JP2011523553A - PrfA*変異株リステリアを含む組成物およびその使用法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、PrfAを恒常的に発現し、かつPrfA応答性制御因子と作動可能に連結された、腫瘍または感染病原体抗原のようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、組換えリステリアを提供する。免疫応答の誘導もしくは増強のためのおよび/または疾患治療における、リステリアおよびその組成物の使用法が提供される。当該細菌の作製法も提供される。
【選択図】図1A

Description

連邦支援による研究または開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成5U01AI070834−02およびSBIR助成5R44CA101421−03の下、部分的に米国政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
本発明の分野は、概略的には、異種ポリペプチドを含めたポリペプチド発現に有用な、新規な組換えリステリアに関する。具体的には、本発明は、ワクチン組成物において有用なPrfAにおける変異を含む組換え細菌に関する。
他の組換えワクチンプラットフォームと比較した組換えリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)(Lm)に基づくワクチンの利点が認識されたことにより、その進行中の開発および早期臨床試験における現在の評価が促進されてきた。これらの利点には、製造業のための直接発酵法のような実用的な事柄およびその他の望ましい特性、例えば、防御的Lm特異的免疫の存在下でも反復投与可能であることなどが含まれる(Bouwer,H.G.ら,(1999)Infection and Immunity 67:253−258;Starks,H.ら,(2004)J.Immunol.173:420−427;Stevens,R.ら,(2005)Vaccine 23:1479−1490)。このワクチンプラットフォームに対する説得力のある論拠は、マウスのリステリア症モデルにおいてよく知られた関連要因、すなわち、リステリア・モノサイトゲネスによる単回免疫化に応答して誘導される、長命な機能的CD4+およびCD8+記憶T細胞に基づいている(Harty,J.T.ら,(2000)Ann.Rev.Immunol.18:275−308;Pamer,E.G.(2004)Nat.Rev.Immunol.4:812−823)。現在、頑強な先天性および後天性細胞性免疫による、いくつかの動物モデルにおける組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチンの顕著な有効性を実証する数多くの刊行物が存在する(Brockstedt,D.G.ら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13832−13837;Bruhn,K.W.ら,(2007)Microbes Infect.9:1226−1235;Paterson,Y.およびMaciag,P.C.(2005)Curr.Opin.Mol.Ther.7:454−460)。癌および腫瘍の治療に対する組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチンの使用が報告されている(例えば、Brockstedtら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13832−13837;Brockstedtら,(2005)Nature Med.11:853−860);Starksら,(2004)J.Immunol.173:420−427;Shenら,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3987−3991を参照されたい)。リステリアに基づくワクチンも、例えば、米国特許出願公開第2005/0281783号、同第2005/0249748号、同第2004/0228877号および同第2004/0197343号に報告されており、これらはそれぞれ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、組換えLmに基づくワクチンは、癌のみならず、HIV、HCV、結核およびマラリアのような感染症を予防または治療するための機能的な細胞性免疫を誘発する効果的なワクチンに対する、緊急で広範な必要性に対処するための新たなアプローチを示す。後の数年間の結果により、前臨床研究において観察される強力な活性が、ヒトにおける有効性へと変わるか否かが示されるであろう。
食品媒介性の病原菌であるリステリア・モノサイトゲネスは、免疫力の低下した個体において強い病原性を有するため、弱毒化ワクチンプラットフォームがヒトにおける評価へと発展することが不可欠である(Lorber,B.(1997)Clin.Infect.Dis.24:1−9)。野生型菌株10403Sに由来する弱毒生ワクチンおよび光化学的不活化ワクチンのプラットフォームが共に記載されている(Brockstedt,D.G.ら,(2005)Nat.Med.11:853−860;Brockstedt,D.G.ら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13832−13837)。弱毒化生ワクチン菌株は、野生型細菌による感染の主要標的器官である肝臓内での増殖を協同して制限するactAおよびinlB毒性遺伝子(リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB)の両方が欠失している。この欠失の組合せにより、感染肝常在性クッパー細胞からのActA仲介による細胞間伝播を介した肝細胞内への間接的伝播のみならず、InlB−肝細胞増殖因子受容体の相互作用を介した直接的な肝細胞感染が阻止される(Dramsi,S.ら,(1995)Mol.Microbiol.16:251−261)。血清肝機能検査(LFT)であるアラニンアミノ基転移酵素(ALT)およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)により測定されるように、マウスにおける肝毒性は、リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBを静脈内にした(IV)マウスにおいて野生型Lmに比べ著しく低い。さらに、リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBに基づく菌株を用量漸増的に投与されたカニクイザルで実施された2つのGLP毒性試験において、肝毒性は最小でありかつ用量制限性ではなかった(未発表データ)。リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBワクチン株は、進行癌を有する成人被検体において行われている、FDAに認可された2つの進行中の第1相臨床試験の基礎をなす。不活化されているが代謝的に活性(KBMA)と呼ばれる第二のワクチンプラットフォームは、リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBに由来し、ヌクレオチド除去修復(NER)経路のDNA修復酵素をコードする遺伝子であるuvrAおよびuvrB両方の欠失も有する。KBMA(リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB)ワクチンは、合成ソラレンであるS−59と長波長紫外線との併用処置による光化学的不活化に対して極めて感受性が高い。不活化されている間に、KBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンは、その遺伝子産物を一過性に発現することができ、これによりファゴリソソームを逃れ、野生型リステリア・モノサイトゲネスおよびワクチニアウイルスによる攻撃に対する機能的細胞性免疫および防御を誘導することができる(Brockstedt,D.G.ら,(2005)Nat.Med.11:853−860)。
PrfAは、細胞内で活性化されて中心的な毒性調節因子として働く転写因子であり、これが、哺乳動物におけるリステリア・モノサイトゲネスの増殖生活様式の「ジキル博士とハイド氏(Dr.Jekyll and Mr.Hyde)」的分裂として、または腐生菌として記述されてきたことを可能にしている(Gray,M.J.ら,(2006)Infect.Immun.74:2505−2512)。PrfAノックアウト株は非毒性である(Vazquez−Boland,J.A.ら,(2001)Clin.Microbiol.Rev.14:584−640)。野生型Lmでは、PrfAは宿主細胞感染時に発現され、続いて、それぞれリステリオリシンO(LLO)およびホスホリパーゼCをコードするhlyおよびplcA遺伝子を含むprfAレギュロンの発現を誘導する。これらの遺伝子産物が一緒になって、ファゴリソソームの苛酷な微小環境からの菌の逃避を仲介する。PfrAはまた、非食細胞の受容体介在性感染を促進するリガンドをコードするインターナリン遺伝子(例えば、inlAおよびinlB)の転写を制御する(Scortti,M.ら,(2007)Microbes Infect.)。PrfA依存性プロモーターを、異種遺伝子をhlyまたはactAプロモーターと連結させることにより、組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチンにおけるAg発現を駆動するのに利用することができる(Gunn,G.R.ら,(2001)J.Immunology 167:6471−6479;Shen,H.ら,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.92:3987−3991)。PA依存性遺伝子の恒常的活性化をもたらすPrfAにおけるアミノ酸置換は、まとめてPrfA*変異体として知られている(Ripio,M.T.ら,(1997)J.Bacteriol.179:1533−1540;Scortti,M.ら,(2007)Microbes Infect.)。高溶血性の表現型を有する野生型リステリア・モノサイトゲネス株が、PrfAに、最も一般的にはG145Sに変異を有し、このことが、10403Sのような実験用の菌株に比べて毒性を増加させている可能性がある(Ripio,M.T.ら,(1997)J.Bacteriol.179:1533−1540)。同様に、化学的変異誘発法により選択された、PrfA依存性遺伝子の発現が増加したその他のPrfA変異体でも、マウスにおける毒性の増加が見られた(Shetron−Rama,L.M.ら,(2003)Mol.Microbiol.48:1537−1551)。免疫化の前にPrfA依存性遺伝子を導入することにより、多様な機構を通じてワクチンの効果を増強させる可能性があり、このような機構には、より強力なCD4+およびCD8+T細胞応答を引き起こす、宿主細胞の細胞質中でのファゴリソソーム逃避の増加およびPrfA依存性コード抗原の発現が含まれる。
効果の増大したワクチンの開発のために、感染細胞、特に抗原提示細胞の細胞質への、リステリア仲介による異種抗原送達法における向上が望まれる。Lmに基づくワクチンの最終的な臨床開発を促進するために、その効力を増強するか、またはその毒性を軽減する改良法が引き続き必要とされている。
本発明は、異種抗原送達ベクターとして有用な、毒性遺伝子の恒常的変異体活性化因子を含むリステリアを提供する。ある実施形態では、リステリアから感染細胞の細胞質への異種ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの送達は、PrfAレギュロンの恒常的活性化により増強される。リステリアを含む医薬組成物およびワクチンのような組成物が提供される。哺乳動物において免疫応答を誘導するまたは疾患を治療もしくは予防するための、リステリアの使用法がさらに提供される。
一態様では、本発明は、PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドならびにPrfA応答性調節エレメントを含む組換えポリヌクレオチドおよび異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、組換えリステリア菌を提供する。異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結されている。ある態様では、異種ポリペプチドは非細菌性である。本発明のある態様では、PrfA*変異体ポリペプチドは、Y63C、E77K、L149F、G145S、G155SおよびS183Aからなる群より選択される変異体を含む。ある態様では、PrfA*変異体ポリペプチドはG155S変異である。本発明のある態様では、組換えポリヌクレオチドは、シグナルペプチドおよび異種ポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。本発明のある態様では、PrfA応答性調節エレメントは、hlyプロモーター、plcAプロモーター、plcBプロモーター、mplプロモーター、hptプロモーター、inlCプロモーター、inlAプロモーター、inlBプロモーター、PrfAプロモーターおよびactAプロモーターからなる群より選択される。ある態様では、PrfA応答性調節エレメントはactAプロモーターである。本発明のある態様では、シグナルペプチドは、リステリア・モノサイトゲネス由来ActAシグナルペプチド、リステリア・モノサイトゲネス由来LLOシグナルペプチド、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来Usp45シグナルペプチド、炭疽菌(Bacillus anthracis)由来防御抗原シグナルペプチド、リステリア・モノサイトゲネス由来p60シグナルペプチド、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)由来PhoDシグナルペプチド、secA2シグナルペプチドおよびTatシグナルペプチドからなる群より選択されるシグナルペプチドである。ある態様では、シグナルペプチドは、リステリア・モノサイトゲネス由来ActAシグナルペプチドである。ある態様では、融合タンパク質は、ActAの最初の100アミノ酸を含む。
本発明のある態様では、組換えリステリア菌は、腫瘍関連抗原、腫瘍関連抗原由来のペプチド、感染症抗原および感染症抗原由来のポリペプチドからなる群より選択される抗原を含む、異種ポリペプチドを含む。ある態様では、感染症抗原は、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)またはクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomaitis)からなる群より選択される、ウイルスまたは異種感染病原体由来である。肝炎ウイルスの例としては、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のある態様では、毒性遺伝子の恒常的変異体活性化因子を含むリステリアは、リステリア・モノサイトゲネス種に属する。ある態様では、組換えリステリア菌は、例えば、細胞間伝播、非食細胞内への侵入、増殖またはDNA修復のうちの1つまたは複数に関して弱毒化されている。ある場合には、リステリアは、actA変異、inlB変異、uvrA変異、uvrB変異、uvrC変異、核酸標的化化合物またはuvrAB変異/核酸標的化合物のうちの1つまたは複数により弱毒化されている。ある場合には、核酸標的化合物はソラレンである。ある態様では、本発明は、組換えPrfA*リステリア菌を提供し、ここでは、当該細菌が増殖に関して弱毒化されるように、核酸と直接反応する核酸標的化合物との反応により当該細菌の核酸が改変されている。ある場合には、細菌は、増殖に関して改変された細菌を弱毒化する核酸架橋を含む。ある場合には、細菌は、増殖に関してこの細菌を弱毒化するソラレン−核酸付加物を含む。ある場合には、細菌は、自身の改変された核酸を修復する細菌の能力を減弱させる遺伝子変異をさらに含む。本発明のある態様では、細菌は、actA、inlB、uvrAおよびuvrBに不活化変異を含み、かつ細菌は、ソラレン−核酸架橋により増殖に関して弱毒化されている。本発明のある態様では、PrfA*リステリアは、不活化されているが代謝的に活性(KBMA)である。
本発明は、組換えPrfA*リステリア菌と1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤、アジュバントおよび共刺激分子とを含む、医薬組成物を提供する。ある態様では、組成物はさらに治療剤を含む。
本発明は、宿主における非リステリア抗原に対する免疫応答の誘導方法を提供し、この方法は、PrfA*変異体ポリペプチドをコードする組換えリステリア菌ならびにPrfA応答性調節エレメントを含む組換えポリヌクレオチドおよびPrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結された抗原をコードする、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の有効量を、宿主に投与することを含む。ある態様では、本発明は、宿主における非リステリア抗原の免疫原性を増強する方法を提供する。ある態様では、本発明は、宿主における非リステリア感染または癌性状態を予防または治療する方法を提供する。ある態様では、抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍関連抗原由来のペプチド、感染症抗原および感染症抗原由来のポリペプチドからなる群より選択される。ある態様では、免疫応答は先天性免疫応答であり、ある態様では、免疫応答は後天性免疫応答である。本発明のある態様では、宿主はヒトである。本発明のある態様では、本発明の組換えリステリアは、PrfA*組換えリステリアとの投与に応答して誘導されるコード抗原に対して特異的なT細胞の機能性を増強する。
本発明は、宿主における免疫応答を誘導または増強する方法を提供し、この方法では、本発明の組換えPrfA*リステリア菌の投与が繰り返される。ある態様では、本発明の組換えPrfA*リステリア菌が最初に投与され、次いで、非リステリア免疫原性組成物と共に1回または複数回投与される。ある場合には、非リステリア免疫原性組成物が最初に投与され、次いで、本発明の組換えPrfA*リステリア菌が1回または複数回投与される。
本発明のある態様では、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現が野生型PrfAポリペプチドにより制御される組換えリステリア菌により誘導された抗原の免疫原性に比べて、抗原に対する免疫原性が増強される。ある場合には、免疫原性の増強は、MCP−1、IL−6、IFN−γ、TNFαまたはIL−12p70の発現増加を含む。
本発明は、組換えリステリア菌の調製法を提供する。例えば、PrfA応答性調節エレメントの制御下にある、異種ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、PrfA*リステリア菌内に安定に導入する。ある場合には、異種ポリペプチドをシグナル配列と融合する。ある態様では、異種ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、リステリア染色体内に組み込む。ある場合には、異種ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、tRNAarg遺伝子内にまたはリステリア染色体のactA遺伝子内に組み込む。ある態様では、PrfA*変異体ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、非機能性のprfA対立遺伝子を含むリステリア菌内に安定に導入する。
リステリア・モノサイトゲネスPrfA*ワクチン株の特徴付けを示す図である。(A)pPL2部位特異的組込みベクターを用いて、リンカー配列で間隔を置きActA(ActAN100)の最初の100アミノ酸と融合させた、4つのワクチニアウイルスT細胞エピトープ(A24R、C4L、K3LおよびB8R)およびオボアルブミンSL8エピトープを発現する、リステリア・モノサイトゲネスQuadvac株の構造。(B)酵母抽出物ブロスにおける異種タンパク質発現。(C)感染J774マクロファージ細胞における感染後7時間での異種Ag発現。(D)感染DC2.4樹状細胞における感染後2.5時間での異種Ag発現。(E)J774マクロファージにおける同質遺伝子のリステリア・モノサイトゲネスワクチン株の細胞内増殖。 PrfA*ワクチン株により誘導された先天性および後天性免疫の向上を示す図である。(A)5×106cfuのリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63C株の単回静脈内投与の8時間後に測定した血清サイトカイン/ケモカインレベル。サイトカイン/ケモカインは、サイトメトリービーズアレイ(CBA)により測定した。各記号は1個体の動物を表す。少なくとも2つの実験のうちの代表的な1つの実験のデータである。(B、C)PrfA*弱毒生ワクチン株は、より高い程度の抗原特異的免疫を誘導した。C57BL/6マウスを、5×106cfuのリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63C株の静脈内投与により免疫化した。ワクチン接種7日後の応答ピーク時に、細胞内サイトカイン染色により抗原特異的T細胞応答を測定した。(B)各群の代表的な動物のドットブロットを示す。(C)5個体の動物からなる各群の平均±標準偏差を示す。 PrfA*がKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫原性を増強することを示す図である。(A)1×108粒子のKBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63C株の単回静脈内投与の8時間後に測定した血清サイトカイン/ケモカインレベル。サイトカイン/ケモカインは、サイトメトリービーズアレイ解析(CBA)により測定した。各記号は1個体の動物を表す。(B、C)KBMAリステリア・モノサイトゲネスPrfA*株は、より高い程度の抗原特異的免疫を誘導した。C57BL/6マウスを、1×108粒子のKBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63C株の静脈内投与により免疫化した。ワクチン接種7日後の応答ピーク時に、細胞内サイトカイン染色により抗原特異的T細胞応答を測定した。(B)各群の代表的な動物のドットブロットを示す。(C)5個体の動物からなる各群の平均±標準偏差を示す。 誘導性T細胞応答のKBMAリステリア・モノサイトゲネスPrfA*株による効力向上を示す図である。(A、B)C57BL/6マウスを、HBSS(左パネル)または1×108粒子のKBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63C株を用いて、2週間間隔で2回、静脈内または筋肉内投与(図中に示す)により免疫化した。7日後に、マウスをgB2(対照;中央ピーク)、A24R負荷標的(右ピーク)またはB8R負荷標的(左ピーク)による抗原投与を行って、インビボ細胞溶解活性を測定した。(A)各群の代表的な動物のヒストグラムを示す。(B)静脈内または筋肉内投与によりワクチン接種したマウスのA42RおよびB8Rに特異的なインビボ細胞溶解活性を示す。各記号は、1個体の動物を表す。(C)KBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/inlB/WT prfAまたはPrfA* G155Sの様々な投与量で、2週間間隔で2回ワクチン接種した後の、B8Rに特異的なインビボ細胞溶解活性を示す。各5個体の動物からなる群の平均±標準偏差を示す。(D)野生型リステリア・モノサイトゲネスの2回のLD50抗原投与に対する防御免疫を示す。Balb/cマウスを、1×108粒子のKBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfAまたはPrfA* G155Sで1回、静脈内投与により免疫化した。HBSSを対照として使用した。抗原投与3日後に脾臓を採取し、CFU用に平板培養した。WT prfAとprfA* G155S間での防御のlogの差は、スチューデントt検定による判定で統計的に有意である。(E)1×107pfuのワクチニアウイルスによる腹腔内抗原投与後の卵巣におけるウイルス力価。C57BL/6マウスを、1×108粒子のKBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/WT prfAまたはprfA* G155Sで2回、静脈内にワクチン接種した。ワクチニアウイルス抗原投与の5日後にウイルス力価を測定した。各記号は1個体の動物を表す。WT PrfAとPrfA* G155S間での防御の対数の差は、スチューデントt検定による判定で統計的に有意である。 PrfA*が、HPV E7をコードするKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫原性を増強することを示す図である。最後のワクチン接種7日後の応答ピーク時に、細胞内サイトカイン染色によりHPV E7特異的T細胞応答を測定した。(A)リステリア生菌による単回ワクチン接種のデータ。(B)KBMAによるプライムブーストワクチン接種のデータ。 PrfA*が、HPV E7をコードするKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫原性を増強することを示す図である。最後のワクチン接種7日後の応答ピーク時に、細胞内サイトカイン染色によりLLO特異的T細胞応答を測定した。(A)リステリア生菌による単回ワクチン接種のデータ。(B)KBMAによる初回・追加ワクチン接種のデータ。 PrfA、PrfA* G155S、PrfA* G145SおよびPrfA* Y63Cのアミノ酸配列を示す図である。
発明の詳細な説明
I.序論
本発明は、リステリア内の毒性遺伝子の恒常的変異体活性化因子の制御下で抗原が発現された場合、その抗原に対する免疫応答が増強され得るという発見に一部基づく。リステリア・モノサイトゲネスの二分された生活様式は、「ジキル博士とハイド氏(Dr.Jekyll and Mr.Hyde)」に例えられてきた。腐生菌としては、リステリアは環境中で無害な生活を送る。しかし、哺乳動物宿主に感染すると、リステリアは、哺乳動物の生理的条件下で、自身の増殖・繁栄を可能にする数多くの毒性遺伝子の発現により有害なものへと変わる。無害な腐生生活様式から有害な毒性の生活様式への切替えに中心的な役割を果たすのが、PrfAタンパク質である。温度、pH、鉄濃度、炭水化物濃度および活性酸素種を含めた数々の刺激に応答したPrfAの活性化。PrfAの変異体が、一部はPrfA依存性遺伝子の恒常的発現により同定されてきた。このような恒常的PrfA変異体は、PrfA*変異体と呼ばれている。ある場合には、恒常的PrfA*変異体ポリペプチドは、リステリア、例えば、G155S PrfA*変異株において、高毒性の表現型を表すことが示されている。
本発明は、抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用な組換えリステリア菌を提供する。本発明のある態様では、組換えリステリア菌は、PrfAタンパク質の発現が恒常的であるような変異をprfA対立遺伝子内に含む。組換えリステリアは、ポリペプチド、例えば、PrfA応答性調節エレメントの制御下にある抗原をさらに含む。ある場合には、ポリペプチドは、シグナル配列がこのポリペプチドに連結されている融合タンパク質であり得る。PrfA応答性調節エレメントの例としては、actAプロモーター、hlyプロモーター、picAプロモーター、inlAプロモーター、inlBプロモーターおよびprfAプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のある態様では、異種ポリペプチドは腫瘍抗原であり、本発明のある態様では、ポリペプチドは感染症関連抗原である。本発明のある態様では、異種ポリペプチドは非リステリアポリペプチドであり、本発明のある態様では、異種ポリペプチドは非細菌性である。
本発明のある態様では、リステリアはリステリア・モノサイトゲネスである。ある場合には、リステリアは、細胞間伝播および/または非食細胞内への侵入に関して弱毒化されている。ある場合には、リステリアは、actAおよび/またはinlBに不活性化変異を含む。ある場合には、リステリアは、actAinlB二重欠失変異株である。ある場合には、リステリアは、少なくとも1つの核酸修復遺伝子、例えば、uvrA、uvrB、uvrCまたは組換え修復遺伝子などに不活性化変異を含む。例えば、リステリアは、uvrAB欠失変異株である。ある場合には、細菌は核酸架橋剤(例えば、ソラレン)をさらに含む。本発明のある態様では、リステリアは、不活化されているが代謝的に活性(KBMA)である。
上記態様のリステリアを含む医薬組成物、免疫原性組成物および/またはワクチンがさらに提供される。ある態様では、医薬組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。本発明のある態様では、リステリアはアジュバントをさらに含む。
本発明のある態様では、本発明のリステリアは、治療剤と組み合わせて使用される。ある場合には、リステリアは治療剤と共に投与され、ある場合には、リステリアは治療剤の前に投与される。ある場合には、リステリアは治療剤の後に投与される。
本発明は、本発明の組換えリステリアの使用法を提供する。ある場合には、本発明は、抗原に対する免疫応答の誘導方法を提供する。ある場合には、本発明は、抗原の免疫原性の増強方法を提供する。ある場合には、抗原の免疫原性は、野生型PrfAポリペプチドの制御下においてリステリア内で発現された場合の抗原の免疫原性に比べて増強される。免疫原性の増強は、当該分野で公知の方法により測定され得る。ある態様では、免疫原性の増強は、免疫応答により誘導されることが知られている、サイトカイン、ケモカインおよびポリペプチドの発現増加を測定することにより測定され得る。例えば、MCP−1、IL−6、IFN−γ、TNFαおよび/またはIL−12p70。本発明のある態様では、免疫応答により誘導されることが知られている、サイトカイン、ケモカインおよびポリペプチドの発現増加は、野生型PrfAポリペプチドの制御下においてリステリア内で発現された場合に抗原により誘導されるそれらの発現に比べて増加し得る。本発明は、感染または癌性状態の予防または治療法を提供する。
癌および腫瘍の治療のための、組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチンの使用が報告されている(例えば、Brockstedtら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13832−13837;Brockstedtら,(2005)Nature Med.11:853−860);Starksら,(2004)J.Immunol.173:420−427;Shenら,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3987−3991を参照されたい)。リステリアに基づくワクチンも、例えば、米国特許出願公開第2007/0207170号;同第2007/0207171号;同第2007/0190063号;同第2005/0281783号;同第2005/0249748号;同第2004/0228877号および同第2004/0197343号に報告されており、これらはそれぞれ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
II.PrfAおよびprfAレギュロン
PrfA(ポジティブ調節因子A)は、リステリア毒性における重要な一連の遺伝子の誘導において中心的な役割を担っている(Scortti,M.ら,(2007)Microbes and Infection 9(10):1196−207)。PrfAは、カノニカル配列tTAACanntGTtAa(大文字は、不変ヌクレオチドを表す)を有する回文構造のプロモーターエレメントと結合することにより転写を活性化する。コアPrfAレギュロンを表1にまとめる。その他の数多くの遺伝子が、PrfAにより弱くまたは不規則に制御されている(Scortti,M.ら(2007)を参照されたい)。本発明のある態様では、異種ポリペプチドは、PrfAレギュロンプロモーターの制御下で発現される。
Figure 2011523553
PrfAは、腸内細菌のCrp(cAMP受容体タンパク質)と構造的に関連する、27kDalのタンパク質である(図7)。このタンパク質は、β‐ロールを有するN末端ドメイン、α−へリックス、ヒンジ/ドメイン間領域、DNA結合へリックス−ターン−へリックス(HTH)ドメインおよびHTHモチーフの安定化に役立つC末端αGドメインからなる。PrfAは、本来の形態での低活性化状態およびコンホメーション変化後の高活性化状態の2つの機能的状態で存在する。本来の低活性化状態から高活性化状態へのコンホメーション変化は、温度、pH、低鉄濃度、低炭水化物源および活性酸素種の存在を含めた環境的刺激により活性化されると思われる。PrfA活性化は、主として感染細胞の細胞質中で生じるものと思われる。PrfA依存性転写の調節は、3つの主要な要素、i)PrfAタンパク質活性の変化、ii)PrfA濃度の変化およびiii)プロモーターの配置に基づく差次的発現に依存する。したがって、本発明のある態様では、異種ポリペプチド発現は、PrfA活性におけるこれらの変化に応答する。
PrfA変異体ポリペプチドを含有する数多くのリステリア・モノサイトゲネス株が同定されており、これらにおいては、PrfA依存性遺伝子が恒常的に過剰発現されている(Scortti,M.ら,(2007)Microbes and Infection 9(10):1196−207)。このようなPrfAポリペプチド変異体は、PrfA*変異またはPrfA*変異体ポリペプチドと呼ばれ、I45S、Y63C、E77K、L140F、G145SおよびG155Sが包含されるが、これらに限定されない(図7)。PrfA*変異体ポリペプチドは、PrfAの低活性化状態から高活性化状態への切替えに関与するコンホメーション変化を模倣すると仮定されている。PrfA*変異体を有するリステリア菌株では、超活性化PrfAタンパク質が、PrfA依存性遺伝子を、それが正常に下方制御される条件下で恒常的に過剰発現させる。ある場合には、PrfA*ポリペプチドにおける変異がPrfAポリペプチドとDNAとの結合を増強させ得(例えば、PrfA* G145SおよびPrfA* L140F)、またある場合には、PrfA*変異が補助因子とPrfAポリペプチドとの結合を増強させ得る(例えば、PrfA*
Y63C)(Miner,M.D.ら,(2008)J.Biol.Chem.へ投稿)。PrfA*変異体を有するリステリア菌株は毒性であり、少なくともPrfA* G155Sの場合には、この変異株は超毒性である。
上にまとめたPrfA*変異体ポリペプチドに加え、当業者は、その他のPrfA*変異体ポリペプチドを生成し得る。例えば、リステリアを、エチルメタンスルホン酸のような免疫源と接触させた後に、PrfA依存性遺伝子が正常に下方制御される条件下で増殖させ得る(Shetron−Rama,L.M.ら,(2003)Mol.Microbiol.48:1537−1551)。PrfA依存性遺伝子の発現を抑制する条件の例としては、容易に代謝される糖類の存在および低pHが挙げられる。PrfA*変異体を有するリステリアは、PrfA−レギュロンプロモーター制御下でのPrfA依存性遺伝子(表1を参照されたい)発現またはレポーター遺伝子発現の直接的測定を非限定的に含む、多くの異なるスクリーニング法により同定され得る。prfA遺伝子を変異させるその他の方法は当該分野で公知であり、部位特異的突然変異誘発、特異的に変異を施した遺伝子の化学合成およびDNAシャッフリング法が挙げられるが、これらに限定されない。
同系の弱毒生ワクチン株およびKBMAワクチン株の効力に対するG145S、G155SおよびY63Cを含めた3つのPrfA*変異体の影響が評価された(実施例1を参照されたい)。同質遺伝子のリステリア・モノサイトゲネスワクチン株間の免疫的効力の差異を区別できるように、マウスにおいて広範なCD8+T細胞応答を誘導することが既に示されている5つの明確なMHCクラスIエピトープをコードする、Ag発現カセットを作製した(Moutaftsi,M.ら,(2006)Nat.Biotechnol.24:817−819)。ブロス培養における同質遺伝子株の増殖曲線は区別ができなかったが、天然prfAを有するリステリア・モノサイトゲネス株に比べ、PrfA*ワクチン株においてAgの発現および分泌の有意な増加が観察された。興味深いことに、感染および細胞内増殖のみならず、感染マクロファージまたは樹状細胞系統由来の細胞質において測定されたAg発現レベルは、すべての同質遺伝子ワクチン株の間で同等であった。しかし、注目すべきことに、マウスにおける免疫原性はprfA依存性であり、試験された他のprfA対立遺伝子に比べ、PrfA* G155Sで明らかに最大であった。細菌またはウイルス抗原投与に対する防御により測定されたワクチン誘導性CD+T細胞の度数および機能性は、試験された他のすべてのprfA対立遺伝子を有するワクチンに比べ、PrfA* G155Sを有する弱毒生ワクチンおよびKBMA組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチン株において有意に向上した。したがって、ブロス培養での相対的なPrfA依存性発現は、必ずしもワクチン効力と関連しなかったが、prfA G155S活性化変異は、確かにワクチン効力を増強した。まとめると、これらの実験結果は、免疫化前のprfAレギュロン活性化およびAg発現誘導は、Lmベースのワクチンの効力を増強することを示している。
本発明のある態様では、異種ポリペプチドは、PrfA*変異体ポリペプチドを含む組換えリステリア菌においてPrfAレギュロンの制御下で発現される。ある場合には、PrfA*変異体は、PrfA* G155S変異体ポリペプチドである。
III.シグナルペプチド
「シグナルペプチド」および「シグナル配列」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ある実施形態では、シグナルペプチドは、ポリペプチドが細胞から分泌されるように、シグナルペプチドと融合したそのポリペプチドの細胞(例えば、細菌細胞)の細胞膜を横切る輸送の促進を助ける。したがって、ある実施形態では、シグナルペプチドは、「分泌シグナルペプチド」または「分泌配列」である。シグナルペプチドは通常、分泌されるポリペプチドのN末端に位置している。
ある実施形態では、組換え核酸分子、発現カセットおよび/または発現ベクターによりコードされる融合タンパク質および/またはタンパク質キメラの一部分であるシグナルペプチドは、その融合タンパク質および/またはタンパク質キメラ中の少なくとも1つの他のポリペプチド配列に対して異種性である。ある実施形態では、組換え核酸分子、発現カセットおよび/または発現ベクターによりコードされるシグナルペプチドは、これら組換え核酸分子、発現カセットおよび/または発現ベクターが組み込まれるか、または既に組み込まれている細菌に対し、異種性(すなわち、外来性)である。ある実施形態では、シグナルペプチドは、組換え核酸分子、発現カセットおよび/または発現ベクターが組み込まれる細菌に内因性である。
ある実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細菌(例えば、リステリア・モノサイトゲネスのようなリステリア)内での発現に対してコドン最適化されている。ある実施形態では、特定の細菌に対してコドン最適化されたポリヌクレオチドは、その細菌に対して外来性である。他の実施形態では、特定の細菌に対してコドン最適化されたポリヌクレオチドは、その細菌に内因性である。
多種多様なシグナルペプチドが当該分野で公知である。さらに、シグナルペプチド配列の予測に使用され得る、「SignalP」アルゴリズムのような様々なアルゴリズムおよびソフトウェアプログラムが当該技術分野において利用可能である。例えば、Antelmannら,Genome Res.,11:1484−502(2001);Menneら,Bioinformatics,16:741−2(2000);Nielsenら,Protein Eng.,10:1−6(1997);Zhangら,Protein Sci.,13:2819−24(2004);Bendtsenら,J.Mol.Biol.,340:783−95(2004)(SignalP3.0に関する);Hillerら,Nucleic Acids Res.,32:W375−9(2004);Schneiderら,Proteomics 4:1571−80(2004);Chou,Curr.Protein Pept.Sci.,3:615−22(2002);Shahら,Bioinformatics,19:1985−96(2003);およびYuanら,Biochem.Biophys.Res.Commun.312:1278−83(2003)を参照されたい。
ある実施形態では、シグナルペプチドは原核性である。ある別の実施形態では、シグナルペプチドは真核性である。例えば、大腸菌(Escherichia coli)におけるタンパク質発現のための真核性シグナルペプチドの使用が、Humphreysら,Protein expression and Purification,20:252−264(2000)に記載されている。
ある実施形態では、シグナルペプチドは細菌性シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドは非リステリア性シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドは非リステリア性シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドはグラム陽性細菌に由来する。ある実施形態では、シグナルペプチドは細胞内細菌に由来する。
ある実施形態では、組換え核酸分子中で使用されるシグナルペプチドは、リステリアに由来する。さらなる実施形態では、このシグナルペプチドはリステリア・モノサイトゲネスに由来する。ある実施形態では、シグナルペプチドは、リステリア・モノサイトゲネス由来のシグナルペプチドである。別の実施形態では、細菌シグナルペプチドはバチルス(Bacillus)に由来する。ある実施形態では、細菌シグナルペプチドはスタフィロコッカス(Staphylococcus)に由来する。ある実施形態では、細菌シグナルペプチドはラクトコッカス(Lactococcus)に由来する。ある実施形態では、細菌シグナルペプチドは、バチルス、スタフィロコッカスまたはラクトコッカスに由来する。ある実施形態では、細菌シグナルペプチドは、バチルス、スタフィロコッカスまたはラクトコッカス菌由来のシグナルペプチドである。ある実施形態では、細菌シグナルペプチドは、炭疽菌、バチルス・スブチリス、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはラクトコッカス・ラクティス由来のシグナルペプチドである。
本明細書に記載のポリヌクレオチドのある実施形態では、細菌のような生物に由来するシグナルペプチドは、その生物から得られる天然のシグナルペプチド配列と同一である。他の実施形態では、組換え核酸分子によりコードされるシグナルペプチド配列は、天然のシグナルペプチド配列のフラグメントおよび/またはバリアントであり、ここで、バリアントはシグナルペプチドとして依然機能する。バリアントには、置換、欠失、追加および/また挿入により元の配列とは異なるポリペプチドが包含される。例えば、ある実施形態では、ポリヌクレオチドによりコードされるシグナルペプチドは、1つまたは複数の保存的変異を含む。可能な保存的アミノ酸変化は当業者に公知である。
別のシグナルペプチドに由来するシグナルペプチド(すなわち、他のシグナルペプチドのフラグメントおよび/またはバリアント)は、好ましくは、元のシグナルペプチドと実質的に同等である。例えば、別のシグナルペプチドに由来するシグナルペプチドがシグナルペプチドとして機能する能力は、元のシグナルペプチド配列に対して施された変化(欠失、変異など)により実質的に影響を受けないものであるべきである。ある実施形態では、得られるシグナルペプチドは、本来のシグナルペプチド配列と、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%同等のシグナルペプチドとして機能することができる。ある実施形態では、シグナルペプチドはアミノ酸配列において、元のシグナルペプチドと、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の同一性を有する。シグナルペプチドのフラグメントは、好ましくは、元のシグナルペプチドの少なくとも約80または90%の長さである。
ある実施形態では、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされるシグナルペプチドは、secA1シグナルペプチド、secA2シグナルペプチドまたはツインアルギニン転位(Tat)シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドはsecA1シグナルペプチドシグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドは非secA1シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドはsecA2シグナルペプチドである。ある実施形態では、シグナルペプチドはツインアルギニン転位(Tat)シグナルペプチドである。ある実施形態では、これらのsecA1、secA2またはTatシグナルペプチドは、リステリアに由来する。ある実施形態では、これらのsecA1、secA2またはTatシグナルペプチドは、非リステリア性である。例えば、ある実施形態では、secA1、secA2またはTatシグナルペプチドは、以下の属に属する細菌に由来する:バチルス、スタフィロコッカスまたはラクトコッカス。
ある実施形態では、シグナルペプチドを含む融合タンパク質は、リステリア・モノサイトゲネス由来のActAシグナルペプチドおよび異種ポリペプチドである。ある場合には、本発明は、特定の態様において、異種抗原をコードする第二の核酸と作動可能に連結されかつインフレームである改変ActAをコードする第一の核酸を含む、ポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、ポリヌクレオチドの発現が改変ActAと異種抗原とを含む融合タンパク質を生成する、ポリヌクレオチドを含有するリステリアを提供する。改変ActAは、ActAの天然の分泌配列、別のリステリアタンパク質に由来する分泌配列、非リステリア菌タンパク質に由来する分泌配列を含み得るか、または改変ActAは、任意の分泌配列を欠き得る。
ActAに由来する融合タンパク質パートナーは、発現増加、安定性増加、分泌増加、免疫提示増強、免疫応答刺激、腫瘍に対する生存率向上、癌に対する生存率向上、感染病原体に対する生存率向上などにおいて使用される。
一態様では、本発明は、融合タンパク質をコードする核酸配列と作動可能に連結されたPrfA依存性プロモーターを含むポリヌクレオチドを提供し、ここで、融合タンパク質は、(a)改変ActAおよび(b)異種抗原を含む。ある実施形態では、プロモーターはactAプロモーターである。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの少なくとも最初の59アミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の59を超えるアミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAのシグナル配列を含むActAのフラグメントである(または、ActAのシグナル配列を含むActAのフラグメントに由来する)。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の少なくとも59アミノ酸を含むが、ActAの最初の約265アミノ酸を超えない。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の59を超えるアミノ酸を含むが、ActAの最初の約265アミノ酸より少ない。換言すれば、ある実施形態では、改変ActA配列は、ActA配列のアミノ酸59とアミノ酸約265の間のある箇所で切り取られた、ActA(ActAシグナル配列を含む)のN末端フラグメントに対応する。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の59〜200アミノ酸、ActAの最初の59〜150アミノ酸、ActAの最初の59〜125アミノ酸またはActAの最初の59〜110アミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の59〜200アミノ酸、ActAの最初の59〜150アミノ酸、ActAの最初の59〜125アミノ酸またはActAの最初の59〜110アミノ酸からなる。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の約65〜約200アミノ酸、ActAの最初の約65〜約150アミノ酸、ActAの最初の約65〜約125アミノ酸またはActAの最初の約65〜約110アミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の約65〜約200アミノ酸、ActAの最初の約65〜約150アミノ酸、ActAの最初の約65〜約125アミノ酸またはActAの最初の約65〜約110アミノ酸からなる。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の70〜200アミノ酸、ActAの最初の80〜150アミノ酸、ActAの最初の85〜125アミノ酸、ActAの最初の90〜110アミノ酸、ActAの最初の95〜105アミノ酸またはActAの最初の約100アミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の70〜200アミノ酸、ActAの最初の80〜150アミノ酸、ActAの最初の85〜125アミノ酸、ActAの最初の90〜110アミノ酸、ActAの最初の95〜105アミノ酸またはActAの最初の約100アミノ酸からなる。ある実施形態では、改変ActAは、ActAのアミノ酸1〜100を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAのアミノ酸1〜100からなる。
本発明のある態様では、ActA−N−100異種抗原融合パートナーの形態を用いる組換えリステリアは、天然のactAプロモーターおよび5’非翻訳領域(UTR)RNAを有する上記抗原融合構築物と機能的に連結されている。actAプロモーターからのPrfA依存性転写により、ActAタンパク質GUG翻訳開始部位の前に、150ヌクレオチドの5'UTR RNAが合成される。actAプロモーター5'UTRを欠くL.モノサイトゲネス変異株は、低レベルのActAを発現する結果、野生型親菌に比べて、細胞内アクチン動員の欠如、細胞間伝播不能および弱毒化を特徴とする表現型となる(Wongら,Cellular Microbiology 6:155−166)。
別の態様において、本発明は、異種抗原をコードする第二の核酸と作動可能に連結されかつインフレームである改変ActAをコードする第一の核酸を含む、ポリヌクレオチドを提供する。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの少なくとも最初の59アミノ酸を含むが、最初の約265アミノ酸よりも少ない。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の59〜200アミノ酸、ActAの最初の59〜150アミノ酸、ActAの最初の59〜125アミノ酸またはActAの最初の59〜110アミノ酸を含む。ある実施形態では、改変ActAは、ActAの最初の70〜200アミノ酸、ActAの最初の80〜150アミノ酸、ActAの最初の85〜125アミノ酸、ActAの最初の90〜110アミノ酸、ActAの最初の95〜105アミノ酸またはActAの最初の約100アミノ酸を含む。ある実施形態では、第一の核酸は、ActAのアミノ酸1〜100をコードする。ある実施形態では、ポリヌクレオチドはゲノム性である。ある別の実施形態では、ポリヌクレオチドはプラスミドベースである。ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、プロモーターと作動可能に連結されている。
ある実施形態では、L.モノサイトゲネスのActAの最初の100アミノ酸をコードする天然配列は、所望の異種抗原配列とインフレームで機能的に連結されている。ある実施形態では、異種抗原配列は、低GC率の生物体であるL.モノサイトゲネスの最適コドン利用に従って合成される。ある実施形態では、5'非翻訳配列と共にactAプロモーターを用いた組成物が望ましい。
融合タンパク質パートナーとしてActA Nl00を含む構築物を作製するために使用される核酸およびポリペプチドをに開示する。L.モノサイトゲネスのおける発現に対してコドン最適化された配列および非コドン最適化配列が同定されている。
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本発明のシグナルペプチドのその他の例としては、リステリア・モノサイトゲネス由来LLOシグナルペプチド、ラクトコッカス・ラクティス由来Usp45シグナルペプチド、炭疽菌由来防御抗原、リステリア・モノサイトゲネス由来p60シグナルペプチド、バチルス・スブチリス由来PhoDシグナルペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
融合タンパク質パートナーとしてLLOおよびBaPaを含む構築物を作製するために使用される核酸およびポリペプチドを表3−1〜5に開示する。L.モノサイトゲネスのおける発現に対してコドン最適化された配列および非コドン最適化配列が同定されている。
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細菌は、タンパク質分泌のために、secA1、secA2およびツインアルギニン転位(Tat)を含めた多様な経路を利用する。どの経路を利用するかは、主としてプレタンパク質のN末端に位置するシグナル配列のタイプにより決定される。分泌タンパク質の大部分はSec経路を利用し、この経路では、タンパク質が、細菌膜に埋め込まれたタンパク質性のSecポアを通って、折り畳まれていない構造で移行する。これに対し、Tat経路を利用するタンパク質は、折りたたまれた構造で分泌される。任意のこれらのタンパク質分泌経路に対応したシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、所望の異種タンパク質コード配列と遺伝子的にインフレーム融合され得る。シグナルペプチドは、最適には、真に所望するタンパク質を細胞外環境に放出するために、カルボキシル末端にシグナルペプチダーゼ切断部位を含む(SharkovおよびCai,2002 J.Biol.Chem.277:5796−5803;Nielsenら,1997 Protein Engineering 10:1−6;ならびにwww.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)。
本発明のポリヌクレオチド中で使用されるシグナルペプチドは、多様な分泌経路だけでなく、多様な細菌属にも由来し得る。シグナルペプチドには、一般に、共通する構造的構成があり、荷電したN末端(N−ドメイン)、疎水性コア領域(H−ドメイン)および高極性のC末端領域(C−ドメイン)を有するが、配列保存性は示さない。ある実施形態では、シグナルペプチドのC−ドメインは、I型シグナルペプチダーゼ(SPaseI)切断部位を有し、この切断部位に対して−1および−3の位置にコンセンサス配列A−X−Aが存在する。sec経路を介して分泌されるタンパク質は、平均28残基のシグナルペプチドを有する。secA2タンパク質分泌経路は、リステリア・モノサイトゲネスで最初に発見され、secA2パラログにおける変異株は、寒天培地上の粗いコロニー表現型およびマウスにおける弱毒性表現型を特徴とする(LenzおよびPortnoy,2002 Mol.Microbiol.45:1043−1056;ならびにLenzら,2003 PNAS 100:12432−12437)。Tat経路により分泌されるタンパク質に関連したシグナルペプチドは、Secシグナルペプチドと同様に三部分の構成を有するが、N−ドメイン/H−ドメイン境界に位置するRR−モチーフ(R−R−X−#−#、ここで#は疎水性残基である)を有することを特徴とする。細菌Tatシグナルペプチドは、secシグナルペプチドよりも平均14アミノ酸だけ長い。バチルス・スブチリスのセクレトームは、Tat分泌経路を利用する69種もの推定タンパク質を含み得、そのうちの14種はSPaseI切断部位を含む(Jongbloedら,2002 J.Biol.Chem.277:44068−44078;Thalsmaら,2000 Microbiol.Mol.Biol.Rev.64:515−547)。
IV.異種ポリペプチドおよび異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
リステリア内のポリヌクレオチドによりコードされるおよび/またはリステリアにより発現される「異種ポリペプチド」は、リステリアに対して異種性である。特定の実施形態では、異種ポリペプチドは非リステリア性である。特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、天然のリステリアにおいて、ゲノムDNA内にもリステリアに感染したどのバクテリオファージ内にも見られない。ある実施形態では、1つまたは複数の異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは組換え型である。特定の実施形態では、異種ポリペプチドは非細菌性である。
ある実施形態では、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがリステリア内で発現される場合、リステリアにおける発現を指令することができる、作動可能に連結されたプロモーターが好ましい。ある実施形態では、プロモーターは原核性である(例えば、hlyまたはactAプロモーターのようなリステリアのプロモーター)。ある実施形態では、異種抗原をコードするポリヌクレオチドは、リステリアにおける発現に対してコドン最適化されている(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0249748号を参照されたい)。
ある実施形態では、リステリアにより細胞内(例えば、哺乳動物細胞)に送達されるか、または本発明のリステリアにより細胞内(例えば、哺乳動物細胞)に送達される核酸によってコードされる異種ポリペプチドは、抗原を含む。ある実施形態では、抗原は、腫瘍抗原(例えば、ヒト腫瘍抗原)または抗原性フラグメントもしくはそのバリアントである。ある別の実施形態では、抗原は、感染病原体由来の抗原または抗原性フラグメントもしくはそのバリアントである。
本明細書に記載の組換え核酸分子および本明細書に記載の発現カセットもしくは発現ベクターは、任意の所望のポリペプチドをコードするために使用され得る。特に、組換え核酸分子、発現カセットおよび発現ベクターは、細菌における異種ポリペプチド発現に有用である。
ある実施形態では(使用する組換え核酸分子、発現カセットまたは発現ベクターに応じて)、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、シグナルペプチドを有する融合タンパク質の一部としてコードされる。他の実施形態では、コードされるポリペプチドは、組換え核酸分子により別々のポリペプチドとしてコードされる。さらに他の実施形態では、組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、シグナルペプチドは含まないが組換え核酸分子を含む融合タンパク質の一部として、コードされる。さらに他の実施形態では、本発明の組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、このポリペプチドが別のポリペプチド配列内に組み込まれている融合タンパク質(本明細書では、タンパク質キメラとも呼ぶ)の一部としてコードされる。
したがって、本明細書(以下およびその他の場所)に列挙される、本発明の組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされる各ポリペプチドは、特定の組換え核酸分子に応じて、組換え核酸分子による、融合タンパク質(シグナルペプチドと、および/または他のポリペプチドともしくはその中に、融合されている)として、または別々のポリペプチドとして発現され得ることが理解される。
ある実施形態では、ポリペプチドは、組換え核酸分子によりコードされる融合タンパク質の一部であり、その融合タンパク質のシグナルペプチドに対して異種性である。ある実施形態では、ポリペプチドは、それが異種性である別のポリペプチド内にある。
ある実施形態では、ポリペプチドは細菌性(リステリア性または非リステリア性)である。ある実施形態では、ポリペプチドは細菌性ではない。ある実施形態では、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、哺乳動物ポリペプチドである。例えば、ポリペプチドは、ヒトにおいて見られるポリペプチド配列(例えば、ヒトポリペプチド)に対応し得る。ある実施形態では、ポリペプチドはリステリア性である。ある実施形態では、ポリペプチドは非リステリア性である。ある実施形態では、ポリペプチドは、組換え核酸分子が組み込まれるかまたは組み込まれている細菌に内因性のものではない(すなわち、外来性である)。
ある実施形態では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細菌における発現に対してコドン最適化されている。ある実施形態では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細菌における発現に対して完全にコドン最適化されている。ある実施形態では、コドン最適化ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、細菌に対して外来性である(すなわち、細菌に対して異種性である)。
「ポリペプチド」という用語は、本明細書において「ペプチド」および「タンパク質」と互換的に使用され、そこに含まれるアミノ酸配列の長さまたは大きさに関する制限はないものとする。しかし、通常、ポリペプチドは、少なくとも約6個のアミノ酸を含むであろう。ある実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも約9個、少なくとも約12個、少なくとも約20個、少なくとも約30個または少なくとも約50個のアミノ酸を含むであろう。ある実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも約100個のアミノ酸を含む。ある実施形態では、ポリペプチドは、タンパク質の特定の1つのドメイン(例えば、細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、触媒ドメインまたは結合ドメイン)である。ある実施形態では、ポリペプチドは全(すなわち、完全長)タンパク質を含む。
ある実施形態では、組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、疾患に対する対症的治療を提供する抗原またはタンパク質である。ある実施形態では、コードされるポリペプチドは治療用タンパク質である。
ある実施形態では、組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは抗原である。ある実施形態では、抗原は細菌抗原である。ある実施形態では、抗原は非リステリア菌抗原である。しかし、ある実施形態では、抗原は非リステリア抗原である。他の実施形態では、抗原は非細菌抗原である。ある実施形態では、抗原は哺乳動物抗原である。ある実施形態では、抗原はヒト抗原である。ある実施形態では、ポリペプチドは、1つまたは複数の免疫原性エピトープを含む抗原である。ある実施形態では、抗原は、1つまたは複数のMHCクラスIエピトープを含む。他の実施形態では、抗原は、1つまたは複数のMHCクラスIIエピトープを含む。ある実施形態では、エピトープはCD4+T細胞エピトープである。他の実施形態では、エピトープはCD8+T細胞エピトープである。
抗原をコードするポリヌクレオチドは、いかなる厳密な核酸配列(すなわち、天然の完全長抗原をコードする)にも限定されないが、本発明の細菌または組成物中で個体に投与された場合に所望の免疫応答を誘発するのに十分なポリペプチドをコードする、任意の配列であり得る。本明細書で使用される「抗原」という用語は、そのフラグメントが抗原性(すなわち、免疫原性)である限り、より大きな抗原タンパク質のフラグメントを包含することも理解される。さらに、ある実施形態では、組換え核酸のポリヌクレオチドによりコードされる抗原は、天然の抗原配列のバリアントであり得る。(他の非抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関しても同様に、所与のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列は、発現される所望のタンパク質が、個体に投与された場合に所望の効果(例えば、対症的効果)をもたらす限り、異なり得る。)
別の抗原に由来する抗原は、他方の抗原の抗原性フラグメント、他方の抗原の抗原性バリアントまたは他方の抗原フラグメントの抗原性バリアントである抗原を含む。抗原のバリアントは、1つまたは複数の置換、欠失、追加および/または挿入により元の抗原とは異なる抗原を含む。
抗原性フラグメントは、任意の長さであり得るが、最も一般的には、少なくとも約6アミノ酸、少なくとも約9アミノ酸、少なくとも約12アミノ酸、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約50アミノ酸または少なくとも約100アミノ酸である。抗原の抗原性フラグメントは、その抗原由来の少なくとも1つのエピトープを含む。ある実施形態では、エピトープはMHCクラスIエピトープである。他の実施形態では、エピトープはMHCクラスIIエピトープである。ある実施形態では、エピトープはCD4+T細胞エピトープである。他の実施形態では、エピトープはCD8+T細胞エピトープである。
タンパク質内の抗原性領域(エピトープを含む)の予測に有用な様々なアルゴリズムおよびソフトウェアが、当業者にとって利用可能である。例えば、MHCクラスIおよびクラスII分子と結合するエピトープを選択するために使用できるアルゴリズムが公表されている。例えば、公表されている「SYFPEITHI」は、MHC結合ペプチドを予測するために使用できる(Rammenseeら,(1999)Immunogenetics 50:213−9)。その他の公表されているアルゴリズムの例に関しては、以下の参考文献を参照されたい:Parkerら,(1994)J.Immunol.152:163−75;SinghおよびRaghava(2001)Bioinformatics 17:1236−1237;SinghおよびRaghava(2003)Bioinformatics 19:1009−1014;Mallios(2001)Bioinformatics 17:942−8;Nielsenら,(2004)Bioinformatics 20:1388−97;Donnesら,(2002)BMC Bioinformatics 3:25;Bhasinら,(2004)Vaccine 22:3195−204;Guanら,(2003)Nucleic Acids Res.31:3621−4;Recheら,(2002)Hum.Immunol.63:701−9;Schirleら,(2001)J.Immunol.Methods 257:1−16;Nussbaumら,(2001)Immunogenetics(2001)53:87−94;Luら,(2000)Cancer Res.60:5223−7。例えば、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD)、GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA)、Wellingら,(1985)FEBS Lett.188:215−218、Parkerら,(1986)Biochemistry 25:5425−5432、Van RegenmortelおよびPellequer(1994)Pept.Res.7:224−228、HoppおよびWoods(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:3824−3828ならびにHopp(1993)Pept.Res.6:183−190も参照されたい。この段落の上記参考文献で論じられているアルゴリズムまたはソフトウェアパッケージは、あるものはMHCクラスIおよび/またはクラスII結合ペプチドまたはエピトープの予測を、あるものはプロテアソーム切断部位の同定を、さらにあるものは親水性に基づく抗原性の予測を対象とする。
所望の性質のエピトープを少なくとも1つ含むと考えられる抗原性フラグメント候補が一度同定されれば、その配列をコードするポリヌクレオチドを発現カセットに組み込んで、リステリアワクチンベクターまたは他の細菌ワクチンベクター内に導入することができる。次いで、この抗原性フラグメントを発現するリステリアまたは他の細菌により生じた免疫応答を評価することにより、このフラグメントの免疫原性を確認することができる。ELISPOTアッセイ、細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイ、細胞傷害性T細胞活性アッセイなどのような一般的な免疫学的アッセイを用いて、選択された抗原フラグメントが所望の免疫原性を保持していることを検証することができる。さらに、リステリアおよび/または細菌ワクチンの抗腫瘍効果も、既知の方法を用いて評価することができる;例えば、抗原フラグメントを発現するCT26マウス結腸細胞をマウス内に移植し、次いで、ワクチン候補をマウスにワクチン接種して、腫瘍サイズ、転移、生存率などに対する効果を、対照群および/または完全長抗原と比較して観察する。
さらに、抗原性フラグメントの同定に使用するエピトープおよび/またはMHCリガンド情報を含む膨大なデータベースが公表されている。例えば、Brusicら,(1998)Nucleic Acids Res.26:368−371;Schonbachら,(2002)Nucleic Acids Research 30:226−9;およびBhasinら,(2003)Bioinformatics 19:665−666;およびRammenseeら,(1999)Immuno genetics 50:213−9を参照されたい。
抗原性バリアントのアミノ酸配列は、元の抗原に対して、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%の同一性を有する。
ある実施形態では、抗原性バリアントは、元の抗原に対して少なくとも約80%の同一性を有する保存的バリアントであり、抗原性バリアントと元の抗原の配列間の置換は、保存的アミノ酸置換である。以下に挙げる置換は、考えられる保存的アミノ酸置換である:バリン、イソロイシンまたはロイシンは、アラニンに置換される;リジン、グルタミンまたはアスパラギンは、アルギニンに置換される;グルタミン、ヒスチジン、リジンまたはアルギニンは、アスパラギンに置換される;グルタミン酸はアスパラギン酸に置換される;;セリンはシステインに置換される;アスパラギンはグルタミンに置換される;アスパラギン酸はグルタミン酸に置換される;プロリンまたはアラニンは、グリシンに置換される;アスパラギン、グルタミン、リジンまたはアルギニンは、ヒスチジンに置換される;ロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニンまたはノルロイシンは、イソロイシンに置換される;ノルロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニンまたはフェニルアラニンは、ロイシンに置換される;アルギニン、グルタミンまたはアスパラギンは、リジンに置換される;ロイシン、フェニルアラニンまたはイソロイシンは、メチオニンに置換される;ロイシン、バリン、イソロイシン、アラニンまたはチロシンは、フェニルアラニンに置換される;アラニンはプロリンに置換される;スレオニンはセリンに置換される;セリンはスレオニンに置換される;チロシンまたはフェニルアラニンは、トリプトファンに置換される;トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニンまたはセリンは、チロシンに置換される;トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニンまたはセリンは、チロシンに置換される;イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アラニンまたはノルロイシンは、バリンに置換される。ある実施形態では、抗原性バリアントは、元の抗原に対して少なくとも約90%の同一性を有する保存的バリアントである。
ある実施形態では、別の抗原に由来する組換え核酸分子によりコードされる抗原は、実質的に他方の抗原と同等である。別の抗原に由来する抗原は、得られた抗原が、アミノ酸配列において、元の抗原に対して少なくとも約70%の同一性を有し、かつ元の抗原の少なくとも約70%の免疫原性を保持する場合、それが由来する元の抗原と実質的に同等である。ある実施形態では、実質的に同等な抗原は、アミノ酸配列において、元の抗原に対し、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%の同一性を有する。ある実施形態では、実質的に同等な抗原は、元の抗原に対する保存的置換のみを含む。ある実施形態では、実質的に同等な抗原は、元の抗原の、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の免疫原性を保持する。特定の得られた抗原の免疫原性を判定して元の抗原のものと比較し、この得られた抗原が実質的に元の抗原と同等であるか否かを判定するために、得られた抗原と元の抗原の両方を、当業者に公知の数多くの任意の免疫原性アッセイで試験することができる。例えば、元の抗原または得られた抗原を発現するリステリアは、本明細書に記載のように調製することができる。異なる抗原を発現するこれらのリステリアが免疫応答を生じさせる能力は、当該リステリアをマウスにワクチン接種し、次いで、ELISPOTアッセイ、細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイ、細胞傷害性T細胞活性アッセイなどの一般的な手法を用いて評価することにより、測定することができる。
ある実施形態では、組換え核酸分子によりコードされる抗原は、腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍関連抗原由来の抗原である。ある実施形態では、抗原は瘍関連抗原である。
ある実施形態では、組換え核酸分子は、腫瘍関連抗原と同一ではなく腫瘍関連抗原由来の抗原をコードする。例えば、ある実施形態では、組換え核酸分子のポリヌクレオチドによりコードされる抗原は、腫瘍関連抗原フラグメント、腫瘍関連抗原バリアントまたは腫瘍関連抗原フラグメントのバリアントを含み得る。ある場合には、腫瘍抗原のような抗原は、アミノ酸配列が宿主内因性のものとわずかに異なる場合に、ワクチンにおいてより高い免疫応答を誘導することが可能である。他の場合には、得られた抗原は、元の抗原よりも低い免疫応答を誘導するが、例えば、小型のサイズであるために、リステリアワクチンベクターでの異種性発現にはより好都合である。ある実施形態では、腫瘍関連抗原バリアントまたは腫瘍関連抗原フラグメントのバリアントのアミノ酸配列は、腫瘍関連抗原またはその対応するフラグメントのアミノ酸配列とは1つまたは複数のアミノ酸が異なる。腫瘍関連抗原に由来する抗原は、その抗原をコードするポリヌクレオチドの宿主内での発現の際に所望の免疫応答を誘導することができるエピトープ配列を、少なくとも1つ含むであろう。
したがって、ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドは、腫瘍関連抗原に由来する抗原をコードし、ここで、この抗原は、腫瘍関連抗原の抗原性フラグメントを少なくとも1つ含む。抗原性フラグメントは、腫瘍関連抗原のエピトープを少なくとも1つ含む。ある実施形態では、別の抗原に由来する抗原は、他方の抗原の抗原性(すなわち、免疫原性)フラグメントまたは抗原性バリアントである。ある実施形態では、抗原は、他方の抗原の抗原性フラグメントである。ある実施形態では、抗原は、他方の抗原の抗原性バリアントである。
T細胞により認識される数多くの腫瘍関連抗原が同定されている(Renkvistら,Cancer Immunol.Innumother.50:3−15(2001))。これらの腫瘍関連抗原は、分化抗原(例えば、PMSA、チロシナーゼ、gp100)、組織特異抗原(例えば、PAP、PSA)、発生抗原、腫瘍関連ウイルス抗原(例えば、HPV 16 E7)、癌精巣抗原(例えば、MAGE、BAGE、NY−ESO−1)、胚抗原(例えば、CEA、アルファフェトプロテイン)、腫瘍性タンパク質抗原(例えば、Ras、p53)、過剰発現タンパク質抗原(例えば、ErbB2(Her2/Neu)、MUC1)または変異タンパク質抗原であり得る。異種核酸配列によりコードされ得る腫瘍関連抗原としては、707−AP、アネキシンII、AFP、ART−4、BAGE、β−カテニン/m、BCL−2、bcr−abl、bcr−ablp190、bcr−ablp210、BRCA−1、BRCA−2、CAMEL、CAP−1、CASP−8、CDC27/m、CDK−4/m、CEA(Huangら,E×per Rev.Vaccines(2002)1:49−63)、CT9、CT10、Cyp−B、Dek−cain、DAM−6(MAGE−B2)、DAM−10(MAGE−B1)、EphA2(Zantekら,Cell Growth Differ.(1999)10:629−38;Carles−Kinchら,Cancer Res.(2002)62:2840−7)、ELF2M、EphA2(Zantekら,Cell Growth Differ.(1999)10:629−38;Carles−Kinchら,Cancer Res.(2002)62:2840−7)、ETV6−AML1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7B、GAGE−8、GnT−V、gp100、HAGE、HER2/neu、HLA−A*0201−R170I、HPV−E7、H−Ras、HSP70−2M、HST−2、hTERT、hTRT、iCE、アポトーシス阻害剤(例えば、サバイビン)、KIAA0205、K−Ras、12−K−Ras(コドン12変異を有するK−Ras)、LAGE、LAGE−1、LDLR/FUT、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−6、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D、MART−1、MART−1/Melan−A、MC1R、MDM−2、メソテリン、ミオシン/m、MUC1、MUC2、MUM−1、MUM−2、MUM−3、neo−polyAポリメラーゼ、NA88−A、N−Ras、NY−ESO−1、NY−ESO−1a(CAG−3)、PAGE−4、PAP、プロテイナーゼ3(PR3)(Molldremら,Blood(1996)88:2450−7;Molldremら,Blood(1997)90:2529−34)、P15、p190、Pml/RARα、PRAME、PSA、PSM、PSMA、RAGE、RAS、RCAS1、RU1、RU2、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SP17、SPAS−1、TEL/AML1、TPI/m、チロシナーゼ、TARP、TRP−1(gp75)、TRP−2、TRP−2/INT2、WT−1ならびにNY−ESO−1およびLAGE−1遺伝子に由来する代わりに翻訳されるNY−ESO−ORF2およびCAMELタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
組換え核酸分子中のポリヌクレオチドによりコードされる抗原は、まだ同定されていない抗原を含めた、腫瘍特異的免疫応答を誘発し得る任意の腫瘍関連抗原を包含し得る。組換え核酸はまた、2つ以上の腫瘍関連抗原をコードし得る。
ある実施形態では、抗原は、メソテリン(Arganiら,Clin Cancer Res.7(12):3862−8(2001))、Sp17(Limら,Blood 97(5):1508−10(2001))、gp100(Kawakamiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6458(1994))、PAGE−4(Brinkmannら,Cancer Res.59(7):1445−8(1999))、TARP(Wolfgangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(17):9437−42(2000))、EphA2(Tatsumiら,Cancer Res.63(15):4481−9(2003))、PR3(Muller−Beratら,Clin.Immunol.Immunopath.70(1):51−9(1994))、前立腺幹細胞抗原(PSCA)(Reiterら,Proc.Natl.Acad.Sci.,95:1735−40(1998);Kiesslingら,Int.J.Cancer,102:390−7(2002))またはSPAS−1(米国特許出願公開第2002/0150588号)である。
本発明のある実施形態では、組換え核酸分子または発現カセットによりコードされる抗原はCEAである。他の実施形態では、抗原はCEAの抗原性フラグメントおよび/または抗原性バリアントである。CEAは、結腸癌、胃癌および膵臓癌の90%、非小細胞肺癌の70%および乳癌の50%を含め、ヒト腫瘍の高い割合で過剰発現される、180−kDAの細胞間接着膜糖タンパク質である(Hammarstrom,Semin.Cancer Biol.,9:67−81)。CEAを模倣する抗イディオタイプモノクローナル抗体(Foonら,Clin.Cancer Res.,87:982−90(1995)、またはCEAを発現する組換えワクチニアウイルス(Tsangら,J.Natl.Cancer Inst.,87:982−90(1995)を用いたワクチン接種)のような様々な免疫療法が研究されてきたが、残念なことに大きな成果はない。それにもかかわらず、本発明者らは、ワクチン接種した患者から生じたヒトT細胞により認識される、HLA*0201拘束性エピトープであるCAP−1(CEA605−613)を同定した。DCパルスによるこのエピトープの患者へのワクチン接種では、臨床的応答を誘導できなかった(Morseら,Clin.Cancer Res.,5:1331−8(1999))。最近、610位においてアスパラギン酸からアスパラギンへのヘテロクリティックな置換を有するCEA605−613ペプチドアゴニストが同定された(CAP1−6D)。このアミノ酸置換は、このペプチドのMHC結合親和性を変化させなかったが、改変ペプチドリガンド(APL)の使用により、CEA特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のインビトロでの発生が向上した。CAP1−6D特異的CTLは、天然CEAを発現する腫瘍細胞を認識し溶解させる能力を保持していた(Zarembaら,Cancer Res.,57:4570−7(1997);Salazarら,Int.J.Cancer,85:829−38(2000))。Fongらは、Flt3−リガンドでワクチン接種した結腸癌患者におけるCEA特異的免疫の誘導が、このAPLとインキュベートされたDCを増大することを実証した。有望なことに、ワクチン接種後の12人の患者のうち2人において、ペプチド−MHCテトラマー+T細胞の誘導と関連する劇的な腫瘍退縮が認められた(Fong ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,98:8809−14(2001))。
別の実施形態では、組換え核酸分子によりコードされる抗原は、プロテイナーゼ3であるかまたはプロテイナーゼ3に由来する抗原である。例えば、一実施形態では、抗原はHLA−A2.1拘束性ペプチドPR1を含む(アミノ酸169〜177;VLQELNVTV)。プロテイナーゼ3および/またはPR1エピトープに関する情報は、以下の参考文献において入手可能である;米国特許第5,180,819号、Molldremら,Blood,90:2529−2534(1997);Molldremら,Cancer Research,59:2675−2681(1999);Molldremら,Nature Medicine,6:1018−1023(2000);およびMolldremら,Oncogene,21:8668−8673(2002)。
ある実施形態では、組換え核酸分子または発現カセットによりコードされる抗原は、K−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、SP−17、PAGE−4、TARP、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAまたはCEAからなる群より選択される抗原である。ある実施形態では、抗原はK−Rasである。ある実施形態では、抗原はH−Rasである。ある実施形態では、抗原はN−Rasである。ある実施形態では、抗原はK−Rasである。ある実施形態では、抗原はメソテリンである。ある実施形態では、抗原はPSCAである。ある実施形態では、抗原はNY−ESO−1である。ある実施形態では、抗原はWT−1である。ある実施形態では、抗原はサバイビンである。ある実施形態では、抗原はgp100である。ある実施形態では、抗原はPAPである。ある実施形態では、抗原はプロテイナーゼ3である。ある実施形態では、抗原はSPAS−1である。ある実施形態では、抗原はSP−17である。ある実施形態では、抗原はPAGE−4である。ある実施形態では、抗原はTARPである。ある実施形態では、抗原はCEAである。
ある実施形態では、抗原はヒトメソテリンである。
ある実施形態では、抗原は、メソテリン、SPAS−1、プロテイナーゼ3、EphA2、SP−17、gp100、PAGE−4、TARP、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAもしくはCEA、またはこれらのタンパク質の1つに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、メソテリンであるか、またはメソテリンに由来する。他の実施形態では、抗原は、EphA2であるか、またはEphA2に由来する抗原である。ある実施形態では、本明細書に記載の組換え核酸分子によりコードされる抗原は、Epha2(またはEpha2に由来する抗原)ではない。ある実施形態では、抗原はEpha2以外の腫瘍関連抗原である。ある実施形態では、抗原は、Epha2以外の腫瘍関連抗原に由来する。
ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドは、K−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、SP−17、PAGE−4、TARP、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAまたはCEAに由来する抗原をコードする。ある実施形態では、抗原はK−Rasに由来する。ある実施形態では、抗原はH−Rasに由来する。ある実施形態では、ポリペプチドはN−Rasである。ある実施形態では、抗原は12−K−Rasに由来する。ある実施形態では、抗原は、メソテリンに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、PSCAに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、NY−ESO−1由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、WT−1に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、サバイビンに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、gp100に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、PAPに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、プロテイナーゼ3に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、SPAS−1に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、SP−17に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、PAGE−4に由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、TARPに由来する抗原である。ある実施形態では、抗原は、CEAに由来する抗原である。
ある実施形態では、抗原は、メソテリンまたはその抗原性フラグメントもしくは抗原性バリアントである。ある実施形態では、抗原は、メソテリンシグナルペプチドおよび/またはGPIアンカーが欠失したメソテリンである。ある実施形態では、抗原は、メソテリンシグナルペプチドおよび/またはGPIアンカーが欠失したヒトメソテリンである。ある実施形態では、抗原は、メソテリンシグナルペプチドおよびGPIアンカーが欠失したヒトメソテリンである。
ある実施形態では、抗原は、NY−ESO−1またはその抗原性フラグメントもしくは抗原性バリアントである。
ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドは、腫瘍関連抗原、例えば、ヒト前立腺幹細胞抗原(PSCA;GenBank Acc.No.AF043498)、ヒト精巣抗原(NY−ESO−1;GenBank Acc.No.NM_001327)、ヒト癌胎児抗原(CEA;GenBank Acc.No.M29540)、ヒトメソテリン(GenBank Acc.No.U40434)、ヒトサバイビン(GenBank Acc.No.U75285)、ヒトプロテイナーゼ3(GenBank No.X55668)、ヒトK−Ras(GenBank Acc.Nos.M54969およびPO1116)、ヒトH−Ras(GenBank Acc.No.P01112)、ヒトN−Ras(GenBank Acc.No.P01111)およびヒト12−K−Ras(Gly12Asp変異を含むK−Ras)(例えば、GenBank Acc.No.K00654を参照されたい)の抗原性フラグメントを少なくとも1つ含む。ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドは、少なくとも1つの保存的に置換されたアミノ酸を有する腫瘍関連抗原の抗原性フラグメントを含む。ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失した抗原性フラグメントを含む。ある実施形態では、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドは、2つ以上のタイプの腫瘍関連抗原由来の抗原性配列の組合せ、例えば、メソテリンおよびRasの両方に由来する抗原性フラグメントの組合せを含む。
抗原性であると予測される腫瘍抗原の領域の例として、以下のものが挙げあられる:PSCAアミノ酸配列(GenBank Acc.No.AF043498)のアミノ酸25〜35;70〜80;および90〜118;NY−ESO−1(GenBank Acc.No.NM_001327)のアミノ酸40〜55、75〜85、100〜115および128〜146;CEAアミノ酸配列(GenBank Acc.No.M29540)のアミノ酸70〜75、150〜155、205〜225、330〜340および510〜520;メソテリンポリペプチド配列(GenBank Acc.No.U40434)のアミノ90〜110、140〜150、205〜225、280〜310、390〜410、420〜425および550〜575;サバイビンポリペプチド配列(GenBank Acc.No.U75285)のアミノ酸12〜20、30〜40、45〜55、65〜82、90〜95、102〜115および115〜130;プロテイナーゼ3アミノ酸配列(GenBank Acc.No.X55668に見られる)のアミノ酸10〜20、30〜35、65〜75、110〜120および160〜170;GenBank Acc.Nos.P01117またはM54968(ヒトK−Ras)のアミノ酸10〜20、30〜50、55〜75、85〜110、115〜135、145〜155および160〜185;GenBank Acc.No.P01112(ヒトH−Ras)のアミノ酸10〜20、25〜30、35〜45、50〜70、90〜 110、115〜135および145〜175;GenBank Acc.No.P01111(ヒトN−Ras)のアミノ酸10〜20、25〜45、50〜75、85〜110、115〜135、140〜155および160〜180;ならびに12−K−Ras(GenBank Acc.No.K00654に開示されている配列)の最初の25アミノ酸。これらの抗原性領域は、Hopp−WoodsおよびWelling抗原性プロットにより予測された。
ある実施形態では、別々のポリペプチドとして、選択されたシグナルペプチドを有する融合タンパク質としてまたはポリペプチドが別のポリペプチド内に挿入されたタンパク質キメラとして、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、以下のヒトメソテリンのペプチドを1つまたは複数含むポリペプチドである:SLLFLLFSL(アミノ酸20〜28);VLPLTVAEV(アミノ酸530〜538);ELAVALAQK(アミノ酸83〜92);ALQGGGPPY(アミノ酸225〜234);FYPGYLCSL(アミノ酸435〜444);およびLYPKARLAF(アミノ酸475〜484)。例えば、ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる抗原は、1つまたは複数のこれらのペプチドを含むヒトメソテリンの(抗原性)フラグメントである。これらのメソテリンペプチド配列およびこれらと医学関連の免疫応答との関係は、PCT国際公開公報第2004/006837号に見ることができる。
あるいは、組換え核酸分子中のポリヌクレオチドは、自己免疫疾患特異的抗原をコードし得る。T細胞仲介性の自己免疫疾患では、自己抗原に対するT細胞応答が自己免疫疾患を引き起こす。本発明のワクチンによる自己免疫疾患治療で使用される抗原のタイプは、自己免疫応答の原因となる特定のT細胞を標的とし得る。例えば、抗原は、自己免疫を引き起こすそれらのT細胞に特異的なイディオタイプであるT細胞受容体の一部であり得、ここで、本発明のワクチンに組み込まれる抗原は、自己免疫応答を引き起こすそれらのT細胞に特異的な免疫応答を誘発するであろう。これらのT細胞を除去することは、自己免疫疾患を軽減するための治療機構となるであろう。自己免疫疾患における自己抗原に対して生成される抗体を標的とするまたはこの抗体を分泌する特定のB細胞クローンを標的とする免疫応答を引き起こすであろう抗原をコードするポリヌクレオチドを、組換え核酸分子内に組み込むことが、別の可能性してある。例えば、イディオタイプ抗原をコードするポリヌクレオチドを組換え核酸分子内に組み込み、自己免疫疾患において自己抗原と反応するこのようなB細胞および/または抗体に対する抗イディオタイプ免疫応答を引き起こし得る。本発明の発現カセットおよび組換え核酸分子を含む細菌を含むワクチンで治療可能な自己免疫疾患としては、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、狼瘡、重症筋無力症、白斑、強皮症、乾癬、尋常性天疱瘡、線維筋痛症、大腸炎および糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。アレルギー反応の治療に対しても同様のアプローチを行うことができ、このアプローチでは、ワクチン微生物内に組み込まれた抗原は、アレルギー反応の調節に有効なT細胞、B細胞または抗体を標的とする。乾癬のようないくつかの自己免疫疾患では、この疾患により、同様に標的とされ得る抗原の発現を伴った増殖過剰な細胞増殖を生じる。増殖過剰な細胞に対する免疫応答を引き起こすような抗原が考えられる。
任意で、組換え核酸分子は、タンパク質構造に関連した固有の疾患を標的とする抗原をコードする。抗体、B細胞またはT細胞を標的として、上記イディオタイプ抗原を使用することがこの一例である。特定の疾患から生じる固有のタンパク質構造を標的とすることが別の可能性としてある。アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)およびウシ海綿状脳症(BSE)のような疾患に見られるアミロイド斑を引き起こすタンパク質に対する免疫応答を発生させる抗原を組み込むことが、この一例であろう。このアプローチは、斑形成の減少をもたらすだけかもしれないが、CJDのような疾患の場合には、治療ワクチンを提供し得る。この疾患は、感染型プリオンタンパク質により引き起こされる。ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、ワクチンにより生じた免疫応答が、CJDを引き起こす感染性タンパク質を、除去する、減少させる、または制御するように、感染型プリオンタンパク質に対する抗原をコードする。
ある実施形態では、組換え核酸分子によりコードされるポリペプチドは、感染症抗原であるか、または感染症抗原に由来する。ある実施形態では、組換え核酸分子によりコードされるポリペプチドは感染症抗原である。ある実施形態では、組換え核酸分子によりコードされるポリペプチドは感染症抗原に由来する。
本発明の他の実施形態では、抗原は、ヒトまたは動物病原体に由来する。病原体は、任意で、ウイルス、細菌、真菌または原虫である。例えば、抗原は、ウイルス性または真菌性または細菌性抗原であり得る。一実施形態では、病原体に由来する組換え核酸分子によりコードされる抗原は、その病原体により産生されるタンパク質であるか、またはその病原体により産生されるタンパク質に由来する。例えば、ある実施形態では、組換え核酸分子、発現カセットおよび/または発現ベクターによりコードされるポリペプチドは、病原体により産生されるタンパク質のフラグメントおよび/またはバリアントである。
例えば、ある実施形態では、抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、gp120、gp160、gp41、p24gagおよびp55gagのようなgag抗原、ならびにHIVのpol、env、tat、vif、rev、nef、vpr、vpuおよびLTR領域に由来するタンパク質など)、ネコ免疫不全ウイルスまたはヒトもしくは動物ヘルペスウイルスに由来する。例えば、ある実施形態では、抗原はgp120である。一実施形態では、抗原は、単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型(例えば、gD、gB、gH、ICP27のような前初期タンパク質など)、サイトメガロウイルス(例えば、gBおよびgHなど)、メタニューモウイルス、エプスタイン・バーウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス(例えば、gpI、IIまたはIIIなど)に由来する。(例えば、Cheeら,(1990)Cytomegaloviruses(J.K.McDougall,編,Springer Verlag,pp.125−169;McGeochら,(1988)J.Gen.Virol.69:1531−1574;米国特許第5,171,568号;Baerら,(1984)Nature 310:207−211;およびDavisonら,(1986)J.Gen.Virol.67:1759−1816を参照されたい。)
別の実施形態では、抗原は、肝炎ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスまたはG型肝炎ウイルスに由来する。例えば、国際公開第89/04669号;同90/11089号;および同90/14436号を参照されたい。肝炎抗原は、表面、コアまたはその他の関連抗原であり得る。HCVゲノムは、E1およびE2を含めたいくつかのウイルスタンパク質をコードする。例えば、Houghtonら,Hepatology 14:381−388(1991)を参照されたい。
ウイルス抗原である抗原は、任意で、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科(例えば、ロタウイルスなど);ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、A型、B型およびC型インフルエンザウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パラインフルエンザウイルスなど);ブニヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えば、HTLV−I;HTLV−11;HIVI11b、HIVSF2、HTVLAV、HIVLAI、HIVMNの単離体由来の抗原を非限定的に含めたHIV−1(HTLV−111、LAV、ARV、hTLRなどとしても知られている);HIV−1CM235、HIV−1;特に、HIV−2;サル免疫不全ウイルス(SIV))のいずれか1科のウイルス;パピローマウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスなどに由来する。これらおよびその他のウイルスに関する説明に関しては、例えば、Virology,3rd Edition(W.K.Joklik編,1988);Fundamental Virology,3rd Edition(B.N.Fields,D.M.KnipeおよびP.M.Howley編 1996)を参照されたい。一実施形態では、抗原はFlu−HAである(Morganら,J.Immunol.160:643(1998))。
ある別の実施形態では、抗原は、細菌性病原体、例えば、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、バチルス属(Bacillus)、エルシニア属(Yersinia)、サルモネラ属(Salmonella)、ナイセリア属(Neisseria)、ボレリア属(Borrelia)(例えば、OspAもしくはOspBまたはそれらの誘導体)、クラミジア属(Chlamydia)またはボルデテラ属(Bordetella)(例えば、P.69、PTおよびFHA)などに由来するか、あるいはプラスモディウム属(Plasmodium)またはトキソプラズマ属(To×oplasma)のような寄生虫に由来する。一実施形態では、抗原は、結核菌(例えば、ESAT−6、85A、85B、85C、72F)、炭疽菌(例えば、PA)またはペスト菌(Yersinia pestis)(例えば、F1、V)に由来する。さらに、本発明での使用に適した抗原は、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核、細菌性もしくは真菌性肺炎、中耳炎、淋病、コレラ、チフス、髄膜炎、単核球症、ペスト、細菌性赤痢もしくはサルモネラ症、レジオネラ症、ライム病、ハンセン病、マラリア、鉤虫、オンコセルカ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ジアルジア、アメーバ症、フィラリア症、ボレリアおよび旋毛虫症を非限定的に含めた疾患の原因となる、既知の原因病原体から採取されるか、または由来し得る。またさらなる抗原は、クールー、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、スクレイピー、伝染性ミンク脳症および慢性消耗性疾患の原因病原体のような特殊な病原体から、または狂牛病と関連したプリオンのようなタンパク性感染粒子から採取されるか、または由来し得る。
さらに他の実施形態では、抗原は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病など)、代謝性疾患(例えば、I型糖尿病など)および薬物依存(例えば、ニコチン中毒など)の発生または進行に関与する生物学的因子から採取されるか、または由来し得る。あるいは、組換え核酸分子によりコードされる抗原は、疼痛管理に使用され、かつこの抗原は、疼痛シグナルの伝達に関与する疼痛受容体またはその他の作用物質である。
ある実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質であるか、またはヒトタンパク質に由来する。他の実施形態では、抗原は、非ヒトタンパク質であるか、または非ヒトタンパク質(そのフラグメントおよび/またはバリアント)に由来する。ある実施形態では、発現カセットによりコードされる融合タンパク質の抗原部分は、非ヒト動物のタンパク質であるか、または非ヒト動物に由来するタンパク質である。例えば、抗原が、ヒトにおいて使用されるリステリアに基づくワクチン内で発現される場合でも、ある実施形態では、この抗原は、マウスメソテリンであるか、またはマウスメソテリンに由来し得る。
V.リステリア
ある実施形態では、リステリアは、リステリア・モノサイトゲネス種に属する。ある別の実施形態では、細菌はリステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・シーリゲリ(Listeria seeligeri)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、L.ウェルシメリ(L.welshimeri)またはL.グライイ(L.grayi)種のメンバーである。
ある実施形態では、リステリアは非天然である。ある実施形態では、リステリアは弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアは生存している。ある実施形態では、リステリアは、変異リステリア、組換えリステリアであるかまたは別の方法で改変されている。ある実施形態では、リステリアは弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアは代謝的に活性である。特定の実施形態では、リステリアはバクテリオファージに感染していない。本発明はさらに、組換え型であるリステリアを提供する。さらに、リステリアは、単離されているか、および/または実質的に精製されているものであり得る。
ある実施形態では、弱毒化リステリアは、増殖、細胞間伝播、宿主細胞への結合もしくは侵入、複製またはDNA修復の1つまたは複数において弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアは、actA変異、inlB変異、uvrA変異、uvrB変異、uvrC変異、核酸標的化合物またはuvrAB変異/核酸標的化合物の1つまたは複数により弱毒化されている。ある実施形態では、弱毒化リステリアは、細胞間伝播および/または非食細胞内への侵入において弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアは、actA変異またはactA変異/inlB変異の1つまたは複数により弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアはΔactAまたはΔactAΔinlBである。
ある実施形態では、弱毒化リステリアは、細胞間伝播に関して弱毒化されている。ある実施形態では、細胞間伝播に関して弱毒化されているリステリアは、(例えば、非改変または野生型リステリアに比べて)ActAに関して欠損がある。ある実施形態では、リステリアはactA遺伝子に弱毒化変異を含む。ある実施形態では、リステリアはactA遺伝子に完全または部分的欠失を含む。
ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の細胞間伝播の能力は、弱毒化変異を有しないリステリア(例えば、野生型リステリア)に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%または少なくとも約90%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の細胞間伝播の能力は、弱毒化変異を有しないリステリアに比べて、少なくとも約25%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の細胞間伝播の能力は、弱毒化変異を有しないリステリアに比べて、少なくとも約50%減少している。
リステリア菌が細胞間伝播に関して弱毒化されているか否かを判定するためのインビトロアッセイは、当業者に公知である。例えば、選択された培養細胞単層の感染後に経時的に形成されるプラークの直径を測定し得る。L2細胞単層内のプラークアッセイは、Sun,A.,A.CamilliおよびD.A.Portnoy.1990,Isolation of Listeria monocytogenes small−plaque mutants defective for intracellular growth and cell−to−cell spread.Infect.Immun.58:3770−3778に、この測定法に修正を加えたものでは、Skoble,J.,D.A.PortnoyおよびM.D.Welch.2000,Three regions within ActA promote Arp2/3 complex−mediated actin nucleation and Listeria monocytogenes motility.J.Cell Biol.150:527−538に既に記載されているように行うことができる。簡潔には、L2細胞を6ウェル組織培養皿でコンフルーエントになるまで増殖させ、次いで、細菌に1時間感染させる。感染後、0.8%アガロース含有DME、ウシ胎仔血清(例えば、2%)および所望の濃度のゲンタマイシンを含む、40℃まで加温した培地で細胞を重層する。培地中のゲンタマイシン濃度は、プラークサイズに著しく影響し、選択されたリステリア菌株が細胞間伝播を達成する能力の尺度となる(Glomski,I J.,M.M.Gedde,A.W.Tsang,J.A.SwansonおよびD.A.Portnoy.2002.J.Cell Biol.156:1029−1038)。例えば、ある実施形態では、50μg/mlの濃度でゲンタマイシンを含む培地で重層した場合、単層の感染後3日で、細胞間伝播欠損の表現型を有するリステリア菌株のプラークサイズは、野生型リステリアに比べ、少なくとも50%減少する。その一方で、ゲンタマイシンを5μg/mlのみ含む培地+アガロースで感染単層を重層した場合、細胞間伝播欠損の表現型を有するリステリア菌株と野生型リステリアとの間でのプラークサイズは同程度であった。したがって、選択された菌株が感染細胞単層において細胞間伝播を達成するための、野生型リステリアと比較した相対的能力は、アガロース含有培地中のゲンタマイシン濃度を変化させることにより測定し得る。任意で、ニュートラルレッド(GIBCO BRL;DME+アガロース培地中、1:250希釈)を含む培地を、感染後48時間の重層に添加することにより、プラーク直径の可視化および測定を容易にし得る。さらに、プラークアッセイは、他の初代細胞または継代細胞に由来する単層において行い得る。例えば、肝細胞由来細胞株であるHepG2細胞または初代ヒト肝細胞を用いて、選択されたリステリア変異株が細胞間伝播を達成するための能力を野生型リステリアと比較して評価し得る。ある実施形態では、細胞間伝播に関してリステリアを弱毒化する変異または他の改変を含むリステリアは、高濃度のゲンタマイシン(約50μg/ml)で「ピンポイント」プラークを形成する。
ある実施形態では、リステリアは、(非変異株または野生型リステリアに比べ)非食細胞内への侵入に関して弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアは、1つまたは複数のインターナリン(または同等物)に関して欠損がある。ある実施形態では、リステリアはインターナリンAに関して欠損がある。ある実施形態では、リステリアはインターナリンBに関して欠損がある。ある実施形態では、リステリアはinlAに変異を含む。ある実施形態では、リステリアはinlBに変異を含む。ある実施形態では、リステリアは、actAおよびinlBの両方に変異を含む。ある実施形態では、リステリアは、機能的なActAおよびインターナリンBが欠失している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌はΔactAΔinlB二重欠失変異株である。ある実施形態では、リステリア菌は、ActAおよびインターナリンBの両方に関して欠損がある。
ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の非食細胞内への侵入能力は、弱毒化変異を有しないリステリア(例えば、野生型菌)に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%または少なくとも約90%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の非食細胞内への侵入能力は、弱毒化変異を有しないリステリアに比べて、少なくとも約25%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の非食細胞内への侵入能力は、弱毒化変異を有しないリステリアに比べて、少なくとも約50%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の非食細胞内への侵入能力は、弱毒化変異を有しないリステリアに比べて、少なくとも約75%減少している。
ある実施形態では、弱毒化リステリアは、2つ以上のタイプの非食細胞内への侵入に関して弱毒化されていない。例えば、弱毒化菌株は、肝細胞内への侵入に関しては弱毒化されているが、上皮細胞内への侵入に関しては弱毒化されていなくてもよい。別の例としては、弱毒化菌株は、上皮細胞内への侵入に関しては弱毒化されているが、肝細胞に関しては弱毒化されていなくてもよい。特定の改変リステリアの非食細胞内への侵入に関する弱毒化は、特定の細胞受容体と相互作用した結果、非食細胞の感染を促進するインベイシンタンパク質をコードする示された遺伝子の変異、例えば、欠失変異の結果である。例えば、リステリアΔinlB変異株は、肝細胞細胞株(例えば、HepG2)および初代ヒト肝細胞を含めた肝細胞の増殖因子受容体を発現する非食細胞内への侵入に関して弱毒化されている。
ある実施形態では、リステリアは非食細胞内への侵入に関して弱毒化されているが、そのリステリアは、少なくとも樹状細胞および/またはマクロファージのような食細胞による取込みが依然可能である。一実施形態では、弱毒化リステリアが食細胞内へ侵入する能力は、その菌株に施されたインベイシン変異のような改変により減少することはない(すなわち、その菌株が食細胞により取り込まれる測定能力の約95%以上が改変後に保持されている)。他の実施形態では、弱毒化リステリアが食細胞内へ侵入する能力は、約10%以下、約25%以下、約50%以下または約75%以下だけ減少している。
本発明のある実施形態では、リステリアが非食細胞内へ侵入する能力における弱毒化の量は、2倍の減少からかなり高レベルの弱毒化までの範囲である。ある実施形態では、リステリアが非食細胞内へ侵入する能力における弱毒化の量は、少なくとも約0.3log、約1log、約2log、約3log、約4log、約5logまたは少なくとも約6logである。ある実施形態では、弱毒化は、約0.3〜>8log、約2〜>8log、約4〜>8log、約6〜>8log、約0.3〜8log、また約0.3〜7log、また約0.3〜6log、また約0.3〜5log、また約0.3〜4log、また約0.3〜3log、また約0.3〜2log、また約0.3〜1logの範囲にある。ある実施形態では、弱毒化は、約1〜>8log、1〜7log、1〜6log、また約2〜6log、また約2〜5log、また約3〜5logの範囲にある。
リステリア菌が非食細胞内への侵入に関して弱毒化されているか否かを決定するためのインビトロアッセイは、当業者に公知である。例えば、Dramsiら,Molecular Microbiology 16:251−261(1995)およびGaillardら,Cell 65:1127−1141(1991)の両方に、変異L.モノサイトゲネス株が特定の細胞株内へ侵入する能力をスクリーニングするためのアッセイが記載されている。例えば、特定の改変を有するリステリア菌が、特定のタイプの非食細胞内への侵入に関して弱毒化されているか否かを判定するために、弱毒化リステリア菌が特定のタイプの非食細胞内へ侵入する能力を測定し、改変を有しない同一リステリア菌の非食細胞内へ侵入する能力と比較する。同様に、特定の変異を有するリステリア菌株が、特定のタイプの非食細胞内への侵入に関して弱毒化されているか否かを判定するために、変異体リステリア菌株が特定のタイプの非食細胞へ侵入する能力を測定し、変異を有しないリステリア菌の非食細胞へ侵入する能力と比較する。例えば、改変リステリア菌が肝細胞のような非食細胞に感染する能力と、非改変リステリアまたは野生型リステリアが食細胞に感染する能力とを比較してもよい。このようなアッセイでは、通常、改変および非改変リステリアをインビトロの非食細胞に限られた時間の間(例えば、1時間)加え、次いで、細胞をゲンタマイシン含有溶液で洗浄して細胞外のあらゆる細菌を死滅させ、細胞を溶解させ、次いでプレーティングして力価を評価する。このようなアッセイの例は、米国特許公開第2004/0228877号に見られる。さらに、菌株がインターナリンBに関して欠損があることの確認は、その菌株の表現型と、インターナリンB変異株に関して既に報告されている表現型とを比較することにより行い得る。
リステリア・モノサイトゲネスΔactAΔinlB株は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定の下、2003年10月3日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、10801 University Blvd.、Manassas、Virginia 20110−2209、米国(P.O.Box 1549,Manassas,Virginia,20108,米国)に寄託され、アクセッション番号PTA−5562に指定された。別のリステリア・モノサイトゲネス株である、ΔactAΔuvrAB株も、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定の下、2003年10月3日にATCCに寄託され、アクセッション番号PTA−5563に指定された。
ある実施形態では、リステリアは、(例えば、野生型に比べて)核酸修復に関して弱毒化されている。例えば、ある実施形態では、リステリアは、少なくとも1つのDNA修復酵素に関して欠損がある(例えば、リステリア・モノサイトゲネスuvrAB変異株)。ある実施形態では、リステリアは、PhrB、UvrA、UvrB、UvrC、UvrDおよび/またはRecAに関して欠損がある。ある実施形態では、細菌は、UvrA、UvrB、および/またはUvrCに関して欠損がある。ある実施形態では、細菌は、phrB、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDおよび/またはrecA遺伝子に弱毒化変異を含む。ある実施形態では、細菌は、uvrA、uvrBおよび/またはuvrC遺伝子に1つまたは複数の変異を含む。ある実施形態では、細菌は、UvrA、UvrBおよび/またはUvrCが機能的に欠失している。ある実施形態では、細菌は、機能的UvrAおよびUvrBが欠失している。ある実施形態では、細菌はuvrAB欠失変異株である。ある実施形態では、細菌はΔuvrABΔactA変異株である。ある実施形態では、核酸修復に関して弱毒化されているおよび/または少なくとも1つのDNA修復酵素に関して欠損がある細菌の核酸は、核酸標的化合物との反応により改変される。ΔuvrABリステリア・モノサイトゲネス変異株のような核酸修復変異株およびこの変異株の作製法は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2004/0197343号において詳細に説明されている(例えば、米国特許第2004/0197343号の実施例7を参照されたい)。
ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の核酸修復能力は、弱毒化変異を有しないリステリア菌(例えば、野生型菌)に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%または少なくとも約90%減少している。ある実施形態では、弱毒化リステリア菌の核酸修復能力は、弱毒化変異を有しないリステリア菌に比べて、少なくとも約25%減少している。ある実施形態では、核酸修復に関して弱毒化されたリステリア菌の核酸修復能力は、弱毒化変異を有しないリステリア菌に比べ、少なくとも約50%減少している。
細菌株に特定の変異が存在することの確認は、当業者に公知の様々な方法により行い得る。例えば、菌株ゲノムの関連する部分をクローニングして配列決定し得る。あるいは、欠失またはその他の変異と隣接する領域をコードするプライマー対を用いたPCRにより、特定の変異を同定し得る。サザンブロット法を用いて、細菌ゲノムにおける変化を検出することもできる。また、ウエスタンブロット法のような当業者に一般的な方法を用いて、特定のタンパク質が菌株により発現されるか否かを解析し得る。菌株が所望の遺伝子に変異を含むことの確認は、その菌株の表現型と、既報の表現型を有する菌株の表現型とを比較することにより行い得る。例えば、uvrAB欠失のようなヌクレオチド除去修復変異の存在は、細菌がヌクレオチド除去修復(NER)機構を用いてその核酸を修復する能力を試験するアッセイ使用して、その能力を野生型細菌と比較することにより評価し得る。このような機能的アッセイは当該分野で公知である。例えば、シクロブタンダイマー除去またはUV誘導(6〜4)産物の除去を測定して、変異株におけるNER酵素における欠損を測定し得る(例えば、Franklinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3821−3824(1984)を参照されたい)。あるいは、核酸修復における欠損を評価して生存測定を行い得る。例えば、リステリアにソラレン/UVA処置を行い、次いで、その増殖および/または生存能力を野生型と比較して評価し得る。本発明は、不活化されているが代謝的に活性(KBMA)なリステリア菌またはリステリア菌株(例えば、Brockstedtら,(2005)Nat.Med.[7月24日の発行前電子出版]を参照されたい)。KBMAリステリア菌は、代謝的に活性であるが、例えば、寒天上でコロニーを形成することができない。DNA修復遺伝子の少なくとも1つにおける不活性化変異、例えば、ΔuvrABにより、コロニー形成を抑制するには十分であるが、代謝を実質的に阻害するには十分ではない低濃度の核酸架橋剤(例えば、ソラレン)を用いて、リステリアを死滅させることが可能である。ソラレン/UVA光による限定的な処置および/または鎖間のゲノム架橋形成に高特異的な核酸架橋剤による処置の結果は、菌体は死滅するが、代謝的には活性であるというものである。
本発明は、本発明の弱毒化リステリアを作製または操作するための数多くのリステリア菌株を提供する(表4−1〜3)。本発明のリステリアは、この表に開示される菌株に限定されるべきではない。
Figure 2011523553
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ある実施形態では、リステリアの弱毒化は、宿主に対するリステリアの生物学的効果の観点から測定し得る。菌株の病原性は、マウスまたその他の脊椎動物におけるLD50の測定により評価し得る。LD50とは、リステリアが脊椎動物の50%を死亡させるのに必要な、その脊椎動物内に注射されるリステリアの量または投与量のことである。LD50値は、特定の改変(例えば、変異)を有する細菌と特定の改変を有しない細菌とに関する弱毒化レベルの測定値として比較し得る。例えば、特定の変異を有しない細菌株が103細菌のLD50であり、特定の変異を有する細菌株が105細菌のLD50である場合、その菌株はLD50が100倍または2logだけ増加するように弱毒化されている。
ある実施形態では、弱毒化リステリアは、親または野生型リステリアのLD50よりも、少なくとも約5倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約1000倍高いまたは少なくとも約1×104高いLD50を有する。
さらなる例として、弱毒化の程度はまた、組織病態の程度または血清肝臓酵素レベルのような他の生物学的効果により定性的に測定し得る。臨床検査室で、リステリア(または他の細菌)を注射したマウスについてアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルブミンおよびビリルビンの血清レベルを測定する。リステリアの弱毒化を評価するための方法として、特定の改変/変異を有するリステリアおよび有しないリステリアに関して、マウスまたはその他の脊椎動物におけるこれらの効果を比較し得る。リステリアの弱毒化は、組織病態によっても測定し得る。感染脊椎動物の様々な組織、例えば、肝臓、脾臓および神経系などから回収可能なリステリアの量を、変異リステリアおよび非変異リステリアを注射した脊椎動物間でこの値を比較することにより、弱毒化のレベルの尺度として使用することもできる。例えば、肝臓または脾臓のような感染組織から回収可能な量を時間の関数として、変異リステリアおよび非変異リステリアを注射した脊椎動物間でこの値を比較することにより、弱毒化の尺度として使用し得る。
したがって、リステリアの弱毒化は、野生型リステリアの標的であることが知られているマウスの特定の選択された器官における細菌負荷の観点から測定し得る。例えば、リステリアの弱毒化は、BHI寒天培地上で肝臓または脾臓ホモジネート(H2O+0.2%NP40中でホモジナイズ)のプレーティング希釈物から生じたコロニー(コロニー形成単位;CFUまたはcfu)を計数することにより測定し得る。例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内および皮下を含めた任意の数の経路による改変リステリアの投与後に、肝臓または脾臓のcfuを経時的に測定し得る。さらに、リステリアを、肝臓および脾臓(または他の任意の選択された器官)において、上記のように競争的指標アッセイにより投与後から経時的に測定して、薬剤耐性の野生型リステリア(または他の任意の選択されたリステリア菌株)と比較し得る。
変異リステリアを作製する方法は当該分野で公知である。細菌の変異は、変異性化学物質または放射線照射の後に変異株の選択を行うなどの従来の変異誘発法により達成し得る。細菌の変異はまた、組換えDNA技術により当業者が達成し得る。例えば、欠失変異株を含めた変異株作製での使用には、Camilliら,Molecular Micro.8:143−157(1993)に記載のpKSWベクターを用いた対立遺伝子交換法が適している(Camilliら,(1993)は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。あるいは、Biswasら,J.Bacteriol.175:3628−3635(1993)に記載の遺伝子置換プロトコールを使用し得る。他の同様な方法が当業者に公知である。
様々な細菌変異株の構築は、それぞれその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/883,599号、米国特許出願公開第2004/0197343号および同2004/0228877号に記載されている。
非食細胞による弱毒化細菌の取込みにおける弱毒化の程度は、安全かつ効果的なワクチンを提供するために完全な弱毒化である必要なない。ある実施形態では、弱毒化の程度は、毒性症状を予防するか、または致死的でないレベルまで軽減するのに十分な毒性減少をもたらす程度である。
ある実施形態では、リステリアは、コロニー形成、複製および/または分裂を行うことができない。本発明のある実施形態では、リステリアは、増殖に関して親または野生型リステリアに比べ弱毒化されている。
ある実施形態では、弱毒化リステリアは、不活化されているが代謝的に活性(KBMA)である(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0197343号およびBrockstedtら,Nat.Med.,11:853−60(2005))。
リステリア個体群の核酸は、様々な方法により改変し得る。細菌の核酸は、物理学的方法、例えば、紫外線または電離放射線の照射により改変し得る。x線またはγ線のような電離放射線を用いて、核酸中の一本鎖または二本鎖切断を引き起こし得る。紫外線照射を用いて、核酸中にピリミジンダイマーを生じ得る。適切な照射量は、複製およびタンパク質発現に対する照射の効果を上に詳述したように評価することで決定し得る。
リステリアの核酸は、化学的方法、例えば、核酸標的化化合物(本明細書では核酸標的化合物とも呼ぶ)との反応により改変し得る。ある実施形態では、核酸を改変することができる核酸標的化化合物でリステリアを処置して、リステリアの増殖を弱毒化する。ある実施形態では、核酸を改変することができる核酸標的化化合物でリステリアを処置してリステリアの増殖を弱毒化し、ここでは、このリステリア個体群は、免疫応答を誘発するのに十分な程度まで所望のタンパク質抗原を依然発現することができる。核酸標的化化合物は、特定の核酸改変機構に限定されない。このような化合物は、核酸と直接反応することにより(すなわち、化合物の全部または一部分が核酸と共有結合する)、または間接的に核酸改変を引き起こす(例えば、一重項酸素または酸素ラジカル酸素の発生を介して酸素傷害を引き起こすことによるか、傷害を引き起こす化合物のラジカルの発生によるか、またはその他の核酸還元もしくは酸化機構による)ことにより、核酸を改変する。エンジインは、DNA二重鎖切断をもたらすラジカル種を形成する化合物のクラスの一例である[Nicolaouら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5881−5888(1993)]。核酸と直接反応する化合物は、その化合物の活性化、例えば、その化合物への照射に対して反応し得る。間接的に反応して核酸改変を引き起こす化合物は、その化合物の活性化種を発生するか、または何か他の活性化種を発生するために同様な活性化を必要とし得る。核酸標的化化合物の活性化の方法に限定するわけではないが、本発明の一実施形態には、核酸と直接反応するか、または生成後に核酸と反応する活性酸素種(例えば、一重項酸素)のような反応種を発生する、光活性化化合物の使用が含まれる。
核酸標的化化合物は、生物学的試料の他の成分を有意に改変することなく選択的に核酸を改変する。このような化合物は、細胞膜、タンパク質および脂質を有意に変化させるまたは損傷することなく、適切な核酸改変をもたらす。このような化合物は、これらの他の細胞成分を有意でない程度まで改変し得る。細胞膜、タンパク質および脂質のようなこれらの細胞成分は、その生物学的機能が十分に維持されていれば、有意に変化したことにならない。リステリアを核酸標的化化合物で処置する場合、核酸改変がリステリアの複製を弱毒化させるものである一方、リステリアの細胞膜、タンパク質および脂質は実質的に影響されず、リステリアの遺伝子発現は活性であり(例えば、遺伝子発現に必要な酵素は有意に影響されない)、リステリア表面には、化合物で処理されなかったリステリアと基本的に同じ抗原が維持されている。その結果、リステリアの増殖が有意に弱毒化されている一方で、ワクチンとして有効な十分な抗原性または免疫原性が維持されるため、このような化合物は、ワクチンとして使用する不活性リステリアの調製に有用である。これらの化合物は核酸を特異的に改変するため、複製を弱毒化しつつ十分なレベルのタンパク質発現を維持するように所望のレベルに改変を調節し得る。改変は、化合物濃度、反応媒体のような反応のパラメーターを変化させること、光量またはpHのような化合物活性化因子を調節することあるいは酸素濃度の調節(例えば脱気により物理学的に、または脱酸素剤の使用により化学的に)により酸素傷害を引き起こす化合物を調節することにより、調節し得る。核酸標的化化合物は、核酸と選択的に結合する傾向を有する、すなわち、核酸に対して測定可能な親和性を有する、任意の化合物である。このような化合物は、生物学的試料の他の多くの成分、特にタンパク質、酵素、脂質および膜のような成分に対するよりも核酸に対して強い親和性を有する。核酸標的化は、遺伝子転写およびタンパク質翻訳の機構のような生物学的試料の他の構成要素に有意な影響を与えずに、核酸改変に対する特異性をもたらす。
化合物は、多くの様式で核酸に対して標的化し得る。以下の任意の様式またはそれらの組合せにより結合する化合物は、核酸標的化化合物とみなされる。インターカレーション、副溝結合、主溝結合、静電結合(例えば、リン酸骨格結合)および配列特異的結合(主溝または副溝中の配列認識を介する)は、すべて核酸との非共有様式の結合である。これらの結合様式の1つまたは複数を含む化合物は、核酸に対して高親和性を有するであろう。本発明は以下の化合物に限定されないが、このような核酸との結合様式を有する化合物の一部の例は以下の通りである:インターカレーターの例としては、アクリジン、アクリドン、プロフラビン、アクリフラビン、アクチノマイシン、アントラシクリノン、ベータ−ロドマイシンA、ダウナマイシン、チアキサンテノン、ミラシルD、アントラマイシン、マイトマイシン、エキノマイシン、キノマイシン、トリオスチン、ジアクリジン、エリプチシン(ellipticene)(二量体、三量体および類似体を含む)、ノルフィリンA、フルオレンおよびフルオレノン、フルオレノジアミン、キナクリン、ベンゾアクリジン、フェナジン、フェナントラジン、フェノチアジン、クロルプロマジン、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、キサンテンおよびチオ−キサンテン、アントラキノン、アントラピラゾール、ベンゾチオピラノインドール、3,4−ベンツピレン、ベンゾピレンジオールエポキシド、1−ピレニルオキシラン、ベンゾアントラセン−5,6−オキシド、ベンゾジピロン、ベンゾチアゾール、キノロン、クロロキン、キニーネ、フェニルキノリンカルボキサミド、フロクマリン(例えば、ソラレン、イソソラレンおよびそれらの硫黄類似体)、エチジウム塩、プロピジウム、コラリン、エリプチシンカチオンおよび誘導体、多環炭化水素およびそれらのオキシラン誘導体ならびにエキニマイシン(echinimycin)が挙げられる;副溝結合剤の例としては、ジスタマイシン、マイトマイシン、ネトロプシン、その他のレキシトロプシン、ヘキスト33258およびその他のヘキスト色素、DAPI(4',6'−ジアミジン−2−フェニルインドール)、ベレニルならびにトリアリルメタン色素が挙げられる;主溝結合剤の例としては、アフラトキシンが挙げられる;静電結合剤の例としては、スペルミン、スペルミジンおよびその他のポリアミンが挙げられる;そして配列特異的結合剤の例としては、三重へリックス形成、D−ループ形成および一本鎖標的との直接的塩基対形成のような配列特異的相互作用により結合する核酸または類似体が挙げられる。その他の配列特異的結合化合物としては、ポリピロール化合物、ポリピロールイミダゾール化合物、シクロプロピルピロロインドール化合物および関連する副溝結合化合物が挙げられる[Wemmer,Nature Structural Biology,5(3):169−171(1998),Wurtzら,Chemistry&Biology 7(3):153−161(2000),Anthoneyら,Am.J.Pharmacogenomics 1(1):67−81(2001)]。
核酸標的化に加え、これらの化合物は、核酸と反応した結果、核酸と共有結合することもできる。核酸アルキル化剤は、核酸と共有結合的に反応することができる化合物のクラスであり、マスタード(例えば、モノまたはビスハロエチルアミン基およびモノハロエチルスルフィド基)、マスタード同等物(例えば、エポキシド、アルファハロケトン)およびマスタード中間体(例えば、アジリジン、アジリジニウムおよびそれらの硫黄類似体)、メタスルホン酸エステルならびにニトロソウレアが挙げられるが、これらに限定されない。核酸アルキル化剤は通常、核酸上の求核基と反応する。これらの化合物の核酸アルキル化活性および核酸標的化能の組合せが、核酸と特異的に共有結合的反応を起こす能力をこれらに付与し、本発明で使用するリステリア核酸の所望の改変をもたらす。これらの化合物の特異性は、リステリア内に侵入しないであろうクエンチャーの使用によりさらに増強され得る。このようなクエンチャーは、リステリア表面との反応を停止させる一方で、核酸標的化化合物を依然リステリア核酸と反応させるであろう。このような反応停止に関する記述は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,270,952号に見ることができる。リステリア核酸の改変は、化合物濃度および反応条件を調節することにより制御し得る。適切な濃度および反応条件は、上で詳述したように、複製およびタンパク質発現に対するそれらの効果を評価することにより決定される。本発明で使用される化合物は、約10pM〜10mM、また約100pM〜1mM、また約1nM〜10μM、また約1〜500nM、また約1〜200nMまたは約1〜100nMの濃度において効果的である。核酸、特にリステリア核酸との特異的反応のための核酸標的化された核酸反応性化合物に関する記述は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,143,490号および同第6,093,725号に見ることができる。
核酸は、核酸改変を引き起こすために照射による活性化を必要とする核酸標的化化合物を用いて改変し得る。このような化合物は、上述のように核酸に対して標的化されている。これらの化合物としては、アクリジン、アクリドン、アントリル誘導体、アロキサジン(例えば、リボフラビン)、ベンゾトリアゾール誘導体、平面芳香族化合物のジアゾ誘導体、平面芳香族化合物のシアノ誘導体、トルイジン、フラビン、フェノチアジン(例えば、メチレンブルー)、フロクマリン、アンゲリシン、ソラレン、ソラレンの硫黄類似体、キノロン、キノリン、キノキサリン、ナプチリジン、フルオロキノロン、アントラキノンおよびアントラセンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物の多くは、DNA光切断剤として使用される[Da Rosら,Current Pharmaceutical Design 7:1781(2001)]。本発明は、核酸標的化化合物の活性化法に限定されないが、通常、これらの化合物は、特定波長の光で活性化され得る。効果的な光の波長は、化合物の性質に依存し、約200〜1200nmのいずれかの範囲であり得る。これらの化合物では、化合物が核酸と直接結合することなく、例えば、核酸近傍で活性酸素種を発生することにより、活性化が核酸の改変を引き起こす。一部のこれらの化合物では、活性化により化合物が核酸と直接結合する(すなわち、化合物が共有結合する)。一部のこれらの化合物は、核酸と反応して鎖間架橋を形成し得る。ソラレンは、核酸を架橋する化合物のクラスの一例である。これらの化合物は通常、UVA光(320〜400nm)により活性化される。本発明で使用されるソラレン化合物は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,133,460号および同第5,593,823号に例示されている。この場合も、核酸標的化と活性化による核酸改変能との組合せが、核酸との特異的反応をもたらす。リステリア核酸の改変は、化合物濃度、反応条件および光線量を調節することにより制御し得る。適切な濃度および光線量は、上で詳述したように、複製およびタンパク質発現に対するそれらの効果を評価することにより決定される。反応は、化合物濃度および光曝露レベルに加え、試料がUVA光を照射される条件により影響される。例えば、緩衝培地中のリステリア個体群を照射するために必要な全濃度は、増殖培地(例えば、BHI、Triptase Soy Broth)で培養される個体群により異なるであろう。光反応は、ソラレンと相互作用し得る増殖培地の含有物により影響され得るため、高い全濃度のソラレンが必要となる。さらに、リステリアの効果的な光線量は、その菌の増殖相および増殖相間の化合物の存在もしくは非存在に依存し得る。一実施形態では、リステリア個体群は、ソラレンUVA処置の間、増殖培地を含む。一実施形態では、リステリア個体群にソラレンを添加し、その個体群をソラレンおよび増殖培地の存在下で培養してリステリアを増殖させ、そしてリステリア増殖相のある時点でUVA処置を行う。一実施形態では、適切なUVA光量での照射の前に、個体群をソラレンの存在下で0.5〜1のOD(1×107〜1×109CFU/mL)まで増殖させる。ソラレン化合物は、約10pM〜10mM、また約100pM〜1mM、また約1nM〜10μM、また約1〜500nM、また約1〜200nMまたは約1〜100nMの濃度において、UVA光量が約0.1〜100J/cm2、また約0.1〜20J/cm2または約0.5〜10J/cm2、約0.5〜6J/cm2または約2〜6J/cm2の範囲にある場合に効果的である。一実施形態では、ソラレン濃度が約10pM〜10mM、また約1〜5000nM、また約1〜500nM、また約5〜500nMまたは約10〜400nMの増殖培地の存在下でリステリアを処置する。一実施形態では、増殖培地の存在下で処置したリステリアを、濃度が約10pM〜10mM、また約1〜5000nM、また約1〜500nM、また約5〜500nMまたは約10〜400nMのソラレン存在下で、0.5〜1のODまで増殖させる。0.5〜1のODまで増殖させた後、UVA光を、約0.1〜100J/cm2、また約0.1〜20J/cm2または約0.5〜10J/cm2、約0.5〜6J/cm2または約2〜6J/cm2の範囲の光線量でリステリア個体群に照射する。
ある実施形態では、リステリアの核酸を改変するために使用される核酸標的化合物は、β−アラニン、N−(アクリジン−9−イル)、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルのようなアルキル化剤である。他の実施形態では、リステリアの核酸を改変するために使用される核酸標的化合物は、UVA照射により活性化されるソラレン化合物(例えば、4'−(4−アミノ−2−オキサ)ブチル−4,5',8−トリメチルソラレン、本明細書では「S−59」とも呼ぶ)である。
一実施形態では、本発明は、リステリア核酸が改変されてリステリア個体群の増殖が弱毒化されるが、リステリアの遺伝子発現は実質的に影響を受けないようにリステリア個体群を処置することを含む、ワクチン組成物の作製法を含む。別の実施形態では、本発明は、リステリア核酸が改変されてリステリア個体群の増殖が弱毒化されるが、リステリアの遺伝子発現は実質的に影響を受けないようにリステリア個体群を処置し、次いでそのリステリア個体群を用いて、抗原提示細胞を抗原で負荷し、抗原提示細胞の活性化/成熟を誘発することを含む、ワクチン組成物の作製法を含む。一実施形態では、リステリア個体群を照射により処置する。一実施形態では、リステリア個体群を、核酸改変を間接的に引き起こす核酸標的化化合物との反応により処置する。さらなる実施形態では、核酸標的化化合物を照射により活性化し、そしてこの化合物の活性化が核酸の間接的な改変を引き起こす。さらなる実施形態では、核酸標的化化合物の活性化により、核酸を改変する活性酸素種が生じる。一実施形態では、リステリア個体群を、核酸と直接反応する核酸標的化化合物との反応により処置する。一実施形態では、核酸標的化化合物を、約10pM〜10mM、また約100pM〜1mM、また約1〜500nM、また約1〜200nMまたは約1〜100nMの濃度で反応させる。一実施形態では、核酸標的化化合物はアルキル化剤を含む。一実施形態では、アルキル化剤は、マスタード、マスタード中間体およびマスタード同等物からなる群より選択される。一実施形態では、核酸標的化化合物は、インターカレーター、副溝結合剤、主溝結合剤、静電結合剤および配列特異的結合剤からなる群より選択される核酸標的基を含む。一実施形態では、核酸標的化化合物は、その化合物の活性化により核酸と直接反応する。一実施形態では、化合物の活性化は照射によるものでる。一実施形態では、照射はUVA照射である。好適な一実施形態では、核酸標的化化合物は、UVA照射により活性化されるソラレン化合物である。一実施形態では、ソラレン化合物は、約10pM〜10mM、また約100pM〜1mM、また約1〜500nM、また約1〜200nMまたは約1〜100nMの濃度であり、かつUVA照射は、約0.1〜100J/cm2、また約0.1〜20J/cm2または約0.5〜5J/cm2または約2〜4J/cm2の光線量である。一実施形態では、リステリア個体群の増殖は、少なくとも約0.3log、また少なくとも約1log、約2log、約3log、約4log、約6logまたは少なくとも約8logだけ弱毒化されている。別の実施形態では、リステリア個体群の増殖は、約0.3〜>10log、約2〜>10log、約4〜>10log、約6〜>10log、約0.3〜8log、約0.3〜6log、約0.3〜5log、約1〜5logまたは約2〜5logだけ弱毒化されている。一実施形態では、リステリア個体群による抗原発現は、核酸改変処置をされていないリステリア個体群による抗原発現の、少なくとも約10%、約25%、約50%、約75%または少なくとも約90%である。一実施形態では、発現される抗原は、リステリア自体に由来する抗原である。一実施形態では、リステリアは、抗原をコードする異種核酸配列を含む。一実施形態では、抗原は疾患関連抗原である。一実施形態では、抗原は、感染症、自己免疫疾患、アレルギー、癌およびその他の高増殖性疾患からなる群より選択される疾患に関連する。一実施形態では、抗原は腫瘍関連抗原である。一実施形態では、腫瘍抗原は、分化抗原、組織特異抗原、発生抗原、腫瘍関連ウイルス抗原、癌精巣抗原、胚抗原、腫瘍性タンパク質抗原、過剰発現タンパク質抗原および変異タンパク質抗原からなる群より選択される。一実施形態では、腫瘍抗原は、メソテリン、Sp17、gp100、PR3、PAGE−4、TARP、WT−1、NY−ESO−1およびSPAS−1からなる群より選択される。一実施形態では、リステリアは遺伝子変異を含む。一実施形態では、遺伝子変異は、改変されたリステリア核酸を修復するリステリアの能力の弱毒化をもたらす。一実施形態では、遺伝子変異は、リステリアの属および種により、phrB、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDおよびrecAあるいはそれらの機能的に同等な遺伝子からなる群より選択される遺伝子内にある。一実施形態では、遺伝子変異は、phrB、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDおよびrecAあるいはそれらの機能的に同等な遺伝子からなる群より選択される、1つまたは複数の遺伝子内にある。一実施形態では、遺伝子変異は、PhrB、UvrA、UvrB、UvrC、UvrDおよびRecAからなる群より選択されるDNA修復酵素の活性における弱毒化をもたらす。さらなる実施形態では、これらの変異を有するリステリアを、UVA照射により活性化されるソラレンにより処置する。一実施形態では、リステリアはリステリア・モノサイトゲネスである。一実施形態では、リステリアは、食細胞によるリステリア取込みに有意な影響を与えることなくリステリアの非食細胞への侵入能力の弱毒化をもたらす変異を含む。一実施形態では、リステリア変異は、1つまたは複数のインターナリン遺伝子内にある。一実施形態では、リステリア変異は、inlA、inlBおよびインターナリンをコードする任意の遺伝子からなる群より選択される遺伝子内にある。一実施形態では、リステリア・モノサイトゲネスは、inlAおよびinlBの両遺伝子内に遺伝子変異を含む。一実施形態では、リステリアは、感染細胞のファゴリソソームからリステリアが逃避する能力の弱毒化をもたらす変異を有する。一実施形態では、リステリア変異はhly遺伝子内にある。一実施形態では、リステリアは、リステリアによるアクチン重合の弱毒化をもたらす変異を含む。好適な一実施形態では、リステリア変異はactA遺伝子内にある。一実施形態では、リステリアは、actA遺伝子および1つもしくは複数のインターナリン遺伝子内に変異を含む。好適な一実施形態では、リステリアは、actA遺伝子およびinlB遺伝子内に変異を含み、好ましくは、リステリアは、actA/inlB欠失変異株を含む。好適な一実施形態では、リステリア・モノサイトゲネスactA/inlB欠失変異株は、uvrAB遺伝子内に欠失変異をさらに含む。
リステリアは、ある実施形態では、核酸標的化合物により弱毒化され得る。ある実施形態では、核酸標的化合物はβ−アラニン、N−(アクリジン−9−イル)、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルのような核酸アルキル化剤である。ある実施形態では、核酸標的化合物を、UVA照射のような照射により活性化する。ある実施形態では、リステリアをソラレン化合物で処置する。例えば、ある実施形態では、4'−(4−アミノ−2−オキサ)ブチル−4,5',8−トリメチルソラレン(「S−59」)のようなソラレンおよびUVA光での処置により細菌を改変する。ある実施形態では、細菌の核酸は、ソラレン化合物およびUVA照射での処置により改変されている。核酸標的化合物を用いて細菌を増殖に関して弱毒化するため細菌改変法の説明は、米国特許出願公開第2004/0197343号およびBrockstedtら,Nat.Med.,11:853−60(2005)に記載されている。ある実施形態では、リステリアは、DNA修復に関して弱毒化されている。
例えば、ΔactAΔuvrAB L.モノサイトゲネスのようなリステリアの処置のために、ある実施形態では、(約)OD600=0.5の対数期培養物にS−59ソラレンを200nMまで添加し、次いで、培養物がその吸光度に達した時点で6J/m2のUVA光により不活性化し得る。不活性化条件は、S−59濃度、UVA量、UVA処置前のS−59曝露時間を変化させること、およびリステリアactA/uvrAB株の菌増殖期間中の処置時間を変化させることにより最適化される。対照として親リステリア株を用いる。リステリアの不活性化(殺対数)は、BHI(ブレインハートインフュージョン)寒天プレートにおけるその細菌のコロニー形成の不能性により測定する。さらに、35Sパルスチェイス実験を用いて、S−59/UVA不活性化後に新たに発現されたタンパク質の合成および分泌を測定することにより、S−59/UVAリステリアにおいて継続する代謝活性および細菌内LLOのようなタンパク質発現を確認し得る。35S代謝標識法を用いたLLO発現は、通常通りに測定し得る。S−59/UVAで不活性化されたリステリアactA/uvrABは、35S−メチオニンの存在下で1時間インキュベートし得る。LLOのようなタンパク質の発現および/または分泌は、全細胞溶解物および細菌培養液のTCA沈殿の両方について測定し得る。不活性化後に継続する組換えリステリアからの発現および分泌を確認するために、LLO特異的モノクローナル抗体を免疫沈降に使用し得る。
ある実施形態では、増殖に関して弱毒化されたリステリアはまた、核酸修復に関して弱毒化されている、および/または少なくとも1つのDNA修復酵素に関して欠損がある。例えば、ある実施形態では、(UVA処置と組み合わせた)ソラレンのような核酸標的化合物により核酸が改変されている細菌は、uvrAB欠損変異株である。
ある実施形態では、リステリアの増殖は、少なくとも約0.3log、また少なくとも約1log、約2log、約3log、約4log、約6logまたは少なくとも約8logだけ弱毒化されている。別の実施形態では、リステリアの増殖は、約0.3〜>10log、約2〜>10log、約4〜>10log、約6〜>10log、約0.3〜8log、約0.3〜6log、約0.3〜5log、約1〜5logまたは約2〜5logだけ弱毒化されている。ある実施形態では、リステリアによるLLO発現は、非改変リステリアにおけるLLO発現の、少なくとも約10%、約25%、約50%、約75%または少なくとも約90%である。
VI.医薬組成物、免疫原性組成物および/またはワクチン
本明細書に記載のリステリアを含む、医薬組成物、免疫原性組成物およびワクチンのような様々な異なる組成物も本発明により提供される。ある実施形態では、組成物は単離されている。
本明細書で使用される「担体」は、任意およびすべての溶媒、分散媒、媒体、コーティング剤、希釈剤、抗真菌剤、等張/吸収遅延剤、緩衝剤、担体液剤、懸濁剤、コロイドなどを包含する。薬学的に許容される担体は当業者に公知であり、活性成分と組み合せた場合にその成分の生物学的活性の保持を可能にしかつ被検体の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例えば、薬学的に許容される担体としては、水、緩衝生理食塩溶液(例えば、0.9%生理食塩水)、油/水乳剤のような乳剤および様々なタイプの湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。利用可能な担体としては、油(例えば、鉱油)、デキストロース溶液、グリセロール溶液、チョーク、デンプン、塩類、グリセロールおよびゼラチンも挙げられるが、これらに限定されない。
当業者に公知の任意の適切な担体が医薬組成物において使用さ得るが、担体のタイプは、投与様式に応じて異なるであろう。本発明の組成物は、任意の適切な投与方法、例えば、局所、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下または筋肉内投与を含む投与法のために製剤化され得る。ある実施形態では、皮下注射のような非経口投与用に、担体は、水、生理食塩水、アルコール、脂質、ワックスまたは緩衝剤を含む。ある実施形態では、任意の上記担体あるいは固体担体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムなどが経口投与用に使用される。
このような担体を含む組成物は、公知の従来の方法により製剤化される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.Gennaro,編,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990;およびRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing,2000を参照されたい)。
医薬組成物に加え、免疫原性組成物が提供される。例えば、本発明は、本明細書に記載の組換え細菌を含む免疫原性組成物を提供する。
ある実施形態では、免疫原性組成物中の組換え細菌は、宿主(例えば、ヒトのような哺乳動物)への組成物の投与により、抗原を含むポリペプチドを、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分なレベルで放出する。ある実施形態では、免疫原性組成物により刺激される免疫応答は、細胞性免疫応答である。ある実施形態では、免疫原性組成物により刺激される免疫応答は、体液性免疫応答である。ある実施形態では、免疫原性組成物により刺激される免疫応答は、体液性および細胞性免疫応答を共に含む。
特定の形態の組換え細菌(および/または特定の発現カセット)が免疫原性組成物において(またはワクチンとして)有用であるか否かは、その組換え細菌がインビトロまたはモデル系において免疫応答を刺激する能力を試験することにより決定し得る。
これらの免疫細胞応答をインビトロまたはインビボ両方の方法により測定して、特定の組換え細菌(および/または特定の発現カセット)の免疫応答が効果的であるか否かを決定し得る。対象とするタンパク質または抗原の、組換え細菌個体群と混合した抗原提示細胞による提示を測定することが、1つの可能性としてある。組換え細菌を、適切な抗原提示細胞または細胞系、例えば、樹状細胞と混合してもよく、そしてそのタンパク質または抗原を認識するT細胞へのこの樹状細胞による抗原提示を測定することができる。組換え細菌が十分なレベルのタンパク質または抗原を発現している場合、その抗原は、樹状細胞によりペプチドフラグメントにまで処理されて、MHCクラスIまたはクラスIIとの関連でT細胞へ提示されるであろう。提示タンパク質または抗原を検出する目的で、特定のタンパク質または抗原に応答するT細胞クローンまたはT細胞系を使用し得る。T細胞はまた、T細胞が癌細胞系と融合されて不死化した、T細胞ハイブリドーマであり得る。このようなT細胞ハイブリドーマ、T細胞クローンまたはT細胞系は、CD8+またはCD4+T細胞を含み得る。樹状細胞は、抗原が処理される経路に応じて、CD8+またはCD4+T細胞に提示し得る。CD8+T細胞がMHCクラスIとの関連で抗原を認識するのに対し、CD4+はMHCクラスIIとの関連で抗原を認識する。T細胞は、そのT細胞受容体による特異的認識を介した提示抗原により刺激され、その結果、IL−2、腫瘍壊死因子(TNF)またはインターフェロン−γ(IFN−γ)のような特定のタンパク質を産生し、それらは(例えば、ELISA法、ELISPOT法または細胞内サイトカイン染色(ICS)を用いて)定量的に測定され得る。これらは当該分野で公知の手法である。
あるいは、提示抗原によるT細胞ハイブリドーマの刺激により活性化されるβ−ガラクトシダーゼのようなレポーター遺伝子を含むように、ハイブリドーマを設計し得る。β−ガラクトシダーゼの産生増加は、変色を生じるクロロフェノール赤−B−ガラクトシドのような基質上でのその活性により容易に測定し得る。変色は、特定の抗原提示の指標として直接測定し得る。
本発明の組換え細菌ワクチンの抗原発現を評価するためのさらなるインビトロおよびインビボの方法が、当業者に公知である。組換え細菌による特定の異種抗原発現を直接測定することも可能である。例えば、放射活性物質で標識したアミノ酸を細胞集団に添加することができ、そして特定のタンパク質内に組み込まれた放射活性物質の量を測定することができる。細胞集団により合成されたタンパク質は、例えば、ゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動により単離することができ、そして放射活性物質の量を定量的に測定して特定のタンパク質の発現レベルを評価することができる。あるいは、放射活性物質なしでタンパク質を発現させ、ELISA法のような様々な方法により、あるいは酵素結合抗体または蛍光標識抗体を用いて検出するゲル電気泳動法およびウエスタンブロット法により可視化することができる。
Elispot法、細胞内サイトカイン染色法(ICS)、刺激膵臓細胞のサイトカイン発現測定ならびに細胞傷害性T細胞活性のインビトロおよびインビボでの評価は、すべて免疫原性評価のための当業者に公知の手法である。
さらに、免疫原性組成物またはワクチンをマウスモデルのような動物モデルに投与した後に、生存率または腫瘍増殖を評価することにより、ワクチン組成物の治療効果を評価し得る。例えば、リステリア投与および抗原投与後に生存率を測定し得る。
特定の抗原を発現する免疫原性組成物またはワクチンの免疫原性を試験するために有用なマウスモデルは、対象抗原またはモデル抗原を発現するように最初に腫瘍細胞を改変し、次いで、対象抗原を発現するその腫瘍細胞をマウス内に移植することにより作製し得る。対象抗原またはモデル抗原を含むポリペプチドを発現する組換え細菌を含む、候補免疫原性組成物またはワクチンを、マウス内への腫瘍細胞移植前に(候補組成物の予防的効果を試験するため)あるいは腫瘍細胞移植後に(候補組成物の治療的効果を試験するため)、このマウスに接種し得る。
一例として、CT26マウスのマウス結腸癌細胞を、当該技術分野で一般的な手法を用いて、所望の抗原またはモデル抗原をコードする発現カセットを含む適切なベクターでトランスフェクトし得る。次いで、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロット法のような一般的手法を用いて、免疫原性および/または有効性のアッセイでの使用に十分なレベルで抗原またはモデル抗原を発現するクローンを同定する。
あるいは、腫瘍細胞系列にとって内因性の抗原(例えば、CT26マウスのマウス結腸癌細胞にとって内因性のレトロウイルスgp70腫瘍抗原AH1またはヘテロクリット性のエピトープAH1−A5)に対応するかまたは由来する抗原を発現する組換え細菌を含む候補組成物を試験し得る。このようなアッセイでは、追加の抗原を発現するようにさらに改変することなく、腫瘍細胞を動物モデルに移植し得る。次いで、抗原を含む候補ワクチンを試験し得る。
上述のように、本明細書に記載の細菌を含むワクチン組成物も提供される。
ある実施形態では、ワクチン組成物は、本明細書に記載のいずれかの組換え細菌に感染している抗原提示細胞(APC)を含む。ある実施形態では、ワクチン(または免疫原性もしくは医薬組成物)は抗原提示細胞を含まない(すなわち、ワクチンまたは組成物は細菌ベースのワクチンまたは組成物であり、APCベースのワクチンまたは組成物ではない)。
ワクチン組成物(ならびに医薬および免疫原性組成物)投与に適した投与法は当該分野で公知であり、経口、静脈内、真皮内、腹腔内、筋肉内、リンパ内、鼻腔内および皮下の投与経路を含む。
ワクチン製剤は当該分野で公知であり、ある実施形態では、様々な添加剤、例えば、保存剤(例えば、チメロサール、2−フェノキシエタノール)、安定化剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、サイトカイン)、抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン)およびその他の物質などを含み得る。ある実施形態では、ラクトースまたはグルタミン酸ナトリウム(MSG)のような安定化剤を添加して、温度変化または凍結乾燥工程のような様々な条件に対してワクチン製剤を安定化させる。ある実施形態では、ワクチン製剤は、滅菌水、生理食塩水または等張緩衝生理食塩水(例えば、リン酸塩により生理的pHに緩衝されている)のような懸濁流体または希釈剤も含み得る。ワクチンは、製造工程からの少量の残留物も含有し得る。
例えば、ある実施形態では、ワクチン組成物は凍結乾燥(すなわち、フリーズドライされている)。凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液(例えば、クエン酸塩−重炭酸塩緩衝液、緩衝水、0.4%生理食塩水など)と組み合わせ得る。
ある実施形態では、ワクチン組成物は、ワクチンに対する免疫応答を向上させるために、アジュバントまたは共刺激分子のような当該分野で公知の追加成分をさらに含む。上記のものに加え、利用可能なアジュバントとしては、ケモカインおよびCpGのような細菌核酸配列が挙げられる。ある実施形態では、ワクチンは、CTLA4のような、ワクチンに対する免疫応答を向上させる抗体を含む。ある実施形態では、共刺激分子は、GM−CSF、IL−2、IL−12、IL−14、IL−15、IL−18、B7.1、B7.2およびB7−DCからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含み、これらは本発明のワクチン組成物中に任意に含まれる。その他の共刺激分子は当業者に公知である。
さらなる態様では、本発明は、抗原を発現するリステリアを含むワクチンまたは免疫原性組成物を改善する方法を提供する。
本発明の組換えリステリア、免疫原性組成物またはワクチンを作製する方法も提供される。例えば、一実施形態では、組換え細菌(例えば、組換えリステリア菌)を含むワクチンの作製法は、抗原をコードする組換え核酸分子を細菌内に導入することを含む。ある場合には、組換えリステリアはPrfA*変異を含む。別の場合には、組換えリステリアはヌルprfA対立遺伝子を含む。この場合、遺伝子操作されたprfA*対立遺伝子をリステリアゲノム内、例えば、tRNAarg遺伝子内に組み込む(Port,G.C.およびFreitag,N.E.(2007)Infect.Immunity 75:5886−5897)。ある実施形態では、PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結された組換えポリヌクレオチドを組換えPrfA*菌内に導入し、ここで、この組換えポリヌクレオチドは抗原をコードする。ある実施形態では、(a)シグナルペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドおよび(b)抗原をコードする第二のポリヌクレオチドを含む組換え核酸分子をPrfA*菌内に導入してワクチンを作製し、ここで、第二のポリヌクレオチドは第一のポリヌクレオチドと同じ翻訳リーディングフレーム内にあり、組換え核酸分子はシグナルペプチドと抗原とを含む融合タンパク質コードし、この融合タンパク質はPrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結されている。ある実施形態では、ワクチンを作製するために使用される組換え核酸分子は、(a)リステリアActA、ActAフラグメントまたはこれらのバリアントをコードする第一のポリヌクレオチドおよび(b)ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含む組換え核酸分子であり、ここで、第二のポリヌクレオチドは第一のポリヌクレオチドと同じ翻訳リーディングフレーム内にあり、組換え核酸分子は、非リステリアポリペプチドがActA、ActAフラグメントまたはこれらのバリアントと融合されているかあるいはActA、ActAフラグメントまたはこれらのバリアント内に挿入されている、タンパク質キメラをコードする。
VII.使用法
宿主(例えば、哺乳動物)における免疫応答の誘導および/または状態の予防もしくは治療のための、本明細書に記載のリステリアまたは医薬、免疫原性もしくはワクチン組成物の様々な使用法が提供される。ある実施形態では、治療または予防される状態は、疾患である。ある実施形態では、疾患は癌である。ある実施形態では、疾患は感染症である。
本明細書で使用される、(状態または疾患に関する)「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを包含する。好適な実施形態では、これらの結果には臨床結果が含まれる。本発明の目的上、疾患に関する有益なまたは所望の結果には、以下に挙げる1つまたは複数のものが非限定的に含まれ得る:疾患に関連した状態の改善、疾患の治癒、疾患の重症度の軽減、疾患進行の遅延、疾患に関連した1つもしくは複数の症状の緩和、罹患者の生活の質の向上および/または生存期間の延長。同様に、本発明の目的上、状態に関する有益なまたは所望の結果には、以下に挙げる1つまたは複数のものが非限定的に含まれ得る:状態の改善、状態の治癒、状態の重症度の軽減、状態進行の遅延、状態に関連した1つもしくは複数の症状の緩和、状態を有する者の生活の質の向上および/または生存期間の延長。例えば、本明細書に記載の組成物が癌治療に使用される実施形態では、有益なまたは所望の結果には、以下に挙げる1つまたは複数のものが非限定的に含まれる:腫瘍性もしくは癌性細胞の増殖低下(または破壊)、癌に見られる腫瘍性細胞の転位減少、腫瘍サイズの縮小、癌による症状の減少、癌罹患者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤用量の減少、癌進行の遅延および/または癌を有する患者の生存期間延長。
本明細書で使用される、疾患の「予防」または疾患からの「宿主の防御」(本明細書では互換的に使用される)という用語は、以下に挙げる1つまたは複数のものを非限定的に包含する:疾患の発症もしくは進行の停止、遅延、妨害、緩徐化、阻止および/もしくは延期、疾患進行の安定化ならびに/あるいは疾患発達の遅延。(本明細書では互換的に使用される)状態の「予防」または状態からの「宿主の防御」はという用語は、以下に挙げる1つまたは複数のものを非限定的に包含する:状態の発症もしくは進行の停止、遅延、妨害、緩徐化、阻止および/もしくは延期、状態進行の安定化ならびに/あるいは状態発達の遅延。この予防の期間は、治療中の疾患もしくは状態および/または個体の経歴に応じて、様々な時間の長さであり得る。例として、病原体により引き起こされる感染症に対する予防または防御のためにワクチンを設計する場合、疾患の「予防」または疾患からの「宿主の防御」という用語は、以下に挙げる1つまたは複数のものを非限定的に包含する:宿主の病原体感染、宿主の病原体感染の進行または宿主の病原体感染に関連した疾患の発症もしくは進行の、停止、遅延、妨害、緩徐化、阻止および/または延期、ならびに/あるいは宿主の病原体感染の進行安定化。また、例として、ワクチンが抗癌ワクチンである場合、疾患の「予防」または疾患からの「宿主の防御」という用語は、以下に挙げる1つまたは複数のものを非限定的に包含する:癌または転移の発達、癌進行または癌再発の、停止、遅延、妨害、緩徐化、阻止および/または延期。
一態様では、本発明は、本明細書に記載の細菌の有効量または本明細書に記載の細菌を含む組成物(例えば、医薬組成物、免疫原性組成物またはワクチン)の有効量を、宿主(例えば、哺乳動物)に投与することを含めた、宿主における抗原に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
ある実施形態では、免疫応答はMHCクラスI免疫応答である。他の実施形態では、免疫応答はMHCクラスII免疫応答である。さらに他の実施形態では、細菌また組成物の投与により誘導される免疫応答は、MHCクラスI応答およびMHCクラスII応答の両方である。したがって、ある実施形態では、免疫応答はCD4+T細胞応答を含む。ある実施形態では、免疫応答はCD8+T細胞応答を含む。ある実施形態では、免疫応答は、CD4+T細胞応答およびCD8+T細胞応答の両方を含む。ある実施形態では、免疫応答は、B細胞応答および/またはT細胞応答を含む。B細胞応答は、当業者に公知の方法を用いて、抗原に対する抗体の力価を決定することにより測定し得る。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物により誘導される免疫応答は、体液性応答である。他の実施形態では、誘導される免疫応答は、細胞性免疫応答である。ある実施形態では、免疫応答は、細胞性および体液性免疫応答の両方を含む。ある実施形態では、免疫応答は抗原特異的である。ある実施形態では、免疫応答は、抗原特異的T細胞応答である。
免疫応答の誘導方法の提供に加え、本発明は、宿主(例えば、ヒト患者のような哺乳動物被検体)における状態または疾患を予防または治療する方法も提供する。これらの方法は、本明細書に記載の細菌または本明細書に記載の細菌を含む組成物の有効量を、宿主に投入することを含む。ある実施形態では、疾患は癌である。ある実施形態では、疾患は感染症である。
ある実施形態では、疾患は癌である。状態が治療または予防されるある実施形態では、疾患は、黒色腫、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、脳癌、精巣癌、卵巣癌、扁平上皮癌、消化管癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺癌または前立腺癌である。ある実施形態では、癌は黒色腫である。ある実施形態では、癌は膵臓癌である。ある実施形態では、癌は結腸癌である。ある実施形態では、癌は前立腺癌である。ある実施形態では、癌は転移性である。
他の実施形態では、疾患は、感染症またはウイルス、細菌、真菌もしくは原虫のような病原体により引き起こされる別の疾患である。ある実施形態では、疾患は感染症である。
ある実施形態では、癌の予防または治療におけるリステリアの使用は、既に存在するか、あるいは環境曝露および/または家族的素因のような個体の危険因子が増加している癌を予防または治療するために、リステリアを個体の免疫系細胞に送達することを含む。他の実施形態では、癌の予防また治療における細菌の使用は、腫瘍を除去されたか、または過去に癌を有していたが現在は寛解している個体に、細菌を送達することを含む。
ある実施形態では、本明細書に記載の細菌を含む組成物の宿主への投与が、宿主におけるCD4+T細胞応答を誘発する。他のある実施形態では、本明細書に記載の細菌を含む組成物の宿主への投与が、宿主におけるCD8+T細胞応答を誘発する。ある実施形態では、本明細書に記載の細菌を含む組成物の投与が、宿主におけるCD4+T細胞応答およびCD8+T細胞応答の両方を誘発する。
状態の治療に対するワクチンまたはその他の組成物の有効性は、個体、例えばマウスにおいて評価し得る。マウスモデルは、ヒトにおける有効性に関するモデルとして認められており、本発明のワクチンの評価および明確化に有用である。マウスモデルは、任意の個体におけるワクチンの効果の可能性を実証するために使用される。ワクチンは、特定の疾患に対する予防的または治療的効果をもたらす能力に関して評価し得る。例えば、感染症の場合、細菌が感染症関連抗原を発現する本発明の適切なワクチンの好適量を、一群のマウスに接種し得る。次いで、このマウスをワクチン抗原に関連した感染病原体に感染させ、感染に対する防御を評価し得る。感染症の進行を対照群(非接種または媒体のみもしくは適切な抗原を含まない細菌を接種)と比較して観察し得る。
癌ワクチンの場合には、腫瘍細胞モデルが利用可能であり、所望の腫瘍抗原を含有する本発明の細菌を含む組成物による接種前(治療用モデル)または後(予防用モデル)に、所望の腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞系列を一群のマウス内に注射し得る。腫瘍抗原を含有する細菌による接種は、接種していない、媒体を接種した、または無関係な抗原を発現する細菌を接種した対照群と比較し得る。このようなモデルにおけるワクチンの有効性は、腫瘍注射後の時間の関数として腫瘍体積の観点から、または腫瘍注射後の時間の関数として生存個体数の観点から評価し得る。一実施形態では、細菌を含む組成物を接種したマウスにおける腫瘍体積は、接種していない、媒体を接種した、または無関係な抗原を発現する細菌を接種したマウスにおける腫瘍体積よりも、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、約90%または100%小さい。別の実施形態では、腫瘍体積におけるこの差異は、マウス内への腫瘍移植後、少なくとも約10、約17または約24日で観察される。一実施形態では、細菌を含む組成物を接種したマウスにおける生存期間中央値は、接種していない、媒体を接種した、または無関係な抗原を発現する細菌を接種したマウスよりも、少なくとも約2、約5、約7または少なくとも約10日長い。
本明細書に記載の方法における宿主(すなわち、被検体)は、任意の脊椎動物、好ましくは、家畜、競技用動物およびヒトを含めた霊長類を含む哺乳動物である。ある実施形態では、宿主は哺乳動物である。ある実施形態では、宿主はヒトである。
リステリアまたはその菌株を含む組成物の送達は、任意の所定の悪性もしくは感染性疾患またはその他の状態に適した経路によるものだけでなく、任意の適切な方法、例えば、真皮内、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、リンパ内、経口または鼻腔内などによるものであり得る。ある実施形態では、投与法は粘膜投与である。
細菌および免疫刺激剤を含む組成物は、同時、逐次的または別々に宿主に投与し得る。免疫刺激剤の例としては、IL−2、IL−12、GMCSF、IL−15、B7.1、B7.2およびB7−DCおよびIL−14が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される、細菌または組成物(医薬組成物または免疫原性組成物)の「有効量」とは、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量のことである。予防的使用では、有益なまたは所望の結果には、生化学的、組織学的および/または行動上の症状、その合併症および疾患発達中に現れる中間的な病理学的表現型を含めた、疾患のリスクの除去または低減、重症度の軽減あるいは開始の遅延のような結果が含まれる。治療的使用では、有益なまたは所望の結果には、その合併症および疾患発達中に現れる中間的な病理学的表現型を含めた、疾患の阻害または抑制、疾患による1つまたは複数の(生化学的、組織学的および/または行動上の)症状の減少、疾患罹患者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、他の薬剤の効果の増強、疾患進行の遅延および/または患者の生存期間延長のような臨床結果が含まれる。有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。本発明の目的上、有効量の薬物、化合物または医薬組成物とは、直接または間接的に、予防的または治療的処置を達成するのに十分な量のことである。臨床的文脈において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併用して得られる場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、有効量は、1つまたは複数の治療剤の投与という文脈で考えてよく、1つまたは複数の他の薬剤と併用して所望の結果が得られる可能性があるか、または得られる場合、単一薬剤は有効量で投与されるものと考えてよい。
ある実施形態では、癌の治療的処置のために、有効量は、所望の免疫応答をもたらすであろう量を含み、ここで、免疫応答は、標的腫瘍の増殖を緩徐化するか、腫瘍のサイズを減少させるか、または好ましくは腫瘍を完全に除去する。ワクチンの投与は、適切な間隔で反復してもよく、接種個体の複数の異なる部位に同時に投与してもよい。ある実施形態では、癌の予防的処置のために、個体が癌を発症する可能性が有意に減少するように防御免疫応答をもたらすであろう用量を含む。ワクチン接種法は、単回用量で構成されてもよく、または防御免疫応答が確立されるまで適切な間隔で反復してもよい。
本発明は、免疫応答を誘発するための方法を包含し、特に、哺乳動物に投与された初回ワクチン中に存在する標的抗原に対する追加応答の増強を含めた、追加免疫応答を誘発するための方法を包含する。標的抗原は、病的状態と関連した抗原、例えば、癌性細胞または病原体上に存在することが確認された抗原であり得る。初回ワクチンの有効量に続いて、標的抗原の免疫学的に活性な部分をコードし発現する代謝的に活性な弱毒化PrfA*リステリアを含む、第二のワクチンを投与する。本発明の方法では、有効量の初回ワクチンを哺乳動物に投与することにより、初回免疫応答が誘発される。初回ワクチンは、PrfA*リステリア以外に、標的抗原をコードする代謝的に活性なリステリアを含まない。初回ワクチンは、標的抗原自体、例えば、アジュバントの有無を問わないタンパク質、腫瘍細胞溶解物、照射腫瘍細胞、標的抗原のペプチドでパルスした抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を含み得るか、またはそれは標的抗原を生じる作用因子を含み得る。標的抗原を生じる適切な作用因子としては、組換えベクター、例えば、細菌、ウイルスおよび裸のDNAが挙げられる。組換えベクターは、当該分野で公知の一般的手法を用いて調製され、標的抗原をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結された適切な制御エレメントを含む。例えば、Plotkinら,(編)(2003)Vaccines,4th ed.,W.B.Saunders,Co.,Phila.,PA.;Sikoraら,(編)(1996)Tumor Immunology Cambridge University Press,Cambridge,UK;HackettおよびHarn(編)Vaccine Adjuvants,Humana Press,Totowa,NJ;Isaacson(編)(1992)Recombinant DNA Vaccines,Marcel Dekker,NY,NY;Morseら,(編)(2004)Handbook of Cancer Vaccines,Humana Press,Totowa,NJ),Liaoら,(2005)Cancer Res.65:9089−9098;Dean(2005)Expert Opin.Drug Deliv.2:227−236;Arlenら,(2003)Expert Rev.Vaccines 2:483−493;Dela Cruzら,(2003)Vaccine 21:1317−1326;Johansenら,(2000)Eur.J.Pharm.Biopharm.50:413−417;Excler(1998)Vaccine 16:1439−1443;Disisら,(1996)J.Immunol.156:3151−3158)を参照されたい。ペプチドワクチンが記載されている(例えば、McCabeら,(1995)Cancer Res.55:1741−1747;Minevら,(1994)Cancer Res.54:4155−4161;Snyderら,(2004)J.Virology 78:7052−7060を参照されたい)。
ウイルス由来ベクターは、ウイルス、改変ウイルスおよびウイルス粒子を含む。ウイルス由来ベクターは、哺乳動物被検体に直接投与され得るか、または抗原提示細胞(APC)内にエキソビボで導入され、次いでこのAPCが被検体に投与され得る。
ウイルスベクターは、例えば、アルファウイルスおよびフラビウイルスを含むトガウイルス;アルファウイルス、例えば、シンドビスウイルス、シンドビス株SAAR86、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ベネズエラウマ脳炎(VEE)、東部ウマ脳炎(EEE)、西部ウマ脳炎、ロスリバーウイルス、サギヤミ(Sagiyami)ウイルス、オニョンニョンウイルス、ハイランドJウイルスなどに基づき得る。フラビウイルス、例えば、黄熱病ウイルス、黄熱病株17D、日本脳炎、セントルイス脳炎、ダニ媒介脳炎、デングウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス(西ナイルウイルスの亜型)など;ウマ動脈炎ウイルスのようなアルテリウイルス;および風疹ウイルス、ヘルペスウイルス、改変ワクチニアアンカラ(MVA)のようなルビウイルス;トリポックスウイルスベクター;鶏痘ベクター;ワクチニアウイルスベクター;インフルエンザウイルスベクター;アデノウイルスベクター;ヒトパピローマウイルスベクター;ウシパピローマウイルスベクターなど。ウイルスベクターは、オルソポックスウイルス、例えば、痘瘡ウイルス(天然痘)、ワクチニアウイルス(天然痘に対するワクチン)、アンカラ(MVA)またはコペンハーゲン株、ラクダ痘、サル痘または牛痘などに基づき得る。ウイルスベクターは、鶏痘ウイルスまたはカナリアポックスウイルスのようなトリポックスウイルスのウイルスに基づき得る。ウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)または黄熱病ウイルス(YFV)に基づき得る。
アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)が利用可能であり、アデノウイルスベクターとしては、アデノウイルスセロタイプ5(アデノ5;Ad5)、アデノ6、アデノ11、アデノ26およびアデノ35が挙げられる。6つの亜群(亜群A、B、C、D、EおよびF)に分類される、少なくとも51のヒトアデノウイルスセロタイプが利用可能である。例えば、「空」アデノウイルスベクターに対する免疫応答の評価に有用なアデノウイルスタンパク質としては、ヘキソン3タンパク質、線維タンパク質およびペントンベースタンパク質のようなヘキソンタンパク質が挙げられ、またアデノウイルスタンパク質に対するヒトの免疫応答が記載されている(例えば、Wuら,(2002)J.Virol.76:12775−12782;Mascola(2006)Nature 441:161−162;Robertsら,(2006)Nature 441:239−243を参照されたい)。
樹状細胞(DC)ベクターのような抗原提示細胞(APC)ベクターとしては、抗原を負荷された、腫瘍溶解物を負荷された、または核酸(核酸は、例えば、プラスミド、mRNAまたはウイルスであり得る)を含む組成物をトランスフェクトされた細胞が挙げられる。DC/腫瘍融合ワクチンも使用し得る。例えば、Di Nicolaら,(2004)Clin.Cancer Res.10:5381−5390;Cerundoloら,(2004)Nature Immunol.5:7−10;Parmianiら,(2002)J.Natl.Cancer Inst.94:805−818;Kaoら,(2005)Immunol.Lett.101:154−159;Geigerら,(2005)J.Transl.Med.3:29;Osadaら,(2005)Cancer Immunol.Immunother.Nov.5,1−10[印刷前電子出版];Malowanyら,(2005)Mol.Ther.13:766−775;MorseおよびLyerly(2002)World J.Surg.26:819−825;Gabrilovich(2002)Curr.Opin.Mol.Ther.4:454−458;Morseら,(2003)Clin.Breast Cancer 3 Suppl.4:S164−S172;Morseら,(2002)Cancer Chemother.Biol.Response Modif.20:385−390;Arlenら,(2003)Expert Rev.Vaccines 2:483−493;MorseおよびLyerly(1998)Expert Opin.Investig.Drugs 7:1617−1627;Hirschowitzら,(2004)J.Clin.Oncol.22:2808−2815;Vasirら,(2005)Br.J.Haematol.129:687−700;Koidoら,(2005)Gynecol.Oncol.99:462−471を参照されたい。
腫瘍細胞、例えば、自己および同種腫瘍細胞がワクチンとして利用可能である(Arlenら,(2005)Semin.Oncol.32:549−555)。ワクチンは、改変腫瘍細胞、例えば、腫瘍細胞溶解物または放射線照射腫瘍細胞であり得る。腫瘍細胞は、サイトカイン(GM−CSF、IL−12、IL−15など)、NKG2Dリガンド、CD40L、CD80、CD86などのような分子をコードする核酸を組み込むことによっても改変し得る(Dranoff(2002)Immunol.Rev.188:147−154;Jainら,(2003)Ann.Surg.Oncol.10:810−820;BorrelloおよびPardoll(2002)Cytokine Growth Factor Rev.3:185−193;Chenら,(2005)Cancer Immunol.Immunother.27:1−11;Kjaergaardら,(2005)J.Neurosurg.103:156−164;Taiら,(2004)J.Biomed.Sci.11:228−238;Schwaabら,(2004)J.Urol.171:1036−1042;Frieseら,(2003)Cancer Res.63:8996−9006;Brionesら,(2002)Cancer Res.62:3195−3199;ViewegおよびDannull(2003)Urol.Clin.North Am.30:633−643;Mincheffら,(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.39:125−132を参照されたい)。
ワクチンは、裸のDNAベクターおよび裸のRNAベクターを含み得る。核酸を含有するこれらのワクチンは、遺伝子銃、エレクトロポレーション、細菌ゴースト、マイクロスフィア、微粒子、リポソーム、ポリカチオンナノ粒子などにより投与し得る(例えば、Donnellyら,(1997)Ann.Rev.Immunol.15:617−648;Mincheffら,(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.39:125−132;Songら,(2005)J.Virol.79:9854−9861;Estcourtら,(2004)Immunol.Rev.199:144−155を参照されたい)。
裸の核酸投与のための試薬および方法、例えば、遺伝子銃、皮内、筋肉内およびエレクトロポレーション法によるものが利用可能である。核酸ワクチンはロックト核酸(LNA)を含んでいてもよく、この場合、LNAが機能的部分とプラスミドDNAとの結合を可能にし、そしてこの機能的部分がアジュバントとなり得る(例えば、Fensterleら,(1999)J.Immunol.163:4510−4518;Strugnellら,(1997)Immunol.Cell Biol.75:364−369;Hertoughsら,(2003)Nucleic Acids Res.31:5817−5830;Trimbleら,(2003)Vaccine 21:4036−4042;Nishitaniら,(2000)Mol.Urol.4:47−50;Tuting(1999)Curr.Opin.Mol.Ther.1:216−225を参照されたい)。核酸ワクチンは、未熟樹状細胞のワクチンへの移動を促進する試薬および初回免疫が生じ得る流入領域リンパ節への成熟DCの移動を促進する試薬と組み合わせて使用してもよく、これらの試薬には、MIP1アルファおよびFlt3Lが包含される(例えば、KutzlerおよびWeiner(2004)J.Clin.Invest.114:1241−1244;Sumidaら,(2004)J.Clin.Invest.114:1334−1342を参照されたい)。
細菌ベクターとしては、例えば、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、エルシニア菌(Yersinia)、ラクトコッカス菌(Lactobacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)、炭疽菌および大腸菌が挙げられる。細菌を遺伝子操作して、組換え抗原、異種抗原または腫瘍、癌細胞もしくは感染体に由来する抗原をコードする核酸を含有させ得る。さらに、細菌を改変して弱毒化し得る。別の態様において、非リステリア菌ワクチンは、組換え抗原をコードする核酸を全く欠き得る(例えば、Xuら,(2003)Vaccine 21:644−648;Pasettiら,(2003)J.Virol.77:5209−5219;LoessnerおよびWeiss(2004)Expert Opin.Biol.Ther.4:157−168;Grangetteら,(2002)Vaccine 20:3304−3309;Byrdら,(2002)Vaccine 20:2197−2205;Edelmanら,(1999)Vaccine 17:904−914;Domenechら,(2005)Microbes and Infection 7:860−866を参照されたい)。
1用量または複数用量のワクチンで投与される初回免疫ベクターまたは追加免疫ベクターの有効量は、当業者により決定され得る。このような量は、通常通りの試験により決定され得る範囲内に収まるであろう。
初回ワクチンおよび追加ワクチンは、以下に挙げる経路の任意の1つまたは組合せにより投与し得る。一態様では、初回ワクチンおよび追加ワクチンを同じ経路により投与する。別の態様において、初回ワクチンおよび追加ワクチンを異なる経路により投与する。「異なる経路」という用語は、異なる様式、例えば、経口、静脈内および筋肉内によるものだけでなく、体の異なる部位、例えば、口腔、非口腔、腸内、非経口、直腸内、節内(リンパ節)、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腫瘍周囲、腫瘍内、点滴、粘膜、鼻、脳脊髄腔または脳脊髄液などである部位を包含するが、これらに限定されない。
有効量の初回免疫または追加ワクチンは、1用量で投与し得るが、1用量に限定されない。したがって、投与は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回またはそれを超えるワクチン投与であり得る。2回以上のワクチン投与がある場合、投与は、1分、2分、3、4、5、6、7、8、9、10分またはそれを超える時間間隔で、約1時間、2時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間などの間隔で、隔てられ得る。時間(hours)に関連した「約」という用語は、30分以内の任意の間隔をプラスまたはマイナスすることを意味する。投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日およびこれらの組合せの時間間隔で隔てられ得る。本発明は、時間的に均等に隔てられた投与間隔に限定されないが、非限定的な例を挙げれば、1日目、4日目、7日目および25日目での投与からなる初回免疫計画のような不均等な間隔を包含する。
初回ワクチンおよび追加ワクチンの相対的タイミングを決定する上で、以下のことを考慮し得る。抗原または抗原をコードする核酸の投与が抗原特異的免疫細胞の増大を刺激し、ピークに達した後、抗原特異的免疫細胞の数が低減することが見い出されてる(例えば、Badovinacら,(2002)Nature Immunol.3:619−626を参照されたい)。追加ワクチン接種の開始は、ピークに達する前に、ピークに合わせてまたはピーク後に施行し得る。
追加ワクチン接種の施行は、抗原特異的免疫細胞群が、最終的に得られる抗原特異的免疫細胞の最大数の少なくとも20%に;最終的に得られる抗原特異的免疫細胞の最大数の少なくとも30%;少なくとも40%;少なくとも50%;少なくとも60%;少なくとも70%;少なくとも80%;少なくとも90%;少なくとも95%;少なくとも99%にまで増大した(数が増加した)ときに開始し得る。さらなる初回・追加ワクチン計画が利用可能であり、例えば、抗原特異的細胞群が、抗原特異的細胞の最大数の90%未満に;抗原特異的細胞の最大数の80%未満;70%未満;60%未満;50%未満;40%未満;30%未満;20%未満;10%未満;5%未満;1.0%未満;0.5%未満;0.1%未満;0.05%未満または0.01%未満に縮小したときに開始し得る。抗原特異的細胞は、ベクター特異的抗原に対して特異的(空ベクターに対して特異的)またはベクターに含有される核酸により発現される異種抗原に対して特異的なものとして同定し得る。
他の態様では、追加ワクチン接種の施行は、初回ワクチン接種が開始された約5日後;初回ワクチン接種が開始された約10日後;初回ワクチン接種が開始された約15日;約20日;約25日;約30日;約35日;約40日;約45日;約50日;約55日;約60日;約65日;約70日;約75日;約80日;約6ヵ月;約1年後に開始し得る。
追加ワクチン接種は、初回ワクチン接種の5〜10日後;初回ワクチン接種の10〜15日後;初回ワクチン接種の15〜20日後;初回ワクチン接種の20〜25日後;初回ワクチン接種の25〜30日後;初回ワクチン接種の30〜40日後;初回ワクチン接種の40〜50日後;初回ワクチン接種の50〜60日後;初回ワクチン接種の60〜70日後;などに施行し得る。
初回ワクチン接種開始と追加ワクチン接種開始の間の期間は、当業者により決定され得る。例えば、初回免疫化の発生後に測定された生理的パラメーターに敏感なアルゴリズムに基づき得る。
用量および方法は、少なくとも部分的には、様式の有効性、使用されるワクチン送達法、被検体の必要性により決定され、かつ施行者の判断に依存するであろう。
例えば、本発明で使用されるワクチン中のPrfA*リステリアは、各用量が、体重70kg当たり107〜108個の間のリステリア;体重70kg当たり2×107〜2×108個の間のリステリア;体重70kg当たり5×107〜5×108個の間のリステリア;体重70kg当たり108〜109個の間のリステリア;70kg当たり2.0×108〜2.0×109個の間のリステリア;70kg当たり5.0×108〜5.0×109個の間のリステリア;70kg当たり109〜1010個の間のリステリア;70kg当たり2×109〜2×1010のリステリア;70kg当たり5×109〜5×1010;70kg当たり1011〜1012個の間のリステリア;70kg当たり2×1011〜2×1012個の間のリステリア;70kg当たり5×1011〜5×1012個の間のリステリア;70kg当たり1012〜1013個の間のリステリア;70kg当たり2×1012〜2×1013個の間のリステリア;70kg当たり5×1012〜5×1013個の間のリステリア;などを湿重量当たりで含む、1用量または複数用量で投与し得る。上記各用量はまた、表面積1.7平方メートル当たりの基準または肝臓重量1.5kg当たりの基準に基づき提供される。マウス肝臓は、本発明のリステリア投与時に重量約1.5グラムであることに留意するべきである。ヒト肝臓は重量約1.5キログラムである。
本発明のある実施形態では、PrfA*リステリアの追加免疫投与は、初回免疫投与による免疫応答を、少なくとも2倍、時には約3〜5倍の間、または5倍〜10倍、または10倍〜100倍またはそれよりも増強するであろう。本発明のある実施形態では、初回免疫投与および追加免疫投与は、免疫応答に対して相乗作用を有するであろう。本発明のある実施形態では、増強された免疫応答はT細胞応答を含み、ある実施形態では、そのT細胞応答はCD8+T細胞応答であろう。本発明のある実施形態では、初回免疫投与および追加免疫投与は、標的抗原に対する哺乳動物の寛容状態を崩壊させるであろう。これらすべての実施形態の例を以下に提供する。
癌および感染症は、免疫系を調節する試薬の投与により治療および/または抑制し得る。本発明に包含される初回・追加免疫法は、上方制御された免疫応答を引き起こし、かつ自己抗原に対する寛容の崩壊を含む。したがって、こうした初回・追加免疫法は、癌の増殖抑制および/または癌に関連した1つまたは複数の症状の改善において有用であることが期待される。この初回・追加免疫法はまた、病原体により引き起こされる疾患の予防および/または治療において有用であることが期待される。
上記に加え、これらの方法を用いて哺乳動物が治療に反応するか否かを決定し得る。例えば、特定の抗原に対して初回・追加免疫法を用いる場合、追加免疫後に有意な免疫応答が得られなければ、それはその哺乳動物が標的抗原に対して非応答性であり、別の治療様式に従うべきであることを示唆する。このような例は、標的抗原が存在しないかまたは改変されているために標的抗原と交差反応しないような癌または病原体の遺伝的背景である場合であり得る。
ある実施形態では、癌に対する個人の治療的処置を、癌であると診断された個人に対する初回治療として開始してもよく、または他の治療と組み合わせて用いてもよい。例えば、外科的に腫瘍を除去されたまたは放射線治療もしくは化学療法による治療を受けている個人を、その個人の任意の残存腫瘍を減少もしくは消失させる、または癌再発のリスクを低減するために、ワクチンで治療してもよい。ある実施形態では、癌に対する個人の予防的治療を、環境条件または遺伝的素因により特定の癌に罹患するリスクの高い個人に対して開始するであろう。
宿主に投与される医薬組成物またはワクチンの用量は、宿主の種類、宿主の大きさおよび宿主の状態もしくは疾患により異なるであろう。組成物の用量は、組成物の投与頻度および投与経路にもよるであろう。正確な用量は、治療される患者を考慮して各医師により選択される。
ある実施形態では、本明細書に記載のリステリアを含む医薬組成物、免疫原性組成物またはワクチンの1回量は、約102〜約1012個の細菌を含む。別の実施形態では、1回量は、約105〜約1011個の細菌を含む。別の実施形態では、1回量は、約106〜約1011個の細菌を含む。さらに別の実施形態では、医薬組成物またはワクチンの1回量は、約107〜約1010個の細菌を含む。さらに別の実施形態では、医薬組成物またはワクチンの1回量は、約107〜約109個の細菌を含む。
本発明のリステリアは、ある実施形態では、各用量が、少なくとも約1000リステリア単位/kg体重、少なくとも約10,000リステリア単位/kg体重、少なくとも約100,000リステリア単位/kg体重、少なくとも約100万リステリア単位/kg体重または少なくとも約1,000万リステリア単位/kg体重を含む、1用量または複数用量で投与する。本発明は、リステリアの単位が、ソラレン処置前のコロニー形成単位(CFU)に相当するCFUであるか、または単位がリステリア細胞数である、上記用量を提供する。ある実施形態では、測定される弱毒化リステリアの有効量は、少なくとも約1×103CFU/kgまたは少なくとも約1×103リステリア細胞/kgを含む。ある実施形態では、測定される弱毒化リステリアの有効量は、少なくとも約1×105CFU/kgまたは少なくとも約1×105リステリア細胞/kgを含む。特定の実施形態では、測定される弱毒化リステリアの有効量は、少なくとも約1×106CFU/kgまたは少なくとも約1×106リステリア細胞/kgを含む。ある実施形態では、測定される弱毒化リステリアの有効量は、少なくとも約1×107CFU/kgまたは少なくとも約1×107リステリア細胞/kgを含む。いくつかのさらなる実施形態では、測定される弱毒化リステリアの有効量は、少なくとも約1×108CFU/kgまたは少なくとも約1×108リステリア細胞/kgを含む。
ある実施形態では、本明細書に記載のリステリアを含む医薬組成物、免疫原性組成物またはワクチンの1回量は、約1CFU/kg〜約1×1010CFU/kg(CFU=コロニー形成単位)を含む。ある実施形態では、組成物の1回量は、約10CFU/kg〜約1×109CFU/kgを含む。別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、約1×102CFU/kg〜約1×108CFU/kgを含む。さらに別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、約1×103CFU/kg〜約1×108CFU/kgを含む。さらに別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、約1×104CFU/kg〜約1×107CFU/kgを含む。ある実施形態では、組成物の1回量は、少なくとも約1CFU/kgを含む。ある実施形態では、組成物の1回量は、少なくとも約10CFU/kgを含む。別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、少なくとも約1×102CFU/kgを含む。さらに別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、少なくとも約1×103CFU/kgを含む。さらに別の実施形態では、組成物またはワクチンの1回量は、少なくとも約1×104CFU/kgを含む。
ある実施形態では、ヒトのような宿主1体に対して適切な(すなわち、効果的な)用量は、マウスのような別の宿主のLD50データから、当業者に公知の方法を用いて推定し得る。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物、免疫原性組成物またはワクチンは、後の抗生物質投与なしで投与し得る。リステリア生菌を宿主に投与する場合は、接種後のリステリア複製を制限するために、宿主に抗生物質を投与する必要があり得る。しかし、リステリアが宿主内での増殖に関して弱毒化されている場合は、宿主内でのリステリア増殖を制御するために抗生物質を投与する必要はないであろう。本発明のある態様では、リステリアは、宿主内での増殖に関して弱毒化されている。例えば、本発明のある態様では、リステリアは不活化されているが代謝的に活性である。このような場合、宿主内でのリステリア増殖を制御するために抗生物質を投与する必要はないであろう。
ある実施形態では、医薬組成物、免疫原性組成物またはワクチンは、本明細書に記載のリステリアに感染している、樹状細胞のような抗原提示細胞を含む。ある実施形態では、本明細書に記載のような細菌を含む抗原提示細胞に基づくワクチンの個々の用量は、約1×103〜約1×1010個の間の抗原提示細胞を含む。ある実施形態では、ワクチンの個々の用量は、約1×105〜約1×109個の間の抗原提示細胞を含む。ある実施形態では、ワクチンの個々の用量は、約1×107〜約1×109個の間の抗原提示細胞を含む。
ある実施形態では、1日でのまたは1週間もしくは1ヶ月もしくは1年もしくは数年にわたる、用量単位の複数回投与が好ましい。ある実施形態では、毎日で複数日間または週1回で複数週間、用量単位を投与する。ある実施形態では、リステリアを哺乳動物被検体に、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回または少なくとも20回投与する。
本発明はまた、本明細書に記載の細菌と抗原提示細胞とを接触させることを含む、抗原提示細胞上でのMHCクラスI抗原提示およびMHCクラスII抗原提示を誘導する方法を提供する。
本発明はさらに、以下の段階を含む、抗原に対する宿主における免疫応答を誘導する方法を提供する:(a)適切な条件下でかつ抗原提示細胞に負荷するのに十分な時間だけ、本明細書に記載のリステリア菌と宿主由来の抗原提示細胞とを接触させる段階;および(b)この抗原提示細胞を宿主に投与する段階。
VIII.キット
本発明はさらに、本明細書に記載のリステリアを含むキットおよび製品あるいは本明細書に記載のリステリアを含む組成物を提供する。
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるのであり、限定するためではない。
実施例1
本研究では、同系の弱毒生およびKBMAワクチン株に対する、G145S、G155SおよびY63Cを含む3つのPrfA*変異体ポリペプチドの影響を評価した。
材料および方法
マウス
6〜12週齢の雌C57BL/6およびBalb/cマウスをCharles River Laboratories(Wilmington,MA)より入手した。Anza動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)に承認された動物プロトコールに従って研究を行った。
菌株
リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB株においてリステリア・モノサイトゲネスワクチン株を構築した(9)。800bp〜1kbの隣接相同性を有する様々なprfA対立遺伝子を温度感受性対立遺伝子交換ベクターpKSW内にクローニングすることによりprfA*変異株を構築し、一般的手法を用いて野生型対立遺伝子と置換するために使用した(12)。活性化prfA表現型を有する菌株を、卵黄重層プレート(egg−yolk overlay plate)上でのホスホリパーゼ活性(50)およびウマ血液寒天培地(Remel)上での溶血両方のゾーン増加に関してスクリーニングした。表現型が妥当なクローンをゲノムprfA遺伝子座の配列決定により確認した。単一の合成遺伝子から長さの異なる4つのワクチニアCD8+T細胞エピトープおよびオボアルブミン(OVA)由来CD8+T細胞エピトープSIINFEKLを発現する「Quadvac」構築物と称する抗原発現カセットを、これらのエピトープが連結されてリンカー配列により隔てられるようにコンピュータで設計した。Gene Designerソフトウェアを用いて、アミノ酸配列をリステリア・モノサイトゲネスでの発現に対してコドン最適化し(48)、actAプロモーターの下流にactA遺伝子のアミノ末端とインフレームでクローニングした。既に記載されているように、構築物をpPL2組込みベクター誘導体内にクローニングし、様々なprfA*株バックグラウンドの細菌染色体のtRNAArg遺伝子座に安定に組み込んだ(23)。すべての分子構築物をDNA配列決定により確認した。
異種抗原発現のウエスタンブロット検出
酵母抽出物培地中で0.7のOD600(後期対数)まで増殖させた細菌培養物のTCA沈殿上清の等量について、ブロス培養物のウエスタンブロットを行った。リステリア・モノサイトゲネス感染宿主細胞のウエスタンブロット用に、J774細胞またはDC2.4細胞を50または100の感染効率(MOI)で1時間接種し、これらの細胞を50μg/mLゲンタマイシンを添加したPBSおよびDMEM培養液で3回洗浄した。早期の時点に関しては、感染後1.5または2.5時間でDC2.4を回収した。後期の時点に関しては、7時間でJ774細胞を回収した。ウエスタンブロット解析用に、細胞をSDS試料緩衝液で溶解させて収集し、4〜12%ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。すべてのウエスタンブロットで、ActAタンパク質の成熟N末端に対して産生されたポリクローナル抗体を使用した。
免疫化
酵母抽出物培地中で一晩増殖させた培養物から、弱毒化生菌を免疫化用に調製した。KBMAリステリア・モノサイトゲネス株を、既に記載されているようにS59−ソラレンおよびUVAで処置した(9)。光化学的に不活性化された細菌(KBMA Lm)をDPBSで1回洗浄して、8%DMSO中に再懸濁し、次いで−80℃で貯蔵した。細菌を注射用にハンクス平衡塩溶液(HBSS)中に希釈した。弱毒化生菌の注射用ストックを蒔いてコロニー形成単位(CFU)を確認した。5×l06CFUの弱毒化生菌および1×108粒子のKBMA菌を、尾静脈内に200μL容量でi.v.または単一の頭側脛骨筋内に30μL容量を筋肉内(i.m)投与し、別の頭側脛骨筋内に追加ワクチン接種を行った。
血清サイトカインおよびケモカインの検出
KBMA接種の2、4および8時間後ならびに弱毒化生Lm接種の4、8および24時間後に、マウスから後眼窩採血により血清を採取した。マウス炎症Cytometric Bead Arrayキット(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて、製造者の使用説明書に従いサイトカイン/ケモカインを測定した。FACSCantoフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて試料を得た。データをCytometric Bead Arrayソフトウェア(BD Biosciences)を用いて解析した。
ペプチド
OVA257−264(SIINFEKL)、LLO190−201(NEKYAQAYPNVS)、HSV−gB2(SSIEFARL)、B8R20−27(TSYKFESV)、K3L6−15(YSLPNAGDVI)、C4L125−132(LNFRFENV)、A42R88−96(YAPVSPIVI)(27)ペプチドをSynthetic Biomolecules(San Diego,CA)により合成した。
フローサイトメトリー用試薬
CD3FITCまたはPE−Cy7(クローン145−2C11)、CD4FITC(クローンGK1.5)、CD8PE−Cy7またはAPC−Cy7(クローン53−6.7)、CD19FITC(クローンMB19−1)、TNF PE(クローンMP6−×T22)、IFN−γAPC(クローン×MG1.2)をeBioscience(San Diego,CA)から購入した。CD8αPerCP(クローン53−6.7)をBD Biosciences(San Jose,CA)から購入した。
インビボ細胞傷害性アッセイ
未処置レシピエントの脾細胞を1μM濃度の対照(HSV−gB2)または標的(B8RまたはA42R)ペプチドでパルスした。次いで、細胞を0.2μM(CFSElo)、1μM(CFSEmed)または5μM(CFSEhi)濃度のカルボキシフルオセイン二酢酸サクシンイミジルエステル(CFSE,Molecular Probes,Eugene,OR)で標識した。3×106個の標識脾臓細胞の各群を混合してi.v.注射した。16時間後に脾臓を回収し、対照群に対する標的の割合を測定して、パーセント殺作用を計算した。
抗原特異的T細胞の細胞内染色
細胞内サイトカイン染色のために、既に記載されているように、脾細胞をブレフェルジンAの存在下、関連するペプチドで5時間刺激した(Brockstedt,D.Gら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13832−13837)。刺激した細胞をCD4およびCD8に関して表面染色し、次いで、Cytofi×/Cytopermキット(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて固定および透過処理した。次いで、細胞をIFN−γ、TNF−αおよび/またはIL−2に関して染色した。FACSCantoフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて試料を得た。CD4+またはCD8+の事象のみを含むようにデータをゲートし、次いで、IFN−γを発現するこれらの細胞のパーセントを測定した。データをFlowJoソフトウェア(Treestar,Ashland,OR)を用いて解析した。
リステリア・モノサイトゲネス防御試験
防御免疫を評価するために、既に記載されているように、示された菌株をBalb/cマウスに接種し、2×LD50の野生型リステリア・モノサイトゲネス(1×10コロニー形成単位;CFU)による接種の14日後に抗原投与し、その3日後に、器官ホモジネート中の膵臓におけるCFUを測定した(Bahjat,K.S.ら,(2005)J.Immunol.179:7376−7384)。中間致死(LD50)値を既に記載されているように測定した(10)。
ワクチニアウイルス防御試験
リステリア・モノサイトゲネスQuadvac株による初回および追加ワクチン接種を27日の間隔でC57BL/6マウスに行い、28日後にマウス腹腔内に1×107プラーク形成単位(PFU)のワクチニアウイルスによる抗原投与を行った。ウイルス抗原投与の5日後に、記載されているように、卵巣中のウイルス力価を測定することにより防御を評価した(1)。
統計解析
ワクチニアウイルスまたはリステリア・モノサイトゲネス抗原投与に対する防御の差をStudentのt検定により判定した。別途記述されない限り、すべての実験は少なくとも2回行った。別途記述されない限り、すべての実験は少なくとも2回行った。
結果
同系PrfA*リステリア・モノサイトゲネスワクチン株の構築および特徴付け
本発明者らは、免疫化前のPrfAレギュロン導入が、組換え弱毒化生およびKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫効力を増加させるという仮説を立てた。この仮説を試験するために、本発明者らは、prfAにおいてのみ異なる、actA、inlB、uvrAおよびuvrBの完全なコード領域欠失を含むリステリア・モノサイトゲネス(リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB)をバックグラウンドとした同系菌株群を構築した。本発明者らは、化学的変異誘発により生じたものまたは自発変異株であり、かつ恒常的活性化型のPrfA*タンパク質をコードする、3つのPrfA変異株を選択した(37、41)。PrfA* G155S、G145SまたはY63Cを有する菌株は、天然prfAを有する同系菌株に比べて、actAプロモーター依存性β−グルクロニダーゼレポータータンパク質の発現を増加させ、またある場合には、野生型(WT)リステリア・モノサイトゲネスの毒性を増加させることが既に示されている(26、28、37、41)。
同系のリステリア・モノサイトゲネスワクチン株間の免疫効力の差が区別できるように、本発明者らは、マウスにおける広範なCD8+T細胞応答を誘発することが既に示されている5つの明確に定義されたH−2b−拘束性MHCクラスIエピトープをコードする、Ag発現カセットを構築した。直列に区切られた4つのワクチニアウイルス(A42R、C4L、K3L、B8R)エピトープおよびニワトリオボアルブミン(SL8)エピトープをコードする構築物を合成し、次いで、ActAの100N末端アミノ酸を有する融合タンパク質として、PrfA調節性actAプロモーターの制御下にクローニングした。「Quadvac」として知られる構築物を、既に記載されているように、pPL2誘導体内にクローニングし、次いで、WT、G145S、G155SまたはY63C prfA対立遺伝子を保持する4つの同系菌株(リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB)中のtRNAArg遺伝子座に組み込んだ(図1A)(23)。この4つの同系ワクチン株はすべて、酵母抽出物またはブレインハートインフュージョンブロス培養で等しく増殖させた(データ不掲載)。酵母抽出ブロス培養で増殖させたワクチン株を、弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスワクチンとして直接用いる(10)か、または、既に記載されているように、合成ソラレンS−59および長波長UV光で光化学的に不活性化してKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンを得た(9)。
本発明者らは、4つの弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスワクチンのブロス培養におけるAg発現および分泌レベルを比較し、そして予想通り、WT prfA対立遺伝子を有する菌株に比べ、PrfA*株においてより高い発現レベルが観察された(図1B)。上皮細胞への侵入増強と組み合わせたブロス培養で増殖させたPrfA*株におけるPrfA依存性遺伝子の過剰発現が詳細に記載されている(28、34、41、47)のに対し、感染培養哺乳動物細胞においてPrfA*表現型が再現されるか否かはほとんど知られていない。本発明者らは、HepG2(肝臓)またはPtK2(上皮系)のような非食細胞系ではなく、それぞれ食作用性のマウスマクロファージまたは樹状細胞(DC)系列であるJ774およびDC2.4において、リステリア・モノサイトゲネスワクチン株からのAg発現を評価した。リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB株は、肝細胞増殖因子受容体を発現する肝細胞のInlB依存性感染を仲介することができず、また上皮組織には、本発明において使用される筋肉内および静脈内免疫化経路に関連する主要な標的が見られない。驚くべきことに、同系リステリア・モノサイトゲネスワクチン株で感染させたJ774マクロファージにおけるAg発現レベルは、prfA対立遺伝子に関係なく同等であった(図1C)。注目すべきことに、DC2.4DCにおけるAg発現レベルも早期の時点で同等であった(図1D)。J774(図1E)およびDC2.4(非掲載)細胞系列におけるすべてのリステリア・モノサイトゲネスワクチン株の感染(取込み)および細胞内増殖は同等であり、かつprfA対立遺伝子に依存しなかった。
PrfA*は、リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB株の毒性をわずかに増加させる
PrfA*変異リステリアは、Balb/cマウスにおいて弱毒性を最大で10倍まで増加させたことが報告されている。例えば、prfA G155Sは、その同系野生型株のLD50値を2×104cfuから3×103cfuまで減少させた(41)。しかし、弱毒化株の毒性に対するPrfA*変異株の影響は未知である。マウスにおけるリステリア・モノサイトゲネスワクチンの試験に使用される免疫化用量は通常、LD50値の10分の1であるが、本発明者らは、IV投与後速やかに肝臓から除去されかつマウスにおいてWTリステリア・モノサイトゲネスに比べ3logよりも弱毒化されている菌株であるリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB毒性株に対する、本発明で使用される3つのPrfA*変異株の影響を測定した(6、9、10)。PrfA*は、リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB毒性株の毒性をわずかに増加させ、LD50値は、prfA G145SまたはprfA Y63C対立遺伝子を保持する同系菌株においては2.1倍(3.5×107cfu対7.3×107cfu)だけ、prfA G155S対立遺伝子を保持する同系菌株においては1.4倍(5.2×107cfu対7.3×10cfu)だけ減少した(表5)。
IV投与に応答して誘導されるTh1極性化炎症誘発性血清サイトカインのプロファイルにより示されるように、弱毒化リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBに基づく菌株を含めたLmに基づくワクチンは、先天性免疫の強力な活性化因子である(4)。先天性免疫の活性化は、リステリア・モノサイトゲネスワクチンの誘導による免疫応答の質と関連するため、本発明者らは、同系ワクチン株のIV投与後の最初の24時間のいくつかの時点における血清サイトカインレベルを測定した。C57BL/6マウスに、4つの同系ワクチン株に対する0.1LD50値に近い用量である、5×l06cfuを静脈内注射した。3つのすべてのPrfA*ワクチン株が、投与の8時間以内に、天然prfAを有するワクチン株に比べ統計的に有意に高いレベルの炎症誘発性サイトカイン/ケモカインを誘導した(図2A)。3つのPrfA*株の間に有意な差は見られなかったが、PrfA* Y63Cワクチン株を投与されたマウスにおいては、マウス間でばらつきの増加が見られた。
Figure 2011523553
PrfA*は、弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫原性を増加させる
本発明者らは、ワクチン効力に対するPrfA*の影響を評価するために、同系ワクチン株の免疫原性を評価した。比較を容易にするために、ワクチニアウイルス感染後に、高、中および低頻度のT細胞応答を誘発することが示されている複数の定義されたH−2b拘束性MHCクラスIワクチニアウイルスエピトープ(A42R、C4L、K3L、B8R)および加えて強力なOVAエピトープであるSL8からなる一般的な異種Ag(「Quadvac」と称する)を同系ワクチン株に発現させた。この方法により、免疫化の用量範囲にわたるワクチン誘導CD8+T細胞応答の度数の順位付けおよびワクチニアウイルスでの抗原投与による応答の質の評価の両方を行うことができる。
雌C57BL/6マウス群を、4つの同系リステリア・モノサイトゲネスQuadvac株5×106cfuで静注により免疫化し、単回免疫化の7日後である応答ピーク時に、CD8+および(Lm特異的)CD4+T細胞頻度を細胞内サイトカイン染色により測定した(10)。PrfA* G155Sリステリア・モノサイトゲネスワクチンは、G145SおよびY63CPrfA*ワクチン株ならびにWT prfAを有する菌株に比べ、より高い度数の抗原特異的T細胞応答を誘導した(図2Bおよび2C)。PrfA* G155Sリステリア・モノサイトゲネスワクチン免疫化マウスにおける抗原特異的IFN−γ+T細胞の度数増加は、免疫優性SL8およびB8Rエピトープだけでなく、中程度のおよび弱いエピトープであるA42R、C4LおよびK3Lでも有意に高かった。PrfA* G155Sワクチン株で免疫化したマウスでは、LLO特異的CD4+T細胞応答はその他のワクチン株に比べて2倍増加した。
PrfA* G155SはKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンの免疫原性を増加させる
本発明者らは、PrfAの恒常的活性化およびPrfAレギュロンの導入が、空胞からの逃避の増進および抗原提示細胞の細胞質中での異種抗原発現レベルの増加を含めた様々な機構により、KBMAリステリア・モノサイトゲネスの免疫原性を向上させ得るという仮説を立てた。本発明者らは、CD8+T細胞効力および防御免疫には、免疫化リステリア・モノサイトゲネス株が細胞質にアクセスすることが必要であることを既に実証した(5)。KBMAワクチン株は、細胞質中では増大することができないため、LLOおよびホスホリパーゼCの発現増加による食胞からの逃避効率の増加が、ワクチン効力を増強させる可能性がある。
KBMAリステリア・モノサイトゲネス株に対する先天性および後天性免疫を評価するために、C57BL/6マウスを、十分に耐容される用量である1×108粒子のIVにより免疫化した。既に記載されているように、本発明者らは、10−logの殺作用のリステリア・モノサイトゲネスワクチン調製物を生じる光化学的不活性化条件を用いた(9)。したがって、個々のマウスが1個の弱毒化リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB菌を受け取る可能性は、非免疫化用量である10−2であった。感染後最初の8時間の間、血清サイトカイン/ケモカインレベルを測定した。この時間帯には応答ピークが含まれることを本発明者らが以前の実験で観察しており、そしてこのピークは24時間以内にバックグラウンドレベルに戻った(6)。KBMA PrfA*ワクチン株は、WT prfAを有するKBMAワクチンにより誘導されレベルよりも高いレベルのMCP−1、IL−12p70およびIFN−γを誘導した(図3A)。3つのPrfA*株間で有意な差は見られなかったが、KBMA PrfA* G155Sワクチンにより誘導されたサイトカインのレベルは、KBMA PrfA* G145SまたはY63Cワクチンにより誘導されたレベルよりも高い傾向にあった。
本発明者らは、2週間の間隔で2回のワクチン接種を受けたC57BL/6マウスにおける同系KBMAワクチン株の免疫原性を比較した。5つのQuadvacエピトープに特異的な二次抗原特異的CD8+T細胞応答の最も高い度数が、KBMA PrfA* G155S免疫化マウスにおいて観察された(図3BおよびC)。全体的にCD8+応答の度数は、KBMA WT prfAに比べ、他の2つのKBMA PrfA*ワクチン株で免疫化したマウスにおいて高かったが、このことは、評価したすべてのCD8T細胞エピトープに当てはまるわけではなかった(図3BおよびC)。興味深いことに、弱毒化生ワクチン株とは対照的に、KBMAリステリア・モノサイトゲネスPrfA*株で免疫化したマウスの中では、KBMA PrfA*ワクチン株で免疫化したマウスLLO−特異的CD4+T細胞応答の度数は高い方ではなかった。このように、prfA G155S対立遺伝子は、弱毒化生およびKBMAワクチン株の両方に最も高い免疫原性をもたらした。
KBMA PrfA* G155Sワクチンは免疫効力を増大させた
誘導性T細胞応答の度数は、必ずしもその応答の効力を表すものではないことが十分に立証さている。ワクチン誘導性CD8+T細胞応答の効力を評価するために、本発明者らは、2つのワクチニアエピトープであるA42RおよびB8Rに特異的なインビボ細胞溶解活性を評価した。C57BL/6マウスを4つの同系KBMAリステリア・モノサイトゲネス株で2回免疫化した。本発明者らは、2つの別の免疫化経路、すなわち静脈内(IV)および筋肉内(IM)により免疫原性を評価した。本発明者らは、従来の接種経路により投与された場合のKBMA PrfA*ワクチン株の効力を評価するために、IM免疫化を評価した。KBMA PrfA*またはWT prfAワクチンで免疫化した全群において、強力なB8Rエピトープに特異的なインビボ細胞傷害性により測定される強い応答が観察された。標的殺作用の程度は、IVで免疫化したマウスでの方がわずかに高かった(図4Aおよび4B)。IVまたはIMによりKBMA PrfA* G155Sで免疫化したマウスにおいて、A42Rワクチニアウイルスエピトープに対する強力な殺作用活性も誘発された。しかし、野生型PrfAに基づきかつIMで投与されたKBMAワクチンにより誘導された、A42Rに対する殺作用活性は、PrfA* G155Sに比べて2倍低下していた。G145SまたはY63Cに基づくKBMAワクチンは、IM経路で投与された場合、中程度の効力であった(図4B)。用量応答実験では、WT prfAを保持するKBMAで免疫化したマウスに比べ、KBMA PrfA* G155SのB8R応答を誘導する高い効力が見られた(図4C)。
ワクチン誘導性T細胞効力の適切な尺度は、生きた病原体による抗原投与に対する防御免疫である。本発明者らは、KBMA PrfA* G155SまたはWT prfAで免疫化したマウスにおけるT細胞効力を、WTリステリア・モノサイトゲネスまたはワクチニアウイルスでの抗原投与により評価した。ファゴリソソームから逃避できないリステリア・モノサイトゲネスの菌株は防御免疫を誘導できないが、二次抗原刺激で増大し得る抗原特異的T細胞応答は誘発される(5、20)。本発明者らは、KBMA Lmに基づくワクチン投与により、致死的な野生型リステリア・モノサイトゲネス抗原投与に対する一過性の防御が生じることを既に記載した。誘導されたT細胞応答は、時間とともに減弱し、CD4+T細胞補助の非存在下で誘導されたT細胞応答を連想させる(3、45)。KBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB/ΔuvrABでのマウス免疫化により、14日目に2logの防御が生じた。KBMA PrfA* G155Sワクチン誘導性適応応答の効力を評価するために、マウスを1×108粒子で1回免疫化し、14日後に2×LD50の野生型リステリア・モノサイトゲネスで抗原投与した。3日後に、脾臓および肝臓(データ不掲載)におけるコロニー形成単位(cfu)を測定した。Dに示されるように、野生型リステリア・モノサイトゲネスからの防御は、KBMA PrfA* G155S免疫化マウスにおいて、WT prfAを有するKBMAに比べ3log向上した。
次に本発明者らは、KBMA PrfA* G155Sの免疫効力増強が、ワクチニアウイルス抗原投与にも拡張されるか否かを判定した。C57BL/6マウスを2週間間隔で、KBMA PrfA* G155SもしくはWT prfAワクチンまたはWT prfAを保持しかつQuadvacAgをコードしないKBMA対照により、IM経路で2回免疫化した。防御記憶免疫を評価するために、最後の免疫化の30日後に、マウスに1×107pfuのワクチニアウイルスによる抗原投与を行い、その5日後にマウス卵巣のウイルス力価を測定した。様々なワクチニアウイルスエピトープに対して誘導されたT細胞応答の度数向上と一致して、KBMAリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB株を背景とするPrfA* G155S変異リステリアを投与したマウスにおいて、ウイルス抗原投与に対して2logの統計的に有意な防御向上が見られた。
これらの結果は、PrfA* G155Sが、弱毒化生およびKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンに免疫効力増加をもたらし、かつ注目すべきことに、厳密な感染症抗原投与モデルにおいて、従来の免疫化経路で防御免疫を誘発する能力をKBMAワクチンにもたらすことを実証する。
考察
弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスに基づくワクチンプラットフォームは、強力な先天性免疫および後天性細胞性免疫を刺激するという固有の性質のため、臨床的に開発および評価されているところである(clinicaltrials.gov識別番号NCT00327652およびNCT00585845)。実施例1の実験では、本発明者らは、マウスへのワクチン接種前のPrfAレギュロン活性化が、同系の野生型細菌性病原体およびワクチニアウイルスによる抗原投与に対する防御の向上と関連した、弱毒化生およびKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチン誘導性の先天性/細胞性免疫のレベルを有意に増強したことを示す。これらの結果は、臨床へと発展する将来のLmに基づくワクチンにprfA G155S対立遺伝子を含めるための理論的根拠の基礎をなす。
弱毒化生およびKBMAワクチンの両方に対する免疫効力が、免疫化前のprfAレギュロン活性化により有意に増強された。PrfA*による免疫グロブリン効力の増強は、KBMAワクチンでより明白であった。本発明者らは、野生型L.モノサイトゲネスによる抗原投与に対する防御細胞性免疫を誘発するのに必要な抗原提示細胞におけるIFN−βおよび他の活性化シグナルの誘導に向けて不可欠な段階である、ファゴリソソームからの逃避を、KBMAワクチンが不活化されていても依然行うことを既に示した(5、9、30)。しかし、KBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンは、α−CD40Abによりもたらされる代替援助と組み合わせて投与された場合または同種の初回・追加免疫化法を用いた場合にのみ、単回免疫化後に防御免疫を誘発することができる(5)。これらの結果は、KBMAワクチンに対する免疫効力が弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlBワクチン株に比べて減少していることが、野生型L.モノサイトゲネスのように、単回免疫化後に防御免疫を誘発し得ることを実証している。生リステリア・モノサイトゲネス株は、インビトロ感染マクロファージの細胞質中で7時間で100倍に増大して(図1D)、PrfAの完全な活性化をもたらし、actAプロモーターにより駆動されるコード抗原を含むprfA依存性遺伝子の発現を誘導した。したがって、様々な弱毒化生ワクチン間での免疫効力の違いが、KBMA PrfA*ワクチン株で見られたものほど顕著でなかったのは驚くべきことではない。KBMAワクチンは、免疫化された宿主の細胞内では増殖することができず、非複製ベクターの条件下では、ワクチン接種前のPrfAレギュロン導入およびコードAgの発現が免疫効力を有意に増強した。
最近公表された研究では、野生型リステリア・モノサイトゲネス株10403の免疫原性が、未知の活性化prfA変異を含む異なる野生型リステリア・モノサイトゲネス株43251と比較された(42)。この研究では、異なる野生型リステリア・モノサイトゲネス株を使用したため、リステリア・モノサイトゲネス株がLLOおよびp60特異的免疫の増強および野生型リステリアの抗原投与に対する防御の増加を誘発したものの、基礎となる機構およびヒトにおける試験に適した組換え弱毒化ワクチンプラットフォームへの可能な応用に関して結論を出すことは難しい。さらに、組換えリステリア・モノサイトゲネスワクチン株において発現された異種抗原の免疫原性に対する恒常的PrfA活性化の影響は、この研究では評価されなかった。
KBMA PrfA*に基づくワクチンの免疫効力増強は、いくつかの独立した機構によるものであろう。寄与因子には、最終的にMHCクラスI分子上で提示されるエピトープ密度の増加およびCD8+T細胞の刺激効率の向上をもたらす、ファゴリソソームからの逃避効率の増加ならびに細胞質中のAg発現および分泌が含まれ得る。PrfA依存性毒性遺伝子の過剰発現が、細胞毒性を増加させ、野生型株の毒性減少およびワクチン効力の減少をもたらし得る(10、17、46)のに対し、この機構は、J774細胞での等しい細胞内増殖により示されるように(図1E)、本研究で使用したワクチン株の相対的免疫原性に影響を与えなかったと思われる。他の可能性としては、感染部位での炎症性サイトカイン環境の改善またはe−カドヘリンDC−DC接着のInlA仲介性の崩壊増加による、PrfA*ワクチンで免疫化した動物での樹状細胞(DC)のリンパ節への移動増強を挙げ得る(22)。InlAとマウスE−カドヘリンとの結合がそのヒトホモログとの結合に比べて減弱しても(24、29)、PrfA*株からのInlAレベルの増加が依然この過程を増強し得る。その一方で、KBMA PrfA*ワクチンの免疫効力増強は、宿主範囲の拡大または標的細胞感染の増強によるものではなかったと思われる。注目すべきことに、経口感染にとって重要であるにもかかわらず、InlAは、本研究で用いられた筋肉内または静脈内経路では、非食細胞感染の仲介において同様の重要な役割は果たしていない。さらに、肝細胞増殖因子受容体を介したInlB仲介性の肝細胞感染は無関係であり、それは、この毒性決定因子が本研究で使用されたワクチン株から欠失していたからである。この見解は、培養マクロファージまたは樹状細胞の感染が、試験されたすべてのワクチン株の間で区別不可能であったという観察結果(図1Cおよび1D)、およびリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB PrfA*株の毒性が、野生型L.モノサイトゲネスに比べて3logを超えて弱毒化されているリステリア・モノサイトゲネスΔactA/ΔinlB親株よりも2〜4倍しか増加しなかったという観察結果(10)(表5)を合わせたものにより支持される。
ここに示される結果が、リステリア・モノサイトゲネスワクチンの効力を増加させるためにPrfAレギュロンの活性化が重要であることを実証しているが、ブロス培養において観察されたAgの過剰発現は、免疫効力増強と必ずしも関連しなかった。特筆すべきことに、prfA G155S、G145SおよびY63C変異は、すべてブロス培養で増殖させたワクチン株のPrfA依存性Ag発現の高い(かつ同等の)過剰発現をもたらしたのに対し、PrfA* G155Sワクチン株においてのみ免疫効力が有意に増加した。宿主−病原体反応は、定義によれば複雑で多因子性の過程であるため、PrfA依存性発現の増強が最適な免疫原性と必ずしも関連しなかったということは驚くべきことではない。PrfA依存性遺伝子の一過性の調節が、適切な細胞区画内で特定の細菌タンパク質の発現をもたらして発病を促進する。例えば、ActA発現が細胞質内で200倍に誘導されて、宿主細胞のアクチン重合および細胞間伝播を促進する(35、40)。本研究におけるAgは、ActAの最初の100アミノ酸とのN末端融合物として発現され、天然actAプロモーターにより駆動された。KBMAワクチンの場合、prfA G155Sが適切なレベルのPrfA依存性の誘導をもたらし効力を増強したが、光化学的に不活性化された細菌にとって十分な代謝経済のバランスを与えた。prfA L104Fを用いてPrfA依存性リステリア・モノサイトゲネスセクレトームを特徴付ける最近の研究において(34)、それまでその発現が活性化PrfAに関連していることが知られていなかった、いくつかのタンパク質が確認された。このデータは、野生型L.モノサイトゲネスの発病に関与する複数の細菌タンパク質の証拠を提供し、PrfA*変異体がリステリア・モノサイトゲネスワクチンの効力に複雑な影響を及ぼし得ることを示す。
リステリア・モノサイトゲネスワクチンによる前臨床研究の圧倒的大部分においては、IVまたは腹腔内投与が用いられてきた。IMおよび皮下免疫化経路を研究した報告はわずかである(10、15)。しかし、経口免疫化は、マウス、非ヒト霊長類およびヒトでの1研究において調査されている(2、8、29、33)。これまでに行われたまたは現在進行中のリステリア・モノサイトゲネスによる3つの臨床試験では、IV投与を用いている。KBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチンが、弱毒化生ワクチンに比べて向上したリスク対効果プロファイルを有し得るのに対し、従来の免疫化の投与経路は、特に予防的設定における広範な採用および/または承認のために必要であり得る。本発明者らは、初回・追加免疫化法により、KBMA PrfA* G155SワクチンがIM免疫化後に弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスワクチンに匹敵する機能的細胞性免疫を誘発したことをここに示す。
様々なprfA対立遺伝子を含む同系の弱毒化生およびKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチン群の免疫効力を評価することにより、本発明者らは、免疫化前のPrfAレギュロンの恒常的誘導が、機能的細胞性免疫を誘発する弱毒化生KBMAワクチンの能力を増強することを、従来の免疫化経路を用いて示した。
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実施例2
リステリア・モノサイトゲネス株であるΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB−HPV E7(BH1409)およびΔactA/ΔinlB/ΔuvrAB/PrfA* G155S−HPV E7(BH1633またはBH1733)の免疫原性を、弱毒化生またはKBMAワクチンとして比較した。
材料および方法
野生型および実施例1でQuadVacワクチンに関して記載されている、HPV E7を発現するPrfA* G155Sリステリア・モノサイトゲネス。
1×107CFUの弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスの単回投与または3×107粒子のKBMA Lmの2回接種によりC57BL/6マウスに静脈内接種した。初回接種の14日後にKBMAの追加ワクチン接種を施行した。最後の接種の7日後に脾臓を回収した。HPV E749−57特異的CD8+およびLLO190−201特異的CD4+T細胞をIFN−γELISpotまたは細胞内サイトカイン染色により測定した。
結果
Lmに基づくワクチンの免疫効力に対するPrfA* G155Sの影響を測定するために、WT prfAまたはPrfA* G155S変異を含むHPV E7発現リステリア・モノサイトゲネス株をC57BL/6マウスに接種した。最後の接種の7日後に脾臓を回収し、実施例1に記載されているように、E749−57およびLLO190−201特異的免疫応答をg−IFN−γELISpotまたは細胞内サイトカイン染色により測定した。弱毒化生リステリア・モノサイトゲネス(1×107CFU、i.v.)の単回接種または光化学的に不活性化されたヌクレオチド除去修復欠失リステリア・モノサイトゲネス(KBMA;3×107粒子、i.v.)の2回接種後に免疫応答を評価した。PrfA* G155Sを含むことにより、弱毒化生リステリア・モノサイトゲネスおよびKBMAリステリア・モノサイトゲネスワクチン株により誘導されるE7−特異的CD8+T細胞応答が共に著しく増強された(図5)。さらに、弱毒化生PrfA* G155S株接種後のCD4+LLO190−201特異的応答も、WT prfA株に比べて有意に増加した(図6)。
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイトおよびアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を共に含む)は、あらゆる目的でその内容全体が参照により本明細書に組み込まれ、その範囲は、個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイトおよびアクセッション番号/データベース配列がそのまま参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じである。

Claims (73)

  1. 組換えリステリア菌であって、
    (a)PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
    (b)(i)prfA応答性調節エレメントと、
    (ii)異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと
    を含む組換えポリヌクレオチドと
    を含み、
    前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記prfA応答性調節エレメントと作動可能に連結され、かつ前記異種ポリペプチドが非細菌性であるかまたは異種性感染性病原体である、組換えリステリア菌。
  2. 前記PrfA*変異体ポリペプチドが、Y63C、E77K、L149F、G145S、G155SおよびS183Aからなる群より選択される変異を含む、請求項1に記載の組換えリステリア菌。
  3. 前記PrfA*変異体ポリペプチドがG155S変異を含む、請求項2に記載の組換えリステリア菌。
  4. 前記組換えポリヌクレオチドが、シグナルペプチドと前記異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  5. 前記prfA応答性調節エレメントが、hlyプロモーター、plcAプロモーター、plcBプロモーター、mplプロモーター、hptプロモーター、inlCプロモーター、inlAプロモーター、inlBプロモーター、prfAプロモーターおよびactAプロモーターからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  6. 前記prfA応答性調節エレメントがactAプロモーターである、請求項5に記載の組換えリステリア菌。
  7. 前記シグナルペプチドが、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)由来のActAシグナルペプチド、リステリア・モノサイトゲネス由来のLLOシグナルペプチド、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来のUsp45シグナルペプチド、炭疽菌(Bacillus anthracis)由来の防御抗原シグナルペプチド、リステリア・モノサイトゲネス由来のp60シグナルペプチド、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)由来のPhoDシグナルペプチド、secA2シグナルペプチドおよびTatシグナルペプチドからなる群より選択されるシグナルペプチドである、請求項4に記載の組換えリステリア菌。
  8. 前記シグナルペプチドがリステリア・モノサイトゲネス由来のActAシグナルペプチドである、請求項7に記載の組換えリステリア菌。
  9. 前記融合タンパク質がActAの最初の100アミノ酸を含む、請求項4に記載の組換えリステリア菌。
  10. 前記異種ポリペプチドが、腫瘍関連抗原、腫瘍関連抗原由来のポリペプチド、感染症抗原および感染症抗原由来のポリペプチドからなる群より選択される抗原を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  11. 前記異種ポリペプチドが、K−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAおよびCEAからなる群より選択される抗原であるか、またはK−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAおよびCEAからなる群より選択される抗原に由来するポリペプチドを含む、請求項10に記載の組換えリステリア菌。
  12. 前記感染症抗原が、ウイルスあるいは肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)またはクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomaitis)からなる群より選択される異種性感染性病原体由来である、請求項10に記載の組換えリステリア菌。
  13. 前記感染症抗原が、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス由来である、請求項12に記載の組換えリステリア菌。
  14. 前記リステリア菌がリステリア・モノサイトゲネス種に属する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  15. 細胞間伝播、非食細胞内への侵入、増殖またはDNA修復の1つまたは複数に関して弱毒化されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  16. 前記リステリアが、
    a.actA変異、
    b.inlB変異、
    c.uvrA変異、
    d.uvrB変異、
    e.uvrC変異、
    f.核酸標的化化合物もしくは
    g.uvrAB変異と核酸標的化合物
    の1つまたは複数により弱毒化されている、請求項15に記載の組換えリステリア菌。
  17. 前記核酸標的化合物がソラレンである、請求項16に記載の組換えリステリア菌。
  18. 前記細菌が増殖に関して弱毒化されるように、前記細菌の核酸が、核酸と直接反応する核酸標的化合物との反応により改変されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  19. 前記細菌が、増殖に関して前記改変細菌を弱毒化する核酸架橋を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  20. 前記細菌が、増殖に関して前記細菌を弱毒化するソラレン−核酸付加物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌。
  21. 前記細菌が、その改変された核酸を修復する前記細菌の能力を減弱させる遺伝子変異をさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の組換えリステリア菌。
  22. 前記細菌が、actA、inlB、uvrAおよびuvrBに不活性化変異を含み、かつ前記細菌が、ソラレン−核酸架橋により増殖に関して弱毒化されている、請求項21に記載の組換えリステリア菌。
  23. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の組換えリステリア菌ならびに薬学的に許容される添加剤、アジュバントおよび共刺激分子の1つまたは複数を含む、医薬組成物。
  24. 前記組成物が治療剤をさらに含む、請求項23に記載の医薬組成物。
  25. 宿主における非リステリア抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、
    (a)PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
    (b)(i)prfA応答性調節エレメントと、
    (ii)異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと
    を含む組換えポリヌクレオチドと
    を含む組換えリステリア菌を含む有効量の組成物を宿主に投与することを含み、
    前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記prfA応答性調節エレメントと作動可能に連結され、かつ前記異種ポリペプチドが前記抗原を含む方法。
  26. 宿主における非リステリア抗原に対する免疫原性を増強する方法であって、
    (a)PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
    (b)(i)prfA応答性調節エレメントと、
    (ii)異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと
    を含む組換えポリヌクレオチドと
    を含む組換えリステリア菌を含む有効量の組成物を宿主に投与することを含み、
    前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記prfA応答性調節エレメントと作動可能に連結され、前記異種ポリペプチドが前記抗原を含む方法。
  27. 宿主における非リステリア感染または癌性状態を予防または治療する方法であって、
    (a)PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
    (b)(i)prfA応答性調節エレメントと、
    (ii)異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと
    を含む組換えポリヌクレオチドと
    を含む組換えリステリア菌を含む有効量の組成物を宿主に投与することを含み、
    前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記prfA応答性調節エレメントと作動可能に連結されている方法。
  28. 前記PrfA*変異体ポリペプチドが、Y63C、E77K、L149F、G145S、G155SおよびS183Aからなる群より選択される変異を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記PrfA*変異体ポリペプチドがG155S変異を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記組換えポリヌクレオチドが、シグナルペプチドと前記異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードする、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記prfA応答性調節エレメントが、hlyプロモーター、plcAプロモーター、plcBプロモーター、mplプロモーター、hptプロモーター、inlCプロモーター、inlAプロモーター、inlBプロモーター、prfAプロモーターおよびactAプロモーターからなる群より選択される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記prfA応答性調節エレメントがactAプロモーターである、請求項31に記載の方法。
  33. 前記シグナルペプチドが、リステリア・モノサイトゲネス由来のActAシグナルペプチド、リステリア・モノサイトゲネス由来のLLOシグナルペプチド、ラクトコッカス・ラクティス由来のUsp45シグナルペプチド、炭疽菌由来の防御抗原、リステリア・モノサイトゲネス由来のp60シグナルペプチド、バチルス・スブチリス由来のPhoDシグナルペプチド、secAシグナルペプチおよびTatシグナルペプチドからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
  34. 前記シグナルペプチドがリステリア・モノサイトゲネス由来のActAシグナルペプチドである、請求項33に記載の方法。
  35. 前記融合タンパク質がActAの最初の100アミノ酸を含む、請求項30に記載の方法。
  36. 前記異種ポリペプチドが非細菌性である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記異種ポリペプチドが、腫瘍関連抗原、腫瘍関連抗原由来のポリペプチド、感染症抗原および感染症抗原由来のポリペプチドからなる群より選択される抗原を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  38. 前記異種ポリペプチドが、K−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAおよびCEAからなる群より選択される抗原であるか、またはK−Ras、H−Ras、N−Ras、12−K−Ras、メソテリン、PSCA、NY−ESO−1、WT−1、サバイビン、gp100、PAP、プロテイナーゼ3、SPAS−1、B−raf、チロシナーゼ、mdm−2、MAGE、RAGE、MART−1、bcr/abl、Her−2/neu、アルファフェトプロテイン、マンモグロビン、hTERT(テロメラーゼ)、PSAおよびCEAからなる群より選択される抗原に由来するポリペプチドを含む、請求項37に記載の方法。
  39. 前記感染症抗原が、ウイルスあるいは肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)またはクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomaitis)からなる群より選択される異種性感染性病原体由来である、請求項37に記載の方法。
  40. 前記感染症抗原が、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス由来である、請求項39に記載の方法。
  41. 前記リステリア菌がリステリア・モノサイトゲネス種に属する、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  42. 前記リステリアが、細胞間伝播、非食細胞内への侵入、増殖またはDNA修復の1つまたは複数に関して弱毒化されている、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  43. 前記リステリアが、
    a.actA変異、
    b.inlB変異、
    c.uvrA変異、
    d.uvrB変異、
    e.uvrC変異、
    f.核酸標的化化合物もしくは
    g.uvrAB変異と核酸標的化合物
    の1つまたは複数により弱毒化されている、請求項42に記載の方法。
  44. 前記核酸標的化合物がソラレンである、請求項43に記載の方法。
  45. 前記細菌が増殖に関して弱毒化されるように、前記細菌の核酸が、核酸と直接反応する核酸標的化合物との反応により改変されている、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  46. 前記細菌が、増殖に関して前記改変細菌を弱毒化する核酸架橋を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  47. 前記細菌が、増殖に関して前記細菌を弱毒化するソラレン−核酸付加物を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  48. 前記細菌が、その改変された核酸を修復する前記細菌の能力を減弱させる遺伝子変異をさらに含む、請求項45〜47のいずれか1項に記載の方法。
  49. 前記細菌が、actA、inlB、uvrAおよびuvrBに不活性化変異を含み、かつ前記細菌が、ソラレン−核酸架橋により増殖に関して弱毒化されている、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  50. 前記免疫応答が先天性免疫応答である、請求項25または26に記載の方法。
  51. 前記免疫応答が後天性免疫応答である、請求項25または26に記載の方法。
  52. 前記組換えリステリア菌が、アジュバントおよび/または共刺激分子と共に投与される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  53. 前記組換えリステリア菌が、治療剤と組み合わせて投与される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  54. 前記組換えリステリア菌の投与が繰り返される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  55. 前記組換えリステリア菌の2回目の投与が、前記リステリア菌の最初の投与に続いて約2週間後に繰り返される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  56. 前記組換えリステリア菌の投与後に、生きている代謝的に活性なリステリアを含まず、かつ前記非リステリア抗原をコードするワクチンを投与する、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  57. 哺乳動物における非リステリア抗原に対する免疫応答を増強するための方法であって、
    前記哺乳動物に、前記非リステリア抗原をコードする請求項1〜22のいずれか1項に記載の組換えリステリアの有効量の追加免疫用量を投与することを含み、
    前記哺乳動物が、前記非リステリア抗原を提供するワクチンの有効量の初回刺激用量を既に投与されており、
    (a)前記ワクチンが、前記非リステリア抗原をコードする生きている代謝的に活性なリステリアを含まず、かつ
    (b)前記ワクチンが、前記非リステリア抗原をコードする裸のDNAを含む場合
    である方法。
  58. 前記抗原に対する前記免疫原性が、前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドを含む組換えリステリア菌により誘導される抗原の免疫原性に比べて増強され、前記異種ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドの発現が、野生型PrfAポリペプチドにより制御される、請求項26に記載の方法。
  59. 前記増強された免疫原性が、MCP−1、IL−6、IFN−γ、TNFαまたはIL−12p70の1つまたは任意の組合せの発現増加を含む、請求項26に記載の方法。
  60. 前記宿主がヒトである、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  61. 組換えリステリア菌を調製する方法であって、
    異種ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドをリステリア菌内に安定に導入することを含み、
    前記リステリア菌が、PrfA*変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ
    前記異種ポリペプチドが非細菌性であり、かつ
    リステリア菌内への導入後に、前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結される方法。
  62. 前記組換えポリヌクレオチドが、前記異種ポリペプチドと作動可能に連結された前記PrfA応答性調節エレメントを含む、請求項61に記載の方法。
  63. 前記組換えポリヌクレオチドが、シグナルポリペプチドと前記異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードする、請求項61に記載の方法。
  64. 前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、前記リステリア染色体内に組み込まれる、請求項61に記載の方法。
  65. 前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、前記リステリア染色体のtRNAarg遺伝子内に組み込まれる、請求項64に記載の方法。
  66. 前記シグナルポリペプチドがActAシグナルポリペプチドであり、かつ異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドがリステリアのactA遺伝子内に導入される、請求項63に記載の方法。
  67. 組換えリステリア菌を調製する方法であって、
    (a)PrfA*変異体ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドと、
    (b)異種ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドと
    が、リステリア菌内に安定に導入され、
    前記リステリア菌が非機能性のprfA対立遺伝子を含み、
    前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドの導入後に、前記核酸が、PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結される方法。
  68. 前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結される、請求項67に記載の方法。
  69. 前記組換えポリヌクレオチドが、シグナルポリペプチドと前記異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードする、請求項67に記載の方法。
  70. 前記PrfA*変異体ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、前記リステリア染色体内に組み込まれる、請求項67に記載の方法。
  71. 前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、前記リステリア染色体内に組み込まれる、請求項67に記載の方法。
  72. PrfA応答性調節エレメントと作動可能に連結された前記異種ポリペプチドをコードする前記組換えポリヌクレオチドが、前記リステリア染色体のtRNAarg遺伝子内に組み込まれる、請求項70に記載の方法。
  73. 前記シグナルポリペプチドがActAシグナルポリペプチドであり、かつ異種ポリペプチドをコードする前記核酸が前記リステリアのactA遺伝子内に導入される、請求項69に記載の方法。
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