JP4037814B2 - 燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、触媒粒子担体用の繊維状カーボンを用いた燃料電池用膜-電極接合体及び燃料電池に関する。
燃料電池は、二酸化炭素のエミッションが少なく、環境負荷の少ない発電技術として近年大きく注目されている。
従来の燃料電池の電極構造は、カソード用集電体/カソード電極(空気極)/イオン導電性物質であるプロトン電解質/アノード電極(燃料極)/アノード用集電体という積層構造によって燃料電池スタックである膜-電極接合体が構成されている。この燃料電池においては、アノード電極側に供給される水素ガスなどの燃料が、電極中に含まれている触媒によって分解・イオン化され、水素イオンとしてプロトン電解質を経由してカソード電極側に移動し、カソード電極に供給される空気中の酸素と結合して水を生成する。この反応における水素イオンのアノード電極からカソード電極への移動によって発電が行われ、カソード集電体及びアノード集電体から電流を取り出すことができる。
この電極反応において、プロトンと電子の拡散の抵抗をそれぞれ低減することは、電極の効率、つまり、燃料電池全体の効率を向上させるために重要な要素である。
一般に電極の構造は、燃料電池用触媒である遷移金属の微粒子を、導電性物質であるカーボン上に担持して、集電板上に積層したものが採用されている。この触媒担体であるカーボンとしては、粒子状のものを使用することが多いが、カーボン粒子間が機械的に接触するのみで、抵抗が大きく、電極効率を大きく取れないという問題があった。また、同時に、電極内の空間配置が十分でないため、ガスの拡散が不充分で効率が悪いという問題もあった。さらに、燃料電池用触媒粒子が、カーボン粒子同士の接触部にも存在して、燃料との反応に、関与しないものが多く、触媒の一部が無駄になるという問題もあった。
これらの問題を解決するためには、カーボンを粒子状体から繊維状体に代えることが有効と考えられるようになってきている。
ところで、従来のカーボン繊維は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバーに代表されるように、直径が100nm以下の微細なもの、または、VGCFのような直径が100〜1000nmのもの、活性炭素繊維のような直径が1μmを超えるものなどが知られている。
触媒の担持体として用いる場合、微細な触媒を高密度に担持させることができ、かつ、担持体同士の間に適当な空間を維持できるようなものが求められてきた。
しかし、比表面積の大きな活性炭素繊維は、直径が数μm以上と太く嵩張るため担体としては適用が困難である。また、VGCFカーボンは直径が百数十nmと適当なサイズであるが、表面への触媒担持が困難で、触媒担持体として不向きである。
また、新材料として注目されているカーボンナノチューブは、比表面積は数百m2/g以上と大きいものもあるが、数nmから数10nmと非常に微細であるため、電極を作製する際に空間を塞いでしまい、好ましくない。
カーボンナノチューブよりややサイズの大きな材料として、グラファイトナノファイバ
ーがあるが、直径が100nm以下であるために、電極作製という点で困難である。
このグラファイトナノファイバーのこのような形態は、その合成用触媒の形態に大きく依存する。従来の方法では、共沈法等により作製した微細な触媒前駆体を出発原料として、合成直前の触媒粒径が粒成長により1μmと大きく、これが合成中に細分化するために微細なカーボンが生成するものと考えられている。
我々は、特許文献1(特開2002−200052公報)に記載の通り、触媒担時能力が高く、空気極としての構造形成に優れたカーボンナノファイバーを実現できた。表面だけではなく、内部に触媒を担持させたカーボンナノファイバーも記載されている。しかしながら、燃料極に使用する担持体は粒子状のカーボンであり、しかも触媒は表面にしか担持されていない。このような構造では、燃料極と空気極で夫々選ばれるカーボン材料の相互マッチング、及びこのカーボン材料中での触媒の分散・密度等が適切ではなく、燃料や空気の拡散が困難で、触媒の利用効率が極めて悪く、低出力であり、エネルギー変換効率の高い燃料電池を作製することができない問題があった。
特開2002−200052公報
従来の燃料電池は、燃料極と空気極でのカーボン繊維の最適構造が異なり、例えば燃料極に使用する担持体は粒子状のカーボンであり、しかも触媒は表面にしか担持されていない。このような構造では、燃料や空気の拡散が困難で、触媒の利用効率が極めて悪く、低出力であり、エネルギー変換効率の高い燃料電池を作製することができない問題があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、燃料極側、空気極側に対して各々、触媒担体として理想的なカーボン繊維と、カーボン繊維中での触媒の分布状態を理想的な構造にすることで、高出力で、エネルギー変換効率が高い燃料電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、請求項1の燃料電池用膜−電極接合体は、第1の繊維状カーボンおよび第1の燃料電池用触媒を有する燃料極と、この燃料極に第1 の面が隣接して形成される固体高分子膜と、この固体高分子膜の第1の面と対向する第2の面に隣接して形成され第2の繊維状カーボンおよび第2の燃料電池用触媒を有する空気極とを具備する燃料電池用膜−電極接合体において、前記第1の繊維状カーボンは、前記第1の燃料電池用触媒が内部よりも表面に高密度で担持され、かつ前記第2の繊維状カーボンは、前記第2の燃料電池用触媒を表面および内部に均一に担持されることを特徴とする。ここでの表面であるが、第1の繊維状カーボンの表面を中心に内外の領域を称するもので、表面上を含み、表面よりも内部に入った領域も含む。
請求項2の燃料電池用膜−電極接合体は、請求項1において、前記第1の繊維状カーボンの比表面積が100m /g以下10m /g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が200m /g以上600m /g以下であることを特徴とする。
請求項3の燃料電池用膜−電極接合体は、請求項1において、前記第1の繊維状カーボンの比表面積が90m /g以下15m /g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が250m /g以上450m /g以下であることを特徴とする。
請求項4の燃料電池は、第1の繊維状カーボンおよび第1の燃料電池用触媒を有する燃料極と、この燃料極に第1の面が隣接して形成される固体高分子膜と、この固体高分子膜の第1の面と対向する第2の面に隣接して形成され第2の繊維状カーボンおよび第2の燃料電池用触媒を有する空気極とを具備する燃料電池において、前記第1の繊維状カーボンは、前記第1の燃料電池用触媒が内部よりも表面に高密度で担持され、かつ前記第2の繊維状カーボンは、前記第2の燃料電池用触媒を表面および内部に均一に担持されることを特徴とする。
請求項5の燃料電池は、請求項4において、前記第1の繊維状カーボンの比表面積が100m /g以下10m /g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が200m /g以上600m /g以下であることを特徴とする。
請求項6の燃料電池は、請求項4において、前記第1の繊維状カーボンの比表面積が90m /g以下15m /g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が250m /g以上450m /g以下であることを特徴とする。
請求項7の燃料電池は、請求項4において、前記燃料極の平均気孔径および気孔率が前記空気極の平均気孔径および気孔率より小さく、前記燃料極および空気極の平均気孔径が0.1μm以上5μm以下であり、前記燃料極および空気極の気孔率が30%以上であることを特徴とする。
請求項8の燃料電池は、請求項4において、第1及び第2の燃料電池用触媒は、Pt、Pd、Ni、Au、Ru、Rh、Ir、Os、Pd、Mo、Mn、W、Ta、及びSnから選ばれる金属単体或いは金属単体相互間の合金から選ばれる事を特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、燃料や空気の拡散が容易で、同時に触媒の利用効率が極めて高く、高出力で、エネルギー変換効率の高い燃料電池を作製することができる。
燃料電池の出力を向上し、燃料および空気の有効利用率を向上させる場合、燃料極側および空気極側の電極内の燃料および空気の拡散を均一にすばやく行う電極構造が必要となる。また、液体を燃料に用いる燃料電池、特にメタノール直接改質型燃料電池の場合、燃料極で消費せずにプロトン導電膜を通過するメタノールの影響、クロスオーバーと呼ばれる現象が問題となる。
電極内の燃料の拡散を向上させる場合、電極層内の気孔率と気孔径を制御することが必要となる。通常使用されている粒子状カーボンのみを用いた場合、電極層内の密度が高く、燃料の拡散が悪い上に、電極層を塗布した際に電極に割れが生じ、その割れ部分に選択的に燃料が浸透し電極反応が不均一になるという問題があった。しかし、繊維状カーボンを効果的に用いて電極層内の拡散を向上させた場合には、電極の割れも生じず、燃料極の電極層内に均一に燃料が浸透し、反応が均一に起きる。また、反応速度をより高めるために、繊維状カーボンの表面にのみ燃料電池用触媒を担持させ、効率的に電極反応を進められる。
しかし、燃料極の拡散が向上すると、クロスオーバーも高くなり、燃料利用効率が低下するという問題も生じる。そこで、燃料極側の電極には、担持するカーボンナノファイバー径を選択したり粒子状カーボンを担持体として使用した触媒などを混合するなどして、電極層内の気孔率、気孔径を制御し、クロスオーバー量を低減させることも出来る。
空気極側に用いる繊維状カーボンは、比表面積が高く、内部まで気孔が発達しているカーボンナノファイバーを用いることが効果的である。なぜなら、燃料電池用触媒を内部にも担持させられ、更に繊維状カーボン内への空気の拡散が高く、電極反応がより多くのサイトで起きることが必要だからである。
燃料極側でも空気極側でも、カーボンナノファイバー内の気孔はガスの拡散経路となり得る。これは、燃料極側では発生した炭酸ガスの排出経路となり得るし、空気極側では空気中の酸素の経路となる。特に空気極側では内部細孔にまで触媒が担持されているために、反応サイトとなり、実質上電極内の単位体積辺りの触媒量が増加することとなり、出力向上を実現できる。
また、燃料側の電極に、クロスオーバー量が少ないと考えられる、密度の高い電極を用いた場合には、空気極側の電極も、少量の触媒量で反応効率が高い構造である必要がある。その場合には、カーボンナノファイバーの表面にのみ燃料電池用触媒が担持されているほうが高出力を得られる場合がある。その際には、燃料極側に用いた、比表面積の低いカーボンナノファイバーを、空気極側に用いることも可能である。
燃料電池電極用複合材料は、カーボンナノファイバー、触媒材料、プロトン伝導物質、を主構成物質とし、難還元性無機材料粉末を含んでも良い。
燃料極側に用いられる繊維状カーボンの比表面積は、100m /g以下10m /g以上、空気極側に用いられる繊維状カーボンの比表面積は、200m /g以上600m /g以下である。より好ましくは、燃料極側に用いられる繊維状カーボンの比表面積は、90m /g以下15m /g以上、空気極側に用いられる繊維状カーボンの比表面積は、250m /g以上450m /g以下である。
燃料電池用触媒材料は、Pt、Pd、Ni、Au、Ru、Rh、Ir、Os、Pd、Mo、Mn、W、Ta、Snなどから選ばれる金属または合金等が上げられる。PEM、DMFC等の場合には、PtまたはPtRu合金等の貴金属を主成分とする合金元素が挙げられる。
これらの触媒はカーボンナノファイバー表面に均一に、10nm以下の大きさで分散していることが好ましい。
プロトン伝導物質は、パーフルオロスルホン酸重合体のようなイオン交換樹脂が用いられる。このような物質としては、デュポン社から発売されているナフィオン(商標名)が知られている。
また、燃料電池電極用複合材料を用いた燃料電池電極の場合、表面に触媒が担持されたカーボンナノファイバーからなる骨格に、プロトン伝導物質を含浸したもの等を挙げることができる。プロトン伝導物質は、前記骨格の表面を被覆した形態で存在することが好ましい。
燃料極側の電極層の平均気孔径が空気極側の電極層の平均気孔径より小さく、どちらの平均気孔径も0.1〜5μmであり、どちらの気孔率も50%以上であることが好ましい。
燃料極側の繊維状カーボンの製造方法が、A=(繊維状カーボン合成用触媒の単位体積当たりの触媒重量、mg/cm )、B=(繊維状カーボンを合成する際の炭化水素の導入量、ml/min)、C=(全導入ガス流量、ml/min)、D=(合成用の炉の断面積、cm )としたときに、
A×B×D/C < 2.5×10 −4 (mg・min/cm
で、さらに炭化水素ガスの導入時間が1時間以上である条件で合成することを特徴とする繊維状カーボンを用いることが好ましい。
以下に本発明実施の形態について詳細に説明する。
<カーボンナノファイバー合成用触媒の作製>
本実施の形態における第1工程は、カーボンナノファイバー成長用触媒の作製である。
カーボンナノファイバー成長用の触媒(以下CNF合成触媒と略称する)としては、Ni,Fe,Coの少なくとも一つからなる金属から構成されるもので、さらに、Cu,Ag,Mn等の金属元素が合金化されていても良い。
これらの金属成分に関しては、例えば文献(J.Mater.Res.,vol.8,No.12(1993)3233)に詳細に記述されているが、出願2002−93233に、酸子を添加する方法においては、特にニッケルと銅の1:1の合金が長さ、比表面積の点から優れたカーボンナノファイバーを製造できるため好ましいことを見出している。
以下、NiとCuの合金からなるCNF合成触媒を用いる場合を例にとり説明する。
まず、硝酸ニッケル、硝酸銅等の塩をアンモニア等のアルカリを用いて湿式中で中和して合成した、酸化ニッケルと酸化銅粉末を、還元後に目的としたCNF合成触媒組成となるように秤量する。秤量後は前記2種類の粉末に、さらに、平均直径が100nm以下の酸化アルミニウム粉末を添加する。
秤量後の、酸化ニッケル、酸化銅、酸化アルミニウムの3種類の粉末をボールミル等で混合する。混合は、粉末が100nm以下の1次粒子まで粉砕され、また、粉末同士が均一に混合するまで行なう。この工程によりカーボンナノファイバー成長用の触媒粉末の前駆体を作成する。
次いで、前記工程で作成した触媒前駆体である酸化物粉末混合物を、酸化アルミニウム、あるいは酸化シリコン等からなる上皿容器内に入れて、電気炉内に導入し、水素ガスで雰囲気置換を行った後に昇温して、まずより低温で還元される酸化銅を還元し、次いでより高温で還元される酸化ニッケルの順に還元を行なう。還元は純水素雰囲気下でカーボンナノファイバーの成長温度までの昇温過程で行なう。この際、昇温速度は毎分1℃〜10℃の範囲にする事が好ましい。なぜんなら、この条件で触媒の還元・合金化が十分に起こるからである。また、この条件では、触媒の還元・合金化が徐徐に進行することら、酸化アルミ(難還元性無機材料粉末)の分散性が良好となる。
上記工程で酸化アルミニウム粉末を添加する第一の目的は、CNF合成触媒の粒成長を抑制することにある。この酸化アルミニウム粉末の一部が、CNF合成触媒の粒子間に存在して、CNF合成触媒の粒成長を抑制し、最適粒径のCNF合成触媒を合成することができる。すなわち、これにより、CNF合成触媒の一次粒子の粒径も100nm前後に抑制できるとともに、一次粒子が集合して形成する二次粒子の粒径も1000nm以下に抑制することができる。
この酸化アルミニウム粉末の添加量は1〜20体積%が適当である。なぜなら、酸化アルミニウム粉末の添加量が1%以下であると粒成長抑制の効果が少なく、また20%以上だと添加量が過剰になり、電極としての導電性が低下するからである。特に、この酸化アルミニウム粉末が添加されていないと、CNF合成触媒製造過程で合体粒成長を激しく起こし、粒径が1μmを越えてしまい、本発明のカーボンナノファイバーの製造に適しないCNF合成触媒となってしまう。
本実施の形態で用いられる酸化アルミニウム粒子の粒径は、10〜100nmが良く、さらに好ましく10〜50nmが良い。なぜなら、細かい方が粒成長の抑制効果が高いか
らである。また、細かすぎると均一に分散させることが困難になり、好ましくない。
上記触媒前駆体を構成する酸化物粒子の平均1次粒径は10nm〜1000nmであることが好ましく、さらには、30nm〜100nmであることが好ましい。なぜならこの範囲以下の粒子を使った場合、粒成長の抑制効果が少なく、凝集・粒成長
が起こってしまうからである。また、これ範囲以上の粒子を使った場合も、粒子の径が大きくなりすぎる。このような大きな粒子から成長するカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーの成長中に、前記触媒前駆体粒子の細分化が起こり、結果として、平均直径が100nm以下で短いカーボンナノファイバーが多くなり、電極形成に適さないからである。
<カーボンナノファイバーの合成>
第2の工程は、カーボンナノファイバーの合成工程である。
本発明の実施の形態においては、この合成の手段は公知の方法を採用することができるが、簡単で安価なプロセスであることから、熱CVD法が最も好ましい方法である。
この熱CVD法によるカーボンナノファイバーの合成は、次のようにして行われる。
すなわち、上記CNF合成触媒の製造工程に引き続いて、同じ炉を用いて水素ガスを流しながら、炉温をカーボンナノファイバー成長温度にまで加熱する。炉温が成長温度まで上昇したら、炭化水素ガスを主成分とするガスを炉内に供給し、雰囲気ガスを置換して、加熱しながらNi−Cu合金触媒上で炭化水素ガスを分解させてカーボンナノファイバーを析出させる。
この工程により、カーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末からなる混合物が製造される。
この工程において、雰囲気ガスは、エチレン、メタン、アセチレン等のガスと、水素、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスとの混合ガスが好ましい。例えば、エチレン:水素=1:5〜1:10の範囲のものが挙げられる。これらの混合ガスを、毎分10ml〜10l程度の流速で流しながら合成を行なう。また、本発明において、カーボンナノファイバー成長温度は500℃〜1000℃の範囲が適当である。また、合成時間は、10分から10時間の間が望ましい。
この工程によって製造される空気極側用のカーボンナノファイバーは、直径が10〜1000nmでアスペクト比が10以上であって、さらに、比表面積が200m /g以上600m /g以下であり、またその表面には細孔が存在しているものである。この細孔はその平均径が1〜5nmであり、この細孔部分が以後の工程で燃料電池用触媒を効率的に担持するサイトになる。
この工程において、燃料極側のカーボンナノファイバーの合成条件は、以下のように示される。
A=(繊維状カーボン合成用触媒の単位体積当たりの触媒重量、mg/cm )、B=(繊維状カーボンを合成する際の炭化水素の導入量、ml/min)、C=(全導入ガス流量、ml/min)、D=(合成用の炉の断面積、cm )としたときに、
A×B×D/C < 2.5×10 −4 (mg・min/cm
で、さらに炭化水素ガスの導入時間が1時間以上である条件で合成する。
この工程によって製造される燃料極側のカーボンナノファイバーは、直径が10〜1000nmでアスペクト比が10以上であって、さらに、比表面積が100m /g以下であり、またその表面には細孔が存在しているものである。この細孔はその平均径が1〜5nmであり、この細孔部分が以後の工程で燃料電池用触媒を効率的に担持するサイトになる。
さらに、上記本実施の形態のカーボンナノファイバーは、0.5原子%以上の水素原子を含んでいる。これらの水素原子は、この後の、燃料電池用触媒の担持に効果的である。
また、合成されたカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーを構成するグラファイトの結晶のC面が、長手方向に対して45℃以上90℃以下の角度で配向している、いわゆるPlatelet型、Herringbone型である事が好ましい。なぜなら、上記カーボンナノファイバーは、ファイバーの側面表面もしくは側面表面と内部に金属触媒粒子を、微細に高密度に担持することができるからである。
カーボンファイバーを構成するグラファイトの結晶は、六方晶の結晶構造を有しており、C面内の結合力は強く、C軸方向の結合力は弱い。このため、上記Platelet型またはHerringbone型のカーボンナノファイバーにおいては、C面の端部がファイバー側面に位置するため、C面平行方向に凹凸が発達しやすく細孔が形成されやすい。また、同時にC面担部は他の物質に対して強い吸着力を持つため、触媒、または触媒前駆体との親和性の高い物質を有効に吸着させることができる。本発明はさらにこのような効果を利用するものである。
生成するカーボンナノファイバーの型は合成条件により異なる。すなわち、成長速度が遅い場合にはプレートレット(Platelet)型に、また成長速度が速い場合にはヘリングボーン(Herringbone)型が析出する。例えばNi系の成長用触媒を用いる場合、純Ni触媒で、さらに500℃、600℃の低温側でCVDを行なう場合にはプレートレット型が、また、Ni−Cu合金触媒で、700℃の高温側でCVDを行なう場合にはヘリングボーン型が成長しやすい。
さらに、合成されるカーボンナノファイバーは、直径が10nm〜100nmと、100nm〜1000nmの2種類の異なった径を有するカーボンナノファイバーからなる混合体とすることもできる。
このようにして10nm〜1000nmのまでの広い分布径のカーボンナノファイバーを使うことにより、カーボンナノファイバー同士の過剰な凝集を抑制することができる。<燃料電池用触媒担持カーボンナノファイバーの作製>
第3の工程は、前記工程によって得られたカーボンナノファイバーに燃料電池用触媒を担持させる工程である。
以下、Ptを担持触媒として例にとり説明する。
まず、上記工程によって合成されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合物を純水中に投入し、超音波等を使ってファイバーを分散させる。このとき、添加されている酸化アルミニウム粉末が、燃料電池用触媒の分解後、カーボンナノファイバーと分散して存在することにより、カーボンナノファイバー同士の過剰な凝集が抑制される。これが本発明における酸化アルミニウム粉末添加の第二の効果である。
次いで、上記混合物を攪拌しながら煮沸し、その後塩化白金酸等の塩類を加えた後、さらに加熱する。次いで、この混合物に炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のアルカリを加えて弱アルカリ性とした後、加熱を続ける。その後、ろ過し、さらに、純水に入れて煮沸しながら、イオン成分が除去されるまで洗浄する。その後、ろ過してカーボンナノファイバーを溶液中から回収し、乾燥した後、水素含有還元雰囲気中で還元する。このようにして表面にPtの粒子が担持されたカーボンナノファイバーが得られる。
この中和工程の際、溶液のpHを一定に保ち、塩化白金酸などの酸と炭酸水素ナトリウムなどのアルカリを同時に滴下することも出来る。
上記工程において、還元条件は、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。この還元温度が、低すぎるとPtを十分に還元することができず、また高すぎるとPt粒子
同士が合体粒成長を起こすため好ましくない。
また、この燃料電池用触媒担持工程で、CNF合成触媒を、同時に塩化白金酸等の酸性溶液中に溶出させて、アルカリで中和する過程で、Pt等の触媒金属と混合させて析出させることができる。このような混合状態のものを、上記還元条件で水素還元すると、Ptに合金化させることができる。Ni,Fe,Co等のCNF合成触媒金属は、しばしば、Pt等の貴金属と合金化させることにより、触媒の効率が向上することがある。本発明では、このようにCNF合成触媒を、燃料電池用触媒金属に合金化させて有効に利用することもできる。
以上の工程で、燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末とからなる混合物を合成することができる。本実施の形態においては、カーボンナノファイバー表面へのPtの吸着能が高いため、5nm以下の微粒子の状態で、高密度に担持することができる。
<燃料電池用電極の作製>
第4の工程は、多孔質体を用いて、燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合物を薄膜に形成する工程である。
この工程において、多孔質体としては、カーボン、すず酸化物、チタン酸化物や、フッ素樹脂などのプラスチックなどの材料からなる板状、クロス状、フェルト状、ペーパー状の多孔質体を使用することができる。
具体的には、例えば日本カーボン製の厚さが1mm以下のクロスGF−8−P、東レ製カーボンペーパーTGP−H−030、TGP−H−090等、あるいはフッ素樹脂ペーパー(商標名:テフロンペーパー(R))などを挙げることができる。
本発明においては、燃料電池電極として燃料電池を担持したカーボンナノファイバー、酸化アルミニウム粉末、及びイオン導電性物質を導電性支持体上に形成する場合には、
この多孔質体をそのまま使用し導電性支持体を兼用させることもできる。この場合に、クロス状またはフェルト状のカーボンを多孔質体として用いることにより、最終的に変形能を有する電極を作成することが可能となる。
前記工程によって作製された還元後の燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合体を秤量して、純水中に分散させ、カーボンペーパー等の多孔質体上に堆積させる。この際、吸引ろ過法等の方法をとると堆積時間が短縮されるとともに、堆積層も緻密になるので好ましい。
燃料電池用触媒が担持されたカーボンナノファイバーと酸化アルミニウム粉末との混合体の量は、カーボンペーパー等の多孔質体1cm 当り1mg〜10mgの範囲が好ましい。前記量は、単位面積当たりの触媒量から導き出されるものであることが好ましい。
また、カーボンナノファイバーの長さは、燃料極側、空気極側どちらの電極にも、1μm以上のものが少なくとも10%以上含まれることが好ましい。なぜなら、面内方向のネットワークを形成するためには、1μm以上の長さが必要だからである。これ以下の長さになると、面内のネットワークが形成できずにひび割れがおこり、カーボンナノファイバーを主構成材とする電極層を形成することができない。さらに好ましくは、10μm以上のカーボンナノファイバーが50%以上含まれることが好ましい。また、燃料極側の電極には燃料電池用触媒を担持された、もしくは担持されていない粒子状カーボンを混合することも出来る。
この工程において、多孔質体として使うカーボンペーパーは、導電性支持体を用いることなくカーボンナノファイバーを主体とする膜である、いわゆる自立膜を作成する場合、アルコール等の有機溶剤で溶解する物質を被覆しておくことが好ましい。これによって、この多孔質体からカーボンナノファイバー膜を剥離しやすくなる。また、自立膜を作成す
る場合は、カーボンペーパー以外に、テフロン製の多孔質ペーパーを用いることもできる。
堆積後は、室温〜100℃程度の温度で乾燥させる。これによりカーボンペーパー上に燃料電池電極層を形成することができる。
また、カーボンナノファイバー同士はできるだけ分散性良く存在することが好ましい。なぜなら、表面を有効に利用することができ、触媒の性能を最大限に発揮できるからである。このために、カーボンナノファイバーとともに存在する、酸化アルミニウムの100nm以下の酸化物粉末は有効である。なぜなら、この酸化物粉末の存在が、カーボンナノファイバーの分散性を良好にするからである。
ここまでの工程で、カーボンペーパー等の導電性多孔質体をそのまま電極集電体として使う場合は、このままの形で乾燥後、イオン導伝性物質を含浸するが、自立膜を作成する場合は、燃料電池用触媒が担持されているカーボンナノファイバーと、酸化アルミニウム粉末の混合層を多孔質体から剥離する。
最後にイオン導伝物質を含浸する工程を説明する。
この工程は、多孔質体である集電体上に形成されているカーボンナノファイバー層を主構成要素とする電極層と、前記電極層を自立膜として剥離したものと共通である。
イオン導伝性物質としては、プロトンを伝達できる材料であればなんでも良い。具体的には、スルホン酸基を持つフッ素系樹脂(ナフィオン、フレミオン、アシプレックスなど)や、タングステン酸、リンタングステン酸などの無機物が挙げられるが、パーフルオロスルホン酸重合体(デュポン社製:商品名「ナフィオン」(R))が代表的に用いられている。
カーボンナノファイバーが主構成要素である電極層を、パーフルオロスルホン酸重合体溶液中に浸漬して、含浸させる。パーフルオロスルホン酸重合体溶液は、1%〜10%の有機溶剤溶液を用いることが好ましい。
さらに減圧含浸を使うと良い。何故ならファイバー壁面には細孔が発達しており、この中にナフィオンを短時間で効率的に含浸することができる。含浸は、特に限定しないが、低濃度の溶液を用いた場合は、数回行なうことができる。また、この際、含浸の間で乾燥プロセスを挟むこともできる。含浸量は特に規定しないが、パーフルオロスルホン酸重合体の重量が、カーボンナノファイバーの重量に対して10%以上70%以下、さらには15%以上40%以下であることが好ましい。なぜなら、これ以上では、気孔率が低下してしまい、また、これ以下では導伝パスを良好にとれないからである。
電極層は、燃料および空気の拡散を良くするため、一定以上の気孔率および適正な気孔径を有することが好ましい。具体的には、燃料極側の電極層の平均気孔径が空気極側の電極層の気孔径より小さく、どちらの平均気孔径も0.1〜5μmであり、どちらの気孔率も50%以上であることが好ましい。
<燃料電池用膜-電極接合体の作製>
上記のような方法で作製した電極を用いて、プロトン導電性固体膜を、燃料極電極と空気極電極で挟んで、ロールまたはプレスによって熱圧着し、膜-電極接合体を作製することが出来る。
このようにして、液体を燃料に用いる燃料電池において、燃料側の電極が少なくとも燃料電池用触媒を表面にのみ担持した繊維状カーボンとイオン導伝体とで構成され、空気極側の電極が少なくとも燃料電池用触媒を、表面および内部に担持した繊維状カーボンとイオン導伝体とで構成され、燃料極側電極と空気極側電極の間にプロトン導電膜を有している、燃料電池用の膜-電極接合体を作製することが出来る。
以上、本発明の実施の形態においては、CNF合成触媒として、Ni−Cu合金を、また、燃料電池用触媒としてPtを用いた例を示したが、本発明は上記実施の形態において説明した材料を用いることが必須であるわけではなく、他の例示した材料についてもほぼ同等の条件で採用することが可能であり、本発明は上記実施の形態に制限されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
空気極側の電極材料を作製する。
一次粒子の平均粒径が50nmの酸化ニッケルと酸化銅を、還元後のNiとCuの原子比が1対1になるように秤量して、平均粒径が30nmのδ相の酸化アルミニウムを、NiとCuの体積に対して5vol%になるように混合して、原料粉末を作成した。
次いで、酸化ニッケルと酸化銅と酸化アルミニウムの3種類の粉末からなる混合粉末を、アルミナ製のボールと容器からなる遊星ボールミルを使って、2日間混合・粉砕した。
混合後、粉末を石英製のボート内に入れて、管状炉内に導入した。導入後、管状炉内を毎分1000mlの水素とアルゴンの1対1の混合ガスを流して置換し、200℃まで毎分10℃で昇温して、10分間保持した。その後、徐々にガスの混合比を変えて、最終的に毎分1000mlの水素ガス100%として、毎分5℃の昇温速度で700℃まで昇温した。この昇温過程で酸化ニッケルと酸化銅はすべて還元され、また合金化された。
反応炉内が、700℃に到達したところで、水素ガスに100ml/minのエチレンガスを混合して、水素対エチレン混合ガス雰囲気下で熱CVDによりカーボンナノファイバーを成長させた。
この熱CVD工程が完了した後、炉中で冷却して試料を取り出し、重量変化を測定したところ、Ni−Cuからなる触媒に対して重量比で約10倍のカーボンナノファイバーが生成した。
上記カーボンナノファイバー中のNi、Cuを除去するために、塩酸中で熱し、Ni、Cuを溶解し、水洗する。
上記カーボンナノファイバーを電子顕微鏡で観察したところ、ファイバー長手方向に対して、ほぼ45℃でC面が配置している、Herringbone型のカーボンナノファイバーが生成していることが分かった。また、このカーボンナノファイバーは、直径が200〜700nmの範囲で80%以上を占めることが分かった。
また、このカーボンナノファイバーをTCD法で分析したところ、0.7原子%の水素元素を含有することが分かった。また、その灰分の元素分析を行なったところ、酸化アルミニウムが検出された。また、生成したカーボンナノファイバーの比表面積は、300m2/gであった。
燃料極側の電極材料を作製する。
空気極側の電極材料(カーボンナノファイバー)を合成した触媒(Ni、Cu、アルミナ混合粉)を、A=(繊維状カーボン合成用触媒の単位体積当たりの触媒重量、mg/cm )、B=(繊維状カーボンを合成する際の炭化水素の導入量、ml/min)、C=(全導入ガス流量、ml/min)、D=(合成用の炉の断面積、cm )としたときに、
A×B×D/C < 2.5×10 −4 (mg・min/cm
となる条件で、空気極側のカーボンナノファイバーを作製するのと同様の方法で、カーボンナノファイバーを3時間成長させた。
このカーボンナノファイバーの比表面積は90m2/gであった。
次いで、両カーボンナノファイバーをそれぞれ、燃料極側は塩化白金酸と塩化ルテニウム水溶液中に、空気極側は塩化白金酸水溶液に浸析した。塩化白金酸の濃度は、燃料極側がカーボンナノファイバーに対して20wt%、空気極側は30%のPtになるように換算した。その後1時間煮沸した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を約30分間かけて滴下した。滴下後、そのまま2時間還流させた。尚、炭酸水素ナトリウムは塩化白金酸に対して重量で3.2倍の量として、溶液がアルカリ性になるまで滴下した。その後、試料を純水中に移し、さらに煮沸して洗浄した。
次いでカーボンナノファイバーを、乾燥機内に移し、100℃で12時間乾燥させた。この試料を雰囲気炉内に導入して、100%の水素を用いて、200ml/minで流通した雰囲気下で、300℃で1時間還元を行った。
還元後のカーボンナノファイバーを、スライスしTEM観察を行ったところ、(A)燃料極側のカーボンナノファイバー断面1は内部への燃料電池用触媒粒子5の担持がみられなかったが、(B)空気極側のカーボンナノファイバー断面2は内部まで燃料電池用触媒粒子5が浸透し、担持されている様子が観察された(図1)。
カーボンナノファイバー内部の触媒の密度分布を示したもので、横軸を1個の触媒担持カーボンナノファイバーの断面の中心からの距離、縦軸を触媒担時カーボンナノファイバー断面図での単位面積当たりのPt量(密度)として示している。(A)燃料極側に使用したカーボンナノファイバー1および(B)空気極側に使用したカーボンナノファイバー2の断面図をそれぞれ模式的に図2に示した。
図2では、触媒担持カーボンナノファイバーの断面での単位面積当たりのPt量3は、燃料極に使用したカーボンナノファイバー1で表面付近に検出されるPt量(最大値)であり、Pt量4は、同ファイバーでのPt量の最小値である。ここで、第1の繊維状カーボンとしてのカーボンナノファイバー1は、第1の燃料電池用触媒としてのPtが内部よりも表面近傍に高密度で担持されている。さらに、第2の繊維状カーボンとしてのカーボンナノファイバー2は、第2の燃料電池用触媒としてのPtが内部に略均一な密度で担持されている。ここで、カーボンナノファイバー2内のPt量であるが、中心から外周に向けて70%以内の距離内におけるPt量の最大値と最小値の差が10%以内であれば、カーボンナノファイバー2内で略均一な密度を有すると見ることができ、均一な触媒密度を有するカーボンナノファイバー2と同様に取り扱うことができる。
本実施例では、
(Pt量3)=(Pt量4)×(定数a)・・・・・(式2)
という関係が成り立つようにPt担持位置を調整した。実施例1から3までは、(定数a)=10(平均値)という関係が成り立っている。
しかし、(式2)の範囲は、これに限定されるものではなく、(定数a)は
1.5<(定数a)
を満足していれば良く、(Pt量4)=0でも構わない。また、カーボンナノファイバーの径や長さ、種類に限定されるものではない。
還元後、燃料極側の電極は、白金ルテニウムが担持されているカーボンナノファイバーと白金ルテニウムが担持されている粒子状カーボンを水中に混合、分散し、面積10cm の東レ製カーボンペーパーTGP−H−060上に吸引ろ過法を使って、100mgのカーボンナノファイバー、粒子ハイブリッド層を堆積させた。空気極側の電極は、白金が担持されているカーボンナノファイバーを水中に分散させ、面積10cm のカーボンペーパー上に吸引ろ過法を用いて、50mgのカーボンナノファイバー層を堆積させた。
上記工程で還元を行なった試料をTEMで観察したところ、カーボンナノファイバーの壁面に平均粒径2〜3nmのPtの微粒子が、平均で5×1016個/m2付いていた。
次いで、上記カーボンナノファイバー層が形成されているカーボンペーパーを、2%のナフィオン溶液中に減圧浸漬して、ナフィオンを含浸した。含浸後は試料を溶液から引き出し、大気乾燥した。含浸後重量を測定したところ、燃料極側、空気極側各々、30mg、15mgの増量があった。
これにより、パーフルオロスルホン酸重合体が含浸されており、Ptの微粒子が表面に高密度に分散してカーボンナノファイバーと酸化物粒子から構成される電極層を、カーボンペーパーからなる集電板上に形成することができた。
以上のように作製した燃料極用電極と、空気極用電極の間に、パーフルオロスルホン酸重合体膜を挟んで、100℃で、30kg/cm の圧力で、膜電極複合体(MEA)を作成した。
このMEAを使って、燃料電池の評価を行った。評価は試験温度70℃、メタノール燃料濃度0.75mol/l、10cm の単セルに対して、燃料供給速度1ml/min、カソード空気量100、200ml/minで行った。
(実施例2)
燃料極側の電極を構成するカーボンナノファイバーの比表面積が60m /g、空気極側の電極を構成するカーボンナノファイバーの比表面積が500m /gであること以外は、実施例1と同様に作製した電極を用い、評価を行った。
(実施例3)
燃料極側の電極を構成するカーボンナノファイバーの比表面積が100m /g、空気極側の電極を構成するカーボンナノファイバーの比表面積が250m /gであること以外は、実施例1と同様に作製した電極を用い、評価を行った。
(比較例1)
ケッチェンブラックECを、水中に分散させて超音波をつかって30分間分散性を高めた後、実施例1のカーボンファイバー当りの白金量と等しくなるように、塩化白金酸と、塩化ニッケルと、塩化銅の混合水溶液中に浸析して、煮沸して、1時間煮た後、炭酸水素ナトリウム約3mlの水に溶かしたものを約30分間かけて滴下した。滴下後、そのまま2時間還流させた。その後、試料を純粋中に移し、さらに煮沸して洗浄した。洗浄後は試料を、乾燥機内に移し、100℃で12時間乾燥させた。
次いで試料を雰囲気炉内に導入して、100%水素、200ml/minで流した雰囲気下で、300℃で1時間還元を行った。
還元後TEMにて観察を行ったところ、ケッチェンブラック表面に粒径が3〜5nmの粒子がついていることが分かった。
このようにして作成したPt合金が担持されたカーボン粒子を20%のパーフルオロスルホン酸重合体膜溶液と2−エトキシエタノールを加えてスラリー化して、カーボンペーパー上に塗布して乾燥させてカソード電極を作成した。
一方、ケッチェンブラックECを触媒担体として20wt%Pt−Ru触媒を担持したものと、20%パーフルオロスルホン酸重合体膜溶液と、2−エトキシエタノールとからなるスラリーを、カーボンペーパー上に塗布して作成したアノード電極を使って上記カソード電極と、実施例1と同様のプロセスで、パーフルオロスルホン酸重合体膜を挟んでMEAを作製した。
このMEAを使って、実施例1と同じ燃料電池の評価を行ったところ、70℃でそれぞれ、30、40mW/cm の出力が得られた。
(比較例2)
空気極側の電極は、実施例1と同様の方法で作製した。燃料極側の電極に用いるカーボンナノファイバーを、実施例1で空気極側に使用したカーボンナノファイバーを用いること以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価を行った。
(比較例3)
カーボンナノファイバーを、燃料極にも空気極にも、市販されているVGCF(比表面積15m /g)を用いること以外は、実施例1と同様の方法で作製し、評価を行った。
(比較例4)
カーボンナノファイバーを、比表面積3000m /gの活性炭ファイバーを用いること以外は、実施例1と同様の方法で作製し、評価を行った。
なお、表1において、各用語の定義、あるいは測定法は次の通りである。
・ カソード気孔率、気孔径: 電極層をカーボンペーパーから剥離させ、水銀圧入法を用いて気孔径、気孔率を測定。
・ 燃料電池用触媒平均粒径: 透過型電子顕微鏡(TEM)を使い、20〜100万倍の倍率で写真を撮影し、10〜50個の粒子をランダムに選んで粒径を測定し、この操作を5〜10の異なる視野で行なう。
・ 燃料電池用触媒の担持量:担持前後のカーボンナノファイバー重量差より算出
・ 燃料電池触媒組成: TEM―EDX、原子吸光法等の定量性のある分析法
・ 70℃での出力: アノード燃料濃度0.75Mメタノールを毎分1ml/min。カソードは空気を毎分100、200ml/minで送った場合の出力。電極面積が10cm2の単セルで評価。
・エネルギー変換効率=(セル電圧、V)×(電流量、A)/(燃料消費量、g)/(燃 料1gから理論的に取り出せる電力量、6.07)×100
図3には、空気極側カーボンナノファイバーの比表面積と、燃料極側カーボンナノファイバーの比表面積に関して、本特許の範囲を示す。Aゾーン、Bゾーンが本特許の範囲、AゾーンはBゾーンより、出力が高く、エネルギー変換効率が高い高性能な電池が得られるゾーン、Cゾーンは本特許の範囲外となる。
出力は、Air流量が20ml/min/cm のときに、最高性能が70mW/cm 以上であり、エネルギー変換効率が26%以上であることが、本特許の範囲である目安となる。また、Aゾーンは、エネルギー変換効率が29%以上であることがBゾーンとの差である。
この表3から明らかなように、第1の繊維状カーボン(カーボンナノファイバー)の比表面積が90m /g以下15m /g以上であり、第2の繊維状カーボン(カーボンナノファイバー)の比表面積が250m /g以上450m /g以下であることをエネルギー変換効率を高くできる点から良く、更に第1の繊維状カーボン(カーボンナノファイバー)の比表面積が100m /g以下10m /g以上であり、第2の繊維状カーボン(カーボンナノファイバー)の比表面積が200m /g以上600m /g以下であることが望ましい。
本発明の実施例を説明する断面図。 本発明の実施例を説明する図。 本発明の実施例を説明する図。
符号の説明
1 燃料極側のカーボンナノファイバー断面
2 空気極側のカーボンナノファイバー断面
3 Pt量(最大値)
4 Pt量(最小値)
5 燃料電池用触媒粒子

Claims (8)

  1. 第1の繊維状カーボンおよび第1の燃料電池用触媒を有する燃料極と、この燃料極に第1の面が隣接して形成される固体高分子膜と、この固体高分子膜の第1の面と対向する第2の面に隣接して形成され第2の繊維状カーボンおよび第2の燃料電池用触媒を有する空気極とを具備する燃料電池用膜−電極接合体において、前記第1の繊維状カーボンは、前記第1の燃料電池用触媒が内部よりも表面に高密度で担持され、かつ前記第2の繊維状カーボンは、前記第2の燃料電池用触媒が表面および内部に均一に担持されることを特徴とする燃料電池用膜−電極接合体。
  2. 前記第1の繊維状カーボンの比表面積が100m/g以下10m/g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が200m/g以上600m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  3. 前記第1の繊維状カーボンの比表面積が90m/g以下15m/g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が250m/g以上450m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  4. 第1の繊維状カーボンおよび第1の燃料電池用触媒を有する燃料極と、この燃料極に第1の面が隣接して形成される固体高分子膜と、この固体高分子膜の第1の面と対向する第2の面に隣接して形成され第2の繊維状カーボンおよび第2の燃料電池用触媒を有する空気極とを具備する燃料電池において、前記第1の繊維状カーボンは、前記第1の燃料電池用触媒が内部よりも表面に高密度で担持され、かつ前記第2の繊維状カーボンは、前記第2の燃料電池用触媒が表面および内部に均一に担持されることを特徴とする燃料電池。
  5. 前記第1の繊維状カーボンの比表面積が100m/g以下10m/g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が200m/g以上600m/g以下であることを特徴とする請求項4に−記載の燃料電池。
  6. 前記第1の繊維状カーボンの比表面積が90m/g以下15m/g以上であり、前記第2の繊維状カーボンの比表面積が250m/g以上450m/g以下であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
  7. 前記燃料極の平均気孔径および気孔率が前記空気極の平均気孔径および気孔率より小さく、前記燃料極および空気極の平均気孔径が0.1μm以上5μm以下であり、前記燃料極および空気極の気孔率が30%以上であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
  8. 前記第1及び第2の燃料電池用触媒は、PtおよびRuから選ばれる金属単体或いは金属単体相互間の合金から選ばれる事を特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
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