ここで、流体吐出装置について説明する。図1に、例示的な流体吐出装置を示す。流体吐出装置100は、流体吐出モジュール、例えば、半導体加工技術を用いて製造されたダイ103であり得る四辺形の板形状のプリントヘッドモジュールを備える。流体吐出モジュールはまた、本明細書に援用される米国特許第7,052,117号明細書にも記載されている。流体吐出装置100から吐出される流体はインクであってもよいが、流体吐出装置100は他の液体、例えば、生物学的液体、電子部品の形成用液体にも好適であり得る。
各流体吐出装置はまた、ダイ103を支持しかつそれに流体を提供するハウジング110を、ハウジング110をプリントバーに連結する取付枠142、及び外部プロセッサからデータを受け取りダイに駆動信号を提供するフレックス回路201(図1B参照)等の他の構成要素と共に、有することができる。ハウジング110を、仕切り壁130によって仕切ることにより、入口室132と出口室136とを提供することができる。入口室132及び出口室136は各々、フィルタ133及び137を有することができる。入口室132及び出口室136には、それぞれ開口152及び156を介して、流体を搬送する配管162及び166を連結することができる。仕切り壁130を、ダイ103の上部のインターポーザアセンブリ146上に位置する支持体144によって保持することができる。
流体吐出モジュール103と任意のインターポーザアセンブリ146とを備える流体吐出アセンブリは、流体が入口室132から流体吐出モジュール103を通って出口室136まで循環することを可能にする、流体入口101及び流体出口102を有している。流体吐出モジュール103を通過する流体の一部が、ノズルから吐出される。
図1Bにおいて、流体吐出装置100がフレキシブルプリント回路又はフレックス回路201を有することを示すため、流体吐出装置のハウジング110の一部を省略している。フレックス回路201は、流体吐出装置100をプリンタシステム(図示せず)に電気的に接続するように構成されている。フレックス回路201を用いて、画像データ及びタイミング信号等のデータをプリンタシステムの外部プロセッサからダイ103に送信し、流体吐出モジュールの流体吐出素子を駆動する。フレックス回路201を用いて流体温度制御用のサーミスタを接続することも可能である。
図2において、流体吐出モジュール103は基板122を有することができ、そこには、ノズル126で終端する流体流路124が形成されている(図2には一つの流路しか示していない)。一つの流体路124は、インク供給部170(図2において符号170が付されている二つの領域は、図の紙面外を通る経路によって接続されることができる)と、上昇部172と、ポンプ室174と、ノズル126で終端する下降部176と、を有している。流体路は再循環路178を更に有することができ、それにより、流体が吐出されていない時であっても、インクがインク流路124を流れることができる。
基板122は、半導体加工技術、例えばエッチングにより流路が内部に形成されている流路体182と、ポンプ室174の一方の側を封止する、シリコン層等の膜180と、ノズル128が形成されているノズル層184と、を更に有することができる。膜180、流路体182及びノズル層184を、各々、半導体材料(例えば単結晶シリコン)から構成することができる。膜は、25μm未満、例えば約12μm等、比較的薄くてもよい。
流体吐出モジュール103はまた、対応する流体路124のノズル126から流体が選択的に吐出されるようにする、基板122上に支持されている個々に制御可能なアクチュエータ401も有している(図2には一つのアクチュエータしか示していない)。各流路124は、その関連するアクチュエータ401と共に、個々に制御可能なMEMS流体吐出ユニットを提供する。
実施形態によっては、アクチュエータ401の駆動により、膜180がポンプ室174内に変位し、流体がノズル126から押し出される。例えば、アクチュエータ401は圧電アクチュエータであってもよく、下部導電層190、圧電層192、及びパターニングされた上部導電層194を有することができる。圧電層192は、例えば約1μm〜25μmの厚さであってもよく、例えば、約8μm〜18μmの厚さであってもよい。或いは、流体吐出素子は加熱素子であってもよい。
図2及び図3において、流体吐出装置100は、一つ又は複数の集積回路素子104を更に有しており、集積回路素子104は、流体がダイ103からダイ103の下側に位置するノズルを通って吐出されるのを制御する電気信号を提供するように構成されている。集積回路素子104は、ダイ103以外のマイクロチップであってもよく、そのマイクロチップに、例えば半導体製造及び実装技法により、集積回路が形成されている。したがって、集積回路素子104の集積回路を、ダイ103の基板とは別個の半導体基板に形成することができる。しかしながら、集積回路素子104をダイ103に直接実装してもよい。
図2及び図4において、実施形態によっては、流体吐出装置100の流体吐出アセンブリは、流体をダイ103上の電気部品及び/又は集積回路素子104から分離する下部インターポーザ105を有している。流体吐出装置100は、流体を電気部品又は集積回路素子104から更に分離する上部インターポーザ106を有することができる。上部インターポーザ106と下部インターポーザ105との組み合わせを通る通路212及び216により、流体を、流体吐出装置100のハウジング内の入口室132及び出口室136の幾分か中心位置から、ダイ103の縁により近い流体入口412及び流体出口414まで、又はその逆に通すことが可能となる。更に、上部インターポーザ106と下部インターポーザ105との組み合わせを含む流体吐出装置は、下部インターポーザ105の長さが上部インターポーザ106の長さより短く、集積回路素子104を二つのインターポーザの間に置くことが可能となるため、より容易に製造することができる。
図1及び図4において、流体吐出装置100はまた、ダイキャップ107も有することができ、このダイキャップ107は、流体吐出装置100の空洞を封止し、かつダイ103と連動して使用される流体吐出装置の構成要素に接着領域を提供するように構成されている。ダイキャップ107はまた、インクを再循環させるバイパスもダイ103の上部に提供する。
図5及び図6に、それぞれ、回路を有する例示的なダイの部分平面図及び部分斜視図を示す。ダイ103上の複数のアクチュエータ401を、列方向に配置することができる(図5では、簡単にするためにアクチュエータの多くを省略している)。図5及び図6に示すアクチュエータ401は圧電素子であり、例えば、各アクチュエータは、二つの電極間に圧電層を有している。各アクチュエータ401について、電極、例えば上部電極194が、同様にダイ103上に位置する導電線407によって対応する入力パッド402に接続される(図5では、簡単にするために一つの導電線407しか示していない)。導電線407は、アクチュエータ401の列間に延在することができる。
実施形態によっては、アクチュエータ401の列の端部に、流体入口412が形成されている。列の反対側の端部には、ダイ103の最上部に流体出口414(図5及び図6には図示していないが、図3及び図4に示している)を形成することができる。流体入口と流体出口との一つの対が、流体吐出素子401の一つ、二つ又はそれより多くの列に対して機能することができる。上部インターポーザ106及び下部インターポーザ105を通る通路212及び216は、入口101をダイ103の入口412に、及びダイの流体出口414を出口102に流体接続する。更に、ダイ103の一つ又は複数の縁に沿って、入力導電線403が配置されている。入力導電線403は、約40μm以下のピッチを有することができ、例えば、36μmピッチ又は10μmピッチであってもよい。ダイ103の入力導電線403内に、フレックス回路201(図2参照)を接着することができる。例えば、フレックス回路201を、ダイ103の縁において入力導電線403の遠位端420に接続することができる(図5参照)。接着は、例えばペースト、例えば非導電性ペースト(NCP)又は異方性導電ペースト(ACP)を用いて行うことができる。
図2、図3及び図6に示すように、集積回路素子104を、入力導電線403と入口412又は出口414との間の細長い領域に延在する行方向において、ダイ103に実装することができる。例えば、集積回路素子104の第1行を、ダイ103に対し、ダイの一つの縁の入力導電線403と入口412との間の細長い領域に延在する第1行に実装することができ、集積回路素子104の第2の第1行を、ダイ103に対し、ダイの反対側の縁の入力導電線403と出口414との間の細長い領域に延在する行に実装することができる。
図3に、集積回路素子104が実装されている例示的なダイ103の斜視図を示す。上述したように、集積回路素子104は、ダイ103に実装される、別個に製造されたダイであってもよい。実施態様によっては、集積回路素子104は、特定用途向け集積回路(ASIC)素子である。集積回路素子104は、例えばダイ、パッケージ及びリードを有することができるチップであってもよい。集積回路素子104のボンドパッドをダイ103上の導電線に接続するリードは、半田バンプ(図2参照)又はワイヤボンドであってもよい。例えば、リードは、集積回路素子104のアルミニウムボンディングパッド上に直接電気めっきされた金バンプであってもよい。それらはまた、集積回路素子104の電気パッド上に直接電気めっきされた、半田キャップを備えた銅ピラーバンプであってもよい。
図7に示すように、集積回路素子104は、アクチュエータ401の動作を制御する信号を提供するように構成されている。例えば、集積回路素子104の集積スイッチング素子302、例えばトランジスタを、電気接点及びリードによってダイ上のアクチュエータ401に接続することができる。したがって、フレックス回路201からダイ103上の入力導電線403に信号が送られると、それは、集積回路素子104上の入力パッド301に送信され、集積回路素子104で、トランジスタ302等において処理され、出力パッド303に出力されてダイ103上の入力パッド402に至ることができ、入力パッド402は、アクチュエータ401を駆動するように入力導電線407により接続されている。
図6に示す集積回路素子104は、ダイ上の入力導電線403に接続されている入力パッド301(図7参照)を有している。例えば、集積回路素子104の入力パッド301を、入力導電線403の遠位端420と比べてダイ103の中心により近い、入力導電線403の近位端422に接続することができる。入力パッド301と入力導電線403とは、非導電性ペースト(NCP)、異方性導電ペースト(ACP)、又は集積回路素子104に対する半田バンプを用いて接続することができる。集積回路素子104の入力パッド301(図3B)は、ダイ103の入力導電線403とのより優れた電気接続を提供するように、集積回路素子104の底面にあってもよい。
図7に示すように、集積回路素子104はまた、出力パッド303(一つ又は複数の集積スイッチング素子302、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を介して集積回路素子104の入力パッド301に接続されている)も有している。更に、集積回路素子104上の出力パッド303は、ダイ103の入力パッド402に電気的に接続されている。出力パッド303を、NCP、ACP、又は集積回路素子104に対する半田バンプを用いて入力パッド402に接続することができる。集積回路素子104上の出力パッド303は、ダイ103上の入力パッド402とのより優れた電気接続を提供するように、集積回路素子104の底面にあってもよい。
上述したように、集積回路素子104は、集積スイッチング素子302を有している。各スイッチング素子は、一つのMEMS流体吐出ユニットの駆動電極を共通の駆動信号源に選択的に接続するオン/オフスイッチとして機能する。共通の駆動信号電圧は、一つ又は複数の集積回路入力パッド301、導電線403、及びフレックス回路201上の対応する導電線で伝達される。集積スイッチング素子302は、集積回路素子104の入力パッド301及び集積回路素子104の出力パッド303に接続されている。したがって、集積回路素子104は、入力パッド301と集積スイッチング素子302と出力パッド303との間等、内部に形成されている接続を有している。
図8に、フレックス回路201、集積回路104、及びダイ103の回路図を示す。集積回路104の入力パッド301は、クロックライン、データライン、ラッチライン、オールオンライン、及び4本の電源ラインを有することができる。フレックス回路201からの信号は入力パッド301を通じて集積スイッチング素子302に送られ、その集積スイッチング素子302は、データフリップフロップ、ラッチフリップフロップ、ORゲート、及びスイッチを有することができる。データがデータラインを通じてデータフリップフロップに送られることにより、信号が処理される。次に、データが入力されると、クロックラインがデータをクロックする。データは、第1フリップフロップに入るデータの最初のビットが、データの次のビットが入るときにシフトダウンされるように、連続的に入力される。全てのデータフリップフロップ(例えば64個の素子)がデータを含んだ後、ラッチラインを通じてパルスが送られ、データはデータフリップフロップからラッチフリップフロップにシフトされて流体吐出素子401に至る。ラッチフリップフロップからの信号がハイの場合、スイッチがオンされ、出力パッド303を通じて入力パッド402に信号が送られて、流体吐出素子401が駆動される。信号がローの場合、スイッチはオフのままであり、流体吐出素子401は駆動されない。
一つの集積回路素子104は、256個の集積スイッチング素子等、複数の集積スイッチング素子302を有することができる。集積スイッチング素子302の数は、ダイ103上のアクチュエータの数と同じであってもよく、又はその一部であってもよい。更に、実施形態によっては、集積スイッチング素子302の数は、集積回路104上の入力パッド301の数と等しい。実施形態によっては、各集積スイッチング素子302は、二つ以上の出力パッド303と電気的に連通している。
全ての集積回路素子104上にある出力パッド303の総数は、ダイ103上の入力パッド402及び関連する流体吐出素子401の数に対応する。また、例えば、ヒータ、温度センサ、及び接地等、更なるパッドを使用してもよい。一つのダイ103上に二つ以上の集積回路素子104がある場合、集積回路素子104上の出力パッド303の数は、流体吐出素子401の数の一部である。例えば、ダイ103上に4個の集積回路素子104があり、ダイ103上に1024個の流体吐出素子401がある場合、各集積回路素子104は256個の出力パッド303を有することができる。
ダイ103上の各入力パッド402は、集積回路素子104上の対応する出力パッド303と電気的に接続される。しかしながら、接続されない、又は接地等の他の素子と接続される更なる出力パッド303があってもよい。対応する入力パッド402と出力パッド303との対の各々は、互いに隣接して位置し、そのためそれらを互いに組み合わせて電気的に接続することができる。同様に、ダイ103上の各入力導電線403は、集積回路素子104上の対応する入力パッド301と電気的に接続される。対応する入力導電線403と入力パッド301との対の各々は、互いに隣接して位置し、そのためそれらを互いに組み合わせて電気的に接続することができる。
実施形態によっては、ダイ103上の入力導電線403の数は、ダイ103上の入力パッド402及び関連するアクチュエータ401の数より少ない。更に、少なくとも1本のシリアルデータライン、1本のクロックライン、及び1本のラッチラインを使用して複数の集積スイッチ素子302、例えば64個の素子を制御することにより、フレックス回路201から信号を受け取る入力導電線403を少なくすることができる。
有利には、ダイ103上の入力導電線403を、集積回路素子104又は吐出素子401上の出力パッド303より少なくすると、流体吐出モジュール上に高密度のノズル行列を形成することができる。図9に示すように、高密度行列は、行方向及び列方向に配置されたノズル及び/又は圧電アクチュエータを有することができる。例えば、ノズルは32行×64列の行列状に配置することができる。媒体がプリントバーの下側を通過するとき、ノズルは流体を単一パスで媒体上に吐出し、それにより600dpiより高い、1200dpi以上等の密度、すなわち印刷解像度で媒体上に一列の画素を形成することができる。
600dpiより高い、1200dpi以上等のプリンタ解像度を実現するには、1平方インチ未満の中に550〜60,000個のノズル及び/又は圧電アクチュエータ401、例えば2,000個のノズル及び/又はアクチュエータがあってもよい。ノズル及び/又はアクチュエータを含む領域、例えば流体入口と出口との間の領域は、長さが1インチより長く、例えば約44mmの長さで、かつ幅が1インチ未満、例えば約9mmの幅であってもよい。
ノズルからは、粒径が0.01pL〜100pL、例えば2pLの流体液滴を吐出することができる。例えば、約12.5μm×12.5μmの面積を有するノズルから2pLの流体が吐出される場合、1平方インチ未満の領域内に2,048個のノズル及び/又はアクチュエータがあってもよい。0.01pLの流体液滴径を用いて、1平方インチ未満の中に約60,000個のノズル及び/又はアクチュエータがあってもよい。同様に、100pLの流体液滴径を用いて、1平方インチ未満の中に約550個のノズル及び/又はアクチュエータがあることも可能である。一部には、独立して駆動可能なアクチュエータと比べて入力導電線が少なくてよいため、ノズルのかかる高密度、ひいては単一パスの解像度を実現することができる。
ダイ103の表面のうちノズルを含む面積は、例えば約43.71mm×15.32mmであってもよく、集積回路素子104、導電線403、並びにインク入口101及び出口102のためのスペースを備えるよう、ダイ103に隣接するノズル行列の面積より大きくてもよい。高密度行列は、細い流路をエッチングすることができるシリコン基板を用い、かつ圧電アクチュエータをエッチングすることにより、高めることができる。圧電アクチュエータのエッチングは、参照により本明細書に援用される、2008年5月22日に出願された米国仮特許出願第61/055,431号明細書に更に記載されている。
この高密度ノズル行列は、例えば、フレックス回路及びダイの双方における高密度の電気接点によって生じ得る電気接続の問題を抱えることなしに、フレックス回路と電気的に接続することができる。ダイ上の電気接点のピッチは、各吐出素子それぞれについてフレックス回路とダイとの間に電気接点が必要となった場合に必要となるであろうほど細かくはない。
二つの構成要素上の接点が少ない、又は接点のピッチが大きいことにより、密に実装された接点と比べて互いの整列が容易となるのみならず、構成要素の材料の熱係数が異なることに起因するピッチの任意の変化の影響を低減することもできる。実施形態によっては、ダイ103はシリコンで形成され、フレックス回路201はポリイミド等のプラスチック基板上に形成される。フレックス回路201が加熱されると、プラスチックは収縮する傾向がある。一方、シリコンは、温度変化に起因してサイズが変化することがそれほどなく、又はサイズが変化する程度がプラスチックとは異なる。フレックス回路201及びダイ103が加熱されると、二つの材料間の熱膨張の違いにより、導電線のピッチは、一方の構成要素において他方の構成要素より大きく変化し得る。一体に接着される二つの構成要素に必要な導電線を減らし、かつ導電線を太くすると、ダイを形成する材料とフレックス回路の材料との間の熱膨張の任意の差、例えば構成要素の一方の膨張又は収縮によって二つの構成要素上の導電線に整列不良が起こる可能性は、低くなり得る。
実施形態によっては、ダイ103等の、構成要素の一方の導電線が、他方の構成要素の導電線より広径に形成され、但し、短絡又は導電線間のクロストークを防止するのに十分な導電線間の非導電性空間は、なお有する。NCP又はACPは、ボンドを固化させるために加熱を必要とし得る。したがって、ダイ又はフレックス回路上の導電線が少ないということは、つまり、ボンドを固化させるための材料の加熱に起因する膨張又は収縮について考慮することなく、NCP又はACPをフレックス回路のダイとの接着に使用できることを意味する。約25μm以上のピッチを有するフレックス回路が、膨張又は収縮について考慮することなくNCP又はACPと共に使用することができる。
集積回路素子104は、シリコン等の、ダイと同様の熱膨張率を有する材料で作製されるか、又はセラミック基板を有するハイブリッド回路であってもよい。したがって、集積回路素子及びダイが加熱されると、双方の構成要素のいずれも、互いに対するサイズの変化がほとんどないか、サイズが変化しないか、又は互いに同じ量だけ変化する。
更に、ダイ103上の入力パッド402は入力導電線403より多いため、入力パッド402は、一般に入力導電線403より細かいピッチを有する。同様に、集積回路素子104は、同様に細かいピッチを有する一組の出力パッド303を有する。したがって、ダイ103と集積回路素子104とは、例えばNCP又はACP等のペーストで一体に接着されることができる。有利には、ダイ103と集積回路素子104とは、材料の熱膨張の差が原因となって発生し得るいかなる間隙又は整列不良も最小限に抑えるため、熱膨張の差が小さい材料で形成することができる。実施形態によっては、集積回路素子104とダイ103とは同じ材料で形成される。したがって、接着に起因してダイ上の入力パッドと集積回路素子上の出力パッドとの間に生じる間隙を軽減し、又はなくすことができる。
図6に戻ると、流体吐出装置は、流体吐出素子401を外部環境から分離するインターポーザ105を有している。インターポーザ105を、二つの構成要素間の応力を防止するために、シリコン等、ダイ103と同一又は同程度の熱膨張率の材料から作製することができる。必須ではないが、流体吐出装置は上部インターポーザ106を更に有することができる。
図2及び図6に示すように、下部インターポーザ105は、本体430と、本体430から下方に突出するフランジ432と、を有することができ、フランジ432は、例えば入口412及び出口414を越えて、集積回路素子104とアクチュエータ401との間の領域においてダイ103と接触する。特に、各入口412及び出口412に対してフランジ432があってもよく、フランジ432内を通路212及び216が延在している。フランジ432は、ダイ103の上方に本体430を保持することにより空洞434を形成している。これにより、本体430がアクチュエータ401と接触してその動きを干渉することがない。実施態様(図2に示す)によっては、膜層180、並びに存在する場合はアクチュエータ401の層を通じる開口が形成されており、フランジ432が流路体182と直接接触する。或いは、フランジ432は、膜180又は基板122を覆う別の層と接触することができる。更に、実施態様によっては、いくつかのフランジは、アクチュエータ401の行の間で導電線407を越えてダイと接触するように延在している。
インターポーザ105は、流体吐出素子(例えば、BCB等の接着剤、導電電極、圧電材料等)を電気的にも、及び熱的にも絶縁し、更には流体入口101又は流体出口102から流れ込んでくる任意の周囲の流体からも隔離することができる。
下部インターポーザ105は、例えば、SU−8、BCB、又はエポキシ、例えばEmerson & Cuming Eccobond(登録商標)E3032等の接着剤でダイ103と接着することができる。上部インターポーザ106は、例えば、SU−8、BCB、又はエポキシ、例えばEmerson & Cuming Eccobond(登録商標)E3032等の接着剤で下部インターポーザ105と接着することができる。更に、接着剤と共に接着促進剤(例えば、メタクリレート、メルカプトプロピルトリメチルオキシシランシラン(MPTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及びヘキサメチルジシラザン(HDMS)等のシラン)を使用して、ダイ103と下部インターポーザ105との間、及び下部インターポーザ105と上部インターポーザ106との間の接着性を向上させることができる。更に、インターポーザ105及び106並びにダイ103の表面をアルゴンで処理して、接着促進剤とインターポーザ105及び106並びにダイ103の表面との間の接着を強化することができる。接着剤及び接着促進剤は、スピンコーティング、蒸着、浴槽への部品の浸漬、スプレーコーティング、又はいずれかの他の公知の方法により、下部インターポーザ105、上部インターポーザ106、又はダイ103に塗布することができる。要素を一体に接着するとき、接着剤及び接着促進剤は、下部インターポーザ105、上部インターポーザ106、及びダイ103のうちの一つ又は複数に塗布することができる。
下部インターポーザ105をダイ103と接着するとき、下部インターポーザ105は、膜又はダイ103のベース基板等、総厚さ変動(TTV)が低い表面と接着することができる。膜又はベース基板は、例えばエッチング又は研削により加工することで、例えば、15μm以下、10μm以下、又は5μm以下の、TTVが低い所望の厚さを実現することができる。下部インターポーザ105をTTVが低い表面と接着することにより、均一な接着層がもたらされ、かつ流体吐出素子401又は集積回路素子104に損傷を引き起こし得るインク入口101又はインク出口102を通じた流体の漏出が防止される。
下部インターポーザ105とダイ103とが一体に接着されるとき、接着する表面積を最適化することによって接着を強化することができる。接着表面積が大きいほど、気泡が閉じ込められて、それにより接着が弱まり得る可能性が高まる。その一方で、接着表面積が小さ過ぎても、接着は同様に弱くなり得る。一実施態様では、下部インターポーザ105は、インク入口101及びインク出口102の周囲に、表面積が約120mm2以下のモノリシック表面を用いて接着されてもよい。
図11に示す実施態様によっては、下部インターポーザ105は、個々の入口101又は出口102(例えば64個の入口及び出口)の各々を取り囲む小さい接着表面積801を備えてもよい。例えば、下部インターポーザ105上の接着表面積は、正方形又は環形状等、入口101又は出口102の形状に適合する形状であってもよい。こうした小さい接着表面積801は、インク入口101面積の約25%以上、80%以上、150%以上、又は200%以上であってもよい。例えば、インク入口101の面積が約0.188mm2である場合、インク入口を囲む接着表面積801は約1.5mm2以下、0.325mm2以下、又は0.05mm2以下である。一実施態様では、ダイ103のベース基板の表面が露出するよう、ダイ103の膜を貫通して空洞が作製される。空洞のサイズは、各入口101及び出口102の周囲に接着する下部インターポーザ105の表面積801に、整列用のさらなる面積802を含めたものに相当する。例えば、各入口101又は出口102に対する下部インターポーザ105上の表面積は約0.15mm2であって、整列許容範囲802が約0.050mmであってもよい。
流体吐出モジュール103は、モジュールを通じてインクを再循環させるインク入口101及びインク出口102を有している。流体は、流体入口101を通じてモジュールに入り、流体出口102を通じて出ることにより再循環することができる。流体入口101及び流体出口102は、図3では双方とも直線状に並列に整列しているものとして示すが、それらは構成上、そのように限定されるものではない。ダイ103を通じて循環するインクの一部はノズル126を通じて吐出される。実施形態によっては、ノズル126は対応する流体吐出素子401の真下に位置する。
先述のとおり、実施形態によっては、図4及び図10に示すように、流体吐出装置は上部インターポーザ106を有することができる。上部インターポーザ106の短辺701又は幅は、必須ではないが、下部インターポーザ105の短辺より大きくてもよい。すなわち、上部インターポーザ106は下部インターポーザ105より幅広であってもよい。上部インターポーザ106と下部インターポーザ105とは同じ長さであってもよい。上部インターポーザ106は、下部インターポーザ105の上面及び集積回路素子104の上面に載置することができる。この構成により、例えば、上部インターポーザ106による保護はなおありながら、集積回路素子104を下部インターポーザ105のいずれの側にも配置可能となり、集積回路素子104のために一つの下部インターポーザ105をエッチングしたり、又はノッチを刻み込んだりする必要がなくなるため、製造プロセスが簡易となる。
図4及び図10に示すように、流体入口101及び流体出口102により、流体がインターポーザ及びダイ103を通じて流れることが可能となる。下部インターポーザ105を通じる流体入口101及び流体出口102の部分は、ダイ103の流体入口101及び流体出口102と整列する。上部インターポーザ106にある流体入口101及び流体出口102の部分は、下部インターポーザ105及びダイ103にある流体入口及び出口602の部分の位置と比べて、上部インターポーザ106の中心にずれていてもよい。有利には、この構成により、上部インターポーザ106はインターポーザの周辺部に入口及び出口を含まないことが可能となる。これにより、いずれの流体開口も塞ぐことなく、ダイキャップ107等の他の構成要素をインターポーザの周辺部に接着することが可能となる。更に、この構成により、流体入口101及び流体出口102が上部インターポーザ106の中心により近づくようにずれるため、ダイキャップをインターポーザと接着したことにより存在し得る過剰な接着剤が流体入口101及び流体出口102に流れ込むことが防止される。
図4において、実施形態によっては、上部インターポーザ106は、インターポーザの上面に形成された、インターポーザを通じて下方に延在する流体入口102を有する。流体入口101から延在する流体路610は、上部インターポーザ106の上面と垂直に延在することができる。上部インターポーザ106の底面、すなわち下部インターポーザ105と接触する表面に、流体路610の水平部分612があり、これは上部インターポーザ106の中心から離れ、上部インターポーザ106の周辺部に向かって延在する。実施形態によっては、水平部分612は上部インターポーザ106の底面にある。実施形態によっては、水平部分612は上部インターポーザ106に埋め込まれている。水平部分612の端部等、水平部分612の一部分が、流体路610の下部インターポーザ部分614と流体連結される。流体路610のうち、下部インターポーザ105の底部まで延在する部分は、ダイ103の上面にある入口と流体連通している。実施形態によっては、ダイ103の上面と反対側にあるダイ103の底面は、流体を吐出するノズル606を有している。図示はしないが、ダイの流体入口とダイの流体出口との間に、ダイの再循環路に沿って複数のノズルを形成することができる。
別の実施形態では、流体路610の水平部分は上部インターポーザ106に形成されるのではなく、下部インターポーザ105の上表面に形成される。実施形態によっては、上部インターポーザ106及び下部インターポーザ105は、各々が水平部分の一部を有する。実施形態によっては、流体路は、インターポーザ105及び106の上面及び底面に対して角度をなして形成される。
実施形態によっては、下部インターポーザ105は、間に接着層を含み、又は含まず、ダイ103と直接接触し、上部インターポーザ106は、間に接着層を含み、又は含まず、下部インターポーザ105と直接接触する。したがって、下部インターポーザ105は、ダイ103と上部インターポーザ106との間に挟装される。フレックス回路201は、ダイ103の上面でダイ103の周辺部に接着される。ダイ103に接着されているフレックス回路201の一部に、ダイキャップ107を接着することができる。フレックス回路201は、ダイキャップ107の底面を囲んで屈曲し、ダイキャップ107の外側に沿って延在することができる。集積回路素子104は、フレックス回路201と比べて、ダイ103の長さを通る中心軸等のダイ103の中心軸により近いところで、但し、下部インターポーザ105と比べてダイ103の周辺部により近いところで、ダイ103の上表面に接着される。実施形態によっては、下部インターポーザ105の側面は集積回路素子104に隣接し、ダイ103の上面と垂直に延在する。
本発明の好ましい実施形態について説明したが、それらは本発明の例示であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができる、ということは理解されなければならない。例えば、上記のアクチュエータは、ノズルと反対側のダイの上面にある圧電アクチュエータであり、アクチュエータは加熱素子であってもよく、及び/又はダイ103に埋め込まれてもよく、又はノズルに近接してもよい。