JP2012012493A - 液晶配向剤及びそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クラウンエーテル構造と芳香族環を含有するジアミンを含有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸、及び該ポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。
【選択図】なし
Description
現在、液晶表示素子の液晶配向膜としては、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体や可溶性ポリイミドの溶液を主成分とする液晶配向剤を塗布し焼成し、次いでラビング処理が施された、いわゆるポリイミド系の液晶配向膜が主として用いられている。
従来、ポリイミド系の液晶配向膜におけるラビング耐性を付与する目的で、液晶配向剤中に架橋剤などの種々の添加剤を混合することが提案されている。例えば、特許文献1、2には、窒素原子を含有する特定のエポキシ化合物が添加されたポリイミド系の液晶配向剤が開示される。また、特許文献3、4には、テトラグリシジルアミン化合物や、シルセシキオキサン等のケイ素含有化合物が添加されたポリイミド系の液晶配向剤が開示されている。
しかし、液晶配向剤中に添加剤を混合する方法では、ラビング耐性を大きくするために添加剤の導入量を増やそうとした場合、液晶配向剤の本来有する液晶配向性を阻害してしまう難点を有する。
一方、特許文献5、6には、液晶配向剤中に含まれる水分やイオン性不純物に起因する配向不良やパネルの焼きつきを解消するために、クラウンエーテル化合物を添加した液晶配向剤が開示されている。この場合、クラウンエーテル化合物は、液晶配向性をもたらすポリイミド構造を構成するものではなく、また、クラウンエーテル化合物を添加する目的は、液晶配向剤中に含まれる水分やイオン性不純物を吸着させるためにある。
さらに、特許文献7には、強誘電液晶表示素子の明るさを改良し、光学的コントラストを改良するための中環状分子や大環状分子化合物含含有する配向剤として、クラウンエーテルを含有するポリイミド系の液晶配向剤が知られている。
なお、本発明で使用するクラウンエーテル構造と芳香環を有する特定のジアミン化合物の一部は、本願出願前に文献未載の新規なジアミン化合物である。
1.クラウンエーテル構造と芳香族環を含有するジアミン化合物を含有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸、及び該ポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
2.前記クラウンエーテル構造と芳香族環を含有するジアミン化合物が、下記の式[1]で表わされるジアミンである上記1に記載の液晶配向剤。
また、本発明によれば、液晶配向剤であるポリアミック酸、及びポリイミドの原料などとして有用な新規なジアミン化合物が提供される。
本発明において、クラウンエーテル構造と芳香環を有する特定のジアミン化合物を使用したポリアミック酸、及び/又はポリイミドを含む液晶配向剤により何故に上記の特性が発揮されるかについては、必ずしも明らかではない。しかし、後記する実施例と比較例との対比からもわかるように、本発明の液晶配向剤に含まれるポリアミック酸、及び/又はポリイミドの主鎖に、クラウンエーテル構造と芳香環構造が導入されており、このうち、クラウンエーテル構造は、主鎖が2本となることで剛直になるために、液晶配向剤のラビング耐性の向上に寄与し、また、クラウンエーテル構造のアルキル鎖と芳香環構造の組み合わせは、液晶分子と類似構造になることで、液晶との相互作用を強めるために液晶配向剤の液晶配向特性の向上に寄与するものと思われる。
本発明で使用される、かかるクラウンエーテル構造と芳香族環を含有するジアミン化合物(以下、特定ジアミン化合物ともいう。)は、クラウンエーテル構造と芳香環構造とを有する限り、その構造は限定されないが、過度に、嵩高い構造あるいは分子量の大きな環を有する場合には液晶配向性を乱す可能性があるため、過度に分子量が高いものは望ましくない。
なお、ここで、芳香環は、同素環でも複素環のいずれでもよく、同素環の場合は、同素環芳香族化合物の水素原子を1個取り去った残基であり、また、複素環の場合には、例えば、窒素原子含有複素環芳香族化合物の場合は、窒素原子含有複素環芳香族化合物の水素原子を1個取り去った残基を意味する。
上記の同素環芳香族化合物の具体例としては、シクロペンタジエン、ベンゼン、アズレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、ベンゾピレン、ペリレン、ペンタセン、フェナレン、インデン、フルオレン、ビフェニレンなどが挙げられる。
また、上記の複素環である、窒素原子含有複素環芳香族化合物の具体例としては、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールトリアゾール、テトラゾール、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、キノリン、イソキノリン、チノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、プテリジン、プリン、クマリン、イソクマリン、カルバゾール、アクリジン、フェナントロリン、チエノピリジン、フロピリジン、インドリジン、キノリジン、カルボリン等が挙げられる。また、ピロール、ピラゾール、イミダゾールなどにおけるN―H部位は、そのままでも又はメチル化などアルキル化されていてもよい。
一方、液晶配向膜としたときの液晶配向性やラビング耐性、また合成のし易さなどの観点からは無置換、又はメチル基やエチル基などの比較的小さな置換基で置換された同素環芳香族化合物又は窒素原子含有複素環芳香族化合物が好ましい。
芳香環としては、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンピロール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、ピラゾール、又はトリアゾールが好ましい。なかでも、ベンゼンが好ましい。
上記の特定ジアミン化合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させることで、ポリアミック酸を得ることができる。本発明において、ポリアミック酸を合成する際に用いるジアミン成分は、特定ジアミン化合物のみであってもよく、該特定ジアミン化合物と他のジアミンから選ばれる1種又は2種以上とを組み合わせてもよい。
ジアミン成分として、特定ジアミン化合物を使用して得られたポリアミック酸又はポリイミドを含有する液晶配向剤から得られた液晶配向膜は、ラビング耐性に優れ、電圧保持率が高く、かつ、液晶セルに直流電圧が印加されても初期の電荷蓄積が起こり難くなる。このような特性を得るために、特定ジアミン化合物は、ポリアミック酸の合成に使用するジアミン成分全体の10〜100mol%であることが好ましく、より好ましくは10〜90mol%であり、特に好ましくは30〜70mol%である。
上記のジアミン成分において、特定ジアミン化合物と組み合わせて使用するジアミンは、特に限定されない。このようなジアミンの具体例を以下に示す。
芳香族−脂肪族ジアミンの例としては、式[3]で表されるジアミンが挙げられる。
式[3]で表されるジアミンの具体例としては、3−アミノベンジルアミン、4―アミノベンジルアミン、3−アミノ−N−メチルベンジルアミン、4−アミノ−N−メチルベンジルアミン、3−アミノフェネチルアミン、4−アミノフェネチルアミン、3−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、4−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、3−(3−アミノプロピル)アニリン、4−(3−アミノプロピル)アニリン、3−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、4−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、3−(4−アミノブチル)アニリン、4−(4−アミノブチル)アニリン、3−(4−メチルアミノブチル)アニリン、4−(4−メチルアミノブチル)アニリン、3−(5−アミノペンチル)アニリン、4−(5−アミノペンチル)アニリン、3−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、4−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、2−(6−アミノナフチル)メチルアミン、3−(6−アミノナフチル)メチルアミン、2−(6−アミノナフチル)エチルアミン、3−(6−アミノナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。
以下に、チルトジアミンの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に例示する、式[12]〜式[38]において、jは5〜20の整数を表し、kは1〜20の整数を表す。
例えば、TN液晶用配向膜(プレチルト角が3〜5°)では、式[12]のジアミンの含有量はジアミン成分全体の10〜30mol%が好ましく、OCB用配向膜、あるいはVA用配向膜(プレチルト角が10〜90°)では、式[19]〜式[26]のジアミンの含有量はジアミン成分全体の5〜40mol%が好ましい。
本発明の液晶配向剤に必要なポリアミック酸又はポリイミドにおいて、上記したジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物成分は、特に限定されない。すなわち、1種類のテトラカルボン酸二無水物であってもよく、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。
本発明の液晶配向剤においては、液晶セルの電圧保持率を更に向上できる点などから、前記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物として、脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、〔4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物〕、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−二無水物、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−二無水物などが挙げられる。この中で、特に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いると液晶配向性に優れた配向膜が得られるために好ましい。
得られたポリアミック酸もしくはポリイミドの溶解性、液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの各特性のバランスを考慮するならば、脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物と、芳香族テトラカルボン酸二無水物との使用比率は、前者/後者のモル比で90/10〜50/50が好ましく、より好ましくは80/20〜60/40である。
本発明において、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の重合反応方法は特に限定されない。一般的には、有機溶媒中で混合することにより重合反応してポリアミック酸とすることができ、このポリアミック酸を脱水閉環させることによりポリイミドとすることができる。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で混合させる方法としては、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、又は有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられる。また、テトラカルボン酸二無水物成分又はジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、これら複数種の成分をあらかじめ混合した状態で重合反応させてもよく、個別に順次重合反応させてもよい。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶剤中で重合反応させる際の温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃である。温度が高い方が重合反応は早く終了するが、高すぎると高分子量の重合体が得られない場合がある。
また、重合反応は任意の濃度で行うことができるが、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との合計濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、合計濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。重合反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加してもよい。
本発明のポリアミック酸又はポリイミドの分子量は特に限定されないが、液晶配向剤に含有させる場合には、得られる塗膜の強度と液晶配向剤としての取り扱いのし易さの観点から、重量平均分子量で2,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000である。
本発明の液晶配向剤に使用されるポリイミドは、上記したポリアミック酸をイミド化したポリイミドである。ポリアミック酸のイミド化は、有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で、1〜100時間攪拌することにより可能である。
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは、反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。中でも無水酢酸は、イミド化終了後に、得られたポリイミドの精製が容易となるので好ましい。
有機溶媒としては前述したポリアミック酸重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。
ポリイミドのイミド化率は、触媒量、反応温度、反応時間などを調節することにより制御することができる。このときの塩基性触媒の量は、アミック酸基の0.2〜10倍モルが好ましく、より好ましくは0.5〜5倍モルである。また、酸無水物の量は、アミック酸基の1〜30倍モルが好ましく、より好ましくは1〜10倍モルである。反応温度は−20〜250℃が好ましく、より好ましくは0〜180℃である。
本発明の液晶配向剤に使用されるポリイミドのイミド化率は特に限定されないが、より高い電圧保持率の液晶配向膜が得られるという理由から、イミド化率が40%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、特に好ましくは80%以上である。
ポリイミドの回収は、貧溶媒の撹拌下にイミド化後の溶液を投入し、ポリイミドを析出させた後にろ過することで可能となる。このときの貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどを挙げることができる。回収したポリイミドの洗浄も、この貧溶媒で行うことができる。このようにして回収・洗浄したポリイミドは、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥して粉末とすることができる。
このような操作は、前記のポリアミック酸に対しても行うことができる。例えば、ポリアミック酸の重合に用いた溶媒を液晶配向剤中に含有させたくない場合や、反応溶液中の未反応のモノマー成分や不純物を除きたい場合には、上記の沈殿回収及び精製を行えばよい。
本発明の液晶配向剤は、上記のようにして得られたポリアミック酸及びポリイミドのうちの少なくとも一種の重合体を含有する塗布液である。
本発明の液晶配向剤は、前記したポリアミック酸又はポリイミドの反応溶液をそのまま、又は希釈したものでもよく、反応液から沈殿回収したものを有機溶媒に再溶解してもよい。また、希釈や再溶解の工程においては、基板への塗布性を制御するための溶媒組成の調整や、塗膜の特性を改善するための添加物の追加などを行うことができる。更には、上記とは異なる構造のポリイミドの溶液や、ポリアミック酸の溶液と混合したり、他の樹脂成分を添加してもよい。
上記の希釈や再溶解の工程に使用する有機溶媒としては、含有される重合体を溶解させるものであれば特に限定されない。その具体例を挙げると、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどである。なかでも、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンは好適に用いられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
以上のようにして得られた液晶配向剤は、基板に塗布する前に濾過することが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、基板に塗布し、乾燥、焼成することで塗膜とすることができ、この塗膜面をラビング処理することにより、ラビング用の液晶配向膜として使用される。またラビング処理をしないVA用(垂直配向用)液晶配向膜、光配向膜としても使用できる。
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板若しくはポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができ、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられるが、生産性の面から工業的にはフレキソ印刷法が広く用いられており、本発明の液晶配向剤においても好適に用いられる。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していればよく、乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法がとられる。
液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向が0〜270°の任意の角度となるように設置して周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。
実施例及び比較例において使用した化合物の略号の説明又は構造を以下に示す。
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
BCS: ブチルセロソルブ
合成例におけるポリイミドまたはポリアミック酸の分子量は、Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)、Shodex社製カラム(KD-
803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O
)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)
が10ml/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量
約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリ
エチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
ジアミン[DA−5]の合成
滴下終了後、23℃でさらに1時間撹拌、さらに4時間加熱還流した。反応をHPLC(高速液化クロマトグラフ)にて追跡し、反応終了後、反応溶液を蒸留水(4.3L)へ注ぎ、クロロホルムで抽出を行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後エバポレーターにて溶媒留去し、ガラス質の黄色オイルとして化合物[C]の粗物を得た。得られた粗物をヘキサン/酢酸エチルの1:1混合溶媒(1000g)から再結晶して化合物[C]を得た(収量42.6g、収率90%)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.26(4H, d), 7.71-7.61(4H, m), 3.73-3.48(16H, m), 3.37-3.28(4H, m).
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.10(4H, d), 6.51 (4H, d), 5.43(4H, s), 3.60-3.55(16H, m), 3.33-3.31(4H, m).
ジアミン[DA−10]の合成
滴下終了後、23℃でさらに1時間撹拌、さらに4時間加熱還流した。反応をHPLCにて追跡し、反応終了後、反応溶液を蒸留水(640mL)へ注ぎ、析出した固体をろ過し、化合物[E]の粗物を得た。得られた粗物をメタノールでリパルプ洗浄し化合物[E]を得た(収量6.97g、収率86%)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.27(4H, m), 7.71-7.61(4H, m), 3.79-3.30(16H, m).
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.21(4H, d), 6.51(4H, d), 5.42(4H, s), 3.62(8H, s), 3.49(8H, s).
CBDAを0.79g(0.0041mol)と、DA-1を1.5587g(0.0045mol)とを、NMP 21.18g中、室温で1.5時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約15,000、重量平均分子量が約116,000であった。
このポリアミック酸溶液13gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを1.57g(0.0077mol)と、DA-2を3.32g(0.0085mol)とを、NMP 43.97g中、室温で4時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約23,000、重量平均分子量が約64,000であった。
このポリアミック酸溶液25gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを1.30g(0.067mol)と、DA-3を3.35g(0.0070mol)とを、NMP 41.88g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約25,000、重量平均分子量が約85,000であった。
このポリアミック酸溶液30gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを0.84g(0.0043mol)と、DA-4を2.55g(0.0045mol)とを、NMP 30.49g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約42,000、重量平均分子量が約212,000であった。
このポリアミック酸溶液20gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを0.87(0.0044mol)と、DA-5を2.05(0.0045mol)とを、NMP 26.03g中、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9,500、重量平均分子量が約20,000であった。
このポリアミック酸溶液15gに対し、ポリアミック酸が8質量%、NMPが77質量%、BCSが15質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを0.87g(0.0044mol)と、DA-6を2.25g(0.0045mol)とを、NMP 27.82g中、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約17,000、重量平均分子量が約43,000であった。
このポリアミック酸溶液15gに対し、ポリアミック酸が7質量%、NMPが73質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを0.79g(0.0043mol)と、DA-7を2.00g(0.0045mol)とを、NMP 25.15g中、2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約30,000、重量平均分子量が約102,000であった。
このポリアミック酸溶液16gに対し、ポリアミック酸が5質量%、NMPが75質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
PMDAを1.71g(0.0081mol)と、DA-2を3.32g(0.0085mol)とを、NMP 45.22g中、室温で5時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約20,000、重量平均分子量が約51,000であった。
このポリアミック酸溶液25gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
PMDAを1.43g(0.0065mol)と、DA-3を3.35g(0.0070mol)とを、NMP 43.00g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約24,000、重量平均分子量が約85,000であった。
このポリアミック酸溶液12gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
PMDAを0.91g(0.0042mol)と、DA-4を2.55g(0.0045mol)とを、NMP 31.16g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約42,000、重量平均分子量が約143,000であった。
このポリアミック酸溶液10g gに対し、ポリアミック酸が5質量%、NMPが75質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
PMDAを0.86g(0.0040mol)と、DA-3を2.00g(0.0045mol)とを、NMP 25.78g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約23,000、重量平均分子量が約76,000であった。
このポリアミック酸溶液10gに対し、ポリアミック酸が5.5質量%、NMPが74.5質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを3.28g(0.0167mol)と、DA-8を4.46g(0.0170mol)とを、NMP 43.92g中、60℃で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約44,000、重量平均分子量が79,000であった。
このポリアミック酸溶液11gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
CBDAを4.06g(0.0207mol)と、DA-9を6.30g(0.0220mol)とを、NMP 93.2g中、室温で2時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約17,000、重量平均分子量が約48,000であった。
このポリアミック酸溶液50gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
PMDAを5.13g(0.0240mol)と、DA-9を7.16g(0.0250mol)とを、NMP 90.10g中、50℃で24時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約17,000、重量平均分子量が約41,000であった。
このポリアミック酸溶液50gに対し、ポリアミック酸が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるように、NMP、BCSを加えて攪拌した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
上記の実施例1〜11及び比較例1〜3の液晶配向剤について、次のようにして以下の評価を行った。
液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで15分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面を、レーヨン布YA-20-R(吉川化工社製)を取り付けたロール径120mmのラビング装置を用いて、ロール回転数1000rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量0.4mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜表面を、レーザーテック株式会社製リアルタイム走査型レーザー顕微鏡1LM21D(対物レンズ10倍、モニター上での拡大倍率340倍)にて観察した。結果を表1に示す。
なお、ラビング耐性の評価は、次の指標にしたがった。
[削れカス]
◎:カスが非常に少ない若しくは全くない。
○:カスが若干ある。
△:カスが多くある。
×:カスが非常に多くある。
[キズ]
◎:キズが全くない。
○:キズが若干ある。
△:キズが多くある。
×:キズが非常に多くある。
液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで15分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面を、レーヨン布YA-20-R(吉川化工社製)を取り付けたロール径120mmのラビング装置を用いて、ロール回転数300rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量0.2mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向がアンチパラレルになるように張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-2003(メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して、アンチパラレル液晶セルを得た。この液晶セルをクロスニコル下で観察した。結果を表1に示す。
なお、液晶配向性の評価は、次の指標にしたがった。
良好:液晶が均一に配向している
不良:液晶が全く配向していない
Claims (7)
- クラウンエーテル構造と芳香族環を含有するジアミン化合物を含有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸、及び該ポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
- Xがベンゼン環である請求項2に記載の液晶配向剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向剤を電極付き基板上に塗布、焼成してなる液晶配向膜。
- 請求項6に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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