JP4259221B2 - クロマトグラフ質量分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)等、質量分析計を検出器としてクロマトグラフィーにより定性分析・定量分析を行うクロマトグラフ質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせたクロマトグラフ質量分析装置が、各種試料の定性分析や定量分析に広く用いられている。質量分析計は、イオン源でイオン化した試料分子又は原子を四重極質量フィルタ等の質量分析器に導入し、目的とする特定の質量数(質量/電荷)を持つイオンのみを選別してイオン検出器で検出するものである。
【0003】
こうしたイオン検出器としては、二次電子増倍管や光電子増倍管等の高感度の検出器が利用される(例えば特許文献1参照)。例えば二次電子増倍管では、一定以上のエネルギーを有するイオンが入射したときに、そのイオンの数よりも多い電子を放出するような金属から成る電極を一段目に設け、その後段に電子増倍効果を有する電極を多段階に設けた構成を有している。イオンの衝突により一段目の電極から放出された電子を、多段階に設けた電極に次々に衝突させることにより、二次電子の発生量を増倍させる。こうして発生した多量の二次電子を最終的に電子検出器に入射し、電気信号として取り出す。この電気信号の大きさは、単位時間当たりにイオン検出器(つまりは一段目の電極)に入射するイオンの数(これをイオン流強度と呼ぶ)に対応したものとなる。このイオン流強度と出力電気信号の大きさとの比を、検出器のゲインと呼ぶ。光電子増倍管も、一段目の電極でイオンが入射したときに光電子を放出し、二段目でその光電子を受けて二次電子を放出する以降は、基本的に二次電子増倍管と同様の構成を有する。
【0004】
上記のようなイオン検出器では、隣接する電極間の電圧差を変化させると二次電子の発生効率が変化する。従って、イオン検出器への印加電圧を制御することにより、上記ゲインを変化させることができる。そのため、この印加電圧の切替え自体をゲイン切替えと呼ぶこともある。このようにゲインを変化させると、検出可能な最低のイオン流強度、つまりは分析対象とする試料成分の最低検出濃度が変化することになるが、他方、二次電子増倍管や光電子増倍管におけるダイナミックレンジはゲインに拘わらずほぼ一定である。そのため、ゲインを高くすると低濃度まで検出できるようになる反面、高濃度の試料に対しては出力が飽和してしまい測定不能となる。一方、ゲインを低くすると高濃度の試料に対して出力が飽和することなく測定が可能であるものの、低濃度の試料の検出はできなくなる。こうしたことから、従来一般には、分析作業者が、分析対象とする試料成分毎、又は複数の試料成分の集合である試料成分群毎に、その濃度範囲を考慮に入れて測定可能範囲を逸脱しないように適宜検出器のゲインを計算し、そのゲインとなるようにイオン検出器の印加電圧を設定するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−45278号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、測定しようとする試料に含まれる試料成分が1乃至少数である場合には、比較的簡単にゲインを決めることができるものの、試料に含まれる分析対象成分の種類が多くなると、適切なゲインを決める作業は面倒になる。特に、同一濃度であっても検出出力である信号強度が大きく相違する、つまり感度が大きく相違するような成分や、分析対象である濃度範囲がかなり広く信号強度の変化範囲が広いような成分が含まれている場合、イオン検出器が飽和せず、しかも低濃度の試料も検出できるようにするにはゲインの設定は非常に難しいものとなる。そのため、場合によっては、1回の試料注入による分析では全ての成分を検出することができず、一定濃度範囲毎に2回以上同一試料を測定したり、或いは試料を希釈又は濃縮して測定を行ったりしなければならないこともある。こうした分析は手間が掛かり、効率化を妨げる一因となる。また、試料が微量である場合には、複数回の分析が行えないようなことさえある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的とするところは、分析作業者自らがイオン検出器のゲイン設定を行う手間を軽減するとともに、多様な成分に対し、イオン検出器の出力飽和を発生することなく且つ低濃度まで検出できるように適切にゲインを設定することにより高い精度で分析を行うことができるクロマトグラフ質量分析装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、試料をクロマトグラフにより時間的に成分分離し、その分離された試料成分を質量分析計により順次分析するものであり、該質量分析計のイオン検出器のゲインが可変であるようなクロマトグラフ質量分析装置において、
a)前記イオン検出器のゲインを変化させつつ所定の調整用試料の質量分析を行うことにより、前記ゲインと検出出力である信号強度との関係を示す基準情報を取得する基準情報取得手段と、
b)前記イオン検出器のゲインが一定である条件の下で、分析対象である複数の成分を既知の濃度で含む標準試料をクロマトグラフに導入して成分分離した後に質量分析を行うことにより、同一濃度に対する各成分の信号強度の比や差である感度差を反映した成分対応情報を取得する成分対応情報取得手段と、
c)前記基準情報及び前記成分対応情報に基づき、各成分の濃度が分析濃度範囲に広がった場合に得られる信号強度が所定の最適信号強度範囲に収まるようにするべく、前記標準試料の分析結果において最大の信号強度が得られた成分の信号強度値に基づいて、該成分が分析濃度範囲中の最高濃度である場合の信号強度が最適信号強度範囲の上限となるように最低ゲインをまず決定し、それ以外の成分については成分毎に、前記標準試料の分析により得られた信号強度値から分析濃度範囲中の最低濃度に対する信号強度と最高濃度に対する信号強度とを計算し、最低濃度に対する信号強度が最適信号強度範囲の下限以上となり、最高濃度に対する信号強度が最適信号強度範囲の上限以下となるように最低ゲインを修正することにより、各成分の保持時間に対応してそれぞれゲインを決定し、各成分の保持時間に対応したゲイン切替制御データを作成して、これを記憶しておくゲイン算出手段と、
d)未知の濃度の前記成分を含む未知試料をクロマトグラフに導入して質量分析を行う際に、前記ゲイン算出手段に記憶されている各成分の保持時間に対応したゲイン切替制御データに基づいて前記イオン検出器のゲインを時間経過に伴って変更するゲイン制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析装置では、分析対象である試料を測定する以前に、分析開始からの時間経過に伴う自動的なイオン検出器のゲイン切替えを行うための制御情報を取得しておく。GC/MSを例に挙げて説明すると、基準情報取得手段は、調整用試料として質量校正用標準物質であるPFTBAやPFK等を質量分析計に導入して(通常、この場合はクロマトグラフを通さない)、イオンの検出器のゲインを変えながら分析を行い、該ゲインと特定質量数における信号強度との対応関係を取得する。そして、その関係を近似的に表す式や対応表を算出して、それらを表すデータを基準情報として保存する。
【0010】
続いて、成分対応情報取得手段は、分析対象である多数の成分を既知の濃度で含む標準試料をクロマトグラフに導入し、カラムから出る試料を質量分析計により順次検出する。その測定によりクロマトグラムを作成することができ、そのクロマトグラムには各成分の保持時間の位置にピークが出現する筈であるから、それらピークから、所定ゲインにおいて、各成分毎の信号強度(ピークトップの高さ)の比や差が成分対応情報として求まる。各成分の既知濃度が同一であれば、信号強度の比は感度比に相当する。
【0011】
各成分には、それぞれ分析対象とする濃度範囲(これを分析濃度範囲という)が定められており、一方、本装置には正確な分析結果を得るために適切な信号強度範囲(これを最適信号強度範囲という)が定められている。そこで、ゲイン算出手段は、上記基準情報及び成分対応情報に基づいて、各成分の濃度が分析濃度範囲内に広がった場合でも、それによって得られる信号強度が最適信号強度範囲に収まるように、各成分の保持時間毎に最適又はそれに近いゲインを決め、これをゲイン切替えのための制御データとして記憶しておく。そして、未知の濃度の上記成分を含む未知試料を測定する際に、ゲイン制御手段は、ゲイン算出手段に記憶されている各成分の保持時間に対応した制御データに基づいて、イオン検出器のゲインを時間経過に伴って適宜変更する。一般的には、感度の低い成分に対してはゲインが高くなり、逆に感度の高い成分に対してはゲインが低くなる。
【0012】
【発明の効果】
従って、本発明に係るクロマトグラフ質量分析装置によれば、分析作業者自身が適切な検出器ゲインを検討し設定する必要がなくなるため、分析作業者の労力が大幅に軽減でき、手作業によるミスもなくすことができる。また、分析対象の成分の数が多く、その性質が多様であるような場合であっても、イオン検出器の出力が飽和することなく且つ低濃度までの検出もできるように適切にゲインが切り替えられるので、如何なる成分に対しても高い精度で分析を行うことができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の一実施例であるGC/MSについて、図1〜図4を参照して説明する。図1は本実施例のGC/MSの要部の構成図である。
【0014】
GC部10のカラム(キャピラリカラム)14の入口には試料気化室12が設けられ、キャリアガス流路13から供給されるキャリアガス(Heガス)が略一定流量でカラム14に流れている。マイクロシリンジを含むインジェクタ11により試料気化室12に注入された液体試料は即座に気化し、キャリアガス流に乗ってカラム14内に送られる。カラム14を通過する間に試料ガス中の各試料成分は時間的に分離され、カラム14から出て質量分析計(MS部)20のイオン源21に導入される。イオン源21に導入された成分分子は例えば熱電子衝撃法等のイオン化法によりイオン化され、発生したイオンはイオン源21の外側に引き出され、四重極フィルタ(又は他の質量分離器)22に導入される。四重極フィルタ22には直流電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加され、該印加電圧に応じた質量数(質量/電荷)を有するイオンのみがその長軸方向の空間を通過し、イオン検出器23に到達して検出される。
【0015】
イオン検出器23はコンバージョンダイノードを備えた二次電子増倍管であり、正イオンの検出時には正イオンが衝突したコンバージョンダイノードから電子が叩き出され、これが二次電子増倍管により増幅されて出力電気信号が得られる。一方、負イオンの検出時には負イオンが衝突したコンバージョンダイノードから正イオンが叩き出され、それが二次電子増倍管に入射して二次電子を発生し、次々に増幅されることで出力電気信号を得る。すなわち、イオン検出器23は、コンバージョンダイノードに到達したイオン数(イオン流強度)に応じた電気信号を出力する。このイオン検出器23のゲイン(電流増幅率)は、後述する制御部32に含まれる検出器電圧設定部33により設定される印加電圧に依存している。
【0016】
イオン検出器23の検出信号は信号処理部31へと入力され、ここでマススペクトルやマスクロマトグラムが作成されるほか、定性分析や定量分析等の各種の解析処理が実行される。制御部32はGC部10及びMS部20の各部の制御を司る。この制御部32と信号処理部31とは実質的にはパーソナルコンピュータ(PC)30を中心として構成され、該コンピュータ30にインストールされた各種の制御・処理プログラムを実行することにより上記制御や演算処理を実現する。PC30には、例えばキーボードやマウス等のポインティングデバイスである操作部35が接続されるほか、図示しないものの、液晶ディスプレイ等の表示部も接続されている。
【0017】
次に、本実施例のGC/MSの特徴的な動作について説明する。このGC/MSの分析対象は、種類自体は既知であるものの濃度が不明であるような複数の成分を含む試料であって、その試料中の各成分の定量分析を行うことを主目的としている。ここでは、説明を簡単にするために、A、B、C、D、Eの5種類の成分を分析するものとするが、実際には、20〜30種類の多成分の一斉分析に利用されるのが一般的である。
【0018】
この装置では、未知試料(上記のように成分の種類は既知である)の測定に先立ち、イオン検出器23のゲインを決める印加電圧の設定パターンに関するデータを予め取得して電圧制御データ記憶部34に保存しておく。印加電圧の設定パターンを求める際の手順を、図2のフローチャートに従って説明する。
【0019】
まず、質量校正用標準物質をMS部20で測定することにより、イオン検出器23のゲインと信号強度との関係を調べる。すなわち、標準物質導入部25には質量校正用標準物質として例えばPFTBA(Perfluorotributylamine)等が用意されており、バルブ24の切替えによって、カラム14からの試料ガスに代えて標準物質をイオン源21に導入して質量分析できるようになっている。作業者が操作部35より調整開始の指示を行うと、この指示を受けた制御部32はバルブ24を切り替えて、標準物質導入部25に用意されているPFTBAをイオン源21に導入する。そして、検出器電圧設定部33によりイオン検出器23への印加電圧をG=1.0[kV]から2.0[kV]まで0.2[kV]刻みで変化させつつ質量分析を実行する(ステップS1)。信号処理部31は、このときにイオン検出器23から受け取った検出信号に基づいて、各印加電圧に対応するマススペクトルを作成し、その中で質量数69のピークを抽出して、そのピークトップの高さつまり信号強度データを取得する(ステップS2)。
【0020】
例えば印加電圧G=x[kV]における信号強度をI[x]とすると、I[1.0],I[1.2],I[1.4],I[1.6],I[1.8],I[2.0]の6個の信号強度データが取得できる。もし、イオン検出器23のゲインを上げることによって質量数69におけるピークの飽和が生じる場合には、より信号強度の低い他の質量数nに対する信号強度をマススペクトル上で読み取り、飽和が生じないときの質量数69に対する信号強度と質量数nに対する信号強度との強度比を算出し、この強度比を乗じることにより質量数69を基準に平準化した信号強度を求めるようにする。
【0021】
次に、信号処理部31は、上記測定により取得された、印加電圧x[kV]と信号強度I[x]との関係を近似するような回帰式を算出する。例えば印加電圧x[kV]と信号強度I[x]との関係が図3に示すようになるときには、この関係を一次式で近似することができる。また、必要に応じて二次以上の高次の回帰式を用いてもよい。そして、その回帰式を表現するデータを求め、このデータを内部の記憶部に保存する(ステップS3)。例えば上記関係が一次式で近似できれば、
I[x]=a・x+b
となるから、回帰式を表現するデータとして係数a、bを求めれば充分である。
【0022】
続いて、分析対象である5種類の成分A、B、C、D、Eを既知の濃度で含む標準試料を測定することにより、同一濃度に対する各成分の信号強度比、つまり感度の相違を調べる。例えば、上記各成分をいずれも10[pg]ずつ含む標準試料をインジェクタ11から試料気化室12に注入し、カラム14に導入する。各成分はカラム14を通過する過程で分離され、それぞれの保持時間が経過したときにカラム14から溶出してMS部20に導入される。こうして順次導入された試料を、イオン検出器23への印加電圧G=1.2[kV]の条件の下で検出し、検出信号を信号処理部31へと送る。信号処理部31では、検出信号に基づいてトータルイオンクロマトグラムを作成する(ステップS4)。図4(a)はこうして取得されるクロマトグラムの一例である。クロマトグラム上では5種類の成分A、B、C、D、Eに対応するピークP1,P2,P3,P4,P5が現れている。導入された各成分の量つまり濃度が同一であっても各成分に対する感度は相違するため、各ピークのピークトップの高さは相違している。
【0023】
ここで、各成分のピークの高さ、つまり信号強度値と先に記憶部に保存しておいた回帰式データとに基づいて、次のようにして各成分に対し好適なゲイン(印加電圧)を決める。
【0024】
まず、最大の信号強度が得られた成分を抽出し、その成分の信号強度値を求める。図4(a)の例では、成分AのピークP1の信号強度が最大である。例えば、この信号強度値が5000であったとする。また、本装置での分析に適した信号強度範囲が500〜5000000であり、分析対象の成分の含有量(濃度)の範囲が1〜1000[pg]であるものとする。上記標準試料の分析時の試料濃度は10[pg]であるから、分析対象の最高濃度はこの分析時の100倍である。その最高濃度である試料を測定したときに得られる信号強度が上記信号強度範囲の上限である5000000になるのが最適である。しかしながら、上記分析時のゲイン(印加電圧が1.2[kV])では、最高濃度の試料を分析したときでもその信号強度は500000にしかならないから、信号強度が5000000となるようにするためには、あと10倍だけ信号強度が大きくなるようにゲインを上げるとよい。
【0025】
上記回帰式から、現時点で印加電圧が1.2[kV]であるときに、信号強度を10倍上げるための印加電圧の設定値を求めることができる。但し、上述したように印加電圧は0.2[kV]刻みでしか変更できないので、その中で直近の印加電圧を選ぶとよい。そして、このときの印加電圧に対するゲインを最低ゲインと定める(ステップS5)。具体的には、回帰式より印加電圧を1.2→1.4[kV]にしたときに信号強度が10倍になるものとすれば、最低ゲインを与える印加電圧を1.4[kV]に定める。
【0026】
次に、印加電圧を1.2→1.4[kV]に変更したと仮定したとき、その印加電圧の変更に伴う信号強度の増加(ここでは10倍)を考慮して、成分A以外の他の各成分において、クロマトグラム上の保持時間の小さいほうから順番に、最低濃度1[pg]に対して得られる信号強度値Iminを計算する(ステップS6)。そして、この信号強度値Iminが上記信号強度範囲の下限値である500未満であるか否かを判定し(ステップS7)、500未満である場合には(図4(a)中の下限界の線よりも下である場合)、当該成分に対するゲインが低すぎると判断し、印加電圧を修正する(ステップS8)。
【0027】
すなわち、最低濃度1[pg]に対して得られる信号強度値が500以上であって、且つ最高濃度1000[pg]に対して得られる信号強度値が5000000以下となるように、つまりは上記信号強度範囲500〜5000000に収まるように新たなゲインを定める。例えば図4(a)のクロマトグラムにおいて、成分Bの信号強度値が400であるとする。上記のようなゲイン増加により信号強度値は4000となるが、濃度が10→1[pg]に減ることにより結局、最低濃度に対する信号強度値Iminは400である。この値は500未満であるため、ゲインの修正が必要である。いま、印加電圧を1.4→1.6[kV]に上げたときに、信号強度が8倍になるものとする。このときには、最低濃度に対する信号強度値は3200となり、上記条件を満たすことができる。また、最高濃度に対する信号強度値は3200000となるから、これも上記条件を満たす。
【0028】
これに対し、印加電圧を1.4→1.8[kV]に上げたときに、信号強度が16倍になるものとする。このとき、最低濃度に対する信号強度値は6400となり、上記条件を満たすが、最高濃度に対する信号強度値は6400000となってしまい、上記条件を逸脱する。従って、成分Bに対する印加電圧は1.6[kV]が適切であると判断することができる。こうして必要に応じてゲインを修正した後、全成分のゲインが決定したか否かを判定する(ステップS9)。全成分のゲインが決定されていなければ、ステップS6へと戻り、保持時間が次に大きな成分に対して上記ステップS6、S7、S8の処理を実行する。このようにして、成分C、D、Eに対してもゲインが適切であるか否かを調べる。ここでは、成分C、Eはゲインの修正の必要がなく、成分Dに対しては印加電圧が1.8[kV]に修正されたものとする。
【0029】
ステップS9でYesとなるときには、成分A、C、Eに対しては印加電圧が1.4[kV]、成分Bに対しては印加電圧が1.6[kV]、成分Dに対しては印加電圧が1.8[kV]であると求まる。図4(a)に示すクロマトグラムより、各成分のピークP1〜P5が出現する時刻t1〜t5つまり保持時間が判るから、各保持時間に対応してゲイン(印加電圧)を表すデータを電圧制御データとして記憶部34に保存する(ステップS10)。
【0030】
上記のような、イオン検出器23の印加電圧を制御するための電圧制御データを算出するための作業は、一般に、それほど高い頻度で行う必要はない。通常、装置を新規に設置した後に1回調整作業を行えば、本装置の分解掃除等、メンテナンス作業を行う毎に調整作業を行えばよい。もちろん、より高い頻度で調整作業を行ってもよい。
【0031】
上記のように電圧制御データ記憶部34に保存されたデータを利用して、濃度が未知である試料の分析を行う際には、制御部32は次のように制御を実行する。すなわち、分析開始前に、検出器電圧設定部33は電圧制御データ記憶部34からデータを読み出す。そして、分析途中でゲインの切替えが必要である場合には、隣接する保持時間のほぼ中間でゲインが切り替わるように印加電圧の設定パターンを定める。例えば、上記例の場合には、図4(b)に示すように設定パターンを定めることができる。ここで、隣接する保持時間の中間で切り替えを行うのは、夾雑物の影響や分析条件の変動・ばらつき等によって保持時間が前後にずれた場合でも、最も大きな時間的余裕を確保できるからである。従って、原理的には、或るピークが終了してから次のピークが開始されるまでの期間中のどの時点で印加電圧を切り替えてもよい。
【0032】
実際に分析が開始されると、インジェクタ11により試料が試料気化室12に注入された時点から、検出器電圧設定部33は上記設定パターンに従ってイオン検出器23への印加電圧を制御する。これにより、もともと相対的に感度が低い成分Bや成分DがMS部20に導入されるときにはイオン検出器23のゲインが高くなり、試料濃度が低い場合でも確実に検出することができる。一方、それ以外の成分A、C、EがMS部20に導入されるときにはイオン検出器23のゲインが低くなり、試料濃度が高い場合でも出力が飽和することなく確実に検出することができる。
【0033】
なお、イオン検出器23のゲインを切り替えるとクロマトグラムのベースラインも変動するため、あまり頻繁にゲイン切替えを行うとクロマトグラムのベースラインの段差が目立って不自然になる。そこで、こうした不自然さを軽減すべく、上述したように信号強度が特に低い成分に限って(つまりステップS7で下限値未満であるものに限って)ゲインを修正するようにしている。これにより、イオン検出器23のゲインの切替えが必要以上に起きることがなく、クロマトグラムの不自然さも軽減できる。また、図4(a)に示すように隣接するピークが離れている場合にはその中間で容易にゲイン切替えを行うことができるが、隣接ピークが非常に近接している場合には、こうしたゲイン切替えのタイミングを設定することが難しいこともあり得る。こうした場合には、ピークが近接する複数の成分をグループ化し、グループ単位でゲインを切り替えるようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施例はGC/MSについて説明したが、本発明がLC/MSについても適用可能であることは容易に推測し得る。もちろん、質量校正用標準物質等について、LC/MSに適合したものが使用されることは言うまでもない。また、上記実施例は本発明の一例にすぎないから、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や追加、修正を行ってもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるGC/MSの要部の構成図。
【図2】 本実施例のGC/MSにおけるイオン検出器への印加電圧の設定パターンを求める際の手順を示すフローチャート。
【図3】 標準物質測定により取得されたゲインと信号強度との関係を示す図。
【図4】 本実施例のGC/MSにおける標準試料測定時に作成されるクロマトグラムの一例を示す図(a)、及び、分析時の検出器の印加電圧設定パターンの一例を示す図(b)。
【符号の説明】
10…ガスクロマトグラフ(GC部)
11…インジェクタ
12…試料気化室
13…キャリアガス流路
14…カラム
20…質量分析計(MS部)
21…イオン源
22…四重極フィルタ
23…イオン検出器
24…バルブ
25…標準物質導入部
30…パーソナルコンピュータ(PC)
31…信号処理部
32…制御部
33…検出器電圧設定部
34…電圧制御データ記憶部
35…操作部
Claims (1)
- 試料をクロマトグラフにより時間的に成分分離し、その分離された試料成分を質量分析計により順次分析するものであり、該質量分析計のイオン検出器のゲインが可変であるようなクロマトグラフ質量分析装置において、
a)前記イオン検出器のゲインを変化させつつ所定の調整用試料の質量分析を行うことにより、前記ゲインと検出出力である信号強度との関係を示す基準情報を取得する基準情報取得手段と、
b)前記イオン検出器のゲインが一定である条件の下で、分析対象である複数の成分を既知の濃度で含む標準試料をクロマトグラフに導入して成分分離した後に質量分析を行うことにより、同一濃度に対する各成分の信号強度の比や差である感度差を反映した成分対応情報を取得する成分対応情報取得手段と、
c)前記基準情報及び前記成分対応情報に基づき、各成分の濃度が分析濃度範囲に広がった場合に得られる信号強度が所定の最適信号強度範囲に収まるようにするべく、前記標準試料の分析結果において最大の信号強度が得られた成分の信号強度値に基づいて、該成分が分析濃度範囲中の最高濃度である場合の信号強度が最適信号強度範囲の上限となるように最低ゲインをまず決定し、それ以外の成分については成分毎に、前記標準試料の分析により得られた信号強度値から分析濃度範囲中の最低濃度に対する信号強度と最高濃度に対する信号強度とを計算し、最低濃度に対する信号強度が最適信号強度範囲の下限以上となり、最高濃度に対する信号強度が最適信号強度範囲の上限以下となるように最低ゲインを修正することにより、各成分の保持時間に対応してそれぞれゲインを決定し、各成分の保持時間に対応したゲイン切替制御データを作成して、これを記憶しておくゲイン算出手段と、
d)未知の濃度の前記成分を含む未知試料をクロマトグラフに導入して質量分析を行う際に、前記ゲイン算出手段に記憶されている各成分の保持時間に対応したゲイン切替制御データに基づいて前記イオン検出器のゲインを時間経過に伴って変更するゲイン制御手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析装置。
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