JP2011252192A - アルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法及び熱交換器 - Google Patents

アルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法及び熱交換器 Download PDF

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Abstract

【課題】処理時間が短いと共に、クラックを生じさせることなくナノ細孔の閉塞を抑制してナノ細孔を安定に維持することが可能なアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理し、その表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した後、下記の式:
A=4500/{C×t×2(T−50)/10
(式中、Cは水溶液中のリン酸濃度(質量%)、tは浸漬時間(秒)、Tは浸漬温度(℃)を表す)で表されるAの値が1以上1200以下となる条件で、リン酸を含む水溶液に浸漬することを特徴とするアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法及び熱交換器に関する。
アルミニウムやアルミニウム合金を陽極酸化処理して形成されるアルミニウム陽極酸化皮膜は、アルマイトという名でも一般に知られており、アルミニウムやアルミニウム合金の硬度や装飾性などの様々な特性を向上させる。このアルミニウム陽極酸化皮膜は、ナノ細孔を有する多孔質構造を一般に有しているため、用途によっては耐食性や耐汚染性などの特性が十分でない場合がある。そこで、耐食性や耐汚染性などの特性を向上させるために、アルミニウム陽極酸化膜を沸騰水中に浸漬することによって封孔処理を行うことが知られている。
一方、アルミニウムやアルミニウム合金を塗装する際の下地として使用するために陽極酸化処理を行う場合、封孔してしまうと塗装の密着性が低下してしまう。また、耐摩耗性が要求される用途においても封孔によって耐摩耗性が低下してしまう。そのため、特定の用途においては封孔処理を行わない。
近年、冷凍空調機器に用いられる冷却用の熱交換器においても、軽量で熱伝導性などの特性に優れているアルミニウムやアルミニウム合金が用いられてきている。
この熱交換器では、空気と冷媒との間で熱交換が行われると、冷却された空気中に含まれる水蒸気が過飽和状態で熱交換器の表面に付着して霜が形成される。特に、フィンアンドチューブ型の熱交換器の場合、霜の成長と共にフィン間の隙間が減少する結果、熱交換器の圧力損失が増大し、空気の流れが妨げられると共にフィンと空気との間の熱伝達力が低下する。また、一部分のフィンに霜が集中的に形成される偏着霜が発生すると、フィン間の閉塞が早まるばかりでなく、除霜時に霜が融けきらずに残ってしまう。その結果、熱交換器の熱交換効率が著しく低下する。そこで、特許文献1は、ナノ細孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜をフィン表面に形成することによって、偏着霜を抑制し、フィン表面に均一に着霜させる技術を提案している。
しかしながら、陽極酸化処理によって形成されたナノ細孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜は、表面積が大きく、高い表面エネルギーを有するため、非常に不安定である。また、アルミニウム陽極酸化皮膜の酸化アルミニウムは大気中の水分と水和反応を生じるため、ナノ細孔が閉塞される、いわゆる自然封孔という現象が起こる。そのため、各種用途における所望の特性を維持するためには、この自然封孔を抑制しなければならない。
自然封孔を抑制する技術として、特許文献1では、陽極酸化処理によってアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した後に150℃で1時間熱処理することにより、アルミニウム陽極酸化皮膜から水を除去してアルミニウム陽極酸化皮膜を安定化させ、自然封孔を抑制している。
国際公開第2009/017039号パンフレット
しかしながら、特許文献1のような熱処理によってアルミニウム陽極酸化皮膜を安定化させる方法は、処理に時間がかかるため、量産適用が難しいと共にエネルギー消費量が大きいという問題がある。また、熱処理を行う場合、脱水によってアルミニウム陽極酸化皮膜が体積収縮するため、クラックが発生し易い。その結果、このクラックを起因として下地(アルミニウムやアルミニウム合金)が腐食してしまうという問題もある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、処理時間が短いと共に、クラックを生じさせることなくナノ細孔の閉塞を抑制してナノ細孔を安定に維持することが可能なアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、熱交換効率の低下が生じ難い熱交換器を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理して形成されたアルミニウム陽極酸化皮膜を、所定の濃度のリン酸を含む水溶液に所定の時間及び温度で浸漬することにより、水和反応によるナノ細孔の閉塞を抑制し、アルミニウム陽極酸化皮膜を安定化させ得ることを見出した。
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理し、その表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した後、下記の式:
A=4500/{C×t×2(T−50)/10
(式中、Cは水溶液中のリン酸濃度(質量%)、tは浸漬時間(秒)、Tは浸漬温度(℃)を表す)で表されるAの値が1以上1200以下となる条件で、リン酸を含む水溶液に浸漬することを特徴とするアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法である。
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される熱交換器であって、前記熱交換器が、上記の方法によって処理されたアルミニウム陽極酸化皮膜を有することを特徴とする熱交換器である。
本発明によれば、処理時間が短いと共に、クラックを生じさせることなくナノ細孔の閉塞を抑制してナノ細孔を安定に維持することが可能なアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法を提供することができる。
また、本発明によれば、熱交換効率の低下が生じ難い熱交換器を提供することができる。
実施の形態1のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法のフロー図である。 実施の形態1のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法によって得られるアルミニウム陽極酸化皮膜の断面図である。 実施の形態2の熱交換器の斜視図である。 実施の形態2の熱交換器の上面図である。
実施の形態1.
本実施の形態のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理し、その表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した後、所定の濃度のリン酸を含む水溶液に所定の時間及び温度で浸漬する。
以下、本実施の形態のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法について図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法のフロー図である。
まず、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理する前に、必要に応じて前処理(S1〜S3)を行う。ただし、この前処理(S1〜S3)は必須ではない。ここで、本明細書におけるアルミニウム合金とは、強度、耐食性、加工性などの各種特性の向上を目的として、マグネシウム、銅、ケイ素、マンガン、鉄、クロム、ジルコニウム、チタンなどの元素の少なくとも1種をアルミニウムに添加したものを意味する。これらの元素の添加量は、特に限定されないが、一般に0.1原子%以上10原子%以下である。
アルミニウム又はアルミニウム合金の形状としては、特に限定されず、板状、棒状、管状などの各種形状のものを用いることができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金を成形加工した成形品を用いてもよい。
アルミニウム又はアルミニウム合金を成形加工する場合、曲げ工程やプレス工程などで油脂成分が付着することがある。そのため、アルミニウム又はアルミニウム合金を成形加工する場合には、脱脂処理(S1)を行うことが好ましい。脱脂処理(S1)の方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、脱脂液として、界面活性剤を含むアルカリ性の脱脂液を用い、この脱脂液に成形品を浸漬すればよい。また、脱脂処理(S1)の後、脱脂液を除去するために水洗を行うことが好ましい。
次に、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成されている自然酸化皮膜を除去して均一なアルミニウム陽極酸化皮膜を形成するためにエッチング処理(S2)を行うことが好ましい。エッチング処理(S2)の方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、エッチング液として濃度の高い苛性ソーダ水溶液を用い、このエッチング液にアルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬すればよい。このエッチング処理(S2)を行うことにより、自然酸化皮膜がアルミン酸塩として溶解してアルミニウム又はアルミニウム合金の下地が露出する。その結果、陽極酸化処理(S4)において電流が均一に流れるようになるため、ナノ細孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜を均一に形成することができる。なお、均一なアルミニウム陽極酸化皮膜の形成が要求されない場合には、エッチング処理(S2)を省略してもよい。また、エッチング処理(S2)には脱脂効果もあるため、脱脂工程(S1)を省略してもよい。また、エッチング処理(S2)の後、エッチング液を除去するために水洗を行うことが好ましい。
次に、脱脂工程(S1)やエッチング工程(S2)において除去されなかった残渣成分を除去するためにデスマット処理(S3)を行うことが好ましい。デスマット処理(S3)の方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、デスマット液として硝酸水溶液を用い、このデスマット液にアルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬すればよい。なお、このデスマット処理(S3)を行うことにより、アルミニウム又はアルミニウム合金の外観が向上するが、特に外観を気にする必要がない場合には、デスマット処理(S3)を省略してもよい。また、デスマット処理(S3)の後、デスマット液を除去するために水洗を行うことが好ましい。
次に、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理(S4)する。陽極酸化処理(S4)の方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、電解液として酸性の水溶液、陽極としてアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、直流電流、交流電流又はパルス電流などを印加することによって電解すればよい。この陽極酸化処理(S4)を行うことにより、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に対して垂直に配向した円筒柱形状のナノ細孔を有するアルミニウム陽極酸化膜が形成される。形成される陽極酸化膜の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
陽極酸化処理(S4)に用いられる酸としては、特に限定されず、硫酸、シュウ酸、クロム酸、リン酸などを単独又は組み合わせて用いることができる。また、陽極酸化処理の条件は、処理対象となるアルミニウム又はアルミニウム合金の種類や大きさなどに応じて適宜選択する必要がある。一般には、電解液中の酸濃度が1〜3モル/L(10〜30質量%)、電流密度が0.6〜3A/dm、電圧が10〜50V、浴温が0〜30℃である。また、通電時間は、形成するアルミニウム陽極酸化皮膜の厚みに応じて適宜調整される。特に、浴温を低温(5℃程度)に冷却すれば、硬質のアルミニウム陽極酸化皮膜を形成することができる。なお、酸性の水溶液以外にも弱アルカリ性の電解液を用いて陽極酸化処理(S4)を行ってもよい。また、陽極酸化処理(S4)の後、電解液を除去するために、水洗することが好ましい。
次に、アルミニウム陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を、リン酸を含む水溶液に浸漬する(S5)。
ここで、上記のリン酸を含む水溶液による浸漬処理(S5)の条件を最適化するため
に、以下の実験を行った。
まず、アルミニウム(A1000系)を、所定の形状に成形加工した後、界面活性剤を含むアルカリ性の脱脂液に浸漬することによって脱脂処理(S1)を行った。水洗後、アルミニウムを苛性ソーダ水溶液に浸漬することによってエッチング処理(S2)を行った。水洗後、硝酸水溶液に浸漬することによってデスマット処理(S3)を行った。
次に、電解液として硫酸の水溶液を用い、電解液中の硫酸濃度が1.5モル/L、電流密度が1A/dm、浴温が20±2℃、通電時間が10分の条件下で陽極酸化処理を行うことによって、アルミニウムの表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した。
次に、アルミニウム陽極酸化皮膜を形成したアルミニウムを、下記の表1〜3に示す条件でリン酸を含む水溶液に浸漬した(サンプル1〜60)。
Figure 2011252192
Figure 2011252192
Figure 2011252192
次に、リン酸を含む水溶液を水洗して除去した後、乾燥させた。
また、比較として、リン酸を含む水溶液による浸漬処理(S4)の代わりに130℃で30分間熱処理したサンプルを作製した(サンプル61)。
上記のようにして作製されたサンプル1〜61について、ナノ細孔の閉塞の程度を調べた。
ナノ細孔の閉塞の程度は、各サンプルを60℃の飽和水蒸気圧下で5日間放置した後、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて各サンプルの表面を観察することによって評価した。
この評価において、リン酸を含む水溶液による浸漬処理の代わりに熱処理を行ったサンプル61に比べて、ナノ細孔の閉塞の程度が多いものを×、ナノ細孔の閉塞が同程度のものを○、ナノ細孔の閉塞の程度が少ないものを◎とした(評価A)。
また、この評価において、ナノ細孔が確認できないものを×、陽極酸化処理で形成されるナノ細孔の細孔径(約10nm)に比べて2倍(約20nm)以上の細孔径を有するナノ細孔が確認されたものを○、陽極酸化処理で形成されるナノ細孔の細孔径(約10nm)に比べて2倍(約20nm)以内の細孔径を有するナノ細孔が確認されたものを◎とした(評価B)。
上記の評価A及びBの結果を表4に示す。
Figure 2011252192
表4の結果に示されているように、水溶液中のリン酸濃度が低く、浸漬時間が短く、浸漬温度が低いサンプル1、2及び21では、サンプル61に比べてナノ細孔の閉塞の程度が多かった。これは、アルミニウム陽極酸化皮膜のアルミニウムイオンとリン酸イオンとの反応が十分に進行せず、リン酸アルミニウムの耐水性皮膜が十分に形成されなかったためであると推測される。
また、水溶液中のリン酸濃度が高く、浸漬時間が長く、浸漬温度が高いサンプル59及び60では、アルミニウム陽極酸化皮膜がリン酸によって溶解し、ナノ細孔の円筒柱形状が確認できない状態まで崩壊していた。
その他のサンプルにおいては、サンプル61に比べてナノ細孔の閉塞が同程度以下であると共に、ナノ細孔の円筒柱形状を維持していた。特に、サンプル7〜8、11〜14、17〜18、24、27〜28、30〜31、33〜34、37、43〜46及び49〜50は、サンプル61に比べてナノ細孔の閉塞が極めて少ないと共に、ナノ細孔の円筒柱形状も良好に維持していた。
上記の結果を基に、リン酸濃度と、浸漬時間と、浸漬温度との関係について分析した。
まず、浸漬温度が同じサンプルにおいて、ナノ細孔の円筒柱形状を比較したところ、サンプル6(リン酸濃度2質量%、浸漬時間30秒)とサンプル9(リン酸濃度1質量%、浸漬時間60秒)との間のナノ細孔の円筒柱形状は、ほぼ同じであった。同様に、サンプル8(リン酸濃度15質量%、浸漬時間30秒)とサンプル11(リン酸濃度8質量%、浸漬時間60秒)との間、及びサンプル14(リン酸濃度2質量%、浸漬時間300秒)とサンプル17(リン酸濃度1質量%、浸漬時間600秒)との間のナノ細孔の円筒柱形状はほぼ同じであった。これらの結果から、アルミニウム陽極酸化皮膜のアルミニウムイオンとリン酸イオンとの反応は、リン酸濃度及び浸漬時間に比例すると推測された。
次に、リン酸濃度が同じサンプルにおいて、ナノ細孔の円筒柱形状を比較したところ、サンプル11(浸漬温度20℃、浸漬時間60秒)とサンプル27(浸漬温度30℃、浸漬時間30秒)との間のナノ細孔の円筒柱形状は、ほぼ同じであった。同様に、サンプル9(浸漬温度20℃、浸漬時間60秒)とサンプル25(浸漬温度30℃、浸漬温度30秒)との間、及びサンプル17(浸漬温度20℃、浸漬時間600秒)とサンプル33(浸漬時間30秒、浸漬時間300秒)との間のナノ細孔の円筒柱形状はほぼ同じであった。これらの結果から、アルミニウム陽極酸化皮膜のアルミニウムイオンとリン酸イオンとの反応の速度は、浸漬温度が10℃上昇すると約2倍になると推測された。
上記の分析結果(すなわち、アルミニウム陽極酸化皮膜のアルミニウムイオンとリン酸イオンとの反応の速度が、リン酸濃度及び浸漬時間に比例すると共に、浸漬温度が10℃上昇すると約2倍となるという結果)を基に、リン酸濃度と浸漬時間と浸漬温度との関係式を求めた。ここで、ナノ細孔の状態が良好なレベルで、且つアルミニウム陽極酸化皮膜とリン酸との反応が最も進行すると考えられるサンプル56を基準として下記式の反応進行度αを定義した。
α=(C/15)×(t/300)×2(T−50)/10
式中、Cは水溶液中のリン酸濃度(質量%)、tは浸漬時間(秒)、Tは浸漬温度(℃)である。
ただし、反応進行度αでは範囲が分かり難いため、反応進行度αの逆数をAとして定義した。
A=4500/{C×t×2(T−50)/10
式中、Cは水溶液中のリン酸濃度(質量%)、tは浸漬時間(秒)、Tは浸漬温度(℃)である。
サンプル1〜60において、Aの値を評価した結果を表5に示す。
Figure 2011252192
表5の結果から、Aの値が1以上1200以下となる条件で、リン酸を含む水溶液による浸漬処理(S4)を行うことにより、良好な円筒柱形状のナノ細孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜が維持されることがわかった。つまり、Aの値が上記範囲内であると、アルミニウム陽極酸化皮膜のアルミニウムイオンとリン酸イオンとが適切に反応し、良好な円筒柱形状のナノ細孔を維持しつつ、リン酸アルミニウムの耐水性皮膜が形成されると考えられる。一方、Aの値が1未満又は1200を超えると、上記の結果からわかるように、ナノ細孔が閉塞してしまう。
また、水溶液中のリン酸濃度Cは1質量%以上15質量%以下、浸漬時間tは10秒以上600秒以下、浸漬温度Tは20℃以上50℃以下であることが好ましい。この範囲のリン酸濃度C、浸漬時間t、及び浸漬温度Tとすることにより、ナノ細孔の閉塞を安定して抑制することができる。
リン酸を含む水溶液による浸漬処理(S5)の後、アルミニウム又はアルミニウム合金は、リン酸を含む水溶液を除去するために水洗した後、乾燥処理(S6)を行う。
乾燥処理(S6)の方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、乾燥機などを用いた加熱乾燥、ブロアなどを用いた送風乾燥、その場や太陽光の下で放置する自然乾燥などが挙げられる。
上記のようにして処理されたアルミニウム陽極酸化皮膜の断面図を図2に示す。図2において、アルミニウム又はアルミニウム合金1の表面上には、円筒柱形状のナノ細孔3を有するアルミニウム陽極酸化皮膜2が安定して維持されている。ここで、本明細書においてナノ細孔3とは、ナノサイズの直径を有する細孔、一般には2nm以上50nm以下の直径を有するメソ孔を意味する。
本実施の形態のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法は、処理時間が短いと共に、クラックを生じさせることなくナノ細孔の閉塞を抑制してナノ細孔を安定に維持することができる。そのため、本実施の形態のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法は、アルミニウムやアルミニウム合金を塗装する際の下地や、熱交換器をはじめとする様々な用途において用いることができる。
実施の形態2.
本実施の形態の熱交換器は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される熱交換器であって、上記の方法によって処理されたアルミニウム陽極酸化皮膜を有する。
以下、本実施の形態の熱交換器について図面を用いて説明する。
図3は本実施の形態の熱交換器の斜視図、図4は本実施の形態の熱交換器の上面図である。
図3及び4において、熱交換器10は、所定の間隔で複数並べた金属フィン11と、各金属フィン11の貫通穴を通過するように設けられた伝熱管12とから構成されている。この熱交換器10では、伝熱管12の内部を流れる冷媒と外部を流れる空気との熱を金属フィン11を介して伝達することにより、冷媒と空気との間の熱交換を行うことができる。
熱交換器10は、金属フィン11及び伝熱管12の少なくとも1つがアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている。そして、このアルミニウム又はアルミニウム合金には、上記の方法によって処理されたアルミニウム陽極酸化皮膜が形成されている。
このような構成を有する熱交換器10は、クラックがないと共に、ナノ細孔の閉塞を抑制してナノ細孔を安定に維持したアルミニウム陽極酸化皮膜を有しているため、偏着霜を抑制することができ、熱交換効率が低下しない。
1 アルミニウム又はアルミニウム合金、2 アルミニウム陽極酸化皮膜、3 ナノ細孔、10 熱交換器、11 金属フィン、12 伝熱管。

Claims (4)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理し、その表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を形成した後、下記の式:
    A=4500/{C×t×2(T−50)/10
    (式中、Cは水溶液中のリン酸濃度(質量%)、tは浸漬時間(秒)、Tは浸漬温度(℃)を表す)で表されるAの値が1以上1200以下となる条件で、リン酸を含む水溶液に浸漬することを特徴とするアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法。
  2. 前記水溶液中のリン酸濃度は1質量%以上15質量%以下、前記浸漬時間は10秒以上600秒以下、前記浸漬温度は20℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法。
  3. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金は成形品であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム陽極酸化皮膜の処理方法。
  4. アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される熱交換器であって、
    前記熱交換器が、請求項1〜3のいずれか一項の方法によって処理されたアルミニウム陽極酸化皮膜を有することを特徴とする熱交換器。
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