加熱して行うことが挙げられる。このような温間矯正を行った矯正板にプレス加工といった塑性加工を施すと、塑性加工時に動的再結晶化が生じることで、塑性加工性に優れる。
上記最終熱処理を行った場合、圧延に伴う歪みを除去することができる。最終熱処理の条件は、例えば、素材の加熱温度:100℃以上300℃以下、保持時間:5分以上60分以下が挙げられる。加熱温度を300℃以下とすることで、析出物(金属間化合物)が存在する場合でも、プレス加工時などで割れの原因となるような粗大な粒に成長することを抑制できる。
なお、本発明マグネシウム合金コイル材は、鋳造材以外、例えば、圧延材などに上記特定の熱処理を施すことでも製造することができる。また、本発明マグネシウム合金コイル材を長尺な線状材を巻き取ったものとする場合、例えば、鋳造材に押出や圧延を施したものを素材として用意し、この素材に上記特定の熱処理を施すことで製造することができる。この本発明マグネシウム合金コイル材を巻き戻して伸線加工を施すことで、マグネシウム合金ワイヤを製造することができる。伸線加工は、伸線ダイスやローラダイスを用いて行う。伸線条件は、素材の加工温度:250℃以下(好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上)、加工温度への昇温速度:1℃/sec〜100℃/sec、加工度(断面減少率):3%/1パス〜25%/1パス、線速:1m/min以上、加工後の冷却速度:0.1℃/sec以上が挙げられる。例えば、1パスあたりの加工度を小さくする(合金組成にもよるが概ね15%以下、好ましくは10%以下)場合、上述のように加熱を行わず室温にて伸線加工を行える。
以下、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
[試験例1]
以下の条件でマグネシウム合金材を作製し、その金属組織を調べた。
AZ91合金相当のAl及びZnを含有する組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn(全て質量%))のマグネシウム合金からなり、双ロール連続鋳造法により得られた鋳造板(厚さ4.2mm)を巻き取った鋳造コイル材を複数用意した。得られた各鋳造コイル材に、加熱温度:400℃±5℃、保持時間:5時間、10時間、25時間のいずれかの条件で熱処理を施した。この熱処理において冷却は、強制冷却手段を用いた空冷又は水冷とし、冷却速度:50℃/min以上の急冷とした。得られた熱処理材を試料No.1-1(保持時間:5時間)、試料No.1-2(保持時間:10時間)、試料No.1-3(保持時間:25時間)とする。
上記各試料No.1-1〜1-3のそれぞれについて、板厚方向に任意に切断して断面をとり、その断面を研磨した後、断面の走査電子顕微鏡:SEMの観察像(ここは200倍)をとった。そして、この観察像においてEPMAによる組成マッピングを行い、全体組成をマトリクスの組成とし、マトリクスの結晶粒内に対して、当該マトリクスの組成よりも固溶・析出元素(ここでは、代表的にはAl)の含有量が多い領域を算出する。そして、固溶・析出元素の含有量がマトリクスの組成よりも質量割合で10%〜20%多くなっている領域を濃化部として抽出し、Mg17Al12の組成が存在する領域を未固溶β相として抽出する。なお、市販のEPMA装置によりカラーマッピングを行うと、固溶・析出元素の含有量の大小を色別表示でき、濃化部の抽出を行い易い。濃化部の判定の基準となるマトリクスの組成は、例えば、コイル材の組成をEDXなどで複数の地点(10〜20点程度)の組成を測定した平均値を利用することができる。また、顕微鏡の観察倍率は適宜選択することができる。
上記断面のSEMの観察像において観察視野(ここでは、500μm×500μm)をとり、この観察視野中の濃化部を全て抽出して各濃化部の面積を算出し、(全ての濃化部の合計面積)/(観察視野の面積)を当該観察視野の濃化部の面積率とする。各試料No.1-1〜1-3のそれぞれについて、板厚方向に5つの断面をとり、各断面の観察像から任意に3つの観察視野をとり、15個の観察視野の濃化部の面積率の平均をとったところ、試料No.1-1:13%、試料No.1-2:8%、試料No.1-3:1%未満であった。また、同様にして、濃化部と未固溶β相との合計面積率を調べたところ、15個の観察視野の合計面積率の平均は、試料No.1-1:14%、試料No.1-2:8%、試料No.1-3:1%であった。
試料No.1-1について上記断面のSEMの反射電子像をとったところ、当該反射電子像においてコントラスト差が生じている領域が存在していた。このことから、試料No.1-1では、鋳造材に存在してた偏析やβ相が上記熱処理により完全に固溶又は均質化しきれずに残存して未固溶β相や偏析が存在する組織となったと考えられる。
得られた各試料No.1-1〜1-3をそれぞれ板厚方向に任意に切断して断面をとり、その断面を研磨してからエッチングした後、光学顕微鏡で観察した。図1(I)は試料No.1-1(5時間)の観察像(200倍)、図1(II)は試料No.1-3(25時間)の観察像(200倍)である。図1において、濃い色(黒色)の筋が結晶粒界であり、この濃い色の筋に囲まれる領域がマトリクスの結晶粒であり、結晶粒内の濃い色(黒色)の粒は、マトリクスよりも固溶・析出元素(ここでは代表的にはAl)の濃度が高い箇所(微細な析出物を含む)に接した箇所であって、固溶・析出元素の濃度が相対的に低い箇所が優先的にエッチングにより腐食して生じたと考えられるピットである。
試料No.1-1,1-3のいずれも、鋳造材に熱処理を施すことで、粒状の結晶粒から構成される粒状結晶組織となっていることがわかる。また、試料No.1-1,1-3のいずれも、結晶粒内に非常に微細な粒状の領域が多数存在することが分かる。しかし、両試料No.1-1,1-3では、粒状の領域の存在の仕方が異なる。
試料No.1-1では、各結晶粒内において、粒状の領域が直線を描くように配列されているものが多数存在することが分かる。この直線状の配列は、上記熱処理前の鋳造材において、デンドライト状に存在していた偏析に沿っていると考えられる。即ち、試料No.1-1において点線状に並ぶピットは、偏析の残存に基づくものであり、このことからも、試料No.1-1は、偏析が残存する組織であると考えられる。また、試料No.1-1は、結晶粒界にピットが存在せず、析出物が実質的に存在していないと考えられる。
これに対して、試料No.1-3は、各結晶粒内において、粒状の領域が均一的に分散していること、但し、試料No.1-1のような規則的な配列ではなくランダムに存在することが分かる。このような分散状態は、上記熱処理により過飽和固溶体が均一的に形成されて、固溶・析出元素(ここでは代表的にはAl)の濃度や析出相の分布が均一的となったことに基づくものであると考えられる。
更に、各試料No.1-1〜1-3に対してそれぞれ、上述のようにして、15個の観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在するマトリクスの結晶粒の円相当径(各結晶粒の面積の等価面積円の直径)をそれぞれ求め、上記円相当径の総和を一つの観察視野内に存在する結晶粒数で除した値:(円相当径の合計)/(結晶粒の合計数)を当該観察視野の平均粒径とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の平均粒径の平均を調べたところ、試料No.1-1:42μm、試料No.1-2:39μm、試料No.1-3:45μmであった。
[試験例2]
試験例1で作製した試料No.1-1〜1-3の熱処理材に、温間圧延を施し、厚さ0.6mmの圧延板を作製した。温間圧延は、加工度(圧下率):5%/パス〜40%/パス、素材板の加熱温度:250℃、ロール温度:100℃〜250℃とし、複数パス行った。得られた圧延板に温間矯正、研磨処理を順に施し、研磨板を作製した。これら温間矯正や研磨処理は省略してもよい。
ここでは、試験例1で作製した熱処理材からなるコイル材を巻き戻して上記圧延を施し、得られた圧延板を巻き取って圧延コイル材を作製した。また、上記温間矯正は、巻き取られた圧延コイル材を巻き戻した素材板(ここでは作製した圧延板)を加熱可能な加熱炉と、加熱された素材板に連続的に曲げ(歪)を付与する複数のロールを有するロール部とを具えるロールレベラ装置を用いて行う。上記ロール部は、上下に対向して千鳥状に配置された複数のロールを具える。上記ロールレベラ装置により、素材板は、上記加熱炉内で加熱されながら上記ロール部に送られ、ロール部の上下のロール間を通過するごとに、これらのロールにより順次曲げが付与される。
上記研磨処理は、#600の研磨ベルトを用いて湿式ベルト式研磨を施した。そして、試料No.1-1,1-2,1-3を用いて作製した各研磨板をそれぞれ試料No.2-1,2-2,2-3とする。
得られた試料No.2-1,2-2,2-3について、室温(約20℃)下で引張試験を行い(標点距離GL=50mm、引張速度:5mm/min)、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、伸び(%)を測定した(評価数:いずれもn=5)。この試験では、各試料No.2-1,2-2,2-3(厚さ:約0.6mm)からそれぞれ、JIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を複数作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて上記引張試験を行った。試料No.2-1,2-2,2-3について、n=5の最大値及び最小値を表1に示す。
また、得られた試料No.2-1,2-2,2-3について、ビッカース硬度(Hv)を測定した。ここでは、試料No.2-1,2-2,2-3をそれぞれ厚さ方向に切断した任意の横断面において、表面から板厚方向に0.05mmまでの表層部分を除く中央部分について任意の複数点(ここでは5点)のビッカース硬度を測定した。試料No.2-1,2-2,2-3について、5点の最大値及び最小値を表1に示す。
表1に示すように、マトリクスの結晶粒内に固溶・析出元素の濃化部が特定の面積割合で存在し、均一的に分散した組織を有するマグネシウム合金コイル材を素材に用いることで、高強度なマグネシウム合金板が得られることが分かる。特に、濃化部や未固溶β相が存在した試料No.1-1を素材に用いた試料No.2-1は、偏析を完全に均質化すると共に、β相を完全に固溶させてその構成元素を拡散させた試料No.1-3を素材に用いた試料No.2-3と比較して、同一組成でありながら、高強度、高硬度であり、かつ靭性にも優れることが分かる。この理由は、試料No.2-1は、濃化部による分散強化と、固溶強化との双方の効果が得られた上に、微細な濃化部の分散組織による高靭性化を図ることができたためであると考えられる。
[試験例3]
試験例2で作製した試料No.2-1〜2-3の研磨板に塑性加工を施し、プレス成形性を評価した。
この試験では、試料No.2-1〜2-3のそれぞれについて、研磨板からなる研磨コイル材を10個ずつ用意した。そして、各研磨コイル材を所定の長さに切断した板材を用意し、各板材を250℃に加熱した状態で円筒深絞り加工(パンチ肩R=0.3mm)を行い、成功率を調べた。その結果を表2に示す。成功率は、割れなどが生じることなく、表2に示す所定の深絞り加工が行えた場合を成功とし、試料No.2-1〜2-3のそれぞれについて、用意した10枚の板材に深絞り加工を行って成功数を測定し、(成功数)/(加工数)を成功率とした。ブランク径及び絞り比が大きいほど、強加工である。
表2に示すように、マトリクスの結晶粒内に固溶・析出元素の濃化部が特定の面積割合で存在し、均一的に分散した組織を有するマグネシウム合金コイル材を素材とし、この素材に圧延を施して得られたマグネシウム合金板は、プレス加工性に優れることが分かる。
従って、上記試験例から、組織全体において固溶・析出元素が特定の濃度である領域が均一的に存在する組織となるように、熱処理条件(特に保持時間)を制御して、マトリクス中へのβ相の溶け込み量や偏析の均質化の状態を制御することで、高強度、高硬度で、プレス加工といった塑性加工性に優れるマグネシウム合金板などの2次加工材を提供できると期待される。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成(含有される元素の種類、含有量)、マグネシウム合金板の厚さ、製造条件(加熱温度、保持時間など)を適宜変更することができる。
本発明マグネシウム合金板は、各種の電気・電子機器類の構成部材、特に、携帯用や小型な電気・電子機器類の筐体、高強度であることが望まれる種々の分野の構成部材、例えば、自動車や航空機などの構成部材の素材に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金コイル材は、上記本発明マグネシウム合金板の素材に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法は、上記マグネシウム合金コイル材の製造に好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. 長尺なマグネシウム合金材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材であって、
    前記マグネシウム合金は、Mgに対して固溶現象及び析出現象が生じる固溶・析出元素を添加元素に含有しており、
    前記マグネシウム合金からなるマトリクスの結晶粒内に、当該マトリクスよりも前記固溶・析出元素の濃度が質量割合で10%以上20%以下高い濃化部を有し、
    前記濃化部の面積率が0.5%以上25%以下であることを特徴とするマグネシウム合金コイル材。
  2. 前記マトリクスの結晶粒内に、未固溶β相を有し、
    前記濃化部と未固溶β相との合計面積が0.5%以上25%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金コイル材。
  3. 前記マグネシウム合金は、添加元素として、Al,Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Ce,Sn,Li,Zr,Be及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択される少なくとも1種の元素を合計7.3質量%以上含有し、残部がMg及び不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウム合金コイル材。
  4. 前記添加元素は、Alを7.3質量%以上12質量%以下含有し、
    前記濃化部は、A1を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
  5. 前記マトリクスの結晶粒の平均粒径が20μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材に圧延を施して得られたマグネシウム合金板であり、
    当該マグネシウム合金板のビッカース硬度が90以上110以下、室温での引張強さが380MPa以上400MPa以下、室温での0.2%耐力が330MPa以上380MPa以下、室温での伸びが3%以上12%以下であることを特徴とするマグネシウム合金板。
  7. 長尺なマグネシウム合金材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材の製造方法であって、
    Mgに対して固溶現象及び析出現象が生じる固溶・析出元素を添加元素に含有するマグネシウム合金からなる鋳造材を連続鋳造法により製造する鋳造工程と、
    前記鋳造材に熱処理を施す熱処理工程とを具え、
    前記熱処理は、加熱温度を350℃以上420℃以下、保持時間を12時間以下とし、
    前記マグネシウム合金からなるマトリクスの結晶粒内に、当該マトリクスよりも前記固溶・析出元素の濃度が質量割合で10%以上20%以下高い濃化部を有し、前記濃化部の面積率が0.5%以上25%以下である組織を形成することを特徴とするマグネシウム合金コイル材の製造方法。
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