以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明の冷凍装置10を適用する実施例としての業務用冷凍庫(低温貯蔵庫)Rの縦断側面図、図2は冷凍装置10の冷凍機側ユニットの概略斜視図、図3は冷凍装置10の冷媒回路図をそれぞれ示している。実施例の冷凍庫Rは、例えばホテルやレストランの厨房などに設置されるものであり、前面開口22が扉6にて開閉自在に閉塞される断熱箱体1により本体が構成されている。
この断熱箱体1は、何れもステンレスなどの鋼板から成る外箱2、及び、この外箱2内に組み込まれた内箱3と、内外両箱2、3間に現場発泡方式にて充填されたポリウレタン断熱材4から構成されている。そして、この断熱箱体1(内箱3)内を貯蔵室(被冷却空間)5としている。尚、この断熱箱体1の前面開口22縁部周辺には、結露防止用加熱手段としてのフレームヒータ15が外箱2の断熱材4側の面に当接して配設されている。
また、貯蔵室5内上部には、本願発明にかかる冷凍装置10の蒸発器11と冷気循環用送風機12が取り付けられる冷却室14が仕切板13によって区画形成されている。冷気循環用送風機12より貯蔵室5から冷却室14に吸い込まれた冷気は、蒸発器11と熱交換された後、冷却室14後方の開口から吐出されて、貯蔵室5内は所定の温度に冷却される。
一方、断熱箱体1の天面には前面パネル16及び両側面及び後面を構成するパネルによって機械室17が画成されている。断熱箱体1の天面には、開口1Aが形成されており、当該開口1Aは、断熱板にて構成されるユニット板21にて閉塞される。
そして、このユニット板21の上面には、機械室17内に位置して蒸発器11と共に冷凍装置10の周知の冷凍サイクルを構成する圧縮機18、ガスクーラ19と、当該ガスクーラ19を冷却するガスクーラ用送風機(送風手段)20、電装箱25などが設置される。ユニット板21の下面には、貯蔵室5内上部に位置する冷却室14内に位置する蒸発器11が設けられている。
ここで、図2及び図3の冷媒回路図を参照して本実施例における冷凍装置10の冷媒回路7について説明する。本実施例における冷凍装置10の冷凍サイクルには、冷媒として二酸化炭素が封入されており、高圧側の冷媒圧力(高圧圧力)がその臨界圧力以上(超臨界)となるスプリットサイクル(二段圧縮一段膨張中間冷却サイクル)を採用する。
本実施例の冷凍装置10は、圧縮機(圧縮手段)18を構成する低段側の圧縮要素(低段側圧縮手段)18Aと、同じく圧縮手段を構成する高段側の圧縮要素(高段側圧縮手段)18Bと、ガスクーラ19と、分流器37と、合流器38と、補助絞り手段としての補助膨張弁39と、中間熱交換器40と、内部熱交換器41と、主絞り手段としての膨張弁8と、蒸発器11とから冷媒回路7が構成されている。
上記ガスクーラ19は高段側の圧縮要素18Bから出た高温高圧の冷媒を放熱させることによって、当該高段側の圧縮要素18Bから出た冷媒を冷却する。分流器37は、ガスクーラ19から出た冷媒を第1の冷媒流と第2の冷媒流とに分流し、第1の冷媒流を副回路42に流し、第2の冷媒流を主回路43に流す。
第2の冷媒流が流れる主回路43は、分流器37にて分流された冷媒が、中間熱交換器40の内管(第2の流路)40B、内部熱交換器41の内管41B、ストレーナ44、膨張弁8、蒸発器11、内部熱交換器41の外管41A、逆止弁45が介設された冷媒導入管23、及びストレーナ46を順次通り、低段側圧縮手段を構成する圧縮要素18Aの吸込側(低圧部)へ供給されるように接続されている。
第1の冷媒流が流れる副回路42は、分流器37にて分流された冷媒が、ストレーナ47、補助膨張弁39及び中間熱交換器40の外管(第1の流路)40Aを順次通り、高段側圧縮手段を構成する圧縮要素18Bの吸込側(中間圧部)へ供給されるように接続されている。
本実施例における圧縮機18は、冷媒を低段側圧縮手段としての圧縮要素18Aと、高段側圧縮手段としての圧縮要素18Bが単一の密閉容器内に収納される内部中間圧二段圧縮式ロータリ圧縮機を採用している。これら圧縮要素18A、18Bは、同一の密閉容器内に収納される圧縮機モータ(電動要素。DCモータ)により駆動される。
次に、図4を参照して本実施例における冷凍装置10の制御装置(制御手段)9について説明する。制御装置9は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、時限手段としてのタイマ32、演算処理部33、記憶手段としてのメモリ34を内蔵している。
制御装置9には、各種設定スイッチや表示部などを備えたコントロールパネル35が接続されている。各種設定スイッチには、詳細は後述する如く各設定値を任意に設定可能とするLCDパネル(設定手段)36も含まれる。
また、当該制御装置9の入力側には、貯蔵室5内(被冷却空間)の現在温度(庫内温度)PTを検出する庫内温度センサ(被冷却空間温度検出手段)31、蒸発器11の冷媒入口側温度を検出するための蒸発器入口側温度センサ29、蒸発器11の冷媒出口側温度を検出するための蒸発器出口側温度センサ30、中間熱交換器40の外管(第1の流路)40Aの入口側温度IMTIを検出するための入口側温度センサ(入口側温度検出手段)49、中間熱交換器40の外管(第1の流路)40Aの出口側温度IMTOを検出するための出口側温度センサ(出口側温度検出手段)50、ガスクーラ19の冷媒出口側温度GTを検出するためのガスクーラ出口側温度センサ(ガスクーラ出口側温度検出手段)51、高段側の圧縮要素18B(圧縮手段)の吐出ガス温度DTを検出する吐出ガス温度センサ(吐出ガス温度検出手段)52、外気温度ATを検出するための外気温度センサ(外気温度検出手段)48等が接続されている。本実施例において、外気温度センサ48は、機械室17内に配設される電装箱25の外面などに配設されている。
他方、制御装置9の出力側には、圧縮機18を駆動させる圧縮機モータ(DCモータ)18Mと、冷気循環用送風機12を駆動させる送風機モータ12M、ガスクーラ用送風機20を駆動させる送風機モータ20M、膨張弁8、補助膨張弁39、フレームヒータ(結露防止用加熱手段)15、警報手段として警報ランプ53等が接続されている。尚、警報手段は、警報ランプ53の他に、ブザーを採用しても良く、また、警報内容をコントロールパネル35の表示部に表示しても良い。
圧縮機モータ18Mは、インバータ装置25を介して接続されており、これによって、圧縮機モータ18Mの運転周波数を任意に変更可能とされている。送風機モータ12M、20Mは、それぞれチョッパ回路などの駆動回路26、27を介して接続されており、これによって、回転数を任意に変更可能とされている。
また、膨張弁8及び補助膨張弁39は、それぞれ、制御装置9から出力される駆動電圧のパルス数に応じて、内蔵のステッピングモータを任意の角度だけ回転させ、この回転量を弁体の弁座に対する進退移動量に変換することにより、弁開度が調整される。
以上の構成により、制御装置9により冷凍装置10が運転されると、圧縮機18の低段側圧縮要素18Aの吸込側(低圧部)に取り込まれた冷媒は、ここで中間圧まで昇圧される。この低段側圧縮要素18Aにて圧縮された冷媒は、図示しない連通管より密閉容器内に吐出される。
一端が密閉容器内にて開放した冷媒導入管は高段側圧縮要素18Bの吸込側に設けられており、低段圧縮要素18Aにて中間圧まで昇圧された冷媒と、合流器38を経た副回路42からの中間圧冷媒とが混合された冷媒が、当該冷媒導入管より高段側圧縮要素18B(中間圧部)内に流入され、ここで更に所定の高圧まで昇圧される。
このとき、この高段側圧縮要素18Bにて圧縮された冷媒の圧力(高圧側圧力HP)は、超臨界圧力とされ、当該超臨界状態の冷媒は、冷媒吐出管24を介して、ガスクーラ19に流入される。尚、本実施例では、前記圧縮機18を構成する各圧縮要素18A、18Bは単一のモータで一体に結合された構成としているが、これに限定されない。
ガスクーラ19を出た冷媒は通過する過程で冷却された後、分流器37に入り、第1の冷媒流が流れる副回路42と、第2の冷媒流が流れる主回路43とに分流される。副回路42に流入した第1の冷媒流は、補助膨張弁39で中間圧(即ち、低段側圧縮要素18Aの吐出圧力であり、高段側圧縮要素18Bの吸込圧力と略同圧)まで減圧される。
そして、中間熱交換器40の外管(第1の流路)40A内を通過し、当該外管(第1の流路)40A内を通過する過程で、内管40Bを通過する分流器37で分流された後の他方の冷媒流である第2の冷媒流と熱交換して蒸発する。その後、合流器38にて、低段側の圧縮要素18Aで圧縮された後の第2の冷媒流と合流して、高段側圧縮要素18B(中間圧部)に吸い込まれる。
一方、主回路43に流入した第2の冷媒流は、中間熱交換器40の内管(第2の流路)40B内を通過する過程で、補助膨張弁39によって減圧された第1の冷媒流と熱交換して冷却された後、内部熱交換器41の内管(第2の流路)41B内を通過する。当該内管(第2の流路)41B内を通過する過程で、外管(第1の流路)41A内を流れる蒸発器11から出た冷媒と熱交換して冷却される。
そして、内部熱交換器41から流出された第1の冷媒流は、膨張弁8にて蒸発圧力まで減圧された後、蒸発器11内に流入し貯蔵室5内(被冷却空間)を熱源として蒸発し、内部熱交換器41の外管41Aを経て低段側の圧縮要素18(低圧部)に吸い込まれる。ここで、内部熱交換器41により、膨張弁8に流入する冷媒は、蒸発器11から流出した低温冷媒と熱交換されることで、冷却性能の向上を図ることができる。
このように、本実施例の冷凍装置10は、冷媒として自然冷媒であり、臨界圧力が低く、冷媒サイクルの高圧が超臨界状態となる二酸化炭素を使用するものである。そのため、環境への負荷軽減を図ることができると共に、冷却能力の確保を図ることができる。また、ガスクーラ19で冷却された後の冷媒を分流し、減圧膨張させた一方の副回路42を流れる第1の冷媒流により、分流された他方の主回路43を流れる第2の冷媒流を冷却する、所謂、スプリットサイクル冷却装置を用いることで、蒸発器11の入口の比エンタルピを小さくし、冷凍効果を大きくすることが可能となる。
このように、冷凍装置10が運転されると、冷却室14にて蒸発器11と熱交換された冷気は、冷気循環用送風機12により貯蔵室5に吐出されて、貯蔵室5内を循環した後、再び送風機12によって冷却室14内に帰還する循環を行う。
(A−1)圧縮機18の運転制御
このとき、制御装置9は、庫内温度センサ31により検出される貯蔵室5内の温度PTを冷却目標温度とするように、圧縮機モータ18Mの運転周波数制御を行う。即ち、温度PTが冷却目標温度より低いときには、圧縮機モータ18Mの運転周波数を降下させて、高いときには運転周波数を上昇させる。
また、制御装置9は、上記圧縮機18の周波数制御に加えて庫内温度センサ31により検出される貯蔵室5内の現在温度PTが冷却目標温度より所定温度高い所定の上限温度HSTに達した場合、圧縮機モータ18Mを起動し、冷却目標温度よりも所定温度低い所定の下限温度LSTに達した場合、圧縮機モータ18Mを停止するサーモサイクルを実行し、庫内の現在温度PTを冷却目標温度に制御する。
また、上記圧縮機18の周波数制御に加えて、制御装置9は、吐出ガス温度センサ52が検出する圧縮機18の吐出ガス温度DTに基づき、当該吐出ガス温度DTが所定値(異常値)以上に上昇した場合、この吐出ガス温度DTを下げる方向に、即ち、圧縮機18の運転周波数を下げる方向に圧縮機18の回転数を制御する。これにより、安全性の確保を図っている。
(A−2)膨張弁8の開度制御
制御装置9は、膨張弁8の開度を蒸発器入口側温度センサ29にて検出される蒸発器11の冷媒入口側温度と、蒸発器出口側温度センサ30にて検出される蒸発器11の冷媒出口側温度で通常、過熱度制御する。これら蒸発器11の入口側温度と出口側温度の温度差が所定の温度差より小さい場合は、膨張弁8の開度を縮小し、大きい場合は、開度を拡大させる。
(A−3)膨張弁8の閉塞判定
上記膨張弁8の開度制御を行った際に、機器によって、主絞り手段の閉弁点近くで制御を行う場合、過熱度をとるために膨張弁8の開度を縮小しすぎると、弁が閉塞して過熱度がなくなり、更に開度を縮小する動作をしてしまう場合がある。当該膨張弁8の閉塞は、蒸発器11への冷媒流入がなくなり、これによって第2の冷媒流としての冷媒が、第1の冷媒流側に急激に、大量に流入することとなり、中間熱交換器40の第1の冷媒流の出口側温度IMTOが急激に低下する。
そこで、制御装置9は、中間熱交換器出口側温度センサ50により出口側温度IMTOを所定のサンプリング周期で検出して、所定の温度以下に低下した場合には、膨張弁8が閉塞したものと判断する。
そして、当該膨張弁8の閉塞を検知した場合には、制御装置9は、膨張弁8を強制的に所定開度にまで拡張する制御を行う。
(A−4)ガスクーラ用送風機20の運転制御
制御装置9は、機械室17内の電装箱25に設けられた外気温度センサ48が検出する外気温度ATに基づき、ガスクーラ用送風機20の回転数を制御する。即ち、外気温度センサ48にて検出された外気温度ATが高い程、ガスクーラ用送風機20の回転数を上げ、外気温度ATが低い程、送風機20の回転数を下げる制御を行う。これにより、ガスクーラ19における冷却効率の向上を図りつつ、省エネ運転を実現する。
(A−5)フレームヒータ15の通電制御
制御装置9は、庫内温度センサ31により検出された貯蔵室5内の現在温度PTと、外気温度センサ48にて検出された外気温度ATとの温度差を算出し、当該温度差が大きい程、フレームヒータ15の通電率を大きくし、温度差が小さい程、フレームヒータ15の通電率を小さくする通電制御を行う。例えば、温度差が20℃では通電率を57%、温度差が25℃では通電率を72%、温度差が30℃では通電率を84%、温度差が35℃では、通電率を96%とする。これにより、結露が発生しやすい高外気温時程、フレームヒータ15の通電率を上昇させて、本体の前面開口22付近に発生する結露を効果的に防止することができる。また、結露が発生しにくい低外気温時では、フレームヒータ15の通電率を下げて、結露の発生を効果的に防止しつつ、省エネを図ることができる。
(A−6)補助膨張弁39の開度制御
制御装置9は、補助膨張弁39の弁開度を制御する際、先ず、所定のサンプリング周期で外気温度センサ48にて外気温度ATを検出し、記憶部34に取り込む。
そして、上述したように取得した現在の外気温度ATから中間熱交換器40の外管40Aの入口側温度IMTIの目標値IMTI1を算出する。このとき、制御装置9は、外気温度ATに基づき、所定の関数式を用いて入口側温度目標値IMTI1を算出する。
本実施例では、図5の外気温度ATに対する目標値STとの関係を示す図に示すように、制御装置9は、外気温度ATをxとし、入口側温度の目標値IMTI1をyとする一次関数を用いて目標値IMTI1を算出する。当該関数式は、予め制御装置9の記憶部34に記憶されているものである。
本実施例では、冷媒として高圧側圧力HPが超臨界領域となる二酸化炭素を用いているため、当該一次関数(関数式)は、冷媒回路の高圧側圧力HPが超臨界領域にある場合と飽和領域にある場合とで傾きが異なる。具体的には、図5に示すように、当該二酸化炭素の超臨界温度付近、一例として外気温度ATが30℃以上では、30℃未満の場合と比べて、その関数式の傾きが大きくなる。
これは、冷媒として二酸化炭素を用いた場合、外気温度ATが30℃以上では、高圧側圧力HPが超臨界領域となるため、高圧側圧力HPが飽和領域となる外気温度ATが30℃未満の場合と比べて、外気温度ATの上昇による適正な中間圧力の変動が大きくなる。そのため、高圧側圧力の状況に追従して、中間圧力を適正とすべく、入口側温度目標値IMTI1を変更する。
以上より、制御装置9は、取り込んだ外気温度ATから上記一次関数を用いて、当該外気温度ATに対する中間熱交換器40の入口側温度目標値IMTI1を取得する。そして、制御装置9は、取得された目標値IMTI1と、先ほど検出されて取り込まれた入口側温度IMTIとを比較し入口側温度IMTIが目標値IMTI1となるように補助膨張弁39の開度を制御する。このとき、入口側温度IMTIが目標値IMTI1から高いほど補助膨張弁39の弁開度をより絞る方向に、低いほど弁開度をより開く方向に操作量のパルス制御を行う。
また、当該補助膨張弁39の開度制御において、制御装置9は、所定のサンプリング周期で吐出ガス温度センサ52が検出する圧縮機18の吐出ガス温度DTを検出し、当該吐出ガス温度DTが所定値(異常値)以上に上昇した場合、この吐出ガス温度DTを下げる方向に、即ち、補助膨張弁39を拡張する方向に該補助膨張弁39の開度を制御する。これにより、安全性の確保を図っている。
(A−7)補助膨張弁39の温度差制御
尚、補助膨張弁39の開度制御は、上記入口側温度IMTIに基づく制御に限られず、本実施例のように出口側温度IMTOを検出する中間熱交換器出口側温度センサ50を備えた冷凍装置10では、第1の冷媒流の中間熱交換器40の出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeが所定の温度差目標値となるように開度を制御してもよい。
この場合、検出された温度差IMTeが温度差目標値よりも小さいときには、補助膨張弁39の開度を縮小し、大きいときには開度を拡大する。これにより、第1の冷媒流の流量の適正化を図ることで、第1の冷媒流及びこれと分流された第2の冷媒流との最適な流量制御を実現し、スプリットサイクルによる効率改善効果を発揮することができる。
上述したように、各温度センサ(外気温度センサ48、ガスクーラ出口側温度センサ51、中間熱交換器40の入口側温度センサ49、出口側温度センサ50、圧縮機の吐出ガス温度センサ52)が、正常に機能した場合は、上記のような制御を行う。これに対して、以下に、それぞれの温度センサが故障等により異常が発生した場合について詳述する。
(B)外気温度センサ48異常時の制御
上記(A−4)、(A−5)、(A−6)で示したように、外気温度センサ48にて検出された外気温度ATは、ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御に用いられている。各制御に用いられた外気温度センサ48が故障等により異常が発生した場合、制御装置9は、サーモサークルを実行している圧縮機18を起動する直前にガスクーラ出口側温度センサ51が検出するガスクーラの冷媒出口側温度GT1に基づいて外気温度ATを推定し、上記各制御のバックアップ制御を実行する。尚、ガスクーラの冷媒出口側温度GT1に基づく外気温度ATの推定方法は、複数有り、以下に、詳述する。尚、制御装置9は、所定のサンプリング周期にて外気温度センサ48の抵抗値が異常値(過小若しくは過大)であるか否かを判断し、これにより、異常発生を検知する。
(B−1)外気温度ATの第1の推定方法
第1の推定方法では、制御装置9は、外気温度センサ48の異常時に、ガスクーラ出口側温度センサ51が検出するガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1、若しくは、冷媒出口側温度GT1と一定の差e1(例えば、−2deg)を有する温度(GT1−e1)を外気温度ATとして代用する。
そのため、図6のフローチャートに示すように、制御装置9がステップS1において、外気温度センサ48の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により外気温度センサ48の異常を報知すると共に、ステップS2に進み、各ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御に用いる外気温度ATとして、暫定的に、ガスクーラ出口側温度センサ51が検出するガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を用いる。尚、圧縮機18の起動直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1と実際の外気温度ATとが所定の温度差(例えば−2deg)があることを予め分かっている場合には、冷媒出口側温度GT1と一定の差e1(この場合−2deg)を有する温度(GT1−e1)を各制御に用いる外気温度ATとして用いてもよい。
そして、制御装置9は、ステップS3に進み、現在、圧縮機18がサーモサイクルにおける圧縮機18運転中であるか否かを判断し、庫内温度センサ31により検出される貯蔵室5内の現在温度PTが冷却目標温度よりも所定温度低い所定の下限温度LSTに達し、圧縮機モータ18Mを停止(サーモオフ)したら、ステップS4に進む。
ステップS4では、制御装置9は、ガスクーラ出口側温度センサ51にてガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を検出し、当該冷媒出口側温度GT1若しくは、上記と同様に、当該冷媒出口側温度GT1と一定の差e1を有する温度(GT1−e1)を外気温度ATとしてメモリ34に記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS5に進み、庫内温度センサ31により検出される貯蔵室5内の現在温度PTが冷却目標温度よりも所定温度高い所定の上限温度HSTに達し、圧縮機モータ18Mを起動(サーモオン)したか否かを判断する。圧縮機18を起動していない場合には、ステップS4に戻り、再び、ガスクーラ出口側温度センサ51にてガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を検出し、当該冷媒出口側温度GT1若しくは、当該冷媒出口側温度GT1と一定の差e1を有する温度(GT1−e1)を外気温度ATとしてメモリ34に書き換える。
そして、ステップS5において、圧縮機18が起動した場合には、このとき、メモリ34に記憶されている圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差e1を有する温度(GT1−e1)を外気温度ATとして採用し、各ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を行う。
具体的には、外気温度センサ48の異常時におけるガスクーラ用送風機20の運転制御は、代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差e1を有する温度(GT1−e1)が高い程、ガスクーラ用送風機20の回転数を上げ、圧縮機起動直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1、若しくは(GT1−e1)が低い程、送風機20の回転数を下げる制御を行う。
外気温度センサ48の異常時におけるフレームヒータ15の通電制御は、庫内温度センサ31により検出された貯蔵室5内の現在温度PTと、代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差e1を有する温度(GT1−e1)との温度差を算出し、当該温度差が大きい程、フレームヒータ15の通電率を大きくし、温度差が小さい程、フレームヒータ15の通電率を小さくする通電制御を行う。
外気温度センサ48の異常時における補助膨張弁39の開度制御は、外気温度ATとして代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差e1を有する温度(GT1−e1)に基づき、所定の関係式を用いて中間熱交換器40の外管40Aの入口側温度の目標値IMTI1を算出する。そして、中間熱交換器入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIが入口側温度目標値IMTI1となるように補助膨張弁39の開度を制御する。
制御装置9は、その後、ステップ5からステップS3に戻り、圧縮機18のサーモサイクル制御により圧縮機18が起動させる度に、推定される外気温度ATを書き換えて、以後も同様に、各ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を行う。そのため、圧縮機18が起動されるタイミング以外では、推定される外気温度ATは変更されないため、変更されるまでの間、前回の圧縮機18起動直前に検出されたガスクーラの冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差e1を有する温度(GT1−e1)を継続して外気温度ATと推定して各制御を行う。
これにより、通常、圧縮機18のサーモサイクル制御の実行により、圧縮機18が停止されてから次回起動されるまでの間に、周囲温度である外気温度ATと近似した温度となる圧縮機19の起動直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1から外気温度ATを推定して、ガスクーラ用送風機20の回転数制御及びフレームヒータ15の通電制御、更には、補助膨張弁39の開度制御を実行することが可能となる。
そのため、従来の如く、外気温度センサ48の異常時に、ガスクーラ用送風機20の回転数制御及びフレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を、予め設定された所定の外気温度ATとして行う場合と比べて、より精度の高い制御を実現することが可能となる。従って、当該外気温度センサ48の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
本実施例では、圧縮機18を起動する直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1は、圧縮機18のサーモサイクル制御における圧縮機18の停止から起動されるまでの間、所定のサンプリング周期でガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を検出してメモリ34に順次書き換え、圧縮機18を起動する直前にメモリ34に記憶された冷媒出口側温度GT1若しくは、GT1−e1を外気温度ATとして代用している。これに限定されるものではなく、例えば、圧縮機18の停止から起動するまでに所定の遅延時間を設けている場合には、制御装置9は、当該遅延時間の終了間際にガスクーラ出口側温度センサ51によってガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を検出し、圧縮機18を起動する直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1若しくは、これと一定の差を有するGT1−e1を外気温度ATとして代用しても良い。
当該外気温度ATの推定方法では、外気温度センサ48の異常時において、ガスクーラ出口側温度センサ51により検出されるガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1又は当該冷媒出口側温度GTと一定の差を有する温度GT1−e1を外気温度ATとするため、バックアップ制御を容易に実現することが可能となる。
(B−2)外気温度ATの第2の推定方法
第2の推定方法では、制御装置9は、外気温度センサ48の異常時に、ガスクーラ出口側温度センサ51が検出するガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1と外気温度センサが検出する外気温度ATとの差eを、ガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1の温度帯毎に記憶することにより構築されたデータベースを有し、外気温度センサ48の異常時には、ガスクーラ出口側温度センサ51が検出するガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1が属する温度帯に対応する差eをデータベースから読み出し、冷媒出口側温度GT1と当該差eを有する温度を外気温度ATとして代用する。
そのため、図7のフローチャートに示すように、先ず、制御装置9は、外気温度センサ48及びガスクーラ出口側温度センサ51の正常時(ステップS6)において、ステップS7に進み、圧縮機18のサーモサイクルにおける圧縮機起動(サーモオン)直前のガスクーラ19の冷媒出口温度GT1をガスクーラ出口温度センサ51にて検出し、当該検出時期と同時、若しくは、その前後で、外気温度センサ48により外気温度ATを検出する。尚、冷媒出口温度GT1の検出方法は、上記推定方法1と同様であっても良い。
そして、制御装置9は、圧縮機起動直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1と、正常に機能している外気温度センサ48が検出する外気温度ATとの差eを算出し、ガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1の温度帯毎にメモリ34に記憶し、データベースを構築する。
当該データベースは、例えば、図8に示すように、ガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を10℃以下、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の温度帯毎に分け、それぞれ冷媒出口側温度GT1と外気温度ATとの差eをA1、A2、A3、A4として記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS8に進み、冷媒出口側温度GT1と外気温度ATとの差eは、圧縮機18の起動(サーモオン)直前のタイミング毎に得られる値のそれぞれの温度帯毎の平均値、若しくは、直近の値に重みが置かれた平均値AVe、例えば、これまでの平均値AVeと直近の値eとの平均値((AVe+e)/2)としてデータベースに記憶する。
そして、ステップS9において、外気温度センサ48の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により外気温度センサ48の異常を報知すると共に、ステップS10に進む。そして、上記第1の推定方法と同様に、ガスクーラ出口側温度センサ51にて圧縮機18の起動直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1を検出し、当該冷媒出口側温度GT1が属する温度帯に対応する冷媒出口側温度GT1と外気温度ATとの差eをメモリ34に記憶されたデータベースから読み出す。
制御装置9は、検出された冷媒出口側温度GT1と読み出された差eを有する温度を外気温度ATと推定し、各ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を行う。
具体的には、外気温度センサ48の異常時におけるガスクーラ用送風機20の運転制御は、代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1とデータベースから読み出された差eを有する温度が高い程、ガスクーラ用送風機20の回転数を上げ、圧縮機起動直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1とデータベースから読み出された差eを有する温度が低い程、送風機20の回転数を下げる制御を行う。
外気温度センサ48の異常時におけるフレームヒータ15の通電制御は、庫内温度センサ31により検出された貯蔵室5内の現在温度PTと、代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1とデータベースから読み出された差eを有する温度との温度差を算出し、当該温度差が大きい程、フレームヒータ15の通電率を大きくし、温度差が小さい程、フレームヒータ15の通電率を小さくする通電制御を行う。
外気温度センサ48の異常時における補助膨張弁39の開度制御は、外気温度ATとして代用された圧縮機18を起動する直前のガスクーラの冷媒出口側温度GT1とデータベースから読み出された差eを有する温度に基づき、所定の関係式を用いて中間熱交換器40の外管40Aの入口側温度の目標値IMTI1を算出する。そして、中間熱交換器入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIが入口側温度目標値IMTI1となるように補助膨張弁39の開度を制御する。
当該第2の推定方法の場合においても、第1の推定方法と同様に、圧縮機18のサーモサイクル制御により圧縮機18が起動させる度に、推定される外気温度ATを書き換えて、以後も同様に、各ガスクーラ用送風機20の運転制御、フレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を行う。
これによっても、通常、圧縮機18のサーモサイクル制御の実行により、毎回近似した温度となる圧縮機18の起動直前のガスクーラ19の冷媒出口側温度GT1に基づいて外気温度ATを推定して、ガスクーラ用送風機20の回転数制御及びフレームヒータ15の通電制御、更には、補助膨張弁39の開度制御を実行することが可能となる。
そのため、従来の如く、外気温度センサ48の異常時に、ガスクーラ用送風機20の回転数制御及びフレームヒータ15の通電制御、補助膨張弁39の開度制御を、予め設定された所定の外気温度ATとして行う場合と比べて、より精度の高い制御を実現することが可能となる。従って、当該外気温度センサ48の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
また、当該外気温度ATの推定方法では、外気温度センサ48及び冷媒出口側温度センサ51が正常である場合に、冷媒出口側温度GT1の温度帯毎に、外気温度ATと圧縮機18起動直前の冷媒出口側温度GT1との差eをデータベースとして構築しておき、外気温度センサ48の異常時に、圧縮機起動直前のガスクーラ出口側温度GT1とデータベースに構築された差eを有する温度を外気温度ATとして推定して用いることで、より精度の高いバックアップ制御を容易に、実現することが可能となる。
特に、本実施例では、データベースに構築された外気温度ATと圧縮機18起動直前の冷媒出口側温度GT1との差eは、圧縮機18の起動(サーモオン)直前のタイミング毎に得られる値の平均値を採用することにより、より精度の高いバックアップ制御を実現することが可能となる。この際、直近の値に重みが置かれた平均値を採用した場合、機器の老朽化等をも考慮した差eを算出することができ、より精度の向上を図ることができる。
また、上記各第1及び第2の推定方法を採用したバックアップ制御では、外気温度センサ48の異常発生を検出した際に、制御装置は、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて外気温度センサ48に異常があったことを報知することにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
(B−3)外気温度センサ48及びガスクーラ出口側温度センサ51の双方の異常時の制御
制御装置9は、外気温度センサ48の異常に加えて、ガスクーラ出口側温度センサ51の異常をも検知した場合には、上述したような外気温度ATをガスクーラ出口側温度センサ51を用いて推定することができない。そのため、制御装置9は、ガスクーラ用送風機20の回転数を所定の回転数に固定して制御し、フレームヒータ15の通電率を所定値に固定して通電制御する。
更に、制御装置9は、膨張弁8及び補助膨張弁39の開度を、所定の冷媒流量が確保される値(開き気味の指定開度)に維持する。補助膨張弁39の場合、当該所定の冷媒流量が確保される値とは、オイル戻しの確保可能な通常の制御範囲における平均値よりも大きい開度であり、膨張弁8の場合、過負荷運転を回避し、蒸発器11による冷却を確保可能な通常の制御範囲における平均値よりも大きい開度である。
これにより、円滑なオイル戻しの確保、過負荷運転の回避、及び蒸発器11による冷却を確保することが可能となる。
また、制御装置9は、外気温度センサ48の異常に加えて、ガスクーラ出口側温度センサ51の異常をも検知した場合には、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて外気温度センサ48及びガスクーラ出口側温度センサ51に異常があったことを報知する。これにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
尚、上述した如き、外気温度センサの異常時の制御は、本実施例の如き高圧側の冷媒圧力(高圧圧力)がその臨界圧力以上(超臨界)となるスプリットサイクル(二段圧縮一段膨張中間冷却サイクル)を採用して冷凍装置10に限られるものではなく、通常の冷凍サイクルを構成する冷凍装置であっても同様の効果を奏する。
(C)吐出ガス温度センサ52異常時の制御
上記(A−1)、(A−6)で示したように、吐出ガス温度センサ52にて検出された吐出ガス温度DTは、圧縮機18の運転周波数制御、補助膨張弁39の開度制御に用いられている。各制御に用いられた吐出ガス温度センサ52が故障等により異常が発生した場合、制御装置9は、外気温度センサ48が検出する外気温度ATが所定の外気温度AT1より高い場合、圧縮機18の運転周波数を、吐出ガス温度DTが上昇しないと想定される一定の低い値とすると共に、吐出ガス温度が上昇しないよう入口側温度目標値IMTI1を上昇させて補助膨張弁39の開度制御を行うバックアップ制御を実行する。尚、制御装置9は、所定のサンプリング周期にて吐出ガス温度センサ52の抵抗値が異常値(過小若しくは過大)であるか否かを判断し、これにより、異常発生を検知する。
以下、図9のフローチャートを参照して吐出ガス温度センサ52異常時の具体的な制御について説明する。まず始めに、制御装置9が、ステップS11において、吐出ガス温度センサ52の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により吐出ガス温度センサ52の異常を報知すると共に、ステップS12に進み、各圧縮機18の運転周波数制御、補助膨張弁39の開度制御のバックアップ制御を実行するか否かを判断する。コントロールパネル35にて予め吐出ガス温度センサ52異常時のバックアップ制御を実行すると設定していた場合には、ステップS13に進み、設定していない場合には、ステップS18に進み、圧縮機18の運転を停止、若しくは、外気温度ATの温度毎に決められた十分大きい弁開度に補助膨張弁39を変更する。
ステップS12において、バックアップ制御の実行を設定していた場合には、ステップS13において、外気温度センサ48が検出する外気温度ATがメモリ34に記憶された所定の外気温度AT1、例えば25℃以上であるか否かを判断する。ここで、外気温度ATが25℃以上である場合には、制御装置9は、ステップS14に進み、圧縮機18の運転周波数を吐出ガス温度DTが上昇しないと想定される一定の低い値、即ち、吐出ガス温度DTの上昇が許容値内であることが予め確認された値、例えば、運転可能な周波数範囲におけるより低い周波数である40Hzに設定する。
その後、制御装置9は、ステップS15に進み、補助膨張弁39の開度制御に用いられる入口側温度目標値IMTI1を所定値、例えば5℃上昇させて設定する。即ち、補助膨張弁39の開度制御では、取り込んだ外気温度ATから上述した所定の一次関数を用いて、当該外気温度ATに対する中間熱交換器40の入口側温度目標値IMTI1を取得し、当該ステップS15において、この入口側目標値に5℃加算して、入口側目標値IMTI2とし、先ほど検出されて取り込まれた入口側温度IMTIと比較し入口側温度IMTIが補正目標値IMTI2となるように補助膨張弁39の開度を制御する。
そのため、外気温度ATが高い当該状況では、入口側温度IMTIが外気温度ATが所定温度以下の場合と比べて高い目標値IMTI2となるように制御されるため、補助膨張弁39の弁開度はより開き気味の開度となるように制御されることとなる。
他方、ステップS13において、外気温度センサ48にて検出された外気温度ATが所定の外気温度AT1、例えば25℃に満たない場合には、当該バックアップ制御を実行することなくステップS16に進み、圧縮機18の運転周波数及び中間熱交換器の入口側温度の目標値IMTI1を変更することなくステップS17に進む。
このように、通常、吐出ガス温度DTの上昇と相当因果関係にある外気温度ATを用いて、吐出ガス温度DTの上昇を推定し、外気温度ATが所定の高い外気温度AT1となった場合でも、圧縮機18を停止させることなく、吐出ガス温度DTが上昇しないと想定される低い運転周波数にて継続して運転させることができる。
そして、外気温度ATが所定の外気温度AT1より高い場合は、所定の冷媒流量が確保されるよう入口側温度目標値IMTI1を上昇させた補正目標値IMTI2を用いて補助膨張弁39の開度制御を行うため、中間熱交換器40にて蒸発器11に向かう第2の冷媒流を冷却する第1の冷媒流を流れる冷媒流量を適切に確保することができ、吐出ガス温度の上昇を抑えることができると共に、オイル戻しや、蒸発器11による冷却を確保することが可能となる。
そのため、吐出ガス温度センサ52の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
特に、吐出ガス温度DTが圧縮機18が異常高温となっているか否かを推定する所定の外気温度AT1は、吐出ガス温度DTの上昇が許容値内であることが予め確認された値を採用することにより、より安全性の確保を図ることが可能となる。
また、当該所定の外気温度AT1は、吐出ガス温度センサ52が正常に機能している状態で、当該外気温度センサ48が検出する外気温度ATが所定の外気温度AT1以下であるにもかかわらず、吐出ガス温度センサ52により検出された吐出ガス温度DTの上昇により補助膨張弁39の開度を拡張変更させた場合には、当該外気温度にて吐出ガス温度DTが異常高温となることから、そのときの外気温度ATを新たな所定の外気温度AT1としてメモリ34を書き換え変更する。そして、上記吐出ガス温度センサ52の異常時におけるバックアップ制御において当該変更後の所定の外気温度AT1を採用する。これにより、より精度の高いバックアップ制御を実現することが可能となる。
その後、制御装置9は、ステップS16に進み、中間熱交換器入口側温度センサ49が異常があるか否かを判断する。異常がない場合には、ステップS11に戻り、上記バックアップ制御を継続する。他方、異常がある場合には、ステップS18に進み、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により吐出ガス温度センサ52に加えて入口側温度センサ49の異常を報知すると共に、圧縮機18を停止、若しくは、外気温度ATの温度毎に決められた十分大きい弁開度に補助膨張弁39を変更する。
このように、吐出ガス温度センサ52の異常に加えて、入口側温度センサ49に異常が発生した場合には、好適な補助膨張弁39の開度制御を行うことができないため、圧縮機18を停止することで、安全性の確保を図ることができる。
また、上記バックアップ制御では、吐出ガス温度センサ52や入口側温度センサ49の異常発生を検出した際に、制御装置9は、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて吐出ガス温度センサ52や入口側温度センサ49に異常があったことを報知することにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
(D)出口側温度センサ50異常時の制御
上記(A−3)、(A−7)で示したように、出口側温度センサ50にて検出された中間熱交換器40の第1の冷媒流の出口側温度IMTOは、膨張弁8の閉塞判定及び補助膨張弁39の温度差制御に用いられている。各制御に用いられた出口側温度センサ50が故障等により異常が発生した場合、制御装置9は、入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIに基づいて、上記各制御のバックアップ制御を実行する。尚、膨張弁8の閉塞判定では、入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIに基づいて出口側温度IMTOを推定して行うものであり、当該入口側温度IMTIに基づく出口側温度IMTOの推定方法は、複数有り、以下に、詳述する。尚、制御装置9は、所定のサンプリング周期にて出口側温度センサ50の抵抗値が異常値(過小若しくは過大)であるか否かを判断し、これにより、異常発生を検知する。
(D−1)出口側温度IMTOの第1の推定方法
第1の推定方法では、制御装置9は、出口側温度センサ50の異常時に入口側温度センサ49が検出する中間熱交換器40の第1の流路の入口側温度IMTIと一定の差IMTe1(例えば、+10deg)を有する温度(IMTI+IMTe1)を出口側温度IMTOとして代用する。
そのため、制御装置9は出口側温度センサ50の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により出口側温度センサ50の異常を報知すると共に、膨張弁8の閉塞判定に用いる出口側温度IMTOとして、入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIと一定の差IMTe1を有する温度(IMTI+IMTe1)を用いる。
そして、当該推定された出口側温度IMTO(この場合、IMTI+IMTe1)が所定の温度以下に低下した場合には、膨張弁8が閉塞したものと判断する。制御装置9は、当該膨張弁8の閉塞を検知した場合には、膨張弁8を強制的に所定開度だけ拡張する制御を行う。
これにより、通常、出口側温度IMTOと所定の温度差となるように制御されている入口側温度IMTIを用いて膨張弁8の閉塞を判断することが可能となる。そのため、従来の如く、出口側温度センサ50の異常時に、膨張弁8の開度を、予め設定された所定の開度に固定して行う場合と比べて、より精度の高い主絞り手段膨張弁8の制御を実現することが可能となる。従って、当該出口側温度センサ50の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
特に、当該第1の推定方法では、入口側温度IMTIと一定の差IMTe1を有する温度を出口側温度IMTOとして代用した膨張弁閉塞判定を行うことにより、出口側温度センサ50の異常時おける入口側温度IMTIに基づくバックアップ制御を容易に実現することが可能となる。
(D−2)出口側温度IMTOの第2の推定方法
第2の推定方法では、制御装置9は、入口側温度IMTIと出口側温度IMTOとの差IMTeを、外気温度ATの温度帯毎に記憶することにより構築されたデータベースを有し、出口側温度センサ50の異常時には、外気温度センサ48が検出する外気温度ATが属する温度帯に対応する差IMTeをデータベースから読み出し、入口側温度IMTIと当該差IMTeを有する温度を出口側温度IMTOとして代用する。
そのため、図10のフローチャートに示すように、先ず、制御装置9は、出口側温度センサ50及び入口側温度センサ49の正常時(ステップS20)において、ステップS21に進み、所定のサンプリング周期にて、出口側温度IMTOを出口側温度センサ50にて、入口側温度IMTIを入口側温度センサ49にて検出し、当該検出時期と同時、若しくは、その前後で、外気温度センサ48により外気温度ATを検出する。
そして、制御装置9は、圧縮機18の運転中における安定時、例えば、補助膨張弁39の開度制御を上記(A−6)の方法にて行っている場合には、入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIが目標値IMTI1と近い範囲にある場合、例えば、入口側温度IMTIと目標値IMTI1との差の絶対値が所定値KF未満である場合(IMTI−IMTI1<±KF)に、正常に機能している出口側温度センサ50が検出する出口側温度IMTOと、そのときの入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIとの差IMTeを算出し、そのときの外気温度センサ48にて検出される外気温度ATの温度帯毎にメモリ34に記憶し、データベースを構築する。
当該データベースは、例えば、図11に示すように、外気温度ATを10℃以下、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の温度帯毎に分け、それぞれ出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをB1、B2、B3、B4として記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS22に進み、出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeは、所定のサンプリング周期毎に得られる値のそれぞれの温度帯毎の平均値、若しくは、直近の値に重みが置かれた平均値AVIMTe、例えば、これまでの平均値AVIMTeと直近の値IMTeとの平均値((AVIMTe+IMTe)/2)としてデータベースに記憶する。
そして、ステップS23において、出口側温度センサ50の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により出口側温度センサ50の異常を報知すると共に、ステップS24に進む。そして、外気温度センサ48にて外気温度ATを検出し、当該外気温度ATが属する温度帯に対応する出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをメモリ34に記憶されたデータベースから読み出す。
制御装置9は、そのときの入口側温度IMTIを入口側温度センサ49にて検出し、当該入口側温度IMTIと外気温度ATから読み出された差IMTeを有する温度(IMTI+IMTe)を出口側温度IMTOと推定し、膨張弁8の閉塞判定を行う。
即ち、当該推定された出口側温度IMTO(この場合、IMTI+IMTe)が所定の温度以下に低下した場合には、膨張弁8が閉塞したものと判断する。制御装置9は、当該膨張弁8の閉塞を検知した場合には、膨張弁8を強制的に所定開度だけ拡張する制御を行う。
当該第2の推定方法の場合においても、第1の推定方法と同様に、通常、出口側温度IMTOと所定の温度差となるように制御されている入口側温度IMTIを用いて膨張弁8の閉塞を判断することが可能となる。そのため、従来の如く、出口側温度センサ50の異常時に、膨張弁8の開度を、予め設定された所定の開度に固定して行う場合と比べて、より精度の高い膨張弁8の制御を実現することが可能となる。従って、当該出口側温度センサ50の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
また、当該出口側温度IMTOの推定方法では、出口側温度センサ50と、入口側温度センサ49が正常である場合に、外気温度ATの温度帯毎に、出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをデータベースとして構築しておき、出口側温度センサ50の異常時に、そのときの外気温度ATに対応する差IMTeを検出された入口側温度IMTIに加算することで、出口側温度IMTOを推定して用いることで、より容易に、且つ高い精度にて、出口側温度センサ50の異常時おける入口側温度IMTIに基づくバックアップ制御を容易に実現することが可能となる。
(D−3)出口側温度IMTOの第3の推定方法
第3の推定方法では、制御装置9は、入口側温度IMTIと出口側温度IMTOとの差IMTeを、入口側温度IMTIの温度帯毎に記憶することにより構築されたデータベースを有し、出口側温度センサ50の異常時には、入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIが属する温度帯に対応する差IMTeをデータベースから読み出し、入口側温度IMTIと当該差IMTeを有する温度を出口側温度IMTOとして代用する。
そのため、図12のフローチャートに示すように、先ず、制御装置9は、出口側温度センサ50及び入口側温度センサ49の正常時(ステップS25)において、ステップS26に進み、所定のサンプリング周期にて、出口側温度IMTOを出口側温度センサ50にて、入口側温度IMTIを入口側温度センサ49にて検出する。
そして、制御装置9は、圧縮機18の運転中における安定時、例えば、補助膨張弁39の開度制御を上記(A−6)の方法にて行っている場合には、入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIが目標値IMTI1と近い範囲にある場合、例えば、入口側温度IMTIと目標値IMTI1との差の絶対値が所定値KF未満である場合(IMTI−IMTI1<±KF)に、正常に機能している出口側温度センサ50が検出する出口側温度IMTOと、そのときの入口側温度センサ49が検出する入口側温度IMTIとの差IMTeを算出し、そのときの入口側温度IMTIの温度帯毎にメモリ34に記憶し、データベースを構築する。
当該データベースは、例えば、図13に示すように、入口側温度IMTIを10℃以下、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の温度帯毎に分け、それぞれ出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをC1、C2、C3、C4として記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS27に進み、出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeは、所定のサンプリング周期毎に得られる値のそれぞれの温度帯毎の平均値、若しくは、直近の値に重みが置かれた平均値AVIMTe、例えば、これまでの平均値AVIMTeと直近の値IMTeとの平均値((AVIMTe+IMTe)/2)としてデータベースに記憶する。
そして、ステップS28において、出口側温度センサ50の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により出口側温度センサ50の異常を報知すると共に、ステップS29に進む。そして、入口側温度センサ49にて入口側温度IMTIを検出し、当該入口側温度IMTIが属する温度帯に対応する出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをメモリ34に記憶されたデータベースから読み出す。
制御装置9は、そのときの入口側温度IMTIを入口側温度センサ49にて検出し、当該入口側温度IMTIから読み出された差IMTeを有する温度(IMTI+IMTe)を出口側温度IMTOと推定し、膨張弁8の閉塞判定を行う。
即ち、当該推定された出口側温度IMTO(この場合、IMTI+IMTe)が所定の温度以下に低下した場合には、膨張弁8が閉塞したものと判断する。制御装置9は、当該膨張弁8の閉塞を検知した場合には、膨張弁8を強制的に所定開度だけ拡張する制御を行う。
当該第3の推定方法の場合においても、上記第1及び第2の推定方法と同様に、通常、出口側温度IMTOと所定の温度差となるように制御されている入口側温度IMTIを用いて膨張弁8の閉塞を判断することが可能となる。そのため、従来の如く、出口側温度センサ50の異常時に、膨張弁8の開度を、予め設定された所定の開度に固定して行う場合と比べて、より精度の高い膨張弁8の制御を実現することが可能となる。従って、当該出口側温度センサ50の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
また、当該出口側温度IMTOの推定方法では、出口側温度センサ50と、入口側温度センサ49が正常である場合に、入口側温度IMTIの温度帯毎に、出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeをデータベースとして構築しておき、出口側温度センサ50の異常時に、そのときの入口側温度IMTIに対応する差IMTeを検出された入口側温度IMTIに加算することで、出口側温度IMTOを推定して用いることで、より容易に、且つ高い精度にて、出口側温度センサ50の異常時おける入口側温度IMTIに基づくバックアップ制御を容易に実現することが可能となる。
特に、この第2及び第3の推定方法では、データベースに構築された出口側温度IMTOと入口側温度IMTIとの差IMTeは、所定のサンプリング周期毎に得られる値の平均値を採用することにより、より精度の高いバックアップ制御を実現することが可能となる。この際、直近の値に重みが置かれた平均値を採用した場合、機器の老朽化等をも考慮した差eを算出することができ、より精度の向上を図ることができる。
更に、データベースの構築に用いられる各出口側温度IMTO及び入口側温度IMTIは、圧縮機18の運転中における冷却安定時における所定のサンプリング周期毎に得られる値の平均値を採用することにより、より精度の高い制御を実現することができる。
また、上記各第1乃至第3の推定方法を採用したバックアップ制御では、出口側温度センサ50の異常発生を検出した際に、制御装置は、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて出口側温度センサ50に異常があったことを報知することにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
(D−4)出口側温度センサ50及び入口側温度センサ49の双方の異常時の制御
制御装置9は、出口側温度センサ50の異常に加えて、入口側温度センサ49の異常をも検知した場合には、上述したような入口側温度センサ49に基づいた出口側温度IMTOの推定による膨張弁8の閉塞判定を行うことができない。そのため、制御装置9は、所定の冷媒流量が確保される値(開き気味の指定開度)に膨張弁8の開度を維持した制御を行う。当該所定の冷媒流量が確保される値とは、蒸発器11による冷却を確保可能な通常の制御範囲における平均値よりも大きい開度である。
これにより、膨張弁8の閉塞を防止し、絞りすぎによる圧縮機18の過負荷運転を回避することができる。また、円滑なオイル戻しの確保、及び蒸発器11による冷却を確保することが可能となる。
また、制御装置9は、出口側温度センサ50の異常に加えて、入口側温度センサ49の異常をも検知した場合には、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて外気出口側温度センサ50及び入口側温度センサ49に異常があったことを報知する。これにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
(D−5)出口側温度センサ異常時の補助膨張弁制御
次に、(A−7)で示した補助膨張弁39の温度差制御を行っている場合の出口側温度センサ50異常時のバックアップ制御について説明する。先ず始めに、制御装置9は、補助膨張弁39の温度差制御を行っている際に出口側温度センサ50の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により出口側温度センサ50の異常を報知する。
そして、制御装置9は、それまで行っていた(A−7)の補助膨張弁39の温度差制御から(A−6)に示したような入口側温度センサ49にて検出された入口側温度IMTIに基づく補助膨張弁39の開度制御に移行する。
具体的には、制御装置9は、補助膨張弁39の弁開度を制御する際、先ず、所定のサンプリング周期で入口側温度センサ49にて入口側温度IMTIを検出し、更に、外気温度センサ48にて外気温度ATを検出する。現在の入口側温度IMTIと、外気温度ATとから入口側温度IMTIの目標値IMTI1を算出する。
そして、入口側温度IMTIが目標値IMTI1となるように補助膨張弁39の開度を制御する。このとき、入口側温度IMTIが目標値IMTI1から高いほど補助膨張弁39の弁開度をより絞る方向に、低いほど弁開度をより開く方向に操作量のパルス制御を行う。
これにより、従来の如く、出口側温度センサ50の異常時に、補助膨張弁39の制御を、所定の開度に固定して行う場合と比べて、より精度の高い制御を実現することが可能となる。従って、当該出口側温度センサ50の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
また、この場合においても、制御装置9は、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて出口側温度センサ50に異常があったことを報知することにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
(E)入口側温度センサ49異常時の制御
上記(A−6)若しくは、(A−7)で示したように、入口側温度センサ49にて検出された中間熱交換器40の第1の冷媒流の出口側温度IMTIは、補助膨張弁39の開度制御に用いられている。当該制御に用いられた入口側温度センサ49が故障等により異常が発生した場合、制御装置9は、補助膨張弁39の開度Qを所定の開度Q1とし、その状態で、吐出ガス温度センサ52が検出する圧縮機18の吐出ガス温度DTが所定値以上に上昇した場合、補助膨張弁39の開度Qを拡張させるバックアップ制御を実行する。尚、所定の開度Q1の決定方法は、複数有り、以下に、詳述する。尚、制御装置9は、所定のサンプリング周期にて入口側温度センサ49の抵抗値が異常値(過小若しくは過大)であるか否かを判断し、これにより、異常発生を検知する。
(E−1)所定の開度Q1の第1の決定方法
第1の決定方法では、制御装置9は、補助膨張弁39の開度Qを、外気温度ATの温度帯毎に記憶することにより構築されたデータベースを有し、入口側温度センサ49の異常時には、外気温度センサ48が検出する外気温度ATが属する温度帯に対応する開度Qをデータベースから読み出し、所定の開度Q1としてバックアップ制御を行う。
そのため、図14のフローチャートに示すように、先ず、制御装置9は、外気温度センサ48及び入口側温度センサ49の正常時(ステップS30)において、ステップS31に進み、所定のサンプリング周期にて、外気温度ATを外気温度センサ48にて検出し、当該検出時期と同時、若しくは、その前後で、補助膨張弁39の開度Qを検出(取得)する。
そして、制御装置9は、圧縮機18の運転中における冷却安定時、例えば、補助膨張弁39の開度制御を上記(A−6)の方法にて行っている場合には、入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIが目標値IMTI1と近い範囲にある場合、例えば、入口側温度IMTIと目標値IMTI1との差の絶対値が所定値KF未満である場合(IMTI−IMTI1<±KF)に、外気温度センサ48にて外気温度ATを検出し、そのときの補助膨張弁39の開度Qをそのときの外気温度ATの温度帯毎にメモリ34に記憶し、データベースを構築する。
尚、補助膨張弁39の開度制御を上記(A−7)の温度差制御にて行っている場合では、圧縮機18の運転中における冷却安定時は、出口側温度センサ50にて検出される出口側温度IMTOと、入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIの温度差IMTeが所定の温度差目標値と近い範囲にある場合、例えば、温度差IMTeと温度差目標値との差の絶対値が所定値KG未満である場合を冷却安定時としてデータベースを構築する。
当該データベースは、例えば、図15に示すように、外気温度ATを10℃以下、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の温度帯毎に分け、それぞれ補助膨張弁39の開度QをD1、D2、D3、D4として記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS32に進み、補助膨張弁39の開度Qは、所定のサンプリング周期毎に得られる値のそれぞれの温度帯毎の平均値、若しくは、直近の値に重みが置かれた平均値AVQ、例えば、これまでの平均値AVQと直近の値Qとの平均値((AVQ+Q)/2)としてデータベースに記憶する。
そして、ステップS33において、入口側温度センサ49の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により入口側温度センサ49の異常を報知すると共に、ステップS34に進む。そして、外気温度センサ48にて外気温度ATを検出し、当該外気温度ATが属する温度帯に対応する補助膨張弁39の開度Qをメモリ34に記憶されたデータベースから読み出し、所定の開度Q1(バックアップ制御時における補正後の初期弁開度)とする。
(E−2)所定の開度Q1の第2の決定方法
第2の決定方法では、制御装置9は、補助膨張弁39の開度Qを、出口側温度IMTOの温度帯毎に記憶することにより構築されたデータベースを有し、入口側温度センサ49の異常時には、出口側温度センサ50が検出する出口側温度IMTOが属する温度帯に対応する開度Qをデータベースから読み出し、所定の開度Q1としてバックアップ制御を行う。尚、当該バックアップ制御は、中間熱交換器40の出口側温度センサ50を用いるものであるため、当該出口側温度センサ50が上述したような膨張弁8の閉塞判定のために用いられている場合や、補助膨張弁39の開度制御を(A−7)に示した温度差制御にて行っている場合に特に有効となる。
そのため、図16のフローチャートに示すように、先ず、制御装置9は、出口側温度センサ50及び入口側温度センサ49の正常時(ステップS35)において、ステップS36に進み、所定のサンプリング周期にて、出口側温度IMTOを出口側温度センサ50にて検出し、当該検出時期と同時、若しくは、その前後で、補助膨張弁39の開度Qを検出(取得)する。
そして、制御装置9は、圧縮機18の運転中における冷却安定時、例えば、補助膨張弁39の温度差制御を上記(A−7)の方法にて行っている場合、出口側温度センサ50にて検出される出口側温度IMTOと、入口側温度センサ49にて検出される入口側温度IMTIの温度差IMTeが所定の温度差目標値と近い範囲にある場合、例えば、温度差IMTeと温度差目標値との差の絶対値が所定値KG未満である場合を冷却安定時として、出口側温度センサ50にて出口側温度IMTOを検出し、そのときの補助膨張弁39の開度Qをそのときの出口側温度IMTOの温度帯毎にメモリ34に記憶し、データベースを構築する。
当該データベースは、例えば、図17に示すように、出口側温度IMTOを10℃以下、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の温度帯毎に分け、それぞれ補助膨張弁39の開度QをE1、E2、E3、E4として記憶する。
そして、制御装置9は、ステップS37に進み、補助膨張弁39の開度Qは、所定のサンプリング周期毎に得られる値のそれぞれの温度帯毎の平均値、若しくは、直近の値に重みが置かれた平均値AVQ、例えば、これまでの平均値AVQと直近の値Qとの平均値((AVQ+Q)/2)としてデータベースに記憶する。
そして、ステップS38において、入口側温度センサ49の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により入口側温度センサ49の異常を報知すると共に、ステップS39に進む。そして、出口側温度センサ50にて出口側温度IMTOを検出し、当該出口側温度IMTOが属する温度帯に対応する補助膨張弁39の開度Qをメモリ34に記憶されたデータベースから読み出し、所定の開度Q1(バックアップ制御時における補正後の初期弁開度)とする。
(E−3)第1又は第2の決定方法で決定された所定の開度Q1を用いたバックアップ制御
ここで、上述した如き第1又は第2の決定方法で決定された所定の開度Q1を用いたバックアップ制御について図18のフローチャートを参照して説明する。先ず、制御装置9は、ステップS40にて入口側温度センサ49の異常を検出した場合には、警報ランプ(警報手段)53の点灯及びコントロールパネル35の表示部により入口側温度センサ49の異常を報知すると共に、ステップS41に進む。そして、補助膨張弁39の開度Qを現在の開度から上述した如く第1又は第2の決定方法で決定された所定の開度Q1を待避弁開度として変更する。
そして、制御装置9は、その後、圧縮機18が運転中であるか否かを判断(ステップS42)し、運転中でない、即ち、圧縮機18のサーモサイクル運転において圧縮機18を停止(サーモオフ)した場合には、ステップS41に戻り、再度、補助膨張弁39の開度Qを第1又は第2の決定方法で決定された所定の開度Q1を待避弁開度とし、圧縮機18の起動(サーモオン)初期は、補助膨張弁39の開度Qは、当該待避弁開度とされる。
そして、ステップS42において、圧縮機18が運転中である場合には、ステップS43に進み、制御装置9は、吐出ガス温度センサ52にて検出される圧縮機18の吐出ガス温度DTを所定のサンプリング周期にて検出し、当該吐出ガス温度DTが所定の高温度(所定値)以上に上昇した場合には、補助膨張弁39の開度Qを所定開度だけ拡張させる制御を行う。
これにより、従来の如く、入口側温度センサ49の異常時に、補助膨張弁39の制御を、所定の開度に固定して行う場合と比べて、圧縮機18のサーモサイクル運転における圧縮機18の起動時(サーモオン)では、第1又は第2の方法により決定された開度Q1を待避弁開度とし、その後、吐出ガス温度DTを考慮しながら補助膨張弁39の開度を拡張させることができるため、安全に、より精度の高い制御を実現することが可能となる。従って、当該入口側温度センサ49の修理・交換作業までの間、適切なバックアップ制御を実現することができる。
特に、入口側温度センサ49の異常発生時における補助膨張弁39の初期開度Q1は、第1の決定方法では、正常時に構築されたデータベースによる外気温度ATの温度帯毎に記憶されたそのときの開度を、第2の決定方法では、正常時に構築されたデータベースによる出口側温度IMTOの温度帯毎に記憶されたそのときの開度を、所定の開度Q1とすることにより、より正常時における制御に近似した補助膨張弁39の開度Qを用いて制御することが可能となる。これにより、より精度の高いバックアップ制御を実現することができる。
特に、入口側温度センサ49の異常発生時において変更される補助膨張弁39の開度Q1(待避弁開度)は、何れの決定方法の場合においても、所定のサンプリング周期毎に得られる値の平均値を採用することにより、より精度の高いバックアップ制御を実現することが可能となる。この際、直近の値に重みが置かれた平均値を採用した場合、機器の老朽化等をも考慮した開度Q1とすることができ、より精度の向上を図ることができる。
更に、データベースの構築に用いられる補助膨張弁39の開度は、圧縮機18の運転中における冷却安定時における所定のサンプリング周期毎に得られる値の平均値を採用することにより、より精度の高い制御を実現することができる。
また、上記バックアップ制御では、入口側温度センサ49の異常発生を検出した際に、制御装置9は、警報ランプ53やコントロールパネル35の表示部にて入口側温度センサ49に異常があったことを報知することにより、修理・交換等のメンテナンス作業を早期に促すことが可能となる。
特に、上記本実施例では、冷媒として二酸化炭素を使用した冷凍装置10では、上述したような高圧側の冷媒圧力(高圧圧力)がその臨界圧力以上となる所謂二段圧縮一段膨張中間冷却サイクルを採用することにより、冷媒回路7が複雑化し、制御に用いるセンサ(検出手段)の数が増える。そのため、センサ数の増加により、センサの異常発生率も高くなるが、上述したように各温度センサ(外気温度センサ48、ガスクーラ出口側温度センサ51、中間熱交換器40の入口側温度センサ49、出口側温度センサ50、圧縮機の吐出ガス温度センサ52)の異常に対して効果的なバックアップ制御を実現できることから、安全且つ、貯蔵室5(被冷却空間)への冷却不良を最小限とすることができる。