JP2007160645A - 配線構造、デバイス、デバイスの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置 - Google Patents

配線構造、デバイス、デバイスの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】段差のあるドライバICと駆動素子との間を断線することなく導通できる信頼性の高い、配線構造、デバイス、デバイスの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】下部基体10上に上部基体20が接合されていて、上部基体20の上面から上部基体20の側面を通って下部基体10の上面にまで配線34が引き回され、配線34により下部基体10の上面に設けられた第1導電部90と、上部基体20に設けられた第2導電部44とを電気的に接続する配線構造500aである。上部基体20と下部基体10との接合部に閉空間110が設けられていて、閉空間110が減圧されることにより、上部基体の下面と下部基体の上面とが密着されてなる。
【選択図】図4

Description

本発明は、配線構造、デバイス、デバイスの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置に関する。
画像の形成やマイクロデバイスの製造に際して液滴吐出法(インクジェット法)が提案されている。この液滴吐出法は、半導体デバイスにおける配線を形成するための材料を含んだ機能液を液滴状にして液滴吐出ヘッドより吐出し、基体上に所望の配線パターンを形成する方法である。
一般に、液滴吐出ヘッドは、ノズルに連通する圧力発生室と該圧力発生室間を連続させる連通部とを備えた流路形成基板(下部基体)と、この流路形成基板の一方の面側に設けられた駆動素子と、前記流路形成基板の前記駆動素子側に接合されて、前記駆動素子を駆動するためのドライバIC(半導体素子)を備えたリザーバ形成基板(上部基体)と、を備えていて、前記駆動素子と前記ドライバICとは配線によって電気的に接続されたものとなっている。ところで、上記液滴吐出ヘッドは、流路形成基板上にリザーバ形成基板が積層された構造となっていることから、前記流路形成基板上に設けられた駆動素子と前記リザーバ形成基板上に設けられたドライバICとの間には段差が生じている。そのため、前記ドライバICの接続端子と駆動素子に接続する配線部とを接続する際には、段差を介した配線接続を行う必要がある。
このような液滴吐出ヘッドの一例として、前記リザーバ形成基板に開口部を形成して、該開口部内に駆動素子に接続する配線部を露出させ、段差上部にあるドライバICの接続端子と、段差下部にある駆動素子の配線部との間を、前記開口部を通してワイヤーボンディングで導通させたものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ところで、近年、高精細な画素形成やマイクロデバイスの配線形成といった微細なパターン形成を行う際にも、液滴吐出法が用いられることから、このような微細化に対応すべく、液滴吐出ヘッドに設けられたノズル同士の間の距離(ノズルピッチ)をできるだけ小さく(狭く)形成することが要望されている。また、前記駆動素子はノズルに対応して複数形成されるため、ノズルピッチを小さくすると、そのノズルピッチに応じて圧電素子同士間の距離も小さくする必要がある。ところが、圧電素子同士の間の距離が小さくなると、それら複数の圧電素子に接続される各配線とドライバICとをワイヤボンディングによってそれぞれ接続させることが難しく、例えば隣接するワイヤーボンディングが接触して短絡するおそれがある。
特開2000−127379号公報 特開2000−135790号公報 特開2000−296616号公報
そこで、ワイヤーボンディングに代えて配線パターンを引き回すことが考えられ、その際、例えば前記開口部を形成した前記流路形成基板の内側面を傾斜面とし、前記リザーバ形成基板と前記流路形成基板とを滑らかに接続させる構造が考えられる。すなわち、前記リザーバ形成基板の上面から前記傾斜面上を通って前記流路形成基板の上面に配線を形成することで、上段のドライバICと下段の駆動素子との間を良好に導通させることができる。ところで、図10(a)に示すように、通常、リザーバ形成基板20は、図示しない振動板が形成された流路形成基板10上に接着層3を介して実装している。
しかしながら、前記流路形成基板10上に接着層3を介して前記リザーバ形成基板20を密着させても、接着層3が硬化した際に収縮することで、この接着層3が内側に引き込まれ、結果として前記流路形成基板10と前記リザーバ形成基板20との間の外周側に、図10(a)に示したような、接着層3が充填されていない空隙部Tが形成されてしまう。
このような状態のもとで、前記リザーバ形成基板20の斜面上を通って、前記リザーバ形成基板20の上面及び流路形成基板10の上面まで引き回される配線パターンを形成しようとすると、例えば図10(b)に示すように、配線パターンを形成するためのレジスト45が前記空隙部Tに入り込んでしまう。よって、上述した流路形成基板の内側面を傾斜面とする構造においても、前記リザーバ形成基板20の傾斜面と前記流路形成基板10の上面との接続部分に形成される配線パターンが断線するおそれがあるという、改善すべき課題が生じてしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、段差のあるドライバICと駆動素子との間を断線することなく導通できる信頼性の高い、配線構造、デバイス、デバイスの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置を提供することを目的としている。
本発明の配線構造は、下部基体上に上部基体が接合されていて、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで配線が引き回され、該配線により前記下部基体の上面に設けられた第1導電部と、前記上部基体に設けられた第2導電部とを電気的に接続する配線構造において、前記上部基体と前記下部基体との接合部に閉空間が設けられていて、該閉空間が減圧されることにより、前記上部基体の下面と前記下部基体の上面とが密着されてなることを特徴とする。
本発明の配線構造によれば、下部基体と上部基体との接合部に設けられた、閉空間は例えば大気圧に対して減圧されたものとなっているので、前記閉空間に対して大気圧が加わった状態となり、したがって前記下部基体と前記上部基体とが真空吸着されたものとなっている。このように、真空吸着によって接合された基板間には、従来のように接着層を介して接合した際に接着層が充填されていない上述した空隙部(隙間)が生じることがなく、前記下部基体と前記上部基体との間が密着した状態に接合している。
よって、前記上部基体の上面から側面に引き回される配線は、下部基体と上部基体との間の隙間への入り込みが防止され、したがって断線することなく第1導電部と第2導電部との間を導通することができる。また、下部基体の上面と上部基体の上面との間には段差が生じているが、配線を上部基体の側面に沿って形成しているので、微細なピッチの配線接続を行う際にも、隣接する配線間が接触しショートするのを防止できる。
また、上記配線構造においては、前記上部基体の側面は、前記下部基体の上面に対して傾斜して形成され、その傾斜角が鋭角とされているのが好ましい。
このようにすれば、上段部と下段部との間の段差によって、配線が急激に曲げられることを防止している。よって、鋭角の傾斜面に沿って形成された配線により前記貫通導電部と前記第2導電部とを良好に接続できる。
本発明のデバイスは、上記の配線構造を備え、前記第2導電部が半導体素子の接続端子であることを特徴とする。
本発明のデバイスによれば、第2導電部が半導体素子の接続端子となっているので、上述したように配線構造により第1導電部と半導体素子の接続端子とが配線により確実に接続されたものとなる。よって、上部基体上に半導体素子を実装する際の歩留まりを向上でき、信頼性の高いデバイスとなる。
また、上記デバイスにおいては、前記配線は、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂からなる下地パターンと、該下地パターンに析出したAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されているのが好ましい。
このようにすれば、例えばフォトリソグラフィ法を用いて感光性樹脂をパターニングすることで、所望の形状の下地パターンを得ることが可能となる。
また、前記下地パターンはメッキの析出を促進させる触媒を含んでいるので、例えば下地パターン上に導電材料を膜厚にメッキすることで、電気抵抗が低減された配線となる。
また、上記デバイスにおいては、前記配線は、物理的気相法によって形成された導電性の下地パターンと、該下地パターン上に析出したAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されているのが好ましい。
このようにすれば、物理的気相法として例えばスパッタ法によって金属膜をパターニングすることで、導電性の下地パターンが形成される。また、例えば下地パターン上に導電材料を膜厚にメッキすることで、電気抵抗が低減された配線となる。
また、上記デバイスにおいては、前記半導体素子の接続端子は、Al、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料、又は2種類以上の前記導電材料が組み合わされたもので形成されているのが好ましい。
このようにすれば、該下地パターン上に導電材料を析出させてメッキすることで配線を形成する際に、半導体素子の接続端子を前記メッキを構成する導電材料で構成しているので、前記下地パターンから析出したメッキが前記接続端子との間で結合でき、半導体素子が確実に実装されたものとなる。
また、上記デバイスにおいては、前記半導体素子は前記上部基体の上面に接着層を介して保持されているのが好ましい。
このようにすれば、上部基体上に半導体素子を容易で、かつ安価に実装することが可能となる。
本発明のデバイスの製造方法は、下部基体上に上部基体を接合し、前記下部基体の上面に設けられた第1導電部と、前記上部基体上に設けられた半導体素子とを配線によって接続する、デバイスの製造方法において、前記上部基体の下面、又は前記下部基体の上面のいずれか一方に、凹部を設ける工程と、減圧雰囲気の下、前記凹部内を封止するように下部基体の上面と前記上部基体の下面とを接合し、これらの接合部に減圧されてなる閉空間を設ける工程と、前記上部基体上に前記半導体素子を設ける工程と、前記上部基体の側面を通って、該上部基体の上面と前記下部基体の上面との間に引き回され、前記第1導電部と前記半導体素子の接続端子とを導通する配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明のデバイスの製造方法によれば、下部基体と上部基体との接合部に例えば大気圧に対して減圧されてなる閉空間を形成しているので、該閉空間に対して大気圧が加わった状態となり、したがって前記下部基体と前記上部基体とが真空吸着される。このように、前記下部基体と前記上部基体とが密着接合しているので、前記上部基体の上面から側面に引き回される配線は、下部基体と上部基体との間の空隙に入り込むことが防止され、したがって第1導電部と半導体素子の接続端子とが確実に導通する。
また、下部基体の上面と上部基体の上面との間に段差が生じているが、配線によって上段と下段とを断線することなく確実に接続できるので、デバイスを製造する際の歩留まりを向上できる。
また、上記のデバイスの製造方法においては、前記上部基体は面方位(1,0,0)のシリコン基板から構成され、該シリコン基板を異方性エッチングして前記上部基体の側面を形成しているのが好ましい。
このように、面方位(1,0,0)のシリコン基板に対し、例えばKOH等のアルカリ溶液でウエットエッチングを行えば、各面方位のエッチングレートの違いによりエッチング処理面の側面を傾斜面とすることができる。
また、上記のデバイスの製造方法においては、前記配線は、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂からなる下地パターンを形成した後、該下地パターンにAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料を析出して形成されているのが好ましい。
このようにすれば、レジストとしての感光性樹脂を塗布した後、例えばフォトリソグラフィ法によって所望の形状の下地パターンを形成することができる。よって、この下地パターン上に厚膜のメッキをすることで、このメッキ層によって配線の抵抗値を低減することができる。
また、上記のデバイスの製造方法においては、前記配線は、物理的気相法によって導電性の下地パターンを形成した後、該下地パターンにAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料を析出して形成されているのが好ましい。
このようにすれば、物理的気相法として例えばスパッタ法によって金属膜をパターニングすることで、導電性の下地パターンが形成される。また、この下地パターン上に導電材料をメッキしているので、このメッキにより膜厚のある配線となり、電気抵抗の低い配線を提供することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルに連通する圧力発生室が設けられた下部基体と、該下部基体の上面側に配設され前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、前記下部基体に設けられた前記駆動素子を覆って設けられる上部基体と、該上部基体の上面側に配設され前記駆動素子を駆動する半導体素子と、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで引き回され、前記前記駆動素子と前記半導体素子とを導通させる配線と、を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記下部基体と前記上部基体との接合部には閉空間が設けられていて、該閉空間が減圧されることにより、前記上部基体の下面と前記下部基体の上面とが密着されてなることを特徴とする。
本発明の液滴吐出ヘッドによれば、下部基体と上部基体との接合部は、大気圧に対して減圧されてなる閉空間が設けられているので、前記下部基体と前記上部基体とが真空吸着され、前記下部基体と前記上部基体とが密着接合している。よって、前記上部基体の上面から側面を通って前記下部基体の上面にまで引き回された配線は、下部基体と上部基体との間の空隙に入り込むことが防止され、したがって駆動素子と半導体素子の接続端子とが配線により確実に導通する。
また、下部基体の上面と上部基体の上面との間には段差が生じているが、微細なピッチの場合でも、配線を上部基体の側面に沿って形成することで隣接する配線間で接触が生じショートすることがない。
また、上記の液滴吐出ヘッドにおいては、前記閉空間は、前記上部基体に設けられた凹部と、前記下部基体の上面とが接合することにより構成されているのが好ましい。
このようにすれば、前記凹部を形成する際に、例えば上部基体に前記圧電素子から引き出す配線を通すための凹部が形成でき、閉空間が確実に形成されたものとなる。
また、上記の液滴吐出ヘッドにおいては、前記閉空間の一部が、前記上部基体に設けられた、前記圧電素子を保持する圧電素子保持部からなるのが好ましい。
このようにすれば、前記保持部が大気圧に対して減圧された状態となるので、保持部中に存在する大気等による圧電素子への影響を抑えることができる。また、例えば圧電素子の劣化を効果的に防止することができる。
また、上記の液滴吐出ヘッドにおいては、前記閉空間は、前記下部基体に設けられた凹部と、前記上部基体の下面とが接合することにより構成されているのが好ましい。
このようにすれば、例えば下部基体に設けられた凹部内に、前記圧電素子から引き出された配線を形成することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するノズルに連通する圧力発生室が設けられた下部基体と、該下部基体の上面側に配設され前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、前記下部基体に設けられた前記駆動素子を覆って設けられる上部基体と、該上部基体の上面側に配設され前記駆動素子を駆動する半導体素子と、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで引き回され、前記駆動素子と前記半導体素子とを導通させる配線と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、前記上部基体の下面側、又は前記下部基体の上面側のいずれか一方に、凹部を設ける工程と、減圧雰囲気の下、前記凹部内を封止するように下部基体の上面と前記上部基体の下面とを接合し、これらの接合部に大気圧に対し減圧されてなる閉空間を形成する工程と、前記上部基体上に前記半導体素子を設ける工程と、前記下部基体の側面を通って、該上部基体の上面と前記下部基体の上面との間に引き回され、前記第1導電部と前記半導体素子の接続端子とを導通する配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、接合された上部基体と下部基体との間が上記閉空間によって真空吸着されたものとなっているので、前記下部基体の下面と前記上部基体の上面とは密着性が高く、したがって前記下部基体の側面と前記上部基体の上面とは略連続的に接続した状態となる。よって、前記下部基体の上面から前記上部基体の側面を通って、下部基体の上面に引き回される配線は、駆動素子と半導体素子の接続端子とを確実に導通する。
また、下部基体の上面と上部基体の上面との間に生じた段差間を配線接続する場合においても、配線を上部基体の側面に沿って形成することで、隣接する微細なピッチの配線間が接触してショートすることもない。
本発明の液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
本発明の液滴吐出装置によれば、上述したように、半導体素子との接続端子と各駆動素子とが配線により確実に接続されてなる液滴吐出ヘッドを備えているので、これを備えた液滴吐出装置は信頼性の高いものとなる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
(液滴吐出ヘッド)
はじめに、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1実施形態について図1から図3を参照しつつ説明する。
図1は液滴吐出ヘッドの一実施形態を示す斜視構成図、図2は液滴吐出ヘッドを下側から見た斜視構成図の一部破断図、図3は図1のA−A線に沿う断面構成図である。
本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、機能液を液滴状にしてノズルから吐出するものである。図3に示すように、液滴吐出ヘッド1は、液滴が吐出されるノズル15に連通する圧力発生室12が形成された流路形成基板(下部基体)10と、前記圧力発生室12の上面に配設され圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧電素子(駆動素子)300と、圧力発生室12の上面に配設され圧電素子300を覆うリザーバ形成基板(上部基体)20と、リザーバ形成基板20の上面に配設され圧電素子300を駆動する半導体素子200とを備えて構成されている。なお、流路形成基板10は、基板本体410と該基板本体410上に貼り合わされた振動板400とから構成されるものである。
そして、液滴吐出ヘッド1の動作は、半導体素子200に接続された図示略の外部コントローラによって制御されるようになっている。
ここで、本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1は、デバイス、及び配線構造を備えたものであって、液滴吐出ヘッドの実施形態は、配線構造、及びデバイスの一実施形態を含むものである。
具体的に、液滴吐出ヘッド1は、本発明のデバイス、及び配線構造における上部基体を前記リザーバ形成基板20として備えたものである。さらには、圧電素子300に導通する端子部を第1導電部とし、半導体素子200の接続端子を第2導電部として備えている。
(ノズル)
図2に示すように、液滴吐出ヘッド1の下側(−Z側)には、ノズル基板16が装着されている。ノズル基板16には、液滴を吐出する複数のノズル15が、Y軸方向に配列して設けられている。本実施形態では、ノズル基板16上の複数の領域に配列された一群のノズル15を、それぞれ第1ノズル群15A、第2ノズル群15B、第3ノズル群15C、及び第4ノズル群15Dと称する。
第1ノズル群15Aと第2ノズル群15BとはX軸方向に並んで配置されている。第3ノズル群15Cは第1ノズル群15Aの+Y側に設けられており、第4ノズル群15Dは第2ノズル群15Bの+Y側に設けられている。これら第3ノズル群15Cと第4ノズル群15DとはX軸方向に並んで配置されている。
なお、図2では各ノズル群15A〜15Dのそれぞれが6個のノズル15によって構成されているように示されているが、実際には各ノズル群は例えば720個程度のノズル15によって構成されるものである。
(圧力発生室)
ノズル基板16の上側(+Z側)には、流路形成基板10が配置されている。流路形成基板10の下面とノズル基板16とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。流路形成基板10を構成する基板本体410は、シリコンやガラス、セラミックス材料等で構成することが可能であり、本実施形態の場合にはシリコンによって形成されている。流路形成基板10の内側には、その中央部からX方向に延びる複数の隔壁11が形成されている。この隔壁11は、流路形成基板10の母材であるシリコン基板を異方性エッチングにより部分的に除去して形成されている。この隔壁11により、流路形成基板10には、複数の平面視略櫛歯状の開口領域が区画形成されている。これらの開口領域のうち、X軸方向に延びて形成された部分が、ノズル基板16と振動板400とにより囲まれて圧力発生室12を構成する。この圧力発生室12は、機能液を収容し、液滴吐出ヘッド1の動作時に印加される圧力によってノズル15から機能液を吐出するようになっている。
各圧力発生室12は、複数のノズル15に対応して設けられている。すなわち、圧力発生室12は、第1〜第4ノズル群15A〜15Dのそれぞれを構成する複数のノズル15に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。そして、第1ノズル群15Aに対応して複数形成された圧力発生室12が第1圧力発生室群12Aを構成し、第2ノズル群15Bに対応して複数形成された圧力発生室12が第2圧力発生室群12Bを構成し、第3ノズル群15Cに対応して複数形成された圧力発生室12が第3圧力発生室群12Cを構成し、第4ノズル群15Dに対応して複数形成された圧力発生室12が第4圧力発生室群12Dを構成している。第1圧力発生室群12Aと第2圧力発生室群12BとはX軸方向に並んで配置されており、それらの間にはY軸方向に伸びる隔壁10Kが形成されている。同様に、第3圧力発生室群12Cと第4圧力発生室群12DとはX軸方向に並んで配置されており、それらの間にもY軸方向に伸びる隔壁10Kが形成されている。
(リザーバ)
また、流路形成基板10に形成された平面視略櫛歯状の開口領域のうち、図示Y方向に延びて形成された部分が、リザーバ100を構成している。第1圧力発生室群12Aを形成する複数の圧力発生室12における基板外縁部側(+X側)の端部は、上述したリザーバ100に接続されている。リザーバ100は、圧力発生室12に供給する機能液を予備的に保持するものであって、第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12の共通の機能液保持室(インク室)となっている。なお、第2、第3、第4圧力発生室群12B、12C、12Dのそれぞれにも、上述と同様のリザーバ100が接続されており、それぞれ圧力発生室群12B〜12Dに供給される機能液の一時貯留部を構成している。
図3に示すように、上記リザーバ100は、リザーバ形成基板20に形成されたリザーバ部21と、流路形成基板10に形成された連通部13とから構成されている。この連通部13は、リザーバ部21を各圧力発生室12のそれぞれに接続する機能を有する。リザーバ形成基板20の外側(流路形成基板10と反対側)には、封止膜31と固定板32とを積層した構造のコンプライアンス基板30が接合されている。このコンプライアンス基板30において、内側に配される封止膜31は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなる。他方、外側に配される固定板32は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さ30μm程度のステンレス鋼)からなる。この固定板32には、リザーバ100に対応する平面領域を切り欠いてなる開口部33が形成されている。この構成により、リザーバ100の上部は、可撓性を有する封止膜31のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部22となっている。また、コンプライアンス基板30には、リザーバ100に機能液を供給するための機能液導入口25が形成されており、リザーバ形成基板20には、その機能液導入口25とリザーバ100とを連通する導入路26が設けられている。
機能液導入口25より導入された機能液は、導入路26を経てリザーバ100に流れ込み、さらに供給路14を経て第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12のそれぞれに供給されるようになっている。なお、圧電素子300の駆動時における機能液の流れや周囲の熱などにより、リザーバ100の内部に圧力変化が生じるおそれがある。
ところが、リザーバ100の可撓部22が撓み変形してその圧力変化を吸収するので、リザーバ100内を常に一定の圧力に保持することができるようになっている。
(圧電素子)
一方、流路形成基板10の図示上面側(+Z側)には、振動板400が配置されている。この振動板400は、流路形成基板10側から順に弾性膜50と下電極膜60とを積層した構造となっている。流路形成基板10側に配される弾性膜50は、例えば1〜2μm程度の厚さの酸化シリコン膜からなるものであり、下電極膜60は、例えば0.2μm程度の厚さの金属膜からなるものである。本実施形態において、下電極膜60は、流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間に配される複数の圧電素子300の共通電極として機能するものとなっている。
振動板400の図示上面側(+Z側)には、振動板400を変形させるための圧電素子300が配置されている。圧電素子300は、下電極膜60側から順に圧電体膜70と上電極膜80とを積層した構造となっている。圧電体膜70は、例えば1μm程度の厚さのPZT膜等からなるものであり、上電極膜80は、例えば0.1μm程度の厚さの金属膜からなるものである。
なお、圧電素子300の概念としては、圧電体膜70及び上電極膜80に加えて、下電極膜60を含むものであってもよい。下電極膜60は圧電素子300として機能する一方、振動板400としても機能するからである。本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板400として機能する構成を採用しているが、弾性膜50を省略して下電極膜60が弾性膜50を兼ねる構成とすることもできる。
このような圧電素子300には、半導体素子200と接続するための、例えば、金(Au)等からなるリード電極(第1導電部)90が引き出し配線として形成されている。すなわち、各リード電極90は、上電極膜80の各圧力発生室12の列間側の端部近傍から弾性膜50上までそれぞれ延設されている。なお、詳しくは後述するが、各リード電極90は、リザーバ形成基板20に設けられた貫通溝27に対向する領域まで延設されており、その端部近傍と半導体素子200とが配線34によって電気的に接続されたものとなっている。
また、上記圧電素子300は、複数のノズル15及び圧力発生室12に対応するように複数設けられている。本実施形態では、便宜的に、第1ノズル群15Aを構成するノズル15のそれぞれに対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた一群の圧電素子300を第1圧電素子群と呼び、第2ノズル群15Bを構成するノズル15のそれぞれに対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた一群の圧電素子300を第2圧電素子群と呼ぶこととする。また、第3ノズル軍に対応する一群の圧電素子を第3圧電素子群と呼び、第4ノズル軍に対応する一群の圧電素子を第4圧電素子群と呼ぶ。上記第1圧電素子群と第2圧電素子群とはX軸方向に並んで配置され、同様に第3圧電素子群と第4圧電素子群とはX軸方向に並んで配置されている。なお、液滴吐出ヘッド1は、第1〜第4圧電素子群を駆動するために、4個の半導体素子200A〜200Dを備えたものとなっている。
(リザーバ形成基板)
そして、圧電素子300を覆うように、流路形成基板10の図示上面側(+Z側)にリザーバ形成基板(上部基体)20が配置されている。また、前記流路形成基板10とリザーバ形成基板20とは、接着樹脂等からなる接着層(図示せず)によって貼り合わされている。リザーバ形成基板20は、流路形成基板10とともに液滴吐出ヘッド1の基体を成す部材であるから、その構成材料として、流路形成基板10と略同一の熱膨張率を有する剛性材料を用いることが好ましい。本実施形態の場合、流路形成基板10がシリコンからなるので、それと同一材料のシリコン基板が好適に用いられる。シリコン基板は、異方性エッチングにより容易に高精度の加工を施すことが可能であるため、次述する圧電素子保持部24等を容易に形成できるという利点が得られる。なお、流路形成基板10と同様に、ガラスやセラミック材料等を用いてリザーバ形成基板20を構成することも可能である。
リザーバ形成基板20には、圧電素子300を密閉封止する封止部23が設けられている。本実施形態の場合、第1圧電素子群を封止している部分を第1封止部23Aとし、第2圧電素子群を封止ししている部分を第2封止部23Bと呼ぶことにする。同様に、第3圧電素子群を封止している部分を第3封止部とし、第4圧電素子群を封止ししている部分を第4封止部と呼ぶ。
また、封止部23には、図3の紙面垂直方向に延びる平面視略矩形状の凹部からなる圧電素子保持部24が設けられている。この圧電素子保持部24は、圧電素子300の周囲に圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する機能を有している。この圧電素子保持部24は、圧電素子300のうち少なくとも圧電体膜70を封止できる寸法とされている。また圧電素子保持部24は、複数の圧電素子300ごとに区画されていてもよい。
このように、リザーバ形成基板20は、圧電素子300を外部環境から遮断する封止基板としての機能を有している。リザーバ形成基板20によって圧電素子300を封止することで、外部の水分等による圧電素子300の特性劣化等を防止することができる。また本実施形態では、圧電素子保持部24の内部を密封状態にしただけであるが、その内部を真空にするか、または窒素もしくはアルゴン等の雰囲気とすることにより、圧電素子保持部24内を低湿度に保持することができる。これらの構成により、圧電素子300の劣化をさらに効果的に防止することができる。
ところで、上記第1封止部23Aと第2封止部23Bとの間には、リザーバ形成基板20を貫通する貫通溝27が設けられている(図1参照)。この貫通溝27によって流路形成基板10の上面が一部露出した状態となっている。また、前記貫通溝27が形成された封止部23a側面は、前記流路形成基板10の上面に対して傾斜していて、その傾斜角が鋭角(0°よりも大きく90°未満となる角度)となる傾斜面35となっている。ここで、前記傾斜角は、封止部23の下面と側面とがなす角度を意味している。なお、前記封止部23はリザーバ形成基板20から構成されているので、リザーバ形成基板20の側面には封止部23の側面を含んでいる。
後述するように、前記傾斜面35は面方位(1,0,0)のシリコン基板に対してKOH等のアルカリ溶液でウエットエッチングを行った際の各面方位のエッチングレートの違いを利用して形成されたもので、約54°の傾斜角を有したものである。
そして、前記リザーバ形成基板20の上面には、半導体素子200が実装されている。
この構成により、前記リザーバ形成基板20の上面と前記流路形成基板10の上面との間に生じる段差を滑らかに接続している。よって、前記リザーバ形成基板20の上面に設けられた半導体素子200と前記流路形成基板10の上面に設けられた圧電素子300とを接続する配線が鋭角の傾斜面35に沿って良好に形成できるようにしている。
そして、前記第1封止部23Aを例に挙げて説明すると、第1封止部23A,23の上面から、この第1封止部23Aの側面の傾斜面35を通って、貫通溝27により露出した流路形成基板10の上面まで配線34が引き回されている。
(配線構造、及びデバイス)
ここで、液滴吐出ヘッド1を構成する、本発明の配線構造、及びデバイスの一実施形態について説明する。図4は、リザーバ形成基板20と流路形成基板10との接続構造を示す拡大図である。図4(a)は、リザーバ形成基板20の下面側を示す拡大図である。また、図4(b)は、液滴吐出ヘッド1の一部を構成する配線構造(デバイス)を示す図であり、図中符号500はデバイスである。
なお、図4中においては、図示を簡略化するため、圧電素子300、及び圧電素子保持部24の図示を省略している。なお、液滴吐出ヘッド1は、後述するように振動板400が設けられた流路形成基板(下部基体)10上に設けられたリード電極90とリザーバ形成基板20の上面に設けられる第2導電部を配線により接続する配線構造500a、及び前記第2導電部を半導体素子200の接続端子44とするデバイス500を備えたものである。
流路形成基板10上にはリザーバ形成基板20が積層されていて、これら基板間が接合されている。ここで、図4(a)は、図3中における領域Aに対応する部分におけるリザーバ形成基板20を下面側(前記流路形成基板10との接合面側)から見た斜視構成図である。また、図4(b)は、図4(a)におけるA−A線矢視に対応するリザーバ形成基板20と流路形成基板10との接合面を示す側断面図である。
ここで、上述したように、流路形成基板10上には、図3に示したように、圧電素子300に接続されたリード電極90が引き回されている。そして、前記リード電極90が流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間に挟まれて断線するのを防止するために、リザーバ形成基板20には図4(a)に示すようにリード電極90に対応した溝部20aが形成されている。この溝部20a内にリード電極90が引き回されることにより、圧電素子保持部24(図3参照)内に配置された圧電素子300に導通するリード電極90を引き出すことが可能となっている。
また、前記溝部20a間は、流路形成基板10との接合面20bとなっていて、例えばCMP(化学的機械的研磨)処理などにより、その表面が平坦性の高いものとなっている。そして、この接合面20bには複数の凹部250が形成されている。
一方、前記リザーバ形成基板20の接合面20bと接合される前記流路形成基板10の接合面10bについても同様にその表面における平坦性が高いものとなっている。
そして、凹部250を有する接合面20bと、これに当接する平坦な接合面10bとにより流路形成基板10とリザーバ形成基板20との接合部には、閉空間110が設けられたものとなっている。
そして、この閉空間110は大気圧に対して減圧されることにより、前記リザーバ形成基板20の下面と前記流路形成基板10の上面とが密着されたものとなっている。具体的には、前記閉空間110内を後述するように減圧雰囲気、例えば真空状態とすることで、前記閉空間110内の圧力が低下した状態で基板10,20間を貼り合わせた後、大気中に取り出すことで閉空間110で真空吸着が起こり、接着層等を用いることなく前記リザーバ形成基板10と流路形成基板10との間の密着接合が可能となっている。
一方、リザーバ100側における接合部についても、前記リザーバ形成基板に凹部(図示せず)が設けられていて、該凹部によって流路形成基板10との接合面において閉空間をなすことで、基板10,20間を密着接合している。なお、上記リザーバ100側における接合部に関しては、従来と同様に接着剤を用いた接合であってもよい。
リザーバ形成基板20には、上述したように貫通溝27が設けられている(図3参照)。よって、前記リザーバ形成基板20は、前記貫通溝27が形成されていない面を上段面とし、前記貫通溝27によって露出した流路形成基板10の上面を下段面とする段差構造を有したものとなっている。
図4(b)に示したように、段差構造の上段のリザーバ形成基板20の上面には半導体素子200が設けられ、段差構造の下段の前記貫通溝27によって露出する流路形成基板10上には、圧電素子300に導通するリード電極90が設けられている。なお、この半導体素子200は、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されるものである。
前記半導体素子200は、リザーバ形成基板20上に接続端子面を下方に向けたフェイスダウンの状態で実装されている。また、半導体素子200の中央部には、ポリイミド等の熱可塑性材料からなる接着層42が配置されていて、半導体素子200を加熱しつつリザーバ形成基板20に加圧することにより、半導体素子200がリザーバ形成基板20の上面に固着されている。よって、半導体素子200の実装を容易、かつ安価なものとしている。
また、本実施形態における配線構造500aは、前記リザーバ形成基板20の上面から該リザーバ形成基板20の側面を通って前記流路形成基板10の上面にまで引き回される配線34を有している。そして、この配線34により半導体素子200の接続端子44と、前記リード電極90との間を電気的に接続している。
ところで、従来の接着層を介して基板10,20間を接合した際に生じていた、接着層が硬化した際に収縮することで、この接着層が内側に引き込まれ、流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間の外周側(前記傾斜面35側)に接着層が充填されていない空隙部(図10参照)が生じてしまい、流路形成基板10の上面とリザーバ形成基板20の上面(リード電極90と半導体素子200の接続端子44)とを接続する配線が空隙部により断線するおそれがあった。
そこで、本発明を採用すれば、上述したように流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間は閉空間110によって真空吸着されたものとなっているので、基板10,20間に上記の空隙部が生じることがなく、したがって前記流路形成基板10の側面(傾斜面35)と前記リザーバ形成基板20の上面とが滑らかに接続されたものとなっている。したがって、前記リザーバ形成基板20上面から該リザーバ形成基板20の傾斜面35を通って、前記流路形成基板10の上面まで引き回される配線34は、基板間における空隙部によって断線することなく、前記リザーバ形成基板20上に設けられた半導体素子200の接続端子44と前記流路形成基板10の上面に設けられたリード電極90とを良好に導通している。
ここで、前記配線34は、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂からなる下地パターン34aと、該下地パターン34a上にメッキされたAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されたものである。具体的には、前記下地パターン34aとして、Pd(パラジウム)の微粒子が分散された感光性樹脂材料を用いることで、この樹脂材料に対して露光および現像することにより所望の形状にパターニングすることができ、製造工程を簡略化することができる。そして、触媒が付与された樹脂材料で構成される下地パターン34aには、その触媒に対してメッキ34bが析出されている。これらのメッキ34bは、CuやNi、Auなどの金属材料で構成されている。
なお、各配線および接続端子の表面に異なる材料のメッキが析出されていてもよい。本実施形態では、前記下地パターン34aが導電性を備えていないので、図4に示したように、前記下地パターン34aは圧電素子300に導通するリード電極90の少なくとも一部を露出させた状態に設けられている。このようにすれば、前記下地パターン34aから析出したメッキ34bが前記リード電極90上に接触することで、配線34はリード電極90と導通している。
また、前記下地パターン34aはメッキの析出を促進させる触媒を含んでいるので、下地パターン34a上に膜厚のある導電材料をメッキ34bすることで、前記配線34は配線として機能するために必要な抵抗値を備えたものとなっている。
また、半導体素子200の下面側(接着層42が設けられた側)の周縁部には、複数の接続端子44が設けられている。この接続端子44は、AlやNi−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料、又はこれらが2種類以上組み合わされた金属材料で構成されている。よって、前記下地パターン34a上にメッキ34bを析出して配線34を形成する際には、前記下地パターン34aから析出したメッキ34bと前記接続端子44から析出したメッキとが結合することで、半導体素子200とリード電極90との間が確実に導通される。
図5は、上述した配線34と前記半導体素子200の接続端子44とのメッキ接合部分における拡大説明図である。図5に示すように、半導体素子200の接続端子44の表面にはメッキ44aが析出され、前記下地パターン34a上にはメッキ34bが析出されている。なお、前記下地パターン34aは、圧電素子300に接続するリード電極90上に形成されている。よって、このようにして成長したメッキ44aおよびメッキ34bとが結合することで、接続端子44と前記配線34とが電気的に接続される。すなわち、この配線34により本発明の配線構造を用いることで、半導体素子200が実装されたデバイスとしての液滴吐出ヘッド1が構成されている。
(液滴吐出ヘッドの作用)
図3に示した液滴吐出ヘッド1により機能液の液滴を吐出するには、当該液滴吐出ヘッド1に接続された外部コントローラ(図示略)によって機能液導入口25に接続された不図示の外部機能液供給装置を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口25を介してリザーバ100に供給された後、ノズル15に至るまでの液滴吐出ヘッド1の内部流路を満たすようになる。
そして、外部コントローラは、リザーバ形成基板20上に実装された半導体素子200に駆動電力や指令信号を送信する。指令信号等を受信した半導体素子200は、外部コントローラからの指令に基づく駆動信号を、各圧電素子300に送信する。
すると、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧が印加される結果、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体膜70に変位が生じ、この変位によって各圧力発生室12の容積が変化して内部圧力が高まり、ノズル15より液滴が吐出されることとなる。
このような構成の液滴吐出ヘッド1によれば、流路形成基板10とリザーバ形成基板20との接合部に、大気圧に対して減圧されてなる閉空間110が設けられているので、前記流路形成基板10と前記リザーバ形成基板20とが真空吸着されることにより基板10,20間が密着接合している。よって、前記リザーバ形成基板20の上面から側面(傾斜面35)を通って前記流路形成基板10の上面にまで引き回された配線は、流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間への隙間(空隙部)に入り込むことが防止されている。したがって、流路形成基板10の上面とリザーバ形成基板20の上面との間には段差が生じているものの、圧電素子300と半導体素子200の接続端子44との間を配線34によって確実に導通することができる。
このように、本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、接続信頼性の高い配線構造500aにより半導体素子200が実装されたデバイス500を搭載しているので、信頼性が高いものとなっている。
また、本実施形態の液滴吐出ヘッド1によれば、従来のようにワイヤボンディングを用いることなく半導体素子200を実装しているので、ワイヤを引き回す空間を不要が不要となる。そのため、ノズル15の狭ピッチ化に伴って配線34が狭ピッチ化する場合にも、リザーバ形成基板20の側面(傾斜面35)上に直接配線34を引き回すことで、ワイヤーボンディングを用いた配線接続のように隣接する配線間で接触が生じてショートするといった不具合を生じさせることなく、電気的接続を確保しつつ半導体素子200を実装することができる。よって、従来のワイヤボンディングによる実装に比べ、短TAT、低コスト、および高歩留まりの実装が可能になる。
また、本実施形態の配線構造500aによれば、段差下部の第1導電部(リード電極90)と段差上部の第2導電部(接続端子44)とを良好に接続できる。
(液滴吐出ヘッドの製造方法)
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法の一実施形態の説明として、前記液滴吐出ヘッド1を製造する場合について、図6を参照して説明する。なお、前記液滴吐出ヘッド1は、上述したように本発明のデバイス自体を含むものであるため、以下の液滴吐出ヘッドを製造する工程によりデバイスを製造する方法についても説明する。また、図6に示す各図は、図1のA−A線に沿う概略断面構成に対応する図である。
はじめに、面方位(1,0,0)のシリコン基板120の図示上面の中央部を異方性エッチングにより除去して、貫通溝を形成する。
具体的には、図6(a)に示すように、シリコン基板120の表面を熱酸化して酸化シリコン膜を形成する。次に、シリコン基板120の表面にレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより貫通溝27を形成すべき部分にレジストの開口部を形成する。次に、レジストの開口部をフッ酸で処理して、酸化シリコン膜の開口部を形成する。次に、シリコン基板120を35重量%程度の水酸化カリウム(KOH)水溶液に浸漬して、酸化シリコン膜の開口部から露出したシリコン基板120の異方性エッチングを行う。なお、酸化シリコン膜がエッチングストッパとして機能するので、エッチングはシリコン基板120を貫通したところで停止する。このとき、各面方位のエッチングレートの違いにより、貫通溝27の内側面には約54°の傾斜面が形成される。よって、リザーバ形成基板20には、その側面が鋭角の傾斜面35となる封止部23が形成される。
そして、エッチングが終了した後、シリコン基板120の表面を再度熱酸化して酸化シリコン膜(図示せず)を形成する。ここで、同様にエッチングを用いて、リザーバ部21、圧電素子保持部24を形成する。さらに、このエッチング工程によって、下部基体との接合面20bとなる位置に凹部250を形成する。
一方、シリコン基板からなる基板本体410に振動板400を備えてなる流路形成基板(下部基体)10を公知の方法により形成し、該流路形成基板10上に圧電素子300を形成しておく。
その後、図6(b)に示すように、流路形成基板10上にリザーバ形成基板(上部基体)20を接合する工程を行う。
具体的には、減圧雰囲気中、例えば真空雰囲気中で、流路形成基板10に設けられた圧電素子300とリザーバ形成基板20に形成された圧電素子保持部24とを位置合わせをするようにして両基板10,20を当接させる(図4参照)。このとき、リザーバ形成基板20に設けられている凹部250と流路形成基板10の接合面との間に、内部が真空雰囲気に保持されてなる閉空間110が生じることとなる。なお、流路形成基板10上の中央部に延設された圧電素子300に接続するリード電極90は、リザーバ形成基板20に設けられた溝部20aに沿って配置されていて、貫通溝27内に露出する流路形成基板10上にリード電極90が配置されたものとなっている。
その後、これら基板10,20を大気中に取り出す。すると、上記の閉空間110内部が真空状態となっているので、大気中においては前記閉空間110内の圧力が低下した状態となり、前記閉空間110において真空吸着が起こり、前記リザーバ形成基板10と流路形成基板10との間が接合される。よって、接着層を用いることなく基板10,20間を密着接合することができ、しかも従来の接着層を介して基板10,20間を接合していた場合に生じていた、接着層が収縮することで内側に引き込まれ、前記流路形成基板10と前記リザーバ形成基板20との間の外周側(傾斜面35側)に接着層が充填されない空隙部(隙間)が形成されることがない。
このようにして、基板10,20間を接合した後、流路形成基板10に異方性エッチングを施すことで圧力発生室12等を作製し、リザーバ形成基板20にコンプライアンス基板30を接合し、流路形成基板10にノズル基板16を接合する。
したがって、このように基板10,20間を接着層を用いることなく、密着した状態に接合することにより、前記リザーバ形成基板20の側面(傾斜面35)を介して、流路形成基板10の上面とリザーバ形成基板の上面とを滑らかに連続した状態となる。
次いで、配線34を形成する工程を行う。
具体的には、図6(c)に示すように、シリコン基板120の上面から傾斜面35となっている側面、そして前記絶縁性樹脂層40上に下地パターン34aを形成する。
具体的には、まずシリコン基板120の表面に、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂、例えばPd(パラジウム)の微粒子が分散された感光性樹脂材料の液状体をスプレーコート法等により塗布することで、前記傾斜面35上にも前記感光性樹脂を均一に設けることができる。そして、前記配線34のパターンが描画されたマスクを介して前記樹脂材料を露光し、現像する。これにより、シリコン基板120の表面に配線34を構成するための下地パターン34aがパターニングされる。なお、Siマスクを介したスパッタ法や、インクジェット法を用いることで上記下地パターン34aを直接描画するようにしてもよい。
ここで、本実施形態の下地パターン34aは上述したように導電性を有していないので、前記リード電極90の少なくとも一部を露出させた状態に形成することが望ましい。よって、後述する工程により、この下地パターン34aに析出したメッキによって、前記リード電極90と配線34とが導通可能となる。
このとき、上述したように、流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間が密着しているので、前記傾斜面35を介してリザーバ形成基板20の上面と流路形成基板10の上面とが滑らかに接続された下地パターン34aが形成される。
次に、リザーバ形成基板(上部基体)20上に半導体素子200を設ける工程を行う。
具体的には、図6(d)に示すように、リザーバ形成基板20の上面に半導体素子200を接着する。具体的には、まず半導体素子200下面側の中央部に、熱可塑性樹脂材料からなる接着剤42を塗布する。そして、半導体素子200の接続端子44をリザーバ形成基板20側に向ける、いわゆるフェースダウンの状態で位置合わせして、半導体素子200を加熱しつつリザーバ形成基板20に対して加圧する。
ここで、接着剤の塗布量や接着時の加熱・加圧量を調整することにより、接続端子44と前記リザーバ形成基板20との隙間を数μm〜10μm程度に設定する。この隙間は、後述する配線34のメッキ形成により埋め込まれるようになっている。その後、全体を冷却して接着層42を硬化させ、半導体素子200をリザーバ形成基板20の上面に固着する。
なお、本実施形態では、前記下地パターン34aを形成した後、リザーバ形成基板20上に半導体素子200を実装する工程を行ったが、半導体素子200をリザーバ形成基板20上に実装した後、前記下地パターン34aを形成してもよい。
次いで、図6(e)に示すように、前記下地パターン34aの表面に、メッキ34bを析出させる。具体的には、以下の処理プロセスにより無電解メッキを施す。
まず、上記下地パターン34aおよび接続端子44の表面の濡れ性の向上、残さ除去の目的で、フッ酸を0.01〜0.1%、硫酸を0.01〜1%含有した水溶液中に1〜5分浸漬する。あるいは、0.1〜10%の水酸化ナトリウムなどのアルカリベースの水溶液に1〜10分浸漬しても良い。
次に、水酸化ナトリウムベースでpH9〜13のアルカリ性水溶液を20〜60℃に加温した中に1秒〜5分浸漬し、表面の酸化膜を除去する。なお、5〜30%硝酸をベースとしたpH1〜3の酸性水溶液を20〜60℃に加温した中に1秒から5分浸漬しても良い。
次に、ZnOを含有したpH11〜13のジンケート液中に1秒〜2分浸漬し、各配線および接続端子の表面をZnに置換する。次に、5〜30%の硝酸水溶液に1〜60秒浸漬し、Znを剥離する。そして、再度ジンケート浴中に1秒〜2分浸漬し、緻密なZn粒子を上記下地パターン34aおよび接続端子44の表面に析出させる。
次に、無電解Niメッキ浴に浸漬し、Niメッキを析出させる。このメッキは、2〜30μm程度の高さまで析出させる。また、メッキ浴は次亜リン酸を還元剤とした浴であり、pH4〜5、浴温80〜95℃である。次亜リン酸浴のため、リンが共析する。
さらに、置換Auメッキ欲中に浸漬し、Ni表面をAuに置換しても良い。なお、Auは0.05μm〜0.3μm程度の厚さに形成する。またAu浴は、シアンフリータイプを用い、pH6〜8、浴温50〜80℃とし、1〜30分浸漬する。
このとき、半導体素子200の接続端子44の形成材料としては、上述したようにAlやNi−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料、又はこれらが2種類以上組み合わされた金属材料を採用している。
上記工程により、下地パターン34aおよび接続端子44の表面にNiあるいはNi−Auメッキを析出させている。
具体的には、図4に示したように半導体素子200の接続端子44の表面にメッキ44aが析出し、下地パターン34aの表面にメッキ34bが析出する。また、前記リード電極90の近傍の下地パターン34aから析出したメッキ34bは、前記リード電極90上に形成するようになる。このように、メッキ34bおよびメッキ44aが相互に結合するまで両メッキを成長させることで配線34が形成され、該配線34によって半導体素子200の接続端子44と前記圧電素子300に導通するリード電極90とが電気的に接続される。よって、配線34は、半導体素子200と圧電素子300とを電気的接続する。
このとき、上述したように前記下地パターン34aは、密着して接合された基板10,20間を引き回されているので、基板10,20間の隙間による断線が防止されたものとなっている。よって、この下地パターン34a上にメッキが析出して形成された配線34は、断線が防止された信頼性の高いものとなる。なお、上記工程により本発明の配線構造500a、及びデバイス500が形成されることとなる。
また、Ni−Au配線上に厚付けのAuメッキを施しても良い。メッキの下地である下地パターン34aが薄く形成されていても、メッキを厚付けすることで電気抵抗を低減することができるからである。
なお、各化学処理の間には水洗処理を行う。水洗槽としては、オーバーフロー構造あるいはQDR機構を有したものを用い、最下面からNバブリングを行う。なお、バブリング方法は樹脂製のチューブなどに穴をあけてNを出す方法や、燒結体などを通じてN2を出す方法がある。これらにより、短時間で十分効果のあるリンスを行うことができる。
以上の工程により、液滴吐出ヘッド1が形成される。また、前記液滴吐出ヘッド1を形成する工程によって、デバイス500を形成することができる。
本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、接合されたリザーバ形成基板20と流路形成基板10との間が上記閉空間110によって真空吸着されたものとなっているので、前記流路形成基板10の下面と前記リザーバ形成基板20の上面とは密着性が高く、したがって前記流路形成基板10の側面(傾斜面35)と前記リザーバ形成基板20の上面とは略連続的に接続した状態となる。
よって、前記流路形成基板10の上面から前記流路形成基板10の側面を通って、流路形成基板20の上面に引き回された配線は、断線することなく圧電素子300に接続しているリード電極90と半導体素子200の接続端子44とを確実に導通する。
また、流路形成基板10の上面とリザーバ形成基板20の上面との間に生じた段差間を配線接続する場合においても、配線34をリザーバ形成基板20の側面に沿って形成されることで、隣接する微細なピッチの配線34間の接触によるショートが起こることもない。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2実施形態につき図7を用いて説明する。なお、本実施形態における液滴吐出ヘッドは、上記第1実施形態の液滴吐出ヘッド1を構成している配線構造、及びデバイスとは別のものから構成されている。なお、前記第1の実施形態における液滴吐出ヘッド1と共通の構成の部分については、同一の符号を付して説明することとし、説明を省略する。
図7は、第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドの断面構造における説明図である。図7に示すように、第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドは、リザーバ形成基板20上に半導体素子200がその接続端子44側の面を上にした、フェースアップの状態で実装されている点で、第1実施形態と相違している。
第2実施形態では、リザーバ形成基板20の上面に形成された半導体素子200上まで配線38が引き回されており、該配線38により半導体素子200の接続端子44と圧電素子300に導通するリード電極90との間を導通している。また、前記半導体素子200の側面にはスロープ39が設けられていて、該スロープ39により半導体素子200の上面まで配線38を引き回しやすくしている。なお、このスロープ39は絶縁性材料から構成されている。
前記配線38は、物理的気相法としての、例えばスパッタ法によって形成された導電性の下地パターン38aと、該下地パターン38aに析出したAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されている。ここで、配線38の下面側を半導体素子200の接続端子44と導通させる必要があり、本実施形態では前記下地パターン38aとして導通性を備えたものを用いている。
このようにスパッタ法によって金属膜をパターニングすることで、導電性の下地パターン38aを形成できる。また、この下地パターン38aにはメッキが析出されているので、このメッキにより膜厚を稼ぐことで配線38としての電気抵抗を低減できる。
また、リザーバ形成基板20には、第1実施形態と同様に貫通溝27が設けられている。そして、リザーバ形成基板20における、前記貫通溝27が設けられた側の側面は、流路形成基板10の上面に対し鋭角をなす傾斜面35となっている。また、前記流路形成基板10と前記リザーバ形成基板20とは、上記第1実施形態と同様にリザーバ形成基板20と流路形成基板10の接合部に設けられた、大気圧に対し減圧されてなる閉空間が真空吸着されることで密着した状態に接合されている。これにより、前記リザーバ形成基板20の側面と前記流路形成基板10の上面との間での配線38の断線が防止されたものとなっている。
次に、第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法につき、図8の断面工程図を参照して説明する。なお、リザーバ形成基板20の形成工程から、流路形成基板10との貼着工程までは、図6(a),(b)に示す第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
はじめに、上記第1実施形態と同様にして、シリコン基板をエッチングし閉空間を構成するための凹部を備えてなるリザーバ形成基板20を形成し、真空雰囲気中でリザーバ形成基板20と流路形成基板10とを真空吸着により接合した後、図8(a)に示すように、前記リザーバ形成基板20の所定の位置に半導体素子200を接着層(図示しない)を介して実装する。そして、前記半導体素子200の側面にスロープ39を設ける。
次に、図8(b)に示すように、スパッタ法によって形成された導電性の下地パターン38aを構成する、Al、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAg等の導電膜41を前記リザーバ形成基板20の全面に形成する。本実施形態では、前記導電膜41として、NiCr/Auをスパッタした。このとき、前記リザーバ形成基板20と前記流路形成基板10とは真空吸着によって密着した状態に接合されているので、前記流路形成基板10と前記リザーバ形成基板20との間の隙間に前記導電膜41が入り込むことが防止されている。
その後、図8(c)に示すように、前記導電膜41上に配線38の下地パターン形状にパターニングされたレジストマスクRを形成し、該レジストマスクRを介してエッチングを行う。
よって、図8(d)に示すように、傾斜面35と流路形成基板10の上面との連続部分のおける断線が防止された下地パターン38aが形成される。この下地パターン38aは、半導体素子200の接続端子44と圧電素子300に導通するリード電極90とを電気的に導通させた状態となっている。
前記下地パターン38aは薄膜であることから配線として機能させるには、膜厚が必要となる。そこで、図8(e)に示すように、前記下地パターン38aの表面にメッキ38bを析出させる。本実施形態では、前記下地パターン38aが導電性を有しているので、電解メッキを施す。これにより、前記下地パターン38a上に十分な膜厚のメッキを析出させることができる。よって、配線38としての電気抵抗を低減し、良好な電気的接続を可能とする。また、配線38は、断線が防止された下地パターン38a上にメッキが析出されて構成されたものであることから、この配線38自体も断線が防止された接続信頼性が高いものとなる。
このように、第2実施形態では、半導体素子200をフェースアップの状態でリザーバ形成基板20上に実装する構成とした。そして、前記流路形成基板10上のリード電極(第1導電部)90と、リザーバ形成基板20上に実装された半導体素子200の上面まで配線38を引き回すことで、半導体素子200の接続端子(第2導電部)44と前記リード電極90とを導通させた。このように、流路形成基板10の上面から傾斜面35を介しリザーバ形成基板20の上面まで引き回された配線38は断線が防止されているので、前記第1実施形態と同様に、電気的接続の信頼性が高い、デバイス、及び配線構造を提供することができる。
なお、上述した配線構造、デバイスについては上記実施形態に限定されることはなく、上記液滴吐出ヘッドのみならず他のデバイスにおいても段差部を介した配線接続、及び配線を介した半導体装置の実装が可能であり、例えば電子機器や、印刷機器等に対して広く応用することができる。
(液滴吐出ヘッドの変形例)
上記第1,2実施形態では、リザーバ形成基板20の接合面20bに形成した凹部250と、該凹部250に当接される流路形成基板10の接合面10bとによって閉空間を構成していた。しかしながら、閉空間は、上述した第1,2実施形態に限定されることはなく、例えば、以下に説明するような形態でもよい。
このような変形例に係る液滴吐出ヘッドは、流路形成基板とリザーバ形成基板との接合部に設けられた閉空間の構造が上記第1,2実施形態におけるヘッドと異なっている。よって、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
第1変形例としては、閉空間の一部が、前記リザーバ形成基板20に設けられた圧電素子保持部24により構成されている。このとき、リザーバ形成基板20には圧電素子300から引き出されたリード電極90を引き出すための溝部20aが設けられている(図4(a)参照)。
前記溝部20aと前記リード電極90との間には、僅かに隙間が生じていることから、前記圧電素子保持部24内を真空状態に保持できない。そこで、前記圧電素子保持部24内を真空状態に保持するために、真空雰囲気中でリザーバ形成基板20と流路形成基板10とを接合した後、例えば前記溝部20aとリード電極90との間の隙間を樹脂等で封止することで、大気中において前記圧電素子保持部24を閉空間の一部として使用してもよい。このように圧電素子保持部24内を真空状態に保持することにより、圧電素子300が駆動する際の、圧電素子保持部24内の大気等から受ける抵抗を低減させることができ、より少ない電力による圧電素子300の駆動が可能となる。
また、第2変形例としては、閉空間が、流路形成基板10に設けられた凹部と、該凹部に当接されるリザーバ形成基板20の接合面とによって構成し、前記リザーバ形成基板20には凹部を形成しない。
このとき、前記流路形成基板10側にリード電極90を埋め込むことにより、リザーバ形成基板と流路形成基板との接合面との間で、閉空間を形成してもよい。
(液滴吐出装置)
次に、本発明の液滴吐出装置の一実施形態について図9を参照しながら説明する。本実施形態における液滴吐出装置は、前述した液滴吐出ヘッド1を備えたインクジェット式記録装置について説明する。
前記液滴吐出ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載されている。図9に示すように、液滴吐出ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられており、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ9が、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に取り付けられている。
記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ9に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ9がキャリッジ軸5に沿って移動するようになっている。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上に搬送されるようになっている。上記構成を具備したインクジェット式記録装置は、前述の液滴吐出ヘッド1を備えているので、小型で信頼性が高く、更に低コストなインクジェット式記録装置となっている。
なお、図9では、本発明の液滴吐出装置の一例としてプリンタ単体としてのインクジェット式記録装置を示したが、本発明はこれに限らず、係る液滴吐出ヘッドを組み込むことによって実現されるプリンタユニットに適用することも可能である。このようなプリンタユニットは、例えば、テレビ等の表示デバイスやホワイトボード等の入力デバイスに装着され、該表示デバイス又は入力デバイスによって表示若しくは入力された画像を印刷するために使用される。
また上記液滴吐出ヘッドは、液相法により各種デバイスを形成するための液滴吐出装置にも適用することができる。この形態においては、液滴吐出ヘッドより吐出される機能液として、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものが用いられる。これらの機能液を液滴吐出装置により基体上に選択配置する製造プロセスによれば、フォトリソグラフィ工程を経ることなく機能材料のパターン配置が可能であるため、例えば液晶表示装置や有機EL装置、回路基板等を安価に製造することができる。
液滴吐出ヘッドの一実施形態を示す斜視構成図である。 液滴吐出ヘッドを下側から見た斜視構成図の一部破断図である。 図1のA−A線矢視における断面構成図である。 (a),(b)は、基板間の接続構造を説明する図である。 配線と半導体素子の接続端子とのメッキ接合部分の拡大説明図である。 液滴吐出ヘッドの製造工程の一実施形態を示す図である。 液滴吐出ヘッドの第2実施形態を示す図である。 第2実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す図である。 液滴吐出装置の一実施形態を示す図である。 従来の液滴吐出ヘッドの構成を示す側断面図である。
符号の説明
1…液滴吐出ヘッド、10…流路形成基板(下部基体)、12…圧力発生室、20…リザーバ形成基板(上部基体)、24…圧電素子保持部、34…配線、35…傾斜面、38…配線、40…絶縁性樹脂層(絶縁性部材)、42…接着層、44…接続端子(第2導電部)、90…リード電極(第1導電部)、110…閉空間、120…シリコン基板、200…半導体素子、250…凹部、300…駆動素子(圧電素子)、500…デバイス、500a…配線構造

Claims (17)

  1. 下部基体上に上部基体が接合されていて、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで配線が引き回され、該配線により前記下部基体の上面に設けられた第1導電部と、前記上部基体に設けられた第2導電部とを電気的に接続する配線構造において、
    前記上部基体と前記下部基体との接合部に閉空間が設けられていて、該閉空間が減圧されることにより、前記上部基体の下面と前記下部基体の上面とが密着されてなることを特徴とする配線構造。
  2. 前記上部基体の側面は、前記下部基体の上面に対して傾斜して形成され、その傾斜角が鋭角とされていることを特徴とする請求項1に記載の配線構造。
  3. 請求項1又は2に記載の配線構造を備え、前記第2導電部が半導体素子の接続端子であることを特徴とするデバイス。
  4. 前記配線は、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂からなる下地パターンと、該下地パターンに析出したAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されていることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
  5. 前記配線は、物理的気相法によって形成された導電性の下地パターンと、該下地パターン上に析出したAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料とから構成されていることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
  6. 前記半導体素子の接続端子は、Al、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料、又は2種類以上の前記導電材料が組み合わされたもので形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のデバイス。
  7. 前記半導体素子は前記上部基体の上面に接着層を介して保持されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のデバイス。
  8. 下部基体上に上部基体を接合し、前記下部基体の上面に設けられた第1導電部と、前記上部基体上に設けられた半導体素子とを配線によって接続する、デバイスの製造方法において、
    前記上部基体の下面、又は前記下部基体の上面のいずれか一方に、凹部を設ける工程と、
    減圧雰囲気の下、前記凹部内を封止するように下部基体の上面と前記上部基体の下面とを接合し、これらの接合部に減圧されてなる閉空間を設ける工程と、
    前記上部基体上に前記半導体素子を設ける工程と、
    前記上部基体の側面を通って、該上部基体の上面と前記下部基体の上面との間に引き回され、前記第1導電部と前記半導体素子の接続端子とを導通する配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とするデバイスの製造方法。
  9. 前記上部基体は面方位(1,0,0)のシリコン基板から構成され、該シリコン基板を異方性エッチングして前記上部基体の側面を形成していることを特徴とする請求項8に記載のデバイスの製造方法。
  10. 前記配線は、メッキの析出を促進させる触媒を含む感光性樹脂からなる下地パターンを形成した後、該下地パターンにAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料を析出して形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のデバイスの製造方法。
  11. 前記配線は、物理的気相法によって導電性の下地パターンを形成した後、該下地パターンにAl、Ni−Cr、Cu、Ni、Au、又はAgを含む導電材料を析出して形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のデバイスの製造方法。
  12. 液滴を吐出するノズルに連通する圧力発生室が設けられた下部基体と、該下部基体の上面側に配設され前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、前記下部基体に設けられた前記駆動素子を覆って設けられる上部基体と、該上部基体の上面側に配設され前記駆動素子を駆動する半導体素子と、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで引き回され、前記前記駆動素子と前記半導体素子とを導通させる配線と、を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記下部基体と前記上部基体との接合部には閉空間が設けられていて、該閉空間が減圧されることにより、前記上部基体の下面と前記下部基体の上面とが密着されてなることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  13. 前記閉空間は、前記上部基体に設けられた凹部と、前記下部基体の上面とが接合することにより構成されていることを特徴とする請求項12に記載の液滴吐出ヘッド。
  14. 前記閉空間の一部が、前記上部基体に設けられた、前記圧電素子を保持する圧電素子保持部からなることを特徴とする請求項12に記載の液滴吐出ヘッド。
  15. 前記閉空間は、前記下部基体に設けられた凹部と、前記上部基体の下面とが接合することにより構成されていることを特徴とする請求項12に記載の液滴吐出ヘッド。
  16. 液滴を吐出するノズルに連通する圧力発生室が設けられた下部基体と、該下部基体の上面側に配設され前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、前記下部基体に設けられた前記駆動素子を覆って設けられる上部基体と、該上部基体の上面側に配設され前記駆動素子を駆動する半導体素子と、前記上部基体の上面から該上部基体の側面を通って前記下部基体の上面にまで引き回され、前記駆動素子と前記半導体素子とを導通させる配線と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記上部基体の下面側、又は前記下部基体の上面側のいずれか一方に、凹部を設ける工程と、
    減圧雰囲気の下、前記凹部内を封止するように下部基体の上面と前記上部基体の下面とを接合し、これらの接合部に大気圧に対し減圧されてなる閉空間を形成する工程と、
    前記上部基体上に前記半導体素子を設ける工程と、
    前記下部基体の側面を通って、該上部基体の上面と前記下部基体の上面との間に引き回され、前記第1導電部と前記半導体素子の接続端子とを導通する配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  17. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

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