JP2011256425A - 長尺中空部品の水冷装置 - Google Patents

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【課題】小径の長尺中空部品について、水冷時における部品の内外周間の冷却速度差を十分小さくして、残留応力が抑えられ機械的性質に優れた長尺中空部品を得る。
【解決手段】冷却水槽内に貯留された冷却水の液面La近傍上方に待機して、起立姿勢で供給された長尺中空部品5の下端が載置される載台2と、当該載台2を冷却水中へ下降案内する案内架台1と、載台2に連結されてこれに載置された長尺筒状部品5の下端開口からその筒内空間52内へ冷却水を供給するノズル25とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は長尺中空部品の水冷、特に小径の長尺中空部品の固溶体化熱処理後の水冷に好適に使用できる水冷装置に関する。
長尺中空部品の水冷を行なう場合、これを冷却水中にただ浸漬するだけでは、部品外周面には浸漬当初から新しい冷却水が十分に接して急速にその温度が低下するのに対し、特に、浸漬される端面開口から遠い位置にある部品内周面では、これに接する冷却水が蒸気となって滞留し新しい冷却水が十分に接することができないためにその温度低下が緩慢となり、外周側と内周側の冷却速度差によって部品内に大きな残留応力が生じてその機械的性質が阻害されるという問題があった。
ここで、特許文献1には、焼入液の液面近傍に先端が位置するように焼入液中に焼入液導入管を固定立設し、起立姿勢で下端から漸次焼入液中に浸漬される長尺中空部品に対しその下端開口から中空空間内へ焼入液導入管を相対進入させるようにして、内周側と外周側の焼入れ時の冷却速度差を小さくする試みがなされている。
特開2001−348616
ところが、小径の長尺中空部品を水冷しようとすると、冷却水の導入管を中空空間内へ相対進入させることはできないため、内外周間の冷却速度差を小さくすることは困難で、部品内での大きな残留応力の発生が防止できないという問題があった。
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、冷却水導入管を相対進入させることができないような小径の長尺中空部品について、水冷時における部品の内外周間の冷却速度差を十分小さくして、残留応力が抑えられ機械的性質に優れた長尺中空部品を得ることができる水冷装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明では、冷却水槽内に貯留された冷却水の液面(La)近傍上方に待機して、起立姿勢で供給された長尺中空部品(5)の下端が載置される載台(2)と、当該載台(2)を冷却水中へ下降案内する案内手段(1)と、前記載台(2)に連結されてこれに載置された前記長尺中空部品(5)の下端開口からその中空空間(52)内へ冷却水を供給する冷却水供給手段(251)とを備えている。
本第1発明においては、長尺中空部品が起立姿勢で載台上に載置されて冷却水中に浸漬され、浸漬開始と同時に長尺中空部品の中空空間内へ、載台に連結されてこれと一体に下降する冷却水供給手段から冷却水の供給が開始される。これにより、長尺中空部材の外周側と同時に内周側も速やかに冷却されることとなり、長尺中空部材の内外周間の冷却速度差が小さくなって残留応力の発生が抑えられ、機械的性質に優れた長尺中空部品が得られる。
本第2発明では、前記載台(2)に、前記冷却水供給手段を構成し前記長尺中空部品(5)の下端開口に臨む冷却水噴出孔(251)が形成されている。
本第2発明においては、起立姿勢の長尺中空部品の下端を載台上に載せるだけで、冷却水噴出孔から長尺中空部品の中空空間内へ冷却水が供給される。
本第3発明では、前記案内手段(1)は焼入槽内に立設されたレール部材(11)を備えており、前記載台(2)は前記レール部材(11)に沿って上下動可能であるとともに、前記長尺中空部品(5)の重量よりも軽いウエイト体(3A,3B)の自重を受けたワイヤ部材(15)によって上昇端へ引き上げられている。
本第3発明においては、載台上に起立姿勢の長尺中空部品を載置すると、その重量によって載台は冷却水中に下降する。焼入処理後に長尺中空部品を引き上げると載台はウエイト体の自重で上昇端へ戻される。これによれば、載台を昇降動させる駆動手段が不要である。
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以上のように、本発明の水冷装置によれば 冷却水導入管を相対進入させることができないような小径の長尺中空部品について、水冷時における部品の内外周面間の冷却速度差を十分小さくして、残留応力が抑えられて機械的性質に優れた長尺中空部品を得ることができる。
本発明の一実施形態における水冷装置の側面図である。 図1に対し90度方向を変えて見た水冷装置の側面図である。 載台が位置する案内架台の天板部分の平面図である。 載台が位置する案内架台の天板部分の平面図である。 長尺筒状部材の測温個所を示す破断概略側面図である。 長尺筒状部材の、各部の温度の経時変化を示すグラフである。
図1において、冷却水槽内に案内手段としての案内架台1が設置してあり、案内架台1は上下方向へ延びるレール部材たるガイドレール11を備えている。すなわち、案内架台1は冷却水槽の底面B上に位置する四角形の底板12を備えており、その板面の各辺中間の四箇所に90度間隔でガイドレール11が立設されている。各ガイドレール11は長方形断面(図3参照)の長尺板体で、その上端は冷却水の液面La近傍の上方に位置して水平な天板13の下面に接合されている。天板13は底板12と略同形の四角形で、内周部には略四角形の開口131(図3)が形成されている。
冷却水の液面La近くには上記ガイドレール11に囲まれて載台2が位置している。載台2は一側面が開放した四角筒状の案内筒21(図2)の上端に八角形の支持板22(図4)を接合したもので、案内筒21の上下端部外周にはガイドローラ23が設けられて、各ガイドローラ23がそれぞれその外方に位置するガイドレール11の内側面に摺接させられている。これにより、載台2はガイドレール11に案内されて上下方向へ移動可能となっている。なお図1では、案内筒21周囲のガイドローラ23は図示を省略してある。
天板13の下面にはその周方向の四箇所に、板面の対角線に沿った方向へ各一対のプーリ14A,14Bが隣接して設けられてそれぞれ回転自在に天板13に支持固定されている。そして、これらプーリ14A,14Bに懸架された4本のワイヤ部材15(図1に2本を示す)の各一端が、案内筒21の中間位置に設けたフランジ26の周方向の四箇所にそれぞれ連結されている。
ワイヤ部材15はプーリ14A,14Bを経て下方へ向きを変え、その下端は冷却水中に配設された一対のウエイト体3A,3Bの両端部にそれぞれ連結されている。これにより、ウエイト体3A,3Bの自重を受けて載台2は、通常は図1に示す上端位置にあり、この上端位置では載台2の支持板22は冷却水の液面La近くの上方に位置している。なお、ウエイト体3A,3Bを併せた重量は、以下に説明する長尺中空部品の重量よりも軽くなるように設定されている。
上記支持板22の上面内周部には周方向の四箇所にガイド板24が突設されて天板13の開口131を経て上方へ進出している(図4)。ガイド板24に囲まれた支持板22の上面中心部には、円弧断面をなして上方へ突出する冷却水供給手段を構成するノズル25が形成されている。ノズル25の中心には冷却水噴出孔251が形成されており、当該噴出孔251は、案内筒21内に位置する冷却水供給管41(図2)の一端(上端)開口に連通している。冷却水供給管41は上下方向から水平方向へ屈曲して、その他端は案内筒21の側面開放口を経て筒外へ延び、図略の冷却水供給ポンプに至る冷却水供給ホース42に連結されている。
水冷を行う場合には、加熱された長尺中空部品、本実施形態では長尺の筒状部品5(図2参照)を、吊り部材6で起立姿勢に吊った状態でその下端開口を、上端位置にある載台2の、ガイド板24によって囲まれた中心に位置するノズル25に合致させる(図1)。なお、長尺筒状部品5には上端部に図2に示すように、吊り部材6の吊り具を係止するための吊り穴51と、長尺筒状部品5を横断貫通して筒内空間(中空空間)52と連通する冷却水排出孔53が形成されている。
この状態で、冷却水供給ホース42、冷却水供給管41およびノズル25の冷却水噴出孔251を経て長尺筒状部品6の下端開口からその筒内に冷却水を噴出供給しながら吊り部材6を下降させると、これに伴い長尺筒状部品5の自重で載台2もガイドレール11に案内されつつ冷却水中を下降する。これにより、長尺筒状部品5はその下端から漸次冷却水中に浸漬され、その外周面と、冷却水が噴出供給されている筒内周面が同時に冷却水で冷却される。長尺筒状部品5の筒内に供給された冷却水は筒内空間52を上昇して途中で蒸気になることなく液状態で冷却水排出孔53から筒外へ排出される。
以上の水冷装置を使用して水冷処理した長尺筒状部品につき、図5に示すように、下端開口に近い下端部の外周領域(図中A点)および内周領域(図中B点)と、下端開口から遠い位置にある軸部の内周領域(図中C点)について水冷工程での温度変化を調査した。A点〜C点における温度の経時変化をそれぞれ図6の線X、Y,Zで示す。なお、図5中の線X´、Y´、Z´は筒内に冷却水を供給しない従来の水冷工程での、上記A点〜C点における温度の経時変化を示すものである。
図6より明らかなように、冷却水への長尺筒状部品5の浸漬開始と同時に当該部品5の筒内空間52へ冷却水が供給されるから、部品軸部の内周領域での温度低下(線Z)が、従来(線Z´)に比して速やかに行なわれる。この結果、外周領域(下端部の外周領域と同様で線Xで代表される)の冷却速度に対する内周領域の冷却速度の差が従来よりも十分小さく抑えられて、部品軸部での残留応力の発生が小さくなり、機械的性質に優れた長尺筒状部品を得ることができる。
なお、長尺筒状部品5の下端部においてもその内周領域での温度低下(線Y)が速やかに行われるようになり、下端部外周領域(線X)の冷却速度に対する当該内周領域の冷却速度の差が小さく抑えられて、部品下端部においても残留応力の発生が小さく抑えられる。
本発明の対象とする長尺中空部品は必ずしも筒状である必要はない。また、載台は駆動手段によって昇降駆動されるものであっても良い。
1…案内架台(案内手段)、11…ガイドレール(レール部材)、2…載台、25…ノズル(冷却水供給手段)、251…冷却水噴出孔(冷却水供給手段)、3A,3B…ウエイト体、41…冷却水供給管(冷却水供給手段)、42…冷却水供給ホース(冷却水供給手段)、5…長尺筒状部品(長尺中空部品)、52…筒内空間(中空空間)。

Claims (3)

  1. 冷却水槽内に貯留された冷却水の液面近傍上方に待機して、起立姿勢で供給された長尺中空部品の下端が載置される載台と、載台を冷却水中へ案内する案内手段と、前記載台に連結されてこれに載置された前記長尺中空部品の下端開口からその中空空間内へ冷却水を供給する冷却水供給手段とを備える長尺中空部品の水冷装置。
  2. 前記載台に、前記冷却水供給手段を構成し前記長尺中空部品の下端開口に臨む冷却水噴出孔が形成されている請求項1に記載の長尺中空部品の水冷装置。
  3. 前記案内手段は冷却水槽内に立設されたレール部材を備えており、前記載台は前記レール部材に沿って上下動可能であるとともに、前記長尺中空部品の重量よりも軽いウエイトの自重を受けたワイヤ部材によって上昇端へ引き上げられている請求項1又は2に記載の長尺中空部品の水冷装置。
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