JP2011258470A - 電子放出素子およびそれを用いた画像表示装置ならびに放射線発生装置および放射線撮像システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 安定した電子放出特性と低い仕事関数とを両立した電子放出素子を提供する。
【解決手段】 ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたカソードを備えることを特徴とする電界放出型電子放出素子。
【選択図】 図1
【解決手段】 ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたカソードを備えることを特徴とする電界放出型電子放出素子。
【選択図】 図1
Description
本発明は電子放出素子及びそれを用いた、テレビジョンなどの画像表示装置、X線発生装置およびX線撮像装置に関する。
一般的な電界放出型の電子放出素子は、カソード(カソード電極または陰極と呼ぶこともある)とゲート電極との間に電圧を印加することで、カソードから電子が電界放出される。このような電界放出型電子放出素子には、表面伝導型電子放出素子やMIM型電子放出素子やBSD型電子放出素子などが含まれる。
電界放出型電子放出素子をマトリクス状に、多数、基板上に配列した背面板と、蛍光体などの発光体を配置した前面板とを対向させ、周囲を封止することで気密容器(ディスプレイパネル)を形成することができる。この気密容器内の真空度は、実用的には10−6Pa程度である。そして、ディスプレイパネルに駆動回路を接続することで画像表示装置を構成することができる。
特許文献1および2には、モリブデンなどからなる陰極の表面を酸化ランタンなど酸化物の膜で被覆した電界放出型電子放出素子が開示されている。
また、特許文献3には電界放出型電子放出素子を用いたX線発生装置が開示されている。また特許文献4にはX線などの放射線を用いた撮像装置が開示されている。
モリブデンなどの金属からカソードが形成された場合は、カソードの表面は雰囲気に含まれる酸素によって、酸化物になってしまう。その結果、放出電流の変動や減少が、経時的に生じてしまう。
一方、La2O3自体は仕事関数は低いが、導電性が低く電子の供給が困難である。そのため、La2O3をそのまま電界放出型の電子放出素子のカソードの表面に適用しても、実効的な仕事関数の低減効果が得られなかったり、大きな放出電流を安定して取り出すことができなかった。
本発明は上記した課題を解決するためになされた発明であって、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたカソードを備えることを特徴とする電界放出型電子放出素子である。
本発明によれば、安定した電子放出特性と低い仕事関数とを両立した電子放出素子を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る電子放出素子および画像表示装置の一例について詳細に説明する。
図1に本実施形態の電子放出素子10の一例の断面模式図を示す。
基板1上にカソード電極2が設けられ、カソード電極2は、突起形状のカソード9を備えており、ここではスピント型(円錐型)のカソード9を備える。
基板1上にカソード電極2が設けられ、カソード電極2は、突起形状のカソード9を備えており、ここではスピント型(円錐型)のカソード9を備える。
カソード電極2の上には、ゲート電極5とカソード電極2を絶縁するための絶縁層4が設けられている。また、絶縁層4と絶縁層4上に設けられたゲート電極5には、カソード9を露出するための開口7が設けられており、絶縁層6とゲート電極5とを貫通している。この開口7内にカソード9が配置されている。
そして、ここで示す例では、カソード9は、導電性の基部3と、基部3の上に設けられた、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された膜である被膜8と、を有する。ここではカソード9が導電性の基部3と被膜8とで構成された例を示すが、本発明では、カソード9の電子放出部がランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された部材で構成されていればよい。そのため、図3のように、被膜8を設けずに、導電性の基部3をランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された形態として、上記したカソード9とする形態であってもよい。即ち、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたカソード9を用いることができる。また、さらに、カソード電極2とカソード9とを一体に形成した形態としてもよい。その場合には、カソード電極2も被膜8と同じ組成で形成される。しかしながら、本発明のランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜8は金属膜に比べれば抵抗が大きいので、好ましくは、モリブデンなどの金属からなる導電性の基部3にランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜8を設ける形態が望ましい。
導電性の基部3の材料としては、被膜8との接合性の観点から、モリブデンであることが最も好ましい。しかしながら、その他の金属材料で構成することもできる。
尚、ここではカソード9を円錐型とした例を示したが、カソード9の形状はこれに限定されるものではないが、円錐の先端のような、突起部を有すればよい。
開口7は円形であることが好ましいが、多角形状であってもよい。ここでは、カソード電極2とカソード3とを別部材で構成した例を示したが、カソード3とカソード電極2が一体に形成されていても良い。即ち、カソード電極2の一部に突起を設け、その突起をカソード3とすることもできる。
本発明の電子放出素子10を駆動する際には、図2に示す様に、電子放出素子10はアノード電極21に対向するように設けられる。そして、アノード電極21と電子放出素子10との間が大気圧よりも低い圧力に維持される。そして、カソード電極2の電位よりもゲート電極5の電位を高くすると同時に、アノード電極の電位をゲート電極の電位よりも十分に高くすることで、電子放出9から放出された電子(この例では被膜8から放出された電子)がアノードに向けて放出される。この時、当然、カソード9の電位も十分にアノード電極の電位よりも低くなる。
本発明におけるカソード(被膜8)は、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された部材からなる。そして、ランタンの酸化物は、実用的には、La2O3である。また、モリブデンの酸化物としては、MoO2とMoO3との混合物で構成されることが良好な電子放出特性を得る点で望ましい。そのため、本発明のカソード(被膜8)は、La2O3とMoO2とMoO3との混合物であることが望ましい。即ち、本発明においては、La2O3とMoO2とMoO3との混合物の被膜8を備える形態の場合には、被膜8から電子が電界放出する。また、被膜8を設けずに導電性の基部3をLa2O3とMoO2とMoO3との混合物で形成した場合には、La2O3とMoO2とMoO3との混合物からなる導電性の基部3から電子が電界放出する。
ここでは、電子放出素子としてスピント型の電界放出素子を例に説明した。しかしながら、本実施形態に適用できる電子放出素子は、表面伝導型電子放出素子や、MIM型電子放出素子や、カーボンナノチューブ等のカーボンファイバーを用いた電界放出素子などにも好ましく適用できる。
また、図1に示した形態とは異なる形態の電子放出素子20の態様を図4(a)、図4(b)、図4(c)に模式的に示す。図4(a)はZ方向から見た平面模式図であり、図4(b)は図4(a)におけるA−A’線の断面(Z−X面)模式図である。図4(c)は図4(b)のX方向から見た場合の模式図である。
この電子放出素子20では、基板11上に、絶縁層14が設けられており、絶縁層14の上にゲート電極15が設けられている。絶縁層14はここで示す例では第1絶縁層14a及び第2絶縁層14bを備えている。また、基板11上にはカソード電極12が設けられており、カソード電極12に接続された導電性の基部13が、第1絶縁層14aの側面に沿って、且つ、第1絶縁層14aの側面の上に設けられている。第2絶縁層14bは、X方向において、第1絶縁層14aより幅が小さくなっており、このため、絶縁層14(第1絶縁層14a)とゲート電極15との間には凹部16が形成された構造になっている。導電性の基部13は、導電性膜とみなすことができる。そして、図4(b)から明らかな様に、上述した導電性の基部13は、基板11からZ方向に突出して設けられている。即ち、導電性の基部13は、突起部を備えている。また、導電性の基部13は、その一部が、凹部16内に入り込んでいる。その結果、導電性の基部13は、少なくとも一部が凹部16内に位置する突起部を備えていると言うことができる。
そして、導電性の基部13の少なくとも突起部の表面が、前述したランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜18で覆われている。ここでは、導電性の基部13の多くの部分が、被膜18で覆われている形態を示した。突起部の先端部を覆うことや、突起部のゲート電極15に最も近い部分を覆うことが好ましい。つまり、被膜18が、少なくとも導電性の基部13とゲート電極15との間に位置するように設けられていれば良い。
ここで説明した形態の電子放出素子20においても、前述した形態と同様に、導電性の基部13と被膜18とでカソード19が構成される。カソード電極12は、導電性の基部13の電位を規定する機能、導電性の基部13に電子を供給する機能を有している。カソード19は、導電性の基部13の突起部の形状を反映した形状をしているので、カソード19は突起部を備えていると言うことができる。したがって、被膜18がカソード19の突起部の少なくとも一部を構成している。詳細には、被膜18が少なくともカソード19の突起部の表面の一部を構成している。
また、図4(a)、図4(c)では、導電性の基部13及び被膜18がY方向に連続して設けられているが、Y方向に所定の間隔を置いて複数の位置に設けた構成とすることもできる。
また、図4(a)、図4(b)、図4(c)では、ゲート電極15の一部が導電性の基部13と同じ材料の導電性膜17で覆われている例を示している。この導電性膜17は省略することもできるが、安定な電界を形成するためには、設けておくことが好ましい。
上記構成によれば、ゲート電極15とカソード19は間隙を介して配置されている。カソード電極12の電位よりも高い電位をゲート電極15に印加することにより、間隙に電界が形成され、該電界によってカソード19を構成するランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜18から電子を電界放出させることができる。この形態の電子放出素子を用いた電子放出装置でも、図2と同様に、電子放出素子20と対向する位置には、アノード21が配置される。そのため、カソード19の突起部およびその先端は、アノードに向けて配置されることになる。
また導電性の基部13を覆う被膜18は、少なくともゲート電極15(導電性膜17がゲート電極15の上に設けられている場合には導電性膜17)の、カソード19と対向する部分を覆う形態とすることが好ましい。但し、この場合、導電性の基部13を覆う被膜18と、少なくともゲート電極15の、カソード19と対向する部分を覆っている被膜とは、分離されている(間隙を介して対向している)。このような構成とすることで、カソード側のランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜18から電界放出された電子が、ゲート側に設けられたランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜で、より多く散乱され、アノードに到達する電子の量が増える。その結果、電子放出特性を向上させることができる。
次に、図9を用いて、カソード19の形状について好ましい形態について述べる。図9(a)はカソード19の突起部を拡大した模式断面図である。
カソード19は、先に述べたように、少なくとも突起部の一部に本発明の被膜18を備えていれば良い。
また、図9(a)では、説明を簡潔にするために、ゲート電極15の一部が導電性膜17で覆われていない形態を示している。しかしながら、導電性膜17がゲート電極15を覆っていても、導電性膜17はゲート電極15と実質的に等電位になるので、導電性膜17はゲート電極15の一部とみなして差し支えない。また、ゲート電極15の、カソード19と対向する部分が、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜で覆われている形態についても同様である。
以下、第1絶縁層14a,第2絶縁層14bからなる絶縁層14の表面を、部分ごとに別々の表現を用いて説明する。具体的には、第1絶縁層14aの側面141と、第1絶縁層14aの上面142と、第2絶縁層14bの側面143とに分けることができる。第1絶縁層14aの上面142は、第1絶縁層14aの表面のうち、凹部16を構成する面である。第1絶縁層14aの側面141は、第1絶縁層14aの表面のうち、第1絶縁層14aの上面142と連続する面である。このように、第1絶縁層14aは段差を有する構造である。そして、上面142と側面141の境界である屈曲部(点K)の近傍に、カソード19の突起部が形成される。第2絶縁層14bの側面143は、凹部16を構成する面である。このように、凹部16は、上面142と側面143とで構成される。第1絶縁層14aの上面142と第2絶縁層14bの側面143は、凹部16内の面であるから、絶縁層14の内表面と表現することもできる。これに対して、第1絶縁層14aの側面141は、凹部16外の面であるから、絶縁層14の外表面と表現することもできる。
典型的に、第1絶縁層14aの上面142は、基板11の表面に対して、実質的に平行である。一方、図4では、第1絶縁層14aの側面141が基板11の表面に対して垂直であり、屈曲部が直角である形態を示した。しかしながら、第1絶縁層14bの側面141は基板11の表面に対して傾斜してもよい。つまり、側面141が斜面であっても良い。特に、側面141が基板11の表面に対して、鋭角をなすように傾斜していることが好ましい。側面141が斜面の場合、第1絶縁層14aの角の角度(絶縁層14側の角度)は、鈍角のようになり得る。なお、直角、鈍角といっても、実際にはある程度の曲率を有している。
ゲート電極15は、第1絶縁層14aの上面142から距離T2だけ離れて設けられている。距離T2は第2絶縁層14bの厚みに対応する。すなわち、第2絶縁層14bは第1絶縁層14aの上面142とゲート電極15との間の間隔を規定するための層でもある。
本実施形態において、カソード19の突起部は、第1絶縁層14aの上面142と第1絶縁層14aの側面141に渡って位置することが好ましい。すなわち、カソード19の突起部は、その一部が凹部16内に位置して、第1絶縁層14aの上面142と接触することが好ましい。これにより、カソード19の突起部と第1絶縁層14aの上面142との間に、界面が形成される。
図9(a)において、距離h(h>0)は、カソード19の突起部が第1絶縁層14aの上面から高さhだけ突出していることを示している。高さhとなる部分が、突起部の先端である。距離x(x>0)は、カソード19の突起部と第1絶縁層14aの上面142との界面の、凹部16の深さ方向の幅である。換言すると、距離xは、凹部16を構成する絶縁層14の表面と接する突起部の端部(点J)から、凹部16の縁、即ち第1絶縁層14aの屈曲部(点K)までの距離である。距離xは、凹部16の深さにもよるが、実用的には、10nmから100nmの範囲内である。
このような構成にすることにより、カソード19の突起部と第1絶縁層14aとの接触面積が広くなり、カソード19の突起部と第1絶縁層14aとの機械的な密着力が向上する。これにより、電子放出素子の製造プロセスを経ても、カソード19の剥離などの発生を抑制することができる。
また、このような構成にすることにより、放出電流の変動を抑制することができる。この点について、詳細に説明する。
図9(b)は凹部16内での距離xを変えた場合の、Ieの時間変動量を示したものである。尚、ここでIeとは、放出電子量を意味し、アノード21に到達する電子の量である。初期値として、電子放出素子20の駆動を開始して最初の10秒間の間に検出された平均的な電子放出量Ieを求めた。そして、この初期値を基準として規格化し、電子放出量の変化を時間の常用対数としてプロットしたものである。図9(b)から理解されるように、距離xが短くなるにつれて、電子放出量の初期値からの低下量が大きくなる傾向があった。
図9(c)はいくつかの素子において、図9(b)と同様の計測を行ったものである。図9(c)では、距離xに対して、電子放出量の初期値を基準として規格化を行い、電子放出素子20の駆動を開始して所定時間経過した時の電子放出量をプロットしたものである。この図から明らかなように、距離xが短いほど初期値からの低下量が大きかった。そして、距離xが20nmを越えてくると、距離xに対する依存性が小さくなる傾向が見られた。このように、距離xは20nm以上であることが好ましい。
これらの結果から推察すると、距離xが長くなることにより、突起部と第1絶縁層14aとの接触面積が広くなり、熱抵抗を低減できるためと思われる。また、カソード19の突起部の体積増加による熱容量が増大するためと思われる。すなわち、カソード19の温度上昇が軽減されるために、初期変動が小さくなったのではないかと思われる。
一方、距離xを極端に長くすると、凹部の内表面、すなわち、第1絶縁層14aの上面及び第2絶縁層14bの側面を介して、カソード19とゲート電極15との間のリーク電流が大きくなる。少なくとも、距離xは、凹部16の深さよりも小さくことが好ましい。
また、上面に位置するカソード19の表面(特に、カソード19の端部(点J)近傍の表面)と第1絶縁層14aの上面142との角度θは、90°より大きいことが好ましい。また、角度θは180°より小さいことが好ましい。なお、角度θは、カソード19の表面と第1絶縁層14aの上面142とが成す角度のうち、真空側の角度である。上面142が平面であるとみなせば、カソード19と上面と142の接触角は180°−θで表される。実用的には絶縁層14aの上面142は平面であるとみなせるので、換言すれば、上面142とカソード19との接触角が0°より大きく、90°より小さいことが好ましいと言える。
さらには、凹部16内において、カソード19の表面が第1絶縁層14aの上面142に対して、緩やかに傾斜していることが好ましい。つまり、カソード19の、凹部16内に位置する任意の部分の表面の接線と、第1絶縁層14aの上面142と、の角度が90°より小さいことが好ましい。
これにより、凹部16内で生じる、異常な放電を抑制することができる。この点について、詳細に説明する。
一般に真空、絶縁体、導電体の様に誘電率が異なる三種類の材料が同時に一つの場所に接する場所は三重点と呼ばれる。条件にもよるが、三重点の電界が周囲よりも極端に高くなることで放電等の要因になる場合がある。本形態においても図9(a)に示した点Jは真空(V)、絶縁体(I)、導電体(C)の三重点となっている。カソード19の突起部と第1絶縁層14aが接する角度θが90°以上であれば周囲の電界と大きく変わらない。カソード19の突起部が上記角度θとなることで、絶縁体―真空−導電体で生じる三重点での電界強度を弱め、異常な電界発生による放電現象を防止することが可能となる。
図9(a)にゲート電極15とカソード19の突起部の先端との間の距離dを示す。ここでは、距離dはゲート電極15とカソード19との間の最短距離でもある。また、図9(a)突起部の先端近傍の形状は曲率半径rで表すことができる。
ゲート電極15とカソード19との電位差を一定とした場合、先端部の近傍に形成される電界の強度は、この曲率半径rと距離dに応じて異なる。rが小さいほど、先端部の近傍に強い電界を形成することが可能となる。また、dが小さいほど、先端部の近傍に強い電界を形成することが可能となる。
突起部の先端の近傍の電界を一定とした場合、距離dが相対的に小さければ、曲率半径rを相対的に大きくできる。逆に、曲率半径rが相対的に小さければ、距離dを相対的に大きくできる。距離dの違いは放出された電子の散乱回数の違いに影響するため、rが小さく、dが大きいほど効率が高い電子放出素子20とすることが可能となる。ここで、効率(η)とは素子に電圧を印加したときに検出される電流(If)と真空中に取り出される電流(Ie)を用いて、効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
次に、図4に示した電子放出素子20の製造方法の一例を説明する。
基板11としては、石英ガラス,Na等の不純物含有量を減少させたガラス、ソーダライムガラス及び、シリコン基板を用いることができる。基板に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライエッチング、ウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があり、ディスプレイパネルのような一体ものとして用いる場合は成膜材料や他の積層部材と熱膨張差が小さいものが望ましい。また熱処理に伴いガラス内部からのアルカリ元素等が拡散しづらい材料が望ましい。
基板11としては、石英ガラス,Na等の不純物含有量を減少させたガラス、ソーダライムガラス及び、シリコン基板を用いることができる。基板に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライエッチング、ウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があり、ディスプレイパネルのような一体ものとして用いる場合は成膜材料や他の積層部材と熱膨張差が小さいものが望ましい。また熱処理に伴いガラス内部からのアルカリ元素等が拡散しづらい材料が望ましい。
最初に、基板上に段差を形成するために第1絶縁層14aと第2絶縁層14bを順次形成する。第2絶縁層14bの上にゲート電極15を積層する。
第1絶縁層14aは、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、たとえば窒化シリコンや酸化シリコンであり、その形成方法はスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成される。またその厚さとしては、数nmから数十μmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲で選択される。
第2絶縁層14bは、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、たとえば窒化シリコンや酸化シリコンであり、その形成方法は一般的な真空成膜法、例えばCVD法、真空蒸着法あるいはスパッタ法で形成される。またその厚さT2としては、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数nmから数十nmの範囲で選択される。
詳細は後述するが、凹部16を精度良く形成するために、第1絶縁層14aと第2絶縁層14bと異なる材料とすることが好ましい。第1絶縁層14aとして窒化シリコンを用い、第2絶縁層14bは例えば酸化シリコン、あるいはリン濃度の高いPSG、ホウ素濃度の高いBSG等で構成する事ができる。
ゲート電極15は導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成することができる。ゲート電極15の厚さT1としては、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲で選択される。
ゲート電極15の材料は、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が望ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料が使用できる。また、窒化物、酸化物、炭化物等の化合物や、半導体、炭素、炭素化合物等も適宜使用可能である。
第1絶縁層14a、第2絶縁層14b、ゲート電極15のパターンニングは、フォトリソグラフィ技術とエッチング加工を用いて行うことができる。エッチング加工としては、RIE(Reactive Ion Etching)を用いることができる。
次に、第2絶縁層14bを選択的にエッチングすることにより、第1絶縁層14a、第2絶縁層14bからなる絶縁層14に凹部16を形成する。第1絶縁層14aと第2絶縁層14bとの間の、エッチング量の比は、10以上が好ましく、50以上がより好ましい。
選択的なエッチングとしては、例えば第2絶縁層14bが酸化シリコンであればバッファーフッ酸(BHF)と呼ばれるフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液を用い、第2絶縁層14bが窒化シリコンであれば熱リン酸系エッチング液を使用することが可能である。
凹部16の深さ(露出する第1絶縁層14aの上面142の幅)は、素子形成後のリーク電流に深く関わり、凹部16を深く形成するほどリーク電流の値が小さくなる。しかし、あまり深く形成するとゲート電極15が変形してしまう課題が発生する。このため、凹部16の深さは30nm〜200nm程度が好ましい。
なお、材料による選択的なエッチングを行わずに、絶縁層の側面の一部をマスクして、絶縁層の一部を除去することにより、凹部16を形成することもできる。その場合には、第1絶縁層14a、第2絶縁層14bを別々の材料で形成する必要はなく、1層の絶縁層として形成すればよい。また、絶縁層を3層として、2層目に対して選択的エッチングを行っても良い。その場合には、凹部16は、3層の絶縁層の面で構成されることになる。
次に、導電性の基部13の材料を第1絶縁層14aの上面及び側面に付着させる。導電性の基部13の材料としては、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が好ましい。また、仕事関数が5eV以下の材料を用いることが好ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料が使用できる。特にMoを好ましく用いることができる。
導電性の基部13は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成することが可能である。前述したように、本実施形態においてはカソードの突起部の形状を制御するように、導電性材料の入射角度と成膜時間、形成時の温度および形成時の真空度を制御して形成する必要がある。導電性材料の入射角度はゲート電極15の厚みT1、凹部16の間隔T2等を考慮して決定することができる。T1、T2については図9(a)を参照されたい。
次に導電性の基部13の表面に本発明の被膜18を形成する。被膜18は、例えばスパッタリング法で形成することができる。より具体的には、LaのターゲットとMoのターゲットを用いた共スパッタリング法により形成することができる。
カソード電極12は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術を用いて形成することができる。或いは導電性材料を含む前駆体を焼成することによって形成することもできる。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ技術や、印刷技術を用いることができる。
カソード電極12の材料は、導電性を有する材料であればよく、ゲート電極15と同様の材料を用いることができる。カソード電極12の厚さとしては、数10nmから数μmの範囲で設定され、好ましくは数10nmから数100nmの範囲で選択される。なお、カソード電極12は、導電性の基部13を形成する前に設けてもよいし、導電性の基部13、或いは被膜18を形成した後に設けてもよい。
次に、図5を用いて、基板1上に、図1を用いて説明した形態の電子放出素子10を多数配列して構成した、電子源32の一例を説明する。図5は、電子源32の平面模式図である。
ここで説明する電子源32は、基板1と基板1上に設けられた複数の電子放出素子10とで構成されている。基板1は絶縁性基板で構成することができ、例えばガラス基板が好ましく適用できる。基板1上に、図1等を用いて説明した電子放出素子10が行列状に多数配列して構成したものである。同じ列の電子放出素子10同士はゲート電極5が共通に接続され、同じ行の電子放出素子10同士はカソード電極2が共通に接続される。電子放出素子10の代わりに、図4を用いて説明した電子放出素子20を用いることもできる。
そして、複数のカソード電極2の中から所定数を選択し、複数のゲート電極5の中から所定数を選択し、その選択された電極間に電圧を印加することで、所定の電子放出素子10から電子を放出させることができる。
ここでは、1つのカソード電極2と1つのゲート電極5との交差部に設けられる電子放出素子10は1つであるが、複数の電子放出素子10を設けることが好ましい。例えば、カソード電極2とゲート電極5との各々の交差部には、複数の開口7が設けられ、そして、各々の開口7内にカソード9が設けられる。
図5では、簡易的に、カソード電極2とゲート電極5との各々の交差部に1つの開口7を設けた例を示している。しかしながら、放出電流の揺らぎを低減する観点からは、各交差部に設けられるカソード9の数が多いほど好ましい。カソード9の数が多いと、放出電流の揺らぎが平均化されるためである。一方で、あまりに多くのカソードを各交差部に設けることは、生産性などの観点から、望ましくない。本発明の被膜を用いることによって、電流揺らぎを低減することができるから、カソード9の数を多くせずとも、電流揺らぎを低減することができる。
上述した電子源32を用いて画像表示パネル100を構成した一例を図6を用いて説明する。尚、ここで示す例では、各交差部に設けられるカソード9を複数とした。
尚、画像表示パネル100は、内部が大気圧よりも低い圧力(真空)となるように気密に保持されるので、気密容器と言い換えることができる。
図6は、画像表示パネル100の断面模式図である。画像表示パネル100は、図5における電子源32を背面板として用い、背面板32と前面板31とが対向して配置されている。
そして、背面板32と前面板31との間隔が所定の距離となるように、背面板32と前面板31との間に閉環状(矩形状)の支持枠27が設けられている。そして、支持枠27と前面板31の間及び支持枠27と背面板32の間は、インジウムやフリットガラスなどのシール機能を備える接合部材28によって気密に接合されている。支持枠27は、画像表示パネル100の内部空間を気密に封止するための役割も担っている。画像表示パネル100の面積が大きい場合には、前面板31と背面板32との距離が維持できるように、画像表示パネル100の内部に、前面板31と背面板32の間にスペーサ34を複数配置することが好ましい。
前面板31は、電子放出素子10から放出された電子が照射されることで発光する発光体23を備える発光層25と、発光層25上に設けられたアノード電極21と、透明基板22とで構成されている。
透明基板22は、発光層25から放出された光が透過する必要があるため、例えばガラス基板からなる。
発光体23としては、一般に蛍光体を用いることができる。発光層25を、赤色を発光する発光体と、緑色を発光する発光体と、青色を発光する発光体とを用いて構成することで、フルカラー表示の画像表示パネル100を構成することができる。図6に示す形態では、発光層25は、発光体同士の間に設けられた黒色部材24を備えている。黒色部材24は一般にブラックマトリクスと言われる、表示画像のコントラストを向上させるための部材である。
各発光体23に電子を照射する電子放出素子10が、発光体23に対向するように設けられている。即ち各々の電子放出素子10は1つの発光体23に対応づけられている。
アノード電極21は、一般に、メタルバックと呼ばれ、典型的には、アルミニウム膜で構成することができる。また、アノード電極21は、発光層25と透明基板22との間に設けることもできる。その場合には、アノード電極21は、ITO膜などの光学的に透明な導電性膜で構成される。
前面板31と背面板32とを気密に接合するための工程(接合工程)では、気密容器である画像表示パネル100を構成する部材を加熱した状況下で行われる場合が多い。
接合工程は、典型的には、前面板31と背面板32との間に、フリットガラス等の接合部材を設けた支持枠27を配置する。そして加圧しながら、前面板31と背面板32と支持枠27とを例えば100℃から400℃の範囲で加熱し、その後室温まで冷却することで実施される。また、接合工程に先立って、背面板32は加熱による脱ガス処理などを施す場合も多い。このような加熱や冷却を伴う工程を経ても、本実施形態で示した被膜は導電性の基部3から剥離することはない。
また、電子放出素子20を用いて、同様に画像表示パネル100を作製する場合にも、加熱や冷却を伴う工程を経るが、被膜18が剥離したり、導電性の基部13が剥離したりすることはない。
次に図7に示すように、前述した画像表示パネル100に、画像表示パネルを駆動するための駆動回路110を接続することで、画像表示装置200とすることができる。さらに、テレビジョン放送信号や情報記録装置に記録されている信号などの情報信号を画像信号として出力する画像信号出力装置400を更に接続することで情報表示装置500を構成することができる。
画像表示装置200は、画像表示パネル100、駆動回路110を少なくとも備え、さらに制御回路120を備えることが好ましい。制御回路120は、入力された画像信号に画像表示パネルに適した補正処理等の信号処理を施すともに、駆動回路110に画像信号及び各種制御信号を出力する。駆動回路110は、入力された画像信号に基づいて、画像表示パネル100の各配線(図1のカソード電極2、ゲート電極5参照)に駆動信号を出力する。駆動回路は画像信号を駆動信号に変換するための変調回路や、配線を選択するための走査回路を有する。駆動回路110から出力される駆動信号によって画像表示パネル100内の各画素の電子放出素子に印加される電圧が制御される。これにより、画像信号に応じた輝度で各画素が発光し、スクリーンに画像が表示される。「スクリーン」は、図6で示した画像表示パネル100においては、発光層25に相当すると言うことができる。
本発明によれば、電子放出素子に仕事関数が低い被膜を用いることにより、電子放出(電子放出素子の駆動)に要する印加電圧を低減することができるので、画像表示装置の消費電力を低減することが可能となる。また、安定した放出電流が得られることにより、表示画像の品質を向上することができる。
図7は、情報表示装置の一例を示すブロック図である。情報表示装置500は画像信号出力装置400と画像表示装置200からなる。画像信号出力装置400は、情報処理回路300を備え、画像処理回路320をさらに備えることが好ましい。画像信号出力装置400は、画像表示装置200とは別の筐体に収められていてもよいし、画像信号出力装置400の少なくとも一部が、画像表示装置200と同一の筐体に収められていてもよい。ここで述べる情報表示装置の構成は、一例であり、種々の変形が可能である。
情報処理回路300には、衛星放送や地上波等のテレビジョン放送信号や、無線回線網、電話回線網、デジタル回線網、アナログ回線網、TCP/IPプロトコルで結ばれたインターネット等の電気通信回線を介したデータ放送信号等の情報信号が入力される。半導体メモリ、光ディスク、磁気記憶装置等の記憶装置を接続して、これらに記録された情報信号を画像表示パネル100に表示できる構成にすることもできる。また、ビデオカメラやスチルカメラ、スキャナ等の映像入力装置を接続して、これらから得られる画像を画像表示パネル100に表示できる構成にすることもできる。テレビ会議システムやコンピュータ等のシステムと接続するように構成構成することもできる。
さらに、画像表示パネル100に表示させる画像を、必要に応じて加工し、プリンタで出力できる構成にしたり、記憶装置に記録したりするように構成することもできる。
情報信号に含まれる情報としては、映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを指す。情報処理回路300には、放送信号から必要な情報を選局するチューナーや、情報信号がエンコードされている場合にはこれを復号化するデコーダを備えた受信回路310を設けることができる。
情報処理回路300によって得られた画像信号を画像処理回路320に出力する。画像処理回路320は、画像信号に様々な処理を施すための回路を含むことができる。例えば、ガンマ補正回路や、解像度変換回路、インターフェース回路などである。そして、画像表示装置200の信号フォーマットに変換された画像信号を画像表示装置200に出力する。
映像情報または文字情報を画像表示パネル100に出力してスクリーンに表示させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。まず、情報処理回路300に入力された情報信号のうちの映像情報や文字情報から、画像表示パネル100の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、画像表示装置200の制御回路120に入力する。そして、駆動回路110に入力された画像信号に基づいて、駆動回路110から画像表示パネル100内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段(不図示)に出力して、画像表示パネル100に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
次に、本発明の電子放出素子を用いたX線(放射線)を発生させる放射線発生装置について説明する。放射線発生装置は、全体がガラス製の真空容器に封入されている。この容器内の一方には本発明の電子放出素子が配置され、他方にターゲットである放射線出射面(アノード)が対面して設置されている。これらの電極の配置は通常の熱電子源を用いた放射線発生装置と同様である。
尚、上記真空容器の基本的な構成は、前述した図6に示した画像表示パネルの容器と同様の構成を採用することができる。即ち、図6における、発光層25を除いた構成とすれば、基本的には放射線発生装置が形成できる。また、放射線発生装置においては、放射線を取り出す向きにもよるが、放射線出射面であるアノード21の材料としては、タングステン(W)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等からなる薄いプレートを採用することができる。材料は必要な放射線のエネルギー(波長)に応じて選択される。そして、アノード21にはこれを冷却するための冷却機構を備えることが望ましい。冷却構造としては、例えば、アノード21内部に水を循環させる配管24が設ける。真空容器には、アノード21から発生した放射線を試料に導くための、窓を設けることが望ましい。この窓はベリリウム(Be)やアルミニウム(Al)の薄膜で覆われる。電子放出素子とアノードとの間には、電子線を加速するために電子放出素子側が低電位となるように、数十kVから数百kVの高電圧を印加される。
そして、放射線を、受光して、電気信号に変換する光電変換素子を多数、基板上に行列状に並べてなる周知のエリアセンサ(放射線撮像装置)を、上記した放射線発生装置に対向して配置することでコンパクトな放射線撮像システムを形成することができる。このとき、上記放射線撮像装置が受ける放射線は、上記放射線発生装置から発生された放射線であって、上記放射線発生装置と上記放射線撮像装置との間に位置する被検知物を透過した放射線である。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳述する。
(実施例1)
図1に示す円錐形状の導電性の基部3上の被膜8を設けた電子放出素子10を用意し、図2で示すように駆動して電子放出測定を行った。なお、基板1上には100個の電子放出素子を形成した。
図1に示す円錐形状の導電性の基部3上の被膜8を設けた電子放出素子10を用意し、図2で示すように駆動して電子放出測定を行った。なお、基板1上には100個の電子放出素子を形成した。
以下に図8を用いて、本実施例の電子放出素子の製造方法を示す。尚、ここでは、ほぼ円錐形状の導電性の基部3の突起部(先端)のみにランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された膜である被膜8を設けた。
(工程1)スパッタ法にてCr層を基板1上に形成後パターニングすることで、ガラス製の基板1上にカソード電極2を形成した。その後、CVD法によって、カソード電極2上に絶縁層としてSiO2層4を形成した後、更に、絶縁層4上に、ゲート電極となるCr層5をスパッタ法により形成した(図8(a))。
(工程2)ゲート電極となるCr層5にフォトリソグラフィとウェットエッチングにより円形の開口を形成した後、Cr層5をマスクとしてSiO2層4をウェットエッチングすることでゲートホール(開口)7を形成した(図8(b))。尚、開口7は、縦10個×横10個となるように、格子状に100個形成した。SiO2層4のウェットエッチングは、カソード電極2が露出するまで行った。
(工程3)Cr層5上に、回転斜方蒸着によって、剥離層となるAl層50を形成した(図8(c))。
(工程4)基板に垂直な方向からMoをスパッタ法によって基板1上に堆積させた。これによって、カソード電極2上にMoからなる略円錐状の導電性の基部3を得た(図8(d))。
(工程5)MoのターゲットとLaのターゲットを用いて、ゲートホール7内に向けて、共スパッタを行った。これにより、Moからなる略円錐状の導電性の基部3の先端(突起部)に、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜8を形成した(図8(e))。尚、共スパッタ(2元同時スパッタ)は、雰囲気中に酸素を導入しながら行った。ターゲットと基板1との距離を180mmとし、スパッタリング時のAr圧力を1.7Paとした。また、Laターゲットに対する電源およびパワーは、DCで0.10kWとし、Moターゲットに対する電源およびパワーはDCで0.33kWとした。
(工程6)その後、剥離層であるAl層を選択的にウェットエッチングすることにより、Al層上のMo及びAl層上のランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された膜を除去した。
(工程7)最後に、真空中で450℃のアニール処理をした。以上の工程で、電子放出素子を形成した(図8(f))。
(工程1)スパッタ法にてCr層を基板1上に形成後パターニングすることで、ガラス製の基板1上にカソード電極2を形成した。その後、CVD法によって、カソード電極2上に絶縁層としてSiO2層4を形成した後、更に、絶縁層4上に、ゲート電極となるCr層5をスパッタ法により形成した(図8(a))。
(工程2)ゲート電極となるCr層5にフォトリソグラフィとウェットエッチングにより円形の開口を形成した後、Cr層5をマスクとしてSiO2層4をウェットエッチングすることでゲートホール(開口)7を形成した(図8(b))。尚、開口7は、縦10個×横10個となるように、格子状に100個形成した。SiO2層4のウェットエッチングは、カソード電極2が露出するまで行った。
(工程3)Cr層5上に、回転斜方蒸着によって、剥離層となるAl層50を形成した(図8(c))。
(工程4)基板に垂直な方向からMoをスパッタ法によって基板1上に堆積させた。これによって、カソード電極2上にMoからなる略円錐状の導電性の基部3を得た(図8(d))。
(工程5)MoのターゲットとLaのターゲットを用いて、ゲートホール7内に向けて、共スパッタを行った。これにより、Moからなる略円錐状の導電性の基部3の先端(突起部)に、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜8を形成した(図8(e))。尚、共スパッタ(2元同時スパッタ)は、雰囲気中に酸素を導入しながら行った。ターゲットと基板1との距離を180mmとし、スパッタリング時のAr圧力を1.7Paとした。また、Laターゲットに対する電源およびパワーは、DCで0.10kWとし、Moターゲットに対する電源およびパワーはDCで0.33kWとした。
(工程6)その後、剥離層であるAl層を選択的にウェットエッチングすることにより、Al層上のMo及びAl層上のランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された膜を除去した。
(工程7)最後に、真空中で450℃のアニール処理をした。以上の工程で、電子放出素子を形成した(図8(f))。
このように形成した電子放出素子のカソード電極2およびゲート電極5の間に、図2に示したように、電圧を印加することにより、100個の素子を動作させることが可能である。
形成した電子放出素子の被膜8に相当する部分を電子エネルギー損失分光法(EELS)で測定したところ、MoO2とMoO3とLa2O3の存在が確認された。
また、電子放出素子10はアノード21と共に真空容器(不図示)の中に保持されており、電流導入端子を通じてカソード電極2およびゲート電極5の間に電圧を印加する為の電源ならびに、アノード21に電圧を印加するための電源に接続されている。なお、アノード21とこれに電圧を印加するための電源の間にはシャント抵抗(不図示)が挿入されており、このシャント抵抗両端での電圧差を計測することにより、電子放出の結果流れる電流を測定できるようになっている。真空容器内部はイオンポンプにより排気することで1×10−6Pa以下の圧力に保持されている。アノード21は電子放出素子10と3mmの距離を置いて配置されている。
なお、カソード電極2およびゲート電極5の間に電圧を印加する為の電源はパルス状の電圧(矩形波電圧)を印加できるものであり、具体的には、パルス幅が6m秒で周期が24m秒の矩形波形のパルス電圧を印加することにより、電子放出に必要な電界を形成した。アノード21に1kVの電圧を印加した状態で、カソード電極2およびゲート電極5の間に上記矩形波形のパルス電圧を印加した。そして、連続して印加した32回分の矩形波形のパルス電圧に応じて放出された電流の平均を計測するシーケンスを2秒間隔で実施し、15分間あたりの偏差ならびに平均値を求めることにより、電子放出電流の揺らぎを算出した。このとき、該電流の平均値が10μAとなるようにカソード電極2およびゲート電極5の間に矩形波電圧の波高値をあらかじめ調整した。
このようにして本実施例の電子放出素子の電子放出特性を測定したところ、安定性が良く、低い電圧から電子の放出が確認され、また、大きな放出電流を得ることができた。また仕事関数を電子放出特性とカソード先端の形状とから算出したところ3.5eV以下であった。
(比較例1)
比較例1として、実施例1の工程5を行わずに、工程4で犠牲層であるAl層50の開口が閉塞するまでMoをスパッタして、円錐状のMoカソード9を形成して、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、実施例1の電子放出素子と比較して、放出電流の変動が激しく、電子放出の安定性に乏しかった。また、実施例1の電子放出素子と比較して、電子が放出され始める電圧も高く、仕事関数が高かった。
比較例1として、実施例1の工程5を行わずに、工程4で犠牲層であるAl層50の開口が閉塞するまでMoをスパッタして、円錐状のMoカソード9を形成して、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、実施例1の電子放出素子と比較して、放出電流の変動が激しく、電子放出の安定性に乏しかった。また、実施例1の電子放出素子と比較して、電子が放出され始める電圧も高く、仕事関数が高かった。
(比較例2)
比較例2として、実施例1の工程5において、ランタンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、La2O3の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、測定開始直後は放出電流が確認されたが、すぐに放出電流がほとんど観測できなくなった。
比較例2として、実施例1の工程5において、ランタンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、La2O3の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、測定開始直後は放出電流が確認されたが、すぐに放出電流がほとんど観測できなくなった。
(比較例3)
比較例3として、実施例1の工程5において、モリブデンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、工程7を行わずに、MoO3が主体の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、比較例2の電子放出素子よりも放出電流が観測できなかった。
比較例3として、実施例1の工程5において、モリブデンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、工程7を行わずに、MoO3が主体の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、比較例2の電子放出素子よりも放出電流が観測できなかった。
(比較例4)
比較例4として、実施例1の工程5において、モリブデンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、MoO2が主体の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、比較例1、2の電子放出素子よりも電子放出特性の安定性に優れていたが、実施例1の電子放出素子よりも電界放出が開始される電圧が高く、仕事関数が高かった。また、同じ駆動電圧下における放出電流の最大値についても実施例1の電子放出素子よりも低かった。
比較例4として、実施例1の工程5において、モリブデンのターゲットだけを用いてスパッタを行い、MoO2が主体の被膜8を形成し、電子放出素子を作成した。この電子放出素子を実施例1と同様に電子放出特性を測定したところ、比較例1、2の電子放出素子よりも電子放出特性の安定性に優れていたが、実施例1の電子放出素子よりも電界放出が開始される電圧が高く、仕事関数が高かった。また、同じ駆動電圧下における放出電流の最大値についても実施例1の電子放出素子よりも低かった。
(実施例2)
図10を参照して、本実施例に係る電子放出素子の製造方法を説明する。基板1は高歪点低ナトリウムガラス(旭硝子(株)製PD200)を用いている。
図10を参照して、本実施例に係る電子放出素子の製造方法を説明する。基板1は高歪点低ナトリウムガラス(旭硝子(株)製PD200)を用いている。
(工程1)まず最初に、図10(a)に示すように基板1上に絶縁層30、40と、導電層50を積層する。絶縁層30は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、窒化シリコン(Si3N4)膜をスパッタ法にて形成し、その厚さとしては、500nmとした。絶縁層40は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜である酸化シリコン(SiO2)であり、スパッタ法にて形成し、その厚さとしては、30nmとした。導電層50は窒化タンタル(TaN)膜で構成し、スパッタ法にて形成し、その厚さとしては、30nmとした。
(工程2)次に、図10(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術により導電層50上にレジストパターンを形成したのち、ドライエッチング手法を用いて導電層50、絶縁層40、絶縁層30を順に加工する。この第1エッチング処理により、導電層50はパターニングされてゲート電極5となり、絶縁層30はパターニングされて第1絶縁層3となる。
この時の加工ガスとしては、絶縁層30、40及び導電層50にはCF4系のガスを用いた。このガスを用いてRIEを行った結果、絶縁層30,絶縁層40,及びゲート電極5のエッチング後の側面の角度は基板の表面(水平面)に対しておよそ80°の角度で形成されていた。
(工程3)レジストを剥離した後、図10(c)に示すようにBHF(ステラケミファ(株)製 高純度バッファードフッ酸LAL100)を用いて、凹部7の深さが約100nmになるように、絶縁層40をエッチングした。この第2エッチング処理により、絶縁層3,4からなる段差形成部材10に凹部7を形成した。この工程により、第1絶縁層3の上面が露出すると同時に第2絶縁層4の側面が後退する。
(工程4)次に、図10(d)に示すようにモリブデン(Mo)からなる膜を、第1絶縁層3の斜面上と上面(凹部の内表面)上、及びゲート電極5上に付着させ、導電性膜60Aと導電性膜60Bを同時に成膜した。この時、図10(d)に示す様に、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触するように成膜した。
本実施例では成膜方法として指向性スパッタ法を用いた。基板1の表面の角度をスパッタタ−ゲットに対して水平になるようにセットした。ここではスパッタ粒子が限られた角度(具体的には基板1の表面に対して90±10°)で基板1の表面に入射されるよう、基板1とターゲットの間に遮蔽板を設けた。更に、アルゴンプラズマをパワー3kW、真空度0.1Paで生成し、基板1とMoターゲットとの距離を60mm以下(0.1Paでの平均自由行程)になるように基板1を設置した。そして、絶縁層3の斜面上のMoの厚さが60nmになるように10nm/minの蒸着速度で形成した。
このとき、凹部7内への導電性膜60Aの入り込み量(図9における距離x)が35nmとなるように導電性膜60Aを形成した。
上記と同様のプロセスで作成したサンプルに対してTEM(透過電子顕微鏡)観察とEELS(電子エネルギー損失分光)分析を行い、その結果をもとに、Moの膜密度を算出したところ膜密度の大きい部分(後述する図11(a)の6A1および6B1に相当)は10.0g/cm3、小さい部分(後述する図11(a)の6A2および6B2に相当)は7.8g/cm3であった。
(工程5)次に、間隙8を形成する為に、図10(e)、図10(f)に示す様に、導電性膜60Aと導電性膜60Bに対してエッチング処理(第3エッチング処理)を行った。
第3エッチング処理は、以下に具体的に説明する、第1段階のエッチング処理と第2段階のエッチング処理により行った。
第1段階エッチング処理は、Moからなる導電性膜60Aと導電性膜60Bの表面を酸化する工程と、酸化した表面を除去する工程が含まれている。
具体的には、Moを酸化する方法としてはエキシマUV(波長:172nm、照度:18mw/cm2)露光装置を使用して、大気下で350mJ/cm2照射した。この条件で、膜密度の小さい斜面では3nm程度、膜密度の大きい部分では1〜2nm程度の膜厚で導電性膜60Aと導電性膜60Bの表面に酸化層が形成された。続いて温水(45℃)に5分間浸漬させて酸化モリブデン層を除去した。この工程で、導電性膜60Aと導電性膜60Bとの間に間隙8を形成した(図10(e))。
続いて、第2段階エッチング処理として、図10(f)に示した様に、導電性膜6Aの突起部の先端を先鋭化させた。尚、第2段階エッチング処理では、先鋭化と同時に、第1段階エッチング処理で形成された間隙8の間隔を広げるために行った。第2段階エッチング処理は第1段階エッチング処理と同様で、酸化工程でモリブデン酸化膜を形成し、除去工程で酸化膜除去を行うことによって、導電性膜60Aをエッチングした。
今回は、エキシマUVによる酸化(350mJ/cm2照射)と温水(45℃、5分間浸漬)による酸化膜除去の工程を1サイクルとして、これを3サイクル行った。
断面TEMによる解析の結果、図10(f)のように、導電性膜60Aの突起部とゲート電極5との間の最短距離8が平均的に15nmとなっていた。以上の工程で、前述した導電性の基部3としての導電性膜60Aが形成された。
図11(a)、図11(b)、図11(c)を用いて、上記第3エッチング処理による、間隙の形成と導電性膜60Aの端部(突起部)の先鋭化処理について説明する。
図11(a)は、工程4で指向性を有する成膜方法により、導電性膜(60A、60B)が成膜された状態を表している。指向性を有するスパッタ法により、ゲート電極5の表面、基板1の表面上、及び、第1絶縁層3の角部32の上、第1絶縁層3の上面では、スパッタ粒子が、それらの面に対して90°に近い角度(スパッタ粒子の飛翔方向と面の成す角度)で衝突する。尚、スパッタ粒子とは、スパッタターゲットからスパッタされた粒子を指す。その為、上記した部分には、良質な膜(ここでは「高密度な膜」または「膜密度の高い膜」と表現する)が形成される。
一方、第1絶縁層3の斜面及びゲート電極5の端部近傍の面には、スパッタ粒子がこれらの面に対して浅い角度で衝突する為、これらの面上には低密度な膜(または「膜密度の低い膜」)が形成される。
図11(a)では、導電性膜の6A1および6B1で模式的に示した部分が高密度膜、導電性膜の6A2および6B2で模式的に示した部分が低密度膜を表している。
前述した様に膜密度とエッチングレートは反比例する。そのため、上記第3エッチング処理では、導電性膜の6A1および6B1で模式的に示した部分に比較して、導電性膜の6A2および6B2で模式的に示した部分の方が高エッチングレートになる。尚、工程5では、導電性膜の露出している表面が全てエッチャントに曝される(エッチングされる)ことになる。
図11(b)および図11(c)は、第3エッチング処理を行った状態を表している。図中、T2は高密度膜の部分における、第3エッチング処理による膜厚の減少量を示しており、T3は低密度膜の部分における、第3エッチング処理による膜厚の減少量を示している。本実施形態では、T2<T3の関係が成り立つ。第3エッチング処理による膜厚の減少量はエッチング時間あるいはエッチング回数で調整が可能である。T2<T3の関係があるので、繰り返してエッチング処理を行うことにより導電性膜60Aの端部(突起部)の先鋭化が促進される(図11(c))。
導電性膜(60A、60B)の材料がモリブデンの場合は、高密度膜は9.5g/cm3以上10.2g/cm3以下であり、低密度膜は7.5g/cm3以上8.0g/cm3以下であることが望ましい。上記値は、膜の抵抗率と膜厚(低密度膜は斜面に形成されるので、低密度膜部分は膜厚も薄くなる関係がある)及びエッチングレート差を考慮した実用的な範囲である。
膜密度の測定は、一般にはXRR(X線反射率法)が用いられるが、実際の電子放出素子では測定が困難な場合がある。そのような場合には、膜密度の測定手法として、例えば、以下の方法を採用することができる。即ち、TEM(透過電子顕微鏡)とEELS(電子エネルギー損失分光)を組み合わせた高分解能電子エネルギー損失分光電子顕微鏡で、元素の定量分析を行い、膜密度が既知の膜と比較することで、検量線を作成して、密度を算出することができる。
(工程6)次に図10(g)に示すように、電極2を形成した。電極2には銅(Cu)を用いた。その作成方法としてはスパッタ法を用い、その厚さは、500nmであった。
(工程7)そして、図10(d)を用いて説明した工程と同様の角度から、ランタン(La)のターゲットとモリブデン(Mo)のターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で2元同時スパッタを行った。その結果、Moからなる導電性膜60Aおよび60Bの表面に、30nmの厚みで、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜(不図示)を形成した。尚、この工程により、図10(f)を用いて説明した間隙の一部または全てが、上記被膜により埋められた。即ち、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが被膜によって接続された。
(工程8)続いて、真空中でカソード電極2とゲート電極5との間に、不図示のパルス電源を用いて、ゲート電極5の電位がカソード電極2の電位よりも高くなるようにして、繰り返し電圧を印加した。これにより、導電性膜60Aと導電性膜60Bとの間において、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合された被膜に間隙を形成した。本工程により、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが分離され、且つ、上記被膜も、導電性膜60A側に接続する部分と導電性膜60Bに接続する部分とに分離された。より詳細に述べれば、導電性膜60A側に接続する被膜と導電性膜60Bに接続する被膜とが、導電性膜60Aと導電性膜60Bとの間で、間隙を介して対向するように形成された。
以上の方法で電子放出素子を形成した後、図2に示した構成と同様にして、電子放出素子の特性を評価したところ、工程7および工程8を行わない場合に比べて、電子放出効率が高く、また同じ放出電流を得るために必要な電界強度も低く、雰囲気に存在する酸素に対する電子放出特性の変動が少なかった。また、実施例1の電子放出素子と同様に、形成した電子放出素子の被膜に相当する部分を電子エネルギー損失分光法(EELS)で測定したところ、MoO2とMoO3とLa2O3の存在が確認された。
この電子放出素子を多数用いた画像表示装置では、電子ビームの成形性に優れ、放電が生じても画素欠陥が生じずに良好な画像を長期に渡って維持することができる。また、電子放出効率向上に伴う、低消費電力な画像表示装置が提供できる。
1 基板
2 カソード電極
3 導電性の基部
5 ゲート電極
8 被膜
9 カソード
2 カソード電極
3 導電性の基部
5 ゲート電極
8 被膜
9 カソード
Claims (9)
- ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたカソードを備えることを特徴とする電界放出型電子放出素子。
- 前記カソードは、導電性の基部と、該基部の少なくとも一部を覆う被膜と、を有し、前記被膜が、ランタンの酸化物とモリブデンの酸化物とが混合されたであることを特徴とする請求項1に記載の電界放出型電子放出素子。
- 前記モリブデンの酸化物が、MoO2とMoO3とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界放出型電子放出素子。
- 前記ランタンの酸化物がLa2O3であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電界放出型電子放出素子。
- 前記カソードの仕事関数が、3.5eV以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電界放出型電子放出素子。
- 前記電子放出素子は、カソード電極とゲート電極とを備え、該カソード電極に前記カソードが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子。
- 電子放出素子と該電子放出素子から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを備える画像表示装置であって、前記電子放出素子が請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子放出素子であることを特徴とする画像表示装置。
- 電子放出素子と、該電子放出素子から放出された電子の入射により放射線を発生する放射線出射面を備えるターゲットと、を備える放射線発生装置であって、前記電子放出素子が請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子放出素子であることを特徴とする放射線発生装置。
- 請求項8に記載の放射線発生装置と、該放射線発生装置から発生し、被検知物を透過した放射線を撮像する放射線撮像装置と、を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
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