JP2011517319A - メタロプロテアーゼ12結合タンパク質 - Google Patents

メタロプロテアーゼ12結合タンパク質 Download PDF

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Abstract

マトリックスメタロプロテアーゼ12に結合するタンパク質、ならびにこのようなタンパク質を使用する方法を記載する。本開示は、とりわけ、本明細書で「MMP−12結合タンパク質」と称する、MMP−12に結合するタンパク質、ならびにこのようなタンパク質を同定および使用する方法に関する。これらのタンパク質は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12)に結合する抗体および抗体フラグメント(例えば、霊長動物の抗体およびFab、とりわけ、ヒト抗体およびヒトFab)を包含する。

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2008年3月3日に出願された米国特許出願第61/033,348号および2008年5月14日に出願された米国特許出願第61/127,830号に対する優先権を主張する。前述の出願の開示は、本出願の開示の一部であると考えられる(そして、本出願の開示において参考として援用される)。
背景
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞より分泌される亜鉛メタロエンドペプチターゼのファミリーであり、マトリックス成分の代謝回転の多くに関与する。MMPファミリーは、少なくとも26のメンバーからなりその全てが、活性部位において亜鉛分子を有する、共通の触媒コアを共有する。
要旨
本開示は、とりわけ、本明細書で「MMP−12結合タンパク質」と称する、MMP−12に結合するタンパク質、ならびにこのようなタンパク質を同定および使用する方法に関する。これらのタンパク質は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12)に結合する抗体および抗体フラグメント(例えば、霊長動物の抗体およびFab、とりわけ、ヒト抗体およびヒトFab)を包含する。一部の実施形態において、これらのタンパク質は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12)を阻害する(例えば、MMP−12の触媒活性を阻害する)抗体および抗体フラグメント(例えば、霊長動物の抗体およびFab、とりわけ、ヒト抗体およびヒトFab)を包含する。MMP−12結合タンパク質は、疾患、特に、癌、炎症、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性が特徴となる神経損傷など、ヒト疾患の治療において用いることができる。多くの場合、該タンパク質は、許容される低い毒性を有し、または毒性がない。
一部の態様において、本開示は、MMP−12に結合するタンパク質(例えば、抗体、ペプチド、およびクニッツドメインタンパク質)、特に、MMP−12に結合してこれを阻害するタンパク質(例えば、抗体(例えば、ヒト抗体)、ペプチド、およびクニッツドメインタンパク質)に関する。
一実施形態において、本開示は、ヒトMMP−12に結合するヒト抗体を提供する。一実施形態において、該ヒト抗体は、MMP−12の触媒活性に対する阻害剤である。該抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、Fab、Fab2’、scFv、ミニボディー、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体、または本明細書で列挙される抗体のうちの1つの抗原結合部位を含む他の分子であり得る。一実施形態において、該抗体は、その表面上においてMMP−12を発現する細胞へとナノ粒子または毒素を誘導するのに用いられる。一実施形態において、該抗体は、エフェクター機能(CDCまたはADCC)を引き起こして、MMP−12を発現する細胞を死滅させ得る。
一部の実施形態において、結合タンパク質(例えば、Fab)のVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1、または他の適切な構築物として提供される。
別の実施形態において、結合タンパク質は、MMP−12の活性を阻害し得るクニッツドメインタンパク質もしくは改変形(例えば、HSA融合体)またはペプチドベースのMMP−12結合タンパク質を含む。
一態様において、本開示は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12)に結合するタンパク質(例えば、単離タンパク質)を特徴とし、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を包含する。例えば、該タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含する。一実施形態において、該タンパク質は、MMP−12、例えば、ヒトMMP−12に結合してこれを阻害する(例えば、MMP−12の触媒活性を阻害する)。
一部の実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−12に特異的に結合し、別の種由来のMMP−12には結合しない(例えば、該タンパク質は、バックグラウンドレベルより大きな結合レベルで別の種由来のMMP−12に結合することがない)。
一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−12に特異的に結合し、他のいずれのマトリックスメタロプロテアーゼには結合しない(例えば、該タンパク質は、バックグラウンドレベルより大きな結合レベルで他のいずれのマトリックスメタロプロテアーゼに結合することがない)。
このような結合タンパク質を薬物にコンジュゲートさせ(例えば、MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成する)て、治療的に用いることができる。本開示は、部分的に、MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲート、これらのコンジュゲートの調製物、ならびにこれらの使用に関する。該コンジュゲートは、例えば、障害の治療において、例えば、癌、炎症、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、または神経損傷の治療に用いることができる。例えば、高親和性の結合タンパク質−薬物コンジュゲートによる、MMP−12を発現する細胞および/または腫瘍の標的化(例えば、殺滅)は、疾患、例えば、癌、炎症、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、および神経損傷の治療における強力な療法であり得る。
該タンパク質は、以下の特徴:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)CDRを含むこと;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)CDRを含むこと;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であること;(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であること;(f)該タンパク質が、本明細書に記載のタンパク質により結合されるエピトープ、またはこのようなエピトープと重複するエピトープに結合すること;および(g)霊長動物CDRまたは霊長動物フレームワーク領域のうちの1つまたは複数を包含し得る。
該タンパク質は、少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011−1の結合親和性でMMP−12、例えば、ヒトMMP−12に結合することができる。一実施形態において、該タンパク質は、1×10−3、5×10−4−1、または1×10−4−1より緩徐なKoffでMMP−12に結合する。一実施形態において、該タンパク質は、1×10、1×10、または5×10−1−1より急速なKonでMMP−12に結合する。一実施形態において、該タンパク質は、例えば、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、および10−10M未満のKiでヒトMMP−12の活性を阻害する。該タンパク質は、例えば、IC50が100nM、10nM、または1nM未満であり得る。一部の実施形態において、該タンパク質は、IC50が約1.8nMである。MMP−12に対する該タンパク質の親和性は、100nM未満、10nM未満、または約3nM(例えば、3.1nM)、約5nM(例えば、5nM)、約6nM(例えば、5.9nM)、約7nM(例えば、7.1nM)、または約10nM(例えば、9.6nM)のKを特徴とすることができる。
一部の実施形態において、該タンパク質は、K<200nMである。
一部の実施形態において、該タンパク質は、t1/2が少なくとも約10分(例えば、11分)、少なくとも約20分(例えば、18分)、少なくとも約25分(例えば、25分)、少なくとも約35分(例えば、33分)、または少なくとも約60分(例えば、57分)である。
一実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−12の触媒ドメインに結合する、例えば、該タンパク質は、MMP−12の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触する。
一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−12の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触せず、代わりにMMP−12上における別の場所で結合し、MMP−12においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。
好ましい実施形態において、該タンパク質は、
を含むリストから精選される抗体の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖が、
を含むリストから精選されるヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖が、
を含むリストから精選されるヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、
を含む重鎖リストの対応するCDRから精選されるヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、
を含む軽鎖リストの対応するCDRから精選されるヒト抗体である。
より好ましい実施形態において、該タンパク質は、M0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07に由来する抗体の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖がM0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07に由来するヒト抗体である。さらに別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖がM0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07に由来するヒト抗体である。またより好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、M0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07を含む重鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。またより好ましい別の実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、M0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07を含む軽鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。
より好ましい実施形態において、該タンパク質は、抗体DX−2712(また、M0131−A06−GA−Sとも称する)の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖が抗体DX−2712に由来するヒト抗体である。さらに別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖が抗体DX−2712に由来するヒト抗体である。またより好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、抗体DX−2712に由来する重鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。またより好ましい別の実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、抗体DX−2712に由来する軽鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。
別の実施形態において、該タンパク質は、DX−2712の変異体または改変体、例えば、本明細書に記載の変異体または改変体の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖がDX−2712の変異体または改変体、例えば、本明細書に記載の変異体または改変体に由来するヒト抗体である。さらに別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖がDX−2712の改変体、例えば、本明細書に記載の変異体または改変体に由来するヒト抗体である。またより好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、DX−2712の変異体または改変体、例えば、本明細書に記載の変異体または改変体に由来する重鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。またより好ましい別の実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、DX−2712の変異体または改変体、例えば、本明細書に記載の変異体または改変体に由来する軽鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。
より好ましい実施形態において、該タンパク質は、抗体539B−X0041−D02の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖が抗体539B−X0041−D02に由来するヒト抗体である。さらに別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖が抗体539B−X0041−D02に由来するヒト抗体である。またより好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、抗体539B−X0041−D02に由来する重鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。またより好ましい別の実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、抗体539B−X0041−D02に由来する軽鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。
別の実施形態において、該タンパク質は、539B−X0041−D02の改変体、例えば、本明細書に記載の改変体の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その重鎖が539B−X0041−D02の改変体、例えば、本明細書に記載の改変体に由来するヒト抗体である。さらに別の好ましい実施形態において、該タンパク質は、その軽鎖が539B−X0041−D02の改変体、例えば、本明細書に記載の改変体に由来するヒト抗体である。またより好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、539B−X0041−D02の改変体、例えば、本明細書に記載の改変体に由来する重鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。また好ましい別の実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、539B−X0041−D02の改変体、例えば、本明細書に記載の改変体に由来する軽鎖の対応するCDRに由来するヒト抗体である。
一部の実施形態において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。別の実施形態において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、該タンパク質は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。該タンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。他の実施において、該タンパク質には、Fab2’、scFv、ミニボディー、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体、または本明細書における結合タンパク質のうちの1つの抗原結合部位を含む他の分子が含まれる。これらのFabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1、または他の適切な構築物として提供することができる。
一実施形態において、該タンパク質は、ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、該タンパク質は、1つまたは複数のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、全てのヒトフレームワーク領域を包含する。一実施形態において、該タンパク質は、ヒトFcドメイン、またはヒトFcドメインに対して少なくとも95、96、97、98、または99%同一であるFcドメインを包含する。
一実施形態において、該タンパク質は、霊長動物抗体もしくは霊長動物化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、該タンパク質は、1つまたは複数の霊長動物抗体フレームワーク領域、例えば、全ての霊長動物フレームワーク領域を包含する。一実施形態において、該タンパク質は、霊長動物Fcドメイン、または霊長動物Fcドメインに対して少なくとも95、96、97、98、または99%同一であるFcドメインを包含する。「霊長動物」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ピグミーチンパンジー))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル(gibon)、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)、およびメガネザルが含まれる。
特定の実施形態において、タンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を包含しない(例えば、マウス抗体またはウサギ抗体ではない)。
一実施形態において、該タンパク質はナノ粒子と物理的に会合しており、その細胞表面上においてMMP−12を発現する細胞へとナノ粒子を誘導するのに用いることができる。一実施形態において、該タンパク質は、エフェクター細胞(CDCまたはADCC)に、MMP−12を発現する細胞を死滅させる。
別の態様において、本開示は、MMP−12の競合的阻害剤であるMMP−12結合タンパク質を特徴とする。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−12基質(例えば、肺の細胞外マトリックス、エラスチン、ゼラチン、フィブロネクチン、apo[a]、apoB−100、コラーゲン、オステオネクチン、TFP1、α1−プロテアーゼ阻害剤、uPAR、およびCD14)と競合する、例えば、該基質と同じエピロープに結合し、例えば、基質の結合を防止する。
一部の態様において、本開示は、MMP−12とMMP−12基質(例えば、肺の細胞外マトリックス、エラスチン、ゼラチン、フィブロネクチン、apo[a]、apoB−100、コラーゲン、オステオネクチン、TFP1、α1−プロテアーゼ阻害剤、uPAR、およびCD14)との相互作用を阻害する方法を特徴とする。該方法は、本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質をMMP−12と接触させる(例えば、インビトロまたはインビボにおいて)工程を包含し、該結合タンパク質がMMP−12に結合し、これにより、MMP−12に対するMMP−12基質の結合を防止する。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−12上における、該基質と同じエピトープに結合する、例えば、該結合タンパク質は、競合的阻害剤である。一部の実施形態において、該結合タンパク質は該基質と同じエピトープには結合せず、該基質の結合能を低下させるかまたは阻害する立体変化をMMP−12内に引き起こす。
一態様において、本開示は、MMP−12結合タンパク質および薬物を包含する、MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲートを特徴とする。
一実施形態において、該結合タンパク質は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含み、かつ/または、該タンパク質は、MMP−12に結合し、かつ/もしくはこれを阻害し、例えば、MMP−12の触媒活性を阻害する。
一実施形態において、該薬物は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である。該細胞傷害剤は、例えば、アウリスタチン、DNA副溝結合剤(DNA minor groove binding agent)、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、ポドフィロトキシン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、コンブレタスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択することができる。一実施形態において、該細胞傷害剤はアウリスタチンであり、例えば、該アウリスタチンは、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB、およびアウリスタチンEから選択される。一実施形態において、該アウリスタチンはAFPまたはMMAFである。別の実施形態において、該細胞傷害剤はメイタシンノイドであり、例えば、該マイタンシノイドは、マイタンシノール、マイタシン、DM1、DM2、DM3、およびDM4から選択される。一実施形態において、該マイタンシノイドはDM1である。別の実施形態において、該細胞傷害剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、ドラスタチン10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、およびネトロプシンから選択される。一実施形態において、該細胞傷害剤はアウリスタチン、マイタンシノイド、またはカリケアマイシンである。
一実施形態において、細胞傷害剤は抗チューブリン剤であり、例えば、該抗チューブリン剤は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP−16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ジスコデルモリド、マイタンシノール、マイタシン、DM1、DM2、DM3、DM4、およびエレウテロビンから選択される。
一実施形態において、MMP−12結合タンパク質(例えば、抗体)は、リンカーを介して薬物(例えば、細胞傷害剤)にコンジュゲートしている。一実施形態において、該リンカーは、細胞内条件下において切断可能な、例えば、該切断可能なリンカーは、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーである。一実施形態において、該リンカーはペプチドリンカー、例えば、ジペプチドリンカー、例えば、val−citリンカーまたはphe−lysリンカーである。一実施形態において、該切断可能なリンカーは、5.5未満のpHで加水分解可能であり、例えば、該加水分解可能なリンカーは、ヒドラゾンリンカーである。別の実施形態において、切断可能なリンカーはジスルフィドリンカーである。
本明細書に記載の結合タンパク質は、例えば、薬学的に許容される担体を包含する医薬組成物として提供することができる。該組成物は、他のタンパク質分子種を少なくとも10、20、30、50、75、85、90、95、98、99、または99.9%含まない可能性がある。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、GMP(「医薬品の製造管理および品質管理の基準」)の下で生産することができる。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、薬学的に許容される担体、例えば、適切な緩衝剤または賦形剤中において提供される。
結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の結合タンパク質を含有する医薬組成物)の用量は、患者において、例えば、疾患部位において、MMP−12活性の約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または約100%を遮断するのに十分である。疾患に応じて、これには、例えば、約0.01mg/Kg〜約100mg/Kg、例えば、約0.1〜約10mg/Kgの用量が必要となる場合がある。例えば、該用量は、約0.1、約1、約3、約6、または約10mg/Kgの用量であり得る。例えば、150,000g/モルの分子量(2つの結合部位)を有するIgGの場合、これらの用量は、5Lの血液容量に対して、それぞれ約18nM、180nM、540nM、1.08マイクロM、および1.8マイクロMに対応する。薬剤は部分的に技術でもあるので、最適用量は臨床試験により確立されるが、この範囲内にある可能性が最も高い。
別の態様において、本開示は、試料、例えば、患者由来の試料(例えば、組織生検または血液試料)においてMMP−12を検出する方法を特徴とする。該方法は、該試料をMMP−12結合タンパク質と接触させる工程と、それが存在する場合に、該タンパク質とMMP−12との相互作用を検出する工程とを包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、検出可能な標識を包含する。MMP−12結合タンパク質を用いて、対象におけるMMP−12を検出することができる。該方法は、MMP−12結合タンパク質を対象に投与する工程と、該対象において該タンパク質を検出する工程とを包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、検出可能な標識をさらに包含する。例えば、該検出する工程は、該対象を画像化する工程を含む。例えば、MMP−12の活性は、例えば、肺気腫および慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、肺の炎症性障害を有する対象またはそれを有する疑いがある対象における炎症および/または疾患の進行についてのマーカーであり得る。
別の態様において、本開示は、MMP−12の活性を調節する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12を、MMP−12結合タンパク質と接触させ(例えば、ヒト対象において)、これにより、MMP−12の活性を調節する工程を包含する。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−12の活性を阻害する(例えば、MMP−12の触媒活性を阻害する)。
別の態様において、本開示は、癌(例えば、転移性癌)(例えば、癌を有する対象または癌を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における癌を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。例えば、該癌は、頭頚部癌、口腔癌、喉頭癌、軟骨肉腫、乳癌(エストロゲン受容体陽性(ER+)、エストロゲン受容体陰性(ER−)、Her2陽性(Her2+)、Her2陰性(Her2−)、またはこれらの組合せ、例えば、ER+/Her2+、ER+/Her2−、ER−/Her2+、またはER−/Her2−であり得る)、喉頭癌、卵巣癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、前立腺癌、結腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、精巣癌、黒色腫、または脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫)である。
MMP−12結合タンパク質は、対象における(例えば、転移性癌を有する対象または転移性癌を有する疑いがある対象における)転移活性を調節するのに有用であり得る。該タンパク質は、転移活性を調節するのに有効な量で該対象に投与することができる。例えば、該タンパク質は、腫瘍の増殖、腫瘍塞栓症、腫瘍の移動性、腫瘍の浸潤性、および癌細胞の増殖のうちの1つまたは複数を阻害する。
癌の治療(例えば、癌の治療および/または転移活性の調節)に関する、本明細書で開示される方法は、抗癌療法である第2の療法を該対象に施す工程(例えば、投与する工程)、例えば、化学療法剤の投与、例えば、VEGF経路を介するシグナル伝達をアンタゴナイズする薬剤、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))の投与をさらに包含し得る。一実施形態において、該第2の療法は、5−FU、ロイコボリン、および/またはイリノテカンを投与する工程を包含する。一実施形態において、該第2の療法は、Tie1阻害剤(例えば、抗Tie1抗体)を投与する工程を包含する。一実施形態において、該第2の療法は、プラスミン阻害剤(例えば、アミノ酸配列:
MHSFCAFKAETGPCRARFDRWFFNIFTRQCEEFIYGGCEGNQNRFESLEECKKMCTRD(配列番号1)
を含むタンパク質またはポリペプチドなど、米国特許第6,010,880号で開示されるクニッツドメイン)である。
別の態様において、本開示は、炎症(例えば、炎症、例えば、炎症性疾患と関連する炎症を有する対象または炎症、例えば、炎症性疾患と関連する炎症を有する疑いがある対象における)または炎症性疾患(例えば、炎症性疾患を有する対象または炎症性疾患を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。治療され得る炎症性疾患には、例えば、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、全身性硬化症、腎炎、脳脊髄炎(例えば、実験的自己免疫性脳脊髄炎)、関節リウマチ、脳炎(例えば、ウイルス性脳炎)、大腸炎(例えば、腸炎)、および神経炎症疾患が含まれる。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における炎症を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、炎症療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含し得る。例えば、特に、関節リウマチの場合、該第2の療法は、以下の薬剤:アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、エトドラク、コルチゾン(コルチコステロイド)、アンタシド、スクラルフェート、プロトンポンプ阻害剤、ミソプロストール、金(例えば、金塩、金チオグルコース、金チオマレート、経口金)、メトトレキサート、スルファサラジン、D−ペニシラミン、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シクロスポリン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、アダリムマブ、および/またはヒドロキシクロロキンのうちの1つまたは複数を投与する工程を含む。
別の態様において、本開示は、肺の炎症と関連する疾患(例えば、肺の炎症を有する対象または肺炎を有する疑いがある対象における)または肺の炎症と関連する疾患(例えば、肺の炎症と関連する疾患を有する対象または肺の炎症と関連する疾患を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。肺の炎症と関連する疾患には、例えば、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、および高酸素症における肺傷害が含まれる。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における肺の炎症を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、炎症に対する療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含し得る。
別の態様において、本開示は、心血管疾患(例えば、心血管疾患を有する対象または心血管疾患を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における心血管疾患を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、心血管疾患の療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含し得る。
別の態様において、本開示は、脳卒中または動脈瘤(例えば、脳卒中または動脈瘤を有する対象または脳卒中または動脈瘤を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における脳卒中または動脈瘤を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、脳卒中または動脈瘤の療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含し得る。
別の態様において、本開示は、MMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷(例えば、脊髄傷害)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12結合タンパク質を、対象における神経損傷を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。一実施形態において、該方法は、神経損傷の療法である第2の療法を施す工程をさらに包含する。
MMP−12結合タンパク質を投与する工程を包含する他の例示的な治療方法は、以下で説明される。本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、1つまたは複数の他のMMP阻害剤、例えば、小分子阻害剤、例えば、広域特異性を有する阻害剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態において、該小分子阻害剤は、本明細書中に記載の小分子阻害剤のうちの1つまたは複数である。別の実施形態において、1つまたは複数のMMP阻害剤は、別のMMP−12結合タンパク質、例えば、本明細書中に記載の別のMMP−12結合タンパク質を包含する。
MMP−12結合タンパク質は、対象(例えば、腫瘍を有するかまたは腫瘍を有する疑いがある対象)に対する薬剤の標的化された送達、例えば、該薬剤を、該対象における腫瘍へと誘導するのに有用である。例えば、腫瘍を有するかまたは腫瘍を有する疑いがある対象に、抗腫瘍剤(化学療法剤、毒素、薬物、または放射性核種(例えば、131I、90Y、177Lu)など)に連結されたMMP−12結合タンパク質を投与することができる。
別の態様において、本開示は、対象を画像化する方法を特徴とする。該方法は、MMP−12結合タンパク質を該対象に投与する工程を包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−12の触媒活性を実質的に阻害することのないタンパク質である。例示的なMMP−12結合タンパク質は、例えば、
など、本明細書で記載されている。MMP−12結合タンパク質は、M0030−A10、M0032−H09、M0038−A03、M0038−H04、M0039−B02、M0040−B05、M0041−A05、R011−B11、M0007−A10(また、M7A10とも称する)、またはM0008−E08(また、M8E8とも称する)であることが好ましい。該MMP−12結合タンパク質は、検出可能な標識(例えば、放射性核種またはMRIで検出可能な標識)を包含し得る。一実施形態において、該対象は、腫瘍を有するまたは腫瘍を有する疑いがある。該方法は、癌の診断、手術中における腫瘍の検出、手術後における腫瘍の検出、または腫瘍の浸潤活性のモニタリングに有用である。
一態様において、本開示は、本明細書に記載の障害、例えば、癌、炎症、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、および神経損傷 癌、炎症、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、および神経損傷を治療する薬剤を製造するための、本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質の使用を特徴とする。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付される図面および以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、該説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
本出願全体において引用される、参考文献、交付済みの特許、公開済みであるかまたは未公開の特許出願のほか、下記に列挙される参考文献を含めた全ての引用参考文献の内容は、それらの全体において、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。齟齬が生じた場合は、本明細書における任意の定義を含め、本出願により裁定される。
図1は、非阻害剤の結合タンパク質を用いる、MMP−12の阻害アッセイを示すグラフである。 図2Aは、増加させた濃度(nM)のMMP−12結合タンパク質(539B−M08H09)の存在下におけるヒトMMP−12活性(蛍光発光/分)を示す線グラフである。図2Bは、増加させた濃度(nM)のMMP−12結合タンパク質(539B−M08H09)の存在下におけるエラスチンの結合速度(dF/分)を示す線グラフである。図2Cは、増加させた濃度(nM)のMMP−12結合タンパク質(539B−M08H09)の存在下におけるマウスMMP−12活性(蛍光発光/分)を示す線グラフである。 図3Aは、ヒトMMP−12基質濃度(μM)に対する、MMP−12結合タンパク質(M08H09)の測定されたIC50(nM)を示す線グラフである。図3Bは、マウスMMP−12基質濃度(μM)に対する、MMP−12結合タンパク質(M08H09)の測定されたIC50(nM)を示す線グラフである。 図4Aおよび4Bは、増加させた濃度(nM)のMMP−12結合タンパク質(539B−M11H11のFab(図4A)およびIgG(図4B))の存在下におけるマウスMMP−12活性(蛍光発光/秒)を示す線グラフである。 図5は、4つの異なるMMP−12結合タンパク質であるM08H09、M0013−G12、M0016−A11、およびR0062−E11を用いたELISA競合アッセイを示す棒グラフである。 図6は、気道炎症のOVAをチャレンジしたマウスモデルにおける気管支周囲炎症スコアに対する、各用量のMMP−12結合タンパク質であるM08−H09およびM11−H11の効果を示す棒グラフである。 図7Aおよび7Bは、各用量のMMP−12結合タンパク質であるM08−H09およびM11−H11を投与された、気道炎症のOVAをチャレンジしたマウスモデルにおける、好酸球百分率(図7A)および好酸球カウント(図7B)を示す棒グラフである。 図8は、カラギーナンにより刺激されたマウス空気嚢内への炎症細胞の浸潤に対する、MMP−12結合タンパク質(M08−H09)の効果を示す棒グラフである。 図9は、増加させた濃度(nM)のMMP−12結合タンパク質(539B−M131A06)、およびグリコシル化部位を除去するように改変された539B−M131A06の変化形であるMMP−12結合タンパク質(539B−M131A06−GA−S)の存在下における、ヒトMMP−12活性(蛍光発光/秒)を示す線グラフである。 図10Aおよび10Bは、親和性および阻害特性の改良に寄与する、親和性成熟改変体のHV−CDRにおけるアミノ酸変化の同定(サイクル1および2)をまとめる図である。図10B中の行は、図10A中の行に対応する。 図10Aおよび10Bは、親和性および阻害特性の改良に寄与する、親和性成熟改変体のHV−CDRにおけるアミノ酸変化の同定(サイクル1および2)をまとめる図である。図10B中の行は、図10A中の行に対応する。
マトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP−12)は、哺乳動物において、細胞外マトリックスの各種タンパク質を分解する分泌型亜鉛メタロプロテアーゼ群のメンバーであるIV型コラゲナーゼである。この群の他のメンバーには、間質コラゲナーゼ(MMP−1)およびストロメライシン(MMP−3)が含まれる。MMP−12(別名、マクロファージエラスターゼ、マクロファージメタロエラスターゼ、またはマトリックスメタロプロテアーゼ12)は、多くの疾患状態に関与すると考えられている。癌および他の疾患における安全性および有効性について、MMP−12に対する多くの小分子阻害剤が調べられている。現在までのところ、全ての阻害剤が、十分な効力もしくは十分な特異性、またはこれらの両方を欠いている。本開示は、MMP−12に結合し、場合によって、MMP−12の活性を阻害するタンパク質を提供する。多くの場合において、開示されるMMP−12結合タンパク質は、ヒトMMP12およびマウスMMP12に結合し、これらの酵素活性を阻害する。他の場合には、MMP−12に結合するが、MMP−12の活性は阻害しないMMP−12結合タンパク質が開示される。このようなMMP−12結合タンパク質は、例えば、MMP−12の存在を決定するのに有用である。
「結合タンパク質」という用語は、標的分子と相互作用し得るタンパク質を指す。この用語は、「リガンド」と互換的に用いられる。「MMP−12結合タンパク質」とは、MMP−12と相互作用し得るタンパク質を指し、特に、MMP−12と優先的に相互作用し、かつ/またはこれらを阻害するタンパク質を包含する。例えば、MMP−12結合タンパク質は、抗体である。
「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含するタンパク質を指す。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)を包含することができる。別の例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を包含する。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、単鎖抗体、FabフラグメントおよびsFabフラグメント、F(ab’)、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFv、ならびにドメイン抗体(dAb)フラグメント(de Wildtら、Eur J Immunol.、1996年、26巻、3号、629〜39頁))のほか、完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびに、これらの亜型)の構造的特徴を有し得る。抗体は、任意の供給源に由来し得るが、霊長動物(ヒトおよび非ヒト霊長動物)および霊長化動物が好ましい。
VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と称するより保存的な領域がその間を占める、「相補性決定領域」(「CDR」)と称する超可変領域へとさらに細分される。フレームワーク領域およびCDRの範囲(extent)は正確に定義されている(Kabat, E.A.ら(1991年)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication 91−3242号;およびChothia, C.ら(1987年)、J. Mol. Biol.、196巻、901〜917頁;また、www.hgmp.mrc.ac.ukも参照されたい)。本明細書では、Kabatによる定義を用いる。各VHおよびVLは3つずつのCDRおよび4つずつのFRからなることが典型的であり、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと配列される。
本明細書で用いられる「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、1つまたは複数のCDR領域が抗原結合部位に適する高次構造に位置するように、免疫グロブリン可変ドメイン構造を形成し得るアミノ酸配列を指す。例えば、該配列は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を包含し得る。例えば、該配列は、1つ、2つ、またはこれを超えるN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を除外する場合もあり、1つまたは複数の挿入または付加的末端アミノ酸を包含する場合もあり、他の変化物を包含する場合もある。一実施形態において、免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含するポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して、抗原結合部位、例えば、MMP−12タンパク質と優先的に相互作用する構造、例えば、MMP−12触媒ドメインを形成し得る。
抗体のVH鎖またはVL鎖は、重鎖または軽鎖の定常領域の全部または一部をさらに包含し、これにより、それぞれ、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を形成し得る。一実施形態において、抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖による4量体であり、該免疫グロブリンの重鎖および軽鎖は、例えば、ジスルフィド結合により相互接続される。IgGにおいて、重鎖定常領域は、3つの免疫グロブリンドメインである、CH1、CH2、およびCH3を包含する。軽鎖定常領域は、CLドメインを包含する。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含めた、宿主組織または因子に対する抗体の結合を媒介することが典型的である。免疫グロブリンの軽鎖は、κ型の場合もあり、λ型の場合もある。一実施形態において、抗体はグリコシル化されている。抗体は、抗体依存性細胞傷害作用および/または補体媒介性細胞傷害作用について機能的であり得る。
抗体の1つまたは複数の領域は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、1つまたは複数の可変領域は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、1つまたは複数のCDR、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3はヒトであり得る。軽鎖CDRの各々はヒトであり得る。HC CDR3はヒトであり得る。1つまたは複数のフレームワーク領域、例えば、HCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4は、ヒトであり得る。例えば、Fc領域はヒトであり得る。一実施形態において、全てのフレームワーク領域は、ヒトである、例えば、ヒト体細胞、例えば、免疫グロブリンを生成する造血細胞または非造血細胞に由来する。一実施形態において、ヒト配列は、生殖細胞系列配列である、例えば、生殖細胞系列核酸によりコードされる。一実施形態において、選択されたFabのフレームワーク(FR)残基は、最も類似する霊長動物生殖細胞系列遺伝子、とりわけ、ヒト生殖細胞系列遺伝子内における対応する残基のアミノ酸の種類へと転換することができる。定常領域のうちの1つまたは複数は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、免疫グロブリン可変ドメイン、該定常領域、該定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CL1)、または全抗体の少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。
抗体の全部または一部が、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによりコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α(IgA1およびIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμの定常領域遺伝子のほか、多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDaまたは約214のアミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)における可変領域遺伝子、およびCOOH末端におけるκまたはλの定常領域遺伝子によりコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDaまたは約446のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)、および前述の他の定常領域遺伝子のうちの1つ、例えば、γ(約330アミノ酸をコードする)により同様にコードされる。HC CDR3は、約3アミノ酸残基〜35アミノ酸残基超で変化するので、ヒトHCの長さはかなり変化する。
全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、目的の標的に特異的に結合する能力を保持する、全長抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語の内に包含される結合フラグメントの例には、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる1価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを包含する2価フラグメントである、F(ab’)フラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなる、Fdフラグメント;(iv)抗体の1本のアームのVLドメインおよびVHドメインからなる、Fvフラグメント;(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Wardら(1989年)、Nature、341巻、544〜546頁);および(vi)機能性を保持する、単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、個別の遺伝子によりコードされるが、合成リンカーによる組換え法を用いてこれらを接合することができ、これにより、これらを単鎖タンパク質として作製することが可能となり、ここで、該VL領域およびVH領域は対合して、単鎖Fv(scFv)として公知の1価分子を形成する。例えば、米国特許第5,260,203号、同第4,946,778号、および同第4,881,175号;Birdら(1988年)、Science、242巻、423〜426頁;およびHustonら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、5879〜5883頁を参照されたい。
当業者に公知の従来の技法を含めた任意の適切な技法を用いて、抗体フラグメントを得ることができる。「単一特異性抗体」という用語は、特定の標的、例えば、エピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体を指す。この用語は、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を包含し、これは、本明細書で用いられる通り、該抗体がどのようにして作製されたかに関わらず、単一の分子組成による抗体またはこれらのフラグメントの調製物を指す。
「事実上ヒト」免疫グロブリン可変領域とは、該免疫グロブリン可変領域が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含する免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒト」抗体とは、該抗体が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトアミノ酸位置を包含する抗体である。
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域とは、該免疫グロブリン可変領域が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含するように改変された免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンについての記載には、例えば、US6,407,213およびUS5,693,762が含まれる。
本明細書で用いられる「結合親和異性」とは、見かけの会合定数またはKを指す。Kとは、解離定数(K)の逆数である。結合タンパク質は、例えば、特定の標的分子、例えば、MMP−9、MMP−16、またはMMP−24に対する結合親和性が、少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011−1であり得る。第2の標的と比べて第1の標的に対してより高い親和性による結合タンパク質の結合は、第1の標的に対する結合について、第2の標的に対する結合についてのK(またはKの数値)より高いK(またはより小さなKの数値)により表示することができる。このような場合、結合タンパク質は、第2の標的(例えば、第2の高次構造にある同じタンパク質もしくはその模倣体;または第2のタンパク質)と比べて、第1の標的(例えば、第1の高次構造にあるタンパク質またはその模倣体)に対する特異性を有する。結合親和性の差(例えば、特異性または他の比較についての差)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、または10倍であり得る。
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光光度法(例えば、蛍光アッセイを用いる)を含めた各種の方法により決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、トリス緩衝液(pH7.5の50mMトリス、150mM NaCl、5mM CaCl)に存在する。これらの技法を用いて、結合タンパク質(または標的)濃度の関数として、結合した結合タンパク質および遊離の結合タンパク質の濃度を測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([結合])は、以下の式:
[結合]=N・[遊離]/((1/Ka)+[遊離])
[式中、(N)とは、標的分子当たりの結合部位数である]により、遊離の結合タンパク質の濃度([遊離])および標的上における結合タンパク質の結合部位濃度と関係する。
しかし、例えば、ELISAまたはFACS解析などの方法を用いて決定され、Kに比例し、したがって、より高い、例えば、2倍の親和性が、親和性の定性的測定値を得ることであるのか、または、例えば、機能的アッセイ、例えば、インビトロアッセイもしくはインビボアッセイにおける活性により親和性の推定値を得ることであるのかの決定など、比較に用い得る親和性の定量的測定値を得れば十分な場合もあるので、Kを正確に決定することが常に必要なわけではない。
「単離組成物」とは、そこから単離組成物を得ることができる天然試料の少なくとも1つの成分のうち、少なくとも90%が除去された組成物(例えば、タンパク質)を指す。目的の分子種または分子種集団が、重量−重量ベースで少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98、または99%純粋である場合、人工的に作製されるかまたは天然に生成される組成物は、「少なくとも」特定程度の純度「の組成物」であり得る。
「エピトープ」とは、結合タンパク質(例えば、Fabまたは全長抗体などの抗体)が結合する、標的化合物上における部位を指す。標的化合物がタンパク質である場合、該部位は、完全にアミノ酸成分からなる場合もあり、完全に該タンパク質のアミノ酸に対する化学修飾(例えば、グリコシル部分)からなる場合もあり、これらの組合せからなる場合もある。重複するエピトープには、少なくとも1つの共通するアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基、または他の分子特徴が含まれる。
2つの配列間における「相同性」または「配列同一性」(本明細書において、該用語は互換的に用いられる)の計算は、以下の通りに実施される。配列は、最適比較を目的として整列される(例えば、最適アライメントのために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較を目的として非相同配列を除外する(disregard)ことができる)。ギャップペナルティーを12、ギャップ伸長ペナルティーを4、また、フレームシフトギャップペナルティーを5とするBlossum62スコアリング行列を伴う、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いると、最高のスコアとして、最適アライメントが決定される。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、該分子は、その位置において同一である(本明細書で用いられるアミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」と同義である)。該2つの配列間における百分率による同一性は、該配列によって共有される同一位置数の関数である。
好ましい実施形態において、比較を目的として整列された基準配列(reference sequence)の長さは、該基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。例えば、該基準配列は、免疫グロブリン可変ドメイン配列の全長であり得る。
本明細書で用いられる「実質的に同一な」(または「実質的に相同な」)という用語は、本明細書において、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列が、同様の活性、例えば、結合活性、結合優先性、または生物学的活性を有する(またはこれを有するタンパク質をコードする)ように、第2のアミノ酸配列または核酸配列に対して十分な数の同一または同等の(例えば、類似の側鎖、例えば、保存的アミノ酸置換を伴う)アミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する、第1のアミノ酸配列または核酸配列を指す。抗体の場合、第2の抗体は、同じ抗原に対する特異性が同じであり、同じ抗原に対する親和性が少なくとも50%、少なくとも25%、または少なくとも10%である。
本明細書で開示される配列に対して類似であるかまたは相同な配列(例えば、少なくとも85%の配列同一性)もまた、この適用の一部である。一部の実施形態において、該配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上であり得る。加えて、該核酸セグメントが選択的なハイブリダイゼーション条件(例えば、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件)下でハイブリダイズする場合は、該鎖の相補体に対しても実質的な同一性が存在する。該核酸は、全細胞に存在する場合もあり、細胞溶解物に存在する場合もあり、部分的に精製された形態または実質的な純粋形態で存在する場合もある。
本明細書で用いられる「低度の厳密性条件、中程度の厳密性条件、高度の厳密性条件、または極めて高度の厳密性条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件について記載するものである。ハイブリダイゼーション反応を実施するための指針は、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons, N.Y.(1989年)、第6.3.1〜6.3.6節において見出すことができる。この参考文献には、水性の方法、または非水性の方法が記載されており、いずれも使用することができる。本明細書で参照される具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:(1)約45℃で6倍濃度の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で静置した後、少なくとも50℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中において2回の洗浄を行う低度の厳密性ハイブリダイゼーション条件(低度の厳密性条件の場合、洗浄温度を55℃まで上げることができる);(2)約45℃で6倍濃度のSSC中で静置した後、60℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う中程度の厳密性ハイブリダイゼーション条件;(3)約45℃で6倍濃度のSSC中で静置した後、65℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う高度の厳密性ハイブリダイゼーション条件;(4)極めて高度の厳密性ハイブリダイゼーション条件では、約65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中で静置した後、65℃で0.2倍濃度のSSC、1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う。極めて高度の厳密性条件である(4)が好ましい条件であり、別段に指定しない限り、これを用いるものとする。本開示は、本明細書に記載の核酸またはその相補体、例えば、本明細書に記載の結合タンパク質をコードする核酸に対して、低度、中程度、高度、または極めて高度の厳密性でハイブリダイズする核酸を包含する。該核酸は、基準核酸と同じ長さの場合もあり、同核酸の長さの30、20、または10%以下の場合もある。該核酸は、本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメインをコードする領域に対応し得る。
MMP−12結合タンパク質は、本明細書に記載の結合タンパク質と比べて、タンパク質の機能に対して実質的な影響を及ぼさない変異(例えば、少なくとも1、2または4、および/または15、10、5または3より少ない)(例えば、保存的アミノ酸置換または非必須アミノ酸置換)を有し得る。特定の置換が許容されるかどうか、すなわち、結合活性などの生物学的特性に有害な影響を与えないかどうかは、例えば、該変異が保存的であるかどうかを評価することにより予測することもでき、Bowieら(1990年)、Science、247巻、1306〜1310頁の方法により予測することもできる。
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において規定されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香環側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。多くのフレームワークおよびCDRのアミノ酸残基は、1つまたは複数の保存的置換を包含することが可能である。
生体ポリマーのモチーフ配列は、アミノ酸を変化させることが可能な位置を包含し得る。例えば、このような文脈での記号「X」は一般に、任意のアミノ酸(例えば、20の天然アミノ酸のうちのいずれか、またはシステイン以外の19のアミノ酸のいずれか)を指す。他の許容されるアミノ酸はまた、例えば、カッコおよびスラッシュを用いても表示することができる。例えば、「(A/W/F/N/Q)」とは、その特定の位置において、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、およびグルタミンが許容されることを意味する。
「非必須」アミノ酸残基が、生物学的活性を消失させずに、またはより好ましくは、生物学的活性を実質的に変化させずに、結合剤、例えば、抗体の野生型配列から変化させることが可能な残基であるのに対し、「必須」アミノ酸残基を変化させると、結果として活性が実質的に失われる。
「同種リガンド」とは、その天然に存在する変異体(例えば、スプライス変異体、天然に存在する変異体、およびアイソフォーム)を含めた、MMP−12の天然に存在するリガンドを指す。
統計学的有意性は、当技術分野で公知の任意の方法により決定することができる。例示的な統計学的検定には、スチューデントt検定、マンホイットニーによるノンパラメトリックのU検定、およびウィルコクソンによるノンパラメトリックの統計学的検定が含まれる。一部の統計学的に有意な関係では、P値が0.05または0.02未満である。特定の結合タンパク質は、例えば、特異性または結合において、統計学的な有意差を示し得る(例えば、P値<0.05または0.02)。「誘導する」、「阻害する」、「強化する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」などの用語は、2つの状態間における識別可能で定性的または定量的な差を示し、該2つの状態間における差、例えば、統計学的な有意差を指す場合がある。
MMP−12結合タンパク質
本開示は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12、および/またはマウスMMP−12)に結合し、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を包含するタンパク質を提供する。例えば、MMP−12結合タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含する。本明細書では、多くの例示的なMMP−12結合タンパク質が説明される。
MMP−12結合タンパク質は、単離タンパク質(例えば、他のタンパク質を少なくとも70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%含まない)であり得る。
MMP−12結合タンパク質はさらに、MMP−12、例えば、ヒトMMP−12、および/またはマウスMMP−12を阻害し得る。該結合タンパク質は、MMP−12(例えば、ヒトMMP−12)の触媒活性を阻害し得る。一実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−12の触媒ドメインに結合し、例えば、該タンパク質は、MMP−12の活性部位内またはその近傍にある残基に接触する。一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−12の活性部位内またはその近傍にある残基には接触せず、代わりにMMP−12上における別の場所で結合し、MMP−12においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。
例示的なMMP−12結合タンパク質には、
が含まれる。MMP−12結合タンパク質は、M0030−A10、M0008−H09、M0032−H09、M0038−A03、M0038−H04、M0039−B02、M0040−B05、M0041−A05、R011−B11、M0007−A10(また、M7A10とも称する)、またはM0008−E08(また、M8E8とも称する)であることが好ましい。
MMP−12結合タンパク質は、抗体であり得る。MMP−12結合抗体では、それらのHCおよびLC可変ドメイン配列を、単一のポリペプチド(例えば、scFv)内、または異なるポリペプチド(例えば、IgGまたはFab)に組み入れることができる。
マトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP−12)
MMP−12の配列:MMP−12は、フルネームがマトリックスメタロプロテアーゼ12前駆体である、MMP12と称する遺伝子によりコードされる。MMP−12の同義語には、マトリックスメタロプロテアーゼ12、マクロファージエラスターゼ、マクロファージメタロエラスターゼが含まれる。Homo sapiensおよびMus musculusについて、DNA配列が知られている。ヒトMMP12をコードする例示的なcDNA配列およびそのアミノ酸配列を以下に示す。マウスMMP12をコードする例示的なcDNA配列およびアミノ酸配列もまた以下に示す。例示的なMMP−12タンパク質には、ヒトまたはマウスのMMP−12アミノ酸配列、これらの配列のうちの1つ、またはそのフラグメント、例えば、シグナル配列またはプロドメインを伴わないフラグメントに対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列が含まれ得る。
MMP−12遺伝子の多型は、例えば、(2002年)、J Am Coll Cardiol.、第3期、40巻、1号、43〜8頁;(2002年)、Hum Mol Genet.、第1期、11巻、5号、569〜76頁;(2001年)、Stroke、32巻、9号、2198〜202頁;および(2000年)、Circ Res.、86巻、9号、998〜1003頁において説明されている。
MMP−12を調節する因子:MMP−12の発現は、多くの因子により調節される。上方調節についての報告には、Oncogene、2004年1月22日、23巻、3号、845〜51頁(病期Iの肺癌における再発、症例10例中2例);Ann Neurol.、2003年6月、53巻、6号、731〜42頁(コラゲナーゼ誘導型脳内出血ラットモデル);Cancer Res.、2005年5月15日、65巻、10号、4261〜72頁(タンパク質キナーゼC/p53耐性細胞);Br J Dermatol.、2005年4月、152巻、4号、720〜6頁(9例の扁平上皮癌患者に由来する試料);Cardiovasc Res.、2005年5月1日、66巻、2号、410〜9頁(老化);J Immunol.、2005年4月15日、174巻、8号、4953〜9頁(サーファクタントタンパク質D−/−マウス);J Biol Chem.、2005年6月3日、280巻、22号、21653〜60頁(角膜創傷の修復);Surgery.、2005年4月、137巻、4号、457〜62頁(マウスの大動脈周囲におけるCaClの適用);J Virol.、2005年4月、79巻、8号、4764〜73頁(マウスのウイルス性脳炎);Biochem Biophys Res Commun.、2005年4月29日、330巻、1号、194〜203頁(マウスにおけるタバコの煙の濃縮物);Inflamm Res.、2005年1月、54巻、1号、31〜6頁(COPD患者に由来する気管支肺胞洗浄液および肺組織);Am J Respir Cell Mol Biol.、2005年4月、32巻、4号、311〜8頁(トランスジェニックマウスにおけるヒトIL−1βの誘導);Toxicol Pathol.、2004年5〜6月、32巻、3号、351〜6頁(マウスにおけるタバコの煙);Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.、2004年4月、286巻、4号、:L801〜7頁(リソソームの酸リパーゼ遺伝子ノックアウトマウス);J Neurosci.、2004年2月11日、24巻、6号、1521〜9頁(A1アデノシン受容体ヌルマウス);J Neuroimmunol.、1998年7月1日、87巻、1〜2号、62〜72頁(実験誘導遅発型MS過敏性モデル);Scand J Immunol.、2005年1月、61巻、1号、10〜7頁(IL−4);J Pediatr Gastroenterol Nutr.、2005年1月、40巻、1号、60〜6頁(腸炎);J Cell Physiol.、2005年7月、204巻、1号、139〜45頁(スタチン);J Immunol.、2004年10月15日、173巻、8号、5209〜18頁(実験的自己免疫性脳脊髄炎);J Cardiovasc Pharmacol.、2004年7月、44巻、1号、57〜65頁(頚動脈における内皮傷害を伴う高コレステロール血症ハムスター);Cancer Metastasis Rev.、2004年1〜6月、23巻、1〜2号、101〜17頁(結腸直腸癌);Free Radic Biol Med.、2004年3月15日、36巻、6号、782〜801頁(酸化的ストレス);Chest.、2004年2月、125巻、2号、466〜72頁(葉巻タバコの煙、紙巻タバコの煙、CPOD)が含まれる。
下方調節、または上方調節の不在は、Inflammation.、2003年4月、27巻、2号、107〜13頁(II型コラーゲンにより免疫したマウス);Cancer Res.、2003年1月1日、63巻、1号、256〜62頁(エプスタイン−バールウイルスタンパク質;鼻咽頭癌);Curr Eye Res.、1998年2月、17巻、2号、132〜40頁(死亡後におけるヒトの眼に由来するヒト光受容体間マトリックスおよび硝子体);およびScand J Immunol.、2005年1月、61巻、1号、10〜7頁(デキサメタゾン)において報告されている。
MMP−12の内因性阻害剤:MMP−12には、多数の内因性阻害剤が存在する。他のMMPと同様、MMP−12もTIMPにより阻害される(Murphy, G.およびWillenbrock, F.(1995年)、Methods Enzymol.、248巻、496〜510頁)。
MMP−12の小分子阻害剤:MMP−12の小分子阻害剤は、合成されて調べられている。これらの大半は、効力が不十分であるかもしくは特異性が不十分であるか、またはこれらの両方である。報告には、Proc Natl Acad Sci USA.、2005年4月12日、102巻、15号、5334〜9頁(アセトヒドロキサム酸およびN−イソブチル−N−[4−メトキシフェニルスルホニル]グリシルヒドロキサム酸);Arthritis Rheum.、2004年10月、50巻、10号、3275〜85頁(MMP活性に対する一般的なヒドロキサム酸阻害剤);Arch Biochem Biophys.、2003年1月15日、409巻、2号、335〜40頁(lin24ペプチド);J Mol Biol.、2001年9月28日、312巻、4号、743〜51頁(ヒドロキサム酸阻害剤である、CGS27023A);J Mol Biol.、2001年9月28日、312巻、4号、731〜42頁(バチマスタット(BB−94));Anticancer Res.、2001年1〜2月、21巻、1A号、145〜55頁(軟骨から作製された経口での生物学的利用可能な抽出物である、AE−941);J Comb Chem.、2000年11〜12月、2巻、6号、624〜38頁(ビーズ上におけるXXX−Gpsi(PO2H−CH2)L−XXXライブラリー);Biochim Biophys Acta.、2000年3月16日、1478巻、1号、51〜60頁(緑茶ポリフェノール);J Leukoc Biol.、1984年5月、35巻、5号、449〜57頁(ペプチドクロロメチルケトン);Am Rev Respir Dis.、1982年2月、125巻、2号、203〜7頁(エラスターゼ阻害剤のバッテリー);Mem Inst Oswaldo Cruz.、2005年3月、100巻、167〜172頁(マリマスタット);J Mol Biol.、2004年8月20日、341巻、4号、1063〜76頁(CP−271485、PF−00356231、およびPD−0359601);Inflamm Res.、2003年3月、52巻、3号、95〜100頁;Bioorg Med Chem Lett.、2004年10月4日、14巻、19号、4935〜9頁(新規のオキサゾリン亜鉛結合基を伴う阻害剤);およびJ Cardiovasc Pharmacol.、2004年7月、44巻、1号、57〜65頁(ONO−4817)が含まれる。MMP−12の他の小分子阻害剤は、例えば、米国特許出願第20050014817号(フルオロチオフェン誘導体)、米国特許出願第20050014816号(チオフェンアミノ酸誘導体)、米国特許第6,770,640号(1−カルボキシメチル−2−オキソ−アゼパン誘導体)、PCT出願公開第WO200040577号(1−カルボキシメチル−2−オキソ−アゼパン誘導体)、PCT出願公開第WO200532541号(置換複素環メルカプトスルフィド阻害剤)、PCT出願公開第WO200183431号、米国特許出願第20030158155号、欧州特許第1288199号、PCT出願公開第WO200040600号;ならびに米国特許第6,352,976号、米国特許第6,350,907号、米国特許第6,924,276号、米国特許第6,916,807号、米国特許第6,686,355号、米国特許第6,548,477号、および米国特許第5,506,242号において説明されている。該小分子を、例えば、本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質と組み合わせて投与し、MMP−12を阻害することができる。
MMP−12に対する低分子干渉RNA阻害剤:MMP−12は、低分子干渉RNA(siRNA)により阻害することができる。用い得るsiRNAの例は、米国特許公開第20040087533号およびPCT特許出願公開第WO200409098号で説明されている。siRNAを、例えば、本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質と組み合わせて投与し、MMP−12を阻害することができる。
薬物コンジュゲート
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、薬物(例えば、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または免疫調節剤)にコンジュゲートさせることができる。該コンジュゲートは、治療的に用いることもでき、予防的に用いることもできる、例えば、該結合タンパク質により、例えば、薬物が疾患部位に効果を及ぼす(例えば、標的細胞に対して細胞増殖抑制効果または細胞傷害効果を引き起こす)ように、例えば、インビボにおいて、例えば、疾患部位(例えば、腫瘍または炎症部位)を該薬物の標的とすることができる。
一部の実施形態において、結合タンパク質は、それ自体で治療的または予防的効力を有する(例えば、該タンパク質は、MMP−12を調節する(例えば、アンタゴナイズする)場合もあり、MMP−12を発現する細胞(例えば、内皮細胞または腫瘍細胞)に対して、細胞増殖抑制効果または細胞傷害効果を引き起こす場合もある)。結合タンパク質および薬物の両方が、MMP−12に対して効果(例えば、インビボにおける、例えば、疾患部位(例えば、腫瘍または望ましくない新脈管形成部位もしくは血管形成部位)に対する、例えば、治療効果)を及ぼす(例えば、相加的または相乗作用的に)ように、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを用いることができる。薬物および/または結合タンパク質は、例えば、細胞傷害性の場合もあり、細胞増殖抑制性の場合もあり、標的とされる細胞が分裂および/または存続する能力を他の形で防止するかまたは低下させる(例えば、標的とされる細胞により該薬物が取り込まれるかまたは内部化されるとき、および/またはMMP−12に該結合タンパク質が結合するとき)場合もある。例えば、標的とされる細胞が癌細胞である場合、薬物および/または結合タンパク質は、該細胞が分裂および/または転移する能力を防止するかまたは低下させることが可能である。
本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用い得る有用な薬物のクラスには、例えば、抗チューブリン剤、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(白金)錯体、ビス(白金)錯体、および三核白金錯体、ならびにカルボプラチンなどの白金錯体)、アントラサイクリン、抗生剤、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノールのプレフォーミング化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどの細胞傷害剤または免疫調節剤が含まれる。
個々の細胞傷害剤または免疫調節剤には、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニン、スルホキシイミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(アクチノマイシン)、ダウノルビシン、ダカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、ラパマイシン(Sirolimus)、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16、およびVM−26が含まれる。
一部の典型的な実施形態において、薬物は、細胞傷害剤を含む。適切な細胞傷害剤には、例えば、ドラスタチン(例えば、アウリスタチンE、AFP、MMAF、およびMMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エンジインおよびレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンA、エポチロンB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、ジスコデルモリド、エレウテロビン、ミトキサントロンが含まれる。
一部の実施形態において、薬物は、AFP、MMAF、およびMMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、パクリタキセル、ドセタキセル、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、ドラスタチン10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、マイタンシン、DM−1、またはネトロプシンなどの細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシンC、またはエトポシドなど、従来の化学療法剤を含む細胞傷害剤である。一部の実施形態において、薬物は、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロン、およびビンクリスチン)、CHOP−R(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン、およびリツキシマブ)、またはABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)などの組合せ療法であり得る。CC−1065類似体(例えば、DC1)、カリケアマイシン、マイタンシン、ドラスタチン10の類似体、リゾキシン、およびパリトキシンなどの薬剤もまた用いることができる。
具体的な実施形態において、薬物は、アウリスタチンE(当技術分野では、ドラスタチン10としても公知)またはその誘導体を含む、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤であり得る。一般に、アウリスタチンE誘導体は、例えば、アウリスタチンEとケト酸との間で形成されるエステルである。例えば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれ、AEBおよびAEVBを生成し得る。他のアウリスタチン誘導体には、AFP、MMAF、およびMMAEが含まれる。アウリスタチンEおよびその誘導体の合成および構造は、US20030083263およびUS20050009751、ならびに米国特許第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,665,860号;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および同第4,486,414において説明されている。一部の好ましい実施形態では、MMAFまたはAFPが用いられる。
具体的な実施形態において、薬物は、DNA副溝結合剤を含む細胞傷害剤である。例えば、米国特許第6,130,237号を参照されたい。例えば、一部の実施形態において、該副溝結合剤は、CBI化合物である。他の実施形態において、該副溝結合剤は、エンジイン(例えば、カリケアマイシン)である。
MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用い得る抗チューブリン剤の例には、タキサン(例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル)、TAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびドラスタチン(例えば、アウリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が含まれるがこれらに限定されない。他の抗チューブリン剤には、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチン、およびコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、エレウテロビン、リゾキシン/マイタンシン、アウリスチン、ドラスタチン10、MMAE、およびペロルシドAが含まれる。
一部の実施形態において、薬物は、抗チューブリン剤などの細胞傷害剤である。一部の実施形態において、該抗チューブリン剤は、アウリスタチン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、またはドラスタチンである。一部の実施形態において、該抗チューブリン剤は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP−16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ジスコデルモリド、マイタンシン、DM1、DM2、DM3、DM4、およびエレウテロビンである。
一部の実施形態において、該細胞傷害剤は、抗チューブリン剤の別の群であるマイタンシノイドを含む。例えば、具体的な実施形態において、該マイタンシノイドは、マイタンシンまたはDM−1(ImmunoGen,Inc.製;また、Chariら、Cancer Res.、52巻、127〜131頁(1992年)も参照されたい)である。一部の実施形態では、硫黄原子を保有するα炭素原子が、1つまたは2つのアルキル置換基を保有する、立体障害された、チオールおよびジスルフィドを含有するマイタンシノイドが、結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用いられる(例えば、US2007−0292422;US2007−0264266)。
一部の実施形態において、薬物は、DNAを破壊するように作用する作用物質を含む。薬物は、エンジイン(例えば、カリケアマイシンおよびエスペラマイシン)およびエンジイン以外の小分子薬剤(例えば、ブレオマイシン、メチジウムプロピル−EDTA−Fe(II))から選択することができる。他の有用な薬物には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ジスタマイシンA、シスプラチン、マイトマイシンC、エクテイナシジン、デュオカルマイシン/CC−1065、およびブレオマイシン/ペプレオマイシンが含まれる。
他の実施形態において、薬物は、Asaley(NSC 167780)、AZQ(NSC 182986)、BCNU(NSC 409962)、ブスルファン(NSC 750)、カルボキシフタラト白金(NSC 271674)、CBDCA(NSC 241240)、CCNU(NSC 79037)、CHIP(NSC 256927)、クロラムブシル(NSC 3088)、クロロゾトシン(NSC 178248)、シス白金(NSC 119875)、クロメソン(NSC 338947)、シアノモルフォリノドキソルビシン(NSC 357704)、シクロジソン(NSC 348948)、ジアンヒドロガラクチトール(NSC 132313)、フルオロドパン(NSC 73754)、ヘプスルファム(NSC 329680)、ヒカントン(NSC 142982)、メルファラン(NSC 8806)、メチルCCNU(NSC 95441)、マイトマイシンC(NSC 26980)、ミトゾラミド(NSC 353451)、ナイトロジェンマスタード(NSC 762)、PCNU(NSC 95466)、ピペラジン(NSC 344007)、ピペラジンジオン(NSC 135758)、ピポブロマン(NSC 25154)、ポルフィロマイシン(NSC 56410)、スピロヒダントインマスタード(NSC 172112)、テロキシロン(NSC 296934)、テトラプラチン(NSC 363812)、チオ−テパ(NSC 6396)、トリエチレンメラミン(NSC 9706)、ウラシルナイトロジェンマスタード(NSC 34462)、またはYoshi−864(NSC 102627)などのアルキル化剤を含み得る。
一部の実施形態において、薬物は、アロコルヒチン(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(NSC 33410)、ドラスタチン10(NSC 376128)(NG−アウリスタチンに由来)、マイタンシン(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、タキソール(NSC 125973)、タキソール誘導体(NSC 608832)、チオコルヒチン(NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、または硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)などの抗有糸分裂剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、カンプトテシン(NSC 94600)、カンプトテシンNa塩(NSC 100880)、アミノカンプトテシン (NSC 603071、 カンプトテシン誘導体(NSC 95382)、カンプトテシン誘導体(NSC 107124)、カンプトテシン誘導体(NSC 643833)、カンプトテシン誘導体(NSC 629971)、カンプトテシン誘導体(NSC 295500)、カンプトテシン誘導体(NSC 249910)、カンプトテシン誘導体(NSC 606985)、カンプトテシン誘導体(NSC 374028)、カンプトテシン誘導体(NSC 176323)、カンプトテシン誘導体(NSC 295501)、カンプトテシン誘導体(NSC 606172)、カンプトテシン誘導体(NSC 606173)、カンプトテシン誘導体(NSC 610458)、カンプトテシン誘導体(NSC 618939)、カンプトテシン誘導体(NSC 610457)、カンプトテシン誘導体(NSC 610459)、カンプトテシン誘導体(NSC 606499)、カンプトテシン誘導体(NSC 610456)、カンプトテシン誘導体(NSC 364830)、カンプトテシン誘導体(NSC 606497)、またはモルホリノドキソルビシン(NSC 354646)などのトポイソメラーゼI阻害剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、ドキソルビシン(NSC 123127)、アモナフィド(NSC 308847)、m−AMSA(NSC 249992)、アントラピラゾール誘導体(NSC 355644)、ピラゾロアクリジン(NSC 366140)、ビサントレンHCL(NSC 337766)、ダウノルビシン(NSC 82151)、デオキシドキソルビシン(NSC 267469)、ミトキサントロン(NSC 301739)、メノガリル(NSC 269148)、N,N−ジベンジルダウノマイシン(NSC 268242)、オキサントラゾール(NSC 349174)、ルビダゾン(NSC 164011)、VM−26(NSC 122819)、またはVP−16(NSC 141540)などのトポイソメラーゼII阻害剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、L−アラノシン(NSC 153353)、5−アザシチジン(NSC 102816)、5−フルオロウラシル(NSC 19893)、アシビシン(NSC 163501)、アミノプテリン誘導体(NSC 132483)、アミノプテリン誘導体(NSC 184692)、アミノプテリン誘導体(NSC 134033)、アンチフォール(NSC 633713)、アンチフォール(NSC 623017)、Bakerの可溶性アンチフォール(NSC 139105)、ジクロロアリルローソン(NSC 126771)、ブレキナール(NSC 368390)、フトラフール(プロドラッグ)(NSC 148958)、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン(NSC 264880)、メトトレキサート(NSC 740)、メトトレキサート誘導体(NSC 174121)、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパレート(PALA)(NSC 224131)、ピラゾフリン(NSC 143095)、トリメトレキサート(NSC 352122)、3−HP(NSC 95678)、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン(NSC 27640)、5−HP(NSC 107392)、α−TGDR(NSC 71851)、アフィジコリングリシネート(NSC 303812)、アラ−C(NSC 63878)、5−アザ−2’−デオキシシチジン(NSC 127716)、β−TGDR(NSC 71261)、シクロシチジン(NSC 145668)、グアナゾール(NSC 1895)、ヒドロキシウレア(NSC 32065)、イノシングリコジアルデヒド(NSC 118994)、マクベシン11(NSC 330500)、ピラゾロイミダゾール(NSC 51143)、チオグアニン(NSC 752)、またはチオプリン(NSC 755)などのRNA代謝拮抗剤またはDNA代謝拮抗剤を含み得る。また、US2007−0292441も参照されたい。
「AFP」という略号は、ジメチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミン(phenylened−iamine)を指す(例えば、US2006−0233794における化学式XVIを参照されたい)。
「MAE」という略号は、モノメチルアウリスタチンEを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XIを参照されたい)。
「AEB」という略号は、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸と反応させることにより生成されるエステルを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XXを参照されたい)。
「AEVB」という略号は、アウリスタチンEをベンゾイル吉草酸と反応させることにより生成されるエステルを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XXIを参照されたい)。
「MMAF」という略号は、ドバリン−バリン−ドライソロイ二ン−ドラプロイン−フェニルアラニンを指す(例えば、US2006−0233794における化学式IVIVを参照されたい)。
「fk」および「phe−lys」という略号は、フェニルアラニン−リシンリンカーを指す。
「vc」および「val−cit」という略号は、バリン−シトルリンリンカーを指す。
一部の実施形態において、薬物は、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択される細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、AFPまたはMMAFなどの細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、ガンシクロビル、エタネルセプト、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、コルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、またはロイコトリエン受容体アンタゴニストなどの免疫抑制剤である。
一般に、US2007−0292441;US2007−0292422;US2007−0264266;およびUS2006−0233794を参照されたい。
リンカー
本明細書に記載の結合タンパク質は、薬物へと直接に連結されることにより該薬物と会合して、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成し得る。一部の実施形態において、結合タンパク質は、薬物へと直接にコンジュゲートしている。代替的に、本明細書に記載の結合タンパク質は、薬物と結合タンパク質との間のリンカー領域を用いることにより該薬物と会合して、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成し得る。一部の実施形態において、結合タンパク質は、リンカーを介して薬物とコンジュゲートしている。リンカーは、例えば、細胞内環境において、リンカーの切断により、薬物が結合タンパク質から放出されるように、細胞内環境下において切断可能であり得る。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーである。一部の実施形態において、該ペプチドリンカーは、ジペプチドリンカーである。
一部の実施形態において、該ジペプチドリンカーは、val−cit(vc)リンカーまたはphe−lys(fk)リンカーである。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、5.5未満のpHで加水分解可能である。一部の実施形態において、該加水分解可能なリンカーは、ヒドラゾンリンカーである。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、ジスルフィドリンカーである。
例えば、一部の実施形態において、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたは小胞(caveolea)内)において存在する切断剤により切断可能である。該リンカーは、例えば、リソソームのプロテアーゼまたはエンドソームのプロテアーゼが含まれるがこれらに限定されない細胞内のペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。一部の実施形態において、該ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸の長さまたは3アミノ酸の長さである。切断剤には、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ得るが、これらは、ジペプチドの薬物誘導体を加水分解し、その結果、標的細胞内部において活性薬物を放出させることが公知である(例えば、DubowchikおよびWalker Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁(1999年)を参照されたい)。一部の実施形態において、ペプチジルリンカーは、標的細胞(例えば、癌細胞)内に存在する酵素により切断可能である。例えば、癌性組織内において高度に発現する、チオール依存性プロテアーゼであるカテプシンBにより切断可能なペプチジルリンカー(例えば、Phe−LeuリンカーまたはGly−Phe−Leu−Glyリンカー)を用いることができる。他のこのようなリンカーは、例えば、米国特許第6,214,345号において説明されている。一部の実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val−Cit(vc)リンカーまたはPhe−Lys(fk)リンカーである(例えば、val−citリンカーによるドキソルビシンの合成について説明する米国特許第6,214,345号を参照されたい)。細胞内におけるタンパク質分解による薬物の放出を用いることの1つの利点は、コンジュゲートさせると薬物を緩和する(attenuate)ことができ、該コンジュゲートの血清中における安定性が典型的に高まることである。
一部の好ましい実施形態において、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートでは、vcリンカーが用いられる。例えば、結合タンパク質−vcAFPコンジュゲートまたは結合タンパク質−vcMMAFコンジュゲート(例えば、MMP−12結合タンパク質−vcAFPコンジュゲートまたはMMP−12結合タンパク質−vcMMAFコンジュゲート)が調製される。
他の実施形態において、該切断可能なリンカーは、pH感受性である、すなわち、特定のpH値において加水分解に感受性である。例えば、該pH感受性リンカーは、酸性条件下において加水分解可能である。例えば、リソソーム内において加水分解可能である、酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニチン酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を用いることができる。例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;DubowchikおよびWalker Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁(1999年);Nevilleら、Biol. Chem.、264巻、14653〜14661頁(1989年)を参照されたい。このようなリンカーは、血中における場合など、中性のpH条件下では比較的安定であるが、リソソームのおおよそのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。特定の実施形態において、該加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合したチオエーテル(例えば、米国特許第5,622,929号を参照されたい)など)である。
さらに他の実施形態において、リンカーは、還元性条件下において切断可能なである(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)、ならびにSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPTを用いて形成し得るリンカーなどを含めた各種のジスルフィドリンカーが、当技術分野では公知である(例えば、Thorpeら、Cancer Res.、47巻、5924〜5931頁(1987年); Wawrzynczakら、「Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer」(C. W. Vogel編、Oxford U. Press、1987年)を参照されたい。また、米国特許第4,880,935号も参照されたい)。
さらに他の実施形態において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnsonら、Anticancer Res.、15巻、1387〜93頁(1995年))、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら、Bioorg−Med−Chem.、3巻、10号、1299〜1304頁(1995年))、または3’−N−アミド類似体(Lauら、Bioorg−Med−Chem.、3巻、10号、1305〜12頁(1995年))である。
一部の実施形態において、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性でない。リンカーとの関連で本明細書において用いられる「細胞外環境に対して実質的に感受性でない」とは、結合タンパク質−薬物コンジュゲートが細胞外環境(例えば、血漿中)において存在する場合に、該結合タンパク質−薬物コンジュゲートの試料中において切断されるリンカーが約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、またさらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下であることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないかどうかは、例えば、(a)結合タンパク質−薬物コンジュゲート(「コンジュゲート試料」)、および(b)等モル量のコンジュゲートしていない結合タンパク質または薬物(「対照試料」)の両方を、所定の期間(例えば、2、4、8、16、または24時間)にわたり、血漿と共に個別にインキュベートし、次いで、例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより測定された、該コンジュゲート試料中に存在する、コンジュゲートしていない結合タンパク質または薬物の量を、対照試料中に存在する該量と比較することにより決定することができる。
他の相互に除外的ではない実施形態において、リンカーは、細胞の内部化を促進する。特定の実施形態において、リンカーは、薬物にコンジュゲートすると(すなわち、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートのリンカー−薬物部分の環境において)細胞の内部化を促進する。さらに他の実施形態において、リンカーは、薬物および結合タンパク質の両方にコンジュゲートすると、細胞の内部化を促進する。
WO2004010957では、本組成物および本方法と共に用い得る各種のリンカーが説明されている。
一部の実施形態において、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートは、障害(例えば、癌または炎症)の処置において治療的に用いられる。特定の実施形態では、例えば、毒性を最小化するため、結合タンパク質が結合する標的を発現する細胞だけを結合タンパク質−薬物コンジュゲートの標的とする(例えば、MMP−12結合タンパク質が結合する、MMP−12を発現する細胞だけを標的とし、近傍の「バイスタンダー」細胞は標的としない)ことが望ましい。他の実施形態では、結合タンパク質が結合する標的を発現する細胞、およびバイスタンダー細胞もまた、結合タンパク質−薬物コンジュゲートの標的とする(例えば、「バイスタンダー効果」を誘発する)ことが望ましい。一部の実施形態では、例えば、チオールエーテルが連結されたコンジュゲートを調製することにより、近傍の抗原陰性組織を損傷することなく、抗原提示細胞だけを正確に死滅させるように、結合タンパク質−薬物コンジュゲート(例えば、MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲート)を操作することができる。代替的に、例えば、ジスルフィド結合したコンジュゲートを調製することにより該コンジュゲートを操作して、バイスタンダード効果をもたらすことができる。
例えば、多くの充実性腫瘍は、不均一な形で標的(例えば、抗原)を発現し、これらには、標的陽性細胞および標的陰性細胞が共に密集する。ジスルフィドリンカーを含有するコンジュゲートと関連する、バイスタンダー細胞傷害作用により、障害(例えば、腫瘍)部位が不均一な標的発現を示す場合であっても、結合タンパク質−薬物コンジュゲートにより該障害部位を治療することの正当性がもたらされる。バイスタンダー効果により、ある程度の非選択的な殺滅活性が付加される。潜在的に、障害(例えば、腫瘍)部位を取り囲む組織内における正常細胞が影響を受ける場合、これは、欠点となり得る。しかし、潜在的な利点として、バイスタンダー細胞傷害作用により、腫瘍新生血管の内皮細胞および周皮細胞、または腫瘍間質細胞など、該障害の維持に複雑に関与する組織を損傷し、例えば、均一または不均一に抗原を発現する腫瘍に対する結合タンパク質−薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性を結果として増強することができる。また、Kovtumら、Cancer Res.、66巻、3214頁(2006年)も参照されたい。
治療剤をタンパク質(結合タンパク質、例えば、MMP−12結合タンパク質など)にコンジュゲートさせる技法は公知である。例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Reisfeldら編、Alan R. Liss, Inc.、1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、「Controlled Drug Delivery」(Robinsonら編、Marcel Deiker, Inc.、第2版、1987年);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、「Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications」(Pincheraら編、1985年);「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、「Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy」(Baldwinら編、Academic Press、1985年);およびThorpeら、Immunol. Rev.、62巻、119〜58頁(1982年)を参照されたい。また、例えば、US2006−0233794およびPCT特許公開WO89/12624も参照されたい。
ディスプレイライブラリー
ディスプレイライブラリーとは、実体のコレクションであり、各実体は、利用可能なポリペプチド成分と、該ポリペプチド成分をコードまたは同定する回収可能な成分とを包含する。異なるアミノ酸配列が提示されるようにポリペプチド成分を変化させる。ポリペプチド成分は、任意の長さ、例えば、3アミノ酸〜300アミノ酸超であり得る。ディスプレイライブラリーの実体は、複数のポリペプチド成分、例えば、sFabの2本のポリペプチド鎖を包含し得る。例示的な一実施では、ディスプレイライブラリーを用いて、MMP−12に結合するタンパク質を同定することができる。選択においては、MMP−12(例えば、MMP−12の触媒ドメインまたは他のフラグメント)によりライブラリーの各メンバーのポリペプチド成分をプローブし、該ポリペプチド成分がMMP−12に結合する場合、典型的には支持体上において保持することにより、該ディスプレイライブラリーメンバーを同定する。
保持されたディスプレイライブラリーメンバーを支持体から回収し解析する。解析は、増幅、および類似する条件下または類似しない条件下における後続の選択を包含し得る。例えば、陽性選択と陰性選択とを交互に行うことができる。解析はまた、ポリペプチド成分のアミノ酸配列の決定、および詳細な特徴づけのための該ポリペプチド成分の精製も包含し得る。
ディスプレイライブラリーには、各種のフォーマットを用いることができる。例には以下が含まれる。
ファージディスプレイ:タンパク質成分は、バクテリオファージの被覆タンパク質に共有結合により連結することが典型的である。連結は、該被覆タンパク質に融合したタンパク質成分をコードする核酸の翻訳から生じる。連結は、可撓性のペプチドリンカー、プロテアーゼ部位、または終止コドンの抑制の結果として組み込まれるアミノ酸を包含し得る。ファージディスプレイは、例えば、U.S.5,223,409;Smith(1985)、Science、228巻、1315〜1317頁;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;WO90/02809;de Haardら(1999年)、J.Biol. Chem、274巻、18218〜30頁;Hoogenboomら(1998年)、Immunotechnology、4巻、1〜20頁;Hoogenboomら(2000年)、Immunol Today、2巻、371〜8頁;およびHoetら(2005年)、Nat Biotechnol.、23巻、3号、344〜8頁において説明されている。標準的なファージ調製方法、例えば、増殖培地からのPEGによる沈殿を用いて、タンパク質成分を提示するバクテリオファージを増殖させて回収することができる。個々のディスプレイファージの選択後、選択されたファージを感染させた細胞から、または増幅後のファージそれ自体から、選択されたタンパク質成分をコードする核酸を単離することができる。個々のコロニーまたはプラークを採取し、核酸を単離して配列決定することができる。
他のディスプレイフォーマット。他のディスプレイフォーマットには、細胞ベースのディスプレイ(例えば、WO03/029456を参照されたい)、タンパク質−核酸融合体(例えば、US6,207,446を参照されたい)、リボソームディスプレイ(例えば、Mattheakisら(1994年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻、9022頁;およびHanesら(2000年)、Nat Biotechnol.、18巻、1287〜92頁;Hanesら(2000年)、Methods Enzymol.、328巻、404〜30頁;およびSchaffitzelら(1999年)、J Immunol Methods.、231巻、1〜2号、119〜35頁を参照されたい)、およびE.coliペリプラズムディスプレイ(例えば、J Immunol Methods.、2005年11月22日、PMID、16337958頁を参照されたい)が含まれる。
足場:ディスプレイに有用な足場には、抗体(例えば、Fabフラグメント、単鎖Fv分子(scFv)、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体、およびラクダ科動物化抗体);T細胞受容体;MHCタンパク質;細胞外ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型反復、EGF反復);プロテアーゼ阻害剤(例えば、クニッツドメイン、エコチン、BPTIなど);TPR反復;トリフォイル構造;亜鉛フィンガードメイン;DNA結合タンパク質;特に、単量体のDNA結合タンパク質;RNA結合タンパク質;酵素、例えば、プロテアーゼ(特に、不活化プロテアーゼ);RNアーゼ;シャペロン、例えば、チオレドキシンおよび熱ショックタンパク質;細胞内シグナル伝達ドメイン(SH2ドメインおよびSH3ドメインなど);直鎖ペプチドおよび拘束ペプチド;ならびに直鎖ペプチドの基質が含まれる。ディスプレイライブラリーは、合成および/または天然の多様性を包含し得る。例えば、US2004−0005709を参照されたい。
ディスプレイ技術はまた、標的の特定のエピトープに結合する結合タンパク質(例えば、抗体)を得るのにも用いることができる。これは、例えば、特定のエピトープを欠くか、または該エピトープ内において、例えば、アラニンを伴い突然変異する、競合的な非標的分子を用いることにより行うことができる。以下で説明される陰性選択手順では、このような非標的分子を、ディスプレイライブラリーを該標的に結合させる場合の競合分子として用いることもでき、例えば、該標的に対して特異的でないディスプレイライブラリーメンバーを、これを解離させる洗浄液中において捕捉するための前溶出剤として用いることもできる。
逐次選択。好ましい一実施形態では、ディスプレイライブラリー技術が、逐次方式で用いられる。第1のディスプレイライブラリーを用いて、標的に対する1つまたは複数の結合タンパク質を同定する。次いで、変異誘発法を用いて、これらの同定された結合タンパク質を変化させ、第2のディスプレイライブラリーを形成する。次いで、例えば、より高度の厳密性条件、またはより競合的な結合条件および洗浄条件を用いることにより、該第2のライブラリーからより親和性の高い結合タンパク質を選択する。
一部の実施では、結合界面にある領域が、変異誘発の標的とされる。例えば、同定される結合タンパク質が抗体である場合、変異誘発は、本明細書に記載の重鎖または軽鎖のCDR領域を指向し得る。さらに、変異誘発は、該CDRの近傍であるかまたはこれに隣接するフレームワーク領域を指向することもできる。抗体の場合、変異誘発はまた、例えば、CDRのうちの1つまたはいくつかに限定して、正確に段階改善がなされるようにすることもできる。例示的な変異誘発技法には、誤りがちのPCR、組換え、DNAシャッフリング、部位特異的変異誘発、およびカセット型変異誘発が含まれる。
逐次選択の一例では、本明細書に記載の方法を用いて、標的に対する少なくとも最小限の結合特異性または最小限の活性、例えば、1nM、10nM、または100nM未満の、結合に対する平衡解離定数によりMMP−12に結合する、ディスプレイライブラリー由来のタンパク質をまず同定する。最初に同定されたタンパク質をコードする核酸配列を、変化を導入するための鋳型核酸として用いて、例えば、最初のタンパク質と比べて特性(例えば、結合親和性、動態、または安定性)が増強された第2のタンパク質を同定する。
オフ速度選択。特に、ポリペプチドとそれらの標的との相互作用に関わる高親和性には緩徐な解離速度を予測し得るので、本明細書に記載の方法を用いて、標的に対する結合相互作用に望ましい(例えば、低速の)解離反応速度を有する結合タンパク質を単離することができる。
ディスプレイライブラリー由来の、解離が緩徐な結合タンパク質を選択するために、該ライブラリーを固定化標的へと接触させる。次いで、固定化標的を、非特異的にまたは弱く結合した生体分子を除去する第1の溶液により洗浄する。次いで、結合した結合タンパク質を、飽和量の遊離標的、すなわち、粒子に結合していない標的の複製物、または標的特異的な高親和性の競合モノクローナル抗体を包含する第2の溶液により溶出させる。遊離標的は、標的から解離する生体分子に結合する。はるかに低濃度の固定化標的と比べて飽和量の遊離標的により、再結合が有効に防止される。
第2の溶液は、実質的に生理学的であるかまたは厳密な溶液条件を有し得る。第2の溶液の溶液条件は、第1の溶液の溶液条件と同一であることが典型的である。時間的な順序により第2の溶液の画分を回収し、後期の画分から早期の画分を区別する。後期の画分は、早期の画分中における生体分子より緩徐な速度で標的から解離する生体分子を包含する。
さらに、長時間にわたるインキュベーション後においても標的に対する結合を維持するディスプレイライブラリーメンバーを回収することも可能である。これらは、カオトロピック条件を用いて解離させることもでき、標的に結合させながら増幅することもできる。例えば、標的に結合したファージを細菌細胞に接触させることができる。
特異性についての選択またはスクリーニング。本明細書に記載のディスプレイライブラリーによるスクリーニング方法は、非標的分子に結合するディスプレイライブラリーメンバーを廃棄する、選択またはスクリーニングの過程を包含し得る。非標的分子の例には、磁気ビーズ上におけるストレプトアビジン、ウシ血清アルブミンなどのブロッキング剤、脱脂牛乳、任意の捕捉用モノクローナル抗体もしくは標的固定化用モノクローナル抗体、またはヒトMMP−12標的を発現しない非トランスフェクション細胞が含まれる。
一実施では、いわゆる「陰性選択」の工程を用いて、標的と、類縁の非標的分子および類縁ではあるが異なる非標的分子とを区別する。ディスプレイライブラリーまたはそのプールを該非標的分子に接触させる。非標的に結合しない試料メンバーは回収され、標的分子に対する結合についての後続の選択において、またはさらに後続の陰性選択に用いられる。陰性選択の工程は、標的分子に結合するライブラリーメンバーを選択する前に行うこともでき、これを選択した後で行うこともできる。
別の実施では、スクリーニングの工程が用いられる。標的分子に対する結合についてディスプレイライブラリーメンバーを単離した後で、単離された各ライブラリーメンバーを、それが非標的分子(例えば、上記で列挙された非標的)に結合する能力について調べる。例えば、ハイスループットのELISAスクリーンを用いて、このデータを得ることができる。該ELISAスクリーンはまた、標的に対する各ライブラリーメンバーの結合についての定量的データほか、類縁の標的または該標的のサブユニット(例えば、マウスMMP−12)に対する分子種の交差反応性についての定量的データ、また、pH6またはpH7.5など、異なる条件下における定量的データを得るのにも用いることができる。非標的および標的の結合データを比較して(例えば、コンピュータおよびソフトウェアを用いて)、標的に特異的に結合するライブラリーメンバーを同定する。
他の例示的な発現ライブラリー
例えば、抗体タンパク質アレイ(例えば、De Wildtら(2000年)、Nat. Biotechnol.、18巻、989〜994頁を参照されたい)、λgt11ライブラリー、二重ハイブリッドライブラリーなどを含めた、他の種類のタンパク質コレクション(例えば、発現ライブラリー)を用いて、特定の特性(例えば、MMP−12に結合する能力、および/またはMMP−12を調節する能力)を有するタンパク質を同定することができる。
例示的なライブラリー
非ヒト霊長動物を免疫し、ファージ上に提示され得る霊長動物の抗体遺伝子を回収することができる(下記を参照されたい)。このようなライブラリーからは、免疫で用いられる抗原に結合する抗体を選択することができる。例えば、Vaccine.(2003年)、22巻、2号、257〜67頁;またはImmunogenetics.(2005年)、57巻、10号、730〜8頁を参照されたい。したがって、チンパンジーまたはマカクザルを免疫し、MMP−9に結合してこれを阻害する霊長動物抗体について選択またはスクリーニングする各種の手段を用いることによれば、MMP−12に結合してこれを阻害する霊長動物抗体を得ることができるであろう。ヒト定常領域を有する、霊長動物化されたFabのキメラ体を作製することもできる(Curr Opin Mol Ther.(2004年)、6巻、6号、675〜83頁を参照されたい)。カニクイザル成分およびヒト成分から遺伝子操作された「霊長動物化抗体」は、構造的にヒト抗体と区別されない。したがって、これらは、ヒトにおいて有害作用を引き起こす可能性がより低く、これらを長期にわたる慢性治療に潜在的に適するものとしている(Curr Opin Investig Drugs.(2001年)、2巻、5号、635〜8頁)。
ライブラリーの例示的な1つの種類は、その各々が免疫グロブリンドメイン、例えば、免疫グロブリン可変ドメインを包含するポリペプチドの多様なプールを提示する。ライブラリーのメンバーが、霊長動物もしくは「霊長動物化」(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、または「ヒト化」)免疫グロブリンドメイン(例えば、免疫グロブリン可変ドメイン)、またはヒト定常領域を伴うキメラ霊長動物化Fabを包含するディスプレイライブラリーが重要である。ヒト免疫グロブリンドメインまたはヒト化免疫グロブリンドメインのライブラリーを用いて、例えば、ヒト抗原を認識するヒト抗体または「ヒト化」抗体を同定することができる。抗体の定常領域およびフレームワーク領域がヒト由来であるため、これらの抗体は、ヒトに投与された場合に、自らが抗原として認識されて標的とされることを回避し得る。定常領域はまた、ヒト免疫系のエフェクター機能を動員するように最適化することもできる。インビトロにおけるディスプレイによる選択過程は、正常なヒト免疫系による自己抗原に対する抗体生成能の欠如を克服する。
典型的な抗体ディスプレイライブラリーにより、VHドメインおよびVLドメインを包含するポリペプチドが提示される。「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインに由来するドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、約7本のβ鎖、および保存的ジスルフィド結合から形成される2枚のβシートを含有することが典型的である(例えば、A. F. WilliamsおよびA. N. Barclay、1988年、Ann. Rev. Immunol.、6巻、381〜405頁を参照されたい)。ディスプレイライブラリーにより、Fabフラグメント(例えば、2本のポリペプチド鎖を用いる)または単鎖Fv(例えば、単鎖ポリペプチドを用いる)としての抗体を提示することができる。他のフォーマットもまた用いることができる。
Fabフォーマットおよび他のフォーマットの場合における提示抗体は、軽鎖および/または重鎖の一部としての、1つまたは複数の定常領域を包含し得る。一実施形態において、例えば、Fabの場合における各鎖は、1つの定常領域を包含する。他の実施形態では、さらなる定常領域が提示される。
抗体ライブラリーは、多くの過程により構築することができる(例えば、de Haardら(1999年)、J. Biol. Chem、274巻、18218〜30頁;Hoogenboomら(1998年)、Immunotechnology、4巻、1〜20頁;Hoogenboomら(2000年)、Immunol Today、2巻、371〜8頁;およびHoetら(2005年)、Nat Biotechnol.、23巻、3号、344〜8頁を参照されたい)。さらに、各過程の要素を、他の過程の要素と組み合わせることもできる。単一の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHまたはVL)内または複数の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHおよびVL)内に変化を導入するように該過程を用いることができる。免疫グロブリン可変ドメイン内に、例えば、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの一方および両方の以下のような領域を指す、CDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3、およびFR4のうちの1つまたは複数の領域内に変化を導入することができる。(1つまたは複数の)変化は、所与の可変ドメインの3つのCDR全てに導入することができるか、または例えば、重鎖可変ドメインのCDR1およびCDR2に導入することもできる。任意の組合せが実施可能である。一過程では、CDRをコードする多様なオリゴヌクレオチドを対応する核酸領域に挿入することにより、抗体ライブラリーを構築する。該オリゴヌクレオチドは、単量体ヌクレオチドまたはトリヌクレオチドを用いて合成することができる。例えば、Knappikら、2000年、J. Mol. Biol.、296巻、57〜86頁は、トリヌクレオチド合成と、制限部位を操作してオリゴヌクレオチドを受容する鋳型とを用いて、CDRをコードするオリゴヌクレオチドを構築する方法について説明している。
別の過程では、動物、例えば、げっ歯動物を、MMP−12により免疫する。場合によっては、該動物に抗原を追加免疫して、反応をさらに刺激する。次いで、該動物から脾臓細胞を単離し、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸を増幅およびクローニングし、ディスプレイライブラリー内において発現させる。
さらに別の過程では、ナイーブ生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子から増幅された核酸により、抗体ライブラリーを構築する。増幅された核酸は、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸を包含する。免疫グロブリンをコードする核酸の供給源については、以下で説明する。増幅には、例えば、保存的定常領域にアニーリングするプライマーによるPCR、または別の増幅方法が含まれてよい。
免疫グロブリンドメインをコードする核酸は、例えば、霊長動物(例えば、ヒト)、マウス、ウサギ、ラクダ、またはげっ歯動物の免疫細胞から得ることができる。一例において、細胞は、特定の特性について選択される。種々の成熟段階にあるB細胞を選択することができる。別の例において、B細胞はナイーブである。
一実施形態では、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、表面に結合するIgM、IgD、またはIgG分子を発現するB細胞を選別する。さらに、IgGの異なるアイソタイプを発現するB細胞を単離することができる。別の好ましい実施形態では、B細胞またはT細胞をインビトロで培養する。フィーダー細胞と共に培養することにより、またはCD40、CD40リガンド、またはCD20に対する抗体、酢酸ミリスチン酸ホルボール、細菌のリポ多糖、コンカナバリンA、フィトヘマグルチニン、またはヤマゴボウマイトジェンなどの、マイトジェンまたは他の調節試薬を添加することにより、インビトロにおいて細胞を刺激することができる。
別の実施形態において、細胞は、本明細書に記載の疾患状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、滑膜炎、アテローム性動脈硬化)、関節リウマチ、骨関節炎、眼疾患(例えば、黄斑変性)、糖尿病、アルツハイマー病、脳虚血、子宮内膜症、フィブリン浸潤活性、新脈管形成、または毛細管形成を有する対象から単離される。別の実施形態において、細胞は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト動物から単離される。
好ましい一実施形態において、細胞は、体細胞超変異プログラムを活性化している。例えば、抗免疫グロブリン抗体、抗CD40抗体、および抗CD38抗体を用いる処理により細胞を刺激して、免疫グロブリン遺伝子の体細胞変異誘発にかけることができる(例えば、Bergthorsdottirら、2001年、J. Immunol.、166巻、2228頁を参照されたい)。別の実施形態において、細胞はナイーブである。
免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸は、以下の例示的な方法により、天然のレパートリーから単離することができる。まず、免疫細胞からRNAを単離する。全長(すなわち、キャップ化)mRNAを分離する(例えば、ウシ腸ホスファターゼにより脱キャップ化RNAを分解することにより)。次いで、タバコの酸ピロホスファターゼによりキャップを除去し、逆転写を用いてcDNAを作製する。
第1(アンチセンス)鎖の逆転写は、任意の適切なプライマーにより、任意の形で行うことができる。例えば、de Haardら(1999年)、J. Biol. Chem、274巻、18218〜30頁を参照されたい。例えば、免疫グロブリンの異なるアイソタイプを逆転写するために、プライマーの結合領域を異なる免疫グロブリン間で一定とする場合がある。プライマー結合領域はまた、免疫グロブリンの特定のアイソタイプに特異的な場合もある。プライマーは、少なくとも1つのCDRをコードする配列に対して3’側の領域に特異的な場合が典型的である。別の実施形態では、ポリdTプライマーを用いることができる(また、これが重鎖遺伝子に好ましい場合がある)。
逆転写鎖の3’端に合成配列をライゲーションすることができる。合成配列は、逆転写後のPCR増幅の間において順方向プライマーが結合するためのプライマー結合部位として用いることができる。合成配列を用いることにより、得られる多様性を完全に捕捉する、異なる順方向プライマーのプールを用いる必要を取り除くことができる。
次いで、例えば、1つまたは複数のラウンドを用いて、可変ドメインをコードする遺伝子を増幅する。複数のラウンドを用いる場合、ネステッドプライマーを用いて忠実度を上昇させることができる。次いで、増幅された核酸を、ディスプレイライブラリーベクターにクローニングする。
二次スクリーニング法
標的に結合する候補ライブラリーメンバーを選択した後では、例えば、標的、例えば、MMP−12に対するその結合特性をさらに特徴づけるように各候補ライブラリーメンバーをさらに解析することもでき、他のタンパク質、例えば、別のメタロプロテアーゼに対する結合について各候補ライブラリーメンバーをさらに解析することもできる。各候補ライブラリーメンバーは、1つまたは複数の二次スクリーニングアッセイにかけることができる。該アッセイは、結合特性、触媒特性、阻害特性、生理学的特性(例えば、細胞傷害作用、腎クリアランス、免疫原性)、構造的特性(例えば、安定性、高次構造、オリゴマー化状態)、または別の機能的特性についてのものであり得る。同じアッセイを繰り返し、しかし条件を変化させて用いて、例えば、pH感受性、イオン感受性、または熱感受性を決定することができる。
適切な場合、アッセイは、ディスプレイライブラリーメンバーを直接に用いることもでき、選択されたポリペプチドをコードする核酸から作製された組換えポリペプチドを用いることもでき、選択されたポリペプチドの配列に基づき合成された合成ペプチドを用いることもできる。Fabを選択した場合、該Fabを評価することもでき、改変して完全なIgGタンパク質として作製することもできる。結合特性についての例示的なアッセイには、以下が含まれる。
ELISA。結合タンパク質は、ELISAアッセイを用いて評価することができる。例えば、その底面に標的、例えば、限定量の標的をコーティングしたマイクロ滴定プレートに各タンパク質を接触させる。緩衝液により該プレートを洗浄して、非特異的に結合したポリペプチドを除去する。次いで、結合タンパク質(例えば、タグまたは結合タンパク質の定常部分)を認識し得る抗体を用いてプレートをプロービングすることにより、プレート上の標的に結合した結合タンパク質の量を決定する。抗体は、検出系(例えば、適切な基質が供給されると比色生成物を生成する、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素)に連結される。
ホモジニアス結合アッセイ。本明細書に記載の結合タンパク質が標的に結合する能力は、ホモジニアスアッセイ、すなわち、アッセイの全ての成分を添加した後ではさらなる流体操作が不要なアッセイを用いて解析することができる。例えば、ホモジニアスアッセイとして、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いることができる(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号を参照されたい)。第1の分子(例えば、画分中において同定された分子)上におけるフルオロフォア標識は、第2の分子(例えば、標的)が該第1の分子の近傍にある場合、それが放出する蛍光エネルギーが、該第2の分子上における蛍光標識により吸収され得るように選択される。第2の分子上における蛍光標識は、移動したエネルギーをそれが吸収するときに蛍光を発する。標識間におけるエネルギー移動の効率は、該分子を隔てる距離に関係するので、該分子間における空間的な関係を評価することができる。分子間の結合が生じる状況において、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光発光が最大になるものとする。FRETによりモニタリングされるように構成される結合イベントは、標準的な蛍光測定検出手段により、例えば、蛍光測定器を用いて測定することが好都合であり得る。第1または第2の結合分子の量を滴定することにより、結合曲線を作製し、平衡結合定数を推定することができる。
ホモジニアスアッセイの別の例は、ALPHASCREEN(商標)(コネチカット州、メリデン、Packard Bioscience製)である。ALPHASCREEN(商標)では、2つの標識ビーズが用いられる。レーザーにより励起されると、1つのビーズにより一重項酸素が生成される。一重項酸素が第1のビーズから拡散して他のビーズに衝突すると、これにより光のシグナルが発生する。2つのビーズが近接する場合に限り、該シグナルが発生する。1つのビーズをディスプレイライブラリーメンバーへと結合させ、他のビーズを標的へと結合させる。シグナルを測定して、結合量を決定する。
表面プラズモン共鳴(SPR)。結合タンパク質と標的との相互作用は、SPRを用いて解析することができる。SPRまたは生体分子相互作用解析(BIA)により、相互作用体のいずれに標識することもなく、リアルタイムで生体特異的な相互作用が検出される。BIAチップの結合表面における質量が変化(結合イベントを示す)すると、表面近傍における光の屈折率が結果として変化する(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)。屈折度の変化により検出可能なシグナルが発生し、これが、生物学的分子間におけるリアルタイムの反応の指標として測定される。SPRを用いる方法は、例えば、米国特許第5,641,640号;Raether、1988年、「Surface Plasmons」、Springer Verlag;SjolanderおよびUrbaniczky、1991年、Anal. Chem.、63巻、2338〜2345頁;Szaboら、1995年、Curr. Opin. Struct. Biol.、5巻、699〜705頁;ならびにBIAcore International AB社(スウェーデン、ウプサラ)により提供されるオンライン情報源において説明されている。BIAcore Flexchipを用いると、標識を用いることなく、動態、親和性、または特異性に関し、リアルタイムで相互作用を比較してランクづけすることができる。
SPRからの情報を用いると、標的に対する結合タンパク質の結合について、平衡解離定数(K)、ならびにKonおよびKoffを含めた速度論パラメータの正確で定量的な測定値を提供することができる。このようなデータを用いて、異なる生体分子を比較することができる。例えば、発現ライブラリーから選択されたタンパク質を比較して、標的に対する親和性が高いタンパク質、またはKoffが緩徐なタンパク質を同定することができる。この情報はまた、構造−活性関係(SAR)を導出するのにも用いることができる。例えば、親タンパク質の成熟変化形についての速度論パラメータおよび平衡結合パラメータを、該親タンパク質のパラメータと比較することができる。特定の結合パラメータ、例えば、高親和性および緩徐なKoffと相関する、所与の位置における変異体アミノ酸を同定することができる。この情報を、構造モデリング(例えば、相同性モデリング、エネルギーの最小化、またはx線結晶構造解析もしくはNMRによる構造決定)と組み合わせることができる。結果として、タンパク質とその標的との物理的相互作用の理解が定式化し、これを用いて他の設計過程を導くことができる。
細胞アッセイ。その表面上において目的の標的を一過性または安定的に発現および提示する細胞に対する結合能について、結合タンパク質をスクリーニングすることができる。例えば、MMP−12結合タンパク質を蛍光標識し、アンタゴニスト性抗体の存在下または不在下におけるMMP−12に対する結合を、フローサイトメトリー、例えば、FACS機を用いて、蛍光強度の変化により検出することができる。
MMP−12結合抗体を得るための他の例示的な方法
ディスプレイライブラリーの使用に加え、他の方法を用いても、MMP−12結合抗体を得ることができる。例えば、MMP−12タンパク質、またはこれに由来する領域を、非ヒト動物、例えば、げっ歯動物における抗原として用いることができる。
一実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を包含する。例えば、ヒトIg遺伝子座の大型断片によりマウス株を操作して、マウス抗体の生成を欠損させることができる。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する、抗原特異的なモノクローナル抗体(Mab)を作製および選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら、1994年、Nat. Gen.、7巻、13〜21頁;U.S.2003−0070185、1996年10月31日に公開のWO96/34096、および1996年4月29日に出願のPCT出願第PCT/US96/05928号を参照されたい。
別の実施形態では、非ヒト動物からモノクローナル抗体を得、次いで、これを改変する、例えば、ヒト化または脱免疫化する。Winterは、ヒト化抗体を調製するのに用い得るCDR移植法について説明している(1987年3月26日に出願の英国特許出願第GB2188638A号;米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体の全てのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部により置換することもでき、該CDRの一部だけを非ヒトCDRにより置換することもできる。所定の抗原に対するヒト化抗体の結合に必要な数のCDRを置換することだけが必要である。
抗原の結合に直接には関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域に由来する同等の配列により置換することにより、ヒト化抗体を作製することができる。ヒト化抗体を作製する一般的な方法は、Morrison, S. L.、1985年、Science、229巻、1202〜1207頁;Oiら、1986年、BioTechniques、4巻、214頁;およびQueenら、米国特許第5,585,089号、US5,693,761、およびUS5,693,762により提供されている。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つに由来する免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離する工程、操作する工程、および発現させる工程を包含する。このような核酸の多数の供給源が利用可能である。例えば、上記で説明した通り、所定の標的に対する抗体を生成するハイブリドーマから核酸を得ることができる。次いで、ヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組換えDNAを適切な発現ベクターにクローニングすることができる。
MMP−12結合タンパク質の免疫原性の低減
免疫グロブリンMMP−12結合タンパク質(例えば、IgGまたはFabのMMP−12結合タンパク質)を改変して、免疫原性を低下させることができる。免疫原性を低下させると、対象が、治療分子に対して免疫反応を発生させる可能性が低下するので、それは、治療剤として用いられることが意図されるMMP−12結合タンパク質において望ましい。MMP−12結合タンパク質の免疫原性を低下させるのに有用な技法には、潜在的なヒトT細胞エピトープの欠失/改変、およびCDR以外(例えば、フレームワークおよびFc)の配列の「生殖細胞系列化」が含まれる。
MMP−12結合抗体は、ヒトT細胞エピトープの特異的な欠失により改変することもでき、WO98/52976およびWO00/34317で開示される方法により「脱免疫化(deimmunization)」することもできる。略述すると、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、MHCクラスIIに結合するペプチド(これらのペプチドは、潜在的なT細胞エピトープを表す(WO98/52976およびWO00/34317において規定される通り))について解析する。潜在的なT細胞エピトープを検出するには、「ペプチドスレディング」と称するコンピュータモデリング法を適用することができ、また、加えて、WO98/52976およびWO00/34317で説明される通り、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VH配列およびVL配列内に存在するモチーフについて検索することもできる。これらのモチーフは18の主要なMHCクラスII DRアロタイプのいずれかに結合し、したがって、潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変領域内における少数のアミノ酸残基を置換することによって除去することもでき、好ましくは、単一のアミノ酸置換により除去することもできる。可能な保存的置換がなされる限りにおいて、ヒト生殖細胞系列の抗体配列内のこの位置において共通なアミノ酸を用い得る場合が多いが、これ以外の場合が除外されるわけではない。ヒト生殖細胞系列の配列は、Tomlinson, I.A.ら、1992年、J. Mol. Biol.、227巻、776〜798頁;Cook, G. P.ら、1995年、Immunol. Today、16巻、5号、237〜242頁;Chothia, D.ら、1992年、J. Mol. Bio.、227巻、799〜817頁において開示されている。V BASE要覧により、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的な要覧(Tomlinson, I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKにより編纂された)が提供されている。脱免疫化する変化を同定した後は、変異誘発または他の合成方法(例えば、de novo合成、カセット置換など)により、VおよびVをコードする核酸を構築することができる。変異誘発された可変配列は、場合によって、ヒト定常領域、例えば、ヒトIgG1の定常領域またはκ定常領域に融合させることができる。
一部の場合において、潜在的なT細胞エピトープは、抗体機能にとって重要であることが公知であるかまたは予測される残基を包含する。例えば、潜在的なT細胞エピトープは通常、CDRに対してバイアスがかかっている。加えて、潜在的なT細胞エピトープは、抗体の構造および結合にとって重要なフレームワーク残基内において発生し得る。これらの潜在的なエピトープを除去するための変化は、例えば、変化を伴う鎖および変化を伴わない鎖を作製して調べることによる、一層の精査を場合によって必要とする。可能な場合、CDRと重複する潜在的なT細胞エピトープは、CDR以外の置換により除去した。一部の場合において、CDR内における変化は任意選択に限られ、したがって、この置換を伴う変異体およびこれを伴わない変異体について調べるものとする。他の場合において、潜在的なT細胞エピトープを除去するのに必要な置換は、抗体結合にとって極めて重要であり得るフレームワーク内の残基位置においてのものである。これらの場合では、この置換を伴う変異体およびこれを伴わない変異体について調べるものとする。したがって、一部の場合では、最適の脱免疫化抗体を同定するために、脱免疫化された変異体である複数の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を設計し、各種の重鎖/軽鎖の組合せについて調べた。次いで、脱免疫化の範囲、すなわち、該可変領域内に残存する潜在的なT細胞エピトープの数と共に、異なる変異体の結合親和性を考慮することにより、最終的な脱免疫化抗体を選択することができる。脱免疫化を用いて、任意の抗体、例えば、非ヒト配列を包含する抗体、例えば、合成抗体、マウス抗体、他の非ヒトモノクローナル抗体、またはディスプレイライブラリーから単離された抗体を改変することができる。
結合特性が実質的に保持される限りにおいて、フレームワーク領域内における非生殖細胞系列の1つまたは複数のアミノ酸を、対応する抗体の生殖細胞系列のアミノ酸へ戻すことにより、MMP−12結合抗体を「生殖細胞系列化」することができる。定常領域(例えば、免疫グロブリンの定常ドメイン)においてもまた、同様の方法を用いることができる。
MMP−12に結合する抗体、例えば、本明細書に記載の抗体の可変領域を1つまたは複数の生殖細胞系列配列により類似させるために、該抗体を改変することができる。例えば、フレームワーク領域、CDR領域、または定常領域内における、1つ、2つ、3つ以上のアミノ酸置換を抗体に組み入れて、それを、基準の生殖細胞系列配列により類似させることができる。例示的な1つの生殖細胞系列化法は、単離抗体の配列に類似する(例えば、特定のデータベースにおいて最も類似する)1つまたは複数の生殖細胞系列配列を同定する工程を包含し得る。次いで、付加により、または他の変異との組合せにより、単離抗体内において変異(アミノ酸レベルにおける)を作製する。例えば、生殖細胞系列の一部または全部の可能な変異をコードする配列を包含する核酸ライブラリーを作製する。次いで、変異した抗体を評価して、例えば、単離抗体と比べて1つまたは複数の付加的な生殖細胞系列残基を有し、依然として有用である(例えば、機能的活性を有する)抗体を同定する。一実施形態では、可能な限り多くの生殖細胞系列残基を、単離抗体に導入する。
一実施形態では、変異誘発を用いて、1つまたは複数の生殖細胞系列残基を、フレームワーク領域および/または定常領域に置換または挿入する。例えば、生殖細胞系列のフレームワーク領域および/または定常領域の残基は、改変される非可変領域に類似する(例えば、最も類似する)生殖細胞系列配列に由来し得る。変異誘発後には、該抗体の活性(例えば、結合活性または他の機能的活性)を評価して、該1つまたは複数の生殖細胞系列残基が許容される(すなわち、活性を消失させない)かどうかを判定することができる。フレームワーク領域においても、同様の変異誘発を実施することができる。
生殖細胞系列配列の選択は、異なる方法により実施することができる。例えば、生殖細胞系列配列が、選択性または類似性についての所定の基準、例えば、少なくともある百分率の同一性、例えば、少なくとも、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.5%の同一性を満たす場合、これを選択することができる。少なくとも、2、3、5、または10の生殖細胞系列配列を用いて選択を実施することができる。CDR1およびCDR2の場合、類似の生殖細胞系列配列の同定は、1つのこのような配列の選択を包含し得る。CDR3の場合、類似の生殖細胞系列配列の同定は、1つのこのような配列の選択を包含し得るが、そのアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に個別に寄与する2つの生殖細胞系列配列の使用も包含し得る。他の実施では、1つまたは2つを超える生殖細胞系列配列を用いて、例えば、コンセンサス配列を形成する。
一実施形態において、特定の基準可変ドメイン配列、例えば、本明細書に記載の配列に対して類縁の可変ドメイン配列は、CDRアミノ酸位置のうち、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95、または100%が、ヒト生殖細胞系列配列内の対応する位置にある残基と同一な残基(すなわち、ヒト生殖細胞系列の核酸によりコードされるアミノ酸配列)である、基準CDR配列内における残基と同一ではない。
一実施形態において、特定の基準可変ドメイン配列、例えば、本明細書に記載の配列に対して類縁の可変ドメイン配列は、FR領域のうち、少なくとも30、50、60、70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が、ヒト生殖細胞系列配列、例えば、基準可変ドメイン配列に類縁の生殖細胞系列配列に由来するFR配列と同一である。
したがって、所与の目的の抗体と同様の活性を有するが、1つまたは複数の生殖細胞系列配列、特に、1つまたは複数のヒト生殖細胞系列配列により類似する抗体を単離することができる。例えば、抗体は、CDR以外の領域(例えば、フレームワーク領域)において、生殖細胞系列配列に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.5%同一であり得る。さらに、抗体は、CDR領域内において少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの生殖細胞系列残基を包含する場合があり、該生殖細胞系列残基は、改変される可変領域に類似する(例えば、最も類似する)生殖細胞系列配列に由来する。主要目的である生殖細胞系列配列は、ヒト生殖細胞系列配列である。抗体の活性(例えば、Kにより測定される結合活性)は、元の抗体の100、10、5、2、0.5、0.1、および0.001倍以内であり得る。
ヒト免疫グロブリン遺伝子の生殖細胞系列配列は決定されており、ワールドワイドウェブのimgt.cines.frを介して利用可能である、国際的なImMunoGeneTics情報システム(登録商標)(IMGT)、およびV BASE要覧(Tomlinson, I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKにより編纂され、ワールドワイドウェブのvbase.mrc−cpe.cam.ac.ukを介して利用可能である)を含めた、多数の情報源から入手可能である。
κappaの例示的な基準生殖細胞系列配列には、O12/O2、O18/O8、A20、A30、L14、L1、L15、L4/18a、L5/L19、L8、L23、L9、L24、L11、L12、O11/O1、A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、A27、A11、L2/L16、L6、L20、L25、B3、B2、A26/A10、およびA14が含まれる。例えば、Tomlinsonら、1995年、EMBO J.、14巻、18号、4628〜3頁を参照されたい。
HC可変ドメインに対する生殖細胞系列の基準配列は、特定の標準構造、例えば、H1超可変ループおよびH2超可変ループ内の1つ〜3つの構造を有する配列に基づき得る。Chothiaら、1992年、J. Mol. Bio.、227巻、799〜817頁;Tomlinsonら、1992年、J. Mol. Biol.、227巻、776〜798頁;およびTomlinsonら、1995年、EMBO J.、14巻、18号、4628〜38頁において説明される通り、免疫グロブリン可変ドメインの超可変ループの標準構造は、その配列から推定することができる。1〜3つの構造を有する例示的な配列には、DP−1、DP−8、DP−12、DP−2、DP−25、DP−15、DP−7、DP−4、DP−31、DP−32、DP−33、DP−35、DP−40、7−2、hv3005、hv3005f3、DP−46、DP−47、DP−58、DP−49、DP−50、DP−51、DP−53、およびDP−54が含まれる。
タンパク質の生成
標準的な組換え核酸法を用いて、MMP−12に結合するタンパク質を発現させることができる。一般に、該タンパク質をコードする核酸を、核酸発現ベクターにクローニングする。当然ながら、該タンパク質が、複数のポリペプチド鎖を包含する場合、各鎖を発現ベクター、例えば、同じであるかまたは異なる細胞内において発現する、同じであるかまたは異なるベクターにクローニングすることができる。
抗体の生成。一部の抗体、例えば、Fabは、細菌細胞、例えば、E.coli細胞内において生成することができる。例えば、ディスプレイ実体とバクテリオファージタンパク質(またはそのフラグメント)との間において抑制可能な終止コドンを包含する、ファージディスプレイベクター内の配列によりFabがコードされる場合、そのベクター核酸を、終止コドンを抑制できない細菌細胞に移入することができる。この場合、該Fabは、遺伝子IIIタンパク質に融合せず、ペリプラズムおよび/または培地に分泌される。
抗体はまた、真核生物細胞内においても生成させることができる。一実施形態において、抗体(例えば、scFv)は、Pichia属(例えば、Powersら、2001年、J. Immunol. Methods.、251巻、123〜35頁を参照されたい)、Hanseula属、またはSaccharomyces属などの酵母細胞内において発現する。
好ましい一実施形態において、抗体は、哺乳動物細胞内で生成する。クローン抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを発現するのに好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、KaufmanおよびSharp、1982年、Mol. Biol.、159巻、601 621頁で説明されるDHFR選択マーカーと共に用いられ、UrlaubおよびChasin、1980年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻、4216〜4220頁で説明されるdhfrCHO細胞を含めた)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞、COS細胞、HEK293T細胞(J. Immunol. Methods(2004年)、289巻、1〜2号、65〜80頁)、およびトランスジェニック動物、例えば、トランスジェニック哺乳動物に由来する細胞が含まれる。例えば、細胞は、哺乳動物の上皮細胞である。
多様化した免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加え、組換え発現ベクターは、宿主細胞内における該ベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)、および選択マーカー遺伝子など、さらなる配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に付与することが典型的である。好ましい選択マーカーには、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴う、dhfr宿主細胞内において用いられる)、およびneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
抗体またはその抗原結合部分の例示的な組換え発現系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウムを介するトランスフェクションによりdhfr CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内では、高レベルの遺伝子転写を駆動するように、抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子各々を、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど)へと作動的に連結する。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、ベクターをトランスフェクトしたCHO細胞の選択を可能とする、DHFR遺伝子も保有する。選択された形質転換体の宿主細胞を培養して、抗体の重鎖および軽鎖の発現を可能にし、培地から完全抗体を回収する。標準的な分子生物学の技法を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、該宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。例えば、プロテインAまたはプロテインGを結合させたマトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、一部の抗体を単離することができる。
Fcドメインを包含する抗体の場合、抗体生成系は、Fc領域がグリコシル化した抗体を生成し得る。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297においてグリコシル化される。このアスパラギンが、二分枝型(biantennary)オリゴ糖による改変部位である。Fcg受容体および補体C1qを介するエフェクター機能には、このグリコシル化が必要とされることが示されている(BurtonおよびWoof、1992年、Adv. Immunol.、51巻、1〜84頁;Jefferisら、1998年、Immunol. Rev.、163巻、59〜76頁)。一実施形態では、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系内において、Fcドメインが生成される。Fcドメインはまた、他の真核生物における翻訳後修飾も包含し得る。
抗体はまた、トランスジェニック動物によっても生成させることができる。例えば、米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法について説明している。ミルクに特異的なプロモーター、ならびに目的の抗体および分泌のためのシグナル配列をコードする核酸を包含するトランス遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌により生成されるミルクは、その中に分泌される形で、目的の抗体を包含する。抗体はミルクから精製することもでき、一部の適用の場合、直接用いることもできる。
MMP−12結合タンパク質の特徴づけ
MMP−12を発現する細胞に対するMMP−12結合タンパク質の結合は、FACS(蛍光活性化細胞選別)、ELISA、免疫蛍光、および免疫組織化学を含めた、当技術分野で公知の幾つかのアッセイにおいて特徴づけることができる。MMP−12結合タンパク質を、MMP−12を発現または含有する細胞および/または組織と接触させ、用いられる方法に従って結合を検出する。例えば、これらのアッセイでは、FACS解析および免疫蛍光解析に用いられる蛍光検出系(例えば、蛍光標識された二次抗体)、または免疫組織化学に用いられる酵素系は、組み合せずに(non−perm)実施されるこれらのアッセイスキャンにおいて一般的に用いられる。MMP−12を発現する細胞を用いるFACS(蛍光活性化細胞選別)により、MMP−12結合タンパク質を、細胞の結合について特徴づけることができる。流体の細流内に保持された個々の細胞に、1つまたは複数のレーザービーム中を通過させて光を散乱させ、蛍光色素に種々の振動数の光を発光させる。高電子増倍管(PMT)により光を電気信号へと転換し、細胞データを収集する。細胞の予備的な同定には、前方散乱および側方散乱を用いる。前方散乱および側方散乱は、残屑および死細胞を除外するのに用いる。蛍光標識化により、細胞の構造および機能の探索が可能となる。蛍光色素を用いて細胞構造を標識することにより、細胞の自己蛍光が発生する。FACSでは、異なるレーザー励起波長および蛍光発光波長に対応する1つ〜複数のチャネルにおける、蛍光シグナルが収集される。最も広範に用いられる適用である免疫蛍光は、フルオレセインおよびフィコエリトリン(PE)などの蛍光色素にコンジュゲートした抗体による細胞の染色を伴う。この方法を用いると、ビオチニル化されたMMP−12結合タンパク質を用いる、透過性が上がった細胞における、MMP−12を標識することができる。これらの2段階検出系では、コンジュゲートさせたストレプトアビジンと共にビオチンが用いられる。ビオチンは、第一アミン(すなわち、リシン)を介して、タンパク質へとコンジュゲートすることが典型的である。通常各抗体には1.5〜3個のビオチン分子がコンジュゲートする。ビオチンに特異的な第2の蛍光コンジュゲート抗体(ストレプトアビジン/PE)が添加される。
MMP−12結合タンパク質は、MMP−12抗原を発現する培養細胞内において特徴づけることができる。一般に用いられる方法は、免疫細胞化学である。免疫細胞化学は、細胞表面において発現すると外部環境に曝露されるか、細胞の透過性が上がったときに接近可能であるタンパク質部分を認識する抗体(「一次抗体」)の使用を伴う。完全細胞(intact cell)内で実験を実施する場合、このような抗体は、表面で発現する受容体だけに結合する。ビオチニル化MMP−12結合タンパク質を用いることもでき、非ビオチニル化MMP−12結合タンパク質を用いることもできる。次いで、二次抗体は、ストレプトアビジン/HRP抗体(ビオチニル化MMP−12結合タンパク質の場合)または抗ヒトIgG/HRP(非ビオチニル化MMP−12結合タンパク質の場合)のいずれかである。次いで、倒立顕微鏡を用いて染色を検出することができる。アッセイは、MMP−12結合タンパク質の不在下において、また10μg/mLのMMP−12結合タンパク質の存在下において実施することができる。分泌されたMMP12は、MMP−12発現細胞が培養される培地試料中において検出することができる。例えば、本明細書に記載の結合タンパク質を用いる、例えば、抗体ベースのスクリーニング法を用いて、分泌されたMMP−12を検出することができる。例えば、免疫ブロット解析またはELISAを用いることができる。
MMP−12結合タンパク質は、インビトロまたはインビボにおけるMMP−12、またはこれらのフラグメントに対するそれらの調節活性を測定するアッセイにおいて特徴づけることができる。例えば、MMP−12は、MMP−12による切断を許容するアッセイ条件下において、Mca−Pro−Leu−Ala−Cys(Mob)−Trp−Ala−Arg−Dap(Dnp)−NHなどの基質と組み合わせることができる。アッセイは、MMP−12結合タンパク質の不在下において、また濃度を増加させたMMP−12結合タンパク質の存在下において実施する。MMP−12活性(例えば、基質に対する結合)の50%が阻害される結合タンパク質濃度が、その結合タンパク質のIC50値(50%の阻害濃度)またはEC50(50%の有効濃度)値である。一連または一群の結合タンパク質内において、IC50値またはEC50値がより低値の結合タンパク質が、IC50値またはEC50値がより高値の結合タンパク質より強力なMMP−12の阻害剤であると考えられる。例示的な結合タンパク質は、例えば、MMP−12が2pMの場合におけるMMP−12活性の阻害について、インビトロアッセイで測定される場合、IC50値が800nM、400nM、100nM、25nM、5nM、または1nM未満である。
MMP−12結合タンパク質はまた、基質(例えば、肺細胞外マトリックス、エラスチン、ゼラチンなど)におけるMMP−12の活性との関連でも特徴づけることができる。例えば、MMP−12によるゼラチンの切断は、ザイモグラフィーにおいて検出することができる。該方法は、基質を含浸させたSDSゲルに基づくもので、該基質は、プロテアーゼにより分解され、インキュベーション期間中に溶解される。該ゲルに対するクーマシーブルー染色により、暗青色のバックグラウンド上における白色バンドとして、タンパク質分解によるフラグメントが示される。特定の範囲内において、該バンド強度は、添加されたプロテアーゼ量と直線的に関係し得る。このアッセイでは、MMP−12を発現する細胞が用いられる。アッセイは、MMP−12結合タンパク質の不在下において、また濃度を増加させたMMP−12結合タンパク質の存在下において実施することができる。MMP−12活性(例えば、基質に対する結合)の50%が阻害される結合タンパク質濃度が、その結合タンパク質のIC50値(50%の阻害濃度)またはEC50(50%の有効濃度)値である。一連または一群の結合タンパク質内において、IC50値またはEC50値がより低値の結合タンパク質が、IC50値またはEC50値がより高値の結合タンパク質より強力なMMP−12の阻害剤であると考えられる。例示的な結合タンパク質は、例えば、MMP−12活性の阻害についてインビトロアッセイで測定される場合、IC50値が800nM、400nM、100nM、25nM、5nM、または1nM未満である。
MMP−12に対する選択性についてもまた、結合タンパク質を評価することができる。例えば、MMP−12結合タンパク質は、MMP−12、ならびにMMPおよび他の酵素、例えば、ヒト酵素および/またはマウス酵素、例えば、MMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MMP−13、MMP−14、MMP−16、MMP−17、MMP−24、およびTACEのパネルに対するその効力についてアッセイすることができ、各MMPについてIC50値またはEC50値を決定することができる。一実施形態において、MMP−12に対して低値のIC50値またはEC50値を示し、被験パネル内の別のMMP(例えば、MMP−1、MMP−10)に対してより高値のIC50値またはEC50値、例えば、少なくとも2、5、または10倍の高値を示す化合物は、MMP−12に対して選択的であると考えられる。
MMP−12結合タンパク質は、例えば、Colo205細胞またはMCF−7細胞内での細胞ベースのアッセイ、例えば、in situザイモグラフィーにおいて、それらがMMP−12を阻害する能力について評価することができる。
MMP−12結合タンパク質について、ラット、マウス、またはサルにおける薬物動態試験を実施して、血清中におけるMMP−12の半減期を決定することができる。同様に、例えば、本明細書に記載の疾患または状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷を治療するための、治療剤としての使用についても、インビボにおいて、例えば、疾患の動物モデルにおいて該結合タンパク質の効果を評価することができる。
医薬組成物
別の態様において、本開示は、例えば、MMP−12結合タンパク質、例えば、本明細書に記載の抗体分子、MMP−12に結合すると同定された他のポリペプチドまたはペプチドを包含する組成物、例えば、薬学的に許容される組成物または医薬組成物を提供する。MMP−12結合タンパク質は、薬学的に許容される担体と共に製剤化することができる。医薬組成物は、治療組成物および診断組成物、例えば、インビボにおける画像化のために標識されたMMP−12結合タンパク質を包含する組成物を包含する。
薬学的に許容される担体は、生理学的に適合する、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。吸入投与および鼻腔内投与に適する担体もまた意図されるが、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適することが好ましい。投与経路に応じて、MMP−12結合タンパク質は、該化合物を不活化させ得る酸の作用および他の天然条件から該化合物を保護する物質中においてコーティングすることができる。
薬学的に許容される塩とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性作用を及ぼさない塩である(例えば、Berge, S.M.ら、1977年、J. Pharm. Sci.、66巻、1〜19頁を参照されたい)。このような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、亜リン酸塩などの、非毒性の無機酸に由来する塩のほか、脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸などの、非毒性の有機酸に由来する塩が含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの、アルカリ土類金属に由来する塩のほか、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの、非毒性の有機アミンに由来する塩も含まれる。
組成物は、各種の形態であり得る。これらには、例えば、液剤(例えば、注射液および注入液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、および坐剤など、液体剤形、半固体剤形、および固体剤形が含まれる。該形態は、意図される投与方式および治療適用に依存し得る。多くの組成物が、ヒトにおける投与に用いられる、抗体を伴う組成物に類似の組成物など、注射液または注入液の形態である。例示的な投与方式は、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)である。一実施形態において、MMP−12結合タンパク質は、静脈内注入または静脈内注射により投与される。別の好ましい実施形態において、MMP−12結合タンパク質は、筋肉内注射または皮下注射により投与される。
本明細書で用いられる「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、通常は注射による、経口投与および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内における注射および注入が含まれるがこれらに限定されない。
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または高薬物濃度に適する他の秩序構造として製剤化することができる。必要に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つまたはこれらの組合せを伴う適切な溶媒中において、結合タンパク質を必要とされる量で組み込むことにより無菌の注射溶液を調製した後で、濾過により滅菌することができる。一般に、基本的な分散媒と、上記で列挙された成分に由来する、他の必要とされる成分とを含有する無菌のビヒクル中へと活性化合物を組み込むことにより、分散剤を調製する。無菌の注射溶液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を有効成分に加えた散剤をもたらす、真空乾燥法および凍結乾燥法である。溶液の適正な流体性は、例えば、レシチンなどコーティング剤を用いることにより、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズを維持することにより、また、界面活性剤を用いることにより維持することができる。組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることにより、注射用組成物の遅延吸収をもたらすことができる。
多くの適用に好ましい投与経路/投与方式は、静脈内注射または静脈内注入であるが、MMP−12結合タンパク質は、各種の方法により投与することができる。例えば、治療的な適用の場合、30、20、10、5、または1mg/分未満の速度で約1〜100mg/mまたは7〜25mg/mの用量に達する静脈内注入によりMMP−12結合タンパク質を投与することができる。投与経路および/または投与方式は、所望される結果に応じて変化する。特定の実施形態において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロ封入による送達系を含めた、制御放出製剤など、急速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解ポリマー、生体適合性ポリマーを用いることができる。このような製剤の多くの調製法が利用可能である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R. Robinson編、1978年、Marcel Dekker, Inc., New Yorkを参照されたい。
医薬組成物は、医療デバイスにより投与することができる。例えば、一実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、デバイス、例えば、注射針なしの皮下注射デバイス、ポンプ、またはインプラントにより投与することができる。
特定の実施形態では、MMP−12結合タンパク質を製剤化して、インビボにおける適正な分布を確保することができる。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。本明細書に記載の治療化合物がBBBを確実に超えるように(所望の場合)、それらを、例えば、リポソームに製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送され、これにより、標的化された薬物送達を増強する1つまたは複数の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade、1989年、J. Clin. Pharmacol.、29巻、685頁を参照されたい)。
投与レジメンは、所望される最適の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。例えば、単一のボーラスを投与することもでき、複数に分割された用量をある時間にわたって投与することもでき、治療状況の要件により示されるのに比例して用量を減少または増加させることもできる。投与を容易にし、用量を均一にするために、非経口組成物を用量単位形態に製剤化することがとりわけ有利である。本明細書で用いられる用量単位形態とは、対象を治療するための単位用量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と併せて、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。(a)活性化合物の固有の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性に対し処置するようにこのような活性化合物を配合する、当技術分野に固有の制約により、またこれらに直接に依存して、用量単位形態の規格を決定することができる。
本明細書で開示される抗体の治療有効量または予防有効量の例示的であるが非限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは、1〜10mg/kgである。例えば、30、20、10、5、または1mg/分未満の速度で約1〜100mg/mまたは約5〜30mg/mの用量に達するための、例えば、静脈内注入により、抗MMP−12抗体を投与することができる。抗体より低分子量の結合タンパク質の場合、適切な量もこれに比例して低量となる。用量値は、緩和される疾患の種類および重症度と共に変えることができる。特定の対象には、個別の必要、および組成物投与の管理者または監督者の職業的判断により、ある期間にわたって特定の投与レジメンを調整することができる。
本明細書で開示される医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の、本明細書で開示されるMMP−12結合タンパク質を包含し得る。「治療有効量」とは、投薬のときにおいて、また必要な期間にわたり、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。組成物の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびにタンパク質が個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって変えることができる。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が組成物の任意の毒性作用または有害作用を凌駕する量でもある。
「治療有効用量」は、測定可能なパラメータ、例えば、循環のIgG抗体レベルまたは酵素活性を、非治療の対象と比べて、統計学的に有意な程度、または少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにまたより好ましくは少なくとも約80%調節することが好ましい。化合物が測定可能なパラメータ、例えば、疾患に関連するパラメータを調節する能力は、ヒトの疾患および状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。代替的に、組成物のこの特性は、化合物がインビトロにおいてパラメータを調節する能力を試験することにより評価することができる。
「予防有効量」とは、投薬のときにおいて、また必要な期間にわたり、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。予防用量は、疾患の前または疾患の早期にある対象において用いられるため、予防有効量は、治療有効量未満であることが典型的である。
安定化および保持
一実施形態において、MMP−12結合タンパク質は、循環における、例えば、血液、血清、リンパ、または他の組織におけるその安定化および/または保持を、例えば、少なくとも1.5、2、5、10、または50倍向上させる部分と物理的に結合している。例えば、MMP−12結合タンパク質は、ポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドなどの実質的に非抗原性のポリマーと結合することができる。適当なポリマーは、重量が実質的に異なる。約200〜約35000(または約1000〜約15000、および2000〜約12500)の範囲の数平均分子量を有するポリマーを使用することができる。例えば、MMP−12結合タンパク質を、水溶性ポリマー、例えば、親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンとコンジュゲートさせることができる。このようなポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、これらのコポリマーおよびこれらのブロックコポリマーが挙げられ、ただし、ブロックコポリマーの水溶性は維持されている。
MMP−12結合タンパク質はまた、担体タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンと結合することができる。例えば、翻訳融合を使用して、担体タンパク質をMMP−12結合タンパク質と結合させることができる。
キット
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、キットで、例えば、キットの構成要素として提供することができる。例えば、キットは、(a)MMP−12結合タンパク質、例えば、MMP−12結合タンパク質を含む組成物、および任意選択で(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または本明細書に記載の方法のためのMMP−12結合タンパク質の使用に関する説明資料、使用説明資料、宣伝資料または他の資料とすることができる。
キットの情報材料は、その形態において制約を受けない。一実施形態において、情報材料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチについての情報、または製造地の情報などを包含し得る。一実施形態において、情報材料は、結合タンパク質を用いて、障害および状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷を治療、予防、または診断することに関する。
一実施形態において、情報材料は、MMP−12結合タンパク質を、本明細書に記載の方法を実施するのに適する形で、例えば、適切な用量、剤形、または投与方式(例えば、本明細書に記載の用量、剤形、または投与方式)で投与するための指示書を包含し得る。別の実施形態において、情報材料は、MMP−12結合タンパク質を、適切な対象、例えば、ヒト、例えば、本明細書に記載の障害または状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷を有する対象またはこれらに対する危険性を示すヒトに投与するための指示書を包含し得る。例えば、該材料は、MMP−12結合タンパク質を、本明細書に記載の障害または状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷を有する患者に投与するための指示書を包含し得る。キットの情報材料は、その形態において制約を受けない。多くの場合において、情報材料、例えば、指示書は、印刷物で提供されるが、また、コンピュータで読み取り可能な材料など、他のフォーマットの場合もある。
MMP−12結合タンパク質は、任意の形態で、例えば、液体形態、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供することができる。MMP−12結合タンパク質は、実質的に純粋および/または無菌であることが好ましい。MMP−12結合タンパク質が液体溶液で提供される場合、液体溶液は好ましくは水溶液であり、無菌の水溶液が好ましい。MMP−9結合タンパク質が乾燥形態として提供される場合、再形成は一般に適当な溶媒の添加により行われる。溶媒、例えば、無菌の水または緩衝液は、任意選択で、キットで提供することができる。
キットは、MMP−12結合タンパク質を含有する組成物のための1つまたは複数の容器を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、組成物および情報資料のための別個の容器、仕切りまたは区画を含む。例えば、組成物は、瓶、バイアル、またはシリンジ中に含めることができ、情報資料は容器に結合させて含めることができる。別の実施形態において、キットの別個の要素は、単一の分割されていない容器内に含まれる。例えば、組成物は、ラベルの形態で情報資料を付着させた瓶、バイアルまたはシリンジ中に含まれる。いくつかの実施形態において、キットは、MMP−12結合タンパク質の1つまたは複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)をそれぞれが含む複数(例えば、1パック)の個々の容器を含む。例えば、キットは、単回単位用量のMMP−12結合タンパク質をそれぞれが含む複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、またはブリスターパックを含む。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気の変化または蒸発に対して不透過性)、および/または遮光性とすることができる。
キットは、組成物の投与に適当なデバイス、例えば、シリンジ、吸入器、点滴器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、コットンスワブまたは木製スワブ)、または任意のこのような送達デバイスを任意選択で含む。一実施形態において、デバイスは、定量の結合タンパク質を投薬する移植可能なデバイスである。本開示はまた、例えば、本明細書に記載の構成要素を組み合わせることによって、キットを提供する方法を特徴とする。
治療
MMP−12に結合し、本明細書で記載され、かつ/または本明細書で詳述される方法により同定されるタンパク質は、特に、ヒト対象において、治療的および予防的に有用である。これらの結合タンパク質を対象に投与して、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷を含めた各種の障害を、治療、予防、および/もしくは診断するか、さらにまたは、例えば、インビトロもしくはex vivoにおいて培養される細胞へと投与する。治療は、障害、障害の症状、または障害に向かわせる素因を緩和するか、軽減するか、変化させるか、修復するか、改善するか、好転させるか、またはこれに影響を与えるのに有効な量の投与を包含する。治療はまた、発生を遅延させる、例えば、疾患もしくは状態の発生を防止するか、または疾患もしくは状態の悪化を防止し得る。
例示的な障害には、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性肺癌、転移性結腸直腸癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷が含まれる。これらの障害の一部は、上記で論じられている。MMP−12結合タンパク質を用いて治療され得るさらに他の障害には、大動脈瘤、皮膚の光老化が含まれる。
本明細書において使用される場合、障害を予防するために有効な標的結合剤の量、または予防的に有効な結合剤の量とは、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、障害、例えば、本発明に記載の障害の発症または再発の発生を予防するまたは遅らせるために有効な、本明細書に記載の標的結合剤、例えば、MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12抗体の量をいう。
本明細書に記載の結合剤を使用して、対象において新脈管形成を減少させる、例えば、癌(例えば、充実性腫瘍)または新脈管形成関連障害を治療することができる。方法は、例えば、新脈管形成、障害の症状、または障害の進行を調節するために有効な量で、対象に結合剤を投与する工程を含む。作用物質(例えば、MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12抗体)を、治療有効量に到達する前に複数回(例えば、少なくとも2、3、5、または10回)投与してもよい。MMP−12結合タンパク質および別の作用物質を投与する方法はまた、「Pharmaceutical Compositions」にも記述されている。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに使用される特定の薬物に依存し得る。結合タンパク質は、例えば、天然因子または病理学的因子とMMP−12との間の、望ましくない相互作用を阻害する、減少させるための競合剤として使用することができる。MMP−12結合タンパク質の用量は、患者において、特に、疾患の部位でMMP−12活性の90%、95%、99%、または99.9%を遮断するために十分な量とすることができる。疾患に応じて、この量は0.1、1.0、3.0、6.0、または10.0mg/Kgを必要とする場合がある。150000g/モル(2つの結合部位)の分子量を有するIgGに関して、これらの用量は、5Lの血液量に対して約18nM、180nM、540nM、1.08μM、および1.8μMの結合部位に相当する。
一実施形態において、MMP−12結合タンパク質を使用して、細胞、例えば、癌細胞の活性をインビボで阻害する(例えば、その少なくとも1つの活性を阻害する、その増殖、移動、成長または生存可能性を減少させる)。結合タンパク質は、単独で使用することができ、または作用物質、例えば、細胞傷害性薬、細胞傷害性酵素、または放射性同位体とコンジュゲートさせることができる。この方法は、単独のまたは作用物質(例えば、細胞傷害性薬)に結合した結合タンパク質を、このような治療を必要としている対象に投与する工程を含む。例えば、MMP−12を実質的に阻害しないMMP−12結合タンパク質は、毒素などの作用物質を含有するナノ粒子を、MMP−12関連細胞または組織、例えば、腫瘍へ送達するために使用することができる。
MMP−12結合タンパク質は、MMP−12発現細胞を認識し、癌細胞、例えば、癌性肺、肝臓、結腸、乳房、卵巣、表皮、喉頭、および軟骨の細胞、特にこれらの転移細胞と結合している(例えば、これらの細胞に近接している、またはこれらの細胞と混ざり合っている)細胞に結合することができるため、MMP−12結合タンパク質を使用して、任意のこのような細胞を阻害し(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)、発癌を阻害することができる。癌近くのMMP−12活性を減少させることにより、転移、成長因子の活性化などについてのMMP−12活性に依存している可能性がある癌細胞を間接的に阻害する(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)ことができる。
代替として、結合タンパク質は、癌性細胞の近傍にあって、癌細胞を直接または間接的に阻害する(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)ために癌性細胞に十分に近い細胞に結合する。したがって、MMP−12結合タンパク質(例えば、毒素、例えば、細胞毒で修飾した)を使用して、癌性組織中の細胞(癌性細胞自体、および癌と結合するかまたは癌に進入している細胞を含む)を選択的に阻害することができる。
結合タンパク質を、作用物質(例えば、様々な細胞傷害性薬および治療薬のいずれか)をMMP−12が存在する細胞および組織へ送達するために使用してもよい。例示的な作用物質は、放射線を放出する化合物、植物、真菌、または細菌起源の分子、生体タンパク質、およびこれらの混合物を含む。細胞傷害性薬は、毒素、短距離放射線放射体、例えば、短距離高エネルギーα放射体などの細胞内作用性の細胞傷害性薬であってもよい。
MMP−12発現細胞、特に癌性細胞を標的化するために、プロドラッグシステムを使用することができる。例えば、第1の結合タンパク質を、プロドラッグ活性化剤とごく近接するときのみ活性化されるプロドラッグとコンジュゲートする。プロドラッグ活性化剤を、第2の結合タンパク質、好ましくは標的分子の非競合部位に結合するものとコンジュゲートする。2つの結合タンパク質が競合または非競合結合部位に結合するかどうかは、従来の競合的結合アッセイによって決定することができる。例示的な薬物プロドラッグ対は、Blakelyら、(1996年)Cancer Research、56巻:3287〜3292頁において記述されている。
MMP−12結合タンパク質を直接インビボで使用して、天然の補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して抗原発現細胞を排除することができる。本明細書に記載の結合タンパク質は、補体に結合するIgG1、−2、もしくは−3のFc部分またはIgMの対応する部分などの補体結合エフェクタードメインを含むことができる。一実施形態において、標的細胞の集団を、本明細書に記載の結合剤および適切なエフェクター細胞を用いてエクスビボで処理する。処理は、補体または補体を含有する血清の添加によって補足することができる。さらに、本明細書に記載の結合タンパク質で被覆された標的細胞の貪食を、補体タンパク質の結合によって改善することができる。別の実施形態の標的において、補体結合エフェクタードメインを含む結合タンパク質で被覆された細胞は、補体によって溶解される。
MMP−12結合タンパク質を投与する方法は、「Pharmaceutical Compositions」に記述されている。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに使用される特定の薬物に依存する。結合タンパク質は、例えば、天然因子または病理学的因子とMMP−12との間の、望ましくない相互作用を阻害する、または減少させるための競合剤として使用することができる。
MMP−12結合タンパク質を使用して、内皮または上皮中への遺伝子療法の目的でマクロおよびミクロ分子、例えば、遺伝子を細胞中へ送達し、MMP−12を発現する組織のみを標的化することができる。結合タンパク質を、治療薬、放射線を放出する化合物、植物、真菌、または細菌起源の分子、生体タンパク質、およびこれらの混合物を含む様々な細胞傷害性薬を送達するために使用してもよい。細胞傷害性薬は、本明細書に記載の通り、例えば、短距離高エネルギーα放射体を含む短距離放射線放射体などの細胞内作用性の細胞傷害性薬であってもよい。
ポリペプチド毒素の場合は、組換え核酸技術を使用して、結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)および細胞毒(またはそのポリペプチド構成要素)を翻訳融合物としてコードする核酸を構築することができる。次いで組換え核酸を、例えば細胞中で発現させ、コードされている融合ポリペプチドを単離する。
代替として、MMP−12結合タンパク質を、高エネルギー放射線放射体、例えば、ある部位に局在化する場合に細胞数個分の直径の死滅をもたらすγ−放射体である131Iなどの放射性同位体に結合することができる。例えば、S.E. Order、「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W. Baldwinら(編)、303〜316頁(Academic Press 1985年)を参照されたい。他の適当な放射性同位体は、212Bi、213Bi、および211Atなどのa放射体、ならびに186Reおよび90Yなどのb放射体を含む。さらに、177Luもまた、造影剤および細胞傷害剤の両方として使用してもよい。
131I、90Y、および177Luで標識した抗体を使用した放射免疫療法(RIT)は、熱心に臨床研究されている。これらの3つの核種の物理的特性には顕著な違いが存在し、結果として、目的の組織へ最大の放射線量を送達するために、放射性核種の選択は極めて重要である。90Yのより高いβエネルギー粒子は、大きな腫瘍に有利である可能性がある。131Iの比較的低いエネルギーβ粒子は理想的であるが、抗体取り込みに関して放射性ヨウ化分子のインビボ脱ハロゲン化が主な不利点である。対照的に、177Luは、わずか0.2〜0.3mmの範囲の低いエネルギーβ粒子を有し、90Yと比較してはるかに低い放射線量を骨髄へ送達する。加えて、(90Yと比較して)長い物理的半減期のために、滞留時間がより長い。結果として、177Lu標識された作用物質のより高い活性(より多量のmCi)を、比較的少ない放射線量で骨髄に投与することができる。様々な癌の治療において177Lu標識抗体の使用を研究するいくつかの臨床研究がなされてきた。(Mulligan Tら、1995年、Clin. Canc. Res.1巻:1447〜1454頁;Meredith RFら、1996年、J. Nucl. Med.37巻:1491〜1496頁;Alvarez RDら、1997年、Gynecol. Oncol.65巻:94〜101頁)。
例示的な疾患および状態
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、MMP−12が関与する疾患もしくは状態、例えば、本明細書に記載の疾患もしくは状態を治療するか、またはこれらと関連する1つもしくは複数の症状を治療するのに有用である。一部の実施形態において、MMP−12結合タンパク質(例えば、MMP−12結合IgGまたはMMP−12結合Fab)は、MMP−12の活性、例えば、MMP−12の触媒活性を阻害する。
このような疾患および状態の例には、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、または転移性肝細胞癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、関節リウマチ)、心血管疾患、動脈瘤、創傷治癒、老化、およびMMP−12の過剰であるかまたは不適切な活性と関連する神経損傷が含まれる。治療有効量のMMP−12結合タンパク質を、MMP−12が関係している障害を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与し、これにより障害を治療する(例えば、障害の症状または特徴を回復させるまたは改善する、疾患進行を遅らせる、安定させるまたは停止させる)。
MMP−12結合タンパク質を、治療有効量で投与する。治療有効量のMMP−12結合タンパク質は、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、このような治療を行わない場合に予想される以上の程度までの対象の治療、例えば、対象の少なくとも1つの障害の症状の回復、緩和、軽減または改善に有効な量である。組成物の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに化合物の個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって異なる場合がある。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が勝る量である。
治療有効量、典型的には、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、このような治療を行わない場合に予想される以上の程度までの対象の治療、例えば、対象の少なくとも1つの障害の症状の回復、緩和、軽減または改善に有効な化合物の量を投与することができる。組成物の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに化合物の個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって異なる場合がある。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が勝る量である。治療有効用量は、好ましくは、測定可能なパラメータを、治療していない対象に比較して有利に調節する。化合物の測定可能なパラメータを阻害する能力は、ヒト障害における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的応答)をもたらすために調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または用量を、治療状況の要件に示されるように比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を調合することは特に有利である。本明細書において使用される場合、投薬単位形態は、治療される対象のための単一用量として適する、物理的に分離した単位をいう。各単位は、所要の医薬担体と関連して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含む。

MMP−12などのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、ECMおよび基底膜の構成要素を切断し、これにより癌細胞がその下の間質マトリックスに浸透および浸潤できるようにすることによって癌に寄与すると考えられている。さらに、多くの成長因子受容体、細胞接着分子、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシスリガンド、および脈管形成因子が、MMPの基質である。したがって、MMP活性は、成長因子の活性化、腫瘍細胞アポトーシスの抑制、宿主免疫応答によって発生したケモカイン勾配の破壊、または脈管形成因子の放出を引き起こし得る。MMPは、特異的な結合タンパク質(IGFBP)に結合しているインスリン様成長因子などの細胞増殖因子の放出を促進することによって腫瘍成長を容易にし得る(Manesら、1997年J. Biol. Chem. 272巻:25706〜25712頁)。
MMP−12を含むコラゲナーゼは、メラノーマならびに結腸癌、肺癌、および肝臓癌において高レベルで見出されている。通常、これらの高レベルは、高い腫瘍悪性度および侵襲性と相関関係にある。
したがって、本開示は、有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を投与することにより、癌(例えば、Her2+乳癌、Her2−乳癌、ER+乳癌、ER−乳癌、Her2+/ER+乳癌、Her2+/ER−乳癌、Her2−/ER+乳癌、およびHer2−/ER−乳癌を含めた乳癌、頭頚部癌、口腔癌、喉頭癌、軟骨肉腫、卵巣癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、前立腺癌、結腸癌、結腸直腸癌、肝癌(肝細胞癌)、子宮頚癌、精巣癌、黒色腫、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫))を治療する(例えば、腫瘍の増殖を遅延させるか、消失させるか、もしくは逆転させるか、数もしくはサイズにおいて転移を防止もしくは軽減するか、腫瘍細胞の浸潤を軽減するかもしくは消失させるか、腫瘍の進行までの時間間隔を延長するか、または疾患のない生存期間を延長する)方法を提供する。一部の実施形態において、MMP−12結合タンパク質は、MMP−12の活性を阻害する。
特定の実施形態において、MMP−12結合タンパク質を、単剤治療として投与する。別の実施形態において、MMP−12結合タンパク質を、さらなる抗癌剤と併用して投与する。
有効量のMMP−12結合タンパク質を、癌を発症するリスクのある対象に投与し、これにより対象の癌を発症するリスクを減少させることによって、癌を発症するリスクを予防するまたは減少させる方法もまた提供される。
本開示はさらに、有効量のMMP−12結合タンパク質を投与し、これにより腫瘍部位の新脈管形成を減少させるまたは予防することによって、腫瘍部位の新脈管形成を調節する(例えば、減少させるまたは予防する)方法を提供する。MMP−12結合タンパク質を、単剤療法としてまたはさらなる作用物質と併用して投与してもよい。
有効量のMMP−12結合タンパク質を対象に投与し、これにより対象の腫瘍による細胞外マトリックス(ECM)分解を減少させる工程を含む、腫瘍によるECM分解を減少させるための方法もまた提供される。
開示される方法は、充実性腫瘍、軟組織腫瘍、およびこれらの転移の予防および治療において有用である。充実性腫瘍は、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、および泌尿生殖(例えば、腎臓、尿路上皮、または睾丸腫瘍)路、咽頭、前立腺、および卵巣などの様々な器官系の悪性腫瘍(例えば、肉腫、腺癌、および癌腫)を含む。例示的な腺癌は、直腸結腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、および小腸癌を含む。さらなる例示的な充実性腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、泌尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、肝臓癌、胆管癌腫、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽腫を含む。前述した癌の転移もまた、本明細書に記載の方法に従って治療または予防することができる。
癌治療に対する治療有効量を決定するための指針は、治療される癌のインビボモデルを参照することにより入手してもよい。例えば、癌のげっ歯動物またはLibechovミニブタモデルにおいて治療有効量であるMMP−12結合タンパク質の量を、治療有効量である用量の選択を導くために使用してもよい。ヌードマウス/腫瘍異種移植片系(例えば、メラノーマ異種移植片;例えば、TrikhaらCancer Research 62巻:2824〜2833頁(2002年)を参照)および乳癌または神経膠腫のマウスモデル(例えば、Kuperwasserら、Cancer Research 65巻、6130〜6138頁、(2005年);Bradfordら、Br J Neurosurg.3(2)巻:197〜210頁(1989年))を含む、多くのヒト癌のげっ歯動物モデルが利用可能である。黒芽細胞腫担癌Libechovミニブタ(MeLiM)は、メラノーマの動物モデルとして利用可能である(例えば、Boisgardら、Eur J Nucl Med Mol Imaging 30(6)巻:826〜34頁(2003年))。
関節リウマチおよび関連する状態
関節リウマチ(RA)は、関節腫脹および疼痛を引き起こす自己免疫性の慢性炎症性疾患であり、通常、関節破壊をもたらす。RAは一般に、疾患症状の寛解に挟まれる疾患活性の「フレア(flare)」と共に、再発/寛解経過に続いて起こる。RAは、シェーグレン症候群(涙腺および唾液腺の炎症によって引き起こされるドライアイおよびドライマウス)、胸膜炎(深呼吸および咳嗽時に疼痛を引き起こす胸膜の炎症)、リウマチ結節(肺内で発生する結節部位の炎症)、心膜炎(伏臥または前傾時に疼痛を引き起こす心膜の炎症)、フェルティ症候群(対象を感染症にかかり易くする、RAと共に観察される巨脾症および白血球減少症、)および血管炎(血流を遮断する可能性がある血管の炎症)を含む、多くのさらなる炎症障害と関連している。MMP−12は、関節リウマチに関与している。
活動性RAの症状は、倦怠感、食欲不振、微熱、筋肉および関節痛、ならびにこわばりを含む。筋肉および関節のこわばりは、通常、朝および無活動期間の後に最も顕著である。フレアの間、一般に滑膜炎の結果として、関節は頻繁に発赤、腫脹し、疼痛、圧痛を感じるようになる。
関節リウマチに対する治療は、薬物治療、安静、関節強化訓練、および関節保護の組合せを含む。関節リウマチの治療において2つのクラスの薬剤:抗炎症「第一選択薬」、および疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が使用される。第一選択薬は、NSAIDS(例えば、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、およびエトドラク)およびコルチゾン(コルチコステロイド)を含む。金(例えば、金塩、金チオグルコース、金チオリンゴ酸塩、経口金)、メトトレキサート、スルファサラジン、D−ペニシラミン、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、およびシクロスポリン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、およびアダリムマブ、およびヒドロキシクロロキンなどのDMARDSは、疾患寛解を促進し、進行性の関節破壊を予防するが、これらは抗炎症剤ではない。
MMP−12レベルの増加は、関節炎を有する対象において見出されている(正常な個体と比較して)。本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質をRAを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、関節リウマチを治療する(例えば、1つまたは複数の症状を改善する、安定させる、もしくは除去する、またはRA尺度の対象のスコアを改善するもしくは安定させる)方法を提供する。治療有効量のMMP−12結合タンパク質および少なくとも1つのNSAIDおよび/またはDMARDSを投与することによって、RAを治療する方法がさらに提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することによって、関節リウマチに関連する障害(シェーグレン症候群、胸膜炎、肺のリウマチ結節、心膜炎、フェルティ症候群、および血管炎)を治療する(例えば、1つまたは複数の症状を改善する、安定させる、または除去する)方法がさらに提供される。
RAおよびRAの症状を評価するために有用な尺度は、関節リウマチ重症度尺度(RASS;Bardwellら、(2002年)Rheumatology 41(1)巻:38〜45頁)、SF−36関節炎特有の健康指標(ASHI;Wareら、(1999年)Med. Care.37(5Suppl):MS40〜50頁)、関節炎の影響測定尺度または関節炎の影響測定尺度2(AIMSまたはAIMS2;Meenanら(1992年)Arthritis Rheum.35(1)巻:1〜10頁);スタンフォード健康評価質問票(HAQ)、HAQII、または改訂HAQ(例えば、Pincusら(1983年)Arthritis Rheum.26(11)巻:1346〜53頁を参照)を含む。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、アジュバントにおいて自己由来または異種のII型コラーゲンを免疫化することによって、典型的にはげっ歯動物において誘導されるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)などの関節リウマチの動物モデルから入手してもよい(WilliamsらMethods Mol Med.98巻:207〜16頁(2004年))。
COPD
慢性閉塞性気道疾患(COAD)としても公知の慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全には可逆的でない気道における気流の病理学的制限によって特徴づけられる疾患群である。COPDは、慢性気管支炎、肺気腫および様々な別の肺障害の包括的な用語である。これは喫煙に起因することが最も多いが、炭塵、アスベストまたは溶媒、ならびにα−1アンチトリプシン欠損症などの先天的状態などの別の空気中の刺激物に起因する可能性もある。
COPDの主な症状は、場合により喘鳴、および痰の生成を伴う持続性の咳を伴う、数カ月またはおそらく数年間続く呼吸困難(息切れ)を含む。通常は気道の血管の損傷のために、痰が血液を含有(喀血)し、粘性が高くなることもあり得る。重度のCOPDは、血液中の酸素欠乏によって引き起こされるチアノーゼにつながることもある。極端な場合には、心臓が血液を肺に流すために必要とされる余分な活動のために、肺性心につながることもある。
COPDは、1秒間努力呼気容量(FEV)の努力肺活量(FVC)に対する比が0.7未満であり、FEVが、プレチスモグラフによって測定される予測値の80%未満である肺活量測定値によって特に特徴づけられる。他の徴候は、速い呼吸速度(頻呼吸)および聴診器を通して聞こえる喘鳴音を含む。肺気腫は、触診時に生じる捻髪音によって検出することができる皮下の空気の集まりである皮下気腫と同じではない。
COPDに対する治療は、気道を広げる吸入剤(気管支拡張薬)および時にテオフィリンを含む。COPD患者は喫煙を中止しなければならない。場合によっては吸入ステロイドを使用して肺炎症を抑制し、重症例または再発では静脈内または経口ステロイドを投与する。感染症がCOPDを悪化させる可能性があるので、症状の再発中は抗生物質を使用する。場合によって、長期にわたる低流量の酸素、非侵襲性の換気、または挿管が必要な場合もある。疾患肺の一部を除去するための手術は、一部のCOPD患者にとって有益であることが示されている。肺リハビリテーションプログラムは、一部の患者に有益であり得る。重症例では、時に肺移植が行われる。使用することができる気管支拡張薬は、以下を含む。
様々な効力を有する、臨床で使用されるいくつかの種類の気管支拡張薬、例えば、βアゴニスト、M抗ムスカリン薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモン、コルチコステロイド、およびキサンチンが存在する。これらの薬物は、気道の平滑筋を弛緩させて気流の改善を可能にする。βアゴニストは、サルブタモール(ヴェントリン(登録商標))、バンブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、およびホルモテロール、ならびにサルメテロールなどの長時間作用型βアゴニスト(LABA)を含む。Mムスカリンアンタゴニスト(抗コリン作用薬)は、LABAおよび吸入ステロイドと組み合わせることができる、βアゴニストのサルブタモール、イプラトロピウム、およびチオトロピウムと共に広範に処方されている、第4のMムスカリンアンタゴニストのイプラトロピウムを含む。クロモンは、クロモグリケートおよびネドクロミルを含む。ロイコトリエンアンタゴニストを使用することができ、これはモンテルカスト、プランルカスト、ザフィルルカストを含む。キサンチンは、テオフィリン、メチルキサンチン、テオブロミンを含む。より積極的なEMR介入は、IV H抗ヒスタミン薬およびIVデキサメタゾンを含む。ホスホジエステラーゼ4アンタゴニストは、ロフルミラストおよびシロミラストを含む。コルチコステロイドを使用することができ、これはグルココルチコイド、ベクロメタゾン、モメタゾン、およびフルチカゾンを含む。コルチコステロイドは、単一の吸入器において気管支拡張薬と併用されることが多い。サルメテロールおよびフルチカゾンは併用することができる(ADVAIR(登録商標))。TNFアンタゴニストは、カケキシン、カケクチン インフリキシマブ、アダリムマブおよびエタネルセプトを含む。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたはFab)を、COPDを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、COPDを治療する(例えば、COPDの症状または悪化を改善する)方法を提供する。別のCOPD治療薬(例えば、βアゴニスト、M抗ムスカリン薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモン、コルチコステロイド、およびキサンチン)と共に治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することによって、COPDを治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、COPDの動物モデルから入手することができ、例えば、PCT公開第WO2007/084486号およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。
肺気腫
肺気腫とは、以前は慢性閉塞性肺疾患(COLD)と称した慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。それは、有害な化学物質に対する曝露、または長期間にわたるタバコの煙に対する曝露により引き起こされることが多い。
肺気腫は、α1抗トリプシン欠損の作用に起因する、肺胞を支持する構造の破壊、および肺胞を養う毛細血管の破壊に由来する、肺組織の弾力性(高コンプライアンス)の喪失により生じる。したがって、呼気時においては小気道が虚脱するが、肺胞の易虚脱性も上昇している。これにより、他の閉塞性肺疾患と同様、気流が妨げられ、肺内において空気が捕捉される。症状には、運動時における息切れ、また、その後の休息時における過換気、および胸郭拡張が含まれる。
肺気腫の徴候には、口すぼめ呼吸、中心性チアノーゼ、およびばち状指が含まれる。胸郭では、特に、肝臓のすぐ上方において打診音が大きくなり、心尖拍動が触知困難となるが、これらはいずれもが過膨張に起因する。呼吸音の低下および呼息性の喘鳴の可聴化が生じることもある。疾患が進行すると、圧痕末梢浮腫(pitting peripheral edema)などの体液過剰の徴候が生じる。続発性多血症が生じる場合は、顔面が赤ら顔となる。二酸化炭素を貯留させる患者は、手首において羽ばたき振戦(代謝性振戦)を示す。
肺気腫は、不可逆的な変性状態である。その進行を遅延させるのに重要な方策は、患者が喫煙を停止し、タバコの煙に対する曝露および肺に対する刺激の全てを回避することである。肺のリハビリテーションは、患者の生活の質を最適化し、患者に、どのようにして彼または彼女のケアを積極的に管理するかを教示するのに極めて有益であり得る。肺気腫はまた、必要に応じて、抗コリン作動剤、気管支拡張剤、ステロイド薬(吸入用または経口用)、および酸素補給を伴う呼吸を支援することによっても治療される。胃逆流およびアレルギーを含めた患者の他の状態を治療することにより、肺機能を改善することができる。処方に応じて用いられる酸素補給(通常は1日当たり20時間を超える)が、肺気腫患者において寿命を延長することが示されている、手術によらない唯一の治療である。特定の注意深く選択された患者の場合、肺容量減少手術(LVRS)を行うことにより、生活の質を改善することができる。別の治療選択肢は肺移植であるが、手術を乗り切るのに十分なだけ体力的に強壮な患者は少数である。
タバコの煙の濃縮物は、マウスの気道様上皮におけるMMP−12遺伝子の発現を誘導する(Lavigneら、Biochem biophys Res Commun.、2005年、330巻、194頁)。COPD患者は、MMP−12の生成量が対照より多く、これが、肺気腫の発症機序における重要な段階であり得る(Moletら、2005年、Inflamm Res.、2005年、54巻、1号、31頁)。マウスの肺における炎症病変は、60日間にわたりタバコに曝露された対照マウスにおけるより著明に多くのMMP−12を、10、20、および30日間の時点のマクロファージ中において含有することが示されている(Valencaら、Toxicol Pathol.、2004年、32巻、3号、351頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、肺気腫を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、肺気腫を治療または予防する(例えば、肺気腫の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の肺気腫治療(例えば、抗コリン作動剤、気管支拡張剤、ステロイド薬、酸素補給、肺容量減少手術、または肺移植)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、肺気腫を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、肺気腫の動物モデルから得ることができ、例えば、Moletら、2005年、Inflamm Res.、2005年、54巻、1号、31頁;Valencaら、Toxicol Pathol.、2004年、32巻、3号、351頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
喘息
喘息は、しばしば1つまたは複数のトリガーに応答して、気道が時々収縮し、炎症を起こし、過剰量の粘液に覆われている呼吸器系を含む慢性疾患である。こうしたエピソードは、冷気、暖気、湿った空気、運動または激しい活動(exertion)または感情的ストレスなどの環境刺激物(またはアレルゲン)への曝露のようなものによって誘発され得る。小児において、最も一般的なトリガーは、感冒を引き起こすものなどのウイルス性疾患である。この気道狭窄は、喘鳴、息切れ、胸部圧迫感、および咳などの症状を引き起こす。気道収縮は、気管支拡張薬に反応する。
一部の個体において、喘息は、慢性呼吸障害によって特徴づけられる。その他において、喘息は、上気道感染、ストレス、空気中のアレルゲン、大気汚染物質(煤煙または排気ガス(traffic fumes)など)、または運動を含む多くの誘発事象によって生じ得る、偶発的な症状を特徴とする間欠的な病気である。呼吸困難、喘鳴、ぜん音、咳、身体活動不能の症状の一部または全てが、喘息を有する人において存在し得る。重度の息切れおよび肺の締めつけを有する一部の喘息患者は、全く喘鳴またはぜん音を生じず、これらの症状はCOPD型の疾患と混同される場合がある。
喘息の急性憎悪は、一般に喘息発作と呼ばれる。発作の臨床的特質は、息切れ(呼吸困難)および、喘鳴またはぜん音のいずれかである。
喘息エピソードの間、炎症を起こした気道は煤煙、塵、または花粉などの環境誘因物質に反応する。気道は狭窄し、過剰な粘液を産生して呼吸を困難にする。本質的に、喘息は、気管支気道における免疫応答の結果である。
喘息患者の気道は、特定のトリガー/刺激に対して「過敏性」である。これらのトリガーへの曝露に応答して、気管支(太い気道)は収縮して痙攣を起こす(「喘息発作」)。すぐに炎症が続いて起こり、さらに気道の狭窄および過剰な粘液産生をもたらし、これにより咳および別の呼吸困難をもたらす。
喘息の最も有効な治療は、ペットまたはアスピリンなどのトリガーを特定すること、およびこれらへの曝露を制限または除去することである。脱感作は、現在、この疾患に対する唯一の公知の「治療法」である。
喘鳴および息切れのエピソードの症状管理は、一般に、速効性の気管支拡張薬によって達成される。
軽減薬:サルブタモール(アルブテロールUSAN)、レバルブテロール、テルブタリンおよびビトルテロールなどの短時間作用型の選択的β−アドレナリン作用性受容体アゴニストを使用することができる。吸入エピネフリンおよびエフェドリン錠などの以前からの、選択性の低いアドレナリン作用性アゴニストを使用することができる。臭化イプラトロピウムなどの抗コリン作用薬を使用してもよい。
予防薬:現在の治療プロトコールは、頻繁に(週に2回を超える)軽減剤を必要とするまたは重度の症状を有する人であれば、炎症を抑制し気道内部の腫脹を減少させるのに役立つ吸入コルチコステロイドなどの予防薬を推奨している。症状が持続する場合、喘息が抑制されるまでさらなる予防薬を加える。予防薬の適切な使用により、喘息患者は、軽減薬の使いすぎから生じる合併症を避けることができる。予防剤は、吸入グルココルチコイド(例えば、シクレソニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、およびトリアムシノロン)、ロイコトリエン修飾剤(例えば、モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、およびジレウトン)、マスト細胞安定化剤(例えば、クロモグリケート(クロモリン)、およびネドクロミル)、抗ムスカリン薬/抗コリン作用薬(例えば、イプラトロピウム、オキシトロピウム、およびチオトロピウム)、メチルキサンチン(例えば、テオフィリンおよびアミノフィリン)、抗ヒスタミン薬、オマリズマブ、メトトレキサートなどのIgE遮断剤)を含む。
長時間作用型β−アドレナリン受容体作用性アゴニストを使用することができ、これは、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、および持続放出経口アルブテロールを含む。吸入ステロイドと長時間作用型気管支拡張薬との組合せはより広範になってきている。現在使用されている最も一般的な組合せは、フルチカゾン/サルメテロール(米国ではAdvair、および英国ではSeretide)である。別の組合せは、Symbicortとして公知の市販されているブデソニド/ホルモテロールである。
喘息対象において、正常な個体と比較してMMP−12の濃度が増加している。本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたはFab)を、喘息を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、喘息を治療する(例えば、喘息の症状または悪化を改善する)方法を提供する。別の喘息治療薬(例えば、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾剤、マスト細胞安定化剤、抗ムスカリン薬/抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、IgE遮断剤、メトトレキサート)と共に治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することによって喘息を治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、喘息の動物モデルから入手することができ、例えば、米国特許第5,602,302号、または欧州特許第EP1192944B1号およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。
アテローム性動脈硬化および心血管疾患
アテローム性動脈硬化は、動脈血管に影響する疾患である。それは、大部分、白血球マクロファージの蓄積に起因する、動脈壁における慢性炎症反応であり、脂肪およびコレステロールが機能的な高密度リポタンパク質(HDL)によりマクロファージから十分に除去されず、低密度の(とりわけ、微小粒子の)リポタンパク質(コレステロールおよびトリグリセリドを保有する血漿タンパク質)により促進される。それは、動脈内における複数のプラークの形成により引き起こされる。
アテローム性動脈硬化は、2つの主要な問題を引き起こす。第1に、じゅく状斑は、長期にわたり動脈の拡張により相殺されるが、最終的に、プラークを破裂させて動脈を狭窄(狭小化)させ、したがって、臓器に対してそれがもたらす血液の供給を不十分にする。動脈の相殺的な拡張過程が過剰な場合は、動脈瘤が生じる。
一般に、軟性のプラークが突然破裂し、血流を急速に緩徐化するかまたは停止させる血栓を形成させ、動脈により養われる組織を死滅させる。この事象を、梗塞と呼ぶ。1つの一般的に認められる状況は、冠動脈の冠動脈血栓と呼ばれ、これにより、心筋梗塞(心臓発作)が引き起こされる。別の一般的な状況は、狭窄、およびクロットにより狭小化した動脈瘤セグメントの両方に起因することが典型的な、脚部への血液の供給が不完全であることによる跛行である。アテローム性動脈硬化は全身に及ぶ過程であるため、類似の事象はまた、脳、腸、腎臓、脚部などに至る動脈においても生じる。
アテローム性動脈硬化は、心臓に血液を供給する冠動脈循環または脳に血液を供給する脳循環に干渉するときに症候性となり、脳卒中、心臓発作、うっ血性心不全および大半の心血管疾患一般を含めた各種の心疾患の根本原因と考えられる。
ヒト末梢血由来のマクロファージでは、複数のアテローム性動脈硬化促進性サイトカインによりMMP−12のmRNAが上方調節される(Feinbergら、J Biol Chem.、2000年、275巻、33号、25766頁)。頚動脈のじゅく状斑内におけるMMP−12の転写物レベルは、組織学的特徴および臨床症状と相関する(Morganら、Stroke.、2004年、35巻、6号、1310頁)。MMP−12のmRNAは、アテローム性動脈硬化性閉塞性疾患(AOD)組織中において一貫して示され、大動脈瘤の発症機序において直接的な役割を果たし得る(Curciら、J Clin Invest.、1998年、102巻、11号、1900頁)。疫学的データおよびインビボにおける動物実験は、プラークを形成し得る泡沫細胞へのマクロファージの分化が、マトリックスを分解するMMP−12レベルの著明な上昇を伴うことを示している(Vogelら、Cardiovasc Toxicol.、2004年、4巻、4号、363頁)。MMP−12は、高コレステロール血症ハムスターの高コレステロール血症による血管狭窄において重要な役割を果たすことが示されている(Matsunoら、2004年、44巻、1号、57頁)。アテローム性動脈硬化になり易い、アポリポタンパク質Eを欠損するバックグラウンドにおいて、MMP−12欠損マウスを交配させ、コレステロールに富む食餌を与えたところ、MMP−12の欠損が、アポリポタンパク質E欠損マウスを、アテローム性動脈硬化性の中膜破壊に対して保護した(Luttenら、2004年、109巻、11号、1408頁)。
喫煙は、マクロファージによる免疫反応性の上昇のほか、炎症および組織破壊のじゅく状斑のマーカーである、MMP−12発現の上昇とも関連することが示されている(Kangavariら、J Cardiovasc Pharmacol Ther.、2004年、9巻、4号、291頁)。MMP−12は、腹腔内ニコチンにより処理されたラットの肺内において検出され、喫煙者における心血管疾患および肺疾患の発生において重要な役割を果たし得る(Valencaら、Exp Toxicol Pathol.、2004年、55巻、5号、393頁)。
アテローム性動脈硬化に対する治療には、スタチン、一次予防および二次予防、食餌および栄養補助食品、手術による介入、ならびに予防が含まれる。
IVUS(血管内超音波評価)によれば、冠動脈内において、一部のスタチン、例えば、ロスバスタチンは、じゅく状斑の退縮を示した。スタチン、ナイアシン、腸のコレステロール吸収を阻害する補助物質(エゼチミブおよび他の補助物質、また、はるかに低い程度においてフィブレート)は、一般的なリポタンパク質パターンおよびリポタンパク質群の転帰を変化させるのに成功しているが、最適未満の程度であるにとどまる。
加えて、リポタンパク質発現を変化させる薬剤の複数のクラスは、一貫して、心臓発作、脳卒中、および入院処置を低減するだけでなく、死亡率も低下させている。薬理学的用量(一般に1,000〜3,000mg/日)における、ナイアシンとしても公知のビタミンB3は、(a)HDLのレベル、サイズ、および機能を改善し;(b)LDLの粒子分布をより大きな粒子サイズへとシフトさせ;(c)LDLのアテローム性動脈硬化促進型遺伝子改変体であるリポタンパク質(a)を低減する傾向がある。記載のMMP−12結合タンパク質は、これらの治療のうちの1つまたは複数と組み合わせて投与することができる。
他の治療には、狭小化した動脈を物理的に拡張するステントが含まれ得る、最小限に侵襲性の血管形成手順と、狭小化がより重度の領域を迂回してさらなる血液供給連絡を創出するバイパス手術など、大規模な侵襲性手術とが含まれる。
アテローム性動脈硬化類縁疾患に対する危険性を示す患者は、低用量のアスピリンおよびスタチンにより予防的治療を受ける場合が増加しつつある。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、アテローム性動脈硬化および心血管疾患を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、アテローム性動脈硬化および心血管疾患を治療または予防する(例えば、アテローム性動脈硬化および心血管疾患の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のアテローム性動脈硬化治療および心血管疾患治療(例えば、スタチン、一次予防および二次予防、食餌および栄養補助食品、手術による介入、または予防)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、アテローム性動脈硬化および心血管疾患を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、アテローム性動脈硬化の動物モデルから得ることができ、例えば、Fanら、Transgenic Res.、2004年、13巻、3号、261頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)とは、免疫系が中枢神経系(CNS)を攻撃する自己免疫状態であり、脱髄がもたらされる。それは、多数の身体および精神の症状を引き起こす可能性があり、身体および認知の障害へと進行することが多い。疾患の発生は通常、若年成人において生じ、女性においてより一般的である。
MSは、感覚の変化(知覚減退);筋力低下、異常な筋痙攣、または運動困難;協調および平衡の困難(運動失調);発話障害(構音障害)または嚥下困難(嚥下障害);視覚障害(眼振、視神経炎、または複視);疲労および急性疼痛症候群または慢性疼痛症候群;膀胱および腸の困難を含めた、多様な症状と共に示される。多様な程度の認知障害、または抑うつもしくは偽球麻痺作用の形態における感情の総体的症状もまた一般的である。神経障害性疼痛が通常見られ、これは、レールミット徴候の形態であり得る。感覚異常が存在する場合があり、これには、ピン感覚および針感覚;刺痛;震え;灼熱痛;圧迫感;および触覚過敏の皮膚領域が含まれる。これらと関連する疼痛は、うずき、拍動性疼痛、刺痛、ずきずきする痛み、絶え間ない苦痛、うずき、緊張、およびしびれであり得る。障害の進行および症状の重症度に対する主要な臨床的尺度は、拡張障害状態スケールすなわちEDSSである。
初期発作(また、悪化または再発としても公知)は、一過性、軽微(または無症状)、および自己限定性であることが多い。報告される一般的な初期症状は、腕部、脚部、または顔面における感覚の変化(33%);完全または部分的な視覚の喪失(視神経炎)(16%);体力低下(13%);複視(7%);歩行時における不安定(5%);および平衡障害(3%)であるが、失語症または精神症など、多くのまれな初期症状が報告されている。視神経炎または限局性脚力低下は、転倒および他の重篤な事故をもたらし得る。
いくつかの療法が多発性硬化症の治療に有用であることが分かっている。治療の目的には、発作後における機能の復帰、新たな発作の予防、および障害の予防が含まれる。症状性発作時においては、メチルプレドニゾロンなど、高用量の静脈内コルチコステロイドの投与が、急性再発に対する日常的な療法である。再発−寛解型MSには、インターフェロン(例えば、AVONEX(登録商標)、REBIF(登録商標)、BETAFERON(登録商標))、酢酸グラチラマー(例えば、COPAXONE(登録商標))、免疫抑制剤(例えば、ミトキサントロン)、およびナタリズマブ(例えば、TYSABRI(登録商標))を含めた疾患修飾治療薬が用いられる。
ヒトの活動性脱髄病変では、食作用性マクロファージがMMP−12陽性であることから、MSの脱髄時におけるMMP−12の役割が示唆される(Vosら、J Neuroimmunol、 2003年、138巻、1〜2号、106頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、MSを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、MSを治療または予防する(例えば、MSの症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のMS治療薬(例えば、インターフェロン(例えば、AVONEX(登録商標)、REBIF(登録商標)、BETAFERON(登録商標))、酢酸グラチラマー(例えば、COPAXONE(登録商標))、免疫抑制剤(例えば、ミトキサントロン)、およびナタリズマブ(例えば、TYSABRI(登録商標)))と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、MSを治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、MSの動物モデルから得ることができ、例えば、Toft−Hansenら、J Immunol.、2004年、173巻、8号、5209頁;Tsutsuiら、J Neurosci、2004年、24巻、1521頁;Anthonyら、J Neuroimmunol、1998年、87巻、1〜2号、62頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
腹部大動脈瘤
腹部大動脈瘤(AAA)とは、正常な直径を、50%を超えて上回る腹部大動脈の局在化された拡張である。腎臓下大動脈の正常な直径は、約2cmである。それは、大動脈壁の変性過程により引き起こされるが、正確な病因は未知のままである。それは、腎臓下に位置する場合が最も一般的(腎臓下;90%)であるが、他の可能な位置は、腎臓より上方であるかまたは腎臓の高さ(腎上および腎傍)である。動脈瘤は、拡張して腸骨動脈の一方または両方を包含し得る。大動脈瘤はまた、胸郭内においても生じ得る。
腹部大動脈瘤は、老齢の個体(65〜75歳)において生じることがより一般的であり、男性の喫煙者において生じることがより多い。
腹部大動脈瘤の重篤な合併症は、破裂であり、これは致命的事象となることが多い。腹部大動脈瘤は血管壁を弱体化させ、それを破裂に対して脆弱とする。破裂型AAAの臨床症状には、背部下方、わき腹、腹部、または鼠径部の疼痛が含まれるが、出血は通常、低血圧、頻脈、チアノーゼ、および精神状態の変化を伴う血液量減少性ショックをもたらす。
AAAに対する一部の危険因子には、遺伝的影響、血行力学的影響、アテローム性動脈硬化、感染、外傷、動脈炎、嚢胞性中膜壊死、および結合組織障害(例えば、マルファン症候群、エーラー−ダンロス症候群)が含まれる。
AAAにおいて、健康な大動脈と比較してMMP−12の酵素原レベルおよびタンパク質分解活性が上昇することは、慢性大動脈壁炎症がマクロファージの浸潤を介するものであることを示唆し、これにより、中膜エラスチンの破壊を説明することができる(Annabiら、J Vasc Surg.、2002年、35巻、3号、539頁)。MMP−12は、AAAの変性大動脈中膜内における動脈瘤浸潤マクロファージにより顕著に発現し、ここで、MMP−12はまた、残存する弾性線維フラグメントにも結合する。エラスチンは、大動脈壁構造の極めて重要な構成要素およびメタロエラスターゼのマトリックス基質を表わすので、MMP−12は、大動脈瘤の発症機序において直接的な役割を果たし得る(Curciら、1998年、102巻、11号、1900頁)。
無症状性AAAに対する治療選択肢は、即時的な修復、最終的な修復を念頭においた監視、および保存的管理である。現在のところ、AAAには2つの修復方式:開放型動脈瘤修復(OR)、および血管内動脈瘤修復(EVAR)が実施可能である。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、AAAを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、AAAを治療または予防する(例えば、AAAの症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のAAA治療(例えば、即時的な修復、最終的な修復を念頭においた監視、および保存的管理)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、AAAを治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、AAAの動物モデルから得ることができ、例えば、Longoら、Surgery.、2005年、137巻、4号、457頁;Shimizuら、J Clin Invest.、2004年、114巻、2号、300頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
硬化症
全身性硬化症(SSc)とは、強皮症の一般型であり、皮膚または他の臓器内におけるコラーゲンの過剰な沈着を特徴とする慢性疾患である。SScは、心臓、腎臓、肺、または腸を損傷する自己免疫疾患の結果として致命的であり得る。
強皮症は皮膚に影響し、より重篤な症例において、それは血管および内臓に影響し得る。より著明な症状は通常、皮膚の硬化およびこれと関連する瘢痕形成である。血管もまたより目にみえ易くなる可能性がある。多くのSSc患者(80%を超える)は、血管症状およびレイノー現象を示す。発作時には、体温低下に応答して手足が変色する。レイノー現象は通常、手足の指に影響する。SScおよびレイノー現象は、手足の指において疼痛性潰瘍を引き起こす場合があり、これらは、指潰瘍として公知である。SScにおいては石灰沈着症もまた一般的であり、肘、膝、または他の関節部の近傍において見られることが多い。びまん性強皮症は、筋骨格の、肺の、胃腸の、腎臓の、および他の合併症を引き起こし得る。より大量の皮膚病変を有する患者は、内部組織および内臓の病変を有する可能性がより高い。
自己免疫疾患には家族性素因が存在すると考えられる。
SSc微小血管内皮細胞(MVEC)によるMMP−12の過剰発現は、インビトロにおけるウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)の開裂、および新脈管形成の障害を説明することが示されており、SSc患者における新脈管形成の低下に寄与し得る(D’Alessioら、Arthritis Rheum.、2004年、50巻、10号、3275頁)。
強皮症の一部の症状に対する治療には、皮膚を軟化させ、炎症を軽減する薬物が含まれる。強皮症の皮膚変化に対する局所治療は、疾患の経過を変化させないが、疼痛および潰瘍化を改善し得る。ナプロキセンなど、ある範囲のNSAID(非ステロイド抗炎症薬)を用いて疼痛性症状を緩和することができる。レイノー現象のエピソードは、場合によって、ニフェジピンまたは他のカルシウムチャネル遮断剤に応答し、重篤な指潰瘍は、プロスタサイクリン類似体であるイロプロストに応答する場合があり、二重エンドセリン受容体アンタゴニストであるボセンタンは、レイノー現象に有益であり得る。皮膚の硬直は、メトトレキサートおよびシクロスポリンにより全身性に治療することができる。強皮症患者における、強皮症による腎クリーゼ、急性腎不全の発生、および悪性高血圧(臓器損傷の証拠を伴う極めて高い血圧)は、ACE阻害剤のクラスに由来する薬物により治療すると有効である。活動性肺胞炎は、シクロホスファミドのパルスにより治療することが多く、少用量のステロイドを伴うことが多い。肺高血圧は、エポプロステノール、ボセンタン、また、おそらくはエアゾール化したイロプロストにより治療することができる。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、SScを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、SScを治療または予防する(例えば、SScの症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のSSc治療(例えば、NSAID、カルシウムチャネル遮断剤、プロスタサイクリン類似体、二重エンドセリン受容体アンタゴニスト、メトトレキサート、シクロスポリン、ACE阻害剤、シクロホスファミド、エポプロステノール、およびボセンタン)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、SScを治療する方法も提供される。
腎炎
腎炎とは腎臓の炎症であり、感染、毒素、および自己免疫疾患により引き起こされることが多い。亜型には、糸球体腎炎、間質性腎炎または尿細管間質性腎炎、腎盂腎炎、およびループス腎炎が含まれる。
腎炎は、糸球体傷害の一般的な原因である。それは、炎症性細胞の増殖を伴う糸球体構造の障害である。これにより、糸球体の血流低下による、排尿量の減少(乏尿症)、および老廃生成物の貯留(尿毒症)がもたらされる。結果として、損傷した糸球体からの赤血球の漏出(血尿症)もまた生じ得る。腎血流の低下により、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)が活性化され、これにより、体液の貯留および軽微な高血圧が引き起こされる。
MMP−12は、ラット半月形糸球体腎炎モデルにおける抗GBM(糸球体基底膜)抗血清注射の3〜7日後に腎臓内で高度に発現される遺伝子の1つである(Kanekoら、J Immunol.、2003年、170巻、6号、3373頁)。
腎炎の亜型、例えば、腎盂腎炎は、細菌感染に起因することが多いので、抗生剤が治療の根幹である。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、腎炎を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、腎炎を治療または予防する(例えば、腎炎の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の腎炎治療(例えば、抗生剤)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、腎炎を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、腎炎の動物モデルから得ることができ、例えば、Kanekoら、J Immunol.、2003年、170巻、6号、3373頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
創傷治癒
創傷治癒、または創傷修復は、皮膚組織および表皮組織の再生過程である。個体が創傷を受けると、緊密に組織化されたカスケード内において一連の複雑な生化学的イベントが生じ、損傷を修復する。これらのイベントは時間的に重複するが、個別の段階:炎症期、増殖期、およびリモデリング期へと便宜的に区別することができる。
角膜上皮細胞の増殖を調節することにより、MMP−12は、角膜の創傷治癒に寄与すると考えられる(Lyuら、J Biol Chem.、2005年、280巻、22号、21653頁)。慢性創傷の上皮におけるMMP−12発現は、扁平上皮癌(SCC)を、非悪性創傷から鑑別するための診断上の手掛かりをもたらす(Impolaら、Br J Dermatol.、2005年、152巻、4号、720頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、創傷を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、創傷を治療する(例えば、創傷の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の創傷治療と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、創傷を治療する方法も提供される。
脳脊髄炎および神経炎症障害
脳脊髄炎、例えば、実験的自己免疫性脳脊髄炎、場合によって、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)とは、脳の炎症の動物モデルである。それは、中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄疾患である。それは、げっ歯動物を用いて使用されることが多く、多発性硬化症および急性播種性脳脊髄炎などの疾患を含めた、ヒトCNSの脱髄疾患の動物モデルとして広く研究されている。EAEは、全CNS組織に、アジュバントと併せて、精製されたミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)を接種することにより誘導することができる。それはまた、これらのミエリン抗原に対して特異的に反応するT細胞の受動移入によっても誘導することができる。EAEは、急性再発経過を示す場合もあり、慢性再発経過を示す場合もある。急性EAEがヒト疾患の急性播種性脳脊髄炎に密接に類似するのに対して、慢性再発型EAEは、多発性硬化症に類似する。EAEはまた、一般に、T細胞媒介型自己免疫疾患の原型でもある。
SJL/Jマウスおよびミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的EAEを適合移入されたマウスに由来する脊髄内では、MMP−12が過剰発現する(Toft−Hansenら、J Immunol.、2004年、173巻、8号、5209頁)。ヒトにおいて、MMP−12の異常な発現は、免疫媒介型神経炎症性障害の発症機序に関係している(Hughesら、Neuroscience.、2002年、113巻、2号、273頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、EAEおよび神経炎症性障害を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、脳脊髄炎、例えば、EAEおよび神経炎症性障害を治療または予防する(例えば、脳脊髄炎および神経炎症性障害の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の腎炎治療と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、脳脊髄炎および神経炎症性障害を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、脳脊髄炎および神経炎症性障害の動物モデルから得ることができ、例えば、Toft−Hansenら、J Immunol.、2004年、173巻、8号、5209頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
老化(aging)
生物学において、老化(senescence)とは、老化(aging)の状態または過程である。細胞老化(senescence)とは、単離された細胞が培地内において限定された分裂能力を示す現象であるが、生体老化(organismal senescence)とは、生体の老化(aging of organism)である。
生体老化は、ストレスに対する応答能の低下、ホメオスタシーの平衡失調の増大、および疾患の危険性の増大を特徴とする。老化に対して影響を及ぼす遺伝子が発見されるにつれ、老化は、他の遺伝子状態と類似の形で考えられることが多くなりつつある。
ヒトおよび他の動物において、細胞老化は、各細胞周期によるテロメアの短縮化に起因しており、テロメアが短くなりすぎると細胞は死滅する。老化過程に影響する他の遺伝子が公知であり、遺伝子のサーチュインファミリーが、酵母および線虫の寿命に対して著明な影響を及ぼすことが示されている。RAS2遺伝子の過剰発現は、酵母における寿命を顕著に延長させる。寿命に対する遺伝的なつながりに加え、食餌が、多くの動物における寿命に実質的に影響することが示されている。
老齢マウスの非可溶性画分においてMMP−12レベルが上昇することは、細胞外マトリックス(ECM)に対する分解容量の増大を示唆し、MMP−12は、加齢依存性ECMリモデリングに寄与し得ることを示唆する(Lindseyら、Cardiovasc Res.、2005年、66巻、2号、410頁)。熱処理により、ヒト皮膚におけるMMP−12のmRNAおよびタンパク質の発現が増大することは、MMP−12が、光老化皮膚における弾性線維性物質の蓄積による皮膚の老化に寄与し得ることを示唆する(Chenら、J Invest Dermatol.、2005年、124巻、1号、70頁)。MMP−12はまた、太陽光により損傷を受けた皮膚における弾性線維性領域のリモデリングによる皮膚の老化にも寄与し得る(Saarialho−Kereら、 J Invest Dermatol.、1999年、113巻、4号、664頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、老化(例えば、皮膚の老化)を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、老化を治療または予防する(例えば、老化、例えば、皮膚の老化の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の老化治療と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、老化を治療する方法も提供される。
ウイルス性脳炎
ウイルス性脳炎とは、ウイルス感染により引き起こされる脳の急性炎症である。炎症した脳が頭蓋を圧迫するために脳の損傷が生じ、死に至る可能性もある。
脳炎患者は、体力低下および痙攣を伴う発熱、頭痛、および光恐怖症に罹患する。あまり一般的ではないが、頚部の硬直が生じる場合もあり、まれな症例の患者はまた、罹患した脳の特定の部分に依存して、四肢の硬直、運動の緩慢、および動作障害にも罹患する。脳炎の症状は、感染を除去するために活性化する脳の防御機構により引き起こされる。
治療は通常、対症治療である。信頼できる形で調べられた特異的な抗ウイルス剤は、少数のウイルス病原体に対してだけ利用可能である(例えば、単純ヘルペスウイルスに対するアシクロビル)。極めて病状の重い患者においては、機械的換気などの支持治療もまた重要である。
神経向性コロナウイルスによるマウス中枢神経系(CNS)の感染は、MMP−12をコードするmRNAのレベル上昇と関連する脳炎を誘導する(Zhouら、J Virol.、2005年、79巻、8号、4764頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、ウイルス性脳炎を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、ウイルス性脳炎を治療または予防する(例えば、ウイルス性脳炎の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のウイルス性脳炎治療(例えば、アシクロビル、機械的換気)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、ウイルス性脳炎を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、ウイルス性脳炎の動物モデルから得ることができ、例えば、Zhouら、J Virol.、2005年、79巻、8号、4764頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
脳卒中
脳卒中とは、脳に血液を供給する血管における障害に起因する、急速に発生する脳機能の喪失である。これは、血栓または塞栓により引き起こされる虚血(血液供給の不足)に起因する場合もあり、出血に起因する場合もある。虚血性脳卒中の場合、脳の一部への血液の供給が低下し、これにより、この領域における脳組織の機能不全および壊死がもたらされる。頭蓋内出血は、頭蓋円蓋内の任意の部位における血液の貯留である。脳実質内(intra−axial)出血(脳の内側における出血)と、脳実質外(extra−axial)出血(頭蓋内ではあるが脳の外側における出血)とが区別される。脳実質内出血は、実質内出血または脳室内出血(脳室系内における出血)に起因する。脳実質外出血の主要な種類は、硬膜外血腫(硬膜と頭蓋との間における出血)、硬膜下血腫(硬膜下腔内における)、およびくも膜下出血(クモ膜と軟膜との間における)である。出血性脳卒中症候群の大半は、特異的な症状(例えば、頭痛、過去における頭部傷害)を示す。
脳卒中の症状は、急速(数秒間〜数分間)に発生することが典型的である。脳卒中の症状は、損傷の解剖学的位置と関連し、したがって、症状の性質および重症度は多種多様に変化し得る。虚血性脳卒中は通常、遮断された動脈により灌流される脳の小域的領域だけに影響する。出血性脳卒中は、局所的領域に影響し得るが、また、出血および頭蓋内圧の上昇に起因するより広域的な症状を引き起こし得ることが多い。
マウスにおいて、出血性脳卒中後におけるMMP−12発現は有害であり、この疾患における続発傷害の発生に寄与する(Wellsら、Eur J Neurosci.、2005年、21巻、1号、187頁)。頚動脈のじゅく状斑内におけるMMP−12の転写物レベルが組織学的特徴および臨床症状と相関することは、じゅく状斑の安定性の決定におけるMMP−12の役割を裏づける(Morganら、Stroke.、2001年、32巻、9号、2198頁)。
脳卒中の治療には、クロットを溶解させ、動脈の遮断を解除する薬物である、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)による薬理学的な血栓溶解(「クロットの破砕」)が含まれる。急性虚血性脳卒中の別の治療は、原因(offending)血栓の直接的な除去である。これは、カテーテルを大腿動脈内へと挿入し、該カテーテルを脳循環内へと誘導し、クロットを捕捉するコルク栓抜き様のデバイスを配置し、次いで、これを体内から引き抜くことにより達成される。抗凝固により、脳卒中再発を予防することができる。脳の内部への出血(脳内出血)または脳の周囲への出血(くも膜下出血)を伴う患者には、神経外科的評価により該出血の原因を検出してこれを治療することが必要となる。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、脳卒中を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、脳卒中を治療または予防する(例えば、脳卒中の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の脳卒中治療(例えば、血栓溶解、プラスミノーゲン活性化因子、抗凝固、または手術手順)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、脳卒中を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、脳卒中の動物モデルから得ることができ、例えば、Wellsら、Eur J Neurosci.、2005年、21巻、1号、187頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
腸炎(enterocolitis)
腸炎(enterocolitis)(または「全腸炎」)とは、小腸および大腸両方の炎症である。腸炎(enteritis)とは小腸の炎症であり、大腸炎とは大腸、特に結腸の炎症である。
腸炎の症状には、腹痛、下痢、腹部の膨満、および血便が含まれ得る。大腸炎の一般的な徴候および症状には、腹痛、腹部の圧痛、抑うつ、急激な体重減少、関節部内におけるうずきおよび疼痛、疲労、用便習慣(bowel habit)の変化(頻度の上昇)、発熱;結腸組織の腫脹、結腸表面の紅斑(発赤)、出血し得る結腸上における潰瘍(潰瘍性大腸炎において)、便中における粘液、便中における血液、および直腸出血が含まれ得る。他の症状には、下痢、ガス、鼓脹、消化不良、胸やけ、逆流、胃食道逆流病(GORD)、痙攣、尿意切迫、および胃腸系における他の多くの不快な痛みが含まれ得る。
壊死性腸炎(NEC)においてMMP−12が上方調節されることは、それがNECにおける組織の破壊およびリモデリングの主要な因子であり得ることを示唆する(Bistaら、J Pediatr Gastroenterol Nutr.、2005年、40巻、1号、60頁)。
ウイルス性の下痢は通常自己限定的であり、水分補給により治療される。細菌性の原因が疑われる場合は、抗生剤を考慮することができる。大腸炎の治療には、抗生剤、およびメサラミン(Asacol(登録商標))またはその誘導体など、一般的な非ステロイド抗炎症(NSAID)薬;アザチオプリンまたは類似の免疫抑制剤;プレドニゾロンおよびプレドニゾンなどのステロイド;炎症および疼痛を改善する薬物(ブスコパン)の投与が含まれる。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、腸炎を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、腸炎を治療または予防する(例えば、腸炎の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の腸炎治療(例えば、水分補給、抗生剤、NSAID、メサラミン(Asacol(登録商標))またはその誘導体;アザチオプリンまたは類似の免疫抑制剤;プレドニゾロンおよびプレドニゾンなどのステロイド;炎症および疼痛を改善する薬物(ブスコパン))と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、腸炎を治療する方法も提供される。
セリアック(celiac)病
セリアック病(coeliac)病(CD)またはセリアック(celiac)病とは、小児中期以降の全ての年齢の遺伝的に素因のある人々において生じる、小腸の自己免疫障害である。
症状には、慢性の下痢、発育不全(小児の場合)、および疲労であるが、これらは存在しない場合があり、他の全ての臓器系における症状が記載されている。
CDは、コムギ中において見出されるグルテンタンパク質であるグリアジン(また、オオムギおよびライムギなど、他の栽培品種が含まれる、Triticeae族の類似タンパク質)に対する反応により引き起こされる。グリアジンに対して曝露されると、酵素である組織トランスグルタミナーゼにより該タンパク質が修飾され、免疫系が腸組織と交差反応し、炎症反応を引き起こす。これにより小腸の内膜が平板化し、これが栄養物質の吸収に干渉する。
MMP−12が強く卓越する、活動性CDにおける特異的なMMPパターンの存在は、IFN−γまたは粘膜損傷の程度と相関する(Ciccocioppoら、J Pediatr Gastroenterol Nutr.、2005年、85巻、3号、397頁)。
CDの治療は、グルテンを含まない食餌である。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、CDを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、CDを治療または予防する(例えば、CDの症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のCD治療(例えば、グルテンを含まない食餌)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、CDを治療する方法も提供される。
脊髄傷害
脊髄傷害(SCI)は、脊髄症、または脳への、および脳からの感覚シグナルおよび運動シグナルを運ぶ白質もしくは有髄線維路に対する損傷を引き起こす。それはまた、脊髄中央部の灰白質も損傷し、これにより、介在ニューロンおよび運動ニューロンのセグメント単位の喪失が引き起こされる。脊髄傷害は、外傷、腫瘍、虚血、発達障害、神経変性疾患、脱髄性疾患、横断性脊髄炎、および血管先天異常を含めた、多くの原因から生じ得る。
脊髄外傷後におけるMMP−12の発現は、マウスにおいて有害であり、SCIにおける続発傷害の発生に寄与する(Wellsら、J Neurosci.、2003年、23巻、31号、10107頁)。
急性外傷性脊髄傷害が8時間以内に生じた場合、該傷害の治療には、高用量のメチルプレドニゾロンの施薬が含まれる。推奨は、米国国立急性脊髄傷害研究(NASCIS)IIおよびIIIに主に基づく。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、SCIを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、SCIを治療または予防する(例えば、SCIの症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別のSCI治療(例えば、メチルプレドニゾロン)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、SCIを治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、SCIの動物モデルから得ることができ、例えば、Wellsら、J Neurosci.、2003年、23巻、31号、10107頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
高酸素症における急性肺傷害
急性肺傷害は、患者における高濃度の酸素吸入療法の副作用であり得る。
ドキシサイクリンにより制御される二重トランスジェニックマウス系の呼吸器上皮細胞におけるSTAT3の構成的活性化形態であるStat3Cの過剰発現は、高酸素症により引き起こされる炎症および傷害から肺を保護する。この保護は、高酸素症により誘導される、好中球および肺胞常在細胞によるMMP−12の合成および放出の阻害を通して少なくとも部分的に媒介される(Lianら、J Immunol.、2005年、174巻、11号、7250頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、高酸素症における急性肺傷害を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、高酸素症における急性肺傷害を治療または予防する(例えば、高酸素症における急性肺傷害の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、高酸素症における急性肺傷害の別の治療と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、高酸素症における急性肺傷害を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、高酸素症における急性肺傷害の動物モデルから得ることができ、例えば、Lianら、J Immunol.、2005年、174巻、11号、7250頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
肺の炎症性疾患
急性および慢性の肺の炎症性疾患の動物モデルを用いる試験により、MMP−12が、これらの疾患の発症機序の重要なメディエーターであるという証拠が与えられている。MMP阻害剤であるマリマスタットは、これらの炎症性事象の一部を逆転することができるであろう(Menanら、Mem Inst Oswaldo Cruz.、2005年、100巻、167頁)。MMP−12はまた、ゴキブリ抗原(CRA)により誘導されるアレルギー性気道炎症のマウスモデルにおけるアレルギー性炎症の発生においても、重要な炎症促進的役割を果たす(Warnerら、Am J Pathol.、2004年、165巻、6号、1921頁)。
本開示は、治療有効量のMMP−12結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 IgGまたは抗MMP−12 Fab)を、肺の炎症性疾患を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、肺の炎症性疾患を治療または予防する(例えば、肺の炎症性疾患の症状または増悪を改善する)方法を提供する。また、別の肺の炎症性疾患治療(例えば、抗生剤)と共に、治療有効量のMMP−12結合タンパク質を投与することにより、肺の炎症性疾患を治療する方法も提供される。
治療有効量のMMP−12結合タンパク質を送達する、該タンパク質の有効性および用量に関する指針は、肺の炎症性疾患の動物モデルから得ることができ、例えば、Warnerら、Am J Pathol.、2004年、165巻、6号、1921頁において説明されている動物モデルおよびこれらに引用された参考文献を参照されたい。
併用療法
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質、例えば、抗MMP−12 FabまたはIgGは、MMP−12活性に関連する疾患または状態、例えば、本明細書に記載の疾患または状態を治療するための他の療法の1つまたは複数と組み合わせて投与することができる。例えば、MMP−12結合タンパク質は、手術、別のMMP−12阻害剤(例えば、小分子阻害剤、別の抗MMP−12 FabまたはIgG(例えば、本明細書に記載の別のFabまたはIgG)、ペプチド阻害剤、または小分子阻害剤)と共に、治療上または予防上使用することができる。MMP−12結合タンパク質との併用療法に使用することができるMMP−12阻害剤の例が本明細書に示されている。
1種または複数の小分子MMP阻害剤を本明細書に記載の1種または複数のMMP−12結合タンパク質と組み合わせて使用することができる。例えば、その組合せにより、より低い用量の必要とされている小分子阻害剤を得ることができ、その結果、副作用が低減される。
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、それだけに限らないが、手術、放射線療法および化学療法を含めた、癌を治療するための他の療法の1つまたは複数と組み合わせて投与することができる。例えば、MMP−12を阻害する、またはMMP−12活性の下流の事象を阻害するタンパク質を、放射線療法、化学療法、手術または第2の作用物質の投与などの他の抗癌療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、第2の作用物質は、Tie−1阻害剤(例えば、Tie−1結合タンパク質、例えば、両方とも2005年8月9日出願の米国特許出願第11/199,739号およびPCT/US2005/0284を参照されたい)であってもよい。別の例として、第2の作用物質は、VEGFシグナル伝達経路を標的とする、または負に調節するものであってもよい。この後者のクラスの例としては、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)およびVEGF受容体アンタゴニスト(例えば、抗VEGF受容体抗体)が挙げられる。特に好ましいある組合せはベバシズマブを含む。さらなる例として、第2の作用物質は、クニッツドメイン含有タンパク質またはポリペプチド(例えば、米国特許第6,010,880号に開示されているプラスミン阻害性クニッツドメイン、例えば、アミノ酸配列
MHSFCAFKAETGPCRARFDRWFFNIFTRQCEEFIYGGCEGNQNRFESLEECKKMCTRD(配列番号1)
を含むタンパク質またはポリペプチド)などのプラスミンの阻害剤である。別の例として、第2の作用物質は、Her2結合抗体(例えば、トラスツズマブ)などの、Her2に結合する作用物質である。組合せは、5−FUおよびロイコボリン、および/またはイリノテカンをさらに含むことができる。
MMP−12の阻害剤(例えば、本明細書で開示されるMMP−12結合タンパク質)は、Her2を標的とする作用物質(例えば、トラスツズマブなどのHer2結合抗体)の活性を増強することができる。したがって、乳癌を治療するためのある併用療法において、第2の療法は、Her2結合抗体(例えば、トラスツズマブ)などの、Her2に結合する作用物質である。MMP−12結合タンパク質をHer2結合作用物質との併用療法において使用する場合、Her2結合作用物質の用量は、MMP−12結合タンパク質と組み合わせずに投与する場合のHer2結合作用物質の用量から低減することもできる(例えば、MMP−12結合タンパク質と組み合わせずに投与する場合のHer2結合作用物質の用量よりも少なくとも10%、25%、40%または50%低い)。例えば、MMP−12結合タンパク質との併用療法において投与されるトラスツズマブの用量は、初回(負荷)用量として約4.0、3.6、3.0、2.4または2mg/kg未満であり、その後の用量として約2.0、1.8、1.5、1.2または1mg/kg未満である。
本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質は、外科的または内科的(例えば、第2の作用物質の投与)療法など、眼の障害を治療するための1つまたは複数の他の療法と組み合わせて投与することもできる。例えば、加齢性黄斑変性(例えば、滲出型加齢性黄斑変性)治療では、MMP−12結合タンパク質は、レーザー手術(レーザー光凝固療法または光凝固療法)と(例えば、その前、その間またはその後に)組み合わせて投与することができる。別の例として、MMP−12結合タンパク質は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブなどの抗VEGF抗体)またはVEGF受容体アンタゴニスト(例えば、抗VEGF受容体抗体)などの第2の作用物質と組み合わせて投与することができる。
他の組合せは上記に記載される。
「組合せ(併用)」という用語は、同じ患者を治療するための2種以上の作用物質または療法の使用を指し、この作用物質または療法の使用または作用は時間内に重複する。この作用物質または療法は、同じ時間に(例えば、患者に投与される単一の製剤として、または同時に投与される2つの別個の製剤として)投与するか、または任意の順序で逐次投与することができる。逐次投与は、異なる時点で施される投与である。ある作用物質と別の作用物質の投与間隔は、数分、数時間、数日または数週であってよい。本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質を使用して、別の療法の用量を低減する、例えば、投与されている別の作用物質に伴う副作用を低減する、例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体の副作用を低減することもできる。したがって、組合せは、第2の作用物質を、MMP−12結合タンパク質の非存在下で使用される用量よりも少なくとも10、20、30または50%低い用量で投与することを含むことができる。
さらに、対象に第1および第2の作用物質を投与することにより、対象の血管形成関連障害、例えば、癌を治療することもできる。例えば、第1の作用物質は早期の血管形成を調節し、第2の作用物質は血管形成のその後の段階を調節し、または初期の血管形成も調節する。第1および第2の作用物質は、単一の医薬組成物を使用して投与することができ、または別々に投与することができる。一実施形態において、第1の作用物質は、VEGF経路アンタゴニスト(例えば、VEGFの阻害剤(例えば、VEGF−A、−Bまたは−C)またはVEGF受容体(例えば、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4))またはbFGF経路アンタゴニスト(例えば、bFGFまたはbFGF受容体に結合する抗体)である。他のVEGF経路アンタゴニストは、本明細書などにも記載されている。一実施形態において、第2の作用物質は、腫瘍細胞の移動性または侵襲性を阻害または低減する。例えば、第2の作用物質は、MMP−12結合タンパク質を含む。例えば、第2の作用物質は、本明細書に記載のMMP−12結合タンパク質である。
腫瘍が一定のサイズ(例えば約1〜2mm)に達すると、腫瘍は、その腫瘤を増大させる前に、新しい血管系を必要とする。初期段階の腫瘍血管形成は、宿主からの新しい血管の成長および血管による腫瘍の浸透を刺激する腫瘍からのシグナル、例えばVEGFの分泌を含むことができる。VEGFは、例えば、後に血管に集成される内皮細胞の増殖を刺激することができる。腫瘍成長の後段階は、腫瘍細胞の転移、移動および侵襲を含むことができる。この移動および浸潤は、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばMMP−12の活性を含むことができる。したがって、新脈管形成関連障害を治療するための有効な治療法は、初期段階の新脈管形成を調節する薬剤(例えば、VEGF経路アンタゴニスト、例えば抗VEGF(例えばベバシズマブ)もしくは抗VEGF受容体(例えば抗KDR)抗体;または他の前新脈管形成経路のアンタゴニスト、例えば、抗bFGF抗体または抗bFGF受容体(例えば抗bFGF受容体−1、−2、−3)抗体)と、後段階の腫瘍成長(腫瘍細胞の転移、移動および侵襲を含むことができる)を調節する薬剤(例えば、MMP−12のアンタゴニスト(例えば、抗MMP−12抗体(例えば本明細書に開示されている抗体))との組合せを含むことができる。これらの薬剤の1種または複数種を併用することができる。これらの薬剤の1種または複数種を放射線治療または化学療法などの他の抗癌治療と併用することもできる。
例示的なVEGF受容体アンタゴニストとしては、VEGFの阻害薬(例えば、VEGF−A、−Bまたは−C、例えばベバシズマブ)、VEGF発現のモジュレータ(例えば、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノ結晶分散体、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、ベグリン)、VEGF受容体の阻害薬(例えば、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)、例えば抗KDR抗体、CDP−791、IMC−1121BなどのVEGFR2抗体、CT−322などのVEGFR2遮断薬)、Imclone SystemsのmF4−31C1などのVEGFR3抗体、VEGFR発現のモジュレータ(例えばVEGFR1発現モジュレータSirna−027)またはVEGF受容体下流シグナル伝達の阻害薬が挙げられる。
VEGFの例示的な阻害薬としては、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGF TrapおよびPI−88が挙げられる。
例示的なVEGF受容体アンタゴニストとしては、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害薬が挙げられる。4−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)フェニルアミノ]ピリミジン−5−カルボニトリル(JNJ−17029259)は、血管内皮成長因子受容体−2(VEGF−R2)の経口利用可能な選択的ナノモル阻害薬である5−シアノピリミジンの構造類の1つである。さらなる例としては、PTK−787/ZK222584(Astra−Zeneca)、SU5416、SU11248(Pfizer)およびZD6474([N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチルピペリジン−4−イル)メトキシ]キナゾリン−4−アミン])、バンデタニブ、セジラニブ、AG−013958、CP−547632、E−7080、XL−184、L−21649およびZK−304709が挙げられる。他のVEGFアンタゴニスト薬は、幅広特異性チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、SU6668(例えば、Bergers, B.ら、2003年J. Clin. Invest. 111:1287〜95参照)、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バタラニブ、AEE−788、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、SU−14813、XL−647、XL−999、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、OSI−930およびTKI−258である。細胞表面上のVEGF受容体を下方制御するフェンレチニドなどの薬剤、およびVEGF受容体下流信号伝達を阻害するスクアラミンなどの薬剤も有用である。
第2の薬剤または療法は、別の抗癌薬または療法でもあり得る。抗癌薬の非限定的な例としては、例えば、抗微小管薬、トポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害薬、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路に干渉することが可能な薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸抗体、免疫毒素および放射性コンジュゲートを含む)が挙げられる。特定の種類の抗癌薬の例を詳細に示すと、抗チューブリン薬/抗微小管薬、例えば、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害薬、例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン、塩酸ピロキサントロン;代謝拮抗薬、例えば、5フルオロウラシル(5FU)、メトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/アラC、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパレート=PALA、ペントスタチン、5アザシチジン、5アザ2’デオキシシチジン、アラA、クラドリビン、5フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタード、ピポブロマン、4イポメアノール;他の作用メカニズムを介して作用する薬剤、例えば、ジヒドロレンペロン、スピロムスチンおよびデシペプチド;抗腫瘍応答を強化する生物応答改質剤、例えばインターフェロン;アポトーシス薬、例えばアクチノマイシンD;抗ホルモン薬、例えばタモキシフェンなどの抗エストロゲン剤、または例えば4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドなどの抗アンドロゲン剤が挙げられる。
組合せ療法は、他の療法の副作用を軽減する薬剤を投与することを含むことができる。薬剤は、抗癌治療の副作用を軽減する薬剤であり得る。例えば、薬剤はロイコボリンであり得る。
MMP−12結合タンパク質または本明細書に記載の他の結合タンパク質を投与することを含む組合せ療法を使用して、別の血管形成関連障害(例えば、癌以外の障害、例えば、望ましくない内皮細胞増殖または望ましくない炎症、例えば関節リウマチを含む障害)にかかっている対象、またはそのリスクがある対象を治療することもできる。
診断使用
MMP−12に結合し、本明細書に記載および/または本明細書に詳述される方法によって同定されるタンパク質は、インビトロおよびインビボでの診断的有用性を有する。本明細書に記載するMMP−12結合タンパク質(例えば、MMP−12に結合し阻害するタンパク質、またはこれらに結合するが阻害しないタンパク質)を、例えば、インビボの画像化用に、例えば、MMP−12が活性である疾患または状態(例えば、本明細書に記載する疾患または状態)に対する治療の経過の間に、あるいは本明細書に記載する疾患または状態を診断する上で用いることができる。
一態様において、本開示は、MMP−12の存在を、インビトロまたはインビボで検出するための診断方法(例えば、対象におけるインビボの画像化)を提供する。本方法は、MMP−12を、対象内に、または対象からの試料内に局在化させることを含むことができる。試料の評価に関して、本方法は、例えば、(i)試料をMMP−12結合タンパク質と接触させる工程、および(ii)試料におけるMMP−12結合タンパク質の位置を検出する工程を含むことができる。
MMP−12結合タンパク質を用いて、試料中のMMP−12の発現レベルを定性的または定量的に決定することもできる。本方法は、また、基準試料(例えば、対照試料)を結合タンパク質と接触させる工程、および基準試料の対応する評価を決定する工程も含むことができる。対照試料または対象に比べた、試料または対象中の複合体の形成における統計上有意な変化などの変化は、試料中のMMP−12の存在を示し得る。一実施形態において、MMP−12結合タンパク質は、別のメタロプロテアーゼと交差反応しない。
MMP−12結合タンパク質は、インビボの腫瘍画像化にも有用である。酵素機能を阻止するように設計されている、MMP阻害薬などの薬物の効力をモニタリングするのに、より良好な臨床上のエンドポイントが必要とされる(Zuckerら、2001年、Nature Medicine、7巻、655〜656頁)。標識したMMP−12結合タンパク質を用いることによるインビボの腫瘍の画像化は、癌の診断用に、手術内(intraoperative)の腫瘍の検出用に、ならびに薬物送達および腫瘍の生理機能の調査用に、腫瘍への結合タンパク質の送達を目的とするのに役立ち得る。MMP−12結合タンパク質は、侵襲性部位の天然の酵素活性をインビボでモニタリングするのにも用いられ得る。別の例示的な方法には、(i)MMP−12結合タンパク質を対象に投与する工程、および(iii)対象におけるMMP−12結合タンパク質の位置を検出する工程が含まれる。検出は、複合体の形成の位置または時間を決定することを含むことができる。
MMP−12結合タンパク質は、結合している、または非結合の抗体の検出を容易にするための検出可能な物質で、直接、または間接的に標識されていてよい。適切な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、および放射性物質が含まれる。
MMP−12結合タンパク質とMMP−12との間の複合体形成を、MMP−12に結合している結合タンパク質、あるいは非結合の結合タンパク質を評価することによって検出してもよい。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または組織の免疫組織化学などの、従来の検出アッセイを用いることができる。さらにMMP−12結合タンパク質を標識するために、試料中のMMP−12の存在を、検出可能な物質で標識した標準品、および非標識のMMP−12結合タンパク質を利用して競合的免疫アッセイによってアッセイすることができる。このアッセイの一例において、生物学的試料、標識した標準品、およびMMP−12結合タンパク質を合わせ、非標識の結合タンパク質に結合している標識した標準品の量を決定する。試料中のMMP−12の量は、MMP−12結合タンパク質に結合している標識した標準品の量に反比例する。
蛍光団および発色団で標識したタンパク質を調製してもよい。抗体および他のタンパク質は約310nmまでの波長を有する光を吸収するので、蛍光部分を、310nmを超え、好ましくは400nmを超える波長で実質的な吸収を有するように選択すべきである。多様な適切な蛍光剤および発色団は、Stryer、1968年、Science、162巻、526頁;およびBrand, L.ら、1972年、Annu. Rev. Biochem.、41巻、843〜868頁に記載されている。タンパク質を、米国特許第3,940,475号、第4,289,747号、および第4,376,110号に開示されているものなどの従来の手順によって、蛍光の発色団の群で標識してもよい。数々の上記に記載した望ましい性質を有する蛍光剤の一つの群はキサンテン染料であり、これにはフルオレセインおよびローダミンが含まれる。蛍光化合物の別の一つの群はナフチルアミンである。蛍光団または発色団で標識した後、そのタンパク質を用いて、例えば、蛍光顕微鏡(例えば、共焦点顕微鏡もしくはデコンボリューション顕微鏡)を用いて、試料中のMMP−12の存在または局在を検出することができる。
組織学的分析。本明細書に記載するタンパク質を用いて、免疫組織化学的分析を行ってもよい。例えば、抗体の場合、抗体を標識(例えば、精製またはエピトープのタグ)と合成してもよく、または、例えば、標識または標識結合性の基をコンジュゲートすることによって、検出可能に標識してもよい。例えば、キレート剤を抗体に結合させてもよい。次いで、抗体を組織学的プレパラート(例えば、顕微鏡用スライド上にある固定された組織切片)に接触させる。結合させるためにインキュベートした後、プレパラートを洗浄して非結合の抗体を除去する。次いで、例えば、顕微鏡を用いてプレパラートを分析して、抗体がプレパラートに結合しているか否かを同定する。
もちろん、抗体(または他のポリペプチドもしくはペプチド)は、結合時に非標識であってもよい。結合および洗浄の後、抗体を検出可能にするために抗体を標識する。
タンパク質アレイ。MMP−12結合タンパク質を、タンパク質アレイ上に固定化してもよい。タンパク質アレイを、例えば、医学的試料(例えば、単離細胞、血液、血清、バイオプシーなど)をスクリーニングするための、診断ツールとして用いてもよい。もちろん、タンパク質アレイは、他の結合タンパク質(例えば、MMP−12に、または他の標的分子に結合するもの)も含むことができる。
ポリペプチドアレイを生成する方法は、例えば、De Wildtら、2000年、Nat. Biotechnol.、18巻、989〜994頁;Luekingら、1999年、Anal. Biochem.、270巻、103〜111頁;Ge、2000年、Nucleic Acids Res.、28巻、e3、I〜VII;MacBeathおよびSchreiber、2000年、Science、289巻、1760〜1763頁;WO01/40803およびWO99/51773A1に記載されている。アレイ用のポリペプチドは、市販のロボットの装置(例えば、Genetic MicroSystemsまたはBioRoboticsからのもの)を用いて高速でスポットすることができる。アレイ物質は、例えば、ニトロセルロース、プラスチック、ガラス(例えば、表面を修飾したガラス)であってよい。アレイは、多孔質のマトリックス(例えば、アクリルアミド、アガロース、または別のポリマー)も含むことができる。
例えば、アレイは抗体のアレイ(例えば、De Wildt、上述に記載されている通り)であってよい。タンパク質を生成する細胞を、アレイフォーマットにおけるフィルター上で増殖させることができる。ポリペプチドの生成を誘発し、発現したポリペプチドは、細胞の位置でフィルターに固定化される。タンパク質アレイを標識した標的と接触させて、固定化した各ポリペプチドに対する標的の結合の程度を決定することができる。アレイの各アドレスの結合の程度に関する情報を、例えば、コンピュータのデータベース中に、プロファイルとして蓄えることができる。タンパク質アレイを、複製において生成してもよく、例えば、標的および非標的の結合プロファイルを比較するのに用いてもよい。
FACS(蛍光活性化細胞選別)。MMP−12結合タンパク質を用いて、細胞、例えば試料(例えば、患者試料)における細胞を標識することができる。また、結合タンパク質は、蛍光化合物に結合される(または結合され得る)。次いで、細胞は、蛍光活性化細胞選別装置(例えば、Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose CAから入手可能な選別装置を用いて、また、米国特許第5,627,037号;第5,030,002号;および第5,137,809号をも参照されたい)を用いて選別され得る。細胞が選別装置を通過する際、レーザービームにより蛍光化合物が励起されるが、一方で検出器は、通過する細胞を計数し、蛍光を検出することにより蛍光化合物が細胞に結合されているかどうかを決定する。各細胞に結合した標識の量を定量し、分析して、試料を特徴づけることができる。
また、選別装置は、細胞を偏向させ、結合タンパク質により結合されなかったそれらの細胞から結合タンパク質により結合された細胞を分離することができる。分離された細胞は、培養および/または特徴づけされ得る。
インビボ画像化。また、インビボでMMP−12発現組織の存在を検出するための方法も特徴とされる。前記方法は、(i)検出可能なマーカーに結合した抗−MMP−12抗体を、対象(例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を有する患者等)に投与する工程;(ii)MMP−12発現組織または細胞に対する前記検出可能なマーカーを検出するための手段に対象を曝露させる工程を含む。例えば、対象は、例えばNMRまたは他の断層撮影手段により撮像される。
画像診断に有用な標識の例としては、131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14C、188Rhなどの放射標識、フルオレセインやローダミンなどの蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、陽電子放出断層撮影(「PET」)スキャナにより検出可能な陽電子放出同位体、ルシフェリンなどの化学発光物質、ペルオキシダーゼやホスファターゼなどの酵素マーカーが挙げられる。短距離検出用プローブにより検出可能な同位体などの短距離放射線放出体を用いることもできる。前記タンパク質は、かかる試薬で標識することが可能であり、例えば、抗体の放射標識に関する技術についてはWenselおよびMeares、1983年、Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy、Elsevier、New Yorkを、ならびにD. Colcherら、1986年、Meth. Enzymol.121巻:802〜816頁を参照されたい。
結合タンパク質は、放射性同位体(例えば、14C、H、35S、125I、32P、131I)で標識することが可能である。放射標識結合タンパク質は、診断試験、例えば、インビトロアッセイのために使用され得る。同位体標識した結合タンパク質の比活性は、半減期、放射性標識の同位体純度、および標識が抗体に組み込まれる方法に依存する。
放射標識結合タンパク質の場合、結合タンパク質は、患者に投与され、結合タンパク質と反応する抗原を担持する細胞に局在化され、例えばγカメラまたは放出断層撮影を用いる放射性核スキャニングなどの公知の技術を用いてインビボで検出または「撮像」される。例えば、A.R. Bradwellら、「Developments in Antibody Imaging」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W. Baldwinら、(編)、65〜85頁(Academic Press1985年)を参照されたい。あるいは、放射標識が陽電子(例えば、11C、18F、15O、13N)を放出する場合は、Brookhaven National Laboratoryに設置された所定のPet VIなどの陽電子放出型体軸横断断層撮影スキャナを使用することができる。
MRI造影剤。磁気共鳴映像法(MRI)は、生きた対象の内部特徴を視覚化するためにNMRを使用し、予後、診断、治療および手術に有用である。MRIは、明白な利益のために放射性トレーサー化合物なしで使用され得る。いくつかのMRI技術は、EP−A−0502814に要約されている。一般に、異なる環境における水プロトンの緩和時間定数T1およびT2に関連する差を用いて画像が生成される。しかし、これらの差は、鮮明な高解像度画像を提供するには不十分である可能性がある。
これらの緩和時間定数の差は、造影剤によって高めることができる。かかる造影剤の例としては、多くの磁性剤や常磁性剤(主にT1を変更する)や、強磁性剤や超常磁性剤(主にT2応答を変更する)が挙げられる。いくつかの常磁性体(例えば、Fe+3、Mn+2、Gd+3)の結合(および毒性の減少)のためにキレート剤(例えば、EDTAキレート、DTPAキレート、NTAキレート)を用いることができる。他の作用物質は、粒子形態(例えば、直径10mm未満〜約10nM)であってよい。粒子は、強磁性、反強磁性または超常磁性の特性を有することができる。粒子は、例えば、マグネタイト(Fe)、γ−Fe、フェライト、および遷移元素の他の磁性無機化合物を含むことができる。磁性粒子は、非磁性材料を伴っておよび伴わないで1種以上の磁性結晶を含んでよい。非磁性材料は、合成または天然のポリマー(例えば、セファロース、デキストラン、デキストリン、デンプンなど)を含むことができる。
(i)天然で豊富なフッ素原子のほとんど全てが19F同位体であり、したがってほとんど全てのフッ素含有化合物はNMR活性であり、(ii)多くの化学的に活性なポリフッ化化合物、例えばトリフルオロ酢酸無水物は、比較的低コストで商業的に入手可能であり、(iii)ヘモグロビンの代用物として酸素を運ぶために利用されるペルフルオロポリエーテル等、多くのフッ素化化合物が、ヒトにおける使用のために医学的に許容されることが明らかにされてきたため、MMP−12結合タンパク質は、NMR活性19F原子を含む指示基または複数のかかる原子で標識され得る。インキュベーションのためのかかる時間を可能にした後、Pykett、1982年、Sci. Am.246巻:78〜88頁に記載されるもののうちの1つなどの装置を使用して全身MRIを行い、MMP−12を発現する組織を見つけ、撮像する。
本出願の全体にわたって引用される全ての参考文献、係属中の特許出願、および公開された特許の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。以下の実施例は、さらなる例示を提供するものであって、限定的なものではない。
(実施例1)
抗MMP−12 Fabおよび抗MMP−12 IgGの選択およびスクリーニング
抗MMP−12抗体を同定するのに用いられる選択戦略は、
(1)ストレプトアビジンでコーティングされた表面上における、MMP−12触媒ドメインのビオチニル化形態の捕捉による選択;
(2)ストレプトアビジンでコーティングされた表面上における、プロMMP−12(APMA活性化)のビオチニル化形態の捕捉による選択;
(3)適切に枯渇した(例えば、ストレプトアビジンとのあらかじめの接触)ファージを標的と相互作用させ、結合しなかったファージを洗浄し、生成物を、選択の次のラウンドに向けてサンプリングおよび/または増幅した。ELISA解析における生成物ファージが、高い割合で結合剤を示すまでこれを反復した。ファージクローンをsFabへと転換した。ELISAおよび配列決定(キャンペーンA)により518のうち88の固有sFabが同定され、配列決定(キャンペーンB)により168が同定された。これらがヒトMMP−12、マウスMMP−12、および他のMMP(1、2、3、7、8、9、10、13、14、16、17、および24)を阻害する能力は、通常の手段により決定された。sFabは、IgG1へと転換された。
キャンペーンA:
マウスMMP−12に対する交差反応性は見られなかった。
キャンペーンAによるMMP−12結合タンパク質は、他のヒトプロテアーゼに対して交差反応した。結果を表IVに示す。
キャンペーンAによるMMP−12結合タンパク質の一部による交差反応性を、他のヒトプロテアーゼに対して評価した。結果を以下に示す。
キャンペーンB:
3つの選択戦略を用いた。ELISA解析におけるファージ生成物が高い割合で結合剤を示す場合に、該ファージ生成物をsFabへと転換した。ハイスループットのELISAの代わりに、ハイスループットの配列決定手順:
1.マウスMMP−12に対する3ラウンド:HT配列決定:153の固有なクローン、
2.交代(ヒト−マウスMMP−12):HT配列決定:120の固有なクローン
3.交代(5つのヒトペプチド−マウスMMP−12):続行せず
を行い、固有のsFabを回収した。
ヒトMMP−12と交差反応性である1つを含めた13のマウスMMP−12阻害剤が同定された。
以下のペプチドが設計された:
ビオチン−CG XXXXXXXXXXXXXXXXXX−COOH
キャンペーンBでは、複数のMMP−12非阻害剤抗体が同定された。これらの抗体を図1に記載する。
加えて、huMMP12に対する複数のMMP−12抗体阻害剤が同定された(100nM):
図2で示される通り、539B−M0008−H09は、ヒトMMP−12およびマウスMMP−12と交差反応性である。539B−M0008−H09は、ヒトMMP−12およびマウスMMP−12の両方に対して、IC50と濃度(μM)との間の直線関係を示した(図3を参照されたい)。ヒトMMP−12に対する539B−M0008−H09のKiは2.8±0.8nMであり、Kmは16±6μMである。マウスMMP−12に対する539B−M0008−H09のKiは2.2±0.6nMであり、Kmは42±17μMである。
加えて、539B−M0011−H11は、マウスMMP−12の阻害剤ではあるが、ヒトMMP−12の阻害剤ではないことが判明した。これを図4に示す。
キャンペーンBによる複数のMMP−12結合タンパク質の交差反応性を、他のMMPとの交差反応性について評価した。
図5で示される通り、ELISA競合結合アッセイを用いたところ、M08H09はヒトMMP−12およびマウスMMP−12と交差反応し、M0013−G12およびM0016−A11はヒトMMP−12を阻害し、R0062−E11はマウスMMP−12を阻害することが示された。
(実施例2)
炎症に対するM08−H09の評価
以下の実験の目的は、炎症に対する、また具体的に、カラギーナンにより刺激されたマウス空気嚢内への炎症細胞の浸潤に対する、また、OVAをチャレンジしたマウスモデルに対する、539B−M008−H09(M08−H09)の効果を判定することであった。
OVAをチャレンジしたマウスモデルの場合、第0日および第7日において、OVA/Alumの腹腔内投与によりマウスを感作した。OVAチャレンジの6時間前において、M08−H09をマウスに腹腔内投与した。マウスは、OVAの肺内投与によりチャレンジされた。第26日において、メタコリン誘導および気道過敏性を測定した。6つの異なる群を調べた。第1群は、PBSを施された対照群であった。第2、3、4、および5群は、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、および25mg/kgの用量でM08−H09を投与された。第6群は、25mg/kgのM11−H11を投与された。
OVAをチャレンジしたマウスは、BALにおける鑑別細胞計算に基づく炎症、広域的な炎症の定量化による肺組織学、メタコリンのチャレンジに対する気道反応性の測定、ELISAによるBALまたは肺のタンパク質抽出物に対するIL−4、IL−5、およびIL−13の測定、血清特異的なIgEの測定、コンゴレッド染色を用いて気管支周囲における好酸球カウントを決定する肺組織学、および肺において蛍光発光基質を用いるMMP−12活性の測定について評価された。
図6で示される通り、M08−H09は、全ての用量で、気管支周囲における炎症スコアの低下を結果としてもたらした。M08−H09の10mg/kgおよび25mg/kgの用量において、有意な低下が見られた。
図7で示される通り、鑑別細胞計算は、M08−H09により好酸球百分率が結果として減少することを示した。
カラギーナン刺激マウスの空気嚢モデルについては、マウスの後部側腹部または背部への空気の皮下注射によって1週間で空気嚢を作製し、その内部表面が線維芽様細胞およびマクロファージ様細胞の両方を含む。空気嚢の炎症性刺激によって、この空気嚢への白血球の動員および浸出液へのメディエーター(サイトカイン)の放出が生じる。空気嚢への炎症性細胞浸潤の予防は、関節リウマチで滑膜の炎症を予防することに置き換えてもよい。
炎症性細胞浸潤に対するM08−H09の効果をインドメタシンおよび対照(PBS)における炎症性細胞浸潤と比較した。さらに、炎症性細胞の動因を、刺激してないマウスと比較した。図8に示される通り、M08−H09は総白血球浸潤、特に好中球およびリンパ球の浸潤を有意に低減した。
(実施例3)
M08−H09の親和性成熟改変体
表IXは、M08−H09の親和性成熟のサイクル1をまとめる。
親和性成熟のサイクルIIでは、109のFabが解析され、26のFabが、改良阻害剤として選択された。ヒトMMP−12およびマウスMMP−12に対するIC50を測定し、ヒトMMP−12およびマウスMMP−12に対する親和性のランクづけを実施した。この解析では、4つのFabが選択され、IgGとして再フォーマットされた。これらの4つのIgGを、以下の表Xに記載する。
親和性成熟クローンに対する阻害アッセイを実施した。結果を以下の表XIに示す。
539B−M131A06は、ヒトMMP−12およびマウスMMP−12と交差反応性であった。それは、ヒトMMP−12に対するIC50またはKiが<0.3nMであり、同KDが180pMであり、マウスMMP−12に対するKDが73〜150pMである。
(実施例4)
可変軽鎖のCDR1におけるグリコシル化部位を除去する539B−M131A06(M131A06)の改変
図9で示される通り、M131A06の可変軽鎖のCDR1を改変して、グリコシル化部位を除去した。CDR1におけるグリコシル化部位の除去は、MMP−12に対するM131A06の結合に影響を及ぼさなかった。グリコシル化部位を除去した該MMP−12抗体を、539B−M131A06−GA−Sと称する。
(実施例5)
図10は、親和性および阻害特性の改良に寄与する、親和性成熟改変体のHV−CDRにおけるアミノ酸変化の同定(サイクル1および2)をまとめる。
(実施例6)
さらなるMMP−12結合タンパク質
21のさらなる変異体を調製した:
DX−2712のHCのCDR1および2内の残基を変化させることにより、18のDX−2712変異体を作製した。
DX−2712、M0121−E07、およびM0008−H09(親抗体)の各々の軽鎖内の残基をグリコシル化させた。

Claims (50)

  1. 少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含む、単離されたマトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP−12)結合タンパク質。
  2. ヒトMMP−12に結合する、請求項1に記載のタンパク質。
  3. MMP−12の触媒活性を阻害する、請求項1に記載のタンパク質。
  4. 抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  5. 細胞の表面にMMP−12を発現する該細胞にナノ粒子または毒素を誘導する、請求項1に記載のタンパク質。
  6. エフェクター機能を引き起こして、MMP−12を発現する細胞を死滅させる、請求項1に記載のタンパク質。
  7. 重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  8. 前記HC可変ドメイン配列および前記LC可変ドメイン配列が、同じポリペプチド鎖の構成要素である、請求項7に記載のタンパク質。
  9. 前記HC可変ドメイン配列および前記LC可変ドメイン配列が、異なるポリペプチド鎖の構成要素である、請求項7に記載のタンパク質。
  10. ヒトMMP−12に特異的に結合し、別の種由来のMMP−12には結合しない、請求項1に記載のタンパク質。
  11. MMP−12に特異的に結合し、別のマトリックスメタロプロテアーゼには結合しない、請求項1に記載のタンパク質。
  12. 以下の特性:
    (a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;
    (b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である、1つまたは複数のCDRを含むこと;
    (c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である、1つまたは複数のCDRを含むこと;
    (d)前記LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインに対して少なくとも85%同一であること;
    (e)前記HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインに対して少なくとも85%同一であること;
    (f)前記タンパク質が、本明細書に記載のタンパク質により結合されるエピトープ、またはこのようなエピトープと重複するエピトープに結合すること;および
    (g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域
    のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  13. MMP−16またはMMP−24にも結合する、請求項1に記載のタンパク質。
  14. からなる抗体群から選択される抗体の軽鎖および重鎖を含む抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  15. からなる抗体群から選択される重鎖を含む抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  16. からなる抗体群から選択される軽鎖を含む抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  17. からなる抗体群から選択される1つまたは複数の重鎖CDRを含む抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  18. からなる抗体群から選択される1つまたは複数の軽鎖CDRを含む抗体を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  19. 抗体M0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07の軽鎖および重鎖を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  20. 抗体M0008−H09、M0131−A06、またはM0121−E07の軽鎖および重鎖のCDRを含む、請求項1に記載のタンパク質。
  21. 抗体DX−2712の軽鎖および重鎖を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  22. 抗体DX−2712の軽鎖および重鎖のCDRを含む、請求項1に記載のタンパク質。
  23. 抗体539B−X0041−D02の軽鎖および重鎖を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  24. 抗体539B−X0041−D02の軽鎖および重鎖のCDRを含む、請求項1に記載のタンパク質。
  25. ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である、請求項1に記載のタンパク質。
  26. MMP−12とMMP−12基質との相互作用を阻害する方法であって、請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質をMMP−12と接触させる工程を含み、前記結合タンパク質がMMP−12に結合し、これにより、MMP−12に対するMMP−12基質の結合を防止する方法。
  27. 請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質および薬物を含む、MMP−12結合タンパク質−薬物コンジュゲート。
  28. 前記薬物が細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である、請求項27に記載のコンジュゲート。
  29. 前記薬物が細胞傷害剤であり、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、ポドフィロトキシン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、コンブレタスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択される、請求項28に記載のコンジュゲート。
  30. 前記薬物が細胞傷害剤であり、抗チューブリン剤である、請求項28に記載のコンジュゲート。
  31. 前記MMP−12結合タンパク質が、リンカーを介して前記薬物にコンジュゲートしている、請求項27に記載のコンジュゲート。
  32. 請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  33. 試料中においてMMP−12を検出する方法であって、
    前記試料を請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質と接触させる工程と、MMP−12が存在する場合に、前記タンパク質と前記MMP−12との相互作用を検出する工程と
    を含む方法。
  34. 前記タンパク質が、検出可能な標識を包含する、請求項33に記載の方法。
  35. MMP−12の活性を調節する方法であって、
    MMP−12を、請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質と接触させ、これにより、MMP−12の活性を調節する工程
    を含む方法。
  36. 対象における転移活性を調節する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、転移活性を調節するのに有効な量で対象に投与する工程
    を含む方法。
  37. 癌を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における癌を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  38. 抗癌療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
  39. 炎症を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における炎症を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  40. 炎症に対する療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
  41. 肺の炎症と関連する疾患を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における肺の炎症と関連する疾患を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  42. 炎症に対する療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
  43. 心血管疾患を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における心血管疾患を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  44. 心血管疾患に対する療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
  45. 脳卒中または動脈瘤を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における脳卒中または動脈瘤を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  46. 脳卒中または動脈瘤に対する療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
  47. 神経損傷を治療する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を、対象における神経損傷を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  48. 神経損傷に対する療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
  49. 対象を画像化する方法であって、
    請求項1に記載のMMP−12結合タンパク質を前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  50. 前記MMP−12結合タンパク質が、検出可能な標識を含む、請求項49に記載の方法。
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