JP2011253627A - 燃料電池用電極触媒およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電効率、出力、および信頼性の高い燃料電池を得ることができる燃料電池用電極触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】カーボン担体上に、層状のニオブを主成分とする酸化物から剥離した薄片粒子と、貴金属元素を含む触媒粒子とが担持された燃料電池用電極触媒;カーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程と、薄片粒子担持カーボン担体に触媒粒子を担持させる工程とを有する製造方法;カーボン担体に触媒粒子が担持した触媒粒子担持カーボン担体を得る工程と、触媒粒子担持カーボン担体に薄片粒子を担持させる工程とを有する製造方法;薄片粒子に触媒粒子が担持した触媒粒子担持薄片粒子を得る工程と、カーボン担体に触媒粒子担持薄片粒子を担持させる工程とを有する製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用電極触媒およびその製造方法に関する。
近年、固体高分子形燃料電池の高性能化が進み、電気自動車用電源、家庭用コージェネレーションならびに携帯機器用電源等への応用が期待されている。該燃料電池には、発電効率の向上、出力の向上および信頼性の向上等が求められており、それに伴って、燃料電池の電極の触媒層に含ませる電極触媒にも、高い活性および安定性が求められている。
該電極触媒としては、貴金属元素(白金元素等。)を含む触媒粒子を、比表面積の大きなカーボン担体に担持した電極触媒が用いられている。
しかし、該電極触媒には、下記の問題がある。
(i)触媒粒子がカーボン担体の表面で凝集しやすい。触媒粒子が凝集すると、触媒粒子の反応面積が減少してしまい、電極触媒の活性が低下する。
(ii)カーボン担体が酸化劣化しやすい。カーボン担体が酸化劣化すると、触媒粒子がカーボン担体から遊離し、電極触媒の活性が低下する。
カーボン担体の酸化劣化が抑えられた電極触媒としては、下記の電極触媒が提案されている。
(1)触媒粒子が担持された金属酸化物粒子(シリカ粒子等。)を、カーボン担体に担持した燃料電池用電極触媒(特許文献1)。
(1)の電極触媒においては、下記の問題がある。
(i)触媒粒子が金属酸化物粒子の表面で凝集しやすい。触媒粒子が凝集すると、触媒粒子の反応面積が減少してしまい、電極触媒の活性が低下する。
(ii)触媒粒子と導電体であるカーボン担体との間に、粒子径の大きい金属酸化物粒子が介在するため、触媒粒子とカーボン担体との間の導電性が低下し、燃料電池としての出力が低下する。
カーボン担体自体の耐久性を高めた電極としては、たとえば、下記の電極が提案されている。
(2)カーボンブラックまたは活性炭を加熱処理することで黒鉛化度を高め酸化耐性の向上を試みた燃料電池用電極(特許文献2)。
(2)の電極においては、1000℃以上の高温下でカーボン粉末を熱処理することにより黒鉛化度を上げることで耐食性を高めているが、カーボン粉末の比表面積が低下するため白金を高分散担持することができない。
カーボンの代わりに酸化物を担体とすることにより、カーボン担体に直接白金を担持した場合に生ずる担体の酸化を抑制できるが、通常、酸化物の比表面積をカーボン担体並みに大きくすることは困難であり、さらに、酸化物の粒子径をカーボンブラック並みに小さくすることも困難が多い。多くの場合、電極触媒の安定性を向上することはできても、活性を上げることは容易ではないが、NbOをカーボンブラック上に担持した後、白金を担持した場合、通常のカーボン担体に白金を担持した電極触媒の3倍の活性が得られることが報告されている(特許文献3、非特許文献1)。機能発現の理由は、NbOが白金の電子構造に影響を与え、白金表面の酸化を抑制するためとされているが、ニオブの価数から見て燃料電池作動条件での安定性が不明である。一方、Nbをカーボンブラック上に担持した後、白金を担持した場合には通常のカーボン担体に白金を担持した場合よりも活性は低下している。いずれの酸化物の場合も、既に述べたように、酸化物の微粒子化、高比表面積化が困難である。
特開2004−363056号公報 特開2002−273224号公報 米国特許出願公開第2006/023675号明細書
佐々木弘太郎、「固体高分子形燃料電池用の低白金量電極触媒材料の開発」、FC EXPO 2007、特別招待講演、FC−1、p.21
本発明は、発電効率、出力、および信頼性の高い燃料電池を得ることができる燃料電池用電極触媒およびその製造方法を提供する。
本発明の燃料電池用電極触媒は、カーボン担体上に、層状のLaNbまたはCaNb10から剥離した薄片粒子と、貴金属元素を含む触媒粒子とが担持されたものであることを特徴とする。
前記触媒粒子は、白金元素を含むことが好ましい。
前記薄片粒子の厚さは、10nm以下であることが好ましい。
前記薄片粒子子中の金属元素と前記触媒粒子中の貴金属元素との原子比(薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素)は、0.01〜5であることが好ましい。
本発明の燃料電池用電極触媒においては、前記カーボン担体上に、金または金合金のナノ粒子またはナノシートがさらに担持されていてもよい。
前記金または金合金のナノ粒子の粒子径は、1〜50nmであることが好ましい。
前記金または金合金のナノシートの厚さは、1〜10nmであることが好ましい。
本発明は、前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程と、前記薄片粒子担持カーボン担体に前記触媒粒子を担持させる工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程と、前記薄片粒子担持カーボン担体に前記触媒粒子の前駆体を担持させる工程と、前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記カーボン担体に前記触媒粒子が担持した触媒粒子担持カーボン担体を得る工程と、前記触媒粒子担持カーボン担体に前記薄片粒子を担持させる工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記カーボン担体に前記触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持カーボン担体を得る工程と、前記前駆体担持カーボン担体に前記薄片粒子を担持させる工程と、前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記薄片粒子に前記触媒粒子が担持した触媒粒子担持薄片粒子を得る工程と、前記カーボン担体に前記触媒粒子担持薄片粒子を担持させる工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記薄片粒子に前記触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持薄片粒子を得る工程と、前記カーボン担体に前記前駆体担持薄片粒子を担持させる工程と、前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程とを有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法を提供する。
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程の前または後に、前記カーボン担体または薄片粒子担持カーボン担体に、金または金合金のナノ粒子またはナノシートを担持する工程をさらに有していてもよい。
本発明の燃料電池用電極触媒は、発電効率、出力、および信頼性の高い燃料電池を得ることができる。
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、発電効率、出力、および信頼性の高い燃料電池を得ることができる燃料電池用電極触媒を製造できる。
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の一例を示す概略断面図である。
本明細書においては、式(2)で表される化合物を化合物(2)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
<電極触媒>
本発明の燃料電池用電極触媒は、カーボン担体上に、層状のLaNbまたはCaNb10(以下、層状のニオブを主成分とする酸化物という。)から剥離した薄片粒子と、貴金属元素を含む触媒粒子とが担持された電極触媒である。なお、本発明においては、カーボン担体上に薄片粒子を介して触媒粒子が間接的に担持されている場合、およびカーボン担体上に触媒粒子を介して薄片粒子が間接的に担持されている場合についても、カーボン担体上に薄片粒子と触媒粒子とが担持されているものとする。
(カーボン担体)
カーボン担体としては、カーボンブラック(ケッチェンブラック等。)等が挙げられる。カーボン担体は、アモルファス性の高いカーボン担体であってもよく、グラファイト化度の高いカーボン担体であってもよい。
カーボン担体の比表面積は、10〜2000m/gが好ましく、100〜1000m/gがより好ましい。カーボン担体の比表面積が100m/g以上であれば、触媒粒子が、分散性よく担持され、電極触媒の活性が向上する。カーボン担体の比表面積が1000m/g以下であれば、ミクロ細孔の発達が抑えられ、触媒粒子がミクロ細孔内に入り込むことなく、触媒粒子を有効に活用できる。ミクロ細孔内に入り込んだ触媒粒子は、イオン交換樹脂と接触できず、反応に寄与できない。
カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置を用い、カーボン担体の表面への窒素吸着によって測定される。
(触媒粒子)
触媒粒子は、貴金属元素を含む粒子である。
触媒粒子としては、貴金属の粒子、または貴金属合金の粒子が好ましい。
貴金属としては、白金が好ましい。貴金属合金としては、白金合金が好ましい。
白金合金としては、白金と;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、銅、銀および金からなる群から選ばれる元素の1種以上との合金が挙げられる。
触媒粒子の粒子径は、1〜20nmが好ましく、2〜10nmがより好ましい。触媒粒子の粒子径が該範囲内であれば、充分に高い活性を有する電極触媒が得られる。
触媒粒子の粒子径は、X線回折(XRD)法によって測定される。
触媒粒子の金属表面積(金属分散度)は、20〜300m/gが好ましく、50〜200m/gがより好ましい。触媒粒子の金属表面積が300m/gを超えると、触媒粒子の安定性が低下するほか、粒子径の小さすぎる触媒粒子は却って電極触媒の活性を低下させるとの報告もある。触媒粒子の金属表面積が20m/g未満では、電極触媒の活性が低くなる。
触媒粒子の金属表面積は、一酸化炭素(CO)吸着法によって測定される。
触媒粒子の担持率は、電極触媒(100質量%)中、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。触媒粒子の担持率が5質量%以上であれば、電極触媒の活性が向上する。触媒粒子の担持率が80質量%以下であれば、触媒粒子が凝集しにくく、電極触媒の活性が向上する。
触媒粒子の担持率は、触媒粒子を酸で溶解し、溶出イオンの濃度を測定することにより求めることができる。
(薄片粒子)
薄片粒子は、層状のニオブを主成分とする酸化物から剥離した、形状異方性(たとえば、厚さ1nm以下、一辺の長さ数百nm。)を有するニオブを主体とする酸化物のナノシートである。出発物質である当該の層状のニオブを主成分とする酸化物としては、構造式Mn−1Nb3n+1で表され、層間にアルカリ金属(カリウム、セシウム、ルビジウム)を含むものが適用できる。テトラブチルアンモニウムのような4級アンモニウム塩の水溶液中に分散することで、層間のアルカリ金属と置換して、ナノシートに剥離できる。
薄片粒子は、層状のニオブを主成分とする酸化物を剥離して得られるもので、バルクを持たない全てが表面の極薄の薄片粒子である。したがって、極めて大きな比表面積が得られ、高担持率での触媒粒子の担持が可能となるとともに、触媒粒子との強い相互作用が期待できる。全てが表面である薄片粒子は、その上に担持する触媒粒子の電子構造に大きな影響を与えることが可能である
薄片粒子の厚さは、10nm以下が好ましく、5nm以下が特に好ましい。薄片粒子の厚さが10nm以下、特に5nm以下であれば、触媒粒子とカーボン担体との間の導電性が向上し、触媒特性が向上する。
薄片粒子の厚さは、薄片粒子の前駆体である層状のニオブ主成分とする酸化物をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより求めることができるが、直接的には、薄片粒子の分散液に、水溶液中で安定な固体物質(たとえば、石英ガラス板、シリコンウェハー、マイカ板、グラファイト板、アルミナ板等。)を充分に洗浄したものを浸漬し、純水で洗浄した後、乾燥して、固体物質の表面に薄片粒子の単層を形成し、該薄片粒子の厚さを、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定できる。
薄片粒子の担持率は、カーボン担体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.02〜50質量部がより好ましく、0.1〜 50質量部がさらに好ましい。薄片粒子の担持率が0.01質量部以上であれば、カーボン担体の酸化劣化が充分に抑えられる。薄片粒子の担持率が50質量部以下であれば、触媒粒子とカーボン担体との間の導電性を低下させにくい。
薄片粒子の担持率は、薄片粒子をフッ酸等で溶解した液をICP発光分析法で定量することにより求めることができる。
前記薄片粒子中の金属元素と前記触媒粒子中の貴金属元素との原子比(薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素)は、0.01〜5が好ましく、0.05〜1がより好ましい。薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素(原子比)が0.01以上、特に0.05以上であれば、カーボン担体の酸化劣化抑制効果がえられる。薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素(原子比)が5以下であれば、触媒粒子とカーボン担体との間の導電性の低下が抑えられる。
薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素(原子比)は、蛍光X線法により求めることができる。また、より詳細には、電極触媒を、適当な酸(たとえば王水等。)等で溶解した液をICP発光分析法で定量することにより求めることができる。
薄片粒子は、公知の方法(たとえば、特開2003−260368に記載の方法等。)により製造できる。
まず、公知の方法にて層状のニオブを主成分とする酸化物である層状ニオブ酸塩を得る。
ついで、層状ニオブ酸塩と、アンモニウム化合物またはアミン化合物の水溶液と混合、撹拌し、薄片状の結晶を剥離、分散させることにより、ニオブを主成分とする酸化物の薄片粒子の分散液を得る。
層状ニオブ酸塩としては、KLaNb、KCaNb10等が挙げられる。
アンモニウム化合物としては、テトラブチルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物等が挙げられる。
アミン化合物としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、1−アミノ−2−エタノール、1−アミノ−3−プロパノール等が挙げられる。
撹拌方法としては、機械的に撹拌する方法、超音波照射により撹拌する方法等が挙げられる。
(金または金合金のナノ粒子またはナノシート)
カーボン担体上に薄片粒子および触媒粒子を担持することで、高活性で高安定な電極触媒が得られるが、さらに、金または金合金(ただし、白金は含まない。)のナノ粒子またはナノシートを担持することによって、薄片粒子に金または金合金が接触し、白金または白金合金を含む触媒粒子の安定性や活性をさらに向上でき、一層高い触媒特性が得られる。
金または金合金のナノ粒子の粒子径は、1〜50nmが好ましく、1〜20nmがより好ましい。粒子径が50nmを超えると、金または金合金の比表面積が小さくなる。粒子径が1nm未満では、安定性が不充分となる。
金または金合金のナノシートの厚さは、1〜10nmが好ましい。厚さが10nmを超えると、金または金合金の比表面積が小さくなる。厚さが1nm未満では、安定性が不充分となる。
金合金は、安定性を確保する点から、金を20質量%以上含むことが好ましい。合金成分としては、パラジウム、ロジウム、銀、銅、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウムが好適である。
<電極触媒の製造方法>
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法としては、下記の方法(I)〜方法(VI)が挙げられる。
(方法(I))
方法(I)は、下記の工程(I−1)、(I−2)を有する方法である。
(I−1)カーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程。
(I−2)薄片粒子担持カーボン担体に触媒粒子を担持させて燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(I−1):
薄片粒子の分散液と、カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して薄片粒子担持カーボン担体を得る。
撹拌方法としては、機械的に撹拌する方法、超音波照射により撹拌する方法等が挙げられる。
沈澱物の回収方法としては、混合液を静置し、上澄み液と沈澱物とに分離した後、上澄み液を除去する方法;混合物をろ過する方法等が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(I−2):
触媒粒子のコロイド液と、薄片粒子担持カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒を得る。
触媒粒子のコロイド液の分散媒としては、水、アルコール等が挙げられる。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
(方法(II))
方法(II)は、下記の工程(II−1)〜(II−3)を有する方法である。
(II−1)カーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程。
(II−2)薄片粒子担持カーボン担体に触媒粒子の前駆体を担持させて燃料電池用電極触媒の前駆体を得る工程。
(II−3)触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換して燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(II−1):
工程(II−1)は、工程(I−1)と同様に行う。
工程(II−2):
触媒粒子の前駆体の溶液と、薄片粒子担持カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒の前駆体を得る。
触媒粒子の前駆体とは、還元することにより触媒粒子となる化合物である。触媒粒子の前駆体としては、溶媒に溶解できるものを用いる。具体的な触媒粒子の前駆体としては、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、ジニトロジアンミン白金エタノール溶液、塩化白金酸、塩化白金酸塩等が挙げられる。
触媒粒子の前駆体の溶液の溶媒としては、水、アルコール等が挙げられる。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(II−3):
触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換する方法としては、ギ酸、エタノール、メタノール、アミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、水素等による還元等が挙げられる。
たとえば、ヒドラジン等の水溶液で供給できるものは、濃度0.1〜40質量%の水溶液として供給できる。水素化ホウ素ナトリウムなどの固体はそのまま供給できる。水素等の常温でガス状の物質は、バブリングで供給できる。
(方法(III))
方法(III)は、下記の工程(III−1)、(III−2)を有する方法である。
(III−1)カーボン担体に触媒粒子が担持した触媒粒子担持カーボン担体を得る工程。
(III−2)触媒粒子担持カーボン担体に薄片粒子を担持させて燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(III−1):
触媒粒子担持カーボン担体を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。
(a)触媒粒子のコロイド液と、カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液とし、混合液から沈澱物を回収し、沈澱物を乾燥して触媒粒子担持カーボン担体を得る方法。
(b)触媒粒子の前駆体の溶液と、カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液とし、混合液から沈澱物を回収し、沈澱物を乾燥して前駆体担持カーボン担体とし、前駆体を触媒粒子に変換して触媒粒子担持カーボン担体を得る方法。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換する方法としては、工程(II−3)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(III−2):
薄片粒子の分散液と、触媒粒子担持カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
(方法(IV))
方法(IV)は、下記の工程(IV−1)〜(IV−3)を有する方法である。
(IV−1)カーボン担体に触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持カーボン担体を得る工程。
(IV−2)前駆体担持カーボン担体に前記薄片粒子を担持させて燃料電池用電極触媒の前駆体を得る工程。
(IV−3)触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換して燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(IV−1):
触媒粒子の前駆体の溶液と、カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して前駆体担持カーボン担体を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(IV−2):
薄片粒子の分散液と、前駆体担持カーボン担体またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒の前駆体を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(IV−3):
工程(IV−3)は、工程(II−3)と同様に行う。
(方法(V))
方法(V)は、下記の工程(V−1)、(V−2)を有する方法である。
(V−1)薄片粒子に触媒粒子が担持した触媒粒子担持薄片粒子を得る工程。
(V−2)カーボン担体に触媒粒子担持薄片粒子を担持させて燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(V−1):
触媒粒子担持薄片粒子を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。
(a)触媒粒子のコロイド液と、薄片粒子の分散液とを混合し、撹拌して混合液とし、混合液から沈澱物を回収し、沈澱物を乾燥して触媒粒子担持薄片粒子を得る方法。
(b)触媒粒子の前駆体の溶液と、薄片粒子の分散液とを混合し、撹拌して混合液とし、混合液から沈澱物を回収し、沈澱物を乾燥して前駆体担持薄片粒子とし、前駆体を触媒粒子に変換して触媒粒子担持薄片粒子を得る方法。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換する方法としては、工程(II−3)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(V−2):
カーボン担体またはその分散液と、触媒粒子担持薄片粒子またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
(方法(VI))
方法(VI)は、下記の工程(VI−1)〜(VI−3)を有する方法である。
(VI−1)薄片粒子に触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持薄片粒子を得る工程。
(VI−2)カーボン担体に前駆体担持薄片粒子を担持させて燃料電池用電極触媒の前駆体を得る工程。
(VI−3)触媒粒子の前駆体を触媒粒子に変換して燃料電池用電極触媒を得る工程。
工程(VI−1):
触媒粒子の前駆体の溶液と、薄片粒子の分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して前駆体担持薄片粒子を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(VI−2):
カーボン担体またはその分散液と、前駆体担持薄片粒子またはその分散液とを混合し、撹拌して混合液を得る。
混合液から沈澱物を回収した後、沈澱物を乾燥して燃料電池用電極触媒の前駆体を得る。
撹拌方法、沈澱物の回収方法としては、工程(I−1)における方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、80〜300℃が好ましい。
工程(VI−3):
工程(VI−3)は、工程(II−3)と同様に行う。
(金または金合金のナノ粒子またはナノシートの担持)
金または金合金のナノ粒子またはナノシートを担持させる場合、前述した方法(I)〜(VI)のうち、方法(I)または(II)において、カーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程の前または後に、金または金合金のナノ粒子またはナノシートを担持させることが好ましい。具体的には、以下のように行うことができる。
方法A:
工程(I−1)または工程(II−1)によりカーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得た後、金または金合金のナノ粒子コロイド溶液と混合して、金または金合金のナノ粒子を担持させる。これを水洗後80〜300℃で乾燥させた後、工程(I−2)または工程(II−2)、(II−3)を行う。
方法B:
工程(I−1)または工程(II−1)によりカーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得た後、金または金合金の元素を含む金属塩をカーボン担体上に担持し、還元して、金または金合金のナノ粒子を担持させる。これを水洗後80〜300℃で乾燥させた後、工程(I−2)または工程(II−2)、(II−3)を行う。
方法C:
工程(I−1)または工程(II−1)によりカーボン担体に薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得た後、金または金合金のナノシートの分散液と混合して、金または金合金のナノシートを担持させる。これを水洗後80〜300℃で乾燥させた後、工程(I−2)または工程(II−2)、(II−3)を行う。
方法D:
カーボン担体と金または金合金のナノ粒子コロイド溶液とを混合して、カーボン担体上に金または金合金のナノ粒子を担持させる。これを水洗後80〜300℃で乾燥させた後、工程(I−1)または工程(II−1)により薄片粒子を担持させる。さらに、工程(I−2)または工程(II−2)、(II−3)を行う。
方法E:
カーボン担体と金または金合金のナノシートの分散液とを混合して、カーボン担体上に金または金合金のナノシートを担持させる。これを水洗後80〜300℃で乾燥させた後、工程(I−1)または工程(II−1)により薄片粒子を担持させる。さらに、工程(I−2)または工程(II−2)、(II−3)を行う。
金の融点は1063℃と低く、析出基体との相互作用が弱い場合や金合金中の金含量が多い場合には微粒子を得ることが困難な場合が多い。そのため、特に数nmの小さい粒子径の金または金合金のナノ粒子を担持させる場合は、金または金合金のナノ粒子を溶液中に分散させたコロイド粒子を用いることが有効である。粒子径が10nmを超えるナノ粒子を担持させる場合は、金または金合金を構成する元素を含む塩をカーボン担体上に担持して還元する方法が適用できる。薄片粒子を担持した後では金または金合金を構成する金属塩を担持した後に還元することで、粒径が10nm以下のナノ粒子を形成することが可能である。
なお、金属コロイドや薄片粒子には通常保護剤が含まれるが、保護剤は酸による洗浄、硫酸等の適当な電解質溶液中での電解酸化、または空気中での酸化等、保護剤の種類により適宜処理することで特性を調整できる。
以上説明した本発明の燃料電池用電極触媒にあっては、下記の理由から発電効率、出力、および信頼性の高い燃料電池を得ることができる。
(i)触媒粒子の間に層状のニオブを主成分とする酸化物の薄片粒子が介在することによって、触媒粒子の凝集が抑制され、電極触媒の活性が低下しにくい。そして、電極触媒の活性および安定性が高ければ、燃料電池の発電効率、出力、および信頼性も高くなる。
(ii)触媒粒子とカーボン担体との間に層状のニオブを主成分とする酸化物の薄片粒子が介在することによって、カーボン担体の酸化劣化が抑えられる。その結果、触媒粒子のカーボン担体からの遊離が抑えられ、電極触媒の活性が低下しにくい。そして、電極触媒の活性および安定性が高ければ、燃料電池の発電効率、出力、および信頼性も高くなる。
(iii)触媒粒子とカーボン担体との間に介在する層状のニオブを主成分とする酸化物の薄片粒子はたいへん薄いため、従来の、比較的粒子径の大きい球状の金属酸化物粒子に比べ、触媒粒子とカーボン担体との間の導電性を低下させにくい。その結果、燃料電池の出力が低下しにくい。
(iv)触媒粒子と層状のニオブを主成分とする酸化物の薄片粒子が接触することにより触媒粒子が安定化するため、触媒粒子が溶解しにくくなると考えられる。
(v)金または金合金のナノ粒子またはナノシートをあらかじめ担持する場合は、金または金合金のナノ粒子またはナノシートを安定化させるとともに、薄片粒子を介して電子が触媒粒子に供与され、触媒粒子の活性および安定性が増加すると考えられる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、空気が供給されるカソードの触媒層の電極触媒に用いることが好ましい。また、本発明の燃料電池用電極触媒は、水素が供給されるアノードの触媒層の電極触媒に用いてもよい。
<膜電極接合体>
図1は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)の一例を示す概略断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で介在する電解質膜15とを具備する。
(触媒層)
触媒層11は、電極触媒およびイオン交換樹脂を含む。
触媒層11は、少なくとも一方の触媒層11が本発明の燃料電池用電極触媒を含むことが好ましく、カソード14の触媒層11が本発明の燃料電池用電極触媒を含むことがより好ましく、両方の触媒層11が本発明の燃料電池用電極触媒を含むことが特に好ましい。
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/グラム乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/グラム乾燥樹脂が特に好ましい。
イオン交換樹脂としては、耐久性の点から、イオン性基を有する含フッ素重合体が好ましい。イオン性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基等が挙げられる。
イオン性基を有する含フッ素重合体としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)が好ましく、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、スルホン酸基を有する繰り返し単位とを有する共重合体(以下、共重合体Hと記す。)が特に好ましい。スルホン酸基を有する繰り返し単位としては、下式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
Figure 2011253627
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
共重合体Hは、TFEおよび−SOF基を有するモノマーの混合物を重合して前駆体ポリマーFを得た後、前駆体ポリマーF中の−SOF基をスルホン酸基に変換することにより得られる。−SOF基のスルホン酸基への変換は、加水分解および酸型化処理により行われる。
−SOF基を有するモノマーとしては、化合物(2)が好ましい。
CF=CF(OCFCFX)−O−(CF−SOF ・・・(2)。
ただし、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1であり、XはFまたはCFである。
化合物(2)としては、化合物(2−1)〜(2−3)が好ましい。
CF=CFO(CFSOF ・・・(2−1)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF ・・・(2−2)、
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOF ・・・(2−3)。
ただし、q、r、sは1〜8の整数であり、tは1〜3の整数である。
電極触媒とイオン交換樹脂との比(電極触媒/イオン交換樹脂)は、導電性および撥水性の点から、0.4/0.6〜0.95/0.05(質量比)が好ましく、0.6/0.4〜0.8/0.2(質量比)がより好ましい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層12としては、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散層は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)等によって撥水処理されていることが好ましい。
(カーボン層)
アノード13およびカソード14は、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層(図示略)を有していてもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボン層は、カーボンと非イオン性含フッ素重合体とを含む層である。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1〜1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
非イオン性含フッ素重合体としては、PTFE等が挙げられる。
(電解質膜)
電解質膜15としては、イオン交換樹脂の膜が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、触媒層11のイオン交換樹脂と同様のものが挙げられる。
電解質膜15は、補強材を含んでいてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、PTFE、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
<固体高分子形燃料電池>
膜電極接合体と、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータとを交互に積み重ね、いわゆるスタックを構成することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂とを混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例1〜10は実施例であり、例11〜14は比較例である。
(薄片粒子の厚さ)
希釈した薄片粒子の分散液をシリコンウェハー上に滴下し、純水で洗浄した後乾燥して形成された単層の薄片粒子の厚さを、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した。
(触媒粒子の粒子径)
触媒粒子の粒子径は、XRD装置(リガク製、RINT−2100)を用い、XRD法によって測定した。X線の回折線幅を解析するために、XRDデータ解析ソフトとしてJADEを用い、得られる主ピークと隣接するピークとが形成する基底ラインをベースラインとして、半価幅を求めた。回折角2θは、たとえば白金に対しては34〜46度の範囲で走査した。
(触媒粒子の金属表面積)
触媒粒子の金属表面積(金属分散度)は、CO吸着法によって測定した。具体的には、パルス吸着装置(日本ベル社製、BEL−CAT)を用い、30mgの触媒粒子をヘリウム、酸素、ヘリウム、水素、ヘリウムの順に流通ガスで前処理を施した後、ヘリウムをキャリアガスとしてCOをパルス状に供給し、排出ガス中のCO量が一定になるまでのパルス数から吸着水素量を計算して、触媒粒子の金属表面積を求めた。
(触媒粒子の担持率)
触媒粒子の担持率は、触媒粒子を酸で溶解して得た金属塩の液をICP発光分析法で定量し求めた。
(薄片粒子中のニオブ元素と触媒粒子中の貴金属元素との原子比)
カーボン担体に担持された、薄片粒子中のニオブ元素と触媒粒子中の貴金属元素との原子比(ニオブ/貴金属)は、王水で溶解して得た金属塩の液をICP発光分析法で定量し求めた。
(電極触媒の活性)
電極触媒をフッ素系溶剤(旭硝子社製、AE−3000)とHPLC用テトラヒドロフラン(THF)との混合溶媒(1:1質量比)中に分散させた分散液を、回転電極装置(北斗電工社社製、HR−301)に附属の回転リングディスク電極のGC(グラッシーカーボン)ディスク上に、マイクロピペットを用いて滴下、乾燥し、電極触媒をできるだけ均一に堆積した。該回転リングディスク電極を60℃、0.5M硫酸水溶液中にセットし、窒素を吹き込んだ。最初に、回転リングディスク電極の表面を清浄化するために、500mV/sの掃引速度で、0.05〜1.2V(RHE基準)の間を40回掃引した。ついで、酸素を吹き込んだ後、1.2Vから0.05Vに向けて、0.5mV/sの掃引速度で掃引して還元電流を測定した。回転数:1000rpm、電位:0.8V(vs. RHE)における単位白金量当たりの電流値を、電極触媒の酸素還元活性とした。該電流値が高ければ、触媒活性は高く、それを用いた燃料電池の発電効率および出力(出力電流×出力電位)は高いことが期待される。
(電極触媒の安定性)
窒素を吹き込んだ、60℃、0.5M硫酸水溶液中で、前記電極触媒を担持した回転リングディスク電極の電位を0.05V〜1.2V(vs. RHE)の間で300回繰り返し掃引した。その後、酸素を吹き込んだ0.5M硫酸水溶液中で、回転数:1000rpm、電位:0.8V(vs. RHE)の条件下に電流値を測定した。単位白金量当たりの電流値を、電極触媒の酸素還元活性とした。該電流値が高ければ、電極触媒の安定性が高いといえ、燃料電池の信頼性も高いといえる。
〔例1〕
層状ランタンニオブ酸化物(LaNb)は、酸化ランタンと酸化ニオブを約1:2のモル比で混合粉砕して容器に入れ、電気炉中で約1100℃にて10時間焼成して得た。
テトラブチルアンモニウム水溶液に、LaNbを加え、室温で1週間反応させることで0.4質量%のニオブ酸化物の薄片粒子の分散液を得た。薄片粒子の厚さは約2nmであった。
薄片粒子の分散液の7mLに、カーボンブラック(三菱化学社製、ケッチェンブラック、BET比表面積:800m/g。)の0.5gを入れ、超音波照射下で1時間撹拌した。上澄み液を除去した後、回収された沈澱物を150℃で乾燥し、薄片粒子担持カーボン担体を得た。
ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(石福金属興業社製)からロータリーエバポレータを用いて60℃で硝酸を除去した後、適当量のエタノールを添加して、ジニトロジアンミン白金エタノール溶液を調製した。薄片粒子担持カーボン担体の0.5gをエタノール中に入れ、超音波照射下で30分間撹拌してから、白金量として0.5gを含むジニトロジアンミン白金エタノール溶液を添加し、超音波を30分間照射したのち、ゆっくり乾燥して、電極触媒の前駆体を得た。電極触媒の前駆体を電気炉に入れ、水素を10体積%含む窒素ガスを流しながらゆっくりと加熱して200℃まで昇温した。2時間保持した後、加熱を停止し、70℃まで温度が下がったら、アルゴンガスに切り替えて、充分に時間が経過した後、電気炉より取りだして電極触媒を得た。
電極触媒における白金粒子の粒子径は2.7nmであり、白金粒子の金属表面積は75m/gであった。また、白金粒子の担持率は、48.1質量%であり、担持されたニオブ/白金(原子比)は、0.07であった。
該電極触媒について、活性およびその安定性を評価した。結果を表1に示す。
〔例2〕
層状ニオブ酸化物(CaNb10)は、酸化カルシウムと酸化ニオブを約4:3のモル比で混合粉砕して容器に入れ、電気炉中で約1100℃にて10時間焼成して得た。
テトラブチルアンモニウム水溶液に、CaNb10を加え、常温で1週間反応させることで0.4質量%のニオブ酸化物の薄片粒子の分散液を得た。薄片粒子の厚さは約2nmであった。
カーボンブラック(三菱化学社製、ケッチェンブラック:BET比表面積:800m/g。)の0.5gをエタノール中に入れ、超音波照射下で30分間撹拌してから、白金量として0.5gを含むジニトロジアンミン白金エタノール溶液を添加し、超音波を30分間照射したのち、ゆっくり乾燥して、前駆体担持カーボン担体を得た。前駆体担持カーボン担体を電気炉に入れ、水素を10体積%含む窒素ガスを流しながらゆっくりと加熱して200℃まで昇温した。2時間保持した後、加熱を停止し、70℃まで温度が下がったら、アルゴンガスに切り替えて、充分に時間が経過した後、電気炉より取りだして白金粒子担持カーボン担体を得た。
薄片粒子の分散液の5mLに、白金粒子担持カーボン担体の0.03gを入れ、超音波照射下で1時間撹拌した。上澄み液を除去した後、回収された沈澱物を80℃で乾燥し、電極触媒を得た。
電極触媒における白金粒子の粒子径は2.9nmであり、白金粒子の金属表面積は73m/gであった。また、白金粒子の担持率は、49質量%であり、担持されたニオブ/白金(原子比)は、0.07であった。
該電極触媒について、活性およびその安定性を評価した。結果を表1に示す。
〔例3〕
例1と同様にして、薄片粒子担持カーボン担体を得た。薄片粒子担持カーボン担体の0.1gを、パラジウム濃度10質量%の硝酸パラジウム溶液(石福金属興業社製)の0.23mLと白金濃度10質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液(石福金属興業社製)の0.43mLとの混合溶液に漬し、さらに超純水の1.36mLを添加し、混合後室温で乾燥した。その後、さらに90℃で乾燥し、電極触媒の前駆体を得た。電極触媒の前駆体を水素気流中200℃で3時間還元した。触媒粒子の担持率は39.3質量%であり、白金とパラジウムの組成比は1:0.98であり、触媒粒子の粒子径は2.5nmであった。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例4〕
例1と同様にして調製した薄片粒子の分散液の5mLを10分の1に希釈し、これに白金粒子担持カーボン担体(田中貴金属工業社製、TEC1050E、白金粒子の担持率:50質量%)の50mgを混合、乾燥して、電極触媒を得た。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例5〕
例1と同様にして調製した薄片粒子の分散液の5mLを10分の1に希釈し、これに白金−パラジウム合金粒子担持カーボン担体(E−TEK社製、白金:パラジウム(原子比)=1:1、触媒粒子の担持率:30質量%)の50mgを混合、乾燥して、電極触媒を得た。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例6〕
例1と同様にして調製した薄片粒子の分散液の5mLを10分の1に希釈し、これに白金−コバルト合金粒子担持カーボン担体(田中貴金属工業社製、TEC36E52、白金:コバルト(原子比)=3:1)の50mgを混合、乾燥して、電極触媒を得た。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例7〕
金コロイド溶液(粒子径:10nm、金濃度:60ppm)の170mLに、例1と同様にして調製した薄片粒子担持カーボン担体の60mgを含む分散液の25mLを添加し、撹拌、混合して、金ナノ粒子を担持させた。水洗後、120℃で乾燥した。金ナノ粒子−薄片粒子担持カーボン担体を、白金を1質量%含むジニトロジアンミン白金エタノール溶液の30mLに入れ、撹拌した後、35℃で減圧乾燥して、白金塩を担持させた。ついで、水素中、200℃、2時間の条件で還元し、電極触媒を得た。該電極触媒の白金粒子の担持率は29.8質量%であり、白金粒子の粒子径は2.2nmであった。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例8〕
金コロイド溶液(粒子径:10.5nm、金濃度:60ppm)の170mLに、カーボンブラック(バルカンXC−72R、BET比表面積:約240m/g。)の50mgを入れ、撹拌、混合して、金ナノ粒子を担持させた。水洗後、120℃で乾燥した。金ナノ粒子担持カーボン担体を例7で用いたものと同様の、薄片粒子を0.04質量%含む分散液の25mLに添加し、撹拌、混合して、薄片粒子を担持させた。洗浄後、120℃で乾燥した。金ナノ粒子−薄片粒子担持カーボン担体に、例7と同様にして、白金粒子を担持させ、電極触媒を得た。該電極触媒の白金粒子の担持率は29.6質量%であり、白金粒子の粒子径は2.4nmであった。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例9〕
例1と同様にして調製した薄片粒子の分散液の5mLを10分の1に希釈し、これにカーボンブラック(ケッチェンブラック、BET比表面積:800m/g。)の100mgを入れ、撹拌、混合した。塩化金酸の1mmol/L水溶液の100mLを添加して超音波を印加した。さらに炭酸ナトリウム水溶液を添加し、pH9に調製して静置した。水素化ホウ素ナトリウム水溶液を適量添加して、還元した。超純水で洗浄した後、120℃で乾燥した。金ナノ粒子−薄片粒子担持カーボン担体をFE−SEMで観察したところ、形成された金ナノ粒子の粒子径は数nm以下であった。金ナノ粒子−薄片粒子担持カーボン担体に例7と同様にして、白金粒子を担持させ、電極触媒を得た。該電極触媒の白金粒子の担持率は29.5質量%であり、白金粒子の粒子径は2.6nmであった。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例10〕
金−パラジウム合金コロイド溶液(粒子径:8nm、貴金属濃度:60ppm)の170mLにカーボンブラックの50mgを入れ、撹拌、混合して、金合金ナノ粒子を担持させた。水洗後、120℃で乾燥した。金合金ナノ粒子担持カーボン担体を例7で用いたものと同様の、薄片粒子を0.04質量%含む分散液に添加し、撹拌、混合して、薄片粒子を担持させた。洗浄後、120℃で乾燥した。金合金ナノ粒子−薄片粒子担持カーボン担体に例7と同様にして、白金粒子を担持させ、電極触媒を得た。該電極触媒の白金粒子の担持率は29.7質量%であり、白金粒子の粒子径は2.1nmであった。該電極触媒を例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
〔例11〕
エタノール中にカーボンブラック(ケッチェンブラック、BET比表面積:800m/g。)の0.4gを分散し、白金量として0.37gを含む例1と同様にして調製したジニトロジアンミン白金エタノール溶液を添加して、超音波照射下で30分間撹拌した。例1と同様に乾燥して電極触媒の前駆体を得た。
電極触媒の前駆体を電気炉に入れ、水素を10%含む窒素気流中、徐々に温度を上げ、200℃に2時間保持した。加熱を停止し、70℃に下がったら、窒素ガスを流して、冷却し電極触媒を得た。
電極触媒における白金粒子の粒子径は3nmであり、白金粒子の金属表面積は86m/gであった。また、白金粒子の担持率は、48質量%であった。
該電極触媒について、活性およびその安定性を評価した。結果を表1に示す。
〔例12〕
カーボンブラック(ケッチェンブラック)に白金−コバルト合金からなる触媒粒子を担持させた白金−コバルト担持カーボン粒子(田中貴金属工業社製、TEC36E52、白金:コバルト(原子比)=3:1)を例1と同様の条件で評価した。結果を表1に示す。
〔例13〕
カーボンブラック(ケッチェンブラック)に白金−コバルト合金からなる触媒粒子を担持させた白金−コバルト担持カーボン粒子(田中貴金属工業社製、TEC36E52、白金:コバルト(原子比)=3:1(原子比))を、クリーニングおよび酸素還元活性評価において、電位の掃引幅を0.05V〜1.0Vとする他は例1と同様の条件で評価した。結果を表1に示す。
〔例14〕
カーボン担体として、2000℃で熱処理したケッチェンブラックを用いた以外は、例11と同様にして白金粒子を担持させた。白金粒子の担持率は47質量%であり、白金粒子の粒子径は3.2nmであった。例1と同様にして特性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2011253627
本発明の燃料電池用電極触媒は、活性が高くおよび安定性に優れていることから、該電極触媒を用いた燃料電池は、発電効率、出力および信頼性等が高い。該燃料電池は、電気自動車用電源、家庭用コージェネレーションならびに携帯機器用電源等として有用である。
10 膜電極接合体
11 触媒層
12 ガス拡散層
13 アノード
14 カソード
15 電解質膜

Claims (14)

  1. カーボン担体上に、
    層状のLaNbまたはCaNb10から剥離した薄片粒子と、
    貴金属元素を含む触媒粒子と
    が担持された、燃料電池用電極触媒。
  2. 前記触媒粒子が、白金元素を含む、請求項1に記載の燃料電池用電極触媒。
  3. 前記薄片粒子の厚さが、10nm以下である、請求項1または2に記載の燃料電池用電極触媒。
  4. 前記薄片粒子中の金属元素と前記触媒粒子中の貴金属元素との原子比(薄片粒子中の金属元素/触媒粒子中の貴金属元素)が、0.01〜5である、請求項1〜3いずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
  5. 前記カーボン担体上に、金または金合金のナノ粒子またはナノシートがさらに担持されている、請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
  6. 前記金または金合金のナノ粒子の粒子径が、1〜50nmである、請求項5に記載の燃料電池用電極触媒。
  7. 前記金または金合金のナノシートの厚さが、1〜10nmである、請求項5に記載の燃料電池用電極触媒。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程と、
    前記薄片粒子担持カーボン担体に前記触媒粒子を担持させる工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程と、
    前記薄片粒子担持カーボン担体に前記触媒粒子の前駆体を担持させる工程と、
    前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記カーボン担体に前記触媒粒子が担持した触媒粒子担持カーボン担体を得る工程と、
    前記触媒粒子担持カーボン担体に前記薄片粒子を担持させる工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記カーボン担体に前記触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持カーボン担体を得る工程と、
    前記前駆体担持カーボン担体に前記薄片粒子を担持させる工程と、
    前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  12. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記薄片粒子に前記触媒粒子が担持した触媒粒子担持薄片粒子を得る工程と、
    前記カーボン担体に前記触媒粒子担持薄片粒子を担持させる工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
    前記薄片粒子に前記触媒粒子の前駆体が担持した前駆体担持薄片粒子を得る工程と、
    前記カーボン担体に前記前駆体担持薄片粒子を担持させる工程と、
    前記前駆体を前記触媒粒子に変換する工程と
    を有する、燃料電池用電極触媒の製造方法。
  14. 前記カーボン担体に前記薄片粒子が担持した薄片粒子担持カーボン担体を得る工程の前または後に、
    前記カーボン担体または薄片粒子担持カーボン担体に、金または金合金のナノ粒子またはナノシートを担持する工程をさらに有する、請求項8または9に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
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