JP2011252654A - 凍結乾燥装置に於ける被乾燥材料の昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗の測定方法及び装置 - Google Patents

凍結乾燥装置に於ける被乾燥材料の昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗の測定方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】解決しようとする課題は、凍結乾燥装置の乾燥庫内に、被乾燥材料を装入して凍結乾燥させるときに、一次乾燥期に個別容器の品温センサー挿入による被乾燥材料の品温を測定・監視を行わず、かつ、コラプス発生の原因となる、乾燥庫内の圧力上昇を生ぜしめずに、乾燥庫内の真空度変化を真空計で測定してデータを収集し、このデータにより被乾燥材料の全体の平均昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗を計算により測定できる計算手段を得る点にある。
【解決手段】凍結乾燥機の主管aに該主管aの開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器Cを設け、事前に昇華負荷Qmと開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求めておき、一次乾燥期に、開度調節器Cを一定時間間隔で、開度を開とする方向に回動させて、その回動の前後における開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctの測定データと関係式とから、被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により測定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、食品・医薬品の原材料液をトレイ、バイアル等の容器に充填して、凍結乾燥装置の乾燥庫内の棚の上に搬入し、それを凍結乾燥により所定の含水率に乾燥させて製品とする凍結乾燥手段において、乾燥プロセスの最適化と監視のために、一次乾燥工程の昇華期における被乾燥物の昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗の測定方法に関するものである。
医薬品の凍結乾燥工程の中で、乾燥プロセスの最適化と監視のために容器内の被乾燥材料の全体の昇華面温度の測定は重要なパラメーターである。凍結乾燥装置の乾燥庫内に被乾燥材料を装入して、凍結乾燥により被乾燥材料を所定の含水率に乾燥させるとき、一次乾燥期における乾燥庫内の被乾燥材料の昇華面温度の測定と監視を行う手段には、まず、第1の手段として、一定形状の多数の容器のそれぞれに被乾燥材料を充填して、乾燥庫内に装入し、庫内の棚段上に並列載架した庫内の全体の被乾燥材料の中で、所望に選択した容器(個別容器)内の被乾燥材料に熱電対を挿入しておき、凍結開始のときから、この熱電対を挿入した個別容器内の被乾燥材料の温度を被乾燥材料が充填された容器が載置される乾燥庫内の棚段の棚温度、乾燥庫内の真空度と同様に、被乾燥材料の品温度として測定し、表示・記録しておき、この選択した個別容器内の被乾燥材料の品温の測定で一次乾燥工程を監視する手段がある。
この手段では、検出される品温は、品温センサーとして挿入した個別容器内の被乾燥材料に挿入した熱電対の挿入部位の温度であり、乾燥庫内の被乾燥材料の全体の品温を反映しない点と、品温センサーとして熱電対を設置する場所が毎回同じとならないことで再現性に難がある点に問題がある。さらに、この個別容器へのセンサー挿入による品温測定は以下の三つの問題が生じてくる。(1)熱電対が挿入された個別容器内の被乾燥材料は薬液の核形成温度と氷晶成長に影響を受け、過冷却度が減少し、平均氷晶サイズの増大が引き起こされる。(2)既乾燥層の水蒸気抵抗の減少により昇華速度が増大し、また品温の測定がなされる容器が、庫内の棚の外側位置にある場合は乾燥庫壁から輻射入熱を受けるので、乾燥速度が異なり、庫内の全体の容器内の被乾燥材料の品温を代表できない。品温センサーを挿入した個別容器の乾燥速度が速いので、この個別容器内の被乾燥材料の品温度が棚温度に接近し温度差がなくなってきたときに一次乾燥終了点として判断すると、特に棚中央部に配置される容器内の被乾燥材料にはまだ氷があり、昇華未了のまま二次乾燥工程に入り、乾燥品が底部コラプス(崩壊)を生じる危険性がある。(3)品温監視用の熱電対線を容器にセットする時に、一般的に人の介在がある。無菌製剤の場合では、半打栓状態の容器は重要プロセスゾーンで取り扱わなければならないのに、そのグレードAの層流の上に身を乗り出して、容器配列の上に覆い被さって品温センサーを取り付けることは問題であるとの指摘が規制当局からされている。その為に、品温センサー挿入のためにグレードAに人が立ち入ることは無菌性に問題があり困難となっている。今日では薬液を充填されて半打栓状態の容器を凍結乾燥装置の棚に移動させる工程について、各国の規制ガイドラインは厳しい規制を打ち出してきている。この扱いは人手による搬送、棚への移載は半打栓容器への汚染の原因を発生させる危険性を指摘しており、半打栓状態の容器を充填機から凍結乾燥装置の棚上に移動させる工程を自動化することが最新技術となっている。しかし、自動ローディング装置では個別容器品温測定ができず、品温測定をしていない。生産立ち上げ段階の3ロットのバリデーション時、個別品温測定を実施し、製品評価により、以後の生産時は棚温度、真空度のパラメーター管理のみで、個別品温記録無しで生産しているのが実体である。
次に、第2の手段には1)、一般的に普及している手段として、凍結乾燥装置Wが、図1にあるように、被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、その乾燥庫DC内の被乾燥材料から発生する水蒸気を凝結捕集するコールドトラップCTとが分離していて、それらが、主管aを介し連通し、その主管aに主弁MVが設けられている形態のものとして構成してある場合に、一次乾燥期に一定間隔毎に主弁MVを十数秒間閉めて、この間の乾燥庫DC内の真空度変化を絶対圧力真空計にて1秒以下の記録速度で記録し、その変化から平均昇華面温度Tsと既乾燥層水蒸気抵抗Rpを計算により測定する手段がある。このMTM(Manometric Temperature Measurement)法は、個別容器品温を測定せずに一次乾燥期における昇華面温度を監視する方法である。
1)Evaluation of Manometric Temperature Measurement as a Method of Monitoring Product Temperature During Lyophilization PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology 51(1),7−16(1977)
この第2の手段は、被乾燥材料を乾燥庫DCの棚に装入し凍結真空乾燥装置を作動させて一次乾燥工程を開始するとき、一定時間間隔で定期的に乾燥庫DCとコールドトラップCTとの間の主弁MVを閉じ、主弁MVで乾燥庫DCをコールドトラップCTとを隔離することで、一時的に、乾燥庫DC内の被乾燥材料から発生する水蒸気のコールドトラップCTへの凝結捕集ができなくなり、昇華した水蒸気により乾燥庫内の圧力が迅速に被乾燥材料の昇華面圧力へ上昇し、その後品温とともに乾燥庫内の真空圧力が上がっていく。この庫内の真空度変化から被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により測定する手段であるが、測定するとき、乾燥庫内の真空度を測定する真空計bは、絶対圧を計る計器を用いなければならず、かつ1秒以内の速い記録速度でデータを収集する必要がある。このMTM法には以下の2つの問題点がある。
(1)主弁MVを全閉することで、乾燥庫内の圧力が被乾燥材料の昇華面圧力以上に上昇し、昇華面温度が被乾燥材料のコラプス温度以上まで上がる時、乾燥品がコラプスして凍結乾燥が失敗する危険性がある。
(2)主弁MVの瞬時開閉が必要であるが、生産機では主弁MVの開閉が数分間かかり、乾燥庫内の真空度変化から平均昇華面温度を計算により測定する方法が複雑となり、また、開閉が遅れると乾燥庫内の真空度が昇華面圧力以上に悪くなることで、乾燥品にコラプスが生じてくる可能性がある。
図2は上記MTM法による凍結乾燥プロセス監視の一例である。材料はSucrose5%水溶液で,一次乾燥期にMTM法により平均昇華面温度を測定し、同時に検証するために棚端部と中央部にバイアル各1本にセンサーを挿入して品温も測定した。また、目標品温に接近させて棚温を調整し、乾燥最適化のテストを行った。一次乾燥期の初期に棚温を−20℃に設定したが、MTM測定での平均昇華面温度は−34℃以下であった。Sucroseのコラプス温度は−32℃であり安全であった。18hr後棚温を0℃まで上げてテストした時、MTM測定では平均昇華面温度Tsが−30℃まで上昇した。この測定事例でMTM法が一次乾燥期の昇華面温度を計測できることを示したが、主弁MVを閉じで30秒間に乾燥庫内の真空度変化により品温が約1〜2℃上がり、もし一次乾燥期の乾燥プログラムから昇華面温度が乾燥品のコラプス温度に近づくと、被乾燥材料にコラプスを生ぜしめる。MTM法は昇華面温度の測定時により品温が2℃上昇するので、被乾燥材料がコラプスする危険性がある。
このように、乾燥庫DC内の真空度変化から、被乾燥材料の平均昇華温度を計算により測定する第2の手段は、棚段上に並列載架する多数の容器から選択した個別容器内の被乾燥材料に熱電対を挿入して品温を測定する手段に比して、全体の容器内の被乾燥材料の品温の測定値を正確なものとするが、計算式作成のためのデータを収集するのに、乾燥庫内の圧力を上昇させることから、それによる品温の上昇で、被乾燥材料の底面の未昇華部分にコラプスを生ぜしめる危険性のあるものである。このことから、このコラプス発生の要因となる乾燥庫の圧力上昇を生ぜしめずに、計算式作成のためのデータを収集して、計算により被乾燥材料の昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗を得られる計測手段が望まれている。
本発明において解決しようとする課題は、凍結乾燥装置の乾燥庫内に、被乾燥材料を装入して凍結乾燥させるときに、一次乾燥期に個別容器の品温センサー挿入による被乾燥材料の品温を測定・監視を行わず、かつ、コラプス発生の原因となる、乾燥庫内の圧力上昇を生ぜしめずに、乾燥庫内の真空度変化を真空計で測定してデータを収集し、このデータにより被乾燥材料の全体の平均昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗を計算により測定できる計算手段を得る点にある。
上述の課題を解決するための手段として、本発明においては、
被乾燥材料を装入する乾燥庫DCとその乾燥庫DCに対し主弁MV付きの主管aにより連通するコールドトラップCTとが装備されている凍結乾燥機による被乾燥材料の凍結乾燥において、乾燥庫DCとコールドトラップCTにそれぞれ絶対圧力の真空計bを組み付け、乾燥庫DCとコールドトラップCTとを連通する主管a内に、該主管aに設けた主弁MVを全開とした状態において該主管aの開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器Cを設け、事前に昇華負荷Qm(Kg/h)と開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求めておき、この開度調節器Cを、一次乾燥期に、一定時間間隔で、開度を開とする方向に回動させて、乾燥庫内の真空度をその真空度が良くなる方向に変化させ、その回動の前後における開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctの測定データと前記関係式とから、被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により測定することを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の昇華面温度の測定方法を提起し、また、
被乾燥材料を装入する乾燥庫DCとその乾燥庫DCに対し主弁MV付きの主管aにより連通するコールドトラップCTとが装備されている凍結乾燥機による被乾燥材料の凍結乾燥において、乾燥庫DCとコールドトラップCTにそれぞれ絶対圧力の真空計bを組み付け、乾燥庫DCとコールドトラップCTとを連通する主管a内に、該主管aに設けた主弁MVを全開とした状態において該主管aの開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器Cを設け、事前に昇華負荷Qm(Kg/h)と開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求めておき、この開度調節器Cを、一次乾燥期に、一定時間間隔で、開度を開とする方向に回動させて、乾燥庫内の真空度をその真空度が良くなる方向に変化させ、その回動の前後における開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctの測定データと前記関係式とから、既乾燥層水蒸気移動抵抗Rpを求める事を特徴とする凍結乾燥装置における既乾燥層水蒸気移動抵抗測定方法を提起し、また、
被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、その乾燥庫DCに対し開度調節用の主弁MV付きの主管aにより連通するコールドトラップCTと、運動稼動を制御する制御盤cと、が装備されている凍結乾燥機において、乾燥庫DCとコールドトラップCTとに、それぞれ絶対圧力の真空計bを組み付け、乾燥庫DCとコールドトラップCTとを連通する主管a内には、該主管aに付設の主弁MVの開度を全開した状態において、主管aの開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器Cを設け、この開度調節器Cの一定時間間隔おいた部分開閉の回動作動の前後における、開度角度θと乾燥庫DCコールドトラップCT内の真空度変化の測定データ及び計算ソフトを、制御盤c内のシーケンサーdに組み込んだことを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の昇華面温度の測定装置を提起し、また、
被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、その乾燥庫DCに対し開度調節用の主弁MV付きの主管aにより連通するコールドトラップCTと、運動稼動を制御する制御盤cと、が装備されている凍結乾燥機において、乾燥庫DCとコールドトラップCTとに、それぞれ絶対圧力の真空計bを組み付け、乾燥庫DCとコールドトラップCTとを連通する主管a内には、該主管aに付設の主弁MVの開度を全開した状態において、主管aの開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器Cを設け、この開度調節器Cの一定時間間隔おいた部分開閉の回動作動の前後における、開度角度θと乾燥庫DCコールドトラップCT内の真空度変化の測定データ及び計算ソフトを、制御盤c内のシーケンサーdのシーケースに組み込んだことを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の既乾燥層水蒸気移動抵抗の測定装置を提起するものである。
この本発明手段は、第2の従来手段として掲示している乾燥庫とコールドトラップとの間を連通する主管に設けた主弁を全閉にして、乾燥庫内の真空度変化を測定し、その測定値から被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により計測し一次乾燥工程を監視する手段を改良した手段である。
即ち、従来手段は、乾燥庫DCとコールドトラップCTとの間を連通する主管に設けた主弁を全閉にして、被乾燥材料から昇華した水蒸気量がコールドトラップCTへ凝結できなくして、乾燥庫内の圧力を上昇させ、その圧力変化から平均昇華面温度を計算により測定することから、乾燥庫内の圧力が昇華面温度の平衡水蒸気圧力以上に上がり、昇華面温度を上昇させることにより、乾燥品にコラプスを凍結材料に融解を生ぜしめるので、昇華面温度を上昇させずに、乾燥庫内の真空度変化から、平均昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗とが計算により測定できるようにする測定手段である。
医薬品の凍結乾燥では、一次乾燥時に乾燥庫内の真空度を制御し、最も安全な乾燥プログラムで凍結乾燥製剤を生産している。その真空度による制御の一つに流路開度調節法があり、乾燥庫DCとコールドトラップCTの間の主管aに開度調節器Cを取り付け、昇華した水蒸気流量に応じて主管の流路面積を円盤板で制限して、図3に真空制御のフローチャートを示しているように、乾燥庫内の真空度を所定値に制御する手段である。
本発明手段は、この流路開度調節法に用いられる乾燥庫DCとコールドトラップCTの間の主管aに取り付けた開度調節器Cの機構を利用し、一次乾燥期に一定時間間隔で真空制御を中断し、開度を開方向へ回転させ、乾燥庫内の真空度が良くなる方向へ変化させ、その真空度変化から被乾燥材料の全体の平均昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗を計算により測定する手段である。
図4に示している実施例より、さらに具体的にいえば、乾燥庫DCとコールドトラップCTとが分離していて、これらが、主弁MVを装備せる主管aを介して連通し、その主管aに開度調節器Cを取り付け、かつ、コールドトラップCTには真空ポンプPに通ずる引口弁Vを装備し、乾燥庫DCとコールドトラップCTとにそれぞれ絶対圧力の真空計bを付設した凍結乾燥装置Wを用い、これの乾燥庫DC内に被乾燥材料を装入し、凍結乾燥装置Wを作動させて、棚温Thを所定の制御値に、乾燥庫DC内の真空度Pdcを開度調節器にて制御値に設定して乾燥するときに、一次乾燥期間に一定時間間隔(0.5hrあるいは1hr)で乾燥庫DC内の真空度が良くなるように、例えば、真空制御設定値を13.3Paから6.7Paへ変化させて、開度調節器Cを開方向へ回転させ、その前後の開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCTの真空度Pctとを記録計eにて記録し、それらの測定データをシーケンサー(PLC)dに取り入れると、被乾燥材料の全体の平均昇華面温度と既乾燥層水蒸気移動抵抗は以下のように計算される。
被乾燥材料の全体の平均昇華面温度Tsと既乾燥層水蒸気抵抗Rpの算出ソフトのデータとしては、(1)乾燥庫内の真空度を変化させた前後の開度角度θ、PdcとPctを入れ、圧力差△Pを計算し、(2)水負荷で測定した主管抵抗R(θ)と開度角度θとの関係から前後の主管抵抗R(θ)値を取り入れ、(3)前後の昇華負荷Qm1=△P1/R1(θ)とQm2=△P2/R2(θ)、C=Qm1/Qm2を計算し、(4)昇華面圧力Ps=(C×Pdc2−Pdc1)/(C−1)、(5)既乾燥層水蒸気移動抵抗Rp=(Ps−Pdc1)/Qm1、(6)クラウジウス・クラペイロンの式により氷の定数を入れて、昇華面温度Ts=6144.96/(28.911−LnPs)−273.15 をそれぞれ求める。
乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aと開度調節器Cとを通して流れる水蒸気の主管抵抗R(θ)は、次の式 R(θ)=(Pdc−Pct)/Qmで計算される。
事前に、水負荷で昇華負荷Qm(Kg/hr)と乾燥庫DC内の圧力PdcとコールドトラップCT内の圧力Pctを測定し、開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求める。具体的には、トレイ底部に品温センサを取り付け、トレイに水を入れ、−40℃まで凍結し、一次乾燥期に棚温Thを所定値に設定して、乾燥庫DC内の真空度を26.7Paから6.7Paまで順次に制御し、各真空制御値の開度調節器の開度角度θを計測し、棚温Thと底部品温Tbを測定し、乾燥庫内の圧力PdcとコールドトラップCT内の圧力Pctとを絶対圧真空計にて記録する。
昇華負荷Qm(Kg/hr)の確定は、昇華前後の重量測定にて昇華量の測定と、入熱量計算からの解析の二つの方法がある。解析では、乾燥庫内の真空度Pdcにて棚からトレイ底部への熱伝達係数αを計算し、次にQ=A*α*(Th−Tb)の計算式でトレイ底部への熱流量を計算し、昇華負荷が氷の昇華潜熱2850KJ/Kgより計算式Qm=Q/2850で求められる。それにより開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式は得られる。
実際に凍結乾燥プログラムを設定して被乾燥材料の凍結乾燥を行う時に、開度調節器Cの角度θ、乾燥庫内の真空度PdcとCT内真空度Pctを計測して記録すれば、水負荷の測定で得られた開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を利用して、一次乾燥期に昇華した水蒸気流量が求められ、昇華速度も計測できる。
従って、凍結乾燥装置の乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aの間に開度調節器Cを取り付け、開度調節器Cの開度角度θも記録に取り入れ、一次乾燥期に、一定時間間隔で乾燥庫真空制御値Pに対して、数十秒間に開度調節器Cの開度を開方向へ回転させ、該開度調節器Cの開度角度θの変化を記録し、同時に乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctの変化を真空計で測定してデータを収集し、これらのデータをシーケンサー(PLC)に取り入れ、本システムで開発した昇華面温度の計算ソフトによって被乾燥材料の全体の平均昇華面温度が計算により測定でき、さらに既乾燥層の水蒸気移動抵抗Rpも求められる。よって個別容器の品温度を測定せずに一次乾燥期の全体の平均昇華面温度の監視と計測手段となる。本発明は、これを課題を解決すべき手段として提起するものである。
本発明手段は、乾燥庫DCとコールドトラップCTの間の主管a内に開度調節弁Cを取り付け、一次乾燥期に一定時間間隔で開度を開方向へ回転させ、乾燥庫DC内の真空度を良くなる方向へ変化させ、その変化から被乾燥材料の全体の平均昇華面温度を計算にて測定するので、乾燥庫DCとコールドトラップCTの間の主管aに設けた主弁MVを全閉して乾燥庫DC内の真空度を悪くなる方向へ変化させて被乾燥材料の品温を上昇させていた従来法に対し、乾燥庫DC内の真空度が真空制御値より良くなり、昇華面温度が下がるため、被乾燥材料がコラプスして製品の廃棄を引き起こす危険性は全くない。
無菌製剤で、充填機から凍結乾燥機へ自動ローディングにて搬送し、凍結乾燥している装置で、現在品温測定監視・記録を実施していない装置に本装置を取り付ける事で、一次乾燥期の平均品温監視が可能となり、製品の製造工程の品質をインライン、オンラインで監視する事でPAT(Process Analytical Technology)を実現できる。
注)PATとはFDAが推奨している工程監視方法として現場で即測定し、プロセス工程を進行させる技術。
また、凍結乾燥の一次乾燥工程に、個別容器の品温度を測定せずに被乾燥材料全体の平均昇華面温度を計測して監視すると同時に、昇華面から昇華した水蒸気流量、即ち昇華負荷Qm(Kg/h)も測定でき、一次乾燥の昇華期間に昇華速度の変化曲線が得られて監視も可能になる。
製剤によっては力価により、毎回容器への分注量が可変となる製剤では毎回一次乾燥時間が変動する、棚温度と時間のみの管理では一次乾燥終了の判断が困難である。この装置を取り付ける事で、一次乾燥の終了の判断は正確に決定する事が可能である。
既乾燥層水蒸気移動抵抗の収集データーにより、コラプス温度と合わせ、被乾燥材料の最適乾燥プログラムを作成する事が可能となる。
MTM法による被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により計測する従来法に用いられる凍結乾燥装置の概要展開図である。 MTM法による凍結乾燥プロセス監視の一例である。 真空制御フローチャート図である。 本発明手段に用いる凍結真空乾燥装置の概要展開図である。 本発明手段の水負荷の実施例における開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係の測定事例の図表である。
次に実施例を詳述する。
図4は、本発明手段の実施に用いる凍結真空乾燥装置Wの概要展開図で、DCは乾燥庫、CTはコールドトラップ、aはそれらを接続連通する主管、Cはその主管aに装備せしめた開度調節器、MVはその主管aに装備せしめた主弁、bは乾燥庫DC及びコールドトラップCTのチャンバーに各別に付設した絶対圧の真空計、VはコールドトラップCTに付設せる引口弁、Pはその引口弁Vに接続する真空ポンプ、ctはコールドトラップCTのチャンバー内に装置されたトラップコイル、cは制御盤、dは制御盤cに組み込んだシーケンサー(PLC)、eは記録計を示す。
先ず、水負荷の試験で開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を測定する。凍結乾燥装置Wは、乾燥庫DC内に、水を充填したトレイが装入され、制御盤cのコントローラにより制御され所定の乾燥工程を開始している。図5は、この測定事例を示している。水を−40℃まで凍結し、一次乾燥期に棚温Thを10℃に設定し、1hr毎に乾燥庫内の真空度Pdcを20Pa、13.3Pa、6.7Paに制御し、その時の開度調節器Cの開度角度θ、棚温Th、トレイ底部の氷温度Tb、乾燥庫内の真空度PdcとCT真空度Pctをそれぞれ測定して記録する。氷の昇華負荷Qm(Kg/h)は昇華量の測定や入熱量による算出で決められ、開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求めた。この事例の測定の結果、
乾燥庫内の真空度Pdc=20Paで、開度角度θ1、CT真空度Pct=0.33Pa、昇華負荷Qm=0.352Kg/h、主管抵抗R1(θ)=204.2KPa/Kgとなり、Pdc=13.3Paで、開度角度θ2、Pct=0.32Pa、Qm=0.34Kg/h、主管抵抗R2(θ)=142.8KPa/Kgとなり、
Pdc=6.7Paで、開度角度θ3、Pct=0.31Pa、昇華負荷Qm=0.284Kg/h、主管抵抗R3(θ)=87.9KPa/Kgとなった。
この手段で、水負荷テストで開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式が得られ、実負荷の被乾燥材料の凍結乾燥時に、乾燥庫内の真空度Pdc、CT真空度Pct、開度調節器Cの開度角度θを測定すれば、昇華負荷Qmと乾燥時間との変化曲線を求められる。
次に、実負荷の凍結乾燥テストで被乾燥材料の全体の平均昇華面温度を計算にて測定した実施例を示す。凍結乾燥装置Wは、乾燥庫DC内の棚に被乾燥材料mannitol5%水溶液を分注したバイアル924本が装入され、本発明の手段の適切性を検証するために、4本バイアルに品温センサを挿入して棚中央部バイアル品温を測定し、制御盤cのコントローラにより制御され所定の乾燥工程を開始している。表1は、この測定事例を示している。溶液を−40℃で3hr凍結させ、一次乾燥期に棚温Thを10℃に設定し、乾燥庫内の真空度Pdcを13.3Paに制御して被乾燥材料を凍結乾燥していた。その一次乾燥中に、乾燥庫内の真空度Pdcを13.3Pa→20Pa→13.3Pa→6.7Pa→13.3Pa→15Pa→13.3Pa→6.7Paに変化させ、その時の開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫内の真空度PdcとCT真空度Pctをそれぞれ測定して記録し、全体の昇華面温度の算出ソフトを使って被乾燥材料の平均昇華面温度を計測した。
この事例で計測結果が表1に示されている。
(1)乾燥開始から1時間7分で、乾燥庫内の真空度Pdcを13.3Pa→20Paに変化させた時、算出した平均昇華面温度Ts=−29.1℃、品温の実測値Tb=−27.9℃、
(2)乾燥開始から1時間18分で、Pdcを20Pa→13.3Paに変化させた時、算出した平均昇華面温度Ts=−28.4℃、品温の実測Tb=−26.5℃、
(3)乾燥開始から2時間20分で、Pdcを13.3Pa→6.7Paに変化させた時、算出した平均昇華面温度Ts=−27.1℃、品温の実測値Tb=−25.2℃、
(4)乾燥開始から3時間22分で、Pdcを13.3Pa→15Paに変化させた時、算出した平均昇華面温度Ts=−24.9℃、品温の実測値Tb=−23.7℃、
(5)乾燥開始から4時間28分で、Pdcを13.3Pa→6.7Paに変化させた時、算出した平均昇華面温度Ts=−24.8℃、品温の実側値Tb=−23.4℃となった。算出した平均昇華面温度Tsが品温の実測値と約1.2〜1.9℃低かった。これは昇華面温度と容器底部温度の温度差に相当する。また、Pdcを13.3Pa→6.7Paに変化させた時、開度調節器Cの開度角度θを開方向へ回転し、その間に品温センサで測定した品温が−25.2℃から−28.2まで下がり、従来法の主弁を全閉しての乾燥庫内の真空度の劣化による昇華面温度の上昇による乾燥品のコラプスの心配が全くない。この測定事例で個別容器品温を測定しなくても被乾燥材料の全体の平均昇華面温度を計算により測定できることを検証した。
この手段は、一次乾燥期に真空制御値に対して、一定な時間間隔で開度調節器Cの開度角度θを開方向へ回転させ、庫内の真空度を良くさせ、前後の開度角度θ、真空PdcとPctを測定すれば、全体の平均昇華面温度を計算により測定でき、個別容器品温を測定せず、一次乾燥工程を監視できる。
Figure 2011252654
C 開度調節器
CT コールドトラップ
DC 乾燥庫
MV 主弁
V 引口弁
W 凍結乾燥装置
a 主管
b 真空計
c 制御盤
ct トラップコイル(プレート)
d シーケンサー
e 記録計
θ 開度調節器の開度角度
R(θ)主管抵抗

Claims (4)

  1. 被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)とその乾燥庫(DC)に対し主弁(MV)付きの主管(a)により連通するコールドトラップ(CT)とが装備されている凍結乾燥機による被乾燥材料の凍結乾燥において、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)にそれぞれ絶対圧力の真空計(b)を組み付け、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)内に、該主管(a)に設けた主弁(MV)を全開とした状態において該主管(a)の開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器(C)を設け、事前に昇華負荷Qm(Kg/h)と開度調節器(C)の開度角度θと主管抵抗(R(θ))との関係式を求めておき、この開度調節器(C)を、一次乾燥期に、一定時間間隔で、開度を開とする方向に回動させて、乾燥庫内の真空度をその真空度が良くなる方向に変化させ、その回動の前後における開度調節器(C)の開度角度(θ)、乾燥庫内の真空度Pdcとコールドトラップ(CT)内の真空度Pctの測定データと前記関係式とから、被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により測定することを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の昇華面温度の測定方法。
  2. 被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)とその乾燥庫(DC)に対し主弁(MV)付きの主管(a)により連通するコールドトラップ(CT)とが装備されている凍結乾燥機による被乾燥材料の凍結乾燥において、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)にそれぞれ絶対圧力の真空計(b)を組み付け、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)内に、該主管(a)に設けた主弁(MV)を全開とした状態において該主管(a)の開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器(C)を設け、事前に昇華負荷Qm(Kg/h)と開度調節器(C)の開度角度θと主管抵抗(R(θ))との関係式を求めておき、この開度調節器(C)を、一次乾燥期に、一定時間間隔で、開度を開とする方向に回動させて、乾燥庫内の真空度をその真空度が良くなる方向に変化させ、その回動の前後における開度調節器(C)の開度角度(θ)、乾燥庫内の真空度Pdcとコールドトラップ(CT)内の真空度Pctの測定データと前記関係式とから、既乾燥層水蒸気移動抵抗Rpを求める事を特徴とする凍結乾燥装置における既乾燥層水蒸気移動抵抗測定方法。
  3. 被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)と、その乾燥庫(DC)に対し開度調節用の主弁(MV)付きの主管(a)により連通するコールドトラップ(CT)と、運動稼動を制御する制御盤(c)と、が装備されている凍結乾燥機において、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とに、それぞれ絶対圧力の真空計(b)を組み付け、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)内には、該主管(a)に付設の主弁(MV)の開度を全開した状態において、主管(a)の開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器(C)を設け、この開度調節器(C)の一定時間間隔おいた部分開閉の回動作動の前後における、開度角度(θ)と乾燥庫(DC)コールドトラップ(CT) 内の真空度変化の測定データ及び計算ソフトを、制御盤(c)内のシーケンサー(d)に組み込んだことを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の昇華面温度の測定装置。
  4. 被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)と、その乾燥庫(DC)に対し開度調節用の主弁(MV)付きの主管(a)により連通するコールドトラップ(CT)と、運動稼動を制御する制御盤(c)と、が装備されている凍結乾燥機において、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とに、それぞれ絶対圧力の真空計(b)を組み付け、乾燥庫(DC)とコールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)内には、該主管(a)に付設の主弁(MV)の開度を全開した状態において、主管(a)の開度を調節し得る角度センサ付きの開度調節器(C)を設け、この開度調節器(C)の一定時間間隔おいた部分開閉の回動作動の前後における、開度角度(θ)と乾燥庫(DC)コールドトラップ(CT)内の真空度変化の測定データ及び計算ソフトを、制御盤(c)内のシーケンサー(d)のシーケースに組み込んだことを特徴とする凍結乾燥機における被乾燥材料の既乾燥層水蒸気移動抵抗の測定装置。
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