JP2010097952A - 電子放出素子の製造方法およびそれを用いた画像表示パネルの製造方法 - Google Patents

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玉樹 小林
Akiyuki Nishida
彰志 西田
Takuto Moriguchi
拓人 森口
Takeo Tsukamoto
健夫 塚本
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Abstract

【課題】 動作電圧を低減し、安定した放出電流が得られる電子放出素子を得る。
【解決手段】 基板上に、第1絶縁層と、第1絶縁層とは異なる材料からなる第2絶縁層と、電極とを、この順で積層する工程と、第2絶縁層の側面をエッチングして、第1絶縁層の側面に連続した第1絶縁層の上面を露出させる工程と、硼化ランタンの多結晶膜を、第1絶縁層の上面と側面とに渡って形成する工程と、を有し、多結晶膜を構成する結晶子のサイズを2.5nm以上とし、かつ、多結晶膜の膜厚を100nm以下とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は電界放出型の電子放出素子に関する。また本発明は、それを用いた画像表示パネル、入力された画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置、及び入力された情報信号に含まれる信号を画像として表示する情報表示装置に関する。
図10は、従来の一般的な電界放出型の電子放出素子の断面模式図である。基板1上にカソード電極2が設けられ、カソード電極2上に、円錐状の突起である導電性部材3が設けられる。ゲート電極5は、カソード電極2と絶縁層4を介して基板1上に設けられるとともに、導電性部材3を囲むように設けられている。カソード電極2とゲート電極5との間に電圧を印加することで、導電性部材3から電子が放出される。電界放出型電子放出素子には、MIM型電子放出素子やBSD型電子放出素子などが含まれる。
このような電界放出型電子放出素子を多数、基板上に配列した背面板と、蛍光体などの発光体を配置した前面板とを対向させ、周囲を封止することで気密容器(画像表示パネル)を形成することができる。そして、画像表示パネルに駆動回路を接続することで画像を表示する画像表示装置が形成される。
特許文献1、2には、電界放出型電子放出素子の円錐状の突起とした導電性部材の表面を、低仕事関数で高融点の材料によって被覆することが開示されている。非特許文献1、2には、低仕事関数の材料として、六硼化ランタンが開示されている。
特開昭51−021471号公報 特開平01−235124号公報
ブイ・クラチューン(V.Craciun)等著、「パルスト レーザー デポジッション オブ クリスタライン LaB6 シン フィルムズ(Pulsed laser deposition of crystalline LaB6 thin films)」、Applied Surface Sicience、247、2005年、pp.384−389 ダッタトレイ・ジェイ・レイト(Dattatray.J.Late)等著、「フィールド エミッション スタディーズ オブ パルスト レーザー デポジッテッド LaB6 フィルムズ オン W アンド Re(Field emission studies of pulsed laser deposited LaB6 films on W and Re)」、ultramicroscopy、107、2007年、pp.825−832
画像表示装置に用いられる電界放出型電子放出素子には、より低い動作電圧、より低い真空度(より高い圧力)での長期に渡る安定な電子放出の実現が求められている。
特許文献1等のように導電性部材の表面を低仕事関数材料で被覆しても、時間経過と共に、初期の低電圧での駆動ができなくなったり、放出される電流が不安定になったりする場合が多かった。
また、前述のような気密容器を形成する際には、度重なる加熱工程と冷却工程(自然冷却を含む)を繰り返す場合があり、また、この温度変化による影響を抑制する必要がある。
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされた発明であり、硼化ランタンの多結晶膜を備える電子放出素子の製造方法であって、基板上に、第1絶縁層と、前記第1絶縁層とは異なる材料からなる第2絶縁層と、電極とを、この順で積層する工程と、前記第2絶縁層の側面をエッチングして、前記第1絶縁層の側面に連続した前記第1絶縁層の上面を露出させる工程と、硼化ランタンの多結晶膜を、前記第1絶縁層の前記上面と前記側面とに渡って形成する工程と、を有し、前記多結晶膜を構成する結晶子のサイズを2.5nm以上とし、かつ、前記多結晶膜の膜厚を100nm以下とすることを特徴とする。
本発明によれば、放出電流の変動を、低減できる電子放出素子を得ることができる。また、仕事関数を3.0eV以下にすることができるため、駆動電圧を低減することができる。更には、電子放出素子の製造プロセスを経ても、剥離などの発生を抑制することができる。
電子放出素子の実施形態の一例の模式断面図である。 電子放出素子を駆動する際の一例の模式図である。 硼化ランタンの多結晶膜の構成を示す模式図である。 電子放出素子の実施形態の別の一例の模式図である。 電子源の一例を示す平面模式図である。 画像表示パネルの一例を示す断面模式図である。 画像表示装置および情報表示装置の一例を示すブロック図である。 電子放出素子の製造工程の一例を示す模式図である。 電子放出素子の実施形態の別の一例の模式図である。 従来の電子放出素子の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る電子放出素子および画像表示装置について詳細に説明する。
図1に本実施形態の電子放出素子10の一例の断面模式図を示す。
基板1上にカソード電極2が設けられ、カソード電極2上にはカソード電極2と電気的に接続された導電性部材3が設けられている。カソード電極2は、導電性部材3の電位を規定する機能と、導電性部材3に電子を供給する機能を有している。カソード電極2と導電性部材3との間に抵抗層をさらに設けても良い。図1に示した形態では、導電性部材3は円錐状の突起となっているが、導電性部材3は突起部(または先鋭部)を備えていれば良い。
基板1上には、絶縁層4を介してゲート電極5が設けられている。絶縁層4と絶縁層4上のゲート電極5には、ゲートホールと呼ばれる開口7が設けられている。この開口7内に導電性部材3が配置されている。開口7は円形であることが好ましいが、多角形状であってもよい。そして、導電性部材3の表面は、硼化ランタンの多結晶膜8で被覆されている。ここでは、導電性部材3の表面の全体が、多結晶膜8によって覆われた形態を示したが、硼化ランタンの多結晶膜8は、少なくとも導電性部材3の突起部の表面の一部を覆っていれば良い。具体的には、突起部の先端部を覆うことや、突起部のゲート電極5に最も近い部分を覆うことが好ましい。導電性部材3が円錐の場合、少なくとも円錐の先端部を覆うように設けることが望ましい。導電性部材3は金属、金属化合物、半導体のいずれかで形成することができる。ここでは、カソード電極2と導電性部材3とを別部材で構成した例を示したが、導電性部材3をカソード電極2の一部としても良い。例えば、カソード電極2に突起部を設け、その突起部に硼化ランタンの多結晶膜8を被覆することができる。
本実施形態では、導電性部材3と硼化ランタンの多結晶膜8とで、カソード9が構成される。カソード9は電子放出体である。カソード9は、導電性部材3の突起部の形状を反映した形状をしているので、カソード9は突起部を備えていると言うことができる。したがって、硼化ランタンの多結晶膜8がカソード9の突起部の少なくとも一部を構成している。詳細には、硼化ランタンの多結晶膜8が少なくともカソード9の突起部の表面の一部を構成している。
ここまでは、カソード9を、導電性部材3と硼化ランタンの多結晶膜8とで構成した例を示したが、カソード9の突起部を全て硼化ランタンの多結晶膜8で構成してもよい。さらに、カソード9を全て硼化ランタンの多結晶膜8で構成してもよいし、カソード9及びカソード電極2を全て硼化ランタンの多結晶膜8で構成することもできる。しかしながら、カソード9の突起部の形状を、導電性部材3の突起部の形状によって制御して、少なくとも導電性部材3の突起部の表面の一部を多結晶膜18で覆うことが好ましい。いずれにしても、硼化ランタン8の多結晶膜8がカソード9の突起部の表面の少なくとも一部を構成している。
電子放出素子10を駆動する際には、図2に示す様に、電子放出素子10はアノード21に対向するように設けられる。このようにすることで、カソード9の突起部およびその先端は、アノードに向けて配置される。アノード21と電子放出素子10との間が大気圧よりも低い圧力(真空)に維持される。そして、カソード電極2の電位よりもゲート電極5の電位を高くする。これによって、ゲート電極5とカソード9との間の空間6に電界が形成され、該電界によって、カソード9から電子が放出される。さらに、アノード21の電位をゲート電極5の電位よりも十分に高くすることで、電子放出素子10から放出された電子はアノード21に向かって加速される。
このように、本実施形態の電子放出素子は、カソード9の近傍に加熱手段を別途設けて、カソード9を加熱することで電子を放出する、いわゆる熱陰極ではなく、電界放出によって電子を放出する、いわゆる冷陰極を用いた電子放出素子である。
また、ここでは、カソード電極2、カソード9、ゲート電極5、アノード21とで構成された電子放出装置を説明した。しかしながら、ゲート電極5を設けずに、アノード21とカソード9との間に電圧を印加することでカソード9から電子を放出する電子放出装置を構成することもできる。
次に、硼化ランタンの多結晶膜8について説明する。硼化ランタンの多結晶膜8は導電性を備えている。本実施形態に係る硼化ランタンの多結晶膜8は金属的な伝導を示す。図3に示すように、本実施形態に係わる硼化ランタンの多結晶膜8は、多数の結晶子80よりなる、いわゆる多結晶体としての特質を有する。各々の結晶子80は硼化ランタンからなる。結晶子とは、単結晶としてみなせる最大の集まりを意味するものである。尚、「グレイン」は、複数の結晶子より構成されるものを指していたり、アモルファスな粒状のものを指していたり、見た目が粒状のものを指していたり、用語としての使い方が統一されていない場合が多い。本発明における多結晶膜8は、結晶子80同士が接合(当接)または複数の結晶子の塊(集合体)同士が接合(当接)することで導電性を示す、金属的な膜である。多結晶膜は、微粒子(例えば非晶質の微粒子)の集合体からなるいわゆる微粒子膜とは異なる。
本発明における多結晶膜8は、結晶子80同士が接合または複数の結晶子の塊同士が接合しているが、結晶子80同士の間または複数の結晶子の塊同士の間には空隙を有する場合もある。また、非晶質な部分を有する場合もある。
本実施形態における硼化ランタンの多結晶膜8を構成する結晶子80のサイズは2.5nm以上である。そして、多結晶膜8の膜厚は100nm以下である。そのため、多結晶膜8を構成する結晶子80のサイズの上限は必然的に100nmとなる。
結晶子サイズは、典型的にはX線回折測定から求めることが可能である。回折線のプロファイルから、Scherrer法と呼ばれる方法によって算出することができる。
X線回折測定は、結晶子サイズの算出のみならず、多結晶膜8が六硼化ランタンの多結晶体により構成されていることや、配向性について調べることが可能である。六硼化ランタン(LaB)は、LaとBの比率が化学量論的組成として1:6で表される構造であり、単純立方格子を有するものを指す。ただし、本発明における六硼化ランタンの組成比に関しては非化学量論組成についても含み、格子定数の変化したものも含む。
また、仕事関数の測定は、真空UPSなどの光電子分光法やケルビン法、真空中での電界放出電流を計測して電界と電流の関係より導く方法などがあり、これらを組み合わせて求めることも可能である。
鋭利な突起部を有する導電性の針(たとえば、タングステン製の針)の突起部の表面に、仕事関数が既知の材料、たとえばMoなどの20nm程度の金属膜を形成し、真空中で電界を印加して電子放出特性を測定する。そして電子放出特性から、針の先端である突起部の形状による電界増倍係数をあらかじめ求めておき、しかる後に硼化ランタンの多結晶膜8を形成して、仕事関数を算出して求めることが可能である。
揺らぎは、放出電流の時間的な変動の大きさを示すものである。放出電流の時間的な変動は、たとえば矩形波形のパルス電圧を周期的に印加することによって得られる放出電流を計測する。揺らぎは、単位時間あたり放出電流の変動の大きさの偏差を放出電流の平均値で割って算出することができる。
具体的には、パルス幅が6m秒で周期が24m秒の矩形波形のパルス電圧を連続して印加する。そして連続した32回分の矩形波形のパルス電圧に応じた放出電流値の平均を計測するシーケンスを2秒間隔で実施して、15分間あたりの偏差ならびに平均値を求めたものである。なお、複数の電子放出素子間で揺らぎの大きさを比較するにあたっては、上述の電流の平均値が概ね等しくなるように印加電圧の波高値を設定している。
ここでは、電子放出素子として円錐型の導電性部材3を備える電界放出素子を例に説明した。しかしながら、本実施形態に適用できる電子放出素子は、MIM型電子放出素子や、カーボンナノチューブ等のカーボンファイバーを用いた電界放出素子などにも好ましく適用できる。即ち、これらの電子放出素子の少なくとも電子放出部や電子放出体を上述した多結晶膜8で覆えば良い。
次に、別の電子放出素子に本発明の硼化ランタンの多結晶膜を適用した場合の態様を図4(a)、(b)、(c)に模式的に示す。図4(a)はZ方向から見た平面模式図であり、図4(b)は図4(a)におけるA−A’線の断面(Z−X面)模式図である。図4(c)は図4(b)のX方向から見た場合の模式図である。
この電子放出素子20では、基板11上に、絶縁層14を介してゲート電極15が設けられている。絶縁層14は第1絶縁層14a及び第2絶縁層14bを含んでいる。また、基板11上にはカソード電極12が設けられており、カソード電極12に接続された導電性部材13が、第1絶縁層14aの表面に沿って設けられている。第2絶縁層14bはX方向において、第1絶縁層14aより幅が小さくなっており、絶縁層14(第1絶縁層14a)とゲート電極15との間には凹部16が設けられた構造になっている。導電性部材13は、導電性膜として設けられている。そして、図4(b)から明らかな様に、上述した導電性部材13は、基板11からZ方向に突出して設けられている。即ち、導電性部材13は、突起部を備えている。また、導電性部材13は、その一部が、凹部16内に入り込んでいる。その結果、導電性部材13は、少なくとも一部が凹部16内に位置する突起部を備えていると言うことができる。
そして、導電性部材13は硼化ランタンの多結晶膜18を表面に備えている。ここでは、導電性部材13の多くの部分が、硼化ランタンの多結晶膜18で覆われている形態を示した。しかしながら、少なくとも導電性部材13の突起部の表面の一部が、硼化ランタンの多結晶膜18で覆われていればよい。具体的には、突起部の先端部を覆うことや、突起部のゲート電極15に最も近い部分を覆うことが好ましい。つまり、硼化ランタンの多結晶膜18が、少なくとも導電性部材13とゲート電極15との間に位置するように設けられていれば良い。硼化ランタンの多結晶膜18は、図1、図3等を用いて説明した硼化ランタンの多結晶膜8と同様の特徴を有する。
ここで説明した形態の電子放出素子20においても、前述した形態と同様に、導電性部材13と多結晶膜18とでカソード19が構成される。カソード電極12は、導電性部材13の電位を規定する機能、導電性部材13に電子を供給する機能を有している。カソード19は、導電性部材13の突起部の形状を反映した形状をしているので、カソード19は突起部を備えていると言うことができる。したがって、硼化ランタンの多結晶膜18がカソード19の突起部の少なくとも一部を構成している。詳細には、硼化ランタンの多結晶膜18が少なくともカソード19の突起部の表面の一部を構成している。
ここまでは、カソード19を、導電性部材13と硼化ランタンの多結晶膜18とで構成した例を示したが、カソード19の突起部を全て硼化ランタンの多結晶膜18で構成してもよい。さらに、カソード19を全て硼化ランタンの多結晶膜18で構成してもよいし、カソード19及びカソード電極12を全て硼化ランタンの多結晶膜18で構成することもできる。本実施形態では、膜状のカソード19を用いることができるので、カソード19の突起部の形状を硼化ランタンの多結晶膜18で好適に制御することも可能である。
いずれにしても、硼化ランタンの多結晶膜18がカソード19の突起部少なくとも一部を構成している。
また、図4(a)、(c)では、導電性部材13及び多結晶膜18がY方向に連続して設けられているが、Y方向に所定の間隔を置いて複数の位置に設けた構成とすることもできる。
また、図4では、ゲート電極15の一部が導電性部材13と同じ材料の導電性膜17で覆われている例を示している。この導電性膜17は省略することもできるが、安定な電界を形成するためには、設けておくことが好ましい。硼化ランタンの多結晶膜が、導電性膜17または、ゲート電極15の上に設けられていてもよい。
この構成によれば、ゲート電極15とカソード19は間隙を介して配置されている。カソード電極12の電位よりも高い電位をゲート電極15に印加することにより、間隙に電界が形成され、該電界によってカソード19から電子を放出させることができる。この形態の電子放出素子を用いた電子放出装置でも、図2と同様に、電子放出素子20と対向する位置には、アノード21が配置される。そのため、カソード19の突起部およびその先端は、アノードに向けて配置される。
次に、図9を用いて、カソード19の形状について好ましい形態について述べる。図9(a)はカソード19の突起部を拡大した模式断面図である。
カソード19は、先に述べたように、少なくとも突起部の一部に本発明の多結晶膜18を備えていれば良い。
また、図9(a)では、説明を簡潔にするために、ゲート電極15の一部が導電性膜17で覆われていない形態を示している。しかしながら、導電性膜17がゲート電極15を覆っていても、導電性膜17はゲート電極15と実質的に等電位になるので、導電性膜17はゲート電極15の一部とみなして差し支えない。
以下、第1絶縁層14a,第2絶縁層14bからなる絶縁層14の表面を、部分ごとに別々の表現を用いて説明する。具体的には、第1絶縁層14aの側面141と、第1絶縁層14aの上面142と、第2絶縁層14bの側面143とに分けることができる。第1絶縁層14aの上面142は、第1絶縁層14aの表面のうち、凹部16を構成する面である。第1絶縁層14aの側面141は、第1絶縁層14aの表面のうち、第1絶縁層14aの上面142と連続する面である。このように、第1絶縁層14aは段差を有する構造である。そして、上面142と側面141の境界である屈曲部(点K)の近傍に、カソード19の突起部が形成される。第2絶縁層14bの側面143は、凹部16を構成する面である。このように、凹部16は、上面142と側面143とで構成される。第1絶縁層14aの上面142と第2絶縁層14bの側面143は、凹部16内の面であるから、絶縁層14の内表面と表現することもできる。これに対して、第1絶縁層14aの側面141は、凹部16外の面であるから、絶縁層14の外表面と表現することもできる。
典型的に、第1絶縁層14aの上面142は、基板11の表面に対して、実質的に平行である。一方、図4では、第1絶縁層14aの側面141が基板11の表面に対して垂直であり、屈曲部が直角である形態を示した。しかしながら、第1絶縁層14bの側面141は基板11の表面に対して傾斜してもよい。つまり、側面141が斜面であっても良い。特に、側面141が基板11の表面に対して、鋭角をなすように傾斜していることが好ましい。側面141が斜面の場合、第1絶縁層14aの角の角度(絶縁層14側の角度)は、鈍角のようになり得る。なお、直角、鈍角といっても、実際にはある程度の曲率を有している。
ゲート電極15は、第1絶縁層14aの上面142から距離T2だけ離れて設けられている。距離T2は第2絶縁層14bの厚みに対応する。すなわち、第2絶縁層14bは第1絶縁層14aの上面142とゲート電極15との間の間隔を規定するための層でもある。
本実施形態において、カソード19の突起部は、第1絶縁層14aの上面142と第1絶縁層14aの側面141に渡って位置することが好ましい。すなわち、カソード19の突起部は、その一部が凹部16内に位置して、第1絶縁層14aの上面142と接触することが好ましい。これにより、カソード19の突起部と第1絶縁層14aの上面142との間に、界面が形成される。
図9(a)において、距離h(h>0)は、カソード19の突起部が第1絶縁層14aの上面から高さhだけ突出していることを示している。高さhとなる部分が、突起部の先端である。距離x(x>0)は、カソード19の突起部と第1絶縁層14aの上面142との界面の、凹部16の深さ方向の幅である。換言すると、距離xは、凹部16を構成する絶縁層14の表面と接する突起部の端部(点J)から、凹部16の縁、即ち第1絶縁層14aの屈曲部(点K)までの距離である。距離xは、凹部16の深さにもよるが、実用的には、10nmから100nmの範囲内である。
このような構成にすることにより、カソード19の突起部と第1絶縁層14aとの接触面積が広くなり、カソード19の突起部と第1絶縁層14aとの機械的な密着力が向上する。これにより、電子放出素子の製造プロセスを経ても、カソード19の剥離などの発生を抑制することができる。
また、このような構成にすることにより、放出電流の変動を抑制することができる。この点について、詳細に説明する。
図9(b)は凹部16内での距離xを変えた場合の、Ieの時間変動量を示したものである。尚、ここでIeとは、放出電子量を意味し、アノード21に到達する電子の量である。初期値として、電子放出素子20の駆動を開始して最初の10秒間の間に検出された平均的な電子放出量Ieを求めた。そして、この初期値を基準として規格化し、電子放出量の変化を時間の常用対数としてプロットしたものである。図9(b)から理解されるように、距離xが短くなるにつれて、電子放出量の初期値からの低下量が大きくなる傾向があった。
図9(c)はいくつかの素子において、図9(b)と同様の計測を行ったものである。図9(c)では、距離xに対して、電子放出量の初期値を基準として規格化を行い、電子放出素子20の駆動を開始して所定時間経過した時の電子放出量をプロットしたものである。この図から明らかなように、距離xが短いほど初期値からの低下量が大きかった。そして、距離xが20nmを越えてくると、距離xに対する依存性が小さくなる傾向が見られた。このように、距離xは20nm以上であることが好ましい。
これらの結果から推察すると、距離xが長くなることにより、突起部と第1絶縁層14aとの接触面積が広くなり、熱抵抗を低減できるためと思われる。また、カソード19の突起部の体積増加による熱容量が増大するためと思われる。すなわち、カソード19の温度上昇が軽減されるために、初期変動が小さくなったのではないかと思われる。
一方、距離xを極端に長くすると、凹部の内表面、すなわち、第1絶縁層14aの上面及び第2絶縁層14bの側面を介して、カソード19とゲート電極15との間のリーク電流が大きくなる。少なくとも、距離xは、凹部16の深さよりも小さくことが好ましい。
また、上面に位置するカソード19の表面(特に、カソード19の端部(点J)近傍の表面)と第1絶縁層14aの上面142との角度θは、90°より大きいことが好ましい。また、角度θは180°より小さいことが好ましい。なお、角度θは、カソード19の表面と第1絶縁層14aの上面142とが成す角度のうち、真空側の角度である。上面142が平面であるとみなせば、カソード19と上面と142の接触角は180°−θで表される。実用的には絶縁層14aの上面142は平面であるとみなせるので、換言すれば、上面142とカソード19との接触角が0°より大きく、90°より小さいことが好ましいと言える。
さらには、凹部16内において、カソード19の表面が第1絶縁層14aの上面142に対して、緩やかに傾斜していることが好ましい。つまり、カソード19の、凹部16内に位置する任意の部分の表面の接線と、第1絶縁層14aの上面142と、の角度が90°より小さいことが好ましい。
これにより、凹部16内で生じる、異常な放電を抑制することができる。この点について、詳細に説明する。
一般に真空、絶縁体、導電体の様に誘電率が異なる三種類の材料が同時に一つの場所に接する場所は三重点と呼ばれる。条件にもよるが、三重点の電界が周囲よりも極端に高くなることで放電等の要因になる場合がある。本形態においても図9(a)に示した点Jは真空(V)、絶縁体(I)、導電体(C)の三重点となっている。カソード19の突起部と第1絶縁層14aが接する角度θが90°以上であれば周囲の電界と大きく変わらない。カソード19の突起部が上記角度θとなることで、絶縁体―真空−導電体で生じる三重点での電界強度を弱め、異常な電界発生による放電現象を防止することが可能となる。
図9(a)にゲート電極15とカソード19の突起部の先端との間の距離dを示す。ここでは、距離dはゲート電極15とカソード19との間の最短距離でもある。また、図9(a)突起部の先端近傍の形状は曲率半径rで表すことができる。
ゲート電極15とカソード19との電位差を一定とした場合、先端部の近傍に形成される電界の強度は、この曲率半径rと距離dに応じて異なる。rが小さいほど、先端部の近傍に強い電界を形成することが可能となる。また、dが小さいほど、先端部の近傍に強い電界を形成することが可能となる。
突起部の先端の近傍の電界を一定とした場合、距離dが相対的に小さければ、曲率半径rを相対的に大きくできる。逆に、曲率半径rが相対的に小さければ、距離dを相対的に大きくできる。距離dの違いは放出された電子の散乱回数の違いに影響するため、rが小さく、dが大きいほど効率が高い電子放出素子20とすることが可能となる。ここで、効率(η)とは素子に電圧を印加したときに検出される電流(If)と真空中に取り出される電流(Ie)を用いて、効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
この電子放出素子20の製造方法の一例を説明する。
基板11としては、石英ガラス,Na等の不純物含有量を減少させたガラス、ソーダライムガラス及び、シリコン基板を用いることができる。基板に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライエッチング、ウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があり、ディスプレイパネルのような一体ものとして用いる場合は成膜材料や他の積層部材と熱膨張差が小さいものが望ましい。また熱処理に伴いガラス内部からのアルカリ元素等が拡散しづらい材料が望ましい。
最初に、基板上に段差を形成するために第1絶縁層14aと第2絶縁層14bを順次形成する。第2絶縁層14bの上にゲート電極15を積層する。
第1絶縁層14aは、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、たとえば窒化シリコンや酸化シリコンであり、その形成方法はスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成される。またその厚さとしては、数nmから数十μmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲で選択される。
第2絶縁層14bは、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、たとえば窒化シリコンや酸化シリコンであり、その形成方法は一般的な真空成膜法、例えばCVD法、真空蒸着法あるいはスパッタ法で形成される。またその厚さT2としては、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数nmから数十nmの範囲で選択される。
詳細は後述するが、凹部16を精度良く形成するために、第1絶縁層14aと第2絶縁層14bと異なる材料とすることが好ましい。第1絶縁層14aとして窒化シリコンを用い、第2絶縁層14bは例えば酸化シリコン、あるいはリン濃度の高いPSG、ホウ素濃度の高いBSG等で構成する事ができる。
ゲート電極15は導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成することができる。ゲート電極15の厚さT1としては、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲で選択される。
ゲート電極15の材料は、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が望ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料が使用できる。また、窒化物、酸化物、炭化物等の化合物や、半導体、炭素、炭素化合物等も適宜使用可能である。
第1絶縁層14a、第2絶縁層14b、ゲート電極15のパターンニングは、フォトリソグラフィ技術とエッチング加工を用いて行うことができる。エッチング加工としては、RIE(Reactive Ion Etching)を用いることができる。
次に、第2絶縁層14bを選択的にエッチングすることにより、第1絶縁層14a、第2絶縁層14bからなる絶縁層14に凹部16を形成する。第1絶縁層14aと第2絶縁層14bとの間の、エッチング量の比は、10以上が好ましく、50以上がより好ましい。
選択的なエッチングとしては、例えば第2絶縁層14bが酸化シリコンであればバッファーフッ酸(BHF)と呼ばれるフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液を用い、第2絶縁層14bが窒化シリコンであれば熱リン酸系エッチング液を使用することが可能である。
凹部16の深さ(露出する第1絶縁層14aの上面142の幅)は、素子形成後のリーク電流に深く関わり、凹部16を深く形成するほどリーク電流の値が小さくなる。しかし、あまり深く形成するとゲート電極15が変形してしまう課題が発生する。このため、凹部16の深さは30nm〜200nm程度が好ましい。
なお、材料による選択的なエッチングを行わずに、絶縁層の側面の一部をマスクして、絶縁層の一部を除去することにより、凹部16を形成することもできる。その場合には、第1絶縁層14a、第2絶縁層14bを別々の材料で形成する必要はなく、1層の絶縁層として形成すればよい。また、絶縁層を3層として、2層目に対して選択的エッチングを行っても良い。その場合には、凹部16は、3層の絶縁層の面で構成されることになる。
次に、導電性部材13の材料を第1絶縁層14aの上面及び側面に付着させる。導電性部材13の材料としては、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が好ましい。また、仕事関数が5eV以下の材料を用いることが好ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料が使用できる。また、窒化物、酸化物、炭化物等の化合物や、半導体、炭素、炭素化合物等も適宜使用可能である。特にMo又はWを好ましく用いることができる。
導電性部材13は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成することが可能である。前述したように、本実施形態においてはカソードの突起部の形状を制御するように、導電性材料の入射角度と成膜時間、形成時の温度および形成時の真空度を制御して形成する必要がある。導電性材料の入射角度はゲート電極15の厚みT1、凹部16の間隔T2等を考慮して決定することができる。
次に導電性部材13の表面に本発明の硼化ランタンの多結晶膜18を形成する。硼化ランタンの多結晶膜18は、後述するように、スパッタリング法で形成することができる。
カソード電極12は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術を用いて形成することができる。或いは導電性材料を含む前駆体を焼成することによって形成することもできる。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ技術や、印刷技術を用いることができる。
カソード電極12の材料は、導電性を有する材料であればよく、ゲート電極15と同様の材料を用いることができる。カソード電極12の厚さとしては、数10nmから数μmの範囲で設定され、好ましくは数10nmから数100nmの範囲で選択される。なお、カソード電極12は、導電性部材13を形成する前に設けてもよいし、導電性部材13、或いは多結晶膜18を形成した後に設けてもよい。
次に、図5を用いて、基板1上に、上記した実施形態の電子放出素子10を多数配列して構成した、電子源32の一例を説明する。図5は、電子源32の平面模式図である。
ここで説明する電子源32は、基板1と基板1上に設けられた複数の電子放出素子10とで構成されている。基板1は絶縁性基板で構成することができ、例えばガラス基板が好ましく適用できる。基板1上に、図1等を用いて説明した電子放出素子10が行列状に多数配列して構成したものである。同じ列の電子放出素子10同士はゲート電極5が共通に接続され、同じ行の電子放出素子10同士はカソード電極2が共通に接続される。電子放出素子10の代わりに、図4を用いて説明した電子放出素子20を用いることもできる。
そして、複数のカソード電極2の中から所定数を選択し、複数のゲート電極5の中から所定数を選択し、その選択された電極間に電圧を印加することで、所定の電子放出素子10から電子を放出させることができる。
ここでは、1つのカソード電極2と1つのゲート電極5との交差部に設けられる電子放出素子10は1つであるが、複数の電子放出素子10を設けることが好ましい。例えば、カソード電極2とゲート電極5との各々の交差部には、複数の開口7が設けられ、そして、各々の開口7内にカソード9が設けられる。
図5では、簡易的に、カソード電極2とゲート電極5との各々の交差部に1つの開口7を設けた例を示している。しかしながら、放出電流の揺らぎを低減する観点からは、各交差部に設けられるカソード9の数が多いほど好ましい。カソード9の数が多いと、放出電流の揺らぎが平均化されるためである。一方で、あまりに多くのカソードを各交差部に設けることは、生産性などの観点から、望ましくない。本発明の多結晶膜を用いることによって、電流揺らぎを低減することができるから、カソード9の数を多くせずとも、電流揺らぎを低減することができる。
上述した電子源32を用いて画像表示パネル100を構成した一例を図6を用いて説明する。尚、ここで示す例では、各交差部に設けられるカソード9を複数とした。
尚、画像表示パネル100は、内部が大気圧よりも低い圧力(真空)となるように気密に保持されるので、気密容器と言い換えることができる。
図6(a)は、画像表示パネル100の断面模式図である。画像表示パネル100は、図5における電子源32を背面板として用い、背面板32と前面板31とが対向して配置されている。
そして、背面板32と前面板31との間隔が所定の距離となるように、背面板32と前面板31との間に閉環状(矩形状)の支持枠27が設けられている。そして、支持枠27と前面板31の間及び支持枠27と背面板32の間は、インジウムやフリットガラスなどのシール機能を備える接合部材28によって気密に接合されている。支持枠27は、画像表示パネル100の内部空間を気密に封止するための役割も担っている。画像表示パネル100の面積が大きい場合には、前面板31と背面板32との距離が維持できるように、画像表示パネル100の内部に、前面板31と背面板32の間にスペーサ34を複数配置することが好ましい。
前面板31は、電子放出素子10から放出された電子が照射されることで発光する発光体23を備える発光層25と、発光層25上に設けられたアノード電極21と、透明基板22とで構成されている。
透明基板22は、発光層25から放出された光が透過する必要があるため、例えばガラス基板からなる。
発光体23としては、一般に蛍光体を用いることができる。発光層25を、赤色を発光する発光体と、緑色を発光する発光体と、青色を発光する発光体とを用いて構成することで、フルカラー表示の画像表示パネル100を構成することができる。図6に示す形態では、発光層25は、発光体同士の間に設けられた黒色部材24を備えている。黒色部材24は一般にブラックマトリクスと言われる、表示画像のコントラストを向上させるための部材である。
各発光体23に電子を照射する電子放出素子10が、発光体23に対向するように設けられている。即ち各々の電子放出素子10は1つの発光体23に対応づけられている。
アノード電極21は、一般に、メタルバックと呼ばれ、典型的には、アルミニウム膜で構成することができる。また、アノード電極21は、発光層25と透明基板22との間に設けることもできる。その場合には、アノード電極21は、ITO膜などの光学的に透明な導電性膜で構成される。
前面板31と背面板32とを気密に接合するための工程(接合工程)では、気密容器である画像表示パネル100を構成する部材を加熱した状況下で行われる場合が多い。
接合工程は、典型的には、前面板31と背面板32との間に、フリットガラス等の接合部材を設けた支持枠27を配置する。そして加圧しながら、前面板31と背面板32と支持枠27とを例えば100℃から400℃の範囲で加熱し、その後室温まで冷却することで実施される。また、接合工程に先立って、背面板32は加熱による脱ガス処理などを施す場合も多い。このような加熱や冷却を伴う工程を経ても、本実施形態で示した硼化ランタンの多結晶膜は導電性部材3から剥離することはない。
また、電子放出素子20を用いて、同様に画像表示パネル100を作製する場合にも、加熱や冷却を伴う工程を経るが、硼化ランタンの多結晶膜18が剥離したり、導電性部材13が剥離したりすることはない。
次に図7に示すように、前述した画像表示パネル100に、画像表示パネルを駆動するための駆動回路110を接続することで、画像表示装置200とすることができる。さらに、テレビジョン放送信号や情報記録装置に記録されている信号などの情報信号を画像信号として出力する画像信号出力装置400を更に接続することで情報表示装置500を構成することができる。
画像表示装置200は、画像表示パネル100、駆動回路110を少なくとも備え、さらに制御回路120を備えることが好ましい。制御回路120は、入力された画像信号に画像表示パネルに適した補正処理等の信号処理を施すともに、駆動回路110に画像信号及び各種制御信号を出力する。駆動回路110は、入力された画像信号に基づいて、画像表示パネル100の各配線(図3のカソード電極2、ゲート電極5参照)に駆動信号を出力する。駆動回路は画像信号を駆動信号に変換するための変調回路や、配線を選択するための走査回路を有する。駆動回路110から出力される駆動信号によって画像表示パネル100内の各画素の電子放出素子に印加される電圧が制御される。これにより、画像信号に応じた輝度で各画素が発光し、スクリーンに画像が表示される。「スクリーン」は、図4で示した画像表示パネル100においては、発光層25に相当すると言うことができる。
本発明によれば、電子放出素子に仕事関数が低い多結晶膜を用いることにより、電子放出(電子放出素子の駆動)に要する印加電圧を低減することができるので、画像表示装置の消費電力を低減することが可能となる。また、安定した放出電流が得られることにより、表示画像の品質を向上することができる。
図7は、情報表示装置の一例を示すブロック図である。情報表示装置500は画像信号出力装置400と画像表示装置200からなる。画像信号出力装置400は、情報処理回路300を備え、画像処理回路320をさらに備えることが好ましい。画像信号出力装置400は、画像表示装置200とは別の筐体に収められていてもよいし、画像信号出力装置400の少なくとも一部が、画像表示装置200と同一の筐体に収められていてもよい。ここで述べる情報表示装置の構成は、一例であり、種々の変形が可能である。
情報処理回路300には、衛星放送や地上波等のテレビジョン放送信号や、無線回線網、電話回線網、デジタル回線網、アナログ回線網、TCP/IPプロトコルで結ばれたインターネット等の電気通信回線を介したデータ放送信号等の情報信号が入力される。半導体メモリ、光ディスク、磁気記憶装置等の記憶装置を接続して、これらに記録された情報信号を画像表示パネル100に表示できる構成にすることもできる。また、ビデオカメラやスチルカメラ、スキャナ等の映像入力装置を接続して、これらから得られる画像を画像表示パネル100に表示できる構成にすることもできる。テレビ会議システムやコンピュータ等のシステムと接続するように構成構成することもできる。
さらに、画像表示パネル100に表示させる画像を、必要に応じて加工し、プリンタで出力できる構成にしたり、記憶装置に記録したりするように構成することもできる。
情報信号に含まれる情報としては、映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを指す。情報処理回路300には、放送信号から必要な情報を選局するチューナーや、情報信号がエンコードされている場合にはこれを復号化するデコーダを備えた受信回路310を設けることができる。
情報処理回路300によって得られた画像信号を画像処理回路320に出力する。画像処理回路320は、画像信号に様々な処理を施すための回路を含むことができる。例えば、ガンマ補正回路や、解像度変換回路、インターフェース回路などである。そして、画像表示装置200の信号フォーマットに変換された画像信号を画像表示装置200に出力する。
映像情報または文字情報を画像表示パネル100に出力してスクリーンに表示させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。まず、情報処理回路300に入力された情報信号のうちの映像情報や文字情報から、画像表示パネル100の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、画像表示装置200の制御回路120に入力する。そして、駆動回路110に入力された画像信号に基づいて、駆動回路110から画像表示パネル100内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段(不図示)に出力して、画像表示パネル100に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳述する。
(実施例1)
硼化ランタンの多結晶膜をスパッタリング法により形成した。その際に、膜質ならびに膜厚の異なるように、作成条件を変えて、表1に示す条件A〜Dのサンプルを準備した。基板はSiウェハーを用いた。
表1で、膜厚は触針式の段差測定装置を用いて計測を行った。また、結晶子サイズはX線回折法を用いて、Scherrer法により求めた。X線回折の測定条件は薄膜法であり、入射角0.5°、X線源はCuKαである。立方晶LaBの(100)面の回折ピークを用いて算出した。なお、条件A〜Cは、DCスパッタリング時のAr圧力を変えたものであり、条件DはRFスパッタリング法で作成したものである。
条件A:成膜時圧力;0.3Pa
電源およびパワー;DC900W
条件B:成膜時圧力;2.0Pa
電源およびパワー;DC900W
条件C:成膜時圧力;12.0Pa
電源およびパワー;DC900W
条件D:成膜時圧力;6.7Pa
電源およびパワー;RF800W
Figure 2010097952
表1に示すように、スパッタリングの条件により結晶子サイズを変えることが可能である。スパッタリング装置の構成、たとえば基板とターゲットの距離やターゲットの大きさなどにより一概には言えないが、スパッタリング時のAr圧力が低くなると結晶子サイズが小さくなる傾向が見られた。
条件A〜Dで形成したいずれの膜においても、膜がはがれたりすることはなかったが、100nmよりも厚く成膜した場合、具体的には、成膜の時間を長くした場合には、膜剥がれを生じる場合があった。また、パワーを上げて100nmよりも厚くした場合においても、膜剥がれを生じる場合があった。なお、この膜剥がれであるが、膜の形成時のみならず、数時間〜数日後に発生する場合があった。また、パターニングを行うために、レジスト塗布や現像、剥離などのフォトリソの工程を行っている最中に剥離が見られることもあった。そして、昇温プロセスを加えるとこの剥離現象は顕著になる。このことから、硼化ランタンの多結晶膜の膜厚は100nm以下が好ましいといえる。100nmよりも膜厚が厚い場合には、膜剥がれを生ずる場合があり、電子放出素子としての信頼性を損なうことがある。従って、結果的に、結晶子のサイズも100nmが上限となる。
なお、スパッタリングの条件によっては、X線回折において結晶性を示す回折ピークが検出できないものもあり、それらは非晶質な形態であるものと思われる。このような非晶質な膜(結晶子サイズが非常に小さい膜とも言える)は、極端にパワーの低い条件などの場合に見られた。また、膜の形成方法として電子線ビーム蒸着法(EB)を用いた場合にも非晶質な膜になった。この場合は、蒸着分子或いは原子のエネルギーが低いために結晶成長に必要なエネルギーを得られず、結果的に非晶質なものになってしまっていると考えられる。
LaとBの組成比について、結晶性の確認された条件(上述の条件A〜Dを含む)のものを、ICP法により求めたところ、Laを1としたBの比率が6.0〜6.7であった。結晶子サイズが大きなものの方が、Bの比率が小さい、すなわち6に近い傾向にあり、このことから化学量論組成に近いことと、結晶子サイズが大きくなることに相関が見られるものと推測される。
このことから、先に述べた非晶質な膜は結晶成長させるために必要なエネルギーが不足しているか、或いはLaとBの組成比が6.0よりも大きくずれてしまい、結晶性を維持できなくなるような不安定な状態になっているものと考えられる。この非晶質な膜においては、後述するが、仕事関数が3.0eVよりも大きくなり、多結晶膜とは大きく特性が異なっている。これはLaBの結晶構造を有することが3.0eV以下の仕事関数を実現する上で重要であることを意味する。
次に、表2で示す条件E〜Hと比較例Aのサンプルを準備した。
基板はSiウェハーを用い、膜厚とX線回折による結晶性の確認を行った。また、同時に電子放出特性を調べる目的で、タングステンより成る、先端(突起部)の曲率半径が約100nmの針に、モリブデン膜を20nm形成したもの(以下、Mo下地付W針と略す)にも硼化ランタンの多結晶膜を被覆した。
このMo下地付W針は、あらかじめSEMにより形状を確認して、異常の無きことを調べている。なお、このMo下地付W針からの電子放出特性から、いわゆるF−N(Fowler−Nordheim)プロットを行うことにより電界増倍係数をあらかじめ算出したところ、Moの仕事関数が4.6eVとして、5.8×10(cm−1)であった。なお、該電子放出の計測は、1×10−8Pa以下の超高真空中において、上述のMo下地付W針の先端から3mm離して平板状のアノードを配置させて行った。そして、アノードにDC電圧を印加して、電界放出の結果アノードに流れ込む電流を計測した。
次に、膜の形成条件について述べる。
条件E〜Hは、DCスパッタリングで形成したものであり、条件Eは条件Aと同じ圧力かつパワーで成膜の時間を調整して膜厚を30nmとしたものである。同様に条件Fは条件Bの膜厚を30nmとしたものであり、条件Gは条件Cの膜厚を30nmとしたものであり、条件Hは条件Dの膜厚を30nmとしたものである。
比較例Aは、非晶質な膜の条件、具体的には、電子線ビーム蒸着法にて形成した。この比較例Aの膜についてはX線回折で結晶性を示すピークが観測されなかった。
Figure 2010097952
表2で、結晶子サイズは、Si基板上に形成したものをX線回折法により求めたものを示してある。Mo下地付W針上に形成したLaB膜については、断面TEMによる観察を行っており、結晶性を示す規則格子の像を確認している。その大きさはたとえば条件Eにおいて平均3nm程度であり、Si基板上に形成してX線回折法で求めた結晶子サイズと良く一致した結果となっている。
尚、断面TEMによる観察を行うと、結晶子に対応する領域に、実質的に平行に並んで見える複数の格子縞が確認される。そこで、この複数の格子縞の中から互いに最も離れた2つの格子縞を選択し、一方の格子縞の端と他方の格子縞の端を結ぶ線分のうち最も長い線分の長さを結晶子サイズ(結晶子径)と認定することができる。そして、断面TEMで観察した領域内に複数の結晶子が確認されるのであれば、それらの結晶子サイズの平均値を、硼化ランタンの多結晶膜の結晶子サイズとすればよい。
仕事関数は、Mo下地付W針上に形成した条件EからHと比較例Aの膜について、1×10−8Pa以下の超高真空中において、針の先端から3mm離して平板状のアノードを配置させて行った。アノードにDC電圧を印加して、電界放出の結果アノードに流れ込む電流を計測した。DC電圧を徐々に増加させていくことにより、急激に電流が流れるようになるが、この電圧(しきい値電圧)は条件E〜Hおよび比較例Aのいずれにおいても、Mo下地付W針のみの場合と比較して低い電圧であった。表2にはMoの仕事関数が4.6eVとして、電圧と電流の関係、具体的にはFNプロットをすることにより、その傾きから仕事関数を算出した値を示してある。表2の仕事関数の結果から、非結晶な膜である比較例Aを除き、結晶子サイズが3.0nm以上の条件E〜Hにおいて3.0eV以下の極めて低い仕事関数を実現可能なことがわかる。先にも述べたが、非晶質な膜である比較例Aにおいて仕事関数が3.8eVと多結晶膜であるE〜Hと比較して高くなっている原因は、LaBの結晶構造が構築できていないためだと考えられる。なお、この比較例Aでは電子放出が非常に不安定であり、具体的には、電子放出のしきい値電圧の変動が見られた。
放出電流の揺らぎに関して、以下に計測の条件を述べる。
評価に使用する装置は、上述の仕事関数を算出するのに使用したものと同じである。評価対象物として、この場合はMo下地付W針に条件E〜Hに対応したLaBの膜を形成したものをカソードとして、この先端から3mm離して平板状のアノードを配置させたものを用いた。そして、アノードにパルス状のDC電圧(矩形波電圧)を印加して、電界放出の結果アノードに流れ込む電流を計測して行った。具体的には、パルス幅が6m秒で周期が24m秒の矩形波形のパルス電圧を印加する。そして、連続した32回分の矩形波形のパルス電圧に応じた放出電流値の平均を計測するシーケンスを2秒間隔で実施して、15分間あたりの偏差ならびに平均値を求めることにより、式(1)に示す揺らぎを算出した。
揺らぎ≡15分あたりの偏差/15分あたりの平均値・・・・式(1)
表2に、条件E〜Hに対応した揺らぎの値を示す。尚、該揺らぎの値は、計測される電流の平均値が概ね1μAとなるように、印加する矩形波形のパルス電圧の波高値を調整して得られたものである。表2から、揺らぎの大きさが結晶子のサイズと相関を持っており、同じ膜厚では結晶子サイズが大きいほど揺らぎが小さくなっていると読み取れる。これは結晶子サイズが大きくなることにより、結晶粒界あるいは結晶間の隙間の単位体積に占める割合が減少し、不純物等の拡散による電子放出部近傍の仕事関数変化への影響が小さくなっているためだと推測される。結晶子サイズが100nmまでの硼化ランタンの多結晶膜においては、膜厚に対する結晶子のサイズにもよるが、上記と同様の良好な電子放出特性が得られる。
なお、揺らぎに関して、電流値が1μAよりも大きな場合は、算出される揺らぎが小さくなる傾向が見られた。逆に、電流値が1μAよりも小さな場合には、算出される揺らぎが大きくなる傾向が見られた。
更に、条件E〜Hにおいて上述の揺らぎを算出した矩形波形のパルス電圧で10時間駆動を行ったところ、電流値の劣化や上昇は殆ど見られず、安定な駆動安定性を有することを確認した。
以上に述べてきたように、硼化ランタンの多結晶膜を備える本実施例の電子放出素子においては、仕事関数が小さく、また揺らぎの少ない安定な電子放出を実現することが可能である。
(実施例2)
硼化ランタンの多結晶膜の膜質ならびに膜厚が異なるように、成膜条件を変えて、表3に示す条件I〜Kのサンプルを準備した。
なお、上述のサンプルを形成するに際して、同時にSiウェハー上にも硼化ランタンの多結晶膜を形成した。こちらのウェハー上の膜を用いて膜厚の測定ならびに結晶子サイズを求めた。さらに、電子放出特性を調べる目的で、Mo下地付W針にも硼化ランタンの多結晶膜を形成した。このMo下地付W針は、あらかじめSEMにより形状を確認して、異常の無きことを調べている。なお、このMo下地付W針からの電子放出特性から、いわゆるF−N(Fowler−Nordheim)プロットを行うことにより電界増倍係数をあらかじめ算出したところ、Moの仕事関数が4.6eVとして5.8×10(cm−1)であった。
まず、硼化ランタンの多結晶膜の形成条件に関して述べる。
条件Iは実施例1で述べた条件A〜Hと同じスパッタ装置で形成したものであり、条件JならびにKはそれとは異なるスパッタ装置を用いて形成したものである。そのため、成膜条件を単純に比較することはできない。条件JとKは、成膜の時間を変えて形成したものである。尚、条件JとKは、パワー密度が0.77W/cm2である。さらにターゲットとサンプルの距離は95mmになるように配置している。
条件I:成膜時圧力;2.0Pa
電源およびパワー;RF800W
条件J:成膜時圧力;1.5Pa
電源およびパワー;RF250W
条件K:成膜時圧力;1.5Pa
電源およびパワー;RF250W
Figure 2010097952
表3で、膜厚は触針式の段差測定装置を用いて計測を行った。また、結晶子サイズはX線回折法によりScherrer法により求めた。X線回折の測定条件は条件J、Kについては薄膜法であり、入射角0.5°、X線源はCuKαである。条件IはIn−plane法を用いた。結晶子サイズは立方晶LaBの(100)面の回折ピークを用いて算出した。また、多結晶膜8の結晶方位の配向を調べる目的で、(100)面の回折ピークの積分強度I(100)と(110)面の回折ピークの積分強度I(110)との積分強度比I(100)/I(110)を求めた。条件I〜Kのいずれの膜も結晶性を示すピークが観測されて、多結晶膜であることが確認され、かつ、結晶子のサイズが2.5nm以上であることがわかった。条件Iでは積分強度比I(100)/I(110)が0.54と、配向性が見られないときに観測される値(JCPDS#34−0427)と良い一致を示した。このことから条件Iの膜は結晶方位がランダムな無配向な膜であるといえる。それに対して、条件JとKは積分強度比I(100)/I(110)が0.54よりも大きく(100)面の配向が強い。条件Jと比較して膜厚の厚いKにおいて積分強度比が大きくなっていることから、膜厚が厚いほど(100)面で表される回折ピークに対応した面方位の配向が進むことがわかる。20nmを超える、30nm以上の膜厚では、I(100)/I(110)が2.8よりも大きくなっていた。20nm以下では、(100)面と(110)面以外の面方位の積分強度は、いずれも、(100)面および(110)面の面方位の積分強度よりも低かった。また、結晶子のサイズは膜厚が厚い場合の方が大きくなっている。
Mo下地付W針上に形成した条件IからKの膜について、1×10−8Pa以下の超高真空中において、針の先端から3mm離して平板状のアノードを配置させた。そして、アノードにDC電圧を印加して、電界放出の結果アノードに流れ込む電流を計測して仕事関数を求めた。表3にはMoの仕事関数が4.6eVとして、電圧と電流の関係、具体的にはFNプロットをすることにより、その傾きから仕事関数を算出した値を示してある。表3にあるように条件I〜Kのいずれにおいても3.0eV以下の仕事関数を有しており、優れた電子放出特性を有するものであった。
また、揺らぎに関しては、実施例1に記載の評価手法を用いて計測を行い、その結果を表3に示してある。条件I〜Kのいずれも揺らぎは小さい。条件Iにおいては、結晶子サイズが小さいにもかかわらず揺らぎが小さく、これは結晶子の大きさに対して膜厚が小さいためか、或いは、膜の配向性がなく無配向なためであると推測される。
このように、硼化ランタンの結晶子サイズが2.5nm以上の多結晶膜の膜厚を20nm以下とすることにより、仕事関数と揺らぎを共に、非常に安定して小さくできるので、特に好ましい。
さらに、硼化ランタンの結晶子サイズが2.5nm以上で、膜厚が20nm以下の多結晶膜では、積分強度比I(100)/I(110)が0.54以上2.8以下であることが、仕事関数と揺らぎを共に、非常に安定して小さくできるので、特に好ましい。
先にも述べたとおり、膜厚が100nmよりも厚い場合には、膜剥がれが生じる場合があり、好ましくない。硼化ランタンの多結晶膜のパターニングをドライエッチングまたはウェットエッチングで行う場合においても、膜の厚さは薄いことが加工時間の短縮や加工精度の観点からも好ましい。また膜厚が20nm以下の範囲では、500℃程度の加熱工程を経ても剥離することはない。これらの点においても、20nm以下の膜厚で良好な電子放出特性を実現可能であり、好適である。さらに、鋭利な先端を有する形状に形成する場合には、形成する膜厚が厚いと先端の先鋭度を鈍化させてしまう懸念があるので、膜厚は薄いほど好ましい。
(実施例3)
本実施例では、実施例2の成膜条件を用いて、多結晶膜の膜厚が20nmを超えるように成膜した、条件L、Mのサンプルを準備した。
条件Lでは、条件Kの成膜条件で20nm成膜した後に、その上に条件Jの成膜条件で10nm成膜し、膜厚が30nmの多結晶膜を形成した。この条件Lの多結晶膜の表面から10nmまでの領域の積分強度比は、簡易的には、この膜の積分強度と条件Jの積分強度との差分から見積もることができる。この方法で積分強度比を見積もったところ、条件Kの2.8よりも小さいことが確認された。積分強度比を、X線の入射角を0.5°より小さくなるように調整して求めることもできる。そして、この多結晶膜は、条件Jほどではなかったが、条件Kで作製した膜厚20nmの多結晶膜よりも放出電流の揺らぎが小さかった。
条件Mでは、比較例Aで成膜した膜厚30nmの非晶質な膜の上に、条件Iの膜を成膜し、膜厚37nmの膜を形成した。この条件Mの膜の表面から7nmまでの領域の積分強度比を、この膜の積分強度と比較例Aの積分強度との差分から見積もったところ、条件IのX線回折の結果と良い一致を示した。
仕事関数と揺らぎは、電子放出体の表面および表面のごく近傍の構造が支配的であると考えられる。そのため、実施例2の結果と併せて考察するに、硼化ランタンの多結晶膜であって、その表面から20nmまで、もしくは、表面から20nmよりも浅い位置までの領域が、実施例2の多結晶膜と同様の特性を備える層である多結晶膜であれば低仕事関数と低揺らぎという効果を奏することができると言える。つまり、多結晶膜の表面から20nm以下までの領域の、積分強度比I(100)/I(110)が0.54以上2.8以下であればよい。当然、この領域の結晶子サイズは2.5nm以上である。このような多結晶膜であれば、多結晶膜の膜厚が20nmを超える場合であっても、多結晶膜の膜厚が20nm以下の場合と同様に、仕事関数と揺らぎを共に、非常に安定して小さくできる。
(実施例4)
実施例2で示した特徴を有する条件I〜Kの膜を、図1に示す円錐の導電性部材3上の多結晶膜8として設けた電子放出素子10を用意し、図2で示すように駆動して電子放出測定を行った。なお、基板1上には100個の電子放出素子を形成した。
以下に図8を用いて、電子放出素子の製造方法を示す。尚、ここでは、円錐の導電性部材3の突起部(先端)のみに硼化ランタンの多結晶膜8を設けた。
(工程1)スパッタ法にてCr層を基板1上に形成後パターニングすることで、ガラス製の基板1上にカソード電極2を形成した。その後、CVD法によって、カソード電極2上に絶縁層としてSiO層4を形成した後、更に、絶縁層4上に、ゲート電極となるCr層5をスパッタ法により形成した(図8(a))。
(工程2)ゲート電極となるCr層5にフォトリソグラフィとウェットエッチングにより円形の開口を形成した後、Cr層5をマスクとしてSiO層4をウェットエッチングすることでゲートホール(開口)7を形成した(図8(b))。尚、開口7は、縦10個×横10個となるように、格子状に100個形成した。SiO層4のウェットエッチングは、カソード電極2が露出するまで行った。
(工程3)Cr層5上に、回転斜方蒸着によって、剥離層となるAl層50を形成した(図8(c))。
(工程4)基板に垂直な方向からMoをスパッタ法によって基板上に堆積させた。これによって、カソード電極2上にMoからなる略円錐状の導電性部材3を得た(図8(d))。
(工程5)六硼化ランタンをターゲットに用いて、ゲートホール7内に向けてスパッタを行った。これにより、Moからなる略円錐状の導電性部材3の先端(突起部)に、硼化ランタンの多結晶膜8を形成した(図8(e))。
(工程6)最後に、剥離層であるAl層を選択的にウェットエッチングすることにより、Al層上のMo及びAl層上の硼化ランタンの多結晶膜を除去した。以上の工程で、電子放出素子を形成した(図8(f))。
このように形成した電子放出素子のカソード電極2およびゲート電極5の間に、図2に示したように、電圧を印加することにより、100個の素子を動作させることが可能である。
また、電子放出素子10はアノード21と共に真空容器(不図示)の中に保持されており、電流導入端子を通じてカソード電極2およびゲート電極5の間に電圧を印加する為の電源ならびに、アノード21に電圧を印加するための電源に接続されている。なお、アノード21とこれに電圧を印加するための電源の間にはシャント抵抗(不図示)が挿入されており、このシャント抵抗両端での電圧差を計測することにより、電子放出の結果流れる電流を測定できるようになっている。真空容器内部はイオンポンプにより排気することで1×10−8Pa以下の圧力に保持されている。アノード21は電子放出素子10と3mmの距離を置いて配置されている。
なお、カソード電極2およびゲート電極5の間に電圧を印加する為の電源はパルス状の電圧(矩形波電圧)を印加できるものであり、具体的には、パルス幅が6m秒で周期が24m秒の矩形波形のパルス電圧を印加することにより、電子放出に必要な電界を形成した。アノード21に1kVの電圧を印加した状態で、カソード電極2およびゲート電極5の間に上記矩形波形のパルス電圧を印加した。そして、連続して印加した32回分の矩形波形のパルス電圧に応じて放出された電流の平均を計測するシーケンスを2秒間隔で実施し、15分間あたりの偏差ならびに平均値を求めることにより、式(1)に示す揺らぎを算出した。このとき、該電流の平均値が10μAとなるようにカソード電極2およびゲート電極5の間に矩形波電圧の波高値をあらかじめ調整した。
表4にこの10μAの電流を得るのに必要な電圧を示す。また、揺らぎの大きさを示す。
Figure 2010097952
これとは別に、上述の硼化ランタンの多結晶膜を形成する代わりにMo膜を20nm被覆して、電子放出を試みたが、ゲート電圧を60Vまで印加しても10μAの電子放出量を得ることができなかった。これは、表4に示す条件IからKの硼化ランタンの多結晶膜と比較して、Moの仕事関数が大きいためであると考えられる。
表3に示したように、条件IからKにおいて、20nm以下の膜厚で結晶子サイズが2.5nm以上10.7nm以下の硼化ランタンの多結晶膜では、3.0eV以下の仕事関数が実現している。そして、表4に示す様に、大きな放出電流の下で、揺らぎはすべて1.3%以下と極めて小さく維持することが可能であった。
(実施例5)
本実施例では、実施例2の条件Jで形成した多結晶膜8と同様の特徴を有する多結晶膜18を用いて、図4に示した電子放出素子20を作製した。
図4において、基板11として石英基板を用い、カソード電極12とゲート電極15は、膜厚20nmのTaNで形成した。第1絶縁層14aはSiNであり、膜厚500nmである。第2絶縁層14bはSiOであり、膜厚30nmである。第1絶縁層14aの側面141は、基板11に対して、80°傾斜していた。導電性部材13は第1絶縁層14aの側面141上における膜厚が15nmとなるように、Moを電子ビーム蒸着法を用いて形成した。同時に、ゲート電極15上にもMoからなる導電性膜17を形成した。この際、第1絶縁層14aの側面141に対して、Moの入射角度が20°となるように、基板11を傾けた。硼化ランタンの多結晶膜18は実施例2の条件Jで形成したものと同じLaBの多結晶膜であり、その膜厚(Moの突起部先端からの厚み)を10nmとした。また、図9(a)における距離xは10nm、距離dは5nmであった。
本実施例で作製した電子放出素子20を実施例4で作製した電子放出素子と同様に電子放出特性を評価したところ、実施例4と同様に非常に良好な特性を得ることができた。
(実施例6)
本実施例では、図6に断面模式図で示したように、実施例4に示した電子放出素子10を用いて画像表示パネル100を作製した。
より具体的には、ガラス製の基板1上に、電子放出素子10を横5760個×縦1200個のマトリクス状に配列形成し、背面板32とした。一方、ガラス製の透明基板22上に、画素数が横1920個×縦1200個となるように、発光体23を配列形成し、前面板31とした。尚、1画素を、赤色の発光色を呈する発光体と、緑色の発光色を呈する発光体と、青色の発光色を呈する発光体とによって構成した。そして、各発光層の間に黒色部材24であるブラックマトリクスを設け、発光体23と黒色部材24との上にアノード電極21としてアルミニウムからなるメタルバックを設けた。
そして、背面板32と前面板31との間に、インジウムからなる接合部材28を設けた支持枠27を配置した状態で、真空チャンバー内に配置し、チャンバー内を加熱しながら真空排気した。その後、十分な真空度に達したことを確認し、加熱状態を維持しながら、背面板32と前面板31とが対向する方向に、背面板32および/または前面板31を押圧し、背面板32と前面板31を支持枠27を介して接合した。これにより画像表示パネル100を得た。
そして、本実施例で作製した画像表示パネル100に駆動回路を接続して、画像を表示させたところ、低い駆動電圧で、長期に渡って、高輝度で安定な画像を得ることができた。
1、11 基板
2、12 カソード電極
3、13 導電性部材
4、14 絶縁層
5、15 ゲート電極
8、18 硼化ランタンの多結晶膜
9、19 カソード

Claims (9)

  1. 硼化ランタンの多結晶膜を備える電子放出素子の製造方法であって、
    基板上に、第1絶縁層と、前記第1絶縁層とは異なる材料からなる第2絶縁層と、電極とを、この順で積層する工程と、
    前記第2絶縁層の側面をエッチングして、前記第1絶縁層の側面に連続した前記第1絶縁層の上面を露出させる工程と、
    硼化ランタンの多結晶膜を、前記第1絶縁層の前記上面と前記側面とに渡って形成する工程と、を有し、
    前記多結晶膜を構成する結晶子のサイズを2.5nm以上とし、かつ、前記多結晶膜の膜厚を100nm以下とすることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 前記多結晶膜の膜厚を20nm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  3. 前記硼化ランタンのLaに対するBの比率を6.0以上6.7以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 硼化ランタンの多結晶膜を、前記電極の上に形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 前記第1絶縁層として窒化シリコンを用い、前記第2絶縁層として酸化シリコンを用いること、又は、前記第1絶縁層として酸化シリコンを用い、前記第2絶縁層として窒化シリコンを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 前記多結晶膜を形成する前に、前記第1絶縁層の前記上面と前記側面とに渡って、導電性材料を付着させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 前記導電性材料を、前記電極の上に付着させることを特徴とする請求項6に記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 前記導電性材料として、Mo又はWを用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子放出素子の製造方法。
  9. 画像表示パネルの製造方法であって、
    電子放出素子を備えた背面板を作製する工程と、
    前記背面板と、発光体を備えた前面板とを接合する工程と、を有し、
    前記背面板を請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法を用いて作製することを特徴とする画像表示パネルの製造方法。
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