JP2012006280A - 液体噴射装置の波形間隔設定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返し周期内で複数の駆動パルスを組み合わせて液体の噴射を行う構成において、温度補正を要せずに温度変化の影響を抑制することが可能な液体噴射装置の波形間隔設定方法を提供する。
【解決手段】第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔と、これらの駆動パルスによりインクを噴射させたときのインクの総量との関係を示す波形間隔−インク総量特性を、予め選定された複数の環境温度毎に取得する特性取得工程と、取得された波形間隔−インク総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で第2噴射駆動パルスW2a,W2bを選択してインクを噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔として設定する波形間隔設定工程とを経る。
【選択図】図9
【解決手段】第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔と、これらの駆動パルスによりインクを噴射させたときのインクの総量との関係を示す波形間隔−インク総量特性を、予め選定された複数の環境温度毎に取得する特性取得工程と、取得された波形間隔−インク総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で第2噴射駆動パルスW2a,W2bを選択してインクを噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔として設定する波形間隔設定工程とを経る。
【選択図】図9
Description
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置において圧力発生手段を駆動する駆動パルス同士の波形間隔設定方法に関し、特に、複数の駆動信号を用いて液体の噴射を制御可能な液体噴射装置の波形間隔設定方法に関するものである。
液体噴射装置は液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。
上記プリンターでは、例えば、複数の駆動パルスを一連に含む駆動信号を発生させ、この駆動信号の中から駆動パルスを選択的に圧電振動子や発熱素子等の圧力発生手段に供給してこれを駆動することにより、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を制御することで記録ヘッドのノズルからインク滴を噴射させている。そして、この種のプリンターには、記録紙等の記録媒体(着弾対象)の所定の領域(画素領域)に形成するドットの大きさや数を変えて、多階調記録を行うように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の特許文献1に開示されているプリンターでは、繰り返し周期Tで2つの駆動信号COM1とCOM2を同時に発生するように構成されている。COM1にはミドルドット形成用の駆動パルスが2つ含まれ、COM2にはスモールドット形成用の駆動パルスが1つ含まれている。そして、記録媒体の画素領域に対し、スモールドットを形成する場合にはCOM2の駆動パルスが選択され、ミドルドットを形成する場合にはCOM1の1つの駆動パルスが選択され、ラージドットを形成する場合にはCOM1の2つの駆動パルスが選択され、ドットを形成しない場合には微振動が行われるようになっている。即ち、この構成では4階調で記録を行うことができる。
このように、各駆動信号COM1,COM2に複数種類の駆動パルスを含ませ、これらの駆動パルスを1つ又は複数組み合わせて圧力発生手段に印加する構成を採用することで階調数を高めることができる。特に、複数の駆動パルスを組み合わせて連続的に圧力発生手段に印加するように構成した場合、ノズルから1回の噴射で得られるインクの最大量(重量・体積)よりも多い量のインクを、繰り返し周期内で噴射させることができる。
ところで、各階調の間でドットサイズの差が大きい場合、記録媒体に記録される画像等において視覚的に認識される画像の粗さ(以下、粒状性という。)が目立つ虞がある。このような粒状性を改善するためには、階調間のインクの量(即ち、ドットサイズ)の差をなるべく小さくすることが考えられる。例えば、上記特許文献1で例示した構成は4階調であるのに対し、倍の8階調が可能な構成を採用すれば、階調間のインクの量の差が小さくなるので、粒状性がより改善される。しかしながら、単に階調数を高めた場合、その分、駆動パルスの種類が多くなるので、駆動信号の繰り返し周期Tが長くなってしまい、その結果、記録速度の低下を招くという問題があった。このため、限られた繰り返し周期T内に、より効率良く駆動パルスを含ませる必要がある。
ここで、圧力発生手段に駆動パルスを印加することでノズルからインク滴を噴射した直後において、当該ノズル近傍のインクには残留振動が生じる。この残留振動は、ノズルのメニスカスの振動に、圧力室内のインクの固有振動周期Tcの振動が重畳したものである。固有振動周期Tcの振動は数μsという非常に短い周期でメニスカスを変位させる。この周期Tcの振動は、次のインク滴の噴射に影響を及ぼす虞がある。具体的には、噴射時における周期Tc振動の位相に応じて噴射インク滴の飛翔速度が変化したり液量が変動したりする。このような噴射インク滴の飛翔速度や液量(以下、適宜、噴射特性と言う。)の変動は、記録媒体における着弾位置のずれやドット大きさのばらつきの原因となり、結果として記録画像の品質低下を招く。
上記Tcは、ノズル、当該ノズルに連通する圧力室、共通液室と圧力室とを連通するインク供給口、及び圧電振動子等の各構成部材の形状、寸法、及び剛性などにより固有に定まる。この固有の振動周期Tcは、例えば、次式(1)で表すことができる。
Tc=2π√[〔(Mn×Ms)/(Mn+Ms)〕×Cc]・・・(1)
但し、式(1)において、Mnはノズルにおけるイナータンス、Msはインク供給口におけるイナータンス、Ccは圧力室のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)である。また、上記式(1)において、イナータンスMとは、ノズル等の流路における液体の移動し易さを示し、換言すると、単位断面積あたりの液体の質量である。そして、流体の密度をρ、流路の流体の流下方向と直交する面の断面積をS、流路の長さをLとしたとき、イナータンスMは次式(2)で近似して表すことができる。
M=(ρ×L)/S ・・・ (2)
なお、Tcは、上記式(1)で規定されるものに限られず、記録ヘッドの圧力室が有している振動周期であればよい。
但し、式(1)において、Mnはノズルにおけるイナータンス、Msはインク供給口におけるイナータンス、Ccは圧力室のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)である。また、上記式(1)において、イナータンスMとは、ノズル等の流路における液体の移動し易さを示し、換言すると、単位断面積あたりの液体の質量である。そして、流体の密度をρ、流路の流体の流下方向と直交する面の断面積をS、流路の長さをLとしたとき、イナータンスMは次式(2)で近似して表すことができる。
M=(ρ×L)/S ・・・ (2)
なお、Tcは、上記式(1)で規定されるものに限られず、記録ヘッドの圧力室が有している振動周期であればよい。
記録媒体に対してインク滴を精度良く着弾させて高品位の画像を記録するためには、噴射特性を一定に揃えることが肝要である。特に、上記したように、繰り返し周期T内で複数の駆動パルスを組み合わせてインクの噴射を行う構成では、前の噴射に伴う残留振動が収束しないうちに後の噴射が行われることがあるため、当該残留振動を考慮して、前後の駆動パルスの組み合わせでインクを噴射したときのインクの総量が所望の値(使用上の目標値)となるように、駆動信号中の各駆動パルスの位置関係(時間軸上での位置関係)を定めることが望ましい。
ところが、上記のように各駆動パルスの位置関係が設定された駆動信号をそのまま用いた構成では、環境温度が仕様上定められた基準温度(例えば、25℃)から変化した場合に、所望のインク量が得られない場合があった。即ち、温度変化に伴ってインクの粘度が変化することにより、残留振動の振幅等も変化するので、この残留振動の変化の影響を受けて、前後の駆動パルスの組み合わせでインクを噴射したときのインクの総量が上記の目標値とならない可能性があった。
このため、記録ヘッドのノズル近傍における温度を検出する温度検出手段を設け、この温度検出手段(温度センサー)による検出温度に応じて駆動信号を補正する構成も考えられる。しかしながら、温度補正を行う分、補正処理が煩雑で印刷処理の低下を招いたり、温度補正に要する温度センサーや温度に応じた波形データ等が必要となり装置構成が大がかりになったりするという問題があった。
なお、このような問題は、インク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、インク以外の液滴を噴射する他の液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置においても同様に存在する。
なお、このような問題は、インク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、インク以外の液滴を噴射する他の液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置においても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、繰り返し周期内で複数の駆動パルスを組み合わせて液体の噴射を行う構成において、温度補正を要せずに温度変化の影響を抑制することが可能な液体噴射装置の波形間隔設定方法を提供することにある。
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、圧力発生手段の駆動によってノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を一定の周期で繰り返し発生可能な駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一繰り返し周期内で前記第1駆動パルスよりも先に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記選択制御手段は、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスをこの順で選択可能に構成された液体噴射ヘッドの波形間隔設定方法であって、
前記第2駆動パルスと前記第1駆動パルスとの間隔と、これらの駆動パルスを前記圧力発生手段に印加して液体を噴射させたときの液体の総量との関係を示す波形間隔−液体総量特性を、予め選定された複数の環境温度毎に取得する特性取得工程と、
前記特性取得工程において取得された前記波形間隔−液体総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスを選択して液体を噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、前記第2駆動パルスと前記第2駆動パルスの間隔として設定する波形間隔設定工程と、
を含むことを特徴とする。
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一繰り返し周期内で前記第1駆動パルスよりも先に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記選択制御手段は、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスをこの順で選択可能に構成された液体噴射ヘッドの波形間隔設定方法であって、
前記第2駆動パルスと前記第1駆動パルスとの間隔と、これらの駆動パルスを前記圧力発生手段に印加して液体を噴射させたときの液体の総量との関係を示す波形間隔−液体総量特性を、予め選定された複数の環境温度毎に取得する特性取得工程と、
前記特性取得工程において取得された前記波形間隔−液体総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスを選択して液体を噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、前記第2駆動パルスと前記第2駆動パルスの間隔として設定する波形間隔設定工程と、
を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、波形間隔−液体総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスを選択して液体を噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、前記第2駆動パルスと前記第2駆動パルスの間隔として設定するので、同一繰り返し周期内で第2駆動パルスおよび第1駆動パルスをそれぞれ選択して圧力発生手段に印加することでノズルから2回に分けて液体を噴射する場合に、噴射される液体の総量が、環境温度に拘わらず目標値に近づけられる。その結果、着弾対象に形成されるドットの位置や大きさが環境温度に応じてばらつくことが抑制される。そして、温度に応じた波形の補正が不要であるため、補正処理に要する温度検出手段や温度に応じた波形データ等が不要であり、装置構成の簡略化が可能となる。また、温度補正処理が不要であるため、その分、装置の処理速度の低下が抑制される。
また、上記構成において、前記各駆動信号は、前記第1駆動パルス及び前記第2駆動パルスの他に、噴射される液体の量が最も多い最大駆動パルスを繰り返し周期内にそれぞれ1つずつ合計2つ含み、また、前記第1駆動パルス及び前記第2駆動パルスによって噴射される液体の量よりも噴射される液体の量が少ない1つ又は複数の他の駆動パルスを繰り返し周期内にそれぞれ含み、
同一繰り返し周期内における前記第1駆動信号の前記最大駆動パルスと前記第2駆動信号の前記最大駆動パルスとの発生間隔が、前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔よりも、前記繰り返し周期の半分に近く、且つ、前記繰り返し周期内における前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔は、前記繰り返し周期内における最大駆動パルス同士の発生間隔よりも短く、
前記繰り返し周期内において前記第1駆動パルスおよび前記第2駆動パルスの後に他の駆動パルス又は最大駆動パルスの一方が発生する構成を採用することができる。
同一繰り返し周期内における前記第1駆動信号の前記最大駆動パルスと前記第2駆動信号の前記最大駆動パルスとの発生間隔が、前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔よりも、前記繰り返し周期の半分に近く、且つ、前記繰り返し周期内における前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔は、前記繰り返し周期内における最大駆動パルス同士の発生間隔よりも短く、
前記繰り返し周期内において前記第1駆動パルスおよび前記第2駆動パルスの後に他の駆動パルス又は最大駆動パルスの一方が発生する構成を採用することができる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
図1は、プリンター1の電気的な構成を説明するブロック図である。また、図2は、プリンター1の内部構成を説明する斜視図である。
例示したプリンター1は、記録用紙、布、樹脂フィルム等の記録媒体Sに向けて、液体の一種であるインクを噴射する。記録媒体Sは、液体が噴射されて着弾する対象となる着弾対象の一種である。外部装置としてのコンピューターCPは、プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、コンピューターCPは、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
例示したプリンター1は、記録用紙、布、樹脂フィルム等の記録媒体Sに向けて、液体の一種であるインクを噴射する。記録媒体Sは、液体が噴射されて着弾する対象となる着弾対象の一種である。外部装置としてのコンピューターCPは、プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、コンピューターCPは、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
本実施形態におけるプリンター1は、搬送機構2、キャリッジ用移動機構3(移動部の一種)、駆動信号生成回路4(駆動信号生成手段の一種)、ヘッドユニット5、検出器群6、及び、プリンターコントローラー7を有する。搬送機構2は、記録媒体Sを搬送方向に搬送させる。キャリッジ用移動機構3は、ヘッドユニット5が取り付けられたキャリッジを所定の移動方向(例えば紙幅方向)に移動させる。駆動信号生成回路4は、図示しないDAC(Digital Analog Converter)を含む。そして、プリンターコントローラー7から送られた駆動信号の波形に関する波形データに基づいて、アナログの電圧信号を生成する。また、駆動信号生成回路4は図示しない増幅回路も含んでおり、DACからの電圧信号を電力増幅し、駆動信号COMを生成する。本実施形態において駆動信号生成回路4は、第1駆動信号COM1を生成する第1駆動信号生成部4aと、第2駆動信号COM2を生成する第2駆動信号生成部4bとを有している。これらの駆動信号は、記録媒体Sに対する印刷処理(記録処理或いは噴射処理の一種)時に記録ヘッド8の圧電振動子32(図3参照)に印加されるものである。駆動信号は、図5に一例を示すように、駆動信号の発生繰り返し周期である単位期間T1内に駆動パルスWを少なくとも1つ以上含む信号である。ここで、駆動パルスWとは、記録ヘッド8から液滴状のインクを噴射させるために、圧電振動子32に所定の動作を行わせるものである。なお、各駆動信号COM1,COM2の詳細については後述する。
ヘッドユニット5は、記録ヘッド8およびヘッド制御部11を有する。記録ヘッド8は、液体噴射ヘッドの一種であり、ノズル43からインクを記録媒体Sに向けて噴射させて、当該記録媒体Sの所定の領域(画像等の形成単位である画素に対応する領域)に着弾させてドットを形成する。このドットを複数マトリクス状に並べることで記録媒体Sに画像等が記録される。ヘッド制御部11は、プリンターコントローラー7からのヘッド制御信号に基づき、記録ヘッド8を制御する。なお、記録ヘッド8の構成については後で説明する。検出器群6は、プリンター1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。
搬送機構2は、記録ヘッド8の走査方向に直交する方向(以下、搬送方向という)に記録媒体Sを搬送させるための機構である。この搬送機構2は、搬送モーター14と、搬送ローラー15と、プラテン16と、を有する。搬送ローラー15は、記録媒体Sを印刷可能な領域であるプラテン16上まで搬送するローラーであり、搬送モーター14によって駆動される。プラテン16は、印刷中の記録媒体Sを支持する。
プリンターコントローラー7は、プリンターの制御を行うための制御ユニットである。プリンターコントローラー7は、インターフェース部24と、CPU25と、メモリー26(テーブル記憶手段の一種)とを有する。インターフェース部24は、外部装置であるコンピューターCPとプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU25は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー26は、CPU25のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU25は、メモリー26に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。また、プリンターコントローラー7は、コンピューターCPからの印刷データに基づき、記録媒体S上のどの位置にどのような大きさのドットを形成するかを示すドット形成データSIを生成し、当該ドット形成データSIをヘッド制御部11に送信する。後述するように、本実施形態におけるプリンター1では、1つの画素に対して8階調で記録が可能に構成されており、ドット形成データSIは、これらの各階調の何れかを示す画素階調データの一種である。そして、ヘッド制御部11は、プリンターコントローラー7からのドット形成データSIに基づき、駆動信号COM1,COM2に含まれる各駆動パルスを選択して圧電振動子32に印加するための選択データを生成する。したがって、これらのプリンターコントローラー7及びヘッド制御部11は、本発明における選択制御手段として機能する。なお、選択データの詳細については後述する。
図2に示すように、キャリッジ12は、主走査方向に架設されたガイドロッド19に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ用移動機構3の作動により、ガイドロッド19に沿って記録媒体Sの搬送方向に直交する主走査方向に往復移動するように構成されている。キャリッジ12の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー20によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)がプリンターコントローラー7のCPU25に送信される。リニアエンコーダー20は位置情報出力手段の一種であり、記録ヘッド8の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターコントローラー7はこのリニアエンコーダー20からのエンコーダーパルスEPに基づいてキャリッジ12(記録ヘッド8)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド8による記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ12が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ12が戻る復動時との双方向で記録紙S上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
上記リニアエンコーダー20からのエンコーダーパルスEPは、プリンターコントローラー7に入力されている。プリンターコントローラー7は、このエンコーダーパルスEPからタイミングパルスPTS(Print Timing Signal)を生成し、このタイミングパルスPTSに同期させて印刷データの転送や駆動信号COMの発生等を行っている。そして、駆動信号生成回路4は、タイミングパルスPTSに基づくタイミングで駆動信号COMを出力する。また、プリンターコントローラー7は、タイミングパルスPTSに基づいて、ラッチ信号LAT等のタイミング信号を生成して記録ヘッド8に出力する。ラッチ信号LATは、記録周期の開始タイミングを規定する信号である。したがって、駆動信号COMの単位周期は、このラッチ信号LATで区切られる区間であると言える。
次に、図3を参照しながら記録ヘッド8の構成について説明する。
記録ヘッド8は、ケース28と、このケース28内に収納される振動子ユニット29と、ケース28の底面(先端面)に接合される流路ユニット30等を備えている。上記のケース28は、例えば、エポキシ系樹脂により作製され、その内部には振動子ユニット29を収納するための収納空部31が形成されている。振動子ユニット29は、圧力発生手段の一種として機能する圧電振動子32(ピエゾ素子)と、この圧電振動子32が接合される固定板33と、圧電振動子32に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル34とを備えている。圧電振動子32は、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型であって、積層方向(電界方向)に直交する方向に伸縮可能(電界横効果型)な縦振動モードの圧電振動子である。
記録ヘッド8は、ケース28と、このケース28内に収納される振動子ユニット29と、ケース28の底面(先端面)に接合される流路ユニット30等を備えている。上記のケース28は、例えば、エポキシ系樹脂により作製され、その内部には振動子ユニット29を収納するための収納空部31が形成されている。振動子ユニット29は、圧力発生手段の一種として機能する圧電振動子32(ピエゾ素子)と、この圧電振動子32が接合される固定板33と、圧電振動子32に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル34とを備えている。圧電振動子32は、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型であって、積層方向(電界方向)に直交する方向に伸縮可能(電界横効果型)な縦振動モードの圧電振動子である。
流路ユニット30は、流路基板36の一方の面にノズルプレート37を、流路基板36の他方の面に振動板38をそれぞれ接合して構成されている。この流路ユニット30には、リザーバー39(共通液体室またはマニホールドとも言う)と、インク供給口40と、圧力室41と、ノズル連通口42と、ノズル43と、が設けられている。そして、インク供給口40から圧力室41及びノズル連通口42を経てノズル43に至る一連のインク流路が、各ノズル43に対応して形成されている。
図4は、ノズルプレート37の構成を説明する平面図である。同図において横方向が、記録ヘッド8が記録媒体Sに対して移動する主走査方向(相対移動方向の一種)であり、縦方向が、記録媒体Sの搬送方向、即ち、副走査方向である。上記ノズルプレート37は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数(例えば、90個)のノズル43が副走査方向に沿って列状に穿設された部材であり、本実施形態では、例えば、ステンレス鋼によって作製されている。また、ノズルプレート37は、シリコン単結晶基板によって作製される場合もある。本実施形態におけるノズルプレート37には、4つのノズル列A〜D(ノズル群の一種)が主走査方向に沿って並べて形成されている。
上記振動板38は、支持板45の表面に弾性体膜46を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板45とし、この支持板45の表面に樹脂フィルムを弾性体膜46としてラミネートした複合板材を用いて振動板38を作製している。この振動板38には、圧力室41の容積を変化させるダイヤフラム部47が設けられている。また、この振動板38には、リザーバー39の一部を封止するコンプライアンス部48が設けられている。
上記のダイヤフラム部47は、エッチング加工等によって支持板45を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部47は、圧電振動子32の自由端部の先端面が接合される島部49と、この島部49を囲む薄肉弾性部50と、からなる。上記のコンプライアンス部48は、リザーバー39の開口面に対向する領域の支持板45を、ダイヤフラム部47と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバー39に貯留された液体の圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
そして、上記の島部49には圧電振動子32の先端面が接合されているので、この圧電振動子32の自由端部を伸縮させることで圧力室41の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室41内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド8は、この圧力変動を利用してノズル43からインク滴を噴射させるようになっている。
図5は、本実施形態における駆動信号生成回路4によって生成される駆動信号の構成を説明する波形図、及び、各階調と選択データとの対応を示す表である。ここで、駆動信号の繰り返し周期である単位周期T1は、記録ヘッド8が記録媒体Sに対して相対的に移動しながらインクの噴射を行う際に、ノズル43が上記の画素の幅に対応する距離だけ移動する時間に相当し、例えば、100μsに設定されている。即ち、この場合、駆動信号の繰り返し周波数は10kHzである。本実施形態では、1つの画素に対して7種類の大きさのドット(1つのドットが複数の小ドットから成る場合もある)を形成することが可能に構成されている。したがって、上記プリンター1では、画素に対してドットを形成しない非記録(微振動)も含めて合計8階調の表現が可能となっている。具体的には、インク量が1pl(ng)の第1ドット、インク量が1.6plの第2ドット、インク量が2.5plの第3ドット、インク量が7plの第4ドット、インク量が10plの第5ドット、インク量が14plの第6ドット、及び、インク量が20plの第7ドットを形成することが可能となっている。このうち、第6ドットと第7ドットは、同一単位周期内で2つの噴射駆動パルスを順次選択してそれぞれ圧電振動子32に印加し、ノズル43から2回に分けてインクを噴射することで形成されるドットである。このように、本実施形態のプリンターでは、5種類の噴射駆動パルスを用いて7種類のドットを形成することができる。また、これらの複数種類の噴射駆動パルスを2つの駆動信号COM1,COM2に分けて含ませているので、単位周期T1が長くなることを抑制しつつ階調性を向上させることができる。なお、ここで示したインク量は、対応する駆動パルスを用いてノズル43からインクを噴射したときの仕様上目標とするインク量であり、インクの粘度やメニスカスの振動状態等に応じて変動することがある。また、6色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ライトシアン、ライトマゼンタ)を用いた6階調以上の記録と比較して、例えば8階調以上に諧調性を向上することで淡色のインク(ライトシアン、ライトマゼンタ)を無くした4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)で前者と同等の粒状性を確保でき、インク色数を削減できることができる。
第1駆動信号COM1では単位周期T1が4つの期間、具体的には、期間T11、期間T12、期間T13、及び期間T14に区切られている。そして、期間T11では第1噴射駆動パルスW1a(最大駆動パルスの一種)が発生され、期間T12では第2噴射駆動パルスW2b(本発明における第1駆動パルスの一種。)が発生され、期間T13では第3噴射駆動パルスW3(他の駆動パルスの一種)が発生され、期間T14では第4噴射駆動パルスW4(他の駆動パルスの一種)が発生される。同様に、第2駆動信号COM2では単位周期T1が期間T15、期間T16、期間T17、及び期間T18に区切られている。そして、期間T15では第2噴射駆動パルスW2a(本発明における第2駆動パルスの一種。)が発生され、期間T16では第5噴射駆動パルスW5(他の駆動パルスの一種)が発生され、期間T17では第1噴射駆動パルスW1b(最大駆動パルスの一種)が発生され、期間T18では微振動駆動パルスW6が発生される。
第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、ノズル43から1回に噴射されるインクの最大量である10plのインクを噴射するように設計された噴射駆動パルスである。第1噴射駆動パルスW1bは、第5ドットを形成する場合に用いられる。また、第1噴射駆動パルスW1a及びW1bの組み合わせは、第7ドットを形成する場合に用いられる。第2噴射駆動パルスW2a,W2bは、第1噴射駆動パルスW1a,W1bのインク量の次に多い7plのインクを噴射するように設計された噴射駆動パルスである。単位周期T1において第2噴射駆動パルスW2bよりも先に発生する第2噴射駆動パルスW2aは、第4ドットを形成する場合に用いられる。このように、第4ドットを形成する場合に第2噴射駆動パルスW2aを用いる構成とすることで、この第2噴射駆動パルスW2aによってインクを噴射した後、次の単位周期T1の噴射駆動パルスによってインクが噴射されるまでの時間をより長く確保することができる。これにより、次のインクの噴射までの間にメニスカスの状態を可及的に安定化することができる。
また、第2噴射駆動パルスW2a及びW2bの組み合わせは、第6ドットを形成する場合に用いられる。この第6ドットに対応するインク量は、第5ドットに対応するインク量10plと第7ドットに対応するインク量20plの半分に近い14plである。このため、第2噴射駆動パルスW2a,W2bは、各階調間におけるインク量差が可及的に抑制されて、画像における粒状性の改善に寄与する。なお、第2噴射駆動パルスに関し、これを単体で用いてインクを噴射したときのインク量は7plに限られず、例えば、8plとなるように設計し、第2噴射駆動パルスW2a,W2bを組み合わせてインクを噴射したときの総量が16plとなるようにしても良い。要するに、第2噴射駆動パルスW2a,W2bを組み合わせてインクを噴射したときの総量が、最大駆動パルスである第1噴射駆動パルスを単体で用いてインクを噴射したときのインク量と第1噴射駆動パルスW1a,W1bを組み合わせてインクを噴射したときのインクの総量との平均により近い値となるように構成すればよい。この第2噴射駆動パルスW2a,W2bの詳細については後述する。
第3噴射駆動パルスW3は、1.6plのインクを噴射するための噴射駆動パルスであり、第2ドットを形成する場合に用いられる。また、第4駆動パルスW4は、各駆動パルスのうち最も少ない量である1plのインクを噴射するように設計された噴射駆動パルスであり、第1ドットを形成する場合に用いられる。そして、微振動駆動パルスW6は、ノズル43からインクが噴射されない程度にノズル43におけるメニスカスを微振動させて、インクの増粘を抑制するための駆動パルスである。この微振動駆動パルスW6は、ドットを形成しない非記録の場合に選択される駆動パルスである。
選択データqを構成する各ビットは、対応する駆動信号の各期間の駆動パルスを選択するか否かを示している。即ち、選択データのビットが「0」の場合、対応する駆動パルスを選択しない(即ち、圧電振動子32に印加しない)ことを示し、選択データのビット「1」の場合、対応する駆動パルスを選択する(即ち、圧電振動子32に印加する)ことを示している。なお、「0」および「1」とパルスの選択・非選択の対応関係は逆であっても良い。本実施形態における各駆動信号COM1,COM2は、それぞれ4つの期間に分けられているため、選択データは4ビットのデータから成る。本実施形態では、1つの階調に対し、第1駆動信号COM1の駆動パルスを選択するための選択データおよび第2駆動信号COM2の駆動パルスを選択するための選択データの合計2つのデータがパルス選択制御に必要である。図5の例では、q0〜q7が第1駆動信号COM1に対応する選択データであり、q8〜q15が第2駆動信号COM2に対応する選択データである。なお、本実施形態では、同一単位周期T内で同じ駆動信号から2つ以上の駆動パルスが選択されることがないので、選択データの種類としては、「0000」、「0001」、「0010」、「0100」、「1000」の合計4通りである。
ドット形成データSIが「画素にドットを形成しない非記録(0pl)」を示す場合、ヘッド制御部11は、第1駆動信号COM1に対応する選択データとしてq0を出力し、第2駆動信号COM2に対応する選択データとしてq8を出力する。q0は「0000」であり、この場合、第1駆動信号COM1の駆動パルスは何れも選択されない。一方、q8は「0001」であり、この場合、第2駆動信号COM2の期間T18の微振動駆動パルスW6が選択されて圧電振動子32に印加される。同様に、ドット形成データSIが「第1ドット(1pl)」を示す場合、選択データq1(0001)および選択データq9(0000)に基づき、第1駆動信号COM1の第4噴射駆動パルスW4のみが選択される。ドット形成データSIが「第2ドット(1.6pl)」を示す場合、選択データq2(0010)および選択データq10(0000)に基づき、第1駆動信号COM1の第3噴射駆動パルスW3のみが選択される。ドット形成データSIが「第3ドット(2.5pl)」を示す場合、選択データq3(0000)および選択データq11(0100)に基づき、第2駆動信号COM2の第5噴射駆動パルスW5のみが選択される。ドット形成データSIが「第4ドット(7pl)」を示す場合、選択データq4(0000)および選択データq12(1000)に基づき、第2駆動信号COM2の第2噴射駆動パルスW2aのみが選択される。ドット形成データSIが「第5ドット(10pl)」を示す場合、選択データq5(0000)および選択データq13(0010)に基づき、第2駆動信号COM2の第1噴射駆動パルスW1bのみが選択される。
ドット形成データSIが「第6ドット(14pl)」を示す場合、選択データq6(0100)および選択データq14(1000)に基づき、第2駆動信号COM2の第2噴射駆動パルスW2aおよび第1駆動信号COM1の第2噴射駆動パルスW2bがこの順で選択される。この場合、単位周期T1において最初の期間T15で発生する第2噴射駆動パルスW2aが圧電振動子32に印加された後、単位周期T1において第2噴射駆動パルスW2aよりも後の期間T12で発生する第2噴射駆動パルスW2bが圧電振動子32に印加される。これにより、単位周期T1では、対応するノズル43からインク滴が2回連続して噴射され、記録媒体S上の画素領域にはこれらのインク滴がそれぞれ着弾して第6ドットが形成される。このように構成することで、1回の噴射で得られるインクの最大量(本実施形態では10pl)よりも多い量のインクを記録媒体S上の画素領域に着弾させることができる。
同様に、ドット形成データSIが「第7ドット(20pl)」を示す場合、選択データq7(1000)および選択データq15(0010)に基づき、第1駆動信号COM1の第1噴射駆動パルスW1aおよび第2駆動信号COM2の第1噴射駆動パルスW1bが選択される。この場合、単位周期T1において最初の期間T11で発生する第1噴射駆動パルスW1aが圧電振動子32に印加された後、単位周期T1において第1噴射駆動パルスW1aよりも後の期間T17で発生する第1噴射駆動パルスW1bが圧電振動子32に印加される。これにより、単位周期T1では、対応するノズル43からインク滴が2回連続して噴射され、記録媒体S上の画素領域にはこれらのインク滴がそれぞれ着弾して第7ドットが形成される。
図6は、第1噴射駆動パルスW1a,W1bの構成を説明する波形図である。
同図に示すように、第1噴射駆動パルスは、予備膨張部p11と、膨張ホールド部p12と、収縮部p13と、収縮ホールド部p14と、復帰膨張部p15とからなる。予備膨張部p11は、基準電位VCから第1膨張電位VH1まで一定勾配(θ1)で電位がプラス(第1の極性)側に変化(上昇)する波形要素であり、膨張ホールド部p12は、予備膨張部p11の終端電位である第1膨張電位VH1で一定な波形要素である。また、収縮部p13は、第1膨張電位VH1から第1収縮電位VL1まで電位がマイナス(第2の極性)側に一定の勾配で変化(下降)する波形要素であり、収縮ホールド部p14は、第1収縮電位VL1で一定な波形要素であり、復帰膨張部p15は、第1収縮電位VL1から基準電位VCまで電位が復帰する波形要素である。
同図に示すように、第1噴射駆動パルスは、予備膨張部p11と、膨張ホールド部p12と、収縮部p13と、収縮ホールド部p14と、復帰膨張部p15とからなる。予備膨張部p11は、基準電位VCから第1膨張電位VH1まで一定勾配(θ1)で電位がプラス(第1の極性)側に変化(上昇)する波形要素であり、膨張ホールド部p12は、予備膨張部p11の終端電位である第1膨張電位VH1で一定な波形要素である。また、収縮部p13は、第1膨張電位VH1から第1収縮電位VL1まで電位がマイナス(第2の極性)側に一定の勾配で変化(下降)する波形要素であり、収縮ホールド部p14は、第1収縮電位VL1で一定な波形要素であり、復帰膨張部p15は、第1収縮電位VL1から基準電位VCまで電位が復帰する波形要素である。
上記のように構成された第1噴射駆動パルスW1a,W1bが圧電振動子32に印加されると、まず、予備膨張部p11によって圧電振動子32が素子長手方向に収縮し、これに伴って圧力室41が基準電位VCに対応する基準容積から第1膨張電位VH1に対応する膨張容積まで膨張する。この膨張により、ノズル43におけるメニスカスが圧力室41側に大きく引き込まれると共に、圧力室41内にはリザーバー39側からインク供給口40を通じてインクが供給される。そして、この圧力室41の膨張状態は、膨張ホールド部p12の供給期間中に亘って維持される。
膨張ホールド部p12による膨張状態が維持された後、収縮部p13が供給されてこれに応じて圧電振動子32が伸長する。これに伴い、圧力室41は膨張容積から第1収縮電位VL1に対応する収縮容積まで収縮される。これにより、圧力室41内のインクが加圧されて、ノズル43メニスカスの中央部分が噴射側に押し出され、この押し出された部分が液柱のように伸びる。続いて、収縮ホールド部p14により、圧力室41の収縮状態が一定時間維持される。この間にメニスカスと液柱とが分離し、分離した部分がインク滴としてノズル43から噴射されて記録媒体Sに向けて飛翔する。このインクの噴射によって減少した圧力室41内のインク圧力が再び上昇するタイミングにあわせて復帰膨張部p15が圧電振動子32に印加される。この復帰膨張部p15の印加により、圧力室41が定常容積まで膨張復帰し、圧力室41内のインクの圧力変動(残留振動)が吸収、即ち、制振される。
上記の第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、1回に噴射されるインク量が最も多くなるように設計されているため、記録媒体S上の所定の領域を塗りつぶす所謂ベタ塗り印刷を行う際に好適に用いられる。そして、駆動信号COM1,COM2に含まれる各噴射駆動パルスの中(微振動駆動パルスW6を除く)で、第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、波形が最も簡素であり、圧力変化の大きさも最も緩やかであるため、複雑な振動を生じ難い。このため、当該第1噴射駆動パルスを用いてインクを噴射した後のメニスカスの残留振動も復帰膨張部p15によって制振されやすい。また、ノズル43から噴射されるインク滴の重量が大きいほど、メニスカスにおける振動の影響を受けにくいので、1回に噴射されるインク量が最も多い10pl(10ng)である第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、メニスカスの振動の影響を受けにくく、より高周波駆動に適している。
ここで、単位周期T1内の第1噴射駆動パルスW1a,W1bの発生間隔は、単位周期T1の半分の周期(T1/2)、又は、それに可及的に近い値に設定されることが望ましい。これは、第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、上記のベタ塗り印刷のように、より高周波駆動でインクの噴射を行う用途に用いられることがあるので、第1噴射駆動パルスW1a,W1b同士の間隔をできるだけ広げて、インクの噴射を安定させるためである。即ち、第1噴射駆動パルスによるインクの噴射後の残留振動は、他のパルスと比較して制振されやすいので、これに加えて第1噴射駆動パルス同士の間隔を広げるほど、単位周期T1内で先に発生される第1噴射駆動パルスW1aによってインクが噴射された後の残留振動が、後に発生される第1噴射駆動パルスW1bによるインクの噴射に影響することを抑制することができる。また、第1噴射駆動パルスW1a,W1bは、噴射されるインクの量が最大となるように設計されているので、第7ドットを形成する際に画素領域の偏った位置にドットが形成されると、これよりも小さいドットを形成する場合よりも偏りが目立ってしまう。このため、第1噴射駆動パルスW1a,W1b同士の間隔をできるだけ広げて、画素領域に形成されるドットの間隔を広げることが望ましい。
図7は、第2噴射駆動パルスW2a,W2bの構成を説明する波形図である。
同図に示すように、第2噴射駆動パルスは、予備膨張部p21(第1の変化要素)と、膨張ホールド部p22(維持要素)と、第1収縮部p23(第2の変化要素)と、中間ホールド部p24と、第2収縮部p25と、収縮ホールド部p26と、復帰膨張部p27とからなる。予備膨張部p21は、基準電位VCから第2膨張電位VH2まで第1噴射駆動パルスの予備膨張部p11の勾配よりも急な勾配(θ2>θ1)で電位がプラス側に変化する波形要素であり、膨張ホールド部p22は、予備膨張部p21の終端電位である第2膨張電位VH2で一定な波形要素である。また、第1収縮部p23は、第2膨張電位VH2から中間電位VMまで電位がマイナス側に変化する波形要素であり、中間ホールド部p24は、中間電位VMで一定な波形要素である。さらに、第2収縮部p25は、中間電位VMから第2収縮電位VL2まで電位がマイナス側に一定の勾配で変化(下降)する波形要素であり、収縮ホールド部p26は、第2収縮電位VL2で一定な波形要素であり、復帰膨張部p27は、第2収縮電位VL2から基準電位VCまで電位が復帰する波形要素である。
同図に示すように、第2噴射駆動パルスは、予備膨張部p21(第1の変化要素)と、膨張ホールド部p22(維持要素)と、第1収縮部p23(第2の変化要素)と、中間ホールド部p24と、第2収縮部p25と、収縮ホールド部p26と、復帰膨張部p27とからなる。予備膨張部p21は、基準電位VCから第2膨張電位VH2まで第1噴射駆動パルスの予備膨張部p11の勾配よりも急な勾配(θ2>θ1)で電位がプラス側に変化する波形要素であり、膨張ホールド部p22は、予備膨張部p21の終端電位である第2膨張電位VH2で一定な波形要素である。また、第1収縮部p23は、第2膨張電位VH2から中間電位VMまで電位がマイナス側に変化する波形要素であり、中間ホールド部p24は、中間電位VMで一定な波形要素である。さらに、第2収縮部p25は、中間電位VMから第2収縮電位VL2まで電位がマイナス側に一定の勾配で変化(下降)する波形要素であり、収縮ホールド部p26は、第2収縮電位VL2で一定な波形要素であり、復帰膨張部p27は、第2収縮電位VL2から基準電位VCまで電位が復帰する波形要素である。
上記のように構成された第2噴射駆動パルスW2a,W2bが圧電振動子32に印加されると、まず、予備膨張部p21によって圧電振動子32は素子長手方向に収縮し、これに伴って圧力室41が基準電位VCに対応する基準容積から第2膨張電位VH2に対応する膨張容積まで膨張する(第1の変化工程)。この膨張により、ノズル43におけるメニスカスが圧力室41側に大きく引き込まれると共に、圧力室41内にはリザーバー39側からインク供給口40を通じてインクが供給される。予備膨張部p21は、第1噴射駆動パルスの予備膨張部p11の勾配よりも急な勾配で電位が変化するので、メニスカスがより急激に引き込まれる。ここで、ノズル内周面から遠い位置にあるメニスカスの中央部は、圧力変化に追従してより高速に移動する一方、中央部よりもノズル内周面に近い部分(境界層)ほどその粘性が影響して圧力変化に追従し難いため、移動速度が中央部よりも遅くなる。これにより、第1噴射駆動パルスの場合では、予備膨張部p11によってメニスカス全体が大きく引き込まれるのに対し、第2噴射駆動パルスの場合では、予備膨張部p21によって主にメニスカス中央部がより大きく引き込まれる傾向となる。このようにすることで、後述する液柱を小さくすることができる。そして、この圧力室41の膨張状態は、膨張ホールド部p22の供給期間中に亘って維持される(ホールド工程)。
膨張ホールド部p22による膨張状態が維持された後、第1収縮部p23が供給されてこれに応じて圧電振動子32が伸長する。これに伴い、圧力室41は膨張容積から中間電位VMに対応する中間容積まで収縮される(第2の変化工程)。これにより、圧力室41内のインクが加圧されて、ノズル43におけるメニスカスの中央部分が噴射側に押し出され、この押し出された部分が液柱のように伸びる。続いて、中間ホールド部p24が供給され、中間容積が僅かな時間だけ維持される(維持工程)。これにより、圧電振動子32の伸長が一時的に停止される。この間では圧力室41内のインクが加圧されないので、その分、液柱の伸びは抑えられる。これにより、第1の噴射駆動パルスの場合よりも液柱の大きさが小さくなる。
中間ホールド部p24によるホールドの後、第2収縮部p25により圧電振動子32が素早く伸長し、圧力室41の容積が中間容積から収縮容積まで加圧される(第3の変化工程)。これにより、メニスカス全体が噴射方向に急激に押し出され、液柱の後端部分が加速される。そして、メニスカスと液柱とが分離し、分離した部分がインク滴としてノズル43から噴射されて記録媒体Sに向けて飛翔する。第2収縮部p25の後、収縮ホールド部p26により、圧力室41の収縮状態が一定時間維持される。インクの噴射によって減少した圧力室41内のインク圧力が再び上昇するタイミングにあわせて復帰膨張部p27が圧電振動子32に印加される。この復帰膨張部p27の印加により、圧力室41が定常容積まで膨張復帰し、圧力室41内のインクの圧力変動が制振される。
ここで、図8は、単位周期T1内で、上記第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bを順次選択してノズル43から2回に分けてインクを噴射させて第6ドットを記録媒体S上に形成する場合の波形パターンを示している。本実施形態における第2噴射駆動パルスW2は、それ単独で圧電振動子32に印加されてノズル43から噴射されるインクの量が7plになるように設計されている。そして、第6ドットを形成する際に第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによってノズル43から噴射されるインクの総量は14plになることが望ましい。ところが、第2噴射駆動パルスは、上記第1噴射駆動パルスの波形と比較して予備膨張部p21の電位勾配θ2が急峻に設定され、これによりメニスカスの引き込み速度が速くなっている。このため、第2噴射駆動パルスを用いてインクを噴射した後の残留振動が、第1の噴射駆動パルスの場合よりも大きくなる傾向となっている。そして、この残留振動によってノズル43におけるメニスカスの挙動が乱れ、これにより次に行うインク滴の噴射動作に悪影響を及ぼす虞がある。即ち、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによってノズル43からそれぞれ噴射されるインクの総量が、上記の残留振動の影響を受けることで14plにならない場合がある。したがって、同一の単位周期T1内で先に発生される第2噴射駆動パルスW2aによってインクが噴射された後の残留振動を考慮して、当該第2噴射駆動パルスW2aよりも後で発生する第2噴射駆動パルスW2bの時間軸上の配置位置を定める必要がある。即ち、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによってノズル43から噴射されるインクの総量が、第2噴射駆動パルスを単独で用いてインクを噴射したときのインク量の倍に相当する14plに可及的に近い値なるように、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔Δtaを定めることが望ましい。この間隔Δtaに関し、先に発生する第2噴射駆動パルスW2aによるインク噴射後の残留振動が、後に発生する第2噴射駆動パルスW2bによるインクの噴射に及ぼす悪影響を抑制する観点から、Δtaを可及的に広げることが望ましいが、単にΔtaを広げると当該残留振動の位相によっては所望のインク総量が得られない場合がある。また、本実施形態においては、単位周期T1をできるだけ短縮して印刷速度の向上を図りつつ、駆動信号内に複数種類の噴射駆動パルスおよび微振動駆動パルスを含ませる構成(第2噴射駆動パルスW2a,W2bの後に他の駆動パルスが発生される構成)を採用しているため、間隔Δtaの設定には制約が生じる。したがって、この制約の範囲内でより最適な間隔Δtaを定める必要性がある。
図9は、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによってノズル43から噴射されるインクの総量の変化(本発明の対策前)を示すグラフ(以下、適宜、波形間隔−インク総量特性(波形間隔−液体総量特性に相当)という。)であり、横軸は第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔Δta、縦軸は同一周期T1内でこれらの第2噴射駆動パルスW2a,W2bを用いてインクを2回に分けて噴射させたときの総量(重量)である。このグラフは、第2噴射駆動パルスW2a,W2bを用いて記録ヘッド8のノズル43から実際にインクを噴射させたときの総量(重量)を、電子天秤61(ザルトリウス株式会社AC211S)を使用して測定し、これをパルスの間隔Δtaを変えながら行って得られた値がそれぞれプロットされている。そして、このような測定を15℃、25℃、及び40℃のそれぞれの環境温度下で行った結果であり、後述する波形間隔−インク総量特性である。
図9に示すように、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの間隔Δtaを変化させると、両駆動パルスを組み合わせてインクを噴射させたときの総量が周期的に増減することが分かる。上述したように、第2噴射駆動パルスW2aによってインクを噴射した後のメニスカスの残留振動が、次の第2噴射駆動パルスW2bによってインクを噴射する際に影響を及ぼしているからである。即ち、波形間隔Δtaを変えると、第2噴射駆動パルスW2aによるインク噴射後の残留振動に対し、第2噴射駆動パルスW2bによってインクを噴射するタイミング(第2噴射駆動パルスW2bが圧電振動子32に印加されるタイミング)が変わるため、この影響を受けて噴射量が増減する。したがって、この変化の周期は、メニスカスの残留振動の周期に対応しており、圧力室41内のインクに生じる固有振動の周期に応じて概ね定まる。
図10は、温度変化に対するインクの粘度の変化を示すグラフである。横軸は温度(℃)であり、縦軸はインクの粘度(mPa・s)である。上記プリンター1では、環境温度(プリンター内部、特に記録ヘッド8のノズル43近傍の温度)が変化した場合、この温度の変化に伴ってインクの粘度が変化する。図10の例では、25℃のときのインク粘度が3.3mPa・sであるのに対し、これよりも高い40℃では、インク粘度が2.1mPa・sに低下する。ここで、例えば、プリンター1の仕様上の基準温度が25℃に設定されているものとし、この基準温度25℃において第2噴射駆動パルスW2a,W2bによって噴射されるインクの総量が目標値である14ngとなるような波形間隔Δta=A(図9参照)に設定した場合において、温度が40℃に上昇したときにはインク総量が基準温度のときよりも増加してしまう。図9の例では、40℃のときのインク総量は15.5ng(+11%)となる。逆に、25℃よりも低い15℃では、インク粘度が4.4mPa・sに上昇する。この場合、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせを用いてノズル43からインクを噴射したときのインク総量が、基準温度の場合よりも低下する。図9の例では、15℃のときのインク総量は13.5ng(−4%)となる。即ち、15℃〜40℃の範囲で温度が変わった場合、インク総量が2ng変動することになる。このようなインク総量の変動は、記録媒体Sにおける画像等の粒状性の悪化に繋がる。
このようなインク総量が変動することを抑制するべく、本発明に係るプリンター1では、W2a,W2bの組み合わせによって噴射されるインクの総量が環境温度に拘わらず14ngにできるだけ近い値を維持することが可能なΔtaに設定されている。以下、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの間隔Δtaを設定するための波形間隔設定工程について説明する。
図11は、波形間隔設定工程における装置構成を説明するブロック図である。なお、波形間隔設定工程は、記録ヘッド8が配置される雰囲気の温度(環境温度)を任意の値に設定することができる環境下で行われる。
図11に例示した装置は、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bを発生可能なパルス発生回路60(パルス発生手段)と、記録ヘッド8から噴射されるインクを捕集して重量を測定する電子天秤61(重量測定手段)と、これらのパルス発生回路60及び電子天秤61に対して電気的に接続され、波形間隔設定手段として機能する制御部62とを備えている。この制御部62は、CPU62a,ROM62b,RAM62c,及び情報記憶部62d(例えばEEPROM)等を備えている。
図11に例示した装置は、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bを発生可能なパルス発生回路60(パルス発生手段)と、記録ヘッド8から噴射されるインクを捕集して重量を測定する電子天秤61(重量測定手段)と、これらのパルス発生回路60及び電子天秤61に対して電気的に接続され、波形間隔設定手段として機能する制御部62とを備えている。この制御部62は、CPU62a,ROM62b,RAM62c,及び情報記憶部62d(例えばEEPROM)等を備えている。
波形間隔設定工程では、まず特性取得工程が行われる。
この特性取得工程では、環境温度が所定の温度(例えば15℃)に設定される。この環境下で、パルス発生回路60と記録へッド8とが電気的に接続され、所定の間隔Δta(例えば、3μs)に設定された第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bが、パルス発生回路60から記録ヘッド8の圧電振動子32に印加されて、記録へッド8のノズル43からインクが噴射される。そして、電子天秤61は、記録ヘッド8から噴射されたインクの重量を測定する。なお、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bによってノズル43からインクがそれぞれ噴射された状態(2滴分のインクが噴射された状態)を1回の噴射とし、このインクの噴射を複数回行ったときのインクの重量を測定する場合、測定値を噴射回数で除算することで、1回分のインク総量が取得される。また、複数回の噴射を行う場合、インクの噴射によるメニスカスの残留振動が十分に静定されるように、1回噴射を行った後から次の噴射を行うまでの時間は十分に長く確保される。
この特性取得工程では、環境温度が所定の温度(例えば15℃)に設定される。この環境下で、パルス発生回路60と記録へッド8とが電気的に接続され、所定の間隔Δta(例えば、3μs)に設定された第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bが、パルス発生回路60から記録ヘッド8の圧電振動子32に印加されて、記録へッド8のノズル43からインクが噴射される。そして、電子天秤61は、記録ヘッド8から噴射されたインクの重量を測定する。なお、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bによってノズル43からインクがそれぞれ噴射された状態(2滴分のインクが噴射された状態)を1回の噴射とし、このインクの噴射を複数回行ったときのインクの重量を測定する場合、測定値を噴射回数で除算することで、1回分のインク総量が取得される。また、複数回の噴射を行う場合、インクの噴射によるメニスカスの残留振動が十分に静定されるように、1回噴射を行った後から次の噴射を行うまでの時間は十分に長く確保される。
ここで、パルス発生回路60は、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔Δtaを所定の範囲で変化させるようになっている。この間隔Δtaの変化の範囲は、上記駆動信号COM1,COM2中の各駆動パルスとの間で干渉が生じないような範囲に設定される。本実施形態では、Δtaが3〜30μsの範囲で段階的に複数変化される(図9参照)。そして、上記のインク総量の測定が、各間隔Δtaに設定された第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bを用いてそれぞれ行われる。インク総量の測定結果は、環境温度と間隔taとに対応付けられて情報記憶部62dに記憶される。このようにして、波形間隔−インク総量特性が得られる。波形間隔−インク総量特性が得られたならば、環境温度が変更されて(例えば25℃)、同様な手順で波形間隔−インク総量特性の取得が行われる。本実施形態では、15℃、25℃、及び40℃の各環境温度における波形間隔−インク総量特性が取得される。なお、これらの環境温度は、プリンター1を実際使用する上で想定される環境温度の代表例として予め選定された温度である。
各温度における波形間隔−インク総量特性が取得されたならば、制御部32は、この波形間隔−インク総量特性に基づいて、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの波形間隔Δtaを設定する(波形間隔設定工程)。このΔta設定工程では、インク総量が目標値である14ng又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化によるインク総量の変化がより少ない間隔を、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの間隔Δtaとして設定する。例えば、図9においてBで示す波形間隔Δtaに設定される。Δta=Bに設定した場合、基準温度25℃のときにはインク総量が約13ngとなり、目標値よりも少し少ない値となるが、温度が変化したときのインク総量の変動が他の波形間隔に設定する場合と比較して小さい。具体的には、例えば、波形間隔Δta=Aに設定した場合、15℃〜40℃の範囲で温度が変わると、インク総量が約2ng変動するのに対し、波形間隔Δta=B設定した場合、上記温度範囲におけるインク総量の変動が約0.5ngに抑えられる。なお、基準温度におけるインク総量が目標値と異なる場合の許容量は、例えば、±1ngである。また、図9においてCで示す波形間隔Δtaに設定することもできる。この場合、基準温度25℃のときにはインク総量が目標値である約14ngとなり、温度が変化したときのインク総量の変動も比較的小さい。ただし、この場合、万一Δtaに誤差が生じた場合に、インク総量の変動が、Δta=Bに設定する場合よりも大きくなる虞がある。このため、Δta=Bのように、波形間隔−インク総量特性の極大又は極小に対応する間隔に設定することで、Δtaに誤差が生じた場合におけるインク総量の変動を抑制することができる。
このように、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの波形間隔Δtaが、インク総量が目標値である14ng又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化によるインク総量の変化がより少ない間隔に設定されることにより、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによって噴射されるインクの総量が、環境温度に拘わらず目標総量に近づけられる。これより、記録媒体Sに形成される第6ドットの大きさや位置が環境温度に応じてばらつくことが抑制される。これにより、記録媒体Sに記録される画像等の粒状性が改善され、画質の低下が防止される。そして、温度に応じた波形の補正が不要であるため、補正処理に要する温度センサーや温度に応じた波形データ等が不要であり、装置構成の簡略化が可能となる。また、補正処理が不要であるため、その分、プリンター1の処理速度(印刷処理速度)の低下が抑制される。
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、本実施形態では、環境温度の例として15℃、25℃、及び40℃を例示したが、これには限られず、プリンター1の使用環境に即したより多くの環境温度を選定し、選定された各温度に対応した「波形間隔−インク総量特性」を取得し、当該特性に基づいてより温度変化の少ない波形間隔Δtaに設定することができる。補正対象温度をより細かく設定することで、より精度の高い補正を行うことができ、記録媒体Sに記録される画像等の粒状性がより一層改善される。
さらに、上記実施形態では、本発明における噴射駆動パルスの一例として、図5に例示したものを説明したが、噴射駆動パルスの形状や駆動信号における各噴射駆動パルスの配置は例示したものに限られない。
図12は、本発明の他の実施形態における駆動信号COM1,COM2の構成を説明する波形図である。なお、上記第1実施形態における各駆動パルスと同一波形の駆動パルスに対しては、対応する駆動パルスと同一の符号が付されている。
本実施形態では、図5に例示した各駆動信号COM1,COM2の場合よりも噴射駆動パルスの種類が削減されている。即ち、上記第1実施形態では、微振動パルスW6を含む6種類の駆動パルスを用いて1つの画素に対して7種類の大きさのドットを形成し、1画素を8階調で表現する構成を例示したのに対し、本実施形態では、微振動パルスW6を含む4種類の駆動パルスを用いて1つの画素に対して5種類の大きさのドットを形成し、1画素を6階調で表現する構成が採用されている。本実施形態においても、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの波形間隔Δtaが、インク総量が目標値である14ng又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化によるインク総量の変化がより少ない間隔に設定されることにより、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによって噴射されるインクの総量が、環境温度に拘わらず目標総量に近づけられる。その結果、記録媒体Sに形成される第6ドットの大きさや位置が環境温度に応じてばらつくことが抑制される。なお、他の構成については、上記第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
図12は、本発明の他の実施形態における駆動信号COM1,COM2の構成を説明する波形図である。なお、上記第1実施形態における各駆動パルスと同一波形の駆動パルスに対しては、対応する駆動パルスと同一の符号が付されている。
本実施形態では、図5に例示した各駆動信号COM1,COM2の場合よりも噴射駆動パルスの種類が削減されている。即ち、上記第1実施形態では、微振動パルスW6を含む6種類の駆動パルスを用いて1つの画素に対して7種類の大きさのドットを形成し、1画素を8階調で表現する構成を例示したのに対し、本実施形態では、微振動パルスW6を含む4種類の駆動パルスを用いて1つの画素に対して5種類の大きさのドットを形成し、1画素を6階調で表現する構成が採用されている。本実施形態においても、第2噴射駆動パルスW2aと第2噴射駆動パルスW2bとの波形間隔Δtaが、インク総量が目標値である14ng又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化によるインク総量の変化がより少ない間隔に設定されることにより、第2噴射駆動パルスW2aおよびW2bの組み合わせによって噴射されるインクの総量が、環境温度に拘わらず目標総量に近づけられる。その結果、記録媒体Sに形成される第6ドットの大きさや位置が環境温度に応じてばらつくことが抑制される。なお、他の構成については、上記第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
また、上記各実施形態では、記録媒体Sに対して記録ヘッド8を移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド8の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド8に対して記録媒体Sを移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。要は、記録ヘッド8と記録媒体Sとが相対移動しながらインクを噴射して記録媒体Sにインクを着弾させる構成であれば、本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、圧力発生手段として、所謂縦振動型の圧電振動子32を例示したが、これには限られず、例えば、所謂撓み振動型の圧電振動子を採用することも可能である。この場合、上記実施形態で例示した駆動パルスWに関し、電位の変化方向、つまり上下が反転した波形となる。
さらに、圧力発生手段としては圧電振動子には限らず、圧力室内に気泡を発生させる発熱素子や静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用することができる。
さらに、圧力発生手段としては圧電振動子には限らず、圧力室内に気泡を発生させる発熱素子や静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用することができる。
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、複数の噴射駆動パルスを用いて液体の噴射を行う液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
1…プリンター,2…搬送機構,3…キャリッジ用移動機構,4…駆動信号生成回路,6…検出器群,7…プリンターコントローラー,8…記録へッド、11…ヘッド制御部,12…キャリッジ,16…プラテン,32…圧電振動子,41…圧力室,43…ノズル,S…記録媒体,60…パルス発生回路,61…電子天秤,62…制御部
Claims (2)
- 圧力発生手段の駆動によってノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を一定の周期で繰り返し発生可能な駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一繰り返し周期内で前記第1駆動パルスよりも先に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、前記選択制御手段は、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスをこの順で選択可能に構成された液体噴射ヘッドの波形間隔設定方法であって、
前記第2駆動パルスと前記第1駆動パルスとの間隔と、これらの駆動パルスを前記圧力発生手段に印加して液体を噴射させたときの液体の総量との関係を示す波形間隔−液体総量特性を、予め選定された複数の環境温度毎に取得する特性取得工程と、
前記特性取得工程において取得された前記波形間隔−液体総量特性に基づき、同一繰り返し周期内で前記第2駆動パルスおよび前記第1駆動パルスを選択して液体を噴射させたときの総量が目標値又は当該目標値により近い値となり、且つ、温度変化による総量の変化がより少ない波形間隔を、前記第2駆動パルスと前記第2駆動パルスの間隔として設定する波形間隔設定工程と、
を含むことを特徴とする液体噴射装置の波形間隔設定方法。 - 前記各駆動信号は、前記第1駆動パルス及び前記第2駆動パルスの他に、噴射される液体の量が最も多い最大駆動パルスを繰り返し周期内にそれぞれ1つずつ合計2つ含み、また、前記第1駆動パルス及び前記第2駆動パルスによって噴射される液体の量よりも噴射される液体の量が少ない1つ又は複数の他の駆動パルスを繰り返し周期内にそれぞれ含み、
同一繰り返し周期内における前記第1駆動信号の前記最大駆動パルスと前記第2駆動信号の前記最大駆動パルスとの発生間隔が、前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔よりも、前記繰り返し周期の半分に近く、且つ、前記繰り返し周期内における前記第1駆動パルスと前記第2駆動パルスとの発生間隔は、前記繰り返し周期内における最大駆動パルス同士の発生間隔よりも短く、
前記繰り返し周期内において前記第1駆動パルスおよび前記第2駆動パルスの後に他の駆動パルス又は最大駆動パルスの一方が発生することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置の波形間隔設定方法。
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JP2010144616A JP2012006280A (ja) | 2010-06-25 | 2010-06-25 | 液体噴射装置の波形間隔設定方法 |
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Legal Events
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