JP2011504461A - Wnt活性を測定するためのおよびwnt関連がんを処置するための方法および組成物 - Google Patents

Wnt活性を測定するためのおよびwnt関連がんを処置するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

本願は、Axin安定化剤を投与することによって、Wntシグナル伝達を制御または調節(例えばアンタゴナイズまたは阻害)する方法を開示する。本願はまた、Wntシグナル伝達関連障害の処置、診断、予防および/改善のための、本明細書に記載のAxin安定化剤を用いる方法を開示する。

Description

発明の背景
Wnt遺伝子ファミリーはInt1/Wnt1がん原遺伝子およびショウジョウバエWnt1ホモログである無翅(Wg)ショウジョウバエに関連した分泌タンパク質の大きなクラスをコードする(Cadigan et al. (1997) Genes & Development 11:3286-3305)。Wntは多様な組織および臓器で発現され、ショウジョウバエの分節;C. elegansにおける内胚葉の発生;および哺乳類の肢極性の確立、神経堤分化、腎形態形成、性別決定および脳発生を含む多くの発生プロセスに必要である(Parr, et al. (1994) Curr. Opinion Genetics & Devel. 4:523-528)。Wnt経路は胚形成期および成熟生物の両方において、動物発生の主なレギュレーターである(Eastman, et al. (1999) Curr Opin Cell Biol 11: 233-240; Peifer, et al. (2000) Science 287: 1606-1609)。
Wntシグナルは7種の膜貫通ドメイン受容体のFrizzled(Fz)ファミリーによって伝達される(Bhanot et al. (1996) Nature 382:225-230)。WntリガンドはFzdと結合し、そうすることで細胞質タンパク質Dishevelled(ヒトおよびマウスのDvl−1、2および3)を活性化し(Boutros, et al. (1999) Mech Dev 83: 27-37)、LRP5/6をリン酸化する。それによってシグナルが生じ、Armadillo/β−カテニンのリン酸化および分解を防止し、そしてβ−カテニンの安定化を導く(Perrimon (1994) Cell 76:781-784)。この安定化は、GSK3、APC、CK1およびβ−カテニンを含む多様なタンパク質と一体となってβ−カテニン破壊複合体を形成する骨格タンパク質であるAxinとのDvlの結合によってもたらされる(Zeng et al. (1997) Cell 90:181-192)。
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3、ショウジョウバエにおいてshaggyとして知られている)、腫瘍抑制遺伝子産物APC(大腸腺腫様ポリポーシス)(Gumbiner (1997) Curr. Biol. 7:R443-436)およびAxinは全て、Wnt経路の負のレギュレーターである。Wntリガンドの非存在下では、これらのタンパク質は複合体を形成して、β−カテニンのリン酸化および分解を促進するが、Wntシグナル伝達はこの複合体を不活性化し、β−カテニン分解を防止する。結果として安定化されたβ−カテニンは核へ移行し、そこでこれはTCF(T細胞因子)転写因子(リンパ球エンハンサー結合因子−1(LEF1)としても知られる)と結合して、TCF/LEF誘導性転写の共アクチベーターとして働く(Bienz, et al. (2000) Cell 103: 311-320; Polakis, et al. (2000) Genes Dev 14: 1837-1851)。
β−カテニンの安定化による異常なWnt経路活性化は、多くの結直腸癌腫の腫瘍形成に中心的な役割を有する。結直腸癌腫(CRC)の80%が、連続したWntシグナル伝達を可能とする腫瘍リプレッサーAPCの不活性化変異を有する。さらにまた、Wnt経路活性化が黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌および胃癌に関与し得ることを示唆する証拠が増えつつある。Wnt、正常な発生およびがんの間の関係が長らく認識されているが、Wntシグナル伝達の標的としてのc−Mycがん原遺伝子の同定との関連性がさらに確立された(He et al. (1998) Science 281:1509-3512)。
さらにまた、骨粗鬆症、骨関節炎、多発性嚢胞腎疾患、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心臓疾患、非がん原性増殖性疾患およびアルツハイマー病のような神経変性疾患を含むがこれらに限定されない他の障害が、異常なWntシグナル伝達と関連している。
結直腸癌のようなWntシグナル伝達関連障害の治療法開発のための現在のパラダイムは、β−catまたはβ−catの下流のWnt経路の成分を標的とすることに頼っている。しかし近年の研究では、Wnt受容体のFrizzledおよびLRP5/6によって介在される自己分泌Wntシグナル伝達が腫瘍増殖および生存の制御に重要な役割を有し得ることが示唆されている。Wnt経路と他の重大な岐路の活性を調節してWntシグナル伝達活性を阻害し、それによってWntシグナル伝達関連障害を処置し、診断し、予防しおよび/または改善する薬物および方法が必要とされている。
発明の概要
本発明は、例えばAxinのタンパク質安定性および/またはレベルを調節する薬物(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等)を使用して、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)を診断し、その症状を改善し、保護し、処置する方法を提供する。ある態様において、当該薬物は例えばTNKS触媒活性を調節することによって、タンキラーゼ(TNKS)を調節する。
かかる方法は、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達の調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKS調節剤(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含んでいてもよい。
かかる方法は、例えばWnt受容体を有する上皮細胞を処置するために、細胞レベルで使用することができる。例えば、対象方法は基底細胞癌腫または他のWntシグナル伝達関連障害(例えば異常な細胞増殖によって特徴付けられるもの)の処置または予防に使用することができる。対象方法はまた、Wntシグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズすることによって、細胞増殖、異常またはその他のものを予防するために使用してもよい。
本発明はまた、例えばAxin安定化剤の使用によって、例えばTNK調節剤(例えば低分子、阻害核酸、融合タンパク質等)の使用によって、Wnt経路シグナル伝達を調節する方法を提供する。一つの態様において、本発明の方法は、例えばAxin安定化剤の使用によって、例えばTNK調節剤(例えば低分子、阻害核酸、融合タンパク質等)の使用によって、Wnt経路シグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズすることを含む。
Wnt経路シグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズするかかる方法は、例えば正常な細胞、組織および臓器を含む多様な細胞、組織および臓器の修復および/または機能実行の制御において、使用してもよい。例えば、神経組織、骨および軟骨形成および修復の制御、精子形成の制御、平滑筋の制御、肺、肝臓および原腸から生じる他の臓器の制御、造血機能の制御、皮膚および毛髪増殖の制御等を含むが、これらに限定されない。本発明の方法はインビトロまたはインビボで実施することができる。
本発明はまた、Wnt経路シグナル伝達のアゴニストおよびアンタゴニストを同定し、試験する方法ならびにWnt経路のメンバー(例えばAxin、TNKS)を同定し、試験する方法を提供する。Axinタンパク質レベルの安定化および上昇ならびにTNKSの阻害によってWnt経路シグナル伝達を阻害するという本発見は、この安定化を促進し、またはそれに干渉し、それによってインビトロまたはインビボでWnt経路シグナル伝達に干渉する薬物を同定するために有用である。したがって本発見はまた、TNKS触媒活性を阻害することができる薬物を発見するために有用であり、それによって、例えばAxinの安定化およびそのβ−カテニン破壊複合体の形成の不全(そして得られるWnt経路シグナル伝達の調節)によってもたらされ得る異常な病的Wntシグナル伝達に関連した障害を処置するために使用することができる。
一つの態様において、Wnt経路シグナル伝達を調節することができる薬物を同定する方法は、a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、TNKSタンパク質レベルを測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そしてb) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、TNKSタンパク質レベルを測定することを含み、ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのTNKSタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアンタゴニストとして同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのTNKSタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアゴニストとして同定する。
一つの態様において、薬物は低分子である。他の態様において、薬物は阻害核酸(例えば抗−TNKS1または−TNKS2 siRNA)である。他の態様において、薬物は融合タンパク質(例えばTNKSに対する阻害的融合タンパク質)であってもよい。
本発明は、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)の処置に有用な化合物をスクリーニングする方法であって、Wntシグナル伝達を示す細胞を試験薬物と接触させ、TNKSタンパク質レベルまたはAxinタンパク質レベルおよび/またはAxin安定化の変化を検出することを含む方法を含む。
一つの態様において、Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定する方法は、a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、TNKSタンパク質または安定性レベルを測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そしてb) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、TNKSタンパク質レベルを測定することを含み、ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのTNKSタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションに関連した障害の処置に有用として同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのTNKSタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションに関連した障害の処置に有用として同定する。
一つの態様において、薬物は低分子である。他の態様において、薬物は阻害核酸(例えば抗−TNKS1または−TNKS2 siRNA)である。他の態様において、薬物は融合タンパク質(例えばTNKSに対する阻害的融合タンパク質)であってもよい。
一つの態様において、Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定するための方法は、Wntシグナル伝達経路が活性である細胞を試験薬物と接触させ、TNKSタンパク質レベルまたは安定性の変化を検出することを含む方法を含む。
本発明のスクリーニング法において、Axinタンパク質レベルまたは安定性の上昇は、総β−カテニンレベルの低下、ホスホ−β−カテニンレベルの上昇、Axinタンパク質レベルの上昇または増加したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される。Axinタンパク質レベルまたは安定性の低下は、総β−カテニンレベルの上昇、ホスホ−β−カテニンレベルの低下、Axinタンパク質レベルの低下または減少したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される。
本発明の他のスクリーニング方法は、Wnt経路シグナル伝達を調節することができる薬物を同定する方法およびタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を阻害することができる薬物を同定する方法を含む。かかる薬物は少なくとも低分子、阻害核酸(例えば抗−TNKS1または−TNKS2 siRNA)または融合タンパク質(例えばTNKSに対する阻害的融合タンパク質)であってもよい。
本発明は、有効成分として、本明細書に記載されているようなWntアンタゴニスト(例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト)を含む医薬組成物であって、(i)インビボで細胞増殖または他のWnt異常発現の生物学的帰結(例えば構成的Wntシグナル伝達によって特徴付けられるがん)の阻害;および(ii)Wntシグナル伝達関連障害の診断、その症状の改善、それからの保護または処置に十分な量で製剤された医薬組成物を含む。かかる組成物は例えば、薬学的に許容される担体中に、本発明の何れかの態様による化合物、阻害核酸または融合タンパク質またはそれらの何れかの組合せを含んでいてもよい。
他の態様において、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等、またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含む方法を提供する。
さらに、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等、またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含む方法を提供する。
本発明は、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)に罹患している対象の、「TNKS阻害剤」、「Axin安定化剤」等(例えば、本発明の化合物またはTNKSの触媒活性を阻害することができる融合タンパク質もしくは阻害ヌクレオチド)を含む処置レジメンから利益を受ける素因または可能性を同定または予測する方法を含む。
図1:XAV939はAxinタンパク質レベルを上昇させることによってWnt/β−カテニンシグナル伝達を阻害する。XAV939はHEK293細胞のSTF活性を特異的に阻害する。HEK293 STF、CRE、NFκBおよびCAGA12レポーター細胞系はWnt3A調節培地、Forskolin、TNFαおよびTGFβでそれぞれ活性化され、XAV939またはLDW643(XAV939に対する化合物の不活性アナログ、ネガティブコントロール)の12点希釈で処理した。各希釈化合物に対応するレポーター活性は、DMSOに正規化し、DMSOのレポーター活性のパーセンテージとして表した。 XAV939はWnt3A安定化β−カテニンレベルを低下する。HEK293細胞をWnt3A調節培地で記載した時間、DMSOまたは1μMのXAV939の存在下で刺激した。細胞溶解物を分画し、細胞質β−カテニンについてイムノブロットした。 XAV939はAPC欠損SW480細胞でSTF活性を阻害する。SW480−STFおよびSW480−STF−TCF3VP16細胞をXAV939またはLDW643の12点希釈で処理し、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。TCF3VP16融合タンパク質の過剰発現は、STF活性におけるβ−カテニンの要求を大部分迂回した(データは示さず)。bと同様に、各化合物の希釈点に対応するレポーター活性をDMSO中のレポーター活性に正規化し、パーセンテージとして表した。 XAV939はβ−カテニンの存在量を減少させ、Axinおよびホスホ−β−カテニンの存在量を増加させる。SW480細胞を1μMのXAV939またはLDW643で一夜処理し、細胞質タンパク質について分画し、記載の抗体でイムノブロットした。 β−カテニンに対するXAV939の効果はAxin依存的である。Axin1およびAxin2 siRNAの両方または対照pGL2 siRNAでトランスフェクトしたSW480細胞を、3μMのXAV939の存在下または非存在下で処理した。次いで細胞質溶解物を単離し、記載の抗体でイムノブロットした。 図2:細胞効果標的の同定。1nM〜100μMの範囲で10倍増加段階の漸増用量の化合物XAV939およびその不活性アナログLDW643での用量応答化合物競合実験からの、溶解物におけるTNKS1/2、PARP1、PARP2についてのイムノブロット分析。 XAV939はTNKS1およびTNKS2のPARPドメインと高い親和性で直接結合する。GST−TNKS1およびTNKS2を、Cy5と結合したXAV939とインキュベートした。生mP[1000 x (S-G*P/S+G*P)]データを保存し、一部合計結合飽和(one-site total binding saturation)アルゴリズムで分析した。 図3:タンキラーゼはAxinタンパク質レベルを調節する。TNKS1およびTNKS2の同時欠損は、Axinタンパク質レベルの上昇およびβ−カテニンタンパク質レベルの低下によって、XAV939を表現型模写する。SW480細胞をPARP1、PARP2、TNKS1およびTNKS2に対するsiRNAシングルトンで、記載した組合せでトランスフェクトした。TNKS1およびTNKS2の両方について、AおよびBとラベルした固有の標的配列から生じた2つの独立siRNAを実験に用いた。細胞質タンパク質をトランスフェクションの48時間後に採取し、記載の抗体で分析した。 TNKS1およびTNKS2の欠損は、Axin1のタンパク質レベルを上昇させ、Wnt3a誘導性β−カテニン蓄積を阻止する。HEK293細胞をTNKS1またはTNKS2に対する個々のsiRNAで、記載の組合せでトランスフェクトした。上の図はAxin1の発現をトランスフェクションの48時間後にイムノブロットで分析した。下の図は、トランスフェクションの48時間後に細胞をWnt3A調節培地で処理した。次いで細胞質β−カテニンを単離し、イムノブロットで測定した。 TNKS1およびTNKS2の欠損はWntレポーターを特異的に阻害する。HEK293 CREおよびSTFレポーター細胞系を記載のsiRNAでトランスフェクトし、ForskolinおよびWnt3A調節培地でそれぞれ刺激し、ルシフェラーゼ活性を測定した。データはpGL2対照siRNAに対して正規化し、阻害のパーセンテージとして表す。 TNKSのノックダウンによってショウジョウバエS2細胞のAxinタンパク質レベルが上昇する。DAxin−3xHAを安定的に発現するS2細胞を対照dsRNA(白)またはショウジョウバエTNKSに対するdsRNAとインキュベートした。DAxin−3xHAのタンパク質およびmRNAレベルをイムノブロット(左図)およびqPCR(右図)で検出した。 TNKSノックダウンはショウジョウバエS2細胞のWntレポーターを特異的に阻害する。S2を記載のdsRNAで処理し、一時的にWnt(LEF−Luc)、BMP(BRE−Luc)およびJAK/SAT(Draf−Luc)レポーターでトランスフェクトし、適切なリガンド(無翅調節培地、BMP2およびUPD調節培地)で刺激して、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。 触媒的に不活性ではないが野生型のTNKS2は、Axin1のTNKS1/2 siRNA誘導性蓄積を救う。安定的に誘導可能なsiRNAを発現し、耐性およびFlagタグ化野生型(WT)または触媒的に不活性(M1054V)なHEK293細胞を、TNSK1およびTNKS2に対するsiRNAでトランスフェクトした。外因的TNKS2のドキシサイクリン(DOX)誘導性発現の後、細胞融解物を採取し、イムノブロットで分析した。 XAV939はTNKSの自己PARシレーション(autoparsylation)を阻害する。1μMのタンパク質(GST−TNKS2−SAM−PARP1)を30℃で、DMSO中5μMのビオチン−NADまたは2μMのXAV939もしくはLDW643と混合した。サンプルをSDS−PAGEおよびウェスタンブロットで分析した。 図4:タンキラーゼはAxinと物理的および機能的に相互作用する。内因性Axin2とTnksの免疫共沈降。SW480細胞を対照siRNAまたはAxin2 siRNAでトランスフェクトし、細胞溶解物を抗Axin2抗体またはIgGで免疫沈降した。免疫沈降物をSDS−PAGEで分離し、記載の抗体でブロットした。 酵母2ハイブリッドアッセイを用いたAxin1のTNKS結合ドメインのマッピング。左図は、酵母2ハイブリッドアッセイでTnksとの結合に使用されたAxin1タンパク質フラグメントのスキームを図示している。右図は酵母2ハイブリッドアッセイにおけるTNKSとAxin1のタンパク質フラグメント結合強度の概略を表にしている(+強い結合、+/−弱い結合、−結合せず)。既知のAxin1結合分子であるGSK3βを対照として用いた。N88フラグメントは部分的自己活性化活性を保持することに注意されたい。 Flag−TNKS1を過剰発現するHEK293細胞の細胞溶解物を、記載のGST融合タンパク質とインキュベートして沈殿させた後、記載の抗体でイムノブロットして分析した。GST−AxinNはGSTと融合したAxin1のアミノ末端87アミノ酸残基から成る。 Axin1タンパク質とTNKS1の免疫共沈降。記載の構築物でトランスフェクトしたHEK293細胞の細胞溶解物を、抗Flag抗体で免疫沈降し、イムノブロットで分析した。 TNKS結合ドメインはXAV939誘導性Axin1タンパク質蓄積に必要である。記載のGFP−Axin融合構築物を発現するSW480細胞系を、レトロウイルス感染によって確立し、XAV939で一夜処理した。全細胞溶解物を収穫し、イムノブロットで分析した。 Axin1のアミノ末端フラグメントの過剰発現は、内因性Axin1の蓄積を導く。誘導性GFP−Axin1N(a.a 1-87)を発現するHEK293細胞系を作成した。GFP−Axin1Nの発現は、細胞をドキソサイクリン(DOX)で24時間処理して誘導した。全細胞溶解物を収穫し、イムノブロットで分析した。 酵母2ハイブリッドアッセイにおいてAxin1との結合について、およびHEK293細胞で過剰発現したときのSTFレポーターに対する効果について、多様なTNKS1フラグメントを試験した。左図はTNKS1構造のスキームおよびそれらのAxin1との結合能の要約である。これらの構築物のAxin1とのAxin1結合活性は、「β−Galアッセイ」の下の真ん中の列に示す。右図はSTFレポーターに対するTNKS1構築物の効果である。TNKS1構築物を一時的にHEK293 STFレポーター細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後にルシフェラーゼ活性についてアッセイした。(IP:免疫沈降、TCL:総細胞溶解物) 図5:XAV939はAxinタンパク質レベルを安定化し、Axinユビキチン化を阻害する。AxinはXAV939で安定化される。SW480細胞をDMSOまたは1μMのXAV939で2時間処理した後、材料および方法に記載のとおり、パルスチェイス分析を行った。細胞溶解物はRIPAバッファーで調製し、抗Axin2抗体で免疫沈降し、SDS−PAGEで分離し、次いでPhosphoImagerで分析した。 TNKS2によるAxin1フラグメントのインビトロPARシレーション。組換えTNKS2およびGST−Axin1(a.a. 1-280)をビオチン−NADとインキュベートした。反応はXAV939の存在下または非存在下で実施し、SDS−PAGEで分離し、ストレプトアビジン−AlexaFluor680でプローブした。 Axinユビキチン化はXAV939で阻害される。SW480細胞を1μMのXAV939で4時間前処理し、続いて20μMのMG132でさらに2時間処理した。細胞溶解物をRIPAバッファーで収穫し、対照IgGまたは抗ユビキチン抗体で免疫沈降し、記載の抗体でイムノブロットして分析した。Axin1が移動する位置は矢印で標識する。ゆっくりと移動するポリユビキチン化Axin1複合体が示される。 Axin1のインビボPARシレーション。メタロチオネインプロモーターの制御下でGFP−Axin1を安定的に発現するSW480細胞を、Cu2+と共に一夜インキュベートして、GFP−Axin1の発現を誘導した。細胞をXAV939でさらに6時間処理した。PARG阻害剤ADP−HPD(5μM)およびPARP1阻害剤PJ34(80μM)を含むRIPAバッファーで溶解物を収穫し、GFP抗体で免疫沈降し、イムノブロットで分析した。 化合物ウォッシュオフ実験におけるAxin2の翻訳後修飾。SW480細胞を1μMのXAV939で一夜処理し、新鮮な培地で洗浄してXAV939を除去し、次いで、記載の化合物を補った培地で1時間インキュベートした。細胞溶解物をRIPAバッファーで収穫し、抗Axin2抗体で免疫沈降し、イムノブロットで分析した。Axin2が移動する位置を矢印で示す。(IP:免疫沈降、TCL:総細胞溶解物) 図6:XAV939はAxin依存的にDLD1コロニー形成を阻害する。XAV939はDLD1細胞のコロニー形成を阻害するが、RKO細胞のコロニー形成は阻害しない。6ウェルプレート中の0.5%の血清と記載の化合物を含む培地にDLD1およびRKO細胞を500細胞/ウェルで播種し、2日ごとに新鮮な培地を補充した。コロニーはクリスタルバイオレット染色で可視化した。 DLD1コロニー形成に対するXAV939の効果はAxin依存的である。DLD1細胞をAxin1およびAxin2に対するsiRNAでトランスフェクトし、1000細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種した。化合物処理は6Aに記載のとおりに実施した。 図7は、APC変異機能の喪失を有するがん、β−カテニン活性化変異機能の獲得を有するがんおよび/またはβ−カテニン標的遺伝子Axin2の高い発現レベルによって示される活性化されたWntシグナル伝達を有するがんを含む、活性化されたWntシグナル伝達によって特徴付けられる多様ながんモデルの増殖阻害についての、本発明の化合物の能力を示す。3つの代表例を図に示し、これはAPC変異を有する結直腸癌細胞系SW403、β−カテニン変異を有する結直腸癌細胞系HuTu−80、そして定量的PCRおよび遺伝子発現マイクロアレイの両方によって示される高いレベルのAxin2遺伝子発現を有する胃癌細胞型NCI−N87を含む。クローン原性アッセイのために、10%胎児ウシ血清を補った細胞培養培地中で細胞を培養し、密度1000〜3000細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、XAV939で12日間処理した。化合物は3日ごとに補充した。コロニーはクリスタルバイオレットで固定し、染色して可視化した。定量的PCRのために、全RNAを細胞から単離し、逆転写反応を用いてcDNAを作成した。Advanced Biosystems(ABI)のAxin2特異的プローブプライマーを用いて定量的PCRを実施した。
発明の詳細な説明
本発明は、例えばWnt経路シグナル伝達の調節剤、例えばAxin安定化剤または脱安定化剤および/またはTNKS調節剤(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等)の使用によって、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)を診断し、その症状を改善し、それから保護し、処置する方法を提供する。
かかる方法は、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達の調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKS調節剤(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含んでいてもよい。
本発明の目的のため、そして本発明により詳細に説明されるとおり、「本発明の化合物」および同様の用語は、Axin安定化を介してWnt経路シグナル伝達を阻害し、アンタゴナイズし、軽減しまたは弱める化合物を記載するために使用する。当該化合物はXAV939を含むがこれに限定されない。該化合物は他の低分子量PARP阻害剤を含んでいてもよく、これは他のPARPのものと比較して、TNKS1および/またはTNKS2の触媒活性を優先的に阻害する。
一つの態様において、本発明のAxin安定化剤(例えば本発明の化合物、例えばXAV939)を用いて、Wntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションに関連したWntシグナル伝達障害(例えばがん、骨関節炎および多発性嚢胞腎疾患)を処置してもよい。
他の態様において、Axin安定化は、Wntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションに関連したWntシグナル伝達障害(例えば骨粗鬆症、肥満、糖尿病および神経変性疾患)が改善され得るように調節され得る。例えば、Axinの安定化を防止することができる低分子、融合タンパク質または抗体の投与は、β−カテニンの安定化を促進する(したがってWnt経路シグナル伝達をもたらす)。
かかる方法は、例えばWnt受容体を有する上皮細胞を処置するために、細胞レベルで使用することができる。例えば、対象方法は基底細胞癌腫または他のWntシグナル伝達関連障害(例えば異常な細胞増殖によって特徴付けられるもの)の処置または予防に使用することができる。対象方法はまた、Wntシグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズすることによって、細胞増殖、異常またはその他のものを予防するために使用してもよい。かかる方法はインビトロまたはインビボで使用してもよい。
本発明はまた、例えばAxin安定化剤および/またはTNKS調節剤(例えば低分子、阻害核酸、融合タンパク質等)の使用によって、Wnt経路シグナル伝達を調節する方法を提供する。一つの態様において、本発明の方法は、例えばAxin安定化剤および/またはTNK調節剤(例えば低分子、阻害核酸、融合タンパク質等)の使用によって、Wnt経路シグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズすることを含む。Axin安定化に寄与する(それによって、β−カテニンリン酸化および分解に寄与する)薬物は、Wnt経路シグナル伝達の阻害を導き;逆に、Axin安定化を低減する(それによって、β−カテニンを安定化する)薬物は、Wnt経路シグナル伝達の増加を導く。
Wnt経路シグナル伝達を阻害し、またはその阻害をアゴナイズするかかる方法は、例えば正常な細胞、組織および臓器を含む多様な細胞、組織および臓器の修復および/または機能実行の制御において、使用してもよい。例えば、神経組織、骨および軟骨形成および修復の制御、精子形成の制御、平滑筋の制御、肺、肝臓および原腸から生じる他の臓器の制御、造血機能の制御、皮膚および毛髪増殖の制御等を含むが、これらに限定されない。本発明の方法はインビトロまたはインビボで実施することができる。
本発明はまた、Wnt経路シグナル伝達のアゴニストおよびアンタゴニストを同定し、試験する方法、ならびにWnt経路のメンバー(例えばAxin、TNKS)のアゴニストおよびアンタゴニストを同定し、試験する方法を提供する。Axinタンパク質レベルの安定化および上昇によってWnt経路シグナル伝達が阻害されならびにTNKSの阻害によってWnt経路シグナル伝達が阻害されるという本発見は、この安定化を促進し、またはそれに干渉し、それによってインビトロまたはインビボでWnt経路シグナル伝達に干渉する薬物を同定するために有用である。したがって本発見はまた、Axin安定化剤の非存在および存在(そして得られるWnt経路シグナル伝達の調節)に関連した障害を処置するために使用することができる薬物を発見するために有用である。
一つの態様において、Wnt経路シグナル伝達を調節することができる薬物を同定する方法は、a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、Axinタンパク質または安定性レベルを測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そしてb) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することを含み、ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアゴニストとして同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアンタゴニストとして同定する。
一つの態様において、薬物は低分子であり得る。他の態様において、薬物は阻害核酸であり得る。他の態様において、薬物は融合タンパク質であってもよい。一つの態様において、当該低分子、阻害核酸または融合タンパク質は、Axinと直接作用し得る。他の態様において、かかる低分子、阻害核酸または融合タンパク質は、Axinと間接的に作用し得る(例えば、Axinの結合パートナーまたはAxin結合タンパク質、例えばGSK3、β−カテニン、APCおよびDishevelled、PP1、PP2A、カゼインキナーゼ1、LRP5/6に対して作用し得る)。
本発明は、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)の処置に有用な化合物をスクリーニングする方法であって、Wntシグナル伝達を示す細胞を試験薬物と接触させ、TNKSタンパク質レベルまたはAxinタンパク質レベルおよび/またはAxin安定化の変化を検出することを含む方法を含む。
一つの態様において、Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定する方法は、a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、Axinタンパク質レベルを測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そしてb) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、Axinタンパク質レベルを測定することを含み、ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルの低下が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションに関連した障害の処置に有用として同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルの上昇が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションに関連した障害の処置に有用として同定する。
一つの態様において、薬物は低分子であり得る。他の態様において、薬物は阻害核酸であり得る。他の態様において、薬物は融合タンパク質であってもよい。一つの態様において、当該低分子、阻害核酸または融合タンパク質は、Axinと直接作用し得る。他の態様において、かかる低分子、阻害核酸または融合タンパク質は、Axinと間接的に作用し得る(例えば、Axinの結合パートナーまたはAxin結合タンパク質、例えばGSK3、β−カテニン、APCおよびDishevelled、PP1、PP2A、カゼインキナーゼ1、LRP5/6に対して作用し得る)。
一つの態様において、Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定するための方法は、Wntシグナル伝達経路が活性である細胞を試験薬物と接触させ、Axinタンパク質レベルまたは安定性の変化を検出することを含む方法を含む。
本発明は、有効成分として、本明細書に記載されているようなWntアンタゴニスト(例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト)を含む医薬組成物であって、(i)インビボで細胞増殖または他のWnt異常発現の生物学的帰結の阻害;および(ii)Wntシグナル伝達関連障害の診断、その症状の改善、それからの保護または処置に十分な量で製剤された医薬組成物を含む。かかる組成物は例えば、薬学的に許容される担体中に、本発明の何れかの態様による化合物、阻害核酸または融合タンパク質またはそれらの何れかの組合せを含んでいてもよい。
他の態様において、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等、またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含む方法を提供する。非限定的な例として、本明細書においてさらに説明されるとおり、本発明の化合物(例えば化合物I)は、APC欠損を有する結腸癌細胞およびインタクトなWntシグナル伝達経路を有する細胞系の両方においてWntシグナル伝達を阻害することができる。また非限定的な例として、本明細書においてさらに説明されるとおり、本発明の化合物(例えば化合物I)は、インビトロ細胞培養アッセイにおいて、結腸癌細胞の増殖を阻害することができる。
さらに、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、それを必要とする対象に有効量のWnt経路シグナル伝達調節剤、例えばAxin安定化剤および/またはTNKSアンタゴニスト(例えば低分子、例えば本発明の化合物、阻害核酸、融合タンパク質等、またはそれらの何れかの組合せ)と薬学的に許容される担体を投与することを含む方法を提供する。
本発明の方法の一つの態様において、本発明の化合物のようなAxin安定化剤が投与される。かかる態様において、Axin安定化剤はそれが投与される細胞または系におけるAxinタンパク質レベルの上昇を導く。結果として、β−カテニンはGSK3メカニズムを介した同時的リン酸化および分解を起こす。Axin安定化とβ−カテニン分解の組合せは、Wnt経路シグナル伝達の阻害をもたらす。かかる態様の少なくとも一つの有用性は、Wntシグナル伝達レベルが異常に高い障害(例えば結腸癌)の処置である。別の有用性は、腫瘍細胞の増殖阻害および/または腫瘍細胞のアポトーシス誘導である。
本発明の方法の一つの態様において、Axin安定化剤が投与されると、GSK3によるAxinリン酸化の上昇によって作用する。一つの態様において、XAV939はGSK3によるAxinリン酸化の上昇を誘導し、それによってAxinを安定化し、Axinタンパク質レベルを上昇させ、そしてそれによってWntシグナル伝達を阻害することができる。
本発明は、Wntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)に罹患している対象の、「TNKS阻害剤」、「Axin安定化剤」等(例えば、本発明の化合物またはTNKSの触媒活性を阻害することができる融合タンパク質もしくは阻害ヌクレオチド)を含む処置レジメンから利益を受ける素因または可能性を同定または予測する方法を含む。
本明細書においてさらに説明するとおり、かかる方法は、まずWntシグナル伝達関連障害(例えば結直腸癌)に罹患している対象を診断し、次に該対象が異常なAxin安定化および/またはβ−カテニン分解に関連した障害の1種以上のバイオマーカーの存在を示すか否かを検出することを含む。かかるバイオマーカーの存在は、当該対象が「TNKS阻害剤」、「Axin安定化剤」等を含む処置レジメンから利益を受けるかもしれないことを示す。かかるバイオマーカーの非限定的な例は、(i)腫瘍サプレッサーAPCの切断型変異;(ii)Axin1およびAxin2変異;(iii)β−カテニン過剰発現;および上昇したAxin−GSK3複合体の形成を含む。
定義
用語「処置する」、「処置され」、「処置し」または「処置」は、処置する状態、障害または疾患に関連し、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの症状の消失または軽減を含む。ある態様において、処置は、Wntシグナル伝達関連障害の誘導、次いで本発明の化合物の活性化を含み、これは次いで、処置するWntシグナル伝達関連障害に関連し、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの症状を消失させまたは緩解する。例えば、処置は障害の1つ異常の症状の消失または障害の完全な根絶であり得る。
用語「使用」は、適切であり、便宜であるとき、特に定めの無い限り、次の本発明の態様の何れか1個以上をそれぞれ含む:Wntシグナル伝達関連障害の処置における使用;これらの疾患の処置に使用する医薬組成物の製造のための、例えば医薬の製造における、使用;これらの疾患の処置における本発明の化合風tの使用方法;これらの疾患の処置のための、本発明の化合物を有する医薬組成物;およびこれらの疾患の処置に使用するための本発明の化合物。特に、処置する疾患、したがって本発明の化合物の使用に好ましい疾患は、がん(例えば結腸癌)および他の増殖性疾患、骨粗鬆症および統合失調症、ならびにWntシグナル伝達の活性に依存する疾患から選択される。
用語「Wntシグナル伝達関連障害」は、異常なWntシグナル伝達に関連した疾患および状態を意味し、がん(例えば結直腸癌腫(CRC)、黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌および胃癌;他の非がん原性増殖性疾患、例えば増殖性皮膚障害(例えば乾癬、皮膚炎);骨粗鬆症;骨関節炎;線維症;統合失調症;血管疾患;心臓疾患;および神経変性疾患、例えばアルツハイマー病を含むが、これらに限定されない。Wntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションは、がん、骨関節炎および多発性嚢胞腎疾患に関連しており、Wntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションは骨粗鬆症、肥満、糖尿病および神経変性疾患に関連している。
本明細書において使用するとき、「Wntシグナル伝達関連がん」は、結直腸癌腫(CRC)、黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌および胃癌を含むが、これらに限定されない。用語「Wnt関連がん」は、本明細書において使用するとき、悪性髄芽腫および他の原発性CNS悪性神経外胚葉性腫瘍、横紋筋肉腫、肺癌、特に小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌および胆管系癌を含むがこれらに限定されない腸由来腫瘍;前立腺癌および膀胱癌、結腸癌および肝臓癌を含む。
用語「Wntアンタゴニスト」は、本明細書において使用するとき、本明細書に記載のとおり、Wntシグナルの阻害剤またはその阻害のアゴナイザーを含む。一つ以上の態様において、かかるWntアンタゴニストは、Axin安定化を介して作用する。一つ以上の態様において、かかるWntアンタゴニストはTNKS拮抗作用を介して(例えばTNKSの触媒活性を阻害し、それによってAxinを安定化して)作用する。Wntアンタゴニストは低分子(例えば本発明の化合物)、阻害核酸および融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
用語「TNKSアンタゴニスト」、「TNKS阻害剤」等は、本明細書において使用するとき、Axinの安定性を上昇させることができる薬物を意味する。「TNKSアンタゴニスト」、「TNKS阻害剤」等は、本発明の化合物のようなAxin安定化剤を含んでいてもよい。TNKSアンタゴニストは好ましくは、TNKSタンパク質の触媒活性(例えばAxinのような標的タンパク質のPARシレーション能ならびに自己PARシレーション能)を低下または阻害して、TNKSタンパク質または転写レベルを低下させずに、作用する。TNKSアンタゴニストはまた、AxinがWntの負のレギュレーターであり、TNKSがAxinと相互作用する(例えばTNKSノックダウンはAxinタンパク質レベルを安定化し、上昇させる)という理由から、Wntシグナル伝達を阻害するとも考えられる。TNKSアンタゴニストは、ホスホ−β−カテニンを増加させ、細胞質β−カテニンを減少させ、そしてβ−カテニン siRNAと同様に、β−カテニン標的遺伝子に影響を与える。
用語「Axin安定化剤」は、本明細書において使用するとき、Axinの安定性を上昇させることができる薬物を意味する。これはβ−カテニンの加速したリン酸化および分解を導く。Axin安定化剤はまた、AxinがWntシグナル伝達の負のレギュレーターであるとの理由から、Wntシグナル伝達を阻害するとも考えられる。Axin安定化剤(例えば本発明の化合物、例えばXAV939)は、細胞において、総β−カテニンの減少およびホスホ−β−カテニンの増加に寄与する。本発明の目的のため、用語「Axin」はAxin1Axin2と相互に交換可能なように使用され本発明のAxin安定化剤は、Axin1およびAxin2両方を安定化し、そのタンパク質レベルを上昇させることができる。さらにまた、「Axin」は、本明細書において使用するとき、ヒト、マウス、ラットまたは他の種由来のAxin1および/またはAxin2に適用することができる。
用語「Axin結合タンパク質」は、本明細書において使用するとき、正常な条件下でAxinが結合する(例えば直接または間接的に結合し、その標的であり、それとタンパク質複合体を形成し、そして/または影響を示す)Wntシグナル伝達経路のタンパク質メンバーを意味する。かかるAxin結合タンパク質は、GSK3、β−カテニン、APCおよびDishevelled、PP1、PP2A、カゼインキナーゼ1、LRP5/6を含むが、これらに限定されない。
用語「本発明の化合物」および同様の用語は、さらに本明細書において定義するとおり、例えばAxinを安定化する(それによってWnt経路シグナル伝達を阻害する)ために使用され得る化合物を記載するため、本明細書に置いて使用される。該化合物は、XAV939を含むが、これに限定されない。該化合物は他の低分子量PARP阻害剤を含んでいてもよく、これは他のPARPのものと比較して、TNKS1および/またはTNKS2の触媒活性を優先的に阻害する。
「治癒」は、本明細書において使用するとき、処置によって障害、例えばWntシグナル伝達関連障害、例えば骨粗鬆症、統合失調症、血管疾患、心臓疾患または神経変性疾患の回復を導くことを意味する。
用語「予防的」または「予防」は、障害、例えばWntシグナル伝達関連障害の発症または再発を防止することを意味する。
本明細書において使用するとき、用語「病状」は、処置が望まれる1種以上の身体的および/または精神的症状として明らかとなる何れかの状態または疾患を含むが、これらに限定されず、既におよび新たに同定された疾患および他の障害を含む。
本明細書において使用するとき、対象または患者への薬剤または薬物の投与は、自己投与および他人による投与を含む。記載の病状の多様な処置または予防形態は、「実質的」を意味し、これは全体および何らかの生物学的または医学的に関連した結果が得られる全体未満の処置または予防を含むことも理解される。
本明細書において使用するとき、「調節」は、直接または間接的に制御または影響する能力を意味し、非限定的な例として、あるいは刺激し、アゴナイズもしくはアンタゴナイズし、阻止または促進し、そして強化または弱化することを意味し得る。
本明細書において使用するとき、「有機低分子」または「低分子」は、分子量3キロダルトン未満、好ましくは1.5キロダルトン未満を有する有機化合物(または無機化合物、例えば金属と複合体を形成している有機化合物)である。
本明細書において使用するとき、化合物の「有効量」なる用語は、所望の治療および/または予防効果を得るのに十分な量であり、例えば処置する疾患、例えば異常なWntシグナル伝達に関連した障害に関連した症状の予防または低減をもたらす量である。対象に投与する化合物の量は、疾患のタイプおよび重症度ならびに個体の特徴、例えば一般的な健康、年齢、性別、体重および薬物の耐容性に依存する。それは疾患の程度、重症度およびタイプにも依存する。当業者はこれらおよび他の要因に従って、適切な投与量を決定することができる。典型的には、治療または予防的効果を得るために十分な本発明の化合物の有効量は、約0.000001mg/kg体重/日〜約10,000mg/kg体重/日の範囲である。好ましくは、投与量範囲は約0.0001mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日である。本発明の化合物はまた、互いにまたは1種以上のさらなる治療化合物との組合せで投与してもよい。
用語「対象」は、異常なWntシグナル伝達に関連した疾患、障害または状態を有し、または罹患し得る生物、例えば原核生物および真核生物を含むことを意図する。対象の例は、哺乳類、例えばイヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラットおよびトランスジェニック非ヒト動物を含む。ある態様において、対象はヒト、例えばがん(例えば結腸癌)および他の増殖性疾患、骨粗鬆症および統合失調症ならびに本明細書に記載の他の疾患または状態(例えばWntシグナル伝達関連障害)を有する、有する危険がある、または潜在的に有し得るヒトである。他の態様において、対象は細胞である。
本明細書において使用するとき、用語「アリール」は、6〜14個の環炭素原子を有し、環ヘテロ原子を有さない芳香族性基として定義される。アリール基は単環式または縮合二環式もしくは三環式であってよい。これは非置換であるか、あるいは1個以上、好ましくは1または2個の置換基で置換されていてもよく、ここで該置換基は本明細書に記載のとおりである。本明細書に定義するとおり、アリール基は、これが単環式または二環式であるかに拘わらず、完全に芳香族性であってよい。しかし、本明細書に定義のとおり、それが1個以上の環を含むとき、用語アリールは、少なくとも1個の環が完全に芳香族性であるが、他の環(複数であってもよい)が部分不飽和もしくは飽和または完全に芳香族性でる基を含む。
「Het」は、本明細書において使用するとき、少なくとも1個のS、OまたはN環ヘテロ原子を含むヘテロアリールおよびヘテロ環式化合物を意味する。より具体的には、「Het」はN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜7員ヘテロ環式環またはN、OおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む少なくとも1個の5〜7員ヘテロ環式環を含む8〜12員縮合環系である。Hetの例は、本明細書において使用するとき、非置換および置換ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフリル、ピペリジル、ピペラジル、プリニル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3−ジアザパニル、1,4−ジアザパニル、1,4−オキサゼパニル、1,4−オキサチアパニル、フリル、チエニル、ピリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピロリジル、ピロリジニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ピリドピラジニル、ピロロピリジル、フロピリジル、インドリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフリル、ベンゾインドリル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、モルホリニル、ベンゾオキサゾリル、ピロロキノリル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ベンゾトリアゾリル、オキソベンゾ−オキサゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、インダニル等を含むが、これらに限定されない。ヘテロアリールはHetの定義に範囲に含まれる。ヘテロアリールの例は、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、チアゾリルおよびベンゾチアゾリルである。最も好ましいHetは、ピリジル、ピリミジニルおよびチアゾリルである。Hetは非置換であるか、あるいは本明細書に記載のとおりに置換されていてもよい。非置換であるか、または置換されているとき、これは炭素原子上でハロゲン、特にフッ素または塩素、ヒドロキシ、C1−C4アルキル、例えばメチルおよびエチル、C1−C4アルコキシ、特にメトキシおよびエトキシ、ニトロ、−O−C(O)−C1−C4アルキルまたは−C(O)−O−C1−C4アルキル、SCNまたはニトロで、あるいは窒素原子上でC1−C4アルキル、特にメチルまたはエチル、−O−C(O)−C1−C4アルキルまたは−C(O)−O−C1−C4アルキル、例えばカルボメトキシまたはカルボエトキシで置換されていることが好ましい。
2個の置換基が共通して結合している窒素と一体となってHetであるとき、得られるヘテロ環式環は窒素含有環、例えばアジリジン、アゼチジン、アゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルフィリン、ピロール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、イソキサゾール等であると理解され、ここで該Hetは非置換であるか、あるいは上記定義のとおり置換されていてもよい。
ハロはハロゲンであり、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素および塩素であってよい
特に定めのない限り、用語「アルキル」は、飽和脂肪族基、例えば直鎖アルキル基()例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。用語「アルキル」はまた、アルケニル基およびアルキニル基を含む。さらに、「Cx−Cy−アルキル」なる表現(ここで、xは1〜5であり、yは2〜10である)は、特定の範囲の炭素の特定のアルキル基(直鎖または分枝鎖)を意味する。例えば、C1−C4−アルキルなる表現は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチルおよびイソブチルおよびsec-ブチルを含むが、これらに限定されない。さらに、用語C3−7−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含むが、これらに限定されない。次に記載のとおり、これらのアルキル基およびシクロアルキル基はさらに置換されていてもよい。
さらに、用語アルキルは、炭化水素主鎖の1個以上の炭素に代えて、酸素、窒素、硫黄およびリン原子をさらに含んでいてもよいアルキル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その主鎖に10個以下の炭素原子を有し(例えば直鎖についてC1−C10、分枝鎖についてC3−C10)、より好ましくは6個以下の炭素を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に4〜7個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造に5または6個の炭素原子を有する。
さらにまた、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、後者は炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を意味し、これは該分子がその意図した機能を発揮することを許容する。
「シクロアルキル」基は、3〜10個の環炭素原子を有するC3−C10シクロアルキルを意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル、シクロノニル等であってよい。該シクロアルキル基は、単環式または縮合二環式であってよい。さらに、好ましいシクロアルキル基は、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。最も好ましくは、シクロアルキルはシクロヘキシルである。シクロアルキル基は完全飽和または部分不飽和であってよいが、それが完全飽和であることが好ましい。本明細書に定義のとおり、これはアリール基を含まない。シクロアルキル基は非置換であるか、あるいは次に定義の何れかの置換基、好ましくはハロ、ヒドロキシまたはC1−C6アルキル、例えばメチルで置換されていてもよい。
用語「置換」は、分子の1個以上の原子、例えばC、OまたはN上の水素を置換する置換基を有する基を説明することを意図する。かかる置換基は、電子求引基または電子求引原子を含んでいてもよい。かかる置換基は、例えばオキソ、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環式、アルキルアリール、モルホリノ、フェノール、ベンジル、フェニル、ピペリジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ピリジン、5H−テトラゾール、トリアゾール、ピペリジンまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基およびそれらの何れかの組合せを含んでいてもよい。
非置換は、置換基が水素のみであることを意図する。
本明細書に記載されているものを除いて、上記定義のアリール、Het、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはシクロアルキルの何れかは、非置換であるか、あるいは独立して4個まで、好ましくは1、2または3個の置換基で置換されていてもよく、該置換基は次の群:ハロ(例えばClまたはBr);ヒドロキシ;低級アルキル(例えばC1−C3アルキル);本明細書に定義の何れかの置換基で置換されていてもよい低級アルキル;低級アルケニル;低級アルキニル;低級アルカノイル;低級アルコキシ(例えばメトキシ);アリール(例えばフェニルまたはナフチル);置換アリール(例えばフルオロフェニルまたはメトキシフェニル);アリール低級アルキル、例えばベンジル、アミノ、モノもしくはジ低級アルキル(例えばジメチルアミノ);低級アルカノイルアミノアセチルアミノ;アミノ低級アルコキシ(例えばエトキシアミン);ニトロ;シアノ;シアノ低級アルキル;カルボキシ;低級カルボアルコキシ(例えばメトキシカルボニル;n−プロポキシカルボニルまたはイソプロポキシカルボニル)、低級アリーロイル、例えばベンゾイル;カルバモイル;N−モノ−もしくはN,Nジ−低級アルキルカルバモイル;低級アルキルカルバミン酸エステル;アミジノ;グアニジン;ウレイド;メルカプト;スルホ;低級アルキルチオ;スルホアミノ;スルホンアミド;ベンゾスルホンアミド;スルホネート;スルファニル低級アルキル(例えばメチルスルファニル);スルホアミノ;アリールスルホンアミド;ハロゲン置換または非置換アリールスルホネート(例えばクロロ−フェニルスルホネート);低級アルキルスルフィニル;アリールスルフィニル;アリール−低級アルキルスルフィニル;低級アルキルアリールスルフィニル;低級アルカンスルホニル;アリールスルホニル;アリール−低級アルキルスルホニル;低級アリールアルキル;低級アルキルアリールスルホニル;ハロゲン−低級アルキルメルカプト;ハロゲン−低級アルキルスルホニル;例えばトリフルオロメタンスルホニル;ホスホノ(−P(=O)(OH)2);ヒドロキシ−低級アルコキシホスホリルまたはジ−低級アルコキシホスホリル;ウレアおよび置換ウレア;アルキルカルバミン酸エステルもしくはカルバメート(例えばエチル−N−フェニル−カルバメート);または低級アルキル(例えばメチル、エチルまたはプロピル)から選択される。
ある態様において、上記アルキル、シクロアルキルおよびアリール基は、独立して非置換であるか、あるいは低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、カルボキシ、低級カルボアルコキシ、特にハロゲン、−OH、−SH、−OCH3、−SCH3、−CN、−SCNまたはニトロで置換されている。
本明細書で定義する用語「低級アルキル」は、単独または組み合わせて使用するとき、1〜6個の炭素原子を含むアルキルを意味する。アルキル基は分枝鎖または直鎖状であってよく、上記定義のとおりである。
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む炭化水素基を意味し、上記アルキルと同様の長さおよび可能な置換基を有する不飽和脂肪族基を意味する。本明細書に定義のとおり、これは非置換であるか、あるいは本明細書に記載の置換基で置換されていてもよい。炭素−炭素二重結合は、アルケニル基の何れかの2個の炭素原子間に存在し得る。好ましくは、これは1または2個の炭素−炭素二重結合、より好ましくは1個の炭素−炭素二重結合を含む。アルケニル基は直鎖または分枝鎖状であってよい。例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1,3−ブタジエニル等を含むが、これらに限定されない。用語「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を意味する。
例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語アルケニルはさらに、炭化水素主鎖の1個以上の炭素に代えて、酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルケニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルケニル基はその主鎖に6個以下の炭素原子を有する(例えば直鎖についてC2−C6、分枝鎖についてC3−C6)。同様に、シクロアルケニル基はその環構造に3〜8個の炭素原子を有し、より好ましくはその環構造に5または6個の炭素を有する。用語C2−C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
さらに、用語アルケニルは、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、後者は炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の水素に代えて置換基を有するアルケニル基を意味する。かかる置換基は、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレートアルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基を含み得る。
本明細書において使用するとき、用語「アリールアルキル」は、架橋アルキレン基で主鎖と結合しているアリール基を意味する。例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等を含むが、これらに限定されない。同様に、シアノアルキル基は架橋アルキレン基で主鎖と結合しているシアノ基を意味する。
他方、用語「アルキルアリール」は、フェニレン基を介して主鎖と結合しているアルキル基を意味する。例えばメチルフェニル、エチルフェニル等を含むが、これらに限定されない。
本明細書において使用するとき、用語「アルカノイル」は、1個以上の炭素原子がC=O基で置換されているアルキル鎖を意味する。C=O基は置換基の末端の一方でまたは基の中にに存在していてよい。例えば、ホルミル、アセチル、2−プロパノイル、1−プロパノイル等を含むが、これらに限定されない。
用語「低級チオアルキル」は、硫黄原子で主鎖と結合している、本明細書に定義するアルキル基を意味する。例えば、チオメチル(またはメルカプトメチル)、チオエチル(メルカプトエチル)等を含むが、これらに限定されない。
用語「低級カルボアルコキシ」またはそれと同様の表現は、主鎖との結合がアリール基(C(O))を介しているアルコキシカルボニル基を意味する。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等を含むが、これらに限定されない。
用語C(O)は、ケトン、アルデヒド、または酸もしくは酸誘導体であれ、−C=O基を意味することが理解される。同様に、S(O)は−S=O基を意味する。
用語「アルキニル」は、上記アルキルと長さおよび可能な置換基が類似した不飽和脂肪族基であって、少なくとも1個の三重結合を有する基を含む。
例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分枝鎖アルキニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。用語アルキニルはさらに、炭化水素主鎖の1個以上の炭素に代えて、酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルキニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキニル基はその主鎖に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてC2−C6、分枝鎖についてC3−C6)。用語C2−C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
さらに、用語アルキニルは、「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含み、後者は、炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の水素に代えて置換基を有するアルキニル基を意味する。かかる置換基は、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基を含み得る。
用語「アミン」または「アミノ」は、当該技術分野において一般に理解されるとおり、分子または基もしくは官能基の両方に広く適用されると理解され、1級、2級または3級であってよい。用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素、水素またはヘテロ原子と共有結合している化合物を含む。該用語は、例えば、「アルキルアミノ」、「アリールアミノ」、「ジアリールアミノ」、「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、「アリールアミノアルキル」、「アルコアミノアルキル」、「アミド」、「アミド」および「アミノカルボニル」を含むが、これらに限定されない。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1個のさらなるアルキル基と結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基と結合している基を含む。用語「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素が少なくとも1または2個のアリール基と結合している基をそれぞれ含む。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1個のアルキル基および少なくとも1個のアリール基と結合しているアミノ基を意味する。用語「アルコアミノアルキル」は、アルキル基と結合している窒素原子と結合した、アルキル、アルケニルまたはアルキニルを意味する。
用語「アミド」、「アミド」または「アミノカルボニル」は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素と結合している窒素原子を含む化合物または基を含む。該用語は、「アルコアミノカルボニル」または「アルキルアミノカルボニル」基を含み、これらはカルボニル基と結合したアミノ基と結合している、アルキル、アルケニル、アリールまたはアルキニル基を含む。それはアリールアミノカルボニルおよびアリールカルボニルアミノ基を含み、これらはカルボニルまたはチオカルボニル基の炭素と結合しているアミノ基と結合した、アリールまたはヘテロアリール基を含む基を含む。用語「アルキルアミノカルボニル」、「アルケニルアミノカルボニル」、「アルキニルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」、「アルキルカルボニルアミノ」、「アルケニルカルボニルアミノ」、「アルキニルカルボニルアミノ」および「アリールカルボニルアミノ」は、用語「アミド」に含まれる。アミドはウレア基(アミノカルボニルアミノ)およびカルバメート(オキシカルボニルアミノ)も含む。
用語「アリール」は、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5および6員単環芳香族性基を含む基を含み、例えばフェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン等を含む。さらにまた、用語「アリール」は、多環式アリール基、例えば三環式、二環式基を含み、例えばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、アントリル、フェナントリル、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリンまたはインドリジンを含む。
環構造にヘテロ原子を有するアリール基はまた、「アリールヘテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族性」とも称される。芳香環は1個以上の環の位置で、上記置換基、例えばアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基で置換されていてもよい。アリール基はまた、芳香族性でない脂環式またはヘテロ環式環と縮合または架橋されて、多環(例えばテトラリン)を形成してもよい。
用語「ヘテロアリール」は、本明細書において使用するとき、各環に7個までの原子を有し、少なくとも1個の環が芳香族性であり、O、NおよびSから成る群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、安定な単環式または二環式環を意味する。この定義の範囲内のヘテロアリール基は、アクリジニル、カルバゾリル、シノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンを含むが、これらに限定されない。下記ヘテロ環の定義のとおり、「ヘテロアリール」はまた、何れかの窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を含むと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族性であるかまたはヘテロ原子を含まないとき、結合は芳香環またはヘテロ原子含有環をそれぞれ介すると理解される。
用語「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、本明細書において使用するとき、O、NおよびSから成る群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、5〜10員芳香族性または非芳香族性ヘテロ環を意味し、二環式基を含む。「ヘテロシクリル」は、したがって、上記ヘテロアリールならびにそのジヒドロおよびテトラヒドロアナログを含む。さらなる「ヘテロシクリル」の例は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロチエニル、ならびにそれらのN−オキシドを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子またはヘテロ原子を介して生じ得る。
用語「アシル」は、アシル基(CHCO−)またはカルボニル基を含む化合物および基を含む。用語「置換アシル」は、1個以上の水素原子が例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基で置換されたアシル基を含む。
用語「アシルアミノ」は、アシル基がアミノ基と結合している基を含む。例えば、該用語は、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基を含む。
用語「アルコキシ」は、酸素原子と共有結合している、置換および非置換アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ基を含み、シクロペントキシのような環式基を含んでいてもよい。置換アルコキシ基の例は、ハロゲン化アルコキシ基を含む。該アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基のような基で置換されていてよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等を含むが、これらに限定されない。
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、酸素原子と二重結合で結合した炭素を含む化合物および基、ならびにその互変異性体を含む。カルボイルを含む基の例は、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等を含む。用語「カルボキシ基」または「カルボニル基」は、アルキル基がカルボニル基と共有結合している「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基と共有結合している「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基と共有結合している「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基と共有結合している「アリールカルボニル」基のような基を意味する。例えば、該用語は、例えばアミノカルボニル基(ここで、窒素原子はカルボニル基の炭素と結合している、例えばアミド)、アミノカルボニルオキシ基(ここで、酸素および窒素原子はいずれもカルボニル基の炭素と結合している、例えばカルバメートとも称するのような基を含む。さらにまた、アミノカルボニルアミノ基(例えばウレア)はまた、ヘテロ原子(窒素、酸素、硫黄等、ならびに炭素原子)と結合したカルボニル基の他の組合せも含む。さらにまた、ヘテロ原子がさらに、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシル等の基で置換されていてもよい。
用語「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」は、二重結合で硫黄原子と結合した炭素を含む化合物および基を含む。用語「チオカルボニル基」は、カルボニル基と同様の基を含む。例えば、「チオカルボニル」基はアミノ基がチオカルボニル基の炭素原子と結合しているアミノチオカルボニルを含み、さらにまた、他のチオカルボニル基はオキシチオカルボニル(炭素原子と結合した酸素)、アミノチオカルボニルアミノ基等を含む。
用語「エーテル」は、2個の異なる炭素原子またはヘテロ原子と結合した酸素を含む化合物または基を含む。例えば、該用語は「アルコキシアルキル」を含み、これは別のアルキル基と共有結合している酸素原子と共有結合したアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味する。
用語「エステル」は、カルボニル基の炭素と結合している酸素原子と結合した炭素またはヘテロ原子を含む化合物および基を含む。用語「エステル」は、アルコキシカルボキシ基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等を含む。アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は上記定義のとおりである。
用語「チオエーテル」は、2個の異なる炭素またはヘテロ原子と結合した硫黄原子を含む化合物および基を含む。チオエーテルの例は、アルコチオアルキル、アルコチオアルケニルおよびアルコチオアルキニルを含むが、これらに限定されない。用語「アルコチオアルキル」は、アルキル基と結合している硫黄原子と結合したアルキル、アルケニルまたはアルキニルを有する化合物を含む。同様に、用語「アルコチオアルケニル」および「アルコチオアルキニル」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がアルキニル基と共有結合している硫黄原子と結合している化合物または基を意味する。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OHまたは−O−を有する基を含む。
用語「ハロゲン」はフッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。用語「過ハロゲン化」は一般に、全ての水素がハロゲン原子で置換されている基を意味する。
用語「多環」または「多環式基」は、2個以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を有する基であって、2個以上の炭素が2個の隣接する環で共通している基を意味し、例えばかかる環は「縮合環である」。非隣接原子を介して結合している環は「架橋」環と称される。多環のそれぞれの環は、上記の置換基、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリールまたは芳香族性もしくはヘテロ芳香族性基で置換されていてもよい。
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の何れかの元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
用語「電子求引基」または「電子求引原子」は、当該技術分野で理解され、隣接する原子から価電子を誘引する、すなわち置換基が隣接する原子に対して電気的に陰性である置換基の傾向を意味する。電子求引能レベルの定量は、Hammett sigma(Σ)定数によって与えられる。この周知の定数は、多くの文献、例えばJ. March, Advanced Organic Chemistry, McGraw Hill Book Company, New York, (1977 edition) pp. 251-259に記載されている。Hammett定数値は一般に、電子供与基で負であり(NH2について、Σ[P]=−0.66)、電子求引基は正である(ニトロ基について、Σ[P]=0.78)。ここでΣ[P]は、パラ置換を示す。電子求引基の例は、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、クロライド、カルボニル、チオカルボニル、エステル、イミノ、アミド、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファミン酸、ホスホン酸、ボロン酸、硫酸エステル、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボネート、ニトレートおよびニトロ基等を含むが、これらに限定されない。電子求引原子の例は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を含むが、これらに限定されない。特に定めのない限り、本明細書における酸性官能基についての記載は、好適なカチオンとの組合せにおける当該官能基の塩も含むことが理解される。
さらに、用語「その何れかの組合せ」は、列挙した官能基および分子の何れかのメンバーを組み合わせて、より大きな分子構造を創出し得ることを意味している。例えば、用語「フェニル」、「カルボニル」(または「=O」)、「−O−」、「−OH」およびC1−6(すなわち、−CH3および−CH2CH2CH2−)を組み合わせて、3−メトキシ−4−プロポキシ安息香酸置換基を形成してよい。官能基および分子を組み合わせてより大きな分子構造を創出するとき、各原子の価数を満足するために必要なとおりに、水素を除去または添加してもよいことが理解される。
本明細書の説明は、化学結合の法則および原理と一致して構成されるべきである。例えば、ある位置で置換基を適合させるために、水素原子を除く必要があり得る。さらにまた、可変部(すなわちR基)の定義ならびに本発明の一般式(例えば式IまたはII)の結合位置は、当該技術分野において既知の化学結合の法則に合致すると理解される。全ての上記本発明の化合物はまた、さらに、各原子の原子価を満足するために必要な、隣接する原子および/または水素間の結合が含まれると理解される。すなわち、結合および/または水素原子を加えて、次のタイプの原子のそれぞれに次の合計結合数を与える:炭素:4結合;窒素:3結合;酸素:2結合;硫黄:2〜6結合。
本発明の化合物のいくつかの構造は、不斉炭素原子を含むことに注意されたい。したがって、かかる不斉性から生じる異性体(例えば全てのエナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体)が本発明の範囲に含まれると理解される。かかる異性体は、分級分離技術および立体的に制御された合成によって実質的に純粋な形態で得られる。さらにまた、かかる構造ならびに本明細書に記載の他の化合物および基は、その全ての互変異性体も含む。本明細書に記載の化合物は、当該技術分野において理解される合成戦略によって得ることができる。
いくつかの本発明の化合物の置換基は異性環式構造を含むことにも注意されたい。したがって、特に定めのない限り、特定の置換基の構造異性体が本発明の範囲に含まれると理解される。例えば、用語「テトラゾール」はテトラゾール、2H−テトラゾール、3H−テトラゾール、4H−テトラゾールおよび5H−テトラゾールを含む。
本明細書で使用するある用語の定義は、以下に提供される。他の用語の定義は、U.S. Department of Energy, Office of Science, Human Genome Projectから得られる用語集に見ることができる。本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの常套技術が使用される。これらの技術は周知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Vols. I III, Ausubel, ed. (1997); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989); DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II, Glover D, ed. (1985); Oligonucleotide Synthesis, Gait, ed. (1984); Nucreic Acid Hybridization, Hames & Higgins, Eds. (1985); Transcription and Translation, Hames & Higgins, eds. (1984); Animal Cell Culture, Freshney, ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymol. (Academic Press, Inc., 1984); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Miller and Calos, Eds. (Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1987);およびMethods in Enzymology, Vols. 154 and 155, Wu and Grossman, and Wu, Eds.にそれぞれ記載されている。
本明細書において使用するとき、「レポーター」遺伝子は、用語「マーカー遺伝子」と相互に交換可能なように使用されており、容易に検出可能な核酸および/またはルシフェラーゼのような容易に検出可能な遺伝子産物をコードする核酸である。
転写および翻訳制御配列はDNA制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等であり、これは宿主細胞のコーディング配列の発現のために提供する。真核細胞において、ポリアデニル化シグナルが制御配列である。
「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼと結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することができるDNA制御領域である。本発明を定義するため、該プロモーター配列はその3’末端で転写開始部位に結合されており、バックグラウンド以上の検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最低塩基または要素数を含むために上流(5’方向)に伸長する。プロモーター配列内で、転写開始部位(簡便には、例えばヌクレアーゼS1でのマッピングによって定義される)ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出される。
コーディング配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、次いでtrans-RNAスプライシングされてコーディング配列によってコードされるタンパク質に翻訳されるとき、細胞内で転写および翻訳制御配列の「制御下」にある。
用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与したとき、生理的に耐容性であり、典型的にはアレルギーまたは同様の有害な反応、例えば胃の不調、目眩等を生じない分子および組成物を意味する。好ましくは、本明細書において使用するとき、用語「薬学的に許容される」は、米国政府または州政府当局に認められているか、あるいは米国薬局方または動物、特にヒトに使用するために一般に理解されている他の局方に記載されていることを意味する。
用語「担体」は、本化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビークルを意味する。かかる医薬担体は、滅菌液体、例えば水および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であってよい。水または水溶液、水性生理食塩水および水性デキストロース溶液および水性グリセロール溶液が、好ましくは担体として、特に注射液として使用される。好適な医薬担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martinに記載されている。
用語「治療上有効量」および「有効量」は、本明細書において、宿主の活性、機能および応答における臨床的に顕著な欠乏を、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは90%低下させ、最も好ましくは防止するのに十分な量を意味するものとして使用される。あるいは、治療上有効量は、宿主の臨床的に顕著な状態/症状の改善を引き起こすのに十分である。
「薬物」は、全て本発明にしたがって、医薬組成物および診断組成物を製造するために使用することができるか、あるいはかかる目的のために独立して使用され得る化合物、核酸(阻害核酸、例えばshRNA、RNAi等を含む)、低分子、ポリペプチド、フラグメント、アイソフォーム、変異体または他の物質であり得る全ての物質を意味する。
「調節剤」は、本明細書において使用するとき、Axin安定化を促進または消失させることができ、それによってWntシグナル伝達に作用し得る薬物、化合物、タンパク質またはペプチドを含むが、これらに限定されない物質であり得る。調節剤は、Wntシグナル伝達を促進または阻害し得るように、Axinと直接または間接的に相互作用することができる。
「誘導体」は、親タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列を含み、アミノ酸残基置換、欠失または付加の導入によって改変されている化合物、タンパク質またはポリペプチド、あるいはヌクレオチド置換または欠失、付加または変異の導入によって修飾された核酸またはヌクレオチドを意味する。誘導体核酸、ヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドは、親ポリペプチドと同様または同一の機能を有する。
用語「二本鎖RNA」または「dsRNA」は、本明細書において使用するとき、2本のアンチパラレルおよび実質的に相補的な、上記核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を意味する。二本鎖構造を形成する2本の鎖は、1つのより大きなRNA分子の別の部分であってよく、あるいはそれらは別のRNA分子であってもよい。別のRNA分子、例えばsiRNAは、しばしば文献において、siRNA(低分子干渉RNA)と称される。2本の鎖が1つのより大きな分子の部分であり、したがって二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれの他の鎖の5’末端間でヌクレオチドの中断されていない鎖によって結合されているとき、結合RNA鎖は「ヘアピンループ」、「低分子ヘアピンRNA」または「shRNA」と称される。2本の鎖が二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれの他の鎖の5’末端間でヌクレオチドの中断されていない鎖以外の手段で共有結合されているとき、該結合構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は同一または異なるヌクレオチド数を有していてもよい。塩基対の最大数は、siRNAの最も短い鎖のヌクレオチド数引く二本鎖に存在する何れかのオーバーハングである。二本鎖構造に加えて、siRNAは1個以上のヌクレオチドオーバーハングを含んでいてもよい。さらに、本明細書で使用するとき、「siRNA」は、複数のヌクレオチドでの実質的な修飾および本明細書に開示されているかあるいは当該技術分野において既知のあらゆるタイプの修飾を含む、リボヌクレオチドの化学修飾を含んでいてもよい。何れかのかかる修飾は、siRNAタイプ分子において使用するとき、本明細書および特許請求の範囲において、「siRNA」に含まれる。
本明細書において使用するとき、「ヌクレオチドオーバーハング」は、siRNAの一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸長するか、あるいはその逆であるとき、siRNAの二本鎖構造から突出する、対にならないヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを意味する。「平滑」または「平滑末端」は、siRNAの末端で対にならないヌクレオチドが存在しないこと、すなわちヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。「平滑末端化」siRNAは、その全長にわたって二本鎖であり、すなわち該分子のいずれの末端でもヌクレオチドオーバーハングが存在しない。明確にするため、siRNAの3’末端または5’末端に結合した化学キャップまたは非ヌクレオチド化学分子は、siRNAがオーバーハングを有するか平滑末端であるかを決定する際に考慮されない。
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列と実質的に相補的である領域を含むsiRNAの鎖を意味する。本明細書において使用するとき、用語「相補性の領域」は、本明細書に定義のある配列、例えば標的配列と実質的に相補的であるアンチセンス鎖の領域を意味する。相補性の領域が標的配列に対して完全に相補的でないとき、ミスマッチは末端領域で最も耐容性であり、そして存在するとき、一般に、例えば5’および/または3’末端の6、5、4、3または2ヌクレオチド内の末端領域または複数の領域で存在する。
用語「センス鎖」は、本明細書において使用するとき、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的である領域を含むsiRNAの鎖を意味する。
siRNAについて記載するとき、「細胞への導入」は、当業者に理解されるように、細胞への取り込みまたは吸収を促進することを意味する。siRNAの吸収または取り込みは、援助のない拡散または積極的な細胞プロセスを介して、または助剤もしくはデバイスによって生じ得る。この用語の意味は、インビトロでの細胞へのものに限られない;siRNAは、細胞が生きている生物の一部である、「細胞への導入」であってもよい。そのような場合、細胞への導入は、生物への送達を含む。例えば、インビボ送達のために、siRNAを組織部位に注射するか、あるいは全身的に投与してよい。細胞へのインビトロでの導入は、エレクトロポレーションおよびリポフェクションのような当該技術分野において既知の方法を含む。
用語「結合」は、ある成分(例えばAxinタンパク質)と他の成分(例えばAxin結合タンパク質)の物理的結合を意味する。結合の測定によって、解離定数、会合定数、結合速度(on-rate)または解離速度(off-rate)のような値を導くことができる。
本明細書において使用するとき、用語「結合を許容する条件」は、例えば結合が生じる温度、塩濃度、pHおよびタンパク質濃度の条件を意味する。正確な結合条件は、アッセイの性質、例えば該アッセイが純粋なタンパク質を用いるかあるいは部分的にのみ純粋なタンパク質を用いるかによって変化する。結合のための温度は、15℃〜37℃で変化するが、好ましくは室温〜約30℃である。結合反応におけるAxinの濃度も変化するが、好ましくは(例えば、放射線標識成分を用いる反応において)約10pM〜10nMである。
結合が1mM以下のKd、一般に100nM〜10pMの範囲で生じるとき、該用語を本明細書において使用するとき結合は「特異的」である。例えば、Kdが100nM、50nM、10nM、1nM、950pM、900pM、850pM、800pM、750pM、700pM、650pM、600pM、550pM、500pM、450pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、75pM、50pM、25pM、10pMまたはそれ未満であるとき、結合は特異的である。
本明細書において使用するとき、「発現」は、次のものの1つ以上を含むが、それらに限定されない:遺伝子の前駆mRNAへの転写;前駆mRNAのスプライシングまたは他のプロセッシングによる成熟mRNAの生産;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用およびtRNA利用能を含む);および適切な発現および機能に必要であるとき、翻訳生成物の糖鎖修飾および/または他の修飾。
本明細書において使用するとき、用語「成熟」は、変異の結果である、野生型からの何れかの遺伝的変異、例えば一塩基多形(SNP)を意味する。用語「変異」は、本明細書を通じて、用語「マーカー」、「バイオマーカー」および「標的」と相互に交換可能なように使用される。
Wntシグナル伝達経路
Wnt遺伝子ファミリーはInt1/Wnt1がん原遺伝子およびショウジョウバエWnt1ホモログである無翅(Wg)ショウジョウバエに関連した分泌タンパク質の大きなクラスをコードする(Cadigan et al. (1997) Genes & Development 11:3286-3305)。Wntは多様な組織および臓器で発現され、ショウジョウバエの分節;C. elegansにおける内胚葉の発生;および哺乳類の肢極性の確立、神経堤分化、腎形態形成、性別決定および脳発生を含む多くの発生プロセスに必要である(Parr, et al. (1994) Curr. Opinion Genetics & Devel. 4:523-528)。Wnt経路は胚形成期および成熟生物の両方において、動物発生の主なレギュレーターである(Eastman, et al. (1999) Curr Opin Cell Biol 11: 233-240; Peifer, et al. (2000) Science 287: 1606-1609)。
Wntシグナルは7種の膜貫通ドメイン受容体のFrizzled(Fz)ファミリーによって伝達される(Bhanot et al. (1996) Nature 382:225-230)。WntリガンドはFzdと結合し、そうすることで細胞質タンパク質Dishevelled(ヒトおよびマウスのDvl−1、2および3)を活性化し(Boutros, et al. (1999) Mech Dev 83: 27-37)、LRP5/6をリン酸化する。それによってシグナルが生じ、Armadillo/β−カテニンのリン酸化および分解を防止し、そしてβ−カテニンの安定化を導く(Perrimon (1994) Cell 76:781-784)。この安定化は、GSK3、APC、CK1およびβ−カテニンを含む多様なタンパク質と一体となってβ−カテニン破壊複合体を形成する骨格タンパク質であるAxinとのDvlの結合によってもたらされる(Zeng et al. (1997) Cell 90:181-192)。進化的に保存されている標準Wnt/β−カテニンシグナル伝達カスケードは、後生動物の発生の多様な局面を制御する。該経路の状況依存的活性化は、胚細胞運命決定、幹細胞制御および組織ホメオスタシスに関与する。Wnt/β−カテニン経路の重要な特徴は、β−カテニン破壊複合体によって制御された、下流エフェクターβ−カテニンのタンパク質分解である。β−カテニン破壊複合体の主な構成要素は、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)、AxinおよびGSK3α/βである。Wnt経路活性化の非存在下で、細胞質β−カテニンは構成的にリン酸化され、分解の標的にされる。Wnt刺激によって、β−カテニン破壊複合体が解離して、核β−カテニンの蓄積およびWnt経路応答遺伝子の転写を導く。
β−カテニン破壊複合体の成分に作用するWntタンパク質の過剰発現または変異によって仲介される該経路の不適切な活性化は、多くのがんで観察されている(Polakis, P. (2007) Curr Opin Genet Dev 17, 45-51)。特に、腫瘍リプレッサーAPCの切断変異は、結直腸癌腫において最も一般的な遺伝的変化である。さらに、肝臓癌腫および結直腸癌を有する患者において、それぞれAxin1およびAxin2変異が同定されている(Taniguchi, K. et al. (2002) Oncogene 21, 4863-71; Liu, W. et al. (2000) Nat Genet 26, 146-7; Lammi, L. et al. (2004) Am J Hum Genet 74)。これらの体細胞変異は、β−カテニンのWnt非依存的安定化およびβ−カテニン介在転写の構成的活性化をもたらす。
β−カテニンの安定化による異常なWnt経路活性化は、多くの結直腸癌腫の腫瘍形成において中心的な役割を有する。結直腸癌腫(CRC)の80%が、連続したWntシグナル伝達を可能とする腫瘍リプレッサーAPCの不活性化変異を有する。さらにまた、Wnt経路活性化が黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌および胃癌に関与し得ることを示唆する証拠が増えつつある。Wnt、正常な発生およびがんの間の関係が長らく認識されているが、Wntシグナル伝達の標的としてのc−Mycがん原遺伝子の同定との関連性がさらに確立された(He et al. (1998) Science 281:1509-3512)。
さらにまた、骨粗鬆症、骨関節炎、多発性嚢胞腎疾患、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心臓疾患、非がん原性増殖性疾患およびアルツハイマー病のような神経変性疾患を含むが、これらに限定されない他の障害が、異常なWntシグナル伝達に関連している。
Axin
Axinは、β−カテニンは回復交代のタンパク質成分(GSK3、APC、CK1およびβ−カテニン)と一体となって並ぶ、Wntシグナル伝達の重要なレギュレーターである。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3、ショウジョウバエにおいてshaggyとして知られている)、腫瘍抑制遺伝子産物APC(大腸腺腫様ポリポーシス)(Gumbiner (1997) Curr. Biol. 7:R443-436)およびAxinは全て、Wnt経路の負のレギュレーターである。Wntリガンドの非存在下では、これらのタンパク質は複合体を形成して、β−カテニンのリン酸化および分解を促進するが、Wntシグナル伝達はこの複合体を不活性化し、β−カテニン分解を防止する。結果として安定化されたβ−カテニンは核へ移行し、そこでこれはTCF(T細胞因子)転写因子(リンパ球エンハンサー結合因子−1(LEF1)としても知られる)と結合して、TCF/LEF誘導性転写の共アクチベーターとして働く(Bienz, et al. (2000) Cell 103: 311-320; Polakis, et al. (2000) Genes Dev 14: 1837-1851)。
多タンパク質破壊複合体の効果的な集合は、その主成分の安定状態レベルに依存する。Axinはβ−カテニン破壊複合体の効率を制御する濃度限定的因子であると報告されており、上昇したAxinの発現は切断APCを発現する細胞系におけるβ−カテニン分解を促進することができる(Salic, A., et al. (2000) Mol Cell 5, 523-32 ; Lee, E., et al. (2003) PLoS Biol 1, E10; Behrens, J., et al. (1998) Science 280, 596-9 ; Kishida, M., et al. (1999) Oncogene 18, 979-85)。したがって、Axinタンパク質レベルを緊密に制御し、適切なWntシグナル伝達を確実にする必要がある可能性がある。この理由から、XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤は、Wnt経路シグナル伝達の有効な調節剤である。
本明細書に記載したとおり、遺伝生化学およびプロテオミクス手法を使用して、Wntシグナル伝達経路の新規調節剤を探索した。本明細書において説明し、図に示し、そして実験的に説明するように、Axin安定化はWntシグナル伝達を調節する強いメカニズムである。タンキラーゼ(TNKS)を阻害してAxinの半減期を延長し、β−カテニン分解を促進することができる低分子量化合物を同定した。さらにまた、Axinタンパク質安定性を制御する新たなメカニズムが明らかとなったが、その治療的探索はWnt経路依存的がんを処置するために期待できる。
ヒトAxin遺伝子は900アミノ酸ポリペプチドをコードし、これはマウスタンパク質と87%の同一性を有する(「融合」(fu)として知られ、ホモ接合性マウス胚に軸重複(axis duplication)を生じることが示されている)。該配列はまた、Gタンパクシグナル伝達ドメインのレギュレーター(RGSドメイン、APCと結合する)、GSK3結合ドメイン、β−カテニン結合ドメイン、DIXドメイン(自己オリゴマー形成に関与する)およびショウジョウバエおよび脊椎動物dishevelledタンパク質のN末端付近の保存配列と相同性を有するC末端領域を含む。該配列は二分核定位シグナルを含むが、Axinは核に局在化することが知られている(Zeng, et al. (1997) Cell 90: 181)。
Axin内で最も保存されたアミノ酸伸長を含む、Axin1の小さなN末端領域(アミノ酸19〜30)が、本明細書に記載のとおり、タンキラーゼとの相互作用に必要かつ十分であることを見出した。このN末端ドメインを介するAxin1とTNKS1の特異的相互作用は、本明細書において、TBD(タンキラーゼ結合ドメイン)と称し、GST−プルダウンおよび免疫共沈降アッセイによってさらに実証された。
Axinは少なくとも2種の形態、Axin1およびAxin2の一方として存在する(非ヒト種においてAxilまたはconductinとも称される)。Axin1とAxin2タンパク質は、約45%のアミノ酸同一性を有し、β−カテニンレベルの制御において本質的に同一の機能を有する。しかしAxin2とは異なり、Axin1はβ−カテニン−TCF制御遺伝子であるとは考えられない。さらにまた、Wntシグナル伝達を制御するフィードバックリプレッサー経路において、Axin2の機能は、Axin1とAxin2のWnt経路活性化に対する効果の間で潜在的に機能的差が存在し得ると考えられていることに貢献する。
本発明の化合物は、本明細書において実験的に示されるとおり、Axin安定化剤として作用する。かかる化合物はAxinのタンパク質レベルを上昇させる。多様なアッセイによってWntアンタゴニストとして同定された化合物は、Axin安定化を介して作用することが見出された。このメカニズムの発見および確認によって、本発明の方法が得られた。
本発明の化合物は、多数の低分子ブラックボックススクリーニングにおいてWntシグナル伝達を阻害することが見出された。あるスクリーニングは、TCFルシフェラーゼレポーターであるSuperTopflashで安定的にトランスフェクトしたSW480細胞(APC切断を有する結腸癌細胞系)を用いて実施した。SW480はAPC欠損であり、構成的リガンド非依存的Wntシグナル伝達によって特徴付けられるヒト結腸癌腫系である。β−カテニンがリン酸化されず、正常細胞におけるようにβ−カテニン破壊複合体によって分解されるため、シグナル伝達は、核における安定なβ−カテニンの異常な蓄積から生じる。
さらに、本発明の化合物は、インタクトなWntシグナル伝達経路を有する細胞系(例えば293T細胞)においてWntシグナル伝達を阻害することを見出した。別のスクリーニングは、Wnt3a調節培地で処理した293T−STF細胞を用いて実施した。これおよび阻害薬物(例えばRNAiおよびWnt阻害剤タンパク質)の使用は、同時的Axin安定化なしで多様なレベルでWntシグナル伝達を阻止することが見出され、本発明のAxin安定化の作用はWnt阻害それ自体の結果ではないと考えられる。
本明細書に記載のとおり、本発明のAxin安定化剤(例えば本発明の化合物)は、GSK3依存的メカニズムを介して、結腸癌細胞(例えばSW480細胞)におけるβ−カテニンのリン酸化および分解を誘導する。かかる安定化剤は、インビトロ細胞培養アッセイにおいて結腸癌細胞の増殖を阻害する。本発明の一つの態様において、かかる安定化剤は、GSK3によるAxinのリン酸化を増加させ、Axinを安定化し、Axinとβ−カテニン間の相互作用を上昇させる。これはβ−カテニンのリン酸化および分解を加速させる。
TNKSの触媒活性は、Axinの安定性と関連しており、AxinとTNKSは、免疫共沈降実験および酵母2ハイブリッドアッセイにおいて示された。
タンキラーゼ(TNKS)
「タンキラーゼ」は、RF1−相互作用アンキリン結合DP−リボースポリメラーゼを短縮したものであり、PARシレーション活性を有する分子足場タンパク質である。非分極細胞のゴルジ体へのその局在化に基づいて、小胞輸送(例えば新たに合成されたタンパク質の標的送達)を制御することが知られている(Yeh, et al. (2006) Biochem. J. 399:415)。TNKSは、テロメア、セントロソームおよび核孔でも見られる。TNKSは有糸分列分節において必須の制御的役割を有し、テロメア長の負のレギュレーターであるTRF1を調節して、テロメアのホメオスタシスを制御する(Smith, et al. (1998) Science 282:1484)(Dynek, et al. (2004) Science 304:97)。
TNKS1および2は、それぞれ1,327および1,166残基を含むタンパク質である。タンパク質は約83%の配列同一性を有し、主としてTNKS1にのみ存在するヒスチジン/プロリン(praline)/セリンリッチ(HPS)ドメインの非存在において異なる。両タンパク質は、自己オリゴマー形成に関与する、基質結合のための24個のアンキリンタイプリピート、ステライルアルファモチーフ(SAM)ドメインおよび触媒活性のための、C末端ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)相同性ドメインを有する。NAD+結合および触媒作用に必要な決定的残基は、2つのタンパク質間で完全に保存されている。結合パートナーはIRAP(インスリンシグナル伝達に関与する)、Grb14(インスリンシグナル伝達に関与する)、NuMA(細胞サイクルに関与する)およびMcl−1(アポトーシスに関与する)を含む。
本明細書に記載の酵母2ハイブリッドアッセイによって、reveal that the region spanning TNKS1のIII、IVおよびVアンキリンリピートドメインにわたる領域が、Axin1との相互作用に必要かつ十分であることが明らかとなる。さらにまた、β−カテニン安定化は、Axin結合ドメインおよびSAMドメインを必要とするが、TNKS1のPARPドメインを必要としないことが見出された。
TNKS1およびTNKS2は、Axinタンパク質レベルの制御において重複して機能する。少なくとも(本明細書に記載の)SW480細胞、HEK293細胞およびDLD−1細胞において示されるように、TNKS1およびTNKS2は、β−カテニンリン酸化の上昇、β−カテニン存在量の減少およびβ−カテニン標的遺伝子の転写の阻害のために、共に減少される必要がある。TNKS1またはTNKS2単独の減少は、上昇したAxin1/2タンパク質レベルを導かない。
TNKS1および2は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼまたはPARPと称される、NAD+依存酵素群に属し、それら自身または他の基質タンパク質をADP−リボースポリマーで修飾する(Schreiber, et al. (2006) Nature Reviews Molecular Cell Biology; 7 (7):517)。ADP−リボースポリマーの付加(PARシレーションまたはポリ(ADP−リボース)化とも知られている)は、細胞分裂、エネルギー代謝および細胞間輸送において、細胞生存および細胞死機能、転写制御、テロメア結合および紡錘体形成を制御する、翻訳後修飾である。
いくつかの場合において、標的タンパク質のPARシレーションは、ユビキチン依存的分解に関連している。例えば、TNKS1によるTRF1のPARシレーションは、テロメアからTRF1を解離させ、その分解を促進する(Smith S, et al. (1998) Science; 282(5393):1484)。また、TNKSの自己PARシレーションは、TNKSの分解を促進する(Yeh TYJ, et al. (2006) Biochemical Journal; 399:415)。
本明細書に記載のsiRNAレスキューアプローチによって実験的に示されるように、タンキラーゼの触媒(PARシレーション)活性は、Axinタンパク質レベルおよびWnt経路シグナル伝達の制御に必要である。XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤による該触媒活性の阻害は、Axin安定化ならびに続くβ−カテニン分解およびWntシグナル伝達の停止をもたらす。XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤は、実際、それらのPARPドメインでTNKS1/2と固く結合する。XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤はまた、TNKS1/2の自己PARシレーション能を阻害し、そして実際に、TNKSタンパク質レベルを上昇させ、同時にそれらの触媒機能を抑制する。
タンキラーゼ(TNKS)阻害およびWntシグナル伝達阻害
本明細書に記載の免疫共沈降実験によって、TNKS1/2がSW480細胞においてAxin2と結合し、そして本明細書に記載の酵母2ハイブリッドアッセイ実験によって、Axin1/2とTNKS1/2間の強い結合が示されることが見出された。AxinとTNKSの間の物理的相互作用は、Axinにおける進化的に保存された「タンキラーゼ結合ドメイン」(TBD)によって介在されるように、インビボでのAxinタンパク質レベルの制御に重要である。本明細書において示されるとおり(例えばsiRNA実験によって)、TNKS1/2はAxin安定性に作用する唯一のPARPファミリーメンバーである。
本明細書に記載のとおり、タンキラーゼ阻害剤(例えばXAV939)はGSK3β−Axin複合体形成を増加させ、それによってβ−カテニンのGSK3β依存的リン酸化およびプロテアソーム分解を促進する。タンキラーゼ阻害剤(例えばXAV939)が細胞のβ−カテニンを分解する他の欠損能力を助けるため、これは細胞においてさえも、正常でないAPC機能を共に生じる(例えば、切断APCアレルを有するSW480結直腸細胞系)。XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤は、TNKS1/2と物理的に相互作用し(本明細書に、例えば蛍光偏光アッセイにおいて示すとおり)、上流およびβ−カテニン破壊複合体レベルの両方で機能することができ;それらはAxin転写レベルの対応する増加なしに、Axinタンパク質レベルの上昇を生じる。
本明細書においてより詳細に記載し、図面に示し、そして実験的に示されるように、TNKS1/2はAxin安定化剤(例えば、Axin安定化低分子、阻害核酸および融合タンパク質を含む)の効果的な標的であることが示される。TNKS1/2と結合し、その触媒活性を阻害する化合物およびTNKS1/2に対するsiRNAは、Axinを安定化し、同時にβ−カテニンのリン酸化および分解を促進する。
TNKSアンタゴニストは好ましくは、TNKSタンパク質の触媒活性(例えば、Axinのような標的タンパク質をRPAシレーションする能力および自己PARシレーション能)を低下または阻害して、TNKSタンパク質または転写レベルを低下しないことによって作用する。本明細書において実験的に記載するとおり、TNKSはAxinと物理的に結合し、Axinタンパク質レベルの制御にそのPARシレーション活性が必要とされる。TNKSはAxinのユビキチン化および分解を促進し、これは少なくとも部分的には、Axinまたはユビキチン−プロテオソーム経路の成分の直接PARシレーションを介して仲介され得る。
簡単には、XAV939のようなタンキラーゼ阻害剤はAxinタンパク質レベルを上昇させ、ホスホ−β−カテニンを増加させ、細胞質β−カテニンを減少させ、β−カテニンsiRNAと同様にβ−カテニン標的遺伝子に作用する。
スクリーニングアッセイ
本発明は、例えばAxin安定化および/またはTNKS触媒活性の抑止によって、Wntシグナル伝達を調節する調節剤、すなわち候補または試験化合物または薬物(例えばペプチド、ペプチド模倣物、低分子または他の薬物)を同定するための方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも称する)を提供する。一つの態様において、該スクリーニング方法は、Axin安定化および/またはTNKS触媒活性を調節することができ、したがってWnt経路シグナル伝達を調節することができる薬物を同定する。逆に、本発明の方法によって発見されるAxin脱安定化剤は、Wntシグナル伝達を伝播し、促進し、またはそうでなければアゴナイズするために使用することができる。
Wntの調節剤(例えばAxin安定化の調節剤、TNKSの調節剤)は、例えばアゴニストおよび/またはアンタゴニストを含んでいてもよく、低分子(例えば本発明の化合物)、阻害核酸および融合タンパク質を含んでいてもよい。本発明の方法を用いる例は、本発明の実施例の項に詳細に記載されている。
用語Wntシグナル伝達の「アゴニスト」または「模倣物」は、本明細書において使用するとき、TNKSに対する刺激効果を有する(例えばTNKSの触媒特性を向上させる)および/またはAxinに対する脱安定化効果を有し、したがってWntシグナル伝達を模倣またはアップレギュレーション(例えば増強または補助)する薬物を意味する。かかるWntアゴニストは、Axinの生物学的活性(例えばβ−カテニンをユビキチン化し、分解する能力)を阻害し、低下させまたは抑制し、そして/またはTNKS活性(例えばそのPARシレーション能)をアゴナイズし、そして/またはそうでなければAxin脱安定化を導く。「模倣物」および「アゴニスト」は、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭化水素、ヌクレオチドおよび有機低分子を含むが、これらに限定されない。候補模倣物は、例えば合成低分子、動物、植物または真菌細胞の抽出物に含まれる化合物、ならびにかかる細胞から調節した培地を含む、天然または合成化合物であってよい。
Wntアゴニストは、Axinタンパク質とそれが通常結合する他のWntシグナル伝達タンパク質(例えばGSK3、APC、Dvl)間の結合事象または複合体形成を阻止することができる(すなわち、Wntアゴニストがβ−カテニン破壊複合体を破壊する)。かかるアゴニストは、β−カテニン安定化および伝播またはWntシグナル伝達の促進に寄与することができる。あるいは、WntアゴニストはTNKS触媒活性を促進する化合物または薬物であってもよい。
用語Wntシグナル伝達の「アンタゴニスト」または「阻害剤」は、本明細書において使用するとき、Axinに対するその安定化効果および/またはTNKSに対するそのアンタゴナイズ効果のために、Wntシグナル伝達を阻害し、阻止し、停止させ、あるいは負の制御を行う薬物を意味する。かかるWntアンタゴニストは、TNKSタンパク質の触媒(例えばPARシレーション)活性を抑止するか、あるいはAxinタンパク質の生物学的活性を模倣する(例えばβ−カテニン破壊複合体を形成する)化合物または薬物であってよい。「阻害剤」および「アンタゴニスト」は、経路によるシグナル伝達(例えばWntシグナル伝達)を低下させ、阻止しまたは防止し、そして/またはタンパク質相互作用および複合体の形成を防止する薬物であってもよい。
一つの態様において、本発明は、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分と結合し、またはその活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。例えば、本発明は、Axinおよび/またはTNKS安定化を調節することができる候補または試験化合物または薬物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
他の態様において、本発明は、一次または二次(カウンタースクリーニング)アッセイとして使用することができる、Axinタンパク質安定性および/またはレベルスクリーニングのためのアッセイを提供する。例えば、ルシフェラーゼレポーターを一次スクリーニングの一部として使用し、次いでAxinタンパク質安定性および/またはレベルスクリーニングをカウンタースクリーニングとして使用することができる。Axin融合タンパク質、例えばAxin GFP、Axin−ルシフェラーゼ、Axin−Renilla等は、細胞中で作成および発現させて、Axinが安定化されているかを見るために化合物で処理することができる。
他の態様において、Axin融合タンパク質、例えばAxin GFP、Axin−ルシフェラーゼ、Axin−Renilla等は、インビトロAxin分解アッセイにおいて作成し、使用してもよい。かかるアッセイは培養細胞、組織または胚からの抽出物を、Axin融合タンパク質レベルが作用されているかを見るために化合物で処理して、使用することができる。
Wnt/β−カテニン経路の低分子阻害剤のスクリーニングアッセイの具体的な例は、本明細書、例えば実施例の項に記載されている(例えば、HEK293細胞におけるWnt応答性Super-Topflash (STF)ルシフェラーゼレポーターアッセイ)。
生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並行固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;1ビーズ1化合物ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフ選択を用いた合成ライブラリーを含む、当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における多様なアプローチの何れかを用いて、本発明の試験化合物を得ることができる。生物学的ライブラリーによるアプローチはペプチドライブラリーに限られるが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam, K. S. (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野において、例えばDeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermann et al. (1994). J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al., (1993) Science 261:1303; Carrell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; および Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233に見ることができる。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えばHoughten (1992) Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ上(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(Ladner U.S. Pat. No. 5,223,409)、胞子(Ladner U.S. Pat. No. '409)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)またはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249:386-390); (Devlin (1990) Science 249:404-406); (Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382); (Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310); (Ladner supra.)に存在していてもよい。
一つの態様において、アッセイは、細胞表面でWnt受容体、例えばFzdを発現している細胞を試験薬物と接触させて、試験薬物のWntシグナル伝達調節能を(例えばAxinおよび/またはTNKSタンパク質レベルの変化、あるいはAxin結合タンパク質とのAxinおよび/またはTNKSの結合を測定して)測定する、細胞利用アッセイである。他の態様において、Wntシグナル伝達を調節する試験薬物の能力は、例えばGSK3によるAxinリン酸化の変化を(例えばホスホ特異的抗Axin抗体の使用によって)測定して決定することができる。さらに別の態様において、Wntシグナル伝達を調節する試験薬物の能力は、例えばβ−カテニンのリン酸化および分解(および/またはその何れかの変化)を測定して、決定する。
非限定的な例として、本発明の方法の使用によって発見されるWntシグナル伝達を阻害することができる薬物は、Axinを安定化し、そして/またはTNKSをアンタゴナイズする能力を示す。かかる安定化は、例えば総β−カテニンレベルの低下および/またはホスホ−β−カテニンレベル(すなわちリン酸化β−カテニン)の上昇として明らかとなる。かかる安定化はまた、例えばAxinタンパク質レベルの上昇、TNKS触媒活性の低下、および/またはAxin−GSK3複合体の形成の増加としても明らかとなる。
細胞は例えば、哺乳類起源または酵母の細胞であってよい。試験薬物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質と結合する能力の測定は、例えば、Axinタンパク質と試験化合物の結合が複合体の標識物質を検出して測定することができるような、放射性同位体または酵素標識を有する試験薬物を結合して、実施しすることができる。例えば、試験薬物は125I、35S、14CまたはHで直接または間接的に標識することができ、放射性同位体は放射線放出の直接測定またはシンチレーションカウンティングによって検出される。あるいは、標的薬物は、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素的に標識されていてもよく、該酵素標識は適切な基質の生成物への変換の測定によって検出される。
試験薬物のWntシグナル伝達を調節する(例えばAxinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用する)能力を、何ら反応体の標識をせずに、測定することも本発明の範囲に含まれる。例えば、マイクロフィジオメーター(microphysiometer)を用いて、試験薬物とAxinまたはTNKSタンパク質の相互作用を、試験薬物またはタンパク質の標識化なしで、測定することができる(McConnell, H. M. et al. (1992) Science 257:1906-1912)。本明細書において使用するとき、マイクロフィジオメーター(例えばCytosensor(商標))は、光にアドレス可能な電位差滴定センサー(LAPS)を用いて、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化を、リガンドと受容体、TNKSとTNKS結合タンパク質またはAxinとAxin結合タンパク質間の相互作用の指標として用いることができる。
一つの態様において、該アッセイは、Axinおよび/またはTNKSタンパク質を発現している細胞を、通常の条件下でAxinおよび/またはTNKSと結合することが知られているタンパク質(例えば本明細書に定義のAxin結合タンパク質)とまたはその生物学的活性な部分と接触させて;アッセイ混合物を形成し;該アッセイ混合物を試験薬物と接触させて;該試験薬物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質との相互作用能を測定することを含み、ここでかかる相互作用の測定は、試験薬物のAxinタンパク質とAxin結合タンパク質またはその生物学的に活性な部分との間の結合事象の阻害能を測定することを含む。正常Axin:Axin結合タンパク質結合事象および/またはTNKS:TNKS結合タンパク質結合事象の阻害は、正常な状態(すなわち、試験薬物が存在しないもの)と比較したβ−カテニンリン酸化の変化によって測定することができる。
他の態様において、アッセイは、Axin標的分子(例えばβ−カテニン)および/またはTNKS標的分子を発現している細胞を、試験薬物と接触させて、試験薬物のAxinおよび/またはTNKS標的分子の活性を調節する(例えば刺激または阻害する)能力を測定することを含む、細胞利用アッセイである。Axinおよび/またはTNKS標的分子の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば試験薬物の存在下および非存在下の両方でβ−カテニンリン酸化レベルを比較することによって実施することができる。
Axinおよび/またはTNKS標的分子および/またはAxin結合タンパク質と結合または相互作用するAxinおよび/またはTNKSタンパク質の能力の測定は、直接結合を測定するための上記方法の一つによって実施することができる。一つの態様において、Axinおよび/またはTNKS標的分子および/またはAxin結合タンパク質と結合または相互作用するAxinおよび/またはTNKSタンパク質の能力の測定は、標的分子の活性を測定して実施することができる。例えば、標的分子の活性は、標的の細胞二次メッセンジャー(すなわち細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP等)の誘導を検出して、標的の適切な基質に対する触媒/酵素活性を検出して、レポーター遺伝子(検出可能なマーカー、例えばルシフェラーゼをコードする核酸と作動可能に結合した制御因子を含む)の誘導を検出して、あるいは細胞応答、例えば発生、分化または増殖速度を検出して、測定することができる。
さらに別の態様において、本発明のアッセイは、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分を試験化合物と接触させて、試験化合物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と結合する能力を測定する、無細胞アッセイである。試験化合物とAxinおよび/またはTNKSタンパク質との結合は、上記のとおり直接または間接的に測定することができる。好ましい態様において、該アッセイは、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と、Axinおよび/またはTNKSと結合する既知の化合物とを接触させてアッセイ混合物を形成し、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、Axinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を測定することを含み、ここで試験化合物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用する能力の測定は、既知の化合物と比較した、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と優先的に結合する試験化合物の能力を測定することを含む。
他の態様において、該アッセイは、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分を試験化合物と接触させて、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分の活性を調節する(例えば刺激または阻害する)試験化合物の能力を測定する、無細胞アッセイである。Axinタンパク質の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば標的分子と結合するか、あるいはAxin結合および/またはTNKS結合タンパク質と相互作用するAxinタンパク質の能力を、直接結合を測定するための上記方法の一つによって測定して、実施することができる。標的分子と結合するAxinおよび/またはTNKSタンパク質の能力の測定は、実時間生体分子相互作用分析(BIA)のような技術を用いて実施してもよい。Sjolander, S. and Urbaniczky, C. (1991) Anal. Chem. 63:2338-2345 および Szabo et al. (1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705。本明細書において使用するとき、「BIA」は、いずれの反応体も標識せずに、実時間で生体特異的相互作用を試験するための技術である(例えばBIAcore(商標))。光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)の変化は、生物学的分子間の実時間反応の指標として用いることができる。
別の態様において、試験化合物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質の活性を調節する能力の決定は、標的分子またはAxin結合および/またはTNKS結合タンパク質の活性をさらに調節する、Axinおよび/またはTNKSタンパク質の能力を測定して、実施することができる。例えば、適切な基質に対する標的分子の触媒/酵素活性は、上記のとおりに測定することができる。
さらに別の態様において、無細胞アッセイは、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と、Axinおよび/またはTNKSタンパク質と結合する既知の化合物とを接触させてアッセイ混合物を形成し、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させて、試験化合物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用する能力を測定することを含み、ここで試験化合物のAxinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用する能力の決定は、標的分子またはAxin結合および/またはTNKS結合タンパク質と優先的に結合し、またはその活性を調節する、Axinタンパク質の能力を測定することを含む。
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、ある時間内で試験する化合物数を最大化するために、ハイスループットアッセイが望まれる。細胞を含まない系で実施する、例えば精製または半精製タンパク質によって行われ得るアッセイは、速やかな開発を可能とし、試験化合物によって仲介される分子標的における変化の検出を比較的容易にすることができるため、「一次」スクリーニングとしてしばしば好まれる。さらに、試験化合物の細胞毒性および/または生物学的利用能の効果が一般にインビトロ系では無視でき、その代わりに該アッセイは、上流または下流要素との結合親和性の変化を明らかとし得るため、分子標的に対する薬物の効果に主として集中される。
したがって、本発明の典型的なスクリーニングアッセイにおいて、目的化合物を、Axinおよび/またはTNKSタンパク質または結合相手、例えばAxin結合および/またはTNKS結合タンパク質と接触する。次いで、化合物とAxinタンパク質またはAxin結合相手の混合物に、Axinおよび/またはTNKS結合相手またはAxinおよび/またはTNKSタンパク質をそれぞれ含む組成物を加える。Axinタンパク質とAxin結合相手および/またはTNKSタンパク質とTNKS結合相手の複合体の検出および定量は、Axinと結合パートナー間の複合体形成を阻害(または強化)する化合物の効果を決定するための手段を提供する。化合物の効果は、多様な濃度の試験化合物を用いて得たデータから用量応答曲線を作成して評価することができる。さらに、対照アッセイも実施して、比較のためのベースラインを得ることができる。対照アッセイにおいて、Axin結合相手またはAxinポリペプチドを含む組成物に単離および精製したAxinポリペプチドまたは結合相手を加えて、複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量する。あるいは、対照アッセイにおいて、TNKS結合相手またはTNKSポリペプチドを含む組成物に単離および精製したTNKSポリペプチドまたは結合相手を加えて、複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量する。
本発明の無細胞アッセイは、単離タンパク質(例えばAxinタンパク質もしくはその生物学的に活性な部分またはAxin標的分子、および/またはTNKSタンパク質もしくはその生物学的に活性な部分またはTNKS標的分子)の可溶形態および/または膜結合形態両方の使用に受け入れられる。膜結合形態の単離タンパク質(例えば、Axinおよび/またはTNKS標的分子または受容体)を用いる場合、膜結合形態の単離タンパク質が溶液中で維持されるように、可溶化剤を用いることが望ましい場合がある。かかる可溶化剤の例は、非イオン性界面活性剤、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルコアミド、デカノイル−N−メチルグルコアミド、Triton.RTM. X-100、Triton.RTM. X-114、Thesit.RTM.、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル).sub.n、3−[(3−コール酸アミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コール酸アミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)またはN−ドデシル=N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートを含む。
上記細胞利用または無細胞アッセイにおいて、内因性Axin1および/またはAxin2レベルは、Axin1またはAxin2抗体を用いて測定することができる。さらにまた、細胞または抽出物中のAxinタンパク質レベルを測定することができるように、Axinをエピトープタグで評し期してもよい。
上記細胞利用または無細胞アッセイにおいて、内因性TNKS1および/またはTNKS2レベルは、TNKS1またはTNKS2抗体を用いて測定することができる。さらにまた、細胞または抽出物中のTNKSタンパク質レベルを測定することができるように、Axinをエピトープタグで評し期してもよい。
本発明の上記アッセイ方法の一つ以上の態様において、タンパク質の一方または両方の非複合化形態からの複合化形態の分離を促進し、そしてアッセイの自動化を適応させるために、Axin、Axin結合タンパク質または標的分子を固定化することが望まれることがある。本発明の上記アッセイ方法の一つ以上の態様において、タンパク質の一方または両方の非複合化形態からの複合化形態の分離を促進し、そしてアッセイの自動化を適応させるために、TNKS、TNKS結合タンパク質または標的分子を固定化することが望まれることがある。試験化合物とAxinおよび/またはTNKSタンパク質の結合または候補化合物の存在下および非存在下におけるAxinおよび/またはTNKSタンパク質と標的分子の相互作用は、反応物を含むのに好適な任意の容器内で実施することができる。かかる容器の例は、プレート、試験管および微小遠心管を含む。一つの態様において、マトリックスにタンパク質の一方または両方を結合させるドメインを加えて、融合タンパク質を得ることができる。
例えば、グルタチオン−5−トランスフェラーゼ/Axin融合タンパク質またはグルタチオン−5−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレートに吸着させて、次いでこれを試験化合物または試験化合物と非吸着標的タンパク質もしくはAxinのいずれかと混合し、そして該混合物を、複合体形成に資する条件(例えば塩およびpHについて、生理的条件)下でインキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して非結合成分を除去し、ビーズの場合にはマトリックスを固定化し、例えば上記のとおりに、複合体を直接または間接的に測定する。あるいは、複合体はマトリックスから分離することができ、標準的な技術を用いて、Axin結合または活性のレベルを測定することができる。
マトリックスにタンパク質を固定化するための他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて用いてもよい。例えば、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用して、Axinタンパク質、Axin結合タンパク質またはAxin標的分子を固定化できる。他の例として、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用して、TNKSタンパク質、TNKS結合タンパク質またはTNKS標的分子を固定化できる。ビオチニル化タンパク質または標的分子は、当該技術分野で周知の技術(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill.)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から作成して、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化することができる。あるいは、Axin、Axin結合タンパク質または標的分子と反応性であるが、該タンパク質とその標的分子との結合に干渉しない抗体は、プレートのウェルに誘導化し、非結合標的、AxinまたはAxin関連タンパク質を抗体結合によってウェル中でトラップすることができる。GST−固定化複合体に関する上記のものに加えて、かかる複合体を検出する方法は、Axinタンパク質または標的分子と反応性の抗体を用いた複合体の免疫検出ならびにAxinタンパク質または標的分子に関連した酵素活性の検出に基づく酵素結合アッセイを含む。
他の態様において、Axinおよび/またはTNKS発現の調節剤は、細胞を候補化合物と接触させて、該細胞中のAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質の発現を測定する方法で同定される。候補化合物の存在下におけるmRNAまたはタンパク質の発現レベルは、候補化合物の非存在下におけるmRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較される。次いで、候補化合物がこの比較に基づいてAxin発現の調節剤として同定され得る。例えば、候補化合物の存在下におけるAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質の発現が、非存在下よりも大きい(統計的に有意に大きい)とき、該候補化合物はAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質発現の刺激因子として同定される。あるいは、候補化合物の存在下におけるAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質の発現が、非存在下よりも小さい(統計的に有意に小さい)とき、該候補化合物はAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤として同定される。細胞中のAxinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質の発現レベルは、Axinおよび/またはTNKS mRNAまたはタンパク質について本明細書に記載の方法で測定することができる。
本発明のさらに別の局面において、Axinおよび/またはTNKSタンパク質は、Axinおよび/またはTNKSタンパク質と結合または相互作用してAxinおよび/またはTNKS活性を調節する他のタンパク質(結合タンパク質またはbp)を同定するための、2ハイブリッドアッセイまたは3ハイブリッドアッセイ(例えば米国特許第5,283,317号; Zervos et al. (1993) Cell 72:223-232; Madura et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:12046-12054; Bartel et al., (1993) Biotechniques 14:920-924; Iwabuchi et al. (1993) Oncogene 8:1693-1696; および Brent WO94/10300参照)における「ベイトタンパク質」として使用することができる。かかる結合タンパク質はまた、例えばAxin介在シグナル伝達経路の下流因子として、Axinおよび/またはTNKSタンパク質によるシグナルの伝播に関与する可能性もある。あるいは、かかる結合タンパク質は、非Axin発現細胞と結合した細胞表面分子である可能性があり、ここで該結合タンパク質はシグナル伝達に関与している。
2ハイブリッドシステムは、分離可能なDNA結合ドメインと活性化ドメインから成る、ほとんどの転写因子の調節性に基づく。簡潔には、該アッセイは2個の異なるDNA構築物を利用する。一つの構成物において、Axinタンパク質をコードする遺伝子は、既知の転写因子(例えばGAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子と融合される。他の構成物において、非同定タンパク質(プレイまたはサンプル)をコードする、DNA配列のライブラリー由来のDNA配列は、既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子と融合される。「ベイト」および「プレイ」タンパク質がインビボで相互作用して、Axin依存複合体を形成するとき、転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、極めて近くに存在する。この近接によって、転写因子に応答する転写制御部位と作動可能に結合しているレポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写が可能となる。レポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的転写因子を含む細胞コロニーを単離して、Axinタンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローン化遺伝子を得るために用いることができる。
本発明はさらに、上記スクリーニングアッセイによって同定した新規薬物およびこれらのアッセイを用いてかかる薬物を生産する方法に関する。したがって、一つの態様において、本発明は、上記スクリーニングアッセイ(例えば細胞利用アッセイまたは無細胞アッセイ)の何れかの段階を含む方法によって得られる化合物または薬物を含む。例えば、一つの態様において、本発明は、標的分子を発現している細胞を試験化合物と接触させて、標的分子と結合し、またはその活性を調節する試験化合物の能力を測定することを含む方法によって得られる化合物または薬物を含む。他の態様において、本発明は、標的分子を発現している細胞をAxinおよび/またはTNKSタンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分を接触させてアッセイ混合物を形成し、該アッセイ混合物と試験化合物を接触させて、標的分子と相互作用し、またはその活性を調節する試験化合物の能力を測定することを含む方法によって得られる化合物または薬物を含む。
他の態様において、本発明は、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分を試験化合物と接触させて、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と結合し、またはその活性を調節(例えば刺激または阻害)する試験化合物の能力を測定することを含む方法によって得られる化合物または薬物を含む。さらに別の態様において、本発明は、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分をAxinおよび/またはTNKSタンパク質と結合する既知の化合物と接触させてアッセイ混合物を形成し、該アッセイ混合物と試験化合物を接触させて、Axinおよび/またはTNKSタンパク質と相互作用し、またはその活性を調節する試験化合物の能力を測定することを含む方法によって得られる化合物または薬物を含む。
したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載のとおりに同定した薬物のさらなる使用が、本発明の範囲に含まれる。例えば、本明細書に記載のとおりに同定した薬物(例えばAxinおよび/またはTNKS調節薬物、アンチセンスAxinおよび/またはTNKS核酸分子またはAxinおよび/またはTNKS結合相手)は、かかる薬物による処置の効能、毒性または副作用を決定するために、動物モデルにおいて使用することができる。あるいは、本明細書に記載のとおりに同定した薬物は、かかる薬物の作用機構を決定するために、動物モデルにおいて使用することができる。
本発明はまた、本明細書に記載の診断、予測および処置のための、上記スクリーニングアッセイによって同定される新規約物の使用に関する。したがって、本明細書に記載の診断、予測または処置用薬物または医薬組成物の設計、製剤、合成、製造および/または生産における、かかる薬物の使用が、本発明の範囲に含まれる。例えば一つの態様において、本発明は、上記スクリーニングアッセイの一つによって得られる化合物の構造および/または特性を参照して、薬物または医薬組成物を合成または生産する方法を含む。
例えば、薬物または医薬組成物は、標的分子(例えばAxinの下流タンパク質、例えばβ−カテニン)を発現している細胞を試験化合物と接触させて、該標的分子と結合し、またはその活性を調節する試験化合物の能力を測定する方法によって得られる化合物の構造および/または特性に基づいて合成することができる。別の典型的な態様において、本発明は、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分を試験化合物と接触させて、Axinおよび/またはTNKSタンパク質またはその生物学的に活性な部分と結合し、またはその活性を調節(例えば刺激または阻害)する試験化合物の能力を測定する方法によって得られる化合物の構造および/または特性に基づいて、薬物または医薬組成物を合成または生産する方法を含む。
本発明の化合物
用語「本発明の化合物」および同様の用語は、本明細書においてさらに定義されるように、本明細書において、例えばWnt経路シグナル伝達を(例えばAxin安定化および/またはTNKS触媒活性の阻害を介して)アンタゴナイズするために用いることができる化合物を記載するために使用される。該化合物は、XAV939を含むが、これに限定されない。
本化合物はまた、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体等を含む。
医薬組成物
本明細書に記載の組成物は、医薬組成物であり得る。本発明は、生理的に適合性の担体と混合されたWntシグナル伝達アンタゴニストを含む医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、Wntシグナル伝達関連障害の処置、改善、診断または予防のために、温血動物、特にヒト(または温血動物、特にヒト由来の細胞または細胞系)に投与するために適している。
これらの医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に使用され得る顕著な量の1種以上の無機または有機、固体または液体、薬学的に許容される担体および生理的に許容される希釈剤(例えば水、リン酸緩衝化食塩水または生理食塩水)を含んでいてもよい。
用語「治療上有効量」および「有効量」は、本明細書において、宿主の活性、機能および応答における臨床的に顕著な欠乏を、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは90%低下させ、最も好ましくは防止するのに十分な量を意味するものとして使用される。あるいは、治療上有効量は、宿主の臨床的に顕著な状態/症状の改善を引き起こすのに十分である。
有効量は、対象のサイズおよび重量、疾患のタイプまたは具体的な本発明の化合物のような要因に従って変化し得る。例えば、本発明の化合物の選択は、何が「有効量」を構成するかに影響し得る。当業者は本明細書に含まれる要因を検討して、過度の実験を行うことなく、本発明の化合物の有効量を決定することができる。
投与レジメンは何が有効量を構成するかに影響し得る。本発明の化合物は、対象に、Wntシグナル伝達関連障害の発症前または後に投与することができる。さらに、複数回分割用量ならびに不均一な投与量を毎日または連続的に投与するか、または、投与量を継続して注入するか、またはボーラス注射することができる。さらに、治療または予防状況の緊急性によって示されたところにしたがって、投薬量を比例的に増減させることもできる。
用語「医薬製剤」または「医薬組成物」は、哺乳類、例えばヒトへの投与に適した製剤を含む。本発明の化合物を医薬として哺乳類、例えばヒトに投与するとき、それらはそれ自体として、または薬学的に許容される担体と組み合わせた0.1〜99.5%(より好ましくは0.5〜90%)の有効成分を含む医薬組成物として、与えられる。
用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与したとき、生理的に耐容性であり、典型的にはアレルギーまたは同様の有害な反応、例えば胃の不調、目眩等を生じない分子および組成物を意味する。好ましくは、本明細書において使用するとき、用語「薬学的に許容される」は、米国政府または州政府当局に認められているか、あるいは米国薬局方または動物、特にヒトに使用するために一般に理解されている他の局方に記載されていることを意味する。
用語「薬学的に許容される担体」は、当該技術分野において理解され、哺乳類に本発明の化合物を投与するのに好適な、薬学的に許容される物質、組成物またはビークルを含む。担体は、対象薬物を体のある臓器または部位から体の別の臓器または部位へと輸送または移動させる、液体または固体増量剤、希釈剤、溶媒またはカプセル材を含む。それぞれの担体は、製剤の他の成分に適合性であり、患者に傷害性でないという意味において、「許容」されなければならない。薬学的に許容される担体として使用され得る物質の例は、糖、例えばラクトース、グルコースおよびショ糖;デンプン、例えばコーンスターチおよびポテトスターチ;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび座薬ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;ピロゲンを含まない水;単離等張食塩水;リンゲル液;;エチルアルコール;リン酸バッファー液;および医薬製剤において使用される他の非毒性適合性物質を含む。好適な医薬担体は、E. W. Martin によるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
湿潤剤、乳化剤ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、ならびに着色料、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤も本組成物中に存在していてもよい。
薬学的に許容される抗酸化剤の例は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等、油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガラート、α−トコフェロール等、ならびに金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等を含む。
本発明の製剤は、経口、経鼻、局所、頬側、舌下、直腸、膣および/または非経腸投与に適したものを含む。本製剤は、簡便には単位投与形態で存在していてよく、医薬分野で周知の何れかの方法で製造することができる。担体物質と組み合わせて単剤形態を作成することができる有効成分の量は、一般に、治療効果を発揮する化合物の量である。一般に、この量は、100%に対して、有効成分約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
これらの製剤または組成物を製造する方法は、本発明の化合物と担体および所望により1種以上の助剤を混合する工程を含む。一般に、製剤は、本発明の化合物と液体担体または微細に分離された固体担体またはその両方を均一かつ密接に混合し、次いで所望により製品の形にすることによって製造される。
経口投与に適した本発明の製剤は、各々有効成分として所定の量の本発明の化合物を含む、カプセル剤、カセット、ピル、錠剤、トローチ(風味基剤、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガカントを用いる)、粉末、下流の形態で、水性または非水性液体中溶液または懸濁液として、あるいは水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、あるいはエリキシル剤もしくはシロップとして、あるいはトローチ(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアを用いる)として、そして/またはマウスウォッシュ等として、存在していてもよい。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与してもよい。
本発明の経口投与用固体投与形態(カプセル剤、錠剤、ピル、糖衣錠、粉末、顆粒等)において、有効成分は、1種以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸2カルシウムおよび/または次のもののいずれかと混合される:増量剤または充填剤、例えばデンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコーおよびモノステアリン酸グリセロール;吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイト泥;滑沢剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;ならびに着色料。カプセル剤、錠剤およびピルの場合、医薬組成物は緩衝化剤を含んでいてもよい。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤および高分子量ポリエチレングリコール等を用いた軟および硬充填ゼラチンカプセル剤における増量剤として使用することもできる。
錠剤は、所望により1種以上の助剤と共に、圧縮または打錠して製造することができる。圧縮錠は、結合剤(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコレートナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または消泡剤(dispersing agent)を用いて製造することができる。打錠錠は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、好適な機械で打錠して、製造することができる。
本発明の医薬組成物の錠剤および他の固体投与形態、例えば糖衣錠、カプセル剤、ピルおよび顆粒は、所望により、コーティングおよびシェル、例えば腸溶コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングを行い、あるいはそれによって製造することができる。それらはまた、例えば所望の放出プロファイルを得るための多様な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを用いて、それらに含まれる有効成分の遅延または制御放出が得られるように、製剤してもよい。それらは、例えば細菌保持フィルターで濾過し、あるいは使用の直前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を加えて、滅菌してもよい。これらの組成物はまた、所望により、乳白剤を含んでいてもよく、そして所望により遅延形式で、胃腸管のある部分にのみまたは優先的に、有効成分を放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。有効成分はまた、適切であるとき、上記賦形剤の1種以上と共に、マイクロカプセル化形態であってもよい。
本発明の化合物の経口投与用液体投与形態は、薬学的に許容されるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。有効成分に加えて、液体投与形態は、当該技術分野において一般に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステルならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。
不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、風味剤、着色料、芳香剤および保存剤を含んでいてもよい。
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロール、メタヒドロキシドアルミニウム、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。
本発明の直腸または膣投与用医薬組成物の製剤は、座薬として存在していてもよく、これは1種以上の本発明の化合物と1種以上の好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば室温では固体であるが、体温で液体であり、したがって直腸または膣腔で溶解して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチレートと混合して製造することができる。
膣投与に適した本発明の製剤はまた、適切であると当該技術分野において知られている担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤である。
本発明の化合物の局所または経皮投与用投与形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。活性化合物は滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、そして所望により保存剤、バッファーまたはプロペラントと混合してもよい。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば動物および植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、カルシウムシリケートおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物を含んでいてもよい。スプレーは、さらに常套のプロペラント、例えばクロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含んでいてもよい。
経皮パッチは、本発明の化合物を体に制御送達するというさらなる利点を有する。かかる投与形態は、本化合物を適切な媒体に溶解または懸濁させて製造することができる。吸収促進剤を用いて、化合物の皮膚を通過する流入を増加させてもよい。かかる流入速度は、速度制御膜を提供するか、あるいは活性化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散して、制御することができる。
眼用製剤、眼軟膏、粉末、溶液等も本発明の範囲に含まれると理解される。
非経腸投与に適した本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される滅菌等張水性または非水性溶液、分散剤、懸濁液またはエマルジョン、あるいは使用の直前に滅菌注射液または分散剤に再構成することができる滅菌粉末と共に、1種以上の本発明の化合物を含み、これは抗酸化剤、バッファー、抗菌剤、意図する患者の体と等張な製剤とするための溶質または懸濁剤もしくは増粘剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物に使用することができる好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性は、例えば、コーティング剤、例えばレシチンの使用によって、分散剤の場合には必要な粒度を維持することによって、そして界面活性剤の使用によって、維持することができる。
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の作用の予防が、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を加えることによって確保され得る。また、張性調節剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を組成物に加えることも望まれ得る。さらに、注射医薬形態の延長された吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延する物質を加えることによってもたらされ得る。
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するため、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望まれ得る。これは、水溶性の低い結晶状またはアモルファス状物質の液体懸濁液を用いて達成することができる。次いで、薬物の吸収速度は溶解速度に依存し、これは結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経腸投与薬物形態の吸収遅延は、薬物を油性ビークルに溶解または懸濁させて達成される。
注射デポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコライドのような生分解性ポリマー中の対象化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成して製造される。薬物対ポリマーの比、使用する具体的なポリマーの性質に依存して、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポ注射用製剤はまた、体組織に適合性であるリポソームまたはミクロエマルジョン中に薬物をトラップすることによって製造される。
本発明の製剤は、経口的、非経腸的、局所的または直腸的に投与することができる。それらは当然、それぞれの投与経路に適した形態で投与される。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、眼ローション、軟膏、座薬等によって投与され、注射、輸液または吸入による投与;ローションまたは軟膏による局所投与;および座薬による直腸投与が含まれる。経口および/または静脈内投与が好まれる。
用語「非経腸投与」および「非経腸的に投与」は、本明細書において使用するとき、経腸および局所投与以外の投与形態、通常は注射を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内注射および輸液を含むがこれらに限定されない。
用語「全身投与」、「全身的に投与」、「末梢投与」および「末梢的に投与」は、本明細書において使用するとき、中枢神経系に直接投与する以外の、化合物、薬物または他の物質の投与であって、それが患者の系に入り、代謝および他の同様のプロセスを受ける投与、例えば皮下投与を意味する。
これらの化合物は、経口、例えばスプレーによって経鼻、直腸、膣内、非経腸、大槽内および粉末、軟膏もしくはドロップによって頬側および舌下を含む局所を含む何れかの好適な投与経路によって、ヒトおよび他の動物に治療のために投与される。
選択した投与経路に拘わらず、好適な水和物形態で使用することができる本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者に既知の常套の方法によって、薬学的に許容される投与形態に製剤される。
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態について所望の治療応答を得るために有効であり、患者に毒性でない有効成分の量を得るために、変化し得る。
選択した投与レベルは、使用する具体的な本発明の化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する具体的な化合物の排出速度、処置期間、使用する具体的な化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および病歴ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む多様な要因に依存する。
当該技術分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定および予測することができる。例えば、医師または獣医は、使用する本発明の化合物の投与量を、医薬組成物において、所望の治療効果を得るために必要とされるものよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を漸増することができる。
一般に、好適な本発明の化合物の1日用量は、治療効果を奏するために有効な最低用量である化合物の量である。かかる有効用量は、一般に、上記要因に依存する。一般に、本発明の化合物の患者への静脈内および皮下投与量は、示した鎮痛効果のために使用されるとき、約0.0001〜約100mg/kg体重/日、より好ましくは約0.01〜約50mg/kg/日、さらにより好ましくは、約1.0〜約100mg/kg/日の範囲である。有効量は、Wntシグナル伝達関連障害を処置する量である。
所望により、活性化合物の有効1日用量は、その日の間の適切な間隔で、所望により単位投与形態で、2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量で別個に投与することができる。
本発明の化合物を単独で投与することが可能であるが、該化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
合成法
本発明の化合物は、下記条件のいずれか1つ以上を含むがそれらに限定されない、当業者に既知の方法を用いて、一般に入手可能な化合物から製造される。
この文脈の範囲内で、本発明の化合物の特定の所望の最終生成物の構成要素ではない、用意に除去可能な基のみが、文脈が異なることを示していない限り、「保護基」を意味する。かかる保護基による官能基の保護、保護基それ自体およびその切断反応は、例えば標準的参考書、例えばScience of Synthesis: Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany. 2005. 41627 pp. (URL: http://www.science-of-synthesis.com (Electronic Version, 48 Volumes)); J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973; T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999; “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981; “Methoden der organischen Chemie”(Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974; H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982;および Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。保護基の特徴は、それらが容易に(すなわち望ましくない二次的反応を生じずに)、例えば加溶媒分解、還元、光分解または生理的な条件下で(例えば酵素的切断によって)除去できることである。
本発明の化合物の酸付加塩は、最も好適には、薬学的に許容される塩から形成され、これは例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素、硫酸またはリン酸および有機酸、例えばコハク酸、マレイン酸、酢酸またはフマル酸と形成されるものを含む。他の薬学的に許容されない塩、例えばシュウ酸塩は、例えば本発明の化合物の単離、実験的使用または続く薬学的に許容される酸付加塩への変換のために、使用することができる。また、本発明の溶媒和物および水和物も本発明の範囲に含まれる。
所与の化合物塩の所望の化合物塩への変換は、標準的な技術を適用して達成され、ここで所与の塩の水溶液を塩基、例えば炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液で処理して、遊離塩基を遊離し、次いで適切な溶媒、例えばエーテルで抽出する。次いで遊離塩基を水性部から分離し、乾燥させ、必要な酸で処理して、所望の塩を得る。
インビトロでのある本発明の化合物の加水分解性エステルまたはアミドは、遊離ヒドロキシまたはアミノ官能基を有するこれらの化合物を所望のエステルの酸クロライドで、塩基の存在下、不活性溶媒、例えば塩化メチレンまたはクロロホルム中で処理して、形成することができる。好適な塩基は、トリエチルアミンまたはピリジンを含む。逆に、遊離カルボキシ基を有する本発明の化合物は、活性化、次いで好適な塩基の存在下で所望のアルコールで処理することを含んでいてもよい標準的条件を用いて、エステル化することができる。
薬学的に許容される酸付加塩の例は、非毒性無機および有機酸付加塩、例えば塩酸由来の塩酸塩、臭化水素酸由来の臭化水素炎、硝酸由来の硝酸塩、過塩素酸由来の過塩素酸塩、リン酸由来のリン酸塩、硫酸由来の硫酸塩、ギ酸由来のギ酸塩、酢酸由来の酢酸塩、アコニット酸由来のアコニット酸塩、アスコルビン酸由来のアスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸由来のベンゼンスルホン酸塩、安息香酸由来の安息香酸塩、桂皮酸由来の桂皮酸、クエン酸由来のクエン酸塩、エムボン酸由来のエムボン酸塩、エナント酸由来のエナント酸塩、フマル酸由来のフマル酸塩、グルタミン酸由来のグルタミン酸塩、グリコール酸由来のグリコール酸塩、乳酸由来の乳酸塩、マレイン酸由来のマレイン酸塩、マロン酸由来のマロン酸塩、マンデル酸由来のマンデル酸塩、メタンスルホン酸由来のメタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸由来のナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸由来のフタル酸塩、サリチル酸由来のサリチル酸塩、ソルビン酸由来のソルビン酸塩、ステアリン酸由来のステアリン酸塩、コハク酸由来のコハク酸塩、酒石酸由来の酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸由来のp−トルエンスルホン酸塩等を含むが、これらに限定されない。特に好ましい塩は、本発明の化合物のナトリウム、リシンおよびアルギニン塩である。かかる塩は、当該技術分野において周知および記載の方法によって形成させることができる。
薬学的に許容されると考えることができないオキサル酸のような他の酸は、本発明の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得るための中間体として有用な塩の製造に有用であり得る。
本発明の化合物の金属塩は、アルカリ金属塩、例えばカルボキシ基を有する本発明の化合物のナトリウム塩を含む。
本発明に従って得られる異性体の混合物は、自体公知の方法で、個々の異性体に分離することができ;ジアステレオマーは、例えば多相溶媒混合物間での分配、再結晶および/または例えばシリカゲルによるクロマトグラフ分離、または例えば逆相カラムでの中圧液体クロマトグラフィーで分離することができ、そしてラセミ体は、例えば光学的に純粋な塩形成反応剤との塩形成およびそうして得られたジアステレオマー混合物の、例えば分画結晶化による分離、または光学的に活性なカラム材料によるクロマトグラフィーによって、分離することができる。
中間体および最終生成物は標準的方法、例えばクロマトグラフ法、分配法、(再)結晶化等に従って後処理および/または精製することができる。
一般的方法条件
次のものは、一般に、本開示を通じて記載の全方法に適用する。
本発明の化合物を合成する方法工程を、具体的に記載のものを含む自体公知の反応条件下で、溶媒または希釈剤の非存在下、または通常はそれの存在下で(例えば溶媒または希釈剤は使用される試薬に対して不活性であり、それらを溶解させる)、触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換反応薬、例えばH形態の例えばカチオン交換反応薬の非存在下、またはそれの存在下で、反応および/または反応物の性質に依存して、低温、常温または高温で、例えば約−100℃〜約190℃、例えば約−80℃〜約150℃、例えば−80〜−60℃、室温、−20〜40℃、または還流温度で、大気圧または加圧が適当であるとき密封容器内で、および/または不活性雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で行うことができる。
反応の全ての段階で、形成された異性体の混合物を、個々の異性体、例えばジアステレオマーもしくはエナンチオマー、または異性体のいずれかの所望の混合物、例えばラセミ体またはジアステレオマーの混合物に、例えばScience of Synthesis: Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany. 2005に記載の方法と同様にして分離することができる。
いずれかの特定の反応に適している溶媒が選択され得る溶媒には、具体的に記載のもの、または例えば、水、エステル、例えば低級アルキル−低級アルカノエート、例えば酢酸エチル、エーテル、例えば脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテル、または環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、液体芳香族性炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエン、アルコール、例えばメタノール、エタノールまたは1−もしくは2−プロパノール、ニトリル、例えばアセトニトリル、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロホルム、酸アミド、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド、塩基、例えばヘテロ環式窒素塩基、例えばピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン、カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば無水酢酸、環状、直鎖または分枝鎖炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサンまたはイソペンタン、あるいはそれらの溶媒の混合物、例えば水溶液が、方法の記載に異なることが記載されていない限り、含まれる。かかる溶媒混合物は、後処理において、例えばクロマトグラフィーまたは分配に用いることもできる。
化合物およびそれらの塩を、水和物の形態で得ることができ、またはそれらの結晶は、例えば結晶化に使用した溶媒を含んでいてもよい。異なる結晶形が存在し得る。
本発明はまた、方法のいずれかの段階で中間体として入手可能な化合物を出発物質として用いて、残りの方法工程を行うか、または出発物質を反応条件下で形成させるか、または誘導体の形態で、例えば保護形態でもしくは塩形で用いるか、あるいは本発明の方法によって入手可能な化合物を方法条件下で製造し、さらにインサイチュで処理する方法の形態に関する。
プロドラッグ
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグを含む医薬組成物、およびそれを投与することによるWntシグナル伝達関連障害を処置する方法を含む。例えば、遊離アミノ、アミド、ヒドロキシまたはカルボキシル基を有する本発明の化合物は、プロドラッグに変換することができる。プロドラッグは、アミノ酸残基、または2個以上(例えば2、3または4個)のアミノ酸残基のポリペプチドがアミド結合またはエステル結合を介して本発明の化合物の遊離アミノ、ヒドロキシまたはカルボン酸基と共有結合している化合物を含む。アミノ酸残基は、一般に3文字表記される20種の天然に生じるアミノ酸、および4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータアラニン、ガンマアミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンを含むが、これらに限定されない。さらなるプロドラッグのタイプも含まれる。例えば、遊離カルボキシル基を、アミドまたはアルキルエステルとして誘導化することができる。Advanced Drug Delivery Reviews, 1996, 19, 115に説明されているとおり、遊離ヒドロキシ基を、ヘミコハク酸塩、リン酸エステル、ジメチルアミノアセテート、およびホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを含むがこれらに限定されない基を用いて誘導化することができる。ヒドロキシおよびアミノ基のカルバメートプロドラッグも、ヒドロキシ基のカルボネートプロドラッグ、スルホン酸エステルおよび硫酸エステルであるのと同様に含まれる。(アシルオキシ)メチルおよび(アシルオキシ)エチルエーテル(ここで、アシル基は所望によりエーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含むがこれらに限定されない置換基で置換されていてもよいアルキルエステルであってよいか、またはアシル基は上記アミノ酸エステルである)のようなヒドロキシ基の誘導体化も含まれる。このタイプのプロドラッグは、J. Med. Chem. 1996, 39, 10に記載されている。遊離アミンはまた、アミド、スルホンアミドまたはホスホンアミドとして誘導体化されていてもよい。これらのプロドラッグ基は全て、エーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含むがこれらに限定されない基を組み込んでいてもよい。
したがって本発明の化合物についてのいずれかの記載は、適切かつ便宜であるとき、本発明の化合物の対応するプロドラッグについても言及しているものと理解される。
融合タンパク質
本発明は、キメラまたは融合タンパク質を提供する。本明細書において使用するとき、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、同じ本発明のポリペプチド以外のポリペプチド)と作動可能に連結した本発明のポリペプチドの全てまたは部分(好ましくは生物学的に活性な)を含む。融合タンパク質において、用語「作動可能に連結」は、本発明のポリペプチドと異種ポリペプチドが互いにフレーム内で融合していることを意味する。異種ポリペプチドは、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端と融合していてよい。
一つの有用な融合タンパク質は、本発明のポリペプチドがGST配列のC末端と融合している、GST融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を促進し得る。
他の態様において、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含む。例えば、本発明のポリペプチドの天然シグナル配列を除去し、他のタンパク質由来のシグナル配列で置き換えることができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列は異種シグナル配列として用いることができる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, 1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例は、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列を含む(Stratagene; La Jolla, California)。さらに別の例において、有用な原核生物異種シグナル配列は、phoA分泌シグナル(Sambrook et al., supra)およびタンパク質A分泌シグナル(Pharmacia Biotech; Piscataway, New Jersey)を含む。
さらに別の態様において、融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの全部または一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバー由来の配列と融合している、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、医薬組成物に組み込み、リガンドと細胞の表面上のタンパク質(受容体)間の相互作用を阻害し、それによってインビボでのシグナル伝達を阻害するために、対象に投与することができる。免疫グロブリン融合タンパク質を使用して、本発明のポリペプチドの類似リガンドの生物学的利用能に作用させることができる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、増殖性および分化障害両方の処置および細胞生存の調節(例えば促進または阻害)に治療上有用であり得る。さらに、本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、対象において本発明のポリペプチドに対する抗体を生産するため、リガンドを精製するため、そしてスクリーニングアッセイにおいて受容体とリガンドの相互作用を阻害する分子を同定するための免疫源として使用することができる。
本発明のキメラおよび融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって作成することができる。他の態様において、自動DNA合成装置を含む常套の技術によって、融合遺伝子を合成することができる。あるいは、2つの連続遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハングを生じさせて、次いでアニールさせることができ、再増幅してキメラ遺伝子配列を作成することができるアンカープライマーを用いて、遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができる(例えばAusubel et al., supra参照)。さらに、融合部分(例えばGSTポリペプチド)を既にコードする多様な発現ベクターが商業的に入手可能である。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、融合部分がフレーム内で本発明のポリペプチドと結合するように発現ベクターにクローン化することができる。
RNAi
本発明は、低分子干渉リボ核酸配列(siRNA)ならびにsiRNAを用いてTNKS1/2遺伝子または細胞もしくは哺乳類におけるAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現粗阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、Wntシグナル伝達関連障害、例えばTNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する遺伝子の異常な発現によって、あるいは前記遺伝子が重要なメンバーである経路の異常なシグナル伝達によって引き起こされる哺乳類の病的状態および疾患を含む、Wntシグナル伝達関連障害をsiRNAを用いて処置するための組成物および方法を提供する。siRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスによって、mRNAの配列特異的分解を引き起こす。
本発明のsiRNAは、30ヌクレオチド長未満、一般には19〜24ヌクレオチド長であり、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子のmRNA転写産物の少なくとも一部と実質的に相補性である領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。これらのsiRNAを用いて、例えばWntシグナル伝達経路に関与する遺伝子のmRNAを標的に分解することができる。
本発明によるsiRNA分子は、RNA干渉(RNAi)を仲介する。用語「RNAi」は当該技術分野において周知であり、標的遺伝子と相補的な領域を有するsiRNAによって細胞の1つ以上の標的遺伝子を阻害することを意味すると一般に理解される。siRNAをそのRNAiを仲介する能力について試験するための多様なアッセイが、当該技術分野において知られている(例えば、Elbashir et al., Methods 26 (2002), 199-213参照)。本発明のsiRNAの遺伝子発現に対する効果は、典型的には、本発明のRNA分子で処理されない細胞と比較したとき、少なくとも10%、33%、50%、90%、95%または99%阻害された標的遺伝子の発現をもたらす。
本発明による「siRNA」または「低分子干渉リボ核酸」は当該技術分野において既知の意味を有し、次の局面を含む。siRNAは、生理的な条件下で相補領域に沿ってハイブリダイズする2本のヌクレオチド鎖から成る。該鎖は分離するが、ある態様において、分子リンカーによって会合し得る。個々のリボヌクレオチドは天然に生じる非修飾リボヌクレオチド、天然に生じる非修飾デオキシリボヌクレオチドであり得るか、あるいはそれらは本明細書の別の箇所に記載のとおり、化学的に修飾または合成することができる。
本発明のsiRNA分子は、標的遺伝子のmRNAの領域と実質的に同一である二本鎖領域を含む。標的遺伝子の対応する配列と100%同一性を有する領域が好適である。この状態は、「完全相補的」と称される。しかし、該領域はまた、標的とするmRNAの領域の長さに依存して、標的遺伝子の対応する領域と比較して、1、2または3個のミスマッチを含んでいてもよく、それ自体十分に相補的でなくともよい。ある態様において、本発明のRNA分子は1つの所定の遺伝子を特異的に標的とする。望ましいmRNAのみを標的とするためには、siRNA剤が標的mRNAに対して100%相同性を有し、該細胞または生物に存在する他の全ての遺伝子と少なくとも2個のミスマッチヌクレオチドを有し得る。特定の標的配列の発現を有効に阻害するために十分な配列同一性を有するsiRNAを分析および同定する方法は、当該技術分野において既知である。配列同一性は配列比較および当該技術分野において既知のアラインメントアルゴリズム(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991およびそれに引用されている文献参照)によって最適化し、例えばBESTFITソフトウェアプログラムに実装されているSmith-Watermanアルゴリズムによって、デフォルトパラメーター(例えばUniversity of Wisconsin Genetic Computing Group)を用いて、ヌクレオチド配列間の相違率を計算することができる。
RNAi剤の有効性に作用する別の要因は、標的遺伝子の標的領域である。RNAi剤による阻害が有効な標的遺伝子の領域は、実験によって決定することができる。好適なmRNA標的領域は、コーディング領域である。5’−UTR、3’−UTRおよびスプライス部位のような非翻訳領域も好適である。例えば、Elbashir S.M. et al, 2001 EMBO J., 20, 6877-6888に記載のトランスフェクションアッセイが、この目的で実施され得る。多数の他の好適なアッセイおよび方法が当該技術分野において存在し、当業者に周知である。
本発明に従って、標的と相補的なsiRNAの領域の長さは、10〜100ヌクレオチド、12〜25ヌクレオチド、14〜22ヌクレオチドまたは15、16、17もしくは18ヌクレオチドであり得る。対応する標的領域にミスマッチが存在するとき、相補領域の長さは、一般に、ある程度長い必要がある。
siRNAがオーバーハング末端(標的と相補的であってもなくてもよい)またはそれ自体と相補的であるが、標的遺伝子とは相補的でないさらなるヌクレオチドを担持していてもよいため、siRNAのそれぞれの鎖の合計長さは、10〜100ヌクレオチド、15〜49ヌクレオチド、17〜30ヌクレオチドまたは19〜25ヌクレオチドであってもよい。
用語「それぞれの鎖は49ヌクレオチドまたはそれ未満」は、全ての修飾または非修飾ヌクレオチドを含むが、該鎖の3’または5’末端に加えられ得る任意の化学基を含まない、鎖の連続ヌクレオチド合計数を意味する。鎖に挿入された短い化学基は数えないが、2本の別々の鎖を結合させるために設計された化学リンカーは、連続ヌクレオチドを作るとは見なさない。
用語「5’末端または3’末端の少なくとも一方における1〜6ヌクレオチドオーバーハング」は、生理的な条件下で2本の別々の鎖から形成される相補的siRNAの構造を意味する。末端ヌクレオチドがsiRNAの二本鎖領域の一部であるとき、該siRNAは平滑末端と考えられる。末端で1個以上のヌクレオチドが対になっていないとき、オーバーハングが創出される。オーバーハングの長さは、オーバーハングしているヌクレオチドの数によって測定される。オーバーハングしているヌクレオチドは、何れかの鎖の5’末端または3’末端の何れかに存在していてよい。
本発明のsiRNAは、少なくとも一方の鎖に少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含めることによって、経口送達に好適な、高いインビボ安定性を付与される。したがって、本発明のsiRNAは、少なくとも1個の修飾または非天然リボヌクレオチドを含む。多くの既知の化学修飾の長い説明が、公表されているPCT特許出願WO 200370918に記載されており、ここで反復することは避ける。経口送達に好適な修飾は、本明細書の実施例および説明により具体的に記載されている。好適な修飾は、糖部分(すなわち糖部分の2’位、例えば2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOE)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわちアルコキシアルコキシ基)または塩基部分(すなわち、別のヌクレオチド鎖の別の特定の塩基と対を形成する能力を維持した、非天然または修飾塩基)への修飾を含むが、これらに限定されない。他の修飾にはいわゆる「バックボーン」修飾が含まれ、これはホスホエステル基(隣接リボヌクレオチドを例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートで結合する)を置換することを含むが、これに限定されない。最後に、本明細書において3’キャップまたは5’キャップと称することもある末端修飾が重要であり得る。キャップはより複雑な化学からなり得て、当業者に既知である。
一つの態様において、本発明は、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現を阻害するための、二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2本の配列を含む。dsRNAは、第1配列を含むセンス鎖と、第2の配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的であり、該相補性の領域が30ヌクレオチド長未満、一般に19〜24ヌクレオチド長である、ヌクレオチド配列を含む。dsRNAは、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子を発現している細胞と接触させると、該遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
他の態様において、本発明は、本発明のdsRNAの一つを含む細胞を提供する。該細胞は一般に、哺乳類細胞、例えばヒト細胞である。
他の態様において、本発明は、生物、一般にヒト対象におけるTNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物であって、1種以上の本発明のdsRNAと、薬学的に許容される担体または送達ビークルを含む医薬組成物を提供する。
他の態様において、本発明は、細胞においてTNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現を阻害する方法であって、次の段階を含む方法を提供する:
(a)細胞に二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入し(ここで該dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2本の配列を含む。該dsRNAは第1配列を含むセンス鎖と、第2の配列を含むアンチセンス鎖を含む。該アンチセンス鎖は、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的であり、該相補性の領域が30ヌクレオチド長未満、一般に19〜24ヌクレオチド長である、相補性領域を含む。そして該dsRNAは、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子を発現している細胞と接触させると、該遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する);そして
(b)TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子のmRNA転写産物の分解がえられるのに十分な時間、段階(a)で作成した細胞を維持して、該細胞における前記遺伝子の発現を阻害する。
他の態様において、本発明は、細胞におけるTNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、本発明のsiRNAの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列と作動可能に結合した制御配列を含むベクターを提供する。
本発明の阻害核酸化合物は、商業的に入手可能な自動化DNA合成装置、例えばApplied Biosystems(Foster City, CA)モデル380B、392または394 DNA/RNA合成装置等の装置による常套の方法によって合成することができる。ホスホラミダイト化学を用いてもよい。本発明の阻害核酸化合物は修飾されていてもよく、例えば、多くの文献に記載されているヌクレアーゼ耐性バックボーン、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミダイト等を用いることができる。阻害核酸の長さは、生物学的活性が阻害されるために十分であるべきである。したがって、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、望まれる標的ポリヌクレオチドでのみ特異的結合が生じて、他の偶然の部位では生じないために十分に大きい必要がある。長さの上限は、約30〜40ヌクレオチド長以上のオリゴマーを合成し、精製する不便さおよび費用、短いオリゴヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドのほうがミスマッチにより耐性であること等を含む、多様な要因によって決定される。より好ましくは、オリゴヌクレオチド部分は、約18〜25ヌクレオチドの長さを有する。
二本鎖RNA、すなわちセンス−アンチセンスRNAは、低分子干渉RNA(siRNA)分子とも称し、TNKS1/2遺伝子またはAxin安定化に関与する他の遺伝子の発現を阻害するために使用することもできる。RNA干渉は、1本の鎖が標的mRNAのコード領域に対応している外因性低分子RNA二本鎖を投与する方法である(Elbashir et al.(2001) Nature 411: 494)。細胞に入ると、siRNA分子は外因性RNA二本鎖の分解だけでなく、内因性メッセンジャーRNAを含む同一の配列を有する一本鎖RNAの分解をも引き起こす。したがって、該技術が触媒的メカニズムによって作用すると考えられているため、siRNAは従来のアンチセンスRNA方法論よりも強力かつ有効であり得る。好ましいsiRNA分子は、典型的には19〜25ヌクレオチド長、好ましくは約21ヌクレオチド長である。siRNAを標的細胞に送達するための有効な戦略は、例えば物理的または化学的トランスフェクションを用いた導入を含む。
あるいは、siRNAは、例えば機能的siRNAまたはその前駆体の転写を可能とする多様なPolIIIプロモーター発現カセットを用いて、細胞内で発現することができる。例えば、Scherr et al. (2003) Curr. Med. Chem. 10(3):245; Turki et al. (2002) Hum. Gene Ther. 13(18):2197; Cornell et al. (2003) Nat. Struct. Biol. 10(2):91を参照されたい。本発明はまた、RNA干渉(RNAi)が可能な他の低分子RNA、例えばマイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピンRNA(shRNA)を含む。
下記実施例は、本発明の局面の実施において、本発明者らが用いた技術の代表例である。これらの技術は本発明の実施のための好ましい態様の典型例であり、当業者は、本明細書の開示に基づいて、本発明の精神および意図から離れることなく、多様な修飾を行うことができると理解されるべきである。
実施例
実施例1:低分子Wnt阻害剤を同定するためのスクリーニングアッセイ
Wnt/β−カテニン経路の低分子阻害剤を同定するため、100万個の化合物にわたって、HEK293細胞でWnt応答性Super-Topflash(STF)ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて、ハイスループット化合物スクリーニングを使用した。その選択性プロファイルと効力に基づいて、続く実験はXAV939と本明細書において称する化合物に集中させた。XAV939はWnt3A刺激STF活性をHEK293細胞において強力に阻害したが、CRE、NF−κBまたはTGFβルシフェラーゼレポーターには作用しなかった。逆に、XAV939の近い構造アナログであるLDW643は、Wnt3A誘導性STFレポーターに対する活性を有さなかった。XAV939処置は、HEK293細胞において、Wnt3A誘導性β−カテニン蓄積を阻止することが見出され、これは該化合物がWnt経路活性をβ−カテニンの上流で調節することを示している。
XAV939がβ−カテニン分解を促進する破壊複合体の上流できのうするのか、またはそのレベルで機能するのかを試験するため、結直腸癌細胞系SW480における化合物処置の効果を試験した。SW480細胞系は切断APCアレルを有し、それによって破壊複合体活性が損なわれている。興味深いことに、XAV939はSW480細胞においてSTF活性を阻害するが、無傷なWnt経路カスケードを有するHEK293細胞におけるほどではなかった。このSTF活性の低下と一致して、XAV939は、SW480細胞において、β−カテニン存在量を減少させたが、β−カテニンリン酸化(S33/S37/T41)顕著に増加させた。これはXAV939がβ−カテニンのリン酸化依存的分解を促進することを示唆している。これらの発見は、XAV939が欠損したAPC機能を有する細胞においてさえ、おそらく破壊複合体の活性を調節することにより、β−カテニン分解を修復し得ることを示している。
XAV939がどのように破壊複合体の活性を上昇させ得るかを調べるため、既知のWnt経路成分のタンパク質レベルに対する化合物処置の効果を試験した。驚くべきことに、XAV939処置後のAxin1およびAxin2のタンパク質レベルは強く上昇したが、それらの転写レベルは化合物処置によって影響されなかった。さらに、おそらく上昇したAxinタンパク質レベルに応答してAxinへのGSK3βの採用が促進されたため、Axin−GSK3β複合体形成における強い増加が観察された。この現象は、DLD−1細胞、切断されたAPCを有する他の結直腸癌細胞系におけるAxin1/2タンパク質レベル、β−カテニン分解およびβ−カテニン標的遺伝子発現に対するXAV939の効果が観察されることによって確認された。
重要なことに、SW480細胞におけるAxin1/2のsiRNA介在性欠乏は、β−カテニン分解に対するXAV939の効果を逆転し、STFレポーターに対するXAV939の阻害効果を消失させた。これはさらに、XAV939がAxin1/2タンパク質レベルを上昇させることによってWntシグナル伝達を阻害していることを示している。これらの発見をあわせると、XAV939はGSK3β−Axin複合体形成を増加し、それによってGSK3β依存的リン酸化およびβ−カテニンのプロテアソーム分解を促進することが示される。
少なくとも実施例1に記載のSuperTopFlash(STF)は、次のとおりに作成したプラスミドを使用した:SuperTopflashレポーターは、12個のTCF結合部位をpTA−Luc(Clontech)に挿入して作成した。マウスAxin1およびその変異体をアミノ末端でGFPまたはFLAGエピトープと融合させ、メタロチオネインプロモーターの制御下でレトロウイルスベクターにクローン化した。ヒトTNKS1/2およびそれらの変異体をFLAGエピトープとアミノ末端で融合させてタグ化して、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で哺乳類発現ベクターにクローン化した。カルボキシル末端で3個のHAエピトープと融合させたショウジョウバエAxinを、メタロチオネインプロモーターの制御下でショウジョウバエ発現ベクターにクローン化した。マウスAxin1のアミノ末端フラグメント(a.a. 1〜87)をコードする配列をTet制御発現ベクターpcDNA4-TO(Invitrogen)にクローン化した。Gateway技術(Invitrogen)を用いて、発現ベクターpDEST15(Invitrogen, Carlsbad, CA): TNKS1-P(1088-1327)、TNKS2-P(934-1166)、TNKS2-SP(872-1166)、PARP1-P(662-1014)およびPARP16-P(93-273)に多様なタンパク質をクローン化した。
実施例3:XAV939はタンキラーゼを阻害してAxinタンパク質レベルを制御する
実施例3a:iTRAQ定量的化学プロテオミクスアプローチ
XAV939がAxinタンパク質レベルをアップレギュレーションする細胞効果標的を同定するために、3チャンネルiTRAQ定量化学的プロテオミクスアプローチを用いた。この戦略は、HEK293細胞溶解物由来の親和性捕捉細胞タンパク質へのXAV939の生物活性アナログの固定化に基づく。非特異的結合と特異的結合を区別するために、過剰量(20μM)の親化合物XAV939、不活性アナログLDW643またはDMSOを細胞溶解物に加えた後、固定化化合物とインキュベーションして、競合実験を行った。固定化化合物、例えば推定効果標的および能力のない標的(potential off-target)との特異的結合は、XAV939と競合するが、LDW643とは競合しない。
化学的ペプチド標識技術iTRAQを用いて、3サンプルを多重化し、LC−MS/MS分析によってビークル(DMSO)に対する結合置換(%競合)を定量した。合計699タンパク質を定量した。しかし、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼPARP1(93%競合)、PARP2(88%競合)、PARP5a/TNKS1(79%競合)およびPARP5b/TNKS2(74%競合)を含む18種のタンパク質のみが、可溶性XAV939により顕著かつ特異的に競合を失った(>65%、>平均の2σ)。さらに、既知のPARP1基質を含むたようなタンパク質分子、例えばKU70複合体成分(XRCC5、XRCC6)およびFACT成分(SUPT16H、SSRP1)は、おそらくPARP1と同時に共精製されるため、顕著に競合した。多くのタンパク質は競合せず(<平均の2σ)、これはこれらが溶液中での自由な化合物との結合とは異なる結合形態で、親和性マトリックス上で富化された、極めて豊富な低親和性結合物質またはタンパク質のいずれかであることを示唆している。
iTRAQ法はBantscheff et al(2007)に記載のとおりに実施した。簡潔には、ゲルレーンを分離範囲にわたってスライスし、ゲル内トリプシン消化を行い、次いでiTRAQ標識(Applied Biosystems)を行った。DMSOビークル対照から抽出したペプチドをiTRAQ試薬116で標識化し、iTRAQ試薬114および115でそれぞれ標識化した化合物処理サンプルからの抽出物と合併した。LTQ-Orbitrapマススペクトロメーター(Thermo-Finnigan)で液体クロマトグラフィータンデム質量分析によって、配列決定を行った。タンデムマススペクトルは、iTRAQレポーターイオンの検出が可能なように、pulsed-Q dissociationを用いて作成した、ペプチド質量およびフラグメンテーションデータを用いて、Mascot(Matrix Science)を使用するIPIデータベースの社内監督版(in-house curated version)にクエリーを行った。タンパク質の同定は、デコイデータベースを用いて実証した。iTRAQレポーターイオン利用定量化を、社内で開発したソフトウェアで実施した。
実施例3b:化合物競合
同定したPARPタンパク質のインビボでの結合親和性を確立するために、用量応答化合物競合実験を行った。これにより、XAV939はTNKS結合を0.1μMで阻止し、PARP1/2結合を1μMで阻止することが示された。予期したとおり、不活性な化合物LDW643はこのアッセイで活性を有さなかった。Cy5−標識化XAV939および組換えPARPタンパク質を用いて、化合物の結合をさらに特徴付けた。XAV939はTNKS1およびTNKS2の触媒的(PARP)ドメインと緊密に結合することが見出された(それぞれKd0.099μMおよび0.093μM)。XAV939は組換えPARP1とも結合したが、結合親和性が低かった(Kd1.2μM)。
XAV939とTNKS1、TNKS2およびPARP1との親和性(平衡解離定数Kd)を測定するために、TNKS1、TNKS2またはPARP1のPARPドメインを含むGST融合タンパク質の滴定を、Cy5と結合させた50nMのXAV939(XAV939Cy5)と共に、50mMのTris−HCl pH8.0/50mMのNaCl/0.08%のTriton X-100/10mMのMgCl中で、30℃で2時間、黒色384ウェルプレートでインキュベートすることにより行った。次いで、Perkin-Elmer Envision Plate ReaderのCy5 FPに最適化された光学(最適化Cy5 FP Dual Emission Label、Perkin-Elmer)を用いて、蛍光偏光値を得た。[1000 x (S-G*P/S+G*P)]データを保存し、GraphPad Prismを用いて一部合計結合飽和(one-site total binding saturation)アルゴリズムで分析した。
実施例3c:siRNA実験
どのPARPファミリーメンバーがXAV939誘導性Axinタンパク質蓄積の実際に有効な標的であるかを決定するため、それらのsiRNA介在機能喪失表現型を評価した。近いファミリーメンバー間での潜在的代理機能性を回避するため、2種のタンキラーゼパラログTNKS1およびTNKS2ならびにPARP1およびPARP2が同時に標的にされた。特に、TNKS1およびTNKS2の共欠損は、Axin1およびAxin2両方のタンパク質レベルを上昇させてXAV939の効果を表現型模写したが、PARP1/2ノックダウンはAxinタンパク質レベルに影響しなかった。XAV939がPARP1よりもTNKS1/2に対してより高い親和性を示すということとあわせると、これらの発見は、TNKS1およびTNKS2がXAV939の細胞効果標的であると強く示唆している。
さらなるsiRNAを用いて、SW480細胞において、TNKS1およびTNKS2の共欠損がβ−カテニンリン酸化を上昇し、β−カテニン存在量を減少させ、β−カテニン標的遺伝子の転写を阻害することをさらに示す。特に、TNKS1またはTNKS2のいずれかのみの欠損は、Axin1/2タンパク質レベルの上昇を導かなかったが、これはAxinタンパク質レベルの制御に置いて、TNKS1およびTNKS2の機能が重複していることを示している。TNKS1およびTNKS2の共欠損はまた、HEK293細胞およびDLD−1細胞においてもXAV939を表現型模写する。
多数の重要なWnt経路成分が進化的に保存されているため、Axinタンパク質レベルおよびWntシグナル伝達を制御するTNKSの能力を、ショウジョウバエ細胞においても試験した。ショウジョウバエTNKSを標的とする二本鎖RNA(dsRNA)は、S2細胞において異種的に発現されたショウジョウバエAxinのタンパク質レベルを上昇させたが、そのmRNAレベルは上昇させなかった。さらに、TNKS dsRNAはWnt/無翅レポーターを特異的に阻害したが、BMPまたはJAK/STAT経路活性には影響しなかった。これらの結果はAxinタンパク質レベルおよびWntシグナル伝達を制御するTNKSの進化的に保存された役割を支持する。
TNKS1およびTNKS2はポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)ファミリーのメンバーであり、ポリADPリボシレーション(PARシレーション)と称される複数のADP−リボース単位の付加によってそれらの構造を翻訳後に修飾する。siRNA救助アプローチを用いて、TNKSのPARシレーション活性がAxinタンパク質レベルの制御に必須であるかを決定した。内因性TNKS1/TNKS2の欠損により、外因性siRNA抵抗性野生型TNKS2または触媒的に不活性なTNKS2−M1054V変異体の発現が、ドキシサイクリン応答性プロモーターから誘導された(Sbodio, J. I., et al. (2002) Biochem J 361, 451-9)。野生型の発現はTNKS1/2 siRNAのAxin1タンパク質発現に対する効果を救助するが、変異TNKS2はそうではなかった。これは、タンキラーゼの触媒活性がAxinタンパク質レベルおよびWnt経路シグナル伝達に必須であることを示唆している。
この試験で使用したsiRNAの配列を次の表Iに示す:
表I
Figure 2011504461
実施例3d:自己PARシレーション活性アッセイ
上記発見に基づいて、タンキラーゼのPARシレーション活性阻害によってAxinタンパク質レベルを制御するXAV939の能力を試験した。TNKS2のC末端PARPドメイン(GST−TNKS2PARP)は、インビトロでのPARシレーションアッセイを用いて、効果的に自己PARシレーションされ、これはXAV939によって十分に阻害された。逆に、自己PARシレーションは不活性な対照化合物DLW643によっては作用されなかった。TNKSの自己PARシレーションは、ユビキチン−プロテアソーム経路を介してその分解を促進すると報告されている(Yeh, T. Y. et al. (2006) Biochem J 399, 415-25)。XAV939処理はTNKSタンパク質レベルを顕著に上昇させることが見出され、これはXAV939がインビボでTNKS自己PARシレーションも阻害することを示唆している。あわせると、これらの遺伝的および生化学的分析によって、XAV939がTNKSの触媒活性を阻害することでAxinタンパク質レベルを上昇させることが示唆される。
TNKSの自己PARシレーションに対する化合物の効果を評価するため、インビトロ自己PARシレーションアッセイを次のとおりに実施した:
タンキラーゼは、NADを用いると、それ自身(自己PARシレーション)または標的タンパク質(基質PARシレーション)のポリ(ADP−リボシル)作用を触媒する。それぞれの反応ターンオーバーにおいて、酵素は1単位のNADを消費し、1単位のポリマー鎖のADP−リボースを加え、1単位のニコチンアミドを放出する。ニコチンアミド形成およびタンキラーゼ低分子阻害剤の存在下におけるニコチンアミド形成の低下をモニターするための自己PARシレーション活性アッセイを設計する。ニコチンアミドの定量は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)で実施する。アッセイは384ウェルフォーマットで設計し、ハイスループットスクリーニングに適している。
一般に、自己PARシレーション反応は、体積40μLで、次のものを含む反応溶液中で実施した:5μLの化合物(20%DMSO中)、アッセイバッファー(50mMのTris−HCl、pH7.5、10mMのMgCl、50mMのNaCl、1mMのDTT、0.02%のTween-20、8%のグリセロール)中15μLのタンキラーゼ、20μLのNAD。最終反応混合物は、濃度0.0086〜18.75μMの化合物(阻害剤)、2.5%のDMSO、20nMのGST−TNKS2P(または60nMのGST−TNKS1P)、250μMのNADを含む。全ての反応は室温で、384ウェルGreiner平底プレート(Costar, Cat. No. 781201)で120分間実施し、次いで500nMのd4−ニコチンアミド(CDN Isotopes, Inc. Cat. No. D3457)を含む10μLの20%ギ酸を加えてクエンチした。LC/MSの前に、反応混合物中のタンパク質を沈殿/遠心分離法によって除去した後アセトニトリルの2アリコートを加えた。次いで、得られた上清をLC/MS/MSシステム(Agilent 1200SL LC system、LEAP CTC HTC Autosampler and Sciex API 4000 マススペクトロメーター)に注入し、ニコチンアミドおよび重水素化内部標準をHypercarbカラム(2.1X20mm、5μMの粒子、Thermo Scientific Inc)で保持し、勾配溶出し、エレクトロスプレーイオン化のポジティブモードで操作するマススペクトロメーターで検出した。
LCは、流速1mL/分、5から95%アセトニトリルのグラジエントで0.8分間で実行した。25mMの重炭酸アンモニウムを水性移動相に加え、0.1%の水酸化アンモニウムをアセトニトリル移動相に加えた。マススペクトロメーターは、MRMモードで実行し、ニコチンアミドとd4−ニコチンアミドの質量遷移はそれぞれ123→80および127→84であった。対応するサンプルウェルの相対応答(酵素反応によって生産されたニコチンアミド対内部標準であるd4−ニコチンアミドの比)が、阻害剤の活性を評価し、またはIC50曲線をプロットするために報告された。註:IC50<0.0086nMまたはIC50>10μMは、真のIC50が実験範囲外であることを示している。タンキラーゼ1およびタンキラーゼ2アッセイにおいて使用したタンパク質は、それぞれ切断N−GST−タンキラーゼ1(1088−1327)および切断N−GST−タンキラーゼ2(934−1166)である。
実施例4:TNKSとAxinの保存N末端ドメインの結合はAxinタンパク質レベルの制御に重要である
どのようにTNKSがAxinタンパク質レベルを制御するか調べるために免疫共沈降実験を実施したところ、TNKS1およびTNKS2がSW480細胞においてAxin2と結合していることを見出した。さらに、Axin1/2とTNKS1/2の強い結合が酵母2ハイブリッドアッセイにおいて検出された。酵母2ハイブリッドアッセイは次のとおり実施した:
酵母2ハイブリッドアッセイは、Matchmaker Two-Hybrid System 3(Clontech)を用いて、製造業者の指示書に従って行った。簡潔には、マウスAxin1の異なるフラグメントをベイトプラスミドpGBK−T7にクローン化し、ヒトTNKS1の異なるフラグメントをプレイプラスミドpGAD−T7にクローン化した。AH109細胞をベイトおよびプレイプラスミドで形質転換した。二重形質転換体をTrp−およびLeu−プレートで選択し、フィルターリフトの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−D−ガラクトピラノシド(X−gal)染色によってLacZ発現について試験した。
Axin1のTNKS結合ドメインを定義するために、多様なAxin1フラグメントをそれらのTNKS1結合能について試験した。驚くべきことに、Axin内で最も保存されたアミノ酸の広がりを含むAxinの小さなN末端領域(アミノ酸19−30)がTNKS1との相互作用に必要かつ十分であった。この小さなN末端ドメイン(本明細書においてTBD、タンキラーゼ結合ドメインと称する)によるTNKS1とAxin1の特異的相互作用はさらに、GSTプルダウンおよび免疫共沈降アッセイによって立証された。
アミノ末端Axin1の誘導発現は、安定的にpcDNA4−TO−Axin1 1−87をHEK293−TRX細胞(Invitrogen)にトランスフェクトすることによって達成され、細胞をは10ng/mlのドキシサイクリンで24時間誘導された。Dual Luciferase アッセイキット(Promega)を用いて、製造業者の指示書に従って、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
AxinとTNKS間の物理的相互作用の阻害の機能的結果を評価した。野生型GFP−Axin1を発現する細胞は、XAV939処理に応答して強く増強される低い基礎タンパク質レベルを示したが、GFP−Axin1Δ19−30を発現する細胞は、既に高い基礎タンパク質レベルを示し、さらに化合物処理に応答しなかった。重要なことに、IRAPまたはTRF1の異種TNKS結合ドメインとGFP−Axin1Δ19−30を融合することによるTNKS1−Axin1相互作用の回復は、そのXAV939への応答を十分に回復した。これらの結果は、AxinのN末端ドメインの過剰発現はTNKSの結合に関して内因性Axinと競合することがあり、したがって内因性Axin1のタンパク質レベルを上昇させることを示している。実際、GFP−Axin1N(a.a. 1-87)の過剰発現は、実質的に内因性Axin1のタンパク質レベルを上昇したが、そのmRNA発現には作用せず、欠損TBDを有する(a.a. 19-30を欠く)変異体ではそうではなかった。あわせると、これらの発見は、進化的に保存されたTBDによって仲介されるAxinとTNKSの物理的相互作用がインビボでのAxinタンパク質レベル制御に重要であることを示している。
タンキラーゼは、基質結合のためのアンキリン反復ドメイン、自己オリゴマー形成のためのSAMドメインおよび触媒活性のためのPARPドメインを含む。酵母2ハイブリッドアッセイを用いて、本発明者らは、TNKS1のIII、IVおよびVアンキリン反復ドメインにわたる領域がAxin1との相互作用に必要かつ十分であることを示した。Wntシグナル伝達に対するTNKS過剰発現の効果を試験したところ、HEK293細胞へのTNKS1の一時的トランスフェクションによってSTFレポーター活性が劇的に上昇し、β−カテニンが安定化されることが示された。この活性はTNKS1のAxin結合ドメインとSAMドメインを必要とするが、PARPドメインは必要としない。過剰発現されたTNKSはSAMドメイン介在性オリゴマー形成によって大きな格子状構造を形成することが報告されている(De Rycker, M. et al. (2004) Mol Cell Biol 24, 9802-12)。我々は過剰発現されたTNKSがこの格子状構造にAxinを捉えて、それがβ−カテニン破壊複合体においてその正常な機能の実施を妨げていると仮定する。
実施例5:イムノブロッティング、免疫沈降およびGSTプルダウンアッセイ
全細胞溶解物は、RIPAバッファー(50mMのTris−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1%のNP−40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、1mMのEDTA)に細胞を溶解して調製した。等量のタンパク質をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に移し、記載の抗体で調べた。免疫共沈降実験のために、細胞をEBCバッファー(50mMのTris−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、0.5%のNP−40、1mMのEDTA)に溶解させ、透明な細胞溶解物を記載の抗体およびProtein G-セファロースビーズと共に、4℃で一夜インキュベートした。ビーズを溶解バッファーで5回洗浄した。結合タンパク質をSDSサンプルバッファーに溶解させ、SDS−PAGEで分離し、記載の抗体でブロットした。インビボでのタンパク質ユビキチン化およびPARシレーションを検出するために、DeubiquitinaseおよびPARGの活性を阻止するため5mMのNEMおよび5μMのADP−HPDを補ったRIPAバッファーで細胞を溶解して、次いで記載の抗体と免疫沈降させた。
GSTプルダウンアッセイのために、GST−Axin1融合タンパク質を大腸菌で作成し、グルタチオン−アガロースビーズ(Amersham Biosciences)を用いて精製した。Flag−TNKS1を過剰発現しているHEK293細胞をEBCバッファーに溶解させ、GST融合タンパク質を加えたグルタチオン−アガロースビーズと共に透明な溶解物を4℃で4時間インキュベートして、ビーズをEBCバッファーで5回洗浄した。結合物質をSDS−PAGEで分離し、記載の抗体でブロットした。細胞質溶解物を調製するために、細胞を低張バッファー(10mMのTris−HCl pH7.5、10mMのKCl)に入れ、細胞溶解物を4回の凍結−解凍サイクルの後に遠心分離して、不純物除去を行った。上記実験の全てで、1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)および1xホスファターゼ阻害剤カクテル(Upstate)を溶解バッファーに加えた。この試験で使用した市販の抗体は、ヤギ抗Axin1抗体(R&D Systems)、ウサギ抗Axin2抗体およびウサギ抗ホスホ−β−カテニン(pSer33/37/Thr41)抗体(Cell Signaling Technology)、マウス抗TNKS抗体(Abcam)、マウス抗HA(HA.11)抗体(Covance)、マウス抗β−カテニン抗体、ウサギ抗ポリ(ADP−リボース)抗体およびウサギ抗PARP1抗体(BD Pharmingen)、マウス抗ユビキチン抗体(MBL)、ウサギ抗GFP抗体(Clontech)、マウス抗チューブリンおよびマウス抗Flag(M2)抗体(Sigma)を含む。
実施例6:XAV939はAxinのユビキチン化およびPARシレーションを調節することによってAxinを安定化する
XAV939に応答するAxinタンパク質レベルの上昇は、翻訳またはタンパク質安定性の調節のためであり得る。後者の可能性と一致して、XAV939処置がSW480細胞における内因性Axin2の半減期を顕著に延長することを見出した。Axinの分解は、Axin1のポリユビキチン化はプロテアソーム阻害剤MG132の添加後、顕著に増加しため、ユビキチン−プロテアソーム経路によって仲介される可能性がある。逆に、XAV939とMG132の共処置はAxin1およびAxin2のポリユビキチン化を顕著に低下し、これはXAV939がAxinのポリユビキチン化を防止してAxinを安定化し得ることを示唆している。
TNKSの自己PARシレーションまたはTNKS介在性TRF1のPARシレーションは、増加したユビキチン化およびTNKSまたはTRF1の分解をそれぞれ導く(Yeh, T. Y., et al. (2006) Biochem J 399, 415-25; Chang, W., et al. (2003) Genes Dev 17, 1328-33)。TNKSがAxinと物理的に結合し、Axinタンパク質レベルの制御にそのPARシレーション活性が必要とされるという内部での発見とあわせると、これはAxin分解がTNKSによる直接PARシレーションによって促進され得ることを示唆している。実際、TNKS2はインビトロでTBDを含むAxin1フラグメント(a.a. 1-280)をPARシレーションすることができ、これはXAV939処理によって完全に阻害された。PAR修飾を特異的に認識する抗体を使用して、外因的に発現されたGFP−Axinが細胞内でPARシレーションされることを見出した。さらに、PARシレーションシグナルがXAV939の存在下で強く低下し、これはAxinのPARシレーションがインビボでTNKSによって介在されている可能性を示唆している。
細胞をXAV939で処理して内因性Axin2レベルを上昇させて、内因性Axin2ユビキチン化およびPARシレーションを検出容易にした。Axin2は、XAV939を洗い落とした後1時間以内に、速やかに分解された。予期したとおり、MG132によって細胞を処理すると、Axin2分解が阻止され、そのポリユビキチン化が強く上昇された。しかし、XAV939とMG132の両方で処理すると、Axin2のユビキチン化が完全に阻止された。興味深いことに、細胞をMG132のみで処理したとき、Axin2と共に移動する抗PAR抗体応答シグナルが検出されたが、細胞をXAV939で処理したときには消失した。あわせると、これらの発見は、TNKSがAxinのユビキチン化および分解を促進し、これは少なくとも部分的に、Axinの直接PARシレーションによって調節されている可能性があることを示唆している。
実施例7:XAV939はAPC変異DLD−1癌細胞のコロニー形成を阻害する
APC変異結直腸癌と構成的に活性なβ−カテニンシグナル伝達を結ぶ強い遺伝的証拠は、Wnt経路阻害剤を同定するための多くの努力を刺激してきたが、脱制御Wnt経路活性を特異的に遅延させる薬理学的阻害剤の発見は、困難であると証明されている。XAV939がAPC変異細胞においてさえβ−カテニンシグナル伝達を阻害し得るとの内部の発見に基づいて、この化合物は、APC変異結直腸癌細胞の増殖阻害能について試験された。β−カテニンを標的とする誘導性shRNAで細胞系のパネルをスクリーニングしたとき、結直腸癌細胞系DLD−1がshRNA介在β−カテニン阻害に最も感受性であることが見出された。さらに、XAV939によるβ−カテニン標的遺伝子の制御は、SW480細胞と比較して、DLD−1においてより強かった。Wnt経路変異を有さず、β−カテニン欠乏に非感受性であるRKO結直腸癌細胞系をネガティブコントロールとして使用した。低血清増殖条件下で、XAV939はDLD−1細胞のコロニー形成を顕著に阻害したが、不活性構造アナログLDW643は最も高い濃度でさえ増殖に影響しなかった。重要なことに、XAV939はβ−カテニン非依存的RKO細胞のコロニー形成には影響しなかった。
コロニー形成アッセイを次のとおりに実施した:DLD1およびRKO細胞を低血清増殖培地(0.5%のFBS)に500〜1000細胞/ウェルで6ウェルプレートにそれぞれ播種した。播種から16時間後、所定の濃度の化合物を加えた。コロニー形成が観察されるまで、培地を2日ごとに補充した。コロニーを緩衝化ホルマリン中2mg/mlのクリスタルバイオレット溶液で染色して、Molecular Imager ChemiDoc XRS System(BioRad)でイメージ化した。
TNKS1/TNKS2は有糸分裂進行、テロメア維持およびGLUT4移動を制御することが記載されている(Canudas, S., et al. (2007) Embo J 26, 4867-78 (2007); Seimiya, H., et al. (2002) J Biol Chem 277, 14116-26)。特に、TNKS1が姉妹テロメア結合の分離または二極性紡錘体の集合に必要であることが報告されており、そしてTNKS1ノックダウンが強い有糸分裂停止を引き起こすことが報告されている(Chang, P., et al. (2005) NaT Cell Biol 7, 1133-9; Dynek, J. N., et al. (2004) Science 304, 97-100)。しかし、XAV処置またはTNKS1/TNKS2の個々/組合せのsiRNAノックダウンを用いると、この試験に使用した細胞系について、高または低血清条件で、明白な有糸分裂停止表現型は全く生じなかった。これはXAV939が抗有糸分裂機能によってDLD1細胞の増殖を阻害しないことを示している。
DLD1細胞に対するXAV939の抗増殖性効果がむしろAxinタンパク質レベルの上昇によって仲介されているとすれば、Axin1/2発現のノックダウンは化合物処置の抗増殖性効果を取り戻すと予期される。実際、siRNA介在性Axin1/2欠乏は、XAV939の抗増殖性効果を完全に無効にした。あわせると、これらの発見は、DLD1細胞におけるXAV939の抗増殖性効果はWnt経路シグナル伝達のAxin依存的阻害のためであることを示唆している。
少なくとも実施例6に記載の細胞培養法は、次のとおりに実施した:HEK293、SW480、DLD1およびRKO細胞は10%FCSを補ったDMEMまたはRPMI1640培地で、5%のCOを含む37℃加湿インキュベーター内で増殖した。製造業者の指示書に従って、Fugene 6(Roche)を用いてプラスミドのトランスフェクションを行い、Darmafect 1(Dhamacon)を用いてsiRNAのトランスフェクションを行った。
実施例8:材料および方法
本明細書に記載の、詳細に説明していない実験を実施し、結果を得るために用いた材料および方法は次のとおりである:
実施例8a:定量的RT−PCR
製造業者の指示書に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて化合物またはsiRNA処理細胞から全RNAを抽出し、Taqman Reverse Transcription Reagents(Applied Biosystems)で逆転写した。ABI PRISM 7900HT Sequence Detection Systemを用いて転写レベルを評価した。0.6μlの20x Assay-on-Demand mix(各プライマーについて予め混合された濃度18μMおよび5μMのプライマー)、6μlのTaqman Universal PCR Master Mixおよび5.4μlのcDNAテンプレートから成る反応物12μl中で実時間PCRを実施した。使用した熱サイクル条件は、50℃で2分、95℃で10分、次いで95℃で15秒と60℃で1分の40サイクルであった。全実験を3連で行った。遺伝子発現分析は、正規化のために、ハウスキーピング遺伝子であるGUSBをでの比較C法を用いて行った。
実施例8B:パルスチェイス実験
SW480細胞を代謝標識の前日に10cmプレートに200万細胞/プレートで播種した。翌日、細胞をPBSで3回洗浄し、L−メチオニンなしのDMEM(Mediatech)で1時間飢餓にして、次いで35S−メチオニン(100μCi/ml)(Amersham)で30分間標識する。標識化の完了後、培地を除去し、100X過剰の冷メチオニンを含む培地と交換した。細胞溶解物をRIPAで、所定の時点で収穫した。等量の放射線標識溶解物を抗Axin2抗体で一夜免疫沈降させた。免疫沈降物をRIPAバッファーで徹底的に洗浄し、翌日SDS−PAGEを行い、次いで移した。放射活性シグナルをPhosphoImagerで検出した。
実施例8C:化合物親和性精製
化合物の結合および親和性精製を本質的に記載のとおりに実施した(Bantscheff et al 2007)。1アミン基を有する誘導化生物活性アナログLDW639を合成して、NHS活性化Sepharose 4ビーズ(Amersham)と結合させた。加圧型ホモジナイザー を用いて氷上で、293T細胞を溶解バッファー(50mMのTris/HCl pH7.5、5%グリセロール、1.5mMのMgCl、150mMのNaCl、20mMのNaF、1mMのNaVO4、1mMのDTT、5μMのカリクリンA、0.8%のIgepal-CA630およびプロテアーゼ阻害剤カクテル)中でホモジナイズした。溶解物を遠心分離して予め不純物を取り除き、タンパク質濃度をBradfordアッセイで測定した。ジメチルスルホキシド(DMSO)に化合物XおよびYを溶解させ、最終濃度20μM(またはDMSOのみ)で溶解物に、30分間4℃で加えた。次いで100μlのネガティブコントロール−マトリックスを加え、4℃でさらに60分間インキュベートを続けた。遠心分離の後、ビーズをカラム(MoBiTech)に移して洗浄した。結合物質をNuPAGE LDSサンプルバッファー(Invitrogen)で溶出させ、溶出液を濃縮し、アルキレート化し、4−12%のNuPAGEゲル(Invitrogen)で分離し、コロイド状Coomassieで染色した。
実施例8D:ショウジョウバエレポーターアッセイ
S2R細胞を384ウェルプレートに播種し、所定のdsRNAで3日間処理した。次いでEffectene(Qiagen)を用いて細胞を、0.5ngのpPac-Renilla、Wntレポーターアッセイについては2.5ngのLef-Lucおよび2.5ngのpPac-Lef1と共に、BMPレポーターアッセイについては5ngのpcopHSP-BRE-Lucで、あるいはJAK/STATアッセイについては18ngのDraf-Lucでトランスフェクトした。PUC19を担体DNAとして加えて各ウェル中DNAを25ngとした。トランスフェクションの24時間後、12.5%の無翅調節培地、50ng/mlの組換えヒトBMP−2(R&D Systems)、または50%のUPD調節培地を加え、Duo-Gloルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を用いてルシフェラーゼアッセイを48時間後に行った。T7結合プライマー(Whiteについて、フォワード、5’-ACCTGTGGACGCCAAGG-3’(配列番号);リバース、5’-AAAAGAAGTCGACGGCTTC-3’(配列番号))を用いて、S2R細胞RNAからPCRフラグメントを増幅した。TNKSについて、フォワード、5’-GATAGGATTGCGGATGAGGA-3’(配列番号);リバース、5’-TCCAATGAAGAAGAATCGGG-3’(配列番号)を、MEGAscript 高収率転写キット(Ambion)を用いて、dsRNA作成のために使用した。Axinに対するTNKS欠乏の効果を試験するため、DAxin-3XHAで安定的にトランスフェクトしたS2R細胞を24ウェルプレートに播種し、所定のdsRNAで5日間処理した。

Claims (49)

  1. Wntシグナル伝達関連障害を処置し、予防しまたは改善する方法であって、それを必要とする対象に有効量のタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を調節する薬物を投与することを含む方法。
  2. 薬物がタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を低下または消失させる、請求項1の方法。
  3. 薬物が阻害核酸である、請求項2の方法。
  4. 薬物が融合タンパク質である、請求項2の方法。
  5. 薬物が本発明の化合物である、請求項2の方法。
  6. Wntシグナル伝達関連障害がWntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションに関連している、請求項2の方法。
  7. Wntシグナル伝達関連障害ががんである、請求項6の方法。
  8. Wntシグナル伝達関連障害が結腸癌である、請求項7の方法。
  9. Wntシグナル伝達関連障害が骨関節炎である、請求項6の方法。
  10. Wntシグナル伝達関連障害が多発性嚢胞腎疾患である、請求項6の方法。
  11. 薬物がタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を向上する、請求項1の方法。
  12. Wntシグナル伝達関連障害がWntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションに関連している、請求項11の方法。
  13. Wntシグナル伝達関連障害が骨粗鬆症である、請求項12の方法。
  14. Wntシグナル伝達関連障害が肥満または糖尿病である、請求項12の方法。
  15. Wntシグナル伝達関連障害が神経変性疾患である、請求項12の方法。
  16. タンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を調節することができる薬物の投与によって、Wnt経路シグナル伝達を調節する方法。
  17. タンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を低下または消失させることによって、薬物がWnt経路シグナル伝達を阻害する、請求項16の方法。
  18. 薬物が阻害核酸である、請求項17の方法。
  19. 薬物が融合タンパク質である、請求項17の方法。
  20. 薬物が本発明の化合物である、請求項17の方法。
  21. Wnt経路シグナル伝達を阻害することができる薬物を同定する方法であって:
    a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、Axinタンパク質または安定性レベルを測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そして
    b) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することを含み、
    ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアゴニストとして同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をWnt経路シグナル伝達のアンタゴニストとして同定する、方法。
  22. Axinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、総β−カテニンレベルの低下、ホスホ−β−カテニンレベルの上昇、Axinタンパク質レベルの上昇または増加したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項21の方法。
  23. Axinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、総β−カテニンレベルの上昇、ホスホ−β−カテニンレベルの低下、Axinタンパク質レベルの低下または減少したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項21の方法。
  24. 薬物が低分子である、請求項21の方法。
  25. 薬物が阻害核酸である、請求項21の方法。
  26. 薬物が融合タンパク質である、請求項21の方法。
  27. Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定する方法であって:
    a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そして
    b) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することを含み、
    ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なダウンレギュレーションに関連した障害を処置するために有用として同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をWntシグナル伝達の異常なアップレギュレーションに関連した障害を処置するために有用として同定する、方法。
  28. Axinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、総β−カテニンレベルの低下、ホスホ−β−カテニンレベルの上昇、Axinタンパク質レベルの上昇または増加したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項27の方法。
  29. Axinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、総β−カテニンレベルの上昇、ホスホ−β−カテニンレベルの低下、Axinタンパク質レベルの低下または減少したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項27の方法。
  30. 薬物が低分子である、請求項27の方法。
  31. 薬物が阻害核酸である、請求項27の方法。
  32. 薬物が融合タンパク質である、請求項27の方法。
  33. タンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を阻害することができる薬物を同定する方法であって:
    a) 試験薬物の存在下および非存在下、Wntシグナル伝達を許容する条件下で、Wntシグナル伝達経路が活性であり、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することができる生物学的サンプルを接触させ;そして
    b) 前記試験薬物の存在下および非存在下の両方で、Axinタンパク質レベルまたは安定性を測定することを含み、
    ここで(i)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、該試験薬物をTNKSアゴニストとして同定し、そして(ii)試験薬物の非存在下と比較して、試験薬物の存在下でのAxinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、該試験薬物をTNKSアンタゴニストとして同定する、方法。
  34. Axinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、総β−カテニンレベルの低下、ホスホ−β−カテニンレベルの上昇、Axinタンパク質レベルの上昇または増加したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項33の方法。
  35. Axinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、総β−カテニンレベルの上昇、ホスホ−β−カテニンレベルの低下、Axinタンパク質レベルの低下または減少したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項33の方法。
  36. 薬物が低分子である、請求項33の方法。
  37. 薬物が阻害核酸である、請求項33の方法。
  38. 薬物が融合タンパク質である、請求項33の方法。
  39. Wntシグナル伝達関連障害の処置に有用な薬物を同定する方法であって、Wntシグナル伝達経路が活性である細胞を試験薬物と接触させて、Axinタンパク質レベルまたは安定性の変化を検出することを含む方法。
  40. Axinタンパク質レベルまたは安定性の上昇が、総β−カテニンレベルの低下、ホスホ−β−カテニンレベルの上昇、Axinタンパク質レベルの上昇または増加したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項39の方法。
  41. Axinタンパク質レベルまたは安定性の低下が、総β−カテニンレベルの上昇、ホスホ−β−カテニンレベルの低下、Axinタンパク質レベルの低下または減少したAxin−GSK3複合体の形成によって測定される、請求項39の方法。
  42. 腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象に有効量のタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を低下または消失させる薬物を投与することを含む方法。
  43. 薬物が阻害核酸である、請求項42の方法。
  44. 薬物が融合タンパク質である、請求項42の方法。
  45. 薬物が本発明の化合物である、請求項42の方法。
  46. 腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、それを必要とする対象に有効量のタンキラーゼ(TNKS)の触媒活性を低下または消失させる薬物を投与することを含む方法。
  47. 薬物が阻害核酸である、請求項46の方法。
  48. 薬物が融合タンパク質である、請求項46の方法。
  49. 薬物が本発明の化合物である、請求項46の方法。
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