JP2018105726A - 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法 - Google Patents

心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018105726A
JP2018105726A JP2016252451A JP2016252451A JP2018105726A JP 2018105726 A JP2018105726 A JP 2018105726A JP 2016252451 A JP2016252451 A JP 2016252451A JP 2016252451 A JP2016252451 A JP 2016252451A JP 2018105726 A JP2018105726 A JP 2018105726A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tumor
protein
disease
test
test substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016252451A
Other languages
English (en)
Inventor
匠徳 佐藤
Narutoku Sato
匠徳 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
ATR Advanced Telecommunications Research Institute International
Original Assignee
ATR Advanced Telecommunications Research Institute International
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ATR Advanced Telecommunications Research Institute International filed Critical ATR Advanced Telecommunications Research Institute International
Priority to JP2016252451A priority Critical patent/JP2018105726A/ja
Publication of JP2018105726A publication Critical patent/JP2018105726A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法を提供する。【解決手段】心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置1は、被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得部11、および前記第1の測定値取得部11が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する候補物質決定部14を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法に関する。
厚生労働省から発表された「平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、平成26年の死亡数(死亡率(人口10万対))を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物(悪性腫瘍)で36万7943人(293.3)、第2位は心疾患19万6760人(156.9)となっている。心疾患は、昭和60年に脳血管疾患にかわり第2位となり、その後も死亡数・死亡率ともに増加傾向が続き、平成26年は全死亡者に占める割合は15.5%となっている。
また、厚生労働省のホームページによれば、認知症は、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態であるとされている。さらに、同ホームページによれは、平成27年以降認知症の有病者数は年々増加しており、平成27年の集計では認知症を有する高齢者人口は約262万人であり、65歳以上の高齢者人口に対する有病率は8.4%とされている。さらに2020年には、65歳以上の高齢者人口に対する有病率は8.9%になると予測されている。
認知症は、アメリカ精神医学会によるDSM−IVに基づいて診断されるが、この診断基準を満たす患者はかなり認知症が進んだ段階であり、DSM−IVに基づいて診断されてから治療をはじめても、早期治療にはつながらない点が指摘されている。Mild Cognitive Impairment(MCI)は、アルツハイマー病など認知症の前駆状態である軽度認知障害の1つであり、この段階、あるいはさらに早い段階で治療を開始することが必要であるといわれている。
このように、心筋梗塞、認知症、および腫瘍は、現代人の平均寿命に影響を及ぼす重大な疾患である。
本発明は、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法および装置を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、心筋梗塞、認知症、および腫瘍モデルにおいて、ある種のバイオマーカータンパク質の発現が上昇することを見出した。さらに、当該知見に基づいて被験物質を投与した被験体において当該バイオマーカータンパク質の発現の変動、または機能の変動を観察することにより、当該被験物質が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質となりうるか否かをスクリーニングすることができることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.
下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、および
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニング装置。
項2.
被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、および
被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記測定値比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項1に記載のスクリーニング装置。
項3.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項1または2に記載のスクリーニング装置。
項4.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項1〜3のいずれか一項に記載のスクリーニング装置。
項5.
コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、および
前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニングプログラム。
項6.
さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、および
被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記測定値比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項4に記載のスクリーニングプログラム。
項7.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項5または6に記載のスクリーニングプログラム。
項8.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項5〜7のいずれか一項に記載のスクリーニングプログラム。
項9.
以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、および
(II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニング方法。
項10.
前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程
をさらに含む、項9に記載のスクリーニング方法。
項11.
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞を、被験物質で処理する工程、
(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質および/またはmRNAを回収する工程
を含む、項9または10に記載の方法。
項12.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項9〜11のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
項13.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項9〜12のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
項14.
以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(A)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAを検出する工程、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニング方法。
項15.
さらに、(B)前記工程(A)で得られた結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程を含む、項14に記載のスクリーニング方法。
項16.
前記工程(A)と工程(B)の間に、前記工程(A)で取得された被験物質処理検体の前記検出結果と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAの検出結果とを比較する比較工程、
をさらに含む、項15に記載のスクリーニング方法。
項17.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項14〜16のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
項18.
下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得手段、および
前記第1の評価結果取得手段が取得した評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニング装置。
項19.
被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得手段、および
被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記評価結果比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項18に記載のスクリーニング装置。
項20.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項18または19に記載のスクリーニング装置。
項21.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項18〜20のいずれか一項に記載のスクリーニング装置。
項22.
コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得処理、および
前記第1の評価結果取得処理で取得された評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニングプログラム。
項23.
さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得処理、および
被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記評価結果比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項22に記載のスクリーニングプログラム。
項24.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項22または23に記載のスクリーニングプログラム。
項25.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項22〜24のいずれか一項に記載のスクリーニングプログラム。
項26.
以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能を評価する工程、および
(II)前記工程(I)で得られた評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程、であって
前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
スクリーニング方法。
項27.
前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の前記評価結果と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果とを比較する工程
をさらに含む、項26に記載のスクリーニング方法。
項28.
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞を、被験物質で処理する工程、および(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程
を含む、項26または27に記載のスクリーニング方法。
項29.
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
項26〜28のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
項30.
前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、項26〜29のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
本発明によれば、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法を提供することができる。
本発明の第1の態様に係るシステム100の概観図である。 本発明の第1の態様に係るシステム100のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明の第1の態様に係るスクリーニング装置1の機能を説明するためのブロック図である。 本発明の第1の態様に係るスクリーニング装置1がスクリーニング方法を実行するために行うデータ処理の順序を示すフローチャートである。 本発明の第2の態様に係るシステム110の概観図である。 本発明の第2の態様に係るシステム110のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2の機能を説明するためのブロック図である。 本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2がスクリーニング方法を実行するために行うデータ処理の順序を示すフローチャートである。 心筋梗塞モデルにおいてMI/Shamが5より大きいRNAおよび0.2より小さいRNAについて、器官毎のRNA発現の経時的変化を示す。図内の記号は1d:冠動脈結紮後1日、1w:冠動脈結紮後1週間、8w:冠動脈結紮後8週間である。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 リアルタイムPCR解析の結果を示す。図内の記号は1h:冠動脈結紮後1時間、6h:冠動脈結紮後6時間、1d:冠動脈結紮後1日、1w:冠動脈結紮後1週間、8w:冠動脈結紮後8週間である。「Gene Name」は、NCBIに登録の遺伝子名を示す。 GCMS解析において[MI/Sham]の値が1より大きいかまたは1より小さい値を示した代謝物質の組織毎の経時的変化を示す。図内の記号は1d:冠動脈結紮後1日、1w:冠動脈結紮後1週間、8w:冠動脈結紮後8週間である。 認知症モデルにおいて[SAMP8/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAの器官毎の発現の経時的変化を示す。図内の記号はE:若年性認知症早期、M:若年性認知症中期、L:若年性認知症後期である。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 CEMS解析において[SAMP8/Control]の値が1より大きいかまたは1より小さい値を示した代謝物質の組織毎の経時的変化を示す。図内の記号はE:若年性認知症早期、M:若年性認知症中期である。 神経膠腫モデルにおいて、[Glioma/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAの器官毎の発現の経時的変化を示す。図内の記号は3d:腫瘍移植後3日目、7d:腫瘍移植後7日目である。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 ヒト乳がん保有患者の皮膚において、[BC/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAを示す。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 ヒト肺がん保有患者の皮膚において、[LC/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAを示す。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 ヒト乳がん保有患者の血液において、[BC/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAを示す。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。 ヒト肺がん保有患者の血液において、[LC/Control]が5より大きいか0.2より小さかったRNAを示す。図中「Line No」は表の行番号を示し、「Gene Name」は米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)に登録の遺伝子名を、「Reference Seq. ID」はNCBIに登録のReferense Sequence ID番号を示す。
1.用語の説明
はじめに、本明細書、特許請求の範囲で使用する用語を説明する。
本発明において心筋梗塞とは、心臓の虚血性疾患であり、急性期、亜急性期、慢性期が含まれる。広義には狭心症を含んでいても良い。心筋梗塞として、好ましくは、狭心症、急性期、亜急性期である。
本発明において認知症とは、「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」であり、好ましくは、アルツハイマー病、脳血管性認知症、ピック病など前頭側頭型、レビー小体型認知症、および感染症(スピロヘータ、HIVウイルス、プリオンなど)による認知症が含まれる。また、認知症には、MCI等の軽度認知障害も含まれる。認知症として好ましくは、軽度認知障害、アルツハイマー病、脳血管性認知症であり、より好ましくは、軽度認知障害、アルツハイマー病であり、より好ましくは、軽度認知障害である。
本発明において腫瘍とは、非上皮性および上皮性の悪性腫瘍の両方を指す。具体的には、気管、気管支または肺等から発生する呼吸器系悪性腫瘍;上咽頭、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸または肛門部等から発生する消化管系悪性腫瘍;肝臓癌;膵臓癌;膀胱、尿管または腎臓から発生する泌尿器系悪性腫瘍;卵巣、卵管および子宮等のから発生する女性生殖器系悪性腫瘍;乳癌:前立腺癌;皮膚癌;視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎等の内分泌系悪性腫瘍;中枢神経系悪性腫瘍;骨軟部組織から発生する悪性腫瘍等の固形腫瘍、および骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、慢性単球性白血病、急性全骨髄性白血病、急性巨核球性白血病、赤白血病、好酸球性白血病、慢性好酸球性白血病、慢性好中球性白血病、成人T細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、形質細胞性白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等の造血系悪性腫瘍;リンパ系悪性腫瘍等の造血器腫瘍;星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡乳頭腫、髄芽腫等の神経膠腫等の転移性脳腫瘍を除く脳腫瘍が挙げられる。より好ましくは、神経膠腫(特に星細胞腫)、肺癌、または乳癌等である。
本発明において、「予防」には、症状の発症を抑制、および/または遅延させることを含む。また「治療」には、発症している症状を軽減、および/または消失させることを含む。
本発明において、「個体」は、特に制限されないが、個体にはヒトおよびヒト以外の哺乳動物が含まれる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、サル等が挙げられる。好ましくは、ヒト、ネコ、イヌである。また、個体の年齢、性別は問わない。
また、「被験体」は、被験物質を投与する対象となる個体であり、好ましくはヒトが除かれる。被験体は、心筋梗塞、認知症、または腫瘍の既往を有している個体であることが好ましい。また、被験体となりうる個体は、心筋梗塞、認知症、または腫瘍に伴う少なくとも一種の症状があることが好ましい。さらに、被験体となりうる個体には、医療面接、尿検査、血液の生化学的検査、画像診断、生検等の公知の診断方法に従って、心筋梗塞、認知症、または腫瘍が疑われた個体、および疾患モデル動物等も含まれる。
本明細書において、「被験組織」とは、被験物質を投与する対象となる組織であり、例えば、前記被験体となりうる個体から採取され、体外で培養される等して体外において生存している組織である。当該組織は、一器官全体であってもよく、一器官の一部であってもよい。また、被験組織は、心筋梗塞、認知症、または腫瘍の病変部を含むか、若しくは、心筋梗塞、認知症、または腫瘍に関連する症状を含む組織であることが好ましい。
本明細書において、「被験細胞」とは、被験物質を投与する対象となる細胞であり、例えば、前記被験体となりうる個体から採取され、体外で培養される等して体外において生存している細胞である。当該細胞は、初代培養等の継代性が限られている細胞であってもよく、継代性が維持されている、いわゆる培養細胞であってもよい。また、これらは、遺伝子操作によって作成された細胞であってもよい。さらに、被験細胞は、心筋梗塞、認知症、または腫瘍の病変部の細胞を含むか、若しくは、心筋梗塞、認知症、または腫瘍に関連する症状を含む細胞であることが好ましい。
本明細書において、「検体」には、上記被験体由来の細胞、組織(脳、副腎、大動脈、脳、肺、膵臓、下垂体、皮膚、頭蓋骨、骨格筋、脾臓、精巣、甲状腺、腎臓、大腸、眼球、心臓、肝臓、顎下腺、胸腺、脂肪組織、胃、空腸、および回腸等)、体液(汗、皮膚からの分泌液、涙液、唾液、髄液、腹水および胸水)、尿、および血液試料等が含まれる。検体として好ましくは、心臓、腫瘍原発組織、脳、脂肪組織、皮膚、および血液試料である。
また、「検体」には、被験組織そのもの、被験組織の一部、被験細胞そのもの、被験細胞の一部、さらに被験組織または被験細胞の培養上清が含まれていてもよい。
後述する「2.各測定値の取得方法」において、バイオマーカーのタンパク質の測定値を取得する場合には、検体として好ましくは、血液試料、または体液である。また、同項においてバイオマーカータンパク質のmRNAの測定値の取得する場合には、検体として好ましくは、組織、血液試料、または体液である。
「血液試料」には、被験体から採取した血液(全血)、または当該血液から調製した血清、または血漿等が含まれる。バイオマーカーのタンパク質の測定値を取得する場合、より好ましくは、血清または血漿であり、さらに好ましくは血清である。バイオマーカータンパク質のmRNA測定値を取得する場合、全血を用いることが好ましい。血漿を採取する際に使用する抗凝固剤の種類は特に制限されない。測定に用いる被験体の血液試料と所定の基準値を決定する血液試料は同種であっても異種であっても良いが、同種であることが好ましい。また、血液試料として血漿を用いる場合、所定の基準値を決定するための血漿は、被験体の血漿と同じ抗凝固剤を用いて採血された血液から調製されることが好ましい。
さらに、検体は、新鮮なものであっても、保存されていたものであってもよい。検体を保存する場合には、室温環境、冷蔵環境または冷凍環境において保存することができるが、好ましくは冷凍保存である。
本明細書において、「被験物質」とは、有効成分の候補物質であるか否かを評価する対象となりうる物質であり、特に制限されない。例えば、化合物、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖質、糖脂質、糖タンパク、金属等を挙げることができる。被験物質の投与方法も特に制限されない。被験細胞や被験組織に被験物質を投与する場合には、例えばその培養培地に1pg/mlから1mg/mlとなるように被験物質を投与することができる。また、被験体個体の場合には、1日あたり1ng/kg〜1g/kgとなるように被験物質を投与することができる。被験物質の投与から、検体の採取までの期間は、当該被験物質の効果が得られる限り、特に制限されない。
さらに、被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体は、本明細書において、「被験物質処理検体」と呼ばれることもある。また、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体は、本明細書において、「未処理検体」と呼ばれることもある。
「健常個体」とは、特に制限されない。好ましくは「個体」の項に記載されたヒトまたはヒト以外の哺乳動物であって、生化学的検査、血液検査、尿検査、血清検査、生理学的検査等において異常データを示さない個体をいう。健常個体の年齢、性別は特に制限されない。
心筋梗塞を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングする場合には、本発明の「バイオマーカータンパク質」には、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質が含まれる。
認知症を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングする場合には、本発明の「バイオマーカータンパク質」には、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質が含まれる。
腫瘍を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングする場合には、本発明の「バイオマーカータンパク質」には、図14〜図18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質が含まれる。
腫瘍が脳腫瘍である場合、バイオマーカータンパク質として好ましくは、図13に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。
皮膚を検体として腫瘍を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、バイオマーカータンパク質として好ましくは、図15および図16に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。より好ましくは、FCGR3B、FPR1、HLA−DQA1、LINC00260、LOC286437、MALAT1、MIR1184−1、MIR1247、PRG4、RPL21P44、RPPH1、RPS15AP10、SCARNA4、SNORA31、SNORA77、およびZBTB20からなる群から選択される少なくとも一種の遺伝子から発現されるタンパク質である。中でも、皮膚を検体として乳がんを予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、バイオマーカータンパク質として好ましくは、図15に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。より好ましくは、PRG4、HLA−DQA1、MIR1184−1、MIR1248、MIR203、MIR205、MIR570、RPPH1、SCARNA4、SNORA31、およびSNORA4からなる群から選択される少なくとも一種の遺伝子から発現されるタンパク質である。皮膚を検体として肺がんを予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、バイオマーカータンパク質として好ましくは、図16に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。より好ましくは、AGSK1、CYP2E1、KRT6C、RPL21、RPL9、TPPP、DCD、DDX3Y、FCGR3B、HBA2、HIST1H4C、HLA−DQA1、LOC286437、MALAT1、MIR1184−1、RPPH1、RPS15AP10、RPS4Y1、SCARNA4、SCGB2A1、SFTPA1、SFTPA2、SNORA31、SNORA77、およびZBTB20からなる群から選択される少なくとも一種の遺伝子から発現されるタンパク質をバイオマーカータンパク質である。
血液を検体として腫瘍を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、バイオマーカータンパク質として好ましくは、図17および図18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。より好ましくは、HNRNPH2、HP、LOC283663、SNORA40、およびTCN2からなる群から選択される少なくとも一種の遺伝子から発現されるタンパク質をバイオマーカータンパク質として使用することが好ましい。中でも、血液を検体として乳がんを予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、好ましくは図17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。また、血液を検体として乳がんを予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う場合、好ましくは図18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である。
また、図9〜図18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質には、それぞれの遺伝子由来のスプライシングバリアント、またはオーソログが含まれていてもよい。
「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値」とは、バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の量または濃度を反映した値をいう。当該測定値を「量」で標記する場合には、モルであっても質量であってもよいが、質量で標記することが好ましい。また、値を「濃度」で表記する場合には、モル濃度であっても検体の一定容量あたりの質量の割合(質量/容量)であってもよいが、好ましくは質量/容量である。量または濃度を反映する値としては、上記の他に、蛍光や発光などのシグナルの強度であってもよい。
「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値」とは、一定量の検体中に存在するバイオマーカー mRNAのコピー数(絶対量)で表されてもよく、または、β2−ミクログロブリンmRNA、GAPDH mRNA、Maea mRNAおよびβ−アクチン mRNA等のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量を反映した値であってもよい。また、蛍光や発光などのシグナルの強度で表されてもよい。
「抗バイオマーカー抗体」は、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質と特異的に結合する限り制限はなく、バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質またはその一部を抗原としてヒト以外の動物に免疫して得られたポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびそれらの断片(例えば、Fab、F(ab)等)のいずれも用いることができる。また、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスは特に制限されない。また、キメラ抗体であってもよい。さらに、scFv等であってもよい。
抗バイオマーカー抗体を作製するために用いられる、抗原となるバイオマーカータンパク質としては、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の全体、または一部を挙げることができる。
本発明における「バイオマーカーmRNA検出核酸」は、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNA、または当該mRNAの逆転写産物と特異的にハイブリダイズする配列を含む限り制限されない。検出核酸は、DNAであっても、RNAであってもよく、また、検出核酸に含まれるヌクレオチドは、天然のヌクレオチドであっても人工的に合成されたヌクレオチドであってもよい。
検出核酸の長さは、特に制限されない。検出核酸が、マイクロアレイ等においてキャプチャープローブとして使用されるものであれば、標的核酸とハイブリダイズする配列が、好ましくは100mer程度であり、より好ましくは60mer程度であり、さらに好ましくは、20〜30mer程度である。キャプチャープローブは、公知のオリゴヌクレオチド合成機等を使用して製造することができる。キャプチャープローブには、標的核酸とハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。
検出核酸が、PCR反応に使用されるプライマーであれば、標的核酸とハイブリダイズする配列が、好ましくは50mer程度であり、より好ましくは30 mer程度であり、さらに好ましくは、15〜25mer程度である。プライマーは、公知のオリゴヌクレオチド合成機等を使用して製造することができる。プライマーには、標的核酸とハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。また、プライマーは、蛍光色素等で標識されていてもよい。
また、RT−PCRには、プライマーの他にPCR産物のリアルタイムの定量のために使用される、PCR反応中に分解される定量用プローブを使用することもできる。定量用プローブも標的核酸とハイブリダイズする限り、制限されない。定量用プローブは、標的核酸とハイブリダイズする配列を含む、5〜20mer程度の核酸であることが好ましい。さらに定量用プローブの一端には、蛍光色素が標識され、定量用プローブのもう一端には、当該蛍光色素のクエンチャーが標識されていることが好ましい。
2.各測定値の取得方法
本明細書におけるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、およびバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値の取得方法は、それぞれの測定値が取得できる限り制限されない。例えば、以下に述べる方法に従って取得することができる。
2−1.バイオマーカーのタンパク質の測定方法
バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値(以下、本明細書において「バイオマーカータンパク質の測定値」と略記することもある)を測定する場合、本工程では、当該測定値を取得するために、上記「1.用語の説明」で述べた抗バイオマーカー抗体を用いた測定方法を使用することができる。バイオマーカータンパク質の測定値を取得する測定方法としては、公知のELISA法等を使用して行うことができる。
本態様では、あらかじめ抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体をマイクロプレート、蛍光ビーズ、または磁気ビーズ等の固相上に固定化し、固定化された抗バイオマーカー抗体と検体中のバイオマーカータンパク質の複合体を形成させることができる。固相上に固定化された当該複合体または固相上で形成された複合体を、当該技術において公知の方法で検出することにより、検体に含まれるバイオマーカータンパク質の量または濃度を測定することができる。また、本態様では、先に抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体と検体中のバイオマーカータンパク質の複合体を形成させてから、当該複合体を固相に固定化してもよい。
抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体の固相への固定の方法は、特に限定されない。公知の方法を使用して、直接的に、または別の物質を介して間接的に行うことができる。直接の結合としては、例えば、物理的吸着などが挙げられる。好ましくは、イムノプレート等を使用して、直接抗バイオマーカー抗体をマイクロプレートに物理的に結合させることができる。
固相の形状は特に限定されず、例えば、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管、ビーズ等が挙げられる。固相の素材は特に限定されず、例えば、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管等には、ポリスチレン、ポリプロピレン等を使用することができる。また、ビーズの場合には、ポリスチレンXmap(登録商標)ビーズ(Luminex社)やMagPlex(登録商標)ミクロスフェア(Luminex社)等を使用することができる。
本方法においては、前記複合体の形成に続いて、固相を洗浄する操作を含んでもよい。洗浄する場合には、界面活性剤等を含むPBS等を使用することができる。
本方法において、前記複合体の検出は、標識物質で標識された検出用抗バイオマーカー抗体を使用して行うか、未標識の抗バイオマーカー抗体と当該未標識の抗バイオマーカー抗体と結合することができる標識物質で標識された抗イムノグロブリン抗体等を使用して行うことができるが、標識された検出用抗バイオマーカー抗体を使用することが好ましい。また、検出用抗バイオマーカー抗体のバイオマーカータンパク質におけるエピトープと抗原捕捉用抗バイオマーカー抗体のバイオマーカータンパク質におけるエピトープとは異なることが好ましい。
検出用抗バイオマーカー抗体または標識抗イムノグロブリン抗体に用いられる標識物質は、検出可能なシグナルが生じるかぎり、特に限定されない。例えば、蛍光物質、放射性同位元素、および酵素等が挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)などの蛍光色素、GFPなどの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。それらの中でも、標識物質として、アルカリホスファターゼ、またはペルオキシダーゼが好ましい。
検出用抗バイオマーカー抗体は、当該技術において公知の標識方法により、抗バイオマーカー抗体を上記の標識物質で標識して得られる。また、市販のラベリングキットなどを用いて標識してもよい。また、標識イムノグロブリン抗体は、抗バイオマーカー抗体の標識と同じ手法を用いてもよいし、市販のものを使用してもよい。
本方法では、複合体に含まれる標識抗バイオマーカー抗体の標識物質により生じるシグナルを検出することにより、検体に含まれるバイオマーカーの測定値を取得できる。ここで、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、および、シグナルの強度を半定量的に検出することを含む。半定量的な検出とは、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「中」、「強」などのように段階的に示すことをいう。本工程では、シグナルの強度を定量的または半定量的に検出することが好ましい。
シグナルを検出する方法は、公知の方法を使用することができる。本方法では、上記の標識物質に由来するシグナルの種類に応じた測定方法を適宜選択することができる。例えば、標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を反応させることによって発生する光、色などのシグナルを、ルミノメーター、分光光度計などの公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。
酵素の基質は、該酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択できる。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質としては、CDP−Star(登録商標)(4−クロロ−3−(メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)等の化学発光基質、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、5−ブロモ−6−クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p−ニトロフェニルリン酸等の発色基質が挙げられる。標識物質がペルオキシダーゼである場合には、テトラメチルベンジジン(TMB)等を挙げることができる。
標識物質が放射性同位体である場合は、シグナルとしての放射線を、シンチレーションカウンターなどの公知の装置を用いて測定できる。また、標識物質が蛍光物質である場合は、シグナルとしての蛍光を、蛍光マイクロプレートリーダー、Luminex(登録商標)システム(Luminex社)等の公知の装置を用いて測定できる。なお、励起波長および蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
シグナルの検出結果は、バイオマーカータンパク質の測定値として用いることができる。例えば、シグナルの強度を定量的に検出する場合は、シグナル強度の測定値自体または該シグナル強度の測定値から算出される値を、バイオマーカーのタンパク質の測定値として用いることができる。
2−2.バイオマーカーmRNAの測定方法
バイオマーカータンパク質からなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値(以下、本明細書において「バイオマーカーmRNAの測定値」と略記することもある)を取得するために、マイクロアレイ法、RNA−seq解析法、定量的RT−PCR法等公知の測定方法を使用することができる。マイクロアレイ法に使用するプローブは、自ら選択したプローブまたは公知のプローブを合成して使用してもよく、また市販のマイクロアレイチップを使用してもよい。
ここで、本方法においては、検体から抽出したtotal RNAおよびmRNAのいずれを用いてもよい。total RNAおよびmRNA抽出に用いる検体は、個体から採取されてすぐにRNA抽出に供されるか、個体から採取されてすぐに凍結(好ましくは、−196℃以下の雰囲気下(液体窒素中で急冷)して、RNA抽出まで−80℃以下で保存されることが好ましい。
検体からのtotal RNAおよびmRNAの抽出方法は特に制限されず、公知の抽出方法を使用することができる。
マイクロアレイ法による定量は、公知の方法に従って行うことができ、バイオマーカー mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量として表してもよく、蛍光色素等のシグナル強度の測定値として表すことができる。
RT−PCRによる定量は、検体から抽出したtotal RNAまたはmRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型としてバイオマーカー mRNAの特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCR法等で解析することにより行うことができる。また、この場合、バイオマーカー mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量として表してもよく、蛍光色素等のシグナルの強度の測定値として表してもよい。
また、RNA−seq解析法は、検体から抽出したmRNAを断片化し、これを鋳型として逆転写反応によるcDNAの合成とライブラリ作成を行う。各ライブラリに含まれる断片について次世代シークエンサーによる塩基配列を決定し、その情報をリファレンス遺伝子配列へマッピングし、mRNAの発現量をRPKM(Reads Per Killobases per Million)として表す。RPKMは、ヒートマップ等のシグナルの強度として表してもよい。
上記シグナルの検出結果は、バイオマーカー mRNAの発現量として用いることができる。例えば、シグナルの強度を定量的に検出する場合は、シグナル強度の測定値自体または該シグナル強度の測定値から算出される値を、バイオマーカー mRNAの発現量として用いることができる。
上記シグナル強度の測定値から算出される値としては、例えば、該シグナル強度の測定値から陰性対照試料のシグナル強度の測定値を差し引いた値、該シグナル強度の測定値を陽性対照試料のシグナル強度の測定値で除した値、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。陰性対照試料としては、健常者の検体等が挙げられる。陽性対照試料としては、バイオマーカー mRNAを所定の発現量で含む検体が挙げられる。
3.バイオマーカータンパク質の機能の評価
本発明において、バイオマーカータンパク質の機能を評価する方法としては、バイオマーカータンパク質の機能を評価できる限り特に制限されない。ここで「バイオマーカータンパク質の機能」とは、それぞれのバイオマーカータンパク質が有している本来の機能である。例えば、バイオマーカータンパク質が受容体である場合には、そのリガンドがバイオマーカータンパク質に結合した際に活性化し、当該タンパク質が属する情報伝達経路の下流に存在するタンパク質やケミカルメディエーターにその活性化の情報を伝達し、その受容体の支配下にある情報伝達経路を通じて細胞等に働きかける機能である。また、バイオマーカータンパク質がリガンドである場合には、例えば当該リガンドが結合する受容体を活性化する機能である。
バイオマーカータンパク質の機能を評価する方法としては、例えば、あるバイオマーカータンパク質が属する情報伝達経路において下流に存在するタンパク質のリン酸化あるいは脱リン酸化等の有無;下流に位置するタンパク質の発現量の増減;下流に位置するタンパク質の転写調節領域の活性化あるいは不活化等を検出する方法が挙げられる。タンパク質のリン酸化の有無等はウエスタンブロッティング等の公知の方法を用いて検出することができる。また、タンパク質の発現量の増減等は、ELISA法、ウエスタンブロッティング法、定量的RT−PCR法、またはRNA−Seq法等の公知の方法を使用して検出することができる。さらに、転写調節領域の活性化または不活性化はレポーターアッセイによって検出することができる。レポーターとしては、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、GFP(Green Fluorescent Protein)、β−ガラクトシダーゼ等を挙げることができる。レポーターアッセイは、公知の方法に従って行うことができる。
バイオマーカータンパク質の機能を評価する別の方法として、あるバイオマーカータンパク質が属する情報伝達経路において下流に存在するケミカルメディエーター(イノシトール−3−リン酸、cAMP、cGMP、Ca2+等)の量を測定することによって、バイオマーカータンパク質の機能を評価することもできる。これらのケミカルメディエーターの測定は、公知の方法に従って行うことができる。
また、バイオマーカーの機能を評価するために、各器官の代謝物質を測定してもよい。
代謝物質の解析は、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GCMS)、キャピラリ電気泳動/質量分析(CEMS)、液体クロマトグラフィー/質量分析 (LCMS)、高速液体クロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量分析(HPLC/ICP−MS)、高速液体クロマトグラフィー/イオントラップ型質量分析/飛行時間型質量分析(LCMS−IT−TOF)等の公知方法によって行うことができる。また、代謝物質は、解析方法に応じて、シリル化、トリメチルシリル化、メトキシム化、アシル化等の誘導体化を行ってもよい。また、内部標準物質も、公知のものを使用することができる。
例えば、GCMSで解析する場合には、細胞や組織からの代謝物質の抽出は、公知の方法によって行うことができ、特に制限されない。例えば、組織を、水、メタノール、エタノール、クロロホルム若しくはこれらの混合物等の溶媒に入れ、破砕し、さらに、当該溶媒に内部標準2−イソプロピルリンゴ酸等を加えた溶媒を添加し粗抽出物とする。当該粗抽出物を水およびクロロホルム等の疎水性溶媒を加えて、水相を精製する。精製された水相をさらに限外濾過等で精製したものを代謝物質の抽出液として解析に使用する。
抽出液中の代謝物質をメトキシム化およびトリメチルシリル化した後、例えばGCMS−TQ8030(島津製作所)等を使用し、GC用のキャピラリーカラムとしてDB−5(30m×内径0.25 mm×膜厚1.00 um) (Agilent Technologies)等を使用することができる。ガスクロマトグラフィーの昇温条件は、例えば100℃から320℃までを4℃/分の速度で上昇させる条件が挙げられる。注入口温度は例えば280℃程度とし、キャリアガスにはヘリウム等を用い、これを例えば39.0cm/秒程度の速度で流すことができる。電子イオン化のエネルギーは150eV程度、イオン源温度は200℃程度で、スキャンするm/zの範囲は45〜600程度とすることができる。サンプルは1μl程度をインジェクションし、下記の条件で測定することができる:
心臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
脳_Split1:25_検出器電圧+0.2kV
腎臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
肝臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
膵臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
骨格筋_Split1:25_検出器電圧+0.2kV
脂肪組織_Split1:3_検出器電圧+0.2kV
血漿_Split1:10_検出器電圧+0.1kV
脾臓_Split1:25_検出器電圧+0.2kV
肺_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
精巣_Split1:10_検出器電圧+0.3kV
胸腺_Split1:25_検出器電圧+0.3kV。
GCMS解析によって得られたデータは、例えばデータ解析ソフトであるGCMS solution Ver. 4.20とGCMS代謝成分データベース(島津製作所)等を用いて検索することができる。代謝物の同定のために、保持試料より推測された保持時間と少なくとも2つの特異的ピーク(ターゲットイオン、確認イオン)のm/zの存在と比率を確認する。同定された代謝産物はターゲットイオンのピーク面積を計測し、内部標準のピーク面積とサンプル量で補正した。その後、補正した測定結果をZ−score((サンプルデータ−平均値)/標準偏差)にしてMulti Experiment Viewer(MeV)でヒートマップを作成することができる。またPythonでPair−wise correlation(ρ=1−[6ΣD]/n(n−1))を計算し、MeVでヒートマップを作成することができる。さらに、多変量解析ソフトウェアSIMCA(Umetrics社)でPCA(Principal component analysis)解析等を行うこともできる。
また、代謝物質をCEMSで解析する場合には、例えば組織を内部標準物質(例えばSolution ID: 304−1002;HMT)を含む50%アセトニトリル内で破砕し、破砕後のサンプルを、遠心し、上清を限外濾過後のサンプルを減圧乾燥し、蒸留水に再溶解し、測定用のサンプルとすることができる。
CE−MSは、例えばAgilent CE−TOFMS system(Agilent Technologies 社)を、CE用のキャピラリーカラムには、Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cmを用いることができる。CE−の泳動用バッファーには、カチオン用;Cation Buffer Solution (p/n : H3301−1001;HMT)、アニオン用Anion Buffer Solution (p/n : I3302−1023;HMT)等を用いることができる。
<カチオン側測定条件>
例えば、サンプル注入条件を Pressure injection 50 mbar, 10 sec、CEの泳動電圧を27kVで電気泳動を行う。電子イオン化のエネルギーを4,000Vとし、スキャンする範囲を50〜1000とすることができる。また、サンプルは、5nl程度をインジェクションすることができる。
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
<アニオン側測定条件>
例えばサンプル注入条件を Pressure injection 50 mbar, 25 sec、CEの泳動電圧を30kVで電気泳動を行う。電子イオン化のエネルギーを3,500Vとし、スキャンする範囲を50〜1000とすることができる。サンプルは、5nl程度をインジェクションすることができる。
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
検出されたピークは、自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.2.16.0.15(慶應義塾大学開発)を用いて、シグナル/ノイズ (S/N) 比が3 以上のピークを自動抽出し、質量電荷比 (m/z)、ピーク面積値、泳動時間 (Migration time: MT)を用いて代謝物の同定を行うことができる。同定された代謝産物はターゲットイオンのピーク面積を計測し、内部標準のピーク面積とサンプル量で補正することができる。
ここで、疾患が心筋梗塞である場合には、図11に記載の代謝物質を測定することが好ましく、疾患が認知症である場合には、図13に記載の代謝物質を測定することが好ましい。
上記ELISA法、ウエスタンブロッティング法、定量的RT−PCR法、RNA−Seq法、およびレポーターアッセイの検出結果、およびケミカルメディエーターの測定結果、GSMS解析結果、およびCEMS解析結果は、バイオマーカータンパク質の機能の評価結果として使用することができる。当該評価結果は、定量的なデータであっても、「高い」、「低い」等の判定量的な情報であっても、「有る」、「なし」等の定性的なデータであってもよい。
4.スクリーニングを行うためのシステム構成
本発明においては、上記「2.各測定値の取得方法」において取得された測定値を用いて、後述する「5.スクリーニング1」を行う。また、本発明においては、上記「3.バイオマーカータンパク質の機能の評価」において取得された評価結果を用いて、後述する「6.スクリーニング2」を行う。まず、これらの処理を行うためのシステム構成について説明する。
図1は、本発明の第1の態様に係るスクリーニング1を行うためのシステム100の概観図であり、図2は、システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。システム100は一態様として、スクリーニング装置1と、入力部3と、表示部4と、装置5aまたは装置5bとを備える。
スクリーニング装置1は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU101と、データ処理の作業領域に使用するメモリ102と、処理データを記録する記録部103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105(以下、I/F部と記す)とを備えている。入力部3および表示部4は、スクリーニング装置1に接続されており、入力部3は、キーボード等で構成され、表示部4は、液晶ディスプレイ等で構成されている。入力部3と表示部4とは、一体化されてタッチパネル付き表示装置として実現されてもよい。なお、スクリーニング装置1は一体の装置である必要はなく、CPU101、メモリ102、記録部103等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、入力部3や表示部4を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
また、スクリーニング装置1と、装置5a、または装置5bとについても、一カ所に配置される必要は必ずしもなく、別所に設けられた装置間をネットワークで通信可能に接続した構成でもよい。
以下の説明においては、特に断らない限りスクリーニング装置1が行う処理は、図2に示す記録部103またはメモリ102に格納されたスクリーニングプログラムに基づいて、実際にはスクリーニング装置1のCPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部103に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
装置5aは、タンパク質の量または濃度を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた被験体から採取された検体は、反応部52に設置された抗体捕捉用抗バイオマーカー抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。また、装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
さらに、装置5aの別態様は、RT−PCRによるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
装置5bは、RNA−Seq法によってmRNAの発現量を測定するための装置であり、配列解析部54を備える。RNA−Seq用の反応を行ったサンプルを配列解析部54にセットし、配列解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。
装置5a、および5bは、有線または無線によってスクリーニング装置1に接続されている。装置5aは、タンパク質の測定値、またはmRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置1に送信する。同様に、装置5bは、mRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置1に送信する。これにより、スクリーニング装置1は、タンパク質の測定値、またはmRNAの測定値を、演算処理可能なデジタルデータとして取得することができる。
図5は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング2を行うためのシステム110の概観図であり、図6は、システム110のハードウェア構成を示すブロック図である。システム110は一態様として、スクリーニング装置2と、入力部3と、表示部4と、装置5a、装置5b、または装置5cとを備える。
スクリーニング装置2は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU101と、データ処理の作業領域に使用するメモリ102と、処理データを記録する記録部103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105(以下、I/F部と記す)とを備えている。入力部3および表示部4は、スクリーニング装置1に接続されており、入力部3は、キーボード等で構成され、表示部4は、液晶ディスプレイ等で構成されている。入力部3と表示部4とは、一体化されてタッチパネル付き表示装置として実現されてもよい。なお、スクリーニング装置2は一体の装置である必要はなく、CPU101、メモリ102、記録部103等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、入力部3や表示部4を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
また、スクリーニング装置2と、装置5a、装置5bまたは装置5cとについても、一カ所に配置される必要は必ずしもなく、別所に設けられた装置間をネットワークで通信可能に接続した構成でもよい。
以下の説明においては、特に断らない限りスクリーニング装置2が行う処理は、図6に示す記録部103またはメモリ102に格納されたスクリーニングプログラムに基づいて、実際にはスクリーニング装置2のCPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部103に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
装置5aは、タンパク質の量または濃度を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた被験体から採取された検体は、反応部52に設置された抗体捕捉用抗バイオマーカー抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。また、装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
さらに、装置5aの別態様は、RT−PCRによるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。さらにまた、装置5aの別態様は、ケミカルメディエーターを測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた細胞溶解液を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いてケミカルメディエーター測定用試薬をマイクロチューブ内に分注する。そして、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
装置5bは、RNA−Seq法によってmRNAの発現量を測定するための装置であり、解析部54を備える。RNA−Seq用の反応を行ったサンプルを解析部54にセットし、解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。また、別の態様では装置5bは、GSMS解析またはCEMS解析によって代謝物質を測定するための装置であり、GSMSまたはCEMS解析部54を備える。サンプルを解析部54にセットし、解析部54内で、GSMSまたはCEMSによる解析をおこなう。
装置5cの一態様は、ウエスタンブロッティング等のシグナルを検出するための装置である。例えば、バイオマーカータンパク質の機能をウエスタンブロッティング法等を用いて評価する場合には、装置5cの検出部55に検出を行うためのメンブレンをセットし、化学発光強度や蛍光強度を測定する。また、装置5cの別態様は、レポーターアッセイにおいてレポーター遺伝子の発現強度を検出するための装置である。装置5cの検出部55にレポーターアッセイを行うための細胞溶解液をセットし、そこに基質液を分注したあと、化学発光強度を測定する。
また、装置5a、5bおよび5cは、有線または無線によってスクリーニング装置2に接続されている。装置5aは、タンパク質の検出結果、mRNAの検出結果、またはケミカルメディエーターの測定結果をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置2に送信する。また、装置5bは、mRNAの検出結果、若しくはGSMSまたはCEMSの解析結果をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置2に送信する。そして、装置5cは、ウエスタンブロッティング等のシグナルの測定結果またはレポーターアッセイ等の測定結果をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置2に送信する。これにより、スクリーニング装置2は、タンパク質の検出結果、mRNAの検出結果、ケミカルメディエーターの測定結果、ウエスタンブロッティングのシグナルの測定結果またはレポーターアッセイの測定結果を、演算処理可能なバイオマーカータンパク質の機能の評価結果のデジタルデータとして取得することができる。
5.スクリーニング1
5−1.概要
本態様においては、上記「2.各測定値の取得方法」を実施することによって取得される、被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を用いて、当該被験物質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質であると決定する。より具体的には、本態様は、工程(I):被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、および工程(II):前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程を含む。この場合、被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値が、健常個体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値に近づいていれば、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。
ここで、工程(I)は、実際に上記「2.各測定値の取得方法」を実施することによって測定値を取得する態様であっても、既に取得された測定値を、さらに後述する予測装置等に取得させる態様であってもよい。また、工程(I)と工程(II)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(I)で取得された測定値を、第三者機関に送り工程(II)以降を実施してもよい。
本態様は、さらに、上記「2.各測定値の取得方法」によって得られた、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を被験物質処理検体の該測定値と比較し、当該被験物質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質であると決定してもよい。より具体的には、前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程を含んでいてもよい。この場合、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値よりも改善している場合に、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。
ここで、例えば検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って上昇する場合、未処理検体の前記測定値と比較して被験物質処理検体の対応する測定値の方が低下していれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。この場合、測定値の低下の程度は特に制限されない。被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下になっている場合に、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。
また、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って低下する場合、未処理検体の前記測定値と比較して被験物質処理検体の対応する測定値の方が上昇していれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。この場合、測定値の上昇の程度は特に制限されない。被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば115%以上、好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上になっている場合に、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。
さらに、スクリーニング1は、前記工程(I)の前に、(i)被験体、被験組織または被験細胞に、被験物質を投与する投与工程、(ii)前記工程(i)で被験物質を投与された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程、および(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質および/またはmRNAを回収する工程を含んでいてもよい。この場合にも、工程(ii)と工程(iii)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(ii)で採取された検体を、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。また、工程(iii)と工程(I)も、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(iii)で回収されたタンパク質および/またはmRNAを、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。
5−2.スクリーニング装置
本発明は、第1の態様として、下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置を含む:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、および
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
好ましくは、上記スクリーニング装置は、さらに、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、および
被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記測定値比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。決定方法は、後述する「5−4.スクリーニング方法」の記載に準ずる。
本態様では、上記スクリーニング装置としてスクリーニング装置1を備えたシステム100(図1および図2)によって、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行うことができる。
図3は、本態様に係るスクリーニング装置1の機能を説明するためのブロック図である。スクリーニング装置1は、第1の測定値取得部11と、第2の測定値取得部12と、測定値比較部13と、候補物質決定部14とを備える。第2の測定値取得部12は任意の構成である。これらの機能ブロックは、本発明に係るスクリーニングプログラムを、図2に示すスクリーニング装置1の記録部103またはメモリ102にインストールし、このスクリーニングプログラムをCPU101が実行することにより実現される。これにより、スクリーニング装置1は、後述する「5−4.スクリーニング方法」に記載のスクリーニング方法を実行する。なお、特許請求の範囲に記載の第1の測定値取得手段、第2の測定値取得手段、測定値比較手段および決定手段が、図3に示す第1の測定値取得部11、第2の測定値取得部12、測定値比較部13および候補物質決定部14にそれぞれ対応する。
言い換えると、スクリーニング装置1は、CPU101により下記の演算機能を実行する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置である:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得機能、および
前記第1の測定値取得機能が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定機能。
好ましくは、スクリーニング装置1は、さらに、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得機能、および
被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較機能、
をCPU101により実行し、
前記決定機能は、前記測定値比較機能の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。
本態様では、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M11は、装置5aからスクリーニング装置1に取り込まれ、前記タンパク質のmRNAの測定値M21は、装置5aまたは5bからスクリーニング装置1に取り込まれる。同様に、未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M12も、装置5aからスクリーニング装置1に取り込まれ、前記タンパク質のmRNAの測定値M22も、装置5aまたは5bからスクリーニング装置1に取り込まれる。
なお、これら被験物質処理検体および未処理被検体のバイオマーカータンパク質の測定値M11,M12、前記タンパク質のmRNAの測定値M21,M22は、ネットワークを介して第三者機関(図示せず)からスクリーニング装置1に取り込まれてもよい。
また、第1の測定値取得部11、第2の測定値取得部12、測定値比較部13および候補物質決定部14の各機能ブロックは、単一のCPUで実行されることは必ずしも必要なく、複数のCPUで分散して処理されてもよい。たとえば、第1の測定値取得部11および第2の測定値取得部12の機能は第1のコンピュータのCPUにより実行され、測定値比較部13および候補物質決定部14の機能は別の第2のコンピュータのCPUにより実行される、というような構成であってもよい。
5−3.スクリーニングプログラム
本発明の第1の態様に係るスクリーニング装置1は、以下の図4で説明するステップS11〜S17の処理を行うために、本態様に係るスクリーニングプログラムを、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)で記録部103に予め記録しており、スクリーニング装置1は、記録部103に記録したスクリーニングプログラムを使用して処理を行う。
すなわち、本発明の第1の態様に係るスクリーニングプログラムは、コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラムである:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、および
前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理。
好ましくは、上記スクリーニングプログラムは、さらに、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、第1の測定値取得処理で取得された測定値を前記第2の測定値取得処理で取得された測定値と比較することにより前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。決定方法は、後述する「5−4.スクリーニング方法」の記載に準ずる。
本態様では、図2に示すように、上記スクリーニングプログラムは、CD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体109に記録されており、記録媒体109から、スクリーニング装置1にインストールされる。あるいは、スクリーニング装置1をインターネット(図示せず)と接続し、インターネットを介して上記スクリーニングプログラムのプログラムコードをダウンロードしてもよい。
5−4.スクリーニング方法
本発明の第1の態様に係るスクリーニング装置1は、本発明の第1の態様に係るスクリーニング方法を実行する。本発明の第1の態様に係るスクリーニング方法は、以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法を含む:
(I)被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、および
(II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程。
好ましくは、上記スクリーニング方法は、前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程をさらに含む。
図4は、本発明の第1の態様に係るスクリーニング装置1が上記のスクリーニング方法を実行するために行うデータ処理の順序を示すフローチャートである。なお、図3に示す第1の測定値取得部11、第2の測定値取得部12および測定値比較部13により、ステップS11、S12およびS13がそれぞれ実行され、図3に示す候補物質決定部14により、ステップS14〜S17が実行される。
ステップS11では、第1の測定値取得部11が、被験物質処理検体中のタンパク質測定値M11および/またはmRNA測定値M21を取得する。
ステップS12では、第2の測定値取得部12が、未処理検体中のタンパク質測定値M12および/またはmRNA測定値M22を取得する。
ステップS13では、測定値比較部13が、ステップS11で得られた被験物質処理検体の測定値を、ステップS12で得られた未処理検体の測定値と比較する。当該比較結果は、候補物質決定部14に出力される。
候補物質決定部14は、測定値比較部13の比較結果に基づいて、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。具体的には、比較結果が「改善している」である場合(ステップS14においてYES)、ステップS15において、候補物質決定部14は、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。
より具体的には、被験物質処理検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って上昇する場合、測定値比較部13は、M11をM12で除した値、または、M21をM22で除した値が、例えば、0.85以下、好ましくは0.7、より好ましくは0.5以下であれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定し、「改善している」という比較結果を出力する。候補物質決定部14は、前記比較結果が「改善している」である場合に、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。また、被験物質処理検体が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って低下する場合、測定値比較部13は、M11をM12で除した値、または、M21をM22で除した値が、例えば、1.15以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定し、「改善している」という比較結果を出力する。また、測定値比較部13は、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していないと決定した場合には、「改善していない」という比較結果を出力する。候補物質決定部14は、前記比較結果が「改善している」である場合に、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。
ステップS16では、候補物質決定部14がステップS15で決定された結果を出力する。本態様では、有効成分の候補物質を表示部4に表示するとともに、決定結果が、スクリーニング装置1内の記録部103に記録される。なお、決定結果を表示部4に表示する代わりに、インターネットを介して接続された、スクリーニング装置1の外部の例えば第三機関(図示せず)におけるコンピュータ端末の表示部に表示してもよい。
また、ステップS14において、比較結果が「改善していない」である場合、ステップS17に移行し、候補物質決定部14は、被験物質は有効成分ではないと決定する。この場合、被験物質が有効成分ではない旨を表示部4に表示してもよい。
6.スクリーニング2
6−1.概要
本態様においては、上記「3.バイオマーカータンパク質の機能の評価」の方法を実施することによって取得される、被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を用いて、当該被験物質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質であると決定する。より具体的には、本態様は、工程(I):被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能を評価する工程、および工程(II):前記工程(I)で得られた評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程を含む。この場合、被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果が、健常個体の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果に近づいていれば、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。
ここで、工程(I)は、実際に「3.バイオマーカータンパク質の機能の評価」を実施することによって評価結果を取得する態様であっても、既に取得された評価結果を、さらに後述する予測装置等に取得させる態様であってもよい。また、工程(I)と決定する工程(II)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(I)で取得された評価結果を、第三者機関に送り工程(II)以降を実施してもよい。
本態様は、さらに、上記「3.バイオマーカータンパク質の機能の評価」の方法によって得られた、未処理検体中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果と前記評価結果を比較し、当該被験物質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質であると決定することができる。より具体的には、前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の前記評価結果と、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果とを比較する工程をさらに含む。この場合、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果よりも改善している場合に、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。
例えば、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の機能が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って活性化する場合、未処理検体の前記評価結果と比較して被験物質処理検体の対応する評価結果の方が低下していれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。この場合、評価結果の低下の程度は特に制限されない。被験物質処理検体の測定値が未処理検体の評価結果の例えば85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下になっている場合に、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。
また、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の機能が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って抑制される場合、未処理検体の前記評価結果と比較して被験物質処理検体の対応する評価結果の方が上昇していれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。この場合、評価結果の上昇の程度は特に制限されない。被験物質処理検体の測定値が未処理検体の評価結果の例えば115%以上、好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上になっている場合に、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定することができる。
さらに、スクリーニング2は、前記工程(I)の前に、(i)被験体、被験組織または被験細胞に、被験物質を投与する工程、および(ii)上記工程(i)の後に前記被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程を含んでいてもよい。この場合にも、工程(ii)と工程(iii)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(ii)で採取された検体を、第三者機関に送り工程(I)以降を実施してもよい。
6−2.スクリーニング装置
本発明は、第2の態様として、下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置を含む:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得手段、および
前記第1の評価結果取得手段が取得した評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
好ましくは、上記スクリーニング装置は、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得手段、および
被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較手段、
をさらに有し、
前記決定機能は、前記評価結果比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。決定方法は、後述する「6−4.スクリーニング方法」の記載に準ずる。
本態様では、上記スクリーニング装置2を備えたシステム110(図5および図6)によって、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行うことができる。
図7は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2の機能を説明するためのブロック図である。スクリーニング装置2は、第1の評価結果取得部21と、第2の評価結果取得部22と、評価結果比較部23と、候補物質決定部24とを備える。第2の評価結果取得部22は任意の構成である。これらの機能ブロックは、本発明に係るスクリーニングプログラムを、図2に示すスクリーニング装置2の記録部103またはメモリ102にインストールし、このスクリーニングプログラムをCPU101が実行することにより実現される。これにより、スクリーニング装置2は、後述する「6−4.スクリーニング方法」に記載のスクリーニング方法を実行する。なお、特許請求の範囲に記載の第1の評価結果取得手段、第2の評価結果取得手段、評価結果比較手段および決定手段が、図7に示す第1の評価結果取得部21、第2の評価結果取得部22、評価結果比較部23および候補物質決定部24にそれぞれ対応する。
言い換えると、スクリーニング装置2は、CPU101により下記の演算機能を実行する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置である:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得機能、および
前記第1の評価結果取得機能が取得した評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定機能。
好ましくは、スクリーニング装置2は、さらに、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得機能、および
被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較機能、
をCPU101により実行し、
前記決定機能は、前記評価結果比較機能の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。決定方法は、後述する「6−4.スクリーニング方法」の記載に準ずる。
本態様では、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果M31は、装置5a、5bまたは5cからスクリーニング装置2に取り込まれる。同様に、未処理検体のバイオマーカータンパク質の評価結果M32も、装置5a、5bまたは5cからからスクリーニング装置2に取り込まれる。
なお、これら被験物質処理検体および未処理被検体のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果M31,M32は、ネットワークを介して第三者機関(図示せず)から取り込まれてもよい。
また、第1の評価結果取得部21、第2の評価結果取得部22、評価結果比較部23および候補物質決定部24の各機能ブロックは、単一のCPUで実行されることは必ずしも必要なく、複数のCPUで分散して処理されてもよい。たとえば、第1の評価結果取得部21および第2の評価結果取得部22の機能は第1のコンピュータのCPUにより実行され、評価結果比較部23および候補物質決定部24の機能は別の第2のコンピュータのCPUにより実行される、というような構成であってもよい。
6−3.スクリーニングプログラム
本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2は、以下の図8で説明するステップS21〜S27の処理を行うために、本態様に係るスクリーニングプログラムを、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)で記録部103に予め記録しており、スクリーニング装置2は、記録部103に記録したスクリーニングプログラムを使用して処理を行う。
すなわち、本発明の第2の態様に係るスクリーニングプログラムは、コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラムである:
被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得処理、および
前記第1の評価結果取得処理で取得された評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理。
好ましくは、上記スクリーニングプログラムは、さらに、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得処理、および
被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記評価結果比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。決定方法は、後述する「6−4.スクリーニング方法」の記載に準ずる。
本態様では、図6に示すように、上記スクリーニングプログラムは、CD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体109に記録されており、記録媒体109から、スクリーニング装置2にインストールされる。あるいは、スクリーニング装置2をインターネット(図示せず)と接続し、インターネットを介して上記スクリーニングプログラムのプログラムコードをダウンロードしてもよい。
6−4.スクリーニング方法
本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法を実行する。本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法は、以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法を含む:
(I)被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能を評価する工程、および
(II)前記工程(I)で得られた評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程。
好ましくは、上記スクリーニング方法は、前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の前記評価結果と、被験物質で処理されていない被験体、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果とを比較する工程
をさらに含む。
図8は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング装置2が上記の方法を実行するために行うデータ処理の順序を示すフローチャートである。なお、図7に示す第1の評価結果取得部21、第2の評価結果取得部22および評価結果比較部23により、ステップS21、S22およびS23がそれぞれ実行され、図7に示す候補物質決定部24により、ステップS24〜S27が実行される。
ステップS21では、第1の評価結果取得部21が、被験物質処理検体中のタンパク質の機能の評価結果M31を取得する。
ステップS22では、第2の評価結果取得部22が、未処理検体中のタンパク質の機能の評価結果M32を取得する。
ステップS23では、評価結果比較部23が、ステップS21で得られた被験物質処理検体の評価結果を、ステップS22で得られた未処理検体の評価結果と比較する。当該比較結果は、候補物質決定部24に出力される。
候補物質決定部24は、評価結果比較部23の比較結果に基づいて、有効成分の候補物質を決定する。具体的には、比較結果が「改善している」である場合(ステップS24においてYES)、ステップS25において、候補物質決定部24は、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。
より具体的には、被験物質処理検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の機能が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って活性化する場合、評価結果比較部23は、M31をM32で除した値が、例えば、0.85以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下であれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していると決定し、「改善している」という比較結果を出力する。候補物質決定部24は、前記比較結果が改善している場合に、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。また、被験物質処理検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質の機能が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って抑制される場合、評価結果比較部23は、M31をM32で除した値が、例えば、1.15以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であれば、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善している決定し、「改善している」という比較結果を出力する。評価結果比較部23は、当該被験物質により、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種が改善していないと決定した場合には、「改善していない」という比較結果を出力する。候補物質決定部24は、前記比較結果が改善している場合に、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する。
ステップS26では、候補物質決定部24がステップS25で決定された結果を出力する。本態様では、決定結果を表示部4に表示するとともに、決定結果が、スクリーニング装置2内の記録部103に記録される。なお、決定結果を表示部4に表示する代わりに、インターネットを介して接続された、スクリーニング装置2の外部の例えば第三者機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示してもよい。
また、ステップS24において、比較結果が「改善していない」である場合、ステップS27に移行し、候補物質決定部24は、被験物質は有効成分ではないと決定する。この場合、被験物質が有効成分ではない旨を表示部4に表示してもよい。
7.スクリーニング3
さらに本発明は、第3のスクリーニング方法を含む。本態様は、被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAを検出する検出工程(A)を含む心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法である。バイオマーカータンパク質の検出は、例えば上記「1.用語の説明」に記載の「抗バイオマーカー抗体」を用いて、ウエスタンブロッティング法、ELISA法、等のタンパク質の公知の検出方法によって行うことができる。バイオマーカータンパク質の検出は、例えば上記「1.用語の説明」に記載の「バイオマーカー mRNA検出核酸」を用いて、マイクロアレイ法、RT−PCR等の公知の方法によって行うことができる。
検出の結果は、目視で取得してもよく、吸光度、蛍光強度、発光強度として取得してもよい。
本態様は、前記検出工程で得られた結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程(B)を含んでいてもよい。本工程において、例えば、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って増加するタンパク質である場合には、被験物質処理検体においてバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが検出されない、または検出されても著しく少ないという結果が得られた場合に、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。また検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質が心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って減少するタンパク質である場合には、被験物質処理検体においてバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが未処理献体の対応するバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAよりも多く検出された場合に、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。
さらに、本態様は、被験物質処理検体におけるバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAの検出結果を未処理検体における対応する検出結果と比較して、被験物質が有効成分の候補物質であると決定してもよい。より具体的には、前記工程(A)と工程(B)の間に、前記工程(A)で取得された被験物質処理検体の前記検出結果と、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAの検出結果とを比較する比較工程を含んでいてもよい。例えば、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って上昇する場合、未処理検体においては前記タンパク質および/またはmRNAが検出されており、被験物質処理検体においては対応する前記タンパク質および/またはmRNAが検出されないか減少していれば、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。また、検体が、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を患っている被験体から採取されたものであって、バイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAが、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の罹患に伴って低下する場合、被験物質処理検体の前記タンパク質および/またはmRNAが未処理献体のバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAよりも多く検出されれば、当該被験物質が有効成分の候補物質であると決定することができる。被験物質処理検体におけるバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAの検出結果と未処理検体における対応する検出結果と比較において、両者の差は、目視で検出できる程度であってもよい。
本態様は、前記工程(A)の前に、(a)被験体、被験組織または被験細胞に、被験物質を投与する投与工程、(b)前記工程(a)で被験物質を投与された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程、および(c)前記工程(b)で得られた検体からタンパク質またはmRNAを回収する工程を含んでいてもよい。
8.バイオマーカー
本発明は、バイオマーカータンパク質および/または、バイオマーカータンパク質のmRNAを、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするためのバイオマーカーとして使用する方法に関する。ここで、「バイオマーカー」の定義は、上記「1.用語の説明」の記載にしたがう。
これらのバイオマーカーは、各検体に含まれる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定し解釈されるものではない
1.心筋梗塞モデル
1−1.心筋梗塞モデルマウスの作製および臓器摘出・血液採取
8〜12週齢のオスICRマウスを2〜2.5%のイソフルラン(Abbott Japan, Wako Japan)で麻酔し、20-gaugeの静脈用カテーテルで気管挿管した。人工呼吸はvolume-controlled respirator (Harvard Apparatus)で1サイクル200μLになるように設定し、1分間に110サイクルで行った。マウスの毛を脱毛剤で除いた後に開胸し、左心耳の1〜2mm下の左冠動脈を8-0ナイロン縫合糸で縛り、閉塞は左心室壁の色の変化(青白くなる)で確認した。切り開いた肋骨と肋骨の間は5-0シルク糸で縫合し、皮膚は9 mm Autoclipにて縫合した。手術後に37℃に設定したホットプレートに置き30分間覚醒を待った。Sham手術マウスは左冠動脈の下に縫合糸を通しただけで縛らず、その他はすべて同じ作業を行った。その後心機能は心エコー測定にてモニタリングし、心筋梗塞後1時間、6時間、1日、7日、8週間後に心臓、脳、腎臓、脂肪組織、脾臓、肝臓、肺、精巣、筋肉、膵臓、胸腺、骨髄、耳(軟骨部分を含まない皮膚、以下同じ)といった組織を摘出して液体窒素で速やかに凍結後-80℃にて保存した。また心筋梗塞後1日、7日、8週間に尾静脈よりヘパリンリチウム処理済み微量採血管(テルモ株式会社)で採血を行った。採取した血液はノボ・ヘパリン(持田製薬株式会社)でリンスした1.5 mLチューブに移して15,000 rpm 5分間遠心し、上澄み(血漿)を分離し-80℃にて保存した。臓器摘出用のマウスと血液採取用のマウスは別に用意した。
1−2.心エコー測定
上記心筋梗塞モデルマウスが、適切に作製されていることを心エコーを用いて評価した。
心エコー測定はToshiba Diagnostic Ultrasound System Machin (Aplio MX SSA-780A)およびVevo2100 Imaging System(プライムテック株式会社)で心筋梗塞後1時間、6時間、1日、7日、2週間、4週間、6週間、8週間のマウスで測定した。マウスは2-2.5%のisofluraneにて麻酔後、心臓の動きをlong-axis 2D-mode viewとM-mode viewにて記録した。long-axis 2D-mode viewで拡張期と収縮期での空腔の直径を測定し、左心室の収縮機能は駆出率(%EF)で評価した。%EF =[(EDv - ESv)/EDv ] × 100
EDv:拡張期末期の直径
ESv:収縮期末期の直径
冠動脈を結紮後、%EF値が低下しなかったマウスは、結紮失敗と見なし実験から排除した。また、結紮後、%EF値が低下したにもかかわらず、後日当該値の再上昇が認められたマウスも、結紮が何らかの原因で解けたと判断し、実験から排除した。
1−3.代謝物質の解析
(1)代謝産物の抽出および誘導化
脂肪、膵臓、精巣ではジルコニア(Zr)ビーズ(5 mm×2個、3 mm×5個、1.5 mm×50個)の入った破砕用チューブ(バイオメディカルサイエンス社)に組織とメタノール(組織100 mgに対して100 μL)を入れ、セルデストロイヤーPS1000(バイオメディカルサイエンス社)で破砕した(4,260 rpm、45秒間を2回)。その後50mg相当の組織に500μLのメタノール(内部標準である2-イソプロピルリンゴ酸を含む)を加え、セルデストロイヤーにて混ぜ、サンプルとして使用した(4,260 rpm、45秒間を1回)。脾臓、肺ではZrビーズ(5 mm×2個、3 mm×5個、1.5 mm×50個)の入った破砕用チューブに組織試料100mgと500μLのメタノール(2-イソプロピルリンゴ酸0.5mg/mL水溶液20μLを含む)を加え、セルデストロイヤーで破砕したものをサンプルとした(4,260 rpm、45秒間を2回)。心臓、脳、腎臓、肝臓、筋肉ではZrビーズ(5 mm×2個、3 mm×5個、1.5 mm×50個)の入った破砕用チューブに組織試料と500μLのメタノール(2-イソプロピルリンゴ酸を含む)を加え、セルデストロイヤーで破砕した(4260rpm、45秒間を2回)。その後15,000 rpmで15分間遠心して上澄みを別のチューブに移した。そのうち50 mg相当をさらに別の新しいチューブに移してそれをサンプルとして使用した。血漿サンプルでは血漿サンプル10μLに500μLのメタノール(2-イソプロピルリンゴ酸を含む)を加えてボルテックスで30秒間撹拌し、10分間室温においたものをサンプルとして使用した。これらのサンプルにMilli-Q水 200μLとクロロホルム500μLを加えて、ボルテックスで30秒間撹拌し、7,100 rpmで5分遠心して水層400μLを新しいチューブに回収した。そこにMilli-Q 200μLとクロロホルム 200μLを加えて、再度ボルテックスで30秒間撹拌し、7,100 rpmで5分間遠心した。その後水層400μLを限外濾過ユニットカップ(Hydrophlic PTFE membrane、0.2μm;ミリポア)に移し10,000 rpmで15分間遠心し、分析するまで-80℃にて保管した。サンプルは測定の前に10mgもしくは10μL相当分のサンプルを減圧乾燥し、20 mg/mL メトキシアミン塩酸塩を含むピリジン溶液50μLを添加し37℃で90分間シェイカーにて振盪した。その後さらにN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)を50μLを添加し37℃で30分間シェイカーにて振盪し、トリメチルシリル化させた。
(2)GCMS測定
GCMSにはGCMS-TQ8030(島津製作所)を、GC用のキャピラリーカラムにはDB-5(30m x 内径0.25 mm x 膜厚1.00 μm) (Agilent Technologies)を用いた。GCの昇温条件は100℃から320℃までを4℃/分の速度で上昇させた。注入口温度は280℃とし、キャリアガスにはヘリウムを用い、39.0cm/秒の速度で流した。電子イオン化のエネルギーは150 eVとし、イオン源温度は200℃で、スキャンするm/zの範囲は45〜600とした。サンプルは1μLをインジェクションし、下記の条件で測定した。
心臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
脳_Split1;25_検出器電圧+0.2kV
腎臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
肝臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
膵臓_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
骨格筋_Split1:25_検出器電圧+0.2kV
脂肪組織_Split1:3_検出器電圧+0.2kV
血漿_Split1:10_検出器電圧+0.1kV
脾臓_Split1:25_検出器電圧+0.2kV
肺_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
精巣_Split1:10_検出器電圧+0.3kV
胸腺_Split1:25_検出器電圧+0.3kV
(3)GCMSデータの解析
データ解析ソフトであるGCMS solution Ver. 4.2とGCMS代謝成分データベース(島津製作所)を用いて検索を行った。代謝物の同定のために、推測された保持時間と少なくとも2つの特異的ピーク(ターゲットイオン、確認イオン)のm/zの存在と比率を確認した。同定された代謝産物はターゲットイオンのピーク面積を計測し、内部標準(2-イソプロピルリンゴ酸)のピーク面積とサンプル量で補正した。
GCMSによって検出された代謝物質に関し、心筋梗塞モデルマウスで検出された代謝物質の上記補正されたピーク面積の値をShamのこの代謝物質に対応する値で除し、その値([MI/Sham]値ともいう)が1より大きいまたは1より小さいものを、図11に示した。なお、1つの代謝物質について複数種のトリメチルシリル化誘導体が存在する代謝物質については、複数種の誘導体合計の値をもとめた。
1−4.RNAの解析
(1)各組織からのRNA抽出(RNAseq用)
凍結保存された各組織をTRIzol Reagent (Life technologies)中で、PT 10-35 6T Polytron homogenizer (KINEATICA) にて組織をホモジナイズした。その後タンパク質を分離するため室温にて5分インキュベート後、1 mL のTRIzolに対して0.2mLのクロロホルムを加え、チューブの蓋をした後に15秒間激しくボルテックスした。撹拌後3分室温でインキュベートし、4℃で15分間12,000 gで遠心し、RNAを含む水相を新しいチューブに回収した。回収した水相に等量の70%エタノールを加え撹拌後、RNeasy mini column (Qiagen)に700μLずつアプライしRNeasy mini kit(Qiagen) 標準プロトコルに従って精製RNAを回収した。回収したRNAは1%アガロース電気泳動およびNanodrop にて品質および濃度の確認を行った。
(2)RNAseqデータの取得
上記試料を使用してRNAseqのデータを以下の手順で取得した。
i.品質検査
下記項目にて、受入サンプルの品質検定を行った。
・Nanodrop(分光光度計)を用いた濃度測定
・Agilent 2100 Bioanalyzerによる濃度測定・品質の確認
ii.サンプル調製
品質検定に合格したTotal RNAについて、500~1000ng のTotal RNAをテンプレートとしてイルミナ社TruSeq RNA Sample Prep Kit を用いて標準プロトコルに従い下記の要領でシーケンス用ライブラリ調製を行った。
(a)Oligo-dT ビーズを用いたpoly(A)-RNAの精製
(b)poly(A)-RNA断片化
(c) 逆転写/2nd鎖cDNA合成
(d) 末端修復・3'A付加
(e) アダプターライゲーション
※アダプターには、各検体識別用のインデックスタグを含む。
(f) PCR増幅
(g) AMPure XP ビーズによる精製・低分子除去(<200bp)
iii.次世代シーケンサによるデータ取得
次世代シーケンサ「Illumina HiSeq」を使用し、Single-Read法 100塩基読み取りにより塩基配列データを取得した。
(3)RNAseqデータの解析とheat map作成
(3−1)次世代シーケンサ出力データの解析
上記出力データについて、下記に挙げる情報処理を実施した。
i.ベースコール:出力された解析生データ(画像データ)より、塩基配列のテキストデータを取得した。
ii.フィルタリング:所定のフィルタリングによるリードデータの選別を行った。
iii.Index配列による振り分け:Index情報による各サンプルデータの振り分けを行った。
(3−2)出力されたデータの2次解析
Illumina Hiseqにて得られたデータファイル(Fastq形式)をローカルサーバーにダウンロードしたGalaxy (https://usegalaxy.org/) 上にアップロードした。その後マウスゲノムマップ情報mm9に各配列をマッピングするためにBowtie2(http://bowtie-bio.sourceforge.net/bowtie2/index.shtml) を用いて解析した。Bowtie2で得られたBAMファイルをCufflinks (http://cole-trapnell-lab.github.io/cufflinks/) にて解析することで遺伝子毎にFPKM(RPKM)を算出した。
(3−3)RNAの分類
心筋梗塞モデルマウスでのRNA発現量(FPKM値)をSham手術マウスの対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値(以下、[MI/Sham]ともいう)が5より大きいRNAおよび0.2より小さかったRNAについて、器官毎のRNA発現の経時的変化を図9に示した。
(4)cDNA合成とリアルタイムPCRによる相対的発現量定量
RNAの解析を行った中で、[MI/Sham]が、より大きい、またはより小さい遺伝子を選択し、リアルタイムPCRで発現を確認した(図10)。
各組織から得られたTotal RNA 1 μgをcDNA合成のテンプレートとしOligo dT20プライマーを用いてSuperscrtipt III First-Strand Synthesis Supermix (Life technologies) の標準プロトコルに従いcDNAを合成した。合成されたcDNAを10倍希釈したTEバッファー(10mM Tris-HCl pH8.0、0.1 mM EDTA)にて20倍希釈した後 、LightCycler 480 SYBR Green I Master (Roche) の標準プロトコルに従い、LightCycler480II (Roche) にてリアルタイムPCRを行いCp値を測定した。各遺伝子で得られたCp値はreference geneとしてβ2−ミクログロブリン(B2m)もしくはMaeaのCp値と比較することでreference geneに対する各遺伝子の相対的発現量を定量し、[MI/Sham]を求めた。リアルタイムPCRで使用したプライマーペアは表1−1〜表1−3の通りである。ただし、Hba-aのプライマーセットではHba-a1とHba-a2をPCRで区別することはできず、Hbb-bのプライマーセットではHbb-b1、Hbb-bsおよびHbb-btをPCRで区別することはできないため、サンプル中にHba-a1とHba-a2、またはHbb-b1、Hbb-bsおよびHbb-btが存在する場合には、発現量はその合計となる。
Figure 2018105726
Figure 2018105726
Figure 2018105726
2.若年性認知症モデル
2−1.若年性認知症モデルマウス、および器官摘出・血液採取
若年性認知症モデルマウスとしてSAMP8/Ta Slc(以下、「SAMP8」ともいう;日本SLC株式会社)の雄を用い、コントロールマウスとしてSAMR1/Ta Slc(以下、「SAMR1」ともいう;日本SLC株式会社)の雄を使用した。SAM系マウスは、竹田俊男(Jpn. J. Hyp., 51, 569-578, 1996)で報告された老化促進モデルマウスである。
SAMP8およびSAMR1のそれぞれの系統のマウスにおいて8週齢(早期)、16週齢(中期)および32週齢(後期)の時点で各10匹につきステップスルーテストを実施し、初期、中期、後期それぞれ6匹ずつマウスを選択した。
(1)ステップスルーテスト
1日目に馴化および獲得試行を行い、2日目に再生試行を行った。各試行はシャトルボックス(室町機械)を用いて行った。シャトルボックスは片側が明室、もう片側が暗室の構造であり、2室の間に開閉式の仕切りがあり、暗室のみ通電を行った。
馴化ではマウスを明室に入れて、その10秒後に仕切りを開けた。マウスが暗室に移動した直後に仕切りを閉め、10秒間そのままにした。通電によるショックは与えなかった。
獲得試行ではマウスを明室に入れて、その10秒後に仕切りを開けた。ここから潜時(暗室に移動するまでの時間)を最長300秒まで測定した。マウスが暗室に移動した場合は速やかに仕切りを閉め。通電によるショック(0.2 mA,3秒)を1回負荷した。300秒経過しても、マウスが暗室に移動しない場合は、強制的に暗室に移動させて仕切りを閉め、通電によるショック(0.2 mA,3秒)を1回負荷した。
再生試行では、マウスを明室に入れて、その10秒後に仕切りを開けた。ここから潜時(暗室に移動するまでの時間)を最長300秒まで測定した。
(2)動物の選択および群分け
それぞれの系統と週齢のマウスについて、ステップスルーテストの再生試行の潜時の平均値を求めた。この平均値に再生試行の潜時が近い順に、それぞれ同じ動物種と週齢のマウスを6匹ずつ(RNA抽出用に3匹、代謝物質抽出用に3匹)選抜した。同じ潜時の場合は、個体識別番号の小さいものを選抜した。
ステップスルーテストの結果を表2に示す。
Figure 2018105726
(3)器官摘出・血液採取
代謝物質を抽出するために器官を採取するマウスについては、はじめに、イソフルラン麻酔下で開腹し、注射筒と注射針を用いて腹部大静脈より採血した。得られた血液は微量採血管(BD Microtainer Tubes with K2E(K2EDTA))に採取した。遠心分離まで氷中にて保管し、遠心分離後、血漿分離した。得られた血漿は、-80℃にて保存した。採血後、各器官を摘出するために、頸椎脱臼によりマウスを安楽死させ、14器官(心臓、脳、腎臓、脂肪組織(精巣上体周囲)、褐色脂肪、脾臓、肝臓、肺、精巣、筋肉、膵臓、胸腺、胃、大腸、を摘出した。摘出した器官は、湿重量を測定した後,液体窒素で速やかに凍結後-80℃にて保存した。
RNAを抽出するために器官を摘出するマウスについては,無麻酔下で頸椎を脱臼させ,安楽死させ、16器官(筋肉、褐色脂肪、心臓、肺、胸腺、腎臓、肝臓、大腸、胃、脂肪組織(精巣上体周囲)、精巣、脾臓、膵臓、脳、耳、骨髄)を摘出し、湿重量を測定した後,液体窒素で速やかに凍結後-80℃にて保存した。
2−2.代謝物質の測定
(1)代謝産物の抽出
脳、脂肪組織(精巣上体周囲)、褐色脂肪、脾臓、膵臓、精巣、胃、大腸、肝臓、腎臓、肺、心臓、骨格筋はジルコニア(Zr)ビーズ(5 mm×5個、10 mm×1個)の入った破砕用チューブ(バイオメディカルサイエンス社)に組織と内部標準物質(Solution ID: 304-1002;HMT)を含む50%アセトニトリル(組織50 mgに対して1500μLの割合)を入れ、シェイクマスターネオV.1.0(バイオメディカルサイエンス社)で破砕したものをサンプルとした(1,500 rpm、60秒間を3回)。
胸腺は、ジルコニア(Zr)ビーズ(5 mm×1個、3 mm×5個)の入った破砕用チューブ(バイオメディカルサイエンス社)に組織と内部標準物質(Solution ID: 304-1002;HMT)を含む50%アセトニトリル(組織50 mgに対して1500μLの割合)を入れ、トミー精工、MS-100Rで破砕した(1,500 rpm、60秒間を3回)。破砕が不十分な場合は、破砕されるまで行った。
破砕後のサンプルを、遠心(2,300 X g 4℃ 5分間)し、上清800μLを限外濾過ユニットカップ(UFC3LCCNB-HMT、5k;HMT)(9,100 X g 4℃ 5時間)を用いて限外濾過した。限外濾過後のサンプルを減圧乾燥し、MiliQ 50μLに再溶解し、測定に供した。
血漿は、サンプル50μLに内部標準物質(Solution ID: 304-1002;HMT)を含むメタノール450μL、クロロホルム500μL、MiliQ 200μLを加えて撹拌し、遠心(2,300 X g 4℃ 5分間)し、上清400μLを限外濾過(UFC3LCCNB-HMT、5k;HMT)(9,100 X g 4℃ 5時間)した。限外濾過後のサンプルを減圧乾燥し、減圧乾燥物をMiliQ 50μLに溶解し、測定に供した。
(2)CE-MS測定
CE-MSには、Agilent CE-TOFMS system(Agilent Technologies 社)をCE用のキャピラリーカラムには、Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cmを用いた。CE-の泳動用バッファーには、カチオン用;Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001;HMT)、アニオン用Anion Buffer Solution (p/n : I3302-1023;HMT)を用いた。
<カチオン側測定条件>
サンプル注入条件を Pressure injection 50 mbar, 10 sec、CEの泳動電圧を27kVで電気泳動を行った。電子イオン化のエネルギーを4,000Vとし、スキャンする範囲を50〜1000とした。サンプルは、5nLをインジェクションした。
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
<アニオン側測定条件>
サンプル注入条件を Pressure injection 50 mbar, 25 sec、CEの泳動電圧を30kVで電気泳動を行った。電子イオン化のエネルギーを3,500Vとし、スキャンする範囲を50〜1000とした。サンプルは、5nLをインジェクションした。
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
(3)CE-MSデータの解析
検出されたピークは、自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.2.16.0.15(慶應義塾大学開発)を用いて、シグナル/ノイズ (S/N) 比が3 以上のピークを自動抽出し、質量電荷比 (m/z)、ピーク面積値、泳動時間 (Migration time: MT)を用いて代謝物の同定を行った。対象項目は、HMT CE-MSアノテーションリストに記載の代謝物質とした。
同定された代謝産物はターゲットイオンのピーク面積を計測し、内部標準のピーク面積とサンプル量で補正した。
SAMP8の代謝産物のピーク面積をSAMR1(コントロール)の代謝産物のピーク面積で除した値([SAMP8/Control]の値)を、図13に示した。
2−3.RNAの解析
(1)各組織からのRNA抽出
凍結保存された各組織をTRIzol Reagent (Life technologies)中で、Cell Destroyer PS1000 (Pro Sense inc) あるいは、 PT 10-35 6T Polytron homogenizer (KINEATICA) にて組織をホモジナイズした。その後タンパク質を分離するため室温にて5分インキュベート後、1 mL のTRIzolに対して0.2mLのクロロホルムを加え、チューブの蓋をした後に15秒間激しくボルテックスした。撹拌後3分室温でインキュベートし、4℃で15分間12,000 gで遠心し、RNAを含む水相を新しいチューブに回収した。回収した水相に等量の70%エタノールを加え撹拌後、RNeasy mini column (Qiagen)に700μLずつアプライしRNeasy mini kit(Qiagen) 標準プロトコルに従って精製RNAを回収した。回収したRNAは1%アガロース電気泳動およびNanodrop にて品質および濃度の確認を行った。
(2)RNAseqデータの取得
上記試料を使用してRNAseqのデータを以下の手順で取得した。
i.品質検査
下記項目にて、受入サンプルの品質検定を行った。
・Agilent 2200 TapeStationSytemによる濃度測定・品質の確認
ii.サンプル調製
品質検定に合格したTotal RNAについて、500~1000ng のTotal RNAをテンプレートとしてイルミナ社TruSeq RNA Sample Prep Kit を用いて標準プロトコルに従い下記の要領でシーケンス用ライブラリ調製を行った。
(a)Oligo-dT ビーズを用いたpoly(A)-RNAの精製
(b)poly(A)-RNA断片化
(c) 逆転写/2nd鎖cDNA合成
(d) 末端修復・3'A付加
(e) アダプターライゲーション
※アダプターには、各検体識別用のインデックスタグを含む。
(f) PCR増幅
(g) AMPure XP ビーズによる精製・低分子除去(<200bp)

iii.次世代シーケンサによるデータ取得
次世代シーケンサ「Illumina HiSeq 4000」を使用し、Paired-End法 100塩基読み取りにより塩基配列データを取得した。
(3)RNAseqデータの解析とheat map作成
(3−1)次世代シーケンサ出力データの解析
上記出力データについて、下記に挙げる情報処理を実施した。
i.ベースコール:出力された解析生データ(画像データ)より、塩基配列のテキストデータを取得した。
ii.フィルタリング:所定のフィルタリングによるリードデータの選別を行った。
iii.Index配列による振り分け:Index情報による各サンプルデータの振り分けを行った。
(3−2)出力されたデータの2次解析
Illumina Hiseqにて得られたデータファイル(Fastq形式)をローカルサーバーにダウンロードしたGalaxy (https://usegalaxy.org/) 上にアップロードした。その後マウスゲノムマップ情報mm10に各配列をマッピングするためにBowtie2(http://bowtie-bio.sourceforge.net/bowtie2/index.shtml) を用いて解析した。Bowtie2で得られたBAMファイルをCufflinks (http://cole-trapnell-lab.github.io/cufflinks/) にて解析することで遺伝子毎にFPKMを算出した。
(3−3)RNAの分類
SAMP8のRNA発現量(FPKM値)をSAMR1(コントロール)の対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値(以下、[SAMP8/Control]ともいう)が5より大きいか0.2より小さかったRNAの器官毎の経時的変化を図12に示した。
3.神経膠腫モデル
3−1.神経膠腫モデルマウス、および器官摘出・血液採取
7週齢の雄NOD/ShiJic-scid JCIマウスを、移植当日までに、バリカンを用いて頭部の毛刈りを無麻酔下で行った。三種混合麻酔液((i)塩酸メデトミジン、商品名:ドミトール、日本全薬工業株式会社、(ii)ミタゾラム、商品名:ドルミカム、アステラス、(iii)酒石酸ブトルファノール、商品名:ベトルファール Meiji Seikaファルマ株式会社)の腹腔内投与により、動物を深麻酔に誘導した。
脳定位固定装置(型番:68012、RWD社)を用いて、動物の頭部を固定し、頭部の皮膚を切開して、頭蓋骨を露出させた。脳定位固定装置を操作して、移植部位の上部に位置する頭蓋骨上に注射針を触れさせて、印を付けた。歯科用ドリルを用いて、頭蓋骨の印の箇所に穴を開けた。
ヒト神経膠芽腫U87-MGの細胞懸濁液(移植細胞濃度:1×108 cells/mL)を充填したマイクロシリンジ(型番:80300、ハミルトン社)を脳定位固定装置に付属のManual Stereotaxic Injector(型番:68606、RWD社)に取り付けた。マイクロシリンジの針の周囲に付着した細胞懸濁液は拭取った。脳定位固定装置の電極ホルダーのダイアルを回し、マイクロシリンジの針先を移植部位の硬膜までゆっくりと下げた。硬膜を破り、脳脊髄液の流出を確認した後、そこからゆっくりと脳実質内3 mmの深さまで刺入した。Manual Stereotaxic Injector のダイアルを回し、2 μLの細胞懸濁液を2分間かけて注入した。逆流がないこと、マイクロシリンジの目盛りが2 μL進んだことを確認した。注入後、5分間保持した。その後、電極ホルダーのダイアルを逆方向にゆっくりと回し、マイクロシリンジの針を2分間かけて抜いた。マイクロシリンジの針を抜いた後、細胞懸濁液が認められる場合、滅菌ガーゼでふき取った。ナイロン製縫合糸で切開した部位を縫合した。塩酸アチパメゾール(商品名:アンチセダン、日本全薬工業(株))を腹腔内に投与して、麻酔から覚醒させて飼育ケージに戻した。なお、媒体移植群(コントロール)は細胞懸濁液の代わりに媒体であるPBSのみを脳内に投与した。
移植3日目および7日目に頚椎脱臼により動物を安楽死させ、16臓器(筋肉、褐色脂肪、心臓、肺、腎臓、肝臓、大腸、胃、脂肪組織(精巣上体周囲)、精巣、脾臓、膵臓、左脳、右脳、耳、骨髄)および血液を採取し、湿重量を測定した後,液体窒素で速やかに凍結後-80℃にて保存した。
3−2.RNAの解析
各組織からのRNA抽出、RNAseqデータの取得、RNAseqデータの解析とheat map作成、出力されたデータの2次解析は、上記2−1.および2−3.にしたがった。
神経膠腫モデルマウスでのRNAの発現量(FPKM値)をコントロール群マウスの対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値(以下、[Glioma/Control]ともいう)が5より大きいか0.2より小さかったRNAの器官毎の経時的変化を図14に示した。
4.ヒト腫瘍患者
4−1.ヒト腫瘍患者、および健常人からの皮膚の採取・血液採取
ヒト検体の採取は、国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター倫理審査委員会の承認を得て実施された臨床研究「肺がんおよび乳がん患者から採取した組織・体液の遺伝子発現解析」の中で実施した。
乳がん患者女性1名、肺がん患者男性1名から血液を採取した。また、乳がん患者女性2名、肺がん患者男性1名から皮膚を採取した。患者は、以下の基準に合致する者を選択した。
(選択基準)
(1) 肺がんおよび乳がんと診断され手術を施行予定の患者
肺がんは非小細胞肺がん臨床病期StageI〜StageIIの患者
乳がんは臨床病期StageI〜StageIIの患者
(2) 本研究計画について十分理解し、本人による同意が可能な患者
(3) 同意取得時における年齢が満20歳以上の患者
(除外基準)
(1) 研究者が被験者として適当でないと判断した患者
(2) HBs抗原陽性者、HBc抗体陽性者、HCV抗体陽性者、HIV感染者、
HTLV-1感染者、Syphilis陽性者
(3) 過去にがんの既往のある患者
(4) 心筋梗塞の既往のある患者
(5) 糖尿病の既往のある患者
(6) 腎臓疾患の既往のある患者
また健常人の女性5名から採取した血液および健常人の女性から採取した胸部の皮膚は、BIOPREDIC international社から入手した。
血液は、Tempus Blood RNA Tube(Thermo Fisher Scientific) に3mLを採取し、採取後直ちにチューブを激しく10秒間振りまぜて血液と安定剤が均一に混合した後-20℃で保管した。
皮膚は、使用時まで−80℃で保管した。
3−2.RNAの解析
各組織からのRNA抽出、RNAseqデータの取得、RNAseqデータの解析とheat map作成、出力されたデータの2次解析は、上記2−1.および2−3.にしたがった。
但しヒトゲノムデータベースとして、hg19を使用した。
乳がん患者の皮膚のRNAの発現量(FPKM値)を健常人の皮膚の対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値を求めた。この値が5より大きいか0.2より小さかったRNAを図15に示した。
肺がん患者の皮膚のRNAの発現量(FPKM値)を健常人の皮膚の対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値を求めた。この値が5より大きいか0.2より小さかったRNAを図16に示した。
なお健常人間でばらつきが大きかったRNAについては、結果から除外した。より具体的には、一方の健常人のFPKMの値ともう一方の健常人のFPKMの値の比をとり、当該比が×0.75〜×1.25に入るRNAについてグループ分けを行った。
FCGR3B、FPR1、HLA-DQA1、LINC00260、LOC286437、MALAT1、MIR1184-1、MIR1247、PRG4、RPL21P44、RPPH1、RPS15AP10、SCARNA4、SNORA31、SNORA77、ZBTB20は、皮膚において乳がんおよび肺がん共に変動が大きかったため、癌のマーカーとなりうると考えられた。
また、乳がん患者の血液のRNAの発現量(FPKM値)を健常人の血液の対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値を求めた。この値が5より大きいか0.2より小さかったRNAを図17に示した。
肺がん患者の血液のRNAの発現量(FPKM値)を健常人の血液の対応するRNAの発現量(FPKM値)で除した値を求めた。この値が5より大きいか0.2より小さかったRNAを図18に示した。
なお健常人間でばらつきが大きかったRNAについては、結果から除外した。より具体的には、健常人間で各RNAのFPKMの値の平均(AV)と標準偏差(SD)を求め、SD値をAV値で除した値が0.25より小さいRNAについてグループ分けを行った。
HNRNPH2、HP、LOC283663、SNORA40、TCN2は、血液において乳がんおよび肺がん共に変動が大きかったため、癌のマーカーとなりうると考えられた。
1,2 スクリーニング装置
3 入力部
4 表示部
5a 装置
5b 装置
5c 装置
6,7 予測装置
11 第1の測定値取得部
12 第2の測定値取得部
13 測定値比較部
14 候補物質決定部
21 第1の評価結果取得部
22 第2の評価結果取得部
23 評価結果比較部
24 候補物質決定部
52 反応/泳動部
53 検出部
61 被験データ取得部
62 パターン類似度算出部
63 予測部
71 病期情報取得部
72 病期情報照合部
73 パターン抽出部
74 予測部
100,110,120,130 システム
101 CPU
102 メモリ
103 記録部
104 バス
105 インタフェース部
109 記録媒体

Claims (30)

  1. 下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
    被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、および
    前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニング装置。
  2. 被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、および
    被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較手段、
    をさらに有し、
    前記決定手段は、前記測定値比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、請求項1に記載のスクリーニング装置。
  3. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項1または2に記載のスクリーニング装置。
  4. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクリーニング装置。
  5. コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
    被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、および
    前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニングプログラム。
  6. さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、および
    被験物質処理検体の前記測定値および未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較処理、
    を前記コンピュータに実施させ、
    前記決定処理では、前記測定値比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、請求項4に記載のスクリーニングプログラム。
  7. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項5または6に記載のスクリーニングプログラム。
  8. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項5〜7のいずれか一項に記載のスクリーニングプログラム。
  9. 以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
    (I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、および
    (II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニング方法。
  10. 前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の測定値および/または前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程
    をさらに含む、請求項9に記載のスクリーニング方法。
  11. 前記工程(I)の前に、
    (i)被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞を、被験物質で処理する工程、
    (ii)前記工程(i)において被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程、および
    (iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質および/またはmRNAを回収する工程
    を含む、請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項9〜11のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  13. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項9〜12のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  14. 以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
    (A)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAを検出する工程、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニング方法。
  15. さらに、(B)前記工程(A)で得られた結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程を含む、請求項14に記載のスクリーニング方法。
  16. 前記工程(A)と工程(B)の間に、前記工程(A)で取得された被験物質処理検体の前記検出結果と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質および/または前記タンパク質のmRNAの検出結果とを比較する比較工程、
    をさらに含む、請求項15に記載のスクリーニング方法。
  17. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項14〜16のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  18. 下記の演算手段を有する、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
    被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得手段、および
    前記第1の評価結果取得手段が取得した評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニング装置。
  19. 被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得手段、および
    被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較手段、
    をさらに有し、
    前記決定手段は、前記評価結果比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、請求項18に記載のスクリーニング装置。
  20. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項18または19に記載のスクリーニング装置。
  21. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項18〜20のいずれか一項に記載のスクリーニング装置。
  22. コンピュータに実行させたときに、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
    被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第1の評価結果取得処理、および
    前記第1の評価結果取得処理で取得された評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニングプログラム。
  23. さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)中のバイオマーカータンパク質の機能の評価結果を取得する第2の評価結果取得処理、および
    被験物質処理検体の前記評価結果および未処理検体の前記評価結果を比較する評価結果比較処理、
    を前記コンピュータに実施させ、
    前記決定処理では、前記評価結果比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、請求項22に記載のスクリーニングプログラム。
  24. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項22または23に記載のスクリーニングプログラム。
  25. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項22〜24のいずれか一項に記載のスクリーニングプログラム。
  26. 以下の工程を含む、心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種の疾患を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
    (I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)のバイオマーカータンパク質の機能を評価する工程、および
    (II)前記工程(I)で得られた評価結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程、であって
    前記疾患が、心筋梗塞であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図9に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、認知症であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図12に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が、腫瘍であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14〜18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    スクリーニング方法。
  27. 前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の前記評価結果と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞から採取された検体(未処理検体)の対応するバイオマーカータンパク質の機能の評価結果とを比較する工程
    をさらに含む、請求項26に記載のスクリーニング方法。
  28. 前記工程(I)の前に、
    (i)被験体(ヒトを除く)、被験組織または被験細胞を、被験物質で処理する工程、および(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された被験体、被験組織または被験細胞から検体を採取する工程
    を含む、請求項26または27に記載のスクリーニング方法。
  29. 前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が神経膠腫であるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図14に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が乳がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図15および17に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質であり、
    前記疾患が腫瘍であり、当該腫瘍が肺がんであるとき、前記バイオマーカータンパク質は、図16および18に記載される遺伝子由来の少なくとも一種のタンパク質である、
    請求項26〜28のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  30. 前記疾患が腫瘍であるとき、前記被験物質処理検体は、前記被験体の皮膚または血液試料である、請求項26〜29のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
JP2016252451A 2016-12-27 2016-12-27 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法 Pending JP2018105726A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016252451A JP2018105726A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016252451A JP2018105726A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法

Related Child Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020201619A Division JP2021051085A (ja) 2020-12-04 2020-12-04 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法
JP2020201622A Division JP2021047198A (ja) 2020-12-04 2020-12-04 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018105726A true JP2018105726A (ja) 2018-07-05

Family

ID=62787076

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016252451A Pending JP2018105726A (ja) 2016-12-27 2016-12-27 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018105726A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110317831A (zh) * 2019-07-18 2019-10-11 上海健康医学院 一种Ube3a基因在Iso诱导的心肌肥大中的作用机制的研究方法
JPWO2021186577A1 (ja) * 2020-03-17 2021-09-23

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009111507A1 (en) * 2008-03-03 2009-09-11 Dyax Corp. Metalloproteinase 12 binding proteins
WO2012105707A1 (en) * 2011-01-31 2012-08-09 Tokyo University Of Science Educational Foundation Administrative Organization Method of treating ischemia/reperfusion injury
JP2012520463A (ja) * 2009-03-10 2012-09-06 デューク ユニバーシティ 冠動脈疾患および心血管イベントのリスクの予測
JP2013510839A (ja) * 2009-11-13 2013-03-28 アイシス イノヴェイション リミテッド 治療方法およびスクリーニング方法
WO2014201254A1 (en) * 2013-06-12 2014-12-18 University Of Washington Through Its Center For Commercialization Methods for maturing cardiomyocytes and uses thereof

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009111507A1 (en) * 2008-03-03 2009-09-11 Dyax Corp. Metalloproteinase 12 binding proteins
JP2011517319A (ja) * 2008-03-03 2011-06-02 ダイアックス コーポレーション メタロプロテアーゼ12結合タンパク質
JP2012520463A (ja) * 2009-03-10 2012-09-06 デューク ユニバーシティ 冠動脈疾患および心血管イベントのリスクの予測
JP2013510839A (ja) * 2009-11-13 2013-03-28 アイシス イノヴェイション リミテッド 治療方法およびスクリーニング方法
WO2012105707A1 (en) * 2011-01-31 2012-08-09 Tokyo University Of Science Educational Foundation Administrative Organization Method of treating ischemia/reperfusion injury
JP2014506871A (ja) * 2011-01-31 2014-03-20 学校法人東京理科大学 虚血/再灌流傷害を治療する方法
WO2014201254A1 (en) * 2013-06-12 2014-12-18 University Of Washington Through Its Center For Commercialization Methods for maturing cardiomyocytes and uses thereof

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
佐藤 匠徳: "心筋梗塞における線維化制御機構の分子レベルでの解明", 上原記念生命科学財団研究報告集, vol. 25, no. 52, JPN6020037571, 2011, pages 1 - 3, ISSN: 0004358345 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110317831A (zh) * 2019-07-18 2019-10-11 上海健康医学院 一种Ube3a基因在Iso诱导的心肌肥大中的作用机制的研究方法
JPWO2021186577A1 (ja) * 2020-03-17 2021-09-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US12091701B2 (en) Screening method for candidate substances for active component to prevent or treat at least one disease selected from the group consisting of renal hypofunction, chronic kidney disease and kidney failure
Wheeler et al. MAFG-driven astrocytes promote CNS inflammation
Kaufmann et al. Identification of early neurodegenerative pathways in progressive multiple sclerosis
US20220076832A1 (en) Prediction device based on inter-organ cross talk system
Wulf-Johansson et al. Localization of microfibrillar-associated protein 4 (MFAP4) in human tissues: clinical evaluation of serum MFAP4 and its association with various cardiovascular conditions
Moulton et al. PTEN deficiency promotes pathological vascular remodeling of human coronary arteries
Kennel et al. Longitudinal profiling of circulating miRNA during cardiac allograft rejection: a proof‐of‐concept study
JP2018105726A (ja) 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法
Méar et al. Spatial Proteomics for Further Exploration of Missing Proteins: A Case Study of the Ovary
JPWO2017159771A1 (ja) 肝細胞増殖因子(hgf)のpdマーカー
JP2021047198A (ja) 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法
JP2021051085A (ja) 心筋梗塞、認知症、および腫瘍からなる群から選択される一種を予防、または治療するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置、スクリーニングプログラム、およびスクリーニング方法
Baugh et al. Integrating endometrial proteomic and single cell transcriptomic pipelines reveals distinct menstrual cycle and endometriosis-associated molecular profiles
JP2013039111A (ja) スプライシングバリアント
Chen et al. An integrated approach for the identification of USF1-centered transcriptional regulatory networks during liver regeneration
JP2007185127A (ja) 中枢神経系原発悪性リンパ腫マーカーおよびその用途
JP6338872B2 (ja) 視神経障害発症リスクの判定方法
JP7445288B2 (ja) 皮膚のバイオマーカー
Sudupe et al. Bone Marrow Spatial Transcriptomics Reveals a Myeloma Cell Architecture with Dysfunctional T-Cell Distribution, Neutrophil Traps, and Inflammatory Signaling
JP2020508055A (ja) バイオマーカーとしてのアプタマー
Liu et al. Discovery of protein biomarkers for venous thromboembolism in non-small cell lung cancer patients through data-independent acquisition mass spectrometry
WO2023120612A1 (ja) Htra3を治療標的とする心筋梗塞、心臓線維化又は心不全の治療又は予防剤
Sudupe et al. Spatial Transcriptomics Reveals a Myeloma Cell Architecture with Dysfunctional T-Cell Distribution, Neutrophil Traps, and Inflammatory Signaling
Shi et al. A genome-wide CRISPR screen identifies WDFY3 as a novel regulator of macrophage efferocytosis
Jiang et al. Non-electrophysiological techniques targeting transient receptor potential (TRP) gene of gastrointestinal tract

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191204

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20200729

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20200729

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200909

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201006

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210406