しかしながら、上記特許文献1の技術では、平板もしくは円筒状基材にグリーンシートを間欠成膜する必要があるため、成膜開始部と終了部に膜厚の不均一領域が発生し、積層体ブロックを形成しても所望の品質を得られる領域が狭く、歩留まり上の問題が大きい。また、平板上にセラミックシートを積層する工程においても、一層ずつの間欠動作が必要であり、生産速度が高められないという欠点があった。
また、セラミックシートの積層を効率的に行なう手段としては、上記特許文献2の技術が考案されている。長尺フィルム上にセラミックを塗布し、これをエンドレスベルト上に転写し、積層構造体を得るものである。この工法においては、間欠動作を行わないことにより高速化が可能であるが、長尺基材を用いるため、基材突起物によるセラミック層の欠陥部に品質不良を抑制する効果は期待できない。
また、同種の発明が、上記特許文献3に記載されている。これは円筒ドラム上に積層構造体を形成するものであり、連続動作による高速積層が可能であるが、セラミックシートはフィルムなどの支持体の無い高強度な自立性グリーンシートに限られている。この自立性グリーンシートに内在する欠陥部の頻度は不明であるが、高重合度の樹脂を含有して強度を増した当シートは、焼成工程における脱脂を困難とし、焼成後のセラミックの緻密性を阻害する要因となるため、実用性が低く量産に用いるのは難しい。
上記特許文献4の発明は、円筒もしくは多角柱に連続積層し、インクジェットにより電極回路を形成するものであるが、この場合もグリーンシートには自立して搬送できるほどの高強度が必要であり、課題となっている薄いセラミック層の積層構造体を形成する手段としては実用化が難しい。
上記特許文献5のように、スラリーをウエット状態で連続的に乾燥したシート上に塗り重ねて行く方法は、塗られたスラリーの溶剤が下のシートを溶解してしまい、ショートやIR不良(絶縁抵抗不良)の原因となるシート欠陥を発生させる。特に、昨今の積層セラミックコンデンサのシート厚は薄くなってきており、このような方法での塗工は向かない。
シート成形を別工程としている場合は、この工程での在庫の発生や、その保管及び運搬などにも多大なコストがかかり、必然的に生産期間が長くなる問題がある。また、工程が分かれていることで、積層ブロックに必要なシート長さの他に、搬送経路や積層端数などの余分なシートが必要となり、材料のロスが発生する。一方、シートの積層後にシートに対して電極印刷を行う場合は、シートが電極溶剤により溶解されて生じるシートアタックが、印刷しているシートのみでは無く、その下層の電極やシートに対しても発生し、ショートやIR不良などの不具合を発生させる。このことは、製造される電子部品の品質不良の原因となっている。
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、電子部品の品質不良の発生を抑制し、低コストで、かつ積層型電子部品の製造効率(生産速度)を高めることができる積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法を提供することである。
本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材と、前記成膜基材に対してセラミックスラリーを塗布し、乾燥させてセラミックシートを連続形成する成膜形成部と、前記成膜基材上の前記セラミックシートに対して電極回路を形成する電極回路形成部と、前記成膜基材に対して前記セラミックシートを介して接触して前記セラミックシートを前記成膜基材から剥離させ、剥離した前記セラミックシートを外周に巻き付けることにより前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層支持体と、を有する積層型電子部品製造装置であることを特徴とする。
本発明によれば、成膜基材上に突起物などの欠陥因子があったとしても、そのことにより生じるセラミックシートの欠陥部が積層構造体の限られた範囲内に集中するため、これを切断分割して得られる電子部品の品質不良の発生を低く抑えることができる。
また、セラミックシートが成膜基材上に連続形成されるため、間欠塗布に比べて膜厚の安定領域が広くなり、得られた積層構造体から電子部品として分割できる個数を増やすことができる。
成膜基材上にセラミックシートを形成するプロセスと、積層支持体上にセラミックシートの積層構造体を形成するプロセスと、を連続運転により実行するため、より短時間に生産性高く、セラミックシートの積層構造体を形成することができる。
また、従来のような長尺のフィルム基材を用いる必要が無く、中間材料コストを抑えることができる。
以上のようにして、電子部品の品質不良の発生を抑制し、低コストで、かつ間欠運転ではなく連続的に運転することにより積層型電子部品の製造効率(生産速度)を高めることができる。
また、本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材と、前記成膜基材に対してセラミックスラリーを塗布し、乾燥させてセラミックシートを連続形成する成膜形成部と、前記セラミックシートに対して電極回路を形成する電極回路形成部と、前記セラミックシートを外周に巻き付けることにより、前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層支持体と、前記成膜基材と前記積層支持体とに前記セラミックシートを介して接触するようにして設けられ、前記成膜基材に形成された前記セラミックシートを前記成膜基材から受け取り、当該受け取った前記セラミックシートを前記積層支持体に搬送する搬送部材と、を有する積層型電子部品製造装置であることを特徴とする。
本発明によれば、成膜基材に形成されたセラミックシートが搬送部材に一旦受け取られる。その後、セラミックシートが搬送部材から積層支持体に搬送される。これにより、成膜基材からのセラミックシートの剥離が、積層支持体側の状態に影響されず、安定したハンドリングが可能となる。具体的には、積層支持体にセラミックシートの積層構造体が形成されていくと、積層支持体の大きさが大きくなっていき、また、電極回路が形成された場合には、その部位が凸凹するなどの外形上の状態変化が生じるが、成膜基材と積層支持体との間に搬送部材を介在させることで、成膜基材と積層支持体を直接接触させることを回避できる。そして、積層支持体の状態変化に合わせて、積層支持体と搬送部材との位置関係や圧力等を適宜、調整することができる。これにより、積層支持体の状態変化によって、積層支持体に形成されるセラミックシートの積層構造体の品質が劣化することを防止できる。また、積層支持体が成膜基材に直接接触しないように設計することにより、積層支持体の状態変化が成膜基材に形成されるセラミックシート、ひいては電子部品の品質を劣化させてしまうことを防止できる。
また、単体の成膜基材を大型化することなく、積層支持体に搬送されるまでにセラミックシートが移動する経路を長くすることができるため、セラミックシートの乾燥時間を長くとることができる。そして、成膜基材には連続してセラミックスラリーが塗布され続けるため、セラミックシートの製造速度(製造効率)を高めることができ、セラミックシートの積層構造体、ひいては電子部品の製造効率を高めることができる。
さらに、電極回路形成部によって、積層支持体に巻き付けられる前のセラミックシートに電極回路が形成されることが好ましい。これにより、セラミックシートが積層支持体に積層される前にセラミックシートに電極回路が形成される。仮に、セラミックシートが積層支持体に積層された後にセラミックシートに電極回路が形成されると、下層のセラミックシートに形成された電極回路、あるいは下層の電極回路形成済みのセラミックシートに電極溶剤が原因となってシートアタックが発生する。本発明のように、単層のセラミックシートの状態で電極回路が形成されると、シートアタックの影響を単層のみの最小限に抑えることが可能となり、ショートあるいはIR不良(絶縁抵抗不良)などの不具合を低減することができる。
本発明は、前記電極回路形成部は、前記搬送部材上の前記セラミックシートに対して前記電極回路を形成することが好ましい。
これによれば、電極回路形成部によって、搬送部材上のセラミックシートに電極回路が形成される。これにより、成膜基材上で乾燥したセラミックシートに対して電極回路を形成するため、電極回路の形成位置の位置精度を一層高めることができる。
また、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材と、前記成膜基材上に電極回路を形成する電極回路形成部と、前記電極回路が形成された成膜基材に対してセラミックスラリーを塗布し、乾燥させて前記電極回路付のセラミックシートを連続形成する成膜形成部と、前記成膜基材に対して前記電極回路付の前記セラミックシートを介して接触して前記電極回路付の前記セラミックシートを前記成膜基材から剥離させ、剥離した前記電極回路付の前記セラミックシートを外周に巻き付けることにより前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層支持体と、を有する積層型電子部品製造装置であることを特徴とする。
また、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材と、前記成膜基材上に電極回路を形成する電極回路形成部と、前記電極回路が形成された成膜基材に対してセラミックスラリーを塗布し、乾燥させて前記電極回路付のセラミックシートを連続形成する成膜形成部と、前記電極回路付の前記セラミックシートを外周に巻き付けることにより、前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層支持体と、前記成膜基材と前記積層支持体とに前記電極回路付の前記セラミックシートを介して接触するようにして設けられ、前記成膜基材に形成された前記電極回路付の前記セラミックシートを前記成膜基材から受け取り、当該受け取った前記電極回路付の前記セラミックシートを前記積層支持体に搬送する搬送部材と、を有する積層型電子部品製造装置であることを特徴とする。
本発明は、前記電極回路形成部は、前記セラミックシートに電極印刷を行う無版印刷装置であることを特徴とする。
これによれば、セラミックシートの各層毎に異なるパターンの電極回路を形成することができる。また、積層支持体上でのセラミックシートの積層の進行に伴ってセラミックシートの伸縮あるいは積層支持体の大きさに変化が発生しても、電極回路間のピッチを調整して、位置ズレのない電極回路を形成することができる。
なお、無版印刷装置としては、インクジェット印刷装置と、インク乾燥硬化装置と、で構成されていることが好ましい。
本発明は、前記成膜基材の外周長と前記積層支持体の外周長が同じ長さであるか、あるいは前記成膜基材の外周長又は前記積層支持体の外周長の一方が他方に対して整数倍であることを特徴とする。
これによれば、成膜基材上に突起物などの欠陥因子があることにより生じるセラミックシートの欠陥部を積層構造体の特定の領域に集中させることができる。具体的には、積層構造体上のセラミックシートの積層構造体に発生する欠陥部を積層構造体の同一周軌道上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ列)に集めることができる。さらに、積層支持体の外周長が成膜基材の外周長に対して整数倍だけ長い場合には、積層構造体上のセラミックシートの積層構造体に発生する欠陥部を積層構造体の同一座標上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ行と列)に集めることができる。
本発明は、前記セラミックシートが前記積層支持体の外周に巻き付けられて前記セラミックシートの積層構造体が形成されているときに、前記成膜基材に、新たな前記セラミックシートが形成され続けることを特徴とする。
これにより、間欠運転ではなく、連続運転にて、セラミックシートの積層構造体を形成することができるため、セラミックシートの積層構造体を極めて短時間で形成することができる。この結果、セラミックシートの積層構造体の製造効率を高めることができる。
本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材に対して成膜形成部によりセラミックスラリーを塗布し、乾燥させてセラミックシートを連続形成する成膜形成工程と、前記成膜基材上の前記セラミックシートに対して電極回路形成部により電極回路を形成する電極回路形成工程と、前記成膜基材に対して前記セラミックシートを介して積層支持体を接触させることにより前記セラミックシートを前記成膜基材から剥離させ、当該剥離した前記セラミックシートを前記積層支持体の外周に巻き付けることにより前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であることを特徴とする。
本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材に対して成膜形成部によりセラミックスラリーを塗布し、乾燥させてセラミックシートを連続形成する成膜形成工程と、前記セラミックシートに対して電極回路形成部により電極回路を形成する電極回路形成工程と、前記セラミックシートを積層支持体の外周に巻き付けることにより、前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記成膜形成工程の後でかつ前記積層構造体形成工程の前に実行され、搬送部材が前記成膜基材に形成された前記セラミックシートを前記成膜基材から受け取り、当該受け取った前記セラミックシートを前記搬送部材によって前記積層支持体に搬送する搬送工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であることを特徴とする。
電極回路形成工程では、前記搬送部材上の前記セラミックシートに対して前記電極回路を形成することが好ましい。
本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材上に電極回路形成部により電極回路を形成する電極回路形成工程と、前記電極回路が形成された成膜基材に対して成膜形成部によりセラミックスラリーを塗布し、乾燥させて前記電極回路付のセラミックシートを連続形成する成膜形成工程と、前記成膜基材に対して前記電極回路付の前記セラミックシートを介して積層支持体を接触させることにより前記電極回路付の前記セラミックシートを前記成膜基材から剥離させ、剥離した前記電極回路付の前記セラミックシートを前記積層支持体の外周に巻き付けることにより前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であることを特徴とする。
本発明は、外周に離型処理が施された無端連続状の成膜基材上に電極回路形成部により電極回路を形成する電極回路形成工程と、前記電極回路が形成された成膜基材に対して成膜形成部によりセラミックスラリーを塗布し、乾燥させて前記電極回路付のセラミックシートを連続形成する成膜形成工程と、前記電極回路付の前記セラミックシートを積層支持体の外周に巻き付けることにより、前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記成膜形成工程の後でかつ前記積層構造体形成工程の前に実行され、搬送部材が前記成膜基材に形成された前記電極回路付の前記セラミックシートを前記成膜基材から受け取り、当該受け取った前記電極回路付の前記セラミックシートを前記搬送部材によって前記積層支持体に搬送する搬送工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であることを特徴とする。
これらの場合、前記電極回路形成部として、前記セラミックシートに電極印刷を行う無版印刷装置を使用することが好ましい。
前記無版印刷装置として、インクジェット印刷装置と、インク乾燥硬化装置と、を使用することが好ましい。
前記積層構造体形成工程において、前記セラミックシートが前記積層支持体の外周に巻き付けられて前記セラミックシート及び前記電極回路の積層構造体が形成されているときに、前記成膜形成工程では、前記成膜基材に新たな前記セラミックシートが形成され続けることが好ましい。
本発明によれば、電子部品の品質不良の発生を抑制し、低コストで、かつ間欠運転ではなく連続運転することにより積層型電子部品の製造効率(製造速度)を高めることができる。
本発明の第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明の製造対象としている「積層型電子部品」には、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタなどの積層型電子部品が含まれる。以下、積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを一例に挙げて説明する。
先ず、積層型電子部品製造装置について説明する。
図1に示すように、積層型電子部品製造装置10は、主として、表面(外周面)に離型処理が施されセラミックシートSを形成するコーティングロール12(成膜基材)と、コーティングロール12から剥離したセラミックシートSを巻き取ってセラミックシートSの積層構造体S’を形成するスタッキングロール14、15(積層支持体)と、を有している。
コーティングロール12の周囲には、コーティングロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段16(成膜形成部)と、成膜手段16にセラミックスラリーを供給するための給液手段18と、コーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20と、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられる(積層される)前のセラミックシートSに電極回路24(図2参照)を形成するための電極回路形成手段22(電極回路形成部)と、電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26と、上記したスタッキングロール14、15と、が配置されている。
本実施形態の積層型電子部品製造装置10は、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられる前のセラミックシートSに電極回路24を形成し、その後、電極回路24を形成したセラミックシートSをスタッキングロール14、15の外周面に巻き付けて(積層して)、セラミックシートSの積層構造体S’を形成することが特徴である。
なお、成膜手段16のコーティングロール回転方向下流側(成膜手段16と電極回路形成手段22との間)に、コーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20が配置されている。また、電極回路形成手段22のコーティングロール回転方向下流側(電極回路形成手段22とスタッキングロール14との間)に、電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26が配置されている。
具体的に、コーティングロール12は、表面に離型処理が施された金属などの剛体ロール(円柱状あるいは円筒状)で、無端連続状の基材により構成されている。コーティングロール12は、図示しない駆動源により回転駆動されるように構成されている。なお、離型処理とは、例えば、フッ素系めっき処理などが該当する。
スタッキングロール14、15は、脱着可能な金属製の円筒治具の外周面に弾性体(例えば、樹脂フィルム、弾性フィルム、ゴム、粘性シートなど)を貼り付けて構成されている。この円筒治具を回転軸に装着して、コーティングロール12と同期して回転させる。なお、スタッキングロール14、15は、図示しない駆動源により回転駆動されるように構成されていてもよいし、コーティングロール12の回転力を受けて連れ回りするように構成されていてもよい。スタッキングロール14、15は、図示しない圧力付与機構により、コーティングロール12に対して所定の圧力(押付力)で押し付けられている。スタッキングロール14、15は、図示しないチェンジャー機構により、スタッキングロール14又はスタッキングロール15のいずれか一方がコーティングロール12に対して加圧接触できるように構成されている。
スタッキングロール14の弾性体の表面は、粘着あるいは静電吸着などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、スタッキングロール14で巻き取られたセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。これらの保持の力は、コーティングロール12がセラミックシートSを保持する力より大きく設定されているため、セラミックシートSはコーティングロール12から剥離されてスタッキングロール14へ転写される。スタッキングロール15も同様である。
セラミックシートSをコーティングロール12からスタッキングロール14へ確実に転写するためには、スタッキングロールをコーティングロール12に適度に押し付けながら転写するのが好ましい。仮に、コーティングロール12とスタッキングロール14の間に空間があると、搬送中のセラミックシートSが他の部材に支持されていない区間をつくることになり、その区間でシート破れの起きる可能性がある。そこで、セラミックシートSの支持されていない区間をつくらないように、スタッキングロール14をコーティングロール12に適度に押し付けている。押し付けるとき機械的なこじれが生じないように、スタッキングロール14の表面は弾性を有している。
ここで、コーティングロール12の外周長は、スタッキングロール14、15の外周長と同じ長さであるか、あるいはコーティングロール12の外周長又はスタッキングロール14、15の外周長の一方が他方に対して整数倍であることが好ましい。
成膜手段16としては、例えば、ダイコータなどの押出塗布方式や、ドクターブレード、ロールコータ、インクジェット型コータなどが採用される。押出塗布方式とはダイのリップから塗工液を押し出して塗布する方式をいう。なお、コーティングロール12の外周面に形成されるセラミックシートSの膜厚をより薄くするためには、ダイコータに上流減圧機構を設けることが好ましい。成膜手段16からコーティングロール12に対して連続的(非間欠的)にセラミックスラリーを塗布して、セラミックシートSが形成される。このように、同一のコーティングロール12に対して、セラミックスラリーが連続的に供給される。
給液手段18としては、例えば、ギヤポンプが採用される。なお、給液手段18は、ギヤポンプに限られるものではなく、シリンダ型ディスペンサ、ダイヤフラムポンプなど適宜採用してもよい。
電極回路形成手段22としては、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。電極回路形成手段22は、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の電極回路24を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷など手段は問わない。また、電極回路形成手段22で使用される電極材インクは、例えば、有機溶媒にNi粉末(ニッケル粉末)と樹脂を溶解分散させたものが使用される。UV硬化性の樹脂にNi粉末を分散させたものでもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
乾燥硬化装置20、26としては、例えば、熱風により乾燥する方法やコーティングロール12の外周面を加熱する方法が採用される。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置20、26は、塗布されたセラミックスラリーや電極材インクを、乾燥または硬化させるためのものである。なお、コーティングロール12上のセラミックラリーを乾燥させるための乾燥硬化装置20には、真空乾燥手段を用いてもよい。
セラミックスラリーとしては、例えば、有機溶媒にセラミック粉末と樹脂を溶解分散させたものが採用される。UV硬化樹脂にセラミック粉末を分散させたものを用いてもよい。なお、溶媒は、水系でもよい。
次に、積層型電子部品製造装置10を用いたセラミックシートSの積層構造体S’の製造方法について説明する。
離型処理を施したコーティングロール12を所定の速度で回転させ、この外周面にセラミックスラリーを成膜手段16により塗布する。なお、セラミックスラリーの供給は、給液手段18であるギヤポンプを用いて行われる。そして、コーティングロール12上でセラミックスラリーを、乾燥硬化装置20を用いて乾燥し固化させる。ここで、乾燥硬化装置20によるセラミックスラリーの乾燥には、所定の温度の熱風を用いる。コーティングロール12の外周面が適温となるよう別途温調器で加熱または冷却して温度調整する。なお、これらの温度は、セラミックシートSの材料により適宜調整する。このようにして、成膜手段16及び給液手段18によって、セラミックスラリーがコーティングロール12に対して連続的に供給され、セラミックシートSが形成され続ける。電極回路24の印刷されていないセラミックシートSをスタッキングロール14で所定層だけ巻き取り、積層構造体S’の外層部を形成する。
次に、コーティングロール12上のセラミックシートSに対して、電極回路形成手段22から電極材インクを塗布し、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24を印刷する。電極回路24の印刷後に、乾燥硬化装置26から所定温度の温風を吹き付け、電極回路24を乾燥させる。ここで、電極回路の形成工程は、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられたときに、各層(各周)ごとに電極回路24が対向電極となるように図形パターンを変えて電極印刷が行われる。このようにして、コーティングロール12上のセラミックシートSに対して、電極回路24が形成される。
次に、コーティングロール12に対してスタッキングロール14を所定の加圧力でセラミックシートSを介して加圧接触させる。なお、前記加圧力は、セラミックシートSの材料により適宜調整する必要がある。そして、コーティングロール12の外周面に形成された乾燥後のセラミックシートS(電極回路形成済み)をコーティングロール12の外周面から剥離させて、スタッキングロール14の外周面上に転写させて巻き取る。ここで、コーティングロール12の外周面には離型処理が施されており、かつスタッキングロール14がコーティングロール12に対して所定の加圧力でセラミックシートSを介して接触しているため、コーティングロール12の外周面に形成された乾燥後のセラミックシートSは、コーティングロール12の外周面から容易に剥離して、スタッキングロール14の外周面に転写される。スタッキングロール14は、金属製の円筒型治具の外周面に弾性樹脂フィルムが巻き付けられており、その外周面の温度が所定の温度になるように温度調整されている。なお、外周面の温度は、セラミックシートSの材料により適宜調整する必要がある。
スタッキングロール14でセラミックシートSを所定層だけ巻き取った後、電極回路形成手段22による電極回路24の印刷が停止する。引き続き、電極回路24の印刷のされていないセラミックシートSを所定の層分だけスタッキングロール14に巻き取り、積層構造体S’の外層部を形成する。その後、コーティングロール12に対するセラミックスラリーの供給を停止して、セラミックシートSの積層構造体S’の形成を終了するか、あるいは、チェンジャー機構によりスタッキングロール14に替えてスタッキングロール15をコーティングロール12の外周面に加圧接触させてコーティングロール15の外周面にセラミックシートS(電極回路24の形成後のもの)を巻き付ける。このようにして、セラミックシートSの積層構造体S’を形成する。
さらに、スタッキングロール14に形成されたセラミックシートSの積層構造体S’を円筒型治具と共に取り外し、円筒形状のまま加圧プレスを行い、ダイサーカットによりチップ状に切断する。その後、焼成、電極回路(外部電極回路)を形成するなどして通常の製造プロセスを経て、積層セラミックコンデンサを製造する。
第1実施形態の積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法によれば、コーティングロール12の外周面に微小なキズや突起物があった場合、塗布されたセラミックシートSに繰り返し欠陥部28が生じるが、同一のコーティングロール12を繰り返し使用することにより、スタッキングロール14上で円筒状に巻き付けられた積層構造体S’においては、限定された領域に欠陥部28を集中させることができる。このようにして得られたセラミックシートSの積層構造体S’を切断分割して得られる電子部品において品質不良の発生を抑制することができる。
また、セラミックシートSがコーティングロール12から剥離してスタッキングロール14の外周面に巻き付けられてセラミックシートSの積層構造体S’が形成されているときに、コーティングロール12には、新たなセラミックシートSが形成され続けるため、コーティングロール12におけるセラミックシートSの形成と、スタッキングロール14におけるセラミックシートSの積層構造体S’の形成とが同時に実行される。これにより、コーティングロール12の回転駆動を一旦停止することなく、連続的にセラミックシートSを形成することができ、また、スタッキングロール14の回転駆動を一旦停止することなく、連続的にセラミックシートSの積層構造体S’を製造することができる。このように、間欠運転ではなく、連続運転にて、セラミックシートSの積層構造体S’を形成することができる。この結果、セラミックシートSの積層構造体S’を極めて短時間で形成することができ、セラミックシートSの積層構造体S’の製造効率を高めることができる。
また、セラミックシートSが剛体であるコーティングロール12上に形成され、シート成形からシート積層工程までをコーティング搬送ロール12や転写ロール14でシート面を支持されながら搬送するので、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、セラミックシートSの破れや傷つきの発生を抑制することができる。この結果、薄くて低強度のセラミックシートSのハンドリング性を高めることができる。
また、図1に示すように、コーティングロール12とスタッキングロール14の外周長を同一もしくは一方が他方の整数比とすることで、図2に示すように更に欠陥部28を特定箇所に集中させることができる。外周長が整数比となっていない場合には、スタッキングロール14上のセラミックシートSの積層構造体S’に発生する欠陥部28がスタッキングロール14の同一周軌道上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ列)に集まる。さらに、スタッキングロール14の外周長がコーティングロール12の外周長に対して整数倍だけ長い場合には、スタッキングロール14上のセラミックシートSの積層構造体S’に発生する欠陥部28をスタッキングロール14の同一座標上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ行と列)に集めることができる。
また、公知のセラミックスラリーの間欠塗布を用いる方法よりも、セラミックシートSの膜厚の均一性、高い生産性が得られる。すなわち、セラミックシートSの積層構造体S’が円筒状に連続で形成されるため、間欠塗布に比べて、膜厚の安定領域が広くなる。この結果、セラミックシートSの積層構造体S’から安定した品質の電子部品を取得することができる。セラミックシートSの積層構造体単位体積当りで取得できる電子部品の個数が多くなる。
また、本実施形態では、使い捨て基材(PETフィルムなど)の中間消費材を使用する必要が無く、保管や運搬などを含めた中間材料コストを削減できるため、セラミックシートSの積層構造体S’、ひいては電子部品の製造コストを大幅に低減することが可能である。
また、本実施形態では、成膜工程や印刷工程や積層工程を連結することで、必要な分のみのセラミックシートSの形成だけで済み、従来のように積層の搬送経路での損失や積層端数などの分が発生する事は無くなるため、材料ロスの低減を図ることができる。
また、本実施形態ではセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に積層される前に電極回路24が形成されるため、換言すれば、セラミックシートSに電極回路24が形成された後に、電極回路24形成済みのセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。仮に、セラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に積層された後にセラミックシートSに電極回路24が形成されると、下層のセラミックシートSに形成された電極回路24、あるいは下層の電極回路形成済みのセラミックシートSに電極溶剤が原因となってシートアタックが発生する。本発明のように、単層のセラミックシートの状態で電極回路が形成されると、シートアタックの影響を単層のみの最小限に抑えることが可能となり、ショートあるいはIR不良(絶縁抵抗不良)などの不具合を低減することができる。
特に、コーティングロール12上でセラミックシートSの形成と電極回路24の形成を同時に行うため、一設備全体をシンプルでコンパクトにでき、設備価格を低く、面積を小さくすることができ、また設備の信頼性を上げることができる。
また、コーティングロール12上でセラミックスラリーを乾燥させ、別途設けたスタッキングロール14にセラミックシートSを積層していくため、乾燥したセラミックシートS上にセラミックスラリーが塗られることがなく、再溶解によるシートアタックが発生しない。
また、電極回路24の形成にインクジェットなどの無版印刷工法を用いることにより、セラミックシートSの各層毎において異なる電極パターンを備えた電極回路24の形成が可能である。特に、セラミックシートSの積層の進行に伴いセラミックシートSの歪みやスタッキングロールSの外径が増加等して周囲長増加が発生しても、電極回路24のパターンや形成位置を自在に変更することができるため、電極回路24間のピッチ(間隔)を適宜調整して、位置ズレのない電極回路24の形成が可能になる。
なお、第1実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。
次に、本発明の第2実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態は、コーティングロール12には、印刷搬送ローラ(搬送部材)30がセラミックシートSを介して接触している。また、印刷搬送ローラ30には、中間搬送ローラ(搬送部材)32がセラミックシートSを介して接触している。中間搬送ローラ32には、2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15がセラミックシートSを介して接触している。2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15には、それぞれプレスロール34、36がセラミックシートSを介して接触している。このように、コーティングロール12と各スタッキングロール14、15との間には、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32が介在されている。このため、コーティングロール12と各スタッキングロール14、15とは、間接的に接触された状態(機械的に動力伝達が可能となる状態)となる。
また、コーティングロール12の周囲には、コーティングロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段16(成膜形成部)と、成膜手段16にセラミックスラリーを供給するための給液手段18と、成膜手段16のコーティングロール回転方向下流側に位置しコーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20と、が配置されている。また、印刷搬送ローラ30の周囲には、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられる(積層される)前のセラミックシートSに電極回路24を形成するための電極回路形成手段22(電極回路形成部)と、電極回路形成手段22の第1供給ロール回転方向下流側に位置し電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26と、上記した中間搬送ローラ32と、が配置されている。
ここで、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32は、粘着などの手段により、前工程からセラミックシートSを受け取り、受け取ったセラミックシートSを後工程に供給する機能を有している。印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32は、金属や樹脂の剛体ロールや表面に樹脂をコーティングしたロールなどを適宜選択する。
印刷搬送ロール30がセラミックシートSを保持する力は、コーティングロール12がセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに中間搬送ローラ32がセラミックシートS保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSはコーティングロール12から剥離されて印刷搬送ローラ30に保持され、その後中間搬送ローラ32へ転写される。中間搬送ロール32がセラミックシートSを保持する力は、スタッキングロール14がセラミックシートS保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSは中間搬送ローラ32から剥離されてスタッキングロール14へ転写される。スタッキングロール14の弾性体の表面は、粘着あるいは静電吸着などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、スタッキングロール14で巻き取られたセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。これらの保持の力は、中間搬送ローラ32がセラミックシートSを保持する力より大きく設定されているため、セラミックシートSは中間搬送ローラ32から剥離されてスタッキングロール14へ転写される。
詳細には、印刷搬送ローラ30は、コーティングロール12からセラミックシートSを剥離して中間搬送ローラ32に転写する機能を有している。また、中間搬送ローラ32は、印刷搬送ローラ30からセラミックシートSを剥離してスタッキングロール14に転写する機能を有している。印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32は、セラミックシートSを吸着(吸引あるいは静電吸着)して剥離搬送する剥離搬送ロールでもよい。このとき、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32は、セラミックシートSを吸着する部位と吸着しない部位とを制御するように構成されることが好ましい。コーティングロール12からセラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する印刷搬送ローラ30の所定部位に吸着機能をもたせ、受け取ったセラミックシートSを中間搬送ローラ32に転写するときにセラミックシートSに接触する印刷搬送ローラ30の所定部位に非吸着領域をもたせることにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。この吸着機能及び非吸着領域については、中間搬送ローラ32についても同様である。すなわち、印刷搬送ローラ30からセラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する中間搬送ローラ32の所定部位に吸着機能をもたせ、受け取ったセラミックシートSをスタッキングロール14に転写するときにセラミックシートSに接触する中間搬送ローラ32の所定部位に非吸着領域をもたせることにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。
第2実施形態では、コーティングロール12の外周面にセラミックスラリーを成膜手段16及び給液手段18によって供給する。そして、コーティングロール12上でセラミックスラリーを乾燥硬化装置20によって乾燥・固化する。このようにして、セラミックシートSが形成される。また、コーティングロール12から印刷搬送ローラ30上に移動したセラミックシートSに対して、電極回路形成手段22(例えば、インクジェット印刷)から電極材インクを塗布し、所定の図形パターンの電極回路24を印刷する。電極回路24の印刷後に、印刷搬送ローラ30上のセラミックシートSに対して乾燥硬化装置26から所定温度の温風を吹き付け、電極回路24を乾燥させる。このようにして、印刷搬送ローラ30上のセラミックシートSに対して、電極回路24が形成される。その後、電極回路24が形成されたセラミックシートSは、中間搬送ローラ32に受け取られて、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。これにより、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。このように、第2実施形態においても、セラミックシートSに電極回路24が形成された後、電極回路24形成済みのセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。コーティングロール12、印刷搬送ローラ30、スタッキングロール14の外周面は適温となるよう温調器で温度調整されている。
第2実施形態によれば、コーティングロール12からのセラミックシートSの剥離が、スタッキングロール14側の状態に影響されず、安定したハンドリングが可能となる。具体的には、スタッキングロール14にセラミックシートSの積層構造体S’が形成されていくと、スタッキングロール14のセラミックシートを含めた大きさ(外径)が大きくなっていき、また、電極回路24が形成された部位が凸凹するなどの外形上の状態変化が生じる。しかし、コーティングロール12とスタッキングロール14との間に印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32を介在させることで、上記したスタッキングロール14の状態変化に合わせて、スタッキングロール14と印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32との位置関係や圧力等を適宜、調整することができる。これにより、スタッキングロール14の状態変化によって、スタッキングロール14上に形成されるセラミックシートSの積層構造体S’の品質が劣化することを防止できる。また、スタッキングロール14がコーティングロール12に直接接触しないように設計することにより、スタッキングロール14の状態変化に伴い、スタッキングロール14がコーティングロール12上に形成されるセラミックシートSに傷をつけてしまうことを防止でき、セラミックシートSひいては電子部品の品質を劣化させてしまうことを防止できる。
また、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32を設けることにより、コーティングロール12を大型化することなく、スタッキングロール14に供給されるまでにセラミックシートSが移動する経路を長くすることができるため、セラミックシートSおよび電極回路24の乾燥時間を長くとることができる。そして、コーティングロール12には連続してセラミックラリーが塗布され続けるため、コーティングロール12から印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32を介してスタッキングロール14に供給されるまでのセラミックシートSの移動工程を連続して行うことができる。この結果、設備のライン速度を高めて、セラミックシートSの製造速度(製造効率)を高めることができ、セラミックシートSの積層構造体S’、ひいては電子部品の製造効率を高めることができる。
さらに、印刷搬送ローラ30上のセラミックシートSに電極回路24が形成される。これにより、コーティングロール12上で確実に乾燥させたセラミックシートSに対して電極回路24を形成するため、電極回路24の形成位置の位置精度を一層高めることができる。逆に、半乾燥のセラミックシートSに対して電極回路24を形成すると、地盤となるセラミックシートSが変形等するため、この上に形成された電極回路24の位置もずれるおそれがある。第2実施形態は、この問題を解消するために、コーティングロール12上で確実に乾燥させたセラミックシートSに対して電極回路24を形成したものである。
なお、第2実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。また、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第3実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図4に示すように、第3実施形態は、エンドレス搬送ベルト(搬送部材)38上でセラミックシートSに電極回路24が形成されるものである。すなわち、コーティングロール12には、中間搬送ローラ(搬送部材)40がセラミックシートSを介して接触している。また、中間搬送ローラ40には、エンドレス搬送ベルト38がセラミックシートSを介して接触している。また、エンドレス搬送ベルト38には、中間搬送ローラ(搬送部材)42がセラミックシートSを介して接触している。中間搬送ローラ42には、2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15がセラミックシートSを介して接触している。2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15には、それぞれプレスロール34、36がセラミックシートSを介して接触している。このように、コーティングロール12と各スタッキングロール14、15との間には、中間搬送ローラ40、エンドレス搬送ベルト38及び中間搬送ローラ42が介在されている。このため、コーティングロール12と各スタッキングロール14、15とは、間接的に接触された状態(機械的に動力伝達が可能となる状態)となる。
また、コーティングロール12の周囲には、コーティングロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段16(成膜形成部)と、成膜手段16にセラミックスラリーを供給するための給液手段18と、成膜手段16のコーティングロール回転方向下流側に位置しコーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20と、上記した中間搬送ローラ40と、が配置されている。また、エンドレス搬送ベルト38の周囲には、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられる(積層される)前のセラミックシートSに電極回路24を形成するための電極回路形成手段22と、電極回路形成手段22のエンドレスベルト回転方向下流側に位置し電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26と、上記した中間搬送ローラ42と、が配置されている。
詳細には、中間搬送ローラ40は、コーティングロール12からセラミックシートSを剥離してエンドレス搬送ベルト38に転写する機能を有している。第3実施形態では、中間搬送ローラ40上のセラミックシートSに電極回路24は形成されない。エンドレス搬送ベルト38は、中間搬送ローラ40からセラミックシートSを剥離して中間搬送ローラ42に転写する機能を有している。また、中間搬送ローラ42は、エンドレス搬送ベルト38からセラミックシートSを剥離してスタッキングロール14に転写する機能を有している。
第3実施形態では、コーティングロール12の外周面にセラミックスラリーを成膜手段16及び給液手段18によって塗布供給する。そして、コーティングロール12上でセラミックスラリーを乾燥硬化装置20によって乾燥・固化する。このようにして、セラミックシートSが形成される。また、コーティングロール12から中間搬送ローラ40上を経てエンドレス搬送ベルト38に移動したセラミックシートSに対して、電極回路形成手段22(例えば、インクジェット印刷)から電極材インクを塗布し、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24を印刷する。電極回路24の印刷後に、エンドレス搬送ベルト38上のセラミックシートSに対して乾燥硬化装置26から所定温度の温風を吹き付け、電極回路24を乾燥させる。このようにして、エンドレス搬送ベルト38上のセラミックシートSに対して、電極回路24が形成される。その後、電極回路24が形成されたセラミックシートSは、中間搬送ローラ42に受け取られて、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。これにより、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。このように、第3実施形態においても、セラミックシートSに電極回路24が形成された後、電極回路24形成済みのセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。
第3実施形態によれば、長尺ベルトであるエンドレス搬送ベルト38の外周長がコーティングロール12の外周長あるいは中間搬送ローラ40の外周長よりも長くなるため、エンドレス搬送ベルト38上のセラミックシートSの乾燥領域(乾燥硬化装置26により乾燥可能なエリア)を拡張することができる。これにより、セラミックシートS上にあるセラミックシートSの電極回路24の形成速度(乾燥速度も含む)が速くなり、ひいては電子部品の製造速度を高めることができる。
特に、電極回路形成手段22にインクジェット方式を採用すると、インクの溶剤量が多いため、インクが乾燥し難くなる。そこで、電極回路24の印刷部に、エンドレス搬送ベルト38を採用したことにより、大径のロールを採用しなくても、セラミックシートSの移動距離が長くなって、セラミックシートS上の電極回路24を乾燥させるための時間を長くすることができる。このため、インクジェット方式で形成された電極回路24の品質のばらつきがなくなり、電子部品の品質を高品質に維持することができる。
なお、第3実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。また、中間搬送ローラ40、エンドレス搬送ベルト38及び中間搬送ローラ42が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第4実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図5に示すように、第4実施形態は、第1実施形態のコーティングロール12を長尺ベルトであるエンドレス成膜ベルト44で構成したものである。すなわち、セラミックシートSを形成(成膜)するエンドレス成膜ベルト44には、中間搬送ローラ(搬送部材)46がセラミックシートSを介して接触している。また、中間搬送ローラ46には、2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15がセラミックシートSを介して接触している。2つのスタッキングロール14またはスタッキングロール15には、それぞれプレスロール34、36がセラミックシートSを介して接触している。このように、エンドレス成膜ベルト44と各スタッキングロール14、15との間には、中間搬送ローラ46が介在されている。このため、エンドレス成膜ベルト44と各スタッキングロール14、15とは、間接的に接触された状態(機械的に動力伝達が可能となる状態)となる。
特に、エンドレス成膜ベルト44の周囲には、エンドレス成膜ベルト44の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段16(成膜形成部)と、成膜手段16にセラミックスラリーを供給するための給液手段18と、成膜手段16のエンドレスベルト回転方向下流側に位置しエンドレス成膜ベルト44の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20と、セラミックシートSの膜厚を測定する膜厚検査装置(CCDカメラなど)48と、スタッキングロール14、15の外周面に巻き付けられる(積層される)前のセラミックシートSに電極回路24を形成するための電極回路形成手段22と、電極回路形成手段22のエンドレスベルト回転方向下流側に位置し電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26と、不良のセラミックシートSを除去する除去ロール50と、上記した中間搬送ローラ46と、が配置されている。
第4実施形態では、エンドレス成膜ベルト44の外周面にセラミックスラリーを成膜手段16及び給液手段18によって供給する。そして、エンドレス成膜ベルト44上でセラミックスラリーを乾燥硬化装置20によって乾燥・固化する。このようにして、セラミックシートSが形成される。さらに、エンドレス成膜ベルト44上のセラミックシートSの膜厚を膜厚検査装置(CCDカメラなど)48によって測定する。セラミックシートSに対して、電極回路形成手段22から電極材インクを塗布し、所定の図形パターンの電極回路24を印刷する。電極回路24の印刷後に、エンドレス成膜ベルト44上のセラミックシートSに対して乾燥硬化装置26から所定温度の温風を吹き付け、電極回路24を乾燥させる。このようにして、エンドレス成膜ベルト44上のセラミックシートSに対して、電極回路24が形成される。その後、電極回路24が形成されたセラミックシートSは、中間搬送ローラ46に受け取られて、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。これにより、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。このように、第4実施形態においても、セラミックシートSに電極回路24が形成された後、電極回路24形成済みのセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。
ここで、電極回路形成手段22にインクジェット方式を採用すると、インクの溶剤量が多いため、インクが乾燥し難くなる。そこで、印刷部にエンドレス成膜ベルト44を採用したことにより、大径のロールを採用しなくても、セラミックシートSの移動距離が長くなって、セラミックシートS上の電極回路24を乾燥させるための時間を長くすることができる。このため、インクジェット方式で形成された電極回路24の品質のばらつきがなくなり、電子部品の品質を高品質に維持することができる。
なお、第4実施形態では、エンドレス成膜ベルト44が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。また、中間搬送ローラ46が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第5実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図6に示すように、第5実施形態は、電極回路24の印刷手段として、グラビアオフセット印刷方式を採用したものである。すなわち、コーティングロール12には、中間搬送ローラ(搬送部材)52がセラミックシートSを介して接触している。また、中間搬送ローラ52には、セラミックシートSに電極回路24を形成するときに使用される印刷搬送ローラ(搬送部材)54がセラミックシートSを介して接触している。印刷搬送ローラ54には、中間搬送ローラ(搬送部材)56がセラミックシートSを介して接触している。中間搬送ローラ56には、スタッキングロール14がセラミックシートSを介して接触している。スタッキングロール14には、プレスロール34、36がセラミックシートSを介して接触している。このように、コーティングロール12と各スタッキングロール14との間には、中間搬送ローラ52、印刷搬送ローラ54及び中間搬送ローラ56が介在されている。このため、コーティングロール12と各スタッキングロール14とは、間接的に接触された状態(機械的に動力伝達が可能となる状態)となる。
また、コーティングロール12の周囲には、コーティングロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段16と、成膜手段16にセラミックスラリーを供給するための給液手段18と、成膜手段16のコーティングロール回転方向下流側に位置しコーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置20と、中間搬送ローラ52と、が配置されている。また、印刷搬送ローラ54の周囲には、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられる(積層される)前のセラミックシートSに電極回路24を形成するための電極回路形成手段22と、電極回路24を乾燥させるための乾燥硬化装置26と、上記した中間搬送ローラ52及び中間搬送ローラ56と、が配置されている。
ここで、電極回路形成手段22は、グラビアオフセット印刷方式が採用されている。すなわち、グラビアオフセット印刷方式の電極回路形成手段22は、外周面に電極回路24となるべき導電性ペースト膜のパターンに対応する溝(導電性ペーストが充填される溝)が彫られたパターン形成ロール22Aと、パターン形成ロール22Aに形成されたパターンが転写される転写ロール22Bと、を有している。また、転写ロール22B上に転写されたパターンは、乾燥硬化装置26から所定温度の温風が吹き付けられて乾燥される。転写ロール22B上に転写された電極回路24のパターンは、印刷搬送ローラ54に転写されて、印刷搬送ローラ54上のセラミックシートSに所定のパターンの電極回路24が形成される。
第5実施形態によれば、コーティングロール12の外周面にセラミックスラリーを成膜手段16及び給液手段18によって供給する。そして、コーティングロール12上でセラミックスラリーを乾燥硬化装置20によって乾燥・固化する。このようにして、セラミックシートSが形成される。コーティングロール12上にセラミックシートSは、中間搬送ローラ52及び印刷搬送ローラ54に移動する。印刷搬送ローラ54上のセラミックシートSに対して、転写ロール22Bから所定のパターンの電極回路24が転写されて形成される。このようにして印刷搬送ローラ54上のセラミックシートSに対して、電極回路24が形成される。その後、電極回路24が形成されたセラミックシートSは、中間搬送ローラ56に受け取られて、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。これにより、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。このように、第5実施形態においても、セラミックシートSに電極回路24が形成された後、電極回路24形成済みのセラミックシートSがスタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層される。
なお、第5実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14が本発明の「積層支持体」に対応する。また、中間搬送ローラ52、印刷搬送ローラ54及び中間搬送ローラ56が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第6実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図7に示すように、第6実施形態は、第1実施形態の構成をベースにしつつその一部を改良したものであり、コーティングロール12と、スタッキングロール14またはスタッキングロール15と、の間に、中間搬送ローラ(搬送部材)58を介在させた構成である。
第6実施形態では、コーティングロール12上でセラミックシートSに電極回路24が形成され、電極回路24が形成済みのセラミックシートSが中間搬送ローラ58に受け取られる。そして、中間搬送ローラ58に受け取られたセラミックシートSは、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層され、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。
第6実施形態によれば、コーティングロール12と、スタッキングロール14またはスタッキングロール15と、の間に、中間搬送ローラ58が介在されているため、第2実施形態の効果と同様にして、コーティングロール12からのセラミックシートSの剥離が、スタッキングロール14側の状態に影響されず、安定したハンドリングが可能となる。
なお、第6実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。また、中間搬送ローラ58が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第7実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図8に示すように、第7実施形態は、第2実施形態の構成をベースにしつつその一部を改良したものであり、コーティングロール12と印刷搬送ローラ30と、の間に、別の供給ロールである中間搬送ローラ(搬送部材)60を介在させた構成である。
第7実施形態では、コーティングロール12上で形成されたセラミックシートSが中間搬送ローラ60を介して印刷搬送ローラ30に供給される。印刷搬送ローラ30に供給されたセラミックシートSに電極回路24が形成され、電極回路24が形成済みのセラミックシートSが印刷搬送ローラ30から中間搬送ローラ32に受け取られる。そして、第2供給ロール中間搬送ローラ32に受け取られたセラミックシートSは、スタッキングロール14の外周面に巻き付けられて積層され、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。
第7実施形態によれば、コーティングロール12と印刷搬送ローラ30との間に、中間搬送ローラ60が介在されているため、第2実施形態の効果と同様にして、コーティングロール12からのセラミックシートSの剥離が、スタッキングロール14側の状態に影響されず、安定したハンドリングが可能となる。
なお、第7実施形態では、コーティングロール12が本発明の「成膜基材」に対応し、スタッキングロール14、15が本発明の「積層支持体」に対応する。また、中間搬送ローラ、印刷搬送ローラ30及び中間搬送ローラ32が本発明の「搬送部材」に対応する。
次に、本発明の第8実施形態乃至第10実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について説明する。
第8実施形態乃至第10実施形態では、図9乃至図11に示すように、外周に離型処理が施された無端連続状のコーティングロール12又はエンドレス成膜ベルト44上に電極回路形成手段22により電極回路24が形成される。次に、電極回路24が形成されたコーティングロール12又はエンドレス成膜ベルト44に対して成膜手段16によりセラミックスラリーが塗布され、乾燥されて、電極回路付のセラミックシートSが連続形成される。さらに、電極回路付のセラミックシートSがコーティングロール12又はエンドレス成膜ベルト44から剥離され、剥離した電極回路付のセラミックシートSがスタッキングロール14の外周に巻き付けられる。これにより、セラミックシートS及び電極回路24の積層構造体S’が形成される。