JP2012005413A - 高分子ポリフェノールを含有する発酵茶抽出物の調製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 発酵茶葉の水溶出液と親水性ビニルポリマーを材質とする吸着剤を混合した後、吸着剤の非吸着成分を除去してから、水を含んでいてもよいエタノールを用いて吸着剤の吸着成分を溶出させることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
また、本発明の発酵茶抽出物は、請求項2記載の通り、プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000である高分子ポリフェノールを7.5重量%以上含み、かつ、カフェインの含量が1重量%以下であることを特徴とする。
また、本発明の医薬品または飲食品は、請求項3記載の通り、請求項2記載の発酵茶抽出物を用いて調製されてなることを特徴とする。
この工程は、発酵茶葉の水溶出液に含まれる高分子ポリフェノールを吸着剤に吸着させることを目的としたものである。発酵茶葉の水溶出液は、例えば50℃以上の温水ないし熱水、または沸騰水に発酵茶葉を投入することで得られる、発酵茶葉に含まれる高分子ポリフェノールをはじめとする水溶性成分を含む水溶液であることが望ましい。親水性ビニルポリマーを材質とする吸着剤は、例えばゲル濾過クロマトグラフィーに用いられる粒子径が10μm〜500μmの多孔質で球状の市販のものであってよく、その具体例としては、東ソー株式会社のトヨパール(TOYOPEARL:製品名)などが挙げられる。この工程は、例えば、発酵茶葉の水溶出液を満たした容器に吸着剤を添加して攪拌する態様(攪拌時間は例えば5秒間〜1時間とすればよい)で行ってもよいし、吸着剤を充填したカラムに発酵茶葉の水溶出液をアプライする態様で行ってもよい。なお、発酵茶葉の水溶出液と吸着剤との混合割合は、例えば1:0.1〜1:5(容積比)とすればよい。
この工程は、発酵茶葉の水溶出液に含まれる吸着剤に吸着しない不要成分を除去することを目的としたものである。この工程は、(1)の工程を発酵茶葉の水溶出液を満たした容器に吸着剤を添加して攪拌する態様で行った場合、例えば吸着剤を濾紙上に濾取した後、十分量の水を用いて吸着剤を洗浄することで行えばよい。また、(1)の工程を吸着剤を充填したカラムに発酵茶葉の水溶出液をアプライする態様で行った場合、十分量の水をカラムに流してカラム内の吸着剤を洗浄することで行えばよい。
この工程は、吸着剤に吸着させた高分子ポリフェノールを溶出させることを目的としたものである。溶出溶媒として含水エタノールを用いる場合、そのエタノール濃度は30%以上が望ましい。エタノール濃度が低すぎると高分子ポリフェノールが効果的に溶出されない恐れがあるからである。高分子ポリフェノールの溶出性とコストなどを合わせ考えれば、エタノール濃度が70%〜90%の含水エタノールを溶出溶媒として用いることが望ましい。なお、この工程は、(1)の工程を発酵茶葉の水溶出液を満たした容器に吸着剤を添加して攪拌する態様で行った場合、(2)の工程で洗浄した吸着剤に対して溶出溶媒を添加することで行えばよい。また、(1)の工程を吸着剤を充填したカラムに発酵茶葉の水溶出液をアプライする態様で行った場合、(2)の工程で洗浄したカラムに溶出溶媒を流すことで行えばよい。
市販の紅茶(デイリークラブ:三井農林の商品名)30gを弱く沸騰させた水1Lに投入し、約1分間そのままの状態を保ち、さらに時々攪拌しながら10分間保つことで、紅茶に含まれる水溶性成分の抽出を行った。その後、ブフナーロートにNo.2濾紙(アドバンテック)2枚を敷いて吸引濾過を行って濾液(紅茶の水溶出液)を得た。この濾液に、親水性ビニルポリマーを材質とする吸着剤として水で予め洗浄した東ソー株式会社のトヨパールHW−40F(製品名、粒子径:30μm〜60μm)250mLを加えて1分間攪拌した後、ブフナーロートにNo.2濾紙(アドバンテック)1枚を敷いて吸引濾過を行い、濾紙上に吸着剤を濾取し、濾紙上の吸着剤を1回につき水150mLを用いて10回洗浄した。次に、濾紙上の吸着剤に対して150mLのエタノール濃度が80%の含水エタノールを添加して吸着剤の吸着成分を溶出させる操作を12回行った。12回分の吸着剤の吸着成分の溶出液を50℃で減圧濃縮を行ってエタノールを除去した後、凍結乾燥を行うことで、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物2.96gを茶褐色粉末として得た。この紅茶由来の抽出物に含まれる成分の含量を以下の方法によって定量した。
(A)分析方法
(ア)分析装置:中圧ポンプ(SP11、東京理化器械)2台、中圧液体クロマト用カラム(φ1×30cm、東京理化器械)、試料注入器(Injector VI、東京理化器械)、フラクションコレクター(CHF161RA、アドバンテック)を用い、溶媒の直線的濃度勾配が可能な装置を組み立てた。
(イ)展開溶媒:A溶媒としてアセトン濃度が20%の含水アセトン90mL、B溶媒としてアセトン濃度が50%の含水アセトン90mLを用い、流速を1.5g/4分とし、A溶媒とB溶媒の割合を100:0から0:100に直線的に変化させた。
(ウ)試料注入:サンプル40mgをアセトン濃度が20%の含水アセトン2mLに溶解して行った。
(エ)分画:溶出液をフラクションコレクターで1.5gずつ分取した(フラクション総数:115)。溶出液の350nmの吸光度の測定結果をもとに溶出曲線を描き、これに従って分画した。各画分を50℃で減圧濃縮してアセトンを除去した後、凍結乾燥を行ってから秤量し、その重さから画分を構成する成分のサンプル中の割合を求めた。
(B)分析結果
目的とする紅茶由来の高分子ポリフェノールは、フラクションNo.75〜110の画分として得られ、サンプルに含まれるその含量は25.6重量%であった。なお、この画分が目的とする紅茶由来の高分子ポリフェノールであることは、特許文献1に記載の方法による平均分子量の測定結果(数平均分子量:1.36×104、重量平均分子量:1.59×104)と構造解析の結果に基づいて確認した(以下に示す部分構造を有する)。フラボノイド系化合物は、フラクションNo.20〜74の画分として得られ、サンプルに含まれるその含量は60.6重量%であった。
サンプルを精密に秤量し、アセトニトリル濃度が10%の含水アセトニトリルの一定量に溶解して調製した分析試料を用いて分析を行った。
(ア)分析装置:島津製作所のLC−10Aシステム(ポンプLC−10AD、カラムオープンCTO−10A、検出器SPD−M10AVP)を用いた。カラムはInertsil ODS−3、φ4.6×250mm、粒子径5μm(ジーエルサイエンス)を用いた。
(イ)分析条件:分析試料の注入量は4.0μLとし、流速は0.7mL/分とした。カラム温度は40℃とした。
(ウ)展開溶媒:A溶媒としてアセトニトリル濃度が5%の含水アセトニトリル(0.02%TFA含有)、B溶媒としてアセトニトリル濃度が40%の含水アセトニトリル(0.02%TFA含有)を用い、A溶媒とB溶媒の割合を70分間で100:0から0:100に直線的に変化させた。
(エ)検出:280nmと375nmを検出波長とし、標準物質のエリア数と分析試料のエリア数から、サンプルに含まれる成分のサンプル中の割合を求めた。
(オ)結果:サンプルには、カテキン類(エピガロカテキン:3.5重量%、エピガロカテキンガレート:3.8重量%)やテアフラビン類(テアフラビン1:1.1重量%、テアフラビン2ab:1.2重量%、テアフラビン3:3.8重量%)が含まれていることがわかった。サンプルに含まれるカフェインの含量は0.38重量%であった。
以上の結果から、実施例1で得られた紅茶由来の抽出物は、その約1/4が高分子ポリフェノールから構成されていることがわかった。また、この抽出物のカフェインの含量は1重量%以下であったことから、実施例1の方法は、紅茶由来の高分子ポリフェノールを高含量で含み、しかも脱カフェイン化された抽出物を、水とエタノールだけを用いて簡易に調製することができる方法であることがわかった。
実施例1におけるエタノール濃度が80%の含水エタノールのかわりにエタノール濃度が40%の含水エタノールを用いること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を得た。
実施例1における紅茶のかわりにウーロン茶を用いること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、ウーロン茶由来の高分子ポリフェノールを7.9重量%含む抽出物を得た。
実施例1で得た紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を市販の緑茶(キリンビバレッジの商品名:生茶)に0.08%添加することで、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料を製造した。
実施例1で得た紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を2号の硬カプセルに封入することで製剤化してサプリメントとした。
応用例1において製造した紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料の脂肪蓄積抑制作用と体重増加抑制作用を以下の方法で調べた。
(実験方法)
雄の6週齢の2型糖尿病モデルマウス(BKS.Cg− +Leprdb/+Leprdb/Jcl*:日本クレア)をA群〜C群の3群に分け(それぞれn=8)、1週間(0週)の予備飼育を行った後、10週間(1〜10週)の飼育実験を行った。予備飼育期間中は各群とも蒸留水を自由飲水で与え、飼育実験期間中はA群には蒸留水を、B群には緑茶飲料を、C群には紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料をそれぞれ自由飲水で与えた。飼料としては全飼育期間においてCE−2(日本クレア)を給餌した。10週間の飼育実験終了後、各個体を解剖し、特許文献1に記載の方法に従って肝臓組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色を行った。また、内臓にまとわりついている脂肪組織(内臓脂肪)を取り出してその重量の測定を行った。
(実験結果)
各群の肝臓組織切片の染色結果を図1に示す(AおよびBにおける「*」は血管を示す。スケールバー:100μm)。また、各群の内臓脂肪重量の測定結果を図2に示す(図中の「0.08%E80茶」は紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料投与群を、「緑茶」は緑茶飲料投与群を、「DW」は蒸留水投与群をそれぞれ示す。*=P<0.05:student t−test)。さらに、全飼育期間中において1週間ごとに測定した各群の体重の測定結果を図3に示す(図中の「0.08%E80茶」「緑茶」「DW」は図2と同じ。*=P<0.05:student t−test)。図1から明らかなように、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料投与群の肝臓組織に含まれる脂肪(白抜きの部分)は、蒸留水投与群と緑茶飲料投与群よりも格段に少なかった。また、図2から明らかなように、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料投与群の内臓脂肪重量は、蒸留水投与群と緑茶飲料投与群よりも有意に少なかった。さらに、図3から明らかなように、紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料投与群の体重の増加の程度は、蒸留水投与群と緑茶飲料投与群よりも低く、10週目において有意差があった。以上の結果から、応用例1において製造した紅茶由来の高分子ポリフェノールを含有する抽出物を配合した緑茶飲料は、優れた脂肪蓄積抑制作用と体重増加抑制作用を有することがわかった。
Claims (3)
- プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000である高分子ポリフェノールを含有する発酵茶抽出物の調製方法であって、発酵茶葉の水溶出液と親水性ビニルポリマーを材質とする吸着剤を混合した後、吸着剤の非吸着成分を除去してから、水を含んでいてもよいエタノールを用いて吸着剤の吸着成分を溶出させることを特徴とする調製方法。
- プロシアニジン構造と、カテキン類のB環同士が結合した構造を部分構造中に少なくとも含んでおり、数平均分子量が9000〜18000である高分子ポリフェノールを7.5重量%以上含み、かつ、カフェインの含量が1重量%以下であることを特徴とする発酵茶抽出物。
- 請求項2記載の発酵茶抽出物を用いて調製されてなることを特徴とする医薬品または飲食品。
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