JP2011257333A - 質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】各部のパラメータ調整を所定の手順に沿って順次実行するオートチューニング機能を有する質量分析装置において、全箇所のチューニングを行うのに長時間を要することがある。
【解決手段】質量分析装置において、パラメータ調整が必要な箇所をブロック単位に分けて考え、予め定められたブロック順にチューニングを実行する。各ブロックにおいては、まず該ブロックの代表部のチューニングを行い、その結果を過去のチューニング結果と比較する。両者の値が所定の範囲内に収まっている場合には、そのブロックに含まれる他の箇所のチューニングを省略する。
【選択図】図1

Description

本発明は、質量分析装置に関する。特に、オートチューニングを実行する機能を備えた質量分析装置に関する。
質量分析装置(MS)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)などの装置では、質量分解能や感度を常に高いレベルに保つ必要がある。これは、装置の性能が最大限に発揮されるために不可欠であると同時に、分析結果の再現性を維持するためにも必要である。
そのためには、例えば、インタフェイス(液体試料をイオン化する箇所)、イオンガイド、四重極電圧、イオントラップ、イオン検出器などの各部に印加する電圧がそれぞれ適正に保たれていなければならない。しかしながら、装置の使用及び時間の経過に伴い、試料が表面に付着したり、表面が酸化したり、物理的配置にずれが生じたり、といった要因によって劣化が生じ、印加電圧の適値に変化が生じる。言い換えれば、質量分解能や感度が低下する。
従って、例えば一月に一度程度、最低でも半年に一度程度といった頻度で、成分の種類や濃度が既知である標準試料を利用して、電極への印加電圧などの各種パラメータを最適な値に調整するためのチューニングを定期的に行うことが望ましい。なお、チューニングは以前は手作業で行っていたが、近年ではチューニングを自動的に行うオートチューニング機能が装置に備わっていることが多い(例えば特許文献1参照)。
オートチューニングを行う場合、通常、まず検出器のチューニングから行われる。次に各部の感度調整、分解能調整などが実行される。これらの各調整モードにおいては、調整は装置の入り口から開始し、順次後段に向かってゆくのが通常である。
チューニングは、各箇所に印加する電圧を変化させながら、出力が最大となる値を探す等の方法で行われる。従来のオートチューニングでは、ユーザーが指定した範囲内で最初から最後まで、このようにして全ての箇所についてチューニングを行っていた。
特開2009-129868号公報
装置の複雑化が進むにつれて、チューニングを行う箇所も多くなっている。そのため、全体のチューニングが完了するのに長い時間が掛かることがある。
本発明は、上述したような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、装置各部のパラメータ調整を自動的に行うオートチューニング機能を備えた質量分析装置において、チューニングの精度を低下させることなく、オートチューニングに要する時間を短縮化することが可能な質量分析装置を提供することにある。
以上のような思想に基づいてなされた本発明に係る質量分析装置は、各部のパラメータ調整を所定の手順に従って順次実行するオートチューニング機能を有する質量分析装置であって、
過去のチューニング結果を、少なくとも、該質量分析装置を構成する複数のブロックのそれぞれに関して設定された各代表部について保存するチューニング結果保存部と、
オートチューニングを実行する指示を受けたことに基づき、予め定められたブロック順にチューニングを実行し、各ブロックにおいては、まず該ブロックの代表部のチューニングを行い、その結果を前記チューニング結果保存部に保存されている対応する過去のチューニング結果と比較し、両者の値が所定の範囲内に収まっている場合には、該ブロックの他の各部のチューニングを割愛し、両者の値が所定の範囲外である場合には、当該ブロックの他の各部のチューニングを実行するチューニング対象制御部と、
を備えることを特徴としている。
また、本発明に係る質量分析装置は、好ましくは、前記チューニング結果保存部に保存されている複数の過去のチューニング結果のうち、所望のチューニング結果をユーザに選択させる比較結果選択部を備えることを特徴とする。
なお、本発明において質量分析装置とは、装置を構成する各部のチューニングを行う必要があるあらゆる形態の質量分析装置を含む。代表的なものとして質量分析装置(MS)ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)、複数段のMSを備える構成(MSn)などがあるが、もちろんこれらに限定されない。また、GC/MSやLC/MSのように、試料調整部(GCやLC)が前段に、そして分析部(MS)が後段に設けられているような形態の場合には、前段と後段を合わせて本発明に係る質量分析装置とすることもできるし、後段だけを本発明の質量分析装置とすることもできる。
本発明に係る質量分析装置では、質量分析装置を複数のブロックに分割して考える。チューニングを実行する際には、全箇所の調整を行うのではなく、各ブロックにおいて、まず代表部のチューニングを行い、そのチューニング結果を、チューニング結果保存部に保存されている比較用の結果と照らし合わせる。両者の値の差が所定の範囲内である場合には、そのブロックにおけるチューニングは不要であると判断し、当該ブロックの他の箇所のチューニングを割愛する。他方、両者の値の差が所定の範囲内に収まっていない場合には、そのブロックではチューニングが必要と判断し、当該ブロックの他の箇所のチューニングを順次実行する。
従って、本発明に係る質量分析装置では、チューニング自体の信頼度を保ちつつ、装置全体のチューニングに必要な時間を短縮することが可能となる。
また、比較結果選択部を備えることで、ユーザは比較用の結果を過去の結果から選択することができるから、チューニングのレベルをより高い自由度で設定することが可能となる。
本発明の一実施例であるGC/MSの要部の構成図。 本実施例であるGC/MSにおいてMS部の各種パラメータを調整するための特徴的な制御・処理を示すフローチャート。 本発明の一実施例における簡易チューニング設定画面の一例。
以下、本発明に係る質量分析装置の一実施例であるGC/MSを図面を参照して説明する。この実施例のGC/MSは本発明に係る質量分析装置の調整方法を採用した各種パラメータのオートチューニング機能を備える。
図1は本実施例のGC/MSの要部の構成図である。GC部1において、図示しないカラムオーブン内に配設されたキャピラリカラム14の入口端には試料気化室11が設けられ、キャリアガス流路13から略一定流量で試料気化室11に供給されたHe等のキャリアガスはキャピラリカラム14に送られる。分析時にインジェクタ12により少量の液体試料が加熱された試料気化室11内に滴下されると、液体試料は即座に気化してキャリアガス流に乗ってキャピラリカラム14に送り込まれる。キャリアガス流に乗った試料成分はキャピラリカラム14を通過する際に時間方向に分離されて溶出し、流路切替部16を経てMS部2へ送られる。
MS部2において、図示しない真空ポンプにより真空排気される真空チャンバ20内には、イオン化室21、レンズ電極26、四重極質量フィルタ27、イオン検出器28が配設されている。イオン化室21の途中にはバルブ23が設けられた試薬ガス流路22が接続され、内部にはリペラー電極24が設置されている。また、図示しないが、イオン化室21にはフィラメントが付設されており、該フィラメントで生成された熱電子がイオン化室21内に送り込まれる。イオン化室21内でイオン化が行われる場合、バルブ23が開放されて試薬ガス(例えばメタン)がイオン化室21内に供給され、これに熱電子が接触することにより試薬ガスがイオン化される。この試薬ガスイオンと試料分子とが化学反応を生じて試料分子イオンが生成され、生成されたイオンは、電圧印加部33よりリペラー電極24に印加されるリペラー電圧により形成される電場の作用によりイオン化室21内から図1中で右方向へと押し出される。
イオン化室21から出たイオンはレンズ電極26により形成される電場の作用により収束されるとともに場合によっては加速され、四重極質量フィルタ27に送り込まれる。四重極質量フィルタ27には直流電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加され、その電圧に応じた質量電荷比(m/z)を持つイオンのみが選択的に該フィルタ27を通過してイオン検出器28に到達する。四重極質量フィルタ27への印加電圧を所定パターンで変化させることで、該フィルタ27を通過するイオンの質量電荷比を所定範囲で走査することができる。イオン検出器28による検出信号はデータ処理部32に入力され、ここでマススペクトルが作成されるとともに定量分析、定性分析が実行される。流路切替部16は、後述する自動調整時に標準試料導入部40に用意された所定の標準試料をイオン化室21に導入するように流路を切り替える。分析制御部31は分析や自動調整などを行うために各部を制御する。また、操作部36や表示部37が接続された中央制御部30は、予め定められた制御プログラムに従って各部を統括的に制御するべく分析制御部31、データ処理部32に指示を与えるとともに、分析結果などを表示部37により表示する。なお、この中央制御部30やデータ処理部32は、汎用のパーソナルコンピュータ上で所定の制御・処理プログラムを実行させることでその機能を実現するものとすることができる。また、チューニング対象制御部34も同様に、同パーソナルコンピュータ上でソフトウェア的に実現される構成である。
チューニング結果保存部38には、過去のチューニング結果を、少なくとも、該質量分析装置を構成する複数のブロックのそれぞれに関して設定された各代表部について保存されている。本実施例のMS部2では、リベラー電極24に対応する第一ブロックB1、レンズ電極26に対応する第二ブロックB2、四重極質量フィルタ27に対応する第三ブロックB3、の三つのブロックが設定されているものとする。
第一ブロックB1には、パラメータの調整対象である箇所が一箇所だけ(即ち、第一ブロック第一電圧印加箇所V1−1)含まれている。従って、この第一ブロック第一電圧印加箇所V1−1が、第一ブロックB1における代表部に設定される。
第二ブロックB2には、パラメータの調整対象である箇所が三箇所(即ち、第二ブロック第一電圧印加箇所V2−1、第二ブロック第二電圧印加箇所V2−2、第二ブロック第三電圧印加箇所V2−3)含まれている。このうち、最も入り口側に近く、検出器28から遠い箇所の第二ブロック第一前段電圧印加箇所V2−1は、第二ブロックB2における代表部に設定されている。
第三ブロックB3には、パラメータの調整対象である箇所が四箇所(即ち、第三ブロック第一電圧印加箇所V3−1、第三ブロック第二電圧印加箇所V3−2、第三ブロック第三電圧印加箇所V3−3、第三ブロック第三電圧印加箇所V3−4)含まれている。このうち、第三ブロックB3において最初にパラメータ調整が行われる第三ブロック第一電圧印加箇所V3−1は、第三ブロックB3における代表部に設定されている。
なお、各ブロックにおいて代表部に設定する調整箇所は、通常は、そのブロックにおいて一番最初にパラメータの調整を行う箇所とすることが望ましい。
次に、本実施例のGC/MSにおいて、各種パラメータを調整する際に実行される特徴的な制御・処理について図2のフローチャートにより説明する。
まず分析制御部31の制御の下にバルブ23が開放され、試薬ガスとして例えばメタンが試薬ガス流路22を通してイオン化室21内に供給される(ステップS1)。真空チャンバ20内は真空排気されているため、イオン化室21からメタンがその外部に流出することでイオン化室21内は略一定のガス条件に維持される。次に、分析担当者は例えば図3に示すような設定画面上で、操作部36によりオートチューニング条件を入力した上で、オートチューニングの実行を指示する(ステップS2)。中央制御部30はこれに応じてオートチューニング機能を開始する(ステップS3)。
ここで、図3に示した設定画面について説明する。この設定画面では、「簡易実行」という項目にチェックが入っている。これは、本発明に係る質量分析装置の特徴的な構成である、オートチューニングを簡易的に実行することを指示する項目である。また、簡易実行の項目の右横に、ファイルを選択することができる欄が存在しており、当該欄には「20100101チューニング結果」との記載がある。これは、比較結果選択部35の動作に基づく。比較結果選択部35は、チューニング結果保存部38に記憶されている一又は複数の、過去のチューニング結果の中から、所望のものをユーザに選択させる。過去のチューニング結果の中には、例えば、質量分析装置の購入時の設定をはじめとする任意の段階が含まれる。
次に、ステップS4において、検出器28の調整を行う。これは、図3に示した設定画面において「検出器調整」の項目にチェックが入れられていることに基づく動作である。
次いで、ステップS5において、感度調整を行う。これは、図3に示した設定画面において「感度調整」の項目にチェックが入れられていることに基づく動作である。
イオン化室21内に標準試料を導入しない状態で、まず、第一ブロックB1において、代表部である第一ブロック第一電圧印加箇所V1−1(リペラー電極24)に対し、電圧印加部33によりリペラー電極24へ印加するリペラー電圧を所定の範囲(例えば−1〜3V)の範囲で少しずつ変化させながら、信号強度が最大になる電圧値を探索する。
次に、そうして決定された電圧値にリペラー電圧を固定した状態で、第二ブロックB2の代表部である第二ブロック第一電圧印加箇所V2−1に対し、電圧印加部33により第二ブロック第一電圧印加箇所V2−1へ印加する電圧を所定の範囲の範囲で少しずつ変化させながら、信号強度が最大になる電圧値を探索する。
信号強度が最大になる電圧値が決定すると、その値と、ユーザによって指定された前記チューニング結果保存部に保存されている対応する過去のチューニング結果とを比較する。両者の値が所定の範囲内に収まっている場合(ステップS5でYes)には、この第二ブロックB2における他の各部(第二ブロック第二電圧印加箇所V2−2、第二ブロック第三電圧印加箇所V2−3)のチューニングを実行しない。これは、両者の値が所定の範囲内に収まっている場合には、該ブロックの他の箇所のチューニングを割愛しても全体のチューニング精度に影響が及ばないという思想に基づいている。
他方、両者の値が所定の範囲内に収まっていない場合(ステップS5でNo)には、第二ブロックB2の残りの各部(即ち、第二ブロック第二電圧印加箇所V2−2、第二ブロック第三電圧印加箇所V2−3)のチューニングを実行する。
次に、ステップS6において、第二ブロックが最終ブロックかどうかを判定する。本実施例の場合、第三ブロックが最終ブロックなので、「No」と判断される。これにより、第三ブロックに関し、代表部の調整を行う(ステップS5に戻る)。このパラメータの調整は、第一ブロックB1及び第二ブロックB2の各部に関して既に得られた結果に基づき電圧値を固定しつつ実行する。具体的には、第三ブロックB3の代表部である第三ブロック第一電圧印加箇所V3−1に対し、電圧印加部33により第三ブロック第一電圧印加箇所V3−1へ印加する電圧を所定の範囲の範囲で少しずつ変化させながら、信号強度が最大になる電圧値を探索する。
信号強度が最大になる電圧値が決定すると、その値と、ユーザによって指定された前記チューニング結果保存部に保存されている対応する過去のチューニング結果とを比較する。両者の値が所定の範囲内に収まっている場合(ステップS5でYes)には、この第三ブロックB3における他の各部(第三ブロック第二電圧印加箇所V3−2、第三ブロック第三電圧印加箇所V3−3、第三ブロック第四電圧印加箇所V3−4)のチューニングを実行せず、省略する。両者の値が所定の範囲内に収まっていない場合(ステップS5でNo)には、第三ブロックB3の残りの各部(即ち、第三ブロック第二電圧印加箇所V3−2、第三ブロック第三電圧印加箇所V3−3、第三ブロック第四電圧印加箇所V3−4)のチューニングをそれぞれ実行する。
再度、ステップS6に戻り、最終ブロックであったと判断されると(Yes)、ステップS7に進み、図3に示した設定画面において更に別の調整が指示されているかどうかが判断される。本実施例の場合、これに引き続き、分解能調整、及びm/z較正が同様に実行される。その後、分析の指示等が与えられるまで待機する(ステップS8)。
以上のようにして、本発明に係る質量分析装置においては、チューニング結果保存部38に記憶されている過去のチューニング結果と比較することで、チューニング対象箇所を適宜に省略することができる。従って、チューニング自体の精度は或る程度保持しつつ、オートチューニングに要する時間を短縮することが可能となる。
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更を行えることは明らかである。
1…GC部
11…試料気化室
12…インジェクタ
13…キャリアガス流路
14…キャピラリカラム
16…流路切替部
2…MS部
20…真空チャンバ
21…イオン化室
22…試薬ガス流路
23…バルブ
24…リペラー電極
26…レンズ電極
27…四重極質量フィルタ
28…イオン検出器
30…中央制御部
31…分析制御部
32…データ処理部
33…電圧印加部
34…チューニング対象制御部
35…比較結果選択部
36…操作部
37…表示部
38…チューニング結果保存部
40…標準試料導入部

Claims (2)

  1. 各部のパラメータ調整を所定の手順に従って順次実行するオートチューニング機能を有する質量分析装置であって、
    過去のチューニング結果を、少なくとも、該質量分析装置を構成する複数のブロックのそれぞれに関して設定された各代表部について保存するチューニング結果保存部と、
    オートチューニングを実行する指示を受けたことに基づき、予め定められたブロック順にチューニングを実行し、各ブロックにおいては、まず該ブロックの代表部のチューニングを行い、その結果を前記チューニング結果保存部に保存されている対応する過去のチューニング結果と比較し、両者の値が所定の範囲内に収まっている場合には、該ブロックの他の各部のチューニングを割愛し、両者の値が所定の範囲外である場合には、当該ブロックの他の各部のチューニングを実行するチューニング対象制御部と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 前記チューニング結果保存部に保存されている複数の過去のチューニング結果のうち、所望のチューニング結果をユーザに選択させる比較結果選択部
    を更に備えることを特徴とする質量分析装置。
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