本発明は、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置に関するものである。
従来より、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置が知られている。例えば、特許文献1には、冷凍装置の一種である空気調和装置であって、パワー素子を冷却するための冷却部を、冷媒回路における膨張弁と室外熱交換器の間に配置したものが開示されている。この特許文献1の空気調和装置は、室内熱交換器が凝縮器となって室外熱交換器が蒸発器となる暖房運転を行う。そして、暖房運転中には、膨張弁で減圧されて室外熱交換器へ向かう冷媒が、冷却部においてパワー素子を冷却する。
冷凍サイクルを行う冷媒回路において、膨張弁で減圧されて蒸発器へ向かう冷媒は、その温度が比較的低くなっている。このため、膨張弁から蒸発器へ向かう比較的低温の冷媒によってパワー素子を冷却すれば、パワー素子の温度を確実に低く抑えることができる。
ところが、膨張弁から蒸発器へ向かうの温度が低くなり過ぎると、パワー素子自体やその周辺部の温度がパワー素子の周囲に存在する空気の露点温度よりも低くなり、パワー素子の表面やその周辺部において結露が生じるおそれがある。このような場所で結露が生じると、パワー素子の電極や、パワー素子が設置される基板の配線部分等の腐食を招いたり、パワー素子自体の絶縁性の低下を招くおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置において、パワー素子やその周辺部における結露を未然に防ぎ、冷凍装置の信頼性を向上させることにある。
第1の発明は、圧縮機(30)と膨張弁(43)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)と、パワー素子(56)を有して上記圧縮機(30)の電動機(33)へ電力を供給する電源(55)と、上記冷媒回路(20)における上記膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に配置されて、該冷媒回路(20)の冷媒によって上記電源(55)のパワー素子(56)を冷却する冷却用部材(50)とを備える冷凍装置を対象とする。そして、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量を計測する計測手段(71〜74)と、上記計測手段(71〜74)の計測値に基づいて上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断すると上記膨張弁(43)の開度を強制的に増やすように構成された制御手段(60)とを備えるものである。
第1の発明では、冷媒回路(20)における膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に冷却用部材(50)が設けられる。また、この発明では、圧縮機(30)の電動機(33)に対して、電源(55)が電力を供給する。冷却用部材(50)では、膨張弁(43)で減圧されて蒸発器(42)へ向かう冷媒が、電源(55)に設けられたパワー素子(56)から吸熱する。計測手段(71〜74)は、所定の物理量を計測し、得られた計測値を制御手段(60)へ入力する。制御手段(60)は、入力された計測手段(71〜74)の計測値を用いて、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを判断し、その可能性が高いと判断すると膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記パワー素子(56)、上記冷却用部材(50)、又は上記パワー素子(56)の近傍に設置された温度センサ(73)を上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、上記温度センサ(73)の計測値を利用して上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを判断するように構成されるものである。
第2の発明では、計測手段として設けられて温度センサ(73)が、パワー素子(56)や冷却用部材(50)、あるいはパワー素子(56)近傍の温度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。そして、制御手段(60)は、温度センサ(73)において得られた計測値を利用して、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを判断する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記電源(55)及び上記冷却用部材(50)が室外に設置され、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と上記温度センサ(73)の両方を上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、上記温度センサ(73)の計測値が上記室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されるものである。
第3の発明では、電源(55)と冷却用部材(50)が室外に設置される。つまり、電源(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。また、この発明の冷凍装置(10)には、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の近傍に設置された温度センサ(73)と、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)とが計測手段として設けられる。そして、この発明の制御手段(60)は、温度センサ(73)の計測値(即ち、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部の温度の実測値)が室外気温センサ(71)の計測値(即ち、室内空気の温度の実測値)よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
第4の発明は、上記第2の発明において、上記電源(55)及び上記冷却用部材(50)が室外に設置され、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と上記温度センサ(73)の両方を上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、温度が上記室外気温センサ(71)の計測値であって相対湿度が予め定めた基準湿度である湿り空気の露点温度を算出し、上記温度センサ(73)の計測値が算出した露点温度を下回っている場合に、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されるものである。
第4の発明では、電源(55)と冷却用部材(50)が屋外に設置される。つまり、電源(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。また、この発明の冷凍装置(10)には、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の近傍に設置された温度センサ(73)と、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)とが計測手段として設けられる。この発明の制御手段(60)は、温度が室外気温センサ(71)の計測値であって相対湿度が予め定めた基準湿度である湿り空気の露点温度を算出する。そして、この制御手段(60)は、温度センサ(73)の計測値(即ち、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部の温度の実測値)が算出した露点温度を下回っている場合に、パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
第5の発明は、上記第1の発明において、上記冷媒回路(20)には、室外空気を冷媒と熱交換させる室外熱交換器(42)と、室内空気を冷媒と熱交換させる室内熱交換器(46)とが接続され、上記冷媒回路(20)は、上記室内熱交換器(46)において放熱した冷媒が上記膨張弁(43)によって減圧された後に上記室外熱交換器(42)において蒸発する冷凍サイクルを行う暖房動作を少なくとも行うように構成され、上記冷媒回路(20)では、上記暖房動作中に蒸発器として機能する上記室外熱交換器(42)と上記膨張弁(43)の間に上記冷却用部材(50)が配置される一方、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と、室内空気の温度を計測する室内気温センサ(72)とを上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、上記冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において上記室内気温センサ(72)の計測値が上記室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されるものである。
第5の発明では、冷媒回路(20)において暖房動作が行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)で放熱した後に膨張弁(43)によって減圧された冷媒が、冷却用部材(50)においてパワー素子(56)から吸熱し、その後に蒸発器として機能する室外熱交換器(42)へ流入する。この発明の冷凍装置(10)には、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と、室内空気の温度を計測する室内気温センサ(72)とが計測手段として設けられる。そして、この発明の制御手段(60)は、冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において室内気温センサ(72)の計測値(即ち、室内空気の温度の実測値)が室外気温センサ(71)の計測値(即ち、室外空気の温度の実測値)よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
第6の発明は、上記第1の発明において、上記パワー素子(56)の周囲における空気の相対湿度を計測する湿度センサ(74)を上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、上記湿度センサ(74)の計測値が所定の上限湿度を上回っている場合に、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されるものである。
第6の発明では、パワー素子(56)の周囲における空気の相対湿度を計測する湿度センサ(74)が、計測手段として冷凍装置(10)に設けられる。そして、この発明の制御手段(60)は、湿度センサ(74)の計測値(即ち、パワー素子(56)の周辺における空気の相対湿度の実測値)が所定の上限湿度を上回っている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
第7の発明は、圧縮機(30)と膨張弁(43)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)と、パワー素子(56)を有して上記圧縮機(30)の電動機(33)へ電力を供給する電源(55)と、上記冷媒回路(20)における上記膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に配置されて、該冷媒回路(20)の冷媒によって上記電源(55)のパワー素子(56)を冷却する冷却用部材(50)とを備える冷凍装置を対象とする。そして、上記パワー素子(56)、上記冷却用部材(50)、又は上記パワー素子(56)の近傍に設置されて結露の発生を検知する結露センサ(70)と、上記結露センサ(70)が結露の発生を検知すると上記膨張弁(43)の開度を強制的に増やすように構成された制御手段(60)とを備えるものである。
第7の発明では、冷媒回路(20)における膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に冷却用部材(50)が設けられる。また、この発明では、圧縮機(30)の電動機(33)に対して、電源(55)が電力を供給する。冷却用部材(50)では、膨張弁(43)で減圧されて蒸発器(42)へ向かう冷媒が、パワー素子(56)から吸熱する。この冷凍装置(10)では、結露の発生を検知する結露センサ(70)が、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の近傍に設置される。そして、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部における結露の発生を結露センサ(70)が検知すると、制御手段(60)が膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。
上記第1の発明において、制御手段(60)は、計測手段(71〜74)の計測値に基づいてパワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断すると、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。また、上記第7の発明において、制御手段(60)は、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部における結露の発生を結露センサ(70)が検知すると、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。従って、本発明によれば、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の過度の温度低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
上記第3の発明において、制御手段(60)は、温度センサ(73)の計測値が室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
ここで、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。そして、温度センサ(73)の計測値が室外気温センサ(71)の計測値よりも低い状態では、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺の温度が室外空気の露点温度に近付いており、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
従って、第3の発明の制御手段(60)のように、温度センサ(73)の計測値と室外気温センサ(71)の計測値とを比較すれば、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを的確に判断することができる。
上記第4の発明において、制御手段(60)は、温度が室外気温センサ(71)の計測値であって相対湿度が予め定めた基準湿度である湿り空気の露点温度を算出し、温度センサ(73)の計測値が算出した露点温度を下回っている場合に、パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
ここで、室外空気の相対湿度は、季節によって変動するものの、その概略値を予め想定することは可能である。このため、制御手段(60)における基準湿度を室外空気の相対湿度として想定される値に設定しておけば、室外空気の相対湿度を実測しなくても、室外空気の露点温度の概略値を算出することは可能である。
従って、第4の発明の制御手段(60)のように、予め定めた相対湿度に関する基準湿度と室外気温センサ(71)の計測値を用いて算出した露点温度と温度センサ(73)の計測値を比較すれば、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを的確に判断することができる。
上記第5の発明において、制御手段(60)は、冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において室内気温センサ(72)の計測値が上記室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
ここで、暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)において室内空気と熱交換した冷媒が、膨張弁(43)を通過後に冷却用部材(50)へ流入する。このため、室内の気温が室外の気温に比べて低い場合は、冷却用部材(50)へ流入する冷媒の温度が室外の気温に比べて低くなり、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の温度が室外空気の温度に比べて低くなる可能性が高くなる。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。そして、室内気温センサ(72)の計測値が室外気温センサ(71)の計測値よりも低い状態では、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺の温度が室外空気の露点温度に近付いている可能性が高く、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
従って、第5の発明の制御手段(60)のように、暖房動作中における室内気温センサ(72)の計測値と室外気温センサ(71)の計測値とを比較すれば、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを的確に判断することができる。
上記第6の発明において、制御手段(60)は、湿度センサ(74)の計測値が所定の上限湿度を上回っている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。パワー素子(56)の周辺における空気の相対湿度がある程度高い値になっていると、その空気の露点温度も比較的高い温度となり、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなる。従って、この発明の制御手段(60)のように、湿度センサ(74)の計測値と所定の上限湿度とを比較すれば、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを的確に判断することができる。
実施形態1の空調機の概略構成を示す冷媒回路図である。
実施形態1のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
実施形態1の圧縮機の起動時における、(A)冷却用部材の温度、(B)膨張弁の開度、及び(C)圧縮機の回転速度の時間変化を示すグラフである。
実施形態1のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
実施形態2のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
実施形態2のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
実施形態3のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
実施形態4のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
実施形態5のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
実施形態5のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、冷凍装置によって構成された空調機(10)である。
図1に示すように、本実施形態の空調機(10)は、屋外に設置される室外ユニット(11)と、屋内に設置される室内ユニット(12)を一つずつ備えている。室外ユニット(11)には、室外回路(21)が収容されている。室内ユニット(12)には、室内回路(22)が収容されている。この空調機(10)では、室外回路(21)と室内回路(22)を一対の連絡配管(23,24)によって接続することによって冷媒回路(20)が形成されている。
室外回路(21)には、圧縮機(30)と四方切換弁(41)と冷却用部材(50)と膨張弁(43)とが設けられている。なお、冷却用部材(50)については後述する。圧縮機(30)は、その吐出側が四方切換弁(41)の第1のポートに接続され、その吸入側がアキュームレータ(34)を介して四方切換弁(41)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(41)は、その第3のポートが室外熱交換器(42)の一端に接続され、その第4のポートがガス側閉鎖弁(44)に接続されている。室外熱交換器(42)の他端は、冷却用部材(50)を介して膨張弁(43)の一端に接続されている。膨張弁(43)の他端は、液側閉鎖弁(45)に接続されている。
室内回路(22)には、室内熱交換器(46)が設けられている。室内回路(22)は、そのガス側の端部がガス側連絡配管(23)を介してガス側閉鎖弁(44)に接続され、その液側の端部が液側連絡配管(24)を介して液側閉鎖弁(45)に接続されている。
圧縮機(30)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。つまり、圧縮機(30)では、冷媒を圧縮する圧縮機構(32)と、圧縮機構(32)を回転駆動するための電動機(33)とが、一つのケーシング(31)内に収容されている。四方切換弁(41)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。膨張弁(43)は、弁体がパルスモータによって駆動される開度可変の電動膨張弁である。
室外熱交換器(42)と室内熱交換器(46)は、何れも冷媒を空気と熱交換させるためのフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室外熱交換器(42)は、室外空気と冷媒を熱交換させる。室外ユニット(11)には、室外熱交換器(42)へ室外空気を送るための室外ファン(13)が設けられている。室内熱交換器(46)は、室内空気と冷媒を熱交換させる。室内ユニット(12)には、室内熱交換器(46)へ室内空気を送るための室内ファン(14)が設けられている。
室外ユニット(11)には、電源であるインバータ装置(55)と、制御手段であるコントローラ(60)とが設けられている。インバータ装置(55)は、商用電源から供給された交流の周波数をコントローラ(60)からの指令値に変換し、周波数を変換した交流を圧縮機(30)の電動機(33)へ供給するように構成されている。このインバータ装置(55)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子(56)が設けられている。図2に示すように、インバータ装置(55)では、パワー素子(56)が配線基板(57)に対して下側から取り付けられている。
図2に示すように、冷却用部材(50)は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属からなる本体部(51)と、本体部(51)に埋設された冷媒管(52)とを備えている。本体部(51)は、やや肉厚の平板状に形成され、パワー素子(56)に対して下側から取り付けられている。つまり、本体部(51)の上面がパワー素子(56)の下面に密着している。室外回路(21)では、室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間に冷却用部材(50)の冷媒管(52)が接続されている。冷媒管(52)を流れる冷媒は、本体部(51)を介してパワー素子(56)から吸熱する。
コントローラ(60)には、圧縮機制御部(61)と膨張弁制御部(62)とが設けられている。
圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度(即ち、電動機(33)によって駆動される圧縮機構(32)の回転速度)を調節するように構成されている。この圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度が制御目標値となるように、インバータ装置(55)の出力周波数を調節する。インバータの出力周波数が変化すると、圧縮機(30)の電動機(33)へ入力される交流の周波数が変化し、圧縮機構(32)を駆動する電動機(33)の回転速度が変化する。膨張弁制御部(62)は、膨張弁(43)のパルスモータを駆動して弁体を移動させることによって、膨張弁(43)の開度を調節する。
本実施形態の空調機(10)には、室外気温センサ(71)と、室内気温センサ(72)と、結露センサ(70)とが設けられている。室外気温センサ(71)は、室外ユニット(11)に設けられ、室外熱交換器(42)を通過する前の室外空気の温度を計測する(図1参照)。室内気温センサ(72)は、室内ユニット(12)に設けられ、室内熱交換器(46)を通過する前の室内空気の温度を計測する。結露センサ(70)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられており、本体部(51)の表面における結露の有無を検知する(図2を参照)。これら各センサ(70,71,72)の出力は、コントローラ(60)へ入力されている。
−運転動作−
本実施形態の空調機(10)は、冷房動作と暖房動作と除霜動作とを選択的に行う。
冷房動作について説明する。冷房動作中の空調機(10)では、四方切換弁(41)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、室外ファン(13)と室内ファン(14)が運転される。そして、冷房動作中の冷媒回路(20)では、室外熱交換器(42)が凝縮器となって室内熱交換器(46)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
冷房動作中の冷媒回路(20)において、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(41)を通って室外熱交換器(42)へ流入し、室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(42)において凝縮した冷媒は、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入し、冷媒管(52)を通過する間にパワー素子(56)から吸熱する。冷却用部材(50)から流出した冷媒は、膨張弁(43)を通過する際に減圧された後に室内熱交換器(46)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(46)において冷却された空気を室内へ供給する。室内熱交換器(46)において蒸発した冷媒は、四方切換弁(41)とアキュームレータ(34)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
暖房動作について説明する。暖房動作中の空調機(10)では、四方切換弁(41)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、室外ファン(13)と室内ファン(14)が運転される。そして、暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)が凝縮器となって室外熱交換器(42)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)において、冷却用部材(50)は、膨張弁(43)と蒸発器である室外熱交換器(42)との間に位置している。
、暖房動作中の冷媒回路(20)において、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(41)を通って室内熱交換器(46)へ流入し、室内空気へ放熱して凝縮する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(46)において加熱された空気を室内へ供給する。室内熱交換器(46)において凝縮した冷媒は、膨張弁(43)を通過する際に減圧された後に冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入し、冷媒管(52)を通過する間にパワー素子(56)から吸熱する。冷却用部材(50)から流出した冷媒は、室外熱交換器(42)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(42)において蒸発した冷媒は、四方切換弁(41)とアキュームレータ(34)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
除霜動作について説明する。除霜動作は、暖房動作中に室外熱交換器(42)に付着した霜を融かすために、例えば暖房動作の継続時間が所定値に達する毎に行われる。除霜動作中の空調機(10)では、冷房動作中と同様に、四方切換弁(41)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定される。ただし、除霜動作中の空調機(10)において、室外ファン(13)と室内ファン(14)は停止する。
除霜動作中の冷媒回路(20)では、圧縮機(30)から吐出された冷媒が室外熱交換器(42)へ流入し、室外熱交換器(42)に付着した霜が冷媒によって加熱されて融解する。室外熱交換器(42)において放熱した冷媒は、冷却用部材(50)と膨張弁(43)と室内熱交換器(46)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
−圧縮機制御部の制御動作−
コントローラ(60)の圧縮機制御部(61)が行う制御動作について説明する。圧縮機制御部(61)は、起動時回転速度制御動作と通常回転速度制御動作とを行う。この圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)が起動した時点から所定の終了条件が成立するまでの間は起動時回転速度制御動作を行い、終了条件が成立すると起動時回転速度制御動作を終了して通常時回転速度制御動作を開始する。圧縮機制御部(61)は、空調機(10)が冷房動作と暖房動作の何れを行う場合でも、起動時回転速度制御動作と通常回転速度制御動作とを行う。
起動時回転速度制御動作について、図3(C)を参照しながら説明する。圧縮機制御部(61)は、同図の時刻t0において圧縮機(30)を起動すると、時刻t0から所定時間が経過した時刻t1までの間に起動時回転速度制御動作を行う。つまり、本実施形態の圧縮機制御部(61)では、圧縮機(30)が起動された時点からの経過時間が所定値に達することが終了条件となっている。起動時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)は、時刻t1において圧縮機(30)の回転速度が所定の目標回転速度となるように、圧縮機(30)の回転速度を段階的に徐々に上昇させてゆく。つまり、圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の圧縮機構(32)を駆動する電動機(33)の回転速度が段階的に上昇するように、インバータ装置(55)の出力周波数を複数段階に分けて徐々に引き上げてゆく。
通常時回転速度制御動作について説明する。通常時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度が室内の空調負荷に対応した値となるように、インバータ装置(55)の出力周波数を調節する。具体的に、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値と設定温度との差に基づいて、圧縮機(30)の回転速度を調節する。冷房動作中において、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を上回っていれば圧縮機(30)の回転速度を上昇させ、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を下回っていれば圧縮機(30)の回転速度を低下させる。また、暖房動作中において、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を下回っていれば圧縮機(30)の回転速度を上昇させ、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を上回っていれば圧縮機(30)の回転速度を低下させる。
−膨張弁制御部の制御動作−
コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)が行う制御動作について説明する。膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作と通常時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。
膨張弁制御部(62)は、空調機(10)が冷房動作と暖房動作の何れを行っている状態においても、通常時開度制御動作を行う。一方、膨張弁制御部(62)は、空調機(10)が暖房動作を行う場合にだけ、起動時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。更に、空調機(10)の暖房動作中に圧縮機制御部(61)が起動時回転速度制御動作を行っている状態において、膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作だけを行う。また、空調機(10)の暖房動作中に圧縮機制御部(61)が通常時回転速度制御動作を行っている状態において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。
ここで、空調機(10)の暖房動作を行う場合にだけ膨張弁制御部(62)が起動時開度制御動作と結露防止用制御動作を行う理由を説明する。
上述したように、暖房運転中の冷媒回路(20)では、膨張弁(43)を通過する際に減圧された冷媒が冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する。このため、室外空気の湿度が高かったり、冷却用部材(50)へ流入する冷媒の温度が低過ぎる場合には、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面で結露が生じるおそれがある。そこで、膨張弁制御部(62)は、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面における結露を防ぐために、起動時開度制御動作や結露防止用制御動作を行う。
一方、上述したように、冷房運転中の冷媒回路(20)では、凝縮器である室外熱交換器(42)から膨張弁(43)へ向かう冷媒が冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する。冷房運転中に室外熱交換器(42)から流出する冷媒の温度は、室外空気の温度よりも必ず高くなるため、冷却用部材(50)の温度が室外空気の露点温度よりも低くなることは有り得ず、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面で結露は生じない。このため、空調機(10)の冷房運転中において、膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作や結露防止用制御動作を行わない。
起動時開度制御動作について、図3(B)を参照しながら説明する。同図の時刻t0において圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させると、それと同時に膨張弁制御部(62)が膨張弁(43)の開度を全閉から起動時開度にまで一気に増やす。その後、膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)の起動時回転速度制御動作が終了する時刻t1までの間、起動時開度制御動作を行う。起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、起動時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)の回転速度を引き上げる毎に、膨張弁(43)の開度を、引き上げ後の圧縮機(30)の回転速度に対応した値にまで増やす。つまり、起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)による圧縮機(30)の回転速度の引き上げに連動して膨張弁(43)の開度を段階的に増やしてゆく。
膨張弁制御部(62)は、暖房動作の開始時に起動時開度制御動作を行う。ここで、暖房動作を開始するために圧縮機(30)を起動させる動作は、空調機(10)の電源を投入後に暖房動作を開始する場合だけでなく、空調機(10)の運転状態を冷房動作から暖房動作へ切り換える場合や、空調機(10)の運転状態を除霜動作から暖房動作へ切り換える場合も行われる。また、暖房動作中に圧縮機(30)の回転速度を下限値に設定しても空調機(10)の暖房能力が室内の暖房負荷に対して大きすぎるときには、圧縮機(30)を一旦停止(サーモオフ)させ、その後に室内の気温が設定温度を下回ると圧縮機(30)を再び起動(サーモオン)させることになる。そして、このような暖房動作を開始するために圧縮機(30)を起動させる場合には、その何れにおいても膨張弁制御部(62)が起動時開度制御動作を行う。
通常時開度制御動作について説明する。通常時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、蒸発器として機能する熱交換器の出口における冷媒の過熱度を監視する。つまり、膨張弁制御部(62)は、冷房動作中であれば室内熱交換器(46)の出口における冷媒の過熱度を監視し、暖房動作中であれば室外熱交換器(42)の出口における冷媒の過熱度を監視する。そして、膨張弁制御部(62)は、監視している冷媒の過熱度が所定の目標過熱度(例えば5℃)に保たれるように、膨張弁(43)の開度を調節する。具体的に、通常時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度を上回っていれば膨張弁(43)の開度を増やし、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度を下回っていれば膨張弁(43)の開度を減らす。
結露防止用制御動作について説明する。この結露防止用制御動作は、通常時開度制御動作と並行して行われる。膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を行うと同時に、図4のフロー図に示す結露防止用制御動作を所定の時間毎(例えば30秒毎)に実行する。
図4のステップST11において、膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)の出力を読み込む。次のステップST12において、膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)が結露の発生を検知しているか否かを判定する。そして、結露センサ(70)が結露の発生を検知していない場合、膨張弁制御部(62)はステップST11へ戻る。一方、結露センサ(70)が結露の発生を検知している場合、膨張弁制御部(62)はステップST13へ移る。ステップST13において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST13において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST11に戻って同じ動作を繰り返す。このため、結露センサ(70)が結露の発生を検知している間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、結露センサ(70)が結露の発生を検知しない状態になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
−実施形態1の効果−
本実施形態において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させる際に起動時開度制御動作を行い、膨張弁(43)の開度をその時点における圧縮機(30)の回転速度に応じた開度に設定する。このため、圧縮機(30)の回転速度が上昇したにも拘わらず膨張弁(43)の開度が小さいままで膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が低くなり過ぎることを回避でき、その結果、パワー素子(56)やその周辺部での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
また、本実施形態のコントローラ(60)では、圧縮機制御部(61)による起動時回転速度制御動作と、膨張弁制御部(62)による起動時開度制御動作とが同時に並行して行われる。つまり、コントローラ(60)が圧縮機(30)を起動させて暖房動作を開始させる際には、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)の回転速度を段階的に徐々に上昇させると共に、圧縮機(30)の回転速度が引き上げられる毎に膨張機制御部が膨張弁(43)の開度を増やす。このため、圧縮機(30)の回転速度が上昇したことに起因する膨張弁(43)の前後における圧力差の拡大が抑えられ、冷却用部材(50)へ供給される冷媒の過度の温度低下が抑えられる。従って、本実施形態によれば、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が低くなり過ぎるのを回避でき、冷却用部材(50)によって冷却されるパワー素子(56)やその周辺部における結露の発生を確実に防止できる。
ここで、それまで停止していた圧縮機(30)が起動した場合において、膨張弁(43)の開度が小さすぎると、膨張弁(43)の両側における圧力差が急激に拡大し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が急激に低下するおそれがある。これに対し、本実施形態では、起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)が、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させるのと同時に、膨張弁(43)の開度を起動時開度にまで一気に増やす。このため、圧縮機(30)が起動して膨張弁(43)を冷媒が通過し始める時点では膨張弁(43)の開度が既に起動時開度に設定されており、膨張弁(43)の両側における圧力差の拡大が緩和されるため、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度の低下量が削減される。
また、本実施形態において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、冷却用部材(50)の表面における結露の発生を結露センサ(70)が検知すると、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。そして、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。従って、本実施形態によれば、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
−実施形態1の変形例−
本実施形態において、結露センサ(70)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、結露センサ(70)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、結露センサ(70)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。
また、本実施形態のコントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)が結露の発生を検知している間は膨張弁(43)の開度を連続的に徐々に増やしてゆく動作を、結露防止用制御動作として行うように構成されていてもよい。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図5に示すように、本実施形態の空調機(10)では、実施形態1の湿度センサ(74)に代えて温度センサ(73)が設けられている。温度センサ(73)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられている。この温度センサ(73)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。温度センサ(73)の計測値は、コントローラ(60)に入力される。
また、本実施形態の空調機(10)において、室外気温センサ(71)は、計測手段を構成している。つまり、本実施形態のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度が、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。
本実施形態のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記実施形態1と異なっている。本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記実施形態1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記実施形態1における動作と同じである。
本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記実施形態1と異なる点を、図6のフロー図を参照しながら説明する。
図6のステップST21において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。また、次のステップST22において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Td(即ち、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度の実測値)を読み込む。次のステップST23において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを比較する。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上(Td≧Ta)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST21へ戻る。一方、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている(Td<Ta)場合、膨張弁制御部(62)はステップST23へ移る。ステップST23において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST23において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST21に戻って同じ動作を繰り返す。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。本実施形態の空調機(10)において、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)は、屋外に設置された室外ユニット(11)に収容されている。つまり、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、冷却用部材(50)の表面温度が室外空気の露点温度に近付いており、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
−実施形態2の変形例−
本実施形態において、温度センサ(73)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、温度センサ(73)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、温度センサ(73)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態の空調機(10)は、上記実施形態2において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態2と異なる点を説明する。
本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記実施形態2とは異なる動作を結露防止用制御動作として行うように構成されている。ここでは、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、図7のフロー図を参照しながら、上記実施形態2と異なる点を説明する。
図7のステップST31において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。次のステップST32において、膨張弁制御部(62)は、温度が読み込んだ室外気温センサ(71)の計測値Taであって、相対湿度が予め記憶している基準湿度H1である湿り空気の露点温度Twを算出する。この膨張弁制御部(62)では、基準湿度H1が60%に設定されている。ただし、この基準湿度H1の値は、単なる一例である。
次のステップST33において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Td(即ち、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度の実測値)を読み込む。続くステップST34において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdと露点温度の算出値Twを比較する。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Tw以上(Td≧Tw)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST31へ戻る。一方、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回っている(Td<Tw)場合、膨張弁制御部(62)はステップST33へ移る。ステップST33において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST33において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST31に戻って同じ動作を繰り返す。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Tw以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、室外空気の相対湿度は、季節によって変動するものの、その概略値を予め想定することは可能である。このため、膨張弁制御部(62)における基準湿度H1を室外空気の相対湿度として想定される値に設定しておけば、室外空気の相対湿度を実測しなくても、室外空気の露点温度の概略値を算出することは可能である。一方、冷却用部材(50)の表面で結露が生じるのは、冷却用部材(50)の表面温度がその周囲の空気の露点温度よりも低くなっている場合である。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twよりも低い状態では、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態2と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
本実施形態の空調機(10)では、結露センサ(70)が省略される一方、室外気温センサ(71)と室内気温センサ(72)が計測手段を構成している。つまり、本実施形態のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度と、室内気温センサ(72)が計測した室内空気の温度とが、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。
本実施形態のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記実施形態1と異なっている。本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記実施形態1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記実施形態1における動作と同じである。
本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記実施形態1と異なる点を、図8のフロー図を参照しながら説明する。
図8のステップST41において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。また、次のステップST22において、膨張弁制御部(62)は、室内気温センサ(72)の計測値Ti(即ち、室内空気の温度の実測値)を読み込む。続くステップST43において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Taと室内気温センサ(72)の計測値Tiを比較する。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上(Ti≧Ta)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST41へ戻る。一方、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている(Ti<Ta)場合、膨張弁制御部(62)はステップST44へ移る。ステップST44において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST44において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST41に戻って同じ動作を繰り返す。このため、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、室内気温センサ(72)の計測値Tiと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)において室内空気と熱交換した冷媒が、膨張弁(43)を通過後に冷却用部材(50)へ流入する。このため、室内の気温が室外の気温に比べて低い場合は、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度が室外の気温に比べて低くなり、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の温度が室外空気の温度に比べて低くなる可能性が高くなる。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部の温度が室外空気の露点温度に近付いている可能性が高く、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5について説明する。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図9に示すように、本実施形態の空調機(10)では、実施形態1の結露センサ(70)に代えて湿度センサ(74)が設けられている。湿度センサ(74)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)及びパワー素子(56)の近傍に設置されている。この湿度センサ(74)は、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の周辺に存在する空気の相対湿度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。湿度センサ(74)の計測値は、コントローラ(60)に入力される。
本実施形態のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記実施形態1と異なっている。本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記実施形態1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記実施形態1における動作と同じである。
本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記実施形態1と異なる点を、図10のフロー図を参照しながら説明する。
図10のステップST51において、膨張弁制御部(62)は、湿度センサ(74)の計測値Hp(即ち、パワー素子(56)及び冷却用部材(50)の周囲に存在する空気の相対湿度の実測値)を読み込む。次のステップST52において、膨張弁制御部(62)は、予め記憶している上限湿度H2と湿度センサ(74)の計測値Hpを比較する。この膨張弁制御部(62)では、基準湿度H2が60%に設定されている。ただし、この基準湿度H2の値は、単なる一例である。
ステップST52において、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2以下(Hp≦H2)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST51へ戻る。一方、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2を上回っている(Hp>H2)場合、膨張弁制御部(62)はステップST53へ移る。ステップST53において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST53において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST51に戻って同じ動作を繰り返す。このため、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2を上回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2以下になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)の周辺における空気の相対湿度がある程度高い値になっていると、その空気の露点温度も比較的高い温度となり、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面温度が周囲の空気の露点温度を下回る可能性が高くなる。そして、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面温度が周囲の空気の露点温度を下回ると、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じてしまう。このため、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2よりも高い状態では、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2よりも高くなっている場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、圧縮機(30)へ電力を供給する電源のパワー素子(56)を冷媒によって冷却する冷凍装置について有用である。
10 空調機(冷凍装置)
20 冷媒回路
30 圧縮機
33 電動機
42 室外熱交換器(蒸発器)
43 膨張弁
50 冷却用部材
55 インバータ装置(電源)
56 パワー素子
60 コントローラ(制御手段)
70 結露センサ
71 室外気温センサ(計測手段)
72 室内気温センサ(計測手段)
73 温度センサ(計測手段)
74 湿度センサ(計測手段)
本発明は、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置に関するものである。
従来より、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置が知られている。例えば、特許文献1には、冷凍装置の一種である空気調和装置であって、パワー素子を冷却するための冷却部を、冷媒回路における膨張弁と室外熱交換器の間に配置したものが開示されている。この特許文献1の空気調和装置は、室内熱交換器が凝縮器となって室外熱交換器が蒸発器となる暖房運転を行う。そして、暖房運転中には、膨張弁で減圧されて室外熱交換器へ向かう冷媒が、冷却部においてパワー素子を冷却する。
冷凍サイクルを行う冷媒回路において、膨張弁で減圧されて蒸発器へ向かう冷媒は、その温度が比較的低くなっている。このため、膨張弁から蒸発器へ向かう比較的低温の冷媒によってパワー素子を冷却すれば、パワー素子の温度を確実に低く抑えることができる。
ところが、膨張弁から蒸発器へ向かうの温度が低くなり過ぎると、パワー素子自体やその周辺部の温度がパワー素子の周囲に存在する空気の露点温度よりも低くなり、パワー素子の表面やその周辺部において結露が生じるおそれがある。このような場所で結露が生じると、パワー素子の電極や、パワー素子が設置される基板の配線部分等の腐食を招いたり、パワー素子自体の絶縁性の低下を招くおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機へ電力を供給する電源のパワー素子を冷媒によって冷却する冷凍装置において、パワー素子やその周辺部における結露を未然に防ぎ、冷凍装置の信頼性を向上させることにある。
第1の発明は、圧縮機(30)と膨張弁(43)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)と、パワー素子(56)を有して上記圧縮機(30)の電動機(33)へ電力を供給する電源(55)と、上記冷媒回路(20)における上記膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に配置されて、該冷媒回路(20)の冷媒によって上記電源(55)のパワー素子(56)を冷却する冷却用部材(50)とを備える冷凍装置を対象とする。そして、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量を計測する計測手段(71〜74)と、上記計測手段(71〜74)の計測値に基づいて上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断すると上記膨張弁(43)の開度を強制的に増やすように構成された制御手段(60)とを備えるものである。
第1の発明では、冷媒回路(20)における膨張弁(43)と蒸発器(42)の間に冷却用部材(50)が設けられる。また、この発明では、圧縮機(30)の電動機(33)に対して、電源(55)が電力を供給する。冷却用部材(50)では、膨張弁(43)で減圧されて蒸発器(42)へ向かう冷媒が、電源(55)に設けられたパワー素子(56)から吸熱する。計測手段(71〜74)は、所定の物理量を計測し、得られた計測値を制御手段(60)へ入力する。制御手段(60)は、入力された計測手段(71〜74)の計測値を用いて、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを判断し、その可能性が高いと判断すると膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。
また、第1の発明は、上記の構成に加えて、上記冷媒回路(20)には、室外空気を冷媒と熱交換させる室外熱交換器(42)と、室内空気を冷媒と熱交換させる室内熱交換器(46)とが接続され、上記冷媒回路(20)は、上記室内熱交換器(46)において放熱した冷媒が上記膨張弁(43)によって減圧された後に上記室外熱交換器(42)において蒸発する冷凍サイクルを行う暖房動作を少なくとも行うように構成され、上記冷媒回路(20)では、上記暖房動作中に蒸発器として機能する上記室外熱交換器(42)と上記膨張弁(43)の間に上記冷却用部材(50)が配置される一方、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と、室内空気の温度を計測する室内気温センサ(72)とを上記計測手段として備え、上記制御手段(60)は、上記冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において上記室内気温センサ(72)の計測値が上記室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、上記パワー素子(56)又は上記冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断するように構成されるものである。
第1の発明では、冷媒回路(20)において暖房動作が行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)で放熱した後に膨張弁(43)によって減圧された冷媒が、冷却用部材(50)においてパワー素子(56)から吸熱し、その後に蒸発器として機能する室外熱交換器(42)へ流入する。この発明の冷凍装置(10)には、室外空気の温度を計測する室外気温センサ(71)と、室内空気の温度を計測する室内気温センサ(72)とが計測手段として設けられる。そして、この発明の制御手段(60)は、冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において室内気温センサ(72)の計測値(即ち、室内空気の温度の実測値)が室外気温センサ(71)の計測値(即ち、室外空気の温度の実測値)よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
本発明において、制御手段(60)は、計測手段(71〜74)の計測値に基づいてパワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断すると、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。従って、本発明によれば、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の過度の温度低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
また、本発明において、制御手段(60)は、冷媒回路(20)が暖房動作を行っている状態において室内気温センサ(72)の計測値が上記室外気温センサ(71)の計測値よりも低くなっている場合に、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いと判断する。
ここで、暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)において室内空気と熱交換した冷媒が、膨張弁(43)を通過後に冷却用部材(50)へ流入する。このため、室内の気温が室外の気温に比べて低い場合は、冷却用部材(50)へ流入する冷媒の温度が室外の気温に比べて低くなり、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の温度が室外空気の温度に比べて低くなる可能性が高くなる。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。そして、室内気温センサ(72)の計測値が室外気温センサ(71)の計測値よりも低い状態では、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺の温度が室外空気の露点温度に近付いている可能性が高く、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
従って、本発明の制御手段(60)のように、暖房動作中における室内気温センサ(72)の計測値と室外気温センサ(71)の計測値とを比較すれば、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを的確に判断することができる。
参考技術1の空調機の概略構成を示す冷媒回路図である。
参考技術1のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
参考技術1の圧縮機の起動時における、(A)冷却用部材の温度、(B)膨張弁の開度、及び(C)圧縮機の回転速度の時間変化を示すグラフである。
参考技術1のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
参考技術2のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
参考技術2のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
参考技術3のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
実施形態4のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
参考技術4のインバータ装置及び冷却用部材の要部を示す拡大図である。
参考技術4のコントローラの膨張弁制御部が行う結露防止用制御動作を示すフロー図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《参考技術1》
参考技術1について説明する。本参考技術は、冷凍装置によって構成された空調機(10)である。
図1に示すように、本参考技術の空調機(10)は、屋外に設置される室外ユニット(11)と、屋内に設置される室内ユニット(12)を一つずつ備えている。室外ユニット(11)には、室外回路(21)が収容されている。室内ユニット(12)には、室内回路(22)が収容されている。この空調機(10)では、室外回路(21)と室内回路(22)を一対の連絡配管(23,24)によって接続することによって冷媒回路(20)が形成されている。
室外回路(21)には、圧縮機(30)と四方切換弁(41)と冷却用部材(50)と膨張弁(43)とが設けられている。なお、冷却用部材(50)については後述する。圧縮機(30)は、その吐出側が四方切換弁(41)の第1のポートに接続され、その吸入側がアキュームレータ(34)を介して四方切換弁(41)の第2のポートに接続されている。四方切換弁(41)は、その第3のポートが室外熱交換器(42)の一端に接続され、その第4のポートがガス側閉鎖弁(44)に接続されている。室外熱交換器(42)の他端は、冷却用部材(50)を介して膨張弁(43)の一端に接続されている。膨張弁(43)の他端は、液側閉鎖弁(45)に接続されている。
室内回路(22)には、室内熱交換器(46)が設けられている。室内回路(22)は、そのガス側の端部がガス側連絡配管(23)を介してガス側閉鎖弁(44)に接続され、その液側の端部が液側連絡配管(24)を介して液側閉鎖弁(45)に接続されている。
圧縮機(30)は、いわゆる全密閉型圧縮機である。つまり、圧縮機(30)では、冷媒を圧縮する圧縮機構(32)と、圧縮機構(32)を回転駆動するための電動機(33)とが、一つのケーシング(31)内に収容されている。四方切換弁(41)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。膨張弁(43)は、弁体がパルスモータによって駆動される開度可変の電動膨張弁である。
室外熱交換器(42)と室内熱交換器(46)は、何れも冷媒を空気と熱交換させるためのフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室外熱交換器(42)は、室外空気と冷媒を熱交換させる。室外ユニット(11)には、室外熱交換器(42)へ室外空気を送るための室外ファン(13)が設けられている。室内熱交換器(46)は、室内空気と冷媒を熱交換させる。室内ユニット(12)には、室内熱交換器(46)へ室内空気を送るための室内ファン(14)が設けられている。
室外ユニット(11)には、電源であるインバータ装置(55)と、制御手段であるコントローラ(60)とが設けられている。インバータ装置(55)は、商用電源から供給された交流の周波数をコントローラ(60)からの指令値に変換し、周波数を変換した交流を圧縮機(30)の電動機(33)へ供給するように構成されている。このインバータ装置(55)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子(56)が設けられている。図2に示すように、インバータ装置(55)では、パワー素子(56)が配線基板(57)に対して下側から取り付けられている。
図2に示すように、冷却用部材(50)は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属からなる本体部(51)と、本体部(51)に埋設された冷媒管(52)とを備えている。本体部(51)は、やや肉厚の平板状に形成され、パワー素子(56)に対して下側から取り付けられている。つまり、本体部(51)の上面がパワー素子(56)の下面に密着している。室外回路(21)では、室外熱交換器(42)と膨張弁(43)の間に冷却用部材(50)の冷媒管(52)が接続されている。冷媒管(52)を流れる冷媒は、本体部(51)を介してパワー素子(56)から吸熱する。
コントローラ(60)には、圧縮機制御部(61)と膨張弁制御部(62)とが設けられている。
圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度(即ち、電動機(33)によって駆動される圧縮機構(32)の回転速度)を調節するように構成されている。この圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度が制御目標値となるように、インバータ装置(55)の出力周波数を調節する。インバータの出力周波数が変化すると、圧縮機(30)の電動機(33)へ入力される交流の周波数が変化し、圧縮機構(32)を駆動する電動機(33)の回転速度が変化する。膨張弁制御部(62)は、膨張弁(43)のパルスモータを駆動して弁体を移動させることによって、膨張弁(43)の開度を調節する。
本参考技術の空調機(10)には、室外気温センサ(71)と、室内気温センサ(72)と、結露センサ(70)とが設けられている。室外気温センサ(71)は、室外ユニット(11)に設けられ、室外熱交換器(42)を通過する前の室外空気の温度を計測する(図1参照)。室内気温センサ(72)は、室内ユニット(12)に設けられ、室内熱交換器(46)を通過する前の室内空気の温度を計測する。結露センサ(70)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられており、本体部(51)の表面における結露の有無を検知する(図2を参照)。これら各センサ(70,71,72)の出力は、コントローラ(60)へ入力されている。
−運転動作−
本参考技術の空調機(10)は、冷房動作と暖房動作と除霜動作とを選択的に行う。
冷房動作について説明する。冷房動作中の空調機(10)では、四方切換弁(41)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、室外ファン(13)と室内ファン(14)が運転される。そして、冷房動作中の冷媒回路(20)では、室外熱交換器(42)が凝縮器となって室内熱交換器(46)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
冷房動作中の冷媒回路(20)において、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(41)を通って室外熱交換器(42)へ流入し、室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(42)において凝縮した冷媒は、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入し、冷媒管(52)を通過する間にパワー素子(56)から吸熱する。冷却用部材(50)から流出した冷媒は、膨張弁(43)を通過する際に減圧された後に室内熱交換器(46)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(46)において冷却された空気を室内へ供給する。室内熱交換器(46)において蒸発した冷媒は、四方切換弁(41)とアキュームレータ(34)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
暖房動作について説明する。暖房動作中の空調機(10)では、四方切換弁(41)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、室外ファン(13)と室内ファン(14)が運転される。そして、暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)が凝縮器となって室外熱交換器(42)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。暖房動作中の冷媒回路(20)において、冷却用部材(50)は、膨張弁(43)と蒸発器である室外熱交換器(42)との間に位置している。
、暖房動作中の冷媒回路(20)において、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、四方切換弁(41)を通って室内熱交換器(46)へ流入し、室内空気へ放熱して凝縮する。室内ユニット(12)は、室内熱交換器(46)において加熱された空気を室内へ供給する。室内熱交換器(46)において凝縮した冷媒は、膨張弁(43)を通過する際に減圧された後に冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入し、冷媒管(52)を通過する間にパワー素子(56)から吸熱する。冷却用部材(50)から流出した冷媒は、室外熱交換器(42)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(42)において蒸発した冷媒は、四方切換弁(41)とアキュームレータ(34)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
除霜動作について説明する。除霜動作は、暖房動作中に室外熱交換器(42)に付着した霜を融かすために、例えば暖房動作の継続時間が所定値に達する毎に行われる。除霜動作中の空調機(10)では、冷房動作中と同様に、四方切換弁(41)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定される。ただし、除霜動作中の空調機(10)において、室外ファン(13)と室内ファン(14)は停止する。
除霜動作中の冷媒回路(20)では、圧縮機(30)から吐出された冷媒が室外熱交換器(42)へ流入し、室外熱交換器(42)に付着した霜が冷媒によって加熱されて融解する。室外熱交換器(42)において放熱した冷媒は、冷却用部材(50)と膨張弁(43)と室内熱交換器(46)を順に通過し、その後に圧縮機(30)へ吸入されて圧縮される。
−圧縮機制御部の制御動作−
コントローラ(60)の圧縮機制御部(61)が行う制御動作について説明する。圧縮機制御部(61)は、起動時回転速度制御動作と通常回転速度制御動作とを行う。この圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)が起動した時点から所定の終了条件が成立するまでの間は起動時回転速度制御動作を行い、終了条件が成立すると起動時回転速度制御動作を終了して通常時回転速度制御動作を開始する。圧縮機制御部(61)は、空調機(10)が冷房動作と暖房動作の何れを行う場合でも、起動時回転速度制御動作と通常回転速度制御動作とを行う。
起動時回転速度制御動作について、図3(C)を参照しながら説明する。圧縮機制御部(61)は、同図の時刻t0において圧縮機(30)を起動すると、時刻t0から所定時間が経過した時刻t1までの間に起動時回転速度制御動作を行う。つまり、本参考技術の圧縮機制御部(61)では、圧縮機(30)が起動された時点からの経過時間が所定値に達することが終了条件となっている。起動時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)は、時刻t1において圧縮機(30)の回転速度が所定の目標回転速度となるように、圧縮機(30)の回転速度を段階的に徐々に上昇させてゆく。つまり、圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の圧縮機構(32)を駆動する電動機(33)の回転速度が段階的に上昇するように、インバータ装置(55)の出力周波数を複数段階に分けて徐々に引き上げてゆく。
通常時回転速度制御動作について説明する。通常時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)は、圧縮機(30)の回転速度が室内の空調負荷に対応した値となるように、インバータ装置(55)の出力周波数を調節する。具体的に、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値と設定温度との差に基づいて、圧縮機(30)の回転速度を調節する。冷房動作中において、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を上回っていれば圧縮機(30)の回転速度を上昇させ、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を下回っていれば圧縮機(30)の回転速度を低下させる。また、暖房動作中において、圧縮機制御部(61)は、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を下回っていれば圧縮機(30)の回転速度を上昇させ、室内気温センサ(72)の計測値が設定温度を上回っていれば圧縮機(30)の回転速度を低下させる。
−膨張弁制御部の制御動作−
コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)が行う制御動作について説明する。膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作と通常時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。
膨張弁制御部(62)は、空調機(10)が冷房動作と暖房動作の何れを行っている状態においても、通常時開度制御動作を行う。一方、膨張弁制御部(62)は、空調機(10)が暖房動作を行う場合にだけ、起動時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。更に、空調機(10)の暖房動作中に圧縮機制御部(61)が起動時回転速度制御動作を行っている状態において、膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作だけを行う。また、空調機(10)の暖房動作中に圧縮機制御部(61)が通常時回転速度制御動作を行っている状態において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作と結露防止用制御動作とを行う。
ここで、空調機(10)の暖房動作を行う場合にだけ膨張弁制御部(62)が起動時開度制御動作と結露防止用制御動作を行う理由を説明する。
上述したように、暖房運転中の冷媒回路(20)では、膨張弁(43)を通過する際に減圧された冷媒が冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する。このため、室外空気の湿度が高かったり、冷却用部材(50)へ流入する冷媒の温度が低過ぎる場合には、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面で結露が生じるおそれがある。そこで、膨張弁制御部(62)は、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面における結露を防ぐために、起動時開度制御動作や結露防止用制御動作を行う。
一方、上述したように、冷房運転中の冷媒回路(20)では、凝縮器である室外熱交換器(42)から膨張弁(43)へ向かう冷媒が冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する。冷房運転中に室外熱交換器(42)から流出する冷媒の温度は、室外空気の温度よりも必ず高くなるため、冷却用部材(50)の温度が室外空気の露点温度よりも低くなることは有り得ず、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の表面で結露は生じない。このため、空調機(10)の冷房運転中において、膨張弁制御部(62)は、起動時開度制御動作や結露防止用制御動作を行わない。
起動時開度制御動作について、図3(B)を参照しながら説明する。同図の時刻t0において圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させると、それと同時に膨張弁制御部(62)が膨張弁(43)の開度を全閉から起動時開度にまで一気に増やす。その後、膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)の起動時回転速度制御動作が終了する時刻t1までの間、起動時開度制御動作を行う。起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、起動時回転速度制御動作中の圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)の回転速度を引き上げる毎に、膨張弁(43)の開度を、引き上げ後の圧縮機(30)の回転速度に対応した値にまで増やす。つまり、起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)による圧縮機(30)の回転速度の引き上げに連動して膨張弁(43)の開度を段階的に増やしてゆく。
膨張弁制御部(62)は、暖房動作の開始時に起動時開度制御動作を行う。ここで、暖房動作を開始するために圧縮機(30)を起動させる動作は、空調機(10)の電源を投入後に暖房動作を開始する場合だけでなく、空調機(10)の運転状態を冷房動作から暖房動作へ切り換える場合や、空調機(10)の運転状態を除霜動作から暖房動作へ切り換える場合も行われる。また、暖房動作中に圧縮機(30)の回転速度を下限値に設定しても空調機(10)の暖房能力が室内の暖房負荷に対して大きすぎるときには、圧縮機(30)を一旦停止(サーモオフ)させ、その後に室内の気温が設定温度を下回ると圧縮機(30)を再び起動(サーモオン)させることになる。そして、このような暖房動作を開始するために圧縮機(30)を起動させる場合には、その何れにおいても膨張弁制御部(62)が起動時開度制御動作を行う。
通常時開度制御動作について説明する。通常時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、蒸発器として機能する熱交換器の出口における冷媒の過熱度を監視する。つまり、膨張弁制御部(62)は、冷房動作中であれば室内熱交換器(46)の出口における冷媒の過熱度を監視し、暖房動作中であれば室外熱交換器(42)の出口における冷媒の過熱度を監視する。そして、膨張弁制御部(62)は、監視している冷媒の過熱度が所定の目標過熱度(例えば5℃)に保たれるように、膨張弁(43)の開度を調節する。具体的に、通常時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)は、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度を上回っていれば膨張弁(43)の開度を増やし、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度を下回っていれば膨張弁(43)の開度を減らす。
結露防止用制御動作について説明する。この結露防止用制御動作は、通常時開度制御動作と並行して行われる。膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を行うと同時に、図4のフロー図に示す結露防止用制御動作を所定の時間毎(例えば30秒毎)に実行する。
図4のステップST11において、膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)の出力を読み込む。次のステップST12において、膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)が結露の発生を検知しているか否かを判定する。そして、結露センサ(70)が結露の発生を検知していない場合、膨張弁制御部(62)はステップST11へ戻る。一方、結露センサ(70)が結露の発生を検知している場合、膨張弁制御部(62)はステップST13へ移る。ステップST13において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST13において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST11に戻って同じ動作を繰り返す。このため、結露センサ(70)が結露の発生を検知している間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、結露センサ(70)が結露の発生を検知しない状態になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
−参考技術1の効果−
本参考技術において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させる際に起動時開度制御動作を行い、膨張弁(43)の開度をその時点における圧縮機(30)の回転速度に応じた開度に設定する。このため、圧縮機(30)の回転速度が上昇したにも拘わらず膨張弁(43)の開度が小さいままで膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が低くなり過ぎることを回避でき、その結果、パワー素子(56)やその周辺部での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
また、本参考技術のコントローラ(60)では、圧縮機制御部(61)による起動時回転速度制御動作と、膨張弁制御部(62)による起動時開度制御動作とが同時に並行して行われる。つまり、コントローラ(60)が圧縮機(30)を起動させて暖房動作を開始させる際には、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)の回転速度を段階的に徐々に上昇させると共に、圧縮機(30)の回転速度が引き上げられる毎に膨張機制御部が膨張弁(43)の開度を増やす。このため、圧縮機(30)の回転速度が上昇したことに起因する膨張弁(43)の前後における圧力差の拡大が抑えられ、冷却用部材(50)へ供給される冷媒の過度の温度低下が抑えられる。従って、本参考技術によれば、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が低くなり過ぎるのを回避でき、冷却用部材(50)によって冷却されるパワー素子(56)やその周辺部における結露の発生を確実に防止できる。
ここで、それまで停止していた圧縮機(30)が起動した場合において、膨張弁(43)の開度が小さすぎると、膨張弁(43)の両側における圧力差が急激に拡大し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が急激に低下するおそれがある。これに対し、本参考技術では、起動時開度制御動作中の膨張弁制御部(62)が、圧縮機制御部(61)が圧縮機(30)を起動させるのと同時に、膨張弁(43)の開度を起動時開度にまで一気に増やす。このため、圧縮機(30)が起動して膨張弁(43)を冷媒が通過し始める時点では膨張弁(43)の開度が既に起動時開度に設定されており、膨張弁(43)の両側における圧力差の拡大が緩和されるため、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度の低下量が削減される。
また、本参考技術において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、冷却用部材(50)の表面における結露の発生を結露センサ(70)が検知すると、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。そして、暖房動作中の冷媒回路(20)において膨張弁(43)の開度が増えると、膨張弁(43)の両側における圧力差が縮小し、膨張弁(43)から冷却用部材(50)へ送られる冷媒の温度が上昇する。従って、本参考技術によれば、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
−参考技術1の変形例−
本参考技術において、結露センサ(70)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、結露センサ(70)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、結露センサ(70)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。
また、本参考技術のコントローラ(60)の膨張弁制御部(62)は、結露センサ(70)が結露の発生を検知している間は膨張弁(43)の開度を連続的に徐々に増やしてゆく動作を、結露防止用制御動作として行うように構成されていてもよい。
《参考技術2》
参考技術2について説明する。ここでは、本参考技術の空調機(10)について、上記参考技術1と異なる点を説明する。
図5に示すように、本参考技術の空調機(10)では、参考技術1の湿度センサ(74)に代えて温度センサ(73)が設けられている。温度センサ(73)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面(より詳しくは、パワー素子(56)と接している面)に取り付けられている。この温度センサ(73)は、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。温度センサ(73)の計測値は、コントローラ(60)に入力される。
また、本参考技術の空調機(10)において、室外気温センサ(71)は、計測手段を構成している。つまり、本参考技術のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度が、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。
本参考技術のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記参考技術1と異なっている。本参考技術の膨張弁制御部(62)は、上記参考技術1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本参考技術の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記参考技術1における動作と同じである。
本参考技術の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記参考技術1と異なる点を、図6のフロー図を参照しながら説明する。
図6のステップST21において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。また、次のステップST22において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Td(即ち、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度の実測値)を読み込む。次のステップST23において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを比較する。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上(Td≧Ta)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST21へ戻る。一方、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている(Td<Ta)場合、膨張弁制御部(62)はステップST23へ移る。ステップST23において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST23において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST21に戻って同じ動作を繰り返す。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、温度センサ(73)の計測値Tdと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。本参考技術の空調機(10)において、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)は、屋外に設置された室外ユニット(11)に収容されている。つまり、インバータ装置(55)と冷却用部材(50)の周囲の雰囲気の状態は、室外空気の状態と概ね等しくなっている。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、冷却用部材(50)の表面温度が室外空気の露点温度に近付いており、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本参考技術の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本参考技術によれば、上記参考技術1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
−参考技術2の変形例−
本参考技術において、温度センサ(73)は、冷却用部材(50)自体ではなくて冷却用部材(50)の周辺部に設置されていてもよい。また、温度センサ(73)は、パワー素子(56)自体や、パワー素子(56)の周辺部に設置されていてもよい。更に、温度センサ(73)は、インバータ装置(55)の配線基板(57)のうちパワー素子(56)の近傍に位置する部分に設置されていてもよい。
《参考技術3》
参考技術3について説明する。本参考技術の空調機(10)は、上記参考技術2において、コントローラ(60)の膨張弁制御部(62)の構成を変更したものである。ここでは、本参考技術の空調機(10)について、上記参考技術2と異なる点を説明する。
本参考技術の膨張弁制御部(62)は、上記参考技術2とは異なる動作を結露防止用制御動作として行うように構成されている。ここでは、本参考技術の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、図7のフロー図を参照しながら、上記参考技術2と異なる点を説明する。
図7のステップST31において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。次のステップST32において、膨張弁制御部(62)は、温度が読み込んだ室外気温センサ(71)の計測値Taであって、相対湿度が予め記憶している基準湿度H1である湿り空気の露点温度Twを算出する。この膨張弁制御部(62)では、基準湿度H1が60%に設定されている。ただし、この基準湿度H1の値は、単なる一例である。
次のステップST33において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Td(即ち、冷却用部材(50)の本体部(51)の表面温度の実測値)を読み込む。続くステップST34において、膨張弁制御部(62)は、温度センサ(73)の計測値Tdと露点温度の算出値Twを比較する。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Tw以上(Td≧Tw)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST31へ戻る。一方、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回っている(Td<Tw)場合、膨張弁制御部(62)はステップST33へ移る。ステップST33において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST33において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST31に戻って同じ動作を繰り返す。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Tw以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、室外空気の相対湿度は、季節によって変動するものの、その概略値を予め想定することは可能である。このため、膨張弁制御部(62)における基準湿度H1を室外空気の相対湿度として想定される値に設定しておけば、室外空気の相対湿度を実測しなくても、室外空気の露点温度の概略値を算出することは可能である。一方、冷却用部材(50)の表面で結露が生じるのは、冷却用部材(50)の表面温度がその周囲の空気の露点温度よりも低くなっている場合である。このため、温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twよりも低い状態では、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本参考技術の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に温度センサ(73)の計測値Tdが露点温度の算出値Twを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本参考技術によれば、上記参考技術2と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
《発明の実施形態》
本発明の実施形態について説明する。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記参考技術1と異なる点を説明する。
本実施形態の空調機(10)では、結露センサ(70)が省略される一方、室外気温センサ(71)と室内気温センサ(72)が計測手段を構成している。つまり、本実施形態のコントローラ(60)では、室外気温センサ(71)が計測した室外空気の温度と、室内気温センサ(72)が計測した室内空気の温度とが、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として用いられる。
本実施形態のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記参考技術1と異なっている。本実施形態の膨張弁制御部(62)は、上記参考技術1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記参考技術1における動作と同じである。
本実施形態の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記参考技術1と異なる点を、図8のフロー図を参照しながら説明する。
図8のステップST41において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Ta(即ち、室外空気の温度の実測値)を読み込む。また、次のステップST22において、膨張弁制御部(62)は、室内気温センサ(72)の計測値Ti(即ち、室内空気の温度の実測値)を読み込む。続くステップST43において、膨張弁制御部(62)は、室外気温センサ(71)の計測値Taと室内気温センサ(72)の計測値Tiを比較する。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上(Ti≧Ta)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST41へ戻る。一方、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている(Ti<Ta)場合、膨張弁制御部(62)はステップST44へ移る。ステップST44において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST44において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST41に戻って同じ動作を繰り返す。このため、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Ta以上になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高いか否かを、室内気温センサ(72)の計測値Tiと室外気温センサ(71)の計測値Taを用いて判断できる理由について説明する。暖房動作中の冷媒回路(20)では、室内熱交換器(46)において室内空気と熱交換した冷媒が、膨張弁(43)を通過後に冷却用部材(50)へ流入する。このため、室内の気温が室外の気温に比べて低い場合は、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度が室外の気温に比べて低くなり、冷却用部材(50)やパワー素子(56)の温度が室外空気の温度に比べて低くなる可能性が高くなる。一方、室外空気の相対湿度が100%になることは現実的には有り得ないため、室外空気の露点温度は室外気温(即ち、室外空気の乾球温度)よりも低くなる。そして、室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taよりも低い状態では、パワー素子(56)、冷却用部材(50)、又はパワー素子(56)の周辺部の温度が室外空気の露点温度に近付いている可能性が高く、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本実施形態の膨張弁制御部(62)は、暖房動作中に室内気温センサ(72)の計測値Tiが室外気温センサ(71)の計測値Taを下回る場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本実施形態によれば、上記参考技術1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
《参考技術4》
参考技術4について説明する。ここでは、本参考技術の空調機(10)について、上記参考技術1と異なる点を説明する。
図9に示すように、本参考技術の空調機(10)では、参考技術1の結露センサ(70)に代えて湿度センサ(74)が設けられている。湿度センサ(74)は、計測手段として空調機(10)に設けられており、冷却用部材(50)及びパワー素子(56)の近傍に設置されている。この湿度センサ(74)は、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の周辺に存在する空気の相対湿度を、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面において結露が生じる可能性の指標となる物理量として計測する。湿度センサ(74)の計測値は、コントローラ(60)に入力される。
本参考技術のコントローラ(60)では、膨張弁制御部(62)の構成が上記参考技術1と異なっている。本参考技術の膨張弁制御部(62)は、上記参考技術1とは異なる動作を結露防止用制御動作として実行するように構成されている。なお、本参考技術の膨張弁制御部(62)が行う起動時開度制御動作と通常時開度制御動作は、上記参考技術1における動作と同じである。
本参考技術の膨張弁制御部(62)が行う結露防止用制御動作について、上記参考技術1と異なる点を、図10のフロー図を参照しながら説明する。
図10のステップST51において、膨張弁制御部(62)は、湿度センサ(74)の計測値Hp(即ち、パワー素子(56)及び冷却用部材(50)の周囲に存在する空気の相対湿度の実測値)を読み込む。次のステップST52において、膨張弁制御部(62)は、予め記憶している上限湿度H2と湿度センサ(74)の計測値Hpを比較する。この膨張弁制御部(62)では、基準湿度H2が60%に設定されている。ただし、この基準湿度H2の値は、単なる一例である。
ステップST52において、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2以下(Hp≦H2)である場合、膨張弁制御部(62)はステップST51へ戻る。一方、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2を上回っている(Hp>H2)場合、膨張弁制御部(62)はステップST53へ移る。ステップST53において、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を停止し、膨張弁(43)の開度を所定の値だけ強制的に増やす。
ステップST53において膨張弁(43)の開度を強制的に増やした後において、膨張弁制御部(62)は、再びステップST51に戻って同じ動作を繰り返す。このため、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2を上回っている間は、膨張弁制御部(62)が結露防止用制御動作を行う毎に、膨張弁(43)の開度が増加してゆく。そして、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2以下になると、膨張弁制御部(62)は、通常時開度制御動作を再開し、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となるように膨張弁(43)の開度を調節する。
ここで、パワー素子(56)の周辺における空気の相対湿度がある程度高い値になっていると、その空気の露点温度も比較的高い温度となり、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面温度が周囲の空気の露点温度を下回る可能性が高くなる。そして、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面温度が周囲の空気の露点温度を下回ると、パワー素子(56)又は冷却用部材(50)の表面で結露が生じてしまう。このため、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2よりも高い状態では、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面で結露が生じる可能性が高くなっていると推測できる。
そこで、本参考技術の膨張弁制御部(62)は、湿度センサ(74)の計測値Hpが上限湿度H2よりも高くなっている場合には、冷却用部材(50)の冷媒管(52)へ流入する冷媒の温度を上昇させるために、膨張弁(43)の開度を強制的に増やす。従って、本参考技術によれば、上記参考技術1と同様に、圧縮機(30)の起動が完了して通常の運転状態になった後においても、冷却用部材(50)の表面温度の過度の低下を抑えることができ、パワー素子(56)や冷却用部材(50)の表面での結露に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、圧縮機(30)へ電力を供給する電源のパワー素子(56)を冷媒によって冷却する冷凍装置について有用である。
10 空調機(冷凍装置)
20 冷媒回路
30 圧縮機
33 電動機
42 室外熱交換器(蒸発器)
43 膨張弁
50 冷却用部材
55 インバータ装置(電源)
56 パワー素子
60 コントローラ(制御手段)
70 結露センサ
71 室外気温センサ(計測手段)
72 室内気温センサ(計測手段)
73 温度センサ(計測手段)
74 湿度センサ(計測手段)