JP2012017278A - トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメート - Google Patents

トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメート Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物の生成を低減することができるトルエンジカルバメートの製造方法、その製造方法により得られるトルエンジカルバメート、および、そのトルエンジカルバメートを用いてトルエンジイソシアネートを製造するための、トルエンジイソシアネートの製造方法を提供すること。
【解決手段】トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルとを、アルコールの存在下かつ尿素の不存在下、反応させて、トルエンジカルバメートを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメートに関する。
従来より、アルキルカルバメートなどのカルバメート(ウレタン化合物)は、医薬、農薬などの原料として、また、各種ファインケミカルズの原料として、さらには、アルコール類の分析試剤などとして、広範な用途を有する工業原料として、有用な有機化合物である。
また、このようなアルキルカルバメートは、近年、ホスゲンを用いないイソシアネートの製造原料とすることが種々検討されている。
すなわち、イソシアネートは、イソシアネート基を含む有機化合物であって、ポリウレタンの原料として広く用いられており、工業的には、アミンとホスゲンとの反応により製造されている(ホスゲン法)。
しかし、ホスゲンは毒性および腐食性が強く、取り扱いが不便であるため、近年、ホスゲン法に代わる経済的なイソシアネートの製造方法として、アミンと、尿素および/またはカルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、カルバメートを製造し、その後、得られたカルバメートを、熱分解することによってイソシアネートを製造することが、提案されている。
このようなカルバメートの製造方法としては、例えば、ジアミノトルエンと、尿素と、n−ヘキサノールとをルイス酸触媒の存在下において反応させることにより、2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエンを得ることが提案されている(例えば、特許文献1、例11参照。)。
特開昭57−114561号公報
しかしながら、上記の方法で得られたカルバメート(2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエン)を熱分解し、イソシアネートを製造すると、その熱分解において、上記のカルバメートやイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起する場合がある。とりわけ、上記の2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエンのように、カルバメートあるいはその中間体がアミノ基を有する場合などには、そのアミノ基とイソシアネートとが、好ましくない反応を惹起することが、知られている。
そして、このような反応が惹起されると、副生物として、固形分である残渣が大量に生成し、また、その残渣が、イソシアネートの製造装置などを閉塞させ、イソシアネートの製造効率を低下させるという不具合がある。
本発明の目的は、副生成物の生成を低減することができるトルエンジカルバメートの製造方法、その製造方法により得られるトルエンジカルバメート、および、そのトルエンジカルバメートを用いてトルエンジイソシアネートを製造するための、トルエンジイソシアネートの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法は、トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルとを、アルコールの存在下かつ尿素の不存在下、反応させて、トルエンジカルバメートを製造することを特徴としている。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が、トルエンジカルバメート100モルに対して、5モル以下の割合で副生されるか、または、実質的に副生されないことが好適である。
Figure 2012017278
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、N−無置換カルバミン酸エステルは、不純物として、下記式(2A)および下記式(2B)で示されるビウレット系化合物を、N−無置換カルバミン酸エステル100モルに対して、20モル以下の割合で含有するか、または、実質的に含有しないことが好適である。
Figure 2012017278
Figure 2012017278
(式中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
また、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法は、上記のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造する工程と、製造されたトルエンジカルバメートを、熱分解してトルエンジイソシアネートを製造する工程とを備えることを特徴としている。
また、本発明のトルエンジカルバメートは、不純物として、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜5モルの、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含有することを特徴としている。
Figure 2012017278
通常、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させる場合には、原料成分からトルエンジカルバメートを生成する一方、原料成分中の尿素(または尿素から誘導されるビウレット)とトルエンジアミンとの反応により、上記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成するため、これにより、トルエンジカルバメートの製造効率が低下するという不具合がある。
しかし、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法は、上記原料成分から尿素が除かれているため、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の副生が抑制されるか、または、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が実質的に副生されない。そのため、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、アミノ基を有するカルバメート中間体が低減されるので、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法では、そのようなアミノ基を有するカルバメートの中間体とイソシアネートとの反応を低減して、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
その結果、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法によれば、装置の閉塞などを抑制し、優れた収率でイソシアネートを製造することができる。
本発明のトルエンジカルバメートを製造する工程、および、トルエンジイソシアネートを製造する工程の一実施形態を示すフロー図である。
本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルとを、アルコールの存在下かつ尿素の不存在下、反応させて、トルエンジカルバメートを製造する(図1のカルバメート製造工程)。
トルエンジアミン(別名:トリレンジアミン、ジアミノトルエン)としては、特に制限されず、各種置換位のトルエンジアミンを用いることができるが、工業的には、好ましくは、2,4−トルエンジアミン(2,4−トリレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トルエンジアミン(2,6−トリレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン)などが用いられる。
これらトルエンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
N−無置換カルバミン酸エステルは、カルバモイル基における窒素原子が官能基により置換されていない(すなわち、窒素原子が、2つの水素原子と、1つの炭素原子とに結合する)カルバミン酸エステルであって、例えば、下記一般式(3)で示される。
RO−CO−NH (3)
(式中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(3)中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
上記式(3)中、Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、例えば、シクロヘキシル、シクロドデシルなどの炭素数5〜10の脂環式飽和炭化水素基などが挙げられる。
Rにおいて、アルキル基として、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、より好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
上記式(3)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸n−プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸n−ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸iso−オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシルなどの飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステル、例えば、カルバミン酸シクロヘキシル、カルバミン酸シクロドデシルなどの脂環式飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
上記式(3)中、Rにおいて、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1〜4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。また、置換基がアリール基に複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
また、上記式(3)において、Rが置換基を有していてもよいアリール基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなどの芳香族炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、上記式(3)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
このようなN−無置換カルバミン酸エステルは、例えば、尿素とアルコール(後述する一般式(5)で示され、原料成分であるROH)とを、下記式(4)に示すように反応させることにより、製造することができる(図1のN−無置換カルバミン酸エステル製造工程)。
NHCONH+ROH→NHCOOR+NH (4)
そして、N−無置換カルバミン酸エステル製造工程では、製造されたN−無置換カルバミン酸エステルに、さらに尿素が付加することにより、下記式(2A)で示されるビウレット系化合物が生成する場合がある。
Figure 2012017278
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
さらに、N−無置換カルバミン酸エステル製造工程では、上記式(2A)で示されるビウレット系化合物に、さらにアルコールが付加することにより、下記式(2B)で示されるビウレット系化合物が生成する場合がある。
Figure 2012017278
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
そのため、そのような場合には、製造されたN−無置換カルバミン酸エステル中に、不純物である、上記式(2A)および上記式(2B)で示されるビウレット系化合物が、N−無置換カルバミン酸エステル100モルに対して、20モル以下、好ましくは、10モル以下、さらに好ましくは、実質的になくなるよう処理にする(図1のビウレット系化合物除去工程)。
ビウレット系化合物除去工程において、このような処理は、N−無置換カルバミン酸エステルからビウレット系化合物を分離できれば、特に制限されず、例えば、蒸留、晶析、抽出、カラム分離など、公知の分離(除去)操作が採用される。
そして、このようにビウレット系化合物が分離(除去)されたN−無置換カルバミン酸エステルは、カルバメート製造工程へ供給され、トルエンジアミンとの反応に供される。
また、製造されたN−無置換カルバミン酸エステル中に、上記式(2)で示されるビウレット系化合物が、N−無置換カルバミン酸エステル100モルに対して、20モル以下、好ましくは、10モル以下、さらに好ましくは、実質的にない場合には、上記した分離(除去)操作は必要とされず、製造されたN−無置換カルバミン酸エステルを、直接、カルバメート製造工程へ供給することができる(図1の破線矢印)。
例えば、上記式(4)において、尿素1モルに対して、アルコールを、過剰モル、すなわち、1.1モル以上、好ましくは、2モル以上、通常、10モル以下の割合で、反応させれば、上記式(2)で示されるビウレット系化合物を、N−無置換カルバミン酸エステルに対して、上記割合以下にすることができる。そのため、そのような場合には、過剰のアルコールとともに、生成したN−無置換カルバミン酸エステルを、直接、カルバメート製造工程へ供給することができる。
アルコールは、例えば、1〜3級の1価のアルコールであって、例えば、下記一般式(5)で示される。
R−OH (5)
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
上記式(5)中、Rは、上記式(3)のRと同意義、すなわち、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
上記式(5)において、Rが上記したアルキル基であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、iso−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素系アルコール、例えば、シクロヘキサノール、シクロドデカノールなどの脂環式飽和炭化水素系アルコールなどが挙げられる。
上記式(5)において、Rが上記した置換基を有していてもよいアリール基であるアルコールとしては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
アルコールとして、好ましくは、上記式(5)において、Rがアルキル基であるアルコールが挙げられ、より好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、Rが炭素数2〜6のアルキル基であるアルコールが挙げられる。
そして、この方法では、カルバメート製造工程において、尿素を配合することなく、上記したトルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
通常は、N−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、トルエンジアミンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、N−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
なお、N−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量のN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
そのため、N−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、カルバメートの収率を向上させる観点から、トルエンジアミンのアミノ基1つに対して、0.5〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モル程度である。
また、N−無置換カルバミン酸エステルの配合量が多いと、下記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体(後述)が生成する割合が増加する傾向にある。そのような観点から、N−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、トルエンジアミンのアミノ基1つに対して、20倍モル以下、好ましくは、10倍モル以下、さらに好ましくは、5倍モル以下、通常、1倍モル以上である。
また、アルコールの配合量は、トルエンジアミンのアミノ基1つに対して、0.5〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モル程度である。
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ニトリル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アミド類、ニトロ化合物類や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの反応溶媒を配合することにより、操作性を向上させることができる。
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のトルエンジカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、トルエンジアミン1質量部に対して、通常、0〜500質量部、好ましくは、0〜100質量部の範囲で用いられる。
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるトルエンジカルバメートの収率が低下する場合がある。
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、目的生成物であるトルエンジカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
触媒としては、特に制限されないが、例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラート、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラート、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウム、塩化ビスマス(III)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニル、チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタン、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナート、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)なども挙げられる。
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、触媒の配合量は、トルエンジアミン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、特に制限されることはない。
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応槽内に、トルエンジアミン、N−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。
なお、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
そして、このような反応は、例えば、アルコールの存在下において、下記式(6)に示すように進行し、これにより、主生成物として、例えば、下記一般式(7)で示されるトルエンジカルバメートが生成する。この反応において、アルコールは、N−無置換カルバミン酸エステルを安定化させるために配合されている。
Figure 2012017278
Figure 2012017278
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
トルエンジカルバメートとしては、原料成分であるトルエンジアミンに応じて、例えば、2,4−トルエンジカルバメート、2,6−トルエンジカルバメートまたはそれらの混合物などが挙げられる。
このような方法によれば、カルバメート製造工程において、原料成分から尿素が除かれている。そのため、尿素またはビウレットとトルエンジアミンとの反応により生成する、下記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体(後述)の生成が抑制される。その結果、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
また、この反応においては、排出ガスとして、アルコール、アンモニアおよび二酸化炭素を含むガスが副生される。
また、この反応では、さらに、上記したように、過剰のN−無置換カルバミン酸エステルや、カーボネート(例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネートなど)が、低沸点成分として副生する場合がある。
さらに、N−無置換カルバミン酸エステル中に、上記式(2A)で示されるビウレット系化合物が不純物として存在すると、下記式(8A)に示す反応が進行し、副生成物として、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素(1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン)およびその誘導体が生成する。
また、N−無置換カルバミン酸エステル中に、上記式(2B)で示されるビウレット系化合物が不純物として存在すると、下記式(8B)に示す反応が進行し、副生成物として、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素(1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン)およびその誘導体が生成する。
このような2置換ベンゾイレン尿素は、具体的には、下記式(1)で示される。
Figure 2012017278
Figure 2012017278
Figure 2012017278
上記式(1)において、アミノ基(HN−)は、例えば、5位または7位に置換され、メチル基(HC−)は、例えば、6位または8位に置換される。
つまり、上記の2置換ベンゾイレン尿素として、より具体的には、例えば、7−アミノ−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、5−アミノ−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、5−アミノ−8−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、7−アミノ−8−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオンなどが挙げられる。
また、2置換ベンゾイレン尿素の誘導体としては、例えば、下記式(9)で示される、2置換ベンゾイレン尿素のアミノ基がカルバミン酸エステル体で置換されたカルバメート体などが挙げられる。
Figure 2012017278
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
つまり、トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルとを、アルコールの存在下、反応させると、上記のトルエンジカルバメートが得られるとともに、アルコール、過剰(未反応)のN−無置換カルバミン酸エステル、カーボネートなどが、低沸点成分として得られ、さらに、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が得られる。
このような場合には、低沸点成分は、必要により、公知の方法により還流され、上記反応において有効利用することができるが、一方、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が生成すると、トルエンジカルバメートの製造効率が低下するという不具合がある。
しかし、この方法では、N−無置換カルバミン酸エステル中の、上記式(2)で示されるビウレット系化合物が、上記した割合まで低減されている。そのため、上記式(8)で示す反応が起こる割合が抑制され、または、上記式(8)で示す反応が実質的に起こらず、その結果、上記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が、トルエンジカルバメート100モルに対して、5モル以下、好ましくは、3モル以下の割合で副生されるか、または、実質的に副生されない。
よって、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
そして、このようにして製造されるトルエンジカルバメートは、不純物として、上記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、実質的に含有していないか、または、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜5モル含有している。
このようなトルエンジカルバメートは、工業的には、例えば、イソシアネートの製造などに用いられるが、このようなトルエンジカルバメートによれば、アミノ基を有するカルバメート中間体が低減されるので、そのようなアミノ基を有するカルバメートの中間体とイソシアネートとの反応を低減して、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
そして、本発明は、上記したトルエンジカルバメートの製造方法によって得られたトルエンジカルバメートを熱分解して、トルエンジイソシアネートを製造するトルエンジイソシアネートの製造方法を含んでいる。
本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法では、上記のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造し(トルエンジカルバメート製造工程)、その後、製造されたトルエンジカルバメートを熱分解して、トルエンジイソシアネートを製造する(トルエンジイソシアネート製造工程)。
より具体的には、このようなトルエンジイソシアネートの製造方法では、上記したトルエンジカルバメートの製造方法によって得られたトルエンジカルバメートを熱分解し、上記したトルエンジアミンに対応する下記式(10)で示されるトルエンジイソシアネート、および、
Figure 2012017278
副生物である下記一般式(11)で示されるアルコールを生成させる。
R−OH (11)
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
なお、トルエンジイソシアネートとしては、原料成分であるトルエンジカルバメート(およびその原料成分であるトルエンジアミン)に応じて、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートまたはそれらの混合物などが挙げられる。
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
気相法では、熱分解により生成するトルエンジイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するトルエンジイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
このような方法において、トルエンジカルバメートは、好ましくは、不活性溶媒の存在下において、熱分解される。
不活性溶媒は、少なくとも、トルエンジカルバメートを溶解し、トルエンジカルバメートおよびトルエンジイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解時に反応しなければ(すなわち、安定であれば)、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するトルエンジイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。
このような不活性溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素類などが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン(沸点:80℃)、トルエン(沸点:111℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、エチルベンゼン(沸点:136℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ブチルベンゼン(沸点:185℃)、シクロヘキシルベンゼン(沸点:237〜340℃)、テトラリン(沸点:208℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)、1−メチルナフタレン(沸点:245℃)、2−メチルナフタレン(沸点:241℃)、1−クロロナフタレン(沸点:263℃)、2−クロロナフタレン(沸点:264〜266℃)、トリフェニルメタン(沸点:358〜359℃(754mmHg))、1−フェニルナフタレン(沸点:324〜325℃)、2−フェニルナフタレン(沸点:357〜358℃)、ビフェニル(沸点:255℃)などが挙げられる。
また、このような溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
また、不活性溶媒としては、さらに、エステル類(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなど)、熱媒体として常用される脂肪族系炭化水素類なども挙げられる。
このような不活性溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
不活性溶媒の配合量は、トルエンジカルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
また、熱分解においては、例えば、不活性溶媒をトルエンジカルバメートに配合し、トルエンジカルバメートを熱分解した後、その不活性溶媒を分離および回収し、再度、熱分解においてトルエンジカルバメートに配合することができる。
また、液相法におけるトルエンジカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(すなわち、上記式(10)で示されるトルエンジイソシアネートと、上記式(11)で示されるアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、トルエンジカルバメートを熱分解するとともに、反応混合物(分解液)から上記式(10)で示されるトルエンジイソシアネート、および/または、上記式(11)で示されるアルコールを公知の方法により抜き出し、それらを分離する。
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、トルエンジカルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したトルエンジイソシアネート(上記式(10))およびアルコール(上記式(11))が蒸発し、これによりトルエンジカルバメートとトルエンジイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、トルエンジイソシアネートの重合などの副反応が抑制される反応条件が挙げられる。
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、トルエンジイソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
さらに、この方法では、必要により、触媒を添加することもできる。
触媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、トルエンジカルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
熱分解に用いられる触媒としては、トルエンジイソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
また、この熱分解反応は、トルエンジカルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でトルエンジカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
熱分解では、トルエンジイソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたトルエンジイソシアネートは、公知の方法により精製される。
また、熱分解で得られるアルコール(上記式(11))は、分離および回収された後、好ましくは、トルエンジカルバメート化反応の原料成分として用いられる。
そして、このようなトルエンジイソシアネートの製造方法によれば、上記したトルエンジカルバメートの製造方法が採用されるため、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成が低減されることにより、装置の閉塞などを抑制し、優れた収率でイソシアネートを製造することができる。
なお、以上、トルエンジカルバメートの製造方法、および、トルエンジイソシアネートの製造方法について説明したが、このようなトルエンジカルバメートの製造方法、および、トルエンジイソシアネートの製造方法では、必要により、適宜の位置において、脱水工程などの前処理工程、中間工程、蒸留工程、濾過工程、精製工程および回収工程などの後処理工程などを備えることができる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、それら実施例および比較例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、各成分の定量は、下記のHPLC測定条件に従った。
(HPLC測定条件)
1)装置および測定条件
装置:ShimadzuHPLC(SCL−10A、DGU−12A、LC−10AD、RID−10A、SPD−10A)
カラム:WAKOSIL5C18(4.6mmID×250mm、5.0μm)
移動相:アセトニトリル/70wtppmリン酸水溶液 = 85/15 v/v
流速:0.8 ml/min
カラム温度:40℃
注入量:10μL
検出器: UV/vis(検出波長254nm)、RI
2)分析内容
サンプルをアセトニトリルで約100倍に希釈し、上記条件に設定したHPLCに供して分析した。定量は、2,4−トルエンジブチルカルバメート(2,4−TDCBu)の基準溶液から、式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体、および、式(13)示される2置換ベンゾイレン尿素については、2,4−TDCBuを基準とし、換算係数1として定量値とした。
実施例1(TDA/カルバミン酸ブチル/ブタノール(1/2.9/2.9モル))
1)2,4−トルエンジブチルカルバメートの製造
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−トルエンジアミン(以下、2,4−TDAとする。)80.7g(0.661mol)、カルバミン酸ブチル221g(1.89mol)(東京化成工業株式会社製 純度>98.0%、以下同様)および1−ブタノール140g(1.89mol)の混合物を仕込み、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸亜鉛0.649g(1.59mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら10時間反応させた。これにより、反応液410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−トルエンジブチルカルバメート(2,4−ビス(ブチルオキシカルボニルアミノ)トルエン、以下、TDCBuとする。)が、2,4−TDAに対して95.5mol%の収率で生成していることが確認された。また、下記式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して0.53mol%、下記式(13)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して1.11mol%の収率で生成していることが確認された。これは、TDCBu100molに対し、1.7molの2置換ベンゾイレン尿素誘導体および2置換ベンゾイレン尿素が生成したことになる。
Figure 2012017278
Figure 2012017278
2)トルエンジイソシアネートの製造
2−1)上記で得られた反応液から未反応物および副生成物を取り除く工程を実施した。
攪拌装置と冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記反応液を仕込み、230rpmで攪拌させながら真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。その後、冷却管に80℃の循環水を流した状態で、容器内を180℃まで昇温させ、低沸点化合物を留去させ、褐色の濃縮液210gを得た。
一方、留去物については、H NMRの測定により、主成分がカルバミン酸ブチルであり、芳香環を有する化合物が存在しないことを確認した。
濃縮液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDCBuが93質量%存在することが確認された。
2−2)濃縮液の熱分解によるイソシアネートの製造
温度計、攪拌装置、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量1000mLのガラス製のセパラブルフラスコに、上記で得た濃縮液200g(2,4−TDCBuとして0.58mol)、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油株式会社製)200gを仕込み、300rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を10kPaまで減圧した。
環流管に90℃の循環水を流した状態で、加熱を開始すると220℃付近で塔頂温度が上昇し、還流管内に2,4−トリレンジイソシアナート(以下、2,4−TDIとする。)が凝縮し始めたため、還流比15(=還流30秒/留出2秒)に設定し、2,4−TDIを留出させた。留出開始から6時間後に塔頂温度が上昇してきたため、加熱と減圧を停止し、留出液117gを得た。
留出液の一部を採取し液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDIが81質量%(0.54mol)で、2,4−TDI以外の化合物のほとんどが溶媒のバーレルプロセス油B−05であり、式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体と、式(13)で示される2置換ベンゾイレン尿素は、検出されなかった。この結果、熱分解において、回収された2,4−TDIの2,4−TDCBuに対する収率は94mol%であった。
一方、反応液については120℃まで冷却後、5A濾紙にて熱時ろ過し、濾液と濾残に分別し、濾残をアセトンで洗浄、乾燥し、1.0gの黄褐色の濾残を回収した。濃縮液に対するタール生成率は、0.5質量%であった。また、反応終了後に反応器を観察したところ、反応器内に固体状の付着物はほとんど見られなかった。
実施例2(TDA/カルバミン酸ブチル/ブタノール(1/5.7/2.9モル))
1)2,4−トルエンジブチルカルバメートの製造
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA51.5g(0.422mol)、カルバミン酸ブチル281g(2.40mol)および1−ブタノール89.2g(1.20mol)の混合物を仕込み、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸亜鉛0.411g(1.01mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら10時間反応させた。これにより、反応液396gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して99.4mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して0.82mol%、上記式(13)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して1.45mol%の収率で生成していることが確認された。これは、TDCBu100molに対し、2.2molの2置換ベンゾイレン尿素誘導体および2置換ベンゾイレン尿素が生成したことになる。
比較例1(TDA/尿素/ブタノール(1/2.9/5.7モル))
1)2,4−トルエンジブチルカルバメートの製造
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA80.6g(0.660mol)、尿素113g(1.89mol)および1−ブタノール279g(3.79mol)の混合物を仕込み、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸亜鉛0.643g(1.58mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら4時間反応させた。これにより、反応液407gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して95.5mol%、の収率で生成していることが確認された。また、上記式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して2.22mol%、上記式(13)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して3.97mol%の収率で生成していることが確認された。これは、TDCBu100molに対し、6.5molの2置換ベンゾイレン尿素誘導体および2置換ベンゾイレン尿素が生成したことになる。このように、原料として、カルバミン酸ブチルに代えて尿素を用いると、二置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体がより多く生成することが確認された。
2)トルエンジイソシアネートの製造
2−1)上記で得られた反応液から未反応物および副生成物を取り除く工程を実施した。
攪拌装置と冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記反応液を仕込み、230rpmで攪拌させながら真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。その後、冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温させ、主成分がブタノールである低沸点成分を留去させた。また、H NMRの測定により、低沸点成分には、芳香環を有する化合物が存在しないことを確認した。
その後、さらに、循環水温度を80℃に設定し、容器内を180℃まで昇温させ、中沸点成分を留去させ、褐色の濃縮液210gを得た。
一方、留去物については、H NMRの測定により、主成分がカルバミン酸ブチルであり、芳香環を有する化合物が存在しないことを確認した。
濃縮液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDCBuが93質量%存在することが確認された。
2−2)濃縮液の熱分解によるイソシアネートの製造
温度計、攪拌装置、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量1000mLのガラス製のセパラブルフラスコに、上記で得た濃縮液200g(2,4−TDCBuとして0.58mol)、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油株式会社製)200gを仕込み、300rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を10kPaまで減圧した。
環流管に90℃の循環水を流した状態で、加熱を開始すると220℃付近で塔頂温度が上昇し、還流管内に2,4−TDIが凝縮し始めたため、還流比15(=還流30秒/留出2秒)に設定し、2,4−TDIを留出させた。留出開始から6時間後に塔頂温度が上昇してきたため、加熱と減圧を停止し、留出液115gを得た。
留出液の一部を採取し液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDIが82質量%(0.54mol)で、2,4−TDI以外の化合物のほとんどが溶媒のバーレルプロセス油B−05であり、式(12)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体と、式(13)で示される2置換ベンゾイレン尿素は、検出されなかった。この結果、熱分解において、回収された2,4−TDIの2,4−TDCBuに対する収率は93mol%であった。
一方、反応液については120℃まで冷却後、5A濾紙にて熱時ろ過し、濾液と濾残に分別し、濾残をアセトンで洗浄、乾燥し、4.0gの黄褐色の濾残を回収した。濃縮液に対するタール生成率は、2.0質量%であった。また、反応終了後に反応器を観察したところ、液面付近、攪拌装置および温度計に固形物が付着していることが確認された。
以上のように、二置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含む濃縮液を熱分解するとタール生成量が増加することが確認された。

Claims (5)

  1. トルエンジアミンと、N−無置換カルバミン酸エステルとを、アルコールの存在下かつ尿素の不存在下、反応させて、トルエンジカルバメートを製造することを特徴とする、トルエンジカルバメートの製造方法。
  2. 下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が、トルエンジカルバメート100モルに対して、5モル以下の割合で副生されるか、または、実質的に副生されないことを特徴とする、請求項1に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
    Figure 2012017278
  3. N−無置換カルバミン酸エステルは、不純物として、下記式(2A)および下記式(2B)で示されるビウレット系化合物を、N−無置換カルバミン酸エステル100モルに対して、20モル以下の割合で含有するか、または、実質的に含有しないことを特徴とする、請求項1または2にトルエンジカルバメートの製造方法。
    Figure 2012017278
    Figure 2012017278
    (式中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造する工程と、
    製造されたトルエンジカルバメートを、熱分解してトルエンジイソシアネートを製造する工程と
    を備えることを特徴とする、トルエンジイソシアネートの製造方法。
  5. トルエンジカルバメートであって、
    不純物として、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜5モルの、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含有することを特徴とする、トルエンジカルバメート。
    Figure 2012017278
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