特許文献1および特許文献2に記載される技術では、共に、第1腕と第2腕が近接して配置され、各腕には、所定面内の駆動振動が励振される。検出精度を向上するためには、駆動振動の振幅を増大させるのが好ましいが、第1腕と第2腕とが近接して配置されていることから、駆動振動の振幅を大きくすることには限界がある。
また、特許文献1に記載される技術では、共通の振動腕上に、駆動電極と検出電極とが形成されていることから、配線パターンが複雑となる。また、微細化を促進した場合には、駆動電極と検出電極との間隔が小さくなり、各電極間の寄生容量が大きくなることから、静電結合による影響が大きくなる。また、微細化を促進すると、駆動電極と検出電極の電位が異なる場合には、意図しない不要な電界が生じ易くなり、これに伴う不要な振動成分が発生し易くなる。つまり、電気機械結合の影響を受けやすくなる。
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、振動型ジャイロ素子の検出精度を向上させることができる。
(1)本発明の振動型ジャイロ素子の一態様は、基部と、前記基部から、所定面内で第1方向に延出する駆動腕と、前記基部から、前記所定面内において前記第1方向と交差する第2方向に延出する検出腕と、記駆動腕に設けられる駆動電極と、前記検出腕に設けられる検出電極と、を含み、前記駆動電極によって形成される電界による歪みによって、前記駆動腕に前記第2方向の駆動振動を励振し、前記第1方向の軸回りに作用する角速度によって、前記駆動腕に前記所定面に垂直な第3方向の第1検出振動が生じ、前記第1検出振動が前記基部を経由して前記検出腕に伝播し、前記検出腕に、前記第1検出振動に対応した第2検出振動が励振され、前記第2検出振動に基づく歪みによって前記検出腕に電界が生じ、前記検出腕に生じる電界によって電荷の移動が生じ、前記電荷の移動による電気信号が前記検出電極から出力される。
本態様では、駆動腕と検出腕は、互いに交差する方向に分離して配置されているため、静電結合ならびに電気機械結合を小さくできる。よって、高精度かつ高安定な振動型ジャイロセンサー素子が実現される。また、本態様では、駆動腕と検出腕とが分離されていることから、駆動電極と検出電極の各々の配線パターンを単純化することができる。したがって、製造時の歩留まりの向上ならびに製造コストの低減が実現される。
なお、駆動腕および検出腕自体を水晶結晶板のような圧電材料板で構成することができる。また、駆動腕および検出腕における基材を弾性を有する材料で構成し、その基材上に圧電膜を形成してもよい。つまり、圧電膜のもつ圧電特性によって、電界を歪みに変換して駆動腕を振動させたり、検出腕に生じた第2検出振動を電界に変換したりすることもできる。
(2)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様では、前記第2方向は、前記第1方向に直交する方向であり、前記駆動腕の少なくとも一部、および前記検出腕の少なくとも一部は、共に同じ圧電材料で構成され、前記駆動腕が、前記駆動腕における前記圧電材料の、前記第2方向の電界による前記第1方向の歪みによって前記第2方向の駆動振動が励振されているときに、前記第1方向の軸回りに角速度が作用すると、前記駆動腕には、前記第3方向の前記第1検出振動が生じ、前記第1検出振動が前記基部を経由して前記検出腕に伝播し、前記検出腕に、前記第1検出振動に対応した前記第3方向の前記第2検出振動が励振され、これによって、前記検出腕における前記圧電材料の、前記第2方向の歪みによる前記第2方向の電界によって電荷の移動が生じ、前記電荷の移動による電気信号が前記検出電極から出力される。
本態様では、駆動腕と検出腕は、互いに直交する方向に分離して配置される。駆動腕には、圧電材料の第2方向の電界による第1方向の歪みによって、第2方向の駆動振動(面内振動)が励振される。第1方向の軸回りに角速度が生じると、駆動腕には、コリオリ力によって第3方向の第1検出振動(面外振動)が生じる。この第1検出振動が基部を介して検出腕に伝達され、第3方向の第2検出振動(面外振動)が生じる。検出腕の第2検出振動によって生じる電界によって電荷が移動する。この電荷の移動による電気信号(微小電流信号)を検出することによって、角速度を検出することができる。
(3)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様では、前記駆動腕の幅をWdとし、前記検出腕の幅をWsとしたとき、Wd<Wsが成立する。
本態様では、駆動腕および検出腕の各々の幅に差を設ける。上述のとおり、駆動腕には、面内の駆動振動が励振される。検出感度をより向上させるためには、この面内の駆動振動の、基部を経由した検出腕への漏れ込みを、できるだけ低減することが好ましい。そこで、本態様では、検出腕の幅Wsを、駆動腕の幅Wdよりも大きく設定し、検出腕における面内(第1方向)の変形が生じにくくしている。よって、検出腕に、駆動振動に対応した不要な面内振動(つまり、駆動振動成分の漏れ込みによる不要な面内振動)が生じにくくなる。一方、検出腕に生じる第2検出振動は面外振動(第3方向の振動)であることから、検出腕の幅Wsを大きくしたことによる影響はほとんど受けない。よって、本態様によれば、駆動振動成分の、検出腕への漏れ込みを効果的に低減することができる。
(4)本発明の振動型ジャイロ素センサー素子の他の態様では、前記駆動腕は、互いに対向する一対の主面を有し、前記検出腕は、第1主面としての第1面と、前記第1面に対向する、第2主面としての第2面と、前記第1面と前記第2面を連結する第3面と、前記第3面に対向する第4面と、を有し、前記駆動電極は、前記駆動腕の前記第1面に設けられる第1電極と、前記駆動腕の前記第2面に設けられ、前記第1電極に接続されている第2電極と、前記駆動腕の前記第3面に設けられ、前記第1電極および前記第2電極から電気的に独立している第3電極と、前記駆動腕の前記第4面に設けられ、前記第3電極に接続されている第4電極と、を有し、前記検出電極は、前記検出腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる櫛歯電極である。
本態様では、駆動腕の第1面〜第4面の各々に設けられる第1電極〜第4電極の各々によって駆動腕に電界を生じさせ、これによって、駆動腕に第2方向の駆動振動(面内振動)を励振する。また、検出腕には、検出電極としての櫛歯電極(IDT(interdigital transducer)電極)が設けられる。この櫛歯電極(IDT電極)によって、第3方向の第2検出振動(面外振動)に伴って生じる微小な電流信号を検出することができる。
(5)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様は、前記検出電極としての前記櫛歯電極は、所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第1対向部分と、前記第1対向部分に隣接して設けられ、かつ、前記所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第2対向部分と、を有し、前記第1対向部分と第2対向部分は、前記検出腕の延出方向である前記第2方向に沿って配置されており、かつ、前記所定距離をL1とし、前記第1対向部分と前記第2対向部分との間の距離をL2としたとき、L1<L2が成立する。
櫛歯電極は、互いに所定距離だけ離間して対向して配置される一対の電極からなる第1対向部分と、この第1対向部分に隣接し、かつ、互いに所定距離だけ離間して対向して配置される一対の電極からなる第2対向部分と、を有する。第1対向部分および第2対向部分の各々において、対向する一対の電極間に電界(有効電界)が生じ、この電界(有効電界)が駆動腕に加えられる。一方、第1対向部分の第2対向部分側の電極と、第2対向部分の第1対向部分側の電極との間にも電界(無効電界)が生じる。第1対向部分および第2対向部分の各々において生じる有効電界の方向と、第1対向部分と第2対向部分との間に生じる無効電界の方向が逆である場合、有効電界の一部が無効電界によって打ち消されるという不都合が生じる。
このため、本態様では、第1対向部分および第2対向部分の各々における電極間の距離(L1)よりも、第1対向部分と第2対向部分との間の距離(L2:具体的には、第1対向部分の第2対向部分側の電極と第2対向部分の第1対向部分側の電極との間の距離)を大きく設定する。これによって、第1対向部分と第2対向部分との間に生じる無効電界による悪影響(つまり、有効電界の一部が無効電界によって打ち消されること)を軽減することができる。
(6)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様では、前記駆動電極としての前記櫛歯電極は、前記第2対向部分に隣接して設けられ、かつ、前記所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第3対向部分を、さらに有し、前記第1対向部分、前記第2対向部分、前記第3対向部分の順に、前記基部からの距離が大きくなるものとし、かつ、前記第2対向部分と前記第3対向部分との間の距離をL3としたとき、L2<L3が成立する。
本態様では、櫛歯電極に含まれる3つの対向部分の各々間の間隔を、基部からの距離に応じて変化させる。つまり、第1対向部分と第2対向部分との間の間隔(L2)よりも、第2対向部分と第3対向部分との間隔(L3)を大きく設定する。基部から遠い箇所は振動が少ないことから、基部から遠い箇所において電極間の間隔が増大したとしても、検出効率に与える影響は小さい。一方、検出腕の延出方向に沿って配置される対向部分の数を、各対向部分を等間隔で配置する場合に比べて減少させることができる。このことは、検出腕に発生する電界の総量が減ることを意味し、よって、消費電力の削減の効果が得られる。
(7)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様では、前記駆動腕は、前記基部から、正の第1方向に延出する第1駆動腕と、前記基部から、前記正の第1方向とは逆向きの負の第1方向に延出する第2駆動腕と、を有し、前記検出腕は、前記基部から、前記第1方向に直交する正の第2方向に延出する第1検出腕と、前記基部から、正の第2方向とは逆向きの負の第2方向に延出する第2検出腕と、を有し、前記駆動電極は、前記第1駆動腕に設けられる第1駆動電極と、前記第2駆動腕に設けられる第2駆動電極と、を有し、前記検出電極は、前記第1検出腕に設けられる第1検出電極と、前記第2検出腕に設けられる第2検出電極と、を有する。
本態様では、第1駆動腕に加えて第2駆動腕を設け、また、第1検出腕に加えて第2検出腕を設ける。駆動腕の数が増えることによって、駆動モードの励振効率(駆動振動の効率)が向上する。例えば、本態様では、第1駆動腕に生じる第1検出振動および第2駆動腕に生じる第1検出振動の双方が、第1検出腕および第2検出腕の各々に伝播するため、第1検出腕および第2検出腕の各々に生じる第2検出振動の振幅が増大する。
また、検出腕の数が増えることによって、検出効率が向上する。つまり、第2検出振動に対応して移動する電荷の総量が増え、その電荷を各検出腕に設けた検出電極から取り出すことによって、検出信号(S/NのS)を大きくすることができる。
本態様では、第1駆動腕と第2駆動腕は共に共通の基部に一端が連結されるが、各駆動腕の延出方向(延在方向)は逆向きである。つまり、第1駆動腕が正の第1方向に延出されるときは、第2駆動腕は負の第1方向に延出される。ここでいう正負は、延出方向の向きを具体的に示すために便宜上、使用される。例えば、基部の中心を原点とし、第1方向に沿って延びる軸(例えばY軸とする)を想定すると、+Y軸方向が正の第1方向であり、−Y軸方向が負の第1方向である。
同様に、第1検出腕と第2検出腕は共に共通の基部に一端が連結されるが、各検出腕の延出方向(延在方向)は逆向きである。つまり、第1検出腕が正の第2方向に延出されるときは、第2検出腕は負の第2方向に延出される。ここでいう正負は、延出方向の向きを具体的に示すために便宜上、使用される。例えば、基部の中心を原点とし、第2方向に沿って延びる軸(例えばX軸とする)を想定すると、+X軸方向が正の第2方向であり、−X軸方向が負の第2方向である。
また、本態様では、第1駆動腕には第1駆動電極が形成され、第2駆動腕には第2駆動電極が形成され、第1検出腕には第1検出電極が形成され、第2検出腕には第2検出電極が形成される。
(8)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様では、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕の各々は、第1主面としての第1面と、前記第1面に対向する、第2主面としての第2面と、前記第1面と前記第2面とを連結する第3面と、前記第3面に対向する第4面と、を有し、また、前記第1検出腕および前記第2検出腕の各々は、互いに対向する一対の主面を有し、前記第1駆動電極は、前記第1駆動腕の前記第1面に設けられる、第1駆動腕用の第1電極と、前記第1駆動腕の前記第2面に設けられ、前記第1駆動用の第1電極に接続されている第1駆動腕用の第2電極と、前記第1駆動腕の前記第3面に設けられ、前記第1駆動腕用の第1電極および前記第1駆動腕用の前記第2電極から電気的に独立している第1駆動腕用の第3電極と、前記第1駆動腕の前記第4面に設けられ、前記第1駆動腕用の第3電極に接続されている第1駆動腕用の第4電極と、を有し、また、前記第2駆動電極は、前記第2駆動腕の前記第1面に設けられる、第2駆動腕用の第1電極と、前記第2駆動腕の前記第2面に設けられ、前記第2駆動腕用の第1電極に接続されている第2駆動腕用の第2電極と、前記第2駆動腕の前記第3面に設けられ、前記第2駆動腕用の第1電極および前記第2駆動腕用の前記第2電極から電気的に独立している第2駆動腕用の第3電極と、前記第2駆動腕の前記第4面に設けられ、前記第2駆動腕用の第3電極に接続されている第2駆動腕用の第4電極と、を有し、また、前記第1検出電極は、前記第1検出腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第1櫛歯電極であり、前記第2検出電極は、前記第2検出腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第2櫛歯電極であり、かつ、前記第1駆動腕用の第1電極および前記第1駆動腕用の第2電極は、前記第2駆動腕用の第3電極および前記第2駆動腕用の第4電極に共通に接続され、前記第1駆動腕用の第3電極および前記第1駆動腕用の第4電極は、前記第2駆動腕用の第1電極および前記第2駆動腕用の第2電極に共通に接続されている。
本態様では、上記(7)の態様における電極構造と、電極の接続形態について規定する。すなわち、第1検出腕には第1検出電極が形成されるが、この第1検出電極は、第1検出腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第1櫛歯電極である。同様に、第2検出腕には第2検出電極が形成され、この第2検出極は、第2検出腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第2櫛歯電極である。例えば、第1櫛歯電極を構成する一対の電極のうちの一方の電極は、第2櫛歯電極を構成する一対の電極のうちの一方の電極と共通に接続され、第1櫛歯電極を構成する一対の電極のうちの他方の電極は、第2櫛歯電極を構成する一対の電極のうちの他方の電極と共通に接続される。上記2つの共通接続点から、第2検出振動に伴って生じる微小な電気信号を取り出すことができる。
また、第1駆動腕の第1面〜第4面の各々には、第1駆動腕用の第1電極〜第4電極が設けられる。第2駆動腕の第1面〜第4面の各々には、第2駆動腕用の第1電極〜第4電極が設けられる。但し、第1駆動腕に生じる駆動振動の向きと、第2駆動腕に生じる駆動振動の向きは、互いに逆向きである。この点を考慮して、第1駆動腕における電極と第2駆動腕における電極との接続が決定される。つまり、第1駆動腕用の第1電極および第1駆動腕用の第2電極は、第2駆動腕用の第3電極および第2駆動腕用の第4電極に共通に接続される。また、第1駆動腕用の第3電極および第1駆動腕用の第4電極は、第2駆動腕用の第1電極および第2駆動腕用の第2電極に共通に接続される。
(9)本発明の振動型ジャイロセンサーの一態様では、前記検出電極から出力される前記電気信号に基づいて、前記第1方向の軸回りに作用する角速度を検出する検出回路と、を含む。
これによって、高精度の検出が可能な振動型ジャイロセンサー(振動型ジャイロスコープ)を実現することができる。
(10)本発明の振動型ジャイロセンサーにおける角速度の検出方法の一態様は、水晶板で構成される基部と、前記基部から、前記水晶板の所定結晶面内で第1方向に延出する、前記水晶板で構成される駆動腕と、前記基部から、前記水晶板の所定結晶面内において前記第1方向と直交する第2方向に延出する、前記水晶板で構成される検出腕と、を有する振動型ジャイロ素子と、前記第1方向の軸回りに作用する角速度を検出する検出回路と、を有する振動型ジャイロセンサーによる角速度の検出方法であって、前記水晶板の、第2方向の電界に対応する第1方向の歪みを用いて、前記駆動腕に、第2方向の駆動振動を励振し、前記第1方向の軸回りに作用する角速度によって前記駆動腕に、前記所定結晶面に垂直な第3方向の第1検出振動を生じさせ、前記第1検出振動を、前記基部を経由して前記検出腕に伝播させて、前記検出腕に、前記第3方向の第2検出振動を生じさせ、かつ、前記検出腕に、前記水晶板の、第2方向の歪みに対応した第2方向の電界を生じさせ、前記第2方向の電界によって電荷が移動することによって生じる電気信号に基づいて、前記検出回路が前記角速度を検出する。
本態様の角速度(物理量)検出方法では、水晶結晶板(例えばZ板(略Z板))によって構成される振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用の振動片)を使用する。駆動腕は基部から第1方向(例えばY軸方向)に延出する。検出腕は基部から第2方向(例えばX軸方向)に延出する。第1方向の軸と第2方向の軸とで規定される平面は、例えば水晶板のZ面を含む平面である。また、本態様では、第1方向と第2方向とは直交する。
水晶板の第2方向の電界(例えばX軸方向の電界Ex)に対応する第1方向の歪み(Sy)を用いて駆動腕に、第2方向の駆動振動(面内振動)が励振される。第1方向の軸回りに作用する角速度によって、駆動腕に第3方向(例えばZ軸方向)の第1検出振動(面外振動)が生じる。第1検出振動は、基部を介して検出腕に伝播される。
検出腕には、第3方向の第2検出振動が生じ、この第2検出振動に対応して電界が生じる。つまり、検出腕を構成する水晶板の、第1方向(X軸方向)の電界(Ex)に対応した第1方向の歪み(Sx)によって、第1方向の電界(Ex)が生じる。この第1方向の電界(Ex)によって電荷が移動することによって生じる電気信号に基づいて、検出回路が角速度を検出する。
本態様では、基部、駆動腕および検出腕自体が水晶板で構成されることから、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、また耐久性も高い。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1(A)および図1(B)は、第1実施形態にかかる振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)における、角速度の検出原理を説明するための図である。
図1(A)に示されるように、振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)100は、基部10と、基部から、所定面内(XY面内)で第1方向(Y軸方向)に延出する駆動腕20と、基部10から、所定面内(XY面内)において第1方向(Y軸方向)と交差する方向である第2方向(X軸方向)に延出する検出腕30と、を有する。なお、駆動腕20には駆動電極(図1(A)では不図示)が設けられ、検出腕30には検出電極(図1(A)では不図示)が設けられる。また、基部10は、センサーケース(不図示)等に、例えば接着剤によって固定される。
基部10、駆動腕20および検出腕30自体を水晶結晶板のような圧電材料板で構成することができる。また、基部10、ならびに駆動腕20および検出腕30における基材を弾性を有する材料で構成し、その基材上に圧電膜を形成してもよい。つまり、圧電膜のもつ圧電特性によって、電界を歪みに変換して駆動腕を振動させたり、検出腕に生じた第2検出振動を電界に変換したりすることもできる。但し、基部10、駆動腕20および検出板30自体を水晶板等で構成する構造は、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、耐久性も高い。
本実施形態では、図1(A)の振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)は、基部10、駆動腕20および検出腕30自体が、Z板(略Z板)の水晶結晶板によって構成されるものとする。
上述のとおり、駆動腕20は、基部10から第1方向(Y軸方向)に延出する。つまり、駆動腕20の一端は基部10に連結され、他端は自由端となっている。検出腕30は、基部10から第2方向(X軸方向)に延出する。つまり、検出腕30の一端は基部10に連結され、他端は自由端となっている。第1方向の軸(Y軸)と第2方向の軸(X軸)とで規定される平面(XY平面)は、例えば水晶板のZ面を含む平面である。また、第1方向と第2方向は、広義には互いに交差する方向であり、以下の説明では、互いに直交するものとする。
図1(A)に示されるように、駆動腕20における駆動振動VAは第2方向(X軸方向:面内方向)に生じる。この駆動振動VAは、水晶板の第2方向の電界(X軸方向の電界Ex)に対応する第1方向の歪み(Sy)を利用することによって生じさせることができる。
ここで、図1(B)を参照する。図1(B)は、水晶板の圧電定数と電界と歪みの関係を示す図である。太線で囲んで示されるように、水晶板は、第2方向の電界Exに対応する圧電定数として、高い数値を示しているd11とd12の二つを有している。d11は、第2方向の電界Exに対応して発生する第2方向(X軸方向)の歪みの大きさに関係する圧電定数であり、d12は、第2方向の電界Exに対応して発生する第1方向(Y軸方向)の歪みの大きさに関係する圧電定数である。図示されるように、d11、d12は共に高い数値を示しており、電界Exによって大きな歪みSx、Syを生じさせ、逆に歪みSx、Syによって大きな電界Exを生じさせることができることを表している。d11およびd12を、駆動振動の励振や、物理量の検出のために使用することができる。なお、d12について極性が負になっているのは、X方向に正の電界(+Ex)が生じたとき、Y方向に負の歪み、すなわち収縮が生じることを意味している。
つまり、水晶板は、第2方向(X軸方向)の電界+Exが生じると、圧電定数d11によって第2方向(X軸方向)に伸張して引っ張り応力が発生し、また、d12によって、第1方向(Y軸方向)に収縮して収縮応力が発生する。本実施形態では、圧電定数d12による歪みを駆動振動の励振に使用する。
また、逆に、水晶板に、例えば、第2方向(X軸方向)の引っ張り歪みSxが生じると、圧電定数d11によって、正の第2方向(+X軸方向)に電界+Exが生じ、その電界の向きに電荷が移動する。本実施形態では、この圧電定数d11を、検出振動を電気信号に変換するために利用する。
すなわち、圧電定数d12を利用して駆動腕20に駆動振動VAが励振され、また、圧電定数d11を利用して、検出腕30から検出信号が得られる。
駆動腕20に、第2方向(X軸方向)の駆動振動が励振されている状態で、振動型ジャイロ素子100が、第1方向(Y軸方向)の軸回りに回転すると、駆動腕に角速度Ωが加わる。3次元空間における角速度は角速度ベクトルによって表すことができる。図1(A)では、Y軸に関して、図中の矢印で示す方向に角速度が生じ、この場合の角速度ベクトルは、右ネジの進行方向(すなわち+Y軸方向)に生じる。
駆動振動中の駆動腕20に角速度が作用することによって、コリオリ力Fc(+Fc,−Fc)が第3方向(Z軸方向:XY平面に垂直な方向)に生じる。これによって、駆動腕20に第3方向(Z軸方向)の第1検出振動(面外振動)VBが生じる。
第1検出振動VBは、基部10を介して検出腕30に伝播される。よって、検出腕30に、第2検出振動VCが生じる。この第2検出振動VCの方向は、第3方向(Z軸方向)である。
検出腕30には、第2検出振動VCに対応して電界Ex(+Ex,−Ex)が生じる。つまり、検出腕30を構成する水晶板の、第2方向(X軸方向)の電界(Ex)に対応した第2方向の歪みSxに関係する圧電定数(d11)によって、第2方向の電界(+Ex,−Ex)が生じる。この第2方向の電界(+Ex,−Ex)によって電荷の移動が生じる。つまり、微小な電流が生じる。この微小な電気信号(電荷信号あるいは電流信号)に基づいて、検出回路(図1(A)では不図示)が角速度を検出する。
図1(A)に示される振動型ジャイロ素子100は、駆動腕20と検出腕30が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕20と検出腕30が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減される。なお、静電結合や電気機械結合については、図16を用いて後述する。
また、基部10、駆動腕20および検出腕30自体を水晶板で構成し、水晶板自体がもつ圧電定数を用いて駆動振動を励振し、かつ水晶板自体がもつ圧電定数を用いて検出信号(電気信号)を検出することによって、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、また耐久性を高くすることができる。
図2(A)および図2(B)は、電極の配置例を示す平面図である。図2(A)は、振動型ジャイロ素子100の第1面(表面)における電極配置を示す図である。図2(B)は、振動型ジャイロ素子100の第2面(裏面)における電極配置を示す透視図である。
図2(A)に示すように、基部10の第1面(表面)には、スルーホール部50(図中、点線で囲んで示される)が設けられ、スルーホール部50には、第1スルーホール51と、第2スルーホール52と、第3スルーホール53と、が設けられる。また、基部10には、第1パッド(外部接続端子)P1と、第2パッドP2と、第3パッドP3と、第4パッドP4と、が設けられる。第1パッドP1には、第1スルーホール部51が電気的に接続される。第2パッドP2には、第2スルーホール部52が電気的に接続される。第3パッドP3には、第3スルーホール部53が電気的に接続される。また、第4パッドP4には、配線k2が接続される。なお、図2(A)において、k1は駆動腕20の壁面に設けられる配線であり、k2は基部10の壁面(側面)に設けられる配線であり、k3〜k5は、基部10の第1面(表面)に設けられる配線である。
まず、検出腕30に設けられる検出電極(櫛歯電極)について説明する。検出腕30は一対の主面(第1面(表面)と第2面(裏面))を有する。この一対の主面の少なくとも一方に、櫛歯電極が形成される。本実施形態では、第1面(表面)および第2面(裏面)の双方に櫛歯電極が形成される。
図2(A)において太い点線で囲んで示されるように、検出腕30の第1面(表面)には、櫛歯電極(IDT(interdigital transducer)電極)40aが設けられる。櫛歯電極40aは、電極41a(斜線が施されている電極)と電極41b(黒塗りの電極)とを有する。
また、図2(B)において太い点線で囲んで示すように、検出腕30の第2面(裏面)には、櫛歯電極40bが設けられる。櫛歯電極40bは、電極41c(斜線が施された電極)と電極41d(黒塗りの電極)とを有する。電極41cは、電極41aに、第1スルーホール部51を経由して接続されている。また、電極41dは、電極41bに、第2スルーホール部52を経由して接続されている。なお、図2(B)において、k1’は駆動腕20の壁面に設けられる配線であり、k2’は基部10の壁面(側面)に設けられる配線であり、k3’〜k5’は、基部10の第2面(裏面)に設けられる配線である。
ここで、図3(B)を参照して、櫛歯電極の構成について、具体的に説明する。図3(A)および図3(B)は、電極の配置例を示す断面図である。なお、図3(A)は、図2(A)のA−A線に沿う断面図であり、図3(B)は、図2(A)のB−B線に沿う断面図である。
ここで、図3(B)に示されるように、検出電極としての櫛歯電極40a(表面に設けられる櫛歯電極)は、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(電極41aと電極41b)からなる第1対向部分42(1)と、第1対向部分42(1)に隣接して設けられ、かつ、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(41a,41b)からなる第2対向部分42(2)と、第2対向部分42(2)に隣接して設けられ、かつ、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(41a,41b)からなる第3向部分42(3)と、を有している。
第1対向部分41(1)〜第3対向部分42(3)の各々は、検出腕30の延出方向である第2方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間の距離(あるいは、第2対向部分42(2)と第3対向部分42(3)との間の距離)をL2としたとき、L1<L2が成立する。
L1<L2とするのは、以下の理由による。以下の説明では、第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)に着目する。第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々において、対向する一対の電極(41a,41b)間に電界(有効電界)Ex(1)が生じる。
一方、第1対向部分42(1)における第2対向部分側の電極41bと、第2対向部分42(2)の第1対向部分側の電極41aとの間にも電界(無効電界)Ex2が生じる。第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々において生じる有効電界の方向Ex(1)と、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間に生じる無効電界Ex(2)の方向が逆である場合、有効電界Ex(1)の一部が無効電界Ex(2)によって打ち消されるという不都合が生じる。
このため、図3(B)に示される例では、第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々における電極間の距離L1よりも、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間の距離(L2:具体的には、第1対向部分の第2対向部分側の電極41bと第2対向部分の第1対向部分側の電極41aとの間の距離)を大きく設定する。これによって、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間に生じる無効電界Ex(2)による悪影響(つまり、有効電界Ex(1)の一部が無効電界Ex(2)によって打ち消されること)を軽減することができる。
次に、駆動腕20における駆動電極の配置について説明する。この説明においては、図2(A),図2(B)ならびに図3(A)を適宜、参照する。例えば、図3(A)に示されるように、駆動腕20は、第1面(表面:A面)と、第1面に対向する第2面(裏面:B面)と、第1面と第2面を連結する第3面(左側面:C面)と、第3面に対向する第4面(右側面:D面)とを有する。
駆動電極は、駆動腕20の第1面(A面)に設けられる第1電極32aと、駆動腕20の第2面(B面)に設けられ、第1電極32aに接続されている第2電極32bと、駆動腕20の第3面(C面)に設けられ、第1電極32aおよび第2電極32bから電気的に独立している第3電極32cと、駆動腕20の第4面(D面)に設けられ、第3電極32cに接続されている第4電極32dと、を有する。第1電極32aと第2電極32bの共通接続点をJ3とする。第3電極32cと第4電極32cの共通接続点をJ4とする。共通接続点J3およびJ4は、発振駆動回路の入力端子に相当する。
図4は、振動型ジャイロセンサーの構成の一例を示す図である。図4において、振動型ジャイロセンサー105は、振動型ジャイロ素子100と、発振駆動回路110と、検出回路140と、を有する。発振駆動回路110は、AGC回路112を有する。発振駆動回路110の入力端子J3およびJ4は各々、振動型ジャイロ素子100の基部10に設けられるパッドP3およびパッドP4の各々に接続される。
また、検出回路140は、Q/V変換回路120と、増幅回路122と、移相器124と、同期検波回路126と、ローパスフィルター(LPF)128と、A/D変換回路130と、を有する。検出回路140の入力端子J1およびJ2の各々は、振動型ジャイロ素子100の基部10に設けられるパッドP1およびパッドP2の各々に接続される。なお、同期検波回路126は、検出信号に重畳される、不要な駆動振動成分を除去するために設けられている。
図5は、検出振動から信号を検出する手段について説明するための図である。図5の上側には検出腕30の平面図が示され、中段には検出腕のA−A線に沿う断面図が示され、下側には面外方向に振動している検出腕の様子が示されている。図3の下側に示されるように、検出腕30に第2検出振動VCが生じると、検出腕30の第1面(A面)および第2面(B面)には、引っ張りあるいは収縮の歪み(応力)が発生する。図5の中段には、検出腕30の第1面(A面)の歪みと、これに対応して生じる電界との関係が記載されており、また、検出腕30の第2面(B面)の歪みと、これに対応して生じる電界との関係が記載されている。つまり、検出腕30の第1面(A面)および第2面(B面)に生じる、引っ張りあるいは収縮の歪み(応力)に対応して、X軸方向の電界Ex(+Ex,−Ex)が生じ、これに伴って電荷が移動し、微小電流信号(すなわち検出電流)が流れる。
ここで、図6を参照して、振動型ジャイロ素子および振動型ジャイロセンサーの構成と動作を、より具体的に説明する。図6(A)〜図6(F)は、振動型ジャイロ素子および振動型ジャイロセンサーの構成と動作を説明するための図である。
図6(A)に示される振動型ジャイロ素子100において、駆動腕20は、基部10から第1方向(Y軸方向)に延出している。検出腕30は、基部10から第2方向(X軸方向)に延出している。
また、図6(A)の例では、駆動腕20の幅をWdとし、検出腕30の幅をWsとしたとき、Wd<Wsが成立する(但し、この例に限定されるものではない)。上述のとおり、駆動腕20には、第2方向(X軸方向)の駆動振動VA(面内振動)が励振される。検出感度をより向上させるためには、この面内の駆動振動の、基部10を経由した検出腕30への漏れ込みを、できるだけ低減することが好ましい。
そこで、検出腕の幅Wsを、駆動腕の幅Wdよりも大きく設定する。これによって、検出腕30における面内方向(第1方向(Y軸方向))の変形が生じにくくなる。よって、検出腕30に、駆動振動に対応した不要な面内振動(つまり、駆動振動成分の漏れ込みによる不要な面内振動)が生じにくくなる。
図6(B)は、駆動腕20が、角速度が生じていない状態で、第2方向(X軸方向)に面内振動している状態(つまり、駆動振動VAの励振状態)を示している。
図6(C)では、第1方向(Y軸方向)の軸回りに角速度Ωが生じる。これに伴い、駆動腕20には、コリオリ力によって第3方向(Z軸方向)の第1検出振動(面外振動)VBが生じる。
図6(D)では、駆動腕20に生じた第1検出振動VBが、基部10を介して検出腕30に伝達され、検出腕30に第3方向(Z軸方向)の第2検出振動(面外振動)VCが生じる。検出腕30の第2検出振動VCによって生じる電界によって電荷が移動する。この電荷の移動による電気信号(微小電流信号)を検出することによって、角速度を検出することができる。
先に図1(B)に示したように、圧電素子としての水晶は、X方向の電界Exに対応した歪みSxに関係する圧電定数d11を有している。先に図4を参照して説明したように、振動腕が面外に振動すると、振動腕の表面には、収縮あるいは伸張の応力が生じ、また、振動腕の裏面には、伸張あるいは伸張の応力が生じる。このX軸方向(第2方向)に沿う応力(歪み)は、歪みSxに関係する圧電定数d11によって、X軸方向(第2方向)の電界Ex(+Ex,−Ex)に変換される。
図6(E)および図6(F)に示すように、検出腕30には、櫛歯電極(41a,41b)が形成されている。図6(E)に示すように、検出腕30が+Z軸方向に屈曲した場合、櫛歯電極における対向部分(対向電極あるいは交差指電極)に第2方向の電界−Exが生じ、これによって、電極41bから電極41aに向かって電荷が移動する。したがって、図6(E)では、Q/V変換回路120の端子J2から端子J1に向かって微小な電流が流れる。
図6(F)では、検出腕30は、−Z軸方向に屈曲する。この場合、櫛歯電極における対向部分(対向電極あるいは交差指電極)に第2方向の電界+Exが生じ、これによって、電極41aから電極41bに向かって電荷が移動する。したがって、図6(F)では、Q/V変換回路120の端子J1から端子J2に向かって微小な電流が流れる。このように、電荷の移動による電気信号(微小電流信号)を検出することによって、角速度を検出することができる。
上述のとおり、検出腕30の幅Wsは、駆動腕20の幅Wdよりも大きく設定することが好ましい。これによって、検出腕30における面内(第1方向(Y軸方向)の変形が生じにくくなり、検出腕30に、駆動振動に対応した不要な面内振動(つまり、駆動振動成分の漏れ込みによる不要な面内振動)が生じにくくなる。一方、検出腕30に生じる第2検出振動VCは面外振動(第3方向の振動)であることから、検出腕30の幅Wsを大きくしたことによる影響はほとんど受けない。つまり、駆動振動成分の、検出腕への漏れ込みを効果的に低減することができる。よって、検出感度がより向上する。
(第2実施形態)
図7は、振動型ジャイロ素子における駆動腕における櫛歯電極の他の構成例を示す図である。
先に説明した図2〜図5に示される例では、櫛歯電極における、各対向部分間の距離は等間隔であったが、図7の例では、各対向部分間の距離を、基部10からの距離に応じて異ならせる。
図7において、櫛歯電極の第1対向部分42(1)、第2対向部分42(2)、第3対向部分(42(3)の各々は、記載の順に、基部10からの距離が遠くなる。そして、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間隔をL2とし、第2対向部分42(2)と第3対向部分42(3)との間の距離をL3としたとき、L2<L3が成立する。つまり、本実施形態では、櫛歯電極に含まれる3つの対向部分の各々間の間隔を、基部10からの距離に応じて変化させる。つまり、第1対向部分と第2対向部分との間の間隔(L2)よりも、第2対向部分と第3対向部分との間隔(L3)を大きく設定する。基部から遠い箇所は振動が少ないことから、基部から遠い箇所において電極間の間隔が増大したとしても、検出効率に与える影響は小さい。一方、検出腕の延出方向に沿って配置される対向部分の数を、各対向部分を等間隔で配置する場合に比べて減少させることができる。このことは、検出腕に発生する電界の総量が減ることを意味し、よって、消費電力の削減の効果が得られる。
図7の例では、第1地点N1〜第2地点N2までの距離をL4としたとき、第2地点N2から第3地点N3までの距離L5が、2・L4となるように設定されている。このようにすれば、駆動腕20の延出方向に沿って配置される対向部分の数を、各対向部分を等間隔で配置する場合に比べて減少させることができる(特に、駆動腕が長い場合には、対向部分の数の削減効果が顕在化する)。
(第3実施形態)
図8は、検出腕における櫛歯電極の他の構成例を示す図ある。図8の上側には、検出腕30の平面図が示され、下側には、検出腕30のA−A線に沿う断面図が示される。
図8の下側の断面図に示されるように、検出腕30の第1面(表面)には、凸部60a〜60cが設けられている。そして櫛歯電極を構成する、対向する一対の電極41aおよび41bは、凸部60a〜60cの各々を挟むように形成されている。同様に、検出腕30の第2面(裏面)には、凸部60a’〜60c’が設けられている。そして、櫛歯電極を構成する、対向する一対の電極41cおよび41dは、凸部60a’〜60c’の各々を挟むように形成されている。
この構造によれば、無駄な電界が減少することから、対向する電極(41aと41b、41cと41d)間に生じる電界Exの強度を大きくすることができる。よって、より効率的に駆動振動を励振することができる。
また、各対向部分間に生じる無効な電界(図中、点線で示される)は、空気(減圧パッケージ内では例えば真空に近い)の誘電率が、振動腕の材料(水晶や石英)等の誘電率よりも小さいことから弱められる。よって、無効電界によって有効電界が打ち消されることが効果的に低減される。この点も効率的な検出振動の検出に寄与する。よって、本実施形態によれば、物理量(角速度等)の検出効率が向上し、振動型ジャイロセンサーの、より高感度化が実現される。
(第4実施形態)
図9は、検出腕における櫛歯電極の他の構成例を示す図ある。図9の例では、検出腕30の第1面(A面)に設けられる一対の櫛歯電極のうちの一方の電極41b(黒塗りの電極)と、検出腕30の第2面(B面)に設けられる一対の櫛歯電極のうちの一方の電極41d(黒塗りの電極:電極41bと同電位の電極)とが、対向して設けられている。
例えば、電極41bおよび電極41d(黒塗りの電極)の電位極性を+とし、電極41aおよび電極41c(斜線の電極)の電位極性を−とする。第1面(A面)に設けられる櫛歯電極の極性の並びは、電極41bを起点として、基部(図中の左端)から遠ざかる方向に沿って、+,−,+,−,+となる。また、第2面(B面)に設けられる櫛歯電極の極性の並びは、電極41bに対向する電極41dを起点として、基部(図中の左端)から遠ざかる方向に沿って、+,−,+,−,+,−となる。このように、互いに対向する電極を起点として考えると、第1面(A面)の櫛歯電極の極性の並びと、第2面(B面)の櫛歯電極の極性の並びとが一致していることになる。
このような電極配置によって、第1面(A面)と第2面(B面)との間で、無駄な縦方向の電界が生じにくくなる。よって、無駄な電界が減少することから検出効率が向上し、振動型ジャイロセンサーの、より高感度化が実現される。
(第5実施形態)
図10〜図12を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1駆動腕20に加えて第2駆動腕20’を設け、また、第1検出腕30に加えて第2検出腕30’を設ける。
図10(A)および図10(B)は、第5実施形態にかかる振動型ジャイロ素子における電極配置の例ならびに配線の形成例を示す図である。図10(A)は、第1面(表面)における平面視での電極の配置例を示している。
図10(A)に示されるように、第1検出腕30には第1検出電極の一部としての櫛歯電極40aが設けられている。第1検出腕30に設けられる櫛歯電極(第1面および第2面の各々に櫛歯電極が設けられる場合を含む)を総称して第1櫛歯電極という。櫛歯電極40aは、第1櫛歯電極の構成要素である。
また、第2検出腕30’には、第2検出電極の一部としての櫛歯電極40a’が設けられている。第2検出腕30’に設けられる櫛歯電極(第1面および第2面の各々に櫛歯電極が設けられる場合を含む)を総称して第2櫛歯電極という。櫛歯電極40bは、第2櫛歯電極の構成要素である。
櫛歯電極40aは、電極41aと41bを有する。同様に、櫛歯電極40a’は、電極41a’と41b’を有する。電極41aと電極41a’は電気的に接続される。また、電極41bと電極41b’は電気的に接続される。電極41aと電極41a’は互いに、基部10の中心Oに関して点対称の位置関係にある。また、電極41bと電極41b’は互いに、基部10の中心Oに関して点対称の位置関係にある。
また、第1駆動腕20に設けられる第1駆動電極は、第1駆動腕20の第1面に設けられる第1駆動腕用の第1電極32aと、第1駆動腕20の第2面に設けられ、第1駆動腕用の第1電極に接続されている第1駆動腕用の第2電極32b(図10では不図示,図3(A)参照)と、第1駆動腕20の第3面に設けられ、第1駆動腕用の第1電極および第1駆動腕用の第2電極から電気的に独立している第1駆動腕用の第3電極32cと、第1駆動腕の第4面に設けられ、第1駆動腕用の第3電極32cに接続されている第1駆動腕用の第4電極32dと、を有する。
また、第2駆動腕20’に設けられる第2駆動電極は、第2駆動腕20’の第1面に設けられる第2駆動腕用の第1電極32a’と、第2駆動腕20’の第2面に設けられ、第2駆動腕用の第1電極に接続されている第2駆動腕用の第2電極32b’(図10では不図示、図3(A)の第2電極32bに相当する)と、第2駆動腕20’の第3面に設けられ、第2駆動腕用の第1電極および第2駆動腕用の第2電極から電気的に独立している第2駆動腕用の第3電極32c’と、第2駆動腕20’の第4面に設けられ、第2駆動腕用の第3電極に接続されている第2駆動腕用の第4電極32d’と、を有する。
このように、第1駆動腕20の第1面〜第4面の各々には、第1駆動腕用の第1電極32a〜第4電極32dが設けられ、第2駆動腕20’の第1面〜第4面の各々には、第2駆動腕用の第1電極32a’〜第4電極32d’が設けられる。
但し、第1駆動腕20の、駆動振動VAによる屈曲方向と、第2検出腕20’の、駆動振動VAによる屈曲方向は、上述したように互いに逆向きである。この点を考慮して、第1駆動腕20における各電極と第2駆動腕20’における各電極との接続が決定されている。
つまり、第1駆動腕用の第1電極32aおよび第1駆動腕用の第2電極32bは、第2駆動腕用の第3電極32c’および第2駆動腕用の第4電極32d’に共通に接続される。また、第1駆動腕用の第3電極32cおよび第1駆動腕用の第4電極32dは、第2駆動腕用の第1電極32a’および第2駆動腕用の第2電極32b’に共通に接続される。上記2つの共通接続点の各々が、発振駆動回路110(図4参照)に接続される。
図10(B)は、第1面(表面)における平面視での配線やスルーホールの配置例を示している。図10(B)において、k10は第1駆動腕20の壁面に形成される配線であり、k11は第2検出腕30’の壁面に形成される配線であり、k13は第2駆動腕20’の壁面に形成される配線であり、k14は第1検出腕30の壁面に形成される配線である。
また、図10(B)において、P1’は第1パッドであり、P2’は第2パッドであり、P3’は第3パッドであり、P4’は第4パッドである。
また、図10(B)において、太い点線で囲まれて示される領域51は、第1スルーホール部であり、同様に、太い点線で囲まれて示される領域51’は、第2スルーホール部である。第1スルーホール部51および第2スルーホール部51’の各々には複数のスルーホールが含まれる。これらのスルーホールは、例えば、第1面上に形成される電極と、第2面上に形成される電極とを相互に接続するために使用され、また例えば、第1面上の配線と第2面上の配線とで立体交差を実現するために使用される。
図11(A)および図11(B)は、第5実施形態の動型ジャイロ素子の動作を説明するための図である。
図11(A)は、本実施形態の振動型ジャイロ素子100’の平面図を示す。第1駆動腕20には駆動振動VAが励振され、第2駆動腕20’には駆動振動VA’が励振される(屈曲方向は同じ向き)。
ここで、第1方向の軸(Y軸)回りに角速度Ωが生じると、図11(B)に示すように、駆動腕20にコリオリ力Fc(+Fcおよび−Fc)が作用し、第1駆動腕20に、第3方向(Z軸方向)の第1検出振動VBが生じ、第2駆動腕20’に、第3方向(Z軸方向)の第1検出振動VB’が生じる(屈曲方向は同じ向き)。
第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々は、弾性をもつ基部10を介して第1検出腕30および第2検出腕30’の各々に連結されている。よって、第1駆動腕20に生じた第1検出振動VB、ならびに第2駆動腕20’に生じた第1検出振動VB’は、基部10を介して、第1検出腕30および第2検出腕30’の各々に効率的に伝播する。第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々が、例えば−Z方向に振動しているとき(つまり、図中、実線で示される状態のとき)は、第1検出腕30および第2検出腕30’の各々には、+Z方向の検出振動が生じる。また、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々が、+Z方向に振動しているとき(つまり、図中、点線で示される状態のとき)は、第1検出腕30および第2検出腕30’の各々には、−Z方向の検出振動が生じる。
また、第1検出腕30および第2検出腕30’の幅は、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の幅よりも広く設定されていることから、第1検出腕30および第2検出腕30’における第1方向(Y軸方向)の変形はほとんど生じない。つまり、第1検出腕30および第2検出腕30’には、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の駆動振動(面内振動)成分の漏れ込みによる、不要な面内振動が生じにくく、よって、駆動振動成分の漏れ込みによる検出感度の低下は問題とならない。
図12は、図5実施形態の振動型ジャイロセンサーにおける、第1検出腕30と第2検出腕30’の電気的接続と検出電流の流れを示す図である。図12の例では、第1検出腕30に+Z軸方向の第2検出振動が生じ、第2検出腕30’に−Z軸方向の第2検出振動が生じている。この場合、図中の矢印で示すような電荷Qの移動が生じる。つまり、Q/V変換回路120のJ2端子からJ1端子に電流が流れる。この電気信号に基づいて物理量(角速度)が検出される。
このように、本実施形態では、第1駆動腕20に加えて第2駆動腕20’が設けられ、また、第1検出腕30に加えて第2検出腕30’が設けられる。駆動腕の数が増えることによって、駆動モードの励振効率(駆動振動の効率)が向上する。例えば、第1駆動腕20に生じる第1検出振動VBおよび第2駆動腕20’に生じる第1検出振動VB’の双方が、第1検出腕30および第2検出腕30’の各々に伝播するため、第1検出腕30および第2検出腕30’の各々に生じる第2検出振動VC,VC’の振幅が増大する。
また、検出腕の数が増えることによって、検出効率が向上する。つまり、第2検出振動VC,VC’に対応して移動する電荷Qの総量が増え、その電荷Qを各検出腕に設けた検出電極から取り出すことによって、検出信号(S/NのS)を大きくすることができる。よって、検出感度が向上する。
(第6実施形態)
本実施形態では、基材上に圧電材料膜を形成する例について説明する。図13(A)〜図13(C)は、振動型ジャイロ素子の他の例(基材上に圧電材料膜を形成する例)について説明するための図である。
図13(A)は、基材上に圧電材料膜(圧電膜)を形成した振動型ジャイロ素子102の平面図である。図13(B)は,駆動腕20のA−A線に沿う断面図である。また、図13(C)は、検出腕30のB−B線に沿う断面図である。図13(A)に示される振動型ジャイロ素子102の基本的な動作は第1実施形態で示したものと同じである。但し、図13の例では、駆動振動の励振ならびに検出腕の歪みの電気信号への変換に、基材上に形成される圧電材料膜を使用する。
基材は弾性を有する材料(例えば水晶)であり、圧電材料としては、例えば、ZnO,AlN、LiNbO3、KNbO3のいずれかを使用することができる。
また、図13(B)に示すように、駆動腕20の、例えば第1面上には、第1検出用積層体110aと、第2検出用積層体110bと、が形成されている。第1検出用積層体110aは、下部電極112aと、圧電材料膜93aと、上部電極114aとで構成される。また、第2検出用積層体110bは、下部電極112bと、圧電材料膜93bと、上部電極114bとで構成される。
また、図13(C)において、弾性を有する基材91上には、下部電極92と、圧電材料膜93と、上部電極94とで構成される積層体90が設けられている。検出腕30に第2検出振動(第3方向の面外振動)が生じると、圧電材料膜93に応力が加えられ、下部電極92と上部電極94との間に電界が生じる。各電界によって、電荷の移動が生じる。よって、角速度を検出するがことができる。
図14(A)〜図14(F)は、圧電材料膜(圧電セラミック)の特性を説明するための図である。図14において、(+)や(−)は極性を示し、丸で囲まれて示されている−は、分極されたマイナスイオンを示し、丸で囲まれて示されている+は、分極されたプラスイオンを示す。図14(A)は、無負荷状態を示す。図14(B)のように、圧電材料膜93に圧縮が生じると、正極性の電圧が生じる。また、図14(C)のように、圧電材料膜93に引っ張りが生じると、負極性の電圧が生じる。
また、図14(D)に示すように、圧電材料膜93に正極性の電圧が印加されると、圧電材料膜93に引っ張り応力が発生する。また、図14(E)に示すように、圧電材料膜93に負極性の電圧が印加されると、圧電材料膜93に収縮応力が生じる。よって、図14(F)に示すように、圧電材料膜93に交流信号を供給すると、圧電材料膜93に伸縮(伸張と収縮)を生じさせることができる。このような圧電材料膜の特性を利用すれば、図13の例で説明したように、駆動腕に駆動振動(第2方向の面内振動)を生じさせることができ、また、検出腕に生じる応力を電気信号に変換することもできる。
(第7実施形態)
本実施形態では、電子機器の一例について説明する。図15は、振動型ジャイロセンサーを含む電子機器について説明する。図15は、振動型ジャイロセンサーを含む電子機器の構成の一例を示す図である。
図15において、上記いずれかの実施形態の振動型ジャイロ素子100(あるいは102)ならびに他の種類の検出素子(ここでは加速度検出素子とする)500を組み合わせることによって、高機能なセンサーユニット(電子機器の一種)600を実現することができる。
また、このセンサーユニット600(ならびに、例えばCPU700等)を、カメラやFA機器等の電子機器800に搭載すれば、電子機器800を、より高機能化することができる。すなわち、振動型ジャイロセンサー100(102)は、従来に比べて格段に高精度な角速度の検出が可能であり、よって、電子機器(600、800)の性能が向上する。
(静電結合、電気機械的結合、機械結合についての説明)
図16は、振動型ジャイロセンサーおける、静電結合、電気機械的結合ならびに機械結合について説明するための図である。図16において、駆動電極400と検出電極430とが近接して配置されると、各電極間には寄生容量が形成される。よって、各電極間で静電結合(クロストーク)CP1が生じ易くなる。
また、駆動電極400と検出電極430が近接して配置され、かつ、駆動電極400と検出電極430の電位が異なる場合には、意図しない不要な電界が生じ、これに伴う不要な振動成分が発生する。つまり、電気機械結合CP2およびCP3が生じる。なお、機械結合C4により、駆動振動が検出腕に漏れ込む場合も有り得る。
上述した、本発明の各実施形態にかかる振動型ジャイロセンサーでは、駆動腕と検出腕が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減される。なお、機械的結合によって検出腕に漏れ込む駆動振動は、同期検波の採用によって除去することが可能である。
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる振動型ジャイロ素子では、駆動腕と検出腕は、互いに交差する方向に分離して配置されているため、静電結合ならびに電気機械結合を小さくできる。よって、高精度かつ高安定な振動型ジャイロセンサー素子が実現される。また、駆動腕と検出腕とが分離されていることから、駆動電極と検出電極の各々の配線パターンを単純化することができる。したがって、製造時の歩留まりの向上ならびに製造コストの低減が実現される。
以上、本発明をいくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。