JP2011258715A - 透明電磁波吸収フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡単な構造でありながら高い電磁波吸収能を有する透明電磁波吸収フィルム、及びそれを備えた透明電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】 プラスチックフィルムの一方の面に透明導電体層を有するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群が複数方向に形成されている透明電磁波吸収フィルム、及び線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なるように複数の透明電磁波吸収フィルム片を隣接して有する複合透明電磁波吸収フィルム。
【選択図】図1(a)

Description

本発明は簡単な構造でありながら高い電磁波吸収能を有する透明電磁波吸収フィルム、及びそれを備えた透明電磁波吸収体に関する。
高速道路で広く利用されているETC(自動料金支払いシステム)では、隣接するETCレーンへの不要電波の影響を避けるため、透明電磁波吸収体が設置されている。例えば、2004年4月発行の三菱電線工業時報第101号、「ETC用透明電波吸収体の開発」の論文(非特許文献1)には、図30に示す透明電磁波吸収体が記載されている。この透明電磁波吸収体は、電波入射側から順に第一のポリカーボネート(PC)層201、粘着剤層202、第一の透明抵抗膜(ITO)層203、第一のポリエチレンテレフタレート(PET)層204、粘着剤層205、第二のPC層206、粘着剤層207、第二のITO層208、及び第二のPET層209からなる。この透明電磁波吸収体は約30°の入射角で30 dB近い反射減衰量を示す。しかし、この透明電磁波吸収体は複雑な多層構造を有するだけでなく、反射減衰量のさらなる向上も望まれる。
特開平10-13083号(特許文献1)は、ポリカーボネート等からなる誘電体層の両面にITO等からなる抵抗皮膜及び保護膜を形成した構造を有する透明電波吸収体を開示している。この透明電波吸収体は簡単な構造を有するが、透過減衰量が30 dB未満と不十分である。
特開平11-330776号(特許文献2)は、薄膜軽量で施工作業性が良く、電波遮蔽能及び電波反射防止能に優れた透明電波反射防止体として、厚さ0.01〜50μmの幾何学模様状ITOパターン層、透明支持層、透明樹脂層、透明支持層及び透明電波反射体(ITO)層を順次積層してなる電波反射防止体を開示している。しかし、幾何学模様状ITOパターン層はパターンマスクを使用した蒸着、スパッタリング等により形成されるので、この電波反射防止体は高価であり、かつ電波反射防止能も不十分である。
特開2005-277373号(特許文献3)は、薄型化及び軽量化が可能であり、かつ広帯域な減衰特性を有する透明電波吸収体として、ITOからなる全面導体層と、ポリカーボネートからなる第一誘電体層と、所定範囲の表面抵抗率を有するITOからなる高抵抗導体層と、ポリカーボネートからなる第二誘電体層と、厚さ12μmの銅箔で形成されたループパターン等を有するパターン層とを順次積層した構造を有し、パターン層における各パターンは、隣接する他のパターンに対して大きさと形状とのうちの少なくとも一方が異なる電波吸収体を開示している。しかし、パターン層はエッチングにより形成するので、この電波吸収体は高価にならざるを得ず、またパターン層に銅箔を用いるので十分な透明性を有さない。その上、この電波吸収体の反射減衰量は不十分である。
特開平10-13083号公報 特開平11-330776号公報 特開2005-277373公報 2004年4月発行の三菱電線工業時報第101号、「ETC用透明電波吸収体の開発」
従って本発明の目的は、簡単な構造でありながら高い電磁波吸収能を有する透明電磁波吸収フィルム、及びそれを備えた透明電磁波吸収体を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、プラスチックフィルムの一方の面に透明導電体層を形成するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群を複数方向に形成すると、単にプラスチックフィルムに透明導電体層を形成しただけの透明電磁波吸収フィルムと比較して格段に高い反射減衰量が得られることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の透明電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムの一方の面に透明導電体層を有するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群が複数方向に形成されていることを特徴とする。
前記線状痕の幅は90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内にあって、平均1〜100μmであるのが好ましい。前記線状痕の間隔は0.1〜2,000μmの範囲内にあって、平均1〜100μmであるのが好ましい。線状痕群は少なくとも二方向に配向しており、それらの交差角は10〜90°であるのが好ましい。
前記透明導電体層は酸化インジウムスズ、酸化亜鉛又は酸化スズを主成分とする酸化物薄膜、又は透明金属薄膜であるのが好ましい。
本発明の透明電磁波吸収フィルムは電磁波吸収体として使用するのに適する。複数枚の透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体層を介して積層すると、電磁波吸収能が向上する。それぞれの線状痕群の方向が異なるように透明電磁波吸収フィルムを積層するのが好ましい。透明誘電体層は透明プラスチックシートであるのが好ましい。透明誘電体層の厚さは吸収すべき電磁波ノイズの中心波長λの1/4を含む範囲、例えばλ/8〜λ/2の範囲であるのが好ましい。
本発明の複合透明電磁波吸収フィルムは、隣接する複数の透明電磁波吸収フィルム片を有し、各透明電磁波吸収フィルム片は、一方の面に透明導電体層を有するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群が複数方向に形成されたプラスチックフィルムからなり、かつ前記複数の透明電磁波吸収フィルム片は線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なることを特徴とする。
本発明の好ましい一実施形態による複合透明電磁波吸収フィルムは、面積が最大の第一の透明電磁波吸収フィルム片、面積が次に大きい第二の透明電磁波吸収フィルム片、及び面積が最小の第三の透明電磁波吸収フィルム片からなり、前記第一の透明電磁波吸収フィルム片の一辺に前記第二及び第三の透明電磁波吸収フィルム片の各辺が隣接しているとともに、前記第二の透明電磁波吸収フィルム片の辺と前記第三の透明電磁波吸収フィルム片の辺とが隣接しているのが好ましい。前記第一及び第二の透明電磁波吸収フィルム片は実質的に正方形状であり、かつ前記第二の透明電磁波吸収フィルム片の一辺と前記第三の透明電磁波吸収フィルムの長辺とが隣接しているのがより好ましい。
本発明の第一の透明電磁波吸収体は、上記透明電磁波吸収フィルム及び/又は上記複合透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体層を介して積層したことを特徴とする。具体的な層構成は、透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/透明電磁波吸収フィルム、透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/複合透明電磁波吸収フィルム、及び複合透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/複合透明電磁波吸収フィルムである。一方の(複合)透明電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向と他方の(複合)透明電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向とは異なるのが好ましい。
本発明の第二の透明電磁波吸収体は、上記透明電磁波吸収フィルム及び/又は上記複合透明電磁波吸収フィルムと、縦方向のみの線状痕、横方向のみの線状痕又は縦横直交する二方向の線状痕を有する透明電磁波吸収フィルムとを、透明誘電体層を介して積層したことを特徴とする。
本発明の透明電磁波吸収フィルムは、一方の面に透明導電体層が形成され、他方の面に線状痕群が複数方向に形成されたプラスチックフィルムからなるので、構造が極めて簡単で低コストで製造できるだけでなく、高い反射減衰量を有する。複数方向の線状痕群を有するので、種々の周波数の電磁波に対して優れた吸収能を有するのみならず、電磁波吸収能の異方性が低い。さらに、線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なるように複数の透明電磁波吸収フィルム片を組合せると、さらに高い反射減衰率を有する複合透明電磁波吸収フィルムが得られる。
本発明の(複合)透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体層を介して積層してなる透明電磁波吸収体は、透明性を確保しつつ高い反射減衰率を有するので、ETC等のように不要電磁波の影響を避けつつ透明性が必要な用途に好適である。
本発明の一実施形態による透明電磁波吸収フィルムを示す断面図である。 図1(a) の透明電磁波吸収フィルムの線状痕の詳細を示す部分平面図である。 図1(a) のA部分を示す拡大断面図である。 図1(c) のA'部分を示す拡大断面図である。 線状痕の他の例を示す部分平面図である。 線状痕のさらに他の例を示す部分平面図である。 線状痕のさらに他の例を示す部分平面図である。 透明導電体層及び線状痕の上に保護層が設けられた透明電磁波吸収フィルムを示す断面図である。 本発明の複合透明電磁波吸収フィルムの一例を示す平面図である。 図4(a) のA-A断面図である。 本発明の複合透明電磁波吸収フィルムの別の例を示す平面図である。 本発明の別の実施形態による透明電磁波吸収フィルムを示す部分断面図である。 本発明の透明電磁波吸収フィルムの製造装置の一例を示す斜視図である。 図7(a) の装置を示す平面図である。 図7(b) のB-B断面図である。 フィルムの進行方向に対して傾斜した線状痕が形成される原理を説明するための部分拡大平面図である。 図7(a) の装置において、フィルムに対するパターンロール及び押えロールの傾斜角度を示す部分平面図である。 本発明の透明電磁波吸収フィルムの製造装置の他の例を示す部分断面図である。 本発明の透明電磁波吸収フィルムの製造装置のさらに他の例を示す斜視図である。 本発明の透明電磁波吸収フィルムの製造装置のさらに他の例を示す斜視図である。 本発明の透明電磁波吸収フィルムの製造装置のさらに他の例を示す斜視図である。 本発明の第一の透明電磁波吸収体の一例を示す分解斜視図である。 本発明の第一の透明電磁波吸収体の別の例を示す分解斜視図である。 本発明の第二の透明電磁波吸収体の一例を示す分解斜視図である。 本発明の第二の透明電磁波吸収体の別の例を示す分解斜視図である。 電磁波吸収体の電磁波吸収能を評価する装置を示す平面図である。 参考例1のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例1の試験片を示す平面図である。 実施例1のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例2で作製した透明電磁波吸収フィルム片を示す平面図である。 実施例2で作製した複合透明電磁波吸収フィルムの試験片を示す平面図である。 実施例2のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 参考例2のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例3で作製した透明電磁波吸収フィルムの試験片を示す平面図である。 実施例3のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例4において透明プラスチック製ホルダの前面及び後面に固定する透明電磁波吸収フィルムの試験片を示す分解斜視図である。 実施例4のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例5において透明プラスチック製ホルダの前面及び後面に固定する透明電磁波吸収フィルムの試験片を示す分解斜視図である。 実施例5のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 実施例6において透明プラスチック製ホルダの前面及び後面に固定する透明電磁波吸収フィルムの試験片を示す分解斜視図である。 実施例6のピーク吸収率及びピーク周波数を示すグラフである。 非特許文献1に記載の透明電磁波吸収体を示す部分断面図である。
本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更をしても良い。
[1] 透明電磁波吸収フィルム
本発明の透明電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムの一方の面に透明導電体層を有し、他方の面に複数方向の線状痕群を有する。図1(a)〜図1(d)は、プラスチックフィルム10の一方の面に透明導電体層11が形成され、他方の面に実質的に平行で断続的な多数の線状痕12が二方向に形成された例を示す。
(1) プラスチックフィルム
プラスチックフィルム10を形成する樹脂は、透明性及び絶縁性とともに十分な強度、可撓性及び加工性を有する限り特に制限されず、例えばポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアリーレンサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。プラスチックフィルム10の厚さは50〜300μm程度で良い。
(2) 透明導電体層
透明導電体層11は酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の透明導電性酸化物、又はニッケル薄膜等の透明金属薄膜からなるのが好ましい。透明導電体層11はスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、ゾルゲル法、メッキ法等の公知の方法により形成することができる。透明導電体層11の厚さは0.01〜2μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜1μmが最も好ましい。透明金属薄膜の場合、十分な透明度が得られる膜厚にする必要がある。透明導電体層11の表面抵抗は150〜600Ω/□であるのが好ましい。
(3) 線状痕
図1(b)及び図1(c) に示すように、プラスチックフィルム10の他方の面(透明導電体層11を有さない面)に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12a,12bが二方向に不規則な幅及び間隔で形成されている。なお、説明のために図1(c)では線状痕12の深さを誇張している。二方向に配向した線状痕12は種々の幅W及び間隔Iを有する。なお間隔Iは、線状痕12の配向方向(長手方向)及びそれに直交する方向(横手方向)の両方における間隔を意味する。線状痕12の幅W及び間隔Iはいずれも線状痕形成前のプラスチックフィルム10の表面Sの高さ(元の高さ)で求める。線状痕12が種々の幅W及び間隔Iを有するので、本発明の透明電磁波吸収フィルムは広範囲にわたる周波数の電磁波を効率良く吸収することができる。
線状痕12の幅Wの90%以上は0.1〜1,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜100μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。線状痕12の平均幅Wavは1〜100μmであるのが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。
線状痕12の間隔Iは0.1〜2,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜1,000μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜100μmの範囲内にあるのが最も好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが特に好ましい。また線状痕12の平均間隔Iavは1〜100μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。
線状痕12の長さLは、摺接条件(主としてロールとフィルムとの相対速度、及びフィルムのロールへの巻回角度)により決まるので、摺接条件を変えない限り大部分がほぼ同じである(ほぼ平均長さに等しい)。線状痕12の長さは特に限定的でなく、実用的には1〜100 mm程度で良い。
二方向の線状痕12a,12bの鋭角側の交差角(以下特に断りがなければ単に「交差角」とも言う)θsは10〜90°が好ましく、20〜70°がより好ましい。プラスチックフィルム10とパターンロールとの摺接条件(摺接方向、周速比等)を調整することにより、図2(a)〜図2(c) に示すように種々の交差角θsの線状痕12が得られる。図2(a) の線状痕12は三方向の線状痕12a,12b,12cからなり、図2(b) の線状痕12は四方向の線状痕12a,12b,12c,12dからなり、図2(c) 線状痕12は直交する線状痕痕12a’,12b’からなる。
(4) 保護層
図3に示すように、透明導電体層11及び線状痕12を有する面の上にそれぞれ保護層13a,13bを形成するのが好ましい。保護層13a,13bはプラスチックのハードコート又はフィルムであるのが好ましい。フィルムを用いる場合、熱ラミネート法又はドライラミネート法により接着するのが好ましい。保護層13aにより透明導電体層11が保護され、保護層13bにより線状痕12による不透明性が解消される。プラスチックハードコートは、例えば光硬化性樹脂の塗布及び紫外線の照射により形成することができる。保護層13a,13bを形成するハードコート又はフィルムは、線状痕12の効果を確保するためにプラスチックフィルム10と異なる材質であるのが好ましい。各保護層13a,13bの厚さは10〜100μm程度が好ましい。
(5) 表面抵抗
透明電磁波吸収フィルム1の電磁波反射係数RCは、RC=(R−Z)/(R+Z)[ただし、Rは透明導電体層11の表面抵抗(Ω/□)であり、Zは電磁波の特性インピーダンス(Ω)である。]により表され、R=Zだと0である。透明導電体層11の表面抵抗は材質及び厚さ等により調整できる。表面抵抗は直流二端子法で測定することができる。電磁波の特性インピーダンスZは、電磁波源の近傍では電磁波源からの距離に応じて大きく変化し、電磁波源から十分に遠い位置では自由空間の特性インピーダンス(377Ω)である。従って、透明電磁波吸収フィルム1を電磁波源の近傍に配置する場合、Zにできるだけ近くなるようにRを調整し、電磁波源から十分に遠い位置に配置する場合、Rを自由空間の特性インピーダンスに近づける。
[2] 複合透明電磁波吸収フィルム
(1) 第一の複合透明電磁波吸収フィルム
複数の透明電磁波吸収フィルム片を線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なるように組合せると、より高い反射減衰量を有する複合透明電磁波吸収フィルムが得られる。図4(a)及び図4(b)は、プラスチックベースフィルム14の一方の面に、線状痕12a,12bの配向が異なる第一〜第三の透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cを隙間なく隣接させ、接着してなる複合透明電磁波吸収フィルム100を示す。第一〜第三の透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cの面積率は、用途に応じて種々に変更することができるが、好ましい一例は合計を100%としてそれぞれ50〜70%、20〜30%、及び10〜20%である。
透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cの外形は限定されないが、いずれも矩形状(正方形状を含む)であるのが好ましい。図4(a)及び図4(b)に示すように、矩形状の透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cは隣接して配置する。図4(a)及び図4(b)に示す例では透明導電体層11がベースフィルム14側であるが、勿論線状痕12がベースフィルム14側でも良い。図5は、透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cをストライプ状に配置した例を示す。いずれの場合も、複合透明電磁波吸収フィルム100,110の縦横の長さの比はほぼ黄金比であるのが好ましい。
第一〜第三の透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cの線状痕12a,12bの交差角θsはいずれも10〜90°が好ましく、20〜80°がより好ましい。透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cの交差角θsの少なくとも1つは異なっているのが好ましい。交差角θsの中心線L1〜L3の方向は限定的ではないが、平行又は直交するのが好ましい。図4(a)に示す例では、透明電磁波吸収フィルム片1a及び1bの交差角θsの中心線L1及びL2は直交し、透明電磁波吸収フィルム片1a及び1cの交差角θsの中心線L1及びL3は平行である。
(2) 第二の複合透明電磁波吸収フィルム
図6に示すように、第二の複合透明電磁波吸収フィルム120は、線状痕12を形成する代わりに、プラスチックフィルム10の他方の面(透明導電体層11のない面)に硬化性樹脂層15を形成し、それに線状痕12と実質的に同じ線状溝12’を設けたものである。線状溝12’の形状、サイズ及び配置は第一の複合透明電磁波吸収フィルム100における線状痕12の形状、サイズ及び配置と実質的に同じで良い。線状溝12’は、プラスチックフィルム10の他方の面に塗布したフォトレジスト(硬化性樹脂)層15にパターンマスクを介して紫外線等の光を照射して硬化反応を起こさせ、未硬化の部分をエッチングにより除去する方法により形成することができる。第二の複合透明電磁波吸収フィルム120は複数の透明電磁波吸収フィルムを接着する必要がないので、透明電磁波吸収フィルムの隣接線が現れない。また線状溝12’の配置を任意に設定することができる。
[3] 透明電磁波吸収フィルムの製造装置
図7(a)〜図7(e) は線状痕を二方向に形成する装置の一例を示す。線状痕の形成は、透明導電体層11の形成前でも形成後でも行うことができるが、透明導電体層11の損傷を防ぐためにその形成前に行うのが好ましい。図示の装置は、透明導電体層11のないプラスチックフィルム10に線状痕を形成するものであり、(a)プラスチックフィルム10を巻き出すリール21と、(b) フィルム10の幅方向に対して傾斜して配置された第一のパターンロール2aと、(c) 第一のパターンロール2aの上流側でそれと反対側に配置された第一の押えロール3aと、(d) フィルム10の幅方向に関して第一のパターンロール2aと逆方向に傾斜し、かつ第一のパターンロール2aと同じ側に配置された第二のパターンロール2bと、(e) 第二のパターンロール2bの下流側でそれと反対側に配置された第二の押えロール3bと、(f) 線状痕付きプラスチックフィルム10’を巻き取るリール24とを有する。その他に、所定の位置に複数のガイドロール22,23が配置されている。各パターンロール2a,2bは、撓みを防止するためにバックアップロール(例えばゴムロール)5a,5bで支持されている。
図7(c) に示すように、各パターンロール2a,2bとの摺接位置より低い位置で各押えロール3a,3bがフィルム10に接するので、フィルム10は各パターンロール2a,2bに押圧される。この条件を満たしたまま各押えロール3a,3bの高さを調整することにより、各パターンロール2a,2bへの押圧力を調整でき、また中心角θ1に比例する摺接距離も調整できる。
図7(d) は線状痕12aがフィルム10の進行方向に対して斜めに形成される原理を示す。フィルム10の進行方向に対してパターンロール2aは傾斜しているので、パターンロール2a上の硬質微粒子の移動方向(回転方向)とフィルム10の進行方向とは異なる。そこでXで示すように、任意の時点においてパターンロール2a上の点Aにおける硬質微粒子がプラスチックフィルム10と接触して痕Bが形成されたとすると、所定の時間後に硬質微粒子は点A’まで移動し、痕Bは点B’まで移動する。点Aから点A’まで硬質微粒子が移動する間、痕は連続的に形成されるので、点A’から点B’まで延在する線状痕12aが形成されたことになる。
第一及び第二のパターンロール2a,2bで形成される第一及び第二の線状痕群12A,12Bの方向及び交差角θsは、各パターンロール2a,2bのフィルム10に対する角度、及び/又はフィルム10の走行速度に対する各パターンロール2a,2bの周速度を変更することにより調整することができる。例えば、フィルム10の走行速度bに対するパターンロール2aの周速度aを増大させると、図7(d) のYで示すように線状痕12aを線分C’D’のようにフィルム10の進行方向に対して45°にすることができる。同様に、フィルム10の幅方向に対するパターンロール2aの傾斜角θ2を変えると、パターンロール2aの周速度aを変えることができる。これはパターンロール2bについても同様である。従って、両パターンロール2a,2bの調整により、線状痕12a,12bの方向を図1(b) 及び図2(c) に例示するように変更することができる。
各パターンロール2a,2bはフィルム10に対して傾斜しているので、各パターンロール2a,2bとの摺接によりフィルム10は幅方向の力を受ける。従って、フィルム10の蛇行を防止するために、各パターンロール2a,2bに対する各押えロール3a,3bの高さ及び/又は角度を調整するのが好ましい。例えば、パターンロール2aの軸線と押えロール3aの軸線との交差角θ3を適宜調節すると、幅方向の力をキャンセルするように押圧力の幅方向分布が得られ、もって蛇行を防止することができる。またパターンロール2aと押えロール3aとの間隔の調整も蛇行の防止に寄与する。フィルム10の蛇行及び破断を防止するために、フィルム10の幅方向に対して傾斜した第一及び第二のパターンロール2a,2bの回転方向はフィルム10の進行方向と同じであるのが好ましい。
フィルム10に対するパターンロール2a,2bの押圧力を増大するために、図8に示すようにパターンロール2a,2bの間に第三の押えロール3cを設けても良い。第三の押えロール3cにより中心角θ1に比例するプラスチックフィルム10の摺接距離も増大し、線状痕12a,12bは長くなる。第三の押えロール3cの位置及び傾斜角を調整すると、フィルム10の蛇行の防止にも寄与できる。
図9は、図2(a) に示すように三方向に配向した線状痕を形成する装置の一例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bの下流にフィルム10の幅方向と平行な第三のパターンロール2cを配置した点で図7(a)〜図7(e) に示す装置と異なる。第三のパターンロール2cの回転方向はフィルム10の進行方向と同じでも逆でも良いが、線状痕を効率よく形成するために逆方向が好ましい。幅方向と平行に配置された第三のパターンロール2cはフィルム10の進行方向に延在する線状痕12cを形成する。第三の押えロール3dは第三のパターンロール2cの上流側に設けられているが、下流側でも良い。なお図示の例に限定されず、第三のパターンロール2cを第一のパターンロール2aの上流側、又は第一及び第二のパターンロール2a、2bの間に設けても良い。
図10は、図2(b) に示すように四方向に配向した線状痕を形成する装置の一例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bと第三のパターンロール2cとの間に第四のパターンロール2dを設け、第四のパターンロール2dの上流側に第四の押えロール3eを設けた点で図9に示す装置と異なる。第四のパターンロール2dの回転速度を遅くすることにより、図7(d) においてZで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)をフィルム10の幅方向と平行にすることができる。
図11は、図2(c)に示すように二方向に配向する線状痕を形成する装置の別の例を示す。この装置は、第二のパターンロール32bがフィルム10の幅方向と平行に配置されている点で図7(a)〜図7(e) に示す装置と異なる。従って、図7(a)〜図7(e) に示す装置と異なる部分のみ以下説明する。第二のパターンロール32bの回転方向はフィルム10の進行方向と同じでも逆でも良い。また第二の押えロール33bは第二のパターンロール32bの上流側でも下流側でも良い。この装置は、図7(d) においてZで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)をフィルム10の幅方向にし、図2(c) に示す線状痕を形成するのに適している。
線状痕の傾斜角及び交差角だけでなく、それらの深さ、幅、長さ及び間隔を決める運転条件は、フィルム10の走行速度、パターンロールの回転速度及び傾斜角及び押圧力等である。フィルムの走行速度は5〜200 m/分が好ましく、パターンロールの周速は10〜2,000 m/分が好ましい。パターンロールの傾斜角θ2は20°〜60°が好ましく、特に約45°が好ましい。フィルム10の張力(押圧力に比例する)は0.05〜5kgf/cm幅が好ましい。
パターンロールは、鋭い角部を有するモース硬度5以上の微粒子を表面に有するロール、例えば特開2002-59487号に記載されているダイヤモンドロールが好ましい。線状痕の幅は微粒子の粒径により決まるので、ダイヤモンド微粒子の90%以上は1〜1,000μmの範囲内の粒径を有するのが好ましく、10〜200μmの範囲内の粒径がより好ましい。ダイヤモンド微粒子はロール面に50%以上の面積率で付着しているのが好ましい。
[4] 電磁波吸収体
本発明の透明電磁波吸収フィルムは単独でも電磁波吸収体として使用できるが、透明誘電体層を介して複数枚の透明電磁波吸収フィルムを積層すると、反射減衰量が向上する。組み合わせる透明電磁波吸収フィルムは同種の透明導電体層を有する必要がなく、異種の透明導電体層を有するものを組合せても良い。例えば、線状痕の交差角が異なる二枚の透明電磁波吸収フィルムを組合せる場合、一方の表面抵抗を20〜377Ω/□、好ましくは30〜377Ω/□とし、他方の表面抵抗を377〜10,000Ω/□、好ましくは377〜7,000Ω/□とすると、電界及び磁界の両方を効率的に吸収することができ、かつ電磁波吸収能の異方性が一層低くなる。この組合せの場合、両透明電磁波吸収フィルムとも、線状痕の交差角θsは20〜70°であるのが好ましい。透明電磁波吸収フィルムの間に設ける透明誘電体層はプラスチックシートが好ましく、その厚さは吸収すべき電磁波の中心波長λの1/4を含む範囲、例えばλ/8〜λ/2の範囲とするのが好ましい。
(1) 第一の透明電磁波吸収体
第一の透明電磁波吸収体は、上記透明電磁波吸収フィルム及び/又は上記複合透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体層を介して積層してなる。具体的な層構成は、透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/透明電磁波吸収フィルム、透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/複合透明電磁波吸収フィルム、及び複合透明電磁波吸収フィルム/透明誘電体層/複合透明電磁波吸収フィルムである。一方の(複合)透明電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向と他方の(複合)透明電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向とは異なるのが好ましい。図12(a) お図12(b) は第一の透明電磁波吸収体の例を示す。図12(a) の透明電磁波吸収体は、線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なる二枚の透明電磁波吸収フィルム1,1’を透明誘電体層150を介して積層してなり、図12(b) の透明電磁波吸収体は、図4に示す複合透明電磁波吸収フィルム100,100を透明誘電体層150を介して積層してなる。勿論、第一の透明電磁波吸収体の構成はこれらに限定されない。
(2) 第二の透明電磁波吸収体
第二の透明電磁波吸収体は、上記透明電磁波吸収フィルム及び/又は上記複合透明電磁波吸収フィルムと、縦方向のみの線状痕、横方向のみの線状痕又は縦横直交する二方向の線状痕を有する透明電磁波吸収フィルムとを、透明誘電体層を介して積層してなる。図13は第二の透明電磁波吸収体の一例を示す。この透明電磁波吸収体は、二方向の線状痕を有する透明電磁波吸収フィルム1と、横方向の線状痕を有する透明電磁波吸収フィルム1’とを透明誘電体層150を介して積層してなる。図14は第二の透明電磁波吸収体の別の例を示す。この透明電磁波吸収体は、図4に示す複合透明電磁波吸収フィルム100と、縦横の線状痕(交差角θs:90°)を有する透明電磁波吸収フィルム1とを透明誘電体層150を介して積層してなる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
参考例1
一面に厚さ200〜300 nmのITO薄膜(表面抵抗:250Ω/□)を形成した厚さ120μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる透明電磁波吸収フィルムの試験片(32 cm×52 cm)の電磁波吸収能を図15に示す装置を用いて評価した。この装置は、接地された厚さ200〜300 nmのITO薄膜(表面抵抗:250Ω/□)を後面に有する厚さ2cmの透明プラスチック製ホルダ62と、ホルダ62から100 cm離れた送信アンテナ63a及び受信アンテナ63bと、アンテナ63a,63bに接続したネットワークアナライザ64とを有する。まずホルダ62の前面(アンテナ側)に固定したアルミニウム板(32 cm×52 cm×2 mm)に、アンテナ63aから10°から60°まで10°間隔で入射角度θiを変えながら、1〜5.5 GHzの周波数の電磁波(円偏波)を0.25 GHzの周波数間隔で照射し、アンテナ63bで反射波を受信し、ネットワークアナライザ64により反射電力を測定した。次にITO薄膜をアンテナ63a,63b側にして試験片TPをホルダ62の前面に固定し、上記と同様にして反射電力を測定した。
アルミニウム板を用いて測定した反射電力が入射電力と等しいと仮定し、反射係数(反射電力/入射電力)RCを求め、RL(dB)=20 log(1/RC)により反射減衰量(リターンロス)RL(dB)を求めた。各入射角度θiにおける反射減衰量は周波数に応じて変化するので、反射減衰量が最大となるときの周波数(ピーク周波数)で得られた反射減衰量をピーク吸収率として用いた。ピーク吸収率及びピーク周波数を図16に示す。図16から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約18 dBであり、入射角度θiが60°まで増大するにつれて10 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiに関係なく4 dB未満であった。
実施例1
粒径分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a,2bを有する図7(a) に示す構造の装置を用い、参考例1の透明電磁波吸収フィルムの他方の面(ITO薄膜のない面)に、図2(c) に示すように90°で交差する二方向の線状痕を形成した。線状痕の特性は下記の通りであった。
幅Wの範囲:0.5〜5μm
平均幅Wav:2μm
横手方向間隔Iの範囲:2〜30μm
平均横手方向間隔Iav:20μm
平均長さLav:5mm
交差角θs:90°
この透明電磁波吸収フィルムを、線状痕12a,12bに対して辺が平行になるように切断して図17に示す試験片TPを作製した。この試験片TPを長辺を水平にして厚さ2cmの透明プラスチック製ホルダ62の前面に固定し、参考例1と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。測定結果を図18に示す。図18から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約13 dBであるが、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約30 dBまで増大した。一方、TM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°から60°まで変化するにつれて10 dBから約6 dBまで低下した。
実施例2
粒径分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a,2bを有する図7(a) に示す構造の装置を用い、参考例1の透明電磁波吸収フィルムの他方の面(ITO薄膜のない面)に交差角θsが90°の二方向の線状痕を形成し、第一の透明電磁波吸収フィルム1aを得た。次にパターンロール2a,2bの周速及び傾斜角、プラスチックフィルムの走行速度及び張力等を変更して、第一の透明電磁波吸収フィルム1aと異なる二方向の線状痕を有する第二及び第三の透明電磁波吸収フィルム1b,1cを得た。第一〜第三の透明電磁波吸収フィルム1a〜1cの線状痕の特性は表1に示す通りであった。
Figure 2011258715
これらの透明電磁波吸収フィルム1a〜1cを、線状痕12a,12bに対して辺が45°となるように切断し、図19(a) に示す透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cを得た。これらの透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cを厚さ200μmのPETベースフィルムに接着することにより、図19(b) に示す複合透明電磁波吸収フィルムの試験片TPを作製した。この試験片TPにおける各透明電磁波吸収フィルム片1a〜1cのサイズ及び面積率を表2に示す。
Figure 2011258715
この試験片TPを長辺を水平にして厚さ2cmの透明プラスチック製ホルダ62の前面に固定し、参考例1と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。測定結果を図20に示す。図20から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約24 dBであるが、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約10 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°から60°まで変化するにつれて約22 dBから約17 dBまで低下した。このように線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なる複数の透明電磁波吸収フィルムを組合せてなる複合透明電磁波吸収フィルムを用いると、電磁波吸収能が向上することが分かる。
参考例2
厚さ20 nmのNi蒸着膜(表面抵抗:500Ω/□)を有する以外参考例1と同じ透明電磁波吸収フィルムの試験片(32 cm×52 cm)について、参考例1と同じ方法で電磁波吸収能を評価した。電磁波吸収能としてのピーク吸収率及びピーク周波数を図21に示す。図21から明らかなように、10°〜60°の入射角度θiで、TE波のピーク吸収率は約8〜6 dBの範囲にあり、またTM波のピーク吸収率は約14〜13 dBの範囲にあった。
実施例3
参考例2の透明電磁波吸収フィルムの他方の面(Ni蒸着膜のない面)に、交差角θsが90°の二方向の線状痕を形成した。線状痕の特性は下記の通りであった。
幅Wの範囲:0.5〜5μm
平均幅Wav:2μm
横手方向間隔Iの範囲:2〜30μm
平均横手方向間隔Iav:20μm
平均長さLav:5mm
交差角θs:90°
この透明電磁波吸収フィルムを線状痕12a,12bに対して辺が45°となるように切断し、図22に示す試験片TPを得た。この試験片TPを長辺を水平にして厚さ2cmの透明プラスチック製ホルダ62の前面に固定し、参考例1と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。測定結果を図23に示す。図23から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約33 dBであり、入射角度θiが20°で約39 dBと最高になったが、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約18 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約18 dBであり、入射角度θiが50°で約25 dBと最高になったが、入射角度θiが60°まで増大すると約15 dBまで低下した。
実施例4
実施例1の二枚の透明電磁波吸収フィルムの試験片(図17)を図24に示すように長辺を水平にして厚さ2cmの透明プラスチック製ホルダ62(後面にITO薄膜が形成されていない)の前面及び後面に固定し、参考例1と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。図24においてTP1は前面側の試験片を示し、TP2は後面側の試験片を示す(以下の実施例においても同様)。測定結果を図25に示す。図25から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約33 dBであるが、入射角度θiが20°で約40 dBと最高になり、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約15 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°から60°まで変化するにつれて約33 dBから約15 dBまで低下した。このように透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体の前面及び後面に固定してなる第一の透明電磁波吸収体は優れた電磁波吸収能を有することが分かる。
実施例5
ホルダ62(後面にITO薄膜が形成されていない)の後面に固定する試験片TP2を図26に示すように水平の線状痕のみを有する透明電磁波吸収フィルムから作製した以外、実施例4と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。測定結果を図27に示す。図27から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約32 dBであるが、入射角度θiが20°で約52 dBと最高になり、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約12 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°から60°まで変化するにつれて約11 dBから約7 dBまで低下した。このように第二の透明電磁波吸収体は優れた電磁波吸収能を有することが分かる。
実施例6
ホルダ62(後面にITO薄膜が形成されていない)の後面に固定する試験片TPを図28に示すように垂直の線状痕のみを有する透明電磁波吸収フィルムから作製した以外、実施例4と同様にしてピーク吸収率及びピーク周波数を測定した。測定結果を図29に示す。図29から明らかなように、TE波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約13 dBであるが、入射角度θiが50°で約30 dBと最高になり、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約23 dBまで低下した。またTM波のピーク吸収率は入射角度θiが10°では約25 dBであるが、入射角度θiが40°で約35 dBと最高になり、入射角度θiが60°まで増大するにつれて約20 dBまで低下した。このように第二の透明電磁波吸収体は優れた電磁波吸収能を有することが分かる。
なお各実施例において(複合)透明電磁波吸収フィルムの透明導電体層及び線状痕を有する面の両方に厚さ100μmのPETフィルムを接着しても、実質的に同程度の反射減衰量が得られた。またホルダ62に固定する(複合)透明電磁波吸収フィルムの透明導電体層はアンテナ側でもその反対側でも、実質的に同程度の反射減衰量が得られた。

Claims (10)

  1. プラスチックフィルムの一方の面に透明導電体層を有するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群が複数方向に形成されていることを特徴とする透明電磁波吸収フィルム。
  2. 請求項1に記載の透明電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕が二方向に配向しており、その交差角が10〜90°であることを特徴とする透明電磁波吸収フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の透明電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕の幅は90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内にあって、平均1〜100μmであり、前記線状痕の間隔は0.1μm〜5mmの範囲内にあって、平均1〜100μmであることを特徴とする透明電磁波吸収フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の透明電磁波吸収フィルムにおいて、前記透明導電体層が酸化インジウムスズ、酸化亜鉛又は酸化スズを主成分とする酸化物薄膜、又は透明金属薄膜であることを特徴とする透明電磁波吸収フィルム。
  5. 隣接する複数の透明電磁波吸収フィルム片を有する複合透明電磁波吸収フィルムであって、各透明電磁波吸収フィルム片は、一方の面に透明導電体層を有するとともに、他方の面に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕群が複数方向に形成されたプラスチックフィルムからなり、かつ前記複数の透明電磁波吸収フィルム片は線状痕の幅、間隔、長さ及び方向の少なくとも1つが異なることを特徴とする複合透明電磁波吸収フィルム。
  6. 請求項5に記載の複合透明電磁波吸収フィルムにおいて、面積が最大の第一の透明電磁波吸収フィルム、面積が次に大きい第二の透明電磁波吸収フィルム、及び面積が最小の第三の透明電磁波吸収フィルムからなり、前記第一の透明電磁波吸収フィルムの一辺に前記第二及び第三の透明電磁波吸収フィルムの各辺が隣接しているとともに、前記第二の透明電磁波吸収フィルムの辺と前記第三の透明電磁波吸収フィルムの辺とが隣接していることを特徴とする複合透明電磁波吸収フィルム。
  7. 請求項6に記載の複合透明電磁波吸収フィルムにおいて、前記第一及び第二の透明電磁波吸収フィルムは実質的に正方形状であり、かつ前記第二の透明電磁波吸収フィルムの一辺と前記第三の透明電磁波吸収フィルムの長辺とが隣接していることを特徴とする複合透明電磁波吸収フィルム。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の透明電磁波吸収フィルム及び/又は請求項5〜7のいずれかに記載の複合透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体層を介して積層したことを特徴とする透明電磁波吸収体。
  9. 請求項8に記載の透明電磁波吸収体において、一方の電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向と他方の電磁波吸収フィルムにおける線状痕の配向とが異なることを特徴とする透明電磁波吸収体。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の透明電磁波吸収フィルム及び/又は請求項5〜7のいずれかに記載の複合透明電磁波吸収フィルムと、縦方向のみの線状痕、横方向のみの線状痕又は縦横直交する二方向の線状痕を有する透明電磁波吸収フィルムとを、透明誘電体層を介して積層したことを特徴とする透明電磁波吸収体。
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