JP2007107058A - パターン形成方法及び液滴吐出ヘッド - Google Patents

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Abstract


【課題】 膜厚ムラがなく、かつめっき未析出部のないパターン形成方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明のパターン形成方法は、基板18上に、硫黄成分を含有する第1金属膜28を形成する第1金属膜形成工程と、第1金属膜28を触媒として無電解めっき処理を施し、第1金属膜28上に第2金属膜42を形成する第2金属膜形成工程と、を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出ヘッドに関する。
液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)においては、アクチュエータ基板と駆動する駆動回路とを接続するための配線を形成するが、この配線の形成方法としては、(1)フォトリソグラフィー法及び(2)無電解めっき法が挙げられる。以下、上記配線の形成方法について説明する。
(1)フォトリソグラフィー法による配線の形成方法では、封止基板表面にスパッタ、蒸着等によりNi−Crの金属薄膜を成膜し、ついで、Auの金属薄膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィー処理により、レジストを塗布・露光・現像し、配線に対応したレジスト形状にパターニングする。次に、ドライエッチングやウエットエッチングにより、上記レジストをマスクにしてAu及びNi−Crからなる金属薄膜を配線形状にパターニングする。その後、例えばOプラズマアッシング等の方法によりレジストを剥離除去することにより、封止基板上に配線パターン(膜パターン)を形成する。
(2)無電解めっき法による配線の形成方法では、封止基板上にスパッタ法、フォトリソグラフィー法により上述した金属薄膜を成膜し、その後、フォトリソグラフィー処理により、レジストを塗布・露光・現像し、配線に対応したレジスト形状にパターニングする。次に、ドライエッチングやウエットエッチングにより、上記レジストをマスクにしてAu及びNi−Crからなる金属薄膜を配線形状にパターニングし、レジストを剥離除去する。その後、無電解めっきにより配線形状にパターニングされた金属薄膜上に配線材料を析出させて、封止基板上に配線パターン(膜パターン)を形成する(例えば、特許文献1参照)。
特公昭61−31188号公報
無電解めっきの際の触媒として基板上に下地金属膜を形成するが、下地金属膜の成膜条件等のばらつきにより、下地金属膜の表面状態が局所的に異なる場合があった。つまり、成膜した下地金属膜は組成分布、異物、結晶状態、粒界の状態にばらつきがあった。また、レジスト残渣等表面汚染状態にばらつきもあった。この状態で、めっき処理を行うと、めっきが局所的に薄くなったり、めっきがつかない部分が出てしまった。特に、基板に開口部がある場合には、局所的な流れができて、ピンホール等のめっき未析出部、膜厚ムラ等が生じ、特性、歩留まりの低下の原因となった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に形成する配線パターンを膜厚ムラがなく、かつめっき未析出部がないパターン形成方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、基板上に、硫黄成分を含有する第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、前記第1金属膜を触媒として無電解めっき処理を施し、前記第1金属膜上に第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、を有することを特徴とする。
また本発明のパターン形成方法は、前記硫黄成分が前記第1金属膜と硫化物を形成していることも好ましい。
この方法では、第1金属膜中に硫黄成分を含有させるため、無電解めっき処理の際に第1金属の触媒性がより向上し、緻密かつ密着性の良い第2金属膜を形成することができる。その結果、ピンホール、めっき未析出、膜厚ムラ等の改善を図った第2金属膜を形成することができる。
また、上述したように、第1金属膜に硫黄を含有させることにより触媒性が向上するため、同時にめっき析出速度の向上を図ることができる。
さらに、パターンを第1金属膜と第2金属膜との2層構造とすることで、基板との密着性がよく、かつパターンの膜厚を厚くすることができ、よりパターンの抵抗値を下げることが可能となる。
これらの結果、電気的特性の向上、歩留まり向上、及び低コスト化を図ることができる。
なお、無電解めっきより形成する第2金属膜は、複数層から形成されても良い。これにより、上述した密着性・抵抗値の他、ワイヤボンディング性・耐薬品性、膜厚等要求特性の制御が可能となる。
また本発明のパターン形成方法は、基板上に第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、前記第1金属膜表面を硫化する硫化工程と、前記第1金属膜の硫化した表面を触媒として無電解めっき処理を施し、前記第1金属膜上に第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、を有することも好ましい。
また本発明のパターン形成方法は、前記硫化工程において、硫化ナトリウム又は硫化カリウムを水溶液中に溶解させ、前記第1金属膜が形成された前記基板を前記水溶液中に浸漬させて、前記第1金属膜の表面を硫化させることも好ましい。
さらに本発明のパターン形成方法は、前記硫化工程において、前記第1金属膜が形成された前記基板を、チオモリブデン酸イオン、チオタングステン酸イオン及び硫化水素の少なくとも一種以上を含有する水溶液に浸漬、又は硫化水素及び亜硫酸ガスの少なくとも一種以上からなる雰囲気中に曝すことも好ましい。
この方法では、第1金属膜表面を硫化させることにより、第1金属膜表面の触媒性がより向上し、緻密かつ密着性の良い第2金属膜を第1金属膜上に形成することができる。その結果、ピンホール、めっき未析出、膜厚ムラ等の改善を図った第2金属膜を形成することができる。
また、上述したように、第1金属膜表面を硫化させることにより触媒性が向上するため、同時にめっき析出速度の向上を図ることができる。
さらに、パターンを第1金属膜と第2金属膜との2層構造とすることで、パターンの膜厚を厚くすることができ、よりパターンの抵抗値を下げることができる。なお、無電解めっきにより形成する第2金属膜は、複数層から形成されても良い。これにより、上述した密着性・抵抗値の他、ワイヤボンディング性・耐薬品性、膜厚等要求特性の制御が可能となる。
これらの結果、電気的特性の向上、歩留まり向上、及び低コスト化を図ることができる。膜厚を厚くすることができる。
また本発明のパターン形成方法は、前記第1金属膜形成工程において、前記第1金属膜としてFe、Cu、Ni、Cr、Al、Ti及びWの群から選択される少なくとも一種以上の材料を用いて無電解めっき処理を行うことも好ましい。
この材料によれば、形成するパターンの抵抗値を調整することができるとともに、積層する金属膜表面との密着性の向上及び良好なめっき析出の選択性を図ることができる。
また本発明のパターン形成方法は、前記第2金属膜形成工程において、前記第2金属膜としてNi、Cu、Au、Ag、Co及びPdの群から選択される少なくとも一種以上の材料を用いて無電解めっき処理を行うことも好ましい。
この材料によれば、パターン形成部と非パターン形成部とにおいて容易にめっき析出の選択性をもたせることができるとともに、積層する金属膜表面の密着性の向上を図ることができる。
また本発明のパターン形成方法は、前記第1金属膜形成工程の前に、前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔を前記基板に形成する貫通孔形成工程を有することも好ましい。
この方法によれば、基板の上部と下部とに配設された電子部品等を、基板の貫通孔を介して接続することが可能となる。また、基板に貫通孔を形成した場合、貫通孔に第2金属膜材料を形成する無電解めっき液が流れ、形成する第2金属膜に局所的に膜ムラが発生するが、上述したように第1金属膜に硫黄成分を含有させることにより、第1金属膜の触媒性が向上し、第2金属膜の膜ムラの発生を防止することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドは、上記パターン形成方法により形成された前記第1金属膜及び前記第2金属膜からなる配線を有する封止基板を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、封止板には上述した方法によって形成された電気的特性の良い配線が形成されるため、誤作動のない高信頼性の液滴吐出ヘッドを提供することができる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
[第1の実施の形態]
まず、本実施形態の配線パターン形成方法について説明する。
図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)は、本実施形態の配線パターン形成方法の工程を示す図である。なお、本実施形態において、半導体基板18上にパターンを形成する領域をパターン形成部と称し、パターンを形成しない領域を非パターン形成部と称する。
まず、図1(a)に示すように、シリコンからなる半導体基板18(基板)を用意した後、半導体基板18の表面を熱酸化処理し、半導体基板18表面に絶縁材料からなるSiO膜(図示省略)を形成する。次に、後述するように半導体基板18の上面に実装される駆動回路と、半導体基板18の下面に設けられる圧電素子とを電気的に接続するために、半導体基板18の厚み方向に貫通する複数の貫通孔48を形成する。具体的には、半導体基板18上にレジスト(マスクパターン)を塗布し、露光、現像処理によりレジストを所定形状にパターニングする。その後、パターニングしたレジストをマスクとして、フッ酸によりSiO膜(熱酸化膜)を除去後、KOH等のアルカリ溶液でウエットエッチングすることにより半導体基板18に貫通孔48を形成する。続けて、再度、半導体基板18に熱酸化処理を施し、半導体基板18の全面にSiO膜(図示省略)を形成する。
次に、図1(b)に示すように、半導体基板18の一面側(後述する駆動回路を実装する面に対応する)の全面に鉄(Fe)に硫黄(S)を含有させた金属膜28aを成膜する。この金属膜28aの成膜は、例えばマグネトロンDCスパッタ装置を用い、ターゲットとしてはFe粉末にS粉末を添加したものを用いる。このとき、ターゲット中における硫黄の含有量は、0.01〜1%である。また、成膜する金属膜28aの膜厚としては例えば数100nmである。
なお、半導体基板18上に成膜する金属膜28aは、Feを主成分として、FeにSを含有させたが、主成分とする金属はFeに限定されることはない。例えば、Fe金属の他に、Ni、Cr、Cu、Al、Ti又はWから選択される単体の金属、又はこれらの合金を用いることも好ましい。これらの金属材料によれば、パターン形成部と非パターン形成部とにおいて容易にめっき析出の選択性をもたせることができるとともに、積層される金属膜28a表面の密着性の向上を図ることができる。
次に、図1(c)に示すように、半導体基板18に形成された金属膜28a上の全面にレジストを塗布し、このレジストを露光、現像処理する。これにより、非パターン形成部に対応した位置のレジストを除去(金属膜28a表面を露出)するとともに、パターン形成部に対応した位置のレジストを残すことで、形成する配線パターンに対応したレジストパターン38を形成する。
次に、図2(a)に示すように、上記レジストパターン38をマスクとして、例えば塩化第2鉄を用いたウエットエッチング処理を半導体基板18に施す。これにより、マスクに被覆されていない非パターン形成部に位置する金属膜28aが除去され、所定パターン(レジストパターン38と同じパターン)からなるFe−S膜28(第1金属膜)が形成される。ここで、Fe−S膜28中のFeとSとは互いに化合して硫化物を構成している。なお、エッチング処理においては、後述する無電解めっき処理の際に非パターン形成部に金属が析出しないように、非パターン形成部に位置する金属膜28aを完全に除去する必要がある。
次に、図2(b)に示すように、半導体基板18を剥離液(剥離液106:東京応化)に例えば10分程度浸漬させ、レジストパターン38を剥離する。なお、レジストの剥離方法としては、バレルアッシャーを用いたOプラズマアッシング等のプラズマ処理を採用することも可能である。
次に、図2(c)に示すように、無電解めっき処理によりFe−S膜28上にAu膜42(第2金属膜)を形成する。具体的には、Fe−S膜28が形成された半導体基板18を例えば亜硫酸浴からなる無電解Auめっき液に所定時間浸漬させる。すると、Fe−S膜28が触媒となり、Fe−S膜28上にAu金属が選択的に析出する。これにより、図2(c)に示すように、Fe−S膜28上に例えば膜厚0.3〜1.5μmのAu膜42が形成される。
なお、Fe−S膜28上に積層する膜の材料としては、上記Auに限定されることない。例えば、Ni、Cu、Au、Ag、Co及びPdの群から選択される単体の金属、又はこれらの合金または積層構造を用いることも好ましい。このような材料を用いることにより、形成するパターンの抵抗値を調整することができるとともに、積層するFe−S膜28表面との密着性の向上及び良好なめっき析出の選択性を図ることができる。さらには、ワイヤボンディング性・耐薬品性、膜厚等要求特性の制御が可能となる。
以上説明した工程により、半導体基板18のパターン形成部に、Fe−S膜28及びAu膜42の2層の積層構造を有する配線パターン46を得ることができる。
本実施形態によれば、Fe−S膜28中に硫黄成分を含有させるため、硫黄成分を含有しないFe膜より無電解めっき処理の際の触媒性が向上し、ピンホール、めっき未析出、膜厚ムラ等の改善を図ったAu膜42を形成することができる。特に、本実施形態のように、半導体基板18に貫通孔48を形成した場合、貫通孔48周辺部に局所的なめっき液の流れが生じ、形成するAu膜42に局所的に膜ムラが発生するが、上述したように下地膜(Fe膜)に硫黄成分を含有させることにより、触媒性が向上し、Au膜42の膜ムラの発生を防止することができる。
また、Fe−S膜28に硫黄を含有させることにより触媒性が向上するため、同時にめっき析出速度の向上を図ることができる。
さらに、配線パターン46をFe−S膜28とAu膜42との2層構造とすることで、配線パターン46の膜厚を厚くすることができ、より配線パターン46の抵抗値を下げることができる。
これらの結果、配線パターン46の電気的特性の向上、歩留まり向上、及び低コスト化を図ることができる。
ここで、本発明者は、下地Fe層に硫黄成分を含有しない場合(図5(a))と、下地Fe層に硫黄成分を含有させ、Fe−S膜とした場合(図5(b))のそれぞれにおけるAu膜42を比較した。その結果、図5(a)、(b)に示すように、硫黄成分を含有させた場合(図5(b))にはめっき未析出部分によるピンホール等が少ないことが明らかとなった。
[第2の実施の形態]
以下に本実施形態について図面を参照して説明する。
上記実施形態では、金属膜のスパッタ成膜時に、FeにSを含有させたターゲットを用いることにより金属膜の触媒性を向上させていた。これに対し、本実施形態では、半導体基板上に金属膜を形成した後、別途金属膜上に硫化処理を施すことにより、金属膜表面の触媒性を向上させている点において異なる。なお、その他の工程については、上記第1実施形態と同様であるため、図1及び図2を参照して共通の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
まず、図1(a)に示すように、半導体基板18に上述した方法により、複数の貫通孔48を形成する。
続けて、図1(b)に示すように、半導体基板18上にスパッタ法により金属膜28aを形成する。ここで、本実施形態では、上記第1実施形態と異なり、金属膜28a中には硫黄は含有しておらず、金属膜28aはFe金属のみから構成されている。
次に、図1(c)に示すように、半導体基板18に成膜された金属膜28a上に、形成する配線パターンに対応したレジストパターン38を形成する。
次に、図2(a)に示すように、上記レジストパターン38をマスクとして、例えば塩化第2鉄を用いたウエットエッチング処理を半導体基板18に施し、所定パターンからなるFe膜28を形成する。
次に、図2(b)に示すように、半導体基板18を剥離液(剥離液106:東京応化)に例えば10分程度浸漬させ、レジストパターン38を剥離する。
次に、半導体基板18上に形成されたFe膜28表面に触媒性向上処理を施す。具体的には、硫化ナトリウム又は硫化カリウムが溶解された水溶液中に、Fe膜28を形成した半導体基板18を浸漬させる。すると、水溶液中の硫化物イオンがFe膜28と反応し、Fe膜28表面が硫化される。このようにして、Fe膜28表面に触媒機能を付与する。
なお、他の方法として、Fe膜28を形成した半導体基板18を、チオモリブデン酸イオン、チオタングステン酸イオン、硫化水素の少なくとも一種以上を含有する水溶液に浸漬させることにより、Fe膜28表面を硫化させることも可能である。さらに、Fe膜28を形成した半導体基板18を硫化水素又は亜硫酸ガスの雰囲気中に曝すことにより、Fe膜28表面を硫化させることも可能である。
次に、図2(c)に示すように、無電解めっき処理によりFe膜28上にAu膜42を形成する。本実施形態では、Fe膜28及び硫化したFe膜28表面が触媒となり、Fe膜28上にAu金属が選択的に析出し、Fe膜28上にAu膜42が形成される。
以上説明した工程により、半導体基板18のパターン形成部に、Fe膜28及びAu膜42の2層の積層構造を有する配線パターン46を得ることができる。
なお、上述した触媒性向上処理工程は、図1(b)に示す半導体基板18上の全面に金属膜28aを成膜した後に行っても良い。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、Fe膜28表面を硫化させて、Fe膜28表面の触媒性を向上させることにより、Fe膜28の触媒性がより向上し、緻密かつ密着性の良いAu膜42を形成することができる。その結果、ピンホール、めっき未析出、膜厚ムラ等の改善を図ったAu膜42を形成することができる。
(液滴吐出ヘッド)
次に、上述したパターンの形成方法により形成された配線パターンを有する封止基板を備えた液滴吐出ヘッドについて図3を参照して説明する。
図3は、液滴吐出ヘッドHの断面構成図である。
液滴吐出ヘッドHは、インク(機能液)を液滴状にしてノズルから吐出するものである。図3に示すように、液滴吐出ヘッド1は、液滴が吐出されるノズル開口15を備えたノズル基板16と、ノズル基板16の上面(+Z側)に接続されてインク流路を形成する流路形成基板10と、流路形成基板10の上面に接続されて圧電素子(駆動素子)300の駆動によって変位する振動板400と、振動板400の上面に接続されてリザーバ100を形成するリザーバ形成基板(保護基板)20と、封止基板20上に設けられた前記圧電素子300を駆動するための駆動回路部(ドライバIC)200A〜200Bと、駆動回路部200A〜200Bと接続された複数の配線パターン(上述したパターン形成方法により形成されたパターン)34とを備えて構成されている。
液滴吐出ヘッド1の動作は、各駆動回路部200A〜200Bに接続された図示略の外部コントローラによって制御される。流路形成基板10には、複数の平面視略櫛歯状の開口領域が区画形成されており、これらの開口領域は、ノズル基板16と振動板400とにより囲まれて圧力発生室12を形成する。また、上記平面視略櫛歯状の開口領域のうち、封止基板20と流路形成基板10とにより囲まれた部分がリザーバ100を形成している。
流路形成基板10の図示下面側(−Z側)は開口しており、その開口を覆うようにノズル基板16が流路形成基板10の下面に接続されている。流路形成基板10の下面とノズル基板16とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。ノズル基板16には、液滴を吐出する複数のノズル開口15が設けられている。具体的には、ノズル基板16に設けられた複数(例えば720個程度)のノズル開口15はY軸方向(紙面と直交する方向)に配列されている。
圧力発生室12とノズル開口15とは、各々対応して設けられている。すなわち、圧力発生室12は、複数のノズル開口15に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。圧力発生室12は、X軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁10Kが形成されている。
複数の圧力発生室12の基板中央部側の端部は上述した隔壁10Kによって閉塞されているが、基板外縁部側の端部は互いに接続するように集合され、リザーバ100と接続されている。リザーバ100は、機能液導入口25と圧力発生室12との間で機能液を一時的に保持するものであって、封止基板20にY軸方向に延びる平面視矩形状に形成されたリザーバ部21と、流路形成基板10に形成された連通部13とから構成されている。そして、連通部13において各圧力発生室12と接続され、複数の圧力発生室12の共通の機能液保持室(インク室)を形成している。図3に示す機能液の経路をみると、ヘッド外端上面に開口する機能液導入口25より導入された機能液が、導入路26を経てリザーバ100に流れ込み、供給路14を経て、複数の圧力発生室12のそれぞれに供給されるようになっている。
流路形成基板10と封止基板20との間に配置された振動板400は、流路形成基板10側から順に弾性膜50と下電極膜60とを積層した構造を備えている。流路形成基板10側に配される弾性膜50は、例えば1〜2μm程度の厚さの酸化シリコン膜からなるものであり、弾性膜50上に形成される下電極膜60は、例えば0.2μm程度の厚さの金属膜からなるものである。本実施形態において、下電極膜60は、流路形成基板10と封止基板20との間に配される複数の圧電素子300の共通電極としても機能するようになっている。
振動板400を変形させるための圧電素子300は、下電極膜60側から順に圧電体膜70と、上電極膜80とを積層した構造を備えている。圧電体膜70の厚さは例えば1μm程度、上電極膜80の厚さは例えば0.1μm程度である。
なお、圧電素子300の概念としては、圧電体膜70及び上電極膜80に加えて、下電極膜60を含むものであってもよい。下電極膜60は圧電素子300として機能する一方、振動板400としても機能するからである。本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板400として機能する構成を採用しているが、弾性膜50を省略して下電極膜60が弾性膜(50)を兼ねる構成とすることもできる。
圧電素子300(圧電体膜70及び上電極膜80)は、複数のノズル開口15及び圧力発生室12のそれぞれに対応するように複数設けられている。
圧電素子300を含む振動板400上の領域を覆って、封止基板20が設けられており、封止基板20の上面(流路形成基板10と反対側面)には、封止膜31と固定板32とを積層した構造のコンプライアンス基板30が接合されている。このコンプライアンス基板30において、内側に配される封止膜31は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなり、この封止膜31によってリザーバ部21の上部が封止されている。他方、外側に配される固定板32は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さ30μm程度のステンレス鋼)からなる板状部材である。
この固定板32には、リザーバ100に対応する平面領域を切り欠いてなる開口部33が形成されており、この構成によりリザーバ100の上部は、可撓性を有する封止膜31のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部22となっている。
通常、機能液導入口25からリザーバ100に機能液が供給されると、例えば、圧電素子300の駆動時の機能液の流れ、あるいは、周囲の熱などによってリザーバ100内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ100の上部が封止膜31のみよって封止された可撓部22を有しているので、この可撓部22が撓み変形してその圧力変化を吸収する。従って、リザーバ100内は常に一定の圧力に保持される。なお、その他の部分は固定板32によって十分な強度に保持されている。そして、リザーバ100の外側のコンプライアンス基板30上には、リザーバ100に機能液を供給するための機能液導入口25が形成されており、封止基板20には、機能液導入口25とリザーバ100の側壁とを連通する導入路26が設けられている。
封止基板20は、流路形成基板10とともに液滴吐出ヘッド1の基体を成す部材であるから剛体とすることが好ましく、封止基板20を形成する材料として流路形成基板10と略同一の熱膨張率を有する材料を用いることがより好ましい。本実施形態の場合、流路形成基板10がシリコンからなるものであるから、それと同一材料のシリコン単結晶基板が好適である。シリコン単結晶基板を用いた場合、異方性エッチングにより容易に高精度の加工を施すことが可能であるため、圧電素子保持部24や溝部700を容易に形成できるという利点が得られる。その他、流路形成基板10と同様、ガラス、セラミック材料等を用いて封止基板20を作製することもできる。
封止基板20上には2個の駆動回路部200A〜200Bが配設されている。
駆動回路部200A〜200Bは、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されている。各駆動回路部200A〜200Bは、複数の接続端子(図示せず)を備えており、一部の接続端子が封止基板20上に形成された配線パターン34に対してワイヤーW1により接続されている。駆動回路部200A〜200Bの他の一部の接続端子は、封止基板20の溝部700内に配置された上電極膜80に対してワイヤーW2により接続されている。
封止基板20のうち、X軸方向に関して中央部には、Y軸方向に延びる溝部700が形成されている。
溝部700によってX軸方向に関し区画される封止基板20のうち、回路駆動部200Aと接続される複数の圧電素子300を封止している部分を第1封止部20Aとし、駆動回路部200Bと接続される複数の圧電素子300を封止ししている部分を第2封止部20Bとする。これらの第1封止部20A及び第2封止部20Bには、それぞれ圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する圧電素子保持部24が設けられている。圧電素子300のうち、少なくとも圧電体膜70は、この圧電素子保持部24内に密封されている。
第1封止部20Aの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の−X側の端部は、第1封止部20Aの外側まで延びて、溝部700の底面部に露出している。溝部700における流路形成基板10上に下電極膜60の一部が配置されている場合においては、上電極膜80と下電極膜60との短絡を防止するための絶縁膜600が、上電極膜80と下電極膜60との間に介挿されている。同様に、第2封止部20Bの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の+X側の端部が、第2封止部20Bの外側まで延びて、溝部700内に露出しており、この露出側の端部にも、上電極膜80と下電極膜60との間に絶縁膜600が介挿されている。
本実施形態では、配線パターン34、駆動回路部200A、200B等が設けられた封止基板20及び圧電素子300が設けられた流路形成基板10がそれぞれ本発明に係るデバイスの一部を構成し、これらのデバイスを組み立て、固定することにより、液滴吐出ヘッドHが製造される。
上述した構成を有する液滴吐出ヘッド1により機能液の液滴を吐出するには、当該液滴吐出ヘッド1に接続された外部コントローラ(図示略)によって機能液導入口25に接続された不図示の外部機能液供給装置を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口25を介してリザーバ100に供給された後、ノズル開口15に至るまでの液滴吐出ヘッド1の内部流路を満たす。
また外部コントローラは、封止基板20上に実装された駆動回路部200A、200B等に例えば配線パターン34を介して駆動電力や指令信号を送信する。指令信号等を受信した駆動回路部200A、200Bは、外部コントローラからの指令に基づく駆動信号を、各圧電素子300に送信する。
すると、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧が印加される結果、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体膜70に変位が生じ、この変位によって各圧力発生室12の容積が変化して内部圧力が高まり、ノズル開口15より液滴が吐出される。
本実施形態によれば、封止基板20には上述した方法によって形成された電気的特性の良い配線が形成されるため、誤作動のない高信頼性の液滴吐出ヘッド1を提供することができる。
(液滴吐出装置)
次に、上述した液滴吐出ヘッドHを備えた液滴吐出装置の一例について図4を参照しながら説明する。本例では、その一例として、前述の液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット式記録装置について説明する。
液滴吐出ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載されている。図4に示すように、液滴吐出ヘッドを有する記録ヘッドユニット61A及び61Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ62A及び62Bが着脱可能に設けられており、この記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63が、装置本体64に取り付けられたキャリッジ軸65に軸方向移動自在に取り付けられている。
記録ヘッドユニット61A及び61Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ66の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト67を介してキャリッジ63に伝達されることで、記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63がキャリッジ軸65に沿って移動するようになっている。一方、装置本体64にはキャリッジ軸65に沿ってプラテン68が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン68上に搬送されるようになっている。上記構成を具備したインクジェット式記録装置は、前述の液滴吐出ヘッドHを備えているので、小型で信頼性が高く、さらに低コストなインクジェット式記録装置となっている。
なお、図4では、本発明の液滴吐出装置の一例としてプリンタ単体としてのインクジェット式記録装置を示したが、本発明はこれに限らず、係る液滴吐出ヘッドを組み込むことによって実現されるプリンタユニットに適用することも可能である。このようなプリンタユニットは、例えば、テレビ等の表示デバイスやホワイトボード等の入力デバイスに装着され、該表示デバイス又は入力デバイスによって表示若しくは入力された画像を印刷するために使用される。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
パターンの形成工程を示す断面図である。 図1に続くパターンの形成工程を示す断面図である。 液滴吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。 液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。 (a)は第1金属膜に硫黄成分を含有させなかった場合、(b)は第1金属膜に硫黄成分を含有させた場合のAu膜の状態を示す図である。
符号の説明
18…半導体基板(基板)、 28…Fe−S膜(第1金属膜)、 38…レジスト、 42…Au膜(第2金属膜)、 46…配線パターン、 48…貫通孔

Claims (9)

  1. 基板上に、硫黄成分を含有する第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、
    前記第1金属膜を触媒として無電解めっき処理を施し、前記第1金属膜上に第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、
    を有することを特徴とするパターン形成方法。
  2. 前記請求項1において前記硫黄成分が前記第1金属膜と硫化物を形成していることを特徴とするパターン形成方法。
  3. 基板上に第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、
    前記第1金属膜表面を硫化する硫化工程と、
    前記第1金属膜の硫化した表面を触媒として無電解めっき処理を施し、前記第1金属膜上に第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、
    を有することを特徴とするパターン形成方法。
  4. 前記第1金属膜形成工程において、
    前記第1金属膜としてFe、Cu、Ni、Cr、Al、Ti及びWの群から選択される少なくとも一種以上の材料を用いて無電解めっき処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  5. 前記第2金属膜形成工程において、
    前記第2金属膜としてNi、Cu、Au、Ag、Co及びPdの群から選択される少なくとも一種以上の材料を用いて無電解めっき処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  6. 前記第1金属膜形成工程の前に、前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔を前記基板に形成する貫通孔形成工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  7. 前記硫化工程において、
    硫化ナトリウム又は硫化カリウムを水溶液中に溶解させ、前記第1金属膜が形成された前記基板を前記水溶液中に浸漬させて、前記第1金属膜の表面を硫化させることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  8. 前記硫化工程において、
    前記第1金属膜が形成された前記基板を、チオモリブデン酸イオン、チオタングステン酸イオン及び硫化水素の少なくとも一種以上を含有する水溶液に浸漬、又は硫化水素及び亜硫酸ガスの少なくとも一種以上からなる雰囲気中に曝すことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成方法により形成された前記第1金属膜及び前記第2金属膜からなる配線を有する封止基板を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014065313A (ja) * 2008-05-22 2014-04-17 Fujifilm Corp ダイと集積回路素子とを備える駆動可能デバイス
JP2017094676A (ja) * 2015-11-27 2017-06-01 京セラ株式会社 ノズルプレート、およびそれを用いた液体吐出ヘッド、ならびに記録装置

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