JP2011248037A - 電子装置およびその駆動方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動トランジスターの特性の誤差を有効に補償する。
【解決手段】画素回路PIXは、駆動電位線26と回路点pとの間に介在する駆動トランジスターTDRと、回路点pに接続された電気泳動素子40および付加容量素子CPと、回路点pと駆動トランジスターTDRのゲートとの接続を制御するスイッチSW1とを含む。駆動回路30は、駆動電位線26の駆動電位VDR[m]が高位側電位VDR_Hに設定される初期化期間TRSTにおいて、スイッチSW1をオフ状態に制御し、駆動トランジスターTDRがオン状態となるようにゲートの電位VGを変化させ、補償準備期間QAにおいて、スイッチSW1をオン状態に制御することでゲートの電位VGを補償初期値VINIに設定し、補償実行期間において、スイッチSW1をオン状態に制御し、駆動トランジスターTDRがオン状態となるように駆動電位VDR[m]を低位側電位VDR_Lに変化させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子回路内のトランジスターの特性(特に閾値電圧)の誤差を補償する技術に関する。
特許文献1には、有機EL素子の駆動に利用される駆動トランジスターの特性(閾値電圧や移動度)の誤差を補償する技術が開示されている。図43は、特許文献1(図11)に開示された画素回路90の回路図である。指定階調に応じた階調電位がスイッチ91を介して容量素子92の電極93に供給される書込期間において、駆動トランジスター94がオン状態に維持された状態でゲートとドレインとがスイッチ95で接続(ダイオード接続)される。したがって、駆動トランジスター94のゲート−ソース間の電圧は、自身の閾値電圧VTHの誤差を補償する電圧Vrstに設定される。そして、書込期間の経過後の駆動期間にて三角波状の駆動電位を各画素回路90の電極93に供給することで、回路点96に接続された発光素子97の発光時間が指定階調に応じて可変に制御される。
特開2009−48202号公報
しかし、電気泳動素子や液晶素子等の高抵抗な電気光学素子を回路点96に接続した構成に特許文献1の技術を適用することは困難である。電気光学素子に殆ど電流が流れないため回路点96の電位が確定せず、したがって、書込期間にて駆動トランジスター94およびスイッチ95をオン状態に制御しても、駆動トランジスター94のゲート−ソース間の電圧が目標の電圧Vrstに収束しないからである。以上の事情を考慮して、本発明は、駆動トランジスターの特性の誤差を有効に補償することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の電子装置は、電子回路と駆動回路とを具備する電子装置であって、電子回路は、駆動電位が供給される駆動電位線に接続された第1端子と回路点に接続された第2端子と両端子間の接続状態を制御する制御端子とを含む駆動トランジスターと、回路点に接続された付加容量素子と、回路点と制御端子との接続を制御する第1スイッチ(例えばスイッチSW1)とを含み、駆動回路は、駆動電位が第1電位(例えば高位側電位VDR_H)に設定される第1期間(例えば初期化期間TRST)において、第1スイッチをオフ状態に制御し、駆動トランジスターがオン状態となるように制御端子の電位を変化させ、第1期間の経過後の第2期間(例えば補償準備期間QA)において、第1スイッチをオン状態に制御することで制御端子の電位を補償初期値に設定し、第2の経過後の第3期間(例えば補償実行期間QB)において、第1スイッチをオン状態に制御し、駆動トランジスターがオン状態となるように駆動電位を第1電位から第2電位(例えば低位側電位VDR_L)に変化させる。
以上の構成のもとでは、第1期間において、制御端子の電位の変化に応じてオン状態に制御された駆動トランジスターの第1端子と第2端子とを介して駆動電位線から回路点に第1電位が供給される。第2では、第1スイッチをオン状態に制御して付加容量素子を制御端子に接続することで制御端子の電位が補償初期値に設定される。第3期間では、第1スイッチを介してダイオード接続された駆動トランジスターが駆動電位(第1端子の電位)の変化に応じてオン状態に制御されるから、制御端子の電荷が第1スイッチと回路点と第2端子と第1端子とを介して駆動電位線に移動する。したがって、駆動トランジスターの制御端子と第1端子との間の電圧は自身の閾値電圧に接近(理想的には到達)する。以上の構成では、第1期間にて回路点の電位が第1電位に確定するから、第1電位を適切に選定すれば、第3期間にて駆動トランジスターに確実に電流を流すことが可能である。したがって、回路点に高抵抗な被駆動素子が接続された状態でも、第3期間での補償動作により駆動トランジスターの特性の誤差を有効に補償することが可能である。
第2にて制御端子の電位を補償初期値に設定する方法は任意である。例えば、態様A1に係る駆動回路は、第2の開始前に、第1期間での変化とは逆方向に制御端子の電位を変化させ、第2にて第1スイッチをオン状態に制御することで当該制御端子の電位を補償初期値に設定する。態様A1では、第2の開始前に制御端子の電位が第1期間での変化とは逆方向に変化し、第2にて付加容量素子と制御端子とが第1スイッチを介して接続されると、付加容量素子と制御端子との間で電荷が移動することで補償初期値が設定される。したがって、第3期間にて駆動トランジスターがオン状態に遷移し易くなるように補償初期値を設定する(例えば駆動トランジスターがNチャネル型であれば補償初期値を高電位に設定する)ことが可能である。
他方、態様A2に係る駆動回路は、第2において、第1スイッチをオン状態に制御してから、第1期間での変化とは逆方向に制御端子の電位を変化させることで当該制御端子の電位を補償初期値に設定する。態様A2において、第1期間では第1スイッチがオフ状態に制御されることで付加容量素子は制御端子から絶縁されるのに対し、第2では第1スイッチがオン状態に制御されることで付加容量素子が制御端子に接続されるから、第2での制御端子の電位の変化量は第1期間での変化量を下回る。以上に説明した変化量の相違を利用して、第3期間にて駆動トランジスターがオン状態に遷移し易くなるように補償初期値を設定する(例えば駆動トランジスターがNチャネル型であれば補償初期値を高電位に設定する)ことが可能である。
以上に例示した態様A1および態様A2のように第3期間にて駆動トランジスターがオン状態に遷移し易くなるように補償初期値が設定される構成によれば、第3期間にて駆動トランジスターをオン状態に変化させるために必要な駆動電位の振幅(第1電位と第2電位との差異)が縮小されるという利点がある。
本発明の好適な態様Bにおいて、電子回路は、第1電極(例えば電極E1)と第2電極(例えば電極E2)とを含む第1容量素子を備え、第2電極は、制御端子に接続され、駆動回路は、第3期間の期間内または経過後に信号電位(例えば階調電位VD[m,n])を第1電極に供給し、第3期間の経過後の第4期間(例えば動作期間TDRV)において、制御端子と第1端子との間の電圧を可変に設定する。以上の態様においては、第4期間で設定された制御端子と第1端子との間の電圧の絶対値と、第1電極に供給される信号電位と第3期間での補償動作とに応じて決定された電圧の絶対値との大小に応じて駆動トランジスターの状態(オン/オフ)が制御される。すなわち、制御端子と第1端子との間の電圧を第4期間の期間内と開始前とで比較した結果に応じた電圧信号を回路点に生成する比較回路として電子回路は機能する。
態様Bの好適な構成B1の駆動回路は、第4期間において第1電極の電位を可変に設定する。構成B1においては、駆動トランジスターの制御端子の電位を第1電極の電位に連動させることで、制御端子と第1端子との間の電圧が可変に設定される。態様Bの他の構成B2の電子回路は、第3電極(例えば電極E3)と第4電極(例えば電極E4)とを含む第2容量素子を備え、第4電極は、制御端子に接続され、駆動回路は、第4期間において第3電極の電位を可変に設定する。構成B2においては、駆動トランジスターの制御端子の電位を第3電極の電位に連動させることで、制御端子と第1端子との間の電圧が可変に設定される。構成B2によれば、第1電極の電位の振幅を構成B1と比較して低減できるという利点がある。他方、構成B1によれば、構成B2の第2容量素子が不要であるという利点がある。態様Bの好適な構成B3の駆動回路は、第4期間において駆動電位線の駆動電位を可変に設定する。構成B3においては、駆動電位に応じて制御端子と第1端子との間の電圧が可変に設定される。
電子回路の構成は適宜に変更される。例えば、態様C1に係る電子回路において、第1容量素子の第1電極は、信号電位が供給される信号線に直接に接続される。他方、態様C2に係る電子回路は、第1容量素子の第1電極と信号電位が供給される信号線との導通を制御する第2スイッチ(例えばスイッチSW2)を含む。態様C1によれば、態様C2と比較して能動素子(スイッチ)の個数が削減されるという利点がある。他方、態様C2においては、第2スイッチをオフ状態に制御することで第1電極が信号線から電気的に絶縁されるから、信号線に付随する容量成分が態様C1と比較して低減されるという利点がある。
以上の各態様に係る電子装置の好適例は、電気光学素子を駆動する電気光学装置である。電気光学装置は、以上の各態様に係る電子装置の電子回路の回路点に接続された電気光学素子を含んで構成される。電気光学素子は、電気的な作用(電界の印加や電流の供給)と光学的な作用(階調や輝度の変化)との一方を他方に変換する被駆動素子である。電気光学装置は、画像を表示する表示機器として各種の電子機器に搭載され得る。携帯型の情報端末や電子ペーパー等の電子機器に本発明の電気光学装置が好適に採用される。
本発明は、以上の各態様に係る電子装置の駆動方法としても特定される。具体的には、本発明の駆動方法は、駆動電位が供給される駆動電位線に接続された第1端子と回路点に接続された第2端子と両端子間の接続状態を制御する制御端子とを含む駆動トランジスターと、回路点に接続された付加容量素子と、回路点と制御端子との接続を制御する第1スイッチとを含む電子装置の駆動方法であって、駆動電位が第1電位に設定される第1期間において、第1スイッチをオフ状態に制御し、駆動トランジスターがオン状態となるように制御端子の電位を変化させ、第1期間の経過後の第2において、第1スイッチをオン状態に制御することで制御端子の電位を補償初期値に設定し、第2の経過後の第3期間において、第1スイッチをオン状態に制御し、駆動トランジスターがオン状態となるように駆動電位を第1電位から第2電位に変化させる。以上の駆動方法によれば、本発明に係る電子装置と同様の作用および効果が実現される。
第1実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。 第1実施形態の画素回路の回路図である。 電気泳動素子の模式図である。 第1実施形態の動作の説明図である。 第1実施形態における初期化期間および補償期間での動作の説明図である。 第1実施形態における初期化期間での画素回路の説明図である。 第1実施形態における初期化期間の終点での画素回路の説明図である。 第1実施形態における補償準備期間(書込動作時)での画素回路の説明図である。 第1実施形態における補償準備期間(補償初期値の設定時)での画素回路の説明図である。 第1実施形態における補償実行期間での画素回路の説明図である。 第1実施形態における補償実行期間の終点での画素回路の説明図である。 第1実施形態における動作期間での画素回路の説明図である。 第1実施形態における駆動トランジスターの駆動時点と階調電位との関係の説明図である。 第1実施形態における階調電位と駆動トランジスターの通過電荷量とのグラフである。 第2実施形態における動作の説明図である。 第2実施形態における駆動トランジスターのゲートの電位の説明図である。 第3実施形態の画素回路の回路図である。 第3実施形態の動作の説明図である。 第4実施形態の動作の説明図である。 第4実施形態における駆動トランジスターの動作時点と階調電位との関係の説明図である。 第5実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。 第5実施形態の画素回路の回路図である。 第5実施形態の動作の説明図である。 第5実施形態における初期化期間および補償期間の動作の説明図である。 第5実施形態における書込期間および動作期間の動作の説明図である。 第5実施形態における初期化期間での画素回路の説明図である。 第5実施形態における補償準備期間(前半)での画素回路の説明図である。 第5実施形態における補償準備期間(後半)での画素回路の説明図である。 第5実施形態における補償実行期間での画素回路の説明図である。 第5実施形態における補償実行期間の終点での画素回路の説明図である。 第5実施形態における書込期間での画素回路の説明図である。 第5実施形態における動作期間での画素回路の説明図である。 第5実施形態における駆動トランジスターの駆動時点と階調電位との関係の説明図である。 第5実施形態における階調電位と駆動トランジスターの通過電荷量とのグラフである。 第6実施形態の動作の説明図である。 第6実施形態における初期化期間および補償期間での動作の説明図である。 第7実施形態の動作の説明図である。 駆動トランジスターの駆動と表示画像の視認性との関係の説明図である。 変形例に係る画素回路の回路図である。 変形例に係る画素回路の回路図である。 電子機器(情報端末)の斜視図である。 電子機器(電子ペーパー)の斜視図である。 特許文献1の画素回路の回路図である。
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置100のブロック図である。電気光学装置100は、帯電粒子の電気泳動を利用して画像を表示する電気泳動表示装置であり、図1に示すように表示パネル10と制御回路12とを具備する。表示パネル10は、複数の画素回路PIXが平面状に配列された表示部20と、各画素回路PIXを駆動する駆動回路30とを含んで構成される。制御回路12は、表示パネル10(駆動回路30)を制御することで表示部20に画像を表示させる。
表示部20には、相互に交差するM本の制御線22とN本の信号線24とが形成される(MおよびNは自然数)。表示部20内の複数の画素回路PIXは、制御線22と信号線24との各交差に対応した位置に配置されて縦M行×横N列の行列状に配列する。また、表示部20には、各制御線22に並行するM本の駆動電位線26が形成される。
駆動回路30は、制御回路12による制御のもとで各画素回路PIXを駆動する。図1に示すように、駆動回路30は、行駆動回路32と列駆動回路34と電位制御回路36とを含んで構成される。行駆動回路32は、制御信号GA[1]〜GA[M]を各制御線22に供給するとともに駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を各駆動電位線26に供給する。駆動電位VDR[1]〜VDR[M]の各々は、高位側電位VDR_Hまたは低位側電位VDR_Lに設定される(VDR_H>VDR_L)。なお、制御信号GA[1]〜GA[M]を生成する回路と駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を生成する回路とを別個に搭載した構成も採用され得る。列駆動回路34は、指示信号X[1]〜X[N]を各信号線24に供給する。
電位制御回路36は、各画素回路PIXに共通に供給される共通電位VCOMを生成および出力する。共通電位VCOMは、高位側電位VCOM_Hまたは低位側電位VCOM_L(VCOM_H>VCOM_L)に設定される。共通電位VCOMの高位側電位VCOM_Hと駆動電位VDR[1]〜VDR[M]の高位側電位VDR_Hとは同電位(例えば15V)であり、共通電位VCOMの低位側電位VCOM_Lと駆動電位VDR[1]〜VDR[M]の低位側電位VDR_Lとは同電位(例えば0V)である。
図2は、各画素回路PIXの回路図である。図2では、第m行(m=1〜M)の第n列(n=1〜N)に位置する1個の画素回路PIXが代表的に図示されている。画素回路PIXは、表示画像の各画素に対応する電子回路であり、図2に示すように、電気泳動素子40と駆動トランジスターTDRとスイッチSW1と容量素子C1と付加容量素子CPとを含んで構成される。
電気泳動素子40は、帯電粒子の電気泳動を利用して階調を表現する高抵抗な電気光学素子であり、相対向する画素電極42および対向電極44と両電極間の電気泳動層46とを具備する。図3に示すように、電気泳動層46は、逆極性に帯電した白色および黒色の帯電粒子462(462W,462B)と各帯電粒子462が泳動可能に分散された分散媒464とを含んで構成される。例えばマイクロカプセルの内部に帯電粒子462と分散媒464とを封止した構成や、隔壁で仕切られた空間内に帯電粒子462と分散媒464とを封止した構成が好適に採用される。
画素電極42は画素回路PIX毎に個別に形成され、対向電極44は複数の画素回路PIXにわたって連続する。図2に示すように、画素電極42は画素回路PIX内の回路点(ノード)pに接続される。対向電極44には電位制御回路36から共通電位VCOMが供給される。なお、対向電極44が画素電極42と比較して高電位である場合の電気泳動素子40の印加電圧の極性を以下では便宜的に「正極性」と表記する。図3に示すように、対向電極44が画素電極42に対して観察側(表示画像の出力側)に位置し、白色の帯電粒子462Wを正極性に帯電させるとともに黒色の帯電粒子462Bを負極性に帯電させた場合を以下では便宜的に例示する。したがって、電気泳動素子40の階調は、正極性の電圧の印加時には黒色となり、負極性の電圧の印加時には白色となる。
図2の駆動トランジスターTDRは、電気泳動素子40を駆動するNチャネル型の薄膜トランジスターであり、回路点p(画素電極42)と第m行の駆動電位線26とを連結する経路上に配置される。具体的には、駆動トランジスターTDRのドレインが回路点p(画素電極42)に接続され、駆動トランジスターTDRのソースが駆動電位線26に接続される。なお、第1実施形態では駆動トランジスターTDRのドレインおよびソースの電圧の高低が逆転し得るため、電圧の高低のみに着目してドレインとソースとを区別した場合には駆動トランジスターTDRのドレインとソースとが随時に逆転することになるが、以下の説明では便宜的に、駆動トランジスターTDRの駆動電位線26側の端子(第1端子)をソースと表記し、画素電極42側の端子(第2端子)をドレインと表記する。
スイッチSW1は、駆動トランジスターTDRと同様にNチャネル型の薄膜トランジスターで構成され、駆動トランジスターTDRのゲートと回路点pとの間(駆動トランジスターTDRのゲート−ドレイン間)に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。スイッチSW1のゲートは第m行の制御線22に接続される。スイッチSW1がオン状態に遷移すると駆動トランジスターTDRのゲートとドレインとが接続(すなわちダイオード接続)される。
容量素子C1は、電極E1と電極E2とを含む静電容量である。電極E1は第n列の信号線24に接続され、電極E2は駆動トランジスターTDRのゲートに接続される。付加容量素子CPは、電極EP1と電極EP2とを含む静電容量である。電極EP1は回路点pに接続され、電極EP2は接地(GND)される。なお、電気泳動素子40に充分な容量成分が付随するのであれば、電気泳動素子40の容量成分が付加容量素子CPとして利用され得る。
図4は、電気光学装置100の動作の説明図である。図4に示すように、電気光学装置100は、単位期間(フレーム)TUを周期として順次に動作する。第1実施形態の単位期間TUは、「第1期間」としての初期化期間TRSTと、「第2期間」および「第3期間」としての補償期間TCMPと、「第4期間」としての動作期間TDRVとを含んで構成される。初期化期間TRSTでは、各画素回路PIXの回路点p(画素電極42)の電位VPを初期化する初期化動作が実行される。初期化動作は、表示部20内の全部(M×N個)の画素回路PIXについて並列に(一斉に)実行される。
補償期間TCMPでは、各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSを当該駆動トランジスターTDRの閾値電圧VTHに設定する補償動作と、画素回路PIXの指定階調に応じた階調電位VD[m,n]を各画素回路PIXに供給する書込動作とが実行される。補償期間TCMPは、画素回路PIXの各行に対応するM個の選択期間Q[1]〜Q[M]に区分される。補償期間TCMP内の第m番目の選択期間Q[m]では、第m行のN個の画素回路PIXについて補償動作と書込動作とが実行される。
動作期間TDRVでは、補償期間TCMPで各画素回路PIXに供給された階調電位VD[m,n]に応じて電気泳動素子40の階調が可変に制御される。具体的には、動作期間TDRVのうち階調電位VD[m,n]に応じた時間長の期間にて駆動トランジスターTDRをオン状態に制御することで電気泳動素子40の階調を制御する駆動動作(パルス幅変調)が実行される。駆動動作は、表示部20内の全部(M×N個)の画素回路PIXについて並列に(一斉に)実行される。
図5は、第m行の第n列に位置する画素回路PIXにおける駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの説明図である。図4および図5を参照して、以上に概説した各期間(TRST,TCMP,TDRV)での動作を説明する。図5に示すように、初期化期間TRSTの直前では、容量素子C1の電極E1に供給される指示信号X[n]が所定の電位(以下「基準電位」という)VCに設定され、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが電位VG0に設定された場合を想定する。
[1]初期化期間TRST
初期化期間TRSTが開始すると、列駆動回路34は、図4および図6に示すように、各信号線24の指示信号X[1]〜X[N]を基準電位VCから初期化電位VRSTに変化させる。信号線24と駆動トランジスターTDRのゲートとの間には容量素子C1が介在するから、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C1の容量結合で指示信号X[n]の電位に連動して変化する。駆動トランジスターTDRのゲート容量を便宜的に無視すると、電位VGは、図5に示すように、初期化期間TRSTの直前の電位VG0から指示信号X[n]の電位の変化量(VRST−VC)だけ高い電位VG1(VG1=VG0+(VRST−VC))に変化する。他方、行駆動回路32は、各駆動電位線26の駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を低位側電位VDR_Lから高位側電位VDR_Hに変化させる。なお、制御信号GA[m]はローレベルに維持されるから、初期化期間TRSTではスイッチSW1はオフ状態を維持する。
指示信号X[n]の初期化電位VRSTは、駆動電位VDR[m](駆動トランジスターTDRのソースの電位)が高位側電位VDR_Hに設定された状態で駆動トランジスターTDRがオン状態を維持する(VGS=VG1−VDR_H=VG0+(VRST−VC)−VDR_H>VTH)ように設定される。以上のように初期化期間TRSTでは駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移するから、図6に矢印で示すように、駆動電位VDR[m]の高位側電位VDR_Hが、駆動電位線26から駆動トランジスターTDRのソースおよびドレインを経由して回路点p(画素電極42)に供給される。すなわち、回路点pの電位VPが高位側電位VDR_Hに初期化される(初期化動作)。
初期化期間TRSTにおいて、電位制御回路36は、対向電極44の共通電位VCOMを低位側電位VCOM_Lに維持する。したがって、駆動電位線26から画素電極42に供給される駆動電位VDR[m]の高位側電位VDR_Hと対向電極44の低位側電位VCOM_Lとの差分(VDR_H−VCOM_L)に相当する負極性の電圧(以下「逆方向バイアス」という)が電気泳動素子40に印加される。以上に説明した逆方向バイアスの印加で、表示部20内の全部の電気泳動素子40の階調は白色側に遷移する。また、電極EP1が回路点pに接続された付加容量素子CPには、駆動電位VDR[m]の高位側電位VDR_Hに応じた電荷が充電される。すなわち、付加容量素子CPは高位側電位VDR_Hを保持する。
初期化期間TRSTが終了すると、列駆動回路34は、図4および図7に示すように、各信号線24の指示信号X[1]〜X[N]を初期化電位VRSTから基準電位VCに変化させる。駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、直前の電位VG1(VG1=VG0+(VRST−VC))から指示信号X[n]の変化量(VRST−VC)だけ低下して初期化期間TRSTの直前の基準電位VG0に設定される。したがって、初期化期間TRSTの終了とともに駆動トランジスターTDRはオフ状態に遷移し、回路点pに対する高位側電位VDR_Hの供給は停止する。駆動電位VDR[m]は、初期化期間TRSTの終了後も引続き高位側電位VDR_Hに維持される。
[2]補償期間TCMP
図4に示すように、補償期間TCMP内の各選択期間Q[m]は、「第2期間」としての補償準備期間QAと「第3期間」としての補償実行期間QBとに区分される。補償準備期間QAでは、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが所定の電位(以下「補償初期値」という)VINIに設定され、補償実行期間QBでは、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが自身の閾値電圧VTHに設定される。対向電極44の共通電位VCOMは、補償期間TCMPでも低位側電位VCOM_Lに維持される。
選択期間Q[m]の補償準備期間QAにおいて、列駆動回路34は、図4および図8に示すように、指示信号X[n]を階調電位VD[m,n]に設定する(書込動作)。階調電位VD[m,n]は、第m行の第n列に位置する画素回路PIXの指定階調に応じて可変に設定される。駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C1の容量結合で、指示信号X[n]の電位に連動して変化する。具体的には、電位VGは、図5に示すように、初期化期間TRSTの直後の電位VG0と比較して指示信号X[n]の電位の変化量(VD[m,n]−VC)だけ高い電位VG2(VG2=VG0+(VD[m,n]−VC))に変化する。
行駆動回路32は、図4および図9に示すように、補償準備期間QAにて制御信号GA[m]をハイレベルに設定することで第m行の各画素回路PIXのスイッチSW1をオン状態に制御する。スイッチSW1がオン状態に遷移すると、図9に示すように、付加容量素子CPが容量素子C1の電極E2(駆動トランジスターTDRのゲート)に接続され、初期化期間TRSTで容量素子C1に蓄積された電荷が駆動トランジスターTDRのゲート(容量素子C1)に移動する。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、図5に示すように、直前の電位VG2(あるいは基準電位VC)を上回る補償初期値VINIに変化する。具体的には、補償初期値VINIは、容量素子C1の容量値c1と付加容量素子CPの容量値cPとを含む以下の数式(1)で表現される。
VINI=αp・VDR_H+(1−αp)VG2 ……(1)
(αp=cP/(cP+c1))
選択期間Q[m]の補償実行期間QBでは、補償準備期間QAと同様に、指示信号X[n]が階調電位VD[m,n]に維持されるとともにスイッチSW1がハイレベルの制御信号GA[m]でオン状態に維持される。また、補償実行期間QBが開始すると、行駆動回路32は、図4および図10に示すように、駆動トランジスターTDRのソースに供給される駆動電位VDR[m]を高位側電位VDR_Hから低位側電位VDR_Lに低下させる。駆動電位VDR[m]の高位側電位VDR_Hおよび低位側電位VDR_Lは、数式(1)の補償初期値VINIと低位側電位VDR_Lとの差分(すなわち駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGS)が閾値電圧VTHを上回るように設定される。したがって、補償実行期間QBの始点で駆動電位VDR[m]が低位側電位VDR_Lに低下すると、駆動トランジスターTDRはオン状態に遷移する。数式(1)から理解されるように、付加容量素子CPの容量値cPが容量素子C1の容量値c1に対して大きいほど(すなわち係数αpが大きいほど)、または初期化期間TRSTにて回路点pに供給される高位側電位VDR_Hが電位VG2と比較して高いほど、補償初期値VINIを、補償実行期間QBにて駆動トランジスターTDRを確実にオン状態に制御し得る高電位に設定することが可能である。
補償実行期間QBでもスイッチSW1のオン状態(駆動トランジスターTDRのダイオード接続)は維持されるから、駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移すると、図10に矢印で示すように、駆動トランジスターTDRのゲートの電荷が、スイッチSW1と回路点pと駆動トランジスターTDRのドレインおよびソースとを経由して駆動電位線26に放電される。したがって、図5に示すように、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは補償初期値VINIから経時的に低下し、ゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHに到達した時点で駆動トランジスターTDRはオフ状態に遷移する(補償動作)。
選択期間Q[m]の補償実行期間QBが終了すると、行駆動回路32は、図4および図11に示すように、制御信号GA[m]をローレベルに変化させることで第m行の各画素回路PIXのスイッチSW1をオフ状態に制御する。すなわち、駆動トランジスターTDRのダイオード接続が解除される。以上の説明から理解されるように、補償実行期間QBの終点では、容量素子C1の電極E1に階調電位VD[m,n]が供給された状態で、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが電位VG_TH(駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHとなる電位(VG_TH−VDR_L=VTH))に設定される。
補償期間TCMPの選択期間Q[1]〜Q[M]の各々で以上の動作が順次に実行される。なお、各画素回路PIXの容量素子C1は信号線24に直接に接続されているから、選択期間Q[m]で指示信号X[n]が階調電位VD[m,n]に変化すると、第m行以外の各行の画素回路PIXにおける容量素子C1の電極E1の電位が変化する。そして、電極E1の電位に連動して駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが変化し、駆動トランジスターTDRがオン状態となる場合がある。しかし、補償期間TCMP内では対向電極44の共通電位VCOMが低位側電位VCOM_Lに維持されるから、駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移したとしても電気泳動素子40の階調には影響しない。
[3]動作期間TDRV
補償期間TCMPの経過後の動作期間TDRVが開始すると、電位制御回路36は、図4および図12に示すように、対向電極44の共通電位VCOMを高位側電位VCOM_Hに設定する。他方、行駆動回路32は、駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を、各選択期間Q[m]の補償実行期間QBから引続き低位側電位VDR_Lに維持する。
他方、列駆動回路34は、図4および図12に示すように、動作期間TDRVにて指示信号X[1]〜X[N]を電位W(t)に設定する。図4に示すように、電位W(t)は、基準電位VCを変動範囲内に含むように(例えば基準電位VCを中央値として)電位VLと電位VH(VH>VL)との間で経時的に変化する。本実施形態の電位W(t)は、動作期間TDRVの始点から終点にかけて電位VLから電位VHまで直線的に変化するランプ波形(鋸歯状波)に制御される。したがって、各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRにおいては、駆動電位線26の駆動電位VDR[m](ソースの電位)が低位側電位VDR_Lに維持された状態で、指示信号X[n]の電位W(t)に連動してゲートの電位VGが変化(上昇)する。すなわち、動作期間TDRVにおいては駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが経時的に増加する。
補償期間TCMPでは容量素子C1の電極E1に階調電位VD[m,n]が供給された状態で駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHとなるようにゲートの電位VG(VG_TH)が設定される。したがって、動作期間TDRVでは、指示信号X[n]の電位W(t)が各画素回路PIXの階調電位VD[m,n]に到達した時点で、図12に示すように、当該画素回路PIXの駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが自身の閾値電圧VTHに到達して駆動トランジスターTDRはオン状態に遷移する。すなわち、第m行の第n列に位置する画素回路PIXの駆動トランジスターTDRは、動作期間TDRVのうち当該画素回路PIXの指定階調(階調電位VD[m,n])に応じた可変の時点にてオフ状態からオン状態に遷移する。以上の説明から理解されるように、画素回路PIXは、階調電位VD[m,n]と電位W(t)とを比較する比較回路として機能する。
図13は、動作期間TDRVにおいて駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に遷移する時点(t1,t2,t3)が階調電位VD[m,n]に応じて変化する様子を例示した模式図である。指示信号X[n]の電位の変化が破線で図示され、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの変化が実線で図示されている。
図13の部分(A)では、選択期間Q[m]の補償実行期間QBにて階調電位VD[m,n]を電位VD_1に設定した場合が想定されている。電位VD_1は、電位W(t)の振幅中心に相当する基準電位VCと同電位である。動作期間TDRVの始点で指示信号X[n]の電位W(t)が電位VLに変化すると、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、補償期間TCMPで設定された電位VG_THと比較して、階調電位VD_1と電位VLとの電位差δ1だけ低い電位VG_1に変化する。そして、電位W(t)に連動して電位VGは電位VG_1から経時的に増加し、電位VG_THに到達した時点(すなわち電位W(t)が階調電位VD_1に到達した時点)t1で、駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に遷移する。
図13の部分(B)では、補償実行期間QBにて階調電位VD[m,n]を基準電位VC(VD_1)よりも高い電位VD_2に設定した場合が想定されている。動作期間TDRVの始点における駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの変化量δ2は、階調電位VD_2が高い分だけ図13の部分(A)の変化量δ1よりも大きいから、動作期間TDRVの開始の直後における駆動トランジスターTDRのゲートの電位VG_2は図13の部分(A)の電位VG_1を下回る。したがって、駆動トランジスターTDRは、図13の部分(A)の時点t1よりも遅い時点t2でオン状態に遷移する。
また、図13の部分(C)では、補償実行期間QBにて階調電位VD[m,n]を基準電位VC(VD_1)よりも低い電位VD_3に設定した場合が想定されている。動作期間TDRVの始点における駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの変化量δ3は、階調電位VD_3が低い分だけ図13の部分(A)の変化量δ1よりも小さいから、動作期間TDRVの開始の直後における駆動トランジスターTDRのゲートの電位VG_3は図13の部分(A)の電位VG_1を上回る。したがって、駆動トランジスターTDRは、図13の部分(A)の時点t1よりも早い時点t3でオン状態に遷移する。
図14は、階調電位VD[m,n]および基準電位VCの差分値Δ(Δ=VD[m,n]−VC)と、動作期間TDRV内で駆動トランジスターTDRを通過する電荷の総量(換言すると動作期間TDRVのうち駆動トランジスターTDRがオン状態となる時間の割合)との関係(論理値)のグラフである。縦軸の数値は最大値を100%として正規化されている。図13および図14から理解されるように、第1実施形態では、階調電位VD[m,n]が高いほど(基準電位VCとの差分値Δが大きいほど)、動作期間TDRVのうち駆動トランジスターTDRがオン状態となる時間(駆動トランジスターTDRを通過する電荷量)が減少する。
階調電位VD[m,n]に応じた時点で駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移すると、駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lが駆動電位線26から駆動トランジスターTDRを経由して画素電極42に供給されるから、駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lと共通電位VCOMの高位側電位VCOM_Hとの差分に相当する正極性の電圧(以下「順方向バイアス」という)が電気泳動素子40に印加される。したがって、電気泳動素子40の黒色の帯電粒子462Bが観察側に移動するとともに白色の帯電粒子462Wが背面側に移動して表示階調は黒色側に遷移する。動作期間TDRVが終了すると、電位制御回路36は共通電位VCOMを低位側電位VCOM_L(VCOM_L=VDR_L)に変化させる。したがって、電気泳動素子40に対する電圧の印加は終了する。
以上のように階調電位VD[m,n]に応じた可変の時間長にて順方向バイアスが電気泳動素子40に印加されるから(パルス幅変調)、各画素回路PIXの電気泳動素子40の階調は、当該画素回路PIXの階調電位VD[m,n]に応じて多段階に制御される。具体的には、階調電位VD[m,n]が低い(動作期間TDRV内で駆動トランジスターTDRがオン状態になる時間長が長い)ほど、電気泳動素子40の階調は低階調(黒色に近い階調)に制御される。したがって、白色や黒色に加えて中間調を含む多階調の画像が表示部20に表示される。そして、単位期間TUが随時に反復されることで表示画像が変更される。
以上に説明した第1実施形態では、初期化期間TRSTにて駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移することで回路点pの電位VPが高位側電位VDR_Hに初期化される。したがって、補償実行期間QBにて駆動トランジスターTDRがダイオード接続された場合にドレイン(ゲート)−ソース間に確実に電流を流す(すなわち補償動作を実行させる)ことが可能である。すなわち、高抵抗な電気光学素子(電気泳動素子40)を採用した構成にも関わらず、駆動トランジスターTDRの特性(閾値電圧VTH)の誤差を有効に補償する(ひいては表示画像の階調斑を抑制する)ことが可能である。そして、駆動トランジスターTDRをオン状態に制御することで回路点pに高位側電位VDR_Hが供給されるから、回路点pの電位VPの初期化(高位側電位VDR_Hの供給)に専用される要素を画素回路PIXに搭載する必要はない。したがって、画素回路PIXの構成が簡素化されるという利点もある。
ところで、補償実行期間QBにて補償動作を開始するには、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHを上回るように駆動トランジスターTDRのソースの電位(駆動電位VDR[m])をゲートの電位VGに対して低下させる必要がある。第1実施形態では、補償準備期間QAにて付加容量素子CPと容量素子C1とを接続することで駆動トランジスターTDRのゲートの電位VG(VG2)が補償初期値VINIまで上昇するから、補償準備期間QAで電位VGを上昇させない構成(以下「対比例」という)と比較すると、駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lに必要な条件が緩和されるという利点がある。
例えば、閾値電圧VTHが1Vであると仮定し、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが図8の電位VG2に設定された状態で補償動作を開始する対比例の場合(すなわち図9の補償準備期間QAを省略した構成)を想定する。電位VG2が−3Vである場合、対比例のもとで補償動作を実現するには駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lを−4Vに設定する必要がある。他方、第1実施形態では、補償準備期間QAにて駆動トランジスターTDRのゲートに付加容量素子CPを接続することで電位VGは例えば3Vの補償初期値VINIまで上昇するから、駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lを2V以下に設定すれば足りる。すなわち、駆動電位VDR[m]の低位側電位VDR_Lに必要な条件が緩和されるから、第1実施形態のように駆動電位VDR[m]の各電位(VDR_H,VDR_L)を共通電位VCOMの各電位(VCOM_H,VCOM_L)と同電位に設定することが可能である。以上のように各電位を共通化する(電位の種類数を削減する)ことで、各電位を生成するための構成が簡素化されるという利点がある。しかも、補償実行期間QBでの補償動作のために補償準備期間QAにて駆動トランジスターTDRをダイオード接続することで、付加容量素子CPと容量素子C1とが接続されて電位VGが上昇する。すなわち、駆動トランジスターTDRのダイオード接続とともに補償初期値VINIが設定される。したがって、例えば補償動作前に電位VGを上昇させる専用の要素を画素回路PIX内に特別に設置した構成と比較して、画素回路PIXの構成を簡素化することも可能である。
ところで、電気泳動素子40に片極性の電圧(直流成分)を印加し続ける構成では、電気泳動素子40の特性が劣化する可能性がある。第1実施形態においては、動作期間TDRVでは電気泳動素子40に対する順方向バイアスの印加と停止とが選択的に実行される(すなわち、動作期間TDRVでは電気泳動素子40に負極性の電圧は印加されない)が、初期化期間TRSTでは動作期間TDRVでの印加電圧とは逆極性の逆方向バイアスが電気泳動素子40に印加される。したがって、逆方向バイアスを印加しない構成と比較して、直流成分の印加に起因した電気泳動素子40の劣化を抑制することが可能である。しかも、補償動作の実現のために初期化期間TRSTにて回路点pに供給される高位側電位VDR_Hが、電気泳動素子40に対する逆方向バイアスの印加にも流用されるから、逆方向バイアスの印加に専用される要素を画素回路PIXに設置した構成と比較して画素回路PIXの構成が簡素化されるという利点もある。
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
第1実施形態では、初期化期間TRSTにて付加容量素子CPに蓄積された電荷を補償準備期間QAにて駆動トランジスターTDRのゲートに供給することで電位VGを補償初期値VINI(電位VG0よりも高い電位)に設定した。第2実施形態では、補償準備期間QAにおいて駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGを補償初期値VINIに設定(昇圧)する方法が第1実施形態とは相違する。画素回路PIXの構成は第1実施形態と同様である。
図15は、第2実施形態における単位期間TU内の動作の説明図である。図15から理解されるように、補償準備期間QA以外の各期間(初期化期間TRST,補償実行期間QB,動作期間TDRV)での動作は第1実施形態と同様である。そこで、以下では選択期間Q[m]内の補償準備期間QAでの動作のみを説明する。
図16は、選択期間Q[m]内の動作の説明図である。図15および図16に示すように、列駆動回路34は、選択期間Q[m]の補償準備期間QAの始点taにて指示信号X[n]を基準電位VCから初期化電位VRSTに上昇させる。駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、始点taでの指示信号X[n]の変化に連動して電位VG0から電位VG1に上昇する。時点taでは、制御信号GA[m]がローレベルに設定されることでスイッチSW1はオフ状態を維持する。すなわち、付加容量素子CPは駆動トランジスターTDRのゲート(容量素子C1)から電気的に絶縁された状態にある。したがって、電位VGの増加量δL-H(VG1=VG0+δL-H)は、指示信号X[n]の電位の変化量(VRST−VC)と同等である。
補償準備期間QA内の時点tbにおいて、行駆動回路32は、制御信号GA[m]をハイレベルに変化させることで第m行の各画素回路PIXのスイッチSW1をオン状態に遷移させる。したがって、駆動トランジスターTDRがダイオード接続されるとともに付加容量素子CPが駆動トランジスターTDRのゲートに接続される。時点taにてゲートの電位VGが電位VG1に上昇することで駆動トランジスターTDRはオン状態となるから、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは時点tb以後に経時的に低下し、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHとなる電位VG2(VG2=VDR_H+VTH)に到達すると駆動トランジスターTDRがオフ状態に遷移する。
時点tbの経過後の時点tcが到来すると、列駆動回路34は、指示信号X[n]を初期化電位VRSTから階調電位VD[m,n]に低下させる。駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、指示信号X[n]の電位の変化に連動して電位VG2から補償初期値VINIに低下する。時点tcではオン状態のスイッチSW1を介して付加容量素子CPが駆動トランジスターTDRのゲートに接続されている。したがって、時点tcの直後での電位VGの低下量δH-L(VINI=VG2−δH_L)は、指示信号X[n]の電位の変化量(VRST−VD[m,n])を容量素子C1の容量値c1と付加容量素子CPの容量値cPとに応じて分割した電圧(δH_L=α1(VRST−VD[m,n]),α1=c1/(c1+cP))となる。すなわち、時点tcでの電位VGの変化量δH_Lは、時点taでの電位VGの変化量δL_Hを下回る。以上に説明した変化量δH_Lと変化量δL_Hとの差異を利用して、補償初期値VINIは、第1実施形態と同様に、初期化期間TRSTの開始前のゲートの電位VG0を上回る電位に設定される。補償準備期間QAの経過後の補償実行期間QBでは、第1実施形態と同様に、駆動電位VDR[m]が低位側電位VDR_Lに変化することで補償動作が実行される。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの変化量δL_Hと変化量δH_Lとの差異が補償初期値VINIの設定に利用されるから、付加容量素子CPに蓄積される電荷が少ない場合でも補償初期値VINIを高い電位に設定できるという利点がある。したがって、付加容量素子CPの電荷を補償初期値VINIの設定に利用する第1実施形態と比較して、初期化期間TRSTで付加容量素子CPを充電する高位側電位VDR_Hが低い電位で足りるという利点がある。他方、第2実施形態においては、各選択期間Q[m]の補償準備期間QAにて指示信号X[n]を初期化電位VRSTに上昇させる必要があるのに対し、第1実施形態では、補償準備期間QAにて指示信号X[n]を初期化電位VRSTに変化させる必要はない。したがって、第1実施形態によれば、指示信号X[n]の電位の変化の回数が第1実施形態と比較して削減され、信号線24の充放電に浪費される電力が削減されるという利点がある。
<C:第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態における画素回路PIXの回路図である。図17に示すように、第3実施形態の画素回路PIXは、第1実施形態の画素回路PIXに容量素子C2を追加した構成である。容量素子C2は、電極E3と電極E4とを含む静電容量である。電極E3は容量線48に接続され、電極E4は駆動トランジスターTDRのゲートに接続される。容量線48は、表示部20内の全部の画素回路PIXに共通に接続された配線である。電位制御回路36は、容量電位SCを生成して容量線48に供給する。
第1実施形態では、初期化期間TRSTにて指示信号X[n]を初期化電位VRSTに設定することで初期化動作を実行し、動作期間TDRVにて指示信号X[n]を可変の電位W(t)に設定することで駆動動作を実行した。第3実施形態では、指示信号X[n]の代わりに容量電位SCを利用して初期化動作および駆動動作を実現する。なお、補償準備期間QAでの補償初期値VINIの設定には、第2実施形態と同様の方法(電位VGの増加量δL-Hと減少量δH-Lとの差分を利用する方法)が採用される。
図18は、第3実施形態における単位期間TU内の動作の説明図である。第1実施形態と同様に、初期化期間TRSTでは初期化動作が各画素回路PIXについて並列に実行され、補償期間TCMPでは書込動作および補償動作が行単位で順次に実行され、動作期間TDRVでは駆動動作が各画素回路PIXについて並列に実行される。
[1]初期化期間TRST
初期化期間TRSTでは、図18に示すように、制御信号GA[1]〜GA[M]がローレベルに設定されることで各画素回路PIXのスイッチSW1はオフ状態に維持され、対向電極44の共通電位VCOMは低位側電位VCOM_Lに設定される。また、列駆動回路34は、指示信号X[n]を基準電位VCに維持する。
また、電位制御回路36は、初期化期間TRSTが開始すると、容量線48の容量電位SCを電位V0から初期化電位VRSTに変化させる。電位V0は、例えば基準電位VCと同電位(例えば接地電位(0V))に設定される。容量線48と駆動トランジスターTDRのゲートとの間には容量素子C2が介在するから、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C2の容量結合で容量電位SCに連動して電位VG0から電位VG1に変化する。容量電位SCに連動した電位VGの変化量δL_H(VG1=VG0+δL_H)は、容量電位SCの変化量(VRST−V0)を容量素子C1の容量値c1と容量素子C2の容量値c2とに応じて分割した電圧(δL_H=β2(VRST−V0),β2=c2/(c1+c2))となる。
行駆動回路32は、初期化期間TRSTにおいて、各駆動電位線26の駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を高位側電位VDR_Hに設定する。容量電位SCの初期化電位VRSTは、駆動電位VDR[m]が高位側電位VDR_Hに設定された状態で駆動トランジスターTDRがオン状態を維持する(VGS=VG1−VDR_H>VTH)ように設定される(例えばVRST=25V)。以上のように初期化期間TRSTでは駆動トランジスターTDRがオン状態に制御されるから、第1実施形態と同様に、回路点pの電位VPは、駆動電位線26から駆動トランジスターTDRを経由して供給される高位側電位VDR_Hに初期化される(初期化動作)。したがって、電気泳動素子40には逆方向バイアスが印加され、付加容量素子CPには高位側電位VDR_Hが保持される。初期化期間TRSTが終了すると、容量電位SCは初期化期間TRSTの直前の電位V0に設定され、駆動トランジスターTDRはオフ状態に遷移する。したがって、回路点pに対する高位側電位VDR_Hの供給は停止する。
[2]補償期間TCMP
補償期間TCMPの選択期間Q[m](QA,QB)では、列駆動回路34が指示信号X[n]を階調電位VD[m,n]に設定する。電位制御回路36は、補償準備期間QAの始点taにて容量電位SCを初期化電位VRSTに上昇させる。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量電位SCの変化に連動して電位VG1に上昇する。時点taではスイッチSW1がオフ状態に維持されることで容量素子CPは駆動トランジスターTDRのゲートから電気的に絶縁された状態にあるから、時点taでの電位VGの変化量δL_Hは、初期化期間TRSTでの変化と同様に、容量電位SCの電位の変化量(VRST−V0)を容量素子C1と容量素子C2とで分割した電圧(δL_H=β2(VRST−V0))となる。
選択期間Q[m]内の補償準備期間QAの時点tbにおいて、行駆動回路32は、制御信号GA[m]をハイレベルに変化させることで第m行の各画素回路PIXのスイッチSW1をオン状態に制御する。したがって、第2実施形態と同様に、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、ゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHとなる電位VG2(VG2=VDR_H+VTH)まで低下する。
時点tbの経過後の時点tcが到来すると、電位制御回路36は、容量電位SCを初期化電位VRSTから電位V0に低下させる。駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量電位SCの変化に連動して電位VG2から補償初期値VINIに低下する。時点tcでは付加容量素子CPが駆動トランジスターTDRのゲートに接続されているから、時点tcでの電位VGの変化量δH_L(VINI=VG2−δH_L)は、容量電位SCの変化量(VRST−V0)を容量素子C1と容量素子C2と付加容量素子CPとで分割した電圧(δH_L=γ2(VRST−V0),γ2=c2/(c1+c2+cP))となる。すなわち、時点tcでの電位VGの変化量δH_Lは、時点taでの電位VGの変化量δL_Hを下回る。以上に説明した変化量δH_Lと変化量δL_Hとの差異を利用して、補償初期値VINIは、第1実施形態と同様に、初期化期間TRSTの開始前のゲートの電位VG0を上回る電位に設定される。
選択期間Q[m]のうち補償準備期間QAの経過後の補償実行期間QBでは、駆動電位VDR[m]が低位側電位VDR_Lに変化することで補償動作が実行される。すなわち、第1実施形態や第2実施形態と同様に、補償実行期間QBの終点では、容量素子C1の電極E1に階調電位VD[m,n]が供給された状態で、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが電位VG_TH(VG_TH−VDR_L=VTH))に設定される。
[3]動作期間TDRV
動作期間TDRVでは、信号線24の指示信号X[1]〜X[N]が基準電位VCに維持されるとともに駆動電位線26の駆動電位VDR[1]〜VDR[M]が低位側電位VDR_Lに維持された状態で、電位制御回路36が容量電位SCを電位W(t)に設定する。電位W(t)は、第1実施形態と同様に、動作期間TDRVの始点から終点にかけて電位VLから電位VHまで経時的に変化する。容量線48と駆動トランジスターTDRのゲートとの間には容量素子C2が介在するから、各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C2の容量結合で電位W(t)に連動する。したがって、第1実施形態と同様に、動作期間TDRVのうち階調電位VD[m,n]に応じた時点で駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に遷移し、電気泳動素子40に対する順方向バイアスの印加が開始される。なお、第1実施形態では容量素子C1のみが駆動トランジスターTDRのゲートに付随するのに対し、本実施形態では容量素子C1および容量素子C2が駆動トランジスターTDRのゲートに付随するから、本実施形態において電位VGを第1実施形態と同等の範囲で変化させるには、容量電位SCの電位W(t)を第1実施形態の電位W(t)と比較して大きい振幅で変化させる必要がある。
以上に説明した第3実施形態でも第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、初期化動作や駆動動作に容量電位SCを利用するから、初期化期間TRSTにて指示信号X[n]を初期化電位VRSTに変化させる動作や動作期間TDRVにて指示信号X[n]を電位VLから電位VHまで変化させる動作は不要である。すなわち、第3実施形態によれば、指示信号X[n]の振幅が第1実施形態と比較して低減されるから、列駆動回路34に必要な耐圧性能が低減されるという利点がある。他方、第1実施形態では、駆動トランジスターTDRのゲートに容量素子C1のみが付随するから、駆動トランジスターTDRに容量素子C1および容量素子C2が付随する第3実施形態と比較して、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGを変化させるときの電荷の充放電が低減される(ひいては消費電力が削減される)という利点がある。
<D:第4実施形態>
動作期間TDRVにて駆動トランジスターTDRをオフ状態からオン状態に遷移させるには、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSを経時的に変化させる必要がある。電圧VGSを変化させる方法としては、ゲートの電位VGを変化させる方法とソースの電位を変化させる方法とがある。指示信号X[n]を電位W(t)に設定する第1実施形態や、容量電位SCを電位W(t)に設定する第3実施形態は、駆動トランジスターTDRのゲートの電圧VGを変化させる前者の方法の具体例である。他方、以下に説明する第4実施形態は、駆動トランジスターTDRのソースの電位(すなわち駆動電位VDR[m])を動作期間TDRVにて経時的に変化させる後者の方法を採用する。画素回路PIXの構成は第1実施形態と同様である。
図19は、第4実施形態における単位期間TU内の動作の説明図である。初期化期間TRSTおよび補償期間TCMPでの動作は第1実施形態と同様であるから説明を省略し、以下では動作期間TDRVでの動作を説明する。
列駆動回路34は、動作期間TDRV内において指示信号X[1]〜X[N]を基準電位VCに維持する。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは動作期間TDRV内で固定される。他方、行駆動回路32は、各駆動電位線26(各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRのソース)に供給される駆動電位VDR[1]〜VDR[M]を電位W(t)に設定する。図19に示すように、電位W(t)は、動作期間TDRVの始点から終点にかけて電位VHから電位VL(VL=VDR_L=0V)まで経時的に低下する。したがって、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSは、第1実施形態から第3実施形態と同様に動作期間TDRV内で経時的に増加する。そして、各駆動トランジスターTDRの電圧VGSが自身の閾値電圧VTHに到達した時点で駆動トランジスターTDRがオン状態に変化して電気泳動素子40に駆動電位VDR[m](電位W(t))が供給される。
図20の部分(A)および部分(B)は、指示信号X[n]の電位(破線)と駆動トランジスターTDRのゲートの電位VG(実線)と駆動電位VDR[m](鎖線)との経時的な変化を例示する模式図である。図20の部分(A)では、階調電位VD[m,n]を電位VD_1(VD_1>VC)に設定した場合が想定されている。動作期間TDRVの始点にて指示信号X[n]が基準電位VCに設定されると、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、補償期間TCMPでの設定後の電位VG_THと比較して、階調電位VD_1と基準電位VCとの差分δ1だけ低い電位VG_1に変化する。そして、駆動電位VDR[m]の電位W(t)が経時的に低下し、電位VG_1を閾値電圧VTHだけ下回る電位(VG_1−VTH)に到達した時点t1で、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHに到達して駆動トランジスターTDRはオン状態に遷移する。
他方、図20の部分(B)は、階調電位VD[m,n]を電位VD_1よりも低い電位VD_2(VD_2<VC)に設定した場合が想定されている。動作期間TDRVが開始すると、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、補償期間TCMPで設定された電位VG_THと比較して階調電位VD_2と基準電位VCとの差分δ2だけ高い電位VG_2に変化する。そして、電位VG_2を閾値電圧VTHだけ下回る電位(VG_2−VTH)まで駆動電位VDR[m]の電位W(t)が低下した時点t2で、駆動トランジスターTDRはオン状態に遷移する。
以上に説明したように、動作期間TDRV内で駆動トランジスターTDRはオフ状態からオン状態に遷移する時点(t1,t2)は階調電位VD[m,n]に応じて可変に制御される。したがって、以上の各形態と同様に、各画素回路PIXの電気泳動素子40の階調は、当該画素回路PIXの階調電位VD[m,n]に応じて多段階に制御される。具体的には、図20の例示から理解されるように、階調電位VD[m,n]が低いほど駆動トランジスターTDRがオン状態となる時間長は長くなるから、電気泳動素子40の階調は低階調(黒色に近い階調)に制御される。第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
<E:第5実施形態>
図21は、第5実施形態に係る電気光学装置100のブロック図である。図21に示すように、第5実施形態の電気光学装置100の表示部20には、相互に並行するM本の制御線22およびM本の制御線28と、制御線22および制御線28に交差するN本の信号線24とが形成される。表示部20内の全部の画素回路PIXは、駆動電位線26および容量線48に共通に接続される。電位制御回路36は、駆動電位VDRを駆動電位線26に供給するとともに容量電位SCを容量線48に供給する。すなわち、容量電位SCおよび駆動電位VDRが全部の画素回路PIXに共通に供給される。
図22は、第5実施形態の画素回路PIXの回路図である。図22では、第m行の第n列に位置する1個の画素回路PIXが代表的に図示されている。図22に示すように、画素回路PIXは、第1実施形態の画素回路PIXにスイッチSW2と容量素子C2とを追加した構成である。容量素子C2は、第3実施形態と同様に、容量線48に接続された電極E3と駆動トランジスターTDRのゲートに接続された電極E4とを含む静電容量である。
スイッチSW2は、駆動トランジスターTDRやスイッチSW1と同様にNチャネル型の薄膜トランジスターで構成され、第n列の信号線24と容量素子C1の電極E1との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。スイッチSW2のゲートは第m行の制御線28に接続される。図21および図22に示すように、行駆動回路32は、制御信号GA[1]〜GA[M]を各制御線22に供給し、制御信号GB[1]〜GB[M]を各制御線28に供給する。なお、制御信号GA[1]〜GA[M]を生成する回路と制御信号GB[1]〜GB[M]を生成する回路とを別個に搭載した構成も採用され得る。画素回路PIXの他の構成は第1実施形態と同様である。
図23は、第5実施形態における電気光学装置100の動作の説明図である。図23に示すように、電気光学装置100の動作の周期となる単位期間TUは、初期化期間TRSTと補償期間TCMPと書込期間TWRTと動作期間TDRVとを含んで構成される。第1実施形態と同様に、初期化期間TRSTでは全部の画素回路PIXについて並列に初期化動作が実行され、動作期間TDRVでは全部の画素回路PIXについて並列に駆動動作が実行される。
第1実施形態では補償動作を画素回路PIXの行単位で順次に実行したが、第5実施形態では表示部20内の全部の画素回路PIXについて補償動作が補償期間TCMPにて並列に(一斉に)実行される。図23に示すように、補償期間TCMPは、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGを補償初期値VINIに設定する補償準備期間QAと、補償動作を実行する補償実行期間QBとに区分される。他方、書込期間TWRTは、画素回路PIXの各行に対応するM個の選択期間(水平走査期間)H[1]〜H[M]に区分される。選択期間H[m]では第m行のN個の画素回路PIXについて書込動作(階調電位VD[m,n]の供給)が実行される。
図24は、初期化期間TRSTおよび補償期間TCMPにおける駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの説明図であり、図25は、選択期間H[m]および動作期間TDRVにおける駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの説明図である。図23から図25を参照して、以上に概説した各期間(TRST,TCMP,TWRT,TDRV)での動作を説明する。図24に示すように、初期化期間TRSTの直前では、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが電位VG0に設定された場合を想定する。
[1]初期化期間TRST
図23および図26に示すように、列駆動回路34は、初期化期間TRSTにおいて指示信号X[1]〜X[N]を基準電位VCに設定する。また、初期化期間TRSTが開始すると、行駆動回路32は、制御信号GB[1]〜GB[M]をハイレベルに設定することで全部の画素回路PIXのスイッチSW2をオン状態に制御する。したがって、各画素回路PIXの容量素子C1の電極E1には信号線24から指示信号X[n]の基準電位VCが供給される。他方、電位制御回路36は、駆動電位線26の駆動電位VDRを低位側電位VDR_Lから高位側電位VDR_Hに変化させ、対向電極44の共通電位VCOMを低位側電位VCOM_Lに維持する。
図24に示すように、初期化期間TRST内の時点taが到来すると、電位制御回路36は、容量線48の容量電位SCを電位V0(0V)から初期化電位VRSTに変化させる。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C2の容量結合により容量電位SCに連動して電位VG1に上昇する。初期化期間TRSTでは、制御信号GA[1]〜GA[M]がローレベルに設定されることで付加容量素子CPは駆動トランジスターTDRのゲートから電気的に絶縁される。したがって、第3実施形態と同様に、初期化期間TRSTの時点taでの電位VGの変化量δL_H(VG1=VG0+δL_H)は、容量電位SCの変化量(VRST−V0)を容量素子C1と容量素子C2とで分割した電圧(δL_H=β2(VRST−V0),β2=c2/(c1+c2))となる。
容量電位SCの初期化電位VRSTは、駆動電位VDRが高位側電位VDR_Hに設定された状態で駆動トランジスターTDRがオン状態となる電位(例えば30V)に設定される。したがって、初期化期間TRSTでは、図26に矢印で示すように、回路点pの電位VPは、駆動電位線26から駆動トランジスターTDRを経由して供給される高位側電位VDR_Hに初期化される(初期化動作)。すなわち、電気泳動素子40には逆方向バイアスが印加され、付加容量素子CPには高位側電位VDR_Hが保持される。
[2]補償期間TCMP
補償期間TCMPのうち初期化期間TRSTに続く補償準備期間QAが開始すると(図24の時点tb)、行駆動回路32は、図23および図27に示すように、制御信号GB[1]〜GB[M]をハイレベルに維持したまま、制御信号GA[1]〜GA[M]をハイレベルに設定することで各画素回路PIXのスイッチSW1をオン状態に制御する。すなわち、各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRがダイオード接続される。したがって、図24に示すように、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは経時的に低下し、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHとなる電位VG2(VG2=VDR_H+VTH)に到達すると駆動トランジスターTDRがオフ状態に遷移する。
そして、補償準備期間QAの時点tcが到来すると、電位制御回路36は、図23および図28に示すように、容量電位SCを初期化電位VRSTから電位V0に低下させる。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、図24に示すように、容量電位SCの変化に連動して電位VG2から補償初期値VINIに低下する。時点tcでは付加容量素子CPが駆動トランジスターTDRのゲートに接続されているから、時点tcでの電位VGの変化量δH_L(VINI=VG2−δH_L)は、第3実施形態と同様に、容量電位SCの変化量(VRST−V0)を容量素子C1と容量素子C2と付加容量素子CPとで分割した電圧(δH_L=γ2(VRST−V0),γ2=c2/(c1+c2+cP))となる。すなわち、時点tcでの電位VGの変化量δH_Lは、時点taでの電位VGの変化量δL_Hを下回る。以上に説明した変化量δH_Lと変化量δL_Hとの差異を利用して、補償初期値VINIは、第1実施形態と同様に、初期化期間TRSTの開始前のゲートの電位VG0を上回る電位に設定される。
補償実行期間QBが開始すると(図24の時点td)、電位制御回路36は、駆動電位VDRを高位側電位VDR_Hから低位側電位VDR_Lに変化させる。補償実行期間QBではスイッチSW1のオン状態(駆動トランジスターTDRのダイオード接続)が補償準備期間QAから維持される。したがって、駆動電位VDR(駆動トランジスターTDRのソースの電位)が低位側電位VDR_Lに低下することで駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移すると、図29に矢印で示すように、駆動トランジスターTDRのゲートの電荷が、スイッチSW1と回路点pと駆動トランジスターTDRとを経由して駆動電位線26に放電される。したがって、ゲートの電位VGが補償初期値VINIから経時的に低下し、ゲート−ソース間の電圧VGSが閾値電圧VTHに到達した時点で駆動トランジスターTDRはオフ状態に遷移する(補償動作)。
補償実行期間QBが終了すると、行駆動回路32は、図23および図30に示すように、制御信号GA[1]〜GA[M]および制御信号GB[1]〜GB[M]の双方をローレベルに変化させることで各画素回路PIXのスイッチSW1およびスイッチSW2をオフ状態に制御する。したがって、補償期間TCMPの終点では、図30に示すように、表示部20内の全部の画素回路PIXにおいて、容量素子C1の電極E1が基準電位VCに設定された状態で、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが電位VG_TH(VG_TH−VDR_L=VTH)に設定される。
[3]書込期間TWRT
図23および図31に示すように、行駆動回路32は、書込期間TWRT内の選択期間H[1]〜H[M]にて制御信号GB[1]〜GB[M]の各々を順次にハイレベルに設定する。制御信号GA[1]〜GA[M]はローレベルに維持される。制御信号GB[m]がハイレベルとなる選択期間H[m]では、第m行のN個の画素回路PIXの各々のスイッチSW2がオン状態に遷移する。他方、列駆動回路34は、選択期間H[m]において各信号線24の指示信号X[n]を階調電位VD[m,n]に設定する。したがって、図31に示すように、第m行の各画素回路PIXにおける容量素子C1の電極E1の電位は、補償期間TCMPでの設定後の基準電位VCから階調電位VD[m,n]に変化する。
選択期間H[m]にて電極E1の電位が変化量δ(δ=VD[m,n]−VC)だけ変化すると、図25および図31に示すように、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C1の容量結合で電位VG3に変化する。電位VG3は、補償期間TCMPでの設定後の電位VG_THから、電極E1の電位の変化量δを容量素子C1と容量素子C2とで分割した電圧だけ変化させた電位である(VG3=VG_TH+β1・δ,β1=c1/(c1+c2))に設定される。選択期間H[m]が終了すると、制御信号GB[m]がローレベルに設定されることで第m行の各画素回路PIXのスイッチSW2がオフ状態に遷移する。以上に説明した書込動作が各選択期間H[m]にて行単位で順次に実行される。
[4]動作期間TDRV
書込期間TWRTの経過後の動作期間TDRVが開始すると、電位制御回路36は、図23および図32に示すように、駆動電位線26の駆動電位VDRを低位側電位VDR_Lに維持したまま、対向電極44の共通電位VCOMを高位側電位VCOM_Hに変化させる。他方、動作期間TDRVでは、制御信号GA[1]〜GA[M]および制御信号GB[1]〜GB[M]がローレベルに設定されることで、図32に示すように、各画素回路PIXのスイッチSW1およびスイッチSW2はオフ状態を維持する。
電位制御回路36は、容量線48に供給される容量電位SCを電位W(t)に設定する。図23および図25に示すように、電位W(t)は、動作期間TDRVの始点から終点にかけて電位VLから電位VHまで直線的に変化するランプ波形(鋸歯状波)に制御される。具体的には、電位制御回路36は、動作期間TDRVの始点にて電位W(t)を電位V0から電位VLに低下させ、電位V0が電位VLと電位VHとの中央値(電位W(t)の振幅中心)となるように電位W(t)を変化させる。
駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、容量素子C2の容量結合で容量電位SC(電位W(t))に連動して経時的に増加する。まず、動作期間TDRVの始点にて電位W(t)が電位V0から電位VLに変化すると、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、図25に示すように、選択期間H[m]での設定後の電位VG3から電位VG4まで変化量vだけ変化(低下)する。変化量vは、電位W(t)の変化量(V0−VL)を容量素子C1と容量素子C2とで分割した固定値(v=β2(V0−VL),β2=c2/(c1+c2))である。
そして、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、図25に示すように、電位W(t)の変化(VL→VH)に連動して電位VG4から経時的に変化し、電位VG_THに到達した時点で、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSが自身の閾値電圧VTHに到達して駆動トランジスターTDRはオン状態に遷移する。動作期間TDRVの始点での電位VG4は、選択期間H[m]にて階調電位VD[m,n]に応じて設定された電位VG3に依存するから、第m行の第n列に位置する画素回路PIXの駆動トランジスターTDRは、動作期間TDRVのうち当該画素回路PIXの指定階調(階調電位VD[m,n])に応じた可変の時点にてオフ状態からオン状態に遷移する。駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移したときの電気泳動素子40の挙動は第1実施形態と同様である。
図33は、駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に遷移する時点(t1,t2,t3)が階調電位VD[m,n]に応じて変化する様子を例示した模式図である。選択期間H[m]における電極E1の電位の変化が破線で図示され、選択期間H[m]および動作期間TDRVにおける駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの変化が実線で図示されている。
図33の部分(A)では、階調電位VD[m,n]を電位VD_1に設定した場合が想定されている。電位VD_1は基準電位VCと同電位である。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは選択期間H[m]で変化しない。すなわち、選択期間H[m]の終点での電位VG3_1は、補償期間TCMPでの設定後の電位VG_THと同電位に維持される。動作期間TDRVが開始すると、電位VGは、電位VG3_1を電圧vだけ下回る電位VG4_1から経時的に増加する。そして、電位VGが電位VG_TH(=VG3_1)に到達した時点t1で、駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に遷移する。
図33の部分(B)では、階調電位VD[m,n]を基準電位VC(VD_1)よりも高い電位VD_2に設定した場合が想定されている。選択期間H[m]にて指示信号X[n]が基準電位VCから階調電位VD_2に上昇すると、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、指示信号X[n]の電位の変化量δ2(δ2=VD_2−VC)に応じた電位VG3_2(VG_3_2=VG_TH+β1・δ2)まで上昇する。動作期間TDRVの始点にて電位VG3_2を変化量vだけ低下させた電位VG4_2は、図33の部分(A)の電位VG4_1を上回る。したがって、駆動トランジスターTDRは、図33の部分(A)の時点t1よりも早い時点t2でオン状態に遷移する。
図33の部分(C)では、階調電位VD[m,n]を基準電位VC(VD_1)よりも低い電位VD_3に設定した場合が想定されている。選択期間H[m]において、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、指示信号X[n]の電位の変化量δ3(δ3=VD_3−VC<0)に応じた電位VG3_3(VG_3_3=VG_TH+β1・δ3)まで低下するから、動作期間TDRVの始点における電位VG4_3(VG4_3=VG3_3−v)は、図33の部分(A)の電位VG4_1を下回る。したがって、駆動トランジスターTDRは、図33の部分(A)の時点t1よりも遅い時点t3でオン状態に遷移する。
図34は、図14と同様に、階調電位VD[m,n]および基準電位VCの差分値Δ(Δ=VD[m,n]−VC)と、動作期間TDRV内で駆動トランジスターTDRを通過する電荷の総量との関係のグラフである。図33および図34から理解されるように、第5実施形態では、第1実施形態(図14)とは逆に、階調電位VD[m,n]が高いほど(基準電位VCとの差分値Δが大きいほど)、動作期間TDRVのうち駆動トランジスターTDRがオン状態となる時間が増加する。したがって、階調電位VD[m,n]が高い(動作期間TDRV内で駆動トランジスターTDRがオン状態になる時間長が長い)ほど、電気泳動素子40の階調は低階調(黒色に近い階調)に制御される。
以上に説明した第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第5実施形態では、補償期間TCMPにおいて表示部20内の全部の画素回路PIXについて補償動作が並列に実行されるから、補償動作が行単位で実行される第1実施形態と比較して、各画素回路PIXの補償動作に必要な時間を短縮することが可能である。駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSを補償動作で閾値電圧VTHに充分に接近または合致させるには書込動作と比較して長時間が必要となる。したがって、全部の画素回路PIXについて補償動作が並列に実行される第5実施形態によれば、第1実施形態と比較して単位期間TUが短縮されるという利点もある。
また、各画素回路PIXの容量素子C1と信号線24との間にスイッチSW2が介在するから、容量素子C1が直接に信号線24に接続された構成と比較して、信号線24に付随する容量成分が削減される。したがって、信号線24の充放電に浪費される電力を低減できるという利点がある。他方、第1実施形態によれば、各画素回路PIXのトランジスターの総数(2個)が第5実施形態(3個)と比較して削減されるから、画素回路PIXの構成が簡素化される(ひいては高精細化が実現される)という利点がある。なお、第5実施形態における制御信号GA[1]〜GA[M]の波形は共通するから、各画素回路PIXに共通の制御信号GAを供給する構成も採用され得る。
<F:第6実施形態>
第5実施形態では、第2実施形態や第3実施形態と同様に、電位VGの増加量δL_Hと減少量δH_Lとの差分(δL_H>δH_L)を利用して補償準備期間QAで補償初期値VINIを設定した。第6実施形態は、初期化期間TRSTで付加容量素子CPに蓄積された電荷を利用して電位VGを補償初期値VINIに設定する第1実施形態の方法を、第5実施形態での補償初期値VINIの設定に適用した形態である。画素回路PIXの構成は第5実施形態と同様である。
図35は、第6実施形態における電気光学装置100の動作の説明図であり、図36は、初期化期間TRSTおよび補償期間TCMPにおける駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGの遷移を例示する模式図である。第5実施形態と同様に、電位制御回路36は、初期化期間TRSTにおいて、容量電位SCを初期化電位VRSTに設定するとともに駆動電位VDRを高位側電位VDR_Hに設定することで回路点pの電位VPを高位側電位VDR_Hに初期化する。初期化期間TRSTの終点が到来すると、電位制御回路36は、図35および図36に示すように、容量電位SCを初期化電位VRSTから電位V0に変化させる。したがって、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、初期化期間TRSTの開始前の電位VG0に変化する。
初期化期間TRSTの終了後に補償期間TCMPの補償準備期間QAが開始すると、行駆動回路32は、図35および図36に示すように制御信号GA[1]〜GA[M]をハイレベルに設定することで全部の画素回路PIXのスイッチSW1をオン状態に制御する。したがって、初期化期間TRSTで付加容量素子CPに蓄積された電荷がスイッチSW1を経由して駆動トランジスターTDRのゲートに移動し、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGは、直前の電位VG0を上回る補償初期値VINIに変化する。具体的には、補償初期値VINIは、容量素子C1の容量値c1と容量素子C2の容量値c2と付加容量素子CPの容量値cPとに応じた係数γp(γp=cP/(c1+c2+cP))を含む以下の数式(2)で表現される。
VINI=γp・VDR_H+(1−γp)VG2 ……(2)
補償準備期間QAの経過後の補償実行期間QBでは、第5実施形態と同様に、駆動電位VDRが高位側電位VDR_Hから低位側電位VDR_Lに変化することで補償動作が実行される。書込期間TWRTおよび動作期間TDRVでの動作は第5実施形態と同様である。第6実施形態においても第5実施形態と同様の効果が実現される。
<G:第7実施形態>
以上の各形態においては、動作期間TDRVにて電気泳動素子40に順方向バイアス(正極性電圧)を印加するとともに初期化期間TRSTでは電気泳動素子40に逆方向バイアス(負極性電圧)を印加する。したがって、単位期間TU内で逆方向バイアスを印加しない構成(例えば初期化期間TRSTにおいて共通電位VCOMを高位側電位VCOM_Hに維持する構成)と比較すれば、電気泳動素子40に対する直流成分の印加を抑制することが可能である。ただし、順方向バイアスの印加時間と逆方向バイアスの印加時間(初期化期間TRST)とは相違するから、電気泳動素子40に対する直流成分の印加を完全に防止することは困難である。そこで、第7実施形態では、表示画像を変更する場合の複数の単位期間TUについて階調電位VD[m,n]を適宜に選定することで直流成分の印加を防止する。
図37は、第7実施形態における電気光学装置100の動作の説明図である。図37に示すように、表示部20の表示画像を画像IMG1から画像IMG2に変更する場合を想定する。画像IMG1は、白色の背景に黒色の文字「A」を配置した静止画であり、画像IMG2は、白色の背景に黒色の文字「B」を配置した静止画である。画像IMG1が表示された状態から単位期間TU1と単位期間TU2とを経て画像IMG1が画像IMG2に変更される。
図37には、各画素回路PIXの電気泳動素子40に蓄積された電荷量(以下「蓄積電荷量」という)σの時間的な遷移が図示されている。図37の蓄積電荷量σ1は、表示部20内の複数の画素回路PIXのうち画像IMG1の文字「A」を構成する黒色の画素に対応する各画素回路(以下「第1画素回路」という)PIXの電気泳動素子40に蓄積された電荷量を意味する。他方、蓄積電荷量σ2は、表示部20内の複数の画素回路PIXのうち画像IMG1の背景を構成する白色の画素に対応する各画素回路(以下「第2画素回路」という)PIXの電気泳動素子40に蓄積された電荷量を意味する。蓄積電荷量σ(σ1,σ2)が正極性側に増加するほど電気泳動素子40の表示階調は黒色側に遷移する
図37には、各画素回路PIXの電気泳動素子40の印加電圧が模式的に併記されている。動作期間TDRVにおいては、黒色が指定された画素回路PIXの電気泳動素子40に順方向バイアスが印加され、白色が指定された画素回路PIXの電気泳動素子40に電圧は印加されない(すなわち駆動トランジスターTDRがオン状態に遷移しない)。他方、初期化期間TRSTでは、全部の画素回路PIXの電気泳動素子40に対して一律に逆方向バイアスが印加される。順方向バイアスが印加されると電気泳動素子40に+2Qの電荷が供給されて表示階調は黒色側に遷移し、逆方向バイアスが印加されると電気泳動素子40からQの電荷が除去されて表示階調は白色側に遷移する。電圧が印加されない場合(電圧無印加)には電荷の移動(蓄積電荷量σの変化)は発生しない。図37に示すように、画像IMG1が表示された状態(単位期間TU1の開始前)では、第1画素回路PIX(黒色)の電気泳動素子40の蓄積電荷量σ1は+2Qであり、第2画素回路PIX(白色)の電気泳動素子40の蓄積電荷量σ2はゼロである。
単位期間TU1内の初期化動作では、全部の画素回路PIXの電気泳動素子40に逆方向バイアスが印加される。図37に示すように、逆方向バイアスの印加で第1画素回路PIXの蓄積電荷量σ1は+2QからQだけ減少して+1Qに変化する。したがって、各第1画素回路PIXの電気泳動素子40の階調は、黒色から電荷量Qの減少分だけ白色側に遷移した中間調(灰色)となる。他方、逆方向バイアスの印加で第2画素回路PIXの蓄積電荷量σ2はゼロからQだけ減少して−1Qに変化するが、電気泳動素子40の階調は既に白色(最高階調)に到達しているから、蓄積電荷量σ2が減少しても電気泳動素子40の階調は殆ど変化しない(オーバーライト)。
そして、単位期間TU1内の書込動作において、制御回路12は、画像IMG1の黒色の画素を表示していた各第1画素回路PIXに白色の階調を指定し、画像IMG1の白色の画素を表示していた各第2画素回路PIXに黒色の階調を指定する。したがって、単位期間TU1内の駆動動作(動作期間TDRV)では、図37に示すように、第1画素回路PIXの電気泳動素子40には電圧が印加されず、第2画素回路PIXの電気泳動素子40には順方向バイアスが印加される。すなわち、第1画素回路PIXの蓄積電荷量σ1は逆方向バイアスの印加後の+1Qに維持され、第2画素回路PIXの蓄積電荷量σ2は、初期化期間TRSTでの逆方向バイアスの印加後の−1Qから順方向バイアスの印加で2Qだけ増加して+1Qに変化する。以上のように、単位期間TU1の初期化期間TRSTでの逆方向バイアスの印加と動作期間TDRVでの電圧印加(順方向バイアス印加/電圧無印加)とによって、第1画素回路PIXの蓄積電荷量σ1と第2画素回路PIXの蓄積電荷量σ2とが合致する(σ1=σ2=+1Q)。図37に示すように、電気泳動素子40の階調は、第1画素回路PIXおよび第2画素回路PIXの双方において、電荷量+1Qに対応する中間調(灰色)となる。
単位期間TU2の初期化動作(初期化期間TRST)でも、単位期間TU1と同様に全部の画素回路PIXの電気泳動素子40に逆方向バイアスが印加されるから、第1画素回路PIXおよび第2画素回路PIXの双方にて電気泳動素子40からQの電荷が除去される。したがって、図37に示すように、蓄積電荷量σ1および蓄積電荷量σ2の双方が+1Qからゼロに変化し、表示部20内の全部の電気泳動素子40の階調が白色に制御される。すなわち、第1画素回路PIXおよび第2画素回路PIXの双方について電気泳動素子40に対する直流成分の印加が解消される。そして、単位期間TU2の書込動作では、制御回路12は、画像IMG2の各画素の階調を各画素回路PIXに指定する。したがって、表示部20の表示画像は画像IMG1から画像IMG2に変更される。
以上に説明した第7実施形態によれば、動作期間TDRVにて順方向バイアスのみが電気泳動素子40に印加され、かつ、初期化期間TRSTでは全部の画素回路PIXの電気泳動素子40に一律に逆方向バイアスが印加される構成にも関わらず、電気泳動素子40に対する直流成分の印加を有効に防止することが可能である。したがって、直流成分の印加に起因した電気泳動素子40の劣化を効果的に防止できるという利点がある。
なお、以上の説明では、単位期間TU1内の書込動作において、画像IMG1の黒色の画素を表示していた各第1画素回路PIXに白色の階調を指定し、画像IMG1の白色の画素を表示していた各第2画素回路PIXに黒色の階調を指定したが、画像IMG1は白色および黒色の2値画像に限定されない。例えば画像IMG1が中間調を含む場合にも以上の形態が同様に適用される。変更前の画像IMG1が相異なる第1階調および第2階調を含む場合(他の階調の有無は不問)を想定すると、単位期間TU1内の書込動作は、画像IMG1の第1階調の画素を表示していた各第1画素回路PIXに第1階調に応じた階調電位VD[m,n]を供給し、画像IMG1の第2階調の画素を表示していた各第2画素回路PIXに第2階調に応じた階調電位VD[m,n]を供給する動作として包括される。以上の表現における「第1階調に応じた階調」としては第1階調の相補階調が好適である。同様に、「第2階調に応じた階調」としては第2階調の相補階調が好適である。「相補階調」は、白色と黒色との中央値(すなわち最高輝度と最低輝度との中間輝度)からの輝度差が相等しい階調を意味する。例えば、白色,淡灰色(ライトグレー),濃灰色(ダークグレー)および黒色の4種類の階調に着目すると、白色と黒色との関係や、淡灰色と濃灰色との関係が相補階調に該当する。以上の構成によれば、画像IMG1が中間調を含む場合でも、第1画素回路PIXおよび第2画素回路PIXの双方の電気泳動素子40の階調を、電荷量+1Qに対応する中間調に揃えることが可能である。
<H:変形例>
以上の各形態には多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
(1)変形例1
以上の各形態においては、動作期間TDRV内の指定階調に応じた時点で駆動トランジスターTDRをオフ状態からオン状態に変化させる構成(以下「構成A」という)を例示したが、動作期間TDRV内の指定階調に応じた時点で駆動トランジスターTDRをオン状態からオフ状態に変化させる構成(以下「構成B」という)も採用され得る。ただし、前述の各形態で採用した構成Aによれば、以下に詳述するように、動作期間TDRVの開始から利用者が実際に表示画像の内容を認識するまでの時間を構成Bと比較して短縮できるという利点がある。
図38は、表示部20の表示画像が動作期間TDRVの始点から終点にかけて経時的に変化する様子の模式図である。図38の部分(A)が構成Aに対応し、図38の部分(B)が構成Bに相当する。図38では、4種類の階調(白色,黒色,2種類の中間調)を含む画像IMGを表示する場合が想定されている。画像IMGは、白色と中間調とで構成される背景に黒色の文字「A」を配置した画像である。
図38の部分(B)に示すように、構成Bでは、白色以外の階調(黒色,中間調)が指定された各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRが動作期間TDRVの始点にて一斉にオン状態に変化することで電気泳動素子40の階調が黒色側に遷移し始め、動作期間TDRVのうち各画素回路PIXの指定階調に応じた時点で駆動トランジスターTDRがオン状態からオフ状態に変化することで電気泳動素子40の階調の変化が停止する。したがって、画像IMGの黒色の文字「A」は、動作期間TDRVの終点の間際の段階で初めて利用者に認識される。
他方、図38の部分(A)に示すように、構成Aでは、動作期間TDRVの始点では各画素回路PIXの駆動トランジスターTDRはオフ状態に設定され、各画素回路PIXの指定階調に応じた時点で駆動トランジスターTDRがオフ状態からオン状態に変化することで電気泳動素子40の階調が黒色側に遷移し始める。すなわち、各画素回路PIXの指定階調が黒色に近いほど、動作期間TDRV内の早い時点から電気泳動素子40の階調が黒色に遷移し始める。したがって、黒色の文字「A」は、動作期間TDRVの早い時点から利用者に知覚される。すなわち、構成Aによれば、動作期間TDRVの始点から利用者が実際に画像(特に文字)を知覚できるまでの時間を構成Bと比較して短縮できるという利点がある。
(2)変形例2
画素回路PIXを構成する各トランジスターの導電型は任意に変更される。例えば、第1実施形態(図2)の画素回路PIXの各トランジスター(TDR,SW1)をPチャネル型に変更した図39の構成や、第5実施形態(図22)の画素回路PIXの各トランジスター(TDR,SW1,SW2)をPチャネル型に変更した図40の構成が採用され得る。図39や図40の構成では、図2や図22の構成と比較して電圧の高低が逆転する。例えば、動作期間TDRVでは、対向電極44の共通電位VCOMが低位側電位VCOM_Lに設定されるとともに駆動電位線26の駆動電位VDR[m](VDR)が高位側電位VDR_Hに設定される。しかし、本質的な動作は以上の各例示と同様であるから、図39や図40の画素回路PIXを採用した場合の動作の説明は省略する。なお、相異なる導電型のトランジスターが混在する画素回路PIXも採用され得るが、画素回路PIXの製造工程の簡素化という観点からすると、以上の例示のように画素回路PIX内の各トランジスターの導電型を共通化した構成が格別に好適である。
また、画素回路PIXの各トランジスター(TDR,SW1,SW2)の材料や構造や製造方法は任意である。例えば、各トランジスターの半導体層の材料としては、非晶質半導体(例えばアモルファスシリコン),酸化物半導体,有機半導体,多結晶半導体(例えば高温ポリシリコンや低温ポリシリコン)が任意に採用される。
(3)変形例3
以上の各形態においては、画素回路PIXが2個のトランジスター(TDR,SW1)を含む構成(第1実施形態,第2実施形態,第3実施形態,第4実施形態)と、画素回路PIXが3個のトランジスター(TDR,SW1,SW2)を含む構成(第5実施形態,第6実施形態)とを例示した。また、補償準備期間QAにて駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGを補償初期値VINIに設定する構成として、初期化期間TRSTで蓄積された付加容量素子CPの電荷の移動を利用する構成(第1実施形態,第4実施形態,第6実施形態)と、電位VGの増加量δL_Hと減少量δH_Lとの相違を利用する構成(第2実施形態,第3実施形態,第5実施形態)とを例示した。初期化期間TRSTで駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGを上昇させる構成については、指示信号X[n]を利用する構成(第1実施形態,第2実施形態,第4実施形態)と容量電位SCを利用する構成(第3実施形態,第5実施形態,第6実施形態)とを例示した。さらに、動作期間TDRVにて駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSを経時的に変化させる構成として、指示信号X[n]を電位W(t)に設定する構成(第1実施形態,第2実施形態)と、容量電位SCを電位W(t)に設定する構成(第3実施形態,第5実施形態,第6実施形態)と、駆動電位VDRを電位W(t)に設定する構成(第4実施形態)とを例示した。以上に列挙した各要素(画素回路PIXのトランジスターの個数,補償初期値VINIを設定する構成,初期化期間TRSTで電位VGを上昇させる構成,電圧VGSを変化させる構成)の組合せは任意であり、以上の各形態の例示に限定されずに適宜に変更され得る。
(4)変形例4
第1実施形態から第4実施形態では、補償実行期間QBの開始前から指示信号X[n]を階調電位VD[m,n]に設定したが、書込動作を開始する時点は適宜に変更される。例えば、補償準備期間QAの終点以後に指示信号X[n]を階調電位VD[m,n]に設定する構成が採用され得る。ただし、駆動トランジスターTDRのゲートの電位VGが閾値電圧VTHに応じた電位VG_THに設定される補償実行期間QBの終点にて容量素子C1の電極E1の電位が階調電位VD[m,n]に設定される構成が好適である。
(5)変形例5
以上の形態においては電位W(t)をランプ波形(すなわち直線的に単調増加または単調減少する波形)に制御したが、電位W(t)の波形は任意である。例えば、前述の例示では電位W(t)を直線的に変化させたが、電位W(t)を曲線的に変化させる構成も採用される。また、前述の例示では電位W(t)を動作期間TDRV内で単調増加(第4実施形態では単調減少)させたが、電位W(t)を動作期間TDRV内で増減させる構成も採用され得る。具体的には、動作期間TDRVの始点から直線的に増加(減少)して途中の時点から直線的に減少(増加)する三角波や、動作期間TDRV内で曲線的に変化する正弦波が電位W(t)として利用され得る。
(6)変形例6
以上の各形態では、電気光学素子(電気泳動素子40)を駆動する画素回路PIXに本発明を適用した構成を例示したが、本発明に係る電子回路の用途は電気光学素子の駆動に限定されない。以上に例示した各形態の画素回路PIXは、階調電位VD[m,n]と電位W(t)との大小に応じた電圧信号を回路点pに発生させる。したがって、以上の各形態に係る画素回路PIXの構成(ただし電気泳動素子40を含まない)を採用した電子回路は、第1電位(例えば階調電位VD[m,n])と第2電位(例えば電位W(t))とを比較する比較回路として利用され得る。比較回路が駆動する負荷(駆動負荷)は電気光学素子に限定されない。なお、前述の各形態においては、電気泳動素子40に順方向バイアスを印加する時間を階調電位VD[m,n]に応じて可変に制御するという作用(パルス幅変調)を実現するために電位W(t)を経時的に変化させたが、単純に複数の電位の比較の結果に応じた信号の生成を実現する構成のもとでは、電位W(t)を経時的に変化させる必要はない。
また、以上の各形態の画素回路PIXは、駆動トランジスターTDRの閾値電圧VTHを補償するための電子回路(すなわち、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧VGSを自身の閾値電圧VTHに応じて設定する回路)の例示としても把握される。以上の説明から理解されるように、本発明は、駆動トランジスターTDRの閾値電圧VTHを補償する電子回路として包括され、複数の電位を比較する比較回路が本発明の電子回路の好適な形態として例示される。以上の各形態の画素回路PIXは、本発明の電子回路(比較回路)を特に電気泳動素子40の駆動に利用した具体例である。
(7)変形例7
電気泳動素子40の印加電圧と階調との関係は以上の例示に限定されない。例えば、図3の例示とは逆に、負極性に帯電した白色の帯電粒子462Wと正極性に帯電した黒色の帯電粒子462Bとを利用した電気泳動素子40を利用した場合、電気泳動素子40の表示階調は、動作期間TDRVにおける順方向バイアスの印加で白色側に遷移し、初期化期間TRSTにおける逆方向バイアスの印加で黒色側に遷移する。また、画素電極42と対向電極44との位置(観察側/背面側)も変更される。例えば、図3の例示において対向電極44を背面側に設置して画素電極42を前面側に配置すれば、電気泳動素子40の表示階調が順方向バイアスの印加で白色側に遷移する構成が実現される。
電気泳動素子40の構成も適宜に変更される。例えば、白色の帯電粒子462Wを黒色の分散媒464に分散した構成や、黒色の帯電粒子462Bを白色の分散媒464に分散した構成も採用され得る(1粒子系)。また、電気泳動素子40を構成する帯電粒子462や分散媒464の色彩は白色および黒色に限定されず任意に変更される。相異なる表示色に対応する3種類以上の粒子(例えば1種類は無帯電)を分散した電気泳動素子40を採用することも可能である。
もっとも、以上の各形態の画素回路PIXによる駆動の対象は電気泳動素子40に限定されない。例えば、液晶素子,発光素子(例えば有機EL素子やLED(Light Emitting Diode)),電界電子放出素子(FE(Field-Emission)素子),表面伝導型電子放出素子(SE(Surface conduction Electron emitter)素子),弾道電子放出素子(BS(Ballistic electron Emitting)素子),受光素子等の任意の電気光学素子の駆動に本発明が適用され得る。すなわち、電気光学素子は、電気的な作用(電圧の印加や電流の供給)と光学的な作用(階調変化や発光)との一方を他方に変換する被駆動素子として包括される。ただし、駆動トランジスターTDRの特性の誤差を有効に補償するという所期の課題を解決するという観点からは、電気泳動素子40や液晶素子等の高抵抗な電気光学素子を駆動する場合に本発明は格別に好適である。
<I:応用例>
本発明を応用した電子機器を以下に例示する。図41および図42には、以上に例示した各形態の電気光学装置100を表示装置として採用した電子機器の外観が図示されている。
図41は、電気光学装置100を利用した携帯型の情報端末(電子書籍)310の斜視図である。図41に示すように、情報端末310は、利用者が操作する操作子312と、表示部20に画像を表示する電気光学装置100とを含んで構成される。操作子312が操作されると表示部20の表示画像が変更される。図42は、電気光学装置100を利用した電子ペーパー320の斜視図である。図42に示すように、電子ペーパー320は、可撓性の基板(シート)322の表面に形成された電気光学装置100を含んで構成される。
本発明が適用される電子機器は以上の例示に限定されない。例えば、携帯電話機や時計(腕時計),携帯型の音響再生装置,電子手帳,タッチパネル搭載型の表示装置など、各種の電子機器に本発明の電子装置(電気光学装置)を採用することが可能である。
100……電気光学装置、10……表示パネル、12……制御回路、20……表示部、22,28……制御線、24……信号線、26……駆動電位線、30……駆動回路、32……行駆動回路、34……列駆動回路、36……電位制御回路、PIX……画素回路、TDR……駆動トランジスター、SW1,SW2……スイッチ、C1,C2……容量素子、CP……付加容量素子、40……電気泳動素子、42……画素電極、44……対向電極、46……電気泳動層、462(462B,462W)……帯電粒子、464……分散媒、48……容量線。

Claims (10)

  1. 電子回路と駆動回路とを具備する電子装置であって、
    前記電子回路は、
    駆動電位が供給される駆動電位線に接続された第1端子と回路点に接続された第2端子と両端子間の接続状態を制御する制御端子とを含む駆動トランジスターと、
    前記回路点に接続された付加容量素子と、
    前記回路点と前記制御端子との接続を制御する第1スイッチとを含み、
    前記駆動回路は、
    前記駆動電位が第1電位に設定される第1期間において、前記第1スイッチをオフ状態に制御し、前記駆動トランジスターがオン状態となるように前記制御端子の電位を変化させ、
    前記第1期間の経過後の第2期間において、前記第1スイッチをオン状態に制御することで前記制御端子の電位を補償初期値に設定し、
    前記第2期間の経過後の第3期間において、前記第1スイッチをオン状態に制御し、前記駆動トランジスターがオン状態となるように前記駆動電位を前記第1電位から第2電位に変化させる
    電子装置。
  2. 前記駆動回路は、前記第2期間の開始前に、前記第1期間での変化とは逆方向に前記制御端子の電位を変化させ、前記第2期間にて前記第1スイッチをオン状態に制御することで当該制御端子の電位を前記補償初期値に設定する
    請求項1の電子装置。
  3. 前記駆動回路は、前記第2期間において、前記第1スイッチをオン状態に制御してから、前記第1期間での変化とは逆方向に前記制御端子の電位を変化させることで当該制御端子の電位を前記補償初期値に設定する
    請求項1の電子装置。
  4. 前記電子回路は、第1電極と第2電極とを含む第1容量素子を備え、
    前記第2電極は、前記制御端子に接続され、
    前記駆動回路は、
    前記第3期間の期間内または経過後に信号電位を前記第1電極に供給し、
    前記第3期間の経過後の第4期間において、前記制御端子と前記第1端子との間の電圧を可変に設定する
    請求項1から請求項3の何れかの電子装置。
  5. 前記駆動回路は、前記第4期間において前記第1電極の電位を可変に設定する
    請求項4の電子装置。
  6. 前記電子回路は、第3電極と第4電極とを含む第2容量素子を備え、
    前記第4電極は、前記制御端子に接続され、
    前記駆動回路は、前記第4期間において前記第3電極の電位を可変に設定する
    請求項4の電子装置。
  7. 前記駆動回路は、前記第4期間において前記駆動電位線の駆動電位を可変に設定する
    請求項4の電子装置。
  8. 前記第1容量素子の前記第1電極は、前記信号電位が供給される信号線に直接に接続される
    請求項4から請求項7の何れかの電子装置。
  9. 前記電子回路は、前記第1容量素子の前記第1電極と前記信号電位が供給される信号線との導通を制御する第2スイッチを含む
    請求項4から請求項7の何れかの電子装置。
  10. 駆動電位が供給される駆動電位線に接続された第1端子と回路点に接続された第2端子と両端子間の接続状態を制御する制御端子とを含む駆動トランジスターと、前記回路点に接続された付加容量素子と、前記回路点と前記制御端子との接続を制御する第1スイッチとを含む電子装置の駆動方法であって、
    前記駆動電位が第1電位に設定される第1期間において、前記第1スイッチをオフ状態に制御し、前記駆動トランジスターがオン状態となるように前記制御端子の電位を変化させ、
    前記第1期間の経過後の第2期間において、前記第1スイッチをオン状態に制御することで前記制御端子の電位を補償初期値に設定し、
    前記第2期間の経過後の第3期間において、前記第1スイッチをオン状態に制御し、前記駆動トランジスターがオン状態となるように前記駆動電位を前記第1電位から第2電位に変化させる
    電子装置の駆動方法。
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