JP2012001613A - 耐加水分解性に優れたポリウレタンエラストマー組成物 - Google Patents

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毅 大貫
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Abstract

【課題】耐加水分解性に優れたポリウレタンエラストマー組成物を提供する。
【解決手段】両末端に水酸基を有するポリエステルまたはポリエーテルを、ジイソシアネートで鎖延長させたブロック共重合体であるポリウレタンエラストマー成分100重量部に対して、ポリエステル等のエステル結合を有する化合物の加水分解を抑制するためカルボキシル基の封止剤として、特定の環状ジカルボジイミド化合物を0.01〜15重量部含有するウレタンエラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明はポリウレタンエラストマーの加水分解性の問題に関わり、具体的には加水分解防止剤が添加されたポリウレタンエラストマー組成物に関する。
ポリウレタンエラストマーの組成は多岐にわたるが、主鎖構造がエステル結合で構成されるポリエステル系ウレタンエラストマーと、エーテル結合で構成されるポリエーテル系ウレタンエラストマーに大別することができる。ポリエステルウレタンエラストマーはポリエーテルウレタンエラストマーと比較して低コストで機械的強度に優れる特長を有する一方、水分と接触するとエステル結合部に加水分解が起こり低分子量化し、機械的物性が低下する欠点がある。
一般に、ポリエステル等のエステル結合を有する化合物の加水分解を抑制するためカルボキシル基の封止剤として、カルボジイミド化合物が使用されている(特許文献1、特許文献2)。
ポリエステルウレタンエラストマーにおいても、加水分解防止剤もしくは耐加水分解剤と称するカルボジイミド化合物を添加することが有効であり、下記式(1)で表わされるビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドがポリウレタンエラストマー用の加水分解防止剤として一般的に用いられている。しかし、下記式(1)で表わされるカルボジイミド化合物は、確かにポリウレタンエラストマー用の加水分解防止剤として有効であるものの、加水分解防止効果を持続させる目的で添加量を増量すると相溶性の限界によりエラストマーの表面へ析出してしまうブリーディングの問題や、架橋型ポリウレタンエラストマーの架橋反応に影響を及ぼし機械的物性が低下する問題がある。従って添加量を限定する必要が生じ、ポリウレタンエラストマーの長期にわたる耐加水分解性を維持することが難しくなる。
Figure 2012001613
特開2004−332166号公報 特開2005−350829号公報
本発明の目的は、耐加水分解性に優れたポリウレタンエラストマー組成物を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンエラストマーに、下記式(2)で表わされる、環状ジカルボジイミド化合物を添加することで上記課題が大幅に改善されることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下の発明を包含する。
ポリウレタンエラストマー100重量部に対して、下記式(2)で表わされる環状ジカルボジイミド化合物を0.01〜15重量部含有するウレタンエラストマー組成物。
Figure 2012001613
式(2)で表わされる環状ジカルボジイミド化合物は、11,11’,15,15’−テトラオキサ−2,2’,4,4’−テトラアザ−13,13’−スピロビ[トリシクロ[14.4.0.05,10]イコサン]−1(16),1’(16’),2,2’,3,3’,5,5’,7,7’,9,9’,17,17’,19,19’−ヘキサデカエンである。
本発明に従えば、ポリウレタンエラストマー成分100重量部に対して式(2)で表わされる環状ジカルボジイミド化合物を0.01〜15重量部添加することで、式(1)で表わされる従来のカルボジイミド化合物を添加するよりも耐加水分解性に優れたポリウレタンエラストマー組成物を得ることができる。また、式(1)で表わされる従来のカルボジイミド化合物を添加した場合に生じるブリーディングや架橋ポリウレタンエラストマーの機械的物性への影響が少ないポリウレタンエラストマー組成物を得ることができる。
以下、本発明を具体的な実施形態にてより詳しく説明する。
本発明におけるポリウレタンエラストマーとは、主として加水分解防止剤の添加を必要とするポリエステル系ウレタンエラストマーのことをさす。
ポリウレタンエラストマーは、両末端に水酸基を有するポリエステルまたはポリエーテルを、ジイソシアネートで鎖延長させたブロック共重合体であることが好ましい。
両末端に水酸基を有するポリエステルの具体例として、ポリエチレンアジペートとしては「デスモフェン2000」(商品名:住友バイエルウレタン社製)、「ニッポラン4040」(商品名:日本ポリウレタン社製)を例示することができる。ポリエチレンブタンジオールアジペートグリコールとしては「デスモフェン2001」(商品名:住友バイエルウレタン社製)を例示することができる。ポリε−カプロラクトングリコールとしては「PCL220」(商品名:ダイセル化学社製)を例示することができる。さらにポリカーボネートポリエステルとしては「デスモフェン2020」(商品名:住友バイエルウレタン社製)を例示することができる。
両末端に水酸基を有するポリエーテルの具体例として、ポリテトラメチレングリコールとしては「PTG2000」(商品名:保土谷化学社製),「PTGM1000」(商品名:三洋化成社製)を例示することができる。ポリプロピレングリコールとしては「PP2000」(商品名:三洋化成社製)を例示することができる。なお、これらの共重合体を用いてもよい。
ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI),トリレンジイソシアネート(TODI),トルイレンジイソシアネート(TDI)を例示することができる。
ポリウレタンエラストマーは、ポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールを主成分とし、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むジイソシアネート系化合物により鎖延長されたブロック共重合体が好ましい。
これら、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールジイソシアネートの構成比は製品要求特性により任意であるものの、平均分子量500〜10,000のポリエステルジオールまたはポリエーテルジオール100重量部に対し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネートを20〜70重量部添加し、既知の液状成型(注型)加工法に従ってポリウレタンエラストマーを得ることができる。
一方、予めポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールとジイソシアネートを反応させ、平均分子量10,000〜30,000からなるポリウレタエラストマーが市販されており、「ウレパン」(商品名:ラインケミー社製)を例示することができる。これらは密閉式混合機やオープンロールミル等のゴム用加工機械で加工が可能であり、ミラブルタイプポリウレタンエラストマーと称される。ミラブルタイプポリウレタンエラストマーは、加工機械にて架橋剤を添加し架橋することで架橋エラストマーが得られる。架橋剤はトルイレンジイソシアネート(TDI)等のジイソシアネート化合物や、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物を用いることが知られており、トルイレンジイソシアネート(TDI)の場合はミラブルタイプポリウレタンエラストマー100重量部に対し、5〜75重量部、ジクミルパーオキサイドの場合は1.0〜5.0重量部添加し架橋させることによって任意な硬度の架橋エラストマーが得られる。
更に、熱可塑タイプポリウレタンエラストマー(TPU)と称し、「エラストラン」(商品名:BASF社製)を例示することができる。これらは一般的な熱可塑性プラスチックの成型加工法、具体的には押出し成型や射出成型で加工でき、かつリサイクルの容易なポリウレタンエラストマーがとして市販されている。
加水分解防止剤であるカルボジイミド化合物は、式(2)で表わされる特定の環状ジカルボジイミド化合物であり、ポリウレタンエラストマー100重量部に対して0.01〜15重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部添加される。
式(2)で表わされる環状ジカルボジイミド化合物の添加方法は、ポリウレタンエラストマーの加工方法により異なるが、式(1)で表わされる従来のカルボジイミド化合物と同様な添加方法に従えばよい。具体的に液状成型(注型)タイプのポリウレタンエラストマーの場合は、熱硬化工程前の任意の段階で添加し分散させることができる。また、熱可塑タイプポリウレタンエラストマーやミラブルタイプポリウレタンエラストマーの場合は、ポリマーの製造段階で予め添加されることが好ましいが、後の混合工程の段階で添加し分散させることもできる。
以下、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明が実施例によって何ら限定されないことは勿論である。
表1に実施例1および比較例1〜3のエラストマー試験配合を示す。各配合は密閉式混合機およびオープンロールミルによる一般的な混練方法に従い、具体的にはバンバリーミキサーにて、ポリウレタンエラストマーとカーボンブラック以下ステアリン酸までを投入し混練りした後、オープンロールミルにてジクミルパーオキサイド、トリアリルイソシアヌレートおよびカルボジイミド化合物を添加(もしくは無添加)し、実施例1および比較例1〜3のエラストマー組成物を得た。
Figure 2012001613
得られた各ゴム組成物は、未加硫ゴム物理試験方法(JIS K6300)の振動式加硫試験機による加硫試験を行った。試験結果を表2に示す。
Figure 2012001613
最大弾性トルク値(MH)をみると、実施例1はカルボジイミド化合物が添加されていない比較例3と比較してトルク値の低下が小さく、架橋反応に影響が少ないことがわかる。一方、比較例1は比較例3と比較してトルク値の低下が大きく、架橋反応への影響が大きいことがわかる。更に、比較例2はトルク値を補償するために、架橋剤であるジクミルパーオキサイドを増量添加した系であるが、トルク値は実施例1に及ばない。
次に各ウレタンエラストマー組成物を所定の条件で架橋し、架橋ウレタンエラストマーを得た後に、加硫ゴム物理試験方法(JIS K6301)に準拠し、硬さ試験および引
張り試験を行った。試験結果を表3に示す。
Figure 2012001613
架橋物の硬度(Hs)および中間引張り応力(M100〜M300)、破断時の応力(TB)を比較すると、実施例1は比較例3と同等以上の機械的物性が得られている。一方、比較例1および2は、比較例3よりも機械的物性に劣ることが示された。従って、実施例1で用いた式(2)で表わされ、発明に係る環状ジカルボジイミド化合物は、比較例1および2で用いた式(1)で表わされる従来のカルボジイミド化合物よりも、架橋反応への影響が小さく、得られた架橋ウレタンエラストマーの機械的物性に優れることが示された。
更に各架橋ウレタンエラストマーを加硫ゴムの浸せき試験方法(JIS K6258)に準拠し、所定条件で浸漬した後に、硬さ試験および引張り試験を行った。試験結果を表4に示す。
Figure 2012001613
ウレタンエラストマーの加水分解による機械的物性の低下は、熱水浸せき後の架橋物の硬度(Hs)および中間引張り応力(M100〜M300)、破断時の応力(TB)の値に表われ、熱水浸せき前の各物性値との変化量および変化率で加水分解による機械的物性の劣化度合いがわかる。実施例1の各物性値は比較例1〜3の各物性値よりも高く、変化量および変化率も小さいことから、実施例1の架橋ウレタンエラストマー組成物は、比較例1〜3の架橋ウレタンエラストマー組成物よりも耐加水分解性に優れることが示された。また、実施例1で用いた式(2)で表わされ、発明に係る環状ジカルボジイミド化合物は、比較例1および2で用いた式(1)で表わされる従来のカルボジイミド化合物よりも、加水分解防止性能に優れることが示された。

Claims (3)

  1. ポリウレタンエラストマー100重量部に対して、下記式(2)で表わされる環状ジカルボジイミド化合物を0.01〜15重量部含有するウレタンエラストマー組成物。
    Figure 2012001613
  2. ポリウレタンエラストマーが、ポリエステル系ウレタンエラストマーである請求項1記載の組成物。
  3. ポリウレタンエラストマーは、両末端に水酸基を有するポリエステルまたはポリエーテルを、ジイソシアネートで鎖延長させたブロック共重合体である請求項2記載の組成物。
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