JP2023510841A - ウイルスベクター分離、分析、特徴付けおよび定量のためのキャピラリー電気泳動法 - Google Patents

ウイルスベクター分離、分析、特徴付けおよび定量のためのキャピラリー電気泳動法 Download PDF

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Abstract

本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを分析するための方法を提供する。より詳細には、本開示は、全長外因性ポリヌクレオチドを有するか、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、AAVベクターを分離し、特徴づけ、定量するためのキャピラリー電気泳動法に関する。1つの方法では、この分析は、各ウイルスベクターの等電点に基づきウイルスベクターを分離する為に十分な条件下かつ継続時間の間、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルについてのキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を使用する。

Description

関連米国出願
本出願は、2020年1月13日出願の米国仮出願第62/960,282号(その内容全体は、本明細書に参考として)の優先権の利益を主張する。
背景
ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター)は、遺伝子送達のための一般的な分子生物学ツールであり、他の適用の中でも遺伝子治療において有望さを示す。この技術の限界は、ベクター(例えば、AAV)の合成が、代表的には、いくらかのベクターが、標的導入遺伝子のフラグメントのみ(「部分的なベクター(partial vector)」)または全体的に標的導入遺伝子を欠いている(「空のベクター(empty vector)」)を含む、不均一サンプルを生じることである。部分的なベクターおよび空のベクターは、適切なパッケージされたベクター(すなわち、導入遺伝子が完全に被包されたベクター)と標的細胞上のベクター結合部位に関して競合することによって、下流のウイルス形質導入に負の影響を与え得る不純物と考えられる(例えば、「夾雑(contaminant)」ベクター)。さらに、これらの夾雑するベクターは、ウイルスベクター生成物の免疫原性を増大させ得る。
従って、ウイルスベクター研究および開発の間に、これらの夾雑ベクターを同定することは有利である。分析用の超遠心分離、電子顕微鏡検査法、分光光度法およびアニオン交換HPLCを含む、完全なベクターおよび空のベクターを同定する技術は、最小の解像度および感度を提供するに過ぎない(例えば、部分的なベクターを決定することができず、再現性に乏しい)。これらの技術はまた、時間浪費型であり、大きなサンプル容積を必要とする。
本明細書で記載されるのは、完全な、部分的な、および空のウイルスベクターを分離、特徴付け、および定量するための、他の分析技術の欠点を克服する新規なキャピラリー電気泳動技術である。
開示の要旨
本開示は概して、ウイルスベクターを、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいて分離する方法を提供する。一局面において、本開示は、サンプル中のウイルスベクターを分離する方法であって、上記方法は、(a)各ウイルスベクターの等電点(pI)に基づいて、上記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルに対してキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を行う工程;(b)cIEF結果のリードアウトを生成する工程;および(c)上記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程による方法を提供する。上記方法は、上記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして特徴付ける。1つの局面において、上記全長外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスベクターは、上記外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するウイルスベクターまたはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くウイルスベクターに対して代わりのpIを有する。
いくつかの局面において、上記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む。いくつかの局面において、上記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。
いくつかの局面において、上記cIEF結果のリードアウトは、電気泳動図またはcIEFプロセスがリアルタイムで画像化されることを可能にする全カラム画像化検出(whole-column imaging detection)(WCID)技術を使用する分離スキャンである。
いくつかの局面において、上記cIEF方法は、(a)ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填する工程;(b)上記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続する工程;(c)上記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続する工程;および(d)上記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加して、上記チャネルまたはキャピラリーの中にpH勾配を誘導/形成する工程を包含する。ある特定の局面において、上記チャネルまたはキャピラリーは、いくつかの実施形態において、濃度に依存して、2~4μLのウイルスベクターを含むサンプルが装填され(すなわち、完全に満たされ)る。従って、いくつかの例示の実施形態によれば、上記サンプルは、1またはこれより多くのウイルスベクターを含んでいてもよく、ゲルもしくはゲルマトリクス、可溶化剤(例えば、尿素、グリセロールなど)、キャリア両性電解質、アノード安定化剤(anodic stabilizer)、カソード安定化剤(cathodic stabilizer)、およびpIマーカーをさらに含む。
本開示は、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいて、種を分離し、電気泳動図におけるその相当するピークのピーク面積を測定することによってウイルスベクターを定量する方法をさらに提供する。上記方法は、(a)各ウイルスベクターの等電点(pI)に基づいて、上記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルに対してキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を行う工程;(b)cIEF結果のリードアウトを生成する工程;および(c)上記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程を包含し得る。上記方法は、上記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、特徴づける。1つの局面において、上記外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスベクターは、上記外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するウイルスベクターまたはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くウイルスベクターに対して、代替の/異なるpI(低いかまたは高いかのいずれか)を有する。
いくつかの局面において、上記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターまたはITR配列を含む。いくつかの局面において、上記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。
いくつかの局面において、上記cIEF結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである。
いくつかの局面において、上記cIEF法は、(a)ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填する工程;(b)上記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続する工程;(c)上記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続する工程;および(d)上記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加して、上記チャネルまたは上記キャピラリーの中にpH勾配の形成を引きおこす工程を包含する。ある特定の局面において、上記チャネルまたはキャピラリーは、上記サンプルのうちの少なくとも一部を構成する2~4μLのベクター物質が装填される。
別の局面において、本開示は、(a)各ウイルスベクターの電荷不均一性または等電点(pI)に基づいて、上記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルのキャピラリー電気泳動(CE)を行う工程;(b)CE結果のリードアウトを生成する工程;および(c)上記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程によるサンプル中のウイルスベクターを分離する方法を提供する。上記方法は、上記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、特徴づける。
いくつかの局面において、上記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子を含む。いくつかの局面において、上記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。
いくつかの局面において、上記CE結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである。
いくつかの局面において、上記CE法は、(a)ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填する工程;(b)上記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部をアノード端子へと流体接続する工程;(c)上記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部をカソード端子へと流体接続する工程;および(d)上記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加する工程を包含する。上記CE法としては、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、キャピラリー等速電気泳動、ミセル動電キャピラリークロマトグラフィーおよびキャピラリー動電クロマトグラフィーが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記アノード端子は、酸性溶液を含み得る。いくつかの実施形態において、上記カソード端子は、塩基性溶液を含み得る。
本開示は、ウイルスベクターを、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいて定量する方法をさらに提供する。上記方法は、(a)各ウイルスベクターの電荷不均一性または等電点(pI)に基づいて、上記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルのキャピラリー電気泳動(CE)を行う工程;(b)CE結果のリードアウトを生成する工程;および(c)上記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程を包含し得る。上記方法は、上記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、特徴づける。
いくつかの局面において、上記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む。いくつかの局面において、上記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。
いくつかの局面において、上記CE結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである。
いくつかの局面において、上記CE法は、(a)ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填する工程;(b)上記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部をアノード端子へと流体接続する工程;(c)上記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部をカソード端子へと流体接続する工程;および(d)上記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加する工程を包含する。上記CE法としては、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、およびキャピラリーゲル電気泳動(CGE)が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの局面において、上記アノード端子は、酸性溶液を含み得る。いくつかの実施形態において、上記カソード端子は、塩基性溶液を含み得る。
上記の方法を行うシステムがまた、本明細書で開示される。
図1は、完全外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスカプシド、空のウイルスカプシド、および外因性ポリヌクレオチドフラグメントまたは夾雑フラグメントを含むウイルスカプシドの例を図示する。
図2は、ウイルスベクターを分離するシステムの例示的実施形態を図示する。
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態に従うcIEF法の初期機器パラメーターを示す。
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態に従うcIEF法の初期UV検出器パラメーターを示す。
図3Cは、本開示のいくつかの実施形態に従うcIEF法の機器調整パラメーターを示す。
図3Dは、本開示のいくつかの実施形態に従うcIEF法の機器分離パラメーターを示す。
図3Eは、本開示のいくつかの実施形態に従うcIEF法の機器シャットダウンパラメーターを示す。
図4は、空のウイルスカプシドを富化した第1のAAVサンプルおよび完全ウイルスカプシドを富化した第2のAAVサンプルのcIEF分離結果を図示する。
図5Aは、第3のAAVサンプルのcIEF分離結果およびAEX-HPLC分離結果を図示する。
図5Bは、図5Aに示される結果の拡大図である。
図6Aは、空のウイルスカプシドを富化した第4のAAVサンプルおよび完全ウイルスカプシドを富化した第5のAAVサンプルのcIEF分離結果を図示する。
図6Bは、図6Aに示される結果の拡大図である。
図7は、広い範囲および狭い範囲のpH両性電解質の混合物、または広い範囲のpH両性電解質のみを使用する第6のAAVサンプルのcIEF分離結果を図示する。
図8は、第6のAAVサンプルの5回の泳動からのcIEF分離結果を図示する。
図9は、CZE分離結果を図示する。
図10は、CZE分離結果を図示する。
詳細な説明
ウイルスベクターを、それらの外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいて、キャピラリー電気泳動(CE)を使用して分離および/または定量する方法が、本明細書で開示される。「キャピラリー電気泳動(Capillary electrophoresis)」または「CE」とは、大きな分子および小さな分子を、サイズおよび電荷に基づいて、電場におけるそれらの異なる移動速度によって分離する、キャピラリーを使用する関連技術のファミリーをいう。CE技術としては、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、等速電気泳動、ミセル動電キャピラリークロマトグラフィーおよびキャピラリー電気クロマトグラフィーが挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「キャピラリー(capillary)」とは、電気泳動を行うための分離媒体のある容積を支持し得るチャネル、チューブ、または他の構造体に言及する。キャピラリーの外形(geometry)は変動し得、円形、矩形、または四角形の断面を有する構造、チャネル、溝、プレートなどを含み、これらは、当該分野で公知の技術によって製作され得る。本開示のキャピラリーは、例えば、シリカ、溶融シリカ、石英、シリケートベースのガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、リン酸塩ガラス、またはアルミナ含有ガラス、および他のシリカ様物質)のような物質が挙げられるが、これらに限定されない物質から作製され得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、適合され得、任意の概して公知の電気泳動プラットフォーム(例えば、単一のもしくは多数の微小流体チャネルを含む電気泳動デバイス、エッチングされた微小流体キャピラリー、ならびにスラブゲルおよび薄板ゲル電気泳動(thin-plate gel electrophoresis)のような)において使用され得る。
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター(viral vector)」とは、外来の遺伝物質(すなわち、外因性ポリヌクレオチド)を保っているかまたはそれが複製および/もしくは発現され得る別の細胞へと運ぶビヒクルとして使用されるウイルス構築物(例えば、DNA、RNA、またはタンパク質のうちの1またはこれより多くを含むウイルス分子)をいう。例示的なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および1より多くのベクターの性質を有するように遺伝的に改変されたハイブリッドが挙げられる。
一般に、CEおよび特にcIEFは、光学的のぞき窓(optical viewing window)、高電圧電源、2つの電極アセンブリ、2つの緩衝液リザーバー、および検出器とともに、キャピラリーを利用する。一方の緩衝液リザーバーは、Hイオンをキャピラリーに提供する酸性溶液を含む一方で、一方の緩衝液リザーバーは、OHイオンをキャピラリーに提供する塩基性溶液を含む。上記キャピラリーの第1の端部は、上記塩基性溶液に流体接続される一方で、上記第2の端部は、上記酸性溶液に流体接続される。いくつかの実施形態において、同じタイプの緩衝液が、一方のリザーバーがアノード端子として機能し得、かつ上記2つのリザーバーのうちの他方がカソード端子として機能し得る限り、上記2つの緩衝液リザーバーの各々の中で利用され得る。サンプルまたは分析物は、電子注入または圧力注入を介して上記キャピラリーに注入され得る。いくつかの実施形態において、キャピラリーは、分析を受けるサンプルのうちの一部を含む2~4μLのベクター物質が装填される。いくつかの実施形態において、上記緩衝溶液は、二者択一的に酸性溶液または塩基性溶液である必要はない。場合によっては、同じ緩衝溶液が、これがHイオンおよびOHイオンを提供し得る限り、上記キャピラリーの第1のおよび第2の端部に提供され得る。概して、5μL未満の低いサンプル容積が、分析において消費される。
サンプル移動は、電源から電極アセンブリへと供給される電場を印加することによって開始される。目的のサンプル構成要素または分析物は、電気浸透流およびそれらの電気泳動移動度に起因してそれらが移動するにつれて分離し、分離した構成要素または分析物の勾配を形成し、その後、上記キャピラリーの出口端部近くで検出される。検出器出力は、インテグレーター、マイクロプロセッサー、またはコンピューターによって処理される。その得られるCE分離データは、電気泳動図としてディスプレイされ、これは、検出器応答を時間の関数として報告する。いくつかの局面において、上記CEリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである。適切なCE検出器としては、紫外線(UV)、紫外線-可視(UV-Vis)、レーザー誘起蛍光、自然蛍光(native fluorescence)、ダイオードアレイ、屈折率、電気化学的、表面プラズモン共鳴、ラマン散乱、および質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。適切なCE光学検出器としては、CCDアレイおよび光電子倍増管が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の局面において、本開示は、CEを行って、ウイルスベクターを分離し、全長外因性ポリヌクレオチド(「完全ウイルスベクター(full viral vector)」)、外因性ポリヌクレオチドフラグメント(「部分的なウイルスベクター(partial viral vector)」)を有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠く(「空のウイルスベクター(empty viral vector)」)として特徴づけるための方法に関する。この方法はまた、ウイルスベクターを含むサンプルまたは調製物中の完全な、部分的な、および空のウイルスベクターを識別し、その相対的存在量を定量し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法は、脂質ナノ粒子、リポソーム、ビロソーム、およびカーボンナノチューブを分離し、特徴付けるために使用され得る。
例示的実施形態において、上記ウイルスベクターは、AAVを含み、本明細書で開示される方法は、完全な導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列、導入遺伝子フラグメントを有するか、または導入遺伝子を欠くとして、AAVカプシド、粒子、またはベクターを分離および特徴づける(図1)。いくつかの局面において、上記方法はまた、夾雑物またはそのフラグメントを有するAAVカプシド、粒子、またはベクターを識別し得る。本明細書で使用される場合、「導入遺伝子(transgene)」とは、別の生物のゲノムへと人工的に導入される外来のもしくは改変された遺伝子またはポリヌクレオチド配列をいう。「アデノ随伴ウイルスカプシド、粒子、またはベクター(adeno-associated virus capsid, particle, or vector)」または「AAVカプシド、粒子、またはベクター」とは、ウイルスタンパク質VP1、VP2、およびVP3を含むウイルスカプシドの中にパッケージされた導入遺伝子に言及する。AAVベクター生成のための技術および方法は、当該分野で公知である。一般に、AAVベクター生成は、(a)カプシド形成および複製のためのAAV rep遺伝子およびcap遺伝子を含むプラスミド;(b)アデノウイルスヘルパー遺伝子を含むプラスミド;(c)逆方向末端反復が隣接した標的導入遺伝子を含むカセット;ならびに(d)HEK293細胞のようなウイルスパッケージング細胞株を利用する。当業者が認識するように、本明細書で開示される方法および適用は、それらを生成するために使用される技術、方法、材料、およびプロトコールにもかかわらず、任意のAAVに適用され得る。
さらなる局面において、本開示は、cIEFを行って、完全なウイルスベクター、部分的なウイルスベクター、および空のウイルスベクターを分離および特徴づけるための方法に関する。具体的な実施形態において、cIEF法は、AAVカプシド、粒子、またはベクターを、完全な導入遺伝子およびプロモーター、導入遺伝子フラグメントを有するか、または導入遺伝子を欠くとして、分離および特徴づけるために使用される。cIEFは、双性イオン性キャリア両性電解質を利用して、上記キャピラリー内にpH勾配を作り出す。キャリア両性電解質は、広い範囲(例えば、pH3~10)、狭い範囲(例えば、pH6~8)、またはこれらの組み合わせであり得るが、pH3~10またはpH7~10のような他の範囲がまた、使用され得る。CEと同様に、上記キャピラリーの第1の端部は、塩基性溶液に流体接続される一方で、第2の端部は、酸性溶液に流体接続される。
図2は、アノード溶液(anolyte solution)1、アノード2、アノード安定化剤3、カソード安定化剤4、カソード5、検出ウインドウ6、およびカソード溶液(catholyte solution)7を含むcIEF設定の例示的実施形態を図示する。電圧が上記キャピラリーに印加されるにつれて、pH勾配が、アノード溶液1から供給されるヒドロニウムイオンから、およびカソード溶液2から供給されるヒドロキシルイオンから形成される。cIEFフォーカシングの間に、カソード安定化剤4は、カソード5に向かって移動する一方で、アノード安定化剤3は、アノード2に向かって移動する(Cruzado-Park, I. D., Mack, S., and Ratnayake, C. K., Application Information Bulletin A-11634A: Identification of System Parameters Critical for High Performance cIEF, Beckman Coulter, Inc., Fullerton, CA, 2008(その全体において本明細書に参考として援用される))。フォーカシングは、両方のキャピラリー端部で形成するpH勾配を有する2方向性であり、連続するpH勾配が作り出されるように、上記キャピラリーの中心に向かって進む(Hjerten, S., Liao, J. L., and Yao, K. Q., J Chromatogr, Volume 387, pp 127, 1987(その全体において本明細書に参考として援用される))。目的のサンプル構成要素または分析物は、それらの等電点(pI)に基づいて、そのpH勾配中を移動し、分離する。分析物が正味のゼロ電荷をいったん達成すると、それは移動を止める。
pH勾配形成およびサンプル分析物のフォーカシングの後、動員(mobilization)が起こる。cIEF動員の間に、pI標準またはマーカー、および目的のフォーカスされた分析物が検出される。動員は、カソード方向またはアノード方向のいずれかにおいて達成され得る。カソード動員に関しては、カソードリザーバーは、酢酸のような動員溶液または水酸化ナトリウムおよび塩化ナトリウムの溶液で満たされる(Manabe, T., Miyamoto, H., and Iwasaki, A., Electrophoresis, Volume 18, pp 92, 1997およびApplication Information Bulletin A-12015A: A Robust cIEF Method: Intermediate Precision for the pH 5-7 Range, Beckman Coulter, Inc., Fullerton, CA, 2008(それらの全体において本明細書に参考として援用される))。アノード動員に関しては、アノードリザーバーは、塩化ナトリウムのような動員溶液で満たされる。カソード動員の間に電圧が印加される場合、ヒドロニウムイオンは、キャピラリーへとアノード液から導入される一方で、酢酸イオンは、カソード側から導入される。他の実施形態において、塩化物イオンおよび水酸化物イオンが導入される。これは、塩基性から酸性へのpH勾配の滴定を生じ、分離された分析物は、それらが正電荷を得てカソードに向かって移動するにつれて検出される。検出波長は、検出器に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、UV検出器および280nmフィルターが使用される。
1つの局面において、本明細書で開示される方法は、ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチドを有するか、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、各ウイルスベクターの電荷不均一性またはpIに基づいて分離および識別し得る。具体的には、CE(cIEFを含む)からのリードアウトまたは結果は、外因性ポリヌクレオチドシグナチャーによってウイルスベクターを同定するために使用され得る。これは、移動パターンおよび生じる電気泳動図ピークによって決定される。
別の局面において、本明細書で開示されるcIEF法は、ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチドを有するか、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして、各ウイルスベクターのpIに基づいて分離および識別し得る。具体的には、生じるcIEF電気泳動図または分離スキャン(例えば、全カラム画像化検出(WCID))において、ピークは、完全な、部分的な、および空のウイルスベクターを表す。空のウイルスベクターは、代わりのpIにおいて移動する一方で、完全なウイルスベクターは、より低いpIで移動し得る。「空の」ベクターと「完全な」ベクターとの間のピークは、部分的なウイルスベクター(すなわち、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを含むもの)を示す。この点において、cIEF法は、上記ウイルスベクターのpIを決定し得る。これはその後、完全な、部分的な、および空のベクターを同定するために使用され得る。
さらなる局面において、本明細書で開示されるcIEF法は、AAVカプシド、粒子、またはベクターを、導入遺伝子およびプロモーターを有する完全なゲノム、導入遺伝子フラグメントを有するか、または導入遺伝子を欠くとして、各AAVカプシドのpIに基づいて分離および識別し得る。空のAAVカプシドのcIEF移動ピークは、外因性ポリヌクレオチドもしくはそのフラグメントを有するウイルスベクター、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くウイルスベクターに対して代わりのpIで起こる一方で、いくつかの実施形態において、完全なAAVカプシドの移動ピークは、より低いpIにおいて空のカプシドに対して起こり得、部分的なAAVベクターの移動ピークは、その間に入る。代表的には、完全なAAVカプシドは、ウイルスカプシド内に被包される外因性ポリヌクレオチドの負電荷に起因して低いpIを有する。
いくつかの実施形態において、完全な外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子を含むAAVカプシドのpIは、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子を欠いているAAVカプシドより約0.3~0.5 pI単位低い。いくつかの実施形態において、pIの差異は、0.1pH単位未満であり得、このような実施形態において、上記両性電解質は、pIにおいて小さな差異を有するカプシドの解像度を改善するために、改変され得る(例えば、狭いpH範囲を有する両性電解質)。
さらに別の局面において、多数のウイルスベクターを含むサンプル中の完全な、部分的な、および空のウイルスベクターの相対的存在量は、ピーク面積の定量を介して決定され得る。例えば、空のウイルスベクターが富化されたサンプルは、「空の」ウイルスベクターpIでより大きなピーク面積を有する一方で、完全なウイルスベクターが富化されたサンプルは、「完全な」ウイルスベクターpIでより大きなピーク面積を有する。
さらに別の局面において、多数のAAVカプシドを含むサンプル中の完全な、部分的な、および空のAAVカプシド、粒子、またはベクターの相対的存在量は、ピーク面積の定量を介して決定され得る。空のAAVカプシドが富化されたサンプルは、「空の」AAVカプシドpIでより大きなピーク面積を有する一方で、完全なAAVカプシドが富化されたサンプルは、「完全な」AAVカプシドpIでより大きなピーク面積を有する。部分的なAAVカプシドは、空のAAVカプシドピークと完全なAAVカプシドピークとの間のピーク面積から計算され得る。
開示される方法の利点としては、分析用の超遠心分離(AUC)および電子顕微鏡検査法(EM)と比較して、比較的短時間(例えば、1時間)内でのハイスループット分離および自動化データ分析、ならびにHPLC、AUC、およびEMと比較して、最小のサンプル容積(例えば、2~4μLのベクター物質)が挙げられる。さらに、上記方法は、アニオン交換HPLC(AEX-HPLC)およびEMと比較して、優れた分離および解像度を提供し、AAV研究および開発の種々のステージで実行され得る。
cIEFは、任意の適切なCEデバイス(例えば、UV検出器および214nmフィルターを有するSciex PA800 Plus機器)で行われ得る。利用されるキャピラリーは、30cm N-CHO被覆キャピラリーであり得る。分離電圧は、10kV 逆極性であり得る。UV検出は、214nmで行われる。緩衝溶液は、pH8.0の50mM ホウ酸ナトリウムであり、注入は90秒間、0.5psiにおいて行われる。
実施例
実施例1:cIEF溶液の調製
cIEFの溶液を、以下のように調製した:
アノード溶液: 200mM リン酸を調製するために、0.685mL 85% リン酸を、50mLの全容積になるように脱イオン(DI)水とともに添加した。
カソード溶液: 300mM 水酸化マグネシウムを調製するために、15mL 1M NaOH(Sigma, Cat # 720820)を、全容積50mLになるようにDI水とともに添加した。
化学的動員溶液: 350mM 酢酸を調製するために、1mL 氷酢酸を全容積50mLになるようにDI水に添加した。
カソード安定化剤溶液: 500mM L-アルギニンを調製するために、0.87gの98% L-アルギニン(Sigma, Cat # A5006)を、8mL DI水に溶解し、完全な溶媒和のために15分間混合した。その得られた溶液を、全容積10mLまでDI水で増量した。
アノード安定化剤溶液: 200mMのイミノ二酢酸(IDA)を調製するために、0.27gの98% IDA(Sigma, Cat # 220000)を8mL DI水中に溶解し、完全な溶媒和のために15分間混合した。その得られた溶液を、全容積10mLまでDI水で増量した。
cIEFゲル溶液(U-ゲル): 3M 尿素 cIEFゲル溶液を調製するために、1.8gの尿素(Sigma, Cat # U1250)を、7mL cIEFゲル(SCIEX, Cat # 477497)に溶解させた。一旦溶解した後、その溶液を、全容積10mLまでcIEFゲルで増量し、15分間混合し、5μm シリンジフィルターを使用して濾過した。その3M 尿素-cIEFゲル溶液を、2000 RCFにおいてAllegra X-15R遠心分離機(Beckman Coulter, Cat # 392933)で脱気し、2~8℃で貯蔵した。
実施例2:サンプル調製
マスターミックス溶液を、200μLの3M 尿素-cIEFゲル溶液、12μLの両性電解質、20μLのカソード安定化剤、2μL アノード安定化剤、2μLの各pIマーカーを混合することによって調製した。サンプルを、表1および2に従って調製した。血清型1および2を、Amicon Ultra 0.5mL Centrifugal Filters(EMD Millipore, Cat # UFC501096)を使用して、2mg/mLへと濃縮した。サンプル1~3に関するマスターミックスを、Pharmalyte 3-10キャリア両性電解質(GE Healthcare Life Sciences, Cat # 17045601)を使用して調製した。サンプル4~6に関するマスターミックスを、4:2の比でのPharmalyte 3-10キャリア両性電解質およびServalyte 6-8キャリア両性電解質(Serva, Cat # 42906.04)の両性電解質混合物を使用して調製した。サンプル6をまた、広い範囲のPharmalyte 3-10キャリア両性電解質のみを使用して分析した。
Figure 2023510841000002
Figure 2023510841000003
実施例3:サンプル分析
各調製したサンプルを、nanoVial(SCIEX, Cat # 5043467)に移した。cIEF分析を、UV検出器および280nmフィルター(SCIEX, Cat # 969136)ならびに30.2cm N-CHOキャピラリー(SCIEX, Cat # 477601)を装備したPA 800 PA Plus Pharmaceutical Analysis System(SCIEX)を使用して行った。cIEF法の機器パラメーターは、図3A~3Eに図示される。キャピラリー温度を、全ての分離において20℃に維持した。データを集め、32 Karat Softwareを使用して分析した。
実施例4:完全な、空の、および部分的なAAVカプシドのcIEF解像度
図4は、pIマーカー7.0と10.0との間にあるサンプル1(空のAAVカプシドを富化)およびサンプル2(完全なAAVカプシドを富化)のcIEFプロフィールを図示する。上記空のカプシドピークは、より高いpIに移動した一方で、完全なカプシドピークは、より低いpI値に移動した。「空の」カプシドピークと「完全な」カプシドピークとの間のピークは、部分的なカプシドを示す。予測されるように、サンプル2は、より高い強度の完全なカプシドピークを示した一方で、サンプル1は、より高い強度の空のカプシドピークを示した。これらのcIEFプロフィールは、分析用の超遠心分離によって得られたプロフィールと一致した(データは示さず)。図4中のピーク1~5のpIを、表3に示す。上記AAVカプシドピークのpI値を、内部pIマーカーの較正曲線に基づいて決定した。
Figure 2023510841000004
図5Aは、サンプル3のcIEFプロフィールおよびAEX-HPLCプロフィール(図5A中の挿入図)を図示する。図5Bは、図5Aのサンプルピークの拡大図である。サンプル1およびサンプル2(上記で考察)と一致して、空のカプシドピークは、完全なカプシドピークと比較して、より高いpIに移動した。AEX-HPLC分離と比較した場合、cIEF分離は、空のカプシドピークおよび完全なカプシドピークの改善された分離度を生じた。さらに、cIEFは、部分的カプシドを分離した一方で、AEX-HPLCは、分離しなかった。cIEFまたはAEX-HPLC分離の後の完全な、空の、および部分的なカプシドの定量を、表4に示す。AEX-HPLCは、部分的なカプシドを分離できなかったことから、cIEF分析における完全なおよび部分的なカプシドピーク面積の和を、AEX-HPLCの完全なカプシドピーク面積と比較した。これらのデータは、cIEFによって決定された完全なおよび空のカプシドのパーセンテージが、AEX-HPLCによって決定されたものに匹敵することを示す。
Figure 2023510841000005
図6Aは、サンプル4(空のAAVカプシドを富化)およびサンプル5(完全なAAVカプシドを富化)のcIEFプロフィールを図示する。図6Bは、図6Aのサンプルピークの拡大図である。予測されるように、サンプル5は、より高い強度の完全なカプシドピークを示した一方で、サンプル4は、より高い強度の空のカプシドピークを示した。サンプル4および5のpI差は、完全なカプシドピークと空のカプシドピークとの間で約0.1 pH単位であると計算され、狭いpH範囲の両性電解質は、AAVピークの優れたベースライン分離度を提供した。サンプル4のpI値は、およそ7.1であった(データは示さず)。cIEF分離後の完全な、空の、および部分的なカプシドの定量を、表5に示す。これらのパーセンテージを、cIEF電気泳動図中の分離したカプシドピークの較正済みピーク面積から計算した。
Figure 2023510841000006
実施例5:広い範囲および狭い範囲のpH両性電解質を使用するAAVカプシドのcIEF分離
図7は、広い範囲および狭い範囲のpH両性電解質の混合物(上のグラフ)、ならびに広い範囲のpH両性電解質(下のグラフ)を使用するサンプル6のcIEFプロフィールを比較する。広い範囲のpH両性電解質は、pI7.3および7.5において、より小さく分離したピークを生じた一方で、pH両性電解質の混合物は、pI7.3と7.6との間のピークにおいて認められるように、増強されたサンプル分離度を提供した。これらのデータは、狭い範囲の、または狭い範囲および広い範囲のpH両性電解質の使用が、AAVサンプル中の部分的なカプシド改変体の分離度を改善することを示す。
実施例6:AAVカプシドのcIEF分析の再現性
図8は、AAVサンプルのcIEF分離の再現性を示す。cIEFの5回の泳動を、サンプル6に対して行った。ピーク面積の% 相対的標準偏差(RSD)は、≦5%であり、pI値の%RSDは、≦2%であった。これらのデータは、AAVカプシドのcIEF分析が、高い再現性の程度を有することを示す。
まとめると、上記の例示的データは、cIEF分析が、AAVカプシドの区別および同定のために使用され得ることを示す。具体的には、cIEFは、完全な導入遺伝子を有するか、部分的な導入遺伝子を有するか、または導入遺伝子を欠くカプシドを同定および定量し得る。不均一AAVサンプルにおいて、cIEFは、サンプル内の完全な、空の、および部分的なカプシドの分布を決定し得る。
実施例7:完全なおよび空のAAVカプシドのCZE分離度
図9は、サンプルA(空のAAVカプシドを富化)、サンプルB(完全なAAVカプシドを富化)、およびサンプルC(サンプルAおよびBが1:1比)のCZEプロフィールを図示する。上記サンプルを、受け取ったまま使用した。元のサンプルのうちの10μLを、ピペットでNano Vialへと移し、機器に装填した。サンプルを、UV検出器および214nmフィルターを有するPA800 Plus機器に導入した。泳動パラメーター: キャピラリー:30cm N-CHO被覆キャピラリー、分離:10kV逆極性、UV検出:214nm、緩衝液:50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0、注入:90秒間、0.5psi。重ねた図は、3種の異なる混合物(1つは空のカプシドを富化したサンプル、1つは完全なカプシドを富化したサンプル、1つは、完全なおよび空のカプシドを1:1の比で混合したサンプル)のAAV血清型9サンプルのCZE分析である。示されるように、10.4分あたりに非常に明確なピークが存在し、それは、完全なカプシドサンプルにおけるものより、空のカプシドサンプルにおいてより顕著である。
図10は、精製前後のAAVサンプルのCZEプロフィールを図示する。サンプルを、受け取ったまま使用した。動電学的注入を使用して、そのサンプルをCE機器(PDA検出器を有するPA 800 Plus)に導入した。その注入条件は、90秒間、0.5psiであり、泳動緩衝液は、50mM ホウ酸ナトリウム緩衝液、pH8.5であった。キャピラリーは、50um IDおよび30cm長を有する剥き出しの溶融キャピラリーであり、入り口から検出ウインドウまでの間の長さは20cmである。分離条件は、10kV 逆極性である。その重ねた軌跡は、上記生成物の純度を、ならびに上流の開発プロセスの間に完全なおよび空のカプシドの比率をモニターするために、各精製工程でのAAVサンプルのCZE分析である。精製プロセスの各ステージに伴って、より低い不純物ピークが観察される。

Claims (28)

  1. サンプル中のウイルスベクターを分離する方法であって、前記方法は、
    各ウイルスベクターの等電点(pI)に基づいて、前記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルに対してキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を行う工程;
    cIEF結果のリードアウトを生成する工程;および
    前記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程、
    を包含する方法。
  2. 前記分析する工程は、前記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを含む外因性ポリヌクレオチドを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして特徴付け、ここで前記全長外因性ポリヌクレオチドを有する前記ウイルスベクターは、前記外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有する前記ウイルスベクターおよびいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠く前記ウイルスベクターに対して低いpIを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
  5. cIEF結果の前記リードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである、請求項1に記載の方法。
  6. cIEFを行う工程は、
    前記ウイルスベクターを含むサンプルを、pH勾配を含むチャネルまたはキャピラリーに装填する工程;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続する工程;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続する工程;および
    前記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加する工程、
    を包含する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記チャネルまたはキャピラリーは、前記サンプルを含む2~4μLのベクター物質が装填される、請求項6に記載の方法。
  8. サンプル中のウイルスベクターを定量する方法であって、前記方法は、
    各ウイルスベクターの等電点(pI)に基づいて、前記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルに対してキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を行う工程;
    cIEF結果のリードアウトを生成する工程;および
    前記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程、
    を包含する方法。
  9. 前記分析する工程は、前記リードアウトから、全長外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスベクター、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するウイルスベクター、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くウイルスベクターの相対的存在量を定量する工程を包含し、ここで前記全長外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスベクターは、前記外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有する前記ウイルスベクターおよびいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠く前記ウイルスベクターに対して変化したpIを有する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項8に記載の方法。
  12. 前記cIEF結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである、請求項8に記載の方法。
  13. cIEFを行う工程は、
    前記ウイルスベクターを含むサンプルを、pH勾配を含むチャネルまたはキャピラリーに装填すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続する工程こと;および
    前記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加すること、
    を包含する、請求項8に記載の方法。
  14. 前記チャネルまたはキャピラリーは、2~4μLのベクター物質を含むサンプルが装填される、請求項13に記載の方法。
  15. サンプル中のウイルスベクターを分離する方法であって、前記方法は、
    各各ウイルスベクターの電荷不均一性または等電点(pI)に基づいて、前記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルのキャピラリー電気泳動(CE)を行う工程;
    CE結果のリードアウトを生成する工程;および
    前記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程、
    を包含する方法。
  16. 前記分析する工程は、前記ウイルスベクターを、全長外因性ポリヌクレオチド、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを含む外因性ポリヌクレオチドを有するか、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くとして特徴付ける、請求項15に記載の方法。
  17. 前記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項15に記載の方法。
  19. 前記CE結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである、請求項15に記載の方法。
  20. CEを行う工程は、
    前記ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続すること;および
    前記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加すること、
    を包含する、請求項15に記載の方法。
  21. CEは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、およびキャピラリーゲル電気泳動(CGE)からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
  22. サンプル中のウイルスベクターを定量する方法であって、前記方法は、
    各ウイルスベクターの電荷不均一性または等電点(pI)に基づいて、前記ウイルスベクターを分離するために十分な条件下でかつ継続時間にわたって、外因性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含むサンプルのキャピラリー電気泳動(CE)を行う工程;
    CE結果のリードアウトを生成する工程;および
    前記リードアウトを分析する工程であって、外因性ポリヌクレオチド含有量に基づいてウイルスベクターを同定する工程、
    を包含する方法。
  23. 前記分析する工程は、前記リードアウトから、全長外因性ポリヌクレオチドを含む外因性ポリヌクレオチドを有するウイルスベクター、外因性ポリヌクレオチドフラグメントを有するウイルスベクター、またはいかなる外因性ポリヌクレオチドをも欠くウイルスベクターの相対的存在量を定量する工程を包含する、請求項22に記載の方法。
  24. 前記外因性ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、プロモーターおよびITR配列を含む、請求項22または23に記載の方法。
  25. 前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項22に記載の方法。
  26. 前記CE結果のリードアウトは、電気泳動図または分離スキャンである、請求項22に記載の方法。
  27. CEを行う工程は、
    前記ウイルスベクターを含むサンプルを、チャネルまたはキャピラリーに装填すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第1の端部を酸性溶液へと流体接続すること;
    前記チャネルまたはキャピラリーの第2の端部を塩基性溶液へと流体接続すること;および
    前記チャネルまたはキャピラリーに電圧を印加すること、
    を包含する、請求項22に記載の方法。
  28. CEは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)およびキャピラリー等速電気泳動、ミセル動電キャピラリークロマトグラフィーおよびキャピラリー動電クロマトグラフィーからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
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