次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る農業用トラクタ1の側面図を示している。このトラクタ1は、左右一対の前輪11及び後輪12を備えた四輪式の車体10を有している。
車体10の前部にはボンネット13が、ボンネット13の後方には運転座席14が配置されている。また、後輪12の上方は、後輪フェンダ15によって覆われている。なお、この後輪フェンダ15は運転座席14の側方に位置しており、運転座席14は左右の後輪フェンダ15に挟まれるようにして配置されている。また、車体10の後方には、耕耘機20等の作業機を連結することができる。
前記ボンネット13の内部にはエンジン16が配置されている。一方、運転座席の下方には、HMT(油圧機械式無段変速装置)等を内蔵したミッションケース18が配置されている。エンジン16の出力は、図略の駆動伝達軸等を介してミッションケース18に伝達され、前記HMTによって適宜変速される。また、車体10の下部には、車体前後方向に沿って設けられた左右一対のシャーシフレーム5が配置されている。このシャーシフレーム5は、車体10の骨格となる部材であり、エンジン16及びミッションケース18等は、このシャーシフレーム5に対して直接又は間接的にマウントされている。このシャーシフレーム5の様子を、図2に示す。なお、図2においては、シャーシフレーム5の様子をより良く示すため、前輪11及び後輪12は省略している。
左右のシャーシフレーム5は所定の間隔を空けて配置されており、シャーシフレーム5の間のスペースに各種ホース、フィルタ類を配置することができる。また、このホース、フィルタ類が配置されたスペースを車体10の下側から覆うように、残稈ガード19が取り付けられている。この残稈ガード19はプレート状の部材であって、左右のシャーシフレーム5の間をまたぐように配置されている。
即ち、仮に残稈ガード19を設けない構成とした場合は、シャーシフレーム5の間に配置されたホース、フィルタ類が車体10の下方に露出することになる。このようにホース、フィルタ類が露出している状態で、残稈が残った圃場の耕耘作業等を行うと、前記露出したホース、フィルタ類に残稈が突き刺さり、当該ホース、フィルタ類が損傷するおそれがある。そこで、上記のように残稈ガード19によって車体下部を覆い、ホース、フィルタ類を保護することにより、残稈が残った状態で耕耘作業を行う場合であっても、ホース、フィルタ類が損傷してしまうことを防ぐことができる。
また、エンジン16の駆動力の一部は、PTO軸17に伝達される。図1に示すように、このPTO軸17には、前記耕耘機20等の作業機を連結可能である。この構成で、車体10の後方に接続された耕耘機20に対してPTO軸17を介して駆動力を伝達し、当該耕耘機20を駆動して耕耘作業等を行うことができる。
次に、図3及び図4を参照して運転座席14まわりに配置された各種操作具について説明する。運転座席14の前方には、車体10を操向操作するためのステアリングハンドル(操向操作具)30が配置されている。また、運転座席14の右側方にはアームレスト31が配置されており、当該アームレスト31の先端部には、前記HMTの変速比等を制御するためのHMTコントローラ32が配置されている。HMTコントローラ32は、車速を設定するための車速設定レバー33を備えている。
車速設定レバー33は、オペレータがアームレスト31に腕を置いたときの手元で操作できる位置に配置されている。車速設定レバー33は、支点を中心にして車体略前後方向に回動可能に構成されている。オペレータは、オペレータは車速設定レバー33を操作することによって、車体10の走行速度を任意に設定することができる。HMTコントローラ32は、車速設定レバー33の操作量(回動量)を図略の角度センサによって検出可能に構成されている。そして、HMTコントローラ32は、前記角度センサで検出された操作量に基づいて前記HMTの変速比を変更し、上記設定車速で車体10を走行させるように構成されている。
また、運転座席14に座ったオペレータの足元に対応する位置には、左後輪ブレーキ28(後述)を操作するための左ブレーキペダル34と、右後輪ブレーキ29(後述)を操作するための右ブレーキペダル35が配置されている。例えば車体10を急旋回させる場合、オペレータは、旋回方向内側の後輪に対応する側のブレーキペダルを踏み込み操作を行う。これにより、旋回方向内側の後輪12にブレーキを効かせることができるので、足場の悪い圃場内であっても旋回性を向上させて急旋回を行うことができる。
なお、路上を走行する場合等の高速走行時においては、左右別々にブレーキをかける必要性に乏しく、また安全性の観点からも左右同時にブレーキがかかったほうが好ましい。そこで、左右の後輪のブレーキを別々に操作する必要が無い場合には、左右のブレーキペダルを、図5に示すように連結プレート36によって連結することができるようになっている。具体的には、右ブレーキペダル35の裏面には、連結プレート36が支点37を中心にして回動可能に取り付けられている。そして、連結プレート36を回動させて左ブレーキペダル34の裏面に設けられたプレート差込部38に差し込むことにより、左右のブレーキペダル34,35を連結することができる。このように、連結プレート36によって左右のブレーキペダル34,35を連結しておくことにより、左右の後輪ブレーキ28,29を同時に作動させることができる。
また、アームレスト31には、HMTコントローラ32よりも後ろ寄りの位置に、PTOスイッチ39が配置されている。このPTOスイッチ39は、PTO軸17に対して動力を伝達しているPTOクラッチ(図略)を断接制御するためのスイッチである。オペレータは、このPTOスイッチ39を操作することにより、車体後方の耕耘機20を、作動状態又は非作動状態に切り替えることができる。
また、右側の後輪フェンダ15の上には、ブレーキスイッチ40が配置されている。なお、ブレーキスイッチ40については後述する。
次に、図6を参照して、後輪12に対する駆動力の伝達機構について説明する。ミッションケース18内のHMTによって変速されたエンジン16の出力は、駆動出力軸22を介して、同じくミッションケース18内に配置されている後輪用差動装置23に入力される。図6に示すように、後輪用差動装置23に入力された駆動力は、当該後輪用差動装置23によって左右の後輪差動出力軸24,24に分配される。
一方、ミッションケースの左右の側面それぞれには、後車軸ケース25が固定されている。左右の後車軸ケース25,25には、それぞれ後車軸26(図2を参照のこと)が配置されている。左右の後輪差動出力軸24,24に分配された駆動力は、図略のギア等を介して後車軸26,26に入力され、当該後車軸26を回転駆動する。そして図1に示すように、左右の後車軸26,26には、後輪12が取り付けられている。以上の構成により、エンジン16の出力によって左右の後輪12,12を回転駆動し、いわゆる後輪駆動方式で車体10を走行させることができる。なお、本実施形態のトラクタ1は、オペレータが適宜の操作を行うことによって、後輪駆動方式と四輪駆動方式とを切り替えることができるように構成されている。即ち、状況に応じ、後輪12に加えて前輪11にも駆動力を伝達できるように構成されている。
また、図6に示すように、後車軸ケース25内には、左右の後輪差動出力軸24,24それぞれに対応して、左右一対の後輪ブレーキ28,29が配置されている。この後輪ブレーキ28,29は、後輪差動出力軸に固定されたブレーキディスク41に対してブレーキパッド42を押し付けることにより、後輪差動出力軸24の回転を制動するように構成されている。
また、後車軸ケース25には、左右の後輪ブレーキ28,29に対応して、左右一対のブレーキ操作軸43,44が設けられている。そして、このブレーキ操作軸43,44を軸線周りに回転させることにより、ブレーキパッド42を、ブレーキディスク41に対して押し付ける方向、又は押し付けを解除する方向に移動させることができるように構成されている。
以上の構成により、左のブレーキ操作軸43を操作することで、左後輪ブレーキ28を作動させて左の後輪12を制動することができるように構成されている。同様に、右のブレーキ操作軸44を操作することで、右後輪ブレーキ29を作動させて右の後輪12を制動することができるように構成されている。
また、ブレーキ操作軸43,44の一側の端部は、後車軸ケース25の左右側面から、当該後車軸ケース25の外側に突出している。後車軸ケース25から突出した左右のブレーキ操作軸43,44の端部には、ブレーキ操作アーム45,46が固定されている。
図7に示すように、右のブレーキ操作アーム46には、リンク機構47等を解して右ブレーキペダル35が連結されている。そして、オペレータが右ブレーキペダル35を踏み込み操作すると、当該踏み込み操作力がリンク機構47を介して右のブレーキ操作アーム46に伝達され、右のブレーキ操作軸44が軸線を中心として回動するように構成されている。これにより、右ブレーキペダル35の踏み込み操作によって、右後輪ブレーキ29を作動させることができるようになっている。
なお、図示は省略するが、左のブレーキ操作アーム45には、リンク機構等を解して左ブレーキペダル34が連結されている。そして、オペレータが左ブレーキペダル34を踏み込み操作すると、当該踏み込み操作力がリンク機構を介して左のブレーキ操作アーム45に伝達され、左のブレーキ操作軸43が軸線を中心として回動するように構成されている。これにより、左ブレーキペダル34の踏み込み操作によって、左後輪ブレーキ28を作動させることができるようになっている。
以上の構成により、オペレータが左右のブレーキペダル34,35を踏み分けることで、左右の後輪12に対して別々にブレーキをかけることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、オペレータがブレーキペダル34,35を操作することにより後輪ブレーキ28,29を作動させることができることに加えて、自動的に後輪ブレーキ28,29を作動させる自動ブレーキ制御を行うように構成されている。具体的には、このトラクタ1は、左右一対のブレーキ操作シリンダ(ブレーキ駆動部)49を備えている。
このブレーキ操作シリンダ49は油圧シリンダとして構成されており、左のブレーキ操作シリンダ49は左のブレーキ操作アーム45に、右のブレーキ操作シリンダ49は右のブレーキ操作アーム46に、それぞれ取り付けられている。また、左右のブレーキ操作シリンダ49,49は、電磁弁を介して、図略の圧油源に接続されている。電磁弁51,52は左右一対で設けられており、左の電磁弁51は左のブレーキ操作シリンダ49に、右の電磁弁52は右のブレーキ操作シリンダ49に、それぞれ接続されている。
電磁弁51,52は、対応する側のブレーキ操作シリンダ49に対して、圧油を供給するか否かを切替え可能に構成されている。ブレーキ操作シリンダ49は、圧油が供給されると、シリンダロッド53が延伸するように構成されている。そして、ブレーキ操作シリンダ49は、延伸した状態のシリンダロッド53の先端部が後車軸ケース25の外周面を押すように配置されている。
この構成で、例えば右のブレーキ操作シリンダ49のシリンダロッド53が延伸すると、当該シリンダロッド53の先端が後車軸ケース25を押した反作用によって、右のブレーキ操作アーム46が回動する。これにより、右後輪ブレーキ29を作動させて右の後輪12にブレーキを掛けることができるように構成されている。同様に、左のブレーキ操作シリンダ49のシリンダロッド53が延伸すると、当該シリンダロッド53の先端が後車軸ケース25を押した反作用によって、左のブレーキ操作アーム45が回動する。これにより、左後輪ブレーキ28を作動させて左の後輪12にブレーキを掛けることができるように構成されている。
図7及び図8に示すように、前記電磁弁51,52の開閉は、車体制御部55によって制御されている。車体制御部55は、これにより、左右の後輪ブレーキ28,29の作動を制御することができる。従って、車体制御部55はブレーキ制御部であるということができる。また、車体10には、ステアリングハンドル30が中立位置から左右に所定角度以上操作されたか否かを検出するステアリング切れ角センサ56が設けられている。このステアリング切れ角センサ56の検出結果は、車体制御部55に入力される。
車体制御部55は、前記ステアリング切れ角センサ56の検出結果に基づいて、ステアリングハンドル30が左右に所定角以上操作されたと判断した場合に、旋回方向内側に対応する側の電磁弁を開放し、ブレーキ操作シリンダに圧油を供給するように構成されている。これにより、ステアリングハンドル30を大きく操作して急旋回を行う際には、旋回方向内側の後輪12に自動的にブレーキがかかるので、車体10の旋回性を向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、車体10の旋回性を向上させるために、前輪倍速制御も行うように構成されている。前輪倍速制御は、車体10が四輪駆動で走行している場合であって、ステアリングハンドル30の切れ角が一定以上となった場合に、前輪11の駆動速度を約2倍にして旋回性を向上させる制御である。
具体的には、トラクタ1は、前輪11の回転速度を約2倍にする倍速ギア(図略)と、当該倍速ギアに対して駆動力を伝達する倍速クラッチ(図略)と、倍速クラチッチを断接制御するための倍速ソレノイド57と、を備えている。図9に示すように、倍速ソレノイド57は、車体制御部55からの信号に応じて作動するように構成されている。車体制御部55は、ステアリングハンドル30の切れ角が一定以上になったときに、倍速ソレノイド57に対して所定の電流を流し、倍速クラッチを接続するように構成されている。これにより、ステアリングハンドル30を大きく操作して急旋回を行う際には、倍速ギアによって前輪11の回転速度を増速させることができるので、車体10の旋回性を向上させることができる。
なお、上記の自動ブレーキ制御及び前輪倍速制御は、圃場における低速の走行時に車体10の旋回性を向上させることを狙った制御である。一方、例えば路上で高速走行しているときに、後輪ブレーキや倍速クラッチが自動的に作動してしまうと、車体10が不安定となるおそれがある。そこで、本実施形態のトラクタ1では、車速が所定の車速以上の場合には、自動ブレーキ制御及び前輪倍速制御は行わないように構成されている。
具体的には以下のとおりである。本実施形態のHMTコントローラ32は、車速設定レバー33によって設定された設定車速が、所定の車速(例えば5km/h)以下である場合にのみ、自動制御許可信号を出力するように構成されている。この自動制御許可信号は、車体制御部55に入力される。車体制御部55は、前記自動制御許可信号が出力されている場合のみ(車速設定レバー33で設定された車速が所定の車速以下の場合のみ)、自動ブレーキ制御及び前輪倍速制御を行うように構成されている。これにより、高速走行時(所定の車速よりも速い速度で走行しているとき)には、自動ブレーキ制御及び前輪倍速制御は行われないので、高速走行時における車体10の安定性を向上させることができる。
なお、上記の自動ブレーキ制御及び倍速制御は、オペレータが適宜の操作を行うことにより無効化することもできる。
次に、本実施形態のトラクタ1が備えるブレーキスイッチ40について説明する。
ブレーキスイッチ40は、一種のトグルスイッチとして構成されており、図10に示すように、左位置(スイッチを左に傾けた位置)と、中立位置と、右位置(スイッチを右に傾けた位置)と、のうち何れか1つの状態を選択することができるように構成されている。
図8に示すように、ブレーキスイッチ40には電源58からの所定の電圧が印加されており、当該ブレーキスイッチ40の切り替えによって、左右の電磁弁51,52何れか一方に電流を流すことができるように構成されている。具体的には、ブレーキスイッチ40を右に傾けると右の電磁弁52に、左に傾けると左の電磁弁51に、それぞれ電流を流すように構成されている。この構成により、ブレーキスイッチ40を右に傾けると右後輪ブレーキ29を、左に傾けると左後輪ブレーキ28を、それぞれ動作させることができる。即ち、オペレータがブレーキスイッチ40を手動操作することにより、左右何れか一方の後輪12を制動することができるように構成されている。
そして、このブレーキスイッチ40は、図4に示すように、運転座席14の背もたれの前面よりも前方で、かつ運転座席14の側面よりも車体前後方向で外側に配置されている。即ち、運転座席14に座ったオペレータが手元で操作し易い位置に、ブレーキスイッチ40が配置されている。
また、図4に示すように、このブレーキスイッチ40は、車体左右方向でアームレスト31よりも外側であって、後輪フェンダ15の上面に配置されている。即ち、前述のように、ハウス内で支柱等を避ける操作を行う場合には、オペレータは上半身を後向きに捻り、後方の耕耘機20等を確認しながら操作を行わなければならない。このように上半身を後向きに捻った場合、図11に示すように、アームレスト31よりも外側、後輪フェンダ15の上面に腕を置いた姿勢をとることが自然である。そこで前述のように、アームレスト31よりも外側にブレーキスイッチ40を配置することにより、オペレータは、身体を後向きに捻った姿勢であっても、ブレーキスイッチ40を容易に操作することができる。
以上のように、本実施形態のトラクタ1は、ブレーキペダル34,35の踏み込み操作が難しい姿勢(身体を捻った姿勢)であっても、オペレータは手元に配置されたブレーキスイッチ40によって左右の後輪ブレーキ28,29を操作することができる。
なお、ブレーキスイッチ40はオペレータの手元で操作し易い位置に配置されているので、オペレータが誤って手を触れてしまうことも考えられる。ここで、車体10が高速走行している場合に、後輪12の片方に意図せずブレーキがかかってしまうと、車体10が不安定となるおそれがある。一方で、ブレーキスイッチ40による操作が必要となるのは、耕耘機20による耕耘作業を行っているときなどであり、非作業時にはブレーキスイッチ40を操作して左右の後輪ブレーキ28,29を使い分ける必要性は乏しい。従って、非作業時にブレーキスイッチ40が操作された場合には、誤操作であると考えられる。
そこで、本実施形態のトラクタ1は、左右のブレーキを別々に作動させるのには適切ではない状況(高速走行時又は非作業時)においては、ブレーキスイッチ40が操作されても後輪ブレーキが作動しないようにしている。具体的には、電源58からブレーキスイッチ40までの電流供給路の間に、2つのリレー(ブレーキ作動牽制部)61,62が直列で配置されている。
第1リレー61は、車速が所定の車速以下の場合にのみ通電するように構成されている。具体的には、図9に示すように、第1リレー61には、HMTコントローラ32が出力する自動制御許可信号が入力されている。そして、第1リレー61は、自動制御許可信号が入力されたときのみ(車速設定レバー33で設定された車速が所定の車速以下の場合のみ)、接点が閉じて電流が流れるように構成されている。なお、HMTコントローラは、車速が所定の車速以下か否かという車体の状態を検出しているので、車体状態検出部であるということができる。
一方、第2リレー62は、PTOクラッチがONになっている場合のみ通電するように構成されている。具体的には、図12に示すように、第2リレー62にはPTOスイッチ39が接続されている。そして、第2リレーは、PTOスイッチ39がONになった場合にのみ(PTOクラッチが接続された場合のみ)、接点が閉じて電流が流れるように構成されている。なお、PTOスイッチ39の入り切りを検出することにより、PTOクラッチが接続されているか否かという車体の状態を検出することができるので、PTOスイッチは車体状態検出部であるということができる。
以上の構成により、設定車速が所定の車速以下で、かつPTOクラッチが接続されている場合にのみ、ブレーキスイッチ40による後輪ブレーキ28,29の操作が可能であるように構成されている。これにより、高速走行時や非作業時にオペレータの誤操作によって車体が不安定になることを防ぐことができる。
また、本実施形態のトラクタにおいて、ブレーキスイッチ40によって後輪ブレーキ28,29を制御する構成は、従来のトラクタが備えていた自動ブレーキ制御や前輪倍速制御の構成の一部を流用して実現している。即ち、従来から、自動ブレーキ制御の機能を備えたトラクタでは、ブレーキ操作シリンダ49によって左右の後輪ブレーキ28,29の操作を行う構成を採用していた。従って、本実施形態のトラクタが備えるブレーキスイッチ40の機能を実現するためには、従来のトラクタに対してブレーキスイッチ40及びリレー61,62のみを追加するだけで良く、簡単かつ低コストで本実施形態の構成を実現することができる。
また、上記のようにブレーキスイッチ40及びリレー61,62を従来のトラクタに追加するだけで、簡単に上記実施形態の構成を実現できるので、ブレーキスイッチ40は取り外し可能に構成しても良い。例えば、ブレーキスイッチ40は後付けのオプションとして構成することもできる。この場合、後輪フェンダ15には、ブレーキスイッチ40を取り付けるための取付孔を形成しておき、ブレーキスイッチ40を取り付ける際には、後輪フェンダ15の裏側からボルト止めにより取り付ける。ブレーキスイッチ40を取り付けない場合には、前記取付孔は適宜の部材により塞いでおけば良い。このように構成すれば、ユーザが必要とする場合にのみブレーキスイッチ40を取り付けることができるので、ユーザの幅広いニーズに応えることができる。
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ1は、左右一対の前輪11及び後輪12を有する車体10と、左右一対の後輪ブレーキ28,29と、ブレーキスイッチ40と、左右一対のブレーキ操作シリンダ49と、を備える。後輪ブレーキ28,29は、左右の後輪12に対応して設けられ、対応する側の後輪12を制動する。ブレーキスイッチ40は、少なくとも、左右の後輪ブレーキ28,29の何れか一方を作動させるように指示する手動操作が可能である。左右のブレーキ操作シリンダ49は、左右の後輪ブレーキ28,29に対応して配置され、ブレーキスイッチ40の操作に応じて、当該操作に対応する側の後輪ブレーキを作動させる。
このようなブレーキスイッチを備えることにより、オペレータは、足元のブレーキペダルの操作が難しい姿勢であっても、ブレーキスイッチを操作することにより左右後輪のブレーキを容易に操作することができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ1は、オペレータが搭乗するための運転座席14を備える。そして、ブレーキスイッチ40は、運転座席14の側面よりも車体左右方向外側、かつ、運転座席14の背もたれの前面よりも前側に配置されている。
これにより、ブレーキスイッチ40を、オペレータの手元で操作し易い位置に配置することができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ1は、前輪11を操向操作するステアリングハンドル30と、車体制御部55と、を備える。車体制御部は55、ステアリングハンドル30の操作量が所定量以上となった場合に、ブレーキ操作シリンダ49を制御することにより、旋回方向内側に対応する側の後輪ブレーキを作動させる。そして、ブレーキスイッチ40は、このブレーキ操作シリンダ49を作動させることにより、後輪ブレーキを操作する。
これにより、いわゆる自動ブレーキ制御を実現することができる。そして、このように自動ブレーキ制御の構成を備えているトラクタは、ブレーキ操作シリンダ49を既に備えているので、ブレーキスイッチ40を追加するだけで、上記実施形態の構成を実現することができる。このように、既存の構成を流用することにより、コストを削減することができるとともに、ブレーキまわりをシンプルに構成することができる。
また、本実施形態のトラクタ1において、ブレーキスイッチ40は着脱可能に構成することができる。
これにより、ブレーキスイッチ40が不要な場合には、トラクタ1に取り付けないでおくこともできる。即ち、消費者のニーズに応じたトラクタ1を提供することができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ1は、HMTコントローラ32と、PTOスイッチ39と、リレー61,62と、を備える。HMTコントローラ32は車速を、PTOスイッチ39はPTOクラッチの接続状態を、それぞれ検出する。リレー61,62は、高速走行時又は非作業時においては、ブレーキスイッチ40の操作によって後輪ブレーキ28,29が作動することを抑制するように構成されている。
これにより、ブレーキスイッチ40による後輪ブレーキ28,29の操作が不適切な状況で行われてしまうことを防止できる。従って、例えばブレーキスイッチ40が誤操作されて車体が不安定になってしまうことを防止することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、車速レバーで設定された車速が所定の車速よりも大きい場合、又はPTOクラッチがOFFになっている場合を、左右別々にブレーキを作動させるには適切ではない状況であるとしているが、これに限らない。例えば、連結プレートによってブレーキペダルが連結されている状態のときは、オペレータには左右のブレーキを別々に操作する意思がないと考えられる。従って、左右のブレーキペダルが連結されている場合は、左右別々にブレーキを作動させることは適切ではないと言える。そこで、連結プレートによってブレーキペダルが連結されていることを検出する連結状態検出センサを配置しておき、ブレーキペダルが連結プレートによって連結されている場合には、ブレーキスイッチが操作されても後輪ブレーキが作動しないように構成することができる。
ブレーキスイッチの配置は上記実施形態の構成に限らない。また、ブレーキスイッチは複数配置しても良い。例えば、上記実施形態ではブレーキスイッチは右の後輪フェンダ上に配置された構成としたが、これに限らず、左の後輪フェンダ上に配置しても良いし、左右両方の後輪フェンダの上に配置しても良い。また、ブレーキスイッチの操作を行い易い位置は、オペレータの作業時の姿勢等によって異なる。従って、フェンダの上に限らず、オペレータが操作し易い位置であれば、どこでもブレーキスイッチを配置することができる。
上記実施形態では、1つのブレーキスイッチによって左右の後輪ブレーキを操作する構成としたが、必ずしも左右両方の後輪ブレーキを操作可能ではなくても良い。例えば、右後輪ブレーキのみを操作可能なブレーキスイッチ、左後輪ブレーキのみを操作可能なブレーキスイッチがあっても良い。この場合、例えば、左の後輪フェンダ上には、左後輪ブレーキを操作可能なブレーキスイッチを、右の後輪フェンダ上には、右後輪ブレーキを操作可能なブレーキスイッチを、それぞれ配置するように構成することができる。