JP2011515691A - キャピラリー電気泳動によるdnaの分析 - Google Patents

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Abstract

本発明は、核酸の存在について分析されるべき試料を、キャピラリー電気泳動によって分離する、核酸を検出するための方法に関する。試料注入および分離の条件によって非常に高感度な方法が可能になり、これによって、治療またはワクチン接種のためのタンパク質を含む試料中のゲノムDNA汚染物質の存在、質および/またはサイズの決定において、例えば品質管理目的のために適用することができる。一局面において、核酸を含む試料がキャピラリーゲル電気泳動によって分離される、上記核酸の存在および/またはサイズ分布を分析するための方法が提供され、この方法は、i)流体力学的注入によって試料を検出器までのキャピラリーの長さの20〜40%に注入するステップと、ii)上記核酸を分離するステップと、iii)核酸を検出するステップとを含む。

Description

本発明は、核酸の存在について分析されるべき試料をキャピラリー電気泳動によって分離する、核酸を検出するための方法に関する。試料注入および分離の条件によって非常に高感度な方法が可能になり、これによって、特にインフルエンザに対する治療またはワクチン接種を目的とした試料中のゲノムDNA汚染物質の存在および/またはサイズの決定において、例えば品質管理目的のために適用することができる。
インフルエンザは、オルソミクソウイルスの群からのウイルスによって引き起こされる疾患である。この疾患に関与しているのは、主にA型、まれにB型であり、C型は事実上関与しない。
インフルエンザに対する最良の予防策はワクチン接種であり、A型およびB型インフルエンザについて利用可能である。インフルエンザに対するワクチンは、1952年以来公知であった。卵中でウイルスを増殖させる従来のアプローチは、ワクチンの生産のために少なくとも6カ月を必要とする。細胞培養物の使用は、卵の使用よりもいくつかの利点を有する代替アプローチである。
細胞培養物中で調製される生成物について、監督機関が評価する1つのパラメータは、その形質転換能に起因し、残留する宿主細胞DNAの含量である。宿主細胞DNAに関連する危険性を最小化する1つの考え得る方法は、ワクチン中に存在するDNAの量を減少させることである。代わりに、最終生成物中に残存する核酸がその発癌能を失っていると示すことができる。
MDCK細胞(Madin−Darbyイヌ腎臓細胞)と関連して、Canis familiarisのゲノムは、2004年に完全に配列決定された。それはインターネットで利用可能である。Novartis Vaccinesの研究において、特異的機能を有する約25000遺伝子のうち13のみが500bp未満の長さを有することが示された。これらの13の遺伝子のどれもが、任意の発癌能を有することが見出されなかった。
この知見によって、核酸の存在およびサイズ分布について、核酸を潜在的に含む試料(ワクチンなど)の分析のための高感度な方法を開発する必要性が明らかになった。
ワクチン調製の工程の間に核酸の量およびサイズ分布を評価するために、異なる工程段階からの試料が分析され得る。このことは、これらの工程中の試料が、それらの化学組成において互いに異なるというさらなる困難をもたらす。含有されるDNAの濃度について非常に大きな差異があり、これは3桁までの差異のこともある。したがって、分析のための方法の開発は、やりがいのある課題である。
核酸の絶対濃度の定量化は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、280nmおよび260nmでの光学密度の光度検出によって、試料の核酸濃度およびタンパク質含量の両方について結論を出すことが可能となる。蛍光色素をベースとする試験はより感度がよい。例えば、PicoGreen(登録商標)は、約312pg/ml未満のdsDNA検出限界を有する。しかし、この試験は、試料中の不純物に対して非常に感度が高く、その結果は高程度の変動を有する。Threshold System(登録商標)試験によって、6.2〜400pg/mlの濃度でDNAを定量化することが可能となる。しかし、これらの試験は、なんら定性的情報を提供しない。
ゲノムDNAなどの核酸の定性分析のために、従来のアガローススラブゲル電気泳動が最も頻繁に使用される。したがって、下記の実施例において詳細に記載するように、インフルエンザワクチン生産からの試料を、アガロースゲル電気泳動によって分析することが最初に試みられた。最初の精製ステップからの試料中では、この方法によってDNAを検出することができた一方で、終わりに近いステップからの試料中、および最終生成物中の濃度は低すぎて分析できなかった。同様に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動はこの試料の分析に適していないことが見出された。
キャピラリーゲル電気泳動は、オリゴヌクレオチドまたはDNAなどの広範囲の物質の分析のために使用できることは公知である[非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3]。この方法は、高性能、高感度であり、迅速に行うことができる。
C. Heller、Electrophoresis(2001年)629巻、2号 Menzingerら、Analysis of agrochemicals by capillary electrophoresis、J. Chromatogr. A(2000年)891巻、45頁 Mitchelsonら、Capillary electrophoresis of nucleic acids、II巻、Practical applications of capillary electrophoresis、Humana Press Totowa、New Jersey、2001年
驚いたことに、本発明者らは、キャピラリーゲル電気泳動を適合させて、ワクチン生産の様々なステップの間に、核酸、特にDNAの分析のための、高感度で信頼性のある試験を実現できることを見出した。結果として生まれた方法は、従来技術における必要性を満たし、本発明の背後にある問題を解決する。
本発明者らは、試料中の核酸の存在および/またはサイズ分布を分析する方法を最初に開発し、ここで試料は、キャピラリーゲル電気泳動によって分離し、この方法は、
a)約7〜約35kPaで2〜10秒間、好ましくは約20または21kPaで約5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事前注入、
b)5〜15kVで10〜60秒間、好ましくは約10kVで約30秒間の試料の動電学的注入、
c)約3〜14kPaで2〜10秒間、好ましくは約7kPaで約5秒間の水による流体力学的事後注入、
d)200〜275V/cm、好ましくは225〜250V/cmでの分離、
e)核酸の検出
を含む。
この方法の信頼性および堅調性を改善するために、ステップa、bおよび/またはcの後に、キャピラリー末端を水と接触させることによって洗浄ステップを行うことが推奨される。
この方法は、DNAの存在および/またはサイズ分布について分析されるべき試料を、キャピラリーゲル電気泳動によって分離するとき、最適な感度および信頼性を示し、この方法は、
a)約21kPaで5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事前注入、
b)10kVで90秒間の試料の動電学的注入、
c)約7kPaで5秒間の水による流体力学的事後注入、
d)250V/cmでの分離、
e)レーザー誘起蛍光法による核酸の検出
を含み、分離緩衝液は、EnhanCE色素などのインターカレート色素を含み、内部標準物質およびフルオレセイン溶液を、ステップaとbとの間に、一緒にまたは別々に約21kPaで5秒間注入し、洗浄ステップは、内部標準物質の注入ステップの後、ステップbの後、および/またはステップcの後に行う。
流体力学的注入は、キャピラリーの入口で静水圧などの圧力を加えることによって、またはキャピラリーの出口で真空圧もしくは陰圧を生じさせることによって行うことができる。通常試料は、試料バイアルとキャピラリー末端との間の差圧を生じさせることによって充填され、試料バイアルにおいて圧力を上げる。好ましくは、キャピラリーの他の末端をまた、液体、例えば、緩衝液または水に浸す。静水圧(重力の影響)による注入のために、キャピラリーの入口がある試料バイアルをある高さまで上げてもよい。緩衝液のレベルと試料のレベルとの差異、および試料の密度は、充填に影響を及ぼす。実際に、圧力と注入時間との積を、ゆっくりした圧力の上昇および下降による試料の注入された量の計算に使用する。約7kPaは、約1psiに相当すると理解される。
動電学的注入は、キャピラリー中の電場によって生じる電気泳動および電気浸透移動に基づいている。キャピラリーの入口が試料バイアル中に延びており、電圧を数秒間印加するとき、帯電した試料成分がバイアル中に移動する。注入された試料成分の濃度は、注入時間または電圧を変化させることによって変動することがある。したがって、本発明との関連において、これらは適切な量の試料の注入を達成するために変動することがある。注入された試料の量はまた、キャピラリー中の電気浸透流および試料成分の移動度に左右される。
現況技術において、動電学的注入によって分析物の濃縮がもたらされ、したがって高感度での試料の分析のために使用することができることは公知である(Krivacsyら、Journal of Chromatography A、834巻(1999年)21〜44頁;Butlerら、J. Chromatogr. B、658巻(1994年)271〜280頁)。しかし、本発明の状況において、本発明者らは驚いたことに、DNAのCGE分析のために、流体力学的注入を使用して、さらにより高感度を得られることを見出した。予想外に、キャピラリーの有効長(検出器への長さ)の約20〜40%における、キャピラリーへの試料の通常ではない注入、対応する分離緩衝液の長さの減少は、優れた結果をもたらした。この方法の信頼性および感度は、前の方法と比較して改善された。
したがって、本発明は、核酸の存在および/またはサイズ分布を分析する方法を提供し、ここでは核酸を含む試料を、キャピラリーゲル電気泳動によって分離し、この方法は、
i)流体力学的注入によって試料を検出器までのキャピラリーの長さの20〜40%に注入するステップと、
ii)核酸を分離するステップと、
iii)核酸を検出するステップ
とを含む。
好ましくは、核酸は、DNA、好ましくはdsDNAである。本発明の方法は、ゲノムDNAおよび/またはDNAの分解生成物、特にゲノムDNAの分解生成物の分析に特に適している。バクテリアゲノムDNA、プラスミドDNAおよび/またはウイルスDNA、ならびにそれらの分解生成物をまた、調査することができる。この方法は、例えば限定されていないサイズのDNAの分解生成物の存在および/またはサイズ分布を決定するために使用することができる。
本発明者らは、試料が、流体力学的注入によって、検出器までのキャピラリーの長さの20〜40%に注入されたとき、予想外に良好な結果を得ることができることを示した。好ましくは、試料は、検出器までのキャピラリーの長さの約25%〜35%に、最も好ましくは検出器までのキャピラリーの長さの約30%に注入される。現況技術において、試料は通常、検出器までのキャピラリーの長さの0.5%までに注入される(Butlerら、J. Chromatogr. B、658巻(1994年)271〜280頁)。一般に、100万理論段による分離を実現し、5%ピークの広幅化を可能にするには、注入量はキャピラリー容量の0.2%であるべきである[Capillary electrophoresis: theory and practice、Patrick Camilleri;第2版、図解付き;出版社CRC Press、1998年;ISBN084939127X、9780849391279;26頁]。
当業者は、キャピラリーの好ましい長さに試料を注入するための、試料の注入条件を容易に決定することができる。条件は、例えば使用するキャピラリーの長さによって決まる。好ましくは、試料注入のために長時間および低圧を使用する。一実施形態において、試料注入は、3分超間、例えば、14〜35kPaの圧力で約3〜約4.5分間、好ましくは21〜28kPaで約3.5〜約4分間、最も好ましくは約21kPaで約4分間である。これらの条件は、例えば、検出器まで約35〜45cm、例えば約39cmの長さを有するキャピラリーに適している。
好ましい実施形態において、この方法は、ステップi)の前の、好ましくは1〜34kPaで2〜10秒間、さらに好ましくは7kPaで5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事前注入を含む。
好ましい実施形態において、この方法は、ステップi)とii)との間の、好ましくは1〜34kPaで2〜10秒間、さらに好ましくは7kPaで5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事後注入を含む。
好ましくは、この方法は、ステップi)の前の、水によるキャピラリーの流体力学的事前注入、ならびにステップi)とii)との間の、水によるキャピラリーの流体力学的事後注入の両方を含む。
本発明の方法において、例えば、水の事前注入の前および/または試料注入の後に洗浄ステップを行うことによって、汚染物質を減少させることが好ましい。洗浄は、例えば、キャピラリーの両端を水と接触させることによって行うことができる。
本発明の方法において、分離は、好ましくは200〜275V/cmで、さらに好ましくは約200〜約255V/cmで、または約250V/cmで行う。
キャピラリー内の核酸は、所望の適用によって必要とされる感度に到達させる任意の適切な方法によって検出することができる。例えば、蛍光検出は、特にレーザー光が励起のために使用される場合(レーザー誘起蛍光法、LIF)、優れた感度および選択性、低い検出限界(すなわち、高感度)が可能となる。LIFは、UV検出より約2〜100倍高感度であり、非常に高い直線性のシグナルを実現する。極端な場合は、感度は単一分子の検出にまで及ぶことがある。したがって、本発明の方法において、検出はレーザー誘起蛍光法によることが好ましい。
DNAの検出のために、LIF検出は、様々な方法で使用することができる。第1の方法は、より低いUV範囲における天然DNAの自然蛍光に基づいている。その自然環境においてDNAの分析が可能となる。例えば、KrF248nmパルスレーザー、または275nmのUVレーザー、またはこれもしくは同様の範囲の波長の他のレーザーが、励起源として使用される。第2の変形は、間接蛍光を用いる。蛍光キャピラリーゾーン電気泳動システムは、ヌクレオチドまたはDNAの分離の間、レーザー(例えば、325nmのHe−Cdレーザー)で励起する。さらなる方法は、DNA配列決定のために通常使用され、適切なフルオロフォア(fluorophors)による分析物の直接の共有結合標識を必要とする。
最も広範に使用される方法において、核酸中に組み込まれ、分子の長さ、立体構造および電荷を変化させるインターカレート色素が用いられる。色素と核酸との複合体は、励起波長の光の下で強力に蛍光性であり、一方遊離色素はそうではない。この方法のために、488nmのArイオンレーザーが最も適切である。臭化エチジウムは、最も一般的なインターカレート色素である。さらに、単量体または二量体のインターカレーターであることが多いその誘導体が利用可能である。例えば、色素チアゾールオレンジ(TO)は、非常に高感度な検出を可能にする。色素POPO−3、YOYO−3およびYOYO−1は、さらにより感度がよい。好ましい色素は、EnhanCE色素(Beckman Coulter、Fullerton、USA)である。さらなる有用な色素は、WO03/089586に開示されている。
本発明との関連で、キャピラリーゲル電気泳動(electrophoreses)のための分離緩衝液は、核酸を検出するのに適した色素、好ましくはインターカレート色素、最も好ましくはEnhanCE色素を含むことが好ましい。核酸は、したがってカラム上で染色される。使用されるEnhanCE色素の濃度は、好ましくは分離緩衝液1ml当たり約0.25〜1μl、最も好ましくは分離緩衝液1ml当たり約0.5μlである。
本発明の一実施形態において、DNA、好ましくはゲノムDNA、またはその分解生成物の存在について分析されるべき試料は、キャピラリーゲル電気泳動によって分離され、この方法は、
i)約21〜28kPaの圧力で約3〜4.5分間、好ましくは、約28kPaで約4分間の流体力学的注入によって、検出器までのキャピラリーの長さの約30%に試料を注入することと、
ii)約255V/cmで核酸を分離することと、
iii)レーザー誘起蛍光法によって核酸を検出することと
を含み、
ステップi)の前の、好ましくは約7kPaで約5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事前注入をさらに含み、
ステップi)とii)との間の、好ましくは約7kPaで約5秒間の水によるキャピラリーの流体力学的事後注入をさらに含み、
洗浄ステップは、水による事前注入の前および/または試料注入の後に行い、
分離緩衝液は、インターカレート色素、好ましくはEnhanCE色素を、例えば、分離緩衝液1ml当たり0.5μlの濃度で含む。
通常の適用のためのこの方法の信頼性は、相対移動度値の割当てのための内部標準物質が使用される場合、さらに増強することができることが見出された。内部標準物質は、試料と一緒に分離される。それは、試料注入の直前に、好ましくは約7〜35kPaで約1〜20秒間、最も好ましくは約20kPaまたは約21kPaで約10秒間注入し得る。しかし、後述するように、データの分析はまた、移動度の代わりに時間に関連して行うことができる。内部標準物質(ISTD)は、試料からの核酸の検出を妨害する危険性を最小化するように選択すべきである。インフルエンザワクチン生産からの試料の分析との関連で、ISTDは、例えば、ssまたはdsDNAフラグメント、特に10〜300bp、例えば、約20〜約200bpの長さを有するdsDNSフラグメントでよい。ISTDはまた、50bp未満のssDNA、例えば、23bpのssDNAプライマーでよい。一実施形態において、ISTDは、10bpのdsDNAフラグメントである。それは通常第1の核酸試料の前に検出され、したがって核酸の検出の開始を示し、また検出のためのコントロールとしての役割を果たす。
核酸のサイズ分布の分析を促進するために、試料は、対象とする少なくとも1つの限定されたサイズの核酸、例えば、約200bp、約500bpおよび/または約2000bpの長さを有するDNAでスパイクされ得る。このような限定された核酸はまた、内部標準物質中に組み込まれ得る。
加えてまたは代わりに、フルオレセインなどの検出可能な蛍光色素の溶液、例えば、水中で1:10に希釈されたフルオレセインを、水プラグの注入の後および試料注入の前に加えてもよい。例えば、フルオレセイン溶液は、約7〜34kPaで2〜10秒間、好ましくは約21kPaで約5秒間、流体力学的に注入する。最も小さな標準物質ピークの前にこのピークは検出され、これは2つの目的を果たす。第一に、それは標準物質についての移動度マーカーであり、第二に、それはレーザーのコントロールの役割を果たす。
ISTD、および検出可能な蛍光色素の溶液は、一緒にまたは別々にいずれかの順番で注入し得る。各々または両方はまた、試料と混合してもよい。
試料の充填および分離のための最も好ましいパラメータを、中性内側コーティング、好ましくはポリアクリルアミドコーティングを有するフューズドシリカキャピラリー(fused silica capillary)について決定した。キャピラリーは、75μm〜125μm、好ましくは約100μmの内径を有することが好ましい。
最も好ましいのは、Beckman CoulterからのeCAP dsDNAキットと共に利用可能なキャピラリーである(eCap DNAキャピラリー、100μm I.D.477477)。所与のパラメータは、他の中性コーティングされたキャピラリーに移すことができる。他のキャピラリーについて、最適な結果を達成するために、設定を特に所与の範囲内で僅かに適応させる必要があり得る。本発明の方法は、異なるキャピラリーおよびキャピラリーゲル電気泳動システム、例えば、ポリビニルアルコールコーティング(PVA)キャピラリー(Agilent Technologies、品番:G160U−61419)で行うことができることを本発明者らは示した。
キャピラリーの安定性を改善するために、外側にポリイミド(polyimid)コーティングが通常存在する。この方法の信頼性を向上させるために、外側上でキャピラリー両端の2mmまでが、コーティングされていないことが好ましい。さらに、外側のコーティングは、検出部位で除去する必要がある。
分析の前に、キャピラリーは、洗浄し、平衡化し、低いバックグラウンド信号および良質の試料検出を確実にしなくてはならない。
より長いキャピラリー(例えば、60cm、検出器まで50cm)を使用することができるが、検出器への距離が約29〜50cm、例えば、39cmまたは約40cm(例えば、49cmまたは約50cmの全長)である場合、結果の質は影響を受けないことが見出された。キャピラリーの長さを減少させることは、より短い分離時間をもたらす。検出器への長さによって、分離は40分間までまたはそれを超えて行うことができる。分離は約40〜55分間、好ましくは約45分間行うことが好ましく、それは約10bp〜約10000kbのDNAを検出するのに十分であることが示された。必要な場合、検出時間は、対象とするサイズの核酸の検出を可能とするために適応させることができる。
分離の間のシステムの温度は、約17〜30℃、好ましくは約18〜25℃である。最良の結果は、約20℃で見出された。
キャピラリー中に形成される微小気泡による潜在的な問題を除去するために、約14〜69kPa、好ましくは約34kPaの圧力を、分離の間にキャピラリーにかけてもよい。
本発明の方法において好ましくは使用されるキャピラリーゲル電気泳動のためのシステムは、PACE MDQ分子特性解析システムまたはProteomeLab PA800タンパク質特性解析システム(Beckman Coulter)である。
好ましい分離緩衝液は、低粘度の非架橋物理ゲルである、pH8〜9.5、好ましくはpH8.8を有する緩衝液である。分離緩衝液はポリアクリルアミドを含有し、トリス−ホウ酸緩衝液でよい。例えば、Beckman CoulterからのeCAP dsDNAキットにおいて利用可能な分離緩衝液を使用してもよい。
試料は、キャピラリーゲル電気泳動と適合した試料緩衝液中にある。好ましくは、緩衝液は、トリス−HCl緩衝液である(10mM、pH8〜9、最も好ましくは、pH8.8)。
本発明の好ましい実施形態において、分析する試料は、治療もしくはワクチン接種のための医薬組成物、または哺乳動物、特にヒトに投与するための別の組成物である。試料をゲノムDNAおよび/またはその分解生成物の存在について分析することが好ましい。試料は、ワクチン、特にインフルエンザに対するワクチン調製工程からの工程中の試料、または最終生成物であることが最も好ましい。例えば、これらは、下記で定義したB1からB8試料、またはワクチン調製物の一価もしくは三価バルクからの試料のいずれかでよい。試料はまた、トランスジェニック植物由来の食品などの食品からでよく、例えば食品が、相当量のDNA、特に特定のサイズのDNAを含有しないことを示す。
好ましくは、ワクチンは、細胞培養物、例えば、MDCK、PER.C6、ベロ細胞から調製したインフルエンザワクチンである。ワクチンは、全ビリオン、スプリットビリオンまたは精製した表面糖タンパク質を含み得る。
インフルエンザワクチン生産からの試料の分析、または一般に、哺乳動物への投与に適した組成物からの試料の分析との関連で、本発明の方法は、好ましくはDNA、好ましくは宿主細胞からのゲノムDNAおよび/またはその分解生成物の分析に適用される。このようなDNAおよびDNA分解生成物は、限定されていない長さを有し得る。しかし、この方法はまた、他の試料中のDNAの検出、例えば、限定された長さのDNA、遺伝子治療ベクター、RNAまたはssDNA分析のために有利に適用することができる。好ましくは、この方法を行い、試料、例えば、ワクチン調製物が、潜在的に発癌性DNAを含まないことを示す。
本発明の方法を有利に使用して、試料(したがって、試料の由来である調製物、例えば、ワクチン調製物)が発癌能を有さない、すなわち、それが500bp以上、好ましくは、400bp以上、またはより好ましくは、200bp以上の長さを有するDNAフラグメントを含有しないことを示すことができる。
いくつかの試料、特に下記で詳細に説明するように相当量のタンパク質または高濃度の塩を含むものについては、キャピラリー電気泳動のための充填の前に、
i)試料を、好ましくはSDSの存在下でプロテイナーゼKで消化するステップと、
ii)核酸を抽出するステップと
を含む方法で試料を事前処理した場合、有意により良好な結果が得られる。
このような事前処理は、特にタンパク質および/または塩などの汚染物質の存在下で、特に注入方法の質および感度を増強する。核酸抽出をまた使用して試料を濃縮し、この方法の全体的な検出限界を上げることができる。例えば、約10倍の濃度の核酸抽出を使用して、信頼できる結果を得ることができた。抽出後、核酸は好ましくは例えば、上記のようなCGEにおける試料緩衝液として適した緩衝液中に取り込まれる。
好ましくは、ビーズへの接着に基づいた核酸の抽出方法、例えば、磁気ビーズを使用する。MagNA pure(登録商標)システム(Roche)を核酸抽出のために使用してもよい。したがって、本発明は、核酸抽出およびCGEを合わせたDNA分析の方法を提供する。
好ましくは、本発明の方法は、1つのサイズのDNAフラグメントについて、少なくとも100pg/ml、少なくとも80pg/ml、少なくとも50pg/ml、少なくとも10pg/ml、少なくとも9pg/ml、少なくとも5pg/ml、少なくとも2pg/mlまたは少なくとも1pg/mlの感度で、核酸の定性分析を可能にする。1つのサイズ、例えば、200bp、500bpまたは2000bpのDNA約1pgは、試料をスパイクするために使用することができ、よく認識できるスパイクを提供する。検出限界は、好ましくは少なくとも1つのサイズのDNA200fg、さらに好ましくは少なくとも1つのサイズのDNA20fgである。
一態様によれば、本発明は、上記の方法を行うことを含む、核酸のサイズを決定するための方法を提供する。核酸のサイズは、内部もしくは外部サイズ標準物質と、または試料をスパイクするために使用する核酸と比較することによって決定する。一実施形態において、インフルエンザワクチン生産からの試料の分析との関連で、外部サイズ標準物質を使用し、それは各シリーズの試料の前および後に泳動(run)されるべきである。
本発明はまた、上記の方法を行うことを含む、試料中の核酸のサイズ分布を決定するための方法を提供し、核酸のサイズ分布は、内部もしくは外部サイズ標準物質と、または試料をスパイクするために使用する核酸と比較することによって決定する。
好ましくは、この方法において検出されたシグナルを、時間または移動度に対する強度を示す曲線に変換し、それをサイズ標準物質(複数可)の時間もしくは移動度と、または核酸にサイズを割り当てるための試料をスパイクするために使用した核酸と比較する。
試料中の核酸のサイズ分布が重要である場合、それを分析して、対象とするサイズ範囲(例えば、200bp以上、250bp以上、300bp以上、400bp以上、500bp以上)の核酸の割合を決定し得る。この目的のために、曲線下面積を対象とするサイズ範囲(すなわち、対象とするサイズ範囲のエンドポイントの間、例えば、0〜500bp)について計算し、総曲線下面積と比較し、対象とするサイズ範囲中の核酸の割合を得る。
本発明の方法は、その感度、信頼性および堅調性のために、治療またはワクチン接種のためのタンパク質または核酸を含む試料の品質管理のために有利に使用することができる。したがってこの方法は、ワクチン、好ましくはインフルエンザに対するワクチンの調製の後、または調製に平行して好ましくは使用する。
一態様によれば、本発明は、哺乳動物に投与するための組成物を調製する方法を提供し、組成物からの試料を本発明の方法によって分析する。好ましくは、組成物は、医薬組成物、最も好ましくはワクチン、例えば、インフルエンザに対するワクチンである。試料はまた、トランスジェニック植物由来の食品などの食品からでよく、例えば食品が、相当量のDNA、特に特定のサイズのDNAを含有しないことを示す。
本発明はまた、試料、例えば、ワクチン(例えば、インフルエンザワクチン)調製の様々なステップからの試料中の、核酸の存在および/またはサイズ分布を分析する方法を提供し、キャピラリーゲル電気泳動によって試料を分離することと、レーザー誘起蛍光法によって核酸を検出することを含む。好ましくは、核酸は、ゲノムDNAおよび/またはDNAの分解生成物、特にゲノムDNAである。
試料は、調製工程からの工程中の試料または最終生成物、例えば、インフルエンザワクチンの調製からの一価バルクまたは三価バルクでよい。試料を事前処理および/または充填する好ましい方法ならびに分析を行う好ましい方法を有利に用いて、この方法の最適な感度および信頼性を達成することができる。この方法を有利に使用して、試料(例えば、哺乳動物に投与するための組成物、例えば、ワクチン調製物、特に、例えば、細胞培養物由来のインフルエンザ(influenca)ウイルス調製物)が、例えば、200bp以上、250bp以上、300bp以上、400bp以上、500bp以上の長さを有する核酸などの、発癌能を有する核酸を含有しない(または、有害な量を含有しない)ことを示すことができる。したがって、この方法を用いて、試料の発癌能および/または機能性遺伝子の存在を決定することができる。
したがって、本発明はまた、組成物、特にワクチン調製物などの哺乳動物に投与するための組成物の発癌能を決定する方法を提供し、組成物からの試料中のゲノムDNAまたはその分解生成物を、好ましくは本発明の方法によって、キャピラリーゲル電気泳動によって分析する。本発明はまた、本発明の方法によって分析されるワクチンに関する。
本発明およびその好ましい実施形態を導く実験を下記の実施例に記載するが、それは本発明を例示することを意図し、限定することを意図しない。変形形態を作ることができ、他の手段を用いて、または用いずにいくつかの最適化ステップを有利に使用することができることを、当業者であれば容易に認識する。
全ての引用した公開資料は、本明細書において完全に組み込まれている。
図1は、103kPaで30秒間の流体力学的注入を伴うキャピラリーゲル電気泳動による、重度のDNA汚染を有するインフルエンザワクチンの発酵工程中の試料の分析であり、試料は希釈しない。試料B3およびB4についてのスケールは、5分の1小さい。 図2は、7kPaで10秒間の流体力学的注入を伴うキャピラリーゲル電気泳動による、1kbの標準物質と比較したMDCKゲノムDNAの分析。括弧内の数字は、較正ピークの通常の時点を示す。 図3は、6.7/6.8に記載した方法によるB3試料の分析。決定したサイズ範囲を、グラフに示す。 図4は、6.7で記載した本発明の方法による最も低い濃度のDNAを有するB8試料の分析である(Threshhold(登録商標)アッセイによって決定すると<1ng/ml)。決定したサイズ範囲を、グラフに示す。21bpより大きな核酸は検出されない。 図5は、10kVで30秒間の試料注入を伴う、6.7に記載した方法による1kbの標準物質の分析である。 図6は、処理無し(上の曲線)、および16時間のβ−プロプリオラクトン処理の後(下の曲線)の、10bpの標準物質の分析(10μg/mlの開始濃度)、9kVで5秒間の注入である。1668bpのピークはまた、たとえ最小の濃度でも正確なサイズで検出することができる。 図7は、1kbの標準物質および内部標準物質(23塩基、ssDNA)による較正と、移動度によるピークの同定である。 図8は、10の発酵からの8つの工程ステップ中におけるDNA総量の比較である(DNA含量(μg)、工程中のコントロールB1〜B8)。 図9は、ウィンドウへのキャピラリーの異なる長さに対する、試料(194bpフラクションを含有、1μg/ml)の流体力学的注入(HD)の比較であり、x軸:ウィンドウへの長さのプラグ%、y軸:任意の単位(絶対値は32Karatソフトウェアによる)、第1の値:194bpのピークのピーク高、第2の値:194bpのピークのピーク面積。 図10は、例示的試料のCGE分離の比較であり、A:流体力学的注入による検出器ウィンドウまでのキャピラリーの25%充填、およびB:50%充填(3psi/21kPa、A:3.75分、B:7.5分)、各々とも3種の濃度(上−3−:1ng/ml、中央−2−:100pg/ml、下−1−:10pg/ml)。 図10は、例示的試料のCGE分離の比較であり、A:流体力学的注入による検出器ウィンドウまでのキャピラリーの25%充填、およびB:50%充填(3psi/21kPa、A:3.75分、B:7.5分)、各々とも3種の濃度(上−3−:1ng/ml、中央−2−:100pg/ml、下−1−:10pg/ml)。 図11は、インフルエンザ株およびマーカー濃度のCGE分析である。CGE分析(試料は流体力学的に3psi(21kPa)で注入、検出器ウィンドウまでの長さの30%):1−dsDNA1000試験ミックス、Beckman、標準物質100pg/ml。2−ソロモン、3−マレーシア、4−ウィスコンシン。 図12は、スパイクされた試料のCGE分析である。試料を3psi(21kPa)で流体力学的に注入した。検出器ウィンドウまでの長さの30%:1−スパイクされたdsDNA標準物質、2+3−ウイルス株Brisbane、200bp、500bpおよび2000bpの限定されたDNAフラグメントでスパイクされた試料(2回の繰返し)。 図13は、プロテイナーゼKによる事前処理およびDNA抽出がなされ、スパイクされた、MDCK細胞から抽出されたゲノムDNAのCGE分析である。ゲノムDNA(下から上に:1−スパイクされたdsDNA標準物質。2+3−10ng/mlのMDCK DNA、4+5−110ng/mlのMDCK DNA)を、200bp、500bpおよび2000bpの限定されたDNAフラグメントでスパイクした。試料を、3psi(21kPa)、検出器ウィンドウまでの長さの30%で流体力学的に注入した。。
(実施例)
(1.試料)
ワクチンの調製のために、例えば、EMEAに承認された製品Optafluの調製についての、現況技術において公知のプロトコルに従って、MDCK細胞(Madin Darbyイヌ腎臓)を用いることができる。好ましくは、懸濁細胞系MDCK−CDM(Novartis Vaccines)を使用する。
手短に言えば、インフルエンザサブユニットワクチンの調製のために、インフルエンザウイルスを、MDCK−CDM懸濁培養液中で培養し、いくつかのステップを含む工程によって精製する。
ウイルス回収物を遠心分離によって浄化した後、濾過(0.45μm)およびカチオン交換クロマトグラフィーを行う。結合したウイルスを、NaCl溶液を使用してカラムから溶出させ、次いでウイルスを濃縮する。ウイルスは、βプロプリオラクトン(BPL)で不活性化され、これはまた、依然存在する任意のMDCK DNAに重い障害を与える。
サブユニットワクチンの調製のための表面抗原、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)によって可溶化し、ウイルスコアを超遠心分離によって除去する。CTABを除去する。引き続いて、22μmの膜による濾過を行う。これらのステップに続いて、アニオン交換クロマトグラフィーおよびダイアフィルトレーション−限外濾過を行う。濾過によって精製を終了する。それによって、一価バルクまたはモノバルクとも称される抗原濃縮物を得る。微細濾過したモノバルクを、ワクチンの形成のために混合プレートに送る。
工程はまた、下記のダイヤグラムから見ることができ、ここでは各々のステップにおける容量を示し、特定のステップ後に採取された試料を、B1〜B8と示す:
・スピナーボトル中の細胞の培養、および
・ウイルスの培養
・分離および濾過(B1)
・ウイルス回収物を浄化
・カチオン交換クロマトグラフィー(B2)
・第1の濃縮/ダイアフィルトレーション(B3)
・不活性化/加水分解(B4)
・CTAB−処理/超遠心分離
・第1の除菌濾過(0.2μm)(B5)
・吸収体処理(30 l)
・第2の除菌濾過(0.2μm)(B6)
・アニオン交換クロマトグラフィー(B7)
・第2の濃縮/ダイアフィルトレーション(10 l)
・除菌濾過(0.2μm)(B8)
・抗原濃縮物/一価バルク(10 l)
一価バルクを得た後、3種の異なるウイルス株(通常、2種のA株および1種のB株)からの抗原を含む三価バルクを生じさせる。現在のワクチンは、大部分が三価ワクチンである。全ての仕様および安全要求事項が実施済である場合、ワクチンは販売することができる。注目すべきことに、試料B8は、ワクチンの分析および品質管理のために決定的に重要である。
分析のために試料を採取する示した時点は、工程への「ウィンドウ」として使用することができる。明らかに、これらの工程中の試料は、それらの化学組成において互いに異なる。含有されるDNAの濃度に、3桁までになることがある大きな差異がある。
下記において、試料をそれらの組成に関して簡単に特性決定し、分析の潜在的問題を記載する(引用したDNA含量は、10回の連続した分析からの結果である)。
・B1:タンパク質で汚染されたウイルス回収物を浄化。多量のゲノムDNA(40000bpまで)を含む100〜4500ng/mlのDNA含量。タンパク質による妨害の影響が起こり得る。可変の大量のDNAはゲルの過剰充填をもたらし得る。選択した方法のサイズ範囲は、対象とする分子のために適切でなくてはならない。
・B2:CSカラムからの40%ピーク、第1の濃縮ステップ。陽イオン交換によって、DNAは部分的に除去される。50〜750ng/mlのDNA含量、タンパク質および塩で非常に汚染されている(カラムからの溶出)。タンパク質による妨害の影響は起こり得る。
・B3:500kDaの排除サイズを伴うダイアフィルトレーションによる第2の濃縮ステップおよび緩衝液交換。1000〜3000μg/mlのタンパク質濃度。さらに、試料は、結果に影響を与え得る非イオン系界面活性剤であるTween80を5μg/mlまで含み、それはモノバルクまでの工程において除去されない。DNA含量は、工程中の最も高い濃度である500〜5500ng/mlである。B1についてのような障害。
・B4:B3との唯一の差異は、BPLの添加および数時間のインキュベーションである。DNAの含量は50〜1200ng/mlに低下し、その特徴が変化する。B3と同様のタンパク質および界面活性剤含量。
・B5:膜タンパク質をCTABによって可溶化し、超遠心分離を行った。CTAB含量は、800〜3000μg/mlである。界面活性剤およびタンパク質濃度は、B3と同様である。DNA含量は、5〜26ng/mlに減少する。
・B6:CTABを除去し、試料を無菌濾過した。界面活性剤およびタンパク質含量は減少する。DNA含量は、<1〜15ng/mlであり、これは工程の終わりまで変化しない。
・B7:アニオン交換クロマトグラフィーによる最終精製ステップを行った。B6のようなさらなる物質。
・B8:モノバルク。材料をダイアフィルトレーション/限外濾過し、緩衝液を交換し、約2倍のタンパク質濃度の上昇がもたらされた。これは、DNAサイズの分析に関して最も重要な試料である。タンパク質含量は1500μg/mlであり、DNA含量は1ng/ml未満(従来の検出限界より下)から15ng/mlである。
(2.試料の事前処理)
最適な結果を得るために、分析される試料によって、試料の事前処理は変動することがあり、例えば、ステップの順番は変更することができる。
(2.1 プロテイナーゼK)
いくつかの実験(下記を参照されたい)について、試料をプロテイナーゼKで消化した。妨害タンパク質、特にヌクレアーゼは、このステップによって除去される。
20μlの酵素の無希釈ストック溶液(2mg/mlのプロテイナーゼK、カタログ番号19133、Qiagen)を1mlの試料のために使用し、56℃で(水浴、+/−3℃)16〜20時間インキュベートした。
消化がSDSの存在下で行われた場合、より良好な結果が得られたことが見出された。2%SDS溶液を、プロテイナーゼK(2mg/ml)に対して1:1で加えた。50μlのこの混合物を使用して、500μlの試料を消化した。混合後、混合物を56℃で一晩インキュベートした(16〜20時間)。
(2.2 DNA抽出)
DNA抽出は、例えば、試料中に含有されるタンパク質および塩からのDNAの精製のために、ならびに、任意選択で試料の濃縮のために用いることができる。
DNAは、例えば、Wako Pure Chemical Industriesからのヨウ化ナトリウム法のためのキットによって、メーカーの指示に従って抽出することができる。
DNAは代わりに、メーカーの指示に従ってRocheからのMagNA pure(登録商標)システムを使用して抽出した。これは手順の自動化を可能にする。10倍DNA濃度が達成された。
(2.3 濃縮)
DNA抽出によって精製した試料(500μl)を、60分間真空遠心機(Speedvak)を用いて完全に乾燥した。10μlの水中でのペレットの溶解は成功しなかった。溶媒の容積を50μlに上げることは(濃縮係数10)、部分的成功しかもたらさなかった。低DNA含量を有する試料(B5〜B8)からのペレットはよく溶解し、一方では他の試料からのペレットは完全には溶解しなかった。下記の実験においてこのアプローチをさらに用いることはなかった。
次に、膜上での濃縮について、3kDaおよび10kDaの排除サイズを有する親水性セルロース膜を試験した(Microcon YM−3およびYM−10、Millipore)。500μlの最大充填を使用した。流体がフィルター上に残っていないときは遠心分離を停止したが、フィルターユニットを推奨される時間の2倍で最大限に遠心分離した。フィルター上になお流体があった場合、フィルターの遮断が疑われ、そのマトリックスは各々の試料の濃縮のために適さないと考えられた。使用したメンブランフィルターのデッドボリュームは10μlであった。したがって、理論的濃縮係数は50であった。
遠心分離のために、下記のパラメータを使用した。
・3kDaの膜:14000g、100分、25℃
・10kDaの膜:14000g、30分、25℃。
濃縮試料を回収するために、フィルターユニットを逆転し、新しいキャップ中で遠心分離した(1000g、3分、25℃)。
事前処理されていないタンパク質を含む試料は、このアプローチによる濃縮にあまり適していなかったことが見出された。この場合、両方の膜は容易に遮断された。プロテイナーゼKで消化されたのみの試料は、2倍の時間遠心分離しなくてはならない。試料B1およびB2によって、やはり、3kDaの膜は遮断された。より短い時間でより良好な結果が、10kDaの膜で得られた。比較実験(データは示さず)によって、100〜1000bpの対象の範囲において、DNAフラグメントは失われず、おおよそ40倍の濃縮が膜遠心分離によって達成されたことが示された。
膜上の遠心分離によるDNAの濃縮は、本発明の方法において試料の事前処理に使用してもよく、または使用しなくてもよい。
(3.DNAの定量化)
核酸の濃度は、260nmでの吸収に基づいて決定することができる(タンパク質についての280nmでの吸収と比較)。しかし、検出限界は約0,25μg/mlであり、いくつかの他の物質はまた同じ波長で吸収する。
PicoGreen dsDNA定量化試薬(Molecular Probes)は、高感度の蛍光(fluorescenct)色素に基づいており、約312pg/mlのdsDNAの検出限界を有する。この方法はまた、RNAまたはssDNAの検出に適しており、試験は迅速に行われ、かなり安価である。しかし、試料中の汚染物質の濃度によって、結果は30%まで変動する。この試験の結果を使用して、試料中のDNA濃度を推定することができる。
DNAの濃度の決定は、好ましくはThreshold(登録商標)システム[Molecular DevicesからのThreshold(登録商標)Total DNAアッセイキット]によって行われた。
仔ウシ胸腺DNAを標準物質として使用した。ワクチン生産の工程ステップからの全ての試料は、下記の事前処理を受けた。56℃で16〜20時間のプロテイナーゼK−SDS−消化(上記を参照されたい)、および市販のキットによるDNA抽出。コントロール、標準物質および試料は、試料がssDNAとして存在するように、105℃で15〜30分間変性させた。全ての試料を、標識試薬(ビオチン−SSB(一本鎖結合タンパク質)、およびウレアーゼに結合しているDNAへの抗体)と共に37℃で60分間インキュベートした。得られた反応複合体を、特別のフィルターユニット、結合したストレプトアビジンを有するニトロセルロース膜上で濾過した。洗浄ステップ後、フィルター膜を基質溶液で満たされた電位差検出器中に入れ、検出を開始する。ウレアーゼによって触媒される尿素の分解は、表面電位の変化をもたらす。時間の経過に伴う電圧曲線は、試料中のDNAの濃度に比例する。データを動力学的に記録し、標準曲線に基づいて定量化する。
核酸のサイズ分布を決定するための本発明の方法と組み合わせて、例えば、Threshold(登録商標)システムによる絶対DNA含量の決定を使用して、特定のサイズの核酸の量を決定し得る。
(4.スラブゲル中のアガロースゲル電気泳動)
臭化エチジウム(EtBr)を有する既製ゲルカセットを、メーカーのプロトコル(Invitrogen)に従って使用した。DNAのサイズ範囲によって、0.8%、1.2%、2%および4%の濃度を用いた。60Vで38分間分離を行った。1kb+DNAラダー標準物質(Invitrogen)(1:200希釈)を、サイズマーカーとして使用した。
感度を改善するために、ゲルカセットを開け、ゲルをSYBR(登録商標)−Gold(Molecular Probes、Eugene、USA)で30〜45分間染色した。色素の濃縮物を、メーカーの指示(Molecular Probes、product information、改訂2001年)に従ってTE緩衝液中で1:10000に希釈した。希釈した溶液は、5日後に交換した。ゲルを30〜45分間染色した。SYBR(登録商標)−Goldでは、感度はEtBr染色に対して5倍増強した。
最も高い濃度のDNAを有する生成物シリーズを使用した。最も高い濃度を有する2種の試料(B3、B4)を最初に分析した。DNAの濃度についての参照として、Threshold(登録商標)total DNAアッセイを使用した。2種の試料を、事前処理なしで、またはプロテイナーゼKによる消化(DNA抽出を伴うもしくは伴わない)の後でのいずれかで使用した。事前処理を伴うと伴わないとでの有意差を、タンパク質とDNAとの間の相互作用に基づいて観察した(データは示さず)。ほぼ確実に、ゲル中に移動することができないより大きな複合体が形成された。これらは酵素消化によって溶解した。DNA抽出は、この状況において、さらなる利点をもたらさなかった。したがって、事前処理によって達成された改善は、これらの試料について確認することができた。
アッセイは、同じシリーズからの全ての工程中の試料で繰り返した。この実験において、DNA抽出は、化合物を妨害することなく明瞭な結果を得るのに役立ったことが観察された(データは示さず)。プロテイナーゼK処理単独は、B2試料中の高塩濃度、およびB5試料中のCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammoniumbromid))を妨害する存在を除去しなかった。DNA抽出は、全ての妨害物質を除去した。
しかし、後の工程中ステップから採取した試料中または最終生成物中のDNA濃度は、この方法による検出のために十分ではなかったことを分析は示した。感度に関して明らかな結果を得るために、MDCK細胞からのゲノムDNAの希釈系列を分析した(データは示さず)。
10ng/mlの最低DNA濃度が見出された。ワクチン生産の過程で、試料B5から出発してこのようなDNA濃度を既に達成することができるため、これは、DNA分析のより感度のよい方法を確立する必要性を示す。
分析の焦点は、DNAのサイズ分布であった。1.2%アガロースゲルでは、試料のいずれにおいても100bpより小さいフラグメントは検出されなかったことが示された。対照的に、キャピラリー電気泳動(下記を参照されたい)において、特にβプロピオラクトン(Betapropiolacton)による処理後に、100bpより小さい多くのフラグメントが検出された。
スラブゲル中でこのサイズ範囲を確認するために、0.8%アガロースゲルと正反対である4%アガロースゲルを用いた。2種のモノバルク(B8)試料を分析した。0.8%ゲルは、小さなフラグメントの分離には適さず、それは泳動の先端で速度を減じ、誤ったサイズ範囲に現れた。4%ゲルは、小さなフラグメントの検出のためにより適していた。したがって、完全なサイズ範囲の分析のために、2種の濃度のアガロースゲルが必要であった。
(5.ポリアクリルアミドゲル電気泳動)
ポリアクリルアミドは、非常に明瞭かつ鋭いバンドをもたらす透明で非常に薄いゲル(1mm)の生成を可能にする。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動のために、4〜20%の勾配ゲル、TBE(トリス−ホウ酸(Borat)−EDTA緩衝液、Novex)を使用した。分離は200Vで35分間であった。ゲルをSYBR(登録商標)−Goldで染色した。サイズマーカーとして、1kb+標準物質を1:200の希釈で使用した。工程中の試料の完全なシリーズ(B1〜B8)を分析した(データは示さず)。
アガローススラブゲルと比較して、特に100kb未満の対象とするサイズ範囲において、バンドのより良好な解像度が達成された。完全な範囲に亘るフラグメントサイズの分析は、アガロースゲル電気泳動においてより良好であった。
しかし、スラブゲル中のポリアクリルアミドゲル電気泳動はまた、後の工程中の試料において核酸の決定を可能にする感度を達成しない。さらに、この方法は高価であり、有毒なアクリルアミドの取扱いを必要とする。
(6.キャピラリーゲル電気泳動)
(6.1 分離システムの基礎的設定)
P/ACE MDQ分子特性解析システム(Beckman Coulter)を、分離のために使用した。488nmの励起波長および520nmの発光フィルターを有するアルゴンイオンレーザーを、検出のために使用した。このシステムにおいて使用したキャピラリーは、内側が中性コーティングされた100μmの内径を有するフューズドシリカキャピラリーであった(eCAP dsDNAキット、Beckman Coulter)。他の材料をキャピラリーのために使用することができる。中性コーティング(ポリアクリルアミドをベースとした親水性表面)は、電気浸透流(EOF)をほぼ完全に抑制し、分析物とキャピラリーの内面との相互作用を最小化する。両方の作用は、バンドの解像度および再現性を改善する。
キャピラリーの内面を覆うために二重コーティングを使用した。第1のコーティングは、フューズドシリカキャピラリーの遊離シラノール基に結合し、これらを覆った。親水性(hydrophylic)ポリアクリルアミドの第2のコーティングは、疎水的相互作用を減少させた。このコーティングは、約200回以上の分離について安定的であり、安定性の喪失の指標として悪化する分離能力を使用することができる。
キャピラリーの機械的安定性を改善するために、キャピラリーの外面は、約10μmのポリイミドコーティングで覆われており、コーティングはUV光を通さないので、これは検出のために除去される。
最初に使用されたキャピラリーの完全な長さは60cmで、検出器まで50cmであった。最適化の過程で、長さは50cmに、検出器まで約40cm(39cm)に変更した。全ての分離は、逆極性で行った、すなわち検出器をアノード端側とした。分離緩衝液として、約8.8〜8.9のpHを有するトリス−ホウ酸緩衝液を使用した。緩衝液は、非架橋物理ゲルの低粘度の群に属し、これは本発明の方法に最も適している。それは動的細孔構造を有し、熱に対し感度が低い。使用前に、緩衝液を0.45μmシリンジトップフィルターで濾過し、超音波浴液器中で10分間脱気し、泡の形成を防止した。
ゲルマトリックスは、各使用の後に交換した。第1の分離の前に、新しいキャピラリーを、10分間136kPaにて(20psi(ポンド/平方インチ)、1psiは6894.75728034313Paに相当する)新しい緩衝液で調節した。各泳動の前に、キャピラリーを、136kPaにて5分間新しい緩衝液で満たした。各分離の後に、キャピラリーを緩衝液で204kPaにて5分間洗浄した。好ましくは、蒸留水による洗浄ステップを行わなかった。このようにすることで、キャピラリー中の条件がより一定に維持され、キャピラリーの内側コーティングのより長期耐用をもたらしたためである。3.9μlのキャピラリー容量のため、緩衝液の必要量は無視できた。メーカーによって示唆される20℃の分離温度を使用した。
LIF検出器(レーザー誘起蛍光法)のパラメータを、下記のように設定した。
−ダイナミックレンジ:100RFU
−フィルター:ノーマル
−ピーク幅16〜25
−データレート 4Hz。
統合のためのアルゴリズムを「標準的CE」に設定し、移動時間を参照して行った。LIFユニットの較正は、メーカーのプロトコル[P/ACE MDQ LIF Detector Manual、718113−AB、Beckman Coulter、Fullerton、USA]に従って行い、1.1の得られた因子を使用した。
(6.2 最適化)
工程中の試料の1つのシリーズから、最も高いDNA含量を有する2つの試料を使用した(B3およびB4)。上記のように、試料をDNA抽出によって精製した。
最初に、プロトコル[Care and Use instructions for eCAP dsDNS1000、726412−C、Beckman coulter]による標準的方法を使用した。200V/cmの電場強度、10秒に亘り3kPaの流体力学的注入、および20分の全持続時間を使用した。カラムを充填するためのパラメータを、高感度でゲノムDNAを検出することへの適合性に関して研究し、2つの選択した試料のために最適化した。
ワクチン調製物のβプロプリオラクトン処理の作用は、明らかに観察することができた。B3−試料と対照的に、ゲノムDNAについてピークは検出されなかったが、小さなフラグメントへのDNAの分解が観察された(データは示さず)。
より長い期間保存したB3−試料において、小さなフラグメントへのゲノムDNAの分解がまた観察された。例えば、現在の発酵からのB3試料を、4〜8℃で4カ月保存したB3試料(同じウイルス株での発酵から)と比較した。試料中のヌクレアーゼの酵素活性によるものと思われる分解は、中間の長さのDNAフラグメントについて一番強かった(20〜25分)。この作用のために、ヌクレアーゼが試料中に存在し、分解を防止すべき場合、分析のために採取した試料の、プロテイナーゼKによる即時の処理が必要である。低い特異性を有するエンドプロテイナーゼであるプロテイナーゼKは、全てのタンパク質を分解および不活性化する。
この作用は、後の工程中の試料では観察されなかった(B4〜B8)。酵素は下流の工程を切り抜けて存続しないことを支障なく想定することができる。
最良の結果を有するパラメータの組合せを、さらなる分析のために維持した。
完全なシリーズの工程中の試料をDNA抽出によって精製し、分析して、全ての試料中の核酸を決定できるかを確認した(図1)。
これらの予備的実験において、いくつかの問題が起こった。主としては、分析の感度が、全ての試料中の核酸を分析するには十分でなかったことである。さらに、予測されたように、DNAは、鋭く分離したピーク中に現れず、これによってサイズの正確な決定を困難にした。さらに、最初の3つの工程試料に関する完全なDNAの決定において、参照試験としてのThreshold(登録商標)アッセイとの相関関係がなく、これは、B1よりもB3はDNA濃度が約5倍高いことを示した。しかし、図1から見出すことができるように、980ng/mlのDNAを有するB1試料の電気泳動図は、12ng/mlを有するB7試料により類似しているように思われた。
(6.3 較正)
定性分析のために、適切なサイズの標準物質が必要であった。完全な分離を達成することを標的として、10bpマーカー(DNAラダー、カタログ番号10821−051、Invitrogen)、1kbマーカー(eCAP1000dsDNA試験ミックス、φX−174HaeIII、カタログ番号477414、Beckman Coulter)および2kbマーカー(20.000dsDNA試験ミックス、λDNA/HindIIIフラグメント、カタログ番号477483、Beckman Coulter)を比較した。評価のための基準は、2つの隣接するDNAフラクションの基礎ラインの分離、および統合への適合性に関するピークの形態であった。分離工程の期間は、僅かに重要であるだけだった。焦点は、試料中に存在するDNA長の完全な範囲の適切な分離にあった。分離のために選択したマトリックスでは、直線性領域が約1000bpの長さで終わるということがマーカーによる較正によって示された。より下の範囲において、直線性領域は約10bpに及ぶ(データは示さず)。
予想どおりに、区別能は、1000bp超のDNA分子について減少し、この分離マトリックスを、大分子にあまり適さないものとした。MDCKゲノムDNAを、キャピラリー電気泳動によって分析した(図2)。MDCKピークの広幅形態は、DNAが分離されず、サイズによって容易に分析することができないことを示す。しかし、重要なポイントはゲノムDNAの存在を検出できることであり、これは本発明の背後にある問題のために十分であった。選択した条件下で、ゲノムDNAの良好な検出のために35分が必要であった。
量に関して最も正確な結果は、サイズ標準物質および試料が同時注入(co−inject)された場合に得られる。上記の3つの全てのサイズ標準物質を単一の泳動で分離することが可能かについて試験した(データは示さず)。ピークの良好な分離を得た。分析する試料中のDNAの長さが公知である場合、同時注入は分析のための良好な方法であるようである。しかし、試料ピークとマーカーピークとが重なる危険が高いため、この選択肢は、そのサイズが公知でない場合、またはそのサイズがマーカーフラグメントのサイズに相当する場合には好ましくない。
分離の各シリーズの初めと終わりに、標準物質による較正を行ってもよい。本発明の背後にある分析のために、1kbの標準物質(最も小さなバンドは72bp)が好ましく、全てのさらなる実験のために使用した。選択したマトリックス中での分離が10bpの範囲に対して直線的であるため、72bpより下のサイズの決定に外挿を使用することができる。
標準物質を濃縮した形態でストック溶液として保存することが好ましい(例えば、200μg/ml)。希釈物は、毎日新しく調製するべきである。
(6.4 分離の長さおよび電場強度)
上記の実験のために、流体力学的注入の後に分離を行った(7kPaで15秒間、200V/cm、逆極性、検出器まで50cmのキャピラリー長、および20℃の分離温度)。これらの設定によって、1kbの標準物質を約35分で分離することができた。
しかし、250V/cmで、より良好な結果、特により良好な効率の分離およびより短期間の分析が得られたことが見出された。300V/cmなどのより高い値は、分解能を有意に減少させた。したがって、200〜275V/cm、特に225〜265、または240〜260V/cmでの分離が好ましい。下記の実験は、250〜255V/cmで行った。分析の期間に関して、キャピラリーの長さは、検出器まで40cmであることを選択した。この変化は、分離の効率に影響を与えなかった。
これらの手段によって、分析期間は、35分から23分に短縮することができた。
必要とされる時間をさらに減少させるために、分離期間に対する温度の作用を分析した。30℃の分離温度は分離時間を減少させたが、それは271bpおよび281bpのピークの分離を減少させたことを示し得る。したがって、16〜25℃の分離温度が好ましい。
より高い分離温度を選択する場合、パラメータまたはマトリックスのさらなる適応を、行うべきである。
(6.5 分析の質の改善)
数回、試料から汚染物質が持ち越された。さらに、同じ試料の繰り返しの分析からの結果において有意な変動があった。
この問題に対処するために、試料の注入後に、短時間の水による流体力学的注入を導入した。驚いたことに、このステップ単独で、分析の再現性を既に有意に改善した。
キャピラリーと試料バイアルとの各々の接触の前および/または後に、キャピラリー末端を洗浄することによって結果はさらに改善した。洗浄は、好ましくはキャピラリー/電極末端を、水を有するバイアルに短時間浸すことによって行った。汚染を最小化するために、水の入った異なるバイアルを、洗浄および水の流体力学的注入のために使用した。
水は、好ましくは精製水、特に蒸留水または脱イオン水または再蒸留水であった。
さらに、キャピラリーの外側上のコーティングを、例えば、火炎(flaming)によってキャピラリー末端で約2mmの長さで除去した場合、結果は改善した。
(6.6 感度)
特にpg/mlの範囲のDNA濃度を有するモノバルク試料を分析したとき、感度の問題は、アガロースゲル電気泳動の結果、およびキャピラリーゲル電気泳動の最初の結果から明らかであった。
DNAのための色素について豊富な選択の幅を用いることができる(例えば、インターカレート色素)。特にアルゴンレーザー下で蛍光によって検出可能な色素は、本発明の方法における使用に最も適している。臭化エチジウム(ethidiumbromid)またはその誘導体、特にBeckman CoulterからのEnhanCE色素が好ましい。好ましくは、過剰な色素を分離緩衝液に加え、カラム上でDNAを染色する。したがって、注入の前にDNAを色素と接触させる必要はない。比較実験は、この方法が非常に「静かな(quiet)」ベースラインおよび高い選択性をもたらすことから、注入前の染色より優れていることを示した。
色素の使用は、10倍増強されたシグナルをもたらした(データは示さず)。インターカレーションによってDNA分子はより長くなり、それによって分離期間が僅かに増加した。ピークの形成が増強され、これは分子の電荷の変化のためであるようである。僅かに高い一定のバックグラウンド信号が観察された。これらの実験に基づいて、LIF検出に適した臭化エチジウム誘導体をベースとするインターカレート色素、特にEnhanCE(すなわち、分離緩衝液1ml当たり0.1〜5μl、好ましくは0.5〜1μlの色素の濃度のEnhanCE)を分離緩衝液に加えることが好ましい。
緩衝液は、膜(0.22または0.45μm)を通す濾過による粒子の除去、超音波浴液器または真空濃縮機中での10分間の脱気、それに続く色素の添加によって調製した。濾過および脱気処理に対し色素が感受性であるため、色素を添加した後、緩衝液を濾過も脱気もするべきではない。したがって色素は、空気を導入せずによく混合すべきである。最も適切な方法は、ピペットで溶液を注意深く繰返し吸い上げることである。調製物はまた、光に対して感受性である。希釈すると、色素は約10時間後に分解し、これは分離シークエンスの全持続時間を制限する。約40の試料を1シリーズで分離することが技術的に可能である。しかし、泳動毎に40分の全持続時間では、色素は十分に安定的ではない。したがって、1シリーズで15までの試料を試験することが好ましい。
(6.7 試料濃度)
いくつかのモノバルク試料などの非常に低い核酸濃度を有する試料について、この方法の感度は、核酸の決定のためにまだ十分でなかった。
特にDNA抽出後の、膜遠心分離による試料の濃縮によって、DNAの濃度を、有意に増強することができた。DNA抽出後、試料の容積は500μlであった。CEの最小容量は約10μlである。したがって、最大濃縮係数は50であり、これは上で詳細に記載したような膜遠心分離によって使用され得た。しかし、この方法によって得られる変わりやすい容量によって、濃縮係数は正確に決定することができなかった。
感度を改善するための第2の可能性は、試料をキャピラリーにかける前のオンライン濃縮(online concentration)である[Osbournら、On−line preconcentration methods for capillary electrophoresis、Electrophoresis、21巻(2000年)、2768〜2779頁;Quirinoら、Sample stacking of cationic and anionic analytes in capillary electrophoresis、Journal of Chromatography A、902巻(2000年)、119〜135頁]。2つの可能性があり、試料を「電場増幅試料スタッキング」(FASS)で集中させる流体力学的方法、または試料を動電学的注入によって集中させる「電場増幅試料注入」(FASI)である。
FASSのために、試料は、泳動用緩衝液自体より低い電導度の試料緩衝液中、または最も単純な場合、水中で溶解しなくてはならない。次いで、試料を流体力学的に注入する。試料溶液と緩衝液との間の界面において、分子は電圧下で境界面への方向に加速し、したがって、試料は集中させられる。この作用は、試料の注入前の高濃縮緩衝液の短いプラグの事前注入によって増強することがある。
FASIは、低電導度の試料溶液を有する第1のバイアルから、緩衝液で満たされているキャピラリーへの動電学的注入を用いる。理論的には、濃度の高度な差異は、強力な集中をもたらす。
高容量の代替的FASS注入は、[Osbournら、On−line preconcentration methods for capillary electrophoresis, Electrophoresis、21巻(2000年)、2768〜2779頁]に記載されており、これはEOFに基づいている。この方法は、EOFが十分ではなかったため、上記のコーティングされたキャピラリーにおける使用に適していないことが実験的に示された(データは示さず)。EOFの不足を出口側への圧力によって補正することができるかについて試みられた。この方法によって、試料プラグは、電圧下で逆方向に移動することができる。しかし、集中を停止するための最適な時間を見出すための変化する電流のオリエンテーションがなかった。そのため再現性のある結果を得ることが困難であった。
さらなる実験は、EOFを使用しない試料集中に焦点をあてた。
これまでに記載した方法を、水の事前注入を伴なう試料の動電学的に注入に適合させた。この方法の感度はこのステップによって有意に増強できることが見出された。
試料の濃度を最大化するために、動電学的注入による試料集中のオンライン法を、次いで膜濾過による試料の濃縮と合わせた。
下記のプロトコルは、最良の結果を導く条件下で、動電学的試料注入を使用した試料処理および分析について記載する:
インフルエンザワクチンの調製物からの工程中の試料は、プロテイナーゼKで消化し(例えば、56℃で1時間または一晩)、続いてDNA抽出を行った。このように得られた試料(例えば、500μl)を、膜遠心分離によって濃縮した(例えば、10kDaのカットオフ分子量を有するcentricon膜上で)。
10〜25μlの容積を、下記の条件下でキャピラリーゲル電気泳動によって分離した。
・水の流体力学的事前注入、例えば、3kPaで5秒間、
・動電学的試料注入、例えば、10kVで30秒間、
・水による流体力学的(Hydrodynamtic)事後注入、例えば、1kPaで5秒間、
・DNAを染色するための色素(例えば、3μl/mlのEnhanCE)を含む分離緩衝液を用いて分離(例えば、250V/cmで35分間)。
サイズマーカーを、同じ条件下で分離の各シリーズの初めと終わりに泳動した。
上記のように、プロテイナーゼKおよびDNA抽出による試料の処理は、B3試料などの相当量のタンパク質を含む試料、および/または高塩濃度を含む試料のためにのみ必要であった。しかし、試料をより良好に比較するために、全ての試料を同様に処理した。
このプロトコルに従い、ワクチン調製物のいくつかの発酵ステップを完全に分析した。発酵工程の初めにおいて、DNAはゲノムDNAとして存在したが、最後には、それはβプロプリオラクトン処理によって非常にダメージを受けた。したがって、数分に亘るときもある広幅ピークが生じ、それによってサイズを正確に割り当てることが困難となった。
(6.8 結果の分析)
時間または移動度ウィンドウを、上記のように得た結果の分析のために用いた。
時間の代わりに移動度をピークの同定のために使用することが好ましい。このアプローチにおいて、各泳動によって得た結果における小さな変化は、補正することができる。特に、時間依存的ピーク同定において、ポリアクリルアミドネットワークの緩慢な加水分解は、実験から実験へと時間軸上の逆方向への僅かなシフトをもたらした。ピークが規定された時間ウィンドウから離れた場合、ピークを同定することはより困難であった。
移動度は、帯電した粒子がどのように電場中で移動するかを定量的に定義するパラメータである。高い移動度を有する成分は、低い移動度を有する成分よりすばやく移動する。移動度は一定ではなく、分析のために選択されたパラメータによって決まる。与えられる電圧の変化またはマトリックスの遅い加水分解などの、分離のパラメータの変化は、移動度が定義された標準物質を使用することによって補正することができる。1つの事前条件は、緩衝液の使用によって保証される安定的pHである。
移動度による分析は参照点を必要とし、そのために第1の標準物質ピーク(72bp)が選択された。
分析のためのソフトウェアである32Karat(登録商標)は、選択したサイズ範囲に相当する時間ウィンドウの分析を可能にする。このサイズ範囲中のピークを合計し、それらの面積を計算した。したがって、その完全な面積と関連して、特定のサイズ範囲におけるDNAの割合を決定することができた(図3)。
最も低い濃度のDNAを含有するB8試料の分析において(threshold(登録商標)アッセイによって決定すると、<1ng/ml)、18〜21bpのDNAフラグメントを検出することができた。したがって、本発明の方法は、21bpより長い核酸が試料中に含有されないことを示すために使用することができた。
(6.9 感度の限界の決定)
1kbの標準物質の希釈系列を分析し、本発明の方法の感度の限界を決定した。3超の信号雑音比を有するピークのみを、ピークと考えた。100pg/mlの標準物質の最小DNA濃度を決定した。これらの結果は、アガロースゲル電気泳動によって検出されたDNAの最小濃度(これは、単一のDNAフラクションで決定された)と直接比較することはできない。対照的に、1kbの標準物質は11のフラグメントを含有し、その定量的組成は計算しなかった。最も小さなDNAフラグメント(72bp)に関する感度の推定を可能にするために、完全な面積に相当するピークの面積割合(0.69%)を計算した。72bpフラグメントの濃度は約0.7pg/mlであると決定した。
アガロースゲルと比較して、キャピラリーゲル電気泳動に基づいた方法の感度は14000倍高い。注目すべきことに、この感度は、単一の長さのDNAフラグメントの検出に対してのみ適用される。これは、1ng/mlを含む試料中のDNAの検出のために、濃縮ステップが必要であったことを説明する。
感度はDNAフラグメントの長さによって決まる。より長いフラグメントでは、より多くの色素がインターカレートでき、これはより強いシグナルをもたらす(図5)。
(6.10 分析費用の最小化)
分離には直接影響を与えないが、実験およびそれらの費用に大きな影響を与えるいくつかの問題を、研究の過程で調査した。
使用した最も高価な試薬は、分離緩衝液である。メーカー(Beckham Coulter)の標準的プロトコルによって示唆されるように、2mlの保存バイアルを使用した。キャピラリーの温度を制御する間、電極およびキャピラリー末端を浸漬する分離緩衝液を有する保存バイアルは、通常室温である。これは緩衝液の迅速な加水分解をもたらし、その結果緩衝液はそのふるい作用を失う。さらに、色素は2日以上に亘って安定的ではなく、試料から汚染物を持ち越す危険性によっても、緩衝液バイアルを毎日交換することが好ましい。
キャピラリーゲル電気泳動において、200μlのPCRバイアルは、分離緩衝液のための保存バイアルとして有利に使用することができることが見出された。検出された電流に基づいて、緩衝液の最適な能力は、分離緩衝液の保存バイアルの対毎に最大で5回の分離であると決定された。区別能の減少は観察されなかった。費用の例示的な計算によって、かなりの節約を達成できることが示された。したがって、900ユーロの価格の試験キットは、60mlの分離緩衝液を含む。メーカーによって提示された方法によって、約150回の泳動を行うことができる。より小さな保存バイアルの使用によって、同じ量の分離緩衝液による600回の泳動が可能となる。したがってこの小さいが有効な手段によって、費用は4分の1となる。
したがって、200μlのバイアル中に分離緩衝液を含むキャピラリーゲル電気泳動のためのキットを提供する。好ましくは、キットには、適切な色素、例えば、EnhanCE色素、および標準物質、例えば、Beckman Coulterからの1kbの標準物質(72bp〜1,353bpの11フラグメントを含有するHaeIII制限消化φ174DNAからなる)、および任意選択で上記のようなコーティングしたキャピラリーが含まれる。
(6.11 トラブルシューティング)
実験の過程で、散発的な電力障害が観察された。そのような場合、泳動は分析のために使用することができなかった。問題は、分離の間のキャピラリー中の微小気泡の形成に帰着した。分離緩衝液の調製において脱気ステップが省略された場合、作用はより頻繁に現れた。より長い脱気によって、問題の頻度が減少した。分離段階の間にキャピラリーの両端に約34kPaの圧力をかけることによって、問題は効果的に回避された。
粘性ゲルを扱う1つの危険性は、溶媒の蒸発であり、それは、分離緩衝液の保存バイアルの蓋、キャピラリーの外側および電極上に硬い皮をもたらすことがある。保存バイアルの蓋は、キャピラリーのための開口を有する。キャピラリーが引き出されたときに皮がこの場所に形成される場合、これは、次の実験においてキャピラリーの破壊を引き起こすことがある。電極上の堆積は、望ましくないクリーピング電流をもたらし、ピークの分離に悪影響を与えることがある。結果的に、蓋の毎日の交換、ならびに電極およびキャピラリーの外側のクリーニングが推奨される。
実験の過程で、試料はバイアルからの試料の注入によって希釈されたことを観察した(データは示さず)。したがって、同じ試料の複数の測定が計画されている場合、いくつかの試料の一定分量を準備した。
(6.12 βプロプリオラクトン処理の影響)
βプロプリオラクトン(BPL)は、CGEによるDNAの分離に対して何らかの作用を有するかについて調査した。
ワクチンの発酵工程において、BPLは、アルキル化によってDNAを不活性化し、BPL分子はDNAの求核中心と反応し、架橋および変性をもたらす。より長い接触によって、一本鎖切断が現れ、単一の塩基が失われることがある。接触が十分に長い場合、DNAは断片化を受け、その生物活性を喪失する。
実験において用いた3種のサイズマーカー(10bp、1kbおよび2kbの標準物質、上記を参照されたい)を、ワクチン調製のように、BPLで16時間処理した。雑多な低強度のDNAが観察された(図6)。低い濃度におけるピークは、完全に消失した。BPLは、DNAの分離の特徴に影響を与えないことをこの実験は示した。DNAが存在する限り、色素はインターカレートし得、シグナルを引き起こし得る。より短いフラグメントは、より長いフラグメントより急速に分解するようである。
(6.13 内部標準物質による精密度の向上)
分析の精密度は、内部標準物質(ISTD)で改善することができる。外部からの影響を除去するために、適切な物質を各々の試料注入の前に充填することができ、ピーク同定のための参照として用いる。標準物質は、試料と同じクラスの物質に属するべきである。試料への妨害を最小化するために、ISTDは試料ピークの前に現れるべきである。23塩基プライマー(ssDNA)を第1の実験のために選択し、これは強力に検出された。このピークを「−10.000」の移動度に割り当てた。しかし、正確な値は分離のパラメータによって決まり、例えば、異なるソフトウェアの使用によって異なり得る。負の算術符号は、逆極性によって説明される(入口にカソード)。したがって、例示的実験において、サイズ標準物質のピークを、ISTDと比較した相対移動度に割り当てた。この方法では、較正は外部の影響に対して感度が低い。ISTDの濃度は10μg/mlであり、それを21kPaで5秒間流体力学的に注入した(図7)。
(6.14 要約)
本発明の方法によって達成された検出限界は、72bpのフラグメントについて約9pg/mlのdsDNAであった。これは100zmol(10−21mol)に相当する。これは、660g/mlの分子量を有するdsDNAについて1ミリリットル中90210個の分子に相当する。100μlのみを分析のために使用した。30秒に亘る動電学的注入で、バイアル中に存在する全ての分子がキャピラリー中に移動したことが想定される。したがって、このサイズの約9000個のdsDNA分子は、検出のために十分である。
詳細には、一実施形態において、この方法は、下記のステップを含む。
1.試料は、好ましくはそれを採取した直後にプロテイナーゼKで56℃にて1時間消化する。代わりに試料は、全ての関連する試料を一緒に処理できるまで、−20℃またはそれ未満で保存することができる。上記のように、SDSの存在下でプロテイナーゼKによって試料を処理することが好ましい。
2.試料からのDNAを抽出し(例えば、Wakoから市販されているDNA抽出キットによって)、精製水または緩衝液に溶解する。特に濃縮試料について、容積は、DNA抽出前の容積と同一であるべきである。
3.試料は、3kDaまたは好ましくは10kDaの排除サイズを有する膜、例えば、MilliporeからのCentriconフィルターなどの親水性セルロース膜上で濃縮することができる。遠心分離後はフィルター上に流体が見えるべきではない。濃縮のための適切なパラメータは、例えば、14.000g、15分、20℃であり、濃縮物を回収するためには、3.000g、3分、20℃である。
試料、例えば、試料B6〜B8中のタンパク質の量が無視できる場合、ステップ1は必要ないことが比較実験によって示された。ここで、消化を伴う試料および伴わない試料、ならびにDNA抽出を伴う試料および伴わない試料の間で差異は観察されなかった(データは示さず)。塩および他の汚染物質の量が分析を妨害しない場合、ステップ2は必要なく、試料中の核酸の濃度が事前の濃縮なしに検出のために十分である場合、ステップ3は必要ない。しかし、比較されるべき異なる試料が同様に処理されることが好ましい。例えば、モノバルク試料または同種の試料が分析される場合、費用を節約し、試料毎の分析時間が約3時間から約30分に減少するように、プロテイナーゼK消化およびDNA抽出を省略することが推奨される。
4.キャピラリー電気泳動システム、例えば、P/ACE MDQ分子特性解析システム、Beckman Coulterを、下記のように調製する。
−488nmでのレーザー誘起蛍光法による検出、発光520nm。
−キャピラリー:中性コーティング
−キャピラリーサイズ:50.2cm、検出器まで全長約40cm(39cm)、内径100μm
−新しいキャピラリーを、分離緩衝液で、例えば10分間調節する。
当然ながら、同種のシステムおよびキャピラリーを使用することができる。
5.管理ソフトウェアに関して、下記の設定を入力すべきである。
−統合方法「標準的CE」
−移動度に基づくピーク同定
−分離温度20℃、試料の保存温度4℃
−分離温度に到達した後、泳動を開始
−電流を基準とした泳動の管理
−ダイナミックレンジ 100RFU
−フィルター:ノーマル
−ピーク幅16〜25
−データレート 4Hz。
6.分離緩衝液を調製する(例えば、トリス−ホウ酸−ゲル緩衝液、pH8.8〜8.9(例えば、Beckman Coulterから、これは、凍結乾燥物が利用可能であり、4〜8℃での24時間連続混合で溶解し、4〜8℃で30時間安定的である))。必要な量の緩衝液を0.45μmのフィルター膜上で精製し、超音波浴液器中で約10分間脱気する。2mlの分離緩衝液を、洗浄緩衝液として色素なしで保持する。残りに、3μlの色素を1mlの分離緩衝液について加え、混合物を注意深くピペット操作を行うことによってホモジナイズし、空気が入っていないことを保証する。分離緩衝液を200μlのPCRバイアルに分割する。調製物は光に対して感受性であり、10時間保存することができる。
7.標準物質の希釈物を調製する。特に、試料が水中の場合、精製水をこの目的のために使用する。標準物質の濃度は、100ng/mlである。「eCAP1000dsDNA試験ミックスφ174HaeIII」は、サイズマーカーとして推奨される。標準物質は、好ましくは、同じ日に泳動の各シリーズの初めと終わりに、試料と同じ条件下で試験する。
8.下記の一連の事象を、試料または較正泳動のために決定することができる。
−色素を含む分離緩衝液でキャピラリーを平衡化、5分、136kPa
−キャピラリー末端および電極を水に短時間浸すことによる洗浄、0kPa、1秒
−水の流体力学的注入、21kPa、5秒
−ISTDの流体力学的注入、21kPa、5秒
−キャピラリー末端および電極を水に短時間浸すことによる洗浄、0kPa、1秒
−10kV、30秒、逆極性での試料の動電学的注入(入口にカソード)
−キャピラリー末端および電極を水に短時間浸すことによる洗浄、0kPa、1秒
−12kVおよび30分、逆極性での分離(入口にカソード)、好ましくは、5試料終了毎に、分離緩衝液のバイアルを交換する
−データ収集、約30分間
−DNA色素を有さない分離緩衝液によるキャピラリーの洗浄ステップ、204kPa、5分
−キャピラリー末端および電極を水に短時間浸すことによる洗浄、0kPa、1秒
−キャピラリーを水中の開始位置に持っていく
−終了。
9.データを集め、32−Karatソフトウェアで分析した。各々の分析したピークは、ソフトウェアによって認識されるはずである。しかし、必要に応じて、手作業による統合を行ってもよい。好ましくは、ワクチン生産からの工程中の試料を、4つのサイズ範囲のDNAの存在について分析する。したがって、4つの群を加え、これを、較正後に、特定の時間/移動度ウィンドウに割り当てる。これらは、下記のサイズ範囲<200bp、200〜500bp、500〜1000bpおよび>1000bpに相当することがある。ピーク面積の割合を計算する。
10.必要に応じて、リポートを作成する。
この方法によって達成されるデータの再現性を、2つの方法で試験した。ピーク同定のための標準偏差の相対的割合は1.28%であった。領域の統合について、この値は4.04%であった。したがって、この方法は、高度に再現性のある結果をもたらした。
(6.15 誤差の考察)
測定における体系的変更は、各測定で内部標準物質の使用によって補正する(測定に影響を与える条件の全ての変更はまたISTDに影響を与えるが)。
この方法によって達成されるデータの再現性を試験した。
内部標準物質ピークが内部標準物質ピークとして認識されなくてはならない信頼領域は、計算しなくてはならない。このピークの移動時間の相対標準偏差は、10の測定について0.24分であった。0.24分の値は、ソフトウェアのためのISTDについての時間ウィンドウとして定義した。この値を、したがってプログラム設定に導入し、0.5分に丸めた(round)。このソフトウェアに関して、この値はピークが定義した時間の0.25分前または0.25分後に現れなくてはならないことを意味し、そうでなければ、測定は分析されない。ピーク同定のための標準偏差の相対的割合は1.28%であり、これは非常に低かった(これは1000bpのサイズについて+/−12bpの偏差であることを意味し、これは無視できる)。
領域の統合について、標準偏差の相対的割合は、4.04%であった。
したがって、この方法は、高度に再現性のある結果をもたらした。
試料ピークを各々のサイズ範囲と関連させるために、サイズ標準物質で較正することは決定的に重要である。相関係数は較正点の直線性の尺度であり、10bpの標準物質について0.99であると決定された。1kbの標準物質について、それは0.95であった。これらの値は十分である。
(6.16 試料中のDNAのサイズ分布および濃度)
調査した発酵からのサイズ分布の結果を、工程中の試料の5つについて表2として示す。サイズ分布を表2として示す。
サイズ分布の表示は、試料中に存在するDNA濃度を考慮していない。上記のように、B8における99%は、10ng/mlの平均DNA濃度に関連し、一方B1試料において、DNA濃度は4000ng/mlもの高さのことがある。
したがって、DNA濃度は、ワクチン調製の工程の間に数桁減少した。絶対量のDNAが示されるとき、減少はより明らかである(図9)。
この減少に最も有意に寄与した2つの工程ステップを同定することができた。第1はカチオン交換クロマトグラフィーであり、第2は、驚いたことに、CTABによる処理である。この目的のために、CTABによる処理の後に、ダイアフィルトレーションが続くことが好ましい。
BPLによる処理は、前述のように、DNAサイズの減少に最も寄与した。例えばβ−アクチンの増幅をPCRによって試験することにより、試料中のDNAがBPL処理後もまだ生物学的に活性であり得るかを調査した(データは示さず)。これらの試料のいずれにも増幅は観察されず、完全な機能テンプレートが試料中に存在しないことが示された。プローブによるさらなる実験(これらのいくつかは、公知の癌遺伝子に関する)はまた、機能的DNAが発酵工程を切り抜けて存続しないことを示し(データは示さず)、したがって本発明の方法によって得られた結果が確認される。
(6.17 規制によるワクチンについての遵守)
規定上の最高値である100pgのDNA/ワクチン用量に関し、0.5ml用量のワクチン中で、200pg/mlはDNAの最高の許容できる濃度である。DNAは少なくとも約9.0pg/mlの感度で定性的に分析することができるため、本発明は、キャピラリーゲル電気泳動を用いた、DNAによる汚染についての、ワクチンの品質管理の方法を提供する。
(7.流体力学的試料注入によるキャピラリーゲル電気泳動)
(7.1 動電学的試料注入および流体力学的試料注入の比較)
試料DNAの動電学的(EK)注入は、キャピラリーへの試料中DNAの完全な注入をもたらさなかったことが見出された。対照的に、試料の繰り返しのEK注入は、結果を有意に変更せず、すなわち、試料DNAの僅かな部分のみが各注入によって注入され、予想に反して、EK注入はカラム上の試料DNA濃縮をもたらさなかったことは注目すべきであった(データは示さず)。
より多くの量の試料DNAを流体力学的注入によって注入することが可能であるかについて試験した。いくつかの方法を試験した後、キャピラリーの有効長の26%超での試料の流体力学的注入は、動電学的注入よりもより良好な結果をもたらしたことを見出した(図9)。26%でのピーク高は、10000(任意の単位)を超え、一方、上記のような試料の動電学的注入による同じ実験では(90秒、10kV)、10000未満のピーク高のみが、194bpのピークについて達成することができた。
図10は、例示的試料、dsDNA1000試験ミックス(Beckman)のCGE分離の比較を示す(流体力学的注入(3psi/21kPa、3.75分または7.5分)による、検出器ウィンドウまでのキャピラリーの25%および50%充填、各々が3つの濃度(上:1ng/ml、中央:100pg/ml、下:10pg/ml))。25%充填における分離は、良好な結果および許容される分解能を示し、一方50%充填では、ピークの分解は、もはや満足できるものではない。複雑な要因が結果の質に影響を与えるため、これらの結果は予想可能でなかった。
(7.2 本発明のCGE方法によるインフルエンザワクチン生産からの一価バルクの分析)
3種の異なるウイルス株調製物からの一価バルクを、本発明の好ましい方法によって、DNAによる汚染について分析した。試料をプロテイナーゼKで56℃にて処理し、真空遠心機中で5倍に濃縮し、MagNa Pure(登録商標)(Roche)方法(Total NA LV Kit(登録商標)、Roche)によって核酸を抽出し、50μlの試料緩衝液(eCap dsDNA1000キット、Beckman)中に1mlの試料を入れ、それをCGE分析のために使用した(試料を3psi(21kPa)で流体力学的に注入、検出器ウィンドウまでの長さの30%)。
3種のウイルス株および2種のマーカー濃度(dsDNA1000試験ミックス、Beckman、絶対DNA濃度:1ng(上から4番目)および100pg/ml(一番下))の分析結果を、図11に示す。H1/ソロモン(一番上)の調製物は、200bpより長い相当量のDNAを含む。B/マレーシアからの調製物(上から2番目)は、200bpより小さな相当量のDNA、および200bpより長い少量のDNAを含む。H3/ウィスコンシンの調製物(上から3番目)は、200bpより長いDNAを相当量含むことはなかった。この調製物においては非常に短いDNAフラグメントのみが検出可能である(10bpの長さの内部標準物質以外に)。
200bp(高いピーク)、500bpおよび2000bpのDNAフラグメントでスパイクしたインフルエンザ株Brisbaneの一価バルクからの、同じ条件下で得た電気泳動図を図12に示す(上および中央の線:試料の二重の測定、下の線のdsDNA1000試験キット(Beckman100pg/mlもまたスパイクされている)。
(7.3 本発明の方法による細胞DNA(MDCK細胞)の分析)
MDCK細胞の抽出物を調製し、プロテイナーゼK処理およびMagNaPure DNA(登録商標)(Roche)抽出を含めた、本発明の方法によって処理した。限定されていないサイズのDNAを、CGEによって分析した(7.2におけるような条件)(図13)。200bp、500bpおよび2000bpのスパイクは、容易に認識でき、サイズ分布の決定を可能にする。

Claims (21)

  1. 核酸を含む試料がキャピラリーゲル電気泳動によって分離される、前記核酸の存在および/またはサイズ分布を分析するための方法であって、前記方法は、
    i)流体力学的注入によって試料を検出器までのキャピラリーの長さの20〜40%に注入するステップと、
    ii)前記核酸を分離するステップと、
    iii)核酸を検出するステップと
    を含む、方法。
  2. 前記核酸が、DNA、さらに好ましくはゲノムDNAおよび/またはDNAの分解生成物である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試料注入が、14〜35kPaの圧力で3〜4.5分間である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  4. ステップi)の前の、好ましくは1〜34kPaで2〜10秒間の、水による前記キャピラリーの流体力学的事前注入をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  5. ステップi)とii)との間の、好ましくは1〜34kPaで2〜10秒間の、水による前記キャピラリーの流体力学的事後注入をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  6. 前記分離が、200〜275V/cmにおいてである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  7. 前記検出が、レーザー誘起蛍光法による、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  8. 前記試料を、対象とする少なくとも1つの限定されたサイズの核酸でスパイクする、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  9. 分離緩衝液が、前記核酸を検出するのに適した色素、好ましくはEnhanCE色素を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  10. ゲノムDNAまたはその分解生成物の存在について分析されるべき試料を、キャピラリーゲル電気泳動によって分離する、前述の請求項のいずれかに記載の方法であって、前記方法は
    i)21〜28kPaの圧力で3〜4.5分間の流体力学的注入によって、試料を検出器までのキャピラリーの長さの約30%に注入することと、
    ii)255V/cmで前記核酸を分離することと、
    iii)レーザー誘起蛍光法によって核酸を検出することと
    を含み、
    ステップi)の前の、好ましくは7kPaで5秒間の、水による前記キャピラリーの流体力学的事前注入をさらに含み、
    ステップi)とii)との間の、好ましくは7kPaで5秒間の、水による前記キャピラリーの流体力学的事後注入をさらに含み、
    洗浄ステップは、水による前記事前注入の前および/または試料注入の後に、好ましくは前記キャピラリーの両端を水と接触させることによって行い、
    分離緩衝液が、分離緩衝液1ml当たり0.5μlの濃度でインターカレート色素、好ましくはEnhanCE色素を含む、方法。
  11. 1つのサイズの少なくとも200fgのDNAの検出に適した、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  12. 前記キャピラリーが、前記検出器まで39cmの長さを有し、前記分離が40〜55分間、好ましくは約45分間行われる、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  13. 前記分離緩衝液が、pH8〜9.5、好ましくはpH8.8を有する緩衝液であり、最も好ましくは前記pHを有するトリス−ホウ酸緩衝液である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  14. 前記試料が医薬組成物であって、DNAまたはそのフラグメントの存在について分析されるべきであり、前記DNAは好ましくはゲノムDNAであり、前記試料は、機能性遺伝子を含むDNAおよび/もしくは発癌能を有するDNAを含有する、または含有しないことを好ましくは示す、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  15. ●任意選択で、前記試料を、好ましくはSDSの存在下で、プロテイナーゼKで消化するステップと、
    ●核酸を抽出するステップと
    を含む方法によって前記試料が事前処理されている、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
  16. 哺乳動物に投与するための組成物を調製する方法であって、その試料を前述の請求項のいずれかに記載の方法によって分析する方法。
  17. 試料をキャピラリーゲル電気泳動によって分離すること、および核酸をレーザー誘起蛍光法によって検出することを含み、前記核酸が、ゲノムDNAおよび/またはDNAの分解生成物である、前記試料中の核酸の存在および/またはサイズ分布を分析する方法。
  18. 核酸の存在および/またはサイズ分布の分析が、前記試料の発癌能および/または前記試料中の機能性遺伝子の存在を決定するためである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記試料が、ワクチン、好ましくはインフルエンザワクチンの調製物に由来する、請求項17または18に記載の方法。
  20. 前記試料を請求項1から15に記載の方法によって分析する、請求項17から19に記載の方法。
  21. 前述の請求項のいずれかに記載の方法によって分析されるワクチン。
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